マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
プログラミング101
プログラミングの質問が出てくることはあまりありません。ただ単に、“プッシュ、プル、ヒンジ、スクワット、ローデッドキャリー、そして地面でのトレーニングを理にかなった回数と負荷で行う”と言いたいのですが、それだけでは重要な質問に対し真に答えたことにはなりません。 最初の問題は単純です:“目的はなんですか?”脂肪を落としたいのであれば、エクササイズの量を増やし、摂取カロリーを(なんらかの方法で)減らす必要がありますが、筋肉量を増やしたいのであれば、負荷と張力を上げる必要があり、筋肉を作るために十分な量のプロテインを摂取する必要があります。そして、昔のことわざで、“二兎を追うものは一兎も得ず”という通り、トレーニングにおいてそれは真実以外の何ものでもありません。 始めるためには評価しなければなりません。目標設定とはこの場所からあの場所へ行くということなので、実際今“この場所”がどこであるか見極める必要があります。前後の写真はとても価値があり、計測も素晴らしい、そして、多くのテストには価値があります。評価とは次のようなことなのです: あなたがしたいことではなく、あなたが必要なことが何かを見つける必要があります。もしあなたの体脂肪が40%であれば、筋肉量を上げるプログラムを再考する必要があるかもしれません。もし正しいスクワットの方法を知らないのであれば、スクワットを教わることが必要かもしれません。確かに、もっとたくさんのアームカールをしたいかもしれませんが、あなたのニーズによって進歩は阻まれてしまうでしょう。 プログラミングの基本となる3つのシンプルなステップ: 害を及ぼさない 目的は目的を目的として持ち続けること 道のり:ほぼ例外なく、誰かがあなたより先に行っている。彼らに従え! あなたが求めるものがなんであれ、あなたを外科医に送らないことは、ほぼ例外なく良いアイデアなのです。ですから、プログラムは怪我をさせない、邪魔しない、そして殺さないことを明確にしましょう。正しく行えば、オリンピックリフトはあなたのキャリアをより良いものにしてくれます。間違って行えば、リハビリや手術に追いやられることになります。このことが良い悪いということではなく、気をつけて、危険な状況を回避していくことなのです。怪我をプログラミングしないこと。 どれだけ完璧なプランやプログラムであっても、すぐその辺りに楽しくて素晴らしいことが現れてきます。我々は皆、これを目にしたことがあります:誰かが円盤投げのオリンピックチームに入るという目標に挑戦しています。ソーシャルメディアで、週末彼らが泥の中でレースに出ていることを見ます。そこであなたは尋ねます:これがどのように円盤投げのオリンピックにつながるのですか?答えは:「友人が皆やっているし、楽しいんですよ。」 コーチ、あるいは大きな子供の仕事は、“これ”が目的であり、そしてそれ以外のことは貴方を目的から引き離してしまうということをアスリートに思い出させることなのです。 率直に言えば、最初に同意した目的に誰かを集中させ続けるのがもっとも難しいことだと分かっています。もしあなたがボートを購入するのに退職基金に手をつけて、そして砂漠に住んでいるのであれば、恐らく誰よりもこれが理解できるでしょう。 最終的には、プログラムする最良の方法は、単純に自分より先に行っている誰かを研究してみることです。長年体脂肪減少を学ぶことについて討論していて、実質的には何も身に着けず、ステージでポーズしている人に尋ねました。有名なボディービルディングのコーチは、脂肪を除く最も良い方法を理解するためには数多くのコンテストを重ねることだと言っています。先週ダイエット本を読んだオフィスレディではなく、数多くのコンテストに出ている人に質問しましょう。 すでに経験したことがある誰かと話してください。 最後に、時々、通常2−6週間で再評価をしてください。早い段階での小さな変化が、あなたを元の道に戻してくれます。次のラウンドの写真を撮り、ウエストラインを再計測し、最初のテストの数字を見直してしてください。進歩があれば、継続を継続してください。もしそうでなければ、過去数週間を正直に振り返ってください。 プログラミングはセット数、回数、休息期間、そしてエクササイズの選択以上のことなのです。絶えずケアが必要な、生きているものなのです。もしフィットネスで成功するための秘密があるとすれば、目標設定の“ここからそこへ”の中で、プログラミングとはその“から”がすべであることを理解することなのです。今どこにいるのかを理解することが、プログラミングの鍵となるのです。
機能のために重要なエビデンス:足首靭帯結合の機能、怪我そしてリハビリ
Clanton TO, Williams BT, Backus JD, et al. Biomechanical Analysis of the Individual Ligament Contributions to Syndesmotic Stability. Foot & Ankle International, 2016, 38: 66-75. 「靭帯結合の安定性に貢献する各靭帯の生体力学的分析」 この研究の目的は、足関節遠位部の脛骨と腓骨の靭帯結合の安定性への各靭帯の特定の貢献を解説することにありました。この研究は8体のご遺体の下肢の検体を使用したものであるため、読者は、筋肉が存在している状態での機能に対してこの研究の結果をそのまま移行することに対しては注意を払う必要があります。この注意を念頭に置いた上で、研究のデータは、いわゆる「ハイアンクルスプレイン/高位置での足関節挫傷」において、これらの構造の障害のメカニクスについての洞察を提供してくれます。「高い位置」が意味するのは足首よりも少し上の脛骨と腓骨間の関節です。この関節の統合性は、足関節(距腿)の安定性にとって重要です。靭帯結合の靭帯への怪我に対しては、より頻繁に見られる足関節外側の靭帯の怪我に対してとは異なるアプローチが要求されます。 この記事では、検体が垂直方向に負荷をかけられ、足部に対して外旋力が適用された際の研究の結果に注目をします。特に、下前脛腓靭帯(AITFL)が切断された時に結果を解説します。最も起こりがちな怪我のメカニズムは、足が地面に固定された状態で身体と脚が、脚の内旋方向に向かって強制的に回旋される時に起こります。脚が内旋することにより、距骨は腓骨に対してかなり強い力を生み出し、これが靭帯の断裂を引き起こします。この研究では、足の外旋が脛骨と腓骨間における相対的な動きを再現し、下前脛腓靭帯にストレスを与えています。 足への外旋力は、回旋15度になるまで適用されました。筋肉の付着した状態の検体においては、15度の回旋を生み出すのに10.5ニュートンメートルのトルクが必要とされました。このトルク適用中、腓骨遠位部は平均4.3度回旋し、平均3.3ミリメートル後方へ平行移動しました。下前脛腓靭帯の切開後、足の回旋に必要となるトルクは24%低下しており、これは関節安定性の低下を示しています。トルクは低減したにもかかわらず、脛骨に対しての腓骨の相対的な動きは増大しました。脛骨の回旋は1.7度増大しました。後方への平行移動はわずかに増大し、脛骨に対する腓骨の相対的な側方への平行移動もかなり増大しましたが、これは著者達によりかなりの多様性があると解説をされています。 このデータがファンクショナルムーブメントのチェーンリアクションバイオメカニクスと組み合わさる時、早期の荷重エクササイズに対する注意書を提供すると同時に、プログラムのプログレッションのためのリハビリ戦略を伝えてくれます。ムーブメント指導者達は、この研究とその他の研究から、機能におけるこの遠位靭帯結合には動きがあることを知っています。靭帯の前面は外旋によってのみでなく背屈によってもストレスを受けています。「真」の骨の動きが、いかに「相対的」な関節の動きを理解することは、どのファンクショナルムーブメントが靭帯結合の治癒にストレスとなるかを理解するために重要です。これらの動きは治癒段階の初期においては避ける/制御されるべきですが、靭帯の成長を助けるために少しずつ段階的にリハビリのプログラムに取り入れられていくべきものです。 もし靭帯結合全体が断裂していなければ、炎症のプロセスをコントロールする時期の後でエクササイズを始めることが可能です。治癒を可能にするために、可動最終域での足関節背屈と足部の相対的外旋は避けるべきです。これらのポジションは下前脛腓靭帯に張力をかけます。しかし、荷重での動きは筋肉の活性と浮腫低減の促進、そして固有受容的コントロールの促進のために使用することができるでしょう。下腿部の外旋を引き起こす動きは、足関節における相対的な内旋を引き起こします(怪我のメカニズムの反対)。健常側の脚でのランジ、そしてどちらかの手でのリーチは、指導者が動きのターゲットの適切な角度、距離、高さを選択することができる限り、適切な動きを生み出すために使用することができるでしょう。 グレイインスティチュートにおいて、これら3つの変数要素は3D空間における動きのトライアンギュレーション(3つの角度)を形成するものです。これらは、あらゆる運動を定義づける10のオブザベーショナルエッセンシャルズ(変数要素)の一部です。これらは、アプライドファンクショナルサイエンス(応用機能科学)の指導者が患者やクライアントの治癒のプロセスを妨害することなく運動の成功を生み出すために活用する「トゥイーコロジーのパワー」を提供します。
機能のために重要なエビデンス:足首靭帯結合の機能、怪我そしてリハビリ(ビデオ)パート1
いわゆる「ハイアンクルスプレイン」と呼ばれる腓骨と脛骨の遠位部にある靭帯結合の挫傷は、どのようなメカニクスで発生するのでしょうか?そしてリハビリの改定において、よくみられる足首外側の座礁と異なるアプローチが必要とされる理由とは?
機能のために重要なエビデンス:足首靭帯結合の機能、怪我そしてリハビリ(ビデオ)パート2
腓骨と脛骨の遠位部で発生する靭帯結合の怪我のリハビリにはどのような動きが望ましいのか?団体的に少しずつ靭帯へのストレスを増大し、組織の頑健さを構築していくための方法とは?
組織的なシステムの一部分 パート1A
(Bridging the Gap from Rehab to Performanceからの抜粋) 見習うべき専門家が非常に多く存在する医療とパフォーマンスの世界では、哲学的なトレーニングモデルの発展は、特に経験の少ない実践者にとって、創出し、実施することが難しいことでしょう。 独占的または排他的になろうとするよりも、その中核の原理まで掘り下げたとき、数多くの学派が、同じことに焦点を当てていることを理解することが重要です。全てのテクニック、エクササイズの種類、学派、そしてトレーニングの原理は、リハビリからパフォーマンスへのギャップを埋める際に価値のあるものです。 といったところで、これらのシステムを構成する共通部分について詳しくみていくことから探究を始めていきましょう。これは教義的な分類システムではありません。多くの介入方法や学派は1つ以上のカテゴリーに分類されるでしょう。それぞれの介入方法は多くのパーツからなり、あなたの思考プロセス上では、あるものが分類されたものとは全く違うカテゴリーに分類されるかもしれません。それはそれで問題ありません。システムを理解し始めるにつれて、それぞれのフレーズや学問、そしてコンセプトがあなた自身の実践の場において、どこに分類されるかを考えてみてください。 リハビリテーションとパフォーマンスのギャップを埋めようと努めるとき、全てのモデルが当てはまり、全ての学問が当てはまり、そして全ての「教祖(グールー)」が当てはまります。あなたの専門性が何であれ、アスリートをスポーツパフォーマンスへ復帰させるプロセスを作り上げようとするとき、その学派がこのシステムのどこに分類されるかを判断しましょう。 次に各カテゴリーの概要を見ていきます。 簡潔に、あるクライアントが痛みを伴ってあなたの元に来る時のことを考えてみてください。例えば、その人は鼠蹊部に痛みのあるサッカー選手だとしましょう。まず、どの組織が問題なのかを判断する必要があります。痛みの生成源を明らかにする必要があります。 その痛みは、内転筋群または腹部の筋や健の断裂からきているのでしょうか?その痛みは2つの骨によって挟まれた股関節の関節包からきているのでしょうか?その痛みは関節面の変形によるものでしょうか?股関節の全ての構造は正常で、痛みは腰部または中枢神経システムからでしょうか? 一旦これが定まれば、その関節が周りの関節に連動して適切に動くことを確かめる必要があります。股関節の可動域は完全でしょうか?柔軟性は正常でしょうか?関節の全ての要素はちゃんと機能していて、全体の一部としてシステムにフィットできるでしょうか?股関節が動くために腰椎は安定する事ができるでしょうか?股関節に影響を与えることがある足関節の制限はありませんか?このセクションはモーションセグメント全体について考慮していきます。 次に、正しい筋が適切なタイミングで活性化されるようにする必要があります。適切な精神運動コントロールを確かめる必要があります。臀筋が股関節伸展の主働筋として作用しているのか、それともハムストリングまたは腰部傍脊柱筋群が動作パターンを支配しているのでしょうか? ここからは、体性感覚のコントロールに移っていきます。私達は、反射、視覚、平衡感覚、そして全ての神経運動プログラムの要素を含む神経系システムの全ての要素が、どのようにモーションセグメントが動くか、またはなぜ痛みが発生しているかにといったことに影響しているかということを考慮します。これは最も大きく、そして最も複雑なカテゴリーであり、その他全ての要素に間違いなく影響し、そして影響されます。 次に、ファンダメンタルパフォーマンスがあります。股関節自体が基礎的な筋力を備えているだけでなく-これはモーションセグメントのカテゴリーにも分類できます-、システム全体が、私たちの次のカテゴリーであるファンダメンタルアドバンスメントにおいてパワーとして発揮するための適切な基礎筋力を備えているかを確かめるのです。 ファンダメンタルアドバンスメントにおいて、私たちは様々な負荷やスピードで動き始め、加速やクロスオーバー、ドロップステップなどの基本的なスポーツ動作を導入していきます。 最終的に、アドバンスドパフォーマンスでは、クライアントに特有なアクティビティへの復帰目標を達成し始めていきます。クライアントがアイスホッケー選手であれ、ラクロス選手であれ、または肉体労働者であれ、私たちは、アクティビティに復帰する前に習得しておかなければならない特定の動作の必要条件を取り入れていくのです。 もちろん、この戦略の根本には生物・心理・社会的な要因があり、それらは痛みやチームの介入に対する反応が、各個人においてどのように異なるかということに影響します。個々の生態における生化学的、栄養的、そして遺伝的な要因は、その人の考え方や気分、そして態度に影響を与えます。ある人に対する社会的、家族的、そして文化的な影響は、あらゆる刺激に対してその人がどのように反応するかに強く影響を及ぼします。生物・心理・社会的な影響は、私たちが常に考慮しなければならない個々の要因です;ふたりの人に対して同じになることは決してないでしょう。 連続体の一部分が別の部分の必須条件である必要はありません。これらの分野の多くは、アスリートがマッサージテーブルからフィールドへと進めるにつれ、同時に取り組むことができ、また取り組むべきです。しかし、これらはすべて、アスリートが競技に無事に復帰する前に考慮される必要があります。 痛みの生成源 痛みの生成源を決定づけるとき、私たちは問題のある組織を明らかにします。滑液包を扱っているか、または腱を扱っているかどうかは重要なことです。もし、クライアントが滑液包炎の管理に苦労している際に、私たちが炎症を起こしている滑液包に対して道具を使った軟部組織の治療を試みたならば、その症状を悪化させてしまうかもしれません。しかし、もし腱障害について対処しているならば、軟部組織の治療は回復のプロセスを著しく助長することになるかもしれません。 他のケースでは、もしアスリートに椎間板を起因とする痛みがあるならば、体幹の屈曲は症状を悪化させてしまうかもしれません。もし、そうではなく、狭窄症を見ているのであれば、体幹の屈曲は症状を改善させるかもしれません。問題の組織を正確に明らかにすることは、初期治療を適切な方向に向けるために重要です。 もし、あなたのツールボックス内に検査や評価がな含まれていないのであれば、診断医と仲良くなり、患者やクライアントをその人と共有しましょう。評価方法を学ぶ必要はありませんが、評価について理解し、紹介についての方針を定めておく必要があります。 幻肢痛や慢性痛、非特異的腰痛の患者のように、もし痛みの生成源が存在しないのであれば、私たちが最初に着目する必要のある部位にたどり着くためには、可動域の制限や代償動作パターン、安定性の欠如、神経系の影響または生物・心理・社会的な事情といった他の識別因子を用いる必要があります。痛みの生成源を伴わない痛みがある人は、困難な状況を提示します。改善する必要のある侵害性の刺激もないため、典型的な痛みを除去するためのテクニックは効果がありません。 痛みの初期の発見においては、どの「組織が問題なのか」を明らかにします。私の場合は、当面の問題を判断するために、私の徒手療法と鑑別診断の経歴から結論を引き出すでしょう。目の前の患者に対して取り組んでいる診断を確定するためには、理学療法やアスレチックトレーニングの学校で学んだスキルや、私が整形外科的徒手療法の資格のために勉強していた時に習得したものを応用することが必要かもしれません。 私たちは痛みを考慮して、キネシオテープのような方法を用いてそれを軽減したいと思うかもしれません[i]。おそらく、他の標準的な方法も痛みを軽減する助けとなるでしょう。選択肢として多くの臨床的措置があります;あなたのスキルのリストは、私のリストとは異なり、それらがあなたの選択を左右するでしょう。 参照 [i] Mark D. Thelen et al, “The Clinical Efficacy of Kinesio Tape for Shoulder Pain,” Journal of Orthopedic and Sports Physical Therapy, 2008.
組織的なシステムの一部分 パート1B
(Bridging the Gap from Rehab to Performanceからの抜粋) モーションセグメント 私たちは、局所的なケガの箇所や痛みの源だけでなく、モーションセグメント全体の正しい使い方について再確立する必要があります。例えば、もし、肘の問題に対処しているのであれば、頚椎、肩複合体、肘、手首そして手が一つのユニットとして連携しているか確認する必要があります。また、身体の他の部位においても代償的な可動域の損失がないことも確かめなくてはなりません。正しい神経筋骨格評価を通して、診断医は傷害を負った組織を守るために身体が代償を行ったかどうか、またはその箇所を特定することができるでしょう。神経システムは痛みのある組織の保護を優先し、それに応じて動作を調整します[ii]。 私は昔、トラウマ的外傷で肘の脱臼をしたアスリートを受け持ったことがあります。私たちのかなりの努力にもかかわらず、彼には防衛性筋緊張がおこり、そして身体から腕を離すことを恐れたため、動きの損失や痛みなどの肩の問題を抱えてしまいました。結果として、傷害箇所の隣の部位、このケースでは肩に機能不全が起こってしまいました。 全てを予防することはできないかもしれませんが、傷害の起こった体肢を構成し、取り巻いているモーションセグメントや、傷害の上部および下部の脊髄分節は、恐れや忌避、そして痛みによって代償がおこることがあると考えます[iii],[iv]。 また筋膜ラインに沿った制限が、その上部や下部またはその両方に緊張をおよぼすこともあり得ます[v]。モーションセグメントは何通りにも定義することが可能です。単純に上肢、脊柱または下肢をモーションセグメントとして考えることもできますし、または筋膜ラインやキネティックチェーンをたどることで、より広義に考えることもできます。しかし、ある患者についてモーションセグメントを定めたら、ただ関節や組織を分離させて考えるのではなく、リハビリのプロセスを通してそれに取り組み、そして考慮しなければなりません。 モーションセグメントについて考えるとき、バイオテンセグリティのコンセプトを思い出してください。バイオテンセグリティでは、テンセグリティの数学的なコンセプトを人間の身体に応用します[vi]。1920年代と1940年代の間にR. Buckminster Fullerによって展開されたテンセグリティとは、3次元の構造は、構造の安定を維持するために圧縮の間欠周期を伴いながら一定の張力下にあるというコンセプトです。 バイオテンセグリティは、人間の身体の中は、分子から細胞、組織、器官、そして臓器系といったすべてのレベルにおいて同様に作用しているとしています。人間は、身体中で発生する一定の張力と間欠的な圧縮によって、重力の影響にも関わらず普遍的な形を維持します。私たちの身体システムは、分子のレベルまでこの張力に基づいてできています。私たちの動作選択と姿勢は、身体が変化し、適応できるために必要な圧縮力をもたらし、これらはすべて普遍的な人間の形を維持しながら行われます。 身体をテンセグリティのシステムとして考えた時、動作を分離して行うことは決してないことに気づきます。ある部位に動作を起こすためには、それが起こるように結果的な圧縮や張力が他の場所に起きなければなりません。このコンセプトは、何事も独立して起こらないというシステムを表しています。 これらのコンセプトや介入方法を考えながら、私たちはクライアントがどのように患部全体を使っている、または使っていないかということを考慮します。モーションセグメントの機能を再確立するための徒手療法や、動作を伴ったモビリゼーション、または道具を使った軟部組織の治療から治療方法を引用するかもしれません。ドライニードルやカッピングが介入の適切な選択肢かもしれません。あるいは、患部の治療のために筋膜または内蔵へのマニピュレーションを用いるかもしれません。 FMS(ファンクショナルムーブメントスクリーン)やSFMA(セレクティブファンクショナルムーブメントアセスメント)またはFRC(ファンクショナルレンジコンディショニング)トレーニングで学んだコレクティブエクササイズが役に立つかもしれません。マッスルアクティベーションテクニック(MAT)も、体肢やモーションセグメント全体が正常に機能するよう試みている段階で用いることができるかもしれません。 あなたのトレーニングや専門分野に基づいて、この段階における選択肢はほぼ無限なのです。 精神運動性コントロール 精神運動性コントロールを見直す中で、筋やその他の組織がそれぞれの役割を遂行する際に、適切な組織が適切なタイミングで活性されることを考慮します。主働筋は主働筋でなければなりません。協働筋は協働筋でなければなりません。安定筋は安定筋でなければならないのです。 腰部筋群のような安定筋が股関節伸展の協働筋になったり、ハムストリングのような協働筋が主働筋になったり、または、ほかの筋が臀筋の役割をしているためにこのような主働筋の活動量が減少すると、身体は腹を立てます-身体は痛みを発生させるのです。まさに工場のように、身体は個々の部分それぞれに役割があります。もし工場で働く人がその人の役割でない仕事をやり始めたならば、ライン全体が混乱してしまうでしょう。一つの仕事に労働者が多すぎる一方で、ほかの仕事に誰も集中していないのです。結果としてカオスとなり、私たちの場合には、身体に痛みが発生します。 身体の神経筋のコントロールは、適切な動作を確認するために微調整する方法です。もちろん、必要であれば身体は解決策を見つけますし、理想的とは言えない運動パターンを用いて代償しようとします。[vii]その新しく作られた運動パターンは効率的である可能性は間違いなくありますが、これらの代償動作によって発生するバイオメカニクス的なストレスは、もし対処されない場合にはダメージを引き起こすことがあります。 経年的に、この代償動作は痛み、あるいは柔軟性と筋力の非対称性につながり、問題をさらに悪化させるでしょう。代償パターンは、ひとたび脳がこの新しい回避策を有髄化することでデフォルトのパターンとなるでしょう。 精神運動性コントロールには引用できる多くの学派があり、例を挙げればダイナミックニューロマスキュラースタビライゼーション(DNS)やポスチュラルリストレーションインスティテュート(PRI)、MAT、ドライニードル、FMS、SFMA、Shirley Sahrmannのムーブメントシステムインペアメント(運動系機能障害)そしてピラティスなどがあります。私たちは、特定のトレーニングや治療法にとって最も適切なものを利用します。 生物・心理・社会的考慮点 生物・心理・社会的モデルは1977年に精神分析医であるGeorge Engelによって広められました[viii]。このモデルでは、彼は、人の生活における生物学的、心理的、そして社会的な要素はそれぞれに対して、そして人間全体に対して影響を及ぼすと示唆しています。これらの3つのことが組合わさることで痛みや苦しみ、そして治療方法に対する反応を説明できます。 怪我による精神的なストレスは、ストレスホルモンと炎症マーカーを増加させることがあり、これによって身体的な怪我からの回復が難しくなります。飲酒や喫煙などの社会的な行動はすべて、人の総合的な身体と精神の健康に影響を与えます。家族や友人からのサポートが十分でないと、鬱状態を悪化させ、その人の生態に影響します。また、薬物乱用、睡眠障害、または食習慣の乱れといった不健康なライフスタイル習慣につながり、それによって生態的な回復力に大きな影響を与えます。 実際に、生物・心理・社会的な要因は、あなたの患者の回復力や競技に復帰に影響及ぼす第一の要素であると議論されることも可能でしょう。 私たちは皆、同じスポーツをする2人の人が同じ診断を伴いやってきて、その後まったく違う結果を示したという経験があるでしょう。このようなことが起きた時は、それぞれに対して個別の生物・心理・社会的な要因が関係している可能性が最も高いでしょう。 どんなアスリートに対処するときでも、怪我がその人の精神的な健康面に影響を与えるということを認識していなければなりません。ある人がトラウマに対してどのように対処するかは、社会的なサポートや怪我のストレスに立ち向かうために用いるテクニックによって決定されるでしょう。これらのストレスはその人の生態や回復力に影響を与えるのです。 体性感覚コントロール 体性感覚システムは、身体の内部の状態の変化を察知し反応する神経受容器や細胞のシステムです。感覚システムなしに運動システムは存在できません。インプットによってアウトプットが生じます。インプットが悪いことはアウトプットが悪いということと同じです。 もし私たちが継続して間違ったコマンドをコンピューターのキーボードにタイプすれば、私たちは間違ったアウトプットを得続けるでしょう。コンピューターが正常に機能するためには、私たちは正しいコマンドを与えなければなりません。同じことが私たちの身体にも言えるのです。もし、欠陥のある情報を送ってしまえば、私たちの運動反応は間違ったものになり、もしかすると非効率なものになるかもしれません。体性感覚コントロールについて取り組んでいるとき、[ix]私たちは、前庭系バランス、姿勢の揺れ、反射、視覚系、そして固有受容的気づきに対して取り組んでいるのです。 リハビリからパフォーマンスへ移行するこの段階では、バランス及び姿勢の反射の再獲得、そして運動のアウトプットの向上のためのより良い感覚入力を作り出すことが中心となっています。ここでは、運動学習と運動コントロールのコンセプトが役に立ち、私たちは、クライアントに対してバランスや固有受容、そして反射反応に取り組む際、その助けとしてDNS、PRI、ヨガまたはピラティスのテクニックを応用できるでしょう。 参照 [ii] Hug F, Hodges PW, Carroll TJ, De Martino E, Magnard J, Tucker K, “Motor Adaptations to Pain during a Bilateral Plantarflexion Task: Does the Cost of Using the Non-Painful Limb Matter?” PLOS ONE, 2016;11(4):e0154524. [iii] TL Chmielewski, “The Association of Pain and Fear of Movement/Re-injury with Function During Anterior Cruciate Ligament Reconstruction Rehabilitation,” Journal of Orthopedic Sports Physical Therapy, December 2008. [iv] Leeuw M, Goossens MEJB, Linton SJ, Crombez G, Boersma K, Vlaeyen JWS, “The Fear-Avoidance Model of Musculoskeletal Pain: Current State of Scientific Evidence,” Journal of Behavioral Medicine, 2007;30(1):77-94.doi:10.1007/s10865-006-9085-0. [v] Stecco L, Fascial Manipulation For Muscuskeletal Pain, 1st edition, Padova, Italy, Piccin Nuova Libraria S. P. A, 2004. [vi] Swanson RL, “Biotensegrity: a unifying theory of biological architecture with applications to osteopathic practice, education, and research—a review and analysis,” Journal of the American Osteopathic Association, 2013;113(1):34–52. [vii] Paul W. Hodges and Carolyn A. Richardson, “Insufficient Muscular Stabilization of the Lumbar Spine Associated with Low Back Pain,” SPINE, 1996. [viii] Papadimitriou G, “The ’Biopsychosocial Model’: 40 years of application in Psychiatry,” Psychiatrki, 2017;28(2):107-110.doi:10.22365/jpsych.2017.282.107. [ix] Dario Riva et al, “Proprioceptive Training and Injury Prevention in a Professional Men’s Basketball Team: A Six-Year Prospective Study,” Journal of Strength and Conditioning Research, February 2016. [x] Dario Riva et al, “Proprioceptive Training and Injury Prevention in a Professional Men’s Basketball Team: A Six-Year Prospective Study,” Journal of Strength and Conditioning Research, February 2016. [xi] Gray Cook, “The Art of Screening, Part 2: Failure, Feedback and Success,” graycook.com.
Tステップのバリエーション
バックペダルから足を着地して、加速して飛び出してくる動きのパターンであるTステップを、段階的に、よりスポーツの場面で見られる動きとして安全で効率的なものにするためのプログレッションをリー・タフトがご紹介します。
ヒップヒンジ vs スクワット
ヒップヒンジのパターンとスクワットのパターンが、混乱しがちな方も多いのではないでしょうか?これら二つの動きのパターンのシンプルな相違とは何かを、わかりやすくキャシーが解説してくれます。
複数の高強度トレーニングを連続して行えますか?
トレーニング週についてのマイクのコンテンツを見た視聴者からの「高強度のトレーニングを連続して行えますか?」という質問に答えます。高強度は、真の意味での高強度なのか?高ボリュームなのか?
ローテーションで広背筋を強化する方法
ウインドシールドワイパーというムーブメントドリルをご存知ですか?私も大好きなムーブメントの一つですが、この動きを逆向きにすることで動きの感覚がまた変化します。ぜひ試してみてください。
クロックンロール
先日ライブ配信をした骨盤底の健康のウェビナーで、キャシーが紹介していたクロコダイル呼吸とローリングの組み合わせである「クロックンロール」を解説した2014年のビデオをお届けします。リカバリーとしても活用できる呼吸とローリングの組み合わせを試してみてください。
縄跳びは役立つか?
視聴者からの「縄跳びはアスリートのSAQトレーニングに役立つか?』という質問にリー・タフトが答えます。縄跳びの着地方法によって、期待できる効果が変わってくるって、理解して跳んでいましたか?