筋限界に至るまでのトレーニングは更なる筋肥大につながるか? パート2/2

筋力強化に対する筋限界の効果は何か? 下記のトレーニング研究は、様々な異なるアプローチを用い、同じエクササイズを筋限界に至らぬよう(もしくは少々の疲労程度まで)行った量を適合させたグループと比較して、筋限界(もしくは単に重度の疲労)に至るまでエクササイズを行ったグループの筋力への影響について調査している。 イスキエルド (2006年) – 研究者たちは身体的に活発な42名の男性において、11週間に渡るレジスタンストレーニングと、それに続く5週間の全く同じ最大筋力及びパワートレーニングを、限界に至るまで行うこと、もしくは限界に至らぬよう行うことによる効果を評価した。最初の11週間の段階では、研究者は、両方のグループが1RMのベンチプレスとスクワットにおいて同等の向上を示し、スクワットの際の最大レップにおいて同等の向上を示したが、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは、ベンチプレスの際の最大レップにおいてより大きな向上を示したということを発見した。しかしながら5週間のピーク段階では、限界にまで至らなかったグループが、下半身における下肢のより大きな筋出力を示し、ベンチプレスを行う際の最大レップにおいてもより大きな向上を示した。研究者たちは、限界に至るまでのトレーニングが筋持久力を高める可能性があるのに対し、限界にまで至らないトレーニングには最大筋力とパワーへの恩恵があるかもしれないと示唆している。 ドリンクウォーター (2006年) – 研究者たちは、エリートジュニアアスリートにおいて、6RMのベンチプレスと40キロでのベンチスローパワーに対する、レップの限界に至るまでのトレーニングの効果について評価した。2つのグループの被験者は、6週間に渡り週に3回のベンチプレストレーニングを同量行った。一方のグループは260秒毎に6レップを4セット行うことで、レップの限界に至るまでトレーニングを行い、他方のグループは113秒毎に3レップを8セット行うことにより、総合的には同量のレップ数ではあるが、限界にまでは至らぬようトレーニングを行った。研究者たちは、限界までトレーニングを行ったグループがレップの筋力とベンチスローのパワーの両方においてより大きな向上を示したことを発見した。 ロートン (2004年) – 研究者たちは、26名の男性エリートジュニアバスケ選手とサッカー選手における2つのトレーニング方法の影響について比較した。2つのグループにおいて被験者は、6週間に渡り6レップを4セット、もしくは3レップを8セットのベンチプレスを行った。より疲労度が大きかった6レップを4セット行ったグループは、3レップを8セット行ったグループ(4.9%)に比べ、6RMの筋力が著しく向上した(9.7%)が、パワーの向上に関しては2つのグループの間で著しい違いは無かった。 フォランド (2002年) – 研究者たちは、健康な23名の成人における2つのトレーニング方法の効果を比較した。一方のグループはセット間に30秒のレストを挟んで10レップを4セット(より大きな疲労のグループ)、他方のグループは各レップ間に30秒のレストをとりながら、40レップ(より少ない疲労のグループ)の両側ニーエクステンションマシーンを使用したトレーニングを、平均1RMの73%で週に3回行った。9週間に渡るトレーニングの後、研究者たちは、最大等尺性膝伸展筋力の測定において両方のグループで類似した向上が見られたということを発見した。 ルーニー (1994年) – 研究者たちは、量を適合させたプログラムの中において、42名の健康な被験者に対しセット内のレストが筋力に及ぼす影響を評価した。被験者たちは、レスト無しグループ、レストグループ、コントロールグループへと振り分けられた。2つのトレーニンググループは6週間に渡り、週に3回、6RMの負荷にて6-10回のカールを行うことにより上腕二頭筋のトレーニングを実施した。レスト無しグループは全てのレップをレスト無しで行い、レストグループは各レップ間に30秒のレストを入れた。研究者たちは、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは著しく大幅な筋力の増加を示したと発見している。しかしコントロールグループと比較すると両方のトレーニンググループともに、筋力は増加していた。 ショット (1995年) – 研究者たちは、7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く断続的な筋収縮(より少ない疲労のグループ)と長く継続的な筋収縮(より大きな疲労のグループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは、短い断続的な筋収縮よりも、長く継続的な筋収縮の方がより著しくMVICを向上させると発見した。 研究プロトコールと結果の評価基準のばらつきにより、結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らぬよう(もしくはより少ない疲労)トレーニングを行った際に比べ、限界まで(もしくはより大きな疲労)トレーニングを行った際の方が、ほとんどの測定値において、その筋力は、より大幅に向上しているようである。しかしながら、全ての研究が全ての筋力の測定値に対してこれを示しているわけではない。例えばフォランド(2002年)は、2つのトレーニング方法においてMVICの筋力に差異はないと報告しており、イスキエルド(2006年)は1RMの筋力に関する限りでは違いはないと発見している。 加えてドリンクウォーター(2007年)は、4x6,8x3,もしくは12x3(セットxレップ)のベンチプレスを週に3回、6週間に渡りトレーニングを行った22名のチームスポーツ選手において、限界を超えたトレーニングが限界に至るまでのトレーニングよりも優れた結果を生み出すかどうかを評価した。8x3のプログラムと比較し、4x6のプログラムにはより長いインターバルが含まれており、12x3のプログラムにはより多いトレーニング量が含まれていた。ゆえにこれら両方のプログラムは、望ましいレップ数を完了するためにより多くの強制的なレップを行うようデザインされていた。研究者たちは、レップの限界には達したものの、追加の強制的なレップも追加のセット量も、基本の8x3のプログラムに比べ、更に大きな筋力の獲得へは繋がらなかったということを発見した。 *** 実践的な意義は何か? ストレングスアスリートに対して ストレングスのアスリートに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことが、より筋力の増加につながり得るという根拠のあるエビデンスがある。しかし、限界までのトレーニングは回復に影響を及ぼし得ることから、各アスリートにふさわしい限度内で慎重に使われるべきである。 ストレングスアスリートとボディビルダーに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことは、より大きな筋肥大につながる可能性があるといういくつからの限られたエビデンスがある。しかしながら、おそらくトレーニング量がより重要な要素であるため、筋限界は回復が確実に行われることができる範囲で使われるべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3185字

コンペティションのための最善なテーパリング方法とは? パート1/2

コンペティションのためのテーパリングは、最近まで研究者によりあまり研究が成されていなかったという理由からか、科学というよりもむしろ芸術のように思われている。しかし現在は、テーパリングや、様々なタイプのアスリートにおいてパフォーマンスを最大に引き出すための計画に関する論文が数多く存在している。 この総説は、テーパリングに関する研究内容を理解するための有益な枠組みを提供する。最新の情報を提供するため、この総説には最近の系統的レビューからの結論も含むこととした。 研究論文: コンペティション前のテーパリング戦略に関する科学的基本原理、ムジカ&パディラ、スポーツ&サイエンス、メディスン&サイエンス2003年 背景 テーパリングとは、重要なコンペティション前の最終週において、激しいトレーニングにより蓄積された疲労の影響を減少するために、トレーニング量やトレーニング強度、もしくはその両方を減少させることである。 正しく行えば、様々な有益な生理的変化が起こり、著しいパフォーマンスの向上へとつながる。間違った方法で行うと有害となり得る。テーパリングの際に起こる生理的変化には下記のものが含まれる。 最大酸素摂取量の増加 (e.g. Banister, 1999 and Neary, 1992) 無酸素性作業閾値の上昇 (e.g. Zarkadas, 1995) 筋パワーの増加 (Johns, 1992) 酸化酵素の増加 (Neary, 1992) 筋グリコーゲンの増加 (Neary, 1992) ヘモグロビン値とヘマトクリット値の上昇 (Mujika, 1998 and Mujika, 2000) テストステロンの増加とコルチゾールの減少 (Mujika, 2000 and Mujika, 2002) 筋力の増加 (Martin, 1994) タイプIIa筋繊維のサイズ、強度、速度、パワーの増加 (Trappe, 2001) 睡眠の質の変化 (Taylor, 1997) 気分の変化 (Raglin, 1996) これらの生理的変化のほとんどは、テーパーの有益な効果に貢献すると考えられているが、それぞれの変数要素のカテゴリーが一般的に観察されるパフォーマンスの向上にどれほど貢献しているかは明らかではない。 テーパーの3つの主なタイプは、段階的なテーパー、直線形のテーパー、急激なテーパーである。段階的なテーパーにおいては急激なトレーニング仕事量(ワークアウトの量、強度、頻度の組み合わせ)の減少が起こる。直線形のテーパーでは、トレーニング仕事量が直線的に減少する。 急激なテーパーでは、仕事量は非直線形で減少し、テーパーの早い時期に仕事量が加速的に減少する。テーパーはトレーニング仕事量の減少速度によっても定義することができる。直線形の減少、急激な減少共に、仕事量の減少速度によりさらに調節することが可能である。 *** 評論家たちは何を発見したか? トレーニング強度を維持することの重要性 持久系アスリートに対して評論家たちは、トレーニングされている選手と (e.g. Hickson, 1985) されていない選手の (e.g. Shepley, 1992) 両方において、有酸素プログラム後の最大酸素摂取量向上を維持するためにはトレーニング強度を維持することが重要であると発見した。 ストレングス&パワーアスリートに対しては、かなり少数の研究しかなされてはいないが、強度を維持することによる効果は同様なようである (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 下記のグラフは、4週間に渡る少量で高強度のテーパリングによる、上半身と下半身の強度とパワーに対する有益な効果を示している。 研究者たちは、テーパーを行う際に強度を維持(もしくは増加)する重要な役割に対する様々なメカニズムを提案した。少量で高強度でのテーパーに関するこれらの要素には、全血液量、赤血球容積、クエン酸シンターゼ活動(酸化容量の指針)、筋グリコーゲン濃度、テストステロン値が含まれる (e.g. Shepley, 1992 and Mujika, 2002)。 この点において、テストステロンが垂直跳びのような下半身の爆発的なパフォーマンスと良好な相関関係にあるということは興味深い (e.g. Cardinale and Stone, 2002)。 *** トレーニング量を減少させることの重要性 評論家たちは、持久系アスリートにおいては、テーパーを通じてトレーニング量を減少させることはトレーニング量を加減するよりもパフォーマンスの向上に対して良いということを発見した。しかし、パフォーマンスを向上させるために必要であるトレーニング量の減少度合いに関しては、多少驚きがあるかもしれない。 トレーニングを積んでいる持久走の選手 (e.g. Houmard, 1990)と自転車競技の選手 (Rietjiens, 2002) において、50−70%のトレーニング量の減少はパフォーマンスを維持もしくは多少向上させるように思われるのに対し、約85%の減少はパフォーマンスの著しい向上につながるようである (Mujika, 2002)。 しかしながら、競技選手におけるテーパリングの効果についての後の系統的レビューとメタ分析において、最適なトレーニングの減少量は実際にはこれよりもかなり少なく、テーパーを行う前の量の41−60%である、とバスキット(2007年)が発見したことは注目すべきことである。 今までに行われたこれらの研究は中レベルや低レベルのトレーニング量との比較をしておらず、脱トレーニングとの比較しか行っていないため、ストレングス&パワーアスリートにおいてのトレーニング量減少の効果を評価するのは困難である (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2640字

コンペティションのための最善なテーパリング方法とは? パート2/2

評論家たちは何を発見したか?(続き) トレーニング頻度を維持することの重要性 評論家たちは、持久系のアスリートに対して有酸素トレーニングの適応は、テーパリング前の頻度の30−50%というかなり低い頻度で維持できることを報告した (e.g. Houmard, 1990)。しかしながら彼らは、それよりもかなり高い頻度でのトレーニングもまた、パフォーマンスの向上をもたらすと指摘している (e.g. Mujika, 2002)。 ストレングストレーニングを行う人において、レジスタンストレーニングの適応も同様に、テーパー前の値の33−67%というかなり低い頻度のトレーニングで維持できるようである (e.g. Graves, 1988)。しかしながら、この研究での被験者は高いレベルでのアスリートではなかったようである。 *** テーパーの期間を決定する際の重要な個体性 アスリートから頻繁に聞かれるテーパーに関する質問の一つは、テーパーの期間の長さである。評論家たちはこの期間に関する研究は限られていると観察している。さらにこれはアスリートによって個人差があるようである (e.g. Mujika, 1996)。 この総評には含まれていないが、後の研究では、エリートアスリートにおいて最適なトレーニングの減少特性はテーパー前に行っていたトレーニングの仕事量によって決まると発見されている (e.g. Mujika and Busso, 2008)。この研究から、無理をしすぎたトレーニングは通常のトレーニングよりもより長いテーパー期間を必要とすることがわかっている。しかし、この研究で確認された最適な期間は2−3週間であり、これはアスリートのテーパーを評価するための有益な指針となるかもしれない。 後の競技選手におけるテーパリングの効果に関する系統的レビューとメタ分析においてバスキット (2007) は、テーパーの有益な効果が発揮されるか、悪影響を回避するかの境界線は8−14日の期間であるということを発見した。 *** テーパーはどの程度パフォーマンスの向上を可能にするか? もちろん正しく行われたテーパーによるパフォーマンスの向上が微々たるものであれば、上記のポイントは興味をそそるものではない。しかし幸運なことにそうではなく、評論家は標準的なパフォーマンスの向上率は3%程(0.5-6.0%の範囲)であると示唆している。 後の系統的レビューとメタ分析においてバスキット (2007) は、競技選手を調査した27の選択された研究結果によると、パフォーマンスの向上率は-2.3%から8.9%の範囲であり、平均の向上率は2%であったと発見している。 これらの結果は魅力的ではないかもしれないが、2-3%の差は一般的には、持久系のスポーツにおいて表彰台に上がるか上がらないかの違いよりも大きいということに留意すべきである。(例として、トレウィン (2004) はオリンピックでの10名のトップ競泳選手において約0.6%の違いを発見している)これは選手が競技において戦うためには正しいテーパリングが必要不可欠であると示唆している。 *** 制限要素は何か? この総評の主な制限要素は、論文が異なるスポーツを基に整理されていなかったことである。ゆえに主に持久系スポーツに関しての研究が考察されていたが、スポーツよる区別がされておらず、ランニングの研究が自転車競技、スイミング、ロウイングに関する研究と一緒に報告されていた。さらに総評は、トレーニングされている人とされていない人によって行われた研究や、異なる力量のアスリートによって行われた研究を注意深く識別していないものであった。 *** 実践的な意義は何か? ストレングス&コンディショニングコーチに対して: テーパー中にトレーニング強度は落とすべきではない。むしろトレーニング強度を維持するか、もしくは増加するべきである。 テーパーの際、テーパー前の量の60%程の著しいトレーニング量の減少が必要である。 テーパー中にトレーニング頻度を減少させることは、パフォーマンスの維持に繋がるが、高いレベルでのトレーニング頻度を保つことは更なるパフォーマンスの向上につながる可能性がある。 テーパーの期間の長さは決定するのが困難であり、かなりの個人差がある可能性がある。また、アスリートがトレーニングをしすぎている場合にはより長くする必要があるかもしれない。しかしテーパーの期間としてはおおよそ2週間がよい指針とされている。 テーパーは正しく行えば、競技選手において平均2-3%程パフォーマンスを向上させることができ、これは、この集団においては大きな違いである。これは大切な競技の前にアスリートとコーチは非常に真剣にテーパーに取り組むべきであるということを示唆している。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2127字

ジャンプ能力と長距離走のパフォーマンスはどのような関係にあるか? パート1/2

ジャンプ能力とスプリントパフォーマンスでは筋力を発現させる能力が共通しているようであるため、ほとんどの場合、我々はその2つの良好な相関関係を期待している。 また一方、突き止め理解するのはとても困難ではあるものの、筋力と長距離走の能力の間にも関連がある。この研究は水平跳びの能力と5キロまでの長距離走の能力との間に良好な関係があることを示しているものである。 研究論文:ジャンプ能力と様々な距離のイベントにおけるランニングパフォーマンスの関係、ヒュージン、スキャフェンバーグ、トリプレット、マクブライド、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、出版前発行 *** 背景 ジャンプ能力とスプリント能力には相関関係があるか? ジャンプ能力とランニングパフォーマンスの関係を調査した以前の研究のほとんどは、100-300mの短距離走に焦点を置いていた。 これらの研究は、スプリントパフォーマンスとジャンプ能力の間に良好な相関関係を発見している。異なるタイプのジャンプとスプリントスピードの相関関係を示した主要な論文は下記のものである。 スクワットジャンプ (Chelley, 2010, Smirniotou, 2008) ドロップジャンプ (Kale, 2009, Barr, 2011, Bissas, 2008) カウンタームーブメントジャンプ (Vescovi, 2008, Young, 2011) スタンディングロングジャンプと三段跳び (Brechue, 2010) しかし、以前にジャンプ能力と長距離走のパフォーマンスの相関関係を調査した研究は無い。 *** ジャンプ能力が長距離走のパフォーマンスと相関関係にある可能性があるのは何故か? 一見奇妙に思えるかもしれないが、ジャンプ能力には長距離走の能力にも影響を及ぼすかもしれない側面があるという可能性がある。これは下記の研究で示されているようなパワーベースのトレーニング方法による長距離走のパフォーマンスの向上により示されている。 レジスタンス(Millet, 2002, Paavolainen, 1999, Kelly, 2008, Johnston, 1997, Ferrauti, 2010, Taipale, 2010, Støren, 2008 and Mikkola, 2007) プライオメトリック (Turner, 2003 and Spurrs, 2003) これらの研究のほとんどは、ストレングストレーニングやプライオメトリックトレーニングによる筋力の向上がより良いランニング効率(実測または含意)をもたらし、それがパフォーマンス向上へとつながると示唆している。 *** より優れた筋力が、いかにしてランニングパフォーマンスの向上へとつながるのか? 長距離走のパフォーマンス向上は、より良いランニング効率によって得られるようである。しかしながら、パワートレーニングがどのようにランニング効率を向上させ、ランニング能力を向上させるのかは、完全に明確ではない。ある理論では、より優れた筋力は各ストライドで使われる最大脚力の割合の低下につながるとされている。これはランニングの際に動員される運動単位数を減少させると考えられ、よってより効率的である可能性がある。 他の理論では、より優れた筋力は力発生率の増加を意味するとしている。これは、各ストライドでのより長い弛緩時間につながる。収縮した筋肉はその筋肉内の血流を妨げるため、より長い弛緩時間は、働いている筋肉内の血流を向上させ酸素と代謝基質へより多くアクセスできるということを意味する。これにより、疲労に至るまでの時間が延びるかもしれない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、水平三段跳によって評価されたジャンプ能力が様々な距離のランニングパフォーマンスと関係があるかどうかを調査した。三段跳は単に、立位で両脚での3回連続した水平跳びで実施された。評価対象となったランニングの距離は60、100、200、800、3000、5000mトラックのランニングイベントであった。彼らは、異なる距離を専門とするランナー達のベストタイムを集め、彼らの三段跳のパフォーマンスとの相互関係を比較した。 研究者たちは定期的に60−5000mのランニングイベントに参加している33名の陸上競技ランナーを集めた。ランナーは10名のスプリンター(男性5名、女性5名)、11名の中距離ランナー(男性6名、女性5名)、12名の長距離ランナー(男性8名、女性4名)から構成されおり、すべての被験者はNCAAディビジョンIの競技選手たちであった。60,100,200mのイベントにおいては2名のスプリンターを除いてすべての被験者の実際の競技でのタイムが使われ、同様に800,3000,5000mのイベントにおいては全ての中距離と長距離ランナーの実際の競技タイムが使われた。三段跳テストは研究所内で行われた。 *** 研究者たちはどのようにしてデータの相関関係を証明したか? 研究者たちは変数間の関係を確定するためにピアソンの相関係数を使用した。ピアソンの相関係数(rで示される)は変数間を直線関係で表しており、-1から1の範囲で構成されている。1という値はYが増加すると共にXが増加するというように全てのデータポイントが直線に沿って位置し、XとYの間に完璧な直線関係があるということを意味する。一方、-1という値はYが減少すると共にXが増加するというように全てのデータポイントが直線上にあることを意味する。 0という値は、変数の間に直線関係がないということを示唆する。1、0、もしくは-1に近い値は、明確な関係性があるのか、否定的な関係性があるのか、もしくは全く関係性がないのかを知らせてくれるため、研究者や我々のように研究論文を読む人にとっては貴重である。 *** 何が起こったのか? ジャンプ距離とスプリントタイムの相関関係 研究者たちは、水平三段跳テストとスプリンターたちの60mのタイムの相関関係が非常に高いことを発見した(r = 0.97)。彼らはまた、三段跳テストのパフォーマンスと100mと200mのタイムの相関関係も同様に高いことを発見した(それぞれにつき r = 1.00 and r = 0.97)。 *** ジャンプ距離と長距離走の相関関係 研究者たちは、ジャンプ距離と800mのタイムの相関関係は良好であり(r = 0.83)、ジャンプ距離と3000mと5000mのタイムの相関関係は中度から良好の間であるということを発見した(r = 0.72 and r = 0.71)。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2902字

ジャンプ能力と長距離走のパフォーマンスはどのような関係にあるか? パート2/2

研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、スプリントと5000mまでの長距離走のパフォーマンスは、共に三段跳テストによって得られた水平ジャンプの能力と相関関係があると結論付けた。ゆえに彼らは、スプリンター同様、中距離ランナー、長距離ランナー、に対しも、ストレングス&パワートレーニングが考慮されるべきであると示唆している。 *** 制限要素は何か? 三段跳びテストは、繰り返し行われるジャンプであるため、伸張・短縮サイクルが多大に関わっており、ジャンプパフォーマンスのどの側面が重要な要素であるのかを見つけるのはより困難である。単一の水平ジャンプとランニングパフォーマンスの相関関係、及び三段跳びテストと報告されたランニングパフォーマンスとの相関関係を調べていれば興味深かったであろう。 筋肉と腱の硬さはランニング効率と関連がある可能性があり、これは優れた三段跳びテストのパフォーマンが長距離ランナーにとって有利であるということの説明となるかもしれない。さらに、ランニングのタイムが三段跳びテストとは異なった時間に記録されているため、シーズン中のパフォーマンスの浮き沈みや、体重の変化、もしくはその他の要素が結果に影響をもたらした可能性がある。 *** 研究者たちは何故垂直跳びではなく水平跳びを調査したのか? 研究者たちが垂直跳びではなく水平跳びを調査することに決定したということは注目に値する。この決断には多大な背景があり、ここで簡単に説明することにしよう。 *** ほとんどの研究は何故水平跳びではなく垂直跳びを調査するのか? ジャンプ能力と短距離走のパフォーマンスを調査しているほとんどの研究が、垂直跳びに焦点を置いている。ランニングは水平動作であるため、これは直感に反しているように思われる。しかしほとんどの短距離走のコーチは、短距離走の補助的なトレーニングの多くに垂直方向の力を使っている。 これは、垂直の力が素早く地面を蹴るために最も重要であると信じられているためである。ゆえにレジスタンスエクササイズではスクワットとデッドリフトを行う傾向にあり、プライオメトリックエクササイズではカウンタームーブメントジャンプやドロップジャンプを行う傾向にある。その結果として、研究者が追随しているのである。 *** 水平力に焦点をおいたエクササイズはスプリンターにより適しているのだろうか? 幾人かの研究者たちは、より速いスピードに達するためには、垂直床反力よりも水平床反力の方が重要であると提案している。例:Mero (1986), Nilsson (1989), Kyröläinen (2001), Kuitunen (2002), Nummela (2007) & Brughelli (2011)。これは、ヒップスラストやケトルベルスイングのような水平方向のエクササイズがスプリントのパワーを生み出すことに優れている可能性があると示唆している。また同様に、垂直跳びの能力よりも水平ジャンプの方がスプリント能力をより予知できる可能性があると示唆している。 *** では、水平力を含むエクササイズは長距離ランナーにより適しているのだろうか? 水平力が同様に最良のランニング効率にとって重要であるかどうかは、明確ではない。Nummela(2007)は、ランニング効率は実際、床とのより短い接触時間と関連性があり、おそらくより関連があるのは、接地前のハムストリングスの硬さ、弾力性、もしくは運動前の高いレベルでのハムストリングスの活性化であろうと示唆している。それゆえ、水平のストレングス&パワーエクササイズが長距離ランナーにとって最適であるかを見定めるのは困難である。 *** キーポイントは何か? 短距離及び、5000mまでの長距離ランナーのパフォーマンスは、三段跳で示されたような水平跳びの能力と相関関係にある。ゆえにストレングス&パワートレーニングは、ほとんどの場合ランニング効率を向上することから、中距離から長距離のランナーには有益である可能性がある。 *** 実践的意義は何か? 長距離ランナーに対して 水平跳びテストと持久性のランニング能力の相関関係は非常に良く、以前の研究ではレジスタンストレーニングとプライオメトリックトレーニングがランニング効率を向上させると示しているため、長距離走のトレーニングルーティンに、少量の水平跳びと垂直跳びを組み込むことは適切であると思われる。 プライオメトリックトレーニングからの回復には時間がかかる可能性があるため、この種類のトレーニングは週に1-2回程度少量行うよう注意すべきである。高いレベルの力が加わるものや多大なエキセントリックの要素があるものは、疲労や筋損傷、痛みへとつながる可能性がある。よってアスリートはこの種のトレーニングを最低量から始めるのが理想的である。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2133字

スプリンター、オリンピックリフター、パワーリフターのストレングス特性はどのように異なるのか?

ストレングス&コンディショニングコーチは多くの場合、アスリートの筋力、パワー、スプリント能力を養うために陸上競技スプリンター、パワーリフター、オリンピックリフターによって使われているトレーニング方法を活用する。 しかしこれらのトレーニング方法は、どのような特性を養うのだろうか? パワーリフターやオリンピックリフター、もしくはスプリンターのようなトレーニングを行うと何が起きるのだろうか?それを解明する一つの方法は、これらのアスリートのストレングス&パワー特性を評価することである。この研究は遺伝性素因のコントロールは行っていないが、トレーニングがもたらす結果についての概要を与えてくれる。 研究論文: パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター間のストレングス&パワー特性の比較、マックブライド、トリプレットーマックブライド、デービー、ニュートン、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、1999年. *** 背景 パワーを生成する能力はスポーツパフォーマンスにおける主要な要素である。パワーは一般的にストレングスよりも重要であると考えられている。ゆえにアスリートのパワーを向上するために、ストレングス&コンディショニングコーチにより様々なトレーニング方法が使われてきた。そのようなプログラムは多くの場合、スプリンターのみならず、パワーリフターやオリンピックリフターのような純粋なストレングス&パワーアスリートのトレーニングプログラムからも取り入れられている。 しかし、そのような様々なトレーニング方法からもたらされる正確な結果は不明である。トレーニング方法の成果を評価するための興味深い方法の1つは、彼らのパフォーマンスを確認するために、純粋なストレングス&パワーアスリートが持つ資質を見ることである。この点においては、スクワットは下半身の筋力を評価する一般的な方法であり、ジャンプスクワットやカウンタームーブメントジャンプは下半身のパワーの一般的指標であり、いくつかのスポーツ動作とも一致する。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、多様に異なるストレングス&パワーアスリートのグループ(パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター)において、様々な負荷でのジャンプスクワットの能力を調査したいと考えた。これはこれらのタイプのアスリートのストレングス、パワー、スピードに対する異なる必要性を評価するためであった。 研究者たちは、パワーリフターは主に高負荷、低速でのレジスタンストレーニングを行い、オリンピックリフターは主に高負荷、高速でのレジスタンストレーニングを行い、スプリンターは高負荷、低速のレジスタンストレーニングと低負荷、高速のプライオメトリックトレーニングの両方を行っていると記述している。 ストレングス、パワー、スピードの標準的な定義が使用された。ストレングスは最大力産出と定義され、パワーは最大出力(パワー=力/時間)と定義され、スピードは最大速度を算出する能力と定義されている。 研究者たちは、期待通りに、パワーリフターは低速において高レベルの力を産出し、オリンピックリフターは高速において高レベルの力を産出し、スプリンターは高速において低レベルの力を産出するのかどうかということを確認するために、3種のアスリートのグループを比較しようと試みた。これらの特性をテストするために研究者たちは、スミスマシンでのスクワットタイプのエクサイサイズ、スミスマシンジャンプスクワット、及びカウンタームーブメント垂直跳びにおける被験者のパフォーマンスを測定した。 スクワットはスミスマシンでの1RMが行われ、カウンタームーブメントジャンプでは、被験者は自重のみ、自重プラス20キロ、自重プラス40キロでのジャンプを行い、最大跳躍の高さを測定した。ジャンプスクワットでは、被験者はスミスマシンにおける1RMの30%、60%、90%にて最大跳躍の高さのジャンプを試みた。この研究では1RMの計算方法についての規定はされていなかった。 *** 何が起こったのか? 垂直跳びの結果 研究者たちは、垂直跳ではスプリンターとオリンピックリフターの両方がパワーリフターやコントロールグループよりも高くジャンプしたことを確認した。下記のグラフは、各グループのジャンプの高さの差を示している。 グラフはスプリンターが最も高くジャンプしたことを示しており、僅差でオリンピックリフターが続き、かなり離れて3位に、パワーリフター、そしてコントロールグループと続いている。沢山の人達がオリンピックリフターたちは最高の垂直跳びをする、という信念のもとにあるため、この発見は私にとってはとても興味深いものであった。 しかしながらスプリントには主に水平の力産出が必要であり、オリンピックリフトには主に垂直の力産出が必要であるという事実にもかかわらず、スプリンターのより大きな、パワー対重量の比率は、垂直方向への高さを出すことに対し効果的であったようである。自重のみでのジャンプにおいて、スプリンターは63.8W/kg、オリンピックリフターは63.0W/kg、パワーリフターは56.9W/kg、コントロールグループは49.5W/kgを産出した。 一方当然のことだが、オリンピックリフターは垂直力の産出に最も長けていた。下記のグラフは同じシリーズのジャンプにおける最大出力を示している。 *** スミスマシンスクワットの結果 スミスマシンでのスクワット型のエクササイズにおいて研究者たちは、パワーリフターは平均225.5kg(平均体重は78kg)、オリンピックリフターは平均243kg(平均体重85kg)、スプリンターは平均204.3kg(平均体重77kg)を持ち上げることを確認した。 ゆえに研究者たちが記述した通り、オリンピックリフターが最も強靱であるとするのは技術的に正しくはあるものの、オリンピックリフターは体重の2.86倍を持ち上げ、それに比べパワーリフターは体重の2.89倍の重さを持ち上げたと記述する方がより適切であろう。相対的な強さは下記のグラフに示されている。 これは、パワーリフターとオリンピックリフター両方の強度は実際にはほぼ同等か、むしろパワーリフターの方が多少上回っていたということを示唆している。更に驚くべきことは、コントロールグループ(平均体重75Kg)が1RMとして160Kgを持ち上げたこと、つまり全くレジスタンストレーニングの経験がないグループが、体重の倍の負荷を持ち上げたということである。どのようにしてこれが起こったのかは明確ではない。 *** スミスマシンジャンプスクワットの結果 ジャンプスクワットで最も高く飛んだという点では、ここでもまたスプリンターたちが最も成功したグループであり、下記のグラフに示されている通り様々な異なる負荷において(1RMの30%、1RMの60%、1RMの90%)オリンピックリフター(第二位)やパワーリフター(第三位)よりも著しく高く飛んだことが示されている。 ここでもまた、スプリントは主に水平の力産出を必要とし、オリンピックリフトは主に垂直の力産出を必要するという事実にもかかわらず、スプリンターのより大きな、パワー対重量の比率が、垂直方向への高さを出すことに対し効果的であったようである。しかしながら、下記のグラフで示されているように、ジャンプスクワットの際は、オリンピックリフターが最大の力とパワーを産出している。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター、そして通常のコントロールグループの間で、ストレングス、パワー、ジャンプパフォーマンスが著しく異なると結論付けた。 彼らはまた、パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンターには同等な強度があり、オリンピックリフターとスプリンターは同等に高く飛ぶ能力を有し、オリンピックリフターは最も大きな出力を産出できるという結論を出した。 *** 制限要素は何か? この研究には下記のような点において制限があった。 この研究はパワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター、コントロールグループというグループのパフォーマンス特性しか示していない。被験者たちは比較的年齢(19.8歳から24.1歳までの範囲)や身長は近いが体重に、かなりのばらつきがあった。体重が異なるアスリートたちの強度とパワーの質を比較するには正規化が有益であるため、これは完全な成功とは言いがたい。 この研究では、彼らがそれぞれ秀でているスポーツに向かう傾向にあるという、アスリートの遺伝的素因を考慮していなかった。例えば、高速での動きを行う能力の無いストレングス&パワータイプの人は、パワーリフティングを行う方向へ進む可能性があり、ゆえに、その他のタイプの人達が、パワーリフティングトレーニングが、爆発的な強度を生み出す能力に関して、真実を伝えられていないかもしれない。 パワーリフターは、必要とされる高いバーポジションにおいては、最大股関節伸展トルクが得られないということ、またオリンピックリフターやスプリンターの方がよりその動きに慣れ親しんでいるという強みがあるということから、スミスマシンスクワットにおいては著しく劣っているようである。 パワーリフターは、彼らの自然な動きが股関節主導であるということによって、膝関節主導のパターンを含むジャンプテストでテストされる際、不利になりがちであり、膝関節主導の動きに慣れているオリンピックリフターと比較してパフォーマンスが劣りがちである。ヘックスバーでのデッドリフトジャンプスクワットや最大下負荷でのデッドリフトのテストではパワーリフターに対して有利な結果となり得るであろう。 スプリンターは主に水平方向へのパワーを使用するため、条件的に不利であったようである。ゆえにテストがジャンプスクワットではなくケトルベルを含むものであったならば、彼らは著しくより良いパフォーマンスを示したかもしれない。 *** 実践的意義は何か? アスリートに対して スプリンターは高負荷、高速のトレーニング(高負荷でのスクワットやプライオメトリックなど)を使うため、これは、高速で自重での動きを含むアスレチックパフォーマンス(ジャンプやスプリントなど)に対してはおそらく高負荷、高速でのトレーニングが最適、もしくは少なくとも十分であろうということを示唆している。 外部負荷や相手を持ち上げることを必要とする力強い動きを含むパフォーマンス(ラグビーのタックル、アメリカンフットボールのブロッキング、砲丸投げ、又は丸太投げなど)のためには、出力を増加するためにオリンピックリフターが使用しているような高負荷、高速を組み合わせたトレーニングが有益かもしれない。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4646字

マラソン選手の筋繊維にはどのような特性があるか? パート1/2

長距離走は筋肥大の追求に対し悪影響を及ぼすと多くのコーチが示唆している。長距離走は筋肉量の減少と速筋繊維を犠牲にした遅筋繊維の断面積増加につながると言う人もいる。しかし、ある個人が長距離走を始めた際、実際には筋繊維の種類に何が起こるのだろうか? この研究はそれらを究明しようと試みたものである... 研究論文: 単一筋線維のマラソントレーニングへの適応、トラップ、ハーバー、クレア、ギャラガー、シルヴァ、ミンチェフ、ウィセット、応用生理学ジャーナル、2006年 背景 骨格筋がレジスタンストレーニングに適応することはよく知られており、これには生理学的な断面積、筋繊維の種類、筋束長、筋繊維角度の変化及び、より大きな力を生み出す能力が含まれる。 持久系トレーニングへの反応としても、筋肉適応は起こる。最も重要な2つの変化は、筋肉への血流を向上させる毛細血管網の増加と、ミトコンドリア発生として知られている過程で起こるミトコンドリアの大きさと数の増加である。行われている持久系トレーニングの種類により、筋の大きさや筋繊維の種類の変化が起こり得るとも考えられている。(例:自転車競技選手は典型的に大腿四頭筋が発達している) 私たちには、パワーリフトトレーニングとオリンピックリフトの両方がタイプIIXからタイプIIaの方向への筋繊維の種類の移行をもたらすが、タイプ I からタイプ IIへの移行を起こすことはないということがわかっている。これはタイプIIX筋繊維がパワーに対し最も有益であるという一般的な概念に反して起こる。しかし何故そのようなことが起こるのかは明確ではない。 持久系トレーニングの結果として各種筋繊維の中では、一体どのような変化が起こっているのだろうか? *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、初マラソンを完走しようとしている、レクリエーションとして運動を行う大学生の、筋肉の適応と筋繊維の種類の変化を観察しようと試みた。すべてのテストとマラソンを完了したのは7名(男性4名、女性3名)の被験者であった。 マラソンプログラムは、13週間のトレーニングとそれに続く3週間のテーパリング期間の、2つの段階に分かれた合計16週間のランニングトレーニングから構成されていた。計画は、週に4日間のトレーニング日を設け、13週間のトレーニング期間に渡り、最初の週に比べ全体的に140%のトレーニング量の増加が行われるよう、少しずつランニングの量(1週間に10%程度)を増やしていくという計画であった。テーパーでは急激ではあるが段階的なトレーニング量の減少が行われた。 16週間のトレーニング介入の前後に研究者たちは、腓腹筋から採取された筋繊維の検体を基に、単一線維の生理機能と酸化酵素の活動を測定した。研究者たちは、顕微鏡を使用しての単一筋線維の直径、単一筋線維の力生産能力、単一筋線維の収縮速度、及び単一筋線維の出力を測定した。13週間に渡るトレーニング期間の前後には、最大酸素摂取量(VO2-max)を測定するためトレッドミル検査も行われた。 *** 何が起こったのか? ランニングパフォーマンスと最大酸素摂取量 研究者たちは、7名全ての被験者はマラソンを完走し、平均タイムは4時間54分(3時間56分から5時間35分までに及ぶ)であったと報告している。 研究者たちは、介入前に比較し、介入後では絶対的最大酸素摂取量が増加(3.37 vs. 3.50 L/min)し、相対的最大酸素摂取量(こちらの方がより一般的に使われる)も増加 (49.5 vs. 52.0 ml/kg/min)したという、とりたてて有意ではない傾向があったことを確認した。彼らは、最大心拍数は変化しなかったが (197 vs. 198 beats/min)、最大呼吸も、介入の前に比べ介入後では増加 (93.7 vs. 97.0 l/min)したという有意ではない傾向があったことを報告している。 これらの要素は驚くことに、心臓血管の状態が有意には向上しなかったということを示唆している。しかしながら、最大酸素摂取量の値はむしろ高く、それは被験者がもうすでに(趣味レベルで)とても活発であったということなのかもしれない。 研究者たちは、トレーニング後の絶対的、相対的両方の酸素消費量は最大下ランニング速度である時速9.65Kmにおいて著しく低く(2.43 vs. 2.28 l/min and 36.0 vs. 33.6 ml/kg/min)、ランニングエコノミーに有意な向上があったということを示唆していると報告している。 まとめてみると、持久系トレーニングは最大酸素摂取量の向上にとても有益であると一般的に考えられているため、これらの研究結果は非常に興味深いものである。これらの初心者ランナーたちにおいては、最大酸素摂取量というよりはむしろランニングエコノミーが向上したようである。 酸化酵素の活動 研究者たちはクエン酸シンターゼの活動は37% (19.2 ± 1.4 to 26.3 ± 1.2 umol/g/min) 増加したが、13週間のトレーニング後とその後の3週間のテーパリング期間後では変化がなかったと報告している。これは筋肉の酸化能力がランニングトレーニング後に著しく増加し、持久系エクササイズを行う能力を向上させることにつながったのであろうと示唆している。 最大酸素摂取量に関するデータ(と下記にあるようなタイプI筋繊維の面積の増加)を考慮に入れると、パフォーマンスの向上は、心臓血管系の健康よりもランニングエコノミーによってもたらされるという上記の発見と一致して、これはトレーニングプログラムが、心臓血管系の適応よりもより多くの筋肉の適応をもたらすことを示している。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2519字

マラソン選手の筋繊維にはどのような特性があるか? パート2/2

筋繊維の種類 研究者たちはMHC組成による測定により、各種筋繊維に著しい変化があったことを報告している。 彼らはMHCI繊維が8%増加し(48 ± 6 to 56 ± 6%)、MHC I/IIaハイブリッド繊維が5%減少し(7 ± 1 to 2 ± 1%)、全MHC ハイブリッドが減少(24 ± 7 to 13 ± 4%)したことを発見した。しかし、MHC IIa繊維の断面( 30 ± 5 to 30 ± 4%)や、MHC IIa/IIxやI/IIx繊維のハイブリッド集団に有意な変化は見られなかった。下記のグラフはその結果を表している。 パワーリフトやオリンピックリフトの研究からタイプIIa筋繊維の断面積はストレングススポーツの要であるということがわかっているため、この発見は非常に興味深い。これらのデータは、マラソンは優先的にタイプIIa筋繊維を減少させはしないが、どちらかといえばハイブリッド繊維を減少させ、タイプI筋繊維の断面積を増加させるということを示している。 単一線維の直径、力、速度、パワーの測定 研究者たちは各筋繊維の全体的な断面積は測定しなかったが、単一筋線維の直径、力、収縮速度、パワーに関する大変興味深い観察を行った。彼らは単一筋線維の直径が、13週間のトレーニング期間に減少したことを報告している。 彼らは、トレーニングに伴いMHC I筋繊維の直径は21%、MHC IIa筋繊維の直径は23%と著しく減少したことを発見している。これらのデータは筋繊維全体の断面積に直接置き換えることはできないが、ランニングトレーニングがタイプIとタイプIIA筋繊維の筋量を減少させることにつながるということを示している。 研究者たちは トレーニング期間の結果として単一筋線維の力はMHC I 及びMHC IIAのどちらにおいても変化が無かったことを報告している。しかし筋繊維の直径は減少しており、これは筋繊維の単位断面積あたりの力が増加したはずであるということを意味している。単位断面積あたりの最大力の変化は下記のグラフに示されている。 最後に研究者たちは、MHC I筋繊維の収縮速度はトレーニング期間後著しく上昇(28%)したが、MHC IIa筋繊維には有意な変化(6%)は見られなかったと報告している。またトレーニング後、MHC I筋繊維の最大パワーは著しく増加(56%)したが、MHC IIaの最大パワーはトレーニングに伴い有意ではあるが、少量の(16%)増加しか見られなかった。 テーパーの影響 研究者たちは、MHC I単一筋線維の特性に更なる変化は起きなかったが、MHC IIa 単一筋線維の力とパワーが急激に増加したという非常に興味深いテーパーの影響があったことを報告している。これは、テーパー期間の恩恵を最も受けるのはタイプIIA筋繊維であり、この期間中にタイプI筋繊維の機能は変化しないということを示唆している。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは13週間に渡る長距離走のトレーニングは、タイプI筋繊維とタイプIIA筋繊維の直径の減少、タイプI筋繊維の比率の増加、及び、ハイブリッドタイプの筋繊維の減少につながるが、タイプIIA筋繊維の比率の変化にはつながらないと結論付けた。彼らはまた、全ての筋繊維の機能的能力は保持、もしくは向上すると結論付けている。 研究者たちは、最大下ランニングにおける酸素消費量の減少、MHC I筋繊維の割合の増加とクエン酸シンターゼ(酸化)活動の増加により、測定されたこれらの有意な変化は、持久系ランニングパフォーマンスの向上に貢献し得ると結論付けた。彼らはこれらの変化のうち最初の2つは、心臓血管系の健康というよりはむしろ、ランニングエコノミーを向上することで持久系ランニングパフォーマンスを助けているということを示す変化であると記述している。 *** 制限要素は何か? この結果は、少人数の被験者を使用したことによりデータを推定するのが困難であったということにおいて制限があった。また上記にもあるように、筋肉の検体での研究は道義上少人数に限られていた。 この研究は最初から被験者が比較的十分にトレーニングされていたようであり、49.5 ml/kg/minという平均相対的最大酸素摂取量は非常に高い値であったということに制限があった。いかにして最初から被験者がこのように高い最大酸素摂取量の値を得たのかは明確ではない。またこの研究は、研究者が単一線維の直径のみを測定し、全体の筋繊維の断面積を測定しなかったという点においても制限があった。 実践的意義は何か? アスリートに対して 長距離走トレーニングは、タイプI筋繊維を犠牲にしたタイプIIA筋繊維の減少は引き起こさないようであるが、タイプI筋繊維とタイプIIA筋繊維両方の直径(ゆえに断面積も)は減少するようである。これはストレングス&パワーアスリートはコンディショニングとしての長距離走を避けるべきであるということを示唆している。 混合した割合の筋繊維を持つアスリートや、ストレングス、パワー、持久系全ての活動を行うアスリート(クロスフィットなど)は、持久系のスポーツに重きを置くアスリートよりもよりテーパーによる恩恵を受ける可能性が高い。 レクリエーションとして運動を行っている個人に対して 単一の研究から評価するのは困難であるが、これらの結果はすでにレクリエーションとして運動を行っている個人において、マラソンを行うことは、単に走る能力自体は向上させるが、心臓血管系の健康状態を著しく向上させはしないということを示唆している。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2474字

実践的なトレーニングの助言 パート1/2

パーシャルスクワットとフルスクワットを使い分ける最善の方法とは? 研究によると: ストレングスとパワーを向上させる為には高負荷でのパーシャルスクワットが最善であり、スピードを発達させるためには低負荷での深いスクワットが最適である。助言: 高負荷でのパーシャルスクワットと低負荷でのパラレルスクワットの組み合わせは、スピードに重きを置けば、アスリートのスピードとストレングスの質を発達させるための良い組み合わせとなり得る。研究によると: 何セットにも及ぶ高負荷でのより深いスクワットは、大量の作業を行うためには最適である。助言: 筋肥大を必要とする身体組性のプログラムに対しては、作業出力(筋肥大へとつながる機械的張力)は高負荷でのより深いスクワットを行うことで最大化することが可能である。 *** スクワットは高負荷であるべきか、深くあるべきか? 研究によると: 膝伸筋へ要求される力に対しては、負荷よりもスクワットの深さの方がより重要な要素である。助言: 垂直跳びの高さを向上させるために膝関節主導のジャンプ戦略をとっている場合は、大腿四頭筋への刺激を最大化するためにより深いスクワットを行うべきである。同様に大腿四頭筋のサイズを向上させたいのであれば、負荷を軽減し、安全に行える範囲で、できるだけ深いスクワットを行う。 *** スクワットの際、椅子に深く座るような形になるべきか? 研究によると: オリンピックスタイル(椅子に深く腰掛ける形にならない)のスクワットは膝伸筋を最も発達させるようであり、それゆえ大腿四頭筋をより活性化するが、膝には大きな剪断力がかかる。助言: もしオリンピックスタイルのスクワットを、膝の痛み無く行うことができ、かつ大腿四頭筋群を発達させたいのであれば、オリンピックスタイルのスクワットが最適な手段である。少しでも膝に痛みがある場合は行うべきではない。研究によると: 椅子に深く腰掛ける形になるスクワットは股関節の伸筋群をより使うようであり、よって大臀筋(と多少ハムストリングスも)のより大きな活性化につながるようである。助言: もし臀筋やハムストリングスを鍛えたく、椅子に深く腰掛けるような形でのスクワットが問題なく行えるのであれば、制限されたスクワットが有効であろう。(もちろんハムストリングスを発達させるのには、スクワットパターンよりもよりよい選択肢があるが) *** フォワードランジは大腿四頭筋とハムストリングスのどちらに効果的なエクササイズか? 研究によると: フォワードランジの際の外部負荷の増加は、足関節、膝関節、股関節のモーメントを同等に増加させるのではなく、むしろ股関節モーメントを足関節や膝関節のモーメント以上に増加させる。助言: ランジの際、安全に、かつ膝の痛みを回避しながら、臀筋やハムストリングによって行われた仕事量を比例的に増加するためには、高負荷で各セットのレップ数を少なく行うと良い。研究によると: フォワードランジの際、膝関節ではコンセントリックの仕事量よりもエキセントリックの仕事量の方が多い。これは、身体を下に下ろしてゆくにつれて、膝伸筋(大腿四頭筋)が、増加してゆく膝の屈曲を減速することにより関わっているということを示唆している。エキセントリック収縮は辛い筋肉痛を引き起こすため、多くの人がランジは大腿四頭筋がとても痛くなると感じている理由はこれなのかもしれない。助言: 大腿四頭筋により効果的なフォワードランジを行うためには、低負荷で多くのレップ数を行うべきである。(ロニー・コールマンの駐車場ランジのような) *** 広背筋を発達させるためにはプルダウンよりもローイングの方が良いか? 研究によると: シーテッドローはどのようなタイプのプルダウンよりも広背筋と中部僧帽筋/菱形筋の大きな活動を生み出す。背中のエクササイズを「背中の広さ」と「背中の厚み」に分けるという考えは研究者から支持されていない。助言: ボディビルダーや主に身体的発達を考慮する人は、ラットプルダウンよりもローイングを中心に背中の強化パターンを組む方が理にかなっている。そして背中のプログラムを「背中の広さ」と「背中の厚み」で分けるのではなく、背中のトレーニングを2度行うようにすれば十分であろう。研究によると: シーテッドローは肩甲骨の後退を組み合わせた際、広背筋と中部僧帽筋/菱形筋に、より大きな活動を生み出す傾向にある。助言: シーテッドローを行う際は、筋活動を向上させるために、各レップの最後に必ず肩甲骨の後退を行うべきである。可動域を向上させることは肩の健康のためにも好ましいことである。研究によると: プルダウンの際、腕が回内しているか回外しているか(チンニングとプルアップ)の違いは、広背筋と上腕二頭筋の相対的な活動における多少の相違にすぎない。ゆえにこれらの相違は、初心者や中級者に対して大きな違いを生み出すわけではないようである。助言: チンニングやプルアップのどちらを使ってもさほど相違はないため、おそらく好みに応じて選択するか、もしくは飽きることを避けるためにそれらを混合して行うべきである。もし、どうしても選択しなくてはいけないのであれば、より大きな負荷を使えるためチンニングの方が多少優位であろう。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2310字

実践的なトレーニングの助言 パート2/2

どのローイングエクササイズが最善か? 研究によると: 広背筋と上背を鍛えるには、ベントオーバーローよりもインバーティッドローの方が良い。ベントオーバーローは全体的な(上部、下部共に)背中の筋活動を生み出し、脊椎の安定性に最も働きかける。助言: 高齢期まで元気にトレーニングを行うためには、ベントオーバーローや片手でのケーブルローよりも、負荷付きのインバーティッドローを中心としたプログラムで上背と広背筋を鍛えるべきである。 *** 筋肥大のためには、相撲デッドリフトは通常のデッドリフトよりも良いのか? 研究によると: 相撲デッドリフトで使われる主な筋肉は大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋である。通常のデッドリフトで使われる下肢の筋肉は、ハムストリングス、大臀筋、腓腹筋、ヒラメ筋である。助言: 両方のデッドリフトのバリエーションを向上させるためのトレーニングにはもちろん、大量の大臀筋とハムストリングスの強化が含まれているべきである。しかし、通常のデッドリフトは大腿四頭筋とふくらはぎの筋力をより強調するのに対し、相撲デッドリフトでは大腿四頭筋と前脛骨筋の筋力に重きが置かれている。研究によると: 通常のデッドリフトよりも相撲デッドリフトの方が、加速段階にいる時間が非常に長い。これは、相撲デッドリフトがよりよい筋肉の適応をもたらすということを示しているのかもしれない。助言: 特に相撲デッドリフトは腰への負担が少ないが、同様の股関節の伸展モーメントを含む可能性が高いため、筋肉のサイズを大きくするためのトレーニングとしては、通常のデッドリフトよりも相撲デッドリフトの方が優れているかもしれない。 *** ストレートバーとヘックスバーはどのように違うか? 研究によると: 膝関節に対する股関節の伸展モーメントの比率はストレートバーデッドリフトでは負荷の増加に伴い上昇するが、ヘックスバーデッドリフトでは変化がなかった。これは、ストレートバーデッドリフトは負荷が上がるにつれてより股関節主導になってゆくが、ヘックスバーデッドリフトでは同様ではないということを意味している。助言: ストレートバーデッドリフトでは、股関節の伸展トルクの重要性が負荷の増加につれて上がるということを考慮に入れると、弱点が股関節の伸展トルクの場合(多くの場合その可能性が高いが)、ストレートバーデッドリフトを向上させるためにヘックスバーデッドリフトを使ってトレーニングすることは、最適な持ち越し効果を生み出さない可能性がある。股関節の伸展トルクを発達させるようなエクササイズの方が、より良い選択かもしれない。研究によると: デッドリフトは両バリエーション共に、オリンピックリフトやそのバリエーションと同様、最大下負荷において多大な力を生み出す。助言: スポーツのために最大力をトレーニングしているが、オリンピックリフトを快適に行うことができない人は、オリンピックリフトを安全に行うために何年も費やしてそのスキルを養う必要なはい。ストレートバーやヘックスバーを使う最大下デットリフトは両方とも同等の出力を生み出す(ストレートバーでは1RMの30%、ヘックスバーでは40%、スクワットでは50−60%を使う) *** フォームローラーは可動性を向上させるか? 研究によると: 被験者がワークアウト前にフォームローラーを使用した場合、使用後彼らはより広い可動域で膝関節を動かすことができた。静的ストレッチとは違い、フォームローリングは被験者に実施直後の筋力低下をもたらさない。助言: ディープスクワット、スプリットスクワット、デフィシットデッドリフトなど、大きな可動域内で関節を動かすようなエクササイズを含むワークアウト前には、筋肉を伸長するためにフォームローラーを使用しよう。 *** 柔軟性を増すためにストレッチを毎日行う必要はあるのか? 研究によると: ハムストリングスのストレッチ実験では、研究者たちは数分のストレッチを毎日行うことと、数分のストレッチを週に3−4回行うことでは同様に可動域が拡大されると発見している。(18.1 ± 6.3度)助言: もしストレッチが優先であるならば、毎日行うことはより早い改善につながる。しかし、時間がないのであれば、数分のストレッチを週に3−4回行うことは同様に良い成果を与えてくれる。毎日数時間もストレッチする必要はないのである。 *** バーの速度は筋力の増加に影響を与えるのか? 研究によると: 自己選択したバースピードよりも、より速いバースピードはより大きな筋力の増加につながる。助言: ワークアウトの際のバースピードをコントロールする習慣がないのであれば、ある一定期期間より速いバースピードを試してみると良いだろう。より大きな向上が見られるかもしれない。 *** レジスタンストレーニングと持久系トレーニングを組み合せて行うことは可能か? 研究によると: レジスタンストレーニングと持久系トレーニングを組み合わせて同時に行うことは(同時訓練という)筋力の増強を妨げはしないが、おそらく力開発速度の低下による結果としてパワーの向上を低下させる。助言: スポーツのためのパワーを最大化することに生計がかかっているのであれば、持久系トレーニングは必要最小限にとどめておくのがよいだろう。 *** ストレングストレーニングと持久系トレーニングを組み合せて行うことはより良い筋肉量の増加につながるか? 研究によると: 多くの人が考えていることに反するが、同時訓練を行うことは実際の筋肉の増加程度を上げる。助言: 体格のためにレジスタンストレーニングを行っているのであれば、ある程度の持久系トレーニングは、実質的にはレジスタンストレーニングの効果を助長する可能性がる。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2528字

より速いレップ速度は筋力の増加を助長するか? パート1/2

レップ速度の筋力に対する影響は、評価を行うことが困難である。速いバー速度を指示する人達と遅いバー速度を支持する人達が、それぞれに存在し、速いバー速度の支持者たちは、速いバー速度は閾値の高い筋繊維をより多く動員することを可能にすると示唆し、遅いバー速度を支持者たちは、より大きなタイムアンダーテンション(筋緊張下の時間)をアピールしている。研究者たちは他の変数を制御することの難しさに悩まされている。力-速度の関係性のために、最も問題となる要素は相対的負荷である。この総括は、相対的負荷を制御した等慣性筋力トレーニングを行う際、レップ速度がどのように筋力増加に影響を及ぼすかについて我々が現在知り得ていることを詳しく説いたものである。 背景 序論 様々な研究者たちやストレングス&コンディショニングコーチたちは、レップ速度が筋力に対して重要かもしれないと提議している。ウェイトトレーニングには次に挙げるような2つの基本的な方法がある:(1)最大速度にて、(2)制御された最大下速度にて。この2つめの方法においては、超低速から超高速(最高速度以下ではあるが)まで様々に異なるリフティングの速度を用いることができる。一部の研究者たちとストレングス&コンディショニングコーチたちは、レップ速度やバー速度に対するより適切な言葉は「レップ継続時間」であると提議している。これは「タイムアンダーテンション=筋緊張下の時間」の重要さをより強調した言葉である。しかしながら、このような専門用語に対する考察は、より深刻な問題である変数を隔離することや結果を測定することと比較するとそれほど重要なものではない。 変数の分離に関する問題 関連のある他の全てのトレーニング変数(相対的負荷、トレーニング量、筋限界、タイムアンダーテンションなど)から完全に分離して、レップ速度を変化させることは実際には不可能である。これは主として力-速度関係のためである。高負荷を動かすために大きな力が必要な場合、筋肉の収縮速度は遅くなくてはならない。これは、速いレップ速度と遅いレップ速度の比較は多くの場合、力産出が異なるため本質的には異なる相対的負荷を比較しているということを意味する。 この点における当然の結果、相対的負荷が統一され、全ての場合においてセットが筋限界までおこなわれた場合、異なるレップ速度の2つのワークアウトプロトコールが同等のトレーニング量(負荷xセット数xレップ数)となることはないであろう。実際には同等の相対的負荷の場合、速いレップ速度はより多くのレップ数を行うことにつながるというのが常である。ゆえにトレーニング量は多くの場合、コンディションにより異なってくる。同様に、トレーニング量が人為的に均一化された場合、1つのコンディションにおいてのみ筋限界まで行うことが必要となるようである。これは、研究者たちがどの変数が最も結果を混乱させがちであるかを選ぶ必要があることを意味しており、この研究を完了する前に最も重要なトレーニング変数を決定せねばいけないことを意味している。 全てのこの議論は、トレーニング変数としてレップスピードのみを孤立させることは難しいということを単に示しているだけである。レップ速度が変化すると、相対的負荷や量や筋限界への接近などの他のトレーニング変数は固定されている他のパラメーター次第で同時に変化するのである。 筋力測定に関する問題 異なるレップ速度によるトレーニングプログラムの効果を評価する際の、その他の主な問題点は、筋力を測定する方法である。概ね我々は、等尺性筋力、等運動性筋力、及び等慣性筋力(エクササイズに対する1RM )を測定することができる。これらのカテゴリーの中で、等尺性筋力は異なる関節角度において測定することができ、等運動性筋力は異なる速度において測定が可能である。 レップ速度については、テストされるトレーニングプログラムの多くが同じ速度でのトレーニングを含んでいることが多いため、異なる速度において等運動性筋力を測定する際に最も問題となる。それゆえ、トレーニングの特異性の問題が存在し、低速での等運動性トレーニングが低速での等運動性筋力につながり、高速での等運動性トレーニングが高速での等運動性筋力につながるということは、特に驚くべきことではないのである。しかし残念なことに、等運動性の測定方法を除外する以外にはこの問題を簡単に解決する方法はない。 選択基準 この総括に対して私は下記の選択基準を設けた。 レップ速度の筋力増加に対する意図的な(偶発的ではなく)効果を調査している介入 従来のレジスタンストレーニングの方法のみを用いた介入(等運動性及び等尺性以外) 動力学的/等慣性、等尺性、等運動性の方法による筋力測定 均一な相対的負荷での研究 これは理想的なアプローチ方法ではないが、これが現在のところ研究論文における限界のようであり、単にバーを可能な限り速く動かすよう試みるというよりはむしろ、特定のバー速度もしくはテンポでのトレーニングによる効果の違いを調査する1つの方法であると意図されている。研究論文を分析する方法が他にも存在する(おそらく同等に有効)ということは周知のことである。 洞察力の高い人は、私が均一の相対的負荷による研究についても述べていることから、等運動性もしくは等尺性トレーニングの介入が除外されたということを明記する必要はなかったことに気がつくだろう。異なる等運動性速度はそれが最大の努力により行われるため本質的には異なる相対的負荷が関わっており、ゆえに力-速度の関係は、より遅い等運動性速度はより速い等運動性速度よりも高い相対的負荷を伴うということを意味する。グループ間でトレーニング総量を明確に一致させた従来のレジスタンストレーニングに関する研究を見つけることは不可能であった。 ***

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より速いレップ速度は筋力の増加を助長するか? パート2/2

相対的負荷が制御されている場合、レップ速度は筋力の増加にどのような影響を及ぼすか? (ほとんど)トレーニングを行っていない被験者において、相対的負荷が制御された等慣性トレーニング後の筋力増加に対するレップ速度の影響を比較した数少ない研究は、下記のものである。 マン (2005) は115名のトレーニングを行っていない健康な被験者において、6週間に渡りレップ速度の筋力増加に対する影響を比較した。被験者は6−8RMでの肘の屈曲を週3回、速いレップ(1秒間に140度)で1セット、速いレップで3セット、遅いレップ(1秒間に50度)で1セット、もしくは遅いレップで3セット行った。介入の前後に研究者たちは1RM を測定した。研究者たちは、速い速度のグループには、遅い速度のグループよりも有意に大きな筋力の向上(11%)が見られたと報告している。 モリシー (1998) は7週間の実験におけるレップ速度の影響を調査した。その調査では、2つのグループのトレーニングを行っていない女性被験者が、遅い速度(2秒で上がり2秒で下がる)もしくは、速い速度(1秒で上がり1秒で下がる)という2つのコンディションのどちらかで、週3回、8レップ3セットのスクワットを筋限界まで行った。介入の前後に、研究者たちはスクワットの1RMと、等尺性、及び1秒間に25から125度までの等運動性の膝屈筋の筋力を測定した。 ラナ (2008) は、レッグプレス、バックスクワット、ニーエクステンションから成る6週間のレジスタンストレーニングプログラムを行った、34名の健康な成人女性におけるレップ速度の影響を比較した。研究者たちは被験者を様々なグループに分類した。高速高負荷のグループは6−10RMで1秒間のコンセントリック収縮と2秒間のエキセントリック収縮でのトレーニングを行い、低速高負荷のグループは6−10RMではあるが、10秒間のコンセントリック収縮と4秒間のエキセントリック収縮でのトレーニングを行った。研究者たちは低速高負荷のグループはレッグプレスとニーエクステンションの1RM が有意に増加(30%と27%)したことを発見したが、この増加は高速高負荷のグループの増加率(62%と54%)に比べると小さいものであった。高速高負荷のグループはスクワットの1RM が有意に増加したが、低速高負荷のグループではそれは起こらなかった。(46%対27%) リオウとホプキンス (2003) は27名の男性と11名の女性の熟練した短距離カヤック選手において低速及び爆発的なレジスタンストレーニングの効果を比較した。レジスタンストレーニングは6週間に渡り週2回行われ、1RM の80%でのベンチプレスとダンベルプルエクササイズが3~4セット含まれていた。低速のグループはエクササイズの所用時間が1.7秒となるようなテンポでエクササイズを行い、爆発的なグループの所要時間は0.85秒以下であった。研究者たちはコントロールグループ(3%以下)に比べ、この両方のグループでは実質的に8−15%の筋力の増加がみられたことを発見している。しかし彼らはより遅いレップ速度でのトレーニングに比べ速いレップ速度でのトレーニングは大幅に筋力の増加がみられたことも発見している。(グループ間の差異はベンチプレスでは7.9%、ダンベルプレスでは5.5%であった。)彼らはこれらのグループ間の差異はかなり大きいものであると評価した。 インゲブリクトセン (2009) は27名の被験者において、高速及び低速でのバーベルトレーニングの筋力の増加に対する影響を比較した。被験者は高負荷高速のグループと高負荷低速のグループに分かれ、週3回3週間に渡り、10レップ5セットのバーベルバイセプスカールを行った。両方のグループで使用された負荷は、最大等尺性トルクの60%であった。介入の前後に被験者たちは等尺性及び等運動性(1秒に30度,90度,240度、300度の速度)の肘屈筋の筋力を測定した。研究者たちは高負荷高速のグループにおいて等尺性の筋力が有意に増加(9.7%)し、高負荷低速のグループのみで低速(1秒間に30度)での等運動性筋力が有意に増加(8.5%)したことを報告している。ゆえに筋力測定は両方の方法において有意な相違を示しており、下の表はグループ間に著しい違いはなかったということを記録している。 ヤングとビルビー (1993) は、7.5週間に渡る実験でレップ速度の影響を比較した。実験で被験者は速いレップ速度もしくは遅いレップ速度で週3回、8−12RMのハーフスクワットを4セット行った。高速レップのグループは、爆発的なコンセントリック収縮の後に制御されたエキセントリック収縮を行い、低速レップグループはコンセントリック及びエキセントリック収縮を低速で制御された状態で行った。研究者たちは、両方のグループにて等尺性と1RM の筋力の測定値が有意に向上したが、グループ間での有意な違いは見られなかったということを発見した。低速のグループは高速のグループに比べ等尺性の筋力が向上した(24.6%対12.5%)という非有意な傾向がみられた。 ペレイラ (2007) は、12週間の実験で、トレーニングを行っていない健康な14名の被験者において、レップ速度の筋力増加に対する影響を比較した。被験者は不作為に、2つのトレーニンググループ、もしくはトレーニングを行わないコントロールグループに分けられた。低速のグループは1秒間に0.44ラジアンの速度でトレーニングを行い、高速のグループは1秒間に1.75ラジアンの速度でトレーニングを行った。トレーニングプログラムには、週3回の8−10RM でのスクワットとベンチプレスが1セット含まれていた。研究者たちは低速のグループと高速のグループの両方において、スクワット(27.6 ± 16.8 対 21.4 ± 12.6%)とベンチプレス(16.8 ± 11.8 対16.2 ± 14.1%)両方の筋力が向上したが、これら2つのグループの間に有意な差異は無かったことを観察した。低速のグループではスクワットの1RMがかなり向上したという非有意な傾向があった。 *** いかにしてこれらの研究を要約することができるか? 下記の表には、要約された前研究の結果が示されている。7つの研究のうち4つは、相対的負荷を制御した状態での速いレップ速度の結果が有意に優れていると示している。1つの研究は相反する結果を発見しており、さらに2つの研究は遅いレップ速度に有利である非有意な傾向を発見している。 研究論文は未だいくらか相反しているものもあるが、要約すると、等慣性トレーニングにおいて相対的負荷が制御されている場合、速いレップ速度は遅いレップ速度よりも筋力の増加に対して優れているようである。 *** 実践的意義は何か? ストレングスアスリートに対して: レップ速度が、選択されている相対的負荷に影響を与えない場合、速いレップ速度の方が筋力の増加に対し有益なようである。ゆえにストレングスアスリートに対しては速いレップ速度が推奨できるであろう。

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