エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート4/4

エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷を減小させるか?(つづき) ガバー (2006) は、7つのアマチュアオーストラリアンフットボールクラブにおいて、プリシーズンにおけるハムストリング損傷を予防するためのエキセントリックトレーニングプログラムの有効性を評価するために、試験的な無作為化比較試験を行った。選手たちは、エキセントリックトレーニング介入グループ、もしくはストレッチのみしか行わないコントロールグループへと、クラブ内で無作為に振り分けられた。介入グループは12週間にわたり5つのトレーニングセッションを行ったが、コンプライアンスは非常に低かった。分析を、少なくとも最初の2セッションに参加した介入グループおよびコントロールグループの選手に限ると、介入グループの4.0%、コントロールグループの13.2%の選手がハムストリング損傷を負い、その相対的リスクは0.3倍であった。 アスクリング (2003) は、スウェーデンのディビジョン首位2チームからの32名の男性エリートサッカー選手において、エキセントリック段階を強調したハムストリングスのためのプリシーズンストレングストレーニングが、ハムストリング損傷の発生率を減少させることができるのかどうかを調査した。被験者は無作為に介入グループとコントロールグループに振り分けられた。介入グループは10週間にわたり週に1-2回トレーニングを行った。介入グループにおいては3件のハムストリング損傷、コントロールグループにおいては10件のハムストリング損傷が見られた。 グッディ (2014) は、エキセントリックハムストリングス強化プログラムの、ハムストリング損傷の危険性に対する影響について決定するため、最近になり上記の試験のうち4つのものを総説し、また、介入のコンプライアンス不足の結果に対する影響を特に調査した。彼らは、エキセントリックハムストリングトレーニングを含むこの試験は、ハムストリング損傷の危険性(0.59倍の危険率)を有意に減少はさせなかったが、これは有意な異質性のためであったということを発見している。重要なことに、この異質性のほとんどはコンプライアンスからきたものであった。エキセントリック強化プログラムを順守できた被験者のみを考慮に入れると、全体のハムストリング損傷の危険性の有意な減少(0.35倍の危険率)と、この効果にはわずかしか特異性がないということがわかるであろう。 要約すると我々は、個人が与えられたプログラムを遵守した場合、エキセントリックハムストリングストレングストレーニングは、新たなハムストリング損傷の危険性を減少するようである、という素晴らしい科学的証拠が存在すると結論付けることが可能である。 ちなみに、メタ分析愛好家たちに対しては、グッディによるメタ分析は、これらの種類の研究において、どのように多様性のある問題にアプローチすればよいのかを説いている素晴らしい教えである。ある評論家たちがそうする傾向にあるように、それを無視することは適切なこととは言えない。 エキセントリックトレーニングはハムストリングの再損傷を減少させるか? 下記の研究は、エキセントリックトレーニング(主にノルディックハムストリングカールエクササイズを使用)のハムストリング再損傷に対する影響を調査した長期の試験である。下記の表はその結果を要約している。 アスクリング (2013) は、エリートスウェーデンサッカー選手において、急性のハムストリング損傷後における異なるリハビリテーション方法の有効性を比較した。ゆえに彼らは、急性のハムストリング損傷を負った(MRIにて確認)75名のサッカー選手を無作為に2つのリハビリテーション方法へと振り分けた。選手達は、伸張エクササイズを使用したものか、もしくは従来のエクササイズを使用したハムストリングトレーニングを行った。チームトレーニングへの全復帰と試合選手としての準備が完了する日までの日数が結果測定の鍵として評価されたが、12ヶ月間にわたる再受傷率も測定された。研究者たちは、トレーニング復帰までの時間は主に伸張トレーニングを使用した選手においてより短く(28 ± 15日対 51 ± 21日)、再損傷は1件のみであり、それは従来のトレーニングを行ったグループにおいてであったということを発見している。 ニコラス (2013)、シャーシェ (2012)とペターソン(2011) はみな、デンマークにおける上位5部サッカーチームにて競技している男性サッカー選手において、新たなハムストリング損傷の発生率に対する、10週間にわたるハムストリングエクササイズトレーニングプログラムの有効性を調査した同じ試験について報告をしている。チームは介入グループ、もしくはコントロールグループへと無作為に振り分けられた。介入チームはシーズンの中休みである10週間においてノルディックハムストリングエクササイズを(ウォームアップの後に)、1週間に1-3回、5-12回を2-3セットの合計27セッションを行った。研究者たちは、介入グループにおいて3件、コントロールグループにおいて20件の再受傷を報告している。介入グループは、悪影響の報告はしていないが、遅延性筋肉痛(DOMS)の増加は明記している。 要約すると、エキセントリックのみ、もしくはエキセントリックに集中したハムストリングストレングストレーニングの、ハムストリング再損傷の危険性に対する効果を調査した研究は、受傷数の減少とより短いリハビリテーション時間という有意に有益な影響を発見している。 制限要素は何か? この総説の主な制限要素は、メンディグーシャが素晴らしい総説において示したように、他のいくつかの要因もハムストリング損傷の危険因子として示唆されているということである(2012)。メンディグーシャおよびその他は、ハムストリング損傷の原因論は多元的であり、それらの要因は下記の図表で示されているように、互いに関連し合っている可能性があると議論している。 実践的意義は何か? エキセントリックハムストリングトレーニング、特にノルディックハムストリングカールは、サッカーを含む高速で走る活動に携わるチームスポーツ選手において、新たなハムストリング損傷の危険性を減少する可能性がある。これらは傷害予防プログラムの中に含まれているべきである。 ノルディックハムストリングカールのような、エキセントリックハムストリングエクササイズは、サッカーを含む高速で走る活動に携わるチームスポーツ選手において、ハムストリング再損傷の危険性を減少する可能性がある。これらはリハビリテーションプログラムの中に含まれているべきである。

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エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート3/4

急性のハムストリング損傷に対する受傷機転は何か? ハムストリング損傷は、高速でのランニングにおいて最も頻繁に発生すると考えられている。特にそれらは、スプリントの際の遊脚相終期、もしくは立脚相初期において起こると考えられている。 立脚相初期: 立脚相初期においては、膝関節屈曲及び股関節伸展のモーメントの両方が最大である(マン1980年)。これは、ハムストリングは立脚相の初期において損傷の危険性が最も高いということを示唆しているのかもしれない。 遊脚相終期: 接地の直前、股関節は屈曲し、膝関節は伸展する(ハムストリングスは股関節の伸筋であり、膝関節の屈筋である)ため、ハムストリングスは急激にそして大幅に伸張する。リーバーとフライデン(1993年)は、筋損傷は力の働きによるものではなく、むしろ機械的な変形(例として、長さの変化)によるものであると説明しており、これは歩行サイクルにおいてこのポイントが最もハムストリングに対して危険性の高いポイントである、ということを示唆しているのかもしれない。 一部の研究者たちがこれらの説明のうち1つを支持して議論をしている一方、サン(2014年)による最近の研究は、実際には両方とも同等に起こり得るであろうと示している。サン及びその他は、彼らの分節間の動力学の分析は、立脚相初期及び遊脚相終期の両方において、ハムストリングスへ非常に高負荷がかかるということを示唆している、と記述している。 何故エキセントリックハムストリングトレーニングが有効である可能性があるのか? 筋束長の増加 いかなる筋肉のエキセントリックトレーニングも、ハムストリングスにおいてトルクが生まれる最適な長さを変化させる(ブロケット2001年)。トルクが生まれる際のこの最適な長さにおける変化は、個々の筋繊維の長さを伸ばすこと(サルコメアジェネシス)により起こるようである。筋長の増加は、筋繊維がより少ない抵抗でより速く長さを変化させることを可能にするため、筋損傷の危険性を減らす助けとなるかもしれない。 エキセントリック筋力の増加 いくつかの研究は、ハムストリングのエキセントリックな筋力不足はハムストリング損傷の危険因子であり、エキセントリックハムストリングトレーニングはこの問題に対処するために有益である可能性があるということを発見している。実際にエキセントリックなハムストリングの筋力(モジョーセン2004年)、及びハムストリング全体の筋力(カミニシ1998年)を向上するためには、エキセントリックハムストリングトレーニングは、コンセントリックハムストリングトレーニングよりもより有益であると発見されている。 どのタイプのエキセントリックハムストリングトレーニングが使用されるのか? 最も人気のあるタイプのエキセントリックハムストリングトレーニングエクササイズはノルディックハムストリングカールである。しかしながらそれ以外にも様々なタイプが存在しており、それはブログヘリとクロニン(2008年)による素晴らしくとても実践的な総説において説明されている。 ノルディックハムストリングカールエクササイズはトレーニングを行っている人が膝をつき上体を起こした状態から始まる。トレーニングを行っている人の足はパートナーにより床へ押さえられる(足を固定する器具も存在するが)。ハムストリングを使い動きに抵抗しながら、トレーニングを行っている人は膝関節を伸展し、上体を床に向かって下げてゆく。この動きにはエキセントリックな膝関節屈曲が含まれている。そしてトレーニングを行っている人は、どのような方法でも良いので最も簡単な方法にて直立位に戻る。もっとも一般的には動きを変えるために手で押し上げ、コンセントリックな膝関節屈曲を行いながら戻るようである。 エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷を減小させるか? 下記の研究は、エキセントリックトレーニング(主にノルディックハムストリングカールを使用)の、最初のハムストリング損傷の危険性に対する影響を調査した長期試験である。下記の表はその結果を要約している。 ニコラス (2013), シャーシェ (2012), ペターソン (2011) はみな、デンマークにおける上位5部サッカーチームにて競技している男性サッカー選手において、新しいハムストリング損傷の発生率に対する、10週間にわたるハムストリングエクササイズトレーニングプログラムの有効性を調査した同じ試験について報告をしているようである。チームは無作為に介入チームとコントロールチームへと分けられた。介入チームはシーズンの中休みである10週間においてノルディックハムストリングエクササイズを(ウォームアップ後に)、1週間に1-3回、5-12回を2-3セットの合計27セッション行った。研究者たちは、新しい傷害のX倍の危険比率に対して(合計傷害件数に対して0.29倍)、介入グループにおいては12件の新しい傷害(合計15件)、及びコントロールグループにおいては、32件の新しい傷害(合計52件)を報告している。介入グループは悪影響に関する報告はしていないが、遅発性筋肉痛(DOMS)の増加は明記している。 インガーブレッセン (2008) は31のチームから508名の選手を集め、傷害の既往歴および/または機能についてのアンケートを基に、ハムストリング損傷に対する高リスクグループと低リスクグループに振り分けた。そして研究者たちは、高リスクグループの被験者を無作為に介入グループとコントロールグループへと振り分けた。低リスクグループは、もうひとつのコントロールグループとして作用した。研究者たちは、傷害発生率は低リスクコントロールグループにおいて3.2、高リスクコントロールグループにおいて5.3、また高リスク介入グループにおいて4.9であったことを発見している。高リスクの介入グループとコントロールグループの間には差違はなかった。しかしながら、高リスクの介入グループにおけるコンプライアンスは劣っており、被験者の20%程が最低トレーニング量しか行っていなかったということが記述されている。 アルナソン (2008) は、アイスランド及びノルウェーからのエリートサッカーチームにおける、エキセントリックストレングストレーニングと柔軟性トレーニングの、ハムストリング損傷の発生率に対する影響を調査した。介入チームとコントロールチームは無作為に分けられていたわけではなかった。しかし研究者たちは、柔軟性トレーニングプログラムを使っていたチームと使っていなかったチームの間に、ハムストリング損傷の発生率に関する差違はなかったが、エキセントリックトレーニングを使用していたチームにおいては、ハムストリング損傷の発生率が低かったということを発見している(0.43倍の相対リスク)。

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エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート2/4

ハムストリングの弱さは(過去に溯って)傷害の危険因子であるか? ハムストリングの強度とハムストリング損傷の危険性の間の関係を過去に溯って調査した研究は、歴史的に見て相反する結果を報告してきている。強度測定は昔から等運動性の方法を用い記録されていたが、より最近の測定方法は代わりにアイソイナーシャル(エキセントリック)及び等尺性のテストを使用している。 ティミンズ (2014) は、20名の無傷の被験者と16名の傷害を負った被験者のエキセントリックのハムストリング強度を比較した。彼らは、被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのデバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。彼らは、エキセントリックの強度は、反対側の健側の脚 (341.1 ± 100.2N) に比べ、患側の脚 (288.6 ± 84.8N) において有意に低く、その違いは15.4%であったということを発見している。 オパー (2013) は、片脚のみハムストリング損傷を負った20名のエリート選手において、エキセントリックのハムストリング強度を比較した。彼らは、被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのディバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。彼らは、以前に受傷している脚は逆の傷害のない脚よりも15%弱かったということを報告している。 オパー (2013) は、1秒間に60度及び180度の速度において等運動性動力測定法を用い、片脚にハムストリング損傷の既往歴がある13名のレクリエーションとしてのアスリートと、以前に傷害を負っていない15名のレクリエーションとしてのアスリートにおける、エキセントリック、及びコンセントリックの膝関節屈曲トルクの比較を行った。研究者たちは、傷害の既往歴のある被験者の膝関節屈曲トルクは、傷害のない脚に比べ傷害既往歴のある脚において、1秒間に60度及び180度の両方の速度において、より弱かったということを発見した。傷害既往歴のないグループにおいては脚間の差違はなかった。 ブロケット (2004) は、9名のアスリートの傷害既往歴のある脚と無い脚の筋肉の比較、及び18名の傷害既往歴の無いアスリートとの比較を行った。しかしながら、等運動性最大トルク、及びハムストリングスと大腿四頭筋の等運動性トルクの比率に有意な差違はなかった。 ウォレル (1991) は、半数がハムストリング損傷の既往歴のある、32名の学生アスリートにおける等運動性筋力測定値を調査した。測定には、1秒間に60度及び180度の速度において動力計を使用した、コンセントリック及びエキセントリックな大腿四頭筋とハムストリングの最大トルク、さらにはその比率が含まれていた。研究者たちはハムストリング損傷の既往歴を持つグループと持たないグループの間に、有意な強度の差違は無かったということを発見している。 ハイザー (1984) は1973年から1982年の期間に溯り、回帰分析を行った。1977年以前には、選手に対するハムストリングと大腿四頭筋の強度の比率の検査や修正は行われていなかった。1977年以降では、564名の選手がハムストリングスと大腿四頭筋の強度に対する基礎となる等運動性テストを受け、ハムストリングと大腿四頭筋の比率が>0.60であった選手は、特定のハムストリングトレーニングを受けた。最初の期間には534名の選手がおり、第2期間には564名の選手が存在した。最初の期間においては、7.7%がハムストリング損傷を負い、その負傷者のうち31.7%が再受傷した。第2期間においては、1.1%の選手のみがハムストリング損傷を負い、再受傷した選手はいなかった。 等運動性の測定技術を使用している多くの早期の研究は、膝関節屈曲トルクに関して、傷害既往歴のある被験者と無い被験者の間における有意な差違を示すことができていなかった。しかしながら、より最近には、3つの研究が有意な、そして臨床的に意味のある差違を報告しており、そのうちの2つは共にアイソイナーシャルテスト方法を使用していた。 それでもなおこれら全ての研究は回帰的であるため、どの程度のハムストリングの弱さが傷害前に存在していたのか、もしくは受傷後の不使用により引き起こされたものなのかは不明である。ゆえに、ハムストリング損傷の危険因子としての膝関節屈曲の強度を理解するためには、この科学的根拠には問題がある。 ハムストリングの弱さは(将来の)傷害の危険因子であるか? ハムストリングの強度とハムストリング損傷の危険性の間の将来的な関係を調査した研究もまた、相反する結果を報告している。ここでもまた、強度測定は昔から等運動性の方法を用い記録されていたが、より最近の測定方法は代わりにアイソイナーシャル(エキセントリック)及び等尺性のテストを使用している。 オパー (2014) はシーズン中210名のオーストラリアンフットボール選手におけるハムストリング損傷の危険因子を評価した。彼らは28件のハムストリング損傷を記録した。彼らは被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのディバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。彼らはエキセントリックなハムストリング強度の減少は将来のハムストリング損傷の危険性を2.7-4.3倍に増加させたということを発見した。 グーセンス (2014) は1学年の間、102名の体育教育学部新入生におけるハムストリング損傷の危険因子を評価した。彼らは、被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのディバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。1年間で16件のハムストリング損傷が記録された。研究者たちは、より低いエキセントリックのハムストリング強度、及び等尺性とエキセントリックハムストリング強度のより高い比率は、ハムストリング損傷の有意な危険因子であるということを発見した。 イェン (2009) は12ヶ月に渡り、44名のスプリンターにおいてハムストリングの強度がハムストリング損傷の危険因子であるかどうかを調査した。研究者たちはそのシーズン中に8名のアスリートがハムストリング損傷を負ったと記録している。その回帰分析は、ハムストリングと大腿四頭筋の最大トルクの割合が、1秒に180度の速度において スギウラ (2008) は30名の男性エリートスプリンターにおいて、次年度のハムストリング損傷の発生率に対して彼らを調査する前に、股関節伸展、膝関節屈曲、及び膝関節伸展トルクの等運動性テストを行った。研究者たちは経過観察期間中、6名の被験者がハムストリング損傷を負ったことを記録している。研究者たちは、患側の脚は1秒間に60度の速度で、股関節伸展(コンセントリックに)及び膝関節屈曲(エキセントリックに)の両方においてより弱かったということを発見している。 クロイサー (2008) は462名のサッカー選手における、等運動性コンセントリックトルクとエキセントリックトルクの間の関係を調査した。その後の期間中、35件のハムストリング損傷が記録された。筋損傷の発生率は、バランスの崩れの無い選手と比較し、無調整な筋力のバランスの崩れのある被験者において4.7倍有意に大きかった。 バネル (1998) はシーズン中、102名の男性オーストラリアンフットボール選手において、ハムストリング損傷の危険性と関連して、ハムストリング、及び大腿四頭筋の等運動性筋力、また、ハムストリングと大腿四頭筋の筋力比率を評価した。彼らはそのシーズン中、12名の選手がハムストリング損傷を負ったと報告している。しかしながら、ハムストリングまたは、大腿四頭筋の等運動性筋力、もしくはその比率と傷害の危険性との間に関連はなかった。 オーチャード (1997) は、37名のプロオーストラリアンフットボール選手における、ハムストリングの強度とハムストリング損傷の危険性との関係を調査した。ハムストリング及び大腿四頭筋のコンセントリック等運動性最大トルクは、プリシーズンにおいて、動力計を使用し1秒間に60度、180度、300度の速度で計測された。シーズン中、6名の選手がハムストリング損傷を負った。ハムストリング損傷は、患側における1秒間に60度の速度でのハムストリングと大腿四頭筋の最大トルクの比率の低さ、およびハムストリング左右相互の最大トルクの比率の低さと有意に関連している。 要約すると、ほとんどの研究論文が、特にエキセントリックの筋活動におけるハムストリングの弱さは、選手がハムストリング損傷を負う危険性を増加させると報告している。これは、我々は通常の伸張・短縮サイクルトレーニングに加え、ハムストリングスのエキセントリックな筋力を増大させるため、特定のトレーニングを熱心に行うべきであると示唆している。

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エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート1/4

ノルディックハムストリングカールは、ナチュラルグルートハムレイズに非常に類似したエキセントリックのみのエクササイズである。これらのエクササイズは、ハムストリング損傷の低減のために、ハムストリング損傷を負ったアスリートに対するリハビリとしても非常によく推奨されている。しかしながら全てのストレングス&コンディショニングコーチがこれを活用しているわけではない。この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が研究の再考察を行う。 ハムストリング損傷はどれほど頻繁に起こるのか? ハムストリング損傷は、高速でのランニングを含む多くの人気のあるチームスポーツ、及び陸上競技において非常によく見られる。 エリオット (2011) は、NFL選手における10年間にわたるハムストリング損傷の発生率は、アスリートの1,000時間の活動(トレーニングと競技の両方)に対し0.77 であったと報告している。 ブルックス (2006) は、ラクビー連合におけるハムストリング損傷の発生率は、選手の1,000時間のトレーニングに対し0.27であり、1,000時間の試合に対し5.6であったと報告している。 ウッズ (2004) は、英国のサッカー選手おけるハムストリング損傷が、2シーズンにわたり全傷害の12%を占めていたということを発見している。 オーチャード (2002) は1997年から2000年の4シーズンにわたり、オーストラリアフットボールリーグにおける傷害を調査した。彼らはハムストリング損傷が全体の傷害の15%を占めていたということを発見した。 ベネル (1996) は、後ろ向きコホート研究を使用し、12ヶ月間において95名の陸上競技選手が負った傷害の種類を評価し、ハムストリング損傷が傷害の14%を占めていたということを発見した。 スワード (1993) はオーストラリアのエリートスポーツにおける傷害の割合を報告した。彼らはオーストラリアンフットボールにおいて最もよく見られた傷害はハムストリング損傷であり、全体の傷害の13%を占めていたと報告している。 要約すると、ハムストリング損傷は、陸上競技及びフットボール体系(ラグビー、サッカー、アメリカンフットボール、オーストラリアンフットボール)において非常によく見られる傷害である。ハムストリング損傷は全体の傷害の12-16%を占めているようである。 ハムストリング損傷は筋肉を非常に衰弱させ、長期のリハビリテーション、もしくは選手によってはキャリアの短縮につながる可能性があるため(ヘイダーシャイト2010年)、まず第1に傷害の発生を予防するよう努めることは有益であるであろう。 ハムストリング損傷の既往歴は傷害の危険因子であるか? 下記のようにいくつかの研究が、ハムストリング損傷の既往歴は、将来のハムストリング損傷に対する主な危険因子であるということを発見している。 オパー (2014) はシーズン中、210名のエリートオーストラリアンフットボール選手における、ハムストリング損傷の危険因子を評価した。彼らは28件のハムストリング損傷を記録し、ハムストリング損傷の既往歴が将来のハムストリング損傷の危険性を非有意に2.1倍増加させたということを発見した。 ハグラウド (2013) は2001年から2010年にかけて、ハムストリング損傷の危険因子を評価するために、10のヨーロッパ諸国における26サッカークラブに所属する1401名の男性プロサッカー選手を検査した。その期間内に900件のハムストリング損傷が起こった。シーズン前に、同様の傷害を負うことは負傷率を有意に1.4倍増加させていた。 イングブレッセン (2010) は2004年のプリシーズンにおいて、ハムストリング損傷の潜在的危険因子に対し、31アマチュアチームからの508名のサッカー選手を検査した。シーズン中76件のハムストリング損傷が起こった。ハムストリング損傷の既往歴は、2.6倍多い将来の傷害の危険性と関連があり、最も重要な危険因子であった。 ガバー (2006) は2002年のプリシーズンにおいて、ハムストリング損傷の潜在的危険因子に関して、222名のオーストラリアンフットボール選手を検査した。シーズン中、31名の選手がハムストリング損傷を負った。過去12ヶ月のハムストリング損傷の既往歴及び、加齢が唯一有意な将来のハムストリング損傷の予測因子であった。 ハグランド (2006) は2つのフルシーズン(2001年及び2002年)前に、12のエリートスエーデン男性フットボールチームより197名のサッカー選手を検査した。研究者たちは、ハムストリング損傷の既往歴を持つ選手は、その後のシーズンにおいて同様の傷害を負う可能性が3.2倍高いということを発見している。 アルナソン (2004) はハムストリング損傷に対する潜在的危険要因に対し、アイスランドでの1999年プリシーズンにおける上位2部から、306名の男性フットボール選手を検査した。ハムストリング損傷の有意な危険因子は年齢とハムストリング損傷の既往歴であった。ハムストリング損傷の既往歴は、11.6倍の将来の傷害の危険性と関連があった。 オーチャード (2001) は1992年から1999年の間に、ロジスティック回帰分析を使用しハムストリング損傷の危険性を評価するために、オーストラリアンフットボールリーグにおける試合にて、83,503名の試合出場選手を分析した。この期間中、672件のハムストリング損傷が確認された。最近のハムストリング損傷既往歴は、昔の同様の傷害の既往歴に続き、最も重要な危険因子であった。 ベネル (1998) はフットボールシーズンの初めに102名の男性オーストラリアンフットボール選手を検査した。シーズン中112名の選手が、試合欠場へとつながるハムストリング損傷を負った。ハムストリング損傷の既往歴は2.1倍多い将来の傷害リスクと関連があった。 オーチャード (1997) は1995年プリシーズンにおいて、オーストラリアンフットボールリーグチームから、37名のフットボール選手を検査した。シーズン中、6名の選手が試合欠場につながるハムストリング損傷を負った。しかしながらこの研究においては、ハムストリング損傷の既往歴は当時の傷害リスクとは関連が無かった。 この研究論文の総説にあたり、メンディグチ(2012年)はハムストリングの既往歴は再受傷の危険性を大いに増加し、その後の傷害に対する最も大きな個人の危険因子であるようだと示唆している。しかしながら、危険性の増加が、最初の傷害の特徴に起因しているのか、もしくは十分なリハビリテーションが行われていなかったゆえのものであるのかは、現在のところ不明である。 要約すると、ハムストリング損傷の既往歴は、アスリートが後に同様の傷害を負う危険性を大幅に増加する。これは我々が、最初に起こるハムストリング損傷の予防、及び一旦起きてしまった傷害のリハビリを行うことにかなりの時間を費やすべきであるということを示唆している。

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我々はスプリットスクワットについて何を知り得ているか? パート3/3

急性試験では何が発見されたか? (つづき) 筋電図活動 スプリットスクワットと従来のバックスクワットの際に、筋電図活動に関する有意な差違があるかどうかについての研究は相反している。マッカーディ(2010年)は、同様の相対負荷(3RM の85%)を使用した、後ろ足を挙上したスプリットスクワット、および従来のバックスクワットを行う女性アスリートの中臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋の筋電図活動を調査した。彼らは中臀筋とハムストリングの筋電図活動は従来のバックスクワットの際に比べスプリットスクワットの際に有意により高く、大腿四頭筋の筋電図活動はスプリットスクワットに比べ、従来のバックスクワットの際に有意により高かったということを発見した。しかしジョーンズ(2012年)は、持久系のトレーニングを行っている男性アスリートにおいて、同様の相対負荷(10RM) を使用し、後ろ足を挙上したスプリットスクワット、および従来のバックスクワットを行う際の大腿二頭筋、脊柱起立筋、中臀筋、外側広筋の筋電図活動を測定したが、2つのエクササイズの間に筋電図活動におけるいかなる差違も認識しなかった。マッカーディ(2010年)もまた、同様の相対負荷(3RMの85%)を使用し、後ろ足を挙したスプリットスクワットと従来のバックスクワットを行う女性アスリートの外腹斜筋の筋電図活動を調査した。彼らは、外腹斜筋の筋電図活動は、スプリットスクワットの際に非有意により高かったということを発見している。これらの発見は、スプリットスクワットの際にハムストリングスがより効果的に刺激され、大腿四頭筋に対しては、あまり効果的に刺激されない可能性があるという条件付きで、下半身の様々な筋肉の筋力を同様に向上させるためには、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替になり得るということを示唆している。しかしながら、これらの発見を確認するためにはさらなる研究が必要である。 エクササイズに対するホルモン反応 レジスタンストレーニングは運動後、特に筋肥大のために作られるワークアウト後の内分泌性ホルモン値を変化させる可能性がある。この観察はホルモン仮説として知られるものに通じる。ホルモン仮説は、運動後の急性なホルモン分泌は筋肥大の過程の助けとなると提議している。しかし、この仮説は何年にもわたり強い支持を受けていたにもかかわらず、近年になり疑問視されてきている(詳細はショーンフェルド2013年参照)。ワークアウトに両側性の下半身のエクササイズを取り入れることは、運動後のタンパク同化ホルモンの増加を生み出す、ということはリナーモ(2005年)から知り得ていたが、ミギアーノ(2010年)は、片側、両側両方での上半身レジスタンストレーニングは、運動後のタンパク同化ホルモンを増加させることができなかったということを発見している。ゆえに片側性の下半身レジスタンストレーニングは、上半身のエクササイズと同様に、運動後のホルモン上昇を生み出さない可能性があると示唆されている。 しかしながらジョーンズ(2012年)は、持久系トレーニングを行っている男性アスリートにおいて、同様の相対負荷及びセット・レップ数を使用した後ろ足を挙上したスプリットスクワット、もしくは従来のバックスクワットを行ったワークアウト後のテストステロン濃度を測定し(セット間に90秒のレストを入れた10RMを4セット)、スプリットスクワットおよび従来のバックスクワットのワークアウトの両方とも、運動後にテストステロン濃度が上昇したということを発見している。ゆえにホルモン仮説が支持している程度までは、スプリットスクワットと従来のバックスクワットは、運動後のホルモン環境に対して同様に有益な影響を及ぼすようである。 慢性試験は我々に何を伝えているのか? マッカーディ(2005年)は2つの8週間にわたるレジスタンストレーニングプログラムを比較した。被験者は1週間に2日、両脚もしくは片脚どちらかのスクワットトレーニングを行った。両脚グループは従来のバックスクワットとフロントスクワットを行い、片脚グループは後ろ足を挙上したスプリットスクワット、ランジ、およびステップアップを行った。両グループとも同様の負荷と量のプロトコルを実行した。従来のバックスクワットにおける向上においても、スプリットスクワットの向上においても、グループ間に有意な差違は存在せず、それは両方のエクササイズとも、両側、片側両方の下半身の強度を向上させるために適しているということを示唆している。 実践的意義は何か? スプリットスクワットの試験・再試験測定は非常に信頼性が高いことが報告されているため、スプリットスクワットは下半身の強度を評価するために自信を持って使用することが可能である。 筋電図研究の結果は、スプリットスクワットと従来のバックスクワットの間にわずかな差違しかないということを示していたため、下半身の強度を向上させるために、スプリットスクワットが従来のバックスクワットの代替となることは可能である。 スプリットスクワットは、より大きな股関節と膝関節モーメントの比率、より大きなハムストリングの筋電図活動、より少ない大腿四頭筋の筋電図活動を含んでいる可能性がある。ゆえに股関節主導のエクササイズに重点を置く必要のあるプログラムに対しては、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替として有益であるかもしれない。 スプリットスクワットは低い胴体角度を伴う。スクワットの際の低い胴体角度は腰椎モーメントの減少と関連している。ゆえに腰椎負荷の減少が望まれる場合、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替として有益であるかもしれない。 スプリットスクワットおよび従来のバックスクワット両方のエクササイズ後、テストステロン濃度は同様に上昇するため、両タイプのスクワットは、運動後のホルモン環境およびその結果として生じる筋肥大に対し同様に有益な影響があるようである。 パワーリフターにとって、バックスクワットは、トレーニングでありながら同時にイベントそのものであるということを留意することは重要なことである。ゆえに特異性およびイベント練習がここでは必要になってくる。そのため一部のパワーリフターにとっての補助的な運動としては、スプリットスクワットは有益かもしれないが、パワーリフティングプログラムにおいてスプリットスクワットが従来のバックスクワットに取って代わることができる可能性は極めて低い。

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我々はスプリットスクワットについて何を知り得ているか? パート2/3

急性試験では何が発見されたか? (つづき) スプリットスクワットパフォーマンスとバランスの相関関係 一部の研究者たちは、下半身の強度とバランスは密接に結び付いていると提議している。フカガワ(1995年)は、老人ホームの入居者により行われたバランステストのパフォーマンスに対する、強度の独立した影響を報告した。しかしスプリットスクワットパフォーマンスは、特定のバランス課題とは相関関係が無いようであった。マッカーディ(2006年)は、トレーニングを行っていない男女において、スプリットスクワットの1RMの強度と、片脚立ち及びコンピューター制御されたバランスボード上でのバランス能力の間の関係を調査した。彼らは男女両方において、コンピューター制御されたバランスボード上のバランスとスプリットスクワットの1RM強度の間にも、片脚立ちのバランス得点とスプリットスクワットの1RM強度の間にも、いかなる有意な相関関係は発見しなかった。ゆえにバランスの向上が必要な場合にスプリットスクワットの強度を向上させることは有益ではないかもしれない。 関節モーメント スプリットスクワットの関節モーメントは、従来のバックスクワットのものとは異なるようである。メイヤー(2005年、未発表の修士論文)は男性アスリートにおいて、後ろ足を挙上したスプリットスクワットにおける関節モーメントを調査し、それを従来のバックスクワットにおける関節モーメントと比較した。アスリートたちは従来のバックスクワットを低、中、高負荷(1RMの60、70、80%)にて行い、スプリットスクワットを低、中、高負荷(従来のバックスクワットの1RMの20、25、30%)にて行った。メイヤーは、同様の相対負荷(323 ± 89Nm 対 288 ± 97Nm)において、スプリットスクワットにおける股関節伸展トルクは従来のバックスクワットよりもより大きかったということを報告している。さらに彼らは、同様の相対負荷(118 ± 26Nm 対186 ± 30Nm)において、スプリットスクワットは従来のバックスクワットよりもより小さな膝関節伸展モーメントを示していたということを発見している。その結果は下記のグラフに示されている。 これらの数字から我々は、股関節と膝関節の伸展モーメントの比率は、従来のバックスクワットに比べスプリットスクワットにおいてより高かったということを計算することが可能である(1.57 ± 0.53 対 2.80 ± 0.71)。ゆえにスプリットスクワットは、従来のバックスクワットよりも1.8倍より股関節主導である。この研究は未発表であったため再考察はされていないが、従来のバックスクワットの比率が、ブラントン(2012年)により報告されたもの、つまり同様の相対負荷において1.2-1.5の範囲であった、という比率と非常に類似しているため、これらのデータに関してはいくらかの安心を得ることができるであろう。それゆえ、プログラムが股関節主導のエクササイズに重点を置く必要がある場合は、従来のバックスクワットの代替としてスプリットスクワットが有益であるであるかもしれない。 関節角度 スプリットスクワットの際の胴体角度は従来のバックスクワットにおける角度よりもより小さいようである。マッカーディ(2010年)は女性アスリートにおいて、同様の相対負荷(3RMの85%)を使用し、後ろ足を挙上したスプリットスクワット、および従来のバックスクワットを行っている際の関節角度モーメントを調査した。彼らはスプリットスクワットの際の最大胴体角度は、従来のバックスクワットの際のものよりも小さかった(33.68 ± 7.6度対40.65 ± 7.0度)ということを発見している。メイヤー(2005年、未発表の修士論文)もまた、後ろ足を挙上したスプリットスクワットと従来のバックスクワットの際の関節角度を調査し、スプリットスクワットにおける胴体の前傾は、従来のバックスクワットにおけるものよりも少なかったということを観察している(25 ± 12度対35 ± 6度)。その結果は下記のグラフに示されている。 メイヤーは、胴体角度におけるこの差違は、脊柱負荷の程度の減少を暗示しているかもしれないと提議している。これが同様のケースであるかどうかは明確ではないが、スウィントン(2012年)は従来のスクワット、パワーリフティングスクワット、およびボックススクワットの差違を調査し、ボックススクワットが従来のスクワットに比べ有意により低い胴体角度(26.9 ± 3.8 度対33.5 ± 4.6度)を示し、同時に有意に低いL5/S1のモーメントを示したということを発見している。従って胴体角度の減少は実際には腰椎負荷の減少を暗に意味している可能性がある。ゆえに、腰椎負荷の減少が必要である、もしくは望ましい場合は、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替として有益であるかもしれない。 力、パワー、力産出の速度 特定の力に関する変数は、スプリットスクワットのテクニックを使ったジャンプスクワットと、従来のバックスクワットのテクニックを使ったジャンプスクワットの間で異なる。スレイバート(2004年)は男性アスリートにおいて、従来のバックスクワット、およびスプリットスクワットのテクニックの両方を使用し、ジャンプスクワットの出力を検査した。1RMの30-70%の出力に対する最適な負荷が各ケースにおいて比較された。彼らは最大出力および平均出力において、従来のバックスクワットとスプリットスクワットのテクニックの間で有意な差違はなかったということを報告している。しかしながら彼らは、最大力はスプリットスクワットの際に有意により大きく(19.10 ± 3.25N/kg 対 14.88 ± 2.22N/kg)、力産出の最高速度はスプリットスクワットの際に有意により高かった(41.10 ± 12.59N/s/kg 対 33.04 ± 8.74N/s/kg)が、最高速度はスプリットスクワットの際に有意に低かった(1.64 ± 0.17m/s 対 1.97 ± 0.13m/s)ということを報告している。彼らは、スプリットスクワットの際の、より大きな力と低い速度は、パワーに対する最適な負荷における両方のスクワットテクニックにおいて、同様の出力に繋がったということを記述している(測定は1RMの30-70%においてのみしか行われていないが)。しかしながら、そのような差違がスプリットスクワット、従来のバックスクワット、およびスプリットスクワットと従来のバックスクワットのテクニックを使用して行われたジャンプスクワットにおいて同様に存在するかどうかは明確ではない。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2927字

我々はスプリットスクワットについて何を知り得ているか? パート1/3

比較的最近まで、従来のバックスクワットは下半身の筋力増進のための選択肢であった。しかしながら、現在はスプリットスクワットが支持率を上げてきており、多くのストレングス&コンディショニングコーチたちにより使用されている。しかし我々は、スプリットスクワットについて実際に何を知り得ており、それは従来のバックスクワットと比較しどうなのだろうか?この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が研究論文の再考察を行う。 背景 スプリットスクワットは、後ろ足を床につけたまま、もしくは後ろ足をベンチや箱の上に乗せて行うことが可能である。スプリットスクワットには、ブルガリアン(スプリット)スクワット、後ろ足を上げたスプリットスクワット、ピッチャースクワットまたは調整された片脚スクワット、として知られるバリエーションが含まれている。これは従来のバックスクワットの代替としてストレングス&コンディショニングコーチにより頻繁に使われている。しかし、従来のバックスクワットは幅広く研究されている一方(ショーンフェルド2010年参照)、スプリットスクワットは同様の綿密な調査が行われていない。 スプリットスクワットは、矢状面における身体の重心を両脚でまたぐようにして行われる。バックスクワットポジションで上部僧帽筋の上に置かれたバーベル(マッカーディ2010年)、身体の両脇に腕を伸ばして持たれたダンベル、もしくは前足の下と肩の上をまわし輪にしたレジスタンスバンド(ジャコブソン2012年の中で行われたランジのように)を使用し、行うことが可能である。 前述のように、スプリットスクワットは通常後ろ足を箱やバーの上に乗せて行われる(マッカーディ2010年)が、後ろ足を床について行うことも可能である。マッカーディ(2010年)は、後ろ足を箱の上へ乗せた場合、負荷のおおよそ85%は前足によって支えられていたということを発見している。少数の研究がスプリットスクワットの際の急性の生体学的変数を調査しており、1つの研究がスプリットスクワットを含むトレーニングのプログラムの長期的効果を調査している。 急性試験では何が発見されたか? 運動能力の信頼性 鍵となる強度測定における向上を評価するために使用される場合、信頼性はレジスタンストレーニングエクササイズの重要な特性である。マッカーディ(2004年)はトレーニングを行っていない男女の被験者において、同等の相対負荷(1RMおよび3RMの負荷)を使用し、従来のバックスクワットと、後ろ足を挙上したスプリットスクワットの信頼性を検査した。彼らは、スプリットスクワットにおける1RMおよび3RMの平均負荷は、(初回/2回目)男性においてはそれぞれ114.6 ± 17.9/121.6 ± 17.7kg および 98.6 ± 21.5/103.0 ± 21.5kgであり、女性においてはそれぞれ44.0 ± 9.9/45.76 ± 10.7kg および35.9 ± 10.4/39.77 ± 10.4kであったことを発見している。その結果は下記のグラフに示されている。 研究者たちは、試験・再試験測定法は非常に信頼性が高く、ゆえにスプリットスクワットは下半身の片側性強度を評価するために、自信を持って使用することができるということを報告している。 利き脚と非優位脚の間におけるスプリットスクワット強度の差違 片側性のエクササイズに関する一般的な仮説は、利き側は非優位側よりもより強いと証明されるであろうというものである。実際に一部の研究は、下半身の課題における利き側と非優位側の間の差違を報告している(ハンター2000年)。しかしながらマッカーディ(2005年)は、トレーニングを行っていない男女において、利き脚と非優位脚におけるスプリットスクワットの1RM強度の差違を調査し、男女ともに利き脚は非優位脚よりも非有意にごくわずかに強かったが、それぞれの脚間におけるスプリットスクワット強度に有意な差違は発見しなかった。男性のスプリットスクワットの強度は(利き脚/非優位脚)、107.0 ± 5.2  /106.0 ± 5.2kgであり、女性のスプリットスクワットの強度は45.3 ± 2.5/45.0 ± 2.5kgであった。その結果は下記のグラフに示されている。 グラフは、トレーニングを行っていない被験者における利き脚と非優位脚の強度は非常に類似しているということを示している。これが、活動脚における総関節トルクが同様であるということを示唆しているのかどうかは明確ではないが、フラナガン(2007年)は、従来のバックスクワットの際の左右の総関節トルクは同等ではなかったいうことを発見している。ゆえにトレーニングを行っている被験者において、スプリットスクワットにおける利き脚と非優位脚の強度の類似性を確認するため、また、総関節トルクは同様の負荷にもかかわらず左右の脚において差違があるということを解明するためには、さらなる研究が必要である。しかしながら両側の強度が同等であるということが、同じフォームが使用されたということを意味するわけでも、また大腿四頭筋とポステリアキネティックチェーンが同等の割合で使われていたということを意味しているわけでもない、ということに留意することは重要なことである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2337字

我々は筋肥大を最大化するためにコンカレントトレーニングを避けるべきか? パート2/2

研究者たちは何を行ったのか?(続き) 21週間の介入の前後に研究者たちは、レッグプレス強度の1RMを測定し、最大片側等尺性膝関節伸展トルク、および最大片側等尺性膝関節伸展RFDを測定するために動力計を使用した。研究者たちはまた、このテストの際の内側広筋の筋電図活動を測定した。さらに彼らは、磁気共鳴映像法(MRI)を使用し、右大腿四頭筋の断面積を測定した。最後に彼らは、段階的な自転車エルゴメーターテストの際の最大酸素摂取量(VO2-max)および最大サイクリングパワーを測定したが、残念なことにそれはコンカレントおよび持久系グループのみに対してであった。 何が起こったのか? 最大1RM強度、膝関節伸展力およびRFD 研究者たちは、ストレングスグループにおいては1RMの強度が21%向上し、コンカレントトレーニンググループにおいては1RMの強度が22%向上、持久系グループでは1RMが1%向上したということを発見している。彼らは、ストレングスグループにおいては最大等尺性筋力が20%、コンカレントグループにおいては28%、持久系グループにおいては4%向上したということを発見した。彼らはまた、ストレングスグループにおいて最大RFDが38%向上し、コンカレントグループにおいては7%減少し、また持久系グループにおいては最大RFDが2%減少したということを発見している。これらの発見は下記のグラフに示されている。 コンカレントグループとストレングスグループの間で発見された唯一有意であった差違は、RFDに対するトレーニングの影響に関してのみであり、それはまた、ストレングスグループにおいてのみ有意であった。 筋断面積 研究者たちは、コンカレントグループにおいては筋断面積が11%、ストレングスグループにおいては6%、持久系グループにおいては2%増加したということを発見している。コンカレントグループにおける増加はストレングスグループにおける増加よりも有意により大きかった。 これは、干渉効果は以前に推測されていたほど単純ではないかもしれないということを示唆しているため、大変興味深い発見である。もっと正確に言えば、持久系エクササイズの方法が注意深く選択され、かついくつかの爆発的なストレングストレーニングが含まれている場合は、レジスタンストレーニングのみと比較し、コンカレントトレーニングを通じて筋断面積を実際に増加させることは可能なようである。 有酸素の測定 研究者たちは、最大酸素摂取量および最大サイクリングパワーに対するトレーニングの介入の効果を測定した。彼らは下記のグラフで示されているように、持久系グループと比較し、コンカレントグループにおいて両方の測定値が有意により増加したということを発見している。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちはこの研究の結果は、持久系トレーニングは筋力、筋肉量、パワーの増加を減少させる、と提議しているコンカレントトレーニングの現行の干渉仮説を支持していないという結論に至った。研究者たちは、コンカレントトレーニングはレジスタンストレーニングのみと比較し、むしろ有意により大きな筋肉量の増進につながるようであると結論付けた。彼らは最大等尺性筋力における増加は同様の非有意な傾向を示していたと記述している。 研究者たちはまた、これらの筋肉量および最大等尺性筋力に関する有益な効果にもかかわらず、コンカレントトレーニンググループはストレングスグループに比べ、最大RFDにおける減少を示したと結論付けた。最後に研究者たちは、ストレングストレーニングの付加は、持久系トレーニングのみと比較し、最大酸素摂取量および最大サイクリングパワー両方の向上に対し有益であるという結論に至った。 制限要素は何か? この研究は主にトレーニングされていない個人において行われたということにおいて制限があった。ゆえにトレーニングされている個人においては異なる結果が得られたかもしれない。それゆえ、方法としてサイクリングを使用した持久系トレーニングが、レジスタンストレーニングアスリートもしくはボディービルダーのための筋肥大プログラムに対し、付加的なものとして期待できるかどうかを評価することは困難である。 実践的な意義は何か? パーソナルトレーナーは、サイクリングのような負担の少ない有酸素運動を付加することは、クライアントの筋力や筋肥大の増進を脅かさないということを確信することができるだろう。実際のところ、それは筋肉の増加を増進させるようである。 ボディービルダーやフィジークアスリートが有酸素運動を使用すると決めた場合、彼らはこの目的の為には、サイクリングのような衝撃の少ない有酸素運動を選択するべきである。筋肥大までトレーニングされた個人に対し有酸素運動が有益であるかどうかは現時点では明確ではない。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2103字

我々は筋肥大を最大化するためにコンカレントトレーニングを避けるべきか? パート1/2

コンカレントトレーニングの干渉効果は今や広く知られている。多くのフィットネスの専門家たちは現在、アスリートや一般のメンバーに対してまでも、彼らの目的が筋力を増進し、パワーを発展させ、筋肥大をもたらすことである場合は、彼らのトレーニングの一環として持久系トレーニングを使うことに反する助言を行っている。しかしこれらの発言は確かな根拠に基づいているのだろうか?この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が、真実は以前に推測されていたよりも少々より複雑であるかもしれない、ということを示している興味深い研究論文の再考察を行う。 研究論文: コンカレントストレングストレーニングおよび持久系トレーニングの際の、トレーニングされていない男性における神経筋と心臓血管の適応、ミッコラ、ルスコ、イスキエルド、ゴロスティアガ、ハッキネン、国際スポーツ医学ジャーナル、2012年 背景: 何故コンカレントトレーニングを研究するのか? レジスタンストレーニング及び有酸素運動は、両方とも筋肉と心臓血管の適応を引き起こすものであるが、その適応は強度、量、頻度を含むトレーニングパラメーターにより異なる。レジスタンストレーニングは主に、筋力、筋肉量、力開発の速度(RFD)また筋パワーの増進につながる。有酸素運動は主に、最大酸素消費量および、段階的または一定の負荷での持久系テストにおける、極限の疲労に至るまでの時間の増加につながる。しかしながら、トレーニングプログラムにおいてレジスタンストレーニングと有酸素運動の両方を同時に行うことは、レジスタンストレーニングのみから成るプログラムと比較し、すべてではないものの、ほとんどの主なレジスタンストレーニングの適応において、マイナスの結果をもたらすようであることは幾度となく観察されている。この現象は「干渉効果」と呼ばれている。 干渉効果はすべての適応に対し均等に影響を及ぼすのか? ウィルソンによる最近のメタ分析(2012年)は、上半身および下半身の筋肥大、筋力、パワーに対する、コンカレントトレーニング対レジスタンストレーニングのみの影響を報告している。彼らのメタ分析において評論家は、実際にはレジスタンストレーニングのみとコンカレントトレーニングのグループの間で、筋肥大と筋力の増進に有意な差違はなかったということを発見している。しかし彼らは、レジスタンストレーニングのみのグループに比べ、コンカレントトレーニンググループにおいては、パワーの増進が有意に低かったということを発見している。これは筋力または筋肥大に比べ、パワーは干渉効果に対しより敏感であるということを示している。 しかしながら評論家たちは、その結果が持久系エクササイズの種類や身体の部位により分析された際、サイクリングはそうではなかったが、ランニングは下半身の筋力と肥大に対し干渉効果を引き起こすということが見いだされたと発見している。以前の研究が、マラソントレーニングに取り組んでいるレクリエーション的に活発な個人においての筋肉量減少に言及しているということは注目に値するが、干渉効果に関し、ランニングとサイクリングの間で正確に何が異なるのかは明確ではない。それはランニングの際に起こる多くのエキセントリックな動きによって生じた、広範囲に及ぶ筋損傷の結果であるのかもしれない。 いずれにせよ評論家たちは、パワーが干渉効果により最も強く影響を受ける適応であるという結論を出した。彼らはパワーおよびRFDに依存するスポーツを行うアスリートは、コンカレントトレーニングを避けるべきであると勧告している。しかし彼らは、筋力と筋肥大に依存するスポーツを行うアスリートは、ランニングを使用しない限りコンカレントトレーニングを使用することは可能であると助言している。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、44名の健康な成人男性において、レジスタンストレーニングのみ、もしくは持久系トレーニングのみと比較し、21週間のコンカレントトレーニングの効果を調査したいと考えた。重要なこととして研究者たちは、パワーを強調した場合においてもコンカレントトレーニングがパワーに対し悪影響であるのかどうかの検査を審議し、爆発的な筋力を向上させるためのレジスタンストレーニングプログラムをデザインした。彼らはまた、上記のウィルソン(2012年)による総説を基に、干渉効果があったとしても少なくすむよう、サイクリングを中心とした持久系トレーニングをデザインした。 レジスタンストレーニングプログラムは週に2回行われ、両側レッグプレス、ニーエクステンションエクササイズ、ベンチプレスまたはラットプルダウンエクササイズ、トライセッププッシュダウンもしくはバイセップカール、シットアップ、もしくはトランクエクステンションエクササイズ、ニーフレクションエクササイズまたはカーフレイズ、レッグアダクションもしくはアブダクションエクササイズを含む7つのエクササイズを含んでいた。両脚でのレッグプレスおよびニーエクステンションエクササイズは、2つの異なるワークアウトプロトコルを使用して行われた。ワークアウトのほとんど(80%)は高負荷にて行われ、ごく少量(20%)は低負荷(1RM の50-60%)にて爆発的に行われた。 持久系トレーニングプログラムもまた、自転車エルゴメーターを使用し、徐々に強度と量を増加しながら週に2回行われた。コンカレントトレーニングにはこの個々のトレーニングプログラム両方の組み合わせが含まれていた。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2381字

レジスタンストレーニングは筋繊維のタイプを変化させるか? パート2/2

これらの研究について我々は何を知り得ているか?(続き) コスティル(1979年)は、筋肉酵素活動および筋繊維のタイプに対する影響を究明するために、男性5名における7週間の等運動性レジスタンストレーニングの影響を調査した。介入の前後に研究者たちは筋検体を採取し、ATPアーゼを使用し筋繊維のタイプを評価した。 コーテ(1988年)は、50日間の脱トレーニング期間によって分離されたコンセントリック等運動性レジスタンストレーニングプロトコルの、筋繊維のタイプの比率、および酵素活動に対する影響を調査した。 コイル(1981年)は、男子大学生において、1秒間に60度もしくは300度の速度のどちらか、または1秒間に60度および300度の両方の速度にて週3回、6週間にわたり行われた、最大両脚等運動性ニーエクステンションを含む介入の影響を調査した。介入の前後に筋繊維のタイプがATPアーゼを使用し評価された。 デ・ソウザ(2014年)は身体的に活発な37名の男性において、8週間のコンカレントトレーニング、ストレングストレーニングのみ、そしてインターバルトレーニングの筋繊維のタイプに対する影響を比較した。 ファラップ(2014年)は、10週間にわたるレジスタンストレーニング、もしくは持久系サイクリングの、筋繊維のタイプに対する影響を比較した。研究者たちは繊維の表現型を計るため、外側広筋より筋検体を採取した。 ハッキネン(2001年)は、10名の中年男性、11名の中年女性、11名の高齢男性、そして10名の高齢女性における、6ヶ月間のレジスタンストレーニングプログラム(週に2回)の外側広筋の筋繊維の比率に対する影響を調査した。 ハッキネン(2003年)は21週間にわたるコンカレントストレングストレーニングもしくは持久系トレーニング対レジスタンストレーニングのみの影響を比較した。研究者たちは、ATPアーゼを使用し外側広筋における筋繊維の比率を評価した。 ハザリー(1991年)は、週に2回行われたレッグプレスおよびレッグエクステンションエクササイズにおける、コンセントリックのみ、もしくはエキセントリックのみの筋活動を含む、19週間の高負荷レジスタンストレーニング後の筋繊維のタイプにおける変化を調査した。研究者たちは外側広筋から筋検体を採取し、筋細繊維ATPアーゼと共に繊維のタイプに対し組織科学的に分析した。 ジャクソン(1990年)は12名の男子大学生において、大腿四頭筋群における2つの相反するレジスタンストレーニング方法による、筋繊維の領域の変化を評価した。一方のプログラムは筋力(高負荷、低レップ)に焦点を置き、他方は筋持久力(低負荷、高レップ)に焦点を置いていた。研究者たちは外側広筋から筋検体を採取し、筋繊維のタイプの比率の変化を評価した。 カラビータ(2011年)は、以前にトレーニングされていない40-67歳の96名の男性において、21週間のトレーニング期間にわたり、ストレングスと持久系を合わせたトレーニングの干渉効果を評価した。 クレーマー(1995年)は、高負荷ストレングスおよび持久系トレーニング、上半身のみの高負荷ストレングスおよび持久系トレーニング、高負荷持久系トレーニング、または高負荷ストレングストレーニングのいずれかを行った4つのトレーニンググループにおいて、異なる種類のトレーニングの影響を比較した。筋繊維のタイプの比率がATPアーゼを使用し評価された。 マリスー(2006年)は8名の男性において、プライオメトリックトレーニングの影響を評価した。彼らは介入の前後に外側広筋から筋検体を採取し、MHCアイソフォームに従い筋繊維のタイプを分析した。 マッコール(1996年)は、趣味としてのレジスタンストレーニングの経験がある12名の男性被験者において、12週間の増強されたレジスタンストレーニング(週に3回、1回につき8エクササイズ、各エクササイズを3セットずつ、1セットにつき10RM)の影響を調査した。研究者たちは上腕二頭筋から筋検体を採取し、ATPアーゼを使用しそれらを分析した。 ネトレバ(2013年)は、30名の男性被験者において、8週間にわたるレッグプレスレジスタンストレーニングの、外側広筋の筋繊維のタイプに対する影響を調査した。このリサーチには、1RMの25%,65%,および85%を使用してトレーニングを行った3つの異なるグループが存在していた。 パットマン(2004年)は、外側広筋を使い、40名の被験者におけるストレングストレーニング、持久系トレーニング、およびコンカレントトレーニングの筋繊維のタイプの移行に対する影響を調査した。筋繊維のタイプを確定するためにMHCアイソフォームが評価された。 パイカ(1994年)は、8名の高齢男性および17名の高齢女性被験者において、1年にわたりレジスタンストレーニングプログラムの影響を調査した。研究者たちは、基準値、15週間後、また30週間後に筋検体を採取した。プログラムは週に3回、12のエクササイズのサーキット(1RMの75%において8レップを3セット)により構成されていた。 ローマン(1993年)は5名の高齢男性において、12週間の高負荷レジスタンストレーニング後の、肘関節屈筋群の構造特性の変化を調査した。研究者たちは上腕二頭筋から筋検体を採取し、ATPアーゼを使用し組織学的に筋繊維の配分を評価した。 シェンケ(2012年)は6週間のプログラムにおいて、トレーニングされていない34名の女性における、異なる種類のレジスタンストレーニングプログラムの影響を評価した。全ての被験者はレッグプレス、スクワット、およびニーエクステンションを週2-3回、各セット6-10RMまたは20-30RMにて行った。さらに6-10RMのグループは、非常に低速、もしくは通常の速度においてレップを行う2つのグループへと分けられた。研究者たちは筋検体を採取し、ATPアーゼおよびMHCアイソフォームを参照することによりそれらを分析した。 トールステンソン(1976年)は、14名の男子生徒により週3回、8週間にわたり行われた、下半身のレジスタンストレーニングプログラムの影響を評価した。研究者たちは、ATPアーゼを使用する筋繊維分析のために、外側広筋から筋検体を採取した。 トラップ(2000年)は、1RMの80%にて週3回トレーニングを行った7名の高齢男性における、12週間の進歩的な膝関節伸筋レジスタンストレーニングの影響を調査した。介入の前後に研究者たちは、外側広筋から筋検体を採取し、MHCアイソフォームを分析した。 ワン(1993年)研究者たちは、18週間のレジスタンストレーニングの前後に外側広筋から筋検体を採取し、ATPアーゼを使用し繊維分類を行った。 ウィドリック(2002年)は6名の若年男性被験者において、12週間にわたる下半身のレジスタンストレーニングの影響を評価した。研究者たちは外側広筋の筋検体を採取し、MHCアイソフォームを分析した。 ウィリアムソン(2000年)は、7名の健康な男性において外側広筋から筋検体を採取し、12週間の進歩的な膝関節伸筋群のレジスタンストレーニング後のMHCアイソフォームを検査した。 *** 実践的意義は何か? トレーニングされている個人に対して 既にレジスタンストレーニングされている個人において、レジスタンストレーニングは、タイプIとタイプIIの間、もしくはタイプIIaとタイプIIxの間であれ、筋繊維のタイプを変化させない。トレーニングプロトコルは筋繊維のタイプを変化させるようデザインされるべきではないが、筋肉内において様々な筋繊維のタイプが存在するということは考慮に入れるべきである。 トレーニングされていない個人に対して トレーニングされていない個人において、レジスタンストレーニングは、タイプIとタイプII筋繊維の間における筋繊維のタイプを変化させない。トレーニングプロトコルは、タイプIとタイプII筋繊維の間で筋繊維のタイプを変化させるよう試みるべきではないが、筋肉内において様々な筋繊維のタイプが存在するということは考慮に入れるべきである。 トレーニングされていない個人において、レジスタンストレーニングはタイプIIaおよびタイプIIx筋繊維の間における筋繊維のタイプを変化させる。しかし、タイプIIx筋繊維の比率は小さく、そのような移行を(もしそれらが望ましいものではなかった場合)防ぐことが可能であったかどうかは明確ではない。

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レジスタンストレーニングは筋繊維のタイプを変化させるか? パート1/2

従来の負荷のプロトコルを使用したレジスタンストレーニングは、タイプII筋繊維の領域のより大きな肥大へつながると考えられているため、筋繊維のタイプの比率を変化させると期待されている可能性がある。しかしこれは実際に起こることなのだろうか?この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が研究論文の再考察を行う。 背景 筋繊維のタイプとは何か? 簡桔に言えば、筋繊維は主に、ミオシンATPアーゼ組織科学的染色、遺伝子複合体(MHC)アイソフォーム識別、代謝酵素の生化学的識別(スコット2001年)という、3つの方法に分類することができる。しかし最も一般的な方法にはATPアーゼ、もしくはMHCアイソフォームのどちらかが含まれており、現在の多くの研究はこれら両方の方法を使用している。 レジスタンストレーニングが筋繊維のタイプを変化させるかどうかを評価する理由は何か? ストレングスおよびパワーアスリートに対して 爆発的な筋活動を必要とするスポーツにおいて、筋繊維のタイプは、パフォーマンスに影響を及ぼすいくつかの要因の一つとして考えられている。タイプII筋繊維の比率がより高いことは、そのようなスポーツにおいて競技を行っているアスリートにとり、有益である可能性がある。レジスタンストレーニングは、筋繊維のタイプの比率を変化させることにより(勿論、主な要因は筋断面積、神経活動、および神経筋協調の増進であるが)、爆発的なパフォーマンスの向上をある程度助ける可能性がある。 持久系アスリートに対して 対照的に、持久系スポーツにおいて競技を行っているアスリートに対しては、より高い割合のタイプI筋繊維を持つことが有益であると考えられている。ゆえにタイプII筋繊維の比率の増加は、逆の適応であると考えられている可能性がある。しかしこの考えとは対照的に、レジスタンストレーニングは、通常多くの持久系アスリートに対し有益である、ということが発見されている。そのような向上は作業効率増進の結果として生じると考えられている。これらの作業効率における増進が、筋繊維のタイプの変化の効果として起こるのかどうかは明確ではない。 この論説に対する選択基準は何か? この論説では、私はMHCアイソフォーム、または筋細繊維ATPアーゼ、もしくはその両方を使用し筋繊維のタイプを測定した、レジスタンストレーニングの介入を含む長期の試験を選択した。コンカレントトレーニングの方法を調査した研究においては、レジスタンストレーニングだけを使用しトレーニングを行ったグループのみを取り入れた。 レジスタンストレーニングは、トレーニングされていない被験者における筋繊維のタイプを変化させるのか? 下記の表に示されている研究は、トレーニングされていない被験者の筋繊維のタイプの比率に、レジスタンストレーニングがどのような影響を及ぼすのかを調査している。下の表は、タイプI及びタイプII筋繊維の配分における有意または非有意な、増加もしくは減少を報告している研究を示している。 下記の表は、タイプIIaおよびタイプIIx筋繊維の配分における有意、または非有意な増加もしくは減少を報告している研究を示している。 トレーニングされていない被験者において、レジスタンストレーニングがタイプIからタイプII筋繊維の配分のシフトをもたらさないことは明確である。 レジスタンストレーニングは、タイプIIx筋繊維からタイプIIa筋繊維へという、タイプII筋繊維のサブタイプ内の筋繊維の配分におけるシフトをもたらすという科学的根拠も存在する。 レジスタンストレーニングは、トレーニングされている被験者において筋繊維のタイプを変化させるのか? 下記の表にある研究は、レジスタンストレーニングを行っている被験者において、レジスタンストレーニングがどのように筋繊維のタイプの比率に影響を及ぼすのかを調査している。 レジスタンストレーニングは、レジスタンストレーニングを行っている被験者において、筋繊維のタイプにほとんど影響を及ばさないようである。 変化の欠如はどのように説明できるか? レジスタンストレーニングされている被験者において観察された変化の欠如は、起こり得るあらゆる変化が、さらなるトレーニングが行われる時点までに既に起こっていたことが理由である可能性がある。あるいは、この集団においては変化が非常に遅かった、もしくは、個人間における多様性が非常に高く、有意な差違を検出することが非常に困難であった(タイプIIの誤差につながった)可能性がある。この領域において、さらなる研究が必要であることは明確である。 これらの研究について我々は何を知り得ているか? 上記に引用されている研究において使用された方法論(例えば、研究者たちが組織科学的分析、あるいは免疫組織化学法を使用したのかどうか、そして行われたレジスタンストレーニングの種類は何であったのか)について興味がある場合、もしくは単に引用文献が欲しい場合、アルファベット順に表示されている以下の詳細とリンクを参照のこと。 アガルド(2001年)は、14週間にわたる下半身の高負荷レジスタンストレーニングを行った11名の男性被験者において、筋繊維のタイプの変化を調査した。介入の前後に外側広筋から筋繊維の検体が採取され、MHCアイソフォームの配分(タイプIおよびタイプII)が評価された。 アダムス(1993年)は、19週間にわたる高負荷レジスタンストレーニング後の筋繊維のタイプの変化を調査した。彼らは外側広筋から筋検体を採取し、それらをMHC組織に対し生化学的に、また筋細繊維ATPアーゼと共に繊維のタイプに対し組織科学的に分析した。 アニアンソン&グスタフソン(1981年)は、12名の高齢(69-74歳)ではあるが健康な男性における、12週間にわたる週3回のレジスタンストレーニングの影響を調査した。研究者たちは、分析の為に外側広筋から検体を採取した。 ビショップ(1999年)は、18-42歳の持久系トレーニングを行っている21名の女性自転車競技者において、12週間にわたる下半身のレジスタンストレーニングの影響を調査した。介入の前後に研究者たちは外側広筋から筋検体を採取し、繊維のタイプの比率、および2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼとホスホフルクトキナーゼの活動を分析した。 ブラウン(1990年)は、14名の高齢男性において、12週間にわたる上半身、下半身両方のレジスタンストレーニングの影響を調査した。 カンポス(2002年)は32名のトレーニングされていない男性において、8週間にわたる異なるレジスタンストレーニングプログラムの影響を調査した。被験者は、低レップグループ(3-5RMを4セット)、中レップグループ(9-11RMを3セット)、 高レップグループ(20-28RM)のグループに分けられ、全員が3つのエクササイズ(レッグプレス、スクワット、ニーエクステンション)を行った。介入の前後に研究者たちは筋検体を採取し、ATPアーゼおよびMHCアイソフォームの両方を参照することにより繊維のタイプの構成を分析した。 キャロル(1998年)は、週2-3回行われた伸筋群および屈筋群のレジスタンストレーニングの影響を調査した。介入の前後に研究者たちは、外側広筋のMHCアイソフォームにおける変化を測定した。 シャレット(1991年)は27名の健康な高齢女性(69 ± 1歳)において、12週間のレジスタンストレーニングプログラムの影響を調査し、筋のタイプを評価するために介入の前後に筋検体を採取した。

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トレーニングプログラムはジャンプの生体力学にどのような影響を及ぼすか? パート2/2

何が起こったのか?(続き) スクワットジャンプおよびカウンタームーブメントジャンプの関節角度の動き スクワットジャンプに対し、従来のレジスタンストレーニンググループが股関節角度変位の有意な減少を示した一方、オリンピックウェイトリフティンググループは膝関節角度変位の有意な増加を示していた。カウンタームーブメントジャンプに対しては、オリンピックウェイトリフティンググループが股関節角度変位の有意な増加を示していた。ジャンプの際のこれらの関節角度における変化は関節の硬さに影響を及ぼし、ゆえにジャンプの際の全体の垂直剛性に影響を及ぼす。スクワットおよびカウンタームーブメントジャンプの際の、各トレーニングプログラムの結果としての全ての変化は、下記のグラフに示されている。 実際にはこのグラフは、特にこれを上記の垂直跳びの高さにおける増加と比較した際、研究が明らかにした最も明確な傾向の一つを示していると思われる。上のグラフからは、オリンピックウェイトリフティンググループは主に、プログラムの結果として、股関節および膝関節両方における関節角度変位の増加を示していた。関節角度変位におけるこれらの大幅な増加は、垂直跳びの高さ及びパワーにおける大幅な増加と並行して起こり、それはジャンプパフォーマンスにおける関節角度の動きの優れた全体的な協調性を示唆している。 一方、従来の高負荷レジスタンストレーニンググループは、膝関節変位のわずかな増加を示すのと同時に股関節変位の大幅な減少を示すと共に、垂直跳びの高さおよびパワーにおけるより少量の増加を示し、これらはジャンプパフォーマンスにおける関節角度の動きのより不十分な協調性を示唆している。 使用されたトレーニングプログラム(マシンニーエクステンション、マシンニーフレクション、マシンレッグプレス、ベンチプレス、およびハーフスクワット)の、極めて膝関節主導の特性を考慮に入れると、これは、従来の高負荷レジスタンストレーニンググループは、股関節の筋力と比較し、膝の筋力をよりいっそう発達させ、同時に膝関節可動域の増加および股関節可動域の減少により、より協調性が少なく、より膝関節主導のジャンプスタイルへと移行したということを示唆している。しかしながら、これは単なる推測にしかすぎず、より股関節主導の高負荷レジスタンストレーニングプログラムにおいても同様の結果が得られるかどうかは明確ではない。 ドロップジャンプにおける関節角度の動き 20cmからのデプスジャンプにおいて、従来のレジスタンストレーニンググループが股関節角度変位の増加を示したのに対し、オリンピックリフティンググループは膝および股関節変位の減少を示した。40cmからのデプスジャンプに関する限りでは、関節角度変位における差違は存在しなかった。60cmからのデプスジャンプにおいては、従来のレジスタンストレーニンググループは股関節角度変位の減少を示した。これらの変化が正確に何を示唆しているのかは明確ではない。しかしながら、ジャンプの際の関節角度の変化は関節の硬さに影響を及ぼし、それゆえジャンプの際の全体の垂直剛性に影響を及ぼす。各トレーニングプログラムの結果としての、異なるドロップジャンプの際の全ての変化は下記のグラフに示されている。 剛性 研究者たちは、両方のトレーニングプログラムは、スクワットおよびカウンタームーブメントジャンプの際の垂直剛性を増加させたと報告している。彼らはまた、20cmおよび60cmからのドロップジャンプに対しては、オリンピックウェイトリフティンググループのみが垂直剛性を増加させたと記述している。 共収縮 研究者たちは、共収縮指数は両方のプログラム後、スクワットジャンプの活性化以前の段階において減少したと報告している。彼らはまた、共収縮指数は、オリンピックウェイトリフティンググループに対し、コンセントリックの段階において減少しているが、従来のレジスタンストレーニンググループに対しては変化がなかったと報告している。研究者たちはまた、共収縮指数は両方のトレーニンググループに対し、カウンタームーブメントジャンプの活性化以前およびコンセントリック段階において増加したと報告している。しかしながら彼らは、従来のレジスタンストレーニンググループに対しては、コンセントリックの段階においてのみ増加したと記述している。デプスジャンプの際の共収縮指数の変化は混在しており、あるものは増加し、あるものは減少したということを示している。概して研究者たちは、オリンピックウェイトリフティンググループは大抵の場合、共収縮指数の減少もしくは維持を示し、一方、従来の高負荷レジスタンストレーニンググループはほとんどの場合、共収縮指数の増加をもたらしたということを観察した。しかしながらこれらの傾向はかなり大まかなものであり、実際にはかなり混合した結果が見られる可能性がある。 *** 制限要素は何か? この研究は、従来のレジスタンストレーニングプログラムを行っている被験者が、主にマシンでのエクササイズを行ったらしいという点において制限があった。ゆえにこの研究は、スクワット、デッドリフト、フロントスクワット、ベンチプレス、およびロウから構成される従来のフリーウェイトプログラムと比較し、オリンピックウェイトリフティングプログラムがどのように機能するかについては示されていない。研究はまた、研究者たちが筋力の増加を追跡しなかったという点において制限があり、ゆえに、各プログラムがどの程度筋力を向上させたかは明確ではなく、それゆえ垂直跳びの高さの向上が筋力の増進と関係があるのかどうかは明確ではない。さらにこの研究には、研究者たちは共収縮指数および剛性測定における変化に関する傾向を特定することはできたが、グラフにおいても明らかなように、その結果は実際には非常に多様であり、一様に一方向を指しているわけではなかったという点において制限があった。 *** 実践的な意義は何か? オリンピックウェイトリフティングトレーニングは、特に伸張・短縮サイクルが多大に関与しているカウンタームーブメントジャンプの際の垂直跳びの高さ、およびパワーを向上させるためにより有益であるようである。 従来の高負荷レジスタンストレーニングは共収縮指数、そして傷害予防として有益であるかもしれない関節の安定性を向上するためにより適しているようである。 主に膝関節主導の下半身エクササイズを含む従来の高負荷レジスタンストレーニングは、スクワットおよびカウンタームーブメントジャンプの際の股関節可動域の減少と膝関節可動域の増加を引き起こすようである。これは、アスリートおよび彼らのジャンプスタイル次第で、望ましくも望ましくなくもなり得るものである。

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