マイクロラーニング
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プライオメトリックスはパワーを向上させることができるのか? パート2/3
プライオメトリックスは出力を向上させるか? 下記の研究は、プライオメトリックストレーニングプログラムの筋出力に対する影響を評価したものであり、下記の表に要約されている。 シェリー (2014年) は、23名のトップレベル青少年ハンドボール選手において、シーズン中の通常のトレーニングに加えた、週2回、8週間にわたるプライオメトリックストレーニングプログラムが、スクワットとカウンタームーブメントにおける平均出力と推定下肢筋肉量に及ぼす影響を評価した。被験者はコントロールグループ、もしくは実験グループのどちらかへと分けられた。研究者たちは、コントロールグループに比べプライオメトリックトレーニンググループにおいて、カウンタームーブメントジャンプのパワーと下肢筋肉量が増加したということを発見した。 チャオウチ (2014年) は、12週間のトレーニング期間にわたり、63名の児童(10歳から12歳まで)におけるプライオメトリックスと従来の(高負荷)レジスタンストレーニングプログラムの有効性を比較した。トレーニングの前後に、1秒間に60度、300度の両方において等運動性パワーが計測された。研究者たちは、1秒間に300度の等運動性パワーにおいてはプライオメトリックスが(高負荷)レジスタンストレーニングよりも優れており、1秒間に60度の等運動性パワーにおいては(高負荷)レジスタンストレーニングがプライオメトリックスよりも優れているということを発見した。 マクドナルド (2013年) は、レクリエーションとしてトレーニングを行っている34名の大学生年齢の男性において、カウンタームーブメントジャンプの最大出力を参考に、プライオメトリックスと従来のレジスタンストレーニングの有効性を比較した。研究者たちは、カウンタームーブメントジャンプの最大パワーに対するトレーニングプログラムの効果も、グループ間のいかなる差違も発見することはなかった。 マルコビッチ (2013年) は8週間にわたり、身体的に活発であるがトレーニングは行っていない男性において、垂直跳びトレーニングと負荷付き垂直跳びトレーニングの、スクワットとカンタームーブメントジャンプの際の筋出力に対する影響を比較した。負荷付き垂直跳びの条件として、負荷には、体重の30%に等しい負荷を付けたベストを用いた。研究者たちは、このトレーニング期間は、スクワットジャンプにおけるパワーの同様な増加(7.4 – 11.5 %)につながるが、負荷を付けたベストのグループが出力においてより良好な結果を示したことから、カウンタームーブメントジャンプ(0.5 vs. 9.5%) においては、グループ間に差違があるということを発見した。 デ・ビリャレアル (2012年) は、65名の体育の学生(男性47名、女性18名)においてプライオメトリックスと高負荷レジスタンストレーニングの効果を比較した。高負荷レジスタンストレーニンググループは、1RMの56%から85%で3-6レップのフルスクワットエクササイズを使用したトレーニンを行い、プライオメトリックスグループはジャンプを行った。プライオメトリックスグループにおける出力の向上は非有意であった。 シェリー (2010年) は、23名のジュニアサッカー選手において、通常のシーズン中のコンディショニングと併用した8週間にわたる下肢のプライオメトリックトレーニングプログラム(ハードルとデプスジャンプ)が、カウンタームーブメントジャンプの際の最大出力に及ぼす影響を評価した。被験者は通常のコンディショニング、もしくは通常のコンディショニングに加え週2回のプライオメトリックトレーニングを行った。研究者たちは下肢の筋肉量も測定した。彼らは、通常のグループに比べ、プライオメトリックスグループにおいて平均パワーと大腿筋量が増加したことを発見した。 ヴァイシング (2008年) はトレーニングを行っていない男性において12週間にわたり、従来の(高負荷)レジスタンストレーニングと同等の時間と努力でのプライオメトリックスの効果を比較した。研究者たちはプライオメトリックスがカウンタームーブメントジャンプ(9%)とバリスティックなレッグプレス(17%)の際の有意な出力の増加につながったことを発見した。研究者たちはまた、大腿四頭筋、ハムストリングス、内転筋の筋肉全体の断面積が両方のタイプのトレーニングにおいて同様に増加したことも記述している。 ロネスタッド (2008年) は、7週間にわたり14名のプロサッカー選手において、プライオメトリックトレーニングの出力に対する影響を評価した。被験者は不規則に2つのグループに分けられた。1つのグループは1週間に6-8回のサッカーセッションに加え、週に2回のプライオメトリックトレーニングを行った。コントロールグループは1週間に6-8回のサッカーセッションのみを行った。研究者たちは介入の前後に20、35、50kgでのハーフスクワットにおける最大パワーを測定した。研究者たちはトレーニンググループでは20、35、50kgでのハーフスクワットにおいて最大パワーが有意に増加したが、コントロールグループでは20kgでのみ最大パワーが向上したことを発見した。 マルコビッチ (2007年) は、93名の体育の男子学生において、プライオメトリックトレーニングとスプリントトレーニングの筋パワーに対する効果を比較した。出力はスクワットとカウンタームーブメントジャンプにおいて測定された。トレーニンググループは週に3回のトレーニングを行った。スプリントグループは10-50mの距離において最大スプリントを行い、プライオメトリックグループはバウンスタイプのハードルジャンプとドロップジャンプを行った。研究者たちは、スプリントグループではスクワットとカウンタームーブメントのパワーが有意に向上した(4%-7%)が、プライオメトリクスグループでは向上が見られなかったということを発見した。 サンダース (2006年) は15名の鍛錬された長距離選手のトレーニングプログラムにプライオメトリックスを含むことの効果を評価した。プライオメトリックトレーニングには、9週間にわたる、週に30分x3回のセッションが含まれていた。研究者たちは、5—ジャンププライオメトリックテストの際の平均パワーは、コントロールグループと比較し、プライオメトリックスグループにおいて非有意に増加(15%)したことを発見した。 カナバン (2004年) は、20名の大学生年齢の女性において、6週間にわたるプライオメトリックトレーニング後の、カウンタームーブメントの際の実際の最大パワーの測定値と、3つの異なる予測方程式から生み出された予測値を比較した。研究者たちは最大パワーがトレーニング後に有意に増加したことを発見した。 ルーバース (2003年) は、身体的に活発である38名の大学生年齢の男性において、類似したトレーニング量の2つの異なるプライオメトリクスプログラムの、垂直跳びパフォーマンスと出力に対する影響を比較した。両方のグループは同等量のトレーニングを行ったが、一方のグループはこれを4週間行い、他方のグループは7週間行った。垂直跳びのパワーは両方のグループにおいて有意に増加し、グループ間に有意な差違は見られなかった。トレーニング頻度が低かった7週間のグループにおいては、より大幅にパワーが増加するという非有意な傾向が見られた。 ディアロ (2001年) は12-13歳の20名の思春期前のサッカー選手において、10週間にわたるプライオメトリックスの有効性を調査した。プライオメトリックスはジャンプ、ハードル、スキップから構成されていた。研究者たちはトレーニング後に最大パワーが有意に増加したことを発見した。
プライオメトリックスはパワーを向上させることができるのか? パート1/3
筋力と筋量の向上は運動競技の発達の鍵である。しかしながら筋パワーはそれ以上に重要であると考えられている。プライオメトリックスは筋パワーを増進させるために一般的に使われているが、最善の効果を得るためにプライオメトリックスプログラムをどのように設定するかに関する強く一致した意見は無い。これらは我々の知識を明確にするために役立つ長期のトレーニング研究の総評である 背景 何故単にジャンプの高さを測定するだけではないのか? 多くの古い研究は単にジャンプの高さを測定し、これを筋パワーの測定としていた。しかしより最近の研究では、この単純化した方法は下記の2つの主な理由により有効ではないということを明確にしている。 体脂肪率(カーンズ2013年)、体重(マーコヴィック2014年)、そして民族性(ルース2014年)さえも含む身体計測上の特性は、ジャンプの高さ、及び/もしくはそのパワー出力との関係に影響を及ぼす。ゆえに異なる身体計測上の特性をもつ個人は、もしパワー出力が同様だとしても他に比べジャンプの高さが異なる可能性がある。 鍛錬された個人は、パワー出力とジャンプの高さの間に非常に近い相関関係を示し、鍛錬されていない個人はそうではないということから(ティシェ2013年)、運動学習は垂直跳びのパフォーマンスに多大な影響を及ぼすようである。ゆえに、ジャンプにおいてアスリートにより示される技能水準が向上するに従い、垂直跳びの高さをパワー出力の代用物として評価することは、より有効となる可能性がある。 これらの理由により、全ての人において垂直跳びの高さ(スクワットジャンプ、もしくはカウンタームーブメントジャンプ)はスポーツパフォーマンスの良い測定方法であるものの、筋パワーの測定としては有効ではない。すべて何を測定しようとするかによって決定されるのである。 プライオメトリックスとは何か? 「プライオメトリックス」という言葉は、ソビエトのジャンピングコーチであるヴァーコシャンスキーによって最初に普及された。彼は当時、ジャンプ練習とレジスタンストレーニングから成る通常の方法により既に有意な進歩を得ているアスリートのジャンプ能力を発達させる方法を探索したいと考えた。ヴァーコシャンスキーは、短い接地時間と三段跳び選手におけるより優れたパフォーマンスの間に相関関係があるようであるため、これは、より剛性であること(もしくは弾性エネルギーを蓄え放出するための優れた能力)は、ジャンプ能力を向上する鍵であるということを示唆している可能性があると論じている。ゆえに彼は、エキセントリック筋活動からコンセントリック筋活動へとより迅速に切り替わる能力を向上させ、その結果として接地時間を減少させるために、彼のアスリートに対しデプスジャンプを使い始めた。(ファッシオーニ2001年参照) 多くのコーチは今でもこのようにプライオメトリックスを考えているが、現代の研究論文においての用法は大幅に変更がなされている。今日プライオメトリックスという言葉は、爆発的な、伸張—短縮サイクルを含む上半身もしくは下半身の複合動作とされている。(マルコビチ2010年参照)下半身に関しては、この定義の中に様々なタイプのジャンプが含まれており、上半身に関しては、メディシンボールスローがよく見られる例である。ゆえに最も初期のヴァーコシャンスキーによる一般向けの言葉の用法と、伸張—短縮サイクルが含まれる常に低い負荷や無負荷を使用する、バリスティック・レジスタンストレーニングエクササイズの一部として言葉を使用しているようである彼の弟子達や近代のスポーツサイエンス論文での用法との間には相違がある。さらに、プライオメトリックスは筋力とパワーの質を繋げる鍵として、しばしば表現されている(例としてマックニーリィ2005年による総説を参照)。ゆえに、現代論文が明確に筋パワーの増進に言及している一方、ヴァーコシャンスキーはそのトレーニング方法によりジャンプパフォーマンスの向上を意図していたため、初期の一般向けの用法と現代のスポーツサイエンスにおける用法の間には、プライオメトリックスが意図している目的に関しても差違がある。もしヴァーコシャンスキーが正しく、剛性の増加によりプライオメトリックがジャンプパフォーマンスを向上させているのであれば、必ずしも相当なパワーの変化が見られるわけではないかもしれず、あるいは少なくとも他の方法に比べより小さな変化が見られるかもしれない。 選択基準は何か? 下記の研究は、長期の実験においてプライオメトリックスの筋パワーに対する影響を評価したものであり、そこにおける測定結果はワットで表された筋パワーの測定値であった。含まれた研究はプライオメトリックのみを含むものでなくてはならず、他のトレーニング方法と組み合わせて行ってはならなかった。
股関節の伸展トルクはスプリントの速度と共にいかに変化するか? パート2/2
何が起こったのか?(続き) ランニング速度に伴う関節における仕事量の増加 研究者たちは、ランニング速度の上昇に伴い増加したのは、遊脚相初期及び終期の股関節と膝関節の矢状面において行われた仕事であったということを発見した。下記のグラフは遊脚相の初期と終期における仕事の増加を示している。 グラフは遊脚相初期に股関節において行われた仕事は、膝関節において行われた仕事よりも常に非常に大きかったということを示している。しかし、股関節において行われた仕事は3.5m/sから8.95m/sで298%増加しているのに対し、膝関節において行われた仕事は537%増加している。 グラフは遊脚相終期に股関節において行われた仕事は、遊脚相終期に膝関節において行われた仕事と常に類似しているということを示している。しかし股関節において行われた仕事は3.5m/sから8.95m/sで653%増加しており、膝関節において行われた仕事は405%増加している。研究者たちは、立脚相において膝関節で行われた仕事は、ランニング速度の上昇と共に増加しなかったということを記述している。加えて研究者たちは、支持相に足関節において行われた仕事はランニング速度が3.50から5.0m/sへと変化した際に有意に増加したが、その速度以上では変化が無かったと記述している。 股関節において行われる仕事対、膝関節において行われる仕事の比率 研究者たちは解説をしていないが、興味深いと思われる最終の事項は、下記のグラフで示されるように、遊脚相初期と遊脚相終期においての、股関節で行われる仕事対膝関節で行われる仕事の比率は、下記のチャートに示されるように、実際にはランニング速度の変化と共に変化していたということである。 グラフは、ランニング速度の上昇に伴い、遊脚相初期において股関節の膝関節に対する比率は減少し、遊脚相終期においては股関節の膝関節に対する比率は増加しているということを示している。これは、ランニング速度が上昇するにしたがい、遊脚相終期においては膝関節の屈筋群に比較し、股関節の伸筋群が漸進的により重要となり、遊脚相初期においては股関節の屈筋群に比べ、(膝の伸筋モーメントの絶対的な大きさは依然としてとても小さいが)膝関節の伸筋群がより漸進的に重要となるということを示唆している。 研究者たちはどのような結論に達したか? 研究者たちは、遊脚相終期における股関節の伸筋群と膝関節の屈筋群は、より速い速度でのランニングにおいて、最も大きな仕事量の増加を示したという結論に至った。彼らはまた、立脚相における最大膝関節伸展トルクと膝関節において行われた仕事は、ランニング速度の上昇によりほとんど影響をうけなかったと結論づけた。さらに彼らは、支持相において足関節で行われた仕事は、ランニング速度が3.50から5.0m/sへと変化した際に有意に増加したが、その速度以上においては変化をしなかったということを記述している。研究者たちはまた、遊脚相初期においては、膝関節伸筋群がエネルギーを吸収するのと同時に股関節屈筋群がエネルギーを生み出していると記述している。さらに、遊脚相の後半においては、膝関節屈筋群がエネルギーを吸収するのと同時に、股関節伸筋群がエネルギーを生み出す。このエネルギーの交換には、2関節筋である大腿二頭筋や大腿直筋が関わる。彼らは、大腿二頭筋によるエネルギーの交換は、股関節でエネルギーが吸収され、膝関節でエネルギーが生み出される足尖離地において起こる、あるいは、膝関節でエネルギーが吸収され、同時に股関節でエネルギーが生み出されている遊脚相初期において起こるであろうと推測している。 制限要素は何か? この研究は、異なるスポーツからの多様な少数の被験者を使用していた。被験者の規模自体が制限であり、異なるスポーツを行う男女を使用したということがある点において異常値を生み出した可能性があり、それがデータに影響を及ぼした可能性がある。さらに全ての被験者はスポンサーから提供されたランニングサンダルを使用しており、ゆえにこの普段とは違う履き物が結果に影響を及ぼした可能性がある。被験者たちがランニングサンダルを履くことに慣れていたのかどうか、もしくはサンダルが彼らの通常のランニング装備であったのかどうかは明確ではない。 実践的意義は何か? 遊脚相終期における股関節の伸筋群と膝関節の屈筋群(例:ハムストリングスと臀筋群)は、より速い速度でのランニングにおいて最大の仕事量の増加を示した。これは臀筋群やハムストリングスを発達させることはランニング速度を上昇させるための鍵であるということを示唆している。 立脚相においての最大膝関節伸筋(例:大腿四頭筋)のトルクと膝関節において行われた仕事はランニング速度の上昇により影響を受けず、立脚相に足関節において行われた仕事は5m/s以上では有意な変化はしない。これは、より速いランニング速度のために大腿四頭筋と足関節底屈筋群を発達させることはそれほど重要ではないということを示唆している。
股関節の伸展トルクはスプリントの速度と共にいかに変化するか? パート1/2
スプリントは、陸上競技としてのみでなく、チームスポーツのスキルとしても極めて重要なものである。しかし、アスリートがスプリントのパフォーマンスを向上させるために、ウェイトルームでの時間を最大限活用するにはどのようにすればよいのだろうか?この質問を解明する1つの方法は、スプリントの際の異なる下肢の筋グループの役割を評価することである。ランニング速度の上昇と共に最も大きな関節モーメントの増加を示す筋グループは、おそらく速度の向上に最も貢献している筋グループであろう。この研究は、股関節の伸筋群がより高速での走りにおいて最大の仕事量の増加を表したと示しており、これは、スプリント速度を上昇させるためにウェイトルームで最もトレーニングする必要のある筋肉群は、ハムストリングスと臀筋群であるということを示唆している。 研究論文:ランニング速度が下肢関節の動力学に及ぼす影響、シャハテ、ブランチ、ドルン、ブラウン、ローズモンド、パンディ、スポーツ&エクササイズ、医学&科学 2011年 背景 なぜスプリントにおける生体力学解析を行うのか? ランニングの際の下肢における生体力学解析は、スポーツ科学者により頻繁に行われており、それにより彼らは様々な筋活動をより理解することができ、一部のランナーが他の者よりもより速く、より効率的に、もしくは怪我をしにくくなるための鍵となる変数を特定することができるのである。 逆動力学とは何か? ランニングの際の下肢の生体力学的運動を分析する一般的な方法は、逆動力学である。逆動力学には、関節運動学と床反力を測定することにより、下肢の関節モーメント(トルク)を計算することが含まれる。モーメント(トルク)に加え、研究者たちはまた、正味出力—時間の曲線下領域として、トルクや関節角速度の産物である正味出力や、行われた仕事量を計算することが可能である。データを再考察することにより研究者たちは、下肢の筋グループがコンセントリックに活動しており、ゆえにエネルギーを生み出しているのか、もしくは、エキセントリックに活動しており、その結果としてエネルギーを吸収しているのかどうかということを説明することが可能となる。逆動力学を使用したランニングに関する以前の研究は多くの場合、支持期もしくは遊脚期のような歩行の特定の段階のみを考察することにより制限があった。他の研究は、3Dではなく矢状面における下肢の動きのみを考察することにより制限されていた。 研究者たちは何を行ったか? 研究者たちは、走りの全ての段階において3Dで下肢関節において作用するトルクを計算するために、逆動力学を使用したいと考えた。彼らはこれらのトルクがランニング速度の上昇に伴いどのように変化するのかを見たいと考えていた。そこで彼らは、オーストラリアンフットボールや陸上など、ランニングを基本とするスポーツから8名(男性5名、女性3名)の被験者を集めた。 彼らは110mの距離の総合的な室内陸上競技用トラックを使用し、それに沿い250ヘルツの速度で抽出する22台のカメラを設置した。これらのカメラはトラックの80mの距離で走者からのデータを集めた。カメラにより認知されるよう、反射マーカが走者の解剖学的指標に付けられた。トラックのデータを採取する場所の中央には7.2mの距離にわたり、多数のフォースプレートが設置された。フォースプレートは走者から隠すためトラックの下へと配置された。研究者たちは3.5、5.0、7.0m/s、及び最高のスプリント速度にてデータを採取した。 何が起こったのか? 研究結果の要約 平均スプリント速度は8.95 ± 0.70m/sであった。研究者たちは、股関節、膝関節、足関節における33の異なるトルク、正味出力、行われた仕事量の値を計算した。彼らは、これらのうち29の値がランニング速度の上昇と共に増加したことを発見した。しかしその後の分析では、いくつかのランニング速度の状態は互いに有意な差違はなく、よって29の値のうち12のみが有意な増加を示したということを発見している。 ランニング速度の上昇に伴う関節トルクの増加 研究者たちは、遊脚相初期と終期においてランニング速度の上昇に伴い増加したのは、股関節及び膝関節における矢状面のトルクであったということを発見した。下記のグラフは遊脚相の初期と終期における関節可動域の増加を示している。 このグラフは、最大股関節屈曲トルクが最大膝関節伸展トルクに比べ常に非常に大きいということを示している。しかし最大股関節屈曲トルクは3.5m/sから8.95m/sで295%増加した一方、膝関節伸展トルクはより速く495%増加していた。 このグラフは、最大股関節伸展トルクは最大膝関節屈曲トルクよりも常に非常に大きいということを示している。更に最大股関節伸展トルクは3.5m/sから8.95m/sで360%増加している一方、最大膝関節屈曲トルクは少々遅く232%増加していた。これに加え、研究者たちは、立脚相の最大膝関節伸展トルクはランニング速度の上昇によりほとんど影響を受けなかったことを発見している。様々な研究者たちは、立脚相の膝関節伸展の役割は、重心を引き上げ、重力に対抗することであると認識している。初期の研究者たち(例:マンロー1987年、ニグ1987年)は、ランニング速度の上昇に伴う垂直床反力の増加は直線状であると考えていたが、バーグヘリ(2011年)を含む後期の研究者たちは、垂直床反力はあるポイントまでしか増加せず、その後は横ばいとなることを発見しているため、このことは理にかなっている。ゆえに現時点では、垂直床反力は有意には増加しないため、膝関節伸筋群のモーメントを増加する必要性はないのである。
筋長は疲労に影響を及ぼすか? パート2/2
何が起こったか? 疲労前測定結果 研究者たちは、最大随意膝関節伸展トルクと、一対の電気刺激(二重)により引き起こされた膝関節伸展トルクはどちらも、長筋長の際よりも短筋長の際により高かったと記述している。その差違は下記のグラフに示されている。 しかしながら彼らはまた、筋活動と大腿二頭筋の共同活動は、より大きな膝関節伸展トルクを生み出すにもかかわらず、短筋長の際に低かったということを発見した。これらの結果は下記のグラフに表されている。 疲労発生 研究者たちは、疲労性運動の際、必要であるトルクの減少を得るために必要な随意等尺収縮の継続時間は、長筋長に対してよりも短筋長に対しての方がより長かったということを発見した。彼らは、3つの疲労性収縮の総合継続時間は、長筋長に対してよりも短筋長に対しての方が68.4 ± 19.6%長かったと報告している。しかしながら、このより大きな疲労抵抗にもかかわらず、同等のトルク減少の結果としての筋活動の減少は、下記のグラフに示されるように短い筋長において非常に大きかった。 疲労後測定結果 下記のグラフに示されているように、研究者たちは、両方の疲労性運動後の最大トルクは、短長両方の筋長において同様に減少したということを発見した。 研究者たちは、長い疲労性運動は、疲労性運動後の最大随意等尺収縮の際に、短筋長活動もしくは長筋長活動にわずかな影響しか及ぼさなかったということを発見した。しかしながら下記のグラフに見られるように、短い疲労性運動は両方の活動を同様に減少させている。 つまり短い疲労性収縮は筋活動の低下を引き起こすが、長い疲労性収縮は低下を引き起こさないのである。結局のところ、短長の長さの異なるテストによっての差異は僅かなものである。重要なこととして、疲労性運動の種類、筋肉の新鮮さや疲労度に関わりなく、その活動は短筋長においてよりも、長筋長においての方が常により大きいということもまた、上記のグラフから見ることができる。 研究者たちはどのような結論に達したか? 研究者たちは、神経活性化はフレッシュ及び疲労した筋肉の両方において筋長に依存し、疲労の種類はこの関係に影響を及ぼさないという結論に至った。 更に研究者たちは、疲労を誘発する際の筋長は、疲労後の筋活動のレベルに対し重要な影響を持っていると結論付けた。この研究においては、短い疲労性運動は、あるとしてもわずかの低下しか引き起こさないようである長い疲労性運動に比較し、より大きな筋活動の低下を引き起こしていた。 ゆえに研究者たちは、短い疲労性最大随意等尺収縮は、有意な神経活性化の減少によって証明されるように、主に中枢神経系疲労につながり、一方、長い疲労性最大随意等尺収縮は筋節自体の末梢疲労を引き起こすようであると示唆している。 ゆえに研究者たちは、「運動が行われる角度は、筋神経系の反応に強い影響を及ぼすため、リハビリテーション、スポーツトレーニング、もしくは生理学的研究のためには考慮にいれるべき有意なパラメーターである」という結論に至った。 制限要素は何か? この研究はレジスタンストレーニグを行っている被験者ではなく、身体的に活発である被験者を用い、大腿四頭筋に対しての実験を行っている。他の集団や異なる筋グループでは異なる結果が得られたかもしれない。また研究者たちは、2つの関節角度においてのみ実験を行っているが、他の関節角度においては異なる結果が得られたかもしれない。 実践的な意義は何か? 筋活動(筋電図で測定)はフレッシュもしくは疲労した筋肉の両方において筋長に依存しており、疲労性収縮の種類はこの関係に全く影響を及ぼさない。 疲労が誘発された際の筋長は、いかなる筋長においても疲労後の筋活性化の度合いに影響を及ぼす。 短い疲労性最大随意等尺収縮は、主に中枢神経系疲労につながる可能性があり、長い疲労性最大随意等尺収縮は筋節自体の末梢疲労を引き起こす可能性がある。
筋長は疲労に影響を及ぼすか? パート1/2
異なる長さにおいて筋肉の活動が異なるという事実は、フィットネス業界において多数の人から無視されている。長さと張力の関係は筋肉生理学において最も興味深い側面の一つであるゆえ、これは非常に恥ずべきことである。この関係を理解すると、なぜ筋肉がある特定の関節角度においてより強く、その他の関節角度においてより弱いのかを説明するのに役立つ。研究者たちは、異なる長さにおける筋肉全体の強度の差違は、筋繊維における個々の筋節の重なり度合いによりもたらされると考えている。 この記事ではクリス・ビアズリーが、異なる筋長において筋活性がどのように異なるのかを示している刺激的な研究を概説している。さらにそれは、この強度の差違が、筋肉がフレッシュであるのか、疲労しているのかにかかわらず起こるということを示している。更に興味深いことにこの研究は、疲労をもたらす収縮後の筋活動は、疲労性の収縮が行われた筋長により異なる度合いで減少すると示している。つまり、同様の疲労性活動を異なる関節可動域にて行うことは、全く異なる疲労反応につながるのである。 研究論文: 異なる筋長における最大等尺性収縮後の神経活性化、デスブロス、ババルト、メイヤー、プーソン、スポーツ&エクササイズ、医学&科学2006年 背景 研究者たちは、以前の研究により筋肉への神経伝達は、その長さによって変化するということが発見されていると記述している。これは、最大力が開発される、モーメントアームが最良である、もしくはその両方において、筋肉が最適の長さ以外で強度を維持することを可能とするメカニズムであると考えられている。 疲労に関して研究者たちは、神経筋の疲労は中枢疲労と末梢疲労の2つに分けることができると解説している。彼らは、中枢疲労は運動皮質と神経筋接合部の間の神経興奮の変化において最も顕著にみられ、末梢疲労は神経接合部と筋節の架橋との間の変化として定義することができると示唆している。 研究者たちは、いくつかの研究が、短い筋長よりもむしろ長い筋長において行われた場合、最大下、もしくは最大等尺性膝関節伸展後に個人がより大きな疲労を経験したということを発見しているため、疲労は筋長に依存しているようであると解説している。彼らは、この研究においてはいかなる中枢疲労の変化の兆候は無く、ゆえにそれは抹消疲労の差違は、長筋長において観察された、より大きな疲労が原因であると示唆している、と記述している。 研究者たちは何を行ったか? 研究者たちは、異なる筋長における神経活性化のパターンが、疲労しているコンディションにおいても一貫性を持つのかどうかをみたいと考えた。彼らはまた、筋長が最大等尺性随意収縮(MVICs) 後の疲労に及ぼす影響を再調査したいとも考えた。彼らは単収縮補間法、筋電図活動、及び2つの異なる筋長(短/長)における最大随意、及び電気的に励起された二重トルクを使い、筋活動を評価した。彼らは、2つの異なるセッションの際、これらそれぞれの筋長において行われた疲労性の運動の前後に測定を行った。 単収縮補間法は、最大随意収縮(MVCs)の際の筋活動の度合いを評価する方法である。単収縮とは筋肉への単一電気パルスであり、通常電極を用いて引き起こされる。補間された単収縮とは、筋肉が既に最大随意収縮している際に単収縮により引き起こされる力の増加のことである。これは被験者がどれほど効率的に随意に筋肉を動員できるかどうかを評価する。 研究者たちは、2週間の間隔をあけて行われる2つのテストセッションからなる実験の為に、身体的に活発である12名の男性被験者を集めた。各セッションは、異なる筋長における大腿四頭筋への疲労性エクササイズの前後に行われた筋活動テストで構成された。 短筋長のセッションは40度の膝関節屈曲において行われ、長筋長のセッションは100度の膝関節屈曲位において行われた。重要なこととして、短長両方の疲労セッションは、短時間、及び長時間の最大随意等尺収縮に対して検査された。ゆえに各筋長における最大随意等尺収縮は、各筋長において行われた各疲労性運動後にテストされている。 疲労性の運動は、各収縮間に1分の休憩を入れた、ある一定のトルクの減少(疲労前最大随意等尺収縮の20%、40%、60%、の減少)が見られるまで維持された、3回の最大随意等尺収縮から成っていた。 研究者たちは、以前の研究が最大大腿四頭筋トルクは70度の膝関節屈曲において起こると示していたため、これらの2つの関節可動域を選択したと説明している。ゆえに研究者たちはこの最大値の前後30度である短長の長さを選択した。 研究者たちは、疲労性運動の前後に、最大随意等尺収縮の前後及び最中に電気刺激を与えながら、被験者に5秒間の膝関節伸展最大随意等尺収縮を2回行わせた。 彼らは、最大随意等尺収縮の前に、2組の電気インパルス(2重)と単一の電気インパルスを、弛緩している大腿四頭筋へ2秒の間隔で流した。 彼らは、最大随意等尺収縮の際に、収縮している筋肉に対し2つの二重インパルスを3秒の間隔で流した。 最後に彼らは、最大随意等尺収縮の1秒後に、2つの二重インパルスを2秒の間隔を開けて弛緩した筋肉へ流した。 また研究者たちは、実験中表面電極を使用し、外側広筋、大腿直筋、大腿二頭筋(長頭)から筋電図記録をとっている。
限界に至るまでのトレーニングは筋力の増加に影響を及ぼすか? パート2/2
限界までトレーニングを行うことの筋力強化に対する効果は何か?(続き) ロートン (2004年) – 研究者たちは、26名の男性エリートジュニアバスケ選手とサッカー選手における、2つのトレーニング方法の効果について比較した。2つのグループにおいて被験者は、6週間に渡り6レップを4セット、もしくは3レップを8セットのベンチプレスを行った。より疲労度が大きかった6レップを4セット行ったグループは、3レップを8セット行ったグループ(4.9%)に比べ、6RMの筋力が著しく向上した(9.7%)が、パワーの向上に関しては2つのグループの間で有意な差違は無かった。 フォランド (2002年) – 研究者たちは、健康な23名の成人における2つのトレーニング方法の効果を比較した。一方のグループはセット間に30秒のレストを挟んで10レップを4セット(より大きな疲労のグループ)、他方のグループは各レップ間に30秒のレストをとりながら、40レップ(より少ない疲労のグループ)の両側ニーエクステンションマシーンを使用したトレーニングを、平均1RMの73%で週に3回行った。9週間に渡るトレーニングの後、研究者たちは、最大等尺性膝伸展筋力の測定において両方のグループで類似した向上が見られたということを発見した。 ルーニー (1994年) – 研究者たちは、量を適合させたプログラムの中において、42名の健康な被験者に対しセット間のレストが筋力に及ぼす影響を評価した。被験者たちは、レスト無しグループ、レストグループ、コントロールグループへと振り分けられた。2つのトレーニンググループは6週間に渡り、週に3回、6RMの負荷で6-10回のカールを行うことにより上腕二頭筋のトレーニングを実施した。レスト無しグループは全てのレップをレスト無しで行い、レストグループは各レップ間に30秒のレストを入れた。研究者たちは、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは著しく大幅な筋力の増加を示したと発見している。しかしコントロールグループと比較すると両方のトレーニンググループともに、筋力は増加していた。 ショット (1995年) – 研究者たちは、7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く間欠的な筋収縮(より少ない疲労のグループ)と長く継続的な筋収縮(より大きな疲労のグループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは、短い間欠的な筋収縮よりも、長く継続的な筋収縮の方がより著しくMVICを向上させると発見した。 これらの研究をどのように分析することができるか? 研究プロトコルと結果の評価基準のばらつきにより、結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らぬよう(もしくはより少ない疲労)トレーニングを行った際に比べ、限界まで(もしくはより大きな疲労)トレーニングを行った際の方が、ほとんどの測定値において、その筋力はより大幅に向上しているようである。しかしながら、全ての研究が全ての筋力の測定値に対してこれを示しているわけではない。例えばフォランド(2002年)は、2つのトレーニング方法においてMVICの筋力に差異はないと報告しており、イスキエルド(2006年)は1RMの筋力に関する限り違いはないと報告している。下記の表は上記の実験の結果を表したものである。 ドリンクウォーター(2007年)は、4x6,8x3,もしくは12x3(セットxレップ)のベンチプレスを週に3回、6週間に渡りトレーニングを行った22名のチームスポーツ選手において、限界を超えたトレーニングが限界に至るまでのトレーニングよりも優れた結果を生み出すかどうかを評価した。8x3のプログラムと比較し、4x6のプログラムにはより長いインターバルが含まれており、12x3のプログラムにはより多いトレーニング量が含まれていた。ゆえにこれら両方のプログラムは、望ましいレップ数を完了するためにより多くの強制的なレップを行うようデザインされていた。研究者たちは、レップの限界には達したものの、追加の強制的なレップも追加のセット量も、基本の8x3のプログラムに比べ、更に大きな筋力の獲得へは繋がらなかったということを発見した。 実践的な意義は何か? ストレングスアスリートに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことが、より筋力の増加につながり得るという十分な科学的根拠がある。しかし、限界までのトレーニングは回復に影響を及ぼし得ることから、各アスリートにふさわしい限度内で慎重に使われるべきである。
限界に至るまでのトレーニングは筋力の増加に影響を及ぼすか? パート1/2
ストレングストレーニングの際、筋限界に至るまで行うべきかどうかは、フィットネス業界における意義深い議論の源である。しかしながら、一般紙における関心度の高さにもかかわらず、研究者たちはこの分野における詳細な研究をあまり行っていない。そのため、量を適合させた長期のトレーニング研究は数少なく稀である。その結果として、限界に至るまでのトレーニングが、筋力の増加を最大化するために有益であるかどうかを知ることは困難である。 背景 限界までのトレーニングに関する全ての議論は困難な問題を伴っており、それは下記のように要約することができる。 コーチ間における合意の欠如 – 瞬間的な筋限界に至るトレーニングは、フィットネス業界においてよくみられる議題であるが、それが筋力の増加を最大化するために必要かどうかについて、ストレングスコーチ、パワーリフティングコーチ、及びパーソナルトレーナー間で一致した良好な意見は存在しない。その結果として、トレーニングを行っているかなりの割合の人が定期的に筋限界までトレーニングを行っているが、同様にかなりの割合の人が一定のワークアウトにおいて限界まで行くことは稀である。 研究プロトコルでは一般的に常に限界まで行う – トレーニング期間中の筋力の増加を調査している研究論文においては、一般的に全てのセットが限界に至るまで行われている。ゆえに研究論文が伝えていることと、トレーニングを行う人達によって実際に行われているであろうことの間で矛盾が生じている。これは、多くの人に対して一部の研究情報の適応性を制限してしまう可能性がある。 限界の定義が微妙である – 一部の人たちにとっては、彼らのトレーニング限界の定義が非常に単純なものであるということが明白であるように思えるかもしれないが、全ての人がその言葉の意味に対して同意しているわけではない。一般に、関わっている筋肉(これが多関節運動における複合問題であるかもしれないことを受け入れ)の瞬間的な筋限界、そして、もはやそのエクササイズを必要条件である厳密なセットまで行うことが不可能なポイントである技術的運動限界という、2つの主な定義がある。 全ての運動単位を動員するために限界は必要でないかもしれない – 一部の研究者たちと、限界までトレーニングを行うことの支持者たちは、限界に至るまでトレーニングを行うことは、全ての運動単位を動員するために必要であると提言しているが、研究はこの見解を完全に支持しているわけではない。サンドトラップ(2012年)は15RMの負荷で限界まで行われた各レップにおいて、ラテラルレイズの筋電図活動を調査した。彼らは、筋活動のプラトーへは15RMの負荷において10-12レップで達するということを発見し、それは少なくともトレーニングを行っていない個人においては、全運動単位を全て動員するために完全な限界までトレーニングを行う必要はないということを意味すると解釈した。 要約すると、記憶しておくべき重要なことは、筋限界の効果(そして意味をなすために正確にどの筋限界を使うべきか)に関する研究は、限界までのエクササイズを含むプロトコルを使用した研究が、どれほど頻繁に行われているかを考慮すると、驚くほどに数が少ない。 限界までトレーニングを行うことの筋力強化に対する効果は何か? 下記のトレーニング研究は、様々な異なるアプローチを用い、同じエクササイズを筋限界に至らぬよう(もしくは少々の疲労程度まで)行った、量を適合させたグループと比較し、筋限界(もしくは単に重度の疲労)に至るまでエクササイズを行ったグループの筋力の増加への影響について調査している。 イスキエルド (2006年) – 研究者たちは身体的に活発な42名の男性において、11週間に渡るレジスタンストレーニングと、それに続く5週間の全く同じ最大筋力及びパワートレーニングを、限界に至るまで行うこと、もしくは限界に至らぬよう行うことによる効果を評価した。最初の11週間の段階では、研究者たちは、両方のグループが1RMのベンチプレスとスクワットにおいて同等の向上を示し、スクワットの際の最大レップにおいて同等の向上を示したが、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは、ベンチプレスの際の最大レップにおいてより大きな向上を示したということを発見した。しかしながら5週間のピーク段階では、限界にまで至らなかったグループが、下半身において下肢のより大きな筋出力を示し、ベンチプレスを行う際の最大レップにおいてもより大きな向上を示した。研究者たちは、限界に至るまでのトレーニングが筋持久力を高める可能性があるのに対し、限界にまで至らないトレーニングには最大筋力とパワーへの恩恵があるかもしれないと示唆している。 ドリンクウォーター (2006年) – 研究者たちは、エリートジュニアアスリートにおいて、6RMのベンチプレスの筋力と40キロでのベンチスローパワーに対する、レップの限界に至るまでのトレーニングの効果について評価した。2つのグループの被験者は、6週間に渡り週に3回のベンチプレストレーニングを同量行った。一方のグループは260秒毎に6レップを4セット行うことで、レップの限界に至るまでトレーニングを行い、他方のグループは113秒毎に3レップを8セット行うことにより、総合的には同量のレップ数ではあるが、限界にまでは至らぬようトレーニングを行った。研究者たちは、限界までトレーニングを行ったグループがレップの筋力とベンチスローのパワーの両方においてより大きな向上を示したことを発見した。
パラレルスクワットはパーシャルスクワットに優るか? パート2/2
何が起こったのか?(続き) 等尺性膝関節伸展トルクの向上 研究者たちは、下のグラフで見られるように、最大等尺性膝関節伸展トルクは異なる膝関節角度において増加の割合が異なるということを報告している。105度における最大等尺性膝関節伸展トルクの増加は、パーシャルスクワットグループよりもパラレルグループにおいて有意に大きかった。 カウンタームーブメント及びスクワットジャンプパフォーマンスの向上 研究者たちは、両方のグループにおいてカウンタームーブメント及びスクワットジャンプのパフォーマンスが向上したと報告している。しかしパラレルスクワットグループはパーシャルスクワットグループに比べ、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスが非有意により大きく、スクワットジャンプパフォーマンスが有意により大きく向上している。これらの結果は下記のグラフに示されている。 筋量 研究者たちは、パラレルスクワットグループでは全ての測定位置において大腿前面の筋断面積が増加したが、パーシャルスクワットグループでは2つの最も近位の測定位置においてのみ増加が見られたと報告している。さらに彼らは、全ての測定位置における筋肉の断面積は、パラレルスクワットグループにおいてより増加したと記述している。下記のグラフは大腿の前面及び背面の異なる位置における筋断面積の増加を示している。 筋構造 研究者たちは、トレーニングプログラムの結果として両方のグループにおいて羽状角度が有意に増加したと報告している。しかしながらグループ間での有意な差違は見られなかった。 腱断面積 研究者たちは、どちらのグループに対しても、膝蓋腱の腱断面積、もしくはコラーゲン合成のいかなる変化も発見しなかった。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、12週間の期分けされたパラレル及びパーシャルスクワットトレーニングは、パラレル及びパーシャルスクワットの1RM、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンス、筋肉の羽状角度の増加を生み出したという結論に至った。研究者たちはまた、パラレルスクワットトレーニングのみが、ジャンプパフォーマンス、等尺性膝関節伸展の筋力、及び9つの異なる測定位置における大腿前部の筋断面積の有意な向上を生み出したという結論に至った。彼らは、パーシャルスクワットトレーニングは、最近位の2点における大腿前部 の筋断面積の増加のみを生み出したという結論に至った。 制限要素は何か? この研究は被験者の規模が小さかったことに制限があり、より大きな被験者の規模であれば発見されたかもしれないような差異が、非有意として見逃されてしまっているかもしれない。さらにこの研究は、パラレルスクワットとパーシャルスクワットを行うグループ両方に対して、その適応が付加的であるのか、もしくは相反するのかを判断するテストを行っていなかったことに制限があった。 実践的意義は何か? パラレルスクワットはジャンプパフォーマンスを向上させるためにより優れており、ゆえにジャンプや跳躍を含むスポーツに参加しているアスリートに対してはパーシャルスクワットよりも優先されるべきである。 パラレルスクワットは大腿部の筋断面積を向上させることに優れており、ゆえに脚の筋肉のサイズを増加させたいボディービルダーやフィジークアスリートに対してはパーシャルスクワットよりも優先させるべきである。 パーシャルスクワットは近位の大腿部の筋断面積のみを増加させる。ゆえに特に脚の筋肉組織のこの部位のみの筋増進が必要とされる場合は、パーシャルスクワットが有用かもしれない。 パーシャルスクワットはパラレルスクワットと比較し、必ずしも腱強度の向上につながるわけではない。ゆえにボディービルダーにとって、腱の傷害リスクを減らすことを目的とし腱の強度を増加するためには、パーシャルスクワットは行う価値がないかもしれない。 パラレルスクワットはパラレルスクワットの1RMのパフォーマンスを向上させることに優れており、ゆえに競技の中でパラレルスクワットの深さまで行うことが要求される連盟において競技を行っているパワーリフターに対しては、パーシャルスクワットよりも優先されるべきである。 パーシャルスクワットでもパラレルスクワットの1RMパフォーマンスの向上をもたらすことは可能である。ゆえにパラレルスクワットトレーニングを通じてパラレルスクワットの1RMを増加させることに行き詰まった上級アスリートに対しては、実行可能な代替案、もしくは補助的なリフトとしてパーシャルスクワットを使うことが可能である。
パラレルスクワットはパーシャルスクワットに優るか? パート1/2
ストレングスコーチや経験豊富なウェイトトレーナーはしばしば、若く経験の少ないアスリートに対し、成功の様々な度合いによって、バーから負荷を外しより深くスクワットするよう勧めてきた。彼らは、より深いスクワットは、使用する負荷が軽いものであったとしても、より良い筋力及び筋量の増加を生み出すと示唆している。しかしこの主張の背後にはどのような科学的根拠があるのだろうか?幸運なことに最近行われた研究では、一方のグループがパラレルスクワットを使い、他方のグループがパーシャルスクワットを使った2つのグループの直接比較を行っている。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)がその論点を理解するために研究論文の再考察を行う。 研究論文:高負荷スクワットにおける筋肉と腱の適応に対する可動域の影響、ブルームクイスト、ラングバーグ、カールセン、マズガード、ボッセン、ラステッド、応用生理学、ヨーロピアンジャーナル2013年 背景 レジスタンストレーニングは、筋力の増加、より大きな断面積、より良い神経制御、筋構築の変化、筋繊維タイプの変化、長さと張力の関係における変化を含む様々な筋肉の適応を生み出すことでよく知られている。しかもこれら各種の適応の正確な範囲及び特質は、負荷、量、可動域、及び動きの速度を含む様々な要素に依存している。 しかしながら、パラレルスクワットとパーシャルスクワットのカウンタームーブメントジャンプパフォーマンスに対する効果には差違があり、パラレルスクワットの方がより優れたトレーニング効果を生み出す、と報告する研究が以前に行われてはいるものの、可動域についての研究は限られている。さらに、筋肉の適応に対する研究に比べ小規模の研究ではあるが、レジスタンストレーニングが軟部組織にも影響を及ぼすことを知り得ている。また最近では、動物及び人体実験による研究において、腱の強度がレジスタンストレーニング後に増すことを報告している。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、同じ相対負荷でのパラレルスクワットとパーシャルスクワットが、異なる筋肉と腱の適応、及び垂直跳びのパフォーマンスにおける向上を生み出すのかどうかを調査したいと考えた。研究者たちは、以前の研究に基づき、垂直跳びのパフォーマンスはパラレルスクワットトレーニングにより更に向上するであろうという仮説を立てた。また、使用されたより大きな絶対負荷に基づき研究者たちは、腱の断面積はパーシャルスクワットによりかなり増加するであろうという仮説を立てた。 研究者たちは、スクワットパフォーマンスのエクササイズを含むレジスタンストレーニングを6ヶ月以上行っている、24名の男性被験者を集めた。被験者たちはパラレルスクワットグループとパーシャルスクワットグループの2つのグループに分けられた。被験者たちは12週間にわたり、1週間に3回のスクワットワークアウトから成る期分けされたプログラムを行った。パーシャルスクワットは60度の膝関節屈曲まで行われ、パラレルスクワットは120度の膝関節屈曲まで行われた。12週間のトレーニングの前後に研究者たちは、1RMスクワットテスト、40,75,105度の膝関節角度における等尺性膝関節伸展トルクテスト、スクワット及びカウンタームーブメントジャンプテストの両方を含むパフォーマンステストを行った。 研究者たちはまた、磁気共鳴画像(MRI)を使用し、近位から遠位の順に9箇所の距離で大腿部の筋肉及び膝蓋腱の断面積を測定した。彼らは2重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)を用い総除脂肪体重を測定した。彼らはまた、超音波を使用し、右外側広筋の筋構造パラメーター(羽状角度及び筋肉厚)を算出した。最後に彼らは膝蓋腱におけるコラーゲン合成を測定するために微小透析を用いた。 何が起こったのか? 1RMスクワットの向上 研究者たちは、両方のグループでパラレルスクワット及びパーシャルスクワット両方に対する1RMが増加したことを報告した。しかしパラレルスクワットグループはパラレル及びパーシャルスクワットのパフォーマンスの両方において同様に向上が見られたのに対し、パーシャルスクワットグループは下記のグラフに見られるように、パーシャルスクワットのパフォーマンスがより大きく向上し、パラレルスクワットのパフォーマンスでは向上の程度が少なかった。
ジャンプ能力を向上するためにオリンピックリフトは最善であるか? パート2/2
何が起こったのか? アスレチックパフォーマンス測定における向上 研究者たちは、どちらのグループにおいても、1RMベンチプレス、40ヤードスプリントタイム、T—ドリル、垂直跳びの高さ及びパワー、体重においていかなる向上も発見しなかった。オフシーズントレーニングプログラムの目的がこれらの特質を向上することであるとすれば、これは、両方のプログラムが不成功であったか、あるいは研究が動力不足であったことを示唆している。しかしながら、両方のプログラムが1RMスクワットにおける向上を達成したということを観察しており、その結果は下記のグラフに示されている。 グループ間における有意な差違 研究者たちは残念なことに、グループ間における多くの統計的に有意な差違は発見しなかった。唯一観察された有意な差違は、従来のパワーリフティンググループに比べオリンピックウェイトリフティンググループにおいてジャンプ能力が有意に向上したということであった。従来のパワーリフティンググループはジャンプの高さが40.8 ± 8.94cm から 40.5 ± 6.8cm へと減少したのに対し、オリンピックウェイトリフターはジャンプの高さが44.2 ± 2.14cm から 46.8 ± 6.1cm へと非有意に増加した。しかしどちらのグループもジャンプの高さが介入前に比べ介入後に有意に向上していなかったため、これらの発見は慎重に解釈されるべきである。 グループ間における非有意な差違 研究者たちはまた、従来のパワーリフティンググループにおいて、オリンピックウェイトリフティンググループよりも1RMベンチ及びジャンプのパワーがより向上した一方、オリンピックウェイトリフティンググループにおいては、従来のパワーリフティンググループよりも40ヤードスプリント速度がより向上したという、いくつかの非有意な傾向を観察している。 傷害統計値 研究者たちは、それぞれ1名の被験者がスプリントトレーニング、もしくは敏捷性トレーニングの際に負った傷害のため、各グループから脱落したということを観察した。彼らはまた、オリンピックウェイトリフティンググループにおいて他の被験者がスナッチエクササイズを行っている際に負傷したということも記述している。 研究者たちはどのような結論に達したか? 研究者たちは、3部の大学フットボール選手において、オリンピックウェイトリフティングは従来の高負荷レジスタンストレーニングよりも、ジャンプ能力の向上にわずかにより大きな利益をもたらすという結論に至った。しかしながらオリンピックウェイトリフティンググループと高負荷レジスタンストレーニンググループのどちらも15週間の介入において、実際にはジャンプの高さが有意に向上しなかったため、これらの発見は慎重に解釈されるべきである。また、この研究は比類のないものではなく、他の研究も同様に曖昧な結果を示しているということは注目に値する。(例:シャネル2008年) 制限要素は何か? この研究は下記の様ないくつかの点において制限があった。 テスト結果は、テストにおける向上に対し様々な非有意な傾向を示していたが、研究からそれらを統計的に発見することはできなかった。これは、使用した被験者のグループが非常に小さく、また、ラインマンとバックスの両方が研究に含まれていたことから、被験者の特性が多岐に渡っていたためであったかもしれない。 その研究は、両方のプログラムにおいてベンチプレスとスクワットの両方を含むパワーリフティングエクササイズが使用されたという点で制限されていた。実のところ2つのグループの主な差違は、オリンピックグループはスナッチとクリーンプルを行い、一方従来のパワーリフティンググループはマシンを基にしたエクササイズとフリーウェイトを使用したパワーリフティングの補助的なエクササイズを行ったということであった。ゆえにその研究は、オリンピックウェイトリフティングのバリエーションと、従来のパワーリフティングプログラムへの追加エクササイズとしての、マシンを基としたボディービルディング、及び補助的なフリーウェイトでのパワーリフティングエクササイズを比較しているようであった。 オリンピックリフトは実際にはオリンピックリフトのバリエーションであり、実際にフルリフトが使用されたと示唆するこの研究の題名と矛盾する。オリンピックウェイトリフティンググループは実際には主に、スナッチプル、クリーンプル、パワーシュラグ、及びジャンプスクワットを行った。 各グループへの被験者の割り振りが無作為でなかった。被験者はオリンピックリフトを行う能力を基にオリンピックウェイトリフティンググループへ割り当てられた。ゆえにこの選択方法は、アスリートが無作為に割り振られた場合に得られた結果よりも、このグループにおいて観察された方がより優れた、もしくは劣った結果につながった可能性がある。ゆえにこの選択方法は、我々がフットボールプログラムにおけるオリンピックウェイトリフティングの使用に対する科学的根拠として、この研究を使用する能力を制限している。 これらの多数の制限要素を考慮すると、この研究を適切に解釈することは非常に困難である。しかし、被験者がアスリートであり、常に1RMにおける解釈を変化させる、もしくはジャンプ能力に問題を起こすような、プログラム中の体重の有意な変化がなかったという点においては、この研究にも強みはあった。 実践的意義は何か? ジャンプ能力を向上するために、フットボールトレーニングプログラムにおいてオリンピックウェイトリフティングのバリエーションを使用することは、おそらくマシンを基にしたエクササイズや、もしくはパワーリフティングの補助的なエクササイズを使用することよりもより良いであろう。 ジャンプパワーを向上するために、フットボールトレーニングプログラムにおいてよりパワーリフティングの補助的なエクササイズを使用することは、オリンピックウェイトリフティングのバリエーションを使用するよりもより良いであろう。 上半身の筋力を向上するために、フットボールトレーニングプログラムにおいてマシンを基にしたエクササイズ、もしくはパワーリフティングの補助的なエクササイズをより使用することは、オリンピックウェイトリフティングのバリエーションを使用するよりもより良いようである。
ジャンプ能力を向上するためにオリンピックリフトは最善であるか? パート1/2
ジャンプ能力を養うために、従来の高負荷レジスタンストレーニングエクササイズよりもオリンピックリフティングエクササイズの方が優れているかどうかということは、議論され続けている問題である。加えて、この議題に関する多くの研究が存在するものの、それらは決定的なものではない。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)がその良い例を考察する。 研究論文:フットボール選手におけるオリンピックリフティングプログラムとパワーリフティングプログラムの比較、ホフマン、クーパー、ウェンデル、カン、ストレングス&コンディショニングジャーナル2004年 背景 従来のアメリカンフットボールにおけるトレーニングプログラムは、高負荷、及び低速の収縮を重視したパワーリフティングを中心に組み立てられている。筋力とパワーを増進するための代替案は、オリンピックウェイトリフティングとそのバリエーションを使用することである。オリンピックウェイトリフティングエクササイズは、従来のパワーリフティングエクササイズに比べより軽い負荷を使用するが、はるかに高速度で行われるため、より大きな出力を伴う。しかし、オリンピックウェイトリフティングは、習得し上手く行うためにより多くの練習を必要とするため、アスリートが彼らのトレーニングにおいてオリンピックウェイトリフティングの使用に慣れていない場合は、そのことがパワーと筋力を増進することへの障壁になりかねない。 研究者たちは何を行ったのか? その研究はどのように設定されたか? 研究者たちは、大学生フットボール選手において、オリンピックウェイトリフティングプログラムと従来のパワーリフティングプログラムの、筋力とパワーに対する効果を比較したいと考えた。ゆえに彼らは、一方のグループがオリンピックウェイトリフティングを行い、他方のグループが従来の高負荷レジスタンストレーニングを行った、15週間のオフシーズンコンディショニングプログラムの前後に、筋力、パワー、スピード、敏捷性を測定した。研究者たちはこれらの特性を測定するためのテストに、1RMスクワット、1RMベンチプレス、垂直跳び、40ヤードスプリント、T-テストアジリティドリルを使用した。 研究者たちはどのような被験者を集めたか? 研究者たちは被験者として、全米大学競技協会3部のフットボールチームから20名のメンバーを集め、半数をオリンピックウェイトリフティンググループへ、残りの半数を従来のパワーリフティンググループへと割り当てた。2つのグループはフットボールのポジションに対して均整がとられており、各グループには5名のラインマンと5名のバックスが含まれていた。この時点で各グループへの被験者の割り振りが無作為でなかったということに留意することは重要である。被験者は、オリンピックリフトを行う能力を基にオリンピックリフティンググループへと割り当てられた。研究者たちは、大学で行われていた以前のプログラムにおける観察に基づき、被験者のパワークリーンエクササイズを行う能力を評価した。 その流れでいくと、両方のグループにおける平均体重は非常に類似していた(オリンピックグループが 90.3kg であるのに対し、従来のパワーリフティンググループが 91.3kg )が、最初の1RMスクワット強度が非常に異なっていた(オリンピックグループが175kg であるのに対し、従来のパワーリフティンググループが148kg)ということは興味深いことである。これは、従来のパワーリフティンググループが体重の1.62倍のスクワットから始めたことに対し、オリンピックウェイトリフティンググループは相当な負荷である体重の1.93倍のスクワットから始めたということを意味している。 このことは、オリンピックウェイトリフティングに最も適していた(そして既に最も強靱なアスリートであった)被験者たちがオリンピックウェイトリフティンググループに配置された人たちであったということを我々に伝えており、このプログラムの結果に非常に重要な影響を持っている。ゆえにこの選択過程は、アスリートが無作為に割り振られた場合に得られた結果よりも、このグループにおいて観察された方がより優れた、もしくは劣った結果につながった可能性がある。 各トレーニングプログラムには何が含まれていたか? 両グループはトレーニングプログラムを1週間に4回行った。15週間のうち最初の5週間の介入は両グループに対し同様であった。次の2回の5週間ブロックは異なるトレーニングルーティンから構成されていた。両グループはレジスタンストレーニングに加え、1週間に2回のスプリント及び敏捷性トレーニングを行った。2つのトレーニングプログラムは期分けされており、各5週間の段階において異なる負荷とエクササイズを含んでいた。2期目、3期目の5週間においては、オリンピックウェイトリフティンググループは、異なる高さからのスナッチプルとクリーンプル、プッシュジャークとプッシュプレス、ベンチプレス、バックスクワット、フロントスクワット、オーバーヘッドスクワットを行った。一方従来の高負荷レジスタンストレーニンググループは、スクワット、デッドリフト、スティフレッグデッドリフト、ベンチプレス、ダンベルベンチプレス、バイセプスカール、及びラットプルダウンやトライセプスエクステンションを含む、様々なマシンエクササイズを行った。