トレーニングプログラムはジャンプの生体力学にどのような影響を及ぼすか? パート1/2

一般的に、垂直跳びのパフォーマンスを向上させるためには、従来の高負荷レジスタンストレーニングと比較し、オリンピックリフトがより適していると考えられている。しかし多くの場合研究は、それぞれの方法を使用したプログラム間の顕著な差違を示すことができず、また一部の研究は垂直跳びのパフォーマンスにおける向上を全く示すことさえできていない。何故このようなことがあり得るのかを調査するために我々は、オリンピックウェイトリフティング、もしくは従来の高負荷レジスタンストレーニングどちらかのプログラム後の垂直跳びの際、正確にはどのような適応が起こるのかを理解する必要がある。結局のところ、2つの異なるタイプのトレーニングが、異なる質を発達させることにより、ジャンプパフォーマンスを向上させることは可能なのである。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が、幾つかの洞察を提供している研究論文の再考察を行う。 研究論文:従来のウェイトトレーニングと比較し、オリンピックウェイトリフティングトレーニングは、異なる膝の筋肉共収縮の適応を引き起こす、アラバッツィ、ケリス、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2012年 背景 オリンピックウェイトリフティングおよび高負荷レジスタンストレーニングは、共に標準のアスレチックトレーニングプログラムにおいて幅広く使用されている。そのようなプログラムは、垂直跳びのパフォーマンスおよびスプリントを含む運動能力を向上させることを目的としている。しかしながら、オリンピックウェイトリフティング、および従来の高負荷レジスタンストレーニングの影響を比較した以前の研究考察において見られたように、垂直跳びを向上させることに関し、オリンピックリフト、もしくは従来の高負荷レジスタンストレーニングを行うことの間に有意な差違があるかどうかは明確ではない。一般的にはオリンピックリフトに優位性があるようではあるが、これが明らかではないことは確実である。さらに、前回の研究論説において記述されていたように、行われたストレングストレーニングの方法がオリンピックリフトであったのか、もしくは従来の高負荷レジスタンストレーニングであったのかということに関わりなく、どちらにしてもストレングストレーニングの結果としてジャンプパフォーマンスにおける優位な向上が起こらないということは多くある。 より大きなインパルスを生むために、力生産能力の増加が明らかに必要であるにもかかわらず、垂直跳びのパフォーマンスがストレングストレーニングにより常に向上するわけではない理由に関する1つの可能性として、垂直跳びが様々な体節および筋肉の間における複雑な相互動作を含んでいるということがある。それは協調的かつ高度な動作であるため、この付加的な力生産能力を使う方法を習得するまでに時間がかかる可能性がある。実際にボバート(1994年)はシミュレーション研究を行い、垂直跳びのパフォーマンスに対する筋力増加の影響を最大化するためには、かなりの量のジャンプ練習が必要なようであるという結論に至っている。 ゆえにこれらの線に沿って考えると、オリンピックウェイトリフティング及び従来の高負荷レジスタンストレーニング両方のプログラム後の、垂直跳びパフォーマンスの際に起こる、正確な神経筋の適応を調査することは理にかなっているということになる。そのような適応は、主動筋群及び拮抗筋群の共収縮、関節およびシステム全体の硬さ、システムの出力、そして関節角度の動きにおける変化を含んでいる可能性がある。主動筋および拮抗筋の筋グループの共収縮は、関節の硬さを増すために作用しながら、関節の力のバランスをとることによって関節を安定させるために、多関節クローズドキネティックチェーン運動の際に起こる。関節の硬さにおける変化は、カウンタームーブメントおよびドロップジャンプの際の伸張・短縮サイクルの貢献を変化させる可能性があり、よって垂直跳びパフォーマンスを向上させる可能性がある。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、オリンピックリフティングプログラムによりもたらされた、最大垂直跳びの際の筋肉の共収縮における変化を、従来の高負荷レジスタンストレーニングプログラム後の変化と比較したいと考えた。研究のために研究者たちは、少なくとも1年間のレジスタンストレーニングの経験があり、体重の約2倍の1RMハーフスクワットを行うことが可能な、身体的に活発な26名の体育学部の男子学生を集めた。彼らは被験者を無作為に、コントロールグループ、およびオリンピックウェイトリフティンググループと従来の高負荷レジスタンストレーニンググループの、2つのトレーニンググループへと振り分けた。 トレーニングの介入の前後に研究者たちは、1RMスクワット、ハーフスクワット、スクワットジャンプの高さ、デプスジャンプの高さ、およびカウンタームーブメントジャンプの高さをテストした。彼らはまた、筋電図活動(平均筋電図および共収縮)、垂直剛性、出力、そして関節角度の動きを測定した。筋電図は表面電極を使用し測定され、関節角度の動きは、主要な解剖学的指標に付けられたマーカーの位置を測定するために、ビデオカメラを使用し記録され、出力はフォースプレートを使用し測定された床反力を基に計算された。 全ての被験者が、24のトレーニングセッションを含む8週間にわたるトレーニングプログラムを完了した。オリンピックトレーニングプログラムは、スクワットポジションからのスナッチ、ハイプル、パワークリーン、ハーフスクワット、およびクリーン&ジャークを含む、5つのオリンピックスタイルのウェイトリフティングエクササイズから構成されていた。従来の高負荷レジスタンストレーニングプログラムは、マシンニーエクステンション、マシンニーフレクション、マシンレッグプレス、ベンチプレス、およびハーフスクワットを含む5つのエクササイズから構成されていた。両方のプログラムにおいて同様の負荷区分が使用された。1-2週目において被験者は、セット間に3分のレストを入れ、1RMの75%で各エクササイズに対し4レップを4セット行った。3-4週目において被験者は、1RMの80%で6レップを4セット行い、5-8週目においては、1RMの80-90%で4レップを4セット行った。 *** 何が起こったのか? スクワットジャンプ、カウンタームーブメントジャンプの高さおよびパワー 研究者たちは、オリンピックリフティンググループにおいてのみ、スクワットジャンプおよびカウンタームーブメントジャンプの高さが有意に向上したということを報告している。同様にオリンピックリフティンググループにおいてのみ、カウンタームーブメントジャンプのパワーが向上している。下記のグラフは各測定において各グループにより達成された向上を示している。 以前に考察した研究において、オリンピックリフティンググループと比較し、垂直跳びのパワーがより向上したのは、従来の高負荷レジスタンストレーニンググループであったということは興味深いことである(ここを参照)。この差違は統計的には有意ではなかったが、これらの研究において発見される結果の多様性を強固なものにしている。 ドロップジャンプの高さおよびパワー 研究者たちは、オリンピックウェイトリフティンググループにおいてのみ、20cmおよび40cmからのドロップジャンプの高さが有意に向上したということを報告している。しかし、60cmからのドロップジャンプの高さにおける向上は、両方のグループにおいて観察されていた。どの高さの箱からのドロップジャンプパワーも有意に向上したのは、オリンピックウェイトリフティンググループのみであった。下記のグラフは各測定においてそれぞれのグループにより達成された向上を示している。

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オーバートレーニングを発見することができる診断ツールはどれか? パート3/3

(パート 2/3はこちらへ) 研究者たちは何を行ったのか? 上記のように、オーバートレーニング状態のアスリートにおける研究の結果に基づくと、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニング症候群を示しているアスリートは、自己認識ストレスの増加、睡眠量および質の低下、睡眠障害、自己認識および気分の変化、免疫抑制、および交感神経系活動の変化を示す可能性があるようである。この研究において研究者たちは、下記のようなこれらの特性の1つもしくはそれ以上を測定する能力により、非機能的オーバーリーチングの評価を行う能力に関し、下記のツールを比較している。 アスリートに対するリカバリーストレスアンケート(RESTQ-sport)- これは各分野4つの質問からなる、19分野の構造化アンケートであり、活動に関連し感じたストレス要因および回復の頻度を確立するために、各質問は7点スケールにて回答される。トレーニング負荷の変化に対するアスリートの反応を監視することに関し、この方法は既に正当性が立証されている。 気分状態のプロフィール(POMS)- これは、鬱状態(8項目)、怒り(7項目)、疲労(6項目)、緊張(6項目)および活力(5項目)を評価している合計32項目からなる、5分野にわたるもう一つの構造化アンケートであり、各質問は5点スケールにより回答されている。 反応時間 - 幾人かの研究者たちは(例:ネダロフ2006年)は、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングであるアスリートにおいて、精神運動機能が損なわれていた可能性があると提議している。これは反応時間の低下または減少により明確にすることが可能である。これは複数回測定し記録することが非常に簡単なツールである。 視床下部-下垂体-副腎系(HPA)軸機能 - 上記のように、オーバートレーニング症候群を患うアスリートにおいては、同日に2回行われた特定の種類の最大エクササイズテストに対する、コルチゾールおよび副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)反応の機能不全が存在する。自転車エルゴメーターによる段階的なエクササイズテスト(120Wから始まり、極度の疲労に至るまで3分ごとに30Wずつ増加)の前後に、各テストに対しコルチゾールおよびACTH濃度が測定された。 ゆえにこれらの4つのテストはストレスに対する自己認識、自己認識および気分の変化、交感神経系活動の変化、および精神運動機能の変化を評価している。研究者たちは、被験者として3名の女性スピードスケート選手へアクセスした。1名は健康なコントロール被験者であり、2名は後に様々な段階の非機能的オーバーリーチング(NFO)と診断され、そのうち1名は現在も非機能的オーバーリーチングの状態にあり、1名は非機能的オーバーリーチングからの回復途中であった。NFOを患うアスリートは2週間トレーニングを控えており、NFOから回復中のアスリートは12週間トレーニングを停止していた。 *** 何が起こったのか? アスリートに対するリカバリーストレスアンケート(RESTQ-スポーツ) 研究者たちは、コントロール被験者は、一般およびスポーツに特化したストレススケールにおいて低い値を示し、一般およびスポーツに特化した再生スケールにおいて高い値を示したと記述している。NFOを患うアスリートは一般およびスポーツに特化したストレススケールにおいて高い値を示し、一般的な再生スケールにおいて低い値を示し、またスポーツに特化したサブスケールのいくつかにおいて低い値を示した。NFOから回復中のアスリートは、これら2極端の中間の値を示していた。 気分状態のプロフィール(POMS) 研究者たちは、コントロール被験者は、抑鬱気分スケールにおいて低い値を示し、活力に対しては高い値を示したと報告している。NFOを患うアスリートは、疲労スケールにおいて高い値を示し、活力を含むその他の気分のスケールに対しては中から低程度の値を示していた。NFOから回復中のアスリートは全てのスケールにおいて中程度の値を示していた。 反応時間の課題 研究者たちは、NFOから回復中のアスリートは最速の反応時間を示し、現在NFOを患っているアスリートは最長の反応時間を示したということを発見している。 ホルモン反応 研究者たちは、コントロール被験者は両方のエクササイズテスト後、コルチゾール濃度のわずかな減少を示したということを報告している。NFOから回復中のアスリートは、最初のテスト後わずかな減少を示したが、2回目のテスト後はわずかな増加を示した。NFOを患っているアスリートは、最初のテスト後わずかな増加を示し、2回目のテスト後に大幅な増加を示した。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、RESTQ-スポーツ(一般およびスポーツに特化した自己認識ストレスを測定する)、反応時間テスト(精神運動性速度を測定)、およびダブルエクササイズプロトコルに対するコルチゾール反応は、非機能的オーバーリーチングの存在を監視するために有望なツールであるという結論に至った。しかしながら彼らは、POMSテスト(気分状態を測定)は、NFOを患っているアスリートとNFOから回復中のアスリートを有効的に区別することが不可能であったため、このテストはそれほど有益ではなかったと記述している。 *** 制限要素は何か? この研究の主な制限は、被験者が3人のみであり、そのうち1人はコントロールであったということである。ゆえに、個人差により他のアスリートにおいては全く異なる状況が観察される可能性がある。その他の主要な制限は、データが1点でのみ集められており、非機能的オーバーリーチングの診断がなされた期間中に集められた情報のみを反映しているということであった。もし研究者たちが同じアスリートに対し、彼らが非機能的オーバーリーチングになる前のデータを集めることが可能であったならば、アスリート個人における大きな変動を示していた可能性があるという点で、POMSテストはより有益であったかもしれない。 *** 実践的な意義は何か? 原因不明のパフォーマンス低下は、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングに対する確立した測定方法である。規定のトレーニングプログラム及びリカバリーを行っているにもかかわらず、持続的なパフォーマンスの低下を示すアスリートは、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングに対し評価されるべきである。 オーバートレーニングの診断にあたり、非伝染性疾病(例:甲状腺や副腎に関わる疾病、糖尿病、鉄欠乏症、および貧血症)、感染性疾病(例:心筋炎、肝炎、および腺熱)、またその他の主要な疾病もしくは摂食障害(例:拒食症と過食症)の存在を除外する必要がある。 オーバートレーニング症候群を患うアスリートは、ストレスに対する自己認識の増加、睡眠量および質の低下、睡眠、自己認識、および気分の障害、免疫抑制、および交感神経系活動の変化を示す可能性があるようである。 潜在的に有益な非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングの早期警告に対する指標は、気分状態の変化(POMSスケールを使用することが可能)、免疫マーカーの低下、反応時間の減少、パフォーマンスの低下、HRVの増加もしくは減少、および同レベルのエクササイズの際の最大下乳酸濃度の減少を含む。 RESTQ-スポーツ(一般およびスポーツに特化した自己認識ストレスを測定)、反応時間テスト(精神運動性速度を測定)、およびダブルエクササイズプロコトルに対するコルチゾール反応(エクササイズに対するHPA-軸反応を測定)は、非機能的オーバーリーチングの存在を監視するために有望なツールである。

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オーバートレーニングを発見することができる診断ツールはどれか? パート2/3

(パート 1/3はこちらへ) (パート 3/3はこちらへ) 背景(続き) 何がオーバートレーニングを引き起こすのか? オーバートレーニング症候群の正確な原因は明確ではなく、それは主に次の2つの主要な理由から研究を行うことが非常に困難であるためである。第1に、倫理的にアスリートに対してオーバートレーニングを誘発することは不可能であり、いかなる研究も定義上、回顧的でなくてはならない。第2に、現在オーバートレーニングは、長期の観察後、また多くの他の可能な原因を除外した後にのみ診断することが可能であり、何ヶ月もパフォーマンスの低下が継続しているアスリートは時に引退を選択してしまうため、実際には非機能的オーバーリーチングであったのか、もしくはオーバートレーニングに達していたのかを評価することが困難となる。それでもなお、研究者たちの様々なグループ間で支持されているメカニズムが幾つか存在しており、クレハー(2012年)は下記の見出しに関する要約をしている。 グリコーゲン仮説 – このモデルにおいては、グリコーゲンの減少が疲労を引き起こし、その結果としてパフォーマンスを低下させると信じられている。しかしながら、スナイダー(1995年)は、正常なグリコーゲン値にもかかわらず、アスリートがオーバートレーニングの状態になることは可能であるということを発見しており、この仮説を非常に支持しがたいものとしている。 中枢疲労仮説 – このモデルにおいては、トリプトファンの脳への取り込みの増加が、神経伝達物質セロトニン(5-HT)値の上昇へとつながり、これが有害な気分症状を生み出すということを提議しているのが原案である。ミューゼン(2006年)は、この仮説の改訂版において、ドーパミンに対するセロトニンの比率の増加は、疲労感や倦怠感を引き起こすと説明している。 グルタミン仮説 – このモデルにおいては、グルタミンの減少が免疫機能障害、および感染に対する感受性の増加を引き起こすと提議されている。しかしながら、オーバートレーニング症候群は感染が存在せずとも起こり得ると考えられており、この仮説を魅力のないものとしている。 酸化ストレス仮説 – このモデルにおいて研究者たちは、過度の酸化ストレスは筋損傷および疲労へとつながると提議している。 自律神経系仮説 – このモデルにおいて、副交感神経優位は様々な症状を引き起こすと考えられている。しかしながら、心臓自律神経バランスを測定するために心拍変動を使用した研究は、トレーニング負荷の増加後、交感神経および副交感神経の優位性の増加を記述しており(例:ハイネン2006年)、ほとんどの場合、心臓自律神経系バランスに対する増強されたトレーニングの影響は1週間以内に是正される可能性があるようである(例:ピコット2000年)。 視床下部仮説 – このモデルにおいては、視床下部-下垂体-副腎系、および/もしくは視床下部-下垂体-性腺軸の異常調節は、コルチゾールもしくはテストステロンを明らかなターゲットとし、オーバートレーニング症候群の様々な症状を引き起こしているかもしれないということが提議されている。しかしながらこの研究は、副腎ホルモン値における上昇、低下、もしくは無変化のいずれかは示しているものの、オーバートレーニングの期間中、これらのホルモンに対し何が起こるのかに関しては結論に達していない(例:リーマン1992年、フーパー1993年、ユーホーセン1998年、マッキノン1997年、ウッシタロ1998年)。それはそれとして、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究者たちは何年もの間、視床下部-下垂体-副腎系の全く同じ問題に直面している(例:詳しくはピットマン2012年によるこの総説全文を参照)。 サイトカイン仮説 – このモデルにおいて(詳しくはスミス2000年参照)、炎症およびサイトカインの分泌は、知られている限りほとんどのオーバートレーニング症候群の影響や症状を引き起こすと提議されている。このモデルの強みは、他に提議されたメカニズムの多くと関連している可能性があるということである。主な弱点は、わずかな研究しかオーバートレーニング状態のアスリートにおけるサイトカイン上昇の有症率を評価しておらず、そのような研究は良い結果を生み出してきていないということであった(例:ハルソン2003年)。 要約すると、現在一般に認められたオーバートレーニングの起こるメカニズムは存在しない。これは、発生前にオーバートレーニングが起こっているのかどうかを評価することを非常に困難なものにしている。 *** オーバートレーニング症候群を診断するために使用可能なツールは何か? オーバートレーニングのメカニズムに関する理解の欠如にもかかわらず、それらが部分的にしか検査されていないとしても、コーチやアスリートたちはこれを回避する助けになるかもしれない手段を実行しようとすることに熱心である。ユーホーセン(2002年)は、有益かもしれない現在入手可能な診断ツールをリストアップおよび再考察し、またネダロフ(2006年)は精神運動機能という形の更なるツールを提議している。下記は安静時に検査することが可能なこれらの変数の要約リストである。 安静時心拍数 心拍変動(HRV) 気分状態のプロフィール(POMS) 血中代謝マーカー ホルモン 免疫学的パラメーター 精神運動機能(反応時間など) 下記のさらなる変数は、エクササイズ中のオーバートレーニングのマーカーとして提議されている。 パフォーマンスの低下 血中代謝マーカー ホルモン 心拍数 自覚的運動強度 これらの多くのマーカーは有益であるが、どれも決定的ではない。概して、非機能的オーバーリーチングもしくはオーバートレーニングの有益な指標は、気分の変化(POMSスケールを使用)、免疫マーカーの低下、反応時間の減少、パフォーマンスの低下、HRVの増加もしくは減少、そして同レベルのエクササイズの際の最大下乳酸濃度の減少を含んでいるようである。 ***

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オーバートレーニングを発見することができる診断ツールはどれか? パート1/3

(パート 2/3はこちらへ) アスリートにおけるオーバートレーニングおよびオーバーリーチングは、発生前に予測することは言うまでもなく、診断することが非常に困難である。現在、初期症状を監視するために現在多くのコーチや研究者たちが注目しているのは、心拍変動(HRV)のようである。しかし他にも選択肢はある。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が、少人数のアスリートにおける非機能的オーバーリーチングを評価するための、4つの診断ツールの能力を調査した興味深い研究論文の再考察を行う。 研究論文: 非機能的オーバーリーチングに対する異なる診断ツール、ネダロフ、ズイヴァー、ブリンク、ミューゼン、レミンク、国際スポーツ医学ジャーナル、2008年 背景 オーバートレーニングはどのように定義されるか? アスレチックトレーニングは、過負荷とその後の回復を伴う。このような過負荷は、単一の激しいトレーニングセッション後、または激しいトレーニング期間後において、疲労感やパフォーマンスの急性な低下を引き起こす可能性がある。しかしトレーニングと回復という通常の流れにおいてこの過負荷は、有益なトレーニング反応、適応、そしてその結果として生じるパフォーマンスの向上をもたらす。しかしながら、過負荷と回復との間のバランスが適切に管理されていない場合、有益なトレーニング反応は起こらず、パフォーマンスは向上しないと考えられている。この好ましくない反応に関する調査は、オーバートレーニングを研究する研究者たちの焦点となっている。これらの研究者たちは、合意声明および指針書を作成しており(ミューゼン2006年、クレーハー2012年、ミューゼン2013年)、その中では下記のような定義が提唱されている。 オーバートレーニングは、機能的(もしくは短期的な)オーバーリーチング、非機能的(もしくは極度の)オーバーリーチング、あるいはオーバートレーニング症候群という結果を引き起こす可能性のある、増強されたトレーニングの過程である。 機能的オーバーリーチングは、レスト後におけるパフォーマンス向上を伴う、一時的なパフォーマンス低下につながる増幅されたトレーニングの過程である。 非機能的オーバーリーチングは、長期のパフォーマンス低下につながる増幅されたトレーニングの過程であるが、レスト後の完全な回復において、ある心理的および/もしくは神経内分泌的症状が付随して起こる。 オーバートレーニング症候群 - 非機能的オーバーリーチングと一致するコンディションであるが、さらに(1)より長期間にわたるパフォーマンスの低下(2ヶ月以上)、(2)より重度な症状や生理機能不適応(心理的、神経的、内分泌的、免疫的な)、および(3)他の疾患では説明がつかない更なるストレス要因を伴う。 上記のように、他の疾患も同様の原因不明のパフォーマンスの低下を引き起こす可能性があるため、オーバートレーニング症候群の正確な診断を引き出すためには、非伝染性疾病(例:甲状腺もしくは副腎に関わる疾病、糖尿病、鉄欠乏症、貧血症)、感染性疾患(例:心筋炎、肝炎、腺熱)および他の主要な疾患や摂食障害(例:拒食症および過食症)の存在を排除する必要がある。 2013年)は、オーバートレーニング症候群と関連がある、血液バイオマーカー、および生理的また心理的な測定における、定量的所見の概要を提供するために行われた。下記は彼らの調査結果である。 血液バイオマーカー – 評論家たちは、グルタミン、グルタミン酸塩、コルチゾール、IL-6、テストステロン、コレステロール、ブドウ糖、レプチン、ヘマトクリット、ヘモグロビン、副腎髄質ホルモン、エピネフリン、およびクレアチンキナーゼを評価した研究に関し報告している。彼らは、影響の規模はグルタミン、グルタミン酸塩、コレステロール、IL-6、およびブドウ糖に対してのみ大きく(事実、グルタミン、グルタミン酸塩、およびIL-6に対する影響は非常に大きかった)、一方テストステロンおよびクレアチンキナーゼに対する影響はわずかあった(クレアチンキナーゼ以外は全て減少)ということを発見している。 生理的測定 – 評論家たちは、心拍変動ではなく、安静時心拍数、安静時収縮期血圧、および安静時拡張期血圧を評価した研究について報告をしている。彼らは、安静時心拍数および安静時収縮期血圧の両方に対する影響は大きく、これらの変量はオーバートレーニングされたアスリートにおいて減少するということを示しているにもかかわらず、この研究は相反する結果を生み出したということを記述している。この発見は以前の総評の結果とも相反している。 心理的測定 – 評論家たちは、緊張、疲労、混乱、活力、怒り、鬱に関する気分状態は研究においてかなり変化してきたが、その方向性に明確な傾向はなかったということを発見している。このような変化は、オーバートレーニングに対する心理的反応の、非常に個体差のある特質を反映している。しかし彼らは確かに、睡眠パターン障害、覚醒状態の増加、睡眠の質の低下と安定性、およびストレスレベルの増加に対する明らかな傾向を観察していた。 要約すると、オーバートレーニング症候群を患っているアスリートは、ストレスに対する自己認識の増加、睡眠の質および量の減少、睡眠障害、自己認識および気分の混乱、免疫抑制、交感神経活動の変化を示すようである。 何らかの理由により、評論家たちは、この系統的レビューにおいて心拍変動(HRV)を考慮に入れていない。安静時心拍数に関してのみ、研究はオーバートレーニングされたアスリートにおける心拍間隔の変動の様々な測定において、増加と減少の両方を示していた。しかしながら研究者たちは、これはオーバートレーニングの状態に至るまでの異なる経路を反映していると提議している。マキビック(2013年)は、系統的レビューを行い、エクササイズ強度の増加と関連するオーバートレーニングは、副交感神経優位につながる一方、エクササイズ量の増加と関連するオーバートレーニングは、交感神経優位につながるという結論に至っている。更に彼らは、非機能的オーバーリーチングの段階もまた、交感神経優位を特徴としているかもしれないということを記述している。現代のスマートフォンは、心拍モニターと連動して、HRVを簡単にかつ正確に測定するために使用することが可能であるため、HRVはコーチにとって非常に魅力的なツールとなっている。

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標準のデッドリフトとヘックスバーデッドリフトはどのように異なるのか? パート2/2

デッドリフトの際の関節モーメント ストレートバーデッドリフトモーメント 研究者たちは、ストレートバーデッドリフトの際、負荷の増加に伴い股関節、膝関節、および足関節のモーメントが増加したということを報告している。しかしそれらは全てが均等に迅速に増加したわけではない。下記のグラフに示されているように、股関節モーメントは負荷の増加と共に最も速く増加し、足関節、膝関節の順に後に続いていた。 ヘックスバーデッドリフトモーメント ヘックスバーデッドリフトにおいても同様の現象が観察された。股関節モーメントは負荷の増加に伴い最も速く増加し、足関節モーメントがその後に続いていた。膝関節モーメントは負荷の増加に伴い有意な増加はしていなかった。これは下記のグラフにて見ることができる。 しかしながら、洞察力の優れた人にはさらに2つの事が明確であるだろう。まず第1に、股関節モーメントは全てストレートバーデッドリフトにおいてより高い。研究者たちは、これはヘックスバーデッドリフトの場合、モーメントのアームがより短いことが理由であると説明している。第2に、股関節対膝関節モーメントの比率がヘックスバーデッドリフトと比較し、ストレートバーデッドリフトにおいてより高い。下記のグラフはその点をより明確に示すためのものである。 このグラフは、ヘックスバーデッドリフトと比較しストレートバーデッドリフトは、より高い股関節対膝関節の比率をもっているということを示している。それはまた、ストレートバーデッドリフトにおいて股関節モーメントは、膝関節モーメントより速く増加する傾向にあるが、ヘックスバーデッドリフトにおいては有意ではないということを示している。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、デッドリフトの様々な生体力学的変数は、その動作をストレートバーもしくはヘックスバーのどちらで行うかにより変化する可能性があるという結論に達した。彼らはそのような変数には、使用した絶対負荷、バー速度、出力、加速段階に費やした時間、脊椎モーメント、および股関節対膝関節モーメントの比率が含まれていると結論付けた。最終的に彼らは、ストレートバーデッドリフトは、股関節伸展トルク、および腰部の筋力を発達させるためにはより効果的であると述べている。しかしながらヘックスバーデッドリフトは、より低い脊椎負荷および股関節伸展トルクを含むが、より重い負荷をリフトすること、同様の負荷の割合においてより速いバー速度および出力を得ることを可能にしている。 *** 制限要素は何か? この研究は、ストレートバーによる従来のデッドリフトのスタイルに限られていた。ヘックスバーデッドリフトが、とりわけ加速段階に費やされた時間、および行われた力学的仕事に関して、特にスモウデッドリフトはそれらに関し従来のデッドリフトよりもより優れているということを考慮に入れると、スモウデッドリフトと比較しどうであるかを知ることは興味深かったであろう。 更に出力については、これらがシステムに対する総合出力であるということを留意することは重要なことある。各関節の出力は報告されておらず、デッドリフトの種類や負荷の間で異なっていた可能性がある。 *** キーポイントは何か? この重要な研究にはいくつかのキーポイントがある。 ストレートバーデッドリフトはヘックスバーデッドリフトと比較し、股関節伸展強度を発達させるためにはより良いエクササイズである。 股関節対膝関節伸展モーメントの比率はヘックスバーデッドリフトと比較し、ストレートバーデッドリフトにおいてより高く、より股関節主導のエクササイズとなっている。 股関節対膝関節伸展モーメントの比率は、ストレートバーデッドリフトにおいては負荷の増加と共に増加するが、ヘックスバーデッドリフトでは異なる。これは、ストレートバーデッドリフトは、負荷の増加と共により一層股関節主導のエクササイズとなるが、ヘックスバーデッドリフトはそうではないということを意味している。ゆえに両方のバリエーションのパフォーマンスに間におけるキャリーオーバーの程度は、負荷の増加に伴い減少する可能性がある。 ヘックスバーデッドリフトはストレートバーデッドリフトと比較し、膝関節伸展強度を発達させるためにはより良いエクササイズであり、腰部により優しい。 両方のバリエーションのデッドリフトは、最大下負荷において、オリンピックリフトやそのバリエーションと同様のパワーを生み出す。ゆえにパワーに対するトレーニングを行っているアスリートは、スピードデッドリフトはオリンピックリフトと同等に効果的であり、行うことがより簡単であると感じるかもしれない。 さらにヘックスバーデッドリフトはより高い出力を産出するためにより効果的であった。ゆえにそれはアスリートの下半身のパワーを発達させるための最良の総合的な選択肢であるかもしれない。 パワーに対しトレーニングをする際、最適なパワーはストレートバーデッドリフトでは1RMの30%において、またヘックスバーデッドリフトでは40%において達成される(スクワットにおける50-60%と比較して)。 1RMの80%においては、被験者はストレートバーデッドリフトを行う際と比較し、ヘックスバーデッドリフトを行う際により長い時間を加速に費やす。これは、ヘックスバーデッドリフトが高負荷においてより高いトレーニング刺激を提供するということを示唆している可能性がある. *** 実戦的な意義は何か? ストレートバーデッドリフトを向上するために、ヘックスバーデッドリフトを使用してトレーニングを行うことは、ストレートバーデッドリフトにおける股関節伸展トルクは負荷の増加と共に増加するということの重要性を考慮に入れると、多くの場合そうであるように、弱点が股関節伸展トルクである場合、最適な移行を生み出さない可能性がある。より股関節伸展トルクを発達させるエクサイサイズの方がより良い選択肢であるかもしれない。 スポーツのために最大パワーに対してトレーニングを行っているが、オリンピックリフトには非常に違和感がある場合、それを安全に行うための技術を習得するために何年も年数を費やす必要はない。ヘックスバーおよびストレートバーの両方を使用した最大下デッドリフトは、同様の出力を産出する。(ストレートバーに対しては1RMの30%、ヘックスバーに対しては40%、しかしスクワットに対しては50%を使用すること) デッドリフトをプログラムする際、ヘックスバーデッドリフトはストレートバーデッドリフトと比較し、それほど股関節主導ではないということを知っておくべきである。ゆえにプログラムにおいてストレートバーリフトをヘックスバーリフトへと置き換える場合は、他の股関節主導のエクササイズの量を増加し、他の大腿四頭筋主導のエクササイズの量を適切に減少することが望ましいかもしれない。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2976字

標準のデッドリフトとヘックスバーデッドリフトはどのように異なるのか? パート1/2

デッドリフトを調査しているほとんどの研究は、競技におけるパワーリフターに焦点を当てており、床反力および出力を確実に記録することを困難にしている。更にデータは競技において記録されるため、同様の研究のほとんどが最大リフトを記録しており、スモウおよび従来のデッドリフトの間の差違を説明することに集中している。しかしながら近年、全く逆の方向へと進む研究が行われた。研究所において測定が行われ、床反力および出力が記録され、最大下リフトの範囲において従来のデッドリフトおよびヘックスバーデッドリフトの比較が行われた。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が、研究者たちの発見に対する詳細な考察を行う。 研究論文: 最大下負荷を使用した、ストレートおよび六角形バーベルによるデッドリフトの生体力学解析、スウィントン、スチュワート、アゴーリス、キーオ、ロイド、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2011年 *** 背景 上記のように、デッドリフトを調査している多くの優れた研究は、パワーリフトの競技において行われている。そのような研究は通常、フォースプレートデータへのアクセスの欠如により制限されており、ルールで決められている通り、様々な能力のパワーリフティング競技者により最大負荷を使用し行われる。それらは下記のように要約することができる。 ブラウン(1985年)は、運動学的解析を使用し、最大デッドリフトの際の股関節、膝関節、および足関節のモーメントを調査しており、床反力ないし出力は測定していなかった。彼らの被験者は1981年ミシガンティーンエイジパワーリフティングチャンピオンシップにおける競技者たちであった。 コレウィッキー(1991年)は運動学的解析を使用し、最大デッドリフトの際の股関節および腰への負荷を調査しており、床反力ないし出力は測定していなかった。彼らは被験者として、1989年カナダパワーリフティングチャンピオンシップの競技者を使用した。 同様にマクギカンおよびウィルソン(1996年)は、最大スモウおよび従来のデッドリフトの運動学において報告をしているが、床反力ないし出力は測定していなかった。彼らは地元のニュージーランドパワーリフティングチャンピオンシップの競技者を被験者として使用した。 エスカミーリャ(2000年)は、最大スモウおよび従来のデッドリフトの運動学的データを基にモデルを作り出したが、床反力ないし出力は報告していなかった。彼らは全米マスター選手権において競技している被験者を使用した。 エスカミーリャ(2001年)は、同様の方法を用い、1999年スペシャルオリンピックゲームにおいて競技を行っていた被験者に対し、最大スモウおよび従来のデッドリフトの別の研究を行った。 研究所の環境において、従来のもしくはスモウデッドリフトにおける関節モーメントを調査した研究は、明らかに少数派である。スウィントンおよびその他(2011年)によるこの研究はまさにそれである。さらにその研究では、従来のデッドリフト、およびヘックスバーデッドリフトの間の床反力、パワー、関節モーメントが比較されている。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、19名の若いパワーリフティング競技者たちを集め、管理された環境において最大下ストレートバー、およびヘックスバーデッドリフトを行わせた。被験者は最初に彼らの1RMをテストし、その後10%ずつ増加させながら1RMの10-80%において最大下デットリフトを行った。パワーリフターがこれらのリフトを行っている際、研究者たちはビデオカメラおよびモーションキャプチャーソフトウェアを使用し、3次元における関節角度に関する情報を記録した。研究者たちはまた、フォースプレートを使用し、床反力に関する情報を記録した。これは彼らが全体のシステムに対する力およびパワー、また個々の関節モーメントを計算することを可能にした。 *** 何が起こったのか? 被験者の特性および1RMテスト 研究者たちは、被験者の平均年齢は30.2 ± 5.6であり、平均体重は114.5 ± 22.3kgであったと報告している。彼らは、パワーリフターたちのストレートデッドリフトにおける平均1RMは244.5 ± 39.5kgであり、ヘックスバーデッドリフトにおける平均1RMは265.0 ± 41.8kgであったと記録している。彼らはストレートバーおよびヘックスバーデッドリフトにおける1RMの間の差違は有意であったと記述している。 デッドリフトの際の加速に費やした時間 リフトの際に加速に費やした時間は、トレーニング効果の程度を知るための重要な測定値である。加速に費やした時間は、バーに対し力を発揮するために費やした時間である。研究者たちは、1RMの80%を除いては、ストレートバーおよびヘックスバーデッドリフトの間に、加速に費やした時間における有意な差違はなかったということを発見している。1RMの80%においては、下記のグラフで示されているように、パワーリフターはストレートバーデッドリフトを行っている際と比較し、ヘックスバーデッドリフトを行っている際により長い時間を加速に費やしている。 デッドリフトの際の速度およびパワー 研究者たちはストレートバーおよびヘックスバーデッドリフトの際のバー速度は、1RMの40-80%の間において有意に異なっていたということを発見している。下記のグラフに示されているように、ヘックスバーデッドリフトの際のバー速度は、ストレートバーデッドリフトの際と比較しより速かった。 研究者たちは同様に、主にバー速度増加の結果として、1RMの30-80%の間での出力に有意な差違があったということを発見している。下記のグラフに示されているように、ヘックスバーデッドリフトはこの範囲においてより高い出力を示していた。 更にヘックスバーデッドリフトはストレートバーデッドリフトと比較し、異なる負荷において出力のピークを示していた。研究者たちは、ヘックスバーにおけるピークパワーは4,388および4,872Wに達し、ストレートバーのバリエーションではそれぞれ6,049および6,145Wという高い値に達したということを報告している。オリンピックウェイトリフティングバリエーションに対しても同様の値が報告されている。例えば、ウィンチェスター(2005年)およびコーミー(2007年)はパワークリーンにおいて、それぞれ4,230および4,900Wという最大ピークパワーの値を報告している。最後に研究者たちは、最大パワーはストレートバーデッドリフトでは1RMの30%において達し、ヘックスバーデッドリフトでは1RMの40%において達したということを記述している。スクワットにおけるパワーのための最適な負荷を調査した研究が、わずかにより高い比率(例:50-60%)を発見しており、またヘックスバーデッドリフトはよりスクワットの動作に近いため、これは興味深いことである。

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スプリントのためのレジステッドスプリントトレーニング パート2/2

メタ分析 趣味としてトレーニングを行うアスリート 少数のメタ分析もしくは系統的レビューが、スプリントパフォーマンスに対するレジステッドスプリントランニングトレーニングの有益性を分析している。これは比較的新しいトレーニング方法であり、レジスタンストレーニングのようなより伝統的なトレーニング方法と比較し、この分野における論文がほとんどないからであろう。ルンプおよびその他(2014年)は、趣味としてのアスリートにおける、スプリントパフォーマンス向上のための異なるトレーニング方法の影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らは、トレーニング方法を特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)、および非特異(プライオメトリック、レジスタンストレーニング、及びバリスティックトレーニング)へと分類した。彼らは、趣味としてのアスリートにおいて、スプリント速度を向上するために、特異および非特異両方のトレーニングは同様に効果的であったと記述している。これは、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいては、レジステッドスプリントランニングトレーニングは、スプリントパフォーマンスを向上するために効果的なようであるということを示している。しかしながらこのメタ分析は、全ての確認された研究が、全体の効果規模にまとめるために適した形式でデータを提示していたわけではなかったという点で制限があった。これらの研究がこの情報を開示していたら、異なる結果が観察されていたかもしれない。また、「趣味としてのアスリート」において行われたと分類された多くの研究は、体育学部の学生において行われており、彼らは全員、あるレベルにおいて競技アスリートであったという詳細が明確にはされていなかった。ゆえにルンプおよびその他(2014年)による調査のこの部分のメタ分析は、比較的トレーニングされていないグループを含んでいた可能性がある。 高度にトレーニングされたアスリート 上記のようにスプリントランニングトレーニングは、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいて、スプリント能力を向上することが可能である。高度にトレーニングされたアスリートにおいても同様であるが、このグループはより多くの恩恵を受けるかもしれない。ルンプおよびその他(2014年)は、高度にトレーニングされたアスリートにおける、スプリントパフォーマンスに対する様々なトレーニングタイプの影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らはトレーニング方法を、特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)および非特異(プライオメトリックス、レジスタンストレーニング、そしてバリスティックトレーニング)に分類した。彼らは、特異および非特異な両方のトレーニング方法は効果的ではあるが、特異性をもつものがより効果的なようであるということを発見している。彼らは、高度にトレーニングされたアスリートにおいては、既に筋力、パワー共に発達した基板を持ち、これは追加の非特異なトレーニングの方法によって更に向上しなかった可能性があると示唆している。 高度にトレーニングされたアスリートにおける、スプリント速度に対するレジステッドスプリントの影響 研究選択基準 集団 – 高度にトレーニングされた成人アスリートのみ 介入 – レジステッドスプリントランニングトレーニングのみ 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、もしくはノートレーニングコントロール 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると認識された:スピンクス(2007年)、ハリソン(2009年)、クラーク(2010年)、アップトン(2011年)、アルカラス(2012年)ウエスト(2013年)、ルバーゲット(2015年)。ほぼ全ての研究が、レジステッドスプリントランニングトレーニングは、短距離スプリントテストにおける高度にトレーニングされた個人のパフォーマンスを向上したと報告している。なぜ少数の研究において向上がみられないのかは、明確ではない。 趣味としてのアスリートにおける、スプリント速度に対するレジステッドスプリントの影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う成人アスリートのみ 介入 – レジステッドスプリントランニングトレーニング 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、もしくはノートレーニングコントロール 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:ザフェリディス(2005年)、クリステンセン(2006年)、マイヤー(2007年)、ロッキー(2012年)、カワモリ(2013年)、バケローメナ(2014年)。ほぼ全ての研究は、レジステッドスプリントランニングトレーニングは短距離スプリントテストにおいて、趣味としてトレーニングを行う個人のパフォーマンスを向上するということを報告している。なぜ少数の研究において向上がみられないのかは、明確ではない。 レジステッドスプリントの際の、スプリント速度に対する負荷の影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングされた成人アスリート 介入 – 2つ以上の異なる負荷におけるレジステッドスプリントランニングトレーニング 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、ノートレーニングコントロール、および異なる負荷におけるレジステッドスプリントランニングトレーニング 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:カワモリおよびその他(2013年)、バケローメナおよびその他(2014年)。両方の研究は、異なる負荷におけるソリ牽引走はスプリントランニング能力を同様に向上したということを発見している。より高負荷の使用がスプリントパフォーマンスに悪影響であるという兆候は存在しなかった。これは、高負荷におけるソリ牽引走は動作パターンを変化してしまうため、スプリント能力を向上することは不可能であるという一般の信念とは対比している。 スプリントに関する結論 様々な方法(ソリ、ゴムコード、シュート、負荷付きベスト)そして、低負荷、高負荷の両方を使用したレジステッドスプリントランニングトレーニングは、アスリートにおけるスプリントパフォーマンスを向上させるために効果的なようである。高度にトレーニングされたアスリートは、より特異でない方法と比較して、レジステッドスプリントレーニングからより恩恵を受ける可能性があり、一方趣味としてトレーニングを行うアスリートは、特異および非特異な方法から同様に恩恵を受ける可能性がある。 短期的には、レジステッドスプリントランニングは、無負荷のスプリントランニングに比べ、相当狭い歩幅(およびわずかに低い歩数頻度)を含み、また、より長い接地時間およびより大きな上体の前傾を含んでいる。より高い負荷は低負荷と比較し、動作パターンを更に変化させるようであるが、長期の結果には影響を及ぼさないようである。

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スプリントのためのレジステッドスプリントトレーニング パート1/2

目的 この記事は、趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングを行う成人アスリートのいずれかにおいて、(ゴムバンドを使用する、もしくはソリを牽引する)レジステッドスプリントは、スプリントスピードを向上するためにどの程度効果的であるかということを堤示している。 背景 序論 レジステッドスプリントトレーニングは、追加の負荷を伴うスプリントに関わるスプリント速度を向上するための比較的新しいトレーニング方法である。負荷は垂直方向(負荷付きベストを使用)もしくは水平方向(ゴムバンドの使用もしくは負荷付きソリを牽引)のどちらかである。パラシュート(アルカラスおよびその他、2008年)滑車システム(クリステンセンおよびその他、2006年)、ゴムバンド(メイヤーおよびその他、2007年)および負荷付きベルトもしくはベスト(アルカラスおよびその他、2008年、クローニンおよびその他)のような他の負荷の形も評価されてはいるが、最も一般的に調査されるレジステッドスプリントトレーニングの形はソリであり、ほとんどの短期および長期の実験において使用されている。レジステッドスプリントの総説を行う研究者たちは以前に、レジステッドスプリントはスプリント速度を向上するために効果的ではあるが、従来のスプリントトレーニングに比べより効果的であるわけではないという結論に至っている(ヒロマーリス、2012年)。 レジステッドスプリントの運動学に対する影響 序論 一部のコーチは、レジステッドスプリントランニング(特に高負荷を使用したもの)はスプリント技術に悪影響を及ぼすため、スプリントパフォーマンスを向上させないようであると示唆している(ラブリエンコおよびその他、1990年、ポーレット、1993年、ジャカルスキー、1998年)。それゆえ多くの研究者たちが、レジステッドスプリントランニングが実際に動作パターンを大幅に変化させるのかどうかに関して調査を行っている。(ラゼルターおよびその他、1995年、ロッキーおよびその他、2003年、マレーおよびその他、2005年、アルカラスおよびその他、2008年、クローニンおよびその他、2008年) 歩幅および歩数頻度に対する影響 一般的にレジステッドスプリントランニングは、いかなる負荷においても歩幅の減少、および潜在的には歩数頻度の減少を引き起こすようである。概してそのような減少は、負荷レベルの増加(通常はソリ負荷の増加)と共に増すようである。初期の研究においてラゼルターおよびその他(1995年)は、トレーニングされている女性スプリンターにおいて、様々な負荷におけるソリ牽引走の影響を調査した。全ての負荷は歩幅および歩数頻度の減少を引き起こし、その減少は負荷の増加と共に増していた。ロッキーおよびその他は(2003年)その後、男性スポーツ選手において、体重の12.6%—32.2%の負荷の影響を調査した。彼らはラゼルターおよびその他(1995年)と同様の結果を発見している。歩幅のみが負荷の増加と共により減少していたが、全ての負荷は歩幅および歩数頻度の減少を引き起こしていた。コーンおよびクヌッドソン(2003年)、マレーおよびその他(2005年)、マウルダー(2008年)らは全員、レジステッドスプリントランニングは(負荷と方法の範囲により)歩幅の減少にはつながるが、歩数頻度の減少にはつながらないということを発見している。クローニンおよびその他(2008年)は同様に、歩幅および歩数頻度の両方はレジステッドスプリントランニングにより減少するが、歩数頻度に比べ、歩幅はより大幅に減少するということを発見している。アルカラスおよびその他(2008年)は、歩幅と歩数頻度両方の減少を発見している。 パラメーターに対する影響 レジステッドスプリントランニングは、スプリント動作パターンおける他の側面の範囲を変化させるようであり、これらの変化は通常、高負荷においてより顕著であるようである。動作パターンにおいてよく見られる変化は、接地時間の増加および上体の前傾の増加である。ラゼルターおよびその他(1995年)は、トレーニングされた女性スプリンターにおいて、2.5、5.0、10.0Kgの負荷におけるソリ牽引走の、動作パターンに対する影響を調査した。最重量の負荷のみが、接地時間および上体の前傾における大幅な増加、また接地時における股関節角度の変化を引き起こした。後にロッキーおよびその他(2003年)は、男性陸上競技選手において、体重の12.6%および32.2%の負荷の影響を調査している。この場合、両方の負荷ともに、接地時間の増加、および上体の前傾の大幅な増加を引き起こしたが、負荷の増加と共に長くなったのは接地時間のみであった。クローニンおよびその他(2008年)もまた、レジステッドスプリントランニングの際の接地時間および上体の前傾の増加を観察しており、アルカラスおよびその他(2008年)も同様に、上体の前傾の増加を発見している。一方、マウルダーおよびその他(2008年)は調査を行ったが、ソリ牽引走において使用された負荷の範囲が体重の20%までではあったが、レジステッドスプリントランニングを使用した結果としての、接地時間におけるいかなる変化も観察しなかった。 レジステッドスプリントランニングの動力学に対する影響 レジステッドスプリントランニングの動力学に対する急性の影響は、少数の短期研究において調査されているが、全ての研究(マルチネス-バレンシアおよびその他、2013年、オッコネン、2013年、アンドレおよびその他、2013年、コトルおよびその他、2014年、カワモリおよびその他、2014年)は問題に対し非常に異なるアプローチを取っていた。オッコネンおよびハッキネン(2013年)は、ブロックスプリントスタートの動力学と、ソリ牽引走、および選択された種類のスクワットエクササイズの動力学を比較した。彼らは、ソリ牽引走、およびカウンタームーブメントジャンプは、ブロックスプリントスタートに対する速度および動作における特異性を最も示していたということを発見している。コトルおよびその他(2014年)は、異なる負荷におけるソリ牽引走と、スプリントスタートの間の推進床反力を比較した。彼らは、推進床反力により測定した場合、スプリントスタートのための有益なトレーニング効果を得るためには、体重の20%の負荷で十分であるということを発見している。カワモリおよびその他(2014年)は、短距離スプリント(5m)の際の、無負荷および体重の10%または30%の負荷のソリにおける水平床反力を比較した。短距離スプリントの際、水平床反力を増加させるためには最重量負荷のみで十分であった。これらの発見は、ソリ牽引走は、短距離スプリントおよびブロックスタートに対しての特異なエクササイズなようであり、特に加速段階においてスプリントのために重要であると考えられている、アスリートの水平力を生み出す能力を向上させるために効果的であるかもしれないということを示している。 動作のメカニズム スプリントランニングは、スプリント速度を向上させるために非常に効果的なトレーニング方法として、ほぼ確実にオリンピックゲームの開始以来、アスリートやコーチにより広く認知されている。上記のように、スプリントランニングトレーニングは、多数の異なるメカニズムによりスプリント速度を向上するようであるが、主にスプリントランニングの動作における、速度特有の力生成およびより優れた運動協調を増進するようである。過去数十年間、レジスタンストレーニングは、スプリント速度を向上するためのトレーニングプログラムに、一般的に含まれている。レジスタンストレーニングは、その低速における力生成を向上する能力により効果的であり、また、本来筋肉に備わっている力対速度の関係により、より高速における力生成能力を向上する。意外にも、スプリントとレジスタンストレーニング両方の組み合わせは、ここ数年で、アスレチック開発プログラムへ導入されているのみであった。しかし、これは基本的にレジスタンストレーニングのより特異な形であるだけであり、単にその力生成を向上する能力により効果的である可能性が非常に高い。

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スプリントのためのプライオメトリックトレーニング パート2/2

メタ分析 趣味としてトレーニングを行うアスリート 序論 プライオメトリックスは、スプリント速度を向上するために広く調査されているため、様々な研究のメタ分析が可能である。ルンプおよびその他(2014年)は、趣味としてのアスリートにおける、スプリントパフォーマンス向上のための異なるトレーニング方法の影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らは、トレーニング方法を特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)、および非特異(プライオメトリック、レジスタンストレーニング、及びバリスティックトレーニング)へと分類した。彼らは、この集団において、スプリント速度を向上するために、特異および非特異両方のトレーニングは同様に効果的であったということを発見している。さらに彼らは、プライオメトリックスは(レジスタンストレーニングやバリスティックトレーニングを含む)全ての非特異な方法の中でも最も効果的であったということを発見している。さらに、サエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、プライオメトリックトレーニングの効果を評価するメタ分析を行ったが、この調査はトレーニングされていない個人とトレーニングされた個人の両方において行われており、トレーニングされた被験者およびアスリートに対するサブグループ分析が報告されていなかった。また、トレーニング経験の程度は、研究者により正式に調査されておらず、結果の不均一性に貢献していた。ゆえに、アスリートのためにこれらの研究結果から強い結論を引き出すには慎重である必要がある。とはいえ、このメタ分析において、下記に提示してあるように、サエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、趣味としてトレーニングを行うアスリートに関連する可能性のある、いくつかの興味深い研究結果を報告している。 プライオメトリックスの影響 最初にサエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、プライオメトリックスは、トレーニングされている個人、およびされていない個人の両方において、確かにスプリントパフォーマンスを向上するという結論を出した。サブグループ分析の実行も、含まれていた被験者の経験のレベルから生じた異質性の分析も無かったが、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおける影響は、より具体的なアスレチック集団において、より明確に定義されたメタ分析である他の入手可能な文献の総説から確認することができる。(例:ルンプおよびその他、2014年)プライオメトリックスと他の方法の間の比較は下記において論じられている。 プライオメトリックスの用量反応 次にサエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、トレーニングされている、およびされていない個人の両方において、スプリント能力を向上するためにプライオメトリックスを使用することは用量反応であるという結論に至り、過不足がある場合と比較し、適正な用量も適用することは、より有意に優れていると提議した。彼らは、2週間でおおよそ3回のセッション、1セッションにつき80回以上のジャンプが最適な用量であると提議している。これらの研究結果は、臨床試験によりある程度支持されている。これもまたトレーニングされていない被験者のみにおいて行われてはいたが(サエス・ヴィラリアルおよびその他、2008年)、1週間に2セッション、1セッションにつき60回のジャンプが最適な量であると発見されていた。これらの発見は、幅広い対象者全般に確固としているように見えるが、趣味としてトレーニングを行う成人に関しての正確な用量反応は明確ではない。 プライオメトリックスの際のエクササイズ選択 3番目にサエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、トレーニングされている個人、およびされていない個人の両方において、プライオメトリックスの際のエクササイズ選択は重要であると結論付けた。特に彼らは、様々な異なるプライオメトリックス、もしくは単にスクワットジャンプおよびドロップジャンプの組み合わせのどちらかを使用することは、単独のスクワットジャンプもしくはドロップジャンプのみの使用と比較し、より大きな影響を及ぼすということを発見している。これに対する正確な理由は明確ではないが、それぞれのエクササイズ選択によりトレーニングされる質の差違と関係があるかもしれない。さらに、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいても同様の影響が観察されるかどうかは明確ではない。 高度にトレーニングされたアスリート 上記のようにメタ分析は、プライオメトリックスは、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいて、明確にスプリント能力を向上することが可能であるということを報告している。高度にトレーニングされたアスリートにおいては明確さに欠ける。ルンプおよびその他(2014年)は、高度にトレーニングされたアスリートにおける、スプリントパフォーマンスに対する様々なトレーニングタイプの影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らはトレーニング方法を、特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)および非特異(プライオメトリックス、レジスタンストレーニング、そしてバリスティックトレーニング)に分類した。彼らは、特異および非特異な両方のトレーニング方法は効果的であるということを発見している。しかし彼らは、趣味としてトレーニングを行うアスリートと比較し、高度にトレーニングされたアスリートに対しては、プライオメトリックスのような非特異な方法は効果が低く、(スプリントもしくはレジステッドスプリントのような)より特異な方法の方がより良いということを記述している。彼らは、高度にトレーニングされたアスリートにおいては、既に筋力、パワー共に発達した基板を持ち、これは、追加のプライオメトリックスにより更に向上しなかったことに起因している可能性があると示唆している。 アスリートにおけるプライオメトリックスのスプリント速度への影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングされた成人アスリート 介入 – プライオメトリックス 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、ノートレーニングコントロール 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:ウィルソン(1993年)、ワグナー(1997年)、リマー(2000年)、キメラ(2004年)、ムーア(2005年)レイメント(2006年)、ドッド(2007年)、インペリゼリ(2008年)、トーマス(2009年)、シェリー(2010a年)、セダーノ(2011年)、アラジ(2011年)、ナカムラ(2012年)、ロッキー(2012年)、シェリー(2014年)、ブリット(2014年)。これらの研究のほとんどは、プライオメトリックスは、アスリートにおけるスプリントパフォーマンスを向上するということを発見している。使用されたプライオメトリックスの種類は、従来のデプスジャンプからハードルジャンプおよび標準のカウンタームーブメントジャンプにまで及んでいた。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4006字

スプリントのためのプライオメトリックトレーニング パート1/2

目的 この記事は、趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングを行う成人アスリートのいずれかにおいて、プライオメトリックスは、スプリントスピードを向上するためにどの程度効果的であるかということを提示している。 背景 序論 スプリントとの関連において、プライオメトリックスは、伸張・短縮サイクルを含む爆発的な下半身の複合動作である(マルコヴィッチおよびミクリック2010年による論説を参照)。それらは常に一般的に無負荷もしくは非常に低い負荷にて行われており、そこがバリスティックレジスタンストレーニングとの相違点である。周知のように、「プライオメトリックス」という言葉は最初、ロシアのジャンプコーチ、ベルコシャンスキーにより広められた。ベルコシャンスキーは、ジャンプ練習とレジスタンストレーニングから成る当時の標準の方法を使用し、既に有意な成果を得たアスリートのジャンプ能力を向上する方法を探究したいと考えた。ベルコシャンスキーは、短い接地時間と、三段跳びにおけるよりよいパフォーマンスとの間に相関関係があるらしいことから、これは、より高い剛性(もしくは、弾性エネルギーを貯蔵し、放出するより優れた能力)は、ジャンプ能力を向上するための鍵であり得ると示唆している可能性があると結論付けた。ゆえに彼は、エキセントリック筋収縮動作からコンセントリック筋収縮動作へのより早い切り替えができる能力を向上し、接地時間を短縮するために(ファッキオーニ2001年による論説を参照)、彼らのアスリートに対しデプスジャンプの使用を開始した。 幾人かのコーチたちは未だこのような観点からプライオメトリックスを考えているが、現代の文献における使用のされ方は大幅に変化し、その意味はいくらか広がっている。 動作のメカニズム 序論 スプリントは、エキセントリックおよびコンセントリック筋収縮動作を含んでいるため、ランニングの際の最大力を生成する能力もまた、伸張・短縮サイクルおよび下半身の剛性の作用に依存している。多くの場合、そのようなプライオメトリックスは、筋力とパワー、もしくはその他関連のある筋力の高速表現の質を橋渡しするための鍵であると述べられている(例として、マクリーニー、2005年による論説を参照)が、これがどのように正確に介在しているのかは明確ではない。それはベルコシャンスキーが予測したように、剛性の変化により介在しているのかもしれない。あるいは、高速エキセントリックおよびコンセントリック筋収縮の際の、弾性エネルギーを貯蔵、放出するための能力の向上を引き起こす、他の生理的な適応が起こるのかもしれない。 速度および加速度の影響 スプリントの速度、およびアスリートが加速しているか否かが、弾性エネルギーの貯蔵および・もしくは剛性の程度に影響を及ぼす可能性があるということは、スプリントパフォーマンスにとって重要なことである。速度に関しカヴァーニャ(2006年)は、スプリントの遊脚相終期における、股関節伸筋、および膝関節屈筋の伸張速度の増加は、速度の上昇と共に増加するということを発見している。これは、筋腱単位の弾性要素は、より速いランニング速度において力生成により貢献すると示唆している。ゆえに弾性エネルギー貯蔵の向上を助けるトレーニング方法は、低速に比べ、高速において、よりいっそうスプリントパフォーマンスの向上を助ける可能性があると期待できるかもしれない。さらにロバート(2002年)は、いくつかの動物実験が、一定の速度でのランニングの際、腱が順次に大幅に長さを変化させている間、筋肉はわずかに長さを変えるが、大体が等尺性に収縮していると報告しているということを発見している。これは、コンセントリック収縮において筋肉が大幅に短縮する加速走とは大きく異なっており、筋腱単位の弾性要素は、加速スプリントと比較し、一定速度のスプリントにおいてより力生成に貢献するということを示唆している。ゆえに、弾性エネルギー貯蔵を向上することを助長するトレーニング方法は、加速スプリントの際と比較し、最大速度スプリントの際によりいっそうスプリントパフォーマンスを向上する助けになる可能性があると期待できるかもしれない。 ドロップジャンプの有益な影響 プライオメトリックスが効果的である方法のメカニズムに関する現在の理解から、プライオメトリックスは最大速度スプリントに対し最も効果的であろうということを前提とすると、ある研究が、ドロップジャンプの高さは、様々な水平および垂直ジャンプテストの中においても、最大スプリント速度を予測する最も効果的な方法であると報告している(ビサスおよびハーヴェネティス、2008年、ケールおよびその他、2009年、マッカデイおよびその他、2010年)のは、興味深いことである。ドロップジャンプは、剛性の増加により、弾性エネルギー貯蔵を増幅し、反応性の高い筋力を向上する最も効果的な方法であると信じられている。バランスのために、他のある研究が、ドロップジャンプのパフォーマンスはスプリントパフォーマンスと強い相関関係があるわけではないということを発見している(例:サライおよびマルコヴィッチ、2011年)ということに留意することは重要なことである。またいくつかの研究は、水平ジャンプはスプリントパフォーマンスと高い相関関係があり(例:ホルムおよびその他、2008年、ハドギンスおよびその他、2012年)、垂直跳びと比較し、スプリント能力のよりよい予測因子である(例:マウルダーおよびクローニン、2005年、メイランおよびその他、2009年、ハビビおよびその他、2010年、ロビンズ、2012年、ロビンズおよびヤング、2012年)ということを発見していることも注目すべきことである。全体的には、ドロップジャンプは、接地時のエキセントリック段階において貯蔵されるエネルギーの量の増加により、最大スプリント速度を上昇させるために効果的なトレーニング方法であるようである。

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スプリントの生体力学:歩幅および歩数頻度 パート2/2

歩幅および歩数頻度の相互関係 速度の影響 速度は、歩幅、歩数頻度、およびスプリント速度の間を結び付ける関係を決定する重要な役割をはたしているかもしれないと提議されている。ヌメラおよびその他(2007年)は、4m/sから最速スプリントまで8つの異なるスピードの範囲にわたり、25名の持久系アスリートにおける歩幅および歩数頻度を記録した。彼らは、7m/sまでの速度の上昇は、歩幅および歩数頻度の両方を増加することにより達成されるが、7m/s以上においては歩数頻度のみが単独で役割を果たしているということを発見している。同様に筋骨格系のモデリング研究において、ドーンおよびその他(2012年)は、スプリント速度が上昇するに従い、歩幅は7m/sまで速度を上昇するための主なメカニズムであるが、その後変化が起こり、歩数頻度がスプリント速度を上昇するための主なメカニズムとなるということを示している。 個体差の影響 個体差は重要であり、歩幅および歩数頻度の様々な組み合わせを通して、ワールドクラスの速度を達成することが可能かもしれないことは、確かなことであるようである。サロおよびその他(2011年)は、公開されているテレビ放映から、52名の男性エリートレベルにおける100mレースのビデオ映像をレビューし、国際陸上競技連盟(IAFF)のウェブサイトから彼らのタイムを得ることにより、世界トップレベルの100mスプリンターの歩幅および歩数頻度を調査した。幾人かの陸上競技エリート選手のパフォーマンスは、より歩幅に依存しており、一方その他の選手は歩数頻度により依存しており、一部の選手はどちらの変数に対する明白な依存も示していなかった。テイラーおよびベネキ(2012年)は、2009年の世界陸上大会決勝100mにおける上位3名のアスリートにおいて、同様の発見を報告している。60-80mのスプリットにおいて、ウサイン・ボルトは最高速度を示していたにもかかわらず、歩数頻度は最も低く、これは彼のより長い歩幅によるものであった。また、歩数頻度は3名のアスリートにより様々に異なっており、ウサイン・ボルトは4.49Hz、タイソン・ゲイは4.96Hz、アサファ・パウェルは4.74Hzであった。イトウおよびその他(2008年)は、2007年IAFF世界陸上大阪大会における100m決勝において、タイソン・ゲイおよびアサファ・パウェルの2名のアスリートを比較しており、同様の発見が報告されている。これらの発見は、歩幅もしくは歩数頻度が他方の要因を無効にしており、単一である場合、エリートレベルにおいては予期していた以上により広い範囲の歩幅や歩数頻度が存在するということを示唆している。長い脚を持つ背の高いアスリートは、長い歩幅と共に低い歩数頻度が適している傾向にあり、短い脚を持つ背の低いアスリートは、短い歩幅と共に高い歩数頻度が適している傾向にあるといったように、各個人の人体測定学に適する、歩幅および歩数頻度の最適な組み合わせがあるのかもしれない。 歩幅および歩数頻度を向上するためのトレーニング 歩幅 幾人かの研究者たちは、どのトレーニング方法が特に歩幅を向上するために最適であるか、ということを研究することに特化した調査を行った。ロッキーおよびその他(2012年)は、6週間にわたるスプリントトレーニング、レジスタンストレーニング、プライオメトリックス、もしくはレジステッドスプリントトレーニングの全てが、短距離スプリントにおける歩幅の有意な向上を生み出したと発見している。カワモリおよびその他(2013年)は、8週間にわたる、高負荷もしくは低負荷におけるソリ牽引走の、スプリント能力、歩幅、および歩数頻度に対する影響を比較した。高負荷を使用したソリ牽引グループでは、実際に約30%のスプリント速度の減少が起こり、低負荷におけるソリ牽引グループでは10%のスプリント速度の減少が起こった。トレーニングプログラム後、高負荷グループは8.1%歩幅が有意に増加したが、低負荷グループには有意な変化はなかった。興味深いことに、どちらのグループも歩数頻度は向上していた。最後に長期研究ではないが、メロおよびコミ(1994年)は、ホップ、ステップ、バウンドドリルの際の、短期の歩幅のパラメーターを調査した。彼らは、このケースにおいて長期の研究が必要であることは明白であるが、歩幅は、ホップ>ステップ>バウンド>スプリントの順により長く、そのようなドリルもまた歩幅を増加するために有益であるということを示唆している可能性があるということを報告している。 歩数頻度 幾人かの研究者たちは、特に歩幅を向上するためには、どのトレーニング方法が最適であるかということを調査するために特化した研究を行った。モリおよびその他(2007年)は、8週間にわたる高負荷および爆発的なレジスタンストレーニングの組み合わせは、スプリントの最初の3歩における歩数頻度を向上したということを発見している。カワモリおよびその他(2013年)は、負荷付きソリ牽引走の8週間にわたるプログラムの影響を調査した。高負荷もしくは低負荷でのソリ牽引グループのどちらも、歩数頻度は向上しなかった。メロおよびコミ(1986年)は、牽引によるオーバースピード走を調査し、歩数頻度の増加の結果としてスプリント速度の上昇が起こるということを発見している。同様にエベン(2008年)は、2.1,3.3,4.7,5.8,そして6.9度の下り傾斜におけるオーバースピードスプリントの速度を調査し、いくつかの傾斜はより速いスプリント速度を生み出したが、5.8度の傾斜がオーバースピード走に対し最適な傾斜であるということを発見している。最後に、パラディシオおよびクック(2001年)は、上りおよび下り傾斜における、ランニングの際に速度の上昇に貢献している要因を調査し、歩幅の変化が速度の変化に対する第一の貢献要因であるということを発見している。例えば、3度の下り傾斜において、速度は9.2%上昇し、歩幅は7%増加している。しかしながら下り傾斜ランニングの長期の介入後、6週間のトレーニング後の速度の上昇は、歩数頻度の増加が第一の貢献要因であるということを示している(パラディシスおよびクック、2006年)。 トレーニングの影響 個体差があるため、歩幅も歩数頻度のどちらも、全てのアスリートに対し重要な要因であるわけではないということが受け入れられていると想定すると、全ての個人には各自最適な歩幅と歩数頻度の組み合わせがあるということに繋がる。これを基にサロおよびその他(2011年)は、一部のアスリートは速度を上昇するためにより歩幅に依存する必要がある可能性があるため、高負荷トレーニングから恩恵を受けるようであり、一方他のアスリートはスピード上昇のために歩数頻度により依存している可能性があるため、脚の回転速度を向上することから恩恵を受けるようであると示唆している。しかしハンターおよびその他(2004b)は「アスリートの歩幅もしくは歩数頻度を増加するためにトレーニングする際、一方の要因の増加が、他方の要因を同様にもしくは大幅に減少させることにより「相殺」されていないよう、注意する必要がある」と述べている。上記のように、一方の要因の向上が他方の減少によって達成されている限り、スプリント速度の向上のないまま、歩幅もしくは歩数頻度を変化させることも十分にあり得ることである。さらに、個人を彼の強みもしくは弱点に応じてトレーニングすることがより有益であるかどうかは、現在のところ明確ではない。例えば、より優れた筋力をもつアスリートは、高負荷のトレーニング、もしくは高速の動作が大部分を占めるトレーニングを行うべきなのだろうか? スプリントに関する結論 スプリント速度は、歩幅および歩数頻度の産物である。歩幅および歩数頻度の様々な組み合わせにより、ワールドクラスの速度に達することは可能なようである。個人に最適な歩幅および歩数頻度の組み合わせの存在は、ある個人は歩幅を向上するためのトレーニングが必要である可能性があり、一方他の人たちは歩数頻度を向上するためのトレーニングが必要である可能性があるということを示唆している。 長期の研究は、スプリントトレーニング、レジスタンストレーニング、プライオメトリックス、そしてレジステッドスプリントトレーニングの全ては歩幅を増加することができるということを示している。歩幅を向上するための負荷付きソリ牽引走は、より高負荷において最も効果的であるようである。短期の研究は、ホップ、ステップ、もしくはバウンスドリルもまた、歩幅を向上するために有益である可能性があると示唆している。 長期の研究は、レジステッドスプリントトレーニングではなく、レジスタンストレーニングおよびオーバースピード(ダウンヒル)走により歩数頻度を増加することが可能であるということを示している。オーバースピード(ダウンヒル)走は5.8度の下り傾斜を使用する際に最も効果的であるようである。

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スプリントの生体力学:歩幅および歩数頻度 パート1/2

目的 この記事は、歩幅および歩数頻度に関する研究を提示している。 背景 序論 歩幅は1つの歩行周期において進む距離であり、100mの陸上短距離競技でのエリート陸上短距離選手における平均は、約2.3-2.4mである。これに対して歩数頻度は、1秒間に行われた歩数であり、Hzで表される。100mの陸上短距離競技での、エリート陸上短距離選手における歩数頻度は、平均して約4−5Hzである。ゆえにスプリント速度は歩幅と歩数頻度の産物である。歩幅もしくは歩数頻度のどちらか、または、その両方を変化させずにスプリント速度を変化することは不可能である。しかし、歩幅もしくは歩数頻度を変化させ、かつスプリント速度が変化しないことは、一方の要因における増加が、他方の同等で反対となる減少と適合している限り十分にあり得ることである。現在のところ、全ての人におけるスプリントパフォーマンスを決定するために、2つの要因のうちどちらがより重要であるのか、もしくは各個人に対し最適であるコンビネーションは単にひとつなのかどうか、ということは明確ではない。ある研究者たちは、個人差は重要である可能性があり、ワールドクラスの速度は、様々な歩幅と歩数頻度の組み合わせにおいて達することが可能であるのかもしれないと提議している。 歩幅とスプリント速度の関係 序論 ランニング速度の変化に伴う歩幅の変化の影響を分析するにはいくつかの方法がある。第一に歩幅は、個人のグループにより行われた異なる定速走行速度において測定することが可能である。第2に、また同様に、歩幅は個人のグループにおいて、加速スプリントのいくつかの段階において測定することが可能である。(これら両方のアプローチは「個人内」と呼ばれている。)歩幅とランニング速度の関係の性質を評価するために、相関関係を引き出すことは可能である。そのような相関関係は我々に、より高速のランニングはより長い歩幅を含んでいるか否かを伝えてくれる。第3に、歩幅は集団における個人の間で、最大スプリント速度において測定することが可能である(「個人間」と呼ばれている)。そこから、歩幅とランニング速度の関係の特性を評価するために、相関関係を引き出すことができる。これは我々に、より高速のランニングはより長い歩幅を表すのか否かを伝えてくれる。両方のアプローチは断面的であるため、より長い歩幅は、より高速のランニングの副産物であるのか、もしくは、より長い歩幅を使い走ることが可能であるということは、より速く走ることを可能にしているのかどうかを評価する助けにはならない。 個人内 各個人におけるランニング速度を比較した調査において、多くの研究者たちは、加速スプリントを行う際、歩幅は概してランニング速度の上昇と共に増加するということを発見している(ディベーレおよびその他、2013年、ナガハラおよびその他、2014年a、ナガハラおよびその他、2014年b)。更に研究者たちは、同じ個人のグループにおいて、異なるランニングスピードにおける歩幅を測定する際、ランニング速度の上昇と共に歩幅は増加するということを頻繁に観察している(メロおよびコミ、1986年、Kyröläinenおよびその他、2011年、ドーンおよびその他、2012年)。 個人間 個人間におけるランニング速度を比較した調査において、幾人かの研究者たちは、より大きな歩幅を示している個人は、より高速のランニング速度を示していたということを発見している(ハンターおよびその他、2004年b、ブログヘリおよびその他、2011年、ロッキーおよびその他、2013年)。しかしながら、他の研究者達はこの関係性の観察に成功をしていない(モリン及びその他、2012年)。ゆえに、大きな歩幅が、明白にスプリントランニングのパフォーマンスに優位であるか否かは明確ではない。 歩数頻度とスプリント速度の関係 序論 ランニング速度の変化に伴う歩数頻度の変化の影響を分析するためには、いくつかの方法が存在する。第1に、歩数頻度は、個人のグループにより行われた異なる定速ランニング速度において測定することが可能である。第2に、歩数頻度は、個人のグループの中で、加速スプリントのいくつかの段階において測定することが可能である(これら両方のアプローチは「個人内」と呼ばれる)。歩数頻度とランニング速度の関係の特性を評価するために、相関関係を引き出すことは可能である。そのような相関関係は我々に、より高速のランニングはより高い歩数頻度を含んでいるか否かを伝えてくれる。第3に、歩数頻度は集団における個人の間において、最速スプリント速度にて測定することが可能である(「個人間」と呼ばれる)。そこで、歩数頻度とランニング速度の関係の性質を評価するために、相関関係を引き出すことは可能である。これは我々に、より高速の走者はより高い歩数頻度を示しているのか否かを伝えてくれる。しかし両方のアプローチは断面的であるため、実のところはどちらも、より高い歩数頻度はより速いランニングの副産物であるのか、もしくはより高い歩数頻度を使って走ることができるということは、より速く走れるということであるのかということを評価する助けにはならない。 個人内 加速スプリント 個人内における、加速スプリントの際のランニング速度を比較する調査において、幾人かの研究者たちは、歩数頻度は最初の10m以降はスプリント速度の上昇に伴い大幅に増加するわけではないということを発見している(ナガハラおよびその他、2014年a、ナガハラおよびその他、2014年b)。にもかかわらず、高レベルの陸所短距離選手のトレーニングおよび競技におけるパフォーマンスを比較した際、オオツカおよびその他(2015年)は、競技におけるパフォーマンスの方がより高速であり、これは歩数頻度の増加の結果であり、歩幅の増加はなかったということを発見している。これは、その個人のランニング速度が、既に最大限もしくは最大限近くまで達している際、更にランニング速度を向上するための手段として歩数頻度を増加するということを示唆している。オオツカおよびその他(2015年)は、これは、アナエロビック運動の際、交感神経系活動の増加とそれに続くアドレナリンの放出が観察されているため(キンダーマンおよびその他1982年)、高い覚醒により引き起こされた可能性があり、筋力生成の向上と関連がある(フレンチおよびその他、2007年)と提議している。 定速走行 各個人における定速ランニング速度の異なる試験を比較した調査において、ほとんどの研究者たちは、歩数頻度は低速のランニング速度と比較し、より高速のランニング速度において大幅に高かったということを発見している(メロおよびコミ、1986年、Kyröläinenおよびその他1999年、Kyröläinenおよびその他2001年、ベリおよびその他、2001年、キヴィおよびその他2002年、ブリューゲリおよびその他、2011年、ドーンおよびその他、2012年)。これは同様に、すでに最高速度もしくは最高に近い速度においてランニングを行う際、個人はさらにスプリント速度を向上する方法として、歩数頻度を使用するということを示唆している。 個人間 幾人かの研究者たちは、個人間における歩数頻度およびスプリントパフォーマンスの間に有益な関係が存在すると報告している。(マンおよびハーマン、1985年、モリンおよびその他、2012年)マンおよびハーマン(1985年)は、オリンピック200mの際の1位、2位、8位の間の差違は、歩数頻度と有意な相関関係があったということを報告している。しかしながら、他の研究者たちはこの関係を発見していない。(ハンターおよびその他、2004年b、ブリューゲリおよびその他、2011年、ロッキーおよびその他、2013年)。ゆえに、1個人を他の個人と比較した場合、より高い歩数頻度が必ずしもより速いスプリントパフォーマンスと関係があるか否かは、現在のところ明確ではない。この関係性の欠如は、より長い脚を持つアスリートは低い歩数頻度を使用することが可能であるというように、人体測定学における差違により引き起こされているようである。これは、テイラーおよびベネキ(2012年)により提供された、2009年の世界陸上大会決勝100mの分析においてみることができる。彼らは、ウサイン・ボルトは60-80mのスプリットにおいてより速かったにもかかわらず、彼はタイソン・ゲイ(4.96Hz)およびアサファ・パウェル(4.74Hz)と比較し、最も低い歩数頻度 (4.49Hz)であり、これは彼の歩幅が長かったためであったということを観察している。

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