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ストレッチは本当に筋長を変化させるのか? パート1/3
柔軟性はアスリート及び、一般の人々の両者にとって重要である。柔軟性は特定の関節可動域(ROM)内を動く能力と定義されている。ストレッチは個人がより大きな関節可動域を得るために一般的に使われている。しかしどのようにしてストレッチは、これらの関節可動域を増加させているのだろうか? 研究者たちは、ストレッチ、もしくは他の方法により柔軟性の向上が得られる2種類のメカニズムを提案した。1つ目のメカニズムは筋組織の性質の力学的変化に関与し、他方は感覚の変化に関与している。この総説は両種の理論に対する科学的根拠を調査したものである。 研究論文:筋伸展性の向上:長さの増加なのか、もしくは感覚の変化なのか? ウェプラー&マグナスン、理学療法 2010年 背景 我々はストレッチについて何を知っているのか? ストレッチは、概して静的ストレッチと動的ストレッチの2種類に分けることができる。静的ストレッチは関節をその最大可動域まで動かし、伸張された位置を一定時間保持することに関与する。一方、動的ストレッチは関節の能動的可動域内での制御された動きに関与する。静的ストレッチと動的ストレッチの両方は研究者たちにより広く研究されており、ゆえに我々はそれらの急性的(短期間)及び慢性的(長期間)効果を熟知している。 ストレッチは柔軟性を向上させるか? おそらくストレッチに関して尋ねるべき基本的な質問は、それが本当に柔軟性(すなわち関節可動域)を向上させるのかどうかということであろう。幸運なことに、研究論文は下記に示されているように、ストレッチが柔軟性を向上させることを裏付けているようである。 関節の柔軟性 – ハーベイ(2002)は、ストレッチの慣習がいくつかの関節にわたる柔軟性に持続的な向上をもたらすことができるのかどうかを評価するため、文献を再考察した。彼らは13の研究論文を発見し、そのうちの4つは中程度の質であると評価され、9つは質が悪いと評価された。評論家たちは中程度の質である研究論文の全体の結果は、定期的にストレッチを行うことでストレッチを中止してから1日以上の間、関節可動域を平均8度増加させることが可能であるというものであったということを発見した。 ハムストリングの柔軟性 – デコスター(2005)は、柔軟性に対する異なるハムストリングストレッチの効果を評価するため、文献を再考察した。彼らは1338名の健康な被験者を包含する8つの研究論文を発見した。彼らは相対的に乏しい全体的な研究論文の質を指摘したものの、ハムストリングストレッチは様々なストレッチ技術、体位、継続時間において関節可動域を向上させると結論付けた。 ふくらはぎの柔軟性– ラドフォード(2006)は、ストレッチを行わないことと比較した、ふくらはぎの筋肉の静的ストレッチの効果を調査した無作為化臨床試験の系統的レビューを行った。彼らは自身のメタ分析のために、特にストレッチ時間の合計が30分以上である場合、ふくらはぎの筋肉のストレッチが足関節背屈を増加するということを示した5つの試験を発見した。 要約すると、いくつかの異なる筋群における関節可動域により評価した場合、ストレッチは柔軟性を向上させるようであり、そのような柔軟性の向上は1日以上持続されるようである。 ストレッチはパフォーマンスを急性的に減退させるか? ここしばらくの間、研究者たちはストレッチの急性効果がパフォーマンスを急性的に変化させることに気づいている。しかしながらパフォーマンスに対するストレッチの正確な急性効果は、下記の総説によって示されているように、そのストレッチが静的であるのか動的であるのかにより、その効用として現れるようである。 静的ストレッチ – ケイ(2012)は、ストレングス、パワー、スピードのタスクにおけるパフォーマンスに対する静的ストレッチの急性効果を評価するため、メタ分析を行った。彼らはまた、これらの効果に対するストレッチの持続時間、収縮モード、筋グループの貢献を評価した。評論家たちは、短時間での静的ストレッチは(30秒以下、及び30~45秒)急性的なパフォーマンスの有意な減退にはつながらないという科学的根拠を発見した。彼らは長時間の静的ストレッチは(60秒以上)有意に急性的なパフォーマンスの減退につながるということを発見した。加えて、彼らのデータ分析は、パフォーマンスの減退は2分以上継続されるストレッチにおいて横這いになるようであるが、用量反応性であるということを示していた。評論家たちは、1−2分間継続されるストレッチ後のパフォーマンスの平均的減退は4.2 ± 5.0%であると推測し、彼らはまた、2分以上継続されるストレッチ後の減退は7.0 ± 5.7%であると推測した。 動的ストレッチ – ベーム(2011)は叙述的レビューを行い、動的ストレッチは、特に長時間行われた場合、パフォーマンスに全く影響がないか、もしくは僅かな急性的向上しかもたらさないということを報告した。しかし彼らはメタ分析を行っておらず、ゆえにそのようなストレッチ方法において予想される平均的な向上が見られることもなかった。 要約すると、45秒以上行われる静的ストレッチは、パフォーマンスタスクにおける有意な急性的減退につながるようであるが、長時間行われる動的ストレッチは同様のアクションにおいてまったく向上がみられないか、もしくはわずかな向上につながるようである。
ストレッチは本当に筋長を変化させるのか? パート2/3
背景(続き) ストレッチは慢性的にパフォーマンスへ影響を及ぼすか? 長時間にわたる静的ストレッチは、急性的なストレングスとパワーの減少へとつながるため、多くの場合ストレッチは、パフォーマンスに対して悪影響があるとみなされる。しかしながら、これは事実とは異なるようである。実際には、通常のストレッチは、異なる筋肉性能変数の数に有益な効果を持っているようである。 パフォーマンスへの効果 – シリエ(2004)は静的ストレッチのパフォーマンスに対する慢性効果の系統的レビューを行った。評論家は9つの研究論文を発見し、そのうち7つが有益な効果を示し、2つが全く効果を示さなかったが、悪影響を示した研究は無かった。有益な効果を示した7つの研究には、最大随意等尺性筋力、収縮速度、エキセントリックとコンセントリックの筋力、カウンタームーブメントジャンプの高さ、そして50ヤードのスプリントタイムが含まれていた。 筋力への影響 – ルビニ(2007)は、筋力測定に対する静的ストレッチの慢性効果についての系統的レビューを行った。彼らは2つの研究論文を発見し、その両方が長期にわたるストレッチプログラム後の有意な筋力の向上を実証していた。彼らは、そのようなプロトコールには長時間にわたるストレッチが含まれているにもかかわらず、いくつかの動物実験において慢性的なストレッチプロトコール後に筋肥大が観察されているため、筋力の増加はストレッチされた筋肉の肥大の結果として起こると考えられていると提議している。 要約すると、慢性的なストレッチプログラムは、筋力測定を含むパフォーマンスタスクの有意な向上につながるようである。筋力の増加は筋肥大の結果として起こるのかもしれない。 ストレッチは傷害リスクを減少させるか? 柔軟性は傷害リスクの減少に対して有益であると考えられている。ゆえに多くの場合、ストレッチも外傷リスクを減少させると見なされている。しかし系統的レビューとメタ分析は、この推測は妥当ではないかもしれないと示している。 ハーバート(2002)は、スポーツ傷害と筋肉痛の予防に対するエクササイズ前のストレッチの有効性を評価するため、系統的レビューを行った。評論家たちは、エクササイズ前のストレッチの傷害リスクに対する効果を評価した2つの研究を発見した。その両方の研究は12週間にわたる初期トレーニングを受けている新米軍隊入隊者において行われていた。どちらの研究においてもストレッチの介入の結果としての傷害リスクにおける変化は報告されていなかった。 ウェルドン(2003)は、エクササイズに関連する傷害予防に対するストレッチの有効性を評価するために系統的レビューを行った。評論家たちは4つの無作為化臨床試験と3つの比較臨床試験からなる7つの研究を発見した。彼らは4つの無作為化臨床試験のうち3つが、ストレッチはエクササイズに関連する傷害リスクを減少しないと発見し、1つが減少すると発見したと記述している。評論家たちは、入手可能な文献から、ストレッチがエクササイズに関する傷害リスクを予防するかどうかを結論付けることは不可能であるという結論に至った。 サッカー(2004)はストレッチの有効性を評価するための系統的レビューを行なった。評論家たちは6つの比較試験を発見し、そのうちの3つの研究は特定の筋グループ(2つが踵とふくらはぎで、1つがハムストリング)のストレッチを評価し、3つの研究は多数の筋群のストレッチを評価していた。評論家たちはこれらの研究においてメタ分析を行った。彼らは、ストレッチと全体の傷害の減少に有意な関連性はないということを発見した。 マッキュー(2010)は、エクササイズ前のストレッチのスポーツ傷害予防に対する有効性を評価するために系統的レビューを行った。彼らは傷害リスクに対するストレッチの効果を評価した7つの研究を発見し、そのうち3つ研究は効果が無いことを発見し、4つの研究がある程度の効果を発見していた。彼らは効果がないと発見した研究はまた、低い筋挫傷の発生率を示し、効果があると発見した研究は筋挫傷の高い発生率を示していたと記述している。ゆえに彼らは、研究論文が相反しているにもかかわらず、エクササイズ前のストレッチは危険性の高い環境において、傷害リスクを減少するかもしれないという科学的根拠があると結論付けた。 要約すると、研究論文は、エクササイズの直前、もしくは他の時間のどちらに行われるとしても、一般的なストレッチがスポーツ傷害の危険性を減少させる効果がないようであるのかどうか、という点で矛盾がある。 評論家たちは何を行ったのか? 評論家たちは、ストレッチ後の柔軟性の向上を説明するために提案されたほとんどの理論には,関連する筋長の実際の力学的増加を推定したメカニズムが含まれている傾向にある、ということを観察することから始めた。彼らは最近になり、柔軟性の向上は、実際には感覚の変化により起こっているのかもしれないと提議されていると記述している。ゆえに評論家たちは異なる理論の要約を提供し、それぞれのケースにおける科学的根拠を考察しようと試みた。
ストレッチは本当に筋長を変化させるのか? パート3/3
評論家たちは何を発見したか? 力学的性質の理論 評論家たちは一般的に4つのタイプの力学的理論があることを発見し、そこでは下記のように筋組織の力学的性質そのものが、ストレッチにより変化するとされている。 粘弾性変形 – 「粘弾性」という言葉は、弾性的、粘性的の両方をあわせもつ物質(すなわち、張力への正確な反応が比率と時間に依存している液体のようなもの)を表す。一部の研究者たちは、筋肉の粘弾性特質は、柔軟性を向上するためのストレッチの能力に貢献していると提議している。実際に、ある一定時間ストレッチポジションにおいて保持され伸張された筋肉は、その後ストレッチへの抵抗力を失うようである。しかしながら、評論家たちは、確かにこのような効果は動物実験と人体実験の両方において一時的なものであり、ゆえに1日以上持続するストレッチの長期的効果は説明することが不可能であると述べた。 塑性変形 – 「塑性」という言葉は、外力に反応して永久的に形を変える物質のことを表す。弾性物質はその弾性限界を超えた際に塑性的に作用する。しかしながら、評論家たちがこの分野における研究を分析した際、彼らはその結果は塑性変形を支持せず、むしろ永久的ではなく一時的な粘弾性変形を支持していたということを発見した。実際には、長期にわたる人体でのストレッチの研究は、ストレッチプロトコールの終了後、その前に得た関節可動域において漸減があったことを主に表している。 (e.g. Cipriani, 2012). 直列筋節の増加 – 研究者たちは、エキセントリックトレーニグは筋肉の最適な長さを変化することができると発見した。各筋節の長さと張力の関係が筋肉全体の長さと筋節の関係に影響を及ぼすため、この発見は直列の筋節数の増加を示している(バーラル2007参照)。しかし評論家たちは、四肢を最大可動域においてギブスで固定した動物実験では、直列筋節数に変化が見られたが、ストレッチプロトコールの効果を調査した人体実験においては、同様の効果は見られなかったと述べている。 神経筋の弛緩 – 評論家たちは、一部の研究者たちが静的ストレッチは、筋肉が収縮するのではなく弛緩するための能力を促進する、伸張反射に対する順応を引き起こすと提議したと記述している。しかし評論家たちは、長期にわたる研究では、ストレッチの結果として受動的なトルク曲線に変化は起こらないと発見されており、これは伸張反射の変化は柔軟性の変化に貢献していないようであることを示していると述べている。 要約すると、評論家たちは筋肉の力学的特性の変化は、ストレッチプロトコール後の柔軟性の変化の原因ではないようであると結論付けた。個人的には、神経筋の弛緩は筋肉が能動的に収縮しているのかどうかということを表すため、神経的要素が含まれており、ゆえに神経筋の弛緩は力学的理論として適正に言い表すことが可能であるのかどうかは議論の余地があると感じている。 感覚理論 評論家たちは、ストレッチプロトコール後、何によって筋長が増加するのか、正確なメカニズムを評価するために行った研究は、柔軟性と共にストレッチプログラム後に変化する唯一の変数はストレッチ中の痛感(すなわち、最大の痛みと痛みの発症)であったと記述している。 これら研究者達は、ストレッチは筋長増加の感覚を提言することにより、柔軟性を向上させると言う仮説を立てた。確かに、評論家は、多くの研究において( ハルバーツマ1994;マグニソン 1996等)痛み発生の関節角度あるいはストレッチ許容値が、3~8週間のストレッチ実施機関の後、向上することが確認されている。 評論家たちはどのような結論に達したか? 評論家たちは、ストレッチは、ストレッチへの耐性や、より大きな関節角度における痛みの発症などのストレッチの感覚を変化させることにより、柔軟性(すなわち関節可動域)を向上させると結論付けた。彼らは、ストレッチは実際の筋肉の力学的特性や伸張反射が起こるポイントを変化させるわけではないと結論付けた。 正確にこれが何を示唆しているのかは、明確ではない。しかし、もし物質の力学的特性を変化させることなく、ある関節可動域において感覚の減少が起こったとすれば、これは痛みの発症ポイントと、限度を超えて伸張したことによる筋断裂との間の関節可動域が減少したということを示唆している可能性がある。この関節可動域は、個人が強い痛みを感じこの痛みを減少しようと行動する「安全域」として表現されている。この仮説は研究により評価される必要があるが、この安全域の幅を減少させることにより、特定のスポーツにおける傷害リスクを潜在的に増加させるかもしれない。 制限要素は何か? この総説は、叙述的レビューとして行われていたことに制限があり、ゆえにストレッチの感覚理論の支持者である作者の意見による制限があった。さらにこの総説は、このストレッチのメカニズムが、ストレッチを行うべきなのかどうか、また、どのような状況で行うことが望ましいのか、という情報を提供しているのかどうかを、評論家たちが提議しようとしなかったことにおいて制限があった。 実践的な意義は何か? 柔軟性の向上が必要な際、理学療法士は、ストレッチがいくつかの異なる筋群において、関節可動域で測定する柔軟性を向上させると信頼することができる。更に、そのような柔軟性の向上は、少なくとも1日以上持続するようである。 ストレッチは、ストレッチへの耐性や、より大きな関節角度における痛みの発症など、ストレッチの感覚を変化させることにより向上し、実際の力学的特性や伸張反射が作動するポイントは変化させない。これは筋肉の最適な長さが変化する必要がある場合、ストレッチでは行うことができず、代わりにエキセントリックトレーニングが必要であるということを示唆している。 45秒以上行う静的ストレッチはパフォーマンスの急性的減少を引き起こすが、長時間行われる動的ストレッチはパフォーマンスに影響を及ぼさないか、もしくは僅かな向上をもたらすようである。ゆえに動的ストレッチは、できる限りエクササイズ前に行うことを推奨する。 習慣的なストレッチは、筋力測定を含むパフォーマンスタスクの有意な向上につながるようである。筋力の増加は、筋肥大の結果として起こりえる。ゆえにストレッチは筋肥大を増進するためのあらゆる付加的な方法を探しているアスリートにとっては有益であるようである。 エクササイズの直前、もしくは他の時間のどちらに行われるとしても、一般的なストレッチがスポーツ傷害のリスクを減少させるために効果的かどうかは今のところ明確ではない。ゆえに、アスリートの外傷リスクを減らそうと試みているコーチたちは、この目的のためには他のトレーニング方法に目を向けるべきである。
最良の結果のためのアスリートの強度性質の診断
なぜ強度の性質を診断するのか? 研究者たちとストレングスコーチの間のギャップは、常に埋めるのが容易であるとは限らない。しかし時には、持ち帰りすぐに使えるような直接的な貢献を行うため、片方が他方へ歩み寄ることがある。強度の診断は、アスリートを発展させるため、ストレングスコーチにより即座に使用可能な研究の一例である。必要であるのは、スクワットラック、フォースプレート、集計表を使う能力、そして多少の決断力のみである。それではどのようにしてそれが行われるのかについて総説を見ていってみよう。 研究論文:強度診断の適用、ニュートン&デュガン、ストレングス&コンディショニングジャーナル2002年 強度診断とは何か? ニュートンとデュガンは、強度診断とはアスリートの様々な強度性質向上のレベルを決定する過程である、と解説している。各スポーツには様々な強度性質に対する異なる特定の要求があるため、彼らは、コーチが彼らのアスリートの強みと弱点がどこにあるのかを知るために強度診断を使うことを提案している。 様々な強度の性質とは何か? ニュートンとデュガンは、6つの強度性質があると提言しているが、彼らはここでは考察を行っていないがパワー持久力と呼んでいる、繰り返される最大の努力に対して関連があり得る7番目の性質もあるということを受け入れているが、ここではとりあげていない。 最大筋力 高負荷速度強度(最大の30%以上) 低負荷速度強度(最大の30%未満) 力産出の速度 反射強度(素早いエキセントリックから素早いコンセントリックへの動きの移行) スキルパフォーマンス(スポーツに特化した動きの中での筋収縮の協調) ニュートンとデュガンはこれらそれぞれの強度性質は明確にテストすることができ、また個々の技術を用いて訓練することが可能であると解説している。 どのスポーツに対してどの強度性質が必要か? ニュートンとデュガンは、強度診断の概念を適用する最初のステップは、訓練されるスポーツの動きに対しどの強度性質が必要であるかを確立することであると解説している。これは多くの異なる方法において取り組むことが可能である。 スポーツの動きに対する強度性質の特異性 – 特定の速度、可動域、力が発揮されている間の時間は、スポーツの動きの生体力学解析を通じて測定することが可能である。この情報は、理論的にどの強度性質が最も関連深いかを理解する鍵である。 比較可能な高いレベルのアスリート – スポーツにおいて現在高いパフォーマンスを出しているアスリートの強度性質を分析することは、傾向を特定することに役立つ。もしあるスポーツにおいて、高い水準でプレーしている全てのアスリートが高い低負荷速度の強度があるとしたならば、これはこの性質がそのスポーツにおいて重要であるという強い指針である。 最大筋力 最大筋力とは、動きの速度や力産出の速度に関係なく、高い水準の力を発現させる能力である。ニュートンとデュガンは、この測定が動きを行う際の速度による影響を受けず、関節角度が綿密に特定できることから、多くの研究者たちは最高筋力の等尺性測定を好む傾向にあるということを指摘している。 しかしながら、等尺性筋力はスポーツにおいて行われる動力学的な動きとは完全には相関性があるわけではないと考える人達もいる。それゆえ多くの場合、バックスクワットのような、全可動域もしくはほぼ全可動域に近い可動域に対する1RMの動きが使われる。1RMが個人のアスリートにとって危険であるとコーチにより考えられている場合は、それにより精度の低下が起こることを受け入れたうえで、推測された1RMからのより多くのレップでの最高負荷を使用することが可能である。 速度強度 速度強度は、力と速度を併せた高い水準のパワーを発現させる能力である。ニュートンとデュガンは、下半身の速度強度の性質を評価する最も一般的な方法はジャンプスクワットであると記述している。 彼らは、アスリートの筋力やパワーが負荷と共にどのように変化するのかを見る為に、この性質を広範囲の負荷に渡り評価することは有益であると解説している。パワーを追跡するためにはフォースプレートが必要であり、それによりジャンプにかかる時間や最大力、最大速度を測定することが可能となる。 パワーと負荷の曲線におけるある1点において、出力は最大となる。研究者たちは、この出力がパワーに対する「最適な負荷」と考えられていると記述している。この最適な負荷は、最大強度1RMからの割合として表されることが可能である。 力産出の速度 筋肉は、ゼロの力から最大力の発現へと即座に切り替わることはない。ゼロの力から最大まで力が加速してゆく速度を力産出の速度(RFD)と呼ぶ。ニュートンとデュガンは、RFDもまた一般的には等尺性筋力にてテストされるが、これは最大筋力の評価に関する批評と同じ批評をうけがちであると解説している。 彼らは、RFDは一般的にコンセントリックのみのジャンプとコンセントリックのみのジャンプスクワットを使って動的にテストされると記述している。ここでもこの変数を測定するためにフォースプレートが必要である。コンセントリックのみの動きは、エキセントリックーコンセントリックの動きのボトムポジションで3−4秒保持することにより作り出される。 研究者たちは、実際の力産出の速度がこの強度性質に対する最も一般的な測定であるが、最初の100ミリ秒の間に作り出されるインパルスを含む、力を急速に産出する能力を測定する方法が他にもあると記述している。 反射強度 反射強度は、伸張・短縮サイクルの効率の大きさである。ニュートンとデュガンは、最も一般的な反射強度のテストはフォースプレート上でのデプスジャンプであると解説している。速度強度と同様に、研究者たちはアスリートが増加する伸張の負荷にどのように反応するのかを見る為に、降下の高さを増加させながらジャンプを行うことが有益であると記述している。彼らは 0.30m, 0.45m, 0.60m ,0.75m の高さを推奨している。 ドロップジャンプは同じ踏み台からのカウンタームーブメントジャンプと比較することが可能である。ニュートンとデュガンは、妥当な反射強度をもつアスリートはカウンタームーブメントジャンプからよりもドロップジャンプからの方が高くジャンプすることができるはずであると記述している。 スキルパフォーマンス スキルパフォーマンスは、前述のスポーツの動きにおける強度性質の的確な使用である。ニュートンとデュガンは、スキルパフォーマンスは、陸上競技において最も簡単に追跡でき、例えば幅跳びや砲丸投げなどの実際のスポーツパフォーマンスにおいては、距離を使用することが可能であると解説している。しかしながらバスケットボールなどの他のスポーツにおいては、ある特定のポジションでのジャンプの高さも使用することが可能である。 これらのガイドラインの適用 ニュートンとデュガンは、これらの6つの変数は各アスリートにおいて記録されるべきであり、集計表に入力されるべきであると提案している。そのような情報はアスリートが行うスポーツのタイプ、性別、その他の適切な要素により平均として示されることが可能である。新しい個人が自身を提示する際、彼らの様々な強度性質をグループの平均と比較して評価することが可能である。
外反膝の原因は何か? パート1/2
アスリートがスクワットを行う際、外反膝になることを好むストレングス&コンディショニングコーチはいない。しかしながら外反膝の正確な原因は明確ではない。今までに多くの研究者たちやコーチたちが解釈を提案してきているが、広く受け入れられたものは僅かである。最も一般的に適用された理論のひとつは、臀筋活動の減少が股関節のより大きな内旋、そしてその結果としてより大きな脛骨の回旋を引き起こし、それゆえ外反膝を生み出すというものである。最近になり研究者たちのあるグループが、原因は恐らく上記ではないということを示す興味深い研究を打ち出した。実際には、下肢の筋肉群が問題の原因であるようである。 研究論文:過度な内側への膝の変位を示す個人における神経筋の特徴、パドア、ベル、クラーク、アスレチックトレーニングジャーナル2012年 背景 フィットネス業界においてよく知られているように、研究者たちは、外反膝は下肢の傷害に対する危険要因であると認識している。外反膝は最も一般的には前十字靱帯(ACL)の損傷に関わっているが、膝蓋大腿部痛症候群、膝関節症、内側側副靱帯損傷、一般的な膝の軟骨や半月板の損傷を含む、その他の下肢の傷害に対する危険要因としても特徴づけられている。 しかしながら、幅広く研究がなされているにもかかわらず、研究者たちは外反膝の決定的な原因を示すことが出来ていない。臀筋の活動や強度の低下、股関節内転筋の活動の増加、足関節背屈可動域(ROM)の低下を含む、様々な解釈が提議されており、実際にベル(2008年)は、外反膝を示している被験者はコントロールグループに比べ、足関節背屈可動域が20%低下していたと示している。 研究者たちは何を行ったのか? 研究の目的は何であったのか? 研究者たちは2つの事を解明したいと考えた。第一に彼らは、内側への膝の変位(外反膝)を示すグループと示さないグループにおいて、スクワットの際の股関節と下肢の筋活動を調査したいと考えた。第二に彼らは、踵を2インチ上げることによる筋活動と外反膝への影響を分析したいと考えた。これは必要とされる足関節背屈可動域の減少が影響を及ぼすかどうかを調査する為であった。 被験者は誰であったか? この研究のために研究者たちは、37名の若く健康な被験者(女性30名、男性7名)を集めた。どの被験者もその時点で下肢の傷害は持っていなかった。研究者たちは被験者たちを外反グループとコントロールグループに割り当てた。コントールグループは、スクワットの動きの中で、前頭面において膝がつま先の上の位置を保持していた19名(女性15名、男性4名)の被験者を含んでいた。外反グループは、スクワットの動きにおいて、膝蓋骨が内側へ動いた、つまり膝外反が見られた18名(女性15名、男性3名)を含んでいた。 研究者たちは何を測定したか? 様々な試験において研究者たちは、大臀筋、中臀筋、大内転筋、内側腓腹筋、外側腓腹筋、前脛骨筋を含むいくつかの筋肉の活動を測定するために表面筋電図(EMG)を使用した。筋活動は、最大自発的等尺性収縮(MVICs)を使い各筋肉に対し正規化された。重要なこととして、大臀筋は被験者が0度の股関節屈曲、90度の膝関節屈曲の腹臥位において正規化された。この位置は通常最大の臀筋活動が得られる姿勢として受け入れられている。中臀筋は側臥位での股関節外転位において正規化されたが、外転の角度に関する詳細は提供されていない。研究者たちはまた、電磁動作解析システムを使用し、下半身の動きを記録した。 測定の際、被験者達はどのようなテストを行ったのか? 被験者たちは、裸足で両足を肩幅に開き、つま先は真っ直ぐに、あたかも椅子に座るようなフォームで両脚でのオーバーヘッドスクワットを5回行った。被験者たちは、初期のテストデータによって妥当であると提言されている、80度の膝関節屈曲までスクワットを行った。研究者たちは、被験者がこの深さに達するとフィードバックを与えた。この試験は踵を2インチ上げた状態においても繰り返され、踵の持ち上げは、足の下に木のブロックを置くことにより行われた。
外反膝の原因は何か? パート2/2
何が起こったのか? 臀筋の活性化 研究者たちは、外反グループとコントロールグループの間で臀筋の活性化における差違はなかったということを発見した。しかしながら彼らは、外反グループにおいてはコントロールグループよりも内転筋の活動が34%より活発であったという、内転筋活動における違いを記述している(上昇段階と降下段階の両方において膝が崩れた時、また、踵上げ有無の両方において)。サブグループの間での大内転筋活動における同様の差違は、下記のグラフで見ることができる。 グラフから見て取れるように、研究者たちは、股関節の筋肉のEMG活動には踵上げの有無による有意な差違は無かったということを発見した。 下肢の筋活性化 研究者たちは、外反グループがコントロールグループに比べ、踵上げ有り及び無しの両方の状態での降下段階において、より大きな前脛骨筋のEMG活動を示していたということを発見した。彼らはまた、外反グループとコントロールグループの両方において、踵上げを使用した際の降下段階でのEMG活動は、使用しなかった際に比べ小さかったと記述している。これら両方の結果は下記のグラフに示されている。 研究者たちは、上昇段階においても(同一ではないが)同様の結果となる傾向にあったが、統計的有意性には至らなかったということを発見している。研究者たちはまた、下降段階における踵上げ無しでの腓腹筋(内側、外側共に)の活動は、コントロールグループよりも外反グループにおいてより大きかったと観察した。また彼らは、外反グループにおいては、踵上げ有りでの腓腹筋(内側、外側共に)の活動が、踵上げ無しの状態よりもより大きかったが、コントロールグループにおいては同様ではなかったと記述している。彼らは上昇段階においても(同一では無いが)同様の結果となる傾向にあると記述しているが、有意性には至らなかった。 前頭面の膝の変位 研究者たちは、踵上げ無しの状態において、外反グループがコントロールグループに比べ、より大きな膝の内側への変位を示したと報告している。踵を上げた状態では踵上げ無しの状態に比べ、外反グループにおける膝の内側への変位はより少ないものであった。踵上げを使用することによる、コントロールグループの膝の前額面変位に対する影響は見られなかった。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 外反グループとコントロールグループの違いは何か? 研究者たちは、腓腹筋、前脛骨筋、内転筋群のEMG活動は、外反膝を示していない被験者に比べ、外反膝を示した被験者においてより大きいと結論付けた。また彼らは、外反膝の有無にかかわらず、被験者の臀筋のEMG活動には差違がないという結論に至った。 研究者たちは何が外反膝の原因であると考えるのか? 研究者たちは、腓腹筋活動の増加は、足関節におけるより大きな底屈モーメントを生み出す可能性があり、ゆえに足関節背屈の硬さの増加につながると示唆している。彼らは前脛骨筋の活動の増加もまた、共活性化により足関節背屈の硬さを増加させる可能性があると示唆している。 ゆえに研究者たちは、背屈可動域の制限は足関節背屈の硬さの増加により引き起こされると提議しており、彼らは、これが代償としての足の回内、脛骨の内旋につながり、よって外反膝が引き起こされると示唆している。 踵上げを使用したことによる差違は何か? 研究者たちは全ての被験者において、外反膝の有無にかかわりなく、前脛骨筋のEMG活動が踵上げを使用している際に低下するという結論に至った。彼らは腓腹筋のEMG活動もまた、外反膝を示している被験者のみにおいてであるが、踵上げを使用している際に低下したという結論に至った。彼らは踵上げを使用した結果としては、臀筋や股関節内転筋のEMG活動には差違がないと記述している。 制限要素は何か? 研究者たちは彼らの研究に関して下記のような制限を観察している: この研究はオーバーヘッドスクワットの動きのみに限られており、ジャンプの着地のような他の動きにおいては異なる結果が得られたかもしれない。 加えて、この研究は踵を上げた状態にてスクワットを行った際、外反膝が無くなった被験者に対してのみEMG活動の計測が行われたという点で制限があった。踵を上げても外反膝となった被験者においては、異なった結果が得られたかもしれない。 研究者たちは、大腿四頭筋やハムストリングスなどの、膝関節の前頭面の動きを制御する役割を担う全ての股関節、及び脚の筋肉を測定しなかったという点において制限があった。 この研究では、前脛骨筋と腓腹筋の活動の減少が自動的に外反膝を軽減するかどうかということを証明することはできなかった。 実践的意義は何か? 外反膝を示しているアスリートは、外反膝無くスクワットができるようになるまでは、一時的に踵を上げるか、もしくはオリンピックリフティングの靴を使用してスクワットを行うことができる。 外反膝を示すアスリートはスクワットを行う際、軟部組織へのケア、腓腹筋のストレッチ、及び足関節の可動性ドリルを用い、足関節背屈可動域を改善するよう努めるべきである。
トレーニングの際に傷害を引き起こす可能性が最も高いストレングススポーツは何か? パート3/3
これらの研究をどのように分析できるか? ストレングススポーツにおける総合的な負傷率は何か? 上記の研究から、傷害リスクが(急性、慢性にかかわらず)ランニングやトライアスロンのような持久系のトレーニングを行っている際と比較して、ストレングススポーツにおいてより高いというわけではないということは明確なはずである。負傷率は1,000時間のトレーニングに対し、0.24-5.5傷害の間であった。 ストレングススポーツの負傷率は持久系スポーツの負傷率に比べどうであるか? 1,000時間のトレーニングに対し0.24-5.5傷害、というストレングススポーツにおける総合的な負傷率と比較すると、長距離走における負傷率は1,000時間に対し2.5-12.1傷害であり、トライアスロンにおける負傷率は1,000時間のトレーニングに対し1.4-5.4傷害である。ゆえに、ストレングススポーツは、広く調査されている持久系活動に比べ傷害を負う可能性が多いわけではない。 最も一般的な傷害部位はどこか? ストレングスアスリートにおいて最も一般的に発生する障害部位は腰部と肩である。オリンピックウェイトリフターとストロングマンのアスリートは、より腰部に傷害を負う傾向にあり、パワーリフターとボディビルダーは、より肩に傷害を負う傾向にあると考えがちであるが、この結論は入手可能な文献にのみ基づいたものであり少々時期尚早であるようである。 傷害リスクが最も高いストレングススポーツはどれか? 異なるストレングススポーツへ参加することに関する相対的リスクは、明確ではない。1つ以上のスポーツを同時に評価した研究は数少ない。ゆえに、研究間にあるトレーニングの際の負傷率の違いは、研究が行われたストレングススポーツの種類からくるのではなく、研究アーティファクト(例えば、傷害の正確な定義のされ方や明確な母集団のようなもの)から生じたものである可能性がある。にもかかわらず、もしストレングススポーツにおいて、傷害に関する相対的リスクについての結論を引き出そうとするならば、それは、ボディビルディングのトレーニングは他のストレングススポーツに対するトレーニングに比べ傷害を負う可能性が低いというものであろう。 正確にボディビルディングのトレーニング方法が、どの側面からより危険性が少ないとされているのかは明確ではないが、様々な理論的根拠が提議されている。セイワ(2014年)は彼らの研究の中で、ボディビルディングはより低負荷で、より低速の制御された動きを使う傾向にあると提議している。フィッシャーは(2014年)彼らの総説の中で同様の考えを取り上げており、これらのトレーニング変数は傷害の要因を修正するために重要であるかもしれないとも提議している。加えて、フリーウェイトを使用するトレーニングとマシンを使用するトレーニングでは、傷害リスクが異なる可能性がある。しかしながら、そのような要因は長期試験において調査されるべきであり、現時点ではこれらの要因に対し結論的な声明を出すことは不可能である。 一般の人々に対し、これから推測できることは何か? 一般の人々に対しては、ボディビルディングのようなトレーニング方法がとられた場合、パワーリフティング、もしくはオリンピックウェイトリフティングのようなトレーニング方法に比べ、トレーニングでの負傷率は低くなる可能性が期待される。しかしながら、このことはアスリート以外の人々において、望ましくは研究アーティファクトの影響を避けるために、複数のグループを観察することにより確認される必要がある。 アスリートに対して、これから推測できることは何か? アスリートの集団に対し、ボディビルディングトレーニングの要素を取り入れることがトレーニングの際の負傷率を下げることにつながるかどうかということは、考慮に値する興味深い質問である。もちろん、主要な2つの未知数は、パフォーマンスへの影響と競技中の負傷率への影響であるだろう。私の知る限りでは、上記の領域のどちらに関しての研究もまだ行われておらず、これらの方式を取り入れることによるリスク・リターンが既存のトレーニングより勝るか否かに関しての評価は、全くの推測にしか過ぎない。 実践的意義は何か? ストレングススポーツのためのトレーニングは、長距離走やトライアスロンのような持久系スポーツに比べ、同様、もしくはより低い負傷率と関連している。健康のための活動を選択する際は、ストレングススポーツは、持久系スポーツよりも傷害が多いわけないはないと助言できるであろう。 ボディービルディングスタイルのレジスタンストレーニングは、他の種類のレジスタンストレーニングに比べより低い負傷率へとつながっているようである。健康のための活動を選択する際は、このトレーニング方法は、ストロングマン、パワーリフティング、及びオリンピックウェイトリフティングよりも優れたリスク・リターン率に繋がるかもしれない。 負傷率を下げるために、アスレチックプログラムにおいてボディビルディングスタイルのトレーニングの使用を意図的に考える価値があるかどうかは、研究がそのパフォーマンスと競技における負傷率に対する影響を解明するまでは、時期尚早なようである。
トレーニングの際に傷害を引き起こす可能性が最も高いストレングススポーツは何か? パート2/3
ストレングススポーツにおける負傷率は? ストロングマン、パワーリフティング、オリンピックリフティング、ボディビルディング、その他のストレングスに関わる競技を含む、様々なストレングススポーツにおける負傷率は下記の表に要約されており、下記の研究において詳しく説かれている。この総説の中には、1,000時間のトレーニング時間に対する負傷率が計算され表されている研究のみが含まれている。 ウィンウッド(2014年) はストロングマンのトレーニングと大会において、傷害の発生率と傷害部位を調査した。彼らは12.8 ± 8.1年のレジスタンストレーニングの経験を持ち、4.4 ± 3.4年のストロングマンの経験を持つ213名のストロングマンアスリートを集め、1年間の傷害に関する回顧的調査を完了するよう依頼した。傷害は、トレーニングセッションや大会を欠席する、もしくは調整を行う必要が生じた身体的問題として定義された。研究者たちは、被験者の82%が質問の中で、1年間に少なくとも1つの傷害を負ったと報告しており、1,000時間のトレーニングに対する負傷率は5.5傷害であったということを発見した。傷害部位に関しては、最も一般的な傷害部位は、腰(24%)、肩(21%)、上腕二頭筋(11%)、膝(11%)であった。研究者たちは、ストロングマンアスリートはストロングマンの機材を使用した際、傷害を負う可能性は従来のレジスタンストレーニングの方法の1.9倍になりえると観測した。 ジーベ(2014年) は、71名の競技&エリートボディビルダーからアンケートを回収することにより、ボディビルディングの競技に向けたトレーニング中における傷害リスクを評価した。彼らは、被験者の45.1%がトレーニングの際のいくらかの身体的傷害の症状を報告しているが、全体での負傷率は1,000時間のトレーニングに対し0.24傷害であったということを発見した。最も一般的な傷害部位は肩、肘、腰椎、膝であった。研究者たちは、パワーリフティング、オリンピックリフティング、ストロングマンなどの他のウェイトリフティングの訓練と比べると、負傷率は低いという結論に至った。 ジーベ(2011年) は法人組織である97のパワーリフティングクラブの、245名の競技&エリートパワーリフターにおける傷害の発生率を、アンケートという形で評価した。彼らは、43.3%のパワーリフターがワークアウトの際、傷害に関する問題を訴えていたことを発見した。しかしながら、負傷率は1,000時間のトレーニングに対し1.0傷害であった。最も一般的な傷害部位は肩、腰部、膝であった。興味深いことに研究者たちは、ウェイトベルトの使用は腰部の傷害に対するより大きなリスクに繋がることを発見した。 エーベルハルト(2007年) は、レクリエーションとしてのボディビルディング(競技としてではなく)のためのトレーニングにおける傷害リスクを評価した。彼らは1,000時間のトレーニングに対する負傷率は1.0傷害であったと発見したが、彼らは傷害を時間損失につながるような身体的損傷とは定義していなかった。 キーオ(2006年) は競技として行っているオープン&マスターズパワーリフター、男性82名、女性19名における1年間の負傷率を調査した。彼らは傷害を、トレーニングセッションや大会の欠席、もしくは調整につながる身体的損傷と定義した。負傷率は1,000時間のトレーニングに対し4.4傷害であり、最も一般的な傷害部位は肩(36%)、腰部(24%)、肘(11%)、膝(9%)であった。 ラスク&ノーリン(2002年) は、1995年と2000年の両方の年に、エリートオリンピックウェイトリフターとパワーリフターにおける傷害の発生率と有症率を調査した。両方のスポーツ、そして両方の年において被験者は、1,000時間のトレーニングに対し2.6件の傷害を負っていた。1995年において最も一般的に発生した傷害部位は腰部であったが、2000年において最も一般的に発生した傷害部位は肩であった。研究者たちは、オリンピックウェイトリフターは腰と部膝の傷害を経験する傾向にあり、一方、パワーリフターはより肩に傷害を負いやすい傾向にあるということを観察した。 カルフーン(1999年) は6年間に渡り、アメリカ合衆国オリンピックトレーニングセンターでトレーニングを行っている、アメリカ人男性ウェイトリフターにおける傷害の特質と発生率を評価した。研究者たちは、負傷率は1,000時間のウェイトリフティングに対し3.3傷害であったということを発見した。彼らは最も一般的に発生した傷害部位は背中(主に腰部)、膝、肩であったと記述している。 ヘイコウスキー(1999年) は11名の盲目のエリートパワーリフター(男性9名、女性2名)における傷害の特質と発生率を評価した。彼らは、負傷率は1,000時間のトレーニングに対し1.1傷害であったと報告し、最も一般的に発生した傷害部位は等しく腰部と肩であったと記述している。 クイニー (1997年) は31名のエリートパワーリフターにおける傷害の特質と発生率を評価した。彼らは、負傷率は1,000時間のトレーニングに対し3.7傷害であったと報告しており、最も一般的に発生した傷害部位は腰部であったと記述している。 ブラウン(1983年) は、1981年のミシガンティーンエイジパワーリフティングチャンピオンシップの出場者、71名にアンケートを行うという形で、青少年パワーリフターにおける傷害リスクを評価した。研究者たちは、被験者は平均して17.1ヶ月間、一週間に4.1回、99.2分間のワークアウトを行っていたことを発見した。この期間中に98件のパワーリフティングの傷害が起こったため、負傷率は1,000時間のトレーニングに対し0.85傷害であった。研究者たちは腰部が最も一般的な外傷部位であったと発見している。 ハク(2013年) は、レジスタンストレーニングエクササイズ(クロスフィット)を用いた、人気のある高負荷のパワートレーニングプログラムに参加している被験者のプロファイルと負傷率を、オンラインアンケートにて評価した。研究者たちは132名からの返信を受け取り、その中の97名(73.5%)がこの種のトレーニング中に傷害を負ったと報告していた。数人は1種以上の傷害を負ったと報告しており、合計で186件の傷害が報告され、その内9件が手術を要するものであった。研究者たちは、負傷率が1,000時間のトレーニングに対し3.1傷害であったということを発見した。彼らは最も一般的な傷害部位は肩、次に背中であったと記述している。
トレーニングの際に傷害を引き起こす可能性が最も高いストレングススポーツは何か? パート1/3
背景 負傷率とは何か? 負傷率は、楽しみとしてスポーツに参加する際、傷害を負う可能性がどれほどあるのかを理解するための、一つの良い基準を与えてくれる。比率は一般的に1,000時間のトレーニングに対する傷害として表されている。ゆえにトレーニングに費やすおおよその時間がわかれば、どれほど傷害の危険にさらされているのかがわかるのである。もちろん、全く異なったトレーニング量の2つの異なる娯楽スポーツを比較しようとする場合は、交互に換算する必要がある。研究者が少数の被験者にしかアクセスできないが、(娯楽としてのスポーツにおいてはこのような場合が多い)各被験者がトレーニング時間を記録しているという場合は、負傷率は非常に有益である。 娯楽としてのスポーツに参加する際、どれほど傷害を負う可能性があるのかを示すその他の一般的な基準は、傷害の発生率と有症率である。傷害の発生率とは、ある一定期間において傷害を経験した人々の割合である。この期間は非常に可変的であり、短期にも長期(1ヶ月や1年など)にもなり得る。有症率とは、ある時点において、現在傷害を負っている人々の割合であり、傷害の継続期間や発生率の測定期間により、有症率は発生率に比べ小さくも、同様にも、もしくは大きくもなり得る。発生率と有症率は、研究が行われる人々のデータがある程度大きい際に最も有益である。 スポーツやエクササイズにおいて傷害リスクを考慮することが大切である理由は何か? 全ての身体活動には、急性(外傷性)であれ、慢性(使い過ぎ)であれ、ある程度の傷害リスクが含有される。アマチュアのエリート選手やプロアスリートにおいては、これらのリスクは、最高のレベルにおいて成功することに対する、究極の恩恵の代償として受け入れられている。実際にはそのようなアスリートの多くは、たまたまあるスポーツにおいて優れているというだけであり、その種類における選択の自由はほとんど無いのかもしれない。一方、一般のアマチュア選手やエクササイズを目的としてスポーツに参加している個人にとっては、負傷率(及び楽しみ)は、どの種類のスポーツに参加するかを決定する重要な要因であるべきである。最も人気のあるアマチュアスポーツは長距離走、サイクリング、トライアスロンである。一般の人々の多くは、ストレングススポーツが一般的に傷害を負う可能性が高いと考えていると同時に、そのようなスポーツを、参加するにあたって極めて「安全」な選択肢であると見なしているようである。 一般的な参加型スポーツにおける負傷率は? 負傷率は全ての参加型スポーツにおいて報告されているわけではないため、包括的な実体を示すのは困難である。長距離走は広範囲に研究された最初の娯楽スポーツである。ヴァンメッヘレン(1992年)はかなり早い段階で研究論文の考察を行い、1,000時間のトレーニングに対する負傷率が2.5-12.1傷害であると報告した。ごく最近の研究はこの上限の負傷率を支持している(へスパノール、2013年)。近年、研究者たちはトライアスロンを調査しており、トライアスロンはランニング単体のみと比較し、負傷率が、1,000時間のトレーニングに対し1.4-5.5傷害と半分ほどであるということを発見している(コーキア、1993年、ズインゲンバルガー、2014年)。これは一つの活動に集中しないことは、使いすぎによる傷害につながる可能性が少ない、もしくは、スイムと自転車はランニングに比べ根本的に損傷が少ないということを示唆しているのかもしれない。 一般的なトレーニングの負荷は何か? 通常、トレーニング量はストレングススポーツに比べ、持久系スポーツにおいてより多いと考えられている。しかしながら、必ずしも常にそうではなく、実際にはトレーニング量はトレーニング方法に依存している可能性がある。例えば、レクリエーションとしてマラソンを行っている男性のグループは、一週間に平均4.5時間しかトレーニングを行っていないと報告しており(タンダ、2013年)、レクリエーションとしてハーフマラソンを行っている女性のランナーは、一週間に3.2時間しかトレーニングを行っていないと報告している(クネチェット2011年)。これらのトレーニング量は、ストレングススポーツで使われるトレーニング量と同様のようである。一方、最近の自転車の研究では、クラブレベルのサイクリストは平均一週間に10.3 ± 8.7時間バイクに乗っていたと報告されている。(ダクイスト2014年)
バリスティックトレーニングプログラムがパワーの向上に最良になるためには? パート2/2
バリスティック・トレーニングのどの変数がパワー出力を最も向上させるか?(続き) 相対的負荷の影響 下記の表は、バリスティック・レジスタンストレーニングにおける相対的負荷の筋パワーの増加に対する影響を調査した、長期の試験の結果を要約したものである。研究の詳細は後に記述されている。 マックブライド(2002年) は8週間にわたり、レジスタンストレーニングの経験があり、1週間に2回トレーニングを行っている26名の男性アスリートにおいて、高負荷ジャンプスクワットと低負荷ジャンプスクワットの最大出力に対する影響を比較した。被験者は低負荷、高負荷、コントロールグループへと不規則に振り分けられた。トレーニンググループはバックスクワットにおける1RMの30%もしくは80%にてジャンプスクワットを行った。研究者たちは、低負荷グループでは1RMの30%でのジャンプスクワットテストにおける最大出力が有意に増加したが、高負荷グループでは増加しなかったということを報告している(~10% vs. ~4%)。その2つのグループの間に有意な差違はなかった。研究者たちは、1RMの80%でのジャンプスクワットテストにおいては、高負荷及び低負荷両方のグループにおいて最大出力が有意に増加し、低負荷グループでは、更に出力が増加した(~18% vs. ~14%)という非有意な傾向を報告している。また最後に研究者たちは、1RMの55%でのジャンプスクワットでは(2つのトレーニング負荷の中間)、低負荷、高負荷の両グループにおいて最大出力が有意に増加し、低負荷グループにおいては更に出力が増加した(~14% vs. ~10%)という非有意な傾向があるということも発見している。 スミリオ(2013年) は、43名の適度にトレーニングされている男性被験者において、高負荷でのバリスティック・レジスタンストレーニングと、出力を最大化する負荷でのバリスティック・レジスタンストレーニングを比較した。被験者は不規則に、1つの高負荷グループ(1RMの90%)、出力が最大化される負荷での2つのバリスティックグループ(1つのグループは体重を計算に入れ[PW+]、もう1つのグループは体重を計算に入れずに[PW-])、1つのコントロールグループを含む4つのグループに分けられた。被験者は6週間にわたり4-6セットのジャンプスクワットを行った。高負荷グループは1RMの90%で3レップ行った。最大出力グループは1RMの48-58%の負荷(PW-)と1RMの20-37%の負荷を使用した(PW+)。また、全てのグループが無負荷にて6レップのジャンプスクワットを行った。研究者たちは、高負荷グループとPW-グループは両方とも1RMの20,35,50,65、80%の負荷にて出力が有意に増加し、一方PW+グループは1RMの20%と35%のみで出力が有意に増加したことを発見した。 マルコビック(2013年) は8週間にわたり、身体的に活発であるがトレーニングは行っていない男性において、垂直跳びの際の異なる外部負荷の、スクワットとカウンタームーブメントジャンプの際の筋出力に対する影響を比較した。負荷には、無負荷と体重の30%に等しい負荷を付けたベストを用いた。研究者たちは、このトレーニング期間は、スクワットジャンプにおけるパワーの同様な増加(7.4 – 11.5 %)につながるが、負荷を付けたベストのグループが無負荷のグループに比べ、出力においてより良好な結果を示したことから、カウンタームーブメントジャンプ(0.5 vs. 9.5%) においては、グループ間に差違があるということを発見した。 ハリス(2008年) は7週間にわたりトレーニングを行っている、十分に鍛錬されたラグビーリーグの選手において、高負荷及び低負荷ジャンプスクワットの最大出力に対する影響を比較した。被験者は量を適合させた高負荷グループ(1RMの80%)と低負荷グループ(1Rの20-44%)へと不規則に分けられた。高負荷グループは、セット間に2分のレストを入れ5レップを5セット行い、低負荷グループはセット間に2分のレストを入れ10-12レップを6セット行った。介入の前後に研究者たちは、トレーニング前の1RM の55%にて最大出力を測定した。彼らは、最大出力は実際には両方のグループにおいて減少したが、その減少は高負荷グループに比べ低負荷グループにおいて有意により少なかったと発見している。 要約すると、2つの研究は高負荷が有利である有意な影響を発見しており、2つの研究は低負荷が有利である有意な影響を発見しているため、筋パワーの増加を最大化するためのバリスティック・レジスタンストレーニングの際の最適な負荷に関しては、科学的根拠が対立している。 筋活動の影響 下記の表はバリスティック・レジスタンストレーニングの際の筋活動の筋パワー増加に対する影響を調査した、長期実験の結果を要約したものである。研究の詳細は後に記述されている。 ホリ(2008年) は、20名の男性被験者における負荷付きジャンプスクワットトレーニングの影響を、エキセントリック制動の有無において比較した。研究者たちは、被験者を8週間のトレーニングを行う2つのグループへ不規則に分けた。制動なしのグループは負荷付きのジャンプスクワットを6レップ6セット行い、制動グループは同じエクササイズを行ったが、エキセントリックの負荷は電磁制動メカニズムの使用により減少していた。制動グループは負荷付きジャンプスクワットにおいて、体重と相対的な最大力へのより良い適応を示していた。 バンダーカ&ノバサッド(2012年) は、身体的に活発な30名の男性における爆発的なスクワットジャンプトレーニングの影響をカウンタームーブメントの有無において比較した。全ての被験者は11週間にわたり、1週間に2回トレーニングを行った。一方のグループは常にカウンタームーブメントを使ったトレーニングを行い、他方のグループは常にカウンタームーブメントを除いたトレーニングを行った。両方のグループは、6RMの50-70%の相対的負荷を使用し、負荷を付けた爆発的なスクワットを6レップ3-6セットから始め漸進した。研究者たちは、出力の増加は有意であり、両方のグループにおいて同様であったということを発見している。 ホフマン(2005年) は5週間にわたり、レジスタンストレーニングの経験がある47名の大学生フットボール選手においてジャンプスクワットの2つの方法を比較した。被験者は不規則に、伸張—短縮サイクルグループ、コンセントリックのみのグループ、コントロールグループの3つのグループへと振り分けられた。伸張—短縮サイクルグループは、ジャンプスクワットマシンの器具を使用した1RM の70%でのバックスクワットという通常のトレーニングに加え、ジャンプスクワットを行った。エクササイズのコンセントリック、エキセントリック両方の段階において負荷が適用された。コンセントリックのみのグループは同一の方法にてジャンプスクワットを行ったが、負荷はコンセントリックの段階のみで適用された。これは器具が、それぞれの段階において個々に負荷を適用することができたため可能であった。研究者たちは、出力に関するいかなる有意な変化も、出力の変化に関するグループ間のいかなる差違も確認しなかった。 要約すると、これらの研究の内2つが、コンセントリックのみのジャンプと伸張—短縮サイクルのジャンプの間で出力の増加に相違は無いと発見している一方、3つめの研究はコンセントリックのみの筋活動がより優れた結果をもたらすと発見しているというように、バリスティック・レジスタンストレーニングエクササイズの際にエキセントリック筋活動の使用を避けることが筋パワーの増加を向上させるかどうかに関しては、相反する科学的根拠が存在している。 これらの発見をどのように要約できるか? バリスティック・レジスタンストレーニングを使用して筋パワーを最大化するための、使用する量、頻度、可動域を決定することに役立つ、長期の試験からの科学的根拠は希少であるか、もしくは存在しない。相対的負荷に関しては、研究論文は相反しており、筋パワーの増加を成功させるためには、高低両方の相対的負荷を使用することができるようである。筋活動に関しては、筋パワーを増加するためにコンセントリックのみの筋活動の使用を支持している科学的根拠は限られている。 実践的意義は何か? 筋パワーの増加のために、高負荷及び低負荷のバリスティック・レジスタンストレーニングを優先的に使用することに対する科学的根拠はわずかである。ゆえに様々な負荷の適用方法を必要に応じて使用することができる。 筋パワーを増加するために、伸張—短縮サイクルやコンセントリックのみのバリスティック・レジスタンストレーニングを優先的に使用することに対する科学的根拠はわずかである。ゆえに、これらの2つの異なるタイプのエクササイズの様々な方法を必要に応じて使用することができる。
バリスティックトレーニングプログラムがパワーの向上に最良になるためには? パート1/2
筋力と筋肉量を発達させることは運動競技の発達の鍵であるが、筋パワーはそれ以上に重要だと考えられている。バリスティック・レジスタンストレーニングは筋パワーを増進させるために一般的に使われている。しかしながら、このタイプのトレーニングにおいては、トレーニング変数をどのように設定するかに関する強く一致した意見は無い。これらはこれらを多少明確にするために役立つ長期のトレーニング研究の総評である。 背景 バリスティック・レジスタンストレーニングとは何か? バリスティック・レジスタンストレーニングは、コンセントリック段階への減速の段階が無いということに限り、高負荷レジスタンストレーニングとは異なっている。これは、トレーニングを行っている人が、コンセントリックの全可動域において加速し続けることが可能であるということを意味している。より長い時間を加速に費やすことは、筋肉の適応に対し有益であるかもしれないと示唆されている。加えて、バリスティック・レジスタンストレーニングはより軽い負荷が使われる傾向にあるという点で、高負荷レジスタンストレーニングとは異なる傾向にある。これは、使用される負荷が最大出力の生まれる負荷により近いということを意味している。トレーニングへの適応において頻繁に負荷の特異性が観察されることを考えると、これはバリスティック・レジスタンストレーニングが非常に大切だと考えられている理由の一部であるのかもしれない。測定には、実際のバリスティック・レジスタンストレーニングに使用される負荷に近い値での出力を記録することが含まれている。 定義付けにおける問題点は何か? 異なる負荷を使用した高負荷レジスタンストレーニング、バリスティック・レジスタンストレーニング、プライオメトリックスを差別化する際、定義に関していくつかの微妙な問題がある。ここでの主な問題は、リフティングがバリスティックであるのかバリスティックでないのかが、負荷ではなく生体力学により厳密に決められるべきであるのかどうかということであるが、実際のところはそこには多少の余地がある傾向にある。2つめの問題は、それが垂直跳び(垂直跳びにおける出力は、論文において最も一般的に使用されるテストである。)の際の最大出力につながると急性試験で発見されているため、「無負荷」がしばしば負荷のパラメーターとして使用されているという事実である。 研究者たちはしばしば、軽い負荷で行う「パワーベース」のレジスタンストレーニングに言及しているが、彼らはそのエクササイズがバリスティックかどうかに関しては曖昧である。専門的には、動きが「バリスティック」と適切に分類されるためには、コンセントリック段階への減速部分があってはならない。上述のように、バリスティックリフトの恩恵として、長時間加速し、長期の優れた適応に達することが可能であるということが生じ得るため、これは単に専門的であるということ以上のものである。ゆえに、この総評の目的のためにトレーニングエクササイズは「パワーベース」として分類されているが、アスリートがバリスティックな動きを行ったとはっきりと明記されていなかった場合は、高速、高負荷のレジスタンストレーニングとして分類され、総評には含まれなかった。反対に、アスリートがバリスティックな動きを行ったとはっきりと明記されていた場合は、使用された負荷に関わらず、バリスティックエクササイズとして分類され、総評へ含まれた。 加えて、多くの場合、無負荷が垂直跳びの際に最大出力を出す負荷であるため、論文の中においては、異なる負荷でのスクワットジャンプとの比較をする傾向や、負荷のパラメーターとして無負荷を含む傾向がある。この場合専門的には、プライオメトリックエクササイズ(自重の使用のみ)とバリスティック・レジスタンストレーニングエクササイズ(バリスティック・レジスタンストレーニングエクササイズの際に外部負荷を使用)を比較していることとなる。同様に、無負荷も負荷として扱われるため、負荷を付けたカウンタームブメントジャンプ(上記の定義に基づく、バリスティック・レジスタンストレーニング)と自重のみでのカウンタームブメントジャンプを比較する傾向にもある。ここでも我々は専門的にはプライオメトリックとバリスティック・レジスタンストレーニングエクササイズを比較している。しかしながら、無負荷は人気のある「負荷」であるため、完全性のために、同様の動きを無負荷と負荷付きで比較している研究において、この総説では、無負荷のコンディションはバリスティック・レジスタンストレーニングエクササイズとして分類されている。 バリスティック・トレーニングのどの変数がパワー出力を最も向上させるか? 根本的な生物学的メカニズムは何か? バリスティック・レジスタンストレーニングが、正確にどのようにして出力の向上につながるのかは明確ではない。一部の研究者たちは(コーミア2011年)、総合して力開発の速度(RFD)の向上を引き起こす、神経活動、神経活性化の速度、筋間の整合の増加があるということを示唆している。ウィンチェスター(2008年)は実際に、ジャンプスクワットを使用した8週間のバリスティック・レジスタンストレーニングが、RFDと出力の両方の向上をもたらしたということを発見している。しかしながら、これらの向上をもたらした根本的な適応の正確な性質は明確ではなく、いくらかの局部的な筋肉の変化も起こっているようである。 選択基準は何か? 下記の研究は、長期に渡るバリスティック・レジスタンストレーニングの実験(別に評価されるオリンピックウェイトリフティングは除外)において、選択されたトレーニング変数の変化が筋パワーの向上に及ぼす影響を評価したものである。研究を選択するために使用された主な3つの基準は厳密に実行された。その基準は下記のものである。 研究結果の判定方法は、測定されたものであるか、もしくはワット数で表された筋力パワーであるべきであり、代用物(垂直跳びの高さなど)であってはならなかった。 研究は、1つの変数のみが可能な範囲内で変化し(休憩時間や相対的負荷など)、少なくとも2つの異なる介入を使い、特定のレジスタンストレーニングの変数の影響を調査していなければならなかった。 研究は、両方の介入においてバリスティック・レジスタンストレーニングのみを含むものでなくてはならず、ヘビーレジスタンストレーニング、オリンピックウェイトリフティングやそのバリエーション、プライオメトリックスなどのその他のトレーニング方法と組み合わせて行ってはならなかった。 総説からみてわかるように、この簡潔な基準は、適格である研究の数に、かなり大きな影響を与えた。これは一つには、早期の多くの研究が垂直跳びの高さを出力の代用物として使っていたためであり、一つには後の多くの研究が組み合わせた方法を評価していたためである。
プライオメトリックスはパワーを向上させることができるのか? パート3/3
プライオメトリックスは出力を向上させるか?(続き) ファトロス (2000年) は、12週間の介入において41名の男性におけるプライオメトリックス、高負荷レジスタンストレーニング、そのコンビネーションの効果を比較した。被験者は週に3回トレーニングを行った。研究者たちはトレーニング後に最大パワーが有意に増加したことを発見した。 ポッテイガー (1999年) は8週間にわたる介入において、19名の男性におけるプライオメトリックのみとプライオメトリック+有酸素トレーニングの出力に対する影響を比較した。プライオメトリックトレーニングは、垂直跳び、バウンディング、デプスジャンプで構成されていた。有酸素運動はプライオメトリックのトレーニング直後に20分間、最大心拍数の70%にて行われた。研究者たちは介入の結果として、カウンタームーブメント垂直跳びの際の最大パワーは両方のグループにおいて有意に増加し、グループ間に差違はなかった(2.8%と2.5%)ということを発見した。加えて研究者たちは、、タイプI(4.4%と6.1%)及びタイプII(7.8%と6.8%)筋繊維の範囲における変化を計測し、出力の増加は部分的に筋肥大によりもたらされた可能性があると示唆した。 ワグナー (1997年) は、アスリート20名、アスリートではない人20名、コントロール20名において、6週間のプライオメトリックスの無気的パワーに対する影響を評価した。研究者たちは、プライオメトリックスがアスリートとアスリートではない被験者の両方において、下肢の無気的パワーの増加に対し効果的であるということを発見した。 ヒューイット (1996年) は、ジャンプスポーツに関わる女性アスリートにおいて、プライオメトリックスの着地力学と出力に対する影響を評価した。研究者たちは、トレーニング後ハムストリングの筋パワーが優位側で44%、非優位側で21%、有意に増加したことを発見した。 ヘルコム (1996年) は、従来のデプスジャンププログラム、調整されたデプスジャンププログラム、カウンタームブメントジャンププログラム、もしくはレジスタンストレーニングプログラムのいずれかを行った51名の大学生年齢の男性において、調整されたプライオメトリックスプログラムの効果を評価した。被験者は8週間にわたり、1週間に3日のトレーニングを行った。研究者たちは、最大出力は全てのグループにおいて向上し、様々なトレーニング方法間に有意な差違は無かったということを発見した。 ウィルソン (1993年) は、64名の既に鍛錬された被験者において、10週間にわたり週に2回のトレーニングを行い、力学的出力が最大化する負荷における高負荷レジスタンストレーニング、プライオメトリックス、バリスティック・レジスタンストレーニングの効果を比較した。プライオメトリックスプログラムは介入中に20cmから80cmへと高さが漸増するデプスジャンプを含んでいた。出力は6秒サイクルの自転車エルゴメーターテストを使い測定された。このテストにおいては、プライオメトリックストレーニングの介入後に出力の有意な増加はみられなかった(0.6%)。これはデプスジャンプによりトレーニングされると幅広く考えられている、伸張—短縮サイクルを使用していないテストの機能に関連している可能性がある。 これらの研究結果をどのように要約することができるか? 要約すると、用語の本来の用途は主にジャンプのパフォーマンスを向上するためであったが、上記の研究論文によるとプライオメトリックスの使用は筋出力を向上することに対し有効であるようである。 さらに、出力の変化と同時に筋肉の大きさを測定したいくつかの研究から、少なくともプライオメトリックスが筋パワーを向上させるためのメカニズムの一部は、筋肥大によるものであるということがわかる。(例:シェリー、2014年;シェリー、2010年;ヴァイシング、2008;ポッテイガー、1999年)。ゆえに、プライオメトリックスが神経活動によってのみ役割を果たし、局部的な適応をもたらさないという主張は実証されていない。さらに、筋繊維のタイプが調査された際(例:ポッテイガー、1999年)、タイプI及びタイプII両方の筋繊維領域においてサイズの増加がみられたということは興味深いことである。 また、プライオメトリックスが有酸素トレーニングと共に行われた場合(例:ディアロ、 2001年;サンダース、2006年;ロネスタッド、2008年;シェリー、2010年)、いかなる方法においても筋パワーの増進の妨げにはならないようであるということを記述することができる。これは有酸素運動が同時に行われている場合においても、筋パワーを向上するためにプライオメトリックスを使用することができるということを示唆している。 異なるトレーニング頻度で行われたルーバース(2003年)による研究は解釈することが困難である。異なる期間にわたり、同数のセッションを行った2つのグループ間の筋出力の増加における有意な差違の欠如は、より多い頻度のトレーニングがより早い適応の達成を可能にするということを示唆しているようである。 最後に、限られた研究論文からは、デプスジャンプ対カウンタームーブメントジャンプのように、異なるジャンプを行うことから得られるパワーの増進に関しては差違が無いということが発見されている(ヘルコム、1996年)。ヴァーコシャンスキーが具体的にジャンプ能力を向上させるために、ジャンパーのトレーニングにデプスジャンプを導入したことは興味深いことである。この対象者たちにおいて、デプスジャンプが特にジャンプパフォーマンスを向上させることに対し成功したメカニズムは、筋パワーの向上によるものではなく、他のメカニズムによるものであるということを暗示しているかどうかは現在の分析からは明確ではない。 実践的意義は何か? プライオメトリックスは、鍛錬されている、いないにかかわらず、成人、青少年の両方において筋パワーを増進するために使用することが可能である。 特定のタイプのプライオメトリックスエクササイズが、筋出力により効果的であるというエビデンスは存在していない。 より多い頻度のトレーニングは、プライオメトリックトレーニングプログラムの際のより早い筋出力の増加をもたらす可能性がある。 筋出力の増加のために、有酸素トレーニングを含むプログラムにプライオメトリックスを加えることで、有効に実施されることができる。 このタイプのトレーニングは筋肥大と関連性があるため、筋サイズの変化無くして出力の増加を望む場合は、プライオメトリックが既定の方法であるべきではない。