登板と登板の間の新しいトレーニングモデル:パートA (2/3)

(パートA1/3はこちらへ) (パートA3/3はこちらへ) なぜ長距離ランニングが、活動方針として望ましくないのか? 理由その4:伸張-短縮サイクルのマイナス効果 伸張-短縮サイクル(SSC)を説明するために、ここで私は少しオタクっぽくならざるをえません。最も簡単な例えを使うとすれば、仮にゴムバンドを誰かに向けて飛ばそうとしたとき、あなたは、ゴムを撃つ前にゴムを伸張しておきますね。筋も同じように作用します;筋が短縮(求心性作用)する前に、伸張(遠心性作用)することによって弾性エネルギーを蓄えます。そうすることによって、筋はより多くの力を発生します。逸話風ですが、投球速度の25-30%は、弾性エネルギーによるものだと推定されると聞いたことがあります。つまり、いかに有効に伸張-短縮サイクルを利用するかということです。 私達の筋肉がゴムバンドと違う点は、その弾性を実際トレーニングでき、腱が弾性エネルギーをより効率よく吸収し、一時的に貯蔵、放出できるようにすることで、より速く走ったり、より高くジャンプしたり、より強く投げたりできるようになるのです。それが、プライオメトリックスやスプリント、メディスンボールを投げたりするトレーニングが驚くほど効果的であることの理由なのです。 コミ氏(2)によると、伸張-短縮サイクルには、次の3つの要素が必要です: 1.遠心性局面の前の、タイミングを計った筋の予備活性化 2.短く速い遠心性要素 3.伸張(遠心性)局面と短縮(求心性)局面の素早い切り替え(最低限の遅延)。償却局面として知られる期間が短ければ短いほど、(熱としての)弾性エネルギーの散逸は少なくて済む。 率直に言えば、#1はうまくいきます。しかし、#2と#3においては、運動時間が長くなるにつれて、SSCの重要性が急速に減少し、まさに長距離ランニングとは逆の動きをしていることになります。事実、垂直飛びでは、最大300mまでのスプリント能力しか予測できません(3)。 言い換えれば、エクササイズが長引けば長引くほど、弛緩させるというより力づくになってしまうのです。ホームベースに向かって、力づくで投球する選手について我々は何を知っているのでしょうか?実は、彼らは投球特有の動きを損なうので、強くは投げられず、腕のむち運動も完全には行えません。 私は、高度の最大酸素摂取量(VO2max)を示す選手より、垂直飛びのうまい選手の方を評価します。長距離ランニングは、バウンスよりも足を引きずる状態にしてしまいます。そしてこれは、慢性的なオーバーユース状態という意味でも深く影響しています。 1ストライク。 理由その5:ストレングスとパワーの減少 投球運動がどんなに身体にストレスをかけるかの一例として、投球の加速期に上腕骨が7,500°/秒内旋するということがあります。これだけの速度を出すのに、かなりのストレングスとパワーを使いますが、同様に重要なのは、直ちに減速するためにも、多くのストレングスとパワーを費やすということです。この加速を可動最終域で抵抗し制御するのに十分なストレングスとパワーを作り出すだけでなく、素早く力(パワー)を生み出す必要があるのです。そのために、投手のコンディショニングは、長距離ランニングをまったくしないストレングスとパワー系の選手のコンディショニングと似ていると思われるかもしれません。 ところが、ほとんどの投手は週に数回ランニングをしています。マラソンランナーが時速153kmの球を投げるのを見たことはありましたっけ?。 さらに、コーチ達は、ウェイトトレーニング器具を使用する機会がなかったラテンアメリカの選手を担当することがよくあります。これは、知られざる潜在的な可能性の扉を大きく開くものです。彼らは強化を図るため、より多くの時間を費やすことができたはずだったにもかかわらず、長距離ランニングに時間を使ってしまったということは、より速く走るようになるのではなく、より長い距離が走れるようにしか調整していないために、選手の成長を大きく阻害しているのです。ただオイル交換をするだけではなく、必要なのはエンジンにもっと馬力を注入することなのです。 若手選手に初めてウェイトトレーニングを導入すると、8-10週間後には運動能力が向上するという大きな変化が見られます。初期段階で上級投手に優れたトレーニングを導入すると、その有効性の大きさにも驚くことでしょう。その理由は、多くの投手は野手とは違って、(言葉は悪いですが)一芸に秀でたポニーのようなものなのです。投手は、いやらしいカットボールや強烈なドロップカーブ、奇妙なアームスロットでのスライダーの投げ方を知っています。ですから、投球以外ではそれほど運動能力に優れていなくてもOKだったわけです。アウトをとるかもしれませんが、ケガのリスクが増大するので、チームとしては長期にわたって一か八かのギャンブルをしているようなものなのです;脆弱であまり動けない身体は、まるで長距離ランナーのように、最も早く故障します。さらに、素早く(かつ力強く)筋を動員することは、足首の捻挫やACL断裂のような急性損傷の予防のため、また関節複合体を素早く硬くし安定させるために、きわめて重要です。ストレングスとパワー系の選手は、この点に関して持久力競技の選手より上手くできています。 2ストライク。 理由その6:不適切な強度 少なくとも私にとって、とても画期的な研究(マッカーシーら、1995)は、最近のストレングストレーニングと持久力トレーニングの「両立性」につて注目していました。伝統的に、持久力エクササイズがストレングストレーニングのプログラムに追加されると、ストレングスとパワーの増加傾向が減退していくことが、大きな問題になってきました。私が、他の記事で記述したように、研究者らは、ストレングスとパワー喪失は、持久力エクササイズの強度が、予備心拍数(HRR)の75%を超えるとき初めて問題になってくるということを発見しています。長距離ランニングをする投手達の大多数は75%以上のHRRで走っていることは、保証してもいいでしょう。 この記事の結論でも私のおすすめを述べますが、どのようなスタイルのランニングを実施するにも、ずっと上(つまり、ほぼ最強度のスプリント)または下(安全のため予備心拍数の70%)をキープすることが秘訣であると、私は強く感じます。ゆっくりでもなく速くもない中間を避けることが肝心なのです。この中間が、選手を本当の意味での「ゆっくり」にさせてしまうのです! そして理想的には、低強度エクササイズが、可動性の向上に利する方法となり得るのです。 3ストライク、バッターアウト! 参考文献 Gleeson, M. Immune systems adaptation in elite athletes. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2006 Nov;9(6):659-65. Komi, P.V. Stretch-shortening cycle. In: Strength and Power in Sport (2nd Ed.) P.V. Komi, ed. Oxford: Blackwell, 2003. pp. 184-202. Hennessy L, Kilty J. Relationship of the stretch-shortening cycle to sprint performance in trained female athletes. J Strength Cond Res. 2001 Aug;15(3):326-31. McCarthy JP, Agre JC, Graf BK, Pozniak MA, Vailas AC. Compatibility of adaptive responses with combining strength and endurance training. Med Sci Sports Exerc. 1995 Mar;27(3):429-36. Ouelette, H, Labis J, Bredella M, Palmer WE, Sheah K, Torriani M. Spectrum of shoulder injuries in the baseball pitcher. Skeletal Radiol. 2007 Oct 3. Fleisig, GS. The Biomechanics of Baseball Pitching. Spring 2008 Southeast ACSM Conference.

エリック・クレッシー 2870字

登板と登板の間の新しいトレーニングモデル:パートA (3/3)

(パートA2/3はこちらへ) なぜ長距離ランニングが、活動方針として望ましくないのか? 理由その7:子守りをするのはだれも好きではない 端的に言えば、ランニングは子守りをするようなものです。捕手は実際、野球で最も持久力を要求されるポジションですが、捕手に、追加で走らせたりはしませんよね?その理由として、ブルペンでボールを受け、バッティング練習をする他にも、投手の扱いやフィールドではコーチ代わりとしての責任もすべて負っているのです。 約10年前、私のビジネスパートナーは、1部リーグの投手でした。そこで、私がこの議論を持ちかけた時、彼は微笑み、うなずき、そして、「私が投手だった頃、私たちが練習したことといったら、フライを捕球する練習とポールダッシュのみだったよ」と言いました。そんな中で、57%の投手は試合シーズン中に肩のケガに苦しんでいました(5)。この数値には、肘や腰、下肢のケガは含まれていないのです! メジャーリーグでは、全選手に占める投手の割合は49%ですが、その投手だけで、リーグ全体の故障者リストの68%を占めています(6)。ランニングでは、このような問題を予防することはできず、かえって悪化させてしまいます。 1ストライク。 理由その8:長距離ランニングは既存するバランス異常を無視する いくつかの理由から、野球はリスクのあるスポーツと言えます。シーズンがかなり長く、オーバーヘッドスローをし、片側優位性が最も顕著である競技です。スイッチヒッターや右打ち左投げ(または左右その逆)であれば、少しは対称である傾向にはありますが、打つのも投げるのも同側であれば、最も顕著な問題が起こり得ます。数多くの賢い人達のなかでも、最も注目すべきグレイ・クックは、こうした非対称性こそが、ケガにつながりうる最も大きな要因であることを述べています。長いシーズンを終えた投手を担当する場合、最初の目標は、下記の可動域不全の問題に取り組むことです: 1.前脚の股関節伸展(股関節屈筋群の緊張) 2.前脚の股関節内旋(股関節外旋筋群の緊張) 3.前脚の膝屈曲(大腿四頭筋の緊張) 4.投球側の肩内旋(ローテーターカフと関節包の後面の緊張) 5.肩甲骨の後方傾斜(小胸筋と肩甲挙筋の緊張) 6.投球側の肘伸展(肘屈筋群の緊張) カフェインをガブ飲みしても、水で顔を洗っても、また、どんなによく考えても、長距離ランニングでこれらの問題にどう向き合えるのか、私には理論的根拠を見つけられません。結局のところ根拠はどこにも見つかりませんでした。それよりも、ジョギングはほとんどの選手にとってマイナス効果であると実感しました。長距離ランニングやジョギングに割く時間があるならば、投手はフライを捕球する練習をした方が賢明です。とりあえず、フライを追いかける時には横への動きが加わりますから。 2ストライク。 理由その9:とにかくつまらない! 私は、選手の関心を引きつけるコーチが最良のコーチだと確信しています。現役選手だった私の経験の中でのベストコーチは、毎回のトレーニングセッションを楽しみにさせてくれた人でした。そんな訳で、もうお分かりかもしれませんが、長距離ランニングを心待ちにしている選手は、長距離ランナーしかいないんですよ! 皆さんが指導している球技選手達の多くは、ランニングを何か悪いことをしたら課せられるひとつの罰と捉えているでしょう。彼らも私が感じているぐらい嫌いだと思います(そこまでではないかもしれませんが)。実を言うと、もしそれが選手としての成長を妨げるものだと気がついたら、もっと嫌いになるでしょう。 3ストライク バッターアウト イニング終了 結論 現状維持を非難するにも関わらず解決方法を自ら提案しない人のことを、私はどうも好きになれません。この点を考慮して、次回の投稿では、引き続き登板と次の登板の間にどのように取り組むかについて、私の個人的な見解をまとめる予定です。 参考文献 Gleeson, M. Immune systems adaptation in elite athletes. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2006 Nov;9(6):659-65. Komi, P.V. Stretch-shortening cycle. In: Strength and Power in Sport (2nd Ed.) P.V. Komi, ed. Oxford: Blackwell, 2003. pp. 184-202. Hennessy L, Kilty J. Relationship of the stretch-shortening cycle to sprint performance in trained female athletes. J Strength Cond Res. 2001 Aug;15(3):326-31. McCarthy JP, Agre JC, Graf BK, Pozniak MA, Vailas AC. Compatibility of adaptive responses with combining strength and endurance training. Med Sci Sports Exerc. 1995 Mar;27(3):429-36. Ouelette, H, Labis J, Bredella M, Palmer WE, Sheah K, Torriani M. Spectrum of shoulder injuries in the baseball pitcher. Skeletal Radiol. 2007 Oct 3. Fleisig, GS. The Biomechanics of Baseball Pitching. Spring 2008 Southeast ACSM Conference.

エリック・クレッシー 1733字

登板と登板の間の新しいトレーニングモデル:パートB (1/2)

(パートA1/3はこちらへ) (パートB2/2はこちらへ) この連載記事パートAにおいて、私は投手の長距離ランニングに関して間違っているすべての事柄について討論しました。パートBでは、各登板の間で、投手がコンディションニングをどのように統合することが最善なのか、私の考えの概要を述べたいと思います。この記事では、先発投手の管理に焦点を当てていきますが、リリーフ投手の管理についても、完全に違うというわけではなく、もう少し“柔軟に対応する”必要があるだけということが分かっていただけると思います。 この記事を紹介する最も良い方法は、年の始まりから偶然に起こる一致について論じることであると思います。あるプロ投手からEメールを受け取りました。彼は、このメールで、私が登板間における先発投手のストレングス・コンディショニングの考え方のいくつかを概説できるかを尋ねてきました。というのも、彼は試合の優秀選手で、伝統的でない方法を試していたため、彼の大学時代のピッチングコーチが、彼の得た情報を求めてきたのです。そのメールへの返事として、この記事で述べるすべてのことに加えて、長距離ランニングがどれほど悪い選択なのかということに関してパートAで概説していることのすべてを伝えました。 偶然の一致は、1、2週間後の最新版のストレングス・コンディショニングリサーチ誌を手に取って初めて分かりました。その雑誌には、“大学生野球選手における、パワーと持久力トレーニングの非両立性”というタイトルの研究が掲載されていました。 これらの研究の中では、大学生のピッチングスタッフを8人ずつ2つのグループに分け、シーズンを通して、それぞれのグループで、トレーニングプログラムの中のランニングの部分以外は、まったく同じことを行いました。週に3回、“スプリント”グループでは15-60mのスプリントを10-60秒の休息で、10-30回行いました。持久力グループでは、週に3-4回、大体20-60分程度、中強度から高強度のジョギング、または、サイクリングを行いました。 シーズンを通して、持久力グループのピークパワーの出力は平均39.5ワット減少していったのに対して、スプリントグループでは平均210.6ワット増加していきました(1)。つまり、基本的に、すべてにおいて私は正しかったということであり、それについて自慢するつもり満々です。この連載のパートAでは、ただ単に私の考えのすべてを正当化しました;今度はそれらを枠組みにまとめていく時期でしょう。 いくつかの前提Q&A パートAへの反応として、さらなる詳細を知りたい一人の大学投手コーチからEメールをいただきました。以下が彼の質問であり、私の見解です: Q:1週間に1-2マイル(1.5~3km程度)のランニングは長距離ランニングになるのでしょうか? A:まさかとお思いでしょうが、私は、投手にとって、150m以上はすべて、“長距離ランニング”であると考えます。私はここ2年間、野球選手に60ヤード(約55m )以上走らせたことがありません。60ヤード走る場合でさえ、加速されていくわけですから、その距離の約50%しか、全力、または全力に近いスピードでないということです。 Q:1分休息、30秒間のポール走10本は長距離と考えますか? A:ポール間を30秒で走り、1分間休む(1:2 運動:休息割合)としましょう。フィールドに出て、投球をする場合、1秒間の最大努力と20秒間の休息になります(1:20 運動:休息割合)。これは100mの短距離走者が、1,500m走者のようなトレーニングをするのと同じことになります。 Q:試合で9イニングを投げきるために、持久力は必要ではないでしょうか? A:もし持久力がすべて同等に作られるのであれば、ランス・アームストロングはニューヨークかボストンマラソンで優勝してしまいませんか?持久力は技術に対して、大変特異的です。さらに、ほぼ完全な休息を挟んで、20-25回以上それぞれで最大パワーを発揮することと、休息なし、または、最小限の休息で、最大下パワーを発揮することの間には大きな違いがあります。 Q:過体重の人はどうでしょうか?何をするべきですか? A:太った人は文鎮、用心棒、相撲力士、または、大食いチャンピオンのはずです。彼らが、D1かそれ以上のレベルで選手として成功したいのなら、つべこべ言わず、悪い食生活を止めましょう。数年前、質の悪い食餌を補うために追加のコンディショニングを実施することを決してしないと自分に誓いました。 Q:インターバルトレーニングについてどのように考えていますか? A:インターバルトレーニングは脂肪燃焼のために、心拍数定常トレーニングよりも優れていることは分かっていますが、考慮すべき重要なことは、それがそのスポーツ自体に特化していなければならないということです。 参考文献 1. Rhea MR, Oliverson JR, Marshall G, Peterson MD, Kenn JG, Ayllón FN. Noncompatibility of power and endurance training among college baseball players. J Strength Cond Res 2008 Jan;22(1):230-4.

エリック・クレッシー 2113字

登板と登板の間の新しいトレーニングモデル:パートB (2/2)

(パートB1/2はこちらへ) パートB1/2のQ&Aへの回答が、下記のポイントへの段階設定となります。 秘訣は、長いトレーニングを低強度(70%以下の心拍数)のままで行い、それ以外のトレーニング(これにはスタートトレーニング、アジリティ、60ヤード(約54m)までのスプリントが含まれます)を最大努力の90%か、それ以上の強度で行うことです。この件についてさらなる情報が欲しい方は、パートAのMcCarthy他の研究1を参考にしてください。 理想的には、低強度の運動はかなり大きな関節可動域を含むこと。(詳細は以下に) 試合の状況で、投手が15ヤード(約13m)以上走ることはほとんどないということを忘れないでください。 ストレングストレーニングと可動性トレーニングは、重要性の基準においてランニングよりもかなり重要です。 投球に特化したスタミナをつける必要があるなら、その目的を達成する最良の方法は、単純に投球練習をし、徐々に投げる球数を増やしていくことです。その過程を促進するための何かを補足する必要があるなら、メディシンボールメドレーを追加することができます。それは、正しく実施することができれば、左右のアンバランスを解消させることにも、とても役立ちます。しかし、適切なオフシーズンの投球プログラムとシーズン初期の適切な投手の管理は、投球に必要とされる特異的な持久力を養うことであるべきです。 5日間のローテーション 5日間のローテーションの場合、これが典型的なプログラムの立て方です。動的柔軟性と静的ストレッチングは毎日行うものであることを心にとめておいてください。 0日目:登板 1日目(あるいは、可能であれば登板直後):難易度の高い下半身ウエイトトレーニング、腕立て伏せのバリエーション(軽め)、水平の引く動作(軽め)、回旋腱板トレーニング。 2日目:動きのトレーニングのみ、10-15ヤード(約9-13m)のスタートトレーニング、アジリティトレーニング、トップスピードスプリント(50-60ヤード)(約45-54m)を中心に行う。 3日目:ブルペン投球(通常は)、片脚トレーニング、難易度の高い上半身ウエイトトレーニング(シーズン中は垂直に引く動作は控えめに)、回旋腱板トレーニング 4日目:低強度の動的柔軟性サーキットトレーニングのみ 5日目:次回の登板 注意: もし登板間隔が5日に伸びた場合、一般的には3日目のウエイトトレーニングを2回に分け、4日目には同様に動きのトレーニングを行います。 登板の間に、多くの人が(私を含め)1回以上投球練習を提唱すると思います。単純化するために、私はこれらを含めていません。 このルールの例外も当然あります。たとえば、回復が困難である場合、2日目をすべてオフにし、3日目のブルペン投球後とウエイトトレーニング前にスプリントトレーニングを行います。4日目をかなり軽めにすることに加えて、ローテーションの中に1日の完全休養日を加えます。 7日間のローテーション 7日間のローテーションでは、積極的にトレーニングを行うために、より柔軟に選択肢を選べる余裕があります。というのも、特に、登板の間に2-3回の投球練習をすることができるため、シーズン中でも、大学野球において大きく成長できる場合があるのは、こうした理由があるからです。重複になりますが、動的柔軟性と静的ストレッチングは毎日行います。これを単純化するため、土曜日の先発投手を管理すると仮定します。 土曜日:登板 日曜日:難易度の高い下半身ウエイトトレーニング、軽い回旋腱板トレーニング 月曜日:動きのトレーニングのみ、10-15ヤード(約9-13m)のスタートトレーニング、アジリティトレーニング、トップスピードスプリント(50-60ヤード)(約45-54m)を中心に行う。 火曜日:低強度のレジスタンストレーニングサーキット(1回の最大挙上の30%以下)、長めの動的柔軟性サーキット 水曜日:全身ウエイトトレーニング 木曜日:動きのトレーニングのみ、10-15ヤード(約9-13m)のスタートトレーニング、アジリティトレーニング、トップスピードスプリント(50-60ヤード=約45-54m)を中心に行う。 金曜日:低強度の動的柔軟性サーキットのみ 土曜日:再登板。 もちろん、時として、移動により、このスケジュールが狂わさせることもありますが、幸運なことに、大学生投手は間に6日間あるので、もとのスケジュールに戻すために、柔軟に対応することができます。 締めくくり おわかりの通り、私は量より質を重要視します。ほとんど週で2回しか選手にスプリントをさせませんし、3回以上は確実にさせません。これは、各登板間のトレーニングに関しての唯一のアプローチではありませんが、私達が指導する選手達にとって、最も効果的なものであることを確認しています。 参照 1. Rhea MR, Oliverson JR, Marshall G, Peterson MD, Kenn JG, Ayllón FN. Noncompatibility of power and endurance training among college baseball players. J Strength Cond Res 2008 Jan;22(1):230-4.

エリック・クレッシー 2129字

野球シーズン中のストレングス・コンディショニング:プロ野球

今日は、プロ野球選手にとって最適であると考えるセットアップについてお話します。世界中のすべての野球選手のなかで、メジャーリーガーは少数派になりますが、シーズン中のストレングス・コンディショニングプログラムに対するプロ野球選手の反応は、本当に多くのことを私たちに教えてくれます。 プロ野球選手は身体の摩耗、損傷を最も多く蓄積している人達で、だからこそ、効果的なプログラムが必要になります。彼らはほぼ毎日プレーしますし、春のトレーニング、レギュラーシーズン、ポストシーズンを含めれば、年間で200日以上プレーすることもしばしばあります。そのため、プロ選手を健康で、かつ、高いレベルでプレーさせ続けようとさせるなら、要求を満たしつつも、疲労を管理できることが本当に必要となります。 ポシションごとにみていきましょう。 野手 野手はもっとも好みの幅が大きい傾向にあります。まず、毎日終日何時間も立ち続けなければならず、完全に疲労しダラダラしている選手がいます。 一方で、毎日なにか、それがウエイトトレーニングであれ、メディスンボールトレーニングであれ、スプリントであれ、あるいは、それらの混合であれ、なにかを実施したいという選手も知っています。信じられませんか?ここに、週5日トレーニング(3-4回ウエイトトレーニング、1-2回動きのトレーニング)を実施したメジャーリーグの内野手から受け取った素晴らしいメールがあります。 エリックさん、あなたが私にしてくれたすべてのことに私はありがとうと言いたいです。この18年目のプロシーズンが、疑いようもなく、どのシーズンよりも、もっとも素晴らしかったと感じています。あなたのプログラムを実施することで、シーズン全体通して、力強く、爆発力を維持することができました。シーズン終了後もこれがベストであると感じました。小さい故障や筋肉痛もなく、これもすべてあなたのプログラムに従ったおかげだと思います。今シーズンの私の成功に、あなたがどれだけ貢献してくれているか言葉にすることができません。 私たちは、長年のキャリアを持つ、30代後半の選手について話をしています。彼はより多くのことを実施することで、より良く感じられたのです。シーズン中の選手にトレーニングさせることを怖がらないでください。もし、トレーニングさせなければ、最終的には故障してしまうでしょう。 もちろん、これはとても珍しい例です;選手の多くは、全くなにもトレーニングをしないか、上記の例のようにトレーニングをするかの中間でバランスを見つけるのが最良でしょう。私はウエイトトレーニングをする時間と日にちに関して、野手には最も幅広い選択を与えます。一日の早い時間帯、あるいは、試合後に実施することもできます。多くの場合、1週間に3回、連続せずに、全身のウエイトトレーニングを課します。また、実施日に、15セット以上行うことは決してしません。3回のウエイトトレーニングの中で1回は、ほぼ上半身とコアのトレーニングのみです。ウエイトルームに入り、トレーニングをして、帰ります。 しかし、選手の中には、1週間で上半身と下半身のセッションを2回ずつに分けることを好む人もいます。それらは短いセッションですが、選手がフォームローラーや可動性のドリルを頻繁にできるという点で良いと思います。 捕手 高校や大学の例では、捕手を野手のプログラムに含めていました。しかし、1週間に4-5試合出場する場合、事情は変わってきます。我々はこれをプログラム作成時に考慮します。 まず最初に、シーズン中捕手にはスクワットはさせません。信じてください、彼らは十分スクワットをしています。シーズン中はデッドリフトの種目と、片脚エクササイズをより多く実施します。 次に、機会があり、十分なエネルギーが残っているなら、捕手には、試合後にウエイトトレーニングを実施させることを勧めます。投手や野手なら試合前にトレーニングを実施しても良いのですが、3時間もの間フルスクワットを行う前に、下半身のウエイトトレーニングを詰め込むことは、それほど魅力的ではありません。一晩前にトレーニングを実施できるのであれば、回復する余地があるでしょう。 3つ目に、1週間に2-3回のストレングストレーニングセッションで十分であると考えます。下半身のトレーニングを行うのは、それらのうち2回のみ。筋力を維持するために必要であろうと想像する量よりも、かなり少ない量で充分で、シーズン中の捕手には、両脚と片脚エクササイズをそれぞれ数セット行うことで効果を得られます。 また、捕球をしないオフの日にウエイトトレーニングを多く実施させることは好きではありません。1週間に1-2日しか捕球をしない日がないのであれば、完全回復にその日をあてたほうが良いでしょう。言い換えれば、トレーニングのストレスをまとめるようにして、可能であれば24時間の“回復の時間”を持つべきなのです。 先発投手 プロ野球の先発投手は、プロスポーツの中で最も安定したスケジュールで仕事をしているでしょう。予測可能で、下記のスケジュールに従えば、1ヶ月に12回ウエイトトレーニングを実施することができます。 0日目:投球 1日目:下半身の高強度ウエイトトレーニングと、軽めの上半身トレーニング。 2日目:動きのトレーニングのみ 3日目:高強度の上半身トレーニング、軽めの下半身トレーニング 4日目:低強度の動的柔軟性サーキットトレーニングのみ、あるいは、すべて休養 5日目:次の登板 もし中5日での登板であれば、3日目のトレーニングを上半身(3日目)と下半身(4日目)に分け、5日目を休養にすることができます。 人生は厳しい?ってわけでもないですね。 リリーフ投手 リリーフ投手にしていることは一言では言い尽くせませんが、挑戦してみましょう。 すべてのリリーフ投手は3回のストレングストレーニングの“オプション”があり、彼らに送っているそれぞれのプログラムには、動きのトレーニングの日が1日あります。 長めのオプション(全身のストレングストレーニング:15-17セット) 動きのトレーニング 短めのオプション1(全身だが、下半身に重点をおく:8-12セット) 短めのオプション2(全身だが、上半身に重点をおく:8-12セット) これが、彼らに伝えている通りの内容です: ”20球以上の投球であれば、通常の1日目を実施し、次の2日間は、2日目のメニューを実施します。お分かりだと思いますが、48時間は投球しません。そして、短めのオプション1、休養、短めのオプション2へと続きます。” ”20球未満の投球であれば、すぐ短めのオプション1を実施し、2日目のメニュー、短めのオプション2、そして、休養になります。連続して登板することを考える場合に有効です。その夜に、少し投球するかもしれないという場合でも、その日の早い時間帯に短めのウエイトトレーニングを実施することもできます。量はかなり少なめにして、疲労しないようにします。” ”中継ぎ、またはロングリリーフになるならば、トレーニングのほとんどは、1日目のメニュー、2日目のメニュー、短めのオプション1、休養、短めのオプション2というようなオプションになるでしょう。身体の状態を確認し、必要であれば休養をいれてください。ただ、少なくとも、1週間に2-3回はジムでトレーニングをするようにしてください。” ”1打者だけのリリーフや、クローザーであれば、短いオプションを多く実施するようしてください。” これらは理にかなっているのではないかと思います。- 私たちの選手達はこのメニューをとても気にいっていますし、 “知る人ぞ知る”聡明な投手コーチ達の何人もの人達がこれらのプログラムを実践して素晴らしい成功をおさめているのですから。 これで、シーズン中のストレングス・コンディショニングシリーズのまとめとします。これらのプログラムを試行し、それらが効果的であるように修正していくのに長い時間がかかりました。しかし同時に、一人として同じアスリートいませんし、可能である限り、必ずプログラムをその選手に合うように調整するようにしてください。

エリック・クレッシー 3536字

スポーツパフォーマンストレーニングに関する6つのランダムな考え

1.アスリートの最大挙上重量(1RM)と、パワーリフターの1RMは区別するべきであると思います。 実際に高重量を挙上することが彼等のスポーツであるわけですから、最大重量を扱う技術においては、パワーリフターに少し余裕があるかもしれません。アスリートはリフティングを行うということ自体の他に、競技パファーマンスの向上や、健康維持を目的としてウェイトトレーニングを行います。それを踏まえ, 私達は、完璧なテクニックで挙上することができないのであればウェイトトレーニングを行うべきではないとアスリートに常に念を押しています。というのも、得るもの対してリスクの比率が高すぎるのです。 2.私達は、頭上からのメディスンボール投げと叩き付けを、アスリートに多く取り組ませています。 この運動を矢状面のみで行うことで、多くの指導者が、このトレーニングの効用を幾らか逃してしまってあいるところを度々目にします。リリースポイントに到達するまでに、胸椎の回旋も要するバリエーションを組み合わせてみましょう。これは私達のお気に入りの一つです。:

エリック・クレッシー 2430字

本当に足首の可動性制限があるのか?(ビデオ)

スクワットがうまくできない、深く沈めない、上体が前傾する等の問題があるときに、足首の背屈制限があるから、と決め込んでしまいがちではありませんか?その他の要素の可能性を示唆したエリック・クレッシィのビデオです。

エリック・クレッシー 3:56

良くある腕のケアの間違い(ビデオ)

ロウイングのエクササイズを行う際に、肩甲骨を固定して動かす、というような指導を行ってしまうことはありませんか?上腕骨と共に、肩甲骨が動くことの重要さを、再確認できるビデオです。

エリック・クレッシー 2:37

肩甲骨の上方回旋(ビデオ)

投手にとって、肩甲骨の上方回旋がなぜ重要なのか?投球に必要な肩の動きのメカニズムと肩甲上腕リズムの関わりを、野球選手のケアのスペシャリストであるエリックが、分かり易く解説してくれます。

エリック・クレッシー 4:50

オリンピックリフティングシューズを履くべきか? パート2/2

それぞれのアスリートが、それぞれ不十分な伸展の制御パターンを示すとういう事実のさらなる証明として、良くないスクワットのパターンを持つ4人のアスリートの姿勢写真をチェックしてください。まず最初に、複数の関節をまたいで、かなり“典型的”な伸展姿勢を見つけることができるでしょう。骨盤の前傾と過度の前弯、加えて、膝と足首の位置が比較的ニュートラルであることに注意してください。 2つめとして、底屈している足首に注目してください;このアスリートは“伸展代償”を遠位部で行っています。そのような静止姿勢で充分なスクワットパターンを持ちえると考えますか?彼は理想的な足首の可動性を持っているかもしれません。しかし、底屈筋群(ふくらはぎ)の活動を完全に停止することはできていません;そが彼が“の見つけた”安定する場所なのです。 3番目の例では、アスリートが骨盤と腰椎を前方へ押出すことで、スウェイバックと呼ばれる姿勢を呈することになります-実際には、足首はほぼニュートラルの位置にあるように見えますが。 最後に、4つ目の例では、より身体全体を見ていきましょう。このアスリートは骨盤から腰椎にかけて、かなり重度の伸展パターンを呈していることは明確ですが、腕の位置にも注目してください;広背筋が収縮したままなので、肘は上腕骨頭よりかなり後ろに持っていかれ、肩甲骨は前傾しています。これは頭部前方位の姿勢であり、この角度からでははっきりと識別できませんが、このアスリートは、斜角筋、胸鎖乳突筋、鎖骨下筋にかなりの“緊張”も見られるでしょう。彼はキネティックチェーンの上部で安定性を見いだしたのです。 これらバランスの悪い姿勢の一つ一つは、アスリートが間違った動きのパターンを変化させ、“なんとかする”方法になります。アスリートは素晴らしく代償動作をする人達です-しかし、その方法はひとそれぞれ違います。これらは取り扱うべき問題であることは皆同意すると思います、そうでしょう?これらは取り扱うべき問題であり、トレーニングへの介入を行うことで、アスリートはよりよく感じられることでしょう。 このことが、どうオリンピックリフティングシューズと関連するのでしょう?彼らにこの劇的に踵を上げる靴を履かせれば、全てのアスリートがみな、完璧なスクワットを披露することができるでしょう。それはまるで、近所のバランス感覚の乏しい子供に自転車の補助輪を渡したかのようでしょう….一生ものの。ただ、いつか、補助輪を外し、自転車の乗り方を教わらなければなりません。そして、健康でいることを望むなら、どこかで、良くない運動パターンを隠すことを止め、ただ単にその代償動作に負荷をかけていくのではなく、その改善に取り組む必要があります。

エリック・クレッシー 2477字

オリンピックリフティングシューズを履くべきか? パート1/2

先日、次のような質問を受け取り、ここに投稿するのに適しているQ&Aであろうと考えました。お楽しみください。 Q:トレーニングの時にオリンピックリフティングシューズを履くべきかどうか、ご意見を伺いたいと思いました。先日そのシューズを履いてみたところ、その変化は著しく、スクワットをかなり深く行うのにとても役立ちました。私は“お尻のウインク=骨盤の後傾”を起こすことなく、床と平行まで下げるだけでも、いつもとても苦労していましたから。トレーニングの一環として、スクワットの効果を得るために、このシューズを使ってスクワットすることを奨励しますか? A:とても良い質問です;残念ですが、簡単な答えはありません-ですので、我慢して読んでください。 まず最初に、あなたがオリンピックリフターであるなら、是非とも、そのシューズを履いてください。それが競技の仕方ですし、特異性は重要です。知っての通り、ハイレベルなアスリートの争いでは、少なくとも、“ただ単に”トレーニングするのと比較して、より良い結果を得るためには、大きなリスクがあるという要素は常に想定されています。 しかし、もしあなたが違うスポーツのアスリートである、あるいは、一般のフィットネス愛好家であるならば、それらは必要ないと思います。そして、もし動きの質の改善、健康増進が長い目で見た場合の目的であるならば、それはさらに問題になってしまうかもしれません。説明していきますが、まず最初に、なぜ人々がそれを履くのかについての、2つの主要な理由を理解する必要があります。 まず、固さの要因があります。オリンピックリフティングシューズの踵はとても固く“たわみ”がなく、これによって、一般的なスニーカーと比べて、力を産み出すためのよりよい土台になります。この固さはオリンピックリフティングシューズに限ったことではありません;ミニマリストのシューズ、チャック・テイラーズ、あるいは、裸足にも見られるかもしれません。パワーリフターの多くはこのことを知っていますし、だから彼らは通常床と踵がしっかりと接地することができる、”固い”靴でウエイトリフティングをします。このことが我々をポイント2へと導きます。 これらの靴は踵をかなり持ち上げます。踵の上げ幅は、1.27cmから3.175cmと様々です。しかし、スニーカーにおいては、かかとと足指の高低差、あるいは、傾斜度にすべて関連しています。長い間、一般的なランニングシューズは12mmの踵と足指の高低差があり、24mm(かかと)、12mm(足指)で、8%の傾斜度でした。オリンピックリフティングシューズに関してこれがなにを意味しているかを理解するうえで難しいのは、誰も足の指の高さを記録していないために、実際には傾斜度は分からないということです。0.5インチの持ち上げ、つまり12.7mm、はかなり平均的ですが、評判の悪いNike shox(25mm)に見られるような1.25インチ、つまり31.75mm、は実際には過剰です。 このことは明確に次の質問に導きます。なぜ、固いシューズだけで十分ではないのか?過度の踵持ち上げの理論的根拠はどこにあるのでしょうか?可動性や安定性の欠如したリフターが、より楽に深くスクワットをするための効果的な支えなのです。 スクワットを深く行うために、多くのことに熟練している必要があり、そのうちの最たるものは: 背屈の可動域が十分あることが必要になります(膝が足趾と足首の上にくる可動性)。 股関節の内旋可動域が十分あることが必要です(筋肉、関節包、アライメント、または、骨性の問題で制限されることがあります)。 股関節の屈曲可動域が十分あることが必要です(筋肉、関節包、アライメント、または、骨性の問題で制限されることがあります;典型的にはあまり問題にはなりません)。 膝の屈曲可動域が十分あることが必要です(これはめったに問題にはなりません;ここが問題になるには、かなり大腿四頭筋の短縮が見られる必要があるでしょう)。 骨盤や腰椎を適切な位置におくためには、十分なコアの制御-特に前方のコアの制御-が必要になります。特にオーバーヘッドスクワットに関して言えば、腕が頭上にある場合、伸展を抑制することがとても難しくなります。 足首の可動性が欠如していれば、足を外旋し、つま先立ちになるか、あるいは、踵の持ち上げが提供する支えに頼ることになります。踵を上げることによって、足首はニュートラルから背屈させるより、むしろ、底屈からニュートラルに戻すように動きます。効果的に、フライングしないようにスタートラインより何メートルか後ろでスタートすることになります。分かりますか?(もし分からなくても心配いりません;下のビデオでこれについて詳しく説明しています。) 股関節の内旋が欠如していれば、爪先を外旋し、ニュートラルから内旋して行く動きとは対照的に、外旋している位置からニュートラルの位置に内旋させていくでしょう。 これら身体位置の変化によって、可動性の欠如を補うことができるということは、皆同意すると思います。しかし、実際には、効果的に異常な動きのパターンに負荷をかけることになり、必ずしも良いことであるとは言えません。グレイ・クックから教わったように、機能不全の上にフィットネス(ストレングス)を積上げ続けると、悪いことが起こるのです。 お気づきかと思いますが、上記の#5を残しています:前方のコアを十分に制御することが必要になります。もっとも大事なことを最後に残しているのです;これはとても大きな問題です。 秘密を暴露してしまいますが、私たちは足首の可動性制限に“過剰な診断”をしていると、私は考えています。スクワットの動きが上手にできない場合、それは足首の可動性の問題があると、多くの人々が自動的に推測しています。スクワットの形が悪いことで、足首の可動性に問題があるのではないかと考えているケースの90%で、全体的な身体の動きに基づいた場合と対照的に、その関節だけを見た場合、実際には可動性はとても良いと推測することができます。なぜでしょう?可動性と安定性の間には非常に大きな相互関係があるのです。

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スピード、アジリティー、クイックネスのトレーニングに関する7つの考え パート2/2

5. よりよく動くには、スピードと同様に、「読み」が大事である. 新進の野球の選手たちの多くと話すと、彼らは「60ヤード(約55m)走のタイム」を気にしているようです。6.5秒以下で走ることができれば、エリートレベルのスピードだと考えられるでしょう。6.6‐6.7秒の間は優秀、6.8‐6.9秒の間は平均、そして7.0秒以上は平均以下と考えられます。こういった数字は、高校のイベントなどでのランキングで、定期的に計測されていますが、高校以降のレベルではあまり行われていません。 そのため、メジャーリーグでは、選手がどのくらい「速い」のかを表す、はっきりとした指標がないのです。正直に言って、メジャーリーガーたちの60ヤード走を計測すれば、かなり残念な結果になるでしょう。野手では、6.8‐7.1秒を出す選手が多くいて、6.7秒以下の選手は、各チームのロースターにせいぜい2、3人でしょう。試合の結果に影響するようなスピードを持つ選手は、考えられているよりも少なく、ビリー・ハミルトンやジャコビー・エルスベリーのように、ベースの走り方や、良いジャンプの仕方、野球というゲームを知ることによって、ベースランナーとして有能になった選手がたくさんいます。 ベースランニングは、運動競技的努力であるとともに、芸術ですから、スピード、アジリティー、クイックネスのドリルをいくら沢山行ったとしても、試合を知り、状況を適切に読んで、それに応じて動くことを理解していなければ、望むような効果を得ることは難しいでしょう。これは、陸上競技以外の全てのスポーツに当てはまることだと思います。 6. 良質な動きのトレーニングプログラムには、コーチングと競争のミックスが必要 速くなりたければ、指導重視のトレーニングと競争要素の入ったトレーニングの両方を行う必要があると思います。指導という観点では、より質の高い動きを教えなければいけません。そうでなければ、ただ間違ったパターンを更に植え付けることになります。これは、調整が狂っている車を、できるだけ速く運転しようとしているようなものです。 一方で、何も言わず、ただアスリートを速く走らせ、互いに競争させることにも意味があると思っています。短距離走のトップ選手たちの多くは、個人ではなく、グループでトレーニングを行います。同じことが、NFLコンバインの準備にも言えます。選手たちは、互いに刺激し合うことで、良くなるのです。時間を計測したり、ミラードリルを行うことは、トレーニングの中で競争心を掻き立てる方法としてとても有効です。 理想的には、動きのトレーニングセッション全てにおいて、競争要素も指導を与える時間も少しずつ取り入れることが大事です。私の施設に通うプロ選手の典型的な一週間では、スピード、アジリティー、クイックネスにより重点をおいたトレーニングをする日は、水曜と土曜と決まっています。水曜日は、指導よりも競争に重点を置き、選手たちは一緒に短距離走を行います。土曜日は、指導面に重点を置き、室内で30ヤード(約27m)、またはそれ以下の距離での練習を行います。動画をたくさん撮り、ほとんどの場合は、一回に一人ずつしか走らせません。シーズンが近づいてくると、指導重視のセッションを月曜日のストレングストレーニングの前にも取り入れるようにしています。 7. 動画は試合を変えた 動画−より具体的には、スローモーション動画−は、動きのトレーニング指導の仕方を劇的に変えました。胴体の傾きや、脛のポジションなど、適切な角度の指導に多くの時間を費やすことができ、動画を止めて、その瞬間、瞬間にどういったポジションを取っているかを見せることで、アスリートは、これまでよりも格段に早く、新しいスキルを習得したり、磨き上げたりすることができるようになりました。もしまだスピード、アジリティー、クイックネスのドリルを動画撮影したことがないのでしたら、ぜひこれから始めてください! 一つだけ注意点として、動画がセッションの「流れ」を妨げることがないようにしてください。注意していないと、セットの間ごとに5−10分間、ビデオを見て、話しあうことになってしまいます。動画をリソースとして使うことは大切ですが、動画に頼りすぎて、トレーニングの質を妨げないよう注意しましょう。

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