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コンディショニングが命を救い得る理由 パート3/4

有酸素性フィットネスの利点―コンディショニングがアスリートのためだけのものではない理由 ここまで読んでくださったのなら、身体が生きるために必要な炎症促進力および抗炎症力を均衡に保つ大切さがわかっていただけると思います。急性の炎症が、慢性的、体系的、及び、低度な炎症へと移行するのを防ぐことが、社会を停滞化する多くの病気を予防するために、愛する多くの人々を救うために、絶対的に必要なのです。 科学は、なぜ、どのように、に対する完璧な答えを示せてはいませんが、一つだけはっきりわかっていることは、高いレベルの有酸素性フィットネスが、身体が炎症を静める能力を高めることのできる最も強力な武器であるということです。これは、有酸素性フィットネスが、迷走神経緊張と呼ばれる休息時の迷走神経の全体的な機能に直接関係しているからです。 このことを確かめるために、寿命と身体的運動に関する11の論文の興味深いレビューを見ることができます。 持久性はまさに命を救うことができる “Does Physical Activity Increase Life Expectancy? A Review of the Literature(身体的運動は寿命を延ばすか?文献レビュー)“という論文では、一般的に活動的であることは寿命を延ばすかどうか、そしてアスリートであるということがそこにさらなる違いをもたらすかについて考察しています。 皆さんが想像する通り、この論評では、活動的な人はそうでない人に比べ、0.4年から4.2年ほど長く生きることがわかりました。ここには大きな驚きはありません。 しかし、驚いたことに、様々なアスリート(大半は一流のアスリート)の寿命を見てみると、平均的な人よりも一貫して長生きだった唯一のグループは持久系アスリートでした。実際、持久系アスリートは、平均的な人よりも4.3年から8年も長く生きるとされています。 さらに興味深いことには、この論評で扱われた研究のいくつかでは、チームスポーツアスリートの寿命は、程よく活動的な人の平均に比べ、最大5年も短いことがわかりました。 もちろんこのレビュー以外にも、高い有酸素性フィットネスを持つ人は、心臓血管系疾患、脳卒中、糖尿病などにはなりにくく、認識機能などが高いことを支持する研究が豊富にあります。従来は、この関係は、心臓血管系システムの変化そのものによると思われていました。しかし、高い有酸素フィットネスが多くの病気のリスクを下げる大きな理由は、それが身体を慢性的な炎症から守っているからだということが明らかになってきました。 例えば、“Markers of inflammation are inversely associated with V̇o2 max in asymptomatic men”(炎症の指標は、症状のない人のVO2 maxと反比例する)という研究では、有酸素性フィットネス(VO2 max)とC反応たんぱく質や線維素原などの炎症指標の間には、驚くほどはっきりとした比例関係があることを示しています。 研究を掘り下げていくと、有酸素性フィットネスを高める最も大切な利点は、その過程で起こる抗炎症性能力にあることが明らかになっています。この大切さは強調してもしきれません。 大きくて強いことはかっこいいかもしれませんが、コンディショニングは生死を分けるものにさえなります。 私が優先順位を考え直した理由-あなたも考え直した方がいいかもしれない理由 ストレス、炎症、病気に関する事柄を集め、私の母のような一見何の問題もない人がどのようにして脳卒中を患うのかを理解すればするほど、私は、私自身のトレーニングやライフスタイルを見直し始めました。 自分自身の死を実感することよりも強い変化の薬はありません。 私は自分の優先順位を変え、トレーニングを見直す必要があるとわかっていました。ハイレベルの格闘家たちのコンディショニングには慣れていたものの、自分自身のトレーニングは、主にウエイトリフティングとほんの少しまたはゼロの有酸素運動で成り立っていました。 さらに悪い事に、母の脳卒中のケアから来るストレスと、母を数カ月にわたって医者から医者へと連れて行くストレスからも大きな打撃を受けていました。 食習慣および睡眠も相当悪化していました。気分が優れず、私の体重は脂肪だけで5-7kgほど増加しており、この生活を変えなければいけないことは自覚していました。 その2008年の悲惨な一日から数週間、数か月、数年を経て、私のトレーニングと優先順位は劇的に変わりました。私にとってどれだけのウエイトを持ち上げられるかはどうでもいいことになり、コンディショニングはトレーニングの日課になりました。 これまでに格闘家が試合でパフォーマンスを発揮するのをサポートするために、相当な時間をコンディショニングの勉強に費やしてきたのにもかかわらず、自分自身のコンディショニングを改善したい、健康でありたいという願望が、もっと研究をしたいという思いを強くしました。 一年後の2009年、私はこのウェブサイトを始め、コンディショニングについて書いたり話したりすることを始めました。 そうして私は、目指しているフィットネスの目標が何であっても、健康で長生きしたいと考えるのなら誰もが行うべき3つの結論に達しました。 これらの3つの領域は健康とウェルネスの出発点だと考えています。あなたが先ほどの統計の数字の一部になることを避けたければ、これらは間違いなく非常に重要なことです。 ポイント1:高強度トレーニングをやり過ぎない。80/20ルールに従う。 コーチとして15年間以上活動し、数千人の人々を見てきた中で私が学んだことは、長期間にわたる成功には、強度よりも一貫性の方がはるかに大事だということです。 ここ5年間くらいで、ほぼ全ての人が高強度という流行の波に乗りました。米国中の人々がみな、理想の身体を手に入れたければ、ジムでは毎回死ぬほど追い込まなければいけないと信じるようになりました。 私は過去にもこのことについてたくさん書いてきましたが、この傾向は一向に減りません。確かに強度は大事ですが、大事なのはそれだけではないのです。 高強度の一番の問題は、それにより全ての組織や免疫システムに多大なストレスがかかり、それが炎症を起こす大きな元凶になるということです。 長期的な成功のためには、強度よりも一貫性が圧倒的に重要なのです。 これこそ、強度が強すぎると簡単にトレーニングのやりすぎになってしまう理由です。慢性的な低レベルの炎症を加速し、放っておけばプラトーや、怪我などにつながってしまうのです。 前回の記事では、クロスフィットがした正しいことと、何がクロスフィットを成功させたのかについて話しました。しかし、クロスフィットの高強度への飽くなき執着は、完全に間違ったものであり、為になるどころか害にさえなっています。 母の脳卒中の後、私は高強度トレーニングを行うのをせいぜい週に2日までに減らしました。また、量よりも質を重視する一方で、定期的にスイミングなど低強度でストレスを低減するトレーニングを始めました。 先に紹介した文献では、持久系競技のアスリートは一貫して低い疾患率を持ち、長生きをしていることがわかりました。私の目標が同じ利益を享受することだとすれば、彼らがどのようにトレーニングをしているのかを知る必要がありました。 この話題に関する素晴らしいレビューが、“Intervals, Thresholds, and Long Slow Distance: the Role of Intensity and Duration in Endurance Training.(インターバル、限界、長距離:持久性トレーニングにおける強度と時間の役割)です。 このレビューによると、成功している持久系アスリートのほぼ全ての強度の分布をみると、魔法の割合は80%の低強度と20%の高強度でした。 世の中で推奨されている多くのプログラムはその全く逆で、80%の高強度と20%の低強度です。そしてなぜパフォーマンスが上がらないかを疑問に思い、関節を痛めています。 あなたは持久系のアスリートになりたいとは思っていないかもしれませんが、病気をせずに健康で長生きすることが目標であるのなら、こういったアスリートのようにトレーニングをすることには大きな意味があります。

ジョール・ジェイミソン 3613字

コンディショニングが命を救い得る理由 パート2/4

ストレス、サバイバル、炎症の生態学 ― あなたを生かすシステムが、あなたを殺すこともある 「ストレス」という言葉は広く知られていますが、多くの人は、ストレスが身体にとってどういう意味があって、炎症とどう関係しているかについては理解していません。ストレスと炎症の関係は、生きるため、そしてどのようにして米国で3人に1人が最期を迎えているのかにとって、非常に重要なものです。 炎症がどのように働いているのか、どのようにして人を死に至らせ得るのかを深く追究する前に、自律神経系(ANS)について少しお話する必要があります。あまりご存知ない方のために説明しますと、自律神経系は生存に直接関係する二つの主要な役割を担っています。 第一に、自律神経系は身体の内的環境の構成要素を確認しています。血圧から、血糖値、酸素レベルまで、あなたが何をしている時でも、これらの指数が通常の範囲にあるかをチェックします。 ウエイトリフティングやスプリントをする時も、寝ている時も、断食している時も、すべての時間で、自律神経系は、どこにも異常がないか監視しています。もし自律神経系のこの働きがなくなれば、あなたはそう長くは生きていられないでしょう。 自律神経系の二つ目の役割は、一つ目にも直接関連していますが、エネルギー生産とエネルギー貯蓄を管理することです。これも生きるために非常に重要な要素であり、特に進化系生物学の観点からも重要です。 野生の動物にとって、生き延びるためには、エネルギーをコントロールすることが何にも増して大切です。このトピックについては前回クロスフィットに関して書いた記事で説明しました。 動物が餌を捕まえるために走るとき、あるいは餌にならないように逃げるとき、生き延びるために必要なのは、出来るだけ素早く大量のエネルギーを発揮する能力です。 自律神経系は、交感神経系と副交感神経系という二つの枝を通してエネルギー管理を効率的に行っています。交感神経系の働きでエネルギー生産を高める一方で、副交感神経系の反対の作用を通じて、エネルギー生産を弱め、エネルギー貯蓄を高めます。 下記のチャートでは二つのシステムがどのように共同して働いているかを見ることができます。 なぜこれを理解することが重要なのでしょうか?このことが生死に関してどれほど重要なのでしょうか? 答えは単純です。自律神経系の二つの枝は、エネルギーだけではなく、炎症もコントロールしているからです。そして炎症こそが、生活のストレスが時間とともにあなたを死に至らせる原因になるものなのです。 人生―ストレスの諸刃の剣 自律神経系がどのように炎症を調節しているかを理解するために、交感神経系と副交感神経系が、生きるため欠かせない役割を果たす特定のホルモンの放出を刺激する方法について見ていきます。 この図の通り、交感神経系はいわゆるアドレナリン作動性炎症誘発経路の一部であり、大食細胞と呼ばれる免疫細胞の受容器と結合するホルモンを放出します。この結合が身体に増幅された免疫反応をもたらします。つまり、交感神経系が活性されると、身体は本質的に炎症誘発性状態になります。 生存に関わる自律神経系の役割に話を戻すと、エネルギーの要求が高まった時に免疫システムを高反応状態にすることが有益であるというのは理にかなっています。交感神経系は、「闘争―逃走」反応を必要とする時に働きます。この状態では、危険な病原菌にさらされる可能性だけでなく、組織の修復が必要となるストレスがかかる可能性も高まります。 これがそもそもの炎症反応の大部分です。 例えばワークアウト中には、様々な組織に代謝および機械的なストレスが発生します。このストレスが炎症につながり、その炎症が脳に信号を送り、より大きく、強く、機能的な組織を作るための修復プロセスが始まります。 炎症なしには、このプロセスは起きず、私たちが環境に適応する能力もなかったでしょう。 すなわち、炎症は適応と生命維持において欠かせないものです。しかし、炎症は諸刃の剣にもなりえます。 急性の炎症は身体を守るものです。それに対し慢性的炎症は、私たちをゆっくりと心臓血管系の病気や死へと誘うもので、これこそがアメリカ人のほぼ3人に1人に起こっていることなのです。 炎症を抑えるー健康、ウェルネス、長寿の鍵 炎症があなたの味方になるか、それともあなたをその3人のうちの1人にするかは、必要がなくなった時に炎症を止めることのできる能力にかかっています。このプロセスをコントロールする自律神経系のもうひとつの側面は、コリン作動性抗炎症経路として知られています。 この経路は、免疫細胞の特定の受容器に結合する、アセチルコリンを放出することによって炎症を妨げます。これらの受容器に結合することで、サイトカインと呼ばれる炎症誘発性プロテインの放出を止めます。下記の図からわかる通り、炎症それ自体が抗炎症経路を引き起こすものでもあるのです。下記で言及されている迷走神経は、副交感神経系の主要な神経です。 迷走神経の求心性枝が炎症を察知すると、迷走神経が脳に信号を送り、背側運動核(DMN)と呼ばれるエリアに作用し、遠心性迷走神経からアセチルコリンが放出されます。本質的にこれが炎症を「止め」ます。この炎症反射が、身体が炎症をコントロールできなくならないように保っています。―少なくともそうするようにできています。 炎症が悪い方向へ向かう時 完璧な世界では、身体がストレスにさらされて炎症が起こり、炎症はその役割を果たした後に収まり、すべてが完璧に働きます。しかし問題は、私たちは完璧な世界には生きていないということで、私たちの多くが日常的に自分自身にさらしているストレスが、やがて大きな打撃を与えることになるのです。 死なない程度に辛いことが私たちを強くする、という考えに傾倒するのは簡単です。しかし、ストレスが大きくなりすぎると、今すぐに、ではないだけで、死に至り得るのです。 私の母のケースでは、客室乗務員という彼女の仕事のストレスが、一番の元凶でした。実際、母が病気に至るまでの過程は、母の人生に多大なるストレスを与えた特定の変化をたどっていくことで、はっきり見えてきました。 母は長い間、シアトルに住みながらもサンホゼを仕事の拠点として生きていました。それはつまり、月に数回片道1時間半かけて通勤していたということです。にもかかわらず、9月11日の事件があった後で、航空会社は母を含む数千人の人を解雇しました。 母は2~3年後に仕事に復帰することができましたが、ニューヨークに拠点を置くことを余儀なくされました。引越しをする代わりに、通うことを決めた母は、仕事のためだけに国の横断を繰り返すことになりました。 繰り返される移動のストレスと、断続的な睡眠習慣、空港での食事など、彼女の身体には、単に大きすぎるストレスがかかっていたのです。何の明らかな症状も従来の危険因子もなかったのにもかかわらず、母は数年で脳卒中を患い、病院にかかることになりました。 もちろん遺伝的な原因もあるのは確かですが、母の例は、慢性的なストレスを身体にかけ続けた代償について認識する重要性を物語っています。 ほとんどの人は、そしてジムで何時間も費やすような人は特に、トレーニングが身体に与える影響を感じることによって知っています。しかし、精神的ストレス、栄養的ストレス、環境的ストレスなどが与える本当の影響については知らないのです。 実際は、週に数時間ジムで死ぬほどトレーニングをしてもーもちろん私が勧めていることではありませんーその数時間でかかるストレスは、日常生活の中で直面するストレスを総合したものとは比較になりません。 トレーニングは1時間か2時間ですが、人生は24時間毎日です。これは私の母を含めて多くの人が気づいておらず、気づいた時にはもう遅いのです。 慢性的な、低レベルの炎症は、多くの人にとって感じられるものではありません。実際の症状が現れ始めるまで、あるいは健康診断で何かが悪いとわかるまで、ダメージが蓄積されていきます。 幸い、物語はこのような結末で終わらなくても良いのです。悲劇を避けるために、潜在的な人生のストレスと闘うために、すべての人がそれぞれできることがあります。

ジョール・ジェイミソン 3537字

コンディショニングが命を救い得る理由 パート1/4

2008年4月25日は、私にとって決して忘れられない日です。それは私の人生で最悪の日であり、なぜ詳細まではっきりと私の心に刻み込まれているのかは疑問の余地もありません…これからお話しすることは、これまで私がシェアしてきた中でも最も個人的な話です。それでもこの話をするのは、この話が非常に重要な教訓であり、文字通り全ての人がこの話から恩恵を受け、学ぶことがあると考えているからです。 最後まで読むと、コンディショニングというものがどれだけ大切なのかについて、さらに、より良いパフォーマンスをするためだけでなく、より良く生きるために、あなた自身(またはあなたのクライアント)のコンディショニングを向上させる方法について、全く新しい認識を得ることになるでしょう。 電話を受ける その電話がなったのは、郵便物を取りにジムの外へ行こうとした午後12時半ごろだったと記憶しています。電話は私の知らない市外局番からで、いつもならそのような電話には出ないのですが、そのときはなぜかその電話を取りました。 その声が「ジョール・ジェイミソンさんですか?」と聞くので、 私は「そうですが、どちら様ですか?」と聞き返しました。 「私の名前はジェニファー、マイアミのドクターズ病院の集中治療室で看護師をしています。あなたのお母様が脳卒中になり、今私たちと一緒にいることを知らせるために電話をしています。」 このような電話を受けたことがある人なら誰もが、本当に呼吸が止まりそうになると言うでしょう。ショックと困惑が強すぎて、今聞いたばかりの言葉が頭に入ってきません。 私はその前夜に母親と話をしたばかりで、その時は何の問題もありませんでした。母は基本的に健康に見えました。何の病気や兆候もなく、服用している薬もなければ、過体重でもなく、お酒も飲まずたばこも吸いませんでした。 確かに、大多数の人と同様に、トレーニングはしていませんでしたし、食生活は確実に改善できたと思います。でも、母は航空会社の客室乗務員であり、非常に活動的で、乗り継ぎの場所ではあちらこちらに出かけるのが常でした。脳卒中を患ったのも、彼女が乗り継ぎでマイアミにいたときでした。 その時の状況では、母が飛行機事故に巻き込まれたという電話を受けた方が驚かなかったでしょう。母が脳卒中を患うよりも、その方が統計学的には起こりづらいことだとしても。 人生で最も過酷な12時間 -そして答えを探す機会 その電話を受けてから数時間以内に、私は空港にいて、シアトルからマイアミへの飛行機に乗ろうとしていました。その電話を受けただけでもよくなかったのに、更に事態を悪くしたのは、看護師が脳卒中の深刻さに関わる詳細も、今後の予期についても何も言ってくれなかったことです。私が知っていたのは、母は集中治療室にいて、意識がないということだけでした。 何を考えればいいのかもわからず、病状がどれだけ悪いのかを知るすべもなく、ましてや母が生き延びられるのかもわかりませんでした。私にできることは、そこからのフライトと乗り継ぎの12時間を、母の状態がどのくらい悪いのかについて頭を悩ませながら過ごすことしかありませんでした。 もし母が生き延びられなかったとしたら、あるいは生き延びられたとしても、歩けなくなったり、話せなくなったり、何も覚えることができなくなったとして、どうしたらいいのか、私には全く分かりませんでした。 それは私の人生の中で、最も過酷な12時間でした。 そして、それこそ一睡もせずに、やっとの思いで翌朝8時ごろに病院につきました。母が意識を取り戻したことを知り、医者から母が生き延びられる可能性は高いと聞いて、かなり安心しました。しかし、保証はありませんでした。そこからの48-72時間が非常に大切で、母は集中治療室に留まる必要がありました。 それから3日間、ほぼ眠ることなく、18.5㎡ほどの集中治療室で過ごしました。ほぼ全ての時間を、母の血圧から体温まで、モニターに映し出される様々な数値を凝視して過ごしました。数時間おきにどれかのアラームが鳴り、そのたびに看護師か医者がやってきて状態を確認し、アラームをセットし直しました。 看護師や医者は私に、母の状態は完全に「ノーマル」だと言いきかせましたが、母があらゆる薬を投与され、意識と無意識の状態を行ったり来たりしているのを見ていると、私にとっては何も「ノーマル」には感じられませんでした。 母が起きているときは、少し話をすることができましたが、母の身体と顔の右半分が麻痺していることは明らかでした。その麻痺と薬づけの状態は、何もかもがまた元通りうまくいくようになると確信できるには程遠いものでした。 「統計」が自分に関するものになったとき-健康な人間がいかにして脳卒中を患うのか? 集中治療室での苦しい三日間を過ごした後、母はようやく通常の病室に移ることができ、そこで7日間を過ごしました。その後は、リハビリ施設へ移動して2週間、身体の右半分のコントロールを取り戻すためのトレーニングをしました。「すべて元通り」ということでは全くありませんでしたが、少なくとも危険を逃れた感はありました。 脳卒中を患う前とはかなり異なる生活になるとしても、母が生き延びるであろうことは明白でした。 母に必要な治療を確実にすること以外に、私にとって大切なことは、どうしてこのようなことが起きたのかを理解することでした。健康で活動的であり、医学的な問題や既往歴も抱えていないように見える人が、どのようにして、突然何の予兆もなく生命の危険すらある脳卒中を患うのでしょうか? 私はまず統計を調べました。結果は非常に厳しいものでした。 米国では、脳卒中は3番目に多い死因であり、毎年14万人以上の人が脳卒中により亡くなっています。また、脳卒中は、身体障害をもたらす一番の元凶であり、母は生涯、その障害と付き合っていかなければなりません。脳卒中を心臓血管系の疾患の問題の一部として考えると事態はさらに深刻です… 心臓血管系の病気(脳卒中、冠状動脈性心臓病など)に関連した状態は、あらゆる癌による死者の総数よりも多くの死人を出しています。見方を変えれば、米国の女性の31人に1人が乳がんで亡くなっている一方で、3人に1人が心臓血管系の疾患により亡くなっているのです。 正直に言うと、私は以前にもこういった統計を読んだことはありましたが、愛する人や友人がその一部になる前は、その統計はページに記された数字に過ぎませんでした。母が脳卒中になる前は、心臓発作や脳卒中について考える時には、過体重で、食習慣が悪く、喫煙をし、酒も飲んでいるような人を連想し、母のような人を思い浮かべることはありませんでした。 私は統計の数字以上のものを知る必要がありました。原因を理解する必要があったのです… 炎症に関する真実-あなた及びあなたの知っている全ての人々にとって炎症がなぜ重要なのか 私は何カ月にもわたって、心臓血管系の疾患、脳卒中、ストレス、炎症、それらに関わるもの全てについての本や研究論文を、手に入るものは全てくまなく読みました。読めば読むほど、非常に興味深く、読み続けたくなりました。 やがて私は、健康、ウェルネス、病気に関して異なる見解を抱くようになりました。私の母のように健康にみえる状態から、どのようにして、ある日突然、病院で生命の危機にさらされている状態になるのかが、はっきりわかってきました。 こういったことがどのようにして起こるのかは、ストレスと炎症の関係に隠されています。炎症は、ほぼ誰にでも馴染みあるものでしょうが、炎症が一体どのようにして起き、どんな役割をしているのかについては、多くの人にとっては未知のものでしょう。研究の観点からしても、炎症については、ここ10年間くらいでようやくいろいろなことが明らかになってきています。 神経免疫学の比較的新しい分野により、ストレスと炎症が身体にどのような影響を与え、時間と共にどれほど悪い影響を与え得るのかを解明するパズルのピースが埋められてきています。

ジョール・ジェイミソン 3419字

アスリートが怪我をする3つの理由 パート2/2

#2 – ブレーキが効かない 私達が矢状面で固定されたとき、それはモビリティや高さを変えることを制限するだけでなく、私達を常に推進の状態においてしまいます。 試してみましょう: 立ち上がって腰のアーチを作り、胸を膨らませてください。どちらに体重移動しましたか? 感じてわかる通り、伸展は私たちの身体を前へと推進させます。繰り返しますが、これは私達に加速し、速く走り、高くジャンプすることを可能にします。 ですが、もしあなたのゴールが減速であったならばどうでしょう? 大きく切り返す為に、力を吸収し、そしてそれからまた爆発するとしたら? お分かりの通り、ポイント#1とポイント#2は密接に関係しています。もし曲げられないのであれば、あなたの身体は力を吸収できる状態ではありません。 それどころか実際はどんどんと悪化していくのです。なぜならジムでこなす膨大なトレーニングや競技場でのトレーニングは、ただこれを強化してしまうからです。 私達は持っているすべての能力や価値を数値に置き換えます – 40ヤード走がより速いか、より高い垂直跳びか、またはスクワットの新記録を樹立するかどうかなど。 悲しい事ですが、“コーチ達”が定めた価値観は、力の吸収に対してほとんど(または全く無い)力を注がず、力を生み出すことに力を注いでいるのです。 私達が取り組んでいるスピードと筋力、そしてパワーはもちろん価値のあることですが、専門家としてもっと自分に問いかけてみるべきではないでしょうか。 ただの数字や生産ではなく、それより速く、強く、そして回復力のあるアスリートを作り上げる為のプログラムはどうやって組み立てればよいのでしょうか? どう修正するか!! 私達の第1のゴールは屈曲を取り戻すことです。もし曲げられなければ、あなたの身体はいつでも推進状態になってしまうのです。 簡単な答えはバイオメカニカルシステムに働きかけてリセット、呼気を取り入れ、そして賢明なプログラム設定をすることです。繰り返しますが、大きな目標は、ストレスの軽減と全ての身体システムを高いレベルで働かせることです。 次のステップは減速と力の吸収を、年間通して強調することです。 ムーブメントの質が向上する(屈曲の向上を通して)につれて、身体が表現するムーブメントは全く別物になる可能性は高いでしょう。 あなたのスクワットはより “スクワット化”していき、より直立したものになっていきます。 あなたのヒンジはより “ヒンジ化”して、よりハムストリングに効きやすく、そして負荷がかかりやすくなります。 このように、アスリートが空間のどこに位置しているかを “感じる”手助けとなるように、ゆっくりとコントロールして動きに集中できる、ある程度の時間が必要なのです。 運動制御が向上したら、スピードを高める減速ベースのエクササイズに移ります。 スクワットをする代わりに、高所からの着地をしても良いかもしれません。 ラテラルランジの代わりに、ラテラルのジャンプ&ストップをしても良いでしょう。 ここでのゴールは、これらのムーブメントの質とコントロールの要素にスピードを追加することです。 アスリートがゆっくりとコントロールした状態でのパフォーマンスができて力を吸収できたならば、そこからは自由にアスレティックムーブメントをフル活用します。 これだけは強調してもしきれません– アスリートを正しく鍛える為に、最初のステップに時間をかけて下さい。 手順を飛ばしてはいけません。 焦ってはいけません。 正しいスタートを切れば、その先の何年もの間、アスリートのハイレベルでのパフォーマンスが約束されるでしょう。 #3 – 乏しい作業能力 アスリートが怪我をする最後の理由はシンプルです: 作業能力に乏しいのです。 それは前述の問題の延長として見ることができます。 アスリートはストレスを受けて矢状面で固定されます。 そして曲げる能力を失い、力の生産という状態に固定されてしまいます – 事実上力の吸収能力の破綻です。 この伸展ベースのパターンに固定されることで、私達を無酸素系エネルギー代謝(有酸素系代謝に対して)への過剰な依存へと導くことにもなります。 アスリートに全ての責任があるときもあります。 もしもアスリートがオフシーズンに何もせず、過体重とコンディション不良の状態でキャンプに現れたのならば自分以外誰も責めることはできません。 ですが、もしアスリートが努力したのに、取り組んでいるアプローチが失敗だったならば、その責任はコーチにのみあります。 近年のコーチングにおける大きな問題は、生理学と競技スポーツで必要とするエネルギー回路への理解の不足です。 有酸素エネルギーシステムは、以下のような重要な役割があるにも関わらず、近年ないがしろにされがちです: エネルギーを長い時間作り出せる(バスケットボール、サッカー、ラグビー、オーストラリアンフットボール等)、 無酸素系エネルギーを補給してくれる為、必要な時には素早く、そして爆発的になれる。 これこそ私が昔からジョール・ジェイミソンの熱烈な支持者である理由です。ジョールは様々なエネルギー経路と各々のシステムの能力を最大限に引き出すことにおいて素晴らしい功績を収めています。 どうやって修正するのか? エネルギーシステムトレーニングに真面目に取り組むことはあなたを成功に導くことにおいて、とてつもなく大きな一歩となります。ゲームの質を向上させる為に必要なステップを踏む事は称賛に値するでしょう。 マイナス面といえば:この議題を手短に解説するのは十分ではないということ位です! 代わりに、以前に執筆したエネルギーシステムの記事をチェックする事を強くお薦めします。 さらに、ジョール・ジェイミソンの記事もチェックしてみたください。ジョールが何度も繰り返して言っているのは、疲労した時もムーブメントの全体性/質を維持するということです。 忘れないでほしいのは、アスリートが疲れた時、彼らはたいてい矢状面に “ディフォルト化”してしまうということ。そして矢状面に依存するにつれて、より無酸素化していくのです。 より無酸素化するにつれてどうなるのか?どこに向かうかお分かりになりますね- 悪循環の始まりです。 許容能力を高めることだけでなく、同時に、質の高いムーブメントを維持しながら行うことにも注目をしましょう。 まとめ この記事は予想よりだいぶ時間がかかりましたが、これは2つの理由によるものです: これはとても幅広いトピックでテーマを絞る事は困難でしたし、 できる限り明確に伝えたかったからです。 トレーニングに関して、絶対というものは存在しません。 これは白か黒かではありませんし、善か悪かでもありません。全てグレースケールで、連続性があり、教育と知識に基づく推測なのです。 ですが、ここで述べた3つの理由は、間違いなく近年みられる傷害率において役割を果たすはずです。 そしてもしも我々が専門家として成長することに真摯で、その過程でできるだけ多くのアスリートを助けたいのであれば、身体作りにおけるこれら3つのエリアを可能な限り深く掘り下げて見る必要があります。 アスリートに曲げ方を教えて下さい。 力の吸収方法を教えて下さい。 そしてアスリートに競技特有の作業能力を与えて下さい。 もしこれができれば、次の世代のアスリートは、競技生活中もその後もより回復力を持つようになることを約束します。

マイク・ロバートソン 3318字

アスリートが怪我をする3つの理由 パート1/2

最近のアスリート達はかつてない程に高い割合で怪我をしているように思えます。 そして、更にもっと悲しいのはこういった怪我が一時的なものではなく、より深刻になってきているということです。 信頼できるデータを見ましょうか? 2016年シーズンのNFLの7週目において、40件のACLの損傷と32件のアキレス腱の断裂があったのです! 私は、傷害には様々な要因があると信じています。たとえばもし誰かが膝に大きなQアングルをもっていたとしても、これはACLを痛める唯一の理由ではないということです。 または誰かの“四頭筋:ハムストリング”の筋力比が良くないものであったとしても、それのみがハムストリング損傷を起こす結果となる唯一の理由ではありません。 生まれてからずっとスポーツを見続けて、この業界で16年働いてきた今、明らかに傷害率の上昇に関係する、いくつかの共通した手がかりを皆さんにお伝えすることができます。 そして怪我をいくつかの主要なエリアに “ボックス”として分類することが出来るでしょう。 アスリートは屈曲と “曲げる”能力を失いました。 アスリートは力を吸収したり縮小したりする能力を失っていて(i.e. “ブレーキング能力”に乏しい)、 スポーツのニーズや要求に見合う許容能力を備えていないのです。 これらのボックスをそれぞれ細かく見ていきましょう。そしてより強く、健康で回復力の高いアスリートを築く手助けとなる答えを提供していきましょう。 #1 – 曲げられない ランニングバックが切り返し動作で突進してくるのを想像しましょう。 ラインバッカーが彼を押さえつけてきます。ベストな選択としてしっかり踏ん張り、切り返して逆の方向に進むことを選択しました。 そこで彼はより強く切り返しに向かいますが、彼の身体のシステムは力を吸収するのに必要な股関節、膝、そして足首から曲げるということを許してくれません。 ですから曲げるかわりにブレーキをかけてしまい...この場合、ACLを断裂してしまったのです。 これは基本的なバイオメカニクスの域を超えた事象です。人間として、私達は絶えず変動する状態にあるのです。 私達の身体は、周りの環境や刺激にたいして常に解釈と適応をおこなっています。その間も、ホメオスタシスを維持する為に小さな微調整を繰り返しているのです。 ここで残念なお知らせがあります:私達は近年、過去にないくらいのストレスや不安、そして慢性的な炎症を起こしているのです。 これらのストレスや炎症は、バイオメカニクスの観点からみて、私達の身体にどのような影響を及ぼしているのでしょうか? 過剰なストレスや炎症は交感神経反応を引き起こします:闘争—逃走モードに入り、自分達を矢状面で固定することで生き抜く為の身体の準備をするのです。 もし森で熊に遭遇したら、この交感神経反応は必要になりますし、矢状面で自分達を固定したくなるでしょう。 呼吸が激しくなり、心拍数も上がり、血流は筋へと向かいます。そして身体を固め、速くまっすぐに走ることによってその状況から逃げ出すのです! そして森の熊から逃げ出し、万事うまくいったとしても(またはジムでパーソナルベストをだしたとしても)、その交感神経のシステムを一日中シャットダウンできなければ、それは非常に大きな問題になります。 自立神経系をラジオのボリュームノブに例えましょう。もしあなたがヘビメタのパンテラを聞きながら高重量の負荷を扱うのならば、ノブのボリュームを11まで引き上げたいでしょう。 しかし、もしあなたがアル・グリーンを聞きながらガールフレンドとゆっくりと落ち着きたいのであれば、11というボリュームは全く適していません。 ダイアルを4か5に合わせるべきでしょうね。 驚くほどのことではないですが、これは身体活動においても同じような仕組みなのです。善し悪しではなく、状況が重要となる“適切なタイミングと適切な場所”があるのです。 伸展は加速したり、真っすぐ速く走ったり、または相手を押したりする為に必要です。 屈曲は減速したり、高さを変えたり、モビリティを出す為に必要です。 もし曲げるという能力を失ってしまうと、高さを変える能力を失ってしまいます。 この単純なトリックを試してみて下さい: 立ち上がってスクワットスタンスをとってみてください。肩の横に手をおいてバックスクワットするようにして、下がりながら胸をつきだして腰のアーチを作って下さい。 空気を吸い込み、できるだけ深くスクワットをしてください。どれだけ深く下がったかを測るだけではなく、どう感じるかもチェックしてみてください。 それでは逆をやってみましょう。手を前方にだして遠くに伸ばします。肋骨を下げるように息を吐いて下さい。 ここで出来る限り深くスクワットします。そして先程同様深さと感覚をチェックしてみて下さい。 かなり違いますよね? 私があなたの可動性を上げたのでしょうか? もしくはあなたが最初からもっていたモビリティにアクセスすることができたからでしょうか? これをスポーツに置き換えてみましょう。バスケットやベースボールコーチはいつも “腰を下げろ”とアスリートに叫んでいます。 ですが、もしアスリートが単にこれをできないとすれば? もし彼らがかなりストレスを受けていて、つまり、かなり伸展していて彼らのシステム自体がそのタスクを遂行できないとしたらどうでしょう? どれだけアスリートを怒鳴りつけても意味はありません。奥に潜んでいるストレス要因にアプローチして、システムに働きかけて屈曲を回復させない限り、求めている姿勢をとらせることは不可能でしょう。 どう修正するのか! ではどうやってこれを修正していくのでしょう? 根底にある問題に取り組む代わりに、私達はアスリートを見て単純にこう言います: “この選手は硬すぎる-だからモビリティトレーニングが必要です。一ヶ月程ヨガをやらせれば良くなるはずですよ。” これでは破裂した大動脈に対してバンドエイドを貼るようなものです;くっつくはずがない! この交感神経優位/バイオメカニクス的に伸展したパターンにアプローチする1番簡単な方法は選手に曲げ方を教えること。そして曲げ方を教える1番簡単な方法は息の吐き方を教えることです。 呼気は屈曲を引き起こします。これは身体に、下部肋骨と骨盤の理想的な関係を回復させ、“闘争—逃走”モードから抜け出すことを可能にします。 更に、一旦屈曲が起きると、身体にもう一度オプションを与えることができます。これはアスリートに矢状面から抜け出し、そして(願わくば)前額面と水平面の動作を回復することを可能とするのです。 ですから息の吐き方と屈曲を学ぶことはとても素晴らしいスタートです。ですがここから更に深く掘り下げなければなりません。 私は担当する全てのアスリートと、パフォーマンスピラミッドについて話し合いの場を設けるようにしています。 私は、彼らの基礎となるピラミッドの1番下のレベルに重点を置くようにしています。 栄養があり力の源となる健康的な食事を摂っているか? しっかりと深い眠りにつけているか? ジム以外でのストレス要因にしっかり対処できているのか? 早い時期に、これらの問題に取り組むことができないと屈曲して曲げる能力にマイナスの影響を与えるだけでなく、リカバリー全体に悪影響を及ぼします。 曲げる能力の欠如は大きな問題であり、次にあげる要素にも直接影響を与えます。

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運動の糧 パート3/3

もし、私たちから全てのストレッチや矯正エクササイズ、フォームローラー、カイロプラクターや理学療法士との予約を取り除いたら、ゆっくりと着実に持続的な進歩を遂げ改善し、健康を維持するのにピッタリの最小有効運動量に取り組む方法はあるのでしょうか? 身体の機能性を保ち、自分に適していると思われる活動に適応できる最小有効運動量はどうでしょう? もし、400ポンド(180 Kg)のデッドリフトを将来行うつもりがないのであれば、そのようなリフトを補助する運動は必要ありません。そうは言っても、しゃがんだり、ひねったり、振り向いたり、這ったり、登ったり、おそらく軽く走ったりすることをできるようにしておく運動は必要でしょう。もし、ある日とても重い物を持ち上げなくてはならないことがあれば、他の人の手を借りたり、作業を分解したり、力学的に有利な方法で行うようにします。ただそれだけのことです。 健康でいられる程度に動きなさい・・・それを維持できる頻度で動きなさい。 機能的でいられる程度に動きなさい・・・それを学習できる頻度で動きなさい。 フィットでいられる程度に動きなさい・・・十分に適応できる頻度で動きなさい。 上手に行える程度に動きなさい・・・それを継続的に行える頻度で動きなさい。 十分に動きなさい、でもここに書かれた順番で。あなたの本質がそれを求めているのです! 十分な頻度で上手に運動すれば、ちゃんと適応できるようになり、適応できれば不利な方向に働くことはありません。とても重要なことです;不利な方向は、基本的な運動の発達よりも、もっと野心的なレベルの運動の発達を助長します。不健康な腕の動きでボールを投げるピッチャーを過去にどれだけ多く見てきたでしょうか―― 回旋腱板断裂、筋の挫傷や関節の捻挫などがその結果です。もし、運動量が適切でありさえすれば、フィットネスや発達全般において有益な技能が身についたはずです。しかし、身体を酷使し、健康問題を発生させてしまいました。振り出しに戻ってしまった。 体系的なフィードバックの欠如によって、すぐにそうなってしまいます。   みなさんが健康的な動きから技能的な動きにレベルアップする時、または動きを評価する時、何をトレーニングするべきか見つけるためにわたしたちは健康と機能、適性、技能を保つのに必要な最小有効量を分析します。最小有効量はどれくらいか? 私たちがこれが悪いと推測したものが間違っていて、その弱連鎖からかなり外れていることに気がつくことがよくあります。動きにおける弱連鎖は、たいてい上達しなかったり思うように活動できなかったりする原因です。体重が減らない原因かもしれないし、思うように眠れない原因かもしれません。身体は、みなさんがしようとする運動、またはしないと選んだ運動に非常に敏感です。 ダイエットに似ていませんか? エクササイズと比較した時、栄養学の明瞭さに私は信じられないほど刺激を受けます。栄養学の学位を持っているわけではありませんが、栄養学での論理の善し悪しは明らかに区別がつきます。製薬業と同じように、栄養学においても、単に症状だけを元に食べ方を指示されることもあり得るでしょう。しかし、食の善し悪しや健康的で機能的な食べ方、フィットネスのための食事、長期的な食事の原理をいくつか提供することで、完璧で持続的な生活スタイルの変化を起こすほどに、包括的にもなれるわけです。 もし私たちがサプリメントを扱うのと同じようにエクササイズを捉えたら、そして、もし身体活動と新しい環境への露出も食べ物と同じように考えていたならば、運動テクノロジーにおいてさらにもっと進化することでしょう。 歩き方を見ただけで、座りっぱなしの習慣を持つ人だということがはっきりとわかるでしょうか… 世界中どこでもアメリカ人と見分けられるようになりました。単に少し太っているということや服装が他の人たちと多少異なるということだけではありません。 私たちの動きがよくないからです。 私たちは、動きが良くないにもかかわらず頻繁に動く。これが問題を生み出します。明らかな代償を生み出しす。歩行といった単純なことからでさえも、あなた自身と体は運動の本来の糧を味わうというより、断然運動のサプリメントを味わっていることが多いという事実が分かってしまいます。 この投稿がみなさんを喚起できれば良いと思います。運動をじっくり調べたり運動レベルを分解したりする気になっていただければいいと思います。これまで抱いていた推測は捨てて、運動の4つの分類をする新しい物差しに注目してみましょう。それぞれの運動レベルにおいて、みなさんが摂取しているのは運動の糧ですか、それとも、サプリメントですか? トップレベルにおいては、みなさんが最もしたいことを楽しみましょう。たとえば、サイクリング、ロッククライミング、ハイキング、競技スポーツなど。正しく行えれば、技能負荷はかなりのレベルのフィットネスを与えてくれるでしょう。それによって得られたフィットネスで一定の機能が備わり、維持した機能は健康を保つことにもつながります。また、その逆もあり得ます。 運動の最後の段階では、あなたを微笑ませてくれることや、流れるようにスムーズな状態でできることを見つけることです。だからと言って、家での課題や補助的にエクササイズをしなくていいという意味ではありません。残念ながら行ってもらいます。しかし、これらの補助的なエクササイズは、人生という長期にわたる連続的なイベントにとってバランスや調和を整えるための一時的な障害なのです。 もし、運動のサプリメントとしてのエクササイズを数週間や数ヶ月という期間ではなく、何年間も行っているとしたら、何のためにやらされているのか、なぜそうさせたのかを疑問に思います。多くの人は、機能的運動のテクノロジーを採用し、運動のサプリメントとしてのエクササイズをし続けています。私や私のチームであればとうの昔にそんなコレクティブエクササイズなんてやめさせ、健康や機能、適性、技能/競技の全体を再調整しているのですが、そんなことは知る由もありません。運動パターンが悪いからといって、私は特定の運動のサプリメントを一つ加えるだけということはしません。一旦コレクティブエクササイズで運動パターンが改善されると示せれば、まず私が始めにするのは、“オーケー、ではコレクティブエクササイズなしでどれぐらいできますか?”と聞くことです。Xをもう少し多く行うことによって、Yをかなり少なくし、Zはもう二度と行うことはなくなります。なぜなら単に、これは必要としている運動の糧ではなく、あなたには合っていないからです。 私の言うことを鵜呑みにしないでください・・・私の言っていることを試してみてください。生命体と環境をまず単純に見ることから始めましょう。あなたが本当に取り組むべきなのは、今取り組んでいるところではないかもしれないからです。 私たちは私たちのテストをこのように利用します。ひとつの方法論を他と比べて推奨するということではなく、みなさんの運動の中にある薬を見つけ、処方されるべき運動を見つけるのに役に立つからです。

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運動の糧 パート2/3

健康の問題に対してフィットネスによる解決を望んでいる人が多い 機能的な問題に対してフィットネスによる解決を望んでいる人が多い、そして、 技能的な問題に対してフィットネスによる解決を望んでいる人が多い。 動きを見る4つの方法の概要です。 もし不健康であれば、診断をする必要があります。 もし機能不全があれば、疑わしい運動パターンを明確にして、それを修正しようとします。 もし単にゴルフができないということならば、サイドプランクをあとどのぐらい行えばいいのか私には分かりませんが・・・たぶん、ゴルフのレッスンが必要なのでしょう。ゴルフを行うのに身体的な壁がありますか? または技能的な壁? 単純なテストを実施することで、素早く簡単にこれらの疑問に答えてくれます。TPIにいる私の友人に聞いてみてください。 動きの健康:健康的に動くこととその動きによって健康に利することの基本的な要素が、あなたにはありますか? 身体のシステム全体にとって運動の最小有効量はどのぐらいでしょうか? 運動学の問題だけではなく、周囲との触覚によるコミュニケーションでもあります。立ったり、ゴロゴロと転がったりして、周囲の環境に対するときの 身体の“柔らかさ”には、異なる感触や経験があります。私たちは、視覚、聴覚、前庭感覚と同様に、莫大な量の固有受容的経験を得ています。 動きの機能:健康な動きの特性をすべて利用し、そして組織化して動きに有能な学習機械となることができますか? 動きの機能性は、あなたが何かを知っているとか、何かに長けているというわけではありません。単に、フィードバックループを構築するための動きのパターンが備わっているということです。したがって、可動性に特に何の問題もなく、平均台を経験してもらうとします。動きと姿勢の制御以外は、バランスが悪くなる理由はありません。つまり動作を実行するための柔軟性はあるものの、できなかったわけです。このようなフィードバックループの能力に働きかける経験によって、人類の先祖に適応力をもたらした自己運動学習体になるのです。 “ここに床から2.5センチの高さに15.2cm幅の平均台があります。落ちるまで、この上でなるべく多くの回数を前向きで歩いてください。平均台の上を歩いて行き、回転して向きを変え、歩いて帰ってきます。落ちずに5回できたら、今度は無駄なエネルギーを使わず、腰から上の上半身の動きを最低限にとどめ、意図的に腕を振り回し、頭の位置を変な風にして、少し左に傾けて5回行ってみましょう。そう、それでも上手く平均台を渡れるか見せてください。” それが終わったら、目を閉じる代わりに、平均台の上を前向きで歩き、そして後ろ歩きで戻ってもらいましょう。平均台の上ではバランスさえ取れない人がいる、とおっしゃる皆さん・・・まず、可動性の問題を見逃しているに違いありません。二つめに、そのような人を平均台の上に立たせたいなら、杖を持たせたり、手を取ってあげたり、何らかの補助を使いましょう。平均台を壁に寄せて設置し、徐々に壁から離していきます。縮小の仕方にはいろいろあります。つまり、バランスを良くするために、悪いバランスのフィードバックを利用し、効果的な最低限の可動性に取り組むのであれば、それを縮小する必要はありません。彼らに身体のどの部分を収縮するように言う必要はなく、彼らは単に、自分はバランスがとれないということを認識すればよいのです。自分自身の固有受容器系、視覚系、前庭系を使って、その状況をどうやって克服するかを見つけ出せばよいのです。   問題の解決は彼らにさせておきましょう。公式のためのパーツはすべて揃っています:視覚、時間と活動。自然に任せ、フィードバックを提供しましょう。 彼ら自身に答えを見つけてもらいましょう。先に答えを与えてしまってはいけません。幼児でも分かることなので、当然大人にもできるでしょう。バランスを養うための近道はありません―― 本質的な方法が最もうまくいきます。歩く前にハイハイし、走る前に歩くように、単純なことです。 動きのフィットネス:基本的な移動運動または作業に必要なエネルギーを示す許容能力です。基本的に、移動したり物を移動させたりすること(または、自分も移動しながら物も移動させること)です。動きのフィットネスとは、非特異的な身体能力と基本的な物理的リソースです。 動きの技能:これは、何かをする時の能力または複雑性です。あるひとつのことに特化した人もいます;いくつかのことに特化した人もいます。技能とは、特定の作業や活動、目的、試合で身体能力を発揮すること、また有効的かつ能率的な方法で技能的能力と戦術能力を実施することです。他の大多数より秀でていれば、報酬を得ることもできます。 さて、これら4つのレベルを考慮すると、あなたの最良の運動の糧は何ですか? 失った運動能力を取り戻す必要のある人へのエクササイズが不適切であるために、多くの場合において、エクササイズを継続的に計測しては調整しなければならなかったり“指導し過ぎ”になったりしてしまいます。運動を分解するとしたら、“健康になるために十分動いていますか?”または“もっと激しく運動し始めれば、かえって健康を脅かすことになりませんか?”というフレーズを使うことができるかもしれません。 “私は少し太り過ぎているので、ウォーキングとジョギングを始めました。そうしたら、シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)と腰痛になってしまいました”ということをよく耳にしますね? 彼らは運動的に健康であるように見えますが、少しでも運動量が多過ぎると、不健康になってしまいます。そう不健康。なぜなら、シンスプリントや腰痛は、フィットネスではなく(フィットネスと同じように、医療でもめちゃくちゃにされている事実はない限り)医療現場で対応されるべきものだからです。つまり、私たちは原因に対処しているのではなく症状だけを治療していることが多いのです。全体的な動きを見ず、そして“あなたの運動はどのようなものですか?”と尋ねることもせず、動きの悪い部位や痛みの部位に近い筋を治療していることが多くあります。

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運動の糧 パート1/3

“食事を汝の薬とし、薬は汝の食事とせよ”–ヒポクラテス” – Hippocrates この言葉はその時代において、とくにパフォーマンスの強化や医療の奇跡、人体に精力をつける安易な方法を好む風潮があると思われる現代と同様に、とても賢明な助言でした。 食についての知恵と同じように、成功しようとするあまりわれわれは、どのように行動するべきかという基本原則を軽視しがちだとヒポクラテスは述べています。 わかりやすく言い換えれば:自分は問題抱えていると思い込む前に、基礎的なことをチェックすること。たいていの問題は基礎や基本理念を破り、その上で、複合的な解決方法を探しているのです。 どういうわけか、私たちは運動についてよりも食について、より明確な考えます。私の好きな著者のひとり、マイケル・ポーランは、食についての不必要な心配や思い込みを分析することで有名になりました。彼の業績を簡単に説明すると、食べ物とは丸ごとの食材であり自然なものです。本物の食べ物には、多くの付随成分が豊富で、それらを単独で見てみると、有益であったり、有毒であったり、またはバランスを崩してしまうものかもしれません。 しかし、私たちはサプリメントの時代に生きています。緑茶に含まれるいくつかの健康的な成分を検出し、錠剤やパワーバーや風船ガムの製品にして、緑茶は飲まなくてもよくなりなりたい。 食べ物に関しては、そう上手くはいきません。 運動やエクササイズに関しても、そうはなりません。 基本的に還元主義は、問題を解決するというより、より深刻な問題を引き起こします。なぜなら、持続的な解決にはならないからです。人体はすでに、緑茶からどのように有益な成分を抽出するか知っているのですから、製造会社に頼むことはないのです。 もし、自然で本物の食材を丸ごと(意図的に)食べているのであれば、サプリメントを摂取する理由は、自然由来のビタミンと栄養素の吸収障害がある場合のみです。吸収障害を克服するため、または、自然な食材が損なわれていることを解消するには、欠乏している特定の成分を効果的に多めに摂取し正常に戻さなくてはなりません。 ビタミン剤や栄養剤は、強制的に最適な状態に仕向けるために服用されるよりも、機能不全の状態から抜け出すために摂取する方がよいでしょう。この記述に同意されるならば(歴史と科学を復習してみればきっと同意してくれるはずです)、私たちが抱いているビタミンやミネラル、栄養補助食品に関する思い込みがどれだけゆがんでいるかお分かりになるでしょう。何か欠乏しているものをサプリメントで埋めるとすれば、競争優位のようにになってしまいます。パフォーマンスオクタンブースト(オクタン価向上剤)でしょうか? それは違うでしょう。単に、本来であれば、食べることや、休養、再生によって自然に埋められていくはずの穴を埋めているだけです。 運動の例に戻るとしましょう・・・ エクササイズは、運動の糧ではありません。エクササイズは運動のサプリメントです。 エクササイズは、運動のサプリメントです。なぜなら、多くの場合、運動のより良い将来を望んで行うから。さらに、ひとつのエクササイズが人間の運動能力全体をカバーすることはありません。さて、赤ちゃんや乳幼児、子どもたちは、生物学的に遊ぶように促されています。感覚や動きを通して周りの環境を探検するという子ども時代に、私たちの基礎的なパターンと身体能力が発達します。年齢を重ねる毎に、動きの風景の特定の部分に目を向け、そして遊びを続けるのです。 ボールを投げたい人 長距離を走りたい人 壁を登りたい人 水の中へ飛び込む人 いろいろな種類の活動をしてみる人、そして 専門性にこだわる人−地区、地域、国、はたまた世界で一番になるなど。 このような活動を補助するために、たいてい自分に必要だと思うエクササイズを選択しますが、大好きな活動を本当に補強・補填してくれるエクササイズを論理的な分析なしで選んでいることがあります。 動きを探究するために選択する方法に関わりなく、動きを基本的要素まで分析し、運動の糧を探すこともできます。始めるにあたり最も良い方法は、動きを4つの異なるレベルでみることです: 動きの健康動きの機能動きのフィットネス動きの技能 この20年間これらの言葉は考察され、討論され、詳細に論じられてきたこともあり、この先を読み続ける前にこれらの言葉をみなさんも定義してみてください・・・この話の進む方向がお気に召すかどうか。 運動の発達レベル みなさんが行っている運動は、健康的な動きへと導いてくれますか? ヨガや武道、または私たちが最近開設した、インディアン・クラブコースや筋膜リリースポジション、発達神経学的プログレッションの動きを見てみると、さまざまな姿勢や負荷のパターンを身体が経験する素晴らしい方法が多くあります。しかし、その運動は循環系には役に立たないことでしょうか? 組織系には? 内蔵系には? 固有受容覚系には? 前庭系、視覚系、聴覚系には? 身体を動かすときは常に多感覚の経験をしています。その経験は、建設的であったり非建設的であったり、あるいは単に何の効果もないかもしれない・・・みなさんが活動に時間と労力をかけていることが、効果があったか否かは、私には分かりません。 客観的な身体能力テストでは、あなたがエクササイズや活動にどれだけ費やしたかは、ほとんど区別がつきませんね? つまり、例えばあなたがXをトレーニングして何ヶ月も経過していても、そのことに私が気づかないということになります。Xは筋量を増やし、脂肪を燃焼させ、スピードを持たせ、アジリティを上達させ、左右のバランスを整えるとします(リストは延々と続きます)。しかし、これらの項目を計測しようとしても、あなたがしてきた努力の明白な効果が分からないのです。信じてもらえないかもしれませんが、このようなことが頻繁に起こっています。そのような努力がそもそも必要であるかどうか調べるために使用するバイオマーカーに、あなたの努力はほとんど検知されません。 正確に信頼できるテストがあれば、足首の可動性やコアの安定性、肩の安定性、心血管機能全般、作業能力、スローストレングスや爆発的パワーなど特定の問題に対応する方法を複数見つけることができるでしょう。これらのどれが最大の弱点か見つかりさえすれば、あなたの身体的発達レベルでの特定の問題を容易に判断できます。場合によっては、その問題は動きの機能(可動性と安定性を調整する機能)に根差しているかもしれませんね? またはその問題は動きの健康(正常で理想的、または平均以上の成長、回復、休養、再生をするシステムを提供してくれるもの)に存在することもあるでよう。 FMSやSFMA、そして最近紹介されたファンダメンタル・キャパシティ・スクリーンによってこれらの疑問点を解決しようとしています。

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あなたは‘魔法の筋肉’に心を奪われていますか? パート2/2

筋肉‘発火’(続き) 腹横筋 腹横筋はしばしば、発火しないと非難されたり、痛みを引き起こす不十分な脊椎の安定性の原因とされたりする筋肉です。発火の遅延を示しているいくつかの初期の研究が確かにありますが、明確に定義された発火遅延と腰痛の間に因果関係はありません。EMGとMモード超音波の両方を用いた後期の研究*ここをクリックしてください*では、発火遅延は腰痛患者において一貫性のある結果ではないということと共に、健常者と腰痛患者における筋肉発火に関する変数を示しています。 Vasseljenおよびその他は、“今後の研究において、被験者内と被験者間における変化が認識される必要がある”と述べています。この研究論文では、深層腹筋群の発火開始時間の変化と腰痛の間に関連性はないことが発見されました。 この研究成果は、Mannionおよびその他の研究*ここをクリックしてください*とよく似ています。彼らは、トレーニング前後、両方における腹横筋活性化能力と臨床転帰の間に関連性がないことを発見しました。 臀筋群とほぼ同様、腹横筋の筋肉組織の活動の開始は、タスクによって変化しやすいということが示されています。よって、素早い腕の動作のような特定の動作を用いている一つの研究の中で起こったことを一般化することを、人間の機能の一般的な筋肉モデルを作り出すために使用することはできません。 Morrisおよびその他は、腹横筋の役割は、行われている行動の方向と大きさに左右される筋肉の活性化を伴う、より機能特化されたものであるを発見しました*ここをクリックしてください*。以前から、腹横筋は単独で(機能依存的ではなく)、両側性に脊椎を安定させるコルセットのような役割を果たすという仮説があります。オリジナルの研究は、(腕の動きと)反対側の腹横筋にだけ着目したものですが、これを両側性の活動と推定したのです。 Morrisおよびその他は、(7名という明らかに少ない被験者数の中ではあるが)誰も片側性の腕の動作に対して、両側性の活性化戦略を使用せず、腹横筋は相互的かつ非対称的に作動したことを報告し、著者は、腹横筋を両側性に作動させるためのトレーニングは、実際には、正常な動作を抑制するかもしれないということを示唆しました。 これもやはり、それほど単純なものではなく、理論自体をさらに少し深く探れば、筋肉にタイミング戦略を伴う特定の働きを与えることは、問題のある思考の道筋である可能性があります。 回旋腱板 回旋腱板(RC)もまた、仮説立てられた、より早い発火開始時間と、関節の安定性を提供するための共収縮を伴い、関節窩上腕関節を安定させる役割を与えられています。回旋腱板の安定の特徴に関するこの系統的レビュー*ここをクリックしてください*は、テストされた10種類の動作の内、たった4種類の動作においてのみ、RC発火開始時間が、肩関節周辺の‘広範囲の’筋肉よりも早かったということを発見しました。同時活性化はまた、異なる動作にわたっての一貫性はありませんでした。 著者はここで、RC筋肉群が単に安定筋として理解するための、明らかな科学的根拠はないが、方向特異的に作用していると結論付けました。これは、棘上筋と棘下筋のどちらかと肩甲下筋間よりも、棘上筋と棘下筋の間での更なる共収縮によって支持されています。RCの安定化の役割は、方向特異的な関節内における移動の制限なのかもしれません。 このことは、肩甲下筋が肩関節伸展時により活発で、棘上筋と棘下筋が肩関節屈曲時により活発であることを発見したこの研究論文*ここをクリックしてください*によって支持されています。興味深いことに、外部負荷のレベルは、筋肉活性化レベルを変化させることはありませんでした!それはまた、筋肉の役割に影響を及ぼす肩のエクササイズにおける様々なバリエーションでも支持されています*ここをクリックしてください*。 Boettcherおよびその他は、わかりやすく、彼らの結論を研究論文のタイトル“肩の筋肉群の役割は、特定のタスクを行うことである”に組み込みました。彼等は、RC筋群がはっきりと区別できる回旋筋、あるいは安定筋なのかどうかを調べたかったのです。タイトルがそうではなかったことを示唆しているように、特定のタスクでの活性化が明らかであると研究論文の中で立証されました。*ここをクリックしてください* 筋線維タイプ 筋肉における主な線維タイプは、‘安定筋’あるいは‘主動筋’として筋肉が分類されるべき理由として挙げられています。主動筋はタイプⅡ線維とタイプⅡA線維の割合が多い一方、安定筋はタイプⅠ線維の割合が多いでしょう。 しかし、私達が、筋肉内における線維タイプの優位性を目にすることがあるでしょうか? 体幹の筋肉群はしばしば、理論的に‘インナー’と‘アウター’に分けられ、深層筋群を含むインナーユニットは、タイプⅠ線維の割合が多いはずです。以前から着目しているように、インナーマッスルユニットには、反射的な活性化と非依存的な活性化、あるいは動作戦略があるようには見えません。では、それらの線維タイプはどうでしょうか?その線維タイプは安定化に適しているのでしょうか? この研究*ここをクリックしてください*は、腹直筋、腹横筋、腹斜筋を調査するために、生体検査法を使用しました。そして、彼等は、被験者間において、かなりのバラツキがあるものの、個体内の筋肉における差異がほとんど無いことを発見し、実際に、“(差異は)わずか、あるいは存在しない”という言葉を使って表現しました。そのため、彼等は、実際には筋肉は、同様の機能的能力を有していると結論付けました。 この研究論文*ここをクリックしてください*は、比較的若い被験者36名の筋肉に着目しました。そして、彼等は、“調査された筋肉のほとんどは、緊張性機能と相動性機能の両方を遂行することで知られていたが、どちらかのの線維タイプが圧倒的多数ではないことを示した”と述べました。 高齢者人口における回旋腱板に関して、この研究論文*ここをクリックしてください*もまた、タイプⅠ線維とタイプⅡ線維の間で、最大60/40の割合で線維が混在していることを示しました。また、背筋群においてタイプⅠ線維とタイプⅡ線維がほぼ同様の割合であったことを発見した、この古い研究論文*ここをクリックしてください*においても明白でした。確かに、筋肉を特定の役割に分類することを正当化するには十分ではありません。 更に最近の系統的レビューの研究論文*ここをクリックしてください*もまた、健常者と腰痛患者の多裂筋と脊柱起立筋における、相互間、あるいは内部の線維タイプの区別はほとんどなかったことを示唆しています。 タイプⅠ線維の圧倒的優位であるように見える二つの筋肉*ここをクリックしてください*は、より‘姿勢に関与している’線維を約80%持つヒラメ筋と前脛骨筋です。私達はこれら二つの筋肉について同様に話されているとは思いませんが、明らかにこれらの筋肉は持久力タイプの仕事を行っています。 結論 研究が私達に何を伝えているのか? 筋肉発火パターンは、しばしば議論され、エクササイズの処方に影響を及ぼしている理論と一致しているようではありません。 何度も繰り返し行われる実験に着目する際に、筋肉発火は個体間、個体内において変動するようであり、‘機能不全’を基盤とする特定の筋肉戦略を支持していません。 筋肉は、単純に、行われている行動から独立した‘役割’を持っていないようであり、一貫して明確にされています。 共収縮レベルは、関節を安定させる唯一の役割を支持するには十分に一貫していないようです。 一つのタスクからそのタスクの域を超えて、活性化パターンを一般化することは、事実に基づいていないようです。 割合が完璧な50/50ではありませんが、線維タイプは安定筋、あるいは主動筋への分類を可能にしている筋線維の優位性を実際には示していません。運動データもまた、このことを支持していません。

ベン・コーマック 3409字

あなたは‘魔法の筋肉’に心を奪われていますか? パート1/2

身体には、‘魔法’だと考えられている筋肉がいくつかあります。 これらの‘魔法の筋肉’は、身体の他の筋肉とは異なった役割を果たすように見え、‘機能不全’や‘準最適’な活性からの痛みへの避けられない負担を防ぐために、私達は、それらの筋肉を刺激し駆り立て、あるいは‘発火’させるために、奇抜なエクササイズを行うことによって、何としてでも動かせるようになる必要があるようです。 これらの筋肉とそれらに関連する‘機能不全’の例として、腹横筋と腰痛、回旋腱板と肩痛、臀筋群と膝から腰部や肩にかけての全ての痛みがあります。 時折(ここではしばしばという意味)、私達はいかなるテストをすることもなく、ただ自動的に筋肉のせいにしてしまいます。 “あなたの腰痛は、腹横筋が発火していないせいです”と単純に述べてしまう。 ‘魔法’の筋肉が、いつ、どのように活性化されるべきなのか、それらの筋肉が、関節を動かす筋肉なのか、それとも安定させる筋肉なのか、関節においてどのような役割を果たしているのかに関するいくつかの理論があります。 股関節の他の‘主動筋’である浅層筋が活性化されるよりも先に臀筋群が活性化されるべきである一方で、腹横筋や回旋腱板のように身体を動かす手助けをするというよりも、安定性を提供するために、行われている動作からは独立して、まずいくつかの深層筋が最初に活性化されるべきであると示唆されています。 筋肉は、線維のタイプによって特定の働きがあるかもしれないという仮説も立てられています。遅筋線維優位の筋肉は、タイプⅡ線維の割合が多いと提唱されている動作筋よりも、姿勢における役割、あるいは‘安定筋’としての役割により向いているということを意味しています。時に私達はそれらを、局所性と全体性、あるいは、よりしゃれた感じだと…緊張性と相動性と呼びます。 これは、治療とジムの両方の環境において、人々が行う非常に多くの事に影響を及ぼします。私達は、これらの一般的な実践を支持するための、理論を凌駕する根拠を持っているのでしょうか? これが、筋肉に関するこの一連の理論と実際に研究されていることが対照をなすのかどうかに関して、このブログで答えるべき三つの疑問を与えてくれます。 ‘魔法’の筋肉は、特定の発火パターン、あるいは発火開始時間を持つのか? ‘魔法’の筋肉は、安定化のような特定の役割を遂行するために、独立した行動を取るのか? ‘魔法’の筋肉は、それらの筋肉が動作筋、あるいは安定筋のような特定の役割を果たすことを意味する、はっきりと異なる線維タイプの優位性を示しているか? 筋肉‘発火’ 臀筋群 あなたは“私の臀筋群が発火していないと言われた”と誰かが言っているのを聞いたことが何度ありますか?最初に発火しない、あるいは活性化されていない臀筋群は、腰痛、仙腸骨痛、膝痛、私のお気に入りである反対の肩痛(真実です…筋膜のスリングですよ)などの原因とされています。 この‘発火’の欠如の理由と言われているものがいくつかあります。 受傷後の筋の“抑制” 抑制を引き起こす過剰な座位 特定の発火順序があるべきかどうかを判断するために、どのように健常者が筋肉を活性化させているかを客観的に着目することが重要です。そうすれば、私達は、特定のパターン、あるいは健康であるために私達が目指すべき活動レベルがあるのかどうか、そして、抑制があるのかどうか、または理論が間違っているかどうかを見ることが可能です。 腹臥位での股関節伸展テストは常に、これを行うためのお気に入りの方法でしょう。ご存知のように、人をうつ伏せにして、治療家、あるいはトレーナーの指が筋電計(EMG)であるかのように装い、どの筋肉が最初に活性化するかを見分けることが可能だと!これは、腹臥位股関節伸展テスト(PHT)として知られています。 もし痛みが臀筋群における一貫した抑制因子であるならば、PHTにおいて、傷害の既往がある人達におけるEMG(指ではなく実際の機器)での出力の減少を目にするはずです。この研究論文*ここをクリックしてください*は実際に、以前に傷害(この場合はハムストリングス)を経験した患者は、EMGにおいて、より大きな出力があることを発見しました。これは、腰痛を患っていない対照群と比較すると、慢性腰痛群はPHTにおけるEMGの信号がより大きかったという、この研究論文*ここをクリックしてください*でも同様です。実際、いかなる筋肉‘抑制’も、受傷後、かなり素早く解決するように見えます*ここをクリックしてください*。 1990年まで遡って、私達は、彼等がPHTにおいて、筋肉発火がかなり変動するものであることを発見したことを知っていたわけです*ここをクリックしてください*。健常者20名が、右側の臀筋群、大腿二頭筋、脊柱起立筋と左側の脊柱起立筋の発火開始時間を計測するために、EMGを着けた状態で30回腹臥位股関節伸展を行いました。筋肉間での発火開始時間と対象者内と対象者間での筋活動における変動性に有意差は見られませんでした。よって、同一人物が活動を異なった方法ですることが可能で、別の人達もまた異なる活動をするのです。このことが‘機能不全’の土台を作る客観的な発火順序を実に困難にしています。 この研究論文*ここをクリックしてください*は、客観的な筋肉発火の順序を発見しました。彼等は、研究の必要性の論理的根拠を非常にうまく述べています。 “腰痛の発生は、腹臥位股関節伸展における筋肉発火の順序の変化によるものとみなされている。腰部と股関節の筋肉組織において、認識変化に対する根拠を提供するための、筋肉発火の順序に関する規範的なデータは無いようである” 彼らは15名の健常者を採用し、若干異なる臀筋群を対象としてよく似た試験方法を実施しましたが、実際には、大臀筋は最初ではなく、最後に活性化されたことを発見しました。 この研究*ここをクリックしてください*は、50名(腰痛患者群30名、対照群20名)という、より大きなサンプルサイズに支持されています。彼らは発火開始時間と活性化の量の両方に着目し、臀筋活動は有症状群と無症状群において共に、有意に遅延していることを発見しました。そして、PHTは腰痛有症状者と無症状者の間で、区別することができないと結論付けました。 彼らはまた、腹臥位で起こることを立位、あるいは歩行に一括化するのは困難であるという重要な点も強調しました。この研究論文*ここをクリックしてください*は、股関節外転の変化が、臀部の筋肉組織において、活性順序と活性化の量(EMGの振幅)を変えたということを発見しました。股関節外転15~30度において、大臀筋の発火時間は、ハムストリングスと比較して、遅延0度へと向上しました。 腹臥位における股関節位置の若干の変化が、発火順序を変化させたのです!身体の方向(腹臥位、仰臥位、立位)の変化、あるいは実際の動作、そして異なるスピードでは何が起こるのでしょうか?異なる地形が、腰幅に影響を及ぼすかもしれません*ここをクリックしてください*。そして、このことが恐らく、脚の方向に基づいて発火順序を変えるでしょう。 歩行時と走行時の臀筋群に着目したLiebermanの研究*ここをクリックしてください*において、二つの活動の間に発火時間の変化とかなりの活性化の変化が見られます。これは、単一検査では、恐らく、異なる発火時間と活動レベルを必須とするかもしれない複数の活動に転嫁できないであろうということ示唆しています。 私が知る限り、長時間の座位による臀筋群の抑制に関しては研究されていません。どれだけこの理論が広くいきわたっているかを考えれば、これはかなり驚くべきことです。よって、この理論を裏付けることは困難です。しかし、このことを支持する科学的根拠は存在せず、私達が臀筋群において、無痛の個人における発火の遅延を目にするのであれば、この主張を支持する前に、更なる科学的根拠の出現を待つ必要があります。 あなたが本当に指先で筋肉活性化における、マイクロ秒の差異を感じ取れるのかという、ちょっとした問題もあります。指先が非常に繊細であるとしても、それが重要なのでしょうか? ‘臀筋群が発火していません’という一節は魅力的で、問題に対するシンプルな説明のように聞こえますが、実際の科学は、そのようなシンプルな回答を本当は支持していないのです。

ベン・コーマック 3575字

なぜ遠心性のトレーニングは筋挫傷を防ぐことに役立つのか? パート2/2

ハムストリングの筋挫傷はいつ起こるのでしょうか? ハムストリングのケガは遊脚期の終期(股関節と膝関節でハムストリングがアクティブに伸張している時)または立脚期の初期(接地でハムストリングが大きな力を吸収している時)に起こるようです。 初期の研究によれば、接地でかかる高い力がケガの原因であるかもしれないと報告されていましたが(Mann, 1980; Mann & Sprague, 1980)、立脚期の早期ではハムストリングは延長されないようであり、(Yu et al. 2008; Chumanov et al. 2011; Nagano et al. 2014)そのため、立脚期で筋挫傷を負うというアイディアを受け入れることは難しいのです。 その後の研究では遊脚期の終期でハムストリングの筋と腱が最長になることが発見されています(Heiderscheit et al. 2005; Thelen et al. 2005a; Thelen et al. 2005b; Yu et al. 2008; Schache et al. 2012; Schache et al. 2013)。この大きい度合いのひずみは高いレベルの筋力に伴っており(Chumanov et al. 2007; Schache et al. 2010; Nagano et al. 2014)、これが大きなエネルギーの吸収につながっています。 重要なことは、ランニングのスピード(特に非常に早い速度)が速くなるにつれてひずみそのものは増加しないということです。事実、ランニングのスピードが速くなってもひずみは増加しないことを報告している研究は数多く存在します(Thelen et al. 2005a; Thelen et al. 2005b; Chumanov et al. 2007; 2011; Schache et al. 2013)。 一方、ランニングのスピードが速くなるにつれ、遠心性の力は大きくなり続けます。そのため、吸収されるべきエネルギーの量が大きく増え続ける原因になります(Chumanov et al. 2007; 2011)。これはランニングのスピードが速くなればなるほど、さらに大きなエネルギーを吸収する必要があることを意味します。 バランスをとってみると、ハムストリング筋挫傷の筋−腱の長さの変化の研究を特に分析すると、ひずみの度合いよりも吸収されるエネルギーが筋挫傷を促す鍵であるようです。 スポーツではどうなるのでしょうか? スポーツの中で、どの筋に挫傷が起こるのかを考えることは、吸収されるエネルギーのモデルがまだ理にかなうものかチェックすることに役立ちます。このために、少なくとも2通りの方法があります:最もよく筋挫傷になりやすい筋群の状況を見ることと、どの筋群が筋挫傷になりやすいのかを考慮することです。 まず初めに、筋挫傷はかなりのモメンタムを生み出し、それを維持する状況でよく起こるようです。ほとんどのハムストリング筋挫傷は高速のランニングに起因し、歴史的にボールをバウンスするようなモデルとして扱われています(Cavagna et al. 1964)。アスリートはそれぞれの地面接地期(グランド・コンタクトフェーズ)で運動エネルギーを吸収してリリースし、摩擦やシステムの不効率な部分によるエネルギーの消費を補うためにのみ使われます。このエネルギーは同じ筋群の受動的な要素、あるいはその他の筋群の近位部から遠位部への優先順位付けによって、蓄積され戻されます(Jacobs & Van Ingen Schenau, 1992; Jacobs et al. 1996)。 これは吸収されたエネルギーモデルが実に理にかなっていることを意味しています。 次に、最も一般的にケガをしやすい筋群は、常に体の1分節から他の分節へエネルギーを伝達することに深く関わっている筋、つまり2関節筋群です。ハムストリングでは、ほとんどの場合大腿二頭筋の長頭がケガをします(Opar et al. 2012)。大腿四頭筋の中では、2関節筋である大腿直筋が最もケガをしやすいものです(Mendiguchia et al. 2013)。 また、これも吸収されたエネルギーモデルが成立していることを意味しています。 遠心性のトレーニングはエネルギー蓄積を高められるのでしょうか? はい、間違いなくそれは可能です。 遠心性のトレーニングはエネルギーを吸収する能力で、筋の構造と受動的な要素を変化させることで、遠心的な筋力が特異的に向上されます(Kay et al. 2016)。それに伴い、遠心的な過負荷のトレーニングは力を生産し吸収する能力やカッティング・方向転換中のインパルス(力積=力x時間)を高めます。それ以上に、遠心的な過負荷のトレーニング後の力とインパルス(力積)は推進期よりも吸収(制動)期でより大きく向上します。 では何がこのエネルギー吸収を向上させているのでしょうか? 最近の研究によると、エネルギー吸収能力の向上は関節可動域の増加と、中程度~強く関与しています (r = 0.59) (Kay et al. 2016)。これは、エネルギー蓄積の増加と筋束の長さの増加には関連性があることを示唆します。ストレス−ひずみ曲線の下の面積がエネルギー蓄積であり、遠心性のトレーニングが筋束長を増加させることから、この関連は予測されるものです。 しかし、エネルギー吸収能力の向上は、計測されている受動的モーメントの頂点とより親密に(r = 0.92)関連しています(Kay et al. 2016)。これは遠心的な力を生産する特異的能力がエネルギー蓄積能力の大きな関与因子であり、遠心性のトレーニングによる特異的な遠心的筋力増加が主要因子であることを示唆しています。 これらの特異的な遠心性筋力強化は、筋の受動的要素(細胞外基質とタイチン)が硬化したため、および神経的制御の変化のためでもあります。これらの変化は筋の伸張に抵抗し、伸張するたびにさらに大きなエネルギーを蓄積します。 このアイディアに沿い、一つの研究はタイチン(受動的な要素の一つ)がエネルギーを吸収し、ひずみにさらされた時に筋の断裂を防ぐ筋内の物質であるかもしれないことを示しています。しかし、この研究は、通常の運動よりも伸張された筋長においてのみ行われているものです(Leonard et al. 2010)。 単に普通のトレーニングを代わりに行ってはなぜいけないのか? 通常の筋力トレーニングはリフティング・持ち上げる(求心性)と下ろす(遠心性)段階から成り立っていることから、特に制御しながらウェイトを下ろしている場合、遠心性トレーニングが必要ないと考えてしまいがちです。 しかし、筋挫傷のエネルギー吸収モデルが正しければ、これは間違っています。 普通の筋力トレーニング(どちらの段階も同じ負荷がかかっている)を行っていれば、遠心性対求心性の筋力比率を増加させることは決してないでしょう。なぜなら、最大能力に対しての同じ負荷を動かすために発揮する力は、求心性の段階と比較して、遠心性の段階でかなり低く、これはともに、慣性と二つの段階の筋力の違いによるものです。 発揮する力が筋力を強化させるため(筋肥大でなくとも)(Schoenfeld et al. 2014)、これは、遠心性対求心性筋力比率が自然に下向きに横滑りしていくことを意味しています。 では、遠心性トレーニングはどのように筋挫傷を防ぐのでしょうか? 最終的に、私のここでの提案は(他にも同じく提案されているかもしれません)求心性や通常の筋力トレーニングを行えば、次第に遠心性対求心性筋力の比率が下がり、減速能力よりも加速能力が向上するでしょう。すると、伸張—短縮サイクルを含むスポーツの運動(例えばスプリント)を始める場合に、安全に吸収できる運動エネルギー以上のエネルギーを蓄積してしまえることを意味しています。 また一方で、遠心性のトレーニングを使えば、自然と遠心性対求心性の筋力比率が増加し、それによって減速能力は加速能力よりも、より大きく向上します。これは、自分が蓄積できる運動エネルギー以上により大きい運動エネルギーを吸収できるということです。そう考えてみると、これがなぜ筋挫傷のリスクを下げるかを理解するのは難しいことではありません。 まとめ 遠心性のトレーニングは遠心性の筋力を特異的に向上し、これには、筋を硬化させる筋の受動的要素を強化することも含まれます。このため筋はより減速能力を高め、エネルギーを吸収できます。このエネルギーを吸収できる高度な能力が、遠心性のトレーニングの筋挫傷リスクを軽減することへとつながるのかもしれません。 参照文献 Askling, C., Karlsson, J., & Thorstensson, A. 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ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3716字

なぜ遠心性のトレーニングは筋挫傷を防ぐことに役立つのか? パート1/2

たくさんの研究が遠心性のトレーニングが筋挫傷のリスクを下げることに役立つことを証明しているにも関わらず、現在研究者たちの間で遠心性のトレーニングが厳密にどう働いているのかに関する明確な意見の一致はありません。 なぜこれが役立つのか、私はこのように考えています。 筋挫傷は本当によくあることなのでしょうか? 筋挫傷は、個人やチームスポーツにおいてよくある問題です。 国際的なハイレベルのアスリート達において、筋のケガは競技中におきるケガのカテゴリーの中でも一番大きく、総合的なケガの41%を占めており、筋のケガのほとんどは筋挫傷です (Edouard et al. 2016)。フットボールにおいては、下肢の筋挫傷はケガの大半を占め、最も発生しやすい場所はハムストリング、大腿四頭筋、股関節内転筋群、およびふくらはぎとなっています。(Hägglund et al. 2013) 。 ある前向きコホート研究の、566,000時間におけるサッカー選手から記録されたデータによると、4,483件のケガが確認されました(Ekstrand et al. 2011)。最もよく起こるケガのタイプは大腿の筋挫傷(ハムストリングか大腿四頭筋)で、全てのケガのうち17%を占めています。これらの大腿の筋挫傷のうち3分の1は大腿四頭筋の筋挫傷で、3分の2はハムストリングの筋挫傷でした。 当然、そのために、ほとんどの筋挫傷の研究は、特にハムストリングに関連したもので行われています。 この点に関して、遠心性のトレーニングは非常に効果的であるようです。 遠心性のトレーニングは本当にハムストリングの筋挫傷を防げるのでしょうか? つい先ごろ、遠心性のトレーニングプログラムがハムストリングの筋挫傷へどのように影響しているか評価するために、系統的レビューが行われました(Goode et al. 2015)。校閲者は遠心性のトレーニングを行ったグループと行わなかったグループの選手を比較しました。そして、それぞれのグループの中でハムストリングの筋挫傷が何件発生したかを調査しました。 二つのグループを比べるにあたって、遠心性トレーニングのグループで実際に遠心性のトレーニングを行った選手達は対照群に比べてハムストリングの筋挫傷を負った件数は少なかったことを発見しました。最終的な結果として、準拠したアスリートがハムストリングの筋挫傷を負う可能性が0.35倍に減りました。 違う言い方をすれば、遠心性のトレーニングを行わなければハムストリングをケガしてしまう確率が3倍も増えるのです! Goode et al. (2015)によるレビューが実際に書かれた当時、関連する研究は4つしかありませんでした(Askling et al. 2003; Gabbe et al. 2006; Engebretsen et al. 2008; Petersen et al. 2011)。それ以来、最低1つの研究が発表され (Van der Horst et al. 2015)この研究結果も似た結果を報告しています。 これは、かなり決定的なことだと、本当に思います。 それでは、もしすでに高い遠心性筋力を持っていれば筋挫傷を負うリスクが少なくなるのでしょうか? まあ、そんなにシンプルではありません。 高い遠心性の筋力は筋挫傷を防げるのでしょうか? 少なくとも等速性検査の場合、求心性と遠心性のハムストリングの筋力は明白なハムストリングの筋挫傷のリスクファクターではないのです(Opar et al. 2012; Freckleton & Pizzari, 2013; Van Dyk et al. 2016)。 より最近の研究では、ノルディックカールエクササイズによる遠心性の膝関節屈曲の筋力は、ハムストリング筋挫傷を予知できるかもしれないと報告されていますが(Opar et al. 2015; Timmins et al. 2015a)、すべての研究は厳密に同じ結果を報告していません(Bourne et al. 2015)。 ノルディックカール(パートナー無しのバリエーション) 同様に、大腿四頭筋においても、求心性や遠心性の膝関節伸展筋力は明白な大腿四頭筋の筋挫傷のリスクファクターではありません(Fousekis et al. 2010)。股関節内転筋の弱化は、鼠径部の筋挫傷のリスクファクターですが(Ryan et al. 2014; Whittaker et al. 2015)、さらに試験が行われるにつれ同じストーリーを校閲者たちが語るか否かは、それほど明確ではないのです。 それでは、もし筋力(遠心性の筋力も)が完璧に信頼できるリスクファクターでないにもかかわらず、遠心性のトレーニングが筋挫傷のリスクを軽減するのであれば、実際何が起こっているのでしょうか? ただ高いレベルの遠心性の筋力を持っていることではなく、遠心性のトレーニングを行うことがリスクを減らすと私は思います。 ただ全体的に強いことも含め、いろんな理由でアスリートは遠心性のフェーズで強さを発揮するかもしれません。しかしそれは、遠心性のトレーニング後の様々な適応をしてきたことを意味するわけではないのです。これらの適応はもちろん遠心性の筋力生産を高めますが、その他の影響もあります。 アスリートが非常に強いため、高いレベルの遠心性筋力を持っていることもあれば、また、遠心性のトレーニングを行ったために高い遠心性の筋力を持つアスリートもいる、というような矛盾する結果を推定するかもしれません。。 実際、Goossens et al. (2015)によると、高い等尺性対遠心性のハムストリング筋力の比率はハムストリングの筋挫傷のリスクを将来的に高める関連性があります。被験者たちが全般的に強かったとしても、これは必ずしも保護的な要因ではありません。そうではなく、鍵となったのは等尺的に筋力を生産できることよりも遠心的に筋力を発揮できることでした。このような比率を獲得するには遠心性のトレーニングに触れることが必要です。 筋挫傷を防ぐために遠心性のトレーニングは役立ちますが、この一部の理由は様々な特異的な変化が遠心性のトレーニングの後に起こるからです。ただ全体的な筋力強化だけではなく、等尺性や求心性の筋力に比べて遠心性に特化した筋力強化が大切です。 これがまとまったところで、筋挫傷がなぜ起こるのかを見てみましょう。 しかし、“筋挫傷”はともかく何を意味しているのでしょうか? “筋挫傷”はともかく何を意味しているのでしょうか? 筋挫傷の原因に関する定理を理解するには、下記のような基本的な工学専門用語への手引きが必要です: ストレスは一単位の面積における力で、この状況では単に加わる力として考えるのが最も簡単でしょう。この力はランニングやジャンプする時の衝撃を吸収する時に、通常床から体にかかります。 ひずみは相対的な長さの変化で、筋束が最初の長さに比べてどのくらいストレッチされているかを意味しています。筋の“挫傷”とは全く別の意味なので、混乱しないようにしましょう。ひずみは通常パーセンテージで考えられており、安静時の長さに比べての延長をパーセンテージが示しています。アクティブなひずみとは筋が力を発揮している時のひずみを意味しており、長さの変化に抵抗しています。 弾性ひずみの吸収されたエネルギーとはストレス−ひずみ曲線の下の面積です。ですから、ストレス(力)やひずみ(長さの変化)が大きければ大きいほど、吸収されるエネルギーも大きくなります。 それではこれらの用語が筋挫傷とどう関係しているのでしょうか? 筋挫傷はなぜ起こるのでしょうか? 筋挫傷はほぼ常に、筋がアクティブな時、伸張しながらの筋収縮中に起こります(Liu et al. 2012)。筋挫傷はアクティブなひずみの度合い(つまり相対的な筋長の変化)あるいは吸収されるエネルギーによって引き起こされるようですが、どちらがより重要な原因であるかはまだ意見がまとまっていません。 いずれにせよ、この二つのコンセプトは深く関連しています。どちらも伸張しながらの筋収縮が特徴であり(Asmussen & Bonde‐Petersen, 1974)、ストレス−ひずみ曲線の下の面積が吸収されるエネルギーです。ちなみに、ストレス−ひずみ曲線の傾度は物質の硬さと呼ばれ、適用された一単位の力による長さの変化を示しています。 ストレス−ひずみの関係は以下に現されています。 ストレス−ひずみの関係 筋挫傷のメカニズムの研究のほとんどは、一つの筋線維ごとに行われており、力は人工的に刺激され、研究の多くは矛盾した結果を報告しています。 ほとんどの研究は、アクティブなひずみが最も重要な要因だと示していますが(Garrett et al. 1987; Lieber & Friden, 1993; Talbot & Morgan, 1998; Brooks & Faulkner, 2001; Butterfield & Herzog, 2006)、他の研究ではアクティブなひずみのみが原因ではないと示しています(Tsuang et al. 2007)。その他、力が重要な要因であったり(McCully & Faulkner, 1986; Warren et al. 1993; Hasselman et al. 1995)、また違う研究では吸収されたエネルギー(マイナスの仕事とも呼ばれる)が最もよく予知する要因だと報告しています(Brooks et al. 1995; Macpherson et al. 1996; Mair et al. 1996)。 これに加え、筋全体のレベルでは、筋の構造が筋挫傷のリスクにとって重要だと思われていますが、正確にどのように筋挫傷のリスクに影響しているかははっきりしていません(Timmins et al. 2016)。例えば、より短くより羽状形の筋束を持つ人は、ハムストリングの筋挫傷のリスクが高いのですが(Silder et al. 2010; Timmins et al. 2015a; Timmins et al. 2015c)、インビトロでの研究は、羽状の筋は紡錘状の筋に比べてよりひずみに耐えられると示しており(Garrett et al. 1988)、より大きいひずみに対する保護的なメカニズムとして、筋の羽状の角度は実際に回旋することを示しています(Azizi & Roberts, 2014)。これらの矛盾している結果を和解することや、メカニズムを理解するのは難しいことです。 厳密な原因がなんであれ、筋挫傷は筋をアクティブに伸張する際に引き起こされ、吸収されたエネルギーあるいはひずみの度合いによって促されることが、研究の全体的な結果から推定できます。 よりハムストリング筋挫傷の研究を入念に見れば、これはより明確になってくるのかもしれません。

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