マイクロラーニング
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多くの整形外科手術は効果がない パート2/2
(パート1はこちらへ) 腰部の手術 膝同様に、腰部にかなり大きな構造的損傷がありつつも痛みを伴わないことに関する豊富なエビデンスは存在しています。更に、腰部には特に明白な損傷がない時であっても痛みも持つこともあります。事実、これはかなりよく見られることであり、慢性腰痛のほとんどは、“非特異的”と識別される、つまり、その痛みは力学的または構造的な要因では説明できないということを意味しています。腰痛と腰部の構造的損傷間には、あまり関連性がないにも関わらず、MRIに現れたあらゆる損傷を修正するための手術は数多く存在します。手術は保存療法よりも優れているわけではありませんが。 例えば、椎体形成術は骨折した椎骨に骨のセメントを注入することで腰痛を治療しようと試みるものです。2003年に出版された研究では、手術後6週間において、全く治療を行わなかったと同様の効果を表したことを示しています。(8) 2009年、骨粗鬆症に関連する骨折への偽手術と同程度の効果があったことを2つの研究が報告しています。(9) 腰椎固定術は、一般的な術式であり、神経のような感受性の高い構造との接触をすることのないように、椎骨を安定させることを意図したものです。2013年、Spine journal は、認識的行動セラピーやエクササイズのような手術以外の治療と脊椎固定術を比較した研究論文を出版しました。この研究では、長期的な結果における差異がないことを発見しており、保存的療法やエクササイズに対して“慢性腰痛患者への腰椎固定術の適用は好意をもたれるべきではない。”と結論づけています。(10) 2014年のあるメタ分析は下記のように結論づけています: 腰椎の変性疾患を持つ患者の、慢性腰椎による認識された身体不全の低減において、腰椎固定術が保存的療法よりも効果的ではないという強力なエビデンスが存在する。この題材に関するさらなる研究が、この結論に考慮するほどの影響を与えることはないであろう。 (11) 膝の手術に関して、手術の相対的な効果の低さを示す研究結果が実践に影響を与えるのには時間がかかっています。国際的に著名な解剖学者であり、疼痛専門家であるニコライ・バグダックは、次のように説明しています: 外科医その他は、手術が腰痛に効果的であると信じている。彼らのこの信念は、自らの経験、あるいは主観的研究に基づいたものである。この信念は、おおむね詳細に報告された臨床実験の結果に立証されているものではない。これらの臨床実験は、手術の効果を得られている患者は一部であることを表示している。 (12) 肩の手術 肩の手術に関する研究は、同様の(しかし多少明確性にかける)パターンを示しています。MRIが一貫して示すのは、痛みを持たない多くの人たちにおいて、回旋腱板損傷や、肩の構造の損傷がみられるということです。この事実にも関わらず、肩の痛みを説明する一般的な診断は、回旋腱板損傷あるいは、肩峰による回旋腱板の“インピンジメント”を含んでいます。 これらの状態を修復するための手術は、回旋腱板修復、あるいは肩峰の一部を切除する肩峰形成術を含みます。アメリカ合衆国において、これらの手術は、毎年ほぼ50万件近く行われていますが、これらのうちのほとんどは外傷ではなく変性による損傷です。(13) これらの手術は、エクササイズや休息よりも効果的なのでしょうか?これに関するエビデンスは、腰部や膝と比較して明確さに劣りますが、これらの手術に本当に効果があるのか、そして良い結果は、肩にメカニカルな変化を与えたことに関連があるのか、といった深刻な疑問が生まれています。 特定の患者達に対して、手術はエクササイズよりもかなり有意に効果的であるという可能性を認めないわけにはいきませんが、(14)いくつもの研究が肩峰形成術のような一般的な肩の手術が、エクササイズよりも効果的であるとはいえないことを発見しています。(15) さらに、関節唇修復および二頭筋腱固定術は、偽手術より優れているわけではないことも示されています。(16) また、手術が痛みの緩和に効果的であるのは、実際の構造修復のためではないことを示唆するエビデンスも存在します。(17) 修復された手術の一年後に撮影された回旋腱板のMRIは、多くの場合、患者の回復にも関わらず、再び断裂している状態を示します。Dr.ローレンス・ガロッタによれば、“回旋腱板が損傷している時、全ての痛みと機能不全は回旋腱板の損傷に起因すると考えるが、その損傷を修復し状態が良くなったと感じる場合でも、時に、超音波やMRIを撮ってみると、回旋腱板は、手術前と全く同じ状態である。”(18) British Journal of Sports Medicineの 掲載されているブログ投稿は、この状況を次のように要約しています:“近年のエビデンスに基づけば、[肩の痛み]の治療としての手術的介入の効果は、見せかけの過大評価されたもののようである。”(19) 結論 はっきりとさせておきたいのですが:上記の内容は、私たちが整形外科医を信頼すべきでないとか、手術は慢性疼痛の治療として決して良いアイデアではないということを意味していると解釈されるべきものではありません。数多くの手術が効果を証明しており、特定の状況においては確実に優れたアイデアです。私は個人的に、担当の外科医から現在のエビデンスの状況、そして様々なアプローチの良い点と悪い点に関する優れた倫理的なアドバイスを受け取った人たちを数多く知っています。そしてまた、慢性痛に対しての手術的介入の劇的な効果をはっきりと得ることができた人たちも数多く知っています。一方で、私はまた、効果的でないことが証明されている手術を受け、関連のある研究に関するアドバイスをもらえず、最終的に良い結果を得ることができなかった人たちも数多く知っています。 ここで覚えておくべき主なポイントは、医学界において、慢性痛の治療の方法に関するいくつかの大きな盲点や偏見が存在するということです。疼痛の説明と治療を、より重要である複合的な神経生理学を無視して、常に単純な構造の“不全”に言及することに求めようとしています。臨床家は、これらの偏見に気づき、その治療方法を改善することを助けることができるように、疼痛の複合性に関してできる限り学習すべきです。そして慢性痛の患者達は、手術を受ける前に担当の外科医に、いくつかの良い質問を問いかけるべきなのです。 参照文献 8. Diamond, Terrence H, Bernard Champion, and William A Clark. 2003. “Management of Acute Osteoporotic Vertebral Fractures: A Nonrandomized Trial Comparing Percutaneous Vertebroplasty with Conservative Therapy.” The American Journal of Medicine 114 (4): 257–65. doi:10.1016/S0002-9343(02)01524-3. 9. Kallmes, David F., Bryan A. Comstock, Patrick J. Heagerty, Judith A. Turner, David J. Wilson, Terry H. Diamond, Richard Edwards, et al. 2009. “A Randomized Trial of Vertebroplasty for Osteoporotic Spinal Fractures.” New England Journal of Medicine 361 (6): 569–79. doi:10.1056/NEJMoa0900563. 10. Mannion, Anne F., Jens Ivar Brox, and Jeremy C.T. Fairbank. 2013. “Comparison of Spinal Fusion and Nonoperative Treatment in Patients with Chronic Low Back Pain: Long-Term Follow-up of Three Randomized Controlled Trials.” The Spine Journal 13 (11): 1438–48. doi:10.1016/j.spinee.2013.06.101. 11. Saltychev, Mikhail, Merja Eskola, and Katri Laimi. 2014. “Lumbar Fusion Compared with Conservative Treatment in Patients with Chronic Low Back Pain.” International Journal of Rehabilitation Research 37 (1): 2–8. doi:10.1097/MRR.0b013e328363ba4b. 12. Bogduk, Nikolai, and Gunnar Andersson. 2009. “Is Spinal Surgery Effective for Back Pain?” F1000 Medicine Reports 1 (July): 27–29. doi:10.3410/M1-60. 13. Jain, Nitin B, Laurence D Higgins, Elena Losina, Jamie Collins, Philip E Blazar, and Jeffrey N Katz. 2014. “Epidemiology of Musculoskeletal Upper Extremity Ambulatory Surgery in the United States.” BMC Musculoskeletal Disorders 15 (1): 4. doi:10.1186/1471-2474-15-4. 14. Steuri, Ruedi, Martin Sattelmayer, Simone Elsig, Chloé Kolly, Amir Tal, Jan Taeymans, and Roger Hilfiker. 2017. “Effectiveness of Conservative Interventions Including Exercise, Manual Therapy and Medical Management in Adults with Shoulder Impingement: A Systematic Review and Meta-Analysis of RCTs.” British Journal of Sports Medicine, bjsports-2016-096515. doi:10.1136/bjsports-2016-096515. 15. Ketola, S., J. Lehtinen, T. Rousi, M. Nissinen, H. Huhtala, Y. T. Konttinen, and I. Arnala. 2013. “No Evidence of Long-Term Benefits of Arthroscopicacromioplasty in the Treatment of Shoulder Impingement Syndrome: Five-Year Results of a Randomised Controlled Trial.” Bone and Joint Research 2 (7): 132–39. doi:10.1302/2046-3758.27.2000163. 16. Brox, Jens Ivar, Cecilie Piene Schrøder, Øystein Skare, Petter Mowinckel, and Olav Reikerås. 2017. “Author Response—sham Surgery versus Labral Repair or Biceps Tenodesis for Type II SLAP Lesions of the Shoulder: A Three-Armed Randomised Clinical Trial.” British Journal of Sports Medicine, bjsports-2017-098251. doi:10.1136/bjsports-2017-098251. 17. McElvany, Matthew D., Erik McGoldrick, Albert O. Gee, Moni Blazej Neradilek, and Frederick A. Matsen. 2015. “Rotator Cuff Repair.” The American Journal of Sports Medicine 43 (2). SAGE PublicationsSage CA: Los Angeles, CA: 491–500. doi:10.1177/0363546514529644. 18. Large Study of Arthroscopic Rotator Cuff Repair Reveals Some Surprises. http://www.hss.edu/newsroom_study-arthroscopic-rotator-cuff-repair-surprises.asp 19. “Unnecessary Shoulder Surgery on the Rise - BJSM Blog - Social Media’s Leading SEM Voice.” Accessed October 18. http://blogs.bmj.com/bjsm/2015/01/06/the-sexy-scalpel-unnecessary-shoulder-surgery-on-the-rise/.
痛みやケガ、さらにパフォーマンスのマネジメントにおいて、生体力学が問題になるとき パート2/2
WBM #4:鈍感にするための一時的な動きの修正 (続き) 一時的な動きの修正は、一般的に多くのセラピストの間で使われる、症状によって加減するアプローチです。こうすると痛いので、しばらくの間、他のやり方でしましょう。患者によっては、そうすることによって、自分で痛みを制御でき、できなかったことを始めるのに有効かもしれません。治療の一環として必要かどうか分かりませんが、役には立ちそうです。 ここでは、 “正しい”動き方がひとつしかないと言っているのではありません。むしろ、現時点で痛みが少ない動き方があるということです。シンプルです。 また、痛みを軽減させるのは生体力学だけであると考えるべきではありません。生体力学的な変化は心理社会的要素に大きく影響するかもしれません。私たちは、ただ常に生体力学の枠組みで治療を説明してきました。もしかすると動きを修正することは、認知的な挑戦なのかもしれません。−自分自身のストレングスに直面させられ、自分が感じている痛みの見方を反証させられることに繋がるのです。 リスク:痛みを制御するために動き方を変えるように指導する場合、安全ではあるが有益とは言えない行動をさせてしまうリスクがあります。私達が介入しすぎることもあります。症状によって修正する方法は、リングシフトや仙腸関節の矯正のような非常に極端な介入をしてしまうことがあります。筋膜網とやらに歪みが起こるかもしれないという理由で、耳たぶが一直線に並んだ姿勢でなければならないなどと、患者に思って欲しくはありません。また、動き方のチェックリストを作り、念入りに修正しながらでないと、特定な動きが行えないと思い込んで欲しくはありません。一時的な変更であることを説明するべきだというのが私の意見です。 最後になりますが、症状によって動きを修正する方法による運動学的な変化は、恐怖による運動逃避や動きの制限をする人に対して、良いアイデアではないかもしれません。これらの人たちは、すでにさまざまな動きを避けてきているので、むしろ痛い動きや不安な動きにさらすことが治療になります。ここでも難しい決断を下さなくてはなりません。余計なことをしてかえって悪化させてしまうかもしれませんが、焦って急ぐべきではありません。 WBM #5:習慣になってしまった動きの中断 関係変数:運動制御、ストレングス、ROM #4にとても似ています。これは、痛みがある時に繰り返し同じことを行って、悪化させてしまうという考えです。たぶん気づかなかったのか、または、生体力学的要素に障害が起きて、回避できなかったのか。ここでも余計なことをして悪化させるかもしれませんが、慌てるべきではありません。 さらに、私たちはたいてい自己修正が備わっているものだという考えが根本にあります。もし、あなたが座っていてお尻が痛くなり始めたら、動きます。侵害受容覚が働いて、痛みや損傷が起きる前にアクションを起こします。もし自分で修正できず、動けなかったら、損傷が起こるでしょう(床ずれを思い出してください)。 彼らが苦境について間違ったことを信じ込み、痛みに敏感になるような動きをし続けている患者がいるかもしれません。座っている時も背骨をニュートラルに真っすぐに保ち、背骨は屈曲するべきではなく、常にコアを20%ブレーシングしているべきであると、彼らは信じているのかもしれません。このような場合、彼らは健康的である前かがみの姿勢や様々な動きを避けていたために、習慣となってしまった彼らの動きが、感作を起こしているのかもしれません。 他の例が、ストレングスや柔軟性などが重要であるときの説明をするかもしれません。これから紹介するビデオで、私の娘がバック転とブリッジをしているのをご覧になれます。彼女の股関節はほとんど伸展していませんが、腰が大きく伸展しています。彼女の習慣で、いつも伸展は腰で行っています。もし、彼女に腰痛があって伸展により増悪するとしたら、腰にとっては数日間の“お休み”が与えられるかもしれないテクニックを使ってそのスポーツに取り組むのは難しいでしょう。彼女は、引き続き感作を起こしてしまうかもしれません。前足部で着地をすることでアキレス腱痛や前足部痛、脹ら脛痛を繰り返し起こすランナーは、フラットフット着地に変更して走ることで効果が見られることがあります。しかし、このような簡単な変更を行う能力がなければ、症状/負荷を調節しながら走り続けるのはもっと難しいことでしょう。 これについては、ボート選手に行われた症例研究/ランダム化比較試験がここでご覧になれます。この試験のすばらしいのは、脊椎の運動学は症状によって変化させましたが、その変化をずっと保つ必要はなかったということです。 生体力学的要素に左右される動きの習慣についての例として、股関節外転のストレングスがあります。私たちの多くは骨盤の下制や股関節の内転が増えても走ることができます。ランニングに関連した痛みがあるということは、傷害の宣告ではありません。しかし、いつもと違う痛みが出てきたならば、骨盤の下制に取り組んでみることは、実行可能な選択肢で効果的かもしれません。ランナーにとってストレングスは、反対側の骨盤の下制に貢献する要素かもしれません(ここ&ここ)。つまり、不足部分を強化してみることで、痛みを軽減したり回復したりできる動きに変えられるように促してくれるかもしれないのです。 まとめ ここでは、多くの “かもしれない、たぶん、だろう”という言葉を使いました。痛みを持っている人を助けるにあたり、生体力学はひとつの選択肢であって、唯一の解決策ではないという考えです。生体力学を変えることや“生体力学的”アプローチは有効でしょう。しかし、必ずしも必要ではないかもしれません。私はこう提案します。負荷が大きくなり、組織の損傷が大きな弊害になったら、生体力学はかなり重要になり、選択肢というよりも“必須要素”の一つになるでしょう。また、損傷につながるような外的負荷に反応できるようにするためには、生体力学的テクニックを変えるより、動きに対する準備やトレーニングの最適化、負荷への反応などがより重要になるということも提案します。
多くの整形外科手術は効果がない パート1/2
(パート2はこちらへ) 薬とは異なり、整形外科手術は、その安全性と効果を確信するための厳密なテストを実施する前に一般大衆に提供されています。それゆえに、何百万件もの膝や肩、腰痛のための手術が、その実際の効果を確認するリサーチを行うこともないまま、実施されてしまっています。最近では、こういったリサーチが数多く実施されており、人気のある手術の多くがプラセボ同様であることが明らかにされています。にもかかわらず、これらの手術の多くは現在でもまだ、年間何百件も何千件も実施され続けているのです。 そう、がっかりしてしまうことですが、これは、もしあなたが慢性痛を治療する仕事に関わっていたり、あるいは慢性痛を患っていて手術を検討しているのであれば、知っておくべきことです。関連性のあるリサーチの総論をお読みください(ところで、下記の内容のほとんどは、近日中に出版される私の著書, Playing With Movement からの抜粋となります)。 膝の手術 膝の関節炎はよくみられるものですが、必ずしも疼痛という結果になるわけではありません。重症の関節炎を持っていても全く痛みのない人たちも多く存在しています。そして、膝に痛みを抱える人たちの多くは関節炎を患っていません。こうした関連性の低さにも関わらず、関節炎のための手術はかなり普及しており、その数は年間50万件にものぼります。(1) 15年ほど前に最も一般的であった膝の関節鏡手術は、創面切除術(損傷した軟骨や骨の切除)と洗浄(生理食塩水による洗浄)の2つでした。これらの手術の目指すゴールは関節に炎症を起こしているかもしれない軟骨の粗い断片を取り除くことです。手術の効果は、それほど目覚ましいものではなく、人々は、これらはプラセボに起因しているのではないか?あるいは、エクササイズや理学療法、休息といったより侵害性の低い治療でも効果は得られるのではないか?と考え始めました。 この可能性をテストするために、研究者たちは“偽”手術を取り入れた研究を指揮したのです:あるグループの患者たちは実際に膝の手術を受け、もう一つのグループは、皮膚を切開するのみの偽の手術を受けました。患者たちは、自分が受けたのが実際の手術かを知る由はありません。2~3年間に数回にわたって、これら2つのグループの患者たちは膝の痛みのレベルと膝の機能に関して報告を行いました。どうだったと思いますか?期間内のどのポイントにおいても、偽手術のグループは、実際に手術を受けたグループと同様にうまくいったのです。(2)これは、手術は身体構造ではなく心理学を変えることによって効果があるということを強く示唆しています。 この研究は手術が役に立たないことを効果的に証明したにも関わらず、外科医たちの行動に影響を与えるのには遅延がみられました。それから何年もの間にわたり年間30億円の費用をかけて何百、何千という数のこれらの手術が行われています。(3)これに続く研究では、この手術が、エクササイズ、体重減、市販の痛み止めの使用など、一般常識的介入より優れた効果を提供しないことが確認されています。(4) 創面切除術と洗浄は、あまり一般的ではなくなってきましたが、関節鏡半月板一部切除と呼ばれる術式がこれに取って代わりました。しかし先行の術式同様、この新しい手術も偽手術と同程度の効果しか報告されていません。 2015年、研究者達は膝の関節鏡手術に関する9つの研究論文の結果を要約し、これらの手術は効果があるとすれば少しであり、深刻な悪影響の可能性を持つという結論に達しました。(5) 最近のBritish Journal of Medicine の声明では、膝の痛みに対する関節鏡手術は“手術を支持する中庸の質のエビデンスさえ存在しない、かなり疑問視されるべき行為である”という批判的意見を提供しています。(6) 2017年のある臨床ガイドラインは、次のように述べています:“我々は変性膝疾患を患う患者のほぼ全てに対して、関節鏡手術の使用をすべきではないという勧告をする。さらなる研究がこの勧告を修正することはないであろう。”(7) この抵抗し難い研究結果にもかかわらず、アメリカにおいて関節鏡膝手術は、各年700,000件近く行われる最も一般的な手順であり続けています。(6) なぜこのようなことが起こり得るのでしょうか?単純な答えは、多くの医師達が研究よりも自らの個人的な経験を信頼しているからです。彼らは、保存療法が失敗し続けた後に、手術が劇的な効果を提供したと言うでしょう。これは時に起こることではあるでしょうが、私達は、痛みの起因が膝の構造的変化であることに関してかなり懐疑的であるべきです。慢性的な膝痛の成功する治療は、それが手術であれ、何か他のことであれ、関節の構造を修正することではなく、心理学的あるいは神経学的過程に複合的な変化を生み出すことにあるのではないでしょうか。このポイントは、腰部の手術が、腰痛への純粋に心理学的な介入よりもより大きな効果を与えることがないという発見をした同様の研究によって強く確認をされています。 参照文献 1. Heidari, Behzad. 2011. “Knee Osteoarthritis Prevalence, Risk Factors, Pathogenesis and Features: Part I.” Caspian Journal of Internal Medicine 2 (2): 205–12. 2. Lubowitz, James H. 2002. “A Controlled Trial of Arthroscopic Surgery for Osteoarthritis of the Knee.” Arthroscopy 18 (8): 950–51. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12368798. 3. Why ‘Useless’ Surgery Is Still Popular. http://www.nytimes.com/2016/08/04/upshot/the-right-to-know-that-an-operation-is-next-to-useless.html?_r=2 4. Kirkely, Birmingham, et al. 2008. “A Randomized Trial of Arthroscopic Surgery for Osteoarthritis of the Knee." New England Journal. Vol. 359, 1097. 5. Thorlund, J. B., C. B. Juhl, E. M. Roos, and L. S. Lohmander. 2015. “Arthroscopic Surgery for Degenerative Knee: Systematic Review and Meta-Analysis of Benefits and Harms.” Bmj 350 (jun16 3): h2747–h2747. doi:10.1136/bmj.h2747. 6. Järvinen, Teppo L N, and Gordon H Guyatt. 2016. “Arthroscopic Surgery for Knee Pain.” BMJ (Clinical Research Ed.) 354 (July). British Medical Journal Publishing Group: i3934. doi:10.1136/BMJ.I3934. 7. Siemieniuk, Reed A C, Ian A Harris, Thomas Agoritsas, Rudolf W Poolman, Romina Brignardello-Petersen, Stijn Van de Velde, Rachelle Buchbinder, et al. 2017. “Arthroscopic Surgery for Degenerative Knee Arthritis and Meniscal Tears: A Clinical Practice Guideline.” Bmj, j1982. doi:10.1136/bmj.j1982.
痛みやケガ、さらにパフォーマンスのマネジメントにおいて、生体力学が問題になるとき パート1/2
私は、生物心理社会学の専門家です。 痛みがある人にとって、たいてい生体力学は重要になると思います。 これら二つの事は相反してはいません。 生体力学が痛みやケガの要因になる状況について、ひとつの見解を下記に示したいと思います。つまり、「生体力学が問題になるとき」(When Biomechanics Matters:WBM)についてです。これに関するビデオ講義がウェブにあったと思いますが、アップされている自分の講義をすべて把握しているわけではありません。下記に挙げた状況のほとんどは、重複したり、互いに影響を打ち消し合ったりします。みなさんには自分なりの分類方法があるかもしれませんが、ここでは私のものを紹介します。 WBM#1: 高負荷がかかる活動 関係する要素:テクニック/運動の質、ストレングス、ROM、準備度。 要点:外的負荷が、組織の負荷耐性能力を超えると、損傷が起こる。 この例は、ハムストリングの挫傷でよく見られます。高負荷がかかればハムストリングは断裂を起こす一方、ハムストリングのストレングスはケガのリスクを軽減するのに一役買います。他のほとんどの筋断裂にも同様なことが言えるでしょう。ストレングスの基礎は、重要であるように思われますが、それが唯一の要素ということではないと考えます。しかし、生体力学的な影響(ストレングス)が大きいことを示す好例です。 これに関連した例として、非接触のACL(前十字靭帯)断裂があります。リスクを軽減するための要素は、ストレングスだけではなく、テクニックや動きの質もあります。たいていの膝は、動的な外反方向への低負荷に耐えられ、さらに膝が25度以上屈曲していれば動的な外反方向への高負荷にさえも耐えられるとされています。しかし、状況によっては、膝の外反方向への動的負荷が、ACLにとって“過負荷”となってしまい、損傷を起こすことがあるのです。これは、ひとつの生体力学的要素(ストレングス)が保護的に働き、その他の生体力学的要素(テクニックや準備、筋収縮のタイミング)を無視してしまうことを“可能”にする良い例です。その原理を証明するものとして、ACLに関するFIFA-11予防ブログラムがあります。これらは、ケガのリスクを軽減するとされていますが、そのリスクの減少を調節する要素を研究者が測定してみると、関節運動学/技術に何の変化も見ることができません。そのため、選手たちは未だにクオリティーに問題がある動きをしながらも何とか対処しています。 WBM#2:パフォーマンス そうです、あなたがどのように動くかは、パフォーマンスに影響します。これは、生体力学が最も重要となる分野かもしれません。ジャンプやリフティング、スローイングなどすべては、動きの質に影響を受けます。しかし、痛みやケガは別の話です。 WBM#3:準備は質に勝る - 長期に対する短期の仕事量の比の重要性 関係する要素:適応性と適応能力の限界 自分の身体がこれからどのようなことにさらされるのかに対して、準備しておく必要があります。私たちは身体にかかるストレスに適応することができるとみなし、また、そのストレス自体は本質的に悪いものではありません。このことは、生物心理社会的なストレス要因範囲のあらゆる側面でみられるでしょう。 長期に対する短期の仕事量の比は、仕事量やストレスが一定でゆっくりと増していく過程を経験していれば、急激にかかる負荷でも大きな変化に耐えられることを示唆しています。これは、人間であることの根本です。身体は、ストレスにポジティブに反応します。もし身体が準備していた以上の生体力学的な負荷がかかれば、ケガのリスクは増えるでしょう。 しかし、私達の適応能力は限られており、適応速度にも限界があります。これは、職場環境によく見られ、累積性負荷の合算が腰痛のリスクを高めます(興味深いことに、負荷の持ち上げ方が原因ではなかった)。また、筋断裂のようなケガにもよく見られ、個人レベルで損傷を予知する能力がなかったとはいえ、全力疾走による負荷がケガのリスクを高めるかもしれません。 この適応性モデルの興味深いのは、それが力学的および物理的な仕事量に限ったことではないということです。私たちの適応性、物理的な仕事量への反応、そして“準備度”は、その他の心理社会的ストレス要因の影響を受けるのです。これは、ソリガード氏の最近の論文で詳しく説明されています。 WBM#4:鈍感にするための一時的な動きの修正 関係する要素:運動制御、ストレングス、ROM、動きによる鎮痛 ここでも、これは他の要素と相互関係にあります。痛みを感じるときは身体/自分を休ませてあげればいい時もあります。ストレスは適応を起こしてくれる良いものであると考えますが、しばしば負荷を手控えたい時もあるかもしれません。 セラピストとしての私たちの挑戦は、“さらす”のか、または、“守る”のかという問に答えなくてはならないことです。“さらす”ということは、プラスの適応を起こすために新たな刺激が必要とされることです。そして、“守る”ということは、刺激となっているものを取り除くことをより重要視するということです。または、さらされることに対して、まだ“準備”ができていないこともあるかもしれません。 この例は、痛みに対処するために症状によって修正していくアプローチにしばしば見られます。急性期の組織の挫傷であれば、サポートで負担を減らし刺激を調節するのが適切かもしれません。また、継続的な痛みであれば、動きを変えることで、自分自身で痛みが制御でき、行えなかった活動や日常生活を取り戻せるかもしれません。 症例: 6ヶ月間の膝痛を患っているランナーがいます。ランから休みを取ってエクササイズをし、徐々に体調を回復しようとしています。膝はまだ痛みます。歩幅をあれこれ変えてみて、歩行速度を7.5%上げました。これによって、膝にかかる負担が約10−15%変わります。そして、なぜか痛みを感じずに2Km多くは走ることができました。すばらしい。この調子。 腰痛患者がいます。動けないほどではないようです。運動恐怖症はほとんどありません。痛みを怖がってはいません。ただうんざりしてしています。しゃがもうとして前屈するたびに、いつも痛くなるようです。脊柱をニュートラルにしていれば比較的痛くないので、脊柱があまり屈曲しない方法で、スクワットやジャンプ、他の有効な運動を指導することができました。痛みも少なかったようです。これは、痛みの感覚を減らすための一時的に行う対処であると説明します。脊柱の屈曲はそもそも悪いことではありません。しかし、なぜか前屈を繰り返し痛みに敏感になってしまったのです。 頭上に腕を挙げると肩に痛みが出る患者がいます。授業中に質問のために挙手したり、壁にペンキを塗ったりするので、この動作を繰り返し行っています。肩をすくめてから腕を挙げると痛みが緩和します。包括的な肩の能力のプログラムの一部として、腕を挙上する際、このような単純で一時的な修正を行います。
ペインばかりでゲインなし:高強度トレーニングへの執着は私達の期待に背いた。パート3/3
“回復負債”:フィットネスが失敗してしまうところ 私たちの代謝に限度があるという性質と身体のエネルギー要求を考慮する時、強度マインドセットに基づいて構築されたトレーニングプログラムの数多くがなぜ失敗してしまうのかを理解するのは容易であるはずです。 下記の図のトレーニングプロセスの異なった段階を見て、最も際立つ大きなポイントは、トレーニング、回復、フィットネスの向上を駆動する身体の適合は全て、膨大な量のエネルギーを必要とするということです。 ハードにトレーニングすればするほど、より長い時間トレーニングすればするほど、脳は働いている筋肉とその他の組織により多くのエネルギーを分配しなければなりません。と同時に、より大きく強く、そして持久能力を増強するために、全ての細胞を修復し、筋肉、ミトコンドリア、腱、何兆個もの細胞を再構築するには、膨大な量のエネルギーを必要とするのです。 私達の代謝が1日に生産できるエネルギー量には限度があることから、どれだけの食物を食べたとしても、どれだけの休息をとったとしても、週に3,4,5回の高強度トレーニングセッションを積み重ねたとしたら、何が起こると思いますか?これらのトレーニングと日々のストレスが組み合わさった時にはどうなるでしょうか? 答えはシンプル:私が回復負債と呼ぶ状態になってしまいます。 回復負債は、トレーニングに関わる全ての細胞と組織の回復と修復に必要なエネルギーを与えることなく、多大なストレスを与えた時に起こるものです。来る日も来る日もジムに通って、頑張ってウエイトを持ち上げ、終わることのないインターバルを実行し、疲弊ギリギリのところまで頑張り続けても、期待したような結果を決して得ることができないように思えます。 私が過去数年間に発見したのは、人々のフィットネスゴールの達成を邪魔している何よりも大きな唯一の理由は、まさしく:彼らは常に回復負債の状態で生活しているということなのです。私は、これを証明することのできる15,000人以上の人達の15,000,000にも及ぶ心拍変動データも所有しています。(これに関しては次回の記事でより詳細を述べます) データは、ほとんどの人達は沢山の努力をしても、たった一つの理由のために、その報酬を得ることができていないことを提示しています:彼らは多大なエネルギーをトレーニングと日々のストレスに費やしていて、回復や身体の再構築にまわせる余剰が十分に残っていないのです。 忘れないでください、回復と再構築のプロセスが実際にフィットネスの向上へと導くのですから、これが起こらなければ、どれほど努力をしたとしても結果を得ることはできないのです。 “やり遂げること”のネガティブな結果:そしてあなたの身体がいかに反撃するのか 強度マインドセットが不可避的に多くの人たちのフィットネスの失敗を導く理由はこれである、というのが真実です。もしあなたが、結果を駆動する最も重要なことは強度であるという信念でスタートすれば、身体が追いついていけなくなるまで、更なる強度を加え続けていくことになるでしょう。 常に疲れて筋肉痛があると感じ始めますが、それでも頑張り続けます。しつこい怪我が忍び寄り始めますが、それでも頑張り続けます。あなたの筋力も持久力も、あまり向上はしていませんが、それでもあなたは、努力が足りないからだと自らを説き伏せます。仕事でストレスを抱えよく眠れていませんが、あなたはジムで汗を流してストレスを解消するのが最良の方法であると考えています。 遅かれ早かれ、かなり大きな回復負債を抱えるようになれば、身体は反撃を始めます。脳内のドーパミン機能が変化し、より沢山食べてあまり動きたくなくなります。ジムに行くモチベーションを失う、あるいはジムには行くけれども頑張れなくなります。最終的に、ただ何かやっているフリをするだけということになってしまいます。 これが実際に何百万人もの人達が経験している日々の苦しみなのです。努力をしているのに結果を得ることができない。頑張れば頑張るほど、最終的には調子が悪くなる。 これはまた、私がブルガリアントレーニングプログラムを2回目に行った時に、同様の結果を得ることができなかった理由そのものでもあります。もう大学生ではありませんでした。私は、毎週60時間以上働き、ビジネスを運営するというストレスを抱えていました。日々のストレスは、回復から膨大なエネルギーを取り上げ、私の身体は単にそれに追いつくことができなかったのです。 幸いなことに、過去数年間に渡り、私はトレーニングやフィットネス全般への全く新しいアプローチの方法をまとめました。より効果的で、身体がいかに働くのかに関する本物の科学に基づき、全く異なったマインドセットからスタートするような… 回復駆動フィットネス:トレーニング、食事、生き方の新しいモデル 強度ではなく回復に基づいたフィットネスへのアプローチを構築するというアイデアは、思いがけず見つけたものではありません。これは一時的な流行やからくり、あるいは中身のない約束やセールストークではありません。もっと睡眠をとろうとかリラックスに時間をかけようというような、昔から使い古されたものでもありません。皆さんももうすぐ発見することになりますが、回復というのはそれ以上のものなのです。 フィットネス業界で、あらゆるレベルと能力の人々をトレーニングし、正解中のコーチ達、フィットネスの専門家達、研究者達と話をすることに費やしてきた20年近くに渡る私自身の経験から、そのアイデアは生まれてきました。そしてまた、過去6年間に渡り収集してきた15,000,000以上の心拍変動計測のデータベース(世界一大きい)から計算をするためのアルゴリズムを学ぶために機械を使うことからも生まれたのです。 私の経験とデータの両方が明白に示すのは、トレーニングに向けられる強度のみではなく、回復に向けられるエネルギーに駆動された結果を考慮するという、新しいアプローチが必要とされているということです。 回復駆動のフィットネスとは何か? 最も簡単に言えば、回復駆動のフィットネスとは、ただ単に強度を最大化するのではなく回復を最大限に高めることに基づいた、トレーニング、食べ方、日々のストレスのバランスの取り方の方法への新しいアプローチです。 回復駆動のフィットネスは、フィットネスゴールの達成のための最も効果的な方法は、ただトレーニングをハードに行うのではなく、身体をより回復しやすい状態にシフトさせることを助ける特定の戦略やメソッドを取り入れることであるというマインドセットからスタートします。 回復の状態においてのみ、身体はそのエネルギーをかつてないほどに強くするための回復と再構築に向けることができるのです。 今後の記事の中で、私は皆さんにフィットネスへの全く新しいアプローチの方法をシェアしたいと思います。回復駆動のフィットネスの設計図をご紹介し、強度に基づいた計画では決して得ることのできなかった、より素晴らしい結果を届け、全く新しい方法で回復を促す、トレーニング、栄養、そしてライフスタイルの計画の構築方法をご紹介します。 今後カバーすることのいくつかをご紹介しましょう: 身体を回復ゾーンに推し進め結果を加速する、回復駆動トレーニングセッション(HPRT)の使い方に関する段階的なガイド。 様々なデータに迷ってしまうことなく、回復を計測し追跡するテクノロジーの活用方法。 一般的なダイエットや栄養のアプローチが、私達の回復を促進するのではなく遅延させてしまう理由。 身体がワークアウトから多くの成果を得ることを助けるために、すぐに実行することができる最も効果的なライフスタイル戦略。 回復負債を防ぎ身体のエネルギーを回復に方向づけを助けるために利用できる、ターゲットを絞ったサプリメント。
ペインばかりでゲインなし:高強度トレーニングへの執着は私達の期待に背いた。パート2/3
狩猟収集民族社会で生活している人達が、体重比で修正された時に、1日あたりほとんどのアメリカ人よりも、より多くのカロリーを燃焼することがないと示唆するのは、クレイジーに思えるかもしれませんが:それがリサーチの結果なのです。 このエネルギー消費の新しいモデルは、私達が1日に燃焼できるカロリー数には上限があるということを明確に示しています。私達がどれほどアクティブであろうと、私達の身体が生産することのできるエネルギー量によって私達の代謝は最終的に制限を受け、そして私達が燃焼できるカロリー量も同様に制限を受けるということがわかりました。 研究者達が、マイスにおける様々な活動レベルとエネルギー消費を二重標識水を用いて分析した“Increases in Physical Activity Result in Diminishing Increments in Daily Energy Expenditure in Mice:マイスにおける身体活動量の増加は結果的に1日のエネルギー消費量値増加減少につながる“と題された同様の研究においても、この働きがよく理解できます。 ご覧の通り、中程度に活動的であったマウスは、実際、運動不足のマウスよりも多くのカロリーを燃焼することになりました。一方で、高度に活動的であったマウスは、中程度に活動的なマウスと基本的に同じ量の総カロリーしか燃焼しなかったのです。 ここでも、この研究は私達の代謝には限度があり、私達の代謝が生み出すことのできるエネルギーの最大量は、私達が理解していたよりももっと固定されたものであるというモデルを支持しています。 エネルギーと、その活動との関係性に関する新しい見方の重要性は、どれだけ誇張してもし過ぎることはない程に、多くのことを説明してくれるものです。 エネルギーのジレンマと、フィットネスゴールについてのエネルギーの重要性の理由 1日に私達の身体が作り出すことのできるエネルギーには限りがあることがわかったところで、常にエネルギーを要求する様々な身体のプロセスを考えてみましょう。これらの要求を3つの大きなカテゴリーにグループ分けすることができます: 生命維持に必要な生物学的機能 身体活動とストレス、そして 組織修復と適合 最終的に、私達の脳とその複雑な計算のパワーが、生み出したエネルギーをどこに分配するかを決定づけることになります。 脳の一番の優先順位:生命を維持すること エネルギー要求の3つのカテゴリー中、生命維持に必要な生物学的機能(心臓、肺、脳のような重要な内臓器が必要とするエネルギー)は、当然ながら生存のために最も重要なものです。 これらの組織が必要なエネルギーを得ることができなければ、あっという間にゲームオーバーとなってしまうでしょう。 このために、身体が生存するために1日に必要な最低限の量が存在することから、脳の第1優先順位は、常にこれらのエリアにエネルギーを与えることになります。 脳の2番目の優先順位:活動にパワーを与え、人生のストレスに対応する 2つ目のカテゴリーである身体活動とストレスは、日々の変動がもっとも高く、そして私達が最も制御できるものでもあります。ワークアウトをするかソファに座っているかを選ぶことができますし、階段を登るかエレベーターに乗るかも選択できます。 私達が身体的により活動的であれば、働いている筋肉やサポートする組織により沢山のエネルギーが必要とされることは、かなり明白でありながら、ほとんどの人たちが十分に理解していないのは、メンタルストレスがどれほど私達のエネルギー分配に影響を与えるのかということです。 それが迫りくる仕事の締め切りやテストであっても、経済的な心配や家族のストレス、あるいは自分の前にいる車の運転手のスピードが遅すぎたりするからであっても、私達がメンタル的なストレスを受けている時はいつでも身体のストレス反応が活性化されることを知っていることは重要です。 こうしたことが起こると、血液中にストレスホルモンが放出され、血圧は上昇し、脳はエネルギー貯蓄を動かすように働きます。これはワークアウトのような(あるいは熊に追いかけられるとか)身体的に要求度の高いことに対応している場合に必要なことそのものなのですが、ストレスを与えているのがスピードの遅い運転手である場合には、あまり良いことではありません。 なぜなら、運転手が邪魔にならなくなった後、あるいはテストが終了した後、または支払いを終えた後にリラックスすることができたら、身体は一旦動かしたけれど必要なくなってしまったエネルギーを元に戻さなければなりません。貯蓄から血中へ、そしてまた貯蓄へとエネルギーを動かすこと自体にもエネルギーを要します。 他の方法で考えると:労働者が常に大きくて重い箱を上の棚から降ろした何分後、あるいは何時間後にまた上の棚に戻している倉庫をイメージしてみてください。彼らの貴重な(限られた)時間を費やすもっとも価値のある方法ではありませんね。 別の言い方をすれば、メンタルストレスには実際の生物学的コストがかかり、それはエネルギーとして支払われるということです。私自身の経験では、人生のストレスはかなりコストがかさみ、フィットネスや、またはその欠如において、ほとんどの人たちが認識したことがない程に、それは大きな役割を果たしています。 脳の最後の優先順位:フィットネス向上(身体を大きく、強く、脂肪を減らしカッコ良くする) エネルギーを要求する3番目で最後の代謝活動は、組織の修復と適合です。ハードにトレーニングしてフィットネスを向上させようとしている時、十分なエネルギーがここに分配されていることは間違いなく重要です。筋組織をより大きく強く再構築するために使われ、持久力を向上させる新しいミトコンドリアを作り出し、調整力やスキルを向上させることに繋がる脳の変化を生み出すために使われるエネルギーです。 もしあなたのゴールがトレーニングから最大の効果を得ることなら、あなたの基本的な代謝のニーズと身体的活動による要求が満たされたうえで、十分な余剰がある時にのみ、脳はより大きく強い組織を構築するためのエネル ギーを提供するのだということを認識することは重要です。 あなたの脳は、より重いウエイトを持ち上げ、より早く走り、あるいは水着が良く似合うようにするために、生命を維持するのに必要なエネルギーを犠牲にすることは決してないのです。
ペインばかりでゲインなし:高強度トレーニングへの執着は私達の期待に背いた。パート1/3
大学で、最初にストレングス&コンディショニングの領域に足を踏み入れた時、私は強くなることに取り憑かれていました。可能な限りに最短の時間で強化することを約束したものなら、手当たり次第見つけて読んだものです。 その過程の中のどこかで、偶然ブルガリアのオリンピックウエイトリフター達が1980年代にトレーニングをして数多くのメダルを獲得した方法に基づいていると主張するストレングスプログラムに出会いました。そのプログラムの正確な名称は思い出せませんが、著者は筋力構築の本当の秘訣は、毎日2-3回の短い高強度のトレーニングセッションを週に6日行うことであると主張していました。 当時、私にとってこれは理にかなっているように思えました。ノンストップで莫大なボリュームでトレーニングすることが、本当に、とてつもなく強くなるための秘密のレシピなのかもしれない?と。 これは一度も試したことがなかったので、試してみる価値はあると判断して取り掛かってみました。それからの12週間、私はトレーニングばかりしていました…ひっきりなしに。 その結果は?私は実際かなりとんでもなく強くなったのです! 私の主なリフトは、30-40 ポンドあるいは、それ以上向上し、体重は5ポンド増量しました。疑いなく、私は確実に大きくなって強くなったのです。短期間で、効果がありました。 ブルガリア人達は、もしかするとちゃんとわかっていたのかもしれませんね? 異なった時、異なった結果 6年間ほど早送りをしましょう。私は20代半ばで、自分のジムを運営していました。正直に言うと、毎日トレーニングを指導し、ビジネスを構築しようとするのに忙しく、私自身のフィットネスは衰えていました。 かなりの量のコンディショニングは行なっていましたが、弱く感じていました。大学の栄光の日々からは、確実に筋量を失っていました。何かしなくてはならないと決断し、母のガレージにおいてあった箱を次から次へと掘り出して、昔のブルガリアストレングスプログラムを見つけました。 プログラムを更に効果的にすると考えたいくつかの変更を加えて、取り組み始めました。再び、1日に2-3回高重量のリフトをすることを週に6日行ったのです。 この時の結果は?以前と同じではなかった、とだけ言っておきましょう。 この時は、プログラムに完璧に粉砕されました。 最初の何週間かは強くなったのですが…そこからはずっと下り坂でした。関節が痛み出し、常に筋肉痛があり、いつも疲れているようになるのにあまり時間はかかりませんでした。全てのワークアウトを行なって、できる限りハードにトレーニングしましたが、とても“楽しい”と呼べるようなものではありませんでした。 プログラムの半分くらいまで来たところで、ウエイトをリフティングするのがもう嫌になってしまいました。 なぜ“ハードにトレーニングする”ことが失敗に繋がるのか 二度目に何がうまくいかなかったのかを、十分に理解するには何年もかかりましたが、以来これら全ては私が“強度マインドセット”と呼ぶことからスタートすることを認識するようになりました。 強度マインドセットとは何でしょうか? 単純に述べるなら、成功と結果を駆動するための最も重要な変数要素は、“いかにハードにトレーニングするか”であるという考えでフィットネスにアプローチすることです。 このマインドセットは、あっという間に望む結果を見ることができないのであれば、トレーニングのハードさが足りないために違いないと考えることになっていきます。 あるいは、よくあるように、もしハードにトレーニングして幾らかの結果を見ることができているなら、更にハードなトレーニングをすれば、更に良いあるいは更に短期間での結果になる、というように。 結果を引き起こすのは強度であり、ノーペイン、ノーゲインというマインドセットは、フィットネスにおいて長い間存在していますが、過去10年間のクロスフィット、タバタインターバル、ブートキャンプのクラスなどの隆盛は、このマインドセットをフィットネス文化に更に深く、より深く染み込ませることになりました。 残念なことに、強度トレーニングには一つ大きな問題があるのです:うまくいかない 事実、長期的には利益以上に被害をもたらしてしまうことが多いのです。私は、これこそが多くの人達が努力をしても健康やフィットネスのゴール達成に失敗してしまう理由であると認識するようになりました(証拠もあります)。 説明させてください… 全てはエネルギーに尽きるのです。 強度マインドセットが上手くいかない理由に飛び込んでいくためには、エネルギーに関して話すことから始めなければなりません。私たちの身体の何兆個もの細胞の全てが機能し私たちの生存を維持するには、恒常的に限りのないエネルギーを必要とします。 私達の脳も筋肉も骨でさえも、全てが身体のエネルギー通貨であるATPに依存しています。 エネルギーを必要とすることは当たり前であり、ほとんどの人が理解できることですが、トレーニングやストレス、そして回復の全てが直接的にエネルギーとジムでのトレーニングの結果に関連しているのかについては明確さに欠けています。 この関係性のために、強度マインドセットは常に失敗してしまう運命にあるのです… なぜあなたのフィットビットは嘘つきなのか エネルギーに関して、近年明らかになった最も重要なことの一つは、私達の身体が生産できるエネルギーは、私達が認識しているよりもかなり限定された許容量であるということです。ほとんどの人達は、より歩数を多くすれば全体的によりアクティブである、つまりより沢山のカロリーを燃焼し、身体はより多くの総エネルギーを生産していると信じています。 この考え方は、フィットネス業界のどの時代においても、トレーナーからコーチ、栄養士をはじめ全ての人達の間で繰り返されてきたものです。 より沢山動けば、より沢山燃焼する。これはエネルギー消費の加法モデルとして知られています:これは、活動レベルが高ければ高いほど、最終的により多くのカロリーを燃焼するということを小難しげに表現したものです。 このよく知られた概念は、下のグラフでモデル化されています。"other (その他)”は、安静時に燃焼するカロリー量( RMR/安静代謝率)を示し、PAは、身体活動を表します。このモデルでは、より身体的にアクティブであればあるほど、より多くのエネルギー(カロリー)を1日に燃焼します。 身体はこのように働くのだと考えるのは、完璧に理にかなっているにも関わらず、そうではないことを示すエビデンスがどんどん提示されています。新しいリサーチは、代謝に関して、そして様々なレベルの身体活動に身体がいかに適合するかに関する全く異なることを伝えてくれています。 “Constrained Total Energy Expenditure and Metabolic Adaptation to Physical Activity in Adult Humans:成人における制約された総エネルギー消費量と身体活動への代謝適合“とタイトルづけられたリサーチでは、研究者達が、US及びアフリカに在住する5つの異なるグループの活動レベルとエネルギー消費を研究しています。 ダイエット指導者の多くにおける常識として、アフリカの人達は、より伝統的な狩猟収集民的ライフスタイルで生きてきたためにアメリカ人よりもよりアクティブであり、ゆえにより沢山のカロリーを消費するに違いないと言うことでしょう。 しかしリサーチの結果はそうではなかったのです… “自給自足農民や伝統的狩猟収集民を含む、社会経済的発達途上の人々における総エネルギー消費量は、先進国の人々の総エネルギー消費量と類似している。” ここで理解すべき重要なことは、研究者達は、エネルギー消費量(カロリー燃焼)を決定するために、ほとんどの人達が使うであろうフィットビットやその他の加速度計を使用しなかったということです。彼らは、その代わりに“二重標識水”と呼ばれるより洗練されたテクニックを使用しました。 このメソッドは、ただ単に何歩歩いたかではなく、身体の代謝を計測することで、身体が実際にどれほどのカロリーを燃焼しているのかをより正確に反映した測定値を提供します。全てのデータが入力された時、アクティブさの程度とカロリー燃焼量の間の全く異なった関係性が姿を表しました:下の図で表示されているエネルギー消費の制約モデルと呼ばれるモデルです。 手短に言えば、このモデルは、私達の代謝は、私達が常にそうであろうと考えていた方法で働いているのではないことを表しています。もし私達が1日に2万歩歩いたとしても、私達が1万歩歩いた場合よりも、より多くの総カロリーを燃焼することは実際にはないということが判明したのです。 そうではなく、私達が2万歩歩く時、私達の身体は単にその要求に見合うように、その他の生物学的機能からエネルギーの方向を転換するのです:これに関する詳細は、この後カバーします。
背屈:いつ、どこで パート1/2
足部の背屈は、どのようなタイミングで、足部のどのエリアに起こるべきなのか?同タイトルの記事から更に発展させた内容を、グレイインステチュートのGIFTプログラム学長であるデーブ・ティベリオ博士が、チェーンリアクションバイオメカニクスを解説しながら、複雑な足部の動きをわかりやすく解説してくれます。
ファンクショナルエクササイズとは十分でない用語である。包括的能力というのはどうだろうか。パート2/2
バンドウォークは無駄なのでしょうか? そうではありません。バンドウォークはランナーにとって有益なものになり得ます。私は滅多に使いませんが、ランナーがバンドウォークを使ってトレーニングをすることは意味があると思っています。バンドウォークは、「機能」という最も単純なカテゴリーを満たしています。ランナーが必要な筋肉グループを鍛えることができます。こういったエクササイズは、それらの筋肉の能力を高め、おそらく力学的効率性の向上につながり、障害予防にさえ役立つかもしれません。しかし、もしバンドウォークが、ランナーのフォームを実際に変えることに対し機能的に十分であると考えると、残念な結果に終わってしまうかもしれません。 ストレングスコーチやリハビリの専門家にとって、この最後の正当化に関する問題は、それが単純すぎることです。 私たちは治療家として特定のエクササイズに対して特別な知識を持っていると思いたいのです。しかしそんなことはありません。特別なエクササイズはありません。一生懸命に鍛え、賢く鍛え、強くなり、パワーを構築し、忍耐を構築し、能力を高め、耐久性を高め、衝撃を吸収する能力を築き、振動を抑え、あらゆる範囲で筋力を発揮するのです。一般化した、全面的に良質なプログラムを使えば、いい結果が得られるでしょう。アスリートに何が欠けているかを確かめるために何か評価を使用して、その結果をもとに必死にトレーニングをすれば、より良くなるでしょう。しかし、ランニングエクササイズというようなものはないのです。そしてそれは、研究や専門家が勧めていることとは真逆のことです。ストレングス&コンディショニングの専門家(パワーリフティング、オリンピックリフト、矯正エクササイズ、ピラティス、ヨガ、コアの安定性など)を捕まえて聞いても、皆、ランナーを成功に導けると誓うでしょう。彼らは皆おそらく正しく、つまり、特定のランニングエクササイズなどないのです。 では、クラムシェルがより優れているのでしょうか? まさか!クラムシェルは大抵の場合、最悪です。私はかつて思っていた程効果がないために、クラムシェルを嫌っていました。ランナーは決してやるべきではないものだと思っていました。クラムシェルは治療のためのエクササイズで「機能的ではない」と思っていました。 クラムシェルでは、より少数の筋肉しか働かず、寝た状態で行い、運動学的にランニングとは異なり、先述した機能的な原則の多くを満たしていません。しかし、クラムシェルは、バンドウォークとは大きく異なる筋肉を鍛えることができます。これこそクラムシェルが有益なエクササイズに成り得るポイントです。 クラムシェルは、股関節を90度に屈曲した状態で、股関節を外旋させます。90度では、多くの臀筋(大臀筋、中臀筋、梨状筋)の引く方向が変わるため、股関節の外旋を行う筋肉は深部の外旋筋だけになります。この外旋筋の能力を鍛えることは、ランニングに活きる可能性があります。 私はかつてクラムシェルを見下していました。そしてその後、クラムシェルを多くのランナーに試し始めました。多くのポジションにおいて強さを示した何人ものランナーが、クラムシェルを行う際に震えていました。おかしいですが、素晴らしい片脚スクワットができて、股関節の外転も強いのに、10回か15回のクラムシェルを行うことが困難なのです。これは何を意味しているでしょうか?機能の重大な欠陥です。ここでクラムシェルを行うことを勧めますか、それともその特定の動きに対処する何かを勧めますか?この場合は、クラムシェルを勧めるのが良さそうです。ランナーができないのなら、その欠陥に取り組みたいと思います。クラムシェルができないことが問題だとは言い切れませんが、パフォーマンスに関係のある筋群において、こんなに単純なことができないのなら、それは対処すべきでしょう。 しかし、全てのランナーに「機能的な」プログラムの一部としてクラムシェルを行ってほしいのでしょうか。もちろんそんなことはありません。クラムシェルはそれには適していません。クラムシェルを行うのは、特定のランナーの特定の制限に対応するため、エクササイズの処方が「機能的」である場合です。 では、私は何を勧めるでしょうか? 「機能的」の全ての要素に対処することのできるエクササイズはありませんが、それこそがランナーが包括的なプログラムを行うべき理由なのです。 もし私にバイアスがあるなら、「包括的能力」をトレーニングする傾向があるでしょう。これは、ランナーをアスリートのようにトレーニングするという意味です。筋力、高負荷のパワー(例:クリーン)、低負荷のパワー(プライオメトリックス)、様々な範囲(中間の範囲だけでなく、最終範囲や変ったことも)のエクササイズや、片側性のエクササイズを鍛えることのできる大きな多関節複合のエクササイズです。「機能的」という言葉の問題は、言葉の範囲が広すぎてエクササイズを正当化するには意味がないことです。改善したいと望む神経筋システムの特定の許容能力を基準にエクササイズを選んでください。 それはさておき、もし「包括的能力」を鍛え、バランスのとれたトレーニングプログラムを構成するとして、本当に詳細な評価をする必要があるのでしょうか?エクササイズは評価にはならないのでしょうか?エクササイズのシステムがとても良く構成されていて、評価を通じてわかるかもしれない全てのことに対処できるということはないでしょうか。 重要な問い:なぜあなたはそのトレーニングを行なっているのですか? ランナーには、筋肉、関節、腱、ランニングがもたらすストレスに対する神経系の耐久能力を鍛えることのみを考えます。これらを鍛えることにより、ランナーはより力強く、力学的に効率的になり、怪我をしにくくなります。 エクササイズはランニングフォームの変化に役立つのでしょうか? これはランニングのように見えるエクササイズの背景にある考えです(例 クラムシェル)。そのようなやり方でトレーニングを行うことはランニングフォームの改善につながります。しかし、そうではないことを示している証拠もあります (Willy 2011)。私たちは恐らく、フォームをトレーニングしているわけではないでしょう。特定のエクササイズを選択することによってランニングの生体力学を矯正しているわけでもありません。ランニングへのキャリーオーバーのある運動プログラムを刷り込もうとしているわけでもありません。こういったことをしたいのであれば、ランニングをしている間に行わなければなりませんし、その際になんらかのフィードバッグを得られるようにする必要があります。私たちの身体は、異なる姿勢やフォームを獲得するために収縮または弛緩される筋肉をもった操り人形ではありません。それは運動制御能力であり、他のエクササイズをすることによって変わるものではありません。 ではあなたはなぜ、あなたの指導するランナーにそれらのエクササイズを処方しているのですか?
背屈:いつ、どこで パート2/2
足部の背屈は、どのようなタイミングで、足部のどのエリアに起こるべきなのか?同タイトルの記事から更に発展させた内容を、グレイインステチュートのGIFTプログラム学長であるデーブ・ティベリオ博士が、チェーンリアクションバイオメカニクスを解説しながら、複雑な足部の動きをわかりやすく解説してくれます。
ファンクショナルエクササイズとは十分でない用語である。包括的能力というのはどうだろうか。パート1/2
数年前、私はランナーのために、評価の低いクラムシェルエクササイズを擁護している自分を発見しました。私は、他の理学療法士たちとクラムシェルエクササイズがバンドウォークエクササイズ(弾力性のあるバンドを膝/足首の周りに巻き、前方向、横方向、後ろ方向へ歩くエクササイズ)より「機能的」ではないかどうかという点について議論していました。私は、どちらのエクササイズも機能的ではない(または同じ程度に機能的)が、どちらのエクササイズにも意味があると提案しました。そのときは誰も説得できませんでしたが :) 私に反対する共通の意見は、クラムシェルは最悪で、バンドウォークエクササイズの方がランナーにとって、より「機能的」だから優れているというものでした。私は、バンドウォークは確かにより優れたエクササイズかもしれませんが、それはバンドウォークがより「機能的」だからではないと議論しようとしました。 問題は「機能的」という言葉です。 「機能的」とは一体何を意味するのでしょうか。 バンドウォークエクササイズがクラムシェルに比べてより「機能的」だと誰かが言うのを聞いた瞬間、ナンセンスだと思いました。「機能的」という言葉を聞いた私の反射反応は、脳の中で「機能的」という言葉を「動きの特性」あるいは「運動学特性」に訳すことでした。つまり、行っているエクササイズが特定のスポーツ動作(この場合はランニング)の運動学(特に変位や関節角度)に適合するということです。 運動学/動きの特性を使って、バンドウォークやクラムシェルを評価することは、難しいことではありません。機能(運動学特性の定義を使う)という意味ではどちらも最悪です。ランナーは横向きに寝た状態で脚を上げる(例 クラムシェル)ことはないですし、膝に伸縮性のあるバンドを巻いて横向きに走ることもありません。 ですから「機能的」を定義しましょう 「機能的」を「運動学的に特定の」何かであるとする私の反射的翻訳は、もう少し狭義です。 私にとって、機能とは、そのエクササイズが、アスリートが達成したいと思っているタスクに対して何らかの関連性があることを意味します。この見方をすると、エクササイズは複数の意味から機能的、あるいは関連性のあるものになります。 1. 動きの特性:これは、エクササイズのタスクが、鍛えようとしている運動のタスクに、いくらか似ていることを意味します。つまり、そのエクササイズが、目標のタスクに似た形態(運動制御のため)であるということです。さらに、神経筋の動員パターンが似ているということも示唆しています(例:筋肉のオンセット、オフセット、割合など)。例えば、スクワットは椅子から立ち上がるというタスクに対してとても機能的なエクササイズです。 2. 筋肉または関節の特性:これは、目標のタスクで使われる筋肉と同様の筋肉を鍛えていることを意味します。 3. 速度特性:これは、目標のタスクが速く動くことを求めるなら、トレーニングでも速い動きをするべきであろうということです。目標のタスクであるスピードの要求につながる何らかの成果があるのであれば、エクササイズは「機能的」ということになります。この成果を得るために、実際に速く動く必要はなく、時には速く動こうとする意図だけで改善することもあります。 4. 動きの方向性:目標のタスクにおいて減速が多く求められるのなら、エクササイズの中で伸長性負荷の能力を鍛えるべきでしょう。ランナーは、0.01秒以下で起こるランニングの衝撃段階において股関節内転が増加していると考えることができます。そのため、エクササイズを機能的にするためには、この減速能力をその特定の時間枠で鍛えるべきでしょう。 5. 環境:エクササイズは、目標のタスクの環境と似たものであるべきです。環境とは、重力とエクササイズの関係かもしれませんし、社会的、あるいはパフォーマンスの背景かもしれません(例:人が叫んでいる中でフリースローを打つ) では評価の低いクラムシェルとバンドウォークはどちらがより機能的なのでしょうか。 ひっかけ問題です!答えることはできません。機能のスコアシートはありません。より良い質問は、何がランナーやアスリートにとってより有効か、です。まずはじめに、なぜそのエクササイズを指導しているのかを答えられなければなりません。各エクササイズに対するあなたの意図は何ですか?何を達成しようとしていますか?もしあなたが、そのエクササイズが「機能的」だから指示しているとしたら、それは質問をはぐらかしているだけです。機能的という表現は十分ではなく、何らかの特定の成果につながっている必要があります。もしそれが機能的だと考えるなら、なぜそれが有効なのでしょうか? 機能的正当化の限界の事例:バンドウォーク 多くの人は、ランナーにとって、バンドウォークがより「機能的」だということに賛成でしょう。バンドウォークは、ランニングで使われる筋肉を運動学的により近い方法で鍛えることができ、ランナーが走る際に使う多くの筋肉を鍛えることができるようにみえるからです。 しかしそれは本当でしょうか?バンドウォークは、先述の「機能的」要素のどのくらいを満たしているでしょうか? 動きの特性:膝にバンドを巻いた状態で走るランナーはいませんし、横向きや後ろ向きに走ることもありません。表面的に、関節角度や変位という意味ではあまり似ていません。動きの特性が大切だと考える、あるいは練習をすることこそが完璧につながると考えるのなら、ランニングとは全く異なる動きをトレーニングするバンドウォークは、動きの特性という観点において正当化することができません。 動きの方向性:側方向へのバンドウォークは、ランニングで使われるのと同じ要領で股関節の外転筋群を鍛えることはできません。ランニング時、伸長性制御は高い衝撃負荷の下、非常に短い時間で起こります。バンドウォークはそれとは全く異なります。バンドウォークはとてもゆっくりです。ランニングの際に、関節のトルクを作り出す力のベクトルとはかなり異なる外部負荷がかかります。動きの特性、あるいは速度特性議論においても満足には至りません。このことを考慮しても、バンドウォークは機能的と言えるでしょうか? 環境?バンドウォークはクラムシェルよりは確かに良さそうです。アスリートは立っていて、体重を移動しています。しかし、ランナーが体重移動をするように、立って体重移動をしているでしょうか?していません。ただ立って体重移動をしていることが、エクササイズを機能的にするために十分なのでしょうか?立って、体重移動をしながら、ダンベルカールをするのはどうでしょうか? 運動制御:まさか。バンドウォークはランニングの運動パターンとは似て非なるものです。タイミングは全く違いますし、衝撃もなく、振動を抑える筋肉のフィードフォワード活性もなく、弾性エネルギーの貯蓄もほとんどありません。バンドウォークの際に「伸展筋パラドックス」が起こると思いますか?無理です。これらの二つのタスクは完全に異なるものです。バンドウォークの際に何らかの運動パターンを刷り込んでランニングを向上するという議論をする余地はありません。
ファンクショナルサーキットの開発 パート2/2
ファンクショナルサーキットを構成するドリルを正しく理解して実行するために、ジョシュ・ヘンキンが解説をするファンクショナルサーキットのパート2をご覧ください。