マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
安定性=パフォーマンス
私が覚えている限り、コアトレーニングは常にワークアウトの重要な一部でしたが、経験を積むにつれて、『コアトレーニング』は、それぞれ重要な構成要素へと分類されてきました。これらの要素を理解することは、誰かにエクササイズプログラムを提供する際に非常に重要です。 よくトレーニングされたコアは、最適なパフォーマンスと傷害予防に不可欠です。 この記事は、コアとは何か、それがどのように機能するのか、安定性と強さの違い、そしてそれがパフォーマンスのためのトレーニングまたは傷害予防にどのように関連しているのかを理解するのに役立つでしょう。 「コアの安定性」は、統合された運動活動において、末端部分への力と動きを最適に生成、伝達、及び制御するために、骨盤上の体幹の位置や動きを制御する能力と定義されます。(Kibler) コア・ユニットとは何か? はじめに、「コア」とは何か、そしてその主な機能を明確に理解しましょう。 三次元空間であるコアは、腰部・骨盤・股関節複合体とも呼ばれ、腰椎、腹壁の筋肉、背部伸筋群、そして腰方形筋で構成されています。また、コアを通過して、骨盤、脚、肩、そして腕につながる広背筋や腰筋のような多関節筋も含まれています。骨盤との力学的な協働を考えると、殿筋も含まれていると考えてよいでしょう。 体幹及び骨盤のコアの筋肉は、脊柱と骨盤の安定性を維持する役割を担っており、大きな身体の部位から小さな部位へのエネルギー/力の生成及び伝達を助けます。 フィットネス・コミュニティ内では、コアをトレーニングするためのエビデンスに基づくアプローチや理解が欠けています。たとえば、腹直筋をトレーニングするには、脊柱の屈曲(クランチ)を繰り返すのが良い方法だと信じている人もいます。興味深いことに、この筋肉がこのように使われることはほとんどなく、それらは動きに抵抗したり止めたりする中でブレーシングする、具体的には腰椎の過伸展を防ぐためにより頻繁に使われます。それらは屈筋というよりも安定筋なのです。さらに、椎間板への反復する屈曲や圧迫は、有力な受傷メカニズムです。(Callaghan JP and McGill SM) 誤った行為の他の例は、アスリートが、おへそを脊柱に向かって引っ込めてコアをブレーシングするように指示されることです。これは主な脊柱安定筋を使うための方法ではありませんし、コアの安定性を測定した多くの研究が、もっとも重要な安定筋群の活性化はタスク固有のものであると示しています。 コアの安定性対コアの強さ 私がコアトレーニングではじめに目からうろこだったことの一つは、コアの安定性とコアの強さの違いを発見したことでした。 その違いとは、コアの安定性が協調された筋活動の結果として脊柱を安定させる能力を指すのに対し、コアの強さは、筋肉の収縮する力と腹腔内圧によって力を生成する能力を指すということです。(Faries & Greenwood) コアの安定性は、受動的、能動的、そして神経制御の3つの相互依存的なサブシステムに分類されます。 (Panjabi) どのサブシステムも、他のサブシステムと別々に作用したり働くことはありません。受動的システムには、椎骨、椎間板、靱帯、関節包、そして筋肉の受動的特性が含まれます。これらの組織の主な役割は、張力が増加し、運動に対する抵抗が生じるとき、可動域の最終域を安定させること、そして機械受容器を介して位置や負荷の情報を神経制御システムに伝達することです。 能動的サブシステムはコアの筋肉で構成され、脊柱に動的な安定性を与え、神経制御システムに運動の情報を提供します。神経制御サブシステムは、最終的にコアの安定性を生み出し維持する、入力および出力信号の拠点です。 これら3つのサブシステムが一緒になって、瞬時に変化を起こし、剛性(つまりコアの安定性)のために適切な筋動員の組み合わせや強度を実行するのです。 コアの強さとは、エネルギー漏れを起こさずに、腹腔内圧に対抗して、このように協調された筋動員パターンによって生成または伝達される力の大きさと言えるでしょう。 アスリートが、コアが協調/安定できる以上の力を発揮すると、エネルギー漏れが生じ、四肢のオーバーユース障害が起こります。 たとえば:野球の投手が、コア・ユニットが下肢で生成された力を効果的に協調及び安定させ、肩へと伝達することができない結果、肩のローテーターカフ損傷(受動的サブシステム)が定期的に起こるかもしれません。肩の筋肉が、この失われたパワーを補わなくてはならないからです。 アスレティック・パフォーマンスのためのコアの強さ 経験を積むにつれ、私は誰かをリハビリテーションのためにトレーニングするのか、またはパフォーマンスのためにトレーニングするのかによって、コアトレーニングが少し異なることにも気が付きました。 先にも述べたように、コアが身体に対して弱いと、アスリートは、あらゆる動きにおいて必要な力を発生させるために、常習的にほかの筋群を酷使してしまうのです。そのため、パフォーマンス向上のためのトレーニングには、コアを介して伝達される力の量を増加させようとすることと、エネルギーを漏らさないようにすることが含まれます。 コアを強化するエクササイズは、完璧なテクニックを維持し、パフォーマンス成果を上げるために必要な力を発生させる能力を本当に試すものであると言えるでしょう。 リハビリテーションのためのコアの安定性 リハビリテーションのためのトレーニングとは、コアの協調性及び安定性を回復し、痛みを伴わずに日常生活のタスクを実行できるようにすることです。そのため、リハビリテーションにおける安定性とは、パフォーマンスのための筋力トレーニングのような結果の出る課題に取り組むのではなく、小さな運動単位の動員や同期された活性化パターンを増加させようとすることだと言えるでしょう。その結果、中枢神経系のコントロールが向上し、安定性(上記のすべてのサブシステム)が高まり、受傷リスクが減少するのです。 安定性のためのコアトレーニングと不安定面上のトレーニング あるトレーナーが、コア・ユニットのポステリア・チェーン要素を刺激するような動きを取り入れたいとしましょう。彼らは、その人にとっての適切な負荷はどれくらいかと悩んでいるかもしれません:エンプティ・バー(プレートなしでバーベルバーのみを使った)でのヒップ・ヒンジパターン?バードドッグ・エクササイズ? その選択は、アスリート/クライアントの許容範囲や能力によって決まります。コーチは、処方されたエクササイズの量がクライアントに見合っているかを確認しなくてはなりません。各々のアスリートにはそれぞれ負荷の許容範囲があり、それを越えてしまうと、痛みを生じ、最終的に組織の損傷を引き起こします。たとえば、あるアスリートは先に述べたバードドッグの動作には十分耐えられるかもしれませんが、腰椎に2倍の圧縮力がかかるバランスボール上でのバック・エクステンションには耐えられないかもしれません。しかしそのまた一方で、ジムでトレーナーとトレーニングしているほかの誰かは、片脚でのエンプティ・バー・ヒップヒンジをいとも簡単にこなすことができるのです。よりトレーニングを積んだ人ほど、その許容範囲は高くなります。人の能力とは、痛みや損傷を起こさずにその人が行うことのできる累積運動です。(McGill, Stuart PhD) コアの安定性エクササイズは、バランスボールまたはウォブルボードの上でバランスを保つ能力とはほとんど関係がありません。これはただ身体のバランスを維持する能力を試しているだけであり、不安定な脊柱とはほとんど関係がないのです。安定性のためのトレーニングは、「ブレーシング」するコアの筋動員、つまり剛性効果によって達成されます。 単一のコアの筋肉(たとえば腹斜筋)に焦点を当てることは、一般的には安定性を高めるのではなく、測定したときに安定性が低くなるような動作パターンを作り出したり強要します。腹横筋や多裂筋のような筋肉を単独でトレーニングすることは不可能であり、人々はこれらの筋肉を単独で活性化することはできません。そうではなく、安定性は腹部のブレーシングによって高めることができるのです。 一方で、バランスボールのような道具、またはその他の不安定面上でのトレーニング機器を使うと、非常に役に立つ場合があります。バランスボールは不安定な表面を与え、ブレーシング・エクササイズと組み合わせると、筋動員はかなり難しくなります。バランスボールを使うことは、固有受容器の能力、身体の安定性やバランスをとる能力を高めることはできますが、筋力を高めることはできません。したがって、それはコアの安定性のためのサブシステムやリハビリテーションに適しているのです。(Behm et al.) コアの安定性が高まると、その上にコアの強さが構築できるでしょう:コアを介して伝達される力の量を増やし、エネルギーを漏らさないようにすることによって。
立ち上がろうー何度も!
あなたは多分、運動でよくない食生活をなかったことにすることはできないと聞いたことがあるでしょう。でも、それよりももっと正確かもしれないのは、運動で不健康なライフスタイルをなかったことにすることはできない、ということです。これってパラドックスのように聞こえますよね。 「運動をすれば、不健康なライフスタイルを送ってもいいですか?」 まあ、そうですね。 不健康なライフスタイルとはなんでしょう?それは、活動レベルや食生活、思考パターンや衛生状態などを含むビュッフェのようなものだと思います。 ですが今日は、そしてあなたの残りの人生において、座りがちなライフスタイルを不健康なライフスタイルとして見てみましょう。 私は最近、ジョアン・ヴァーニコス博士と話をすることができました。彼女は、NASA生命科学部門の元ディレクターです。彼女は宇宙空間にいることの老化への影響について多くの研究を行ってきました。無重力状態では、人体は通常の10倍の速さで老化します。NASAにいた間に、ヴァーニコス博士は、ベッドまたは椅子であまり動かないでいることが、宇宙空間にいるのと同じ影響を身体に与えるということも発見しました。言い換えれば、彼女の研究は、身体を老化させるのは動かないことだということを発見したのです:つまり椅子の上での生活です。 彼女はまた、もしその人が座りがちなライフスタイルで生活し続ければ、運動は老化の過程を止めるのにほとんど効果がないことも発見しました。たとえば、一時間運動しても、椅子の上で過ごす8時間の結果を克服または逆行させることはできないのです。 その理由は、身体は動くようにー沢山動くようにデザインされているからです。 ヴァーニコス博士は、ずっと座り続けたり何時間もベッドに横になることは、神経系にとって沈黙のようなものであり、まさに無重力空間にいるようなものだと言います。その沈黙では、前庭系の刺激はなく、身体は、使われることも要求されることも、要望を受けることもありません。そうすると、身体はより速い速度で老化するのです。血管はその弾力性を失い、中性脂肪は上昇し、炎症は進行し、反射は低下し、協調性は衰え、バランスを失い、関節が劣化する、などというように。 しかし、ただ一日を通して頻繁に動くだけで、これらすべてを元に戻したり予防することができるのです。ヴァーニコス博士は研究を行い、ただ30分に一度椅子から立ち上がるだけで、老化の長期的な影響を防ぎ抑えることができることを発見しました。覚えておいてください、運動にはこのような効果はなかったのです。 驚くことに、彼女は、ウォーキングよりも、ただ頻繁に立ち上がることの方が老化の過程を抑制させたことも発見しました。だからと言って、ウォーキングが有益ではなかったということではありません。ただ頻繁に立つ(椅子から立ち上がって前庭系を刺激する)というような“より簡単な”ことでも、散歩をするのと同じくらいの老化防止及び抑制効果があった、ということなのです。 頻繁に動くということが重要なのです。立つことが重要なのではありません。長時間立ち続けることもまた、ある種の沈黙を生み、それは静的で、やはり劣化効果があります。前庭系を活性化させ、姿勢を変えて、たびたび前庭系に”ノイズ”を発生させて、神経系にそれが必要とされているのだと知らせることが重要なのです。 もし身体に何かを求めれば、身体はあなたが望むものを与えてくれるでしょう。頻繁に動くことは、身体に常に動ける能力を持つよう要求することです。もし身体に何も要求しなければ、身体もあなたには何も与えないでしょう。 あなたの身体は一生健康にいられるようにデザインされており、あなたは自分の持つすべての時間を楽しめるように作られています。あなたがいつも自分の身体を楽しめることを確実にするもっとも簡単な方法の一つは、頻繁に動くことです。すなわち、長時間座っているならば、30分またはたとえ60分に一度でも、2,3分立ち上がる休憩時間を持ちましょう。頻繁に動くことで、あなたの身体に身体を維持したいのだと知らせてください。ただ立ち上がってそのままでいる必要はありません、創造性を発揮して楽しくすることもできます。立ち上がってダンスをする、散歩に行く、ストレッチをして笑顔になる(気分爽快!)、10歩ハイハイをする、オフィスにあるバスケットボールのおもちゃで2分間シューティングをする、などなど。 大事なのは、座りがちなライフスタイルは不健康なライフスタイルだということです。それはあなたを老化させ、あなたが元気に生活を送る能力を奪ってしまいます。しかし、ただ一日を通して頻繁に動くことで、あなたは健康で、元気に楽しく生活を送ることを選ぶことができます。それは、30分から60分間に一度立ち上がり、腕を伸ばしストレッチをして、一分間ほど笑顔になる、というような簡単なことでもいいのです。 ええ、不思議なくらい効果があるのです。 それを試してみる冒険心はありますか?
患者中心のケアのための簡単なガイド パート2/2
PCCの実践 人を中心としたアプローチを、活動/運動/エクササイズの単なる種類やセット数、レップ数だけと考えるべきではないかもしれません。それよりも、運動を取り巻くすべてのことであり、これを中心に紹介します(運動バイアスはあってもかまいません)。 終わりを意識して始める 回復がどのように見え、感じられるかを定義することがない限り、自分がそこに到達しているのか実感することはおそらく難しいでしょう。セラピストの役割は、その人がどこに到達したいのか、現在どこにいるのかを確認し、そのギャップを埋める手助けをすることだと思います。 まずは目的を念頭に置くことが最適なスタート地点としたら、これには何よりもまず、人の話を聞くことが必要です。傾聴と理解こそがPCCの真髄であると私は考えていますが、多くの人はヘルスケアの現場でこのようなことが常に行われているとは感じていません。 次の短い抜粋は、優れた論文からのものです:“‘非対面’から自律的な主体性まで。腰痛患者の医療制度における出会いに関する概念” Holopainen 2018年 “患者は、自分の話を聞いてもらえないと感じていた。彼らは、その対面が専門家主導であると感じ、医療提供者は彼らの希望や意見に耳を傾けることなく、彼らの言うことを遮り、否定していた” また、長い間、痛みを抱えてきた人にとって、目標や回復の過程を明確にすることはとても困難ということを認識する必要があります。痛みや苦しみの外に目を向けて、‘人生’とは何か、どのようなものか再び実感することは、難しいことです。 “患者は、痛みが自分の生活に及ぼす影響を認識し、以前は楽しんでいたことをあきらめ生活の輪が狭くなったと報告しました” - Holopainen 2018 ただ動くために動いているのではなく(これはこれで意味のあることですが)、これまで話し合ってきた価値ある活動や目標に向かってさらに前進するために動いているのだということを、私は強調するようにしています。そして、これがその人の内発的な動機につながることを期待しています。 目標がある内発的な動機には、大きな問題点があります。普通、彼らの成功は痛みや機能といったより全体的な評価に反映されることによって測ることができます(理学療法に関する研究では確かにそうです)。 私たちは、目標という素晴らしく個人的で具体的なものを持っているのですから、その目標そのもの!を達成することで、私たちは実際に成功を測るべきなのです。もしそれが痛みの変化を伴うのであれば、人を中心としたアプローチでは、もちろん目標に痛みを含めるべきでしょう。しかし、痛みの変化(評価項目 アウトカム指標)がなかったとしても、その人の生活の質に大きな影響を与える大切な目標を達成することができるかもしれませんし、全体的な評価手法では必ずしも捉えられないかもしれません。 私は、行動の背後にある“なぜ”は、その人によって決められなければならないと信じています。セラピーで行われることの多くは、最善の方法で痛みをなくしたり、機能を向上させたりすることで、セラピストのバイアスによって駆動されています。 もしかしたら、よく採用されている“方法”は、患者さんよりもセラピストのアイデンティティや価値観に合っているのかもしれませんよね? 共同意思決定と責任 先に述べたように、PCCと共同意思決定は、ただ誰かが望むことをするということではありません。意思決定を適切に行うためには、入手可能な最大限の情報と、最善の行動方針に対する専門家としての意見を提示する必要があります。 自律性は、エクササイズの成果に影響を与えることが示されています“自律性:プログラムを成功させるために欠けている要素?”もしかしたら、自律性と選択があれば、リハビリにおけるエクササイズとのより良い‘結びつき’につながるかもしれません。 エクササイズや運動、負荷のかけ方にはたくさんの方法があるので、いくつかの選択肢を提示して、次に進むためのベストな方法を選択できるようにすることはそれほど難しくないはずです。同様に、最良のデータと経験に基づいて、その人に‘ぴったり’と思われる最良の行動指針について意見を述べることがセラピストの責任でしょう。 このプロセスにおいて、お互いの責任を明確にすることは、重要なステップです。私はいつも、私はガイドや手助けをするためにここにいますが、あなたが実際にやってみて、それがうまくいくと信じなければうまくいきません、と言っています。時にはお互いにその過程や結果を報告する責任を果たすことも必要だと思います。 プランニング 私にとって、これこそが真の生物心理社会主義です。 私たちは皆、仕事や家族、社会的なプレッシャーのある世界に“組み込まれて”生活しています。BPSの視点を導入するための最良の方法の一つは、運動やエクササイズの計画は、時間や労力、他の何かを犠牲にするという意味で、“コストなし”ではできないということを認識することです。 人は、何かをすることが必要なのみでなく、それを実行できるための計画を必要としています。目的地が素晴らしくても、そこに到達するための道筋も必要としているのです。 みなさんはこれまでに、時間や場所、仕組みがはっきりしていないために、なかなか実行に移せないことがどれだけあったでしょうか? 運動をするのに最も適した時間帯はいつですか?仕事の前か後か。どのくらいの時間がいいのか?どんな感じでやればいいのか?円滑に行うための必要な情報を彼らは持っているのでしょうか? “‘非対面’から自律的な主体性”のもう一節では、次の点が強調されています: "書面による説明がないため、何をすればいいのかわからず、処方されたエクササイズができなかった" また、それぞれの社会的環境をうまく利用できるようにサポートすることも有益な方法です。私たちは、多くの“社会的”なものを変更することはできませんが、それらをもっと理解してもらい、導く手伝いはできます。たとえば、より活動的になるために地域社会のサポートを受けるにはどこに連絡したらいいか? 無料または低コストで利用できるリソースはあるか? また、支援団体や家族、友人など、助けてくれる人はいるか? 治療者としてではなく、ガイドとしての役割を果たすことで、多くの人が助かるかもしれません。 サポート&モチベーション 誰かのエクササイズフォームを批判したり、ある種の動きの機能障害を強調したりすることは、PCCとは正反対です。それによって誰かがどう感じるか、その人の行動にどう影響するか全く配慮に欠けています。しかし、もしあなたが単に病理に対して取り組んでいるということであれば、そんなことは気にする必要はないのでしょうか? 他人の立場になるということは、全く逆の見え方になるのだと言えるでしょう。 誰かを批判するのではなく、どうすればその人を引き立てられるかを考えてみてはどうでしょう。長所や利点を強調することを考えましょう。医療の現場では、モチベーションと楽観主義の持つ力を過小評価しているように私は思います。これは、フィットネスの世界ではコーチやトレーナーの役割の基本的な部分ですが、エクササイズを医療に取り入れるようになった際に失われつつあります。 患者さんは、自分自身でこのように言っています! “患者は、パーソナルトレーナーのように自分を後押ししてくれる人が必要である、と報告した” - Holopainen 2018年 おわりに 人を中心としたケアは、その人によって定義される PCCは単にその人が望むものを与えることではない 人は単なる患者(受動的な受け手)ではなく人である “他の人の立場に立つ”ことを考える 共同意思決定(エビデンスに基づいた)についてもっと考える 終わりを念頭に置いてスタートし、価値ある活動に結びつける 彼らの“自分の世界”へ導く役割を果たす 人をノックダウンするのではなく、人を育てる
患者中心のケアのための簡単なガイド パート1/2
‘痛みの科学’と‘生物心理社会的’に続く最近のバズワード(流行語)は、‘患者中心のケア(ペイシェントセンターケア)’、略してPCCと呼ばれているものでしょう。 バズワードの場合、定義がかなり不十分で、厳密な説明があるわけではありませんが、私はPCCこそが、生物心理社会的(BPS)モデルを実践すべき方法であり、またBPSモデルが本来目指すべきもので、私達が現在持っている痛みに焦点を当てたバージョンではないと考えています。 この記事では、PCCをアクティブケアの中でどのように適用するかに焦点を当てていますが、多少脱線しても驚かないでください。 患者なのか人なのか? この分野のほとんどの文献は“患者中心のケア”について述べていますが、私は“人”を中心としたケアの方が好きです。それは、患者….を一人の人間に変え、双方向の関係の中でより“リアル”な存在にするからです。 “患者”という言葉は長い間、議論の対象となってきましたが、これに関しての興味深い文章から引用を二つピックアップしました。 "患者に代わる新しい言葉が必要か?" “Patient ”はラテン語の “patiens ”に由来し、苦しむや耐えるなどを意味する“patior”からです。この言語では、患者はまさに 受動的な存在で -必要な苦痛には何でも耐え、専門家の介入には辛抱強く耐えるということです。” “医療サービスの利用者と提供者の不平等な関係” これらの興味深い視点は、‘患者’が、個人として考慮されず、何をすべきかを指示される受動的な受け手であるという潜在的な視点を浮き彫りにしています。結局のところ、組織や病理はどのように扱われるかに関心がないのであれば、それを気にする必要はないということですよね? PCCとは実際何か? PCCを定義することは、誰にとっても難しいのかもしれませんね? ある人にとっての人間中心は、別の人にとってはそうではないかもしれませんが、議論の余地がある大まかなテーマや考え方はあるようです。 患者(人)を中心としたケアは、これまで次のように定義されてきました: “生物医学的な問題だけでなく、患者がドクターにもたらすあらゆる範囲の困難に関与しようとする姿勢” - Stewart 1995 “臨床医は患者の世界に入り、患者の目を通して病気を見ようとする”-McWhinney 1989年 “(一人ではなく)二人で行う医療” - Balint e al 1993 (引用:Meadら2000) 私にとってPCCの良いスタートは、セラピストやテクニック、メソッド、エクササイズなどを主役として見ないということ。私たちの助けを本当に必要としている人が主役です。それは、派手さや華やかさや台座を意味するのではなく、目の前にいるこの人が何を必要としているのか、彼らと同じ立場になるとどんな感じか?を考えてみるということです。 もうひとつの非常にシンプルな見方は、あなたならどのように扱われたいか?ということです。 Meadらは、"患者中心主義: 概念的なフレームワークと実証的文献のレビュー"の中で、"患者中心 "の5つの重要な側面を定義しました。 生物心理社会的視点(患者の人生) 一人の人間としての患者 力と責任の共有 治療の協力関係 一人の人間としてのドクター(人間らしさなどの個人的資質) Wijmaらは“理学療法における患者中心主義:どんなことが必要となるか?”を探求し、PCCを次のように定義しました。 “理学療法における患者中心主義とは、個人に合ったオーダーメイドの治療の提供、継続的なコミュニケーション(言語および非言語)、治療のあらゆる側面における教育、患者が設定した目標への取り組み、患者がサポートされ力を与えられる治療、そして患者中心の社会的スキル、自信、知識を持つ理学療法士という特徴を伴うものである。” PCCではないことは PCCに対する批判の中には、消費者主導の医療や‘彼らがしてほしいことを何でもする’というような考えを中心としたものがあるようです。PCCの本質である‘共有された意思決定’という考えは、消費者の医療という考えをある程度受け入れやすくするかもしれません。 このような議論は、治療の種類や、より受動的な手法の適用に支配されがちですが、私たちはこのようなPCCの還元主義的な見方に対して十分注意する必要があります。 誰かの好みに基づいて決定するのではなく、PCCの重要な部分は、人々が決定に参加することであり、その決定には、入手可能な治療に関する最良の情報と、最良の方針のためにも率直で正直な対話が反映されなければなりません。ただ単に“どのような治療を希望するか”ではなく。 MakoulとClaymanは、“医療場面における意思決定共有の統合的モデル”の中で、意思決定を共有するためのいくつかのステップについて述べています。 問題の定義または説明 選択肢の提示 長所と短所(利益/リスク/コスト)を議論する 患者の価値観や好みを評価する 患者の能力や自己効力について議論する 医師の知識や推奨の提供 理解度の確認、明確化 決断を下す、または明確に決定を延期する フォローアップを手配する 人々が本当に望んでいるものは何か? このことは、“人は何を望んでいるのか”ということにうまくつながるものの、好きな治療法の種類を中心に展開することではなさそうです。 PCCは、エンドユーザーである人が広い医療の世界にどう適合するかではなく、彼らのために医療に何ができるかを考えることでしょう。そのためには、彼らに尋ねる以上により良い方法があるでしょうか? 質的調査が増えることは、素晴らしく、人々が何を考え、感じ、最終的に何を必要としているかを理解するのにとても役立ちます。 これは、腰痛における二人の視点に関するとても興味深い論文です:「聞いて、教えて」:非特異的慢性腰痛の患者を対象としたケアにおけるパートナーシップに関する質的研究 この論文の著者は、いくつかの重要な領域を指摘しています。 施術者とのパートナーシップ “参加者全員が、ケア提供者とケア希望者の間で、共通の治療目標を設定するために、互いに情報を引き出し、問題を解決し、交渉し、再交渉する必要があると述べています。” ‘私に質問して’ "意見や目標を明確に尋ねられた場合、医療提供者との関わりが改善された、とすべての参加者が報告した。" ‘私を理解して’ "生活環境や好みを考慮することは、治療上のパートナーシップを築き、運動の成果を最適化する上で、すべての参加者にとって重要であった" ‘私の言うことを聞いて’ "私が理解できるように説明して" –適格で共感できる聞き手を大切にする "自分の体のことは分かっている" - 参加者は‘自分の体を知る’ことが力になると考えています。 しかし、次の文章は特に私の心に響きました: "患者がパートナーシップの中で真の声を求めていることと、患者が医療従事者に明確な診断と最善のマネジメント指導を求めていることの間に緊張が存在していた" それは重要なのか? 人を中心としたケアについてよく聞かれる質問に、PCCは実際に‘アウトカム’を改善するのかというものがあります。PCCがアウトカムに与える影響は実際に重要なのか、そしてどのようなアウトカムについて議論しているのか、というのが私の反応です。 状況的要因が結果に影響を与えることは分かっていますが、PCCが特に最も一般的なアウトカム指標を改善するかどうかは分かりません。しかし、痛みや機能などが変わるかどうかに関わらず、人を大切に扱うことは正しい方法だと私は考えています。現在、多くのデータがあるわけではありませんが、私の見方では、多くの人にとって一般的なアウトカム指標ではなくても、医療における個人的な経験(それ自体がアウトカム指標かもしれませんが)に違いをもたらすと思います。
肩関節包後部の硬さを評価する
肩関節包後部の硬さを評価するための、前後の遊びをチェックする評価方法の実践において、正しく読み取れている自信はありますか?評価の実行時に間違った方向性で行ってしまって偽りの結果を得ることにならないように、正しい評価方法を再確認することは大切です。
LSD vs HIIT討論に終止符を打つ パート2/2
低強度と高強度メソッドの間には心臓の特異的な適応に違いがあります。LSDトレーニングのように、長い時間をかける低強度の方法では、心臓の左心室肥大が起きます。これにより、心臓が一回の拍動でより多くの血液を送りだすことを可能にし、結果、筋肉が働くために血液と酸素を懸命に運ぶ必要はなくなります。この適応は偏心心肥大として知られています。 一方で、高強度メソッドでは心臓の筋繊維を強化するよう作用し、結果として心臓壁が厚くなります。この適合は同心心肥大と呼ばれ、偏心心肥大とはことなった方法で、一拍毎に心臓がより多くの血液と酸素を送り出すことを助けます。これらの適応はそれぞれ、有酸素能力の向上に作用し、どちらも重要なのですが、コンディショニングにおける影響に違いがあることを理解することが重要です。 低強度メソッドでは、同量の血液を運ぶのにそれほど心臓が懸命に働く必要はなく、結果有酸素持久力がより順応していきます。つまり、幅広い範囲の強度でエクササイズをしても、心拍数は低いまま維持でき、長い時間そのエクササイズを継続できるということになります。これに対して、高強度メソッドでは、より高い心拍数で、より多くの血液と酸素を送り出し続けることに適しているため、完全に疲弊し、オールアウトするまで、長い時間高い心拍を維持させることができます。 このことはまさに、MMAにとって有利になりますが、試合中、低い心拍数を維持できればできるほど、コンディションはより良くなるでしょう。筋肉そのものに関しては、LSDはHIITよりもかなりの優位性を持っています。長く、ゆっくりとしたトレーニングは、動いている筋肉に心臓から酸素を運ぶ役割をもつ毛細血管の発達に役立ちます これには、HIITよりもボリュームを多くすることが必要で、この発達なしでは、筋肉は多くの酸素を利用することができず、持久力は上がらないでしょう。MMAでは、ストレングス、パワー、スピード、そして持久力すべてが要求され、身体が持つ3つのエネルギーシステムすべてに特化した緻密な発達が必要になります 総合的に強いファイターになりたいのであれば、レスリングスキル、関節技スキルとヒットスキルをバランスよくするためにどうしたらよいかを学ぶ必要があり、戦いのなかで必要になるエネルギーを生産するために、身体の異なったシステムすべてが細かく調整され、共に働けた時、コンディションとパフォーマンスは最大になるでしょう。これらの考えに沿って、LSD,HIITのどちらもが、異なった方法でエネルギーシステムを発達させているということを理解することが重要になります。 どちらが優れているのかという討論ではなく、それぞれが異なった適応を導き、特有の利点があるのです。LSDは低強度であり、故に関節にそれほど衝撃を与えず、頻繁に行うことができます。心臓がより多くの酸素を運搬することで、心拍は低く抑えられます。一方、HIITでは、有酸素パワーを向上させ、高い心拍数で長い時間動くことを可能にします。 戦いに勝つためのコンディショニングを求めているなら、LSDとHIITのどちらもトレーニングプログラムに入れるべきです。あなたが教わったことに反して、LSDによって弱く、遅くなることはありませんし、一流のボクサー、レスラー、MMAファイターでさえ、多くのアスリートがトレーニングプログラムにLSDを取り入れています。LSDを効果的に行い、コンディションを向上させるには、豊富な種類のエクササイズを使用して、60-90分のセッションを行うことを勧めます ただ単に走るのではなく、そり引きからメディスンボールエクササイズ、ジャンプロープ、シャドーボクシング、関節技のフロードリルまですべてを、それぞれ1回に10-15分行います。最良の結果のためには、心拍を130-150の間で維持するよう努めなければなりません。HIITでは、豊富で様々なフォームと正確に行うことが必要です:休息比率と総運動量は経験値、運動能力、特異的なトレーニングの目的によって決定されるべきです。 初心者では、高強度トレーニングを週1-2回行うところから始めるのが良いでしょう。運動能力が上がるにつれて、HIITのトレーニング量を上げ始めることができ、コンディションの必要性に応じて、長い運動を短い休息で行うこともできます。研究はスポーツ科学とトレーニング全体の進歩には非常に重要なものですが、それぞれの研究を単体で見て、安易に結論づけてしまうと、トレーニングを失敗させてしまいます。 昨今のペースの速い社会では、皆少ない運動で、素早い効果が出る方法を探します。1日に4分間高強度のトレーニングをするだけで、最高の結果とコンディションの向上が得られるのであれば、それはすばらしいことでしょうが、現実はそれほど簡単ではありません。正しい時間、正しいコンビネーションでLSDとHIITを使用する繊細な計画と熟考したトレーニングプログラムが、MMAのコンディショニングを究極に高めるための本当の鍵となります。LSDが何世紀にもわたって存在してきたのは、効果があるからであり、特別で重要な目的に適っているからです。 本当にMMAのコンディションを向上させたいのであれば、討論を忘れて、トレーニングプログラムにLSDとHIITの両方を取り入れてください。結果は保証します。
LSD vs HIIT討論に終止符を打つ パート1/2
過去数年、総合格闘技(MMA)界のコンディショニングでは、すべての長い・ゆっくりとしたタイプのトレーニングを捨て、高強度のインターバルトレーニングを選ぶ傾向が強くなってきています。専門家は様々な研究を指摘し、ファイターがトップコンディションになるために、従来のどんなタイプのロードワークも必要ではないという証明として、高強度ワークの利点を証明しようとしています。 格闘技は爆発的なスポーツであり、そのため、ランニングやかなりゆっくりとしたペースでのトレーニングでは、MMAで必要な高強度のエネルギーシステムの要求には見合わないと彼らは主張しています。この種のワークアウトでは爆発的な力を発揮できなくなり、弱くさせてしまうため、まったくするべきではないと極言する人さえ大勢います。 しかし、本当にそうなのでしょうか?高強度のインターバルトレーニングがすべての人にとってコンディショニングプログラムの真の答えでしょうか? 高強度のインターバルトレーニングは間違いなく効果的なコンディショニングツールであり、ファイターのトレーニングプログラムに入るべきものですが、一方で、長く、ゆっくりとしたトレーニングの負の効果がかなり誇張され過ぎであり、コンディショニングプログラムの中にもその役割はあるということを、この記事のなかで主張していきたいと思います。 まず始めに、長い距離をゆっくりとしたペースで走る(LSD)トレーニングは、ほとんどの格闘技スポーツのコンディショニングプログラムとして、どのような形にせよスタートし、存在してきたということに言及することは重要です。ボクシングやレスリングでは、この種のトレーニングはロードワークとして一般的に知られています。ロッキー・バルボアはフィラデルフィアの道でインターバルスプリントをしていたのではなく、ジョギングをしていたのです。 歴史を通して、一流のボクサーの大多数はトレーニングにロードワークを取り入れていたといって間違いないでしょう。アメリカでは皆、この高強度インターバルトレーニング(HIIT ) の流れに飛び乗っているようですが、アメリカ以外の国のMMAファイターのほとんどは、今もトレーニングにLSDを使っているということも指摘しておくべきでしょう。ヒョードルが故郷ロシアでロードワークをしているオンラインビデオが複数あり、爆発力やコンディションに悪影響をあたえているようなことは一切ありません。 リッチ・フランクリン、桜井速人、クリス・リーベン、マット・ブラウン、スペンサー・フィッシャーなど多くのトップファイターに長年LSDを使ってトレーニングしてきましたが、誰もパワーやノックアウトに関して問題はないようです。しかし、HIITがどれほど効果的であるかを示したすべての研究はどうでしょうか?LSDを批判する人たちは、HIITが低強度のメソッドよりも、有酸素・無酸素フィットネスの両方をかなり効果的に向上させていることを示している研究を指摘したがります。 特に、日本の田畑泉先生の研究は、この点について他のどの研究よりも多く参考にされているでしょうし、結果田畑プロトコルを大流行させ、ネットのいたるところで見かけることができます。この問題点は、LSDとHIITを比較した研究の多くと同じで、その制限をかなり超えた推測によるものであり、きちんとした根拠に基づいていません。例えば、田畑先生の元々の研究では、14人の被験者のみが使われ、全員が比較的トレーニングされていない者であり、体力に劣り、VO2Maxの平均は40代後半か、50代前半の数値でした。 比較的トレーニングされていない被験者に見られる結果は、トレーニングを積んでいるアスリートのそれとはかなり違った結果になることが多いのです。2つ目に、この研究におけるすべてのトレーニングは、低い衝撃と抵抗しか与えないバイクでのみ行われています。そうであるにも関わらず、現在では人々が、神経システムや関節に実際どれだけ多くの要求がかかっているのか理解することなく、ストレングストレーニングからスプリント,MMAの特殊エクササイズまでに至る、あらゆる種類のトレーニングに対して、研究のプロトコルを適用しています。 田畑では、被験者は1週間に5回トレーニングをし、これらのうち1日は30分のLSDのセッションが含まれます(決して言及されることがありませんが)。このトレーニング頻度を1週間にバイクよりも要求の高いエクササイズと3-5回のMMAセッションの混合に変えれば、これは、オーバートレーニングと関節痛のレシピになってしまいます。最後になりますが、田畑ではまた、VO2maxと無酸素能力テストを使用し、LSDとHIITの結果を比較しています。 このため、高強度メソッドがより良い結果を導きだしたとしても驚くべきことではありません。VO2maxも無酸素能力も共に強度がかなり高く、心拍数もかなり高い状態でテストを行います。これらのテストを使った場合には、当然高強度でのトレーニングがより効果的になるでしょう。これらの結果は、もし田畑先生が、低強度で実施する他の有酸素測定方法を使用したとしたら、おそらく違うものになっていたでしょう。これは1RM 最大筋力測定を行ってから、1つのグループは高強度の1-5回、別のグループは10-12回を行わせているのと同じことになります。 当然ですが、テストに近い高重量で行ったグループは他のグループよりも1RM 最大筋力は向上するでしょうが、といって、みんながトレーニングで5回以上上げるという理由がないということではありません。でも、なぜLSDが重要なのでしょうか?HIITよりもかなり少ない時間でより良い結果を出せますか?今まで何を読んだかに関わらず、単に高強度の方法からでは得られない効果がLSDには実際にあるのです。
すべてのトレーナーとコーチが読み、理解するべき研究
健康、そして、人間のパフォーマンスの世界で絶対というものはほとんど存在しません。すべての質問に対する答えは正に“おそらく”です。裏付けに乏しい観察と専ら科学的根拠に基づく医療の間の論議でさえ、白熱した討論になることもあるグレーゾーンが存在します。 しかし、すべてのトレーナー、コーチ、リハビリテーション専門家、そして、フィットネス愛好家が読み、理解するべきだと私が考える研究が1つあります。私の長年の友人であるスチュワート・マックギル博士-まぎれもなく世界トップの脊柱の権威である-が主要著者の1人でもあります: Frost DM, Beach TA, Callaghan JP, McGill SM. 消防士のためのエクササイズに基づいたパフォーマンスエンハンスメントと傷害予防:2つのトレーニングメソッドに関する、フィットネスと動きに関連した適応の対比:J Strength Cond Res. 2015 Sep;29(9):2441-59. あなたが考えていることは分かります:“消防士のトレーニング方法から何を学べるのですか?私のスポーツ、ライフ、職業的要求はまったく別物です。” なぜこの研究があなたたちそれほど重要なのか、そして、どのようにトレーニングするのかを理解するためには、その方法論を見る必要があります。 基本的に、研究者は52名の消防士を対象に、彼らを3つのグループに分けました: 1. 動きを指導されるフィットネス群(MOV)はプログラムと正しく動く方法を指導されます。 2. 従来のフィットネス群(FIT)はプログラムだけを受け取り、指導は受けません。 3. コントロール群(CON)はエクササイズの介入はまったく受けていません。 12週間のトレーニング介入前後に(コントロール群ではトレーニングはしていません)、すべての消防士は一連のフィットネステストとラボでのスクリーニングを受けました。体組成、有酸素能力、握力、筋持久力(プッシュアップの最大回数とプランクの持続時間)、下肢パワー(垂直跳び)、そして柔軟性(座位でのリーチテスト)を計測しました。 特に重要なことは、前後のテストにはトレーニングの介入ではどの部分にも含まれていない“5つの全身運動タスク”が含まれていることです。その介入は、ボックスデッドリフト、スクワット(自重)、ランジ、スプリットスタンスでの1アームケーブルプレスとケーブルロウです。目的は、どれだけ混沌とした人生(あるいは、より具体的に消防の活動)においてでも、トレーニングがより効率的で質の高い動きに実際どの程度転移されているのかを評価することでした。これらのタスクで、動きの低さや速さといった様々な状況下での動きの質を詳細に検査するために、研究者は反射板を使用し、脊柱と膝の動きを見ました。研究者が記録したのは(太字は私が強調するものです): FITとMOV群はフィットネスのすべての点において優位な改善が見られた:しかし、それぞれの転移タスクを行ったときの、脊柱と前額面における膝の動きの制御に改善が見られたのは、MOV群のみであった。FIT群では、スクワット、ランジ、プッシュ、プルの動作中で脊柱と前額面における膝の動きはそれほど制御されていなかった。トレーニング後で改善が見られた参加者は、FIT群(30%)とCON群(23%)と比較して、MOV群がもっとも多くみられた(43%)。トレーニング後ではマイナスな変化がほとんどみられなかったことも記録された(MOV, FIT, CONがそれぞれ19,25,36%)。 では、これは一体全体どういうことを意味しているのでしょうか?トレーニングの質が重要であるということです。 質の高いコーチングを受けたグループでは、平均的に動きが格段によくなり、実質的なマイナスの結果はほとんどありませんでした。コーチングのないトレーニング群では、平均的な“改善”は低く-マイナスな適応という事象がより見られました。 この研究は、質の高い片脚RDLをコーチングすることで、投手がコントロールして安全に足を接地することに繋がるということを証明しています。 ジムで我々が指導する“正しい”股関節伸展はまた、アスリートが走るとき、跳ぶときにも起こることであることを示しています。 我々が指導するラテラルランジは、選手がラクロス場で安全に方向転換を行う一助になっていることを示しています。 我々がジムでかなり厳しく指導しているデッドリフトでのヒップヒンジテクニックは、日々の生活でよちよち歩きのわが子を抱き上げるときに背中を痛める可能性を減少させていることを示しています。 90/90での腱板の筋力とポジションのタイミングを我々が極めて細かいところまでコーチングし、トレーニングすることで、スローイングの外旋時に腕を後方に持っていくときに選手を傷害から守っていることを意味しています。 良質なストレングス/コンディショニングの結果とは、単なるプログラム、さらには、恵まれたトレーニング環境によるものではなく;マイナスな影響を出さずに、動きの質を好ましく適応させる可能性を顕著に上げるために、一貫して質の高い負荷を繰り返しかけることであるということを意味しています。 この研究では、すでに用意された腱板プログラムがしばしば肩痛の患者に効果がでない原因も説明しています。怠慢なコーチングと一緒になった画一的なアプローチでは、患者を痛みから救えないことが多く、ちょっとした技術とプログラム調整が体制を一変させるきっかけになりえるのです。そして、まったく問題を持たない友人とまったく同じプログラムを行っている健康だったはずの人に、結局傷害が起きてしまう原因も説明しています。私たちのところに、たった1回だけ相談に来るような人達によくみられることです;少しのコーチング、あるいは、プログラムの変更によって、大きな違いを産み、彼らが無症状で、楽しくトレーニングし続けられるようにすることができます。 あなたのコーチングへのプライド、そして、トレーニング技術に対してその人が持っているプライドが問題なのです。決してそれを忘れないでください!
機能のために重要なエビデンス:筋膜機能不全を再考する(グローバル&ローカルの介入)
Zugel M, Maganaris CN, Jukat-Rott K, Klinger W, Wearing S, Findley T, Barbe MF, Steinacker JM, Vleeming A, Bloch W, Schleip R, Hodges PW. Fascial tissue research in sports medicine: from molecules to tissue adaptation, injury, and diagnostics: consensus statement. (スポーツ医学におけるファシア(筋膜)組織のリサーチ:分子から組織の適合、怪我、そして診断: 合意声明)Br J Sports Med 2018; 52: 1497-1505. この論文の目的は、スポーツ医学に関連するファシア(筋膜)組織に関する「知識の状態」についての合意声明を作成することでした。論文に貢献している方々は、この領域において尊敬をされている研究者の方々でした。数々の分野からのリサーチをカバーし、ファシア(筋膜)について理解されていること、次のリサーチの取り組みは何であるか、そして現在の計測ツールの制限などがまとめられていました。興味をそそられる「合意」のあるセクションでは、正常な細胞の治癒反応が過剰になり得るという素晴らしいエビデンスを提供しています。程度や時間の増大による「マクロファージと有害なレベルのサイトカインの長期にわたる存在」は、継続したダメージという結果となりえます。その結果として、繊維芽細胞の増殖と疼痛反応が過剰になり得るのです。 この記事では、筋膜組織の「メカノバイオロジー(機械生物学)」に関連したセクションに注目します。トレーニングやリハビリテーションに関わる専門職全てにとってのチャレンジは、最適なファシア(筋膜)組織の生理学は「ゴールディロックスと三頭のクマ」のジレンマであるということでしょう。繊維芽細胞の難問を考えてみましょう。組織は、組織の素材を追加するためにより多くの繊維芽細胞を必要とするのか、あるいは組織の滑走を可能とするためにより少ない繊維芽細胞を必要とするのか?究極としては、これらのどちらもが組織の治癒には望ましいように見えます。組織間の滑走を制限することなく、組織の治癒と成熟を可能とする繊維芽細胞の活動が目指すゴールなのです!運動を介しての組織へのローディングは、新しい細胞の成熟のための力学的刺激を提供します。三次元的運動は、組織の細胞が機能的ストレスのラインに沿って方向性を持つことを可能としながら組織間の滑走を生み出します。ですから、私達は、適切な分量のムーブメント(負荷、速度、反復回数)をデザインし、修正されたプログラムとして提供しなければならないのです。CAFS(アプライドファンクショナルサイエンス認定コース)の10のオブザベーショナルエッセンシャル(変数要素)は、プログラムの論理的なプログレッションのための戦略を提供します。 腱は、負荷の適用に対してその硬さを増すことで反応し、負荷の不在に対してより柔軟になるという反応をする、というかなりの量のエビデンスが存在しています。これらの研究は、短期間における(何週間)変化を提示していますが、運動の専門家達は、その組織が組織の剛性~弾性のコンティニュアム(連続体)のどこに特化して存在するのか、そして患者やクライアントは通常そのコンティニュアムのどこで機能しているのかを考慮する必要があります。この記事では、加齢をファシア(筋膜)組織の剛性を高める因子としてリストに加えていますが、このケースにおいて、硬さは理想に近づくポジティブなシフトではなく、力を吸収するための弾性の減少したネガティブなシフトとなります。ファシア(筋膜)組織の硬さは、エネルギー消費の上昇を伴う筋肉の働きをより多く要求します。機能的ポジションにおいて実行する三次元的柔軟性プログラムは、加齢に伴うネガティブで過剰な剛性を遅延させるためにとても有効であるようです。グレイインスティチュートでは、スタティックストレッチよりも、アプライドファンクショナルサイエンス(応用機能科学)のロード・エクスプロードの原理原則に基づいたトランスフォーメーショナルゾーン(切り替わりゾーン)におけるダイナミックなローディングを好んで利用します。 全身を通してのファシア(筋膜)のコネクションを考慮すれば、私達の行う柔軟性のための運動も、組織へのローディングの運動も、できる限りグローバル(全体的)であるべきです。身体の様々な領域におけるファシア(筋膜)の制限された動きの影響は、ローカルの(部分的な)関節運動のみでは確認することが(そして修正されることが)できません。ローカルの運動を行う際に、身体はどこか他の部分で代償をすることによって、制限のための“余裕を賄う”ことができます。この代償を防ぐために、制限のある領域から解剖学的に距離のある身体部位を動かしたり、位置付けしたりすることで、ファシア(筋膜)のシステムに張力をかける必要があります。これが、ローカルの介入をより効果的にするでしょう。このグローバルとローカルの戦略の相互関連は、CAFSのコースにおいても、またグレイインスティチュートからの新しくパワフルなコースである、ファンクショナルソフトティシュートランスフォーメーションにおいても強調されています。 最後に、この合意記事は、ファシア(筋膜)組織の神経/知覚的重要性について取り扱うことを意図したものではありません。しかし、グレイインスティチュートにおける重要な戦略のデフォルトの一つは、「疑わしい時は(判別がつかない時は)、固有受容器について考えよ。」となっています。これは、全てのトレーニングプログラムは、本質的に機能的なポジションにおいて、様々な身体部位のドライバー(両手、両足、頭、骨盤など)によって作り出された、三次元的な運動を強調しなければならないという確信をさらに強めます。筋肉が効果的で効率的な協働へと組織立てられることができるように、私達の運動は、システムに適切な求心性固有受容情報を提供する必要があります。しかしこれは、トラウマや外科手術的介入の結果として存在するローカルの(部位的な)異常な緊張によって生み出される、異常な神経/知覚情報というチャレンジを引き起こすことになります。グレイインスティチュートでは、この問題に対して、コインの両面から「アタック」したいと考えます。患者/クライアントによって駆動されたグローバル(全体的な)運動は、ローカル(部位的)な組織の運動を生み出します。運動中のローカル(部位的)な介入は、ファシア(筋膜)層の可動性と滑走を促進します。ローカル(部位的)組織の可動性と強さを向上させることで、異常な神経/知覚情報は、より正常化されます。グローバル(全体的)な運動とローカル(部位的)な介入を組み合わせることで、システムは、意図したタスクを達成するために身体の他の部分から得られる固有受容的情報と「正常化された」(新しい正常)情報を統合することを学習するのです。
フィットネスの消えない3つの虚偽
若手コーチとして私が好きだった本の一つに、晩年のメル・シフ博士による「Fact & Fallacies of Fitness(フィットネスの事実と虚偽)」があります。シフ博士は、素晴らしい科学者であり、彼自身が常にウエイトトレーニングしていたことから、自らの語ることを両端の面から理解していました!その頃はまだ、インターネットが比較的新しいものであり、ソーシャルメディアもないに等しかったので、これはとても重要な本でした。(私がとても年寄りに聞こえますね!) 私が、この本が重要だったと言うのは、専門家の科学と教育についての認識が深まるほど、フィットネスの専門家にとって物事はどんどん広がっていったからです。それでも、物事を本当に理解している人と、ただ良い感じに聞こえるようにしているだけの人を見分けるのは難しかったのです。シフ博士の本は、当時人気のあった考え方を題材にし、それらが本当に理にかなっているのかを分析しました。 私自身をシフ博士と比較するつもりなど到底ありませんが、私は、トレーニングに関して、常に正直で慎重な洞察を持つように心がけています。専門用語を多く使ったり、疑似科学を用いたり、言いたいことを伝えるために無理やり押し通すことはとても簡単です。現在ではそれは必要なく、その時点での真実と持っている最も正直な情報が必要です。それを考慮した上で、私たちの新しいL.I.F.T.モジュールの中で議論する動きのパターン、ローテーションとランジに特に纏わる3つの非常によくある通説を論破してみたいと思いました。 通説 1:これらの動作は筋肉を構築しない 真実:ファンクショナルトレーニングは、筋肉がつかないという不当な非難をよく受けていると思います。ファンクショナルトレーニングの重要な点は、トレーニングをできる限り効率的にすることであり、筋肉を構築することもそこに含まれます!私がこれまでに出会った最も大きくて強い人々の中には、大半はファンクショナルベースのワークアウトを行なっている人達がいます。では、この通説は一体どこから来たのでしょう? 一つには、ローテーションのような動きを見る時、私たちが「働かせている」明らかな一つの筋肉というのは存在しません。バイセプスカールやダンベルフライのようなエクササイズとは違うのです。実際、ローテーションは、筋肉群の美しい調和性を最もよく表している動きの一つです。適切なローテーションを作り出すためには、それぞれの筋肉が完璧なシナジーを持って、働かなければなりません。だからと言って、筋肉を働かせていないわけではないのです! 数多くの研究論文が、投擲動作を行うアスリート(常に回旋動作を使うアスリート)にとって、どのくらい下半身および胴部の筋肉活動が必要かということについて議論しています。臀筋、ハムストリング、胴部の筋肉(広背筋でさえも)は全て、回旋運動の際に働いています。何年も前に、スコッツデールにある私の施設で、(臀筋で有名な)ブレット・コントレラスとまさにこのことについて話したのを思い出します。 私は彼に、私たちが行なっていた回旋のトレーニングの概念について話し、そのトレーニングを行った人々の心拍数に巨大な代謝コストが見られたことを共有しました。彼は一旦黙り、考え、それはとても道理にかなっていると言いました。さらに彼は、回旋に対して筋膜がどのように作られているかについて、そして回旋動作における筋肉の活動量で、心拍数が最大に高まる理由を説明できるということまで語りました。スクワットやデッドリフトのようなエクササイズは、一回でたくさんの筋肉を刺激できるため、人々はこういったエクササイズが大好きです。それはつまり、ローテーションも同様に行うべきということでしょう! 通説 2: これらのエクササイズは強さを構築しない 真実:これに関しては、ランジがより標的とされるでしょう。だって、誰もランジをワークアウトプログラムの中で「スター」にはしていませんから。典型的には、人々は、「本当の」強化種目を行った後でランジを行うでしょう。この偏見は研究から来ているものではなく、大半はただ、負荷が軽いから強化もそれほどできないという考え方から来ています。リンゴとリンゴを比べているのなら(同じもの同士を比較しているのなら)そうかもしれませんが、そうではないのです! ランジは、足を前後にしたスプリットポジションで行うため、当然ですが、力を発揮するのと同時に安定させることが要求されます。私たちは、生活の中でまさにこれをやらなければいけないのですから、これは重要なことです!研究者も指摘していますが、足を揃えた状態で何かを行うことはほぼ稀であり、私たちは多くのことを左右の動きが異なる状態で行なっています! これは、ストレングスに大きな影響を持つ加速と減速の要素に繋がります。事実、私たちは、怪我に対してより強くなるために、なぜ減速における強さが重要なのかをたくさん綴ってきました!ランジにおける負荷はある程度難しいものであるべきですが、もしランジにおいて負荷のことだけを考えているとすれば、大局からは外れてしまっています! 通説 3: これらのエクササイズは腰や膝を痛める! 真実:いいでしょう、最も単純な真実は、ほぼ全てのエクササイズは間違って行えば、問題が起こり、怪我を引き起こす可能性があるということです。しかし、ローテーションやランジの動きとなると、人々は腰と膝という、二つの大きな心配をする傾向にあるようです!実はどちらも比較的簡単に解決することができます。 ローテーションに関しての方がより驚くでしょうが、ほとんどの人は、回旋は腰をひねることによって起こると考えていますが、それは違います!適切な回旋は、股関節で起き、それこそがより安定した腰椎の下に可動性の高い関節(股関節)がある理由です。股関節からの回旋のパターンを教えることが、腰部を守る方法を学ぶ鍵です。それと同時に体幹を安定させるのはどうするのかって?よくぞ聞いてくれました… 私たちがランジの大ファンであることもあり、ランジと悪い膝については、いつも聞かれます。人々は、どんなローテーション動作よりもランジ動作を多く行なっているため、身体に染み付いた習慣を直すのは難しくなりがちであり、この問題は少し困難です。それに加え、人々は、ランジは痛みを起こすものだと相当思い込まされています。先に進む前に言っておかなければなりませんが、もし医師に、膝のどこかが悪いと言われていたら、何らかの不快感があるかもしれませんが、私はそこから前に進めると考えています。 ステップ1:ランジでは両足がアクティブに働いています。これを当たり前に思う人とそうでもない人がいると思います。両膝を使う重要性は、前膝だけを使うことによる圧力を和らげ、膝に過剰なせん断力として知られる力が発生しないようにすることです。 ステップ2:くだらないことのように聞こえるかもしれませんが、適切な靴を履くことは重要です。私は非常に悪い足を持っているのですが、トレーニングをするときは、ミニマルタイプのシューズで行います。これはランジをする際に地面を”掴んで”欲しいからです。 ステップ3:適切な方向に動く!ほとんどの人が全く考えさえしませんが、特に最初は、正しい方向を選ぶことが膝を守ります。例えば、前方にランジを行う筋力がないとすれば、後方にランジをする方が簡単です。後方へのランジは、減速するべき身体の質量が少なく、多くの人にとって臀部に荷重をかけることが簡単になり、膝を守ることにも繋がります。 こういった考え方により、これらのエクササイズがどのくらい利用しやすいかということだけでなく、適切に使った時にどれだけパワフルかを認識してもらえれば幸いです。皆さんが、物事を単純に見るのではなく、成功にたどり着くために深く掘り下げようとしてくれることを願っています。
ストレングストレーニングは脳震盪の予防に役立つか? パート2/2
トレーニングを通して首の筋力を増大させることは、衝撃中の頭部の加速を減らすか? 長期的なトレーニング調査から、首の筋力をトレーニングで高めることが、頭部に影響を及ぼす衝撃中の頭部の加速を減らすことができるかどうかを知ることができます。しかしながら、これまで、首の筋力トレーニングは頭部の加速の大きさを減少させないようであると研究は示しています(Mansell et al. 2005; Lisman et al. 2012)。 たとえそうだとしても、私たちが席を蹴って立ち去り、脳震盪を予防する別な方法を求めて先に進む前に、いくつか言及することがあります。 第一に、これらの試行で用いられた首の筋力トレーニングプログラムは、実際意図した通りには首の筋力を向上しませんでした。Mansell et al. (2005)の研究では、男性の首の伸展筋力は実際(有意な差ではなかったものの)10%低下しましたが、首の屈曲筋力は向上し、その一方で女性は首の伸展及び屈曲の両方の筋力の向上を示しました。Lisman et al. (2012)の研究では、被験者は首の伸展及び右側屈筋力のみ向上しましたが、首の屈曲あるいは左側屈筋力は向上できませんでした。これは、両方の研究が比較的とても低い負荷を用いていたからかもしれません(Gilchrist et al. 2015)。 対照的に、特定の首の筋力トレーニングを用いた首の筋力及び筋肉の大きさの変化を調査した他の多くの研究は、多数の訓練された基準において、筋力と筋肉の大きさの両方における大きな増加を報告しており(Leggett et al. 1990; Conley et al. 1997; Maeda et al. 1994; Portero et al. 2001; Burnett et al. 2005; Taylor et al. 2006; O’Leary et al. 2007; Kramer et al. 2013)、圧力に基づいた生体フィードバック(バイオフィードバック)をトレーニングで用いることが結果をさらに向上させるだろうという早期指摘があります(Nezamuddin et al. 2013)。 第二に、私はこれらの研究のどれについても、一つ一つのテストデータにおいて、評価された頭部の加速データの信頼性についての言及を見つけることはできません。 Lisman et al. (2012)の試行においては、2つの衝撃間の明らかな差は加速の量を変化するため(私と仲間たちはボクサーのパンチ力の試験再試験信頼度を測る似たような研究をしたことがあり、その信頼度は非常に低いものでした)、試験再試験の信頼度は低いと確信しています。 よりコントロールされていたMansell et al. (2005)の試行では、トレーニング前後の頭部の加速のデータは非常に可変するものであり、それはつまり信頼度はあまりよくなかったということです。そのような変動性は結果をとても“ノイズの多いもの”にし、結果として、私はこれらの首のトレーニングプログラムが頭部の加速を変化させるのに本当に効果的であったのかどうかを判断するのはとても難しいだろうと思います。 そこで、より強い首がより大きな運動エネルギーを吸収することができる理由についての明確な論理的証拠があるとすると、これらの調査は、頭部の加速を顕著に減少させるのに十分なほどの首の筋力は向上しなかったか(特に大きな試験再試験変動性を考えると)、あるいは頭部の衝撃を計測中、頭部の加速を減らすために、被験者が向上した首の筋力をうまく使うことができなかったかのいずれかである可能性が高いでしょう。 つまり基本的に、私はこの問題が終了したとは全く考えていません。私は、首の筋力が実際に向上したところで、頭部の加速のより明らかに信頼性のある結果測定法(尺度)を持つ首のトレーニングの長期的試行をもう少し、そして理想的には、最低一つは首のトレーニング群が衝撃前に首を緊張させる動作練習も行ったような、いくつかの研究を調べたいと思っています。 私たちは将来、動作練習や特定の筋力強化がドロップジャンプ及びストップジャンプ中の膝の内反を減らすために付加的であるのとまさに同じように(Hermann et al. 2009)、それらがこの特定の問題について付加的であることを見つけるかもしれません。 ストレングストレーニングは本当に脳震盪を予防するのに役立つのか? 今のところ、私たちができる最良のことは、衝撃を含むスポーツをプレーするアスリートにおいて、首の筋力の弱さは脳震盪の危険因子の一つであると発言することです。 一つの大きな高校生アスリート群において(サッカー、バスケットボール、あるいはラクロスをプレーする被験者6,704人)、低レベルの首の筋力は、脳震盪発生の増加と関連していました(Collins et al. 2014)。手持式ダイナモメーターを用いて力を計測したところ、首の筋力が1パウンド増加するのに伴い、脳震盪の発生率は5%減少しました。 問題は、首の筋力が大きいことが、首の筋力の増加は必ず脳震盪のリスクを減らすということを意味しているのではないということです。プレーには交絡因子があり、それらが関連性を生み出しているのです。 どのエクササイズが首の筋力を高めるのか? 私たちは、アイソメトリックとダイナミックな方法両方を用い、エラスティックバンド、フリーウエイト、あるいはマシンのいずれかを用いて負荷を加えた首の特定の筋力トレーニングエクササイズすべてが、首の筋力を高めることができることを知っています(Hrysomallis, 2016)。 スクワットやデッドリフト、オリンピックウエイトリフティングの派生種目、そしてベントオーバーロウのような大きなコンパウンドエクササイズをすることによって、同じような首の筋力の向上が得られるだろうと仮定したくなってしまうかもしれませんが、これは真実ではありません。 一つの重要な研究では、2つの長期的なトレーニングプログラムの効果を比較し、片方のプログラムには大きいコンパウンドリフティング(スクワット、デッドリフト、プッシュプレス、ベントオーバーロウ、そしてミッドサイ・プル)のみ、そしてもう片方にはこれらのエクササイズに加え頭部伸展エクササイズが含まれていました(Conley et al. 1997)。 この研究では、ターゲットとされた頭部伸展エクササイズは首の筋力を33.5%向上させ、首の断面積を12.8%(主に頭板状筋、そして頭部半棘筋及び頸部半棘筋)増加させましたが、大きなコンパウンドリフティングだけでは首の筋力も断面積も向上しませんでした。 そうです、私もデッドリフトは好きですが、デッドリフトは分厚く強い首を与えてはくれません。 そのため今のところ、首の筋サイズ及び筋力を向上させるためには特定の首のエクササイズが必要であり、そしてこの種の筋力強化はただスクワットやデッドリフトをするだけでは不可能なようです。 結論 小さくて弱い首を持っていることは、衝撃を伴うスポーツ中に脳震盪を起こすリスクを高めるようです。より高い筋力を持つことによって、筋肉は身体に与えられた力を吸収しやすくなり傷害リスクを低下させるため、このことは納得がいきます。たとえそうだとしても、首の筋力強化がトレーニングにおいて有害な結果をどれほど生じるかについては正式に評価されていないため、実施する際には注意深いリスク評価と用心が必要です。 さらには、首の筋力強化だけでも有益かもしれませんが、それだけを用いた場合、脳震盪を引き起こす頭部の加速の大きさに本当に影響を与えるのには十分ではないかもしれません。現時点では、迫り来る衝突を認知すること、そして首及び僧帽筋の筋肉を衝撃の前に緊張させることは、首の筋力あるいは首の筋力強化よりももっと信頼性のある頭部の加速への効果をもたらすようです。 これらのポイントを合わせて、私たちは、頭部の加速を生じる衝撃時のエネルギー吸収を向上させるために、いくらかの動作練習及び首の筋力強化を、傷害予防プログラムの中に組み込むかどうか考慮しても良いかもしれません。動作練習には、首の筋肉を緊張させること、マウスガードを噛みしめること、あるいは身体の他の部分への力伝達のために好ましい姿勢を練習することなどがあるでしょう。 参照 Barth, J. T., Freeman, J. R., Broshek, D. K., & Varney, R. N. (2001). Acceleration-Deceleration Sport-Related Concussion: The Gravity of It All. Journal of Athletic Training, 36(3), 253. Bauer, J. A., Thomas, T. S., Cauraugh, J. H., Kaminski, T. W., & Hass, C. J. (2001). Impact forces and neck muscle activity in heading by collegiate female soccer players. Journal of Sports Sciences, 19(3), 171-179. Blennow, K., Hardy, J., & Zetterberg, H. (2012). The neuropathology and neurobiology of traumatic brain injury. Neuron, 76(5), 886-899. Broglio, S. P., Schnebel, B., Sosnoff, J. J., Shin, S., Feng, X., He, X., & Zimmerman, J. (2010). The biomechanical properties of concussions in high school football. Medicine & Science in Sports & Exercise, 42(11), 2064. Burnett, A. F., Naumann, F. L., Price, R. S., & Sanders, R. H. (2005). A comparison of training methods to increase neck muscle strength. Work, 25(3), 205-210. Collins, C. L., Fletcher, E. N., Fields, S. K., Kluchurosky, L., Rohrkemper, M. 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ストレングストレーニングは脳震盪の予防に役立つか? パート1/2
脳震盪は、今注目の話題です。議論のほとんどが、防具の使用についてや、あるいは競技の危険性を減らすためにどのようにルールを変更するかということに注目しがちですが、ルールの変更は長年のファンたちを挑発してしまうかもしれないものです。 対照的に、ストレングストレーニングが脳震盪の発生を減らす可能性があると想像する人はあまりいません。しかし、それがまさに一部の研究者たちが調査してきていることなのです。 研究の中には少し分かりにくいものもありますが、私はストレングストレーニングが脳震盪の発生を減らせるかもしれない理由についていくつか考えがあります。 脳震盪とは何か? 見解報告書では、通常脳震盪を以下のように定義しています: 「生体力学的力により引き起こされる、脳に影響を及ぼす複雑な病態生理学的過程(McCrory et al. 2013)」 あなたは「生体力学的力により引き起こされる」という部分を「頭を強く打たれること」と解釈したくなってしまうかもしれませんが、実際にはそれは少し間違っています。 スポーツ医学研究を定期的に読んでいない人が知ったら驚くかもしれませんが、事実、脳震盪を引き起こすには、生体力学的力が直接頭に与えられなくてはならないというわけではないのです。実際に同じ見解報告書の中で下記を知ることができます: 脳震盪は、頭部へ伝達される“衝撃的”力を伴う頭部、顔、首、あるいは身体の他の部位への直接の強打によって引き起こされる(McCrory et al. 2013) 私はスポーツ医師である仲間たちから、実際に多くのスポーツでは頭を打たれることが脳震盪の一般的な原因であると教わっていますが、脳震盪は頭を強く打たれなくてはならないという考えは正確ではないのです。 たとえそうだとしても、このことはあなたに何が脳震盪を本当に引き起こしているのだろうか?と考えさせませんか? 脳震盪を本当に引き起こすものは何か? 脳震盪は、与えられた外力によって頭部が大きく加速または減速をすることで起こります(Broglio et al. 2010; Blennow et al. 2012)。この外力によって頭部のスピードが突然変えられると、脳はそれまで進んでいた方向に進み続け、それによって内的な力が生じることになります(Guskiewicz & Mihalik, 2006)。 先ほど言及したように、これらの外力は、何も装着していない頭部への強打のように直接与えられることもあります。また、それらの外力がむち打ち効果で身体の別な部位に間接的に与えられる、ということも稀にあります(Tucker, 2014)。 生体力学的に、私たちは頭部に与えられた加速または減速を、三つの運動面(矢状面、前額面、そして水平面)に分解して評価することができます。文献では、よくそれらを直線的運動(矢状面または前額面)と回旋的運動(水平面)として分類しています(Meaney & Smith, 2011)。これらの加速または減速によって、剪断荷重と圧力の両方が脳にかかります。 回旋的運動の方が脳内でより大きい剪断力を生み出す能力が高い可能性があるため、回旋的運動は直線的運動よりもわずかながら脳震盪を引き起こす可能性が高いようです。どちらのタイプの運動も脳震盪を引き起こしますが(Broglio et al. 2010)、回旋的運動の方がより大きなダメージを与えると考えられています(Zhang et al. 2004; Kleiven, 2007; Forbes et al. 2012)。 正確なメカニズムが何であれ、私たちに必要なものは、衝撃中にエネルギーを吸収するのを助けることのできる何かのようです。それによって頭部に伝達される運動エネルギーをより小さくし、身体の他の部分でもっと消散されるようにできるでしょう。 もしかしたら、首のストレングストレーニングがその役目を果たせるでしょうか? 首のストレングストレーニングによって、頭部に影響を及ぼす衝撃中により多くのエネルギーを吸収できるようになるだろうか? もしストレングストレーニングが衝撃中にエネルギーを吸収する筋肉の能力を高めることができるのであれば、それはいくらかの脳震盪が起こるのを防ぐのに役立つかもしれません(Barth et al. 2001; Cross & Serenelli, 2003)。 私たちは、下半身のストレングストレーニングが、ドロップジャンプを含む多くの運動動作において筋肉のエネルギーを吸収する能力を高められることを知っています。 また、私たちは、このストレングストレーニングによって向上したエネルギーを吸収する能力は、筋力の向上によって引き起こされること、更に具体的に、特定の伸張性筋力の向上によるものであろうと推測しています。 それでは、特定の首のストレングストレーニングエクササイズは、運動エネルギーが頭部に届く前、あるいは衝撃が直接頭部に与えられたときのいずれかにおいて、それが運動エネルギーを吸収する能力を発達させるのに役立つのでしょうか? その可能性は大いにあります。 研究は、この質問を様々な方法で調査することができます。 第一に、私たちが電極で計測することのできるアクティベーションの度合いは、筋肉が生み出す力の量と関連していることから、筋電図(EMG)調査は、頭部の加速の要因となる衝撃中の首の筋肉の機能を見るための手段を提供してくれます。 第二に、関連性を調査している観察調査は、首の筋力がより強い人たちは、衝撃中に受ける頭部の加速がより小さくなる傾向があるかどうかを私たちに示してくれます(もちろん、首の筋力があるからといってそれが使われているという保証はないのですが)。 第三に、介入を用いた長期的調査は、頭部に影響を及ぼす衝撃中に経験する頭部の加速量を、首の筋力トレーニングが実際に変化させるかどうかを教えてくれます。 首の筋肉のより大きいアクティベーションは、衝撃中の頭部の加速を減らすか? 筋電図調査は、私たちに運動中の筋肉の習性について多くのことを伝え、またそれは頭部に影響を及ぼす衝撃中の首の筋肉を調査するとき特に有益です。 例えば、ハムストリングがスプリントで着地(グラウンドコンタクト)する前にプレアクティベーションをする時と同じように、首の筋肉と僧帽筋は、サッカーボールをヘディングする際、ボールが当たる前にプレアクティベーションをします(Bauer et al. 2001)。 このことは、衝撃時に放出する前に弾性エネルギーを蓄える、首の筋肉の伸張性収縮を伴う準備反応があることを示唆しています(Dezman et al. 2013)。この準備反応は、なぜ差し迫った衝撃への認知が頭部の加速を減らすのかを説明しているかもしれません(Kumar et al. 2000)。 加えて、首の筋肉のより高いアクティベーションは、制御試験での頭部の加速の減少と関連しており(Eckner et al. 2014)、衝撃時に首の筋肉のアクティベーションを高めるためにマウスガードを噛みしめることにより、ラグビーのドリル中(Hasegawa et al. 2014)、そしてサッカーボールをヘディングした時(Narimatsu et al. 2015)の両方において、頭部に与えられた加速が減少しています。 マウスガードを噛みしめることで頭部の加速は減少する 筋肉のアクティベーションはその筋肉により生み出された力に関連することから、これらの発見は、衝撃時に首の筋肉によって発揮されたより大きな力が頭部の加速の減少を導くことを示唆しています。 より大きな首の筋力は衝撃中の頭部の加速を減らすのか? 観察調査では、首の筋力がより高い人は、頭部に影響を与える衝撃中に受ける頭部の加速がより低いのかどうかについて知ることができます(上でも述べたように、単に筋力を持っているからと言ってそれが使われるという保証はないのですが)。 この調査は、一セッション中(横断調査)あるいは競技シーズンを通して(縦断調査)、首の筋力及び頭部の加速についてのデータを記録することによって行うことができます。 Tierney et al. (2005; 2008)は、二つの似たような調査の中で男女のグループを比較し、首の筋活動を事前に始動し、最大能力のより高い割合まで上げていたにも関わらず、女性のピーク加速が男性よりも大きかったことを発見しました。これは女性の首のサイズがより小さいことに加え、首の筋肉の最大等長性(アイソメトリック)筋力がより低いからかもしれません。複数の研究が、女性は男性よりも脳震盪の受傷リスクが高いことを示唆しているように、これは極めて重要なことです(Covassin et al. 2003; Dick et al. 2009)。 他の研究者たちは、一回のテストセッション中の単一被験者グループ内における、頭部の加速と首の筋力との関連性を調査してきました(Dezman et al. 2013; Schmidt et al. 2014; Gutierrez et al. 2014; Eckner et al. 2014)。彼らは相反する結果を報告しており、非アスリートを使った2つの研究では、より大きな首の筋力は頭部の加速の減少と関連していないと報告しており(Dezman et al. 2013; Schmidt et al. 2014)、またコンタクトスポーツのアスリートにおける2つの研究では、その関連性があることを発見しています(Gutierrez et al. 2014; Eckner et al. 2014)。 シーズン開始時の首の筋力を評価し、その後経時的に頭部の加速を測定した別の研究では、2つの変数の間に関係は見つかりませんでした(Mihalik et al. 2011)。しかしながら、調査の対象者が皆同じ数、または同じような性質の衝突を受けているわけではないことは明らかであり、シーズン中のプレー固有の変動性は、これらの調査結果を評価するのを難しくしています。 全体的に見て、このことは、首の筋力は一要素であるとはいえ、常習的に頭部の加速を受けているアスリートの被験者は、衝撃に対し身構えるために首の筋力を十分に使うことがより良くできるということを示唆しているでしょう。その一方で、トレーニングを積んでいない人たちは、頭部の加速に抵抗するために首の筋力を効果的に使うことができない可能性があり、このことが頭部の加速と首の筋力との関連性を減らしてしまうのかもしれません。 参照 Barth, J. 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