女性の骨盤のより深く効果的な修復とバイタリティ

尿漏れなどの骨盤底機能障害を経験すると「骨盤底の強化」が必要!ということで、骨盤底に注目をしたケーゲルエクササイズなどを処方されることも少なくないのでは?本当に必要なのは、骨盤底の筋力強化なのでしょうか?腹部骨盤全体のバランスについてトム・マイヤーズが提案をします。

トム・マイヤーズ 3:58

ファシアの再構築

ファシアのシステムのリモデリング、再構築には、神経系や筋系の変化よりも、もっと気長に時間をかける必要があります。ゆっくりだけれど確実に与えるストレスに反応してくれるファシアのシステムの変化についてトム・マイヤーズが解説します。

トム・マイヤーズ 1:39

下部スパイラルライン

東京で開催されたアナトミートレイン・ファンクション&ストラクチャーコースからの抜粋。トムが、スパイラルラインの下部を構成する下肢の構造がどのように股関節にコネクトし、歩行時の足部の動きをコントロールしているかを解説します。

トム・マイヤーズ 5:24

アナトミー・トレインと力の伝達 パート1/2

序論 – メタ膜としての細胞外基質 人体の各部位の名称には、聖書やアリストテレスの影響が多く見受けられるが、そのような専門用語を数多く覚えている解剖学者達でさえ、人類は自動車のようにバラバラの部品から組み立てられていくのではなく、たった一つの卵から有機的に成長して作り上げられているということを認めなければならない。心臓はポンプで、肺は鞴(ふいご)、脳はコンピュータである等の、巷にあふれる産業的なイメージは、私達の身体に対する考え方に影響を与え、身体の分離したシステムと独立した活動というアイデアを、知らないうちに促進している。しかし、私達の身体は、受精から現在に至るまで、常に途切れることないコンサートのように、すべてが共に働いているのだということを、私達は心の奥深くでは既に知っていることであり、そして日々の臨床での考え方においても覚えておくべきである。 発生学的発達のプロセスのおよそ14日目、細胞が急激に増殖し、その役割がより細かくなっていく際に、細胞間には細胞外基質(ECM)が形成される(ムーア、ペルソード 1999)。そして、この繊細な蜘蛛の巣のような細胞間ジェルが、ほとんどの細胞、様々な種類や割合の混合した繊維、糊のようなプロテオアミノグリカン、多様に循環するメタボライツを伴った水、サイトカイン、ミネラル塩のための環境を提供している(ウィリアム1995)。結合組織における、”組織”の大部分を提供するのはECMである。細胞は、ECMを変化させて、骨や軟骨、靭帯、腱膜、その他を形成する(シュナイダー 1975)。ECMは、細胞と共に成長し、ECMによって結合し、繋がり、まとめられたひとつの有機体を作り上げるのである。 ECMは、細胞膜と密接に繋がり、細胞の表面に連なっている何百、何千のインテグリン(細胞膜貫通受容体タンパク)を経由することによって、細胞骨格へと繋がっている(イングバー1998)。細胞外からの力は、このくっついて離れない結合部を通して細胞内の構造へと伝えられる(イングバー2006)。したがって (これは比較的新しい分野であるメカノバイオロジーの領域になっていくのだが)すべての細胞一つ一つが、化学的環境を味わい、その力学的環境を感じ、反応していることが理解できるだろう(イングバー2006b)。また、 筋や、筋繊維芽細胞が収縮する場合、それらの細胞膜から周囲のECMに向かって力が伝わっていく。それはつまり、力が逆方向へ、細胞からECMにも伝わっていくということである(トマセク2002)。 結合組織細胞は、下記のような制限のもとにおいても、このECMのシステムを広め、維持することに卓越している。 数兆個の細胞を立ち上がらせ、動き回らせるためにECMは: 全ての細胞を例外なく包む。ー 筋肉、神経、上皮、そしてもちろん血液から骨に至るまでの、全ての結合組織そのものも含む。 代謝の過程において、全ての細胞が十分に動き回れるための透過性を持つと同時に、細胞内外部からの力から細胞自体を保護出来るほどに丈夫である。 硬い骨や弾力性のある軟骨から、胸部のリンパ網や眼球の水様液まで、さまざまな形態で存在する。 成長や運動、治癒や修復など、その都度変化していく生体力学的な条件を満たすために、その姿を何度も作り直すことができる。そして最後に、 細胞組織に対するダメージを最小限にしながら、突然の負荷の変化に対応する最大限の適合力を有し、最大限の正確さで力を組織から組織へと伝達する。 ECMは、有機体にとってのメタ膜として働き、有機体の境界を構成したり、動きの制限と指示をし、繊細な組織を保護したり、日々、我々が認識している人間としての形状の維持をする(ユハン 1987, ヴァレラ 1987)。分割不可能なものを分割する ECMはひとつの総体であるのは明白であるが、便宜上3つに分類することができる。 背腔の組織ー神経系内のおびただしい数の神経膠、脳脊髄周辺の髄膜、身体中へ伸びる神経鞘(アップレッジャー 1983)。 腹腔の組織ー腸間膜、隔膜、腹膜を含む、組織を隔て、体内壁に固定しているひも状、シート状、袋状の構造(バラル 1988)。 歩行運動系の組織ー関節包、靭帯、筋膜、腱膜、そして骨格筋群を包み内在する全ての組織。ー筋内膜、筋周膜、筋外膜とこれらに連続する腱状の構造(チャイトウ 1980)。 この最後のセクションでは、身体の総タンパク質量のかなりの割合に対しての力の伝導や発揮のために、機能的にさらに二つに分類することができる。 "アウター" 筋膜に包まれた600以上の筋肉で構成され、相互に連結させ、動きを生み出し、その力を骨やその他の組織に伝えることができる筋筋膜層。 "インナー" 関節包、靭帯や骨膜などの層で、骨格の周囲に存在し、骨格を成長させたり、切断から守ったり、動きを制限したりする。ひとつの関節から別の関節への効率の良い力の伝達を可能にする(マイヤーズ 2009)。 上記のすべての分類は、ECMがもともと統合された性質を持つために、不明瞭なものである。時に、ひとつのセクションがどこから始まりどこで終了しているのかを見極めることは不可能であり、また機能的には、すべて同じグループに属している。最後の分類である、筋骨格系におけるインナーとアウターの "バッグ" などは、これらの構造はバラバラにそれぞれが独立して動くというより、連動して動くことがほんとんどであるため、特に不明瞭な分類と言える(ヴァンデルワール 2009)。筋肉の孤立 全体論の序文以降、この章の残りの部分では、この筋筋膜の "アウターバッグ" におけるいくつかのパターンに注目していく。我々が知識として持っている伝統的な解剖学の見地は、主に外科用のメスを用いた還元主義的な手法によってもたらされたものである。その結果、"筋肉"は、この層における統一された軟部組織のユニットに名称を付ける際に、優勢を締めるラベルとして使われるようになった。ある筋肉が、神経血管膜や重なり合った疎性組織、または左右に隣り合う組織、下にある靭帯から切り離されると、その筋肉が上下に持つ終点 (近位・遠位の"付着部"と呼ばれる)、を引っ張り合うことで、コンセントリック、アイソメトリック、そして(相反する方向への外力を伴っての)エキセントリックな収縮が見られる、というように単体として分析をされてしまうのである(ビエル 2005, ムスコリーノ 2010, ウィリアムス 1995)。 筋肉を孤立させて行われる分析では、数あるうちの機能のうち、たった一つの機能のみを取り上げ、まるでそれのみがその筋肉の機能であるかのように記されている。ほとんどの姿勢や動きの分析は、ある筋肉が骨を動かし、靭帯がその骨を安定させているという考え方の元に進められているのである(Kendall 1983)。 運動学は過去2~3世紀の間に、このモデルをその限界まで進めたものの、人々は神経系は個々の筋肉に関して"考えて"いるのか、あるいは、解剖学者にとって使い勝手の良い”筋肉”は、はっきりとした生理学的単位なのかどうか?と疑問を持つ。筋肉内の神経運動単位は、より使い易い分割の方法かもしれない(ヴァンデルワール 2009)。あるいは、この章のフォーカスでもある、より大きなパターンが、人体の動きと安定の機能に関してより役立つ何かを教えてくれるのかもしれない。 前の章に記述してあるように、より最近の考え方では、システム全体の問題である怪我、または、怪我の修復不全の原因を、特定の筋肉や筋膜構造に見い出そうとするのではなく、機能的な総体と、相互に関連した外側の層のパターンに注目をするようになっている。アナトミー・トレインの筋筋膜経線は、これらの理論とはまた異なるものではあるが、レイモンド・ダートをはじめ、Tittel、Meziére、Hoepkeなどの研究に恩恵を得たものであると同時に、このシステムは、独自の特性を持つものでもある(ダート 1950, ホープケ 1936)。(パート2/2はこちらへ) 参考文献 Barral J-P, Mercier P 1988 Visceral Manipulation Seattle: Eastland Press Biel A 2005 Trail Guide to the Body, 3rd ed. Boulder, CO: Books of Discovery Chaitow L 1980 Soft Tissue Manipulation Wellingborough UK; Thorson’s Dart R 1950 Voluntary musculature in the human body: the double spiral arrangement. Brit. J. of Physical Medicine 13: 265-268 Hoepke H 1936 Das Muskelspiel des Manschen Stuttgart: G Fischer Verlag Ingber D 1998 The Architecture of Life Scientific American 98:1, pp 48 – 57 Ingber D 2006 Mechanical control of tissue morphogenesis during embryological development. Int. J. of Developmental Bio. 50:255-266 Ingber D 2006b Cellular mechanotransduction: Putting all the pieces together again, FASEB Journal 20:811-827 Juhan D 1987 Job’s Body Tarrytorn NY: Station Hill Press Kendall F, McCreary E 1983 Muscles: Testing and Function, 3rd ed. Baltimore: Williams & Wilkins Moore K, Persaud T 1999 The Developing Human, 6th ed. London: W.B. Saunders Muscolino J 2010 The Muscular System Manual Maryland Heights, MO; Mosby Elseveier Myers T 2009 Anatomy Trains, 2nd ed Edinburgh: Churchill Livingstone Snyder G Fasciae: applied anatomy & physiology Kirksville, MO: Kirksville College of Osteopathy Tomasek, J Gabbiani G, Hinz B et al. 2002 Myofibroblasts and mechanoregulation of connective tissue modeling Nature Reviews, Molecular Cell Biology 3:349-363 Upledger J, Vredevoogd J 1983 CranioSacral Therapy Chicago: Eastland Press Van der Wal J 2009 The Architecture of the Connective Tissue in the Musculoskeletal System – An often overlooked Functional Parameter as to Proprioception in the Locomotor Apparatus Fascia Research II: Munich: Elsevier GmbH Varela F, Frenk S 1987 The organ of form. Journal of Social Biological Structure 10: 73-83 Williams P 1995 Gray’s Anatomy, 38th ed. Edinburgh: Churchill Livingstone

トム・マイヤーズ 3491字

アナトミー・トレインと力の伝達 パート2/2

アナトミー・トレイン アナトミー・トレインとは、筋筋膜の外層を通る、機能的な力の伝達の主要な通り道を記そうと試みたものである(マイヤーズ 2009) 。アナトミー・トレインは、鍼治療における経線と共通する要素を持つものの、その基礎となっているのは、西洋の筋膜解剖学である。筋筋膜経線を作るためには、下記が必須となる。 
ひとつの構造から他の構造へと、筋筋膜の生地の目を辿るようにする。 
できるだけ、まっすぐのラインをとる('滑車'を介さない限り、コーナーを通ることはできない)。 
力の伝達を妨げる、筋膜の壁を途中で通り抜けない。 図1)アルビナスのよく知られた絵にアナトミー・トレインの図を重ねている。 この手法を用いることで、他章で詳しく解説した、筋筋膜のアウターバッグを通る12組のコネクションを見つけることができる(マイヤーズ 2009, AnatomyTrains.com)。総体的に言えば、身体の前、後ろ、側面、体幹の周囲やアーチの下、腕に沿って、反対側の肩帯と骨盤帯、脚や体幹のコアを通る、解剖可能なはっきりとした筋筋膜の繋がりのラインが存在する。 それぞれのラインに関わる筋膜、筋筋膜、軟部組織の構造は下記の通り。ラインを構成している個々の筋肉の付着部は、アナトミートレインの理論では、ステーション=駅となる。これらの連結部において、ラインが骨膜や靭帯といったインナーバッグに接続していたとしても、力の伝達は筋肉の付着部を越えて、筋膜によって伝達される。力の伝達の程度、タイミングや詳細なメカニズムは計測されたり解明されてはいないものの、筋肉と筋肉は筋膜によって連結しているということは考慮する価値のあることである、というのは既にエビデンスによっても支持されていることである。この考え方は、筋肉は骨に付着している、という狭義な認識に有益に付加されうるかもしれない。体内で骨に直接骨に付着している筋肉などひとつもない。筋肉は常に結合組織の構造を介して骨に付着しているのである(ヴァンデルワール 2009)。 スーパーフィシャルフロントライン: 足趾伸筋群、前下腿区画、大腿四頭筋、腹直筋と腹腱膜、胸骨筋と胸骨軟骨筋膜、胸鎖乳突筋 スーパーフィシャルバックライン: 短趾屈筋群と足底腱膜、下腿三頭筋、ハムストリングス、仙結節靭帯、腰仙筋膜、脊柱起立筋、帽状腱膜 ラテラルライン: 腓骨筋群、外側下腿区画、腸脛靭帯、股関節外転筋群、外腹斜筋、内外肋間筋、胸鎖乳突筋および板状筋 スパイラルライン: 板状筋、(反対側)菱形筋、前鋸筋、外腹斜筋、(反対側)内腹斜筋、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯前部、前脛骨筋、長腓骨筋、大腿二頭筋、仙結節靭帯、脊柱起立筋 スーパーフィシャルバックアームライン:僧帽筋、三角筋、外側筋間中隔、手根・手指伸筋群 ディープバックアームライン: 菱形筋、肩甲挙筋、ローテーターカフ、上腕三頭筋、尺骨筋膜、内側側副靭帯、小指球筋群 スーパーフィシャルフロントアームライン: 大胸筋、広背筋、内側筋間中隔、手根・手指屈筋群、手根管 ディープフロントアームライン: 小胸筋、鎖骨胸筋筋膜、上腕二頭筋、橈骨筋膜、外側側副靭帯、拇指球筋群 フロントファンクショナルライン: 大胸筋(下縁)、半月線、錐体筋、股関節内転筋群(長内転筋、短内転筋、恥骨筋) バックファンクショナルライン: 広背筋、腰仙筋膜、大殿筋、外側広筋 イプシラテラルファンクショナルライン: 広背筋(外側縁)、外腹斜筋、縫工筋 ディープフロントライン: 後脛骨筋、長趾屈筋群、深後区画、膝窩筋、後膝関節包、内転筋群、骨盤底、前縦靭帯、腰筋、腸骨筋、腰方形筋、横隔膜、縦隔、舌骨筋複合体、口腔底、口顎筋群 ここで確認しておいて欲しいのは、現時点において、アナトミー・トレインは単なる図式であり、地図にしかすぎないということである。臨床的観察や常識、そしていくつかの解剖によって支えられてはいるものの、これらのラインを通る力の伝達の程度は、未だ数値として確認されておらず、科学的に証明されるレベルにはまだ到達していない。アナトミー・トレインは、治療の方法ではないが、理学療法やリハビリ、パーソナルトレーニング、パフォーマンストレーニング、そしてあらゆるタイプの徒手療法においての身体の見方の助けとなる方法のひとつであるということも忘れてはならない。 それぞれの筋筋膜経線は、そこに含まれる筋肉各々が持っている機能を超えた機能を備えているようであり、それらの経線の中には、人間の経験における"意味"を与え得るものもある。この主観的ではあるものの駆り立てられる要素は、臨床においても観察され、ストレスを受けたり損傷した部位の組織の修復に、セラピストが適用する全体的な計画の提唱ともなりえる。 このシステムを簡略に見てみよう。スーパーフィシャルフロントライン (爪先から乳様突起までを通るライン) は、しばしば慢性的な恐怖のパターン(驚愕反応)によって短縮する。科学的な証明はされていないものの、このパターンは頻繁に観察され、強い、あるいは慢性的な恐怖の感情は、しばしば、スーパーフィシャルフロントラインの構造の筋肉的(そして筋膜的)な短縮として、姿勢や動きのパターンにはっきりと現れる。 図2)予期しない大きな騒音を突然聞かされる直前と直後の被験者の図。驚愕反応(種族及び文化的に普遍の行動) が、スーパーフィシャルフロントラインの強い収縮により、人体の傷つきやすい部分を反射的に守ろうとする反応をしていることを見ることができる。図は、フランクジョーンズの快諾により転載。 このパターンがクライアントに見られる場合、どのような治療の手法を用いる場合においても、スーパーフィシャルフロントラインの組織を開き、伸張し、引き上げることによって、その治療の持続性と効果を向上させることができる。逆に、この身体全体を見るという考え方を取り入れることなく局所的な治療を施した場合、患者は治療を必要としていた部位的な損傷を引き起こした、元々のパターンに戻り易い傾向にある。 私達が初期的な胎児の弯曲から、成人の一次弯曲と二次弯曲のバランスのとれた立位になるためには、スーパーフィシャルバックラインが短縮し強化される必要がある。この発達の過程においての何らかの妨害は、一次弯曲と二次弯曲間のバランスの崩れとなる。このバランスの崩れは、慢性的な筋肉の代償を引き起こすことに繋がる。慢性的に制限を持つ筋肉は、時間の経過と共に筋膜の拘縮を引き起こすが、観察を基にした推論においては、この力は身体の他の部位に伝達される、あるいは分配される(テンセグリティーのセクション参照)と言われている。 図3)スーパーフィシャルバックラインを記した図(A)と一つの連続した筋筋膜として解剖した検体(B) 写真の著作権は、著者に帰属する。 これらの連続的に繋がっている筋筋膜繊維における経線は、ある分節から他の分節への筋筋膜の伝達の共通した(しかし、限定ではない)通り道である。結果、神経学的、筋肉的、そして究極的には筋膜的に保たれた、一般的に認識されている姿勢のパターンが現れる。多くの筋膜に働きかけるセラピーが目指しているのは、そこにある筋肉や癖のパターンが、より良い状態へ変化する機会を与えられるように、これらのパターンを自由にすることである。これらの拘縮した筋膜をリリースすることなしに、筋肉のトーンや神経学的な習慣を変化させようとする施術法は、はなから"無謀な戦い"と言えるであろう。 この理論を、ここに表示されているクライアントに適用してみよう。この少女が持つ首の痛みは、彼女の膝の位置に直接的に関係している。彼女の膝が過伸展することにより、二次弯曲は一次弯曲となり、彼女の身体は、その他の2つの二次弯曲を代償することを強要される。これが、腰痛あるいは、このケースのように首の痛みとなって現れる。 (写真を見るだけでは分からないが、このパターンは逆の順序でも起こりうる。代償への適合のパターンが起こる順番を知ることは必要ではなく、関心を持つ程度で充分であろう。彼女の膝のポジションと首のポジションには関係性があり、どの順番で変化が起きたかに関わらず、全体として、そのどちらも解決される必要がある。) 図4)問題は常に局所に現れるが、この女の子の治療前の写真(左)では、スーパーフィシャルバックラインの全体的なバランスの問題が、はっきりと見られる。治療後の写真(右)では、よりまとまってバランスがとれているが、この全体的な向上は、局所的な問題解決の持続性をサポートするであろう(ロバート・トポレックの快諾により使用)。 彼女の首に局所的に上手く働かない部分がある、あるいは損傷があるとして、その際に行う局所的な治療の効果をより持続させるために補助的に行うこととして最良なのは、彼女の足首の慢性的な底屈、そして膝と腰椎の過伸展のパターンに対して”筋膜的再教育”(多くのメソッドが適用される)を行うことである。右の治療後の写真では、このようなパターンを全体として捉えることができ、またその必要のあることが現れている。治療後の写真では、スーパーフィシャルバックラインがバランスのとれた連続した弯曲を描いていることに注目して欲しい。これによって、新しいパターンは補強され、その維持の永続性をも高めることになる。 テンセグリティ テンセグリティの考え方については、他の章で詳しく説明している。人間の運動のための構造が、数学的に定義づけられているテンセグリティの正式なモデルとして表現できるか否かは疑問であるものの、人間の身体が張力に依存した構造であるということには疑問の余地がない。人間の骨を積み重ねるだけで、骨格を再現することはできないし、靭帯が存在していたとしてもそれだけでは支えることもできず安定感もない。 骨格の周囲に張り巡らされた”筋筋膜構造”の外層が存在することによってのみ、人間の骨格は、機能的に立ち、調整し、安定することができるのである。 図5)もし身体が、この興味深いテンセグリティモデルに似通った働きをしているのであれば、アナトミートレインのラインは、孤立した圧縮の要素である骨が浮かぶ、張力の海のような環境を作りあげる長い弾力性のあるゴムとして捉えることができる。(写真とデザインの著作権はトーマス・フレモンスに帰属 intensiondesigns.com) これらの筋筋膜の経線が、骨格の枠組みを安定させると同時に調整することのできる、全体的で測地線的な張力複合体として考えることは価値のあることであろう。言い換えるならば、身体は(怪我をしたり間違った使い方をしていなければ)生体力学のテキストブックに表現されているような、”ストレスにフォーカスした機械” ではなく、“ストレスを分散する機械” であり、筋筋膜の経線は、身体のテンセグリティーが下記の項目を実現するために、共有した(限定ではない)通り道を提供する。 筋肉や筋繊維芽細胞の収縮を介しての緊張に、プレストレスを与えるため。 筋肉、筋繊維芽細胞、又は治療を介しての調整能力のためにプレストレスを和らげるため。 一部にかかっているストレスを、ラインの上下に分散するため。 結論 アナトミー・トレインの筋筋膜経線は、確立された科学的な事実ではなく、”デザインから導き出された主張” である。著者は、今後の研究によりラインの詳細が修正されること、更に分野を広げること、あるいはよりより地図に書き換えることがあることを理解している。実際の領域に合致する地図は存在せず、新たなイメージのメソッドによって新しい地図が生み出されるのである。 上記を踏まえた上で、治療やアセスメントにおいて、これらの全体的な考え方や、”筋膜網全体”の繋がりによって、その効果や持続性が向上することを支持する臨床的報告は増加している。 参考文献 Barral J-P, Mercier P 1988 Visceral Manipulation Seattle: Eastland Press Biel A 2005 Trail Guide to the Body, 3rd ed. Boulder, CO: Books of Discovery Chaitow L 1980 Soft Tissue Manipulation Wellingborough UK; Thorson’s Dart R 1950 Voluntary musculature in the human body: the double spiral arrangement. Brit. J. of Physical Medicine 13: 265-268 Hoepke H 1936 Das Muskelspiel des Manschen Stuttgart: G Fischer Verlag Ingber D 1998 The Architecture of Life Scientific American 98:1, pp 48 – 57 Ingber D 2006 Mechanical control of tissue morphogenesis during embryological development. Int. J. of Developmental Bio. 50:255-266 Ingber D 2006b Cellular mechanotransduction: Putting all the pieces together again, FASEB Journal 20:811-827 Juhan D 1987 Job’s Body Tarrytorn NY: Station Hill Press Kendall F, McCreary E 1983 Muscles: Testing and Function, 3rd ed. Baltimore: Williams & Wilkins Moore K, Persaud T 1999 The Developing Human, 6th ed. London: W.B. Saunders Muscolino J 2010 The Muscular System Manual Maryland Heights, MO; Mosby Elseveier Myers T 2009 Anatomy Trains, 2nd ed Edinburgh: Churchill Livingstone Snyder G Fasciae: applied anatomy & physiology Kirksville, MO: Kirksville College of Osteopathy Tomasek, J Gabbiani G, Hinz B et al. 2002 Myofibroblasts and mechanoregulation of connective tissue modeling Nature Reviews, Molecular Cell Biology 3:349-363 Upledger J, Vredevoogd J 1983 CranioSacral Therapy Chicago: Eastland Press Van der Wal J 2009 The Architecture of the Connective Tissue in the Musculoskeletal System – An often overlooked Functional Parameter as to Proprioception in the Locomotor Apparatus Fascia Research II: Munich: Elsevier GmbH Varela F, Frenk S 1987 The organ of form. Journal of Social Biological Structure 10: 73-83 Williams P 1995 Gray’s Anatomy, 38th ed. Edinburgh: Churchill Livingstone

トム・マイヤーズ 5099字

筋膜の粘弾性

トムが主催するKMI というスクールの授業風景の一部を捉えた映像です。アナトミートレインの書籍の印象とはことなる、親しみ易くカジュアルな口調で、筋膜の粘性と弾性の特徴を生徒に指導している風景は貴重な映像と言えるでしょう。

トム・マイヤーズ 4:08

ストレッチと筋膜 パート1/3

序論 アクティブまたは、パッシブ軟部組織ストレッチは、次のようなところで適用されています: 徒手療法(マッサージ、筋膜リリース、アクティブリリース、マッスルエナジー) リハビリ的理学療法(手術前・後、外傷後) パフォーマンス向上(運動競技、ダンス、アクティブアイソレーテッドストレッチ) 自助方法(ヨガ、エクササイズのウォームアップ/クールダウン) 統合的パターン解決(オステオパシー、組織的統合) まだ多くのことが解明されていないものの、ストレッチの実際の方法や効果持続に関しては、下記の変数が含まれます: 強度 振幅(許容度) 継続時間 速さ 方向 反復(回数)(パルシング、バリスティック、または周期的ストレッチ) そして、さらなる変数も関係します。 言い換えれば、それぞれのストレッチで、どのくらい頻繁に?どの順番で?何を目的として?と同様に、どのくらい?どのくらいの速さで?どのくらい長く?ということもできます。 これらの要因の変化が多くの種類のストレッチを生み出します。そして、一般的に次のように分類(重複もあり)されています:ダイナミック、アクティブ、パッシブ、スタティック、アイソメトリック(等尺性)、PNFやマッスルエナジーに代表されるアイソトニック(等速性)神経筋促通です。 ほとんどの研究は、筋組織へのストレッチ効果と神経運動反応に集中しています。ここで私たちは、一般的な概念、すなわち結合組織もしくは、筋膜(広義の意味で)や細胞外基質(ECM)へのストレッチの効果についての科学的証拠に注目していきます。 定義 治療的ストレッチは、身体が慣れている関節可動域の最終域まで伸ばし、自力もしくは、セラピストの助力で、さらにそこから伸長していきます。 張力と圧縮は、90度の角度で常に共存しているため、どの身体組織もある一方向に張力がかかる時、細胞と基質は、張力に対し直角に圧縮されます(Fuller 1975)。加えて、直線的ストレッチは、繊維結合の複合体の中で、変換され、周囲、または連続した組織においては、屈曲、せん断、捻転として現れます(Franklyn-Miller 2009)。 習慣化した可動域を超えて更に伸張して伸ばしていくということにより、 “ストレッチ”の定義をみたすことになります。対象者の通常の関節可動域(ROM)の範囲内での動作は、“運動療法”もしくは、“コンディショニング”という言葉に値しますが、“ストレッチ”ではありません。 治療的であるためには、ストレッチは生理学的可動域内にとどまるべきです。オーバーストレッチ(伸ばし過ぎ)は、ケガを引き起こす可能性があります(Alter 2004)。まさに、多くの軟部組織へのケガは局部体組織の過度で急激な伸長の続発症として見られます。 ストレッチは、皮膚、浅筋膜、深筋膜、筋筋膜、筋間中隔、腱膜、腱、靭帯など、あらゆる軟部組織に対し有益に適用されますが、軟骨や骨には適用されません。このように、筋膜ストレッチは、(目的とする、しないに関わらず)、本書に記述されている多くの手法を通して起こり、いくらかの筋膜ストレッチは、ほとんどの徒手療法・運動療法の適用を通して起こります。 様々な科学的根拠 どこにでもある治療的でパフォーマンスに基づいたストレッチにもかかわらず、研究結果において、その有効性は異なります(Bovend’Eerdt et al 2008)。ほとんどの研究では、その対象を1,2種類のストレッチテクニックに限定し、制限された強度と継続時間のパラメーターを使用しています(Law et al 2009)。現在パフォーマンストレーニングや徒手療法で実施されている動作に基づいたダイナミックストレッチについての研究は、ほとんどありません。よって、施術者や運動指導者のための一貫した指針、すなわち、強度、継続時間、頻度を計測する理想的な手段は存在しません。 そのために、実践的筋膜ストレッチの方法、時間、理由に関する矛盾したアドバイスが、伝えられています。下記に引用してあるいくつかの研究は、有益な結合組織ストレッチ反応の指針を示していますが、科学的根拠に基づいたパラメーターは、より一層の研究を必要としている状態です。 ストレッチ研究において、一貫性を欠いているもう一つの要因は、結合組織のさまざまな局所解剖や組織学の生体力学的特性に関する系統的な研究が、まだ初期段階だということです。生体外においての、孤立化された単体の構造の検査は知られているものの(Standley 2009; Solomonow 2009)組織を解剖学的に損なわれていない生体における、組織の伸張、及び再構築反応に関しては、ほとんど知られていない 加えて、一般的に広く注目されている単一筋肉に対するストレッチは、孤立化され扱われる、平行に存在する個別の単位としてではなく、むしろ動力学的連続において、筋肉、筋膜、靭帯で連結している新しい解剖学的モデルの観点から再考される必要があります(Vleeming 2008, van der Wal 2009; Strecco 2009)。科学的根拠は非常に明確です:ストレートレッグリフト・テストにおいて、ハムストリングにかかる張力の240%が腸脛靭帯にかかるとき、“孤立”と“ストレッチ”という言葉の併用が、正当だと説明することは難しくなります(Franklyn-Miller 2009 – 図1)。 図1:ストレッチに関する仮説-例えば、ストレッチからの力は、筋の停止から起始へ伝達される-は、研究結果に挑戦されています:ストレートレッグリフト・テストにおける張力の伝達は、ハムストリング以外の他の多くの身体組織に現れているのです。 誰かに指示されたにせよ、自ら探し求めるにせよ、どのような状況下であっても、ストレッチ方法の選択やストレッチと他のケアとの統合方法は、局所組織や全体組織への効果に関連している多くの科学的根拠のおかげで、より容易になることでしょう。 ストレッチ:組織変化の科学的根拠 前章では、次に述べる力伝達同様に、体組織の変形、剛性、緊張、ヒステリシス、弾性、粘性、可塑性、チクソ性といった結合組織の性質の素性について取り上げました。筋膜ストレッチは、ここでは、簡潔に4つの潜在的で相互関係のある恩恵に関して、考察されています。 力学的伸長 (及び結果としての分節の再配列) 体組織水和 固有受容刺激 結合組織細胞(特に繊維芽細胞)の直接刺激

トム・マイヤーズ 2830字

ストレッチと筋膜 パート2/3

力学的伸長 すべての哺乳動物は、広範囲の外傷もしくは、ウイルスやバクテリアによる感染に対して炎症反応を提示し、神経筋筋膜組織収縮もその不随意反応の一部として現れます(Grinnel 2009)。人間はまた、骨格筋や平滑筋の収縮を通して、さまざまなレベルでストレスに対して反応します。長期にわたる問題は、反射的もしくは、姿勢の緊張過度反応によるものというより、むしろ脅威、外傷、ストレスを経験した後、身体組織の張度や弛緩が正常状態に回復する事後反応の欠如によるものです。その後次々に起こる軟部組織や骨格の代償は、自動的に身体機能を慢性的な筋筋膜収縮状態、筋繊維芽細胞活動の増加、筋膜組織の拘縮に確実に適合させることになります(Langevin et al 2009; Schleip et al 2005)。 多くの臨床医や研究者は、慢性的な“随意以下”の筋収縮が徐々に筋膜の“肥厚”(Langevin et al 2009)、“緻密化”(Stecco et al 2009)もしくは、それぞれの組織間で滑らかに動くべき層の固着(Fourie 2009)を細胞外基質の様々な部分で引き起こすと提唱しています。これらのパターンは、コンセントリック(求心性・短縮性)体組織荷重と同様に慢性的なエキセントリック(遠心性・伸長性)体組織荷重を引き起こし、これらが統合されることで、全身的”軟部組織保持パターン”を形成します(Myers 2009)。 多くの場合、施術者は、神経筋筋膜のアンバランスによって苦しめられている身体の可動性が低下している部位に対して下記のアプローチを施し、それらの部位に、より多くのスペースと動きを与えます: 組織の分化 減圧 リリース 伸長 このアプローチは、過度の牽引力もしくは、張力に曝されている体組織へのストレスを減少させ、他の部位における関節可動性低下の代償として起きている関節可動性過多を和らげる、即時的効果があると感じられます。 しかし、様々な結合組織はどの程度まで伸ばされることができるのか、結合組織の様々な局所解剖的で組織学的部位はどのくらいの時間、その長さを保持できるのか、いつ誘発されるのか、そして、どのサイトカインもしくは、他の化学的要因がそのような恩恵の保持を担っているのかという複雑な問題は、解決されることなく残されています。 一般的に、素早く荷重された結合組織は、ゆっくりと荷重された同じ組織と比較すると、変形が少なく、ゆったりしたストレッチの方が、素早いストレッチと比較すると、組織の伸長にはより効果的であることを示唆しています。 皮膚と“ユニタードのような”深筋膜の間の疎性結合組織は、身体構造が力の変化に対応するために即時的変化を可能にさせている重要な粘弾性質を示しています(Guimberteau 2004)。この組織は、直接的細胞内シグナル伝達において、多くの興味深い効果を実証し、利用しやすく、調整的で、一軸性ストレッチの反応において長さを増します(Wang P et al 2009, Iartides et al 2003)。 筋肉の内部や周囲において、筋膜は組織学的に筋原線維の周囲の筋内膜、筋線維束の周囲の筋周膜、筋肉の周囲の筋外膜に分類されます。これらそれぞれの分布は、筋肉間で広く変化します(Purslow 2002)。“筋筋膜ユニット”を通しての力伝達と筋肉細胞への血管供給を提供するための二重の必要性は、筋肉を通して剪断歪と縦張力は、筋収縮と荷重の異なる局面において、均一にはならないことを決定づけています。これは、徒手療法において、筋筋膜内で感じられるほとんどの“リリース”は、筋膜成分の実際の伸長によるものではなく、筋肉のリラクゼーションによるものであることを示唆しています。筋筋膜において力学的伸長は、ある程度まで得られ、研究では、筋周膜が3層の筋膜の中で最も適合しやすいかもしれないことを示唆しています(Purslow 2002)。 腱自身は、徒手療法が適用されている間、安静時の長さには、ほとんど変化を示さない傾向にあります。もし変形が起こりやすければ、姿勢や関節の安定のための構造としては、乏しい選択肢になるでしょう。靭帯の構成は部位によって様々であり、どの程度の弾力性が必要かにもよりますが、エラスチンの少ない靭帯は、弾性的反応において短期的な置換を示し、長期荷重において変形するものの、靭帯が短期間の徒手療法によって適用された力によって、永続的な長さの変化を受け入れるという科学的根拠はありません(Solomonow 2009)。 腸脛靭帯や足底腱膜のような密生結合組織では、臨床医の“筋膜の伸長”の感覚は、筋膜のシートそのものの、実際の伸長からきているのではありません。高密度の筋膜を伸長するのに必要とされる力は、治療的に発生される力をはるかに超えていることは現在明らかです(Chaudry et al 2008)。より適切なメカニズムは、神経的フィードバックを介して、筋膜が、治療された連続した筋肉と共に、リリースの感覚を生み出すまでリラックスすることでしょう(Schleip 2003)。 細胞外基質構造の“地図”は、どこにそれぞれの構造物が周辺構造物のどこに固定されている“べき”なのか、そして、他の構造物に関連してどこがスライドするべきなのか、を知っておくことを必要としています(Fourie 2009)。体組織の力学的伸長に加えて、機能不全(明らかな“短縮”)は、層間の漿液性潤滑の喪失により、隣接した筋膜と層間での動きを許さない、交差結合が形成されることに起因すると憶測されます。このように、ストレッチは“長さ”の問題に対してだけではなく、“貼り付いた層”の問題に対しても適用されます。一つの層を固定し、隣接した層のストレッチ動作を必要とすることによって、筋膜の隣接した面の間に、増加した関係のある動きの復元を可能にする剪断応力が作り出されます(Schwind 2004)。 解剖学的研究では、筋肉は従来の仮定された並行配列ではなく、基本的に連続して結合組織に付着し機能する,と結論づけています(van der Wal 2009 Figure 1a & b)。それぞれの筋肉スリップは、筋膜拡張部に付着し、骨膜-靭帯-関節包へ、最終的には骨に付着するため、特定の筋肉を“孤立”させることを狙った意図的なストレッチは、他の隣接する構造に対し、縦、横、斜めに方向づけられるのです(Franklyn-Miller 2009)。 ほとんどの高密度筋膜において、治療的力を使用し維持可能な粘弾性変化をおこすといった科学的根拠はありそうにありません。疎性結合組織もしくは、“緩い”軟部組織では、維持可能な変化があるかもしれませんが、徒手療法やストレッチ療法を用いての筋膜伸長に関する見解を維持するには、他の科学的根拠が必要です。 図1a,b:覆っている筋肉と平行に走っていると思われていた靭帯は(a)、より正確には、隣接する筋肉と連続して作用していると見なされる(b) (van der Wal 2009)。

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ストレッチと筋膜 パート3/3

体組織水和 ストレッチは、細胞間隙からリンパ管へ余分な液体を搾り出すことによって浮腫を軽減すると同時に、脱水状態の組織への血液循環量を増やすと考えられています。体組織水和の価値は、水とタンパク質の従属する相互作用を考察する際に、最も認識されます。細胞代謝の必要不可欠な媒体であると同時に、表面水和はタンパク質の構造安定性と柔軟性に必要不可欠です(Chen X 2008)。 タンパク質周囲の水は、それぞれ異なった機能を有する3種類に分類されることができます:(1)タンパク質分子を取り囲んでいるバルク水、(2)タンパク質内部の結合水、(3)直接的に細胞膜表面のたんぱく質と相互作用している水和。バルク水は自由に動き、タンパク質拡散の補助をします。水和水は、タンパク質を溶液の中に保つために、タンパク質表面周辺に水性ネットワークを形成します。結合水は単独で、タンパク質内部からタンパク質を安定させる複合的な密着性を持っています(Chen X 2008)。 核磁気共鳴装置(NMR)よる画像化は、ストレッチ時の荷重で水が腱から押し出されることを示しました(Helmer et al 2006)。少量の腱の水和水は、ストレッチ時の荷重において、NMRで可視的になっています。これは、荷重への対応で、高分子からの水の解放が起こった結果かもしれません。この水の動員、押出/吸収の過程は、荷重時に腱の潤滑性を高める、もしくは、荷重への対応で腱の剛性を増すための役割を果たしているのかもしれません。 靭帯の変形性質は、低水和時に減少し、高水和時に増加するように、水和の初期状態に関係しているように思われます(Thornton GM et al 2001)。 この知識は、移植靭帯提供者の準備や、前十字靭帯その他の再建手術後のリハビリテーション手順に影響を与えています(Reinhardt 2010)。 弾粘性では、“弾性”構成要素は一般的に、線維内のコラーゲン鎖とエラスチン鎖に適用され、“粘性”構成要素は一般的に、水と親水性タンパク質の力学的相互作用に適用されています。筋肉内結合組織での弾粘性反応は、ストレッチ時のコラーゲン線維間の滑らかな動きによって発生します(Purslow 2002)。 張力およびストレッチを考慮した筋膜の研究は、線維内、および全体の弾粘性反応を引き起こす線維細胞内の線維間の結合した時間依存的分子滑走の簡易システムモデルでとして、説明しています(Puxkandel 2002)。 Klingler 及びその他(2006)は、豚の筋膜組織の、ストレッチ後における細胞外基質の水結合能力の研究をしました。含水量が最初は減少しましたが、30分間の安静の後、含水量はストレッチ前のものを上回り、ストレッチの後3時間は増加し続け、弾性組織の剛性の増加を生み出しました。著者は、筋膜が機械的刺激への反応に水力学的に適合し、おそらく、親水性の高いプロテオグリカンとグリコアミノグリカンの生物学的構造における、スポンジ様機械的搾取および補充効果によるものと結論づけました。 要約すると、結合組織のコロイド的性質は、浮腫の縮小と脱水状態のタンパク質への水供給の増加の両方において、水力学が体組織ストレッチの結果として極めて重要な要因であり、体組織の伸展性を向上をさせるということになります。 固有受容性刺激 深筋膜は、“様々な自由神経終末や被嚢感覚神経終末の双方を保持しており、特にルフィーニ小体やパチーニ小体も存在し、深筋膜の固有受容性能力を示唆しています”(Stecco et al 2006)。すべての細胞外基質は、様々なストレッチ、圧力、振動、剪断力に反応する固有受容体の種類を提示します(Schleip 2003)。 細胞外基質には、筋肉内部の10倍の受容体終末が存在し、筋組織内に位置している終末は、場合により、筋肉内の筋膜を“傾聴”する役割を持っていると表現することができるかもしれません(Van der Wal 2009)。 これらの受容体は、脊髄や高次中心機構を経由して筋肉反応の介在をします。ストレッチや圧縮を含む治療方法は、例えば、固有受容性神経筋促通法(PNF)(Moore and Hutton 1980)やマッスルエナジーテクニック(Chaitow 2006)のように、これらの受容体からの反応を伴うと考えられています。そのような反射機構は、ストレッチでしばしば用いられる強度は、過度であるかもしれないことを示唆しています(Gowitzke et al 1988)。 適切にストレッチされた筋筋膜連鎖の機能的再教育は、習慣的機能不全パターンに対抗して作用することがわかっています(Richardson 2004)。世界的に、呼吸とストレッチ動作を同調させることは、おそらく副交感神経反応の増大により、痛みの軽減により良い効果をもたらすということが知られています(Vagedes 2009)。 直接的な細胞への効果 結合組織細胞自体へのストレッチ効果は、 基質そのものにおいての再構成変化に次々に作用する機能的変化を引き起こします。これらの変化は、直接的機械生物学的効果のようにみえます(Langevin et al 2009)。 一般的に、細胞外基質の張力増大は、線維芽細胞を刺激して、より多くのコラーゲンを作り出し、基質を肥厚させると仮定されています(Oschman 2001)。 実際、細胞や細胞線維生成物質は、張力荷重に対する反応として、遺伝子発現と機能における機能的変化を表示する傾向を示します。しかしながら、これは自己制御の過程です。ひとたび基質が十分に高密度になると、細胞はもはや、適用されたストレッチを“感じる”ことはなく、それに従い、新しいコラーゲンの生成を維持水準まで縮小します(Bouffard 2008)。 筋膜の周期的な力学的ストレッチは、遺伝子発現における形態学的変化と、細胞内基質と細胞外基質の両方に影響を与えるタンパク質合成を提示しました(Chen Y-J et al 2008)。治療的ストレッチがこれらの効果を起動するのに、十分に長続きするかということは不明ですが、ストレッチの十分な反復は、そのような効果を生み出すかもしれません(Standley & Meltzer 2009)。 細胞が長期間に亘り(数日、数週間)、外傷や、姿勢、スポーツや仕事で繰り返される活動に対応しての、直線的ストレッチ下にあるとき、細胞は再生する傾向にあります。すべての方向から圧縮された細胞は、腫瘍形成を避けるために自滅する傾向にありますが、(Ingber 2003)治療的ストレッチは、そのような効果を生み出すには、短すぎるようです。 主に腱膜の大きな筋膜のシートでみられる筋線維芽細胞は、力学的ストレッチに対して、細胞内の収縮性アクチン分子の総量と配列を増やすためと、細胞膜インテグリン(細胞膜貫通受容体タンパク)を通して収縮性アクチン分子を基質に繋ぐために、筋繊維芽細胞が内在する基質のシートを、事前硬直するために触知可能な力を発揮する反応を示します(Gabbiani 2003)。 最も臨床的に適用できる研究では、スタンドレーが、90秒間の刺激性“徒手療法”(細胞への圧力と剪断力)が、細胞が存在している基質を通して、8時間の効果、もしくは“何度も繰り返す緊張”を著しく弱めることを発見しています(Standley & Meltzer 2009)。 より多くの研究が、筋膜の機械力に対しての反応に関する知識に磨きをかけてくれるでしょう。この新しく発見された“コミュニケーションシステム=通信系”は、神経系や血管系に、その複雑性と重要性で匹敵し、ストレッチ(意図的であるにせよ、ないにせよ)によって出されるキューイング(指示の合図) を“聴いて”、それに基づいて自らを再生します。 結論 筋膜治療はストレッチを避けることはできず、ストレッチは様々なタイプの筋膜組織への影響を避けることはできません。結合組織は、その密度や構成に応じて、ストレッチの様々な形態に対し、力学的伸長、組織脱水と補水、固有受容性フィードバック、機械的シグナルとサイトカインフィードバックによって調節された細胞応答を経由して、それぞれに異なる反応を示します。

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ヨガ療法における筋膜 パート1/2

ヨガは、揺れている認識の波の中で、その存在を明らかにすることをやめたマインドにおいて経験されるものである - パタンジャリのヨガ経典より, ca. 150 CE 1.2 (2002年スタイルスにて翻訳) 筋膜セラピーとしてのヨガ ヨガ(=絆、調和、対立とのバランス)は、先史時代のいつ頃か、格闘技関連分野に起源を持つ、心身的なセルフトレーニングの一種として生まれました。(Feuerstein, 1988). ヨガは今も昔も「空間的な医療」への主だった探究の形なのです - 人の形を変えることにより機能がどのように変化するのでしょうか? (Myers 1988) 上で引用されたヨガにおける最初の実践的な文章は、およそ2000年前に書かれたものです。 ヨガとは非常に複雑な自己認識システムです。そこにおける精神、感情、そしてスピリチュアルな領域の地図や解説には、ヒンドゥー教やアーユルベーダのヒーリングシステムにもあるような寓話的で潤沢なイメージが含まれています。(Lad 1984) 繊細さ、ヨガにおける「八正道」、チャクラ、そして瞑想状態といったものは有益なものではありますが、ここで取り扱う範疇をこえているので、ここではフィジカルトレーニングの「四肢」とも言えるハタヨガについてのみ言及していきます。 ゴール: ハタヨガがセラピーとして使用される場合、ゴールには以下の要素の向上が含まれます: ストレングス バランス スタミナ 柔軟性、そして リラクゼーション テクニック: 実践的なところでは、ハタヨガはクラス形式であったり、より細かく行う場合には1対1のヨガセラピーとして行われます。以下に記述する原則や方法はどちらの形式にもあてはまりますが、いくつかの1対1形式に特化された要素は後述します。ヨガセラピーの主なツールは以下のものを含みます: プラーナヤーマ(心を落ち着かせ、リラクゼーション反応を呼び起こし、自律的生理機能を向上させるためにデザインされた呼吸練習法) アーサナ(縮こまったり、固まった組織を連動/ストレッチ、弱い筋肉を強化したり、動きを統合するためにデザインされた身体のポーズや動き) ディアーナ(マインドフルネス/細心の注意を払うこと) 最初の2つの方法は実践していくうえで、必要不可欠とされている細心の注意を払うことや注意力といった要素が必要となります。注意を払わずに繰り返し行われるポーズは、利点が少ないのに対して、「動きに細心の注意を払い、呼吸に気をつけて行われるものは、全て原則的にはヨガになるのです」(Davis 2009)。 このように細心の注意を払うことや解剖学的精密さにより、ヨガクラスやヨガ療法は以下に付随するテクニックを最大限に用いることになります: 特定のエリアを動かしたり、リラックスさせたり、注意を払ったりするための言葉のキューイングやイメージを用いた導き セラピストによる患者への手技的な調整 変化に気づける固有感覚を促進するための、セラピー前後のボディスキャン セッション間のエクササイズや日常生活動作指導 ハタの限られた枠組みの中で考えてみても、近年のヨガアーサナは目まぐるしいほどのバラエティーに富んでいます。ここでは独断的な立場に立たずに見ていきます;あるヨガが他のものよりも良いとする意図もありません。病院やジム、スパからアスレチックプログラム、村の集会場から修行所といった多種多様な環境において、異なった意図や強度で行われる多くの「ブランド」やバリエーションについても、どれが正しいとすることもありません。 この議論の中では、ヨガの筋膜における効果においてのみ、ヨガを区別していきます: アシュタンガは、高い強度指数を要する力強い形であり、プラクティショナーの心拍数や体内温度をあげます。(Swenson 1999) ヴィンヤサ(フローヨガ)は、形を移行する際にゆっくりとした動作を用いるものです。 ’クラシック’は、肉体的にはより静的なもので(しかし精神的にはダイナミック)、形を正確に保つものです(時に,道具によりサポートされる)。アイアンガヨガやビクラムヨガは、この分野の最たるもの。(Iyengar 1966, Barnett 2003). リストラティブ ー 静的ヨガのバリエーションで、多種多様な完全にサポートされたポーズを用いての、深いリラクゼーションを目的にデザインされたもの(Lasater 1995)。 このリストは全てを網羅しているわけでも、排他的なものでもありません;あるクラスやセラピストはこれらのアプローチを合わせて練習したり、一つのクラスを組み合せて行うこともあります。そしてこれらの他にもヨガの種類は多くあるのです。この著者はアクロヨガを高く掲げ、パートナーヨガにおける対の要素に理解を広げ、ムードラヨガに指をからませ、バクティヨガの信仰的なマントラに身を寄せました、そしてそれはバラエティーに富んだヨガに触れ始めたすぎないのです。 ヨガと筋膜 ヨガが、セラピーとして特定の生理学的コンディションにおいて有益な効果がある、とする研究があります。(Jain et al 1993, Pilkington et al. 2005, Nagendra 1986)。 コントロールした呼吸練習(プラーナヤーマ)の筋膜組織への効果や、生理学的な効果を、他の要素から切り離して計ることは非常に難しいのですが、リサーチは、常識で考えられるポイントをついています。呼吸の増加は、組織により多くの酸素を送り込み、呼吸動作は首から骨盤底に及ぶ胴体を強くし、調和させます。 (Sherman 2005, Kirkwood 2005, Androjna 2008, Farhi 1996, Iyengar 1996). 被験者からは、ヨガやヨガセラピーの後は落ち着き、バランスが取れ、よりエネルギーに溢れていると、事例を交えた報告を受けます。こういった感覚というのは 、 充分に水分が補給されていない組織への水和作用の増加、可動域の増加、以前は固まっていた組織がそれぞれスライドするようになり、受容感覚や神経的統合が高まり、そのエリアが「知覚運動性健忘症」サイクルから目覚める結果からもたらされると想定されます。(Hanna 1998). より明確ではない、生理学的及びスピリチュアル的利点(自律神経系、腺、臓器、心理状態)は、特定のポーズや方法によってあると思われますが、これらの主張を証明することはおろか、役立つコメントを出すことも私たちの能力を超えたものとなります。 メカノバイオロジーにおける挑戦的なリサーチでは、興味深いヨガアーサナの包括的な生理学的影響の可能性を示しています。(Ingber 2003, Langevin 2001, Iatridis 2003, Atance 2004, Arora 1999). 異なった細胞には、異なる力学的な理想環境があることは明らかで、細胞外筋膜基質を経由して届く、インテグリン媒介性のシグナルを感じ取り反応しているのです。 ヨガアーサナと筋筋膜経線 多くのヨガセラピーで共通するアーサナのポーズやストレッチは、単一筋、筋肉グループや結合組織構造に対してのみ働きかけたり、挑戦したりするようにデザインされているのではなく、キネティックチェーン全体や「筋筋膜経線」を連動させるようデザインされています(Myers 2009)。ヨガの正典には千を超えるアーサナやバリエーションがありますが、主なものは「ファミリー」にグループ分けされ、それぞれの経線をより明確にし、異なる部位や問題点が強調されるようにデザインされていると考えられています。(Kraftsow 1999). 参照文献: Atance, J., Yost, M.J., Carver, W. 2004 Influence of the extracellular matrix on the regulation of cardiac fibroblast behavior by mechanical stretch (2004) Journal of Cellular Physiology, 200 (3), pp. 377-386. 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トム・マイヤーズ 3337字

ヨガ療法における筋膜 パート2/2

ヨガアーサナと筋筋膜経線 このセクションでは、よくあるポーズやセラピー的動作を、連動されるラインによってグループ分けしました。このプロセスはそれぞれのポーズの複雑さを考慮すると、単純すぎると受け取られるかもしれませんが、ある種の見方やヨガ療法の領域を示すものではあります。 前屈/スーバーフィシャルバックライン スーパーフィシャルバックライン(SBL)は、足指裏から背部を通り頭頂部を渡り眉弓に繋がる一連の筋膜組織ストラップです。SBLの一部や全体への相対的な緊張は、脊柱の一次及び二次湾曲、脚部や足部に影響を及ぼします。すなわちSBLは主要な体重部分を垂直方向に整列させることで、直立バランスを楽に保つための重要な要素となります。 収縮時、SBLの筋肉は身体のほぼ全体を過伸展させます(膝は屈曲しますが)。 伸張時、筋肉と筋膜は胴体と腰部の屈曲に抵抗します。これにより、膝の伸展を保った状態で行われる、身体の屈曲を向上させる様々なストレッチが作り出されます。 図1:スーパーフィシャルバックラインをストレッチするアーサナファミリー、ウッターナサーナ/座位、立位での屈曲などの前屈位、ダウンワードドッグ、ハラアサナ/鍬のポーズ(及びその他関連するショルダースタンド)ボートのポーズ相互的抑制は、SBLとスーパーフィシャルフロントラインの間で起こるために、この姿勢ではディープフロントラインが作用していなければならない。 後屈/スーバーフィシャルフロントライン スーパーフィシャルフロントライン(SFL)は、足指先の表面から太腿の前面、及び胴体部の恥骨から乳様突起までの、身体の表面にある筋筋膜の繋がりを指します。SFLは我々の「柔らかい下腹部」や他の傷つきやすい部分を保護しています。その為、恐怖や保護というパターンにより制限されていることが多くあり、それにより呼吸時の肋骨前部の可動域をせばめることもしばしばあります。 収縮時、SFLは胴体と股関節の屈曲を促しますが、膝は伸展しています。伸張時、SFLは伸展と過伸展に抵抗し、身体全体の動きの中で、この面を開くストレッチを作り出します。 図2:ストレスによりスーパーフィシャルフロントラインが短縮されるため多くのポーズは、このラインの一部分もしくは全体を開くようにデザインされている。シンプルなコブラもしくは「ナマスカーラ/礼拝」の始まりである立位のバックストレッチなどブリッジ徐々に角度を増すバックベンド。スプタ・ヴィラーサナ/仰向けの英雄のポーズ一見簡単に見えるが、短縮した股関節屈曲筋にはチャレンジとなる。 ラテラルライン/側屈 ラテラルライン(LTL)は、足部外側アーチから耳まで、靴紐を通すように交差しながら胴体部分を駆け上がり身体側部にまで及びます。LTLは、日常生活やスポーツにおける体側部の安定性をもたらし、胴体部分を介する小さな歪みを調整します。 収縮時、LTLは同側の側屈と股関節外転を起こします。伸張時には対側の屈曲に抵抗します。LTLを連動させたりストレッチさせるポーズの種類は少なめです。 スパイラルライン/ツイスト スパイラルライン(SPL)は、側頭部から反対側の肩、肋骨、そして背中を通り、同側の腰部ASISに付着する腹斜筋を介して前面部の白線を通るようにして身体の周囲を巡ります。SPLは、腰から太腿前面を通り足根骨の下を通過、下腿側部及び後部を通過して、太腿に渡り、脊柱起立筋から後頭部までをつなぎます。 収縮時、SPLは、どの部分が緊張しているかにより屈曲、伸展、もしくは側屈を行いますが、全体的にSPLは、水平面における捻れやスパイラルの動きを生み出します。伸張時、対側のローテーションに抵抗します。これにより胴体周りや股関節のローテーションによるポーズを作り出します。 図3:捻じりのポーズは、2つのスパイラルラインを連動もしくはストレッチする相互的に鳩のポーズスパイラルライン下部をストレッチ。練習により形がどのように変化していくかが見て取れるー上の写真は経験豊富な教師、中央は生徒、下は初心者。 アームライン/肩と腕のストレッチ アームラインは、筋膜の繋がりであり、中軸骨格から腕の四「面」を介して、指先にまで及ぶ、機能的に繋がった筋筋膜の帯になります。腕の骨周りにおける筋筋膜配列のため、また、腕は安定性よりも可動性に重きを置いて「デザインされている」ため、これらのラインをストレッチするには、多くのポジションやそのライン内でも異なる要素が必要となります。全ての肩の筋肉に対するヨガ療法についてここで述べていくには、ここでの限られた範疇を超えているので、ここでは、一般的な腕のストレッチや強化するポーズが含まれています。 ファンクショナルライン ファンクショナルラインは、片方の上腕骨と反対側の大腿骨を結んだものです ー すなわち、対側の肢帯を結ぶ、とも言えー 身体の前面と背面を通ります。フロント、及びバックファンクショナルライン(FFL、BFL)は、ある意味スパイラルラインのように螺旋状になっているので、多くのスポーツアクションでも見られるような、すべての胴体部の捻りに関わっています。 その為、胴体と股関節屈曲のポーズはBLFをストレッチし、伸展のポーズはFFLをストレッチします。左に胴体部をひねるとFFLの左側とBFLの右側をストレッチし、逆もまた同様です。ここで含まれている2つのポーズは、とりわけファンクショナルラインにチャレンジしています。 ディープロントライン SFLとSBLの間、身体全体にわたって、左右の2本のラテラルラインの間に挟まれ、さらにスパイラル及びファンクショナルラインで包まれ、ディープフロントライン(DFL)は身体の「コア」を形成しています。DFLは、継続した筋筋膜の経路で内側アーチから股下をあがり、鼠蹊部と座骨を通り内腹部組織に繫がります。そして内転筋後部から骨盤底、脊柱前面にあがり、前縦靭帯、腹横筋、横隔膜、縦隔を経て、首から顎及び頭蓋骨下部にまで及びます。 股関節内転と呼吸の機能を除いて、これらのコアマッスルの多くの機能は外側のラインを再現するものとなります。DFLの一部は、胴体もしくは股関節の屈曲を、他の部位は、股関節の伸展を促します。前述のスーパーフィシャルフロントラインの項で述べたバックベンドは、特に生徒が慣れて、よりSFLがストレッチされるようになると、DFLのストレッチとしても用いられるようになります。ダウンワードドッグでは、前述のスーパーフィシャルバックラインでも示されているように、DFL下部の伸びが必要となり、踵を床やマットの上に置いてポーズをとる場合には、しっかりとした足首の背屈ができる必要があります。その為、多くのポーズでは、DFLの要素を連動もしくはストレッチ(またはその両方)することになるのです。 加えて、バランスを取るには全ラインの調和が必要となりますが、とりわけDFL構造の活性化、及び安定性が必要となります。そのため、この項では、DFLとその周辺ライン両方の活性化が必要となる、一般的なバランスのポーズを取り入れています。 図4:ディープフロントライン連動させることがヨガとピラティスのゴールとなるが、多くのビギナーの生徒は「コア」の筋肉を正しく使うことができず、それらが全ての姿勢で使われる事は難しい。バランスのポーズ逆転のポーズプランクのポーズのようにコアの筋肉の動員が必要。山のポーズのような「自己想起」の練習サヴァーサナディープフロントラインを連動させることも重要。 ヨガ療法トレーニングのスタンダード 買い手の危険負担原則。西ヨーロッパとアメリカ北部ではー実際には全世界で(インドのヨガ教師総数よりも、カリフォルニアにいるヨガ教師数の方が多いーDavis 2009)ー 職業としてのヨガ教育とヨガ療法は、早期発達を遂げました。そのため、トレーニングのスタンダード及び専門的能力の保証というものは、未だ初期段階にあり、スキルレベルにも幅があります。多くの場合、200時間のトレーニングを経て有資格のヨガ教師となりますが、その基準を500時間(もしくはそれ以上)にし、多くのヨガセラピストが要するトレーニングとすることが計画されています(Seitz 2010)。 ヨガセラピストや教師を探す際には、そのセラピスト/教師が国際ヨガセラピスト協会(IAYT)か、ヨガアライアンス(YA)に属しているか、もしくは何かしらの資格を持っているかを調べることができます。(www.iayt.org, www.yogaalliance.org)ヨガセラピストの中には、理学療法士、作業療法士、もしくは公認看護士であったり、アスリートのコーチやピラティス、パーソナルトレーニングに従事している人もいます。 ヨガにおける怪我は珍しくはないものの、著者の経験及び進行中のリサーチは、それらの怪我は、高圧的なセラピストや下手な導き方によって起こってしまうというよりは、熱心な生徒が無理にオーバーストレッチさせて怪我につながってしまうケースが多いようです(Mikkonen et al 2008)。 参照 ヨガ療法は、いわば二千年にも及ぶ「現場研修」のようなもので、近年の臨床的な実験や、繰り返し行われるエビデンスに基づいたリサーチというのは、この分野ではまだ始まったばかりです。また、ヨガセラピーには心理学的及び有機生物学的な利点があるというのも、事例証拠を元に示すことができると思いますが、これらはまだ正式な研究により充分にサポートされているわけではありません(Ornish 2007, Morse et al 1984)。 筋膜リリーステクニックとして治療的に使われるヨガは、理学療法士やいわゆる「代替」療法といった他の多くの徒手療法と似ているところが多くあります。ヨガの利点というのは、しばしばパーソナルトレーニングや理学療法で行われている、単なる局所的な強化や、徒手療法で用いられる受動的な組織のリリーステクニックとは一線を画し、ストレッチ、強化、バランスのコンビネーションから産まれるのです。 セラピーとしてのヨガは、これらの関連するポーズの「家族写真」から見て取れるように、明らかに身体全体を走る運動学上の、そして筋膜の鎖を調整し繋げていきます。才能溢れるセラピストや教師の手にかかれば、オープンで強くバランスの取れた身体へと導かれることでしょう。セラピストの中には、高齢者を専門としている人もいれば、産前、産後、子供向け、身体の自由度が異なる方やその他の対象グループを専門としている人もいます。レストレーティブヨガのポーズは身体の不自由な方にもよく使われていますが、多くのヨガクラスやプライベートセラピーセッションにおいては、ポーズを取ることが身体的に可能で、意欲的な人が対象となります。 参照文献: Atance, J., Yost, M.J., Carver, W. 2004 Influence of the extracellular matrix on the regulation of cardiac fibroblast behavior by mechanical stretch (2004) Journal of Cellular Physiology, 200 (3), pp. 377-386. 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筋膜フィットネス:神経筋筋膜ウェブのトレーニング パート1/3

リサーチは、エクササイズや動きに関わる脳に、今までとは異なったアプローチを取ることが、未来への新しい波である、その理由を示しています。 フィットネストレーニングにおける筋膜の役割に興味を持っているのであれば、以下の質問は新しい扉を開くことになるでしょう。 多くの怪我は結合組織(筋膜)の損傷であり、筋肉の損傷ではありませんー それではどのようにして怪我を予防、ダメージを修復し、伸縮性や弾力性をシステムに築き上げていくのが最善の方法なのでしょうか。 筋膜には筋肉の10倍もの感覚神経終末があります;どのようにして筋膜と筋肉に固有受容刺激を与えることができるのでしょうか? 伝統的な筋肉や筋膜の解剖学テキストは、動作機能における基本的な理解不足という点で正確ではありません。それでは我々はどのように「安定の臓器システム」である筋膜を全体として捉えて、働きかけることができるでしょうか? 意識的にしろ、無意識的にしろ、あなたは動きに関わるキャリア全体において、筋膜に対して働きかけていましたーそれは避けることができないものなのです。しかしながら、新しいリサーチは、ファンクショナルトレーニングにおける筋膜とその他結合組織の重要性を強調しています(筋膜学術講演会 2009)。筋膜は「筋肉の周りにあるプラスチック製のラップ」というだけではないのです。「筋膜は安定性と物理的な力の伝達に作用する臓器システムなのです(Varela & Frenk 1987)。 これを理解することは「フィットネス」に関する私達の考え方を革新することになるかもしれません。筋膜ネットに関するリサーチにより、伝統的な信念や近年好まれているものが揺らぐことになります。これらのエビデンスは人生におけるフィットネスすべてへの新たな考察に向けられていますーですから筋膜フィットネスという表現なのです。 この記事では、全体像としての筋膜ネットのイメージを浮かび上がらせ、及び筋膜ネットを鍛える為の理解をより深めることができる、最近のリサーチの数多くの側面の中から3点について取り上げ、探求していきます。 神経筋筋膜のウェブ 筋膜は身体組織のシンデレラであるーシステム的には無視をされ、解剖では細かく切り裂かれ捨てられる(Schleip 2003)。しかしながら、筋膜は生理学的容器であり、すべての臓器(筋肉を含む)にとってのコネクターなのである。解剖において、筋膜は文字通り油ぎってぐちゃぐちゃしたものである(教科書に描かれているものとは似ても似つかないもの)、そして各個人により千差万別で、実際の様子を描くことは非常に難しい。多くの理由から、筋膜はシステム全体として捉えられていませんでした;そのため私たちは、筋膜の生体力学における全体の役割について無知であったのです。 ありがたいことに、統合された機械生物学的筋膜ウェブの性質は、よりはっきりとしてきました。それはまさに頭頂からつま先まで、皮膚からコアまで、そして生誕から死まで、分かれ目のない一つのネットなのです(Shultz & Feitis 1996)。体内のすべての細胞は筋膜の張力環境に繋がってーそして反応してーいます(Ingber 1998)。メカニクスを変化させると、細胞もその機能を変化させます(Horwitz 1997)。“空間医療”の一部として、ストレッチ、強化、そして形を変えていくことーこれはパーソナルトレーニングの革新的で新しい捉え方ですー(Myers 1998)。 事実を基にすれば、多くの人は、筋膜を軽視する筋骨格系よりも神経筋筋膜という言葉の方を好むでしょう。(Schleip 2003)。足底筋膜、アキレス腱、腸脛靭帯、胸腰腱膜、項靭帯等、私達は、筋膜ウェブの中に存在する個々の構造を識別することに馴染んでいますが、これらは単に一つの筋膜ウェブにおけるエリアにつけられた便利なラベルにしかすぎないのです。それは郵便番号のようなものと言っても差し支えがないかもしれませんが、それぞれが分離した構造ではないのです。(サイドバーの「筋肉の孤立化」vs「筋膜の統合」をご覧ださい)。 大西洋、太平洋、もしくは地中海について話をすることはできます、でも海は繋がっていて世界にたった一つしかないのです。筋膜も同様です。私達は、個々の神経についての話をしますが、神経系統は全体として反応することを知っています。筋膜のウェブはどのようにしてシステムとして機能するのでしょうか? 魔法のように全体として筋膜のウェブを取り出したとしたら、それは裏も表も身体のすべての型を見せてくれることになります。それは大きな一つのネットで、その中で筋肉は魚のようにうごめいているのです。臓器はクラゲのようにぶら下がっています。全てのシステム、すべての臓器、すべての細胞までも、単一の筋膜ネットの海の中に埋め込まれているのです。 このコンセプトは重要です。なぜなら私たちは、個々の構造に名称を与え、臨床的にもそのように間挙げる傾向が強くあります:「上腕二頭筋を断裂してしまったね」、というように「上腕二頭筋」が我々のコンセプトであることを忘れてしまっています。私達が共通に使う、科学的専門用語というのは間違った印象を与えます。それにたいしてニューエイジの合言葉は文字通りに、真実を告げています;身体 (特に筋膜ネット)は、ひとつの繋がったまとまりで、その中で筋肉と骨が浮かんでいるのです。 怪我によりこのネットが破れたり、外科医のメスで切られたり、栄養や水分補給を充分に行うことができたり、もしくは果糖がたっぷりはいったコーンシロップで、詰まらせてしまったりします。どのように筋膜を扱ったとしても、いつかはその弾力性を失っていきます。例えば目のレンズにおいては、そのネットは通常固くなり、およそ50歳で老眼用のメガネが必要になるというようなことです。 皮膚においては、ネットの擦り切れがシワになります。股関節の軟骨のような、とても重要な要素も、命が途絶えるまでもたずに修繕が必要となるかもしれません。しかしながら最後の息を引き取るその瞬間まで、筋膜のウェブは生まれた時と同じ一枚のネットなのです。 このシステムが,神経系や循環系のように複雑なシグナルやホメオスタシスのメカニクスを発達させるというのは、特に驚くべきことでもありません(Langevin et al. 2006)。私たちが、この結合組織システムの反応を今まで見たり、探求したりしてこなかったことは大きな驚きであります。 筋肉の孤立化 vs 筋膜の統合 フィットネスの専門家の多くは、孤立化した筋肉の機能を学んできました。基本的に西洋キネシオロジーにおける解剖学は、このように問いかけます。:「上腕二頭筋が骨格の中で唯一の筋肉だとしたら、それはどのようなアクションを起こしますか?」 上腕二頭筋のみを取り上げれば、この筋肉は橈骨尺骨の回外筋であり、肘の屈曲筋であり、多少肩を斜めに屈曲させる筋肉でもあります。こう言ったことを覚えた時、私たちは上腕二頭筋がどういうものでそれが何をするものかを理解した気になります。それはひとつのものの見方ではあります。 ただ、上腕二頭筋というのは決して単独で働いているわけではないのです。その機能を知るために、筋肉を孤立化していくというのは統合(インテグレーション)や全体性(ホーリズム)とは正反対のものになります。実践的な違いは、どのようなものでしょうか?筋肉のみを単独で学ぶことは、日々の筋肉の機能において重要な、4つの筋膜の要素を取り残してしまうことになります。 隣接する内側及び外側に位置する筋肉からの影響と、それらの筋肉への影響。上腕二頭筋は烏口上腕筋、上腕筋、そして回内筋、さらには上腕三頭筋の隔膜にまで力を伝達する筋膜的な繋がりを持ちます。これらの筋膜的な繋がりは、上腕二頭筋や腕の機能に影響を及ぼします(Huijing 2007)。 近位及び遠位で繋がっている筋肉からの影響と、それらの筋肉への影響。上腕二頭筋は骨間膜、橈骨周辺の筋膜、及び屈曲筋に入り込む上腕二頭筋腱膜と遠位で繋がっています。近位では短頭と長頭を介して、それぞれ小胸筋と棘上筋と繋がっています。(Myers 2001, 2009)。 筋収縮がそのエリアの靭帯に及ぼす影響。上腕二頭筋を収縮させることは、肩と肘、両方の靭帯を安定させます。私たちの靭帯が筋肉と平行に位置しているという憶測は正しいものではありません。多くの靭帯は、連続して、ダイナミックに筋肉と力学的に統合されているため、筋収縮は靭帯が全ての角度で関節を安定させる助けとなるのです(Van der Wal 2009)。 全ての筋肉は、神経や血管により供給されなければならないという事実。これらの「ワイヤーやチューブ」は筋膜のシーツに包まれて届けられます。これらのシーツが悪い姿勢により捻れていたり、詰まっていたり、短くなりすぎている場合、筋肉の機能に影響を及ぼします(Shacklock 2005)。 (パート2/3はこちらへ) 参考文献 Chen, C.S., et al. 1997. 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