ストレングスとは何か?パート3/3

NHL(全米アイスホッケーリーグ)の選手達はシーズン中、組織のモビリティー、安定性を確実にするためにどのようなことをしているのでしょうか?スクリーニングの取り入れ方や、軟部組織のコンディショニング、動きのトレーニング等、他のスポーツにも共通する要素もありそうですね。

ミショール・ダルコート 12:44

肩帯のシリーズ#3 胸椎の伸展や回旋のモビリティー

(肩帯のシリーズ#2はこちらへ) (肩帯のシリーズ#4Aはこちらへ) 肩の健康のためのシリーズ第三弾では、胸椎の伸展や回旋のモビリティーを高めるための簡単なドリルの数々をご紹介します。是非お試し下さいね。

谷 佳織 15:19

脳、動作、痛み!(セクション II・パート3/3)

皮質地図 私達の大脳皮質の中には、身体の領域の皮質再現があります。この皮質再現は、脳の多くの領域に存在するニューロンのネットワークであり、身体領域のひとつと関連しています。最も良く理解されているのは、体性感覚/運動領域です。 足には足の領域が、手には手の領域があるのです!。身体からの感覚情報は、それが関連している領域に投射されます。1930年代にペンフィールド博士は、最初に皮質領域の地図を作った時、これらの領域をホモンクルスもしくは、小人にして表現しました。 Merzernichの1984年の有名な研究では、猿の第3指を切断する前に、脳の地図に手を描き、そして、切断の62日後に再び脳の地図を描きました。 彼は、第2指と第4指が、以前は第3指に関連していた領域に入り込んでいることを発見しました。これは、“使わなければ失われる”の例なのです! これは、偉大なる神経科学者ラマチャンドランによって研究された幻肢痛のようなコンディションに大きな影響を与えています。身体の部分が切断されても、その部位の皮質再現は残存します。身体局所的に組織された隣接領域は、この残存している領域に入り込んでいきます。これは、手首を司る領域は前腕領域の隣にあり、前腕領域は肘領域の隣にあるというようなことを意味しています。よって、腕の肘から下が身体的に切断されていても、残存している腕領域は、以前は腕の感覚フィードバックによって占有されていた皮質空間に入り込んでいる、肘からの感覚フィードバックを受信することになります。 Flor およびその他(1997)は、慢性腰痛の患者において、体性感覚皮質(S1)内の腰部領域は、下腿領域に入り込んでいて、この拡張の度合いは、痛みの慢性化に密接に関連していることを発見しました。 この感覚変化は、私達の運動能力にも大きな影響を与えています。私達の感覚情報は、運動野に到達する前に感覚野を通って流れていきます。このように、私達が感じていることは、直接的に私達の動き方に影響します。同様に、私達の動き方は、私達の感覚野に影響します。この場合もやはり、“使わなければ失われる”でありえるのです。 トーマス・ハナは、私達が身体の特定の部位を、自発的に動かしたいように動かす能力を喪失している状態を‘感覚運動記憶喪失’という造語で表しました。そういった人達は、しばしば弛緩することも収縮することもできず、姿勢の変化を作り出せない不変の姿勢で行き詰った状態でいます。これは、習慣的な動作や姿勢、損傷後の持続的な防御運動パターンによって発生します。姿勢を変えるためや、これらの身体の部位を動かすために関連する神経経路は、その無活動さによって消失していきます。 “感覚地図からの一定で正確なフィードバック無しには、運動地図は役目を果たすことができません。そして、相互退化のフィードバック・ループがセットアップされます。感覚地図が悪化すると運動地図も悪化し、そして、感覚地図がより悪化します。” ~“身体は、独自のマインドを持っている”とサンドラ・ブレイクスリーとマシュー・ブレイクスリー夫妻は述べています。 Zヘルスのデビッド・バトラーとコブ博士の両者は、この地図のぼやけと不鮮明さを痛みの原因、もしくは痛みの結果として挙げています。脳は、感覚性不一致の場合、地図の鮮明さの減少が大きなインパクトを与えるために、不正確な地図を“脅威”として知覚することができます。 この再構成は、痛みに直面した時にも発生します。よって、過去の外傷や痛みの既往が、神経可塑性を通して、将来の動作に影響を与えます。オーストラリア人神経学者のロリマー・モズレーは、慢性痛を持つ患者においての神経皮質の変化と、それがどのように運動調節に影響するかの研究を行っています。 ”痛みが持続する際に発生する変化の一側面として、一次感覚皮質における痛みを伴う身体部位の固有感覚的表現があります。これらの表現は、脳が動作の計画を立て、遂行するために使用する地図であるため、運動調整に影響を与えるかもしれません。身体部位の地図が不正確になると、運動調整は阻害されるかもしれません。皮質性固有感覚の地図の実験的な混乱が、運動計画を邪魔するということが知られています。” ~ロリマー・モズレー:サウス・オーストラリア大学の臨床神経科学の教授、及び健康科学学部の理学療法科の教授。 私たちは皆、生きている間に、皮質レベルで運動能力を損ない、再構成するような軽傷と重傷の両方を経験するため、この影響は重要です。ケガによるリハビリテーションは、通常、疼痛反応の除去に関連しているのであり、ケガに関連している動作の欠如や神経可塑性の変化を修復するものではありません。これが慢性障害/慢性痛の状況をもたらす可能性があります。痛みが治まっても、疼痛反応の間に誘発する局所の防御運動パターンが持続するかもしれません。そして、これは全体の運動パターンを変化させ、機能に関連した運動連鎖内の、他の領域に影響を及ぼす可能性があります。 感覚運動不一致も、痛みに起因しています。私達は、これを以前に考察した小脳内の入力機構と結びつけることができます。マックカーベ (2005) は、ラマチャンドラン (1995) の、動作意図と固有感覚フィードバック間の不調和によって引き起こされる組織損傷の欠如における痛みについての非公式の推測について検証しました。この研究では、運動指令と固有感覚フィードバックを阻害するために、鏡が使用されました。確かに、この研究には視覚系が関与しているため、感覚と運動の調和を考察する際、及び小脳の入力と出力を見る際には、これを考慮に入れなければなりません。 Zヘルスのコブ博士は、脅威と身体への痛みの要因としての感覚不一致についても考察しています。例えば、私達が頭部位置の傾斜や回旋を起こす視覚の優位性を有していれば、小脳内で情報が統合される際に、視覚系情報は前庭系情報と食い違っているということになるかもしれません。視覚系から本来の位置と仮定される頭部の位置は、前庭系からの本来の位置ではありません(頭が傾斜しているため)。それぞれの発信源からの情報は、相反しています。これは、感覚間不一致と脳内の‘脅かされた’状態をもたらす可能性があります。 “神経障害痛のような感作、阻害された神経系において、感覚運動不一致は痛みに寄与、もしくは痛みを維持する可能性があります。” 〜Moseley and Flor 2012年 痛みは複雑な問題ですが、ただ固有感覚フィードバックもしくは、侵害受容フィードバックに関連しているだけではありません。 この非常に簡単なブログの範囲で収まらない程、痛みには多くの脳に基づく根拠があり、痛みに関して研究すべき脳の領域が他にも多くあります(免責事項完了)。そのような一つの根拠は、侵害受容線維から入力の無い身体上の組織への損傷という明らかな脅威です。 次のパートでは、蓄積されたパターンに基づき脳が行う予測と、脳が受信する感覚情報の知覚について考察します。この予測は、いかなる組織損傷も存在しない場合でも、痛みを引き起こすかもしれません。このように、痛みが当然ではないかもしれない状況でさえ、身体は組織への脅威を予測することができます。そして、感覚情報の処理の中枢性感作についても考察します。以前に脅威、もしくは痛みの閾値を超えていないかもしれない信号は、中枢性閾値の低下として解釈されます。

ベン・コーマック 3234字

脳、動作、痛み!(セクション II・パート2/3)

顧客/患者の動作を理解するために、様々な感覚経路がどのように私たちの動作の遂行に影響しているかも理解しなければなりません。 この区分には、固有受容と共に、小脳内での感覚一致において主要な役割を果たす視覚系と前庭系も含まれる必要があります。感覚不一致の影響については、後ほどブログ内で考察します。臭覚や聴覚を含む感覚全てが、私たちの周辺世界の描写形成を手助けすると共に、動作にも影響を与えるでしょう。 感覚系は、たびたび他の発信元からの情報にバイアスをかける視覚系と共に、重要度の階層を示します。要するに、影響を及ぼしている組織のストレッチや強化モデルは、感覚系階層内の高次機能不全に直面して、余剰になっているかもしれないということを意味しています。例えば硬い胸筋などをストレッチすることは、効果の無い事かもしれません。マッサージ、穿刺、リリース、手技等も同様です。眼性の不均衡によって支配されている筋肉の姿勢状態/位置は、修正されるまで長期間にわたり優先することでしょう。姿勢制御の最大70%は目からの情報に基づき、動作パターンと視覚情報は、脳内で統合されます。 このような状況は、骨、関節、もしくは筋肉の動きなどの‘局所’レベルで制御されているわけではありません。顕著な姿勢を維持するために、局所レベルで筋肉に影響を与えている予期的な小脳活動は、高次レベルで感覚的要因を対処することなく克服するには、強すぎるのかもしれません。 視野や利き目に影響を及ぼす眼性の脆弱性と制御の欠如は、直接的に私たちの運動能力を制限します。脳は、視力の弱い目もしくは、利き目と反対の目からの情報を抑制し(近視でない限り)、視野狭窄と主要な頭部、体位、動作パターンの制限により、視力の強い目に適合させようとします。この抑制は、それぞれの目から入ってくるイメージが一致しない時、例えば、片目がぼやけているときにも起こりえ、脳はそこからの情報を抑制することを選択する可能性があります。筋肉レベルの変化では、目によって統制されている脳内での姿勢の運動プログラムは変化しないでしょう。長期間に及ぶ局所治療(筋肉レベル)に反応しない姿勢の問題に対してのアプローチを、変更していく必要性があるのかもしれません。そして、これは、システム内の感覚性不一致をも引き起こす可能性があります。感覚性不一致に関しては、後のブログで考察します。 いわゆる固有受容トレーニングのほとんどは、実に視覚、前庭、固有受容器によるものであり、私達はバランスと安定性を得るために、恐らく視覚系と前庭系を使用しています。しかしながら、私達が動作機能不全、もしくは‘安定性’を見るとき、視覚系と前庭系を見ない傾向にあります。 運動パターンに基づき、脳によって制御されている筋肉の長さと力に関して、どの感覚系もすべて、私達の運動電位に影響を及ぼします。 にも関わらず、私達の評価と治療は、動作と痛みにおける脳の役割であるパターン呼び出し、知覚、予測モデルを考慮していない、非機能的姿勢(腹臥位)での局所的で不自然な筋活動に重点的に取り組んでいます。 神経可塑性 実際、時間の経過と共に、感覚情報は、私達の動き方を変えることができます。脳に関して普及していた理解のように、残存している生理学的セットではなく、物理学的構造と機能的組織の両方に関して、脳は可塑的で変わりやすい領域なのです。 私たちが新しいことを学習・経験をすると、脳は、新しい身体的技能、もしくは身体的ではないもの、例えば新しい言語の習得に関連した、新しい神経連絡を作ることができ、既存の神経連絡を強化することができます。 これは、このブログの最初のパートに記載した“同時に発火するニューロンは、ともに結ばれている”という原理に付随しています。新しいパターンに関連しているニューロンは、可塑的に脳の機能的組織を変化させている連結を強化します。 また、これは私達が“使わなければ消失する”、もしくは“別々に発火するニューロンは、別々に結びつく”という神経学的原理を理解する手助けをしています。 単純に、私たちが使用しない連結、もしくはパターンは、損なわれ、失われていきます。しばらく行っていない技能を行おうとするとき、定期的に練習していた時と同様に行えなくなるのはそのためです。 ”神経伝達物質の放出に不活性な軸索分岐が後退する一方で、より活動的な軸索分岐は、特定の神経筋部位で生存し、多ニューロン神経支配の標準的な排除を引き起こしています。” ~Jackie Yuanyaun Hauおよびその他 簡潔にまとめると、不活性な軸索分岐は死に絶え、活動的な軸索分岐は生存し、より強く成長します。このように、私達はニューロンの能力を効率性、そして生存潜在力と潜在性能増大のために洗練しています。この過程は、私達の日々の行動によって調節されています。 これは、動作と姿勢に大きな影響を与えています。私達が身体のある特定の動作をしなければ、将来、その動作をすることが苦手になるでしょう。これらの動作で神経連結と関連するパターンは衰え、より強いパターンに取って代わられます。 その良い例は、偏平足でしょう。足のアーチを作り出す運動パターンに関連しているニューロンは、通常の足のアーチを作り出すほど強く結びついておらず、この反応を作り出すために同時に発火するニューロンも持っていません。このケースの場合、動かなければ失ってしまうのです! この特定のソフトウェアもしくは、運動プログラムを稼働させるために必要な神経ハードウェアは、本来あるべき強さを持っていません。ハードウェアのアップデートをすること無しに、ただ単にそのハードウェアにソフトウェア/運動パターンを適用することは、その動作が、あなたの要求するような円滑な作動をしてくれないことを意味しているかもしれません。シンプルなフィードバックに基づいたエクササイズや手技では、神経可塑的変化を作り出すことに関連しているハードウェア問題に対処することにはならないかもしれません。 実際、 ただ感覚フィードバックのみが含まれるのではなく、経験についての学習が関連する場合、 皮質変化はより強くなることが証明されています。皮質再現は、感覚運動技能を新しく習得した1~2日間以内に、2~3倍に増加する能力を持っています(Merzenich and Blake 2002-2006)。 ハードウェアの変化の過程は、潜在的に行われるエクササイズ、ストレッチ、実践的技術より、はるかに集中的、認知的、直接的なアプローチかもしれません。慢性的な姿勢や動パターンを変化させることは、認知的レベルの関与を必要とする挑戦的な過程かもしれません。顕著なパターンを解消するためには、逆戻りしないように充分な気づきを持つ必要があります。

ベン・コーマック 2974字

脳、動作、痛み!(セクション II・パート1/3)

このシリーズのセクション1では、パターンと、蓄積された記憶からの反応を呼び出すため、もしくは自動関連するために、どのように脳が情報のパターンを認識するのかをみてみました。 下記が私たちのモデルです: パターン 知覚 予測 このセクション2では、知覚と感覚情報を送るシステム、そしてそれらがどのように処理されるのかを見ていきます。蓄積されたパターンと脳に流れ込んでいく神経パターンを比較することにより、私たちは、蓄積されたパターンの実行により起こりえる結果を予測することができます。小脳は、この過程において重要です。小脳の大きな役割の一つは、感覚を蓄積されたパターンと一致させることで、関連する運動プログラムを遂行、調節する手助けをします。知覚は、蓄積されたパターンと現在起きている実際の状況とを比較する手助けをしています。 知覚情報は、筋肉の長さと張力、関節の位置、圧力、振動、温度、痛みの信号を含んでいます。私たちはまた、視覚系や前庭器官系からも知覚情報を受け取ります。 私たちはそれらを、情報ではなく知覚と呼びます。なぜなら私たちがこの情報を感知する方法は、人それぞれに異なるからです。実際、同じ人がこの情報を毎時間違うように感知することもありえます。疲労感があるときや神経質になるときに痛みを引き起こすかもしれない信号は、静養し体力が増しているときには、あなたを悩ますことは無いかもしれません。ブログのパート1で最初に考察したように、これはこの情報が中枢的に処理され、‘神経基質’によって調節されるからなのです。私たちの活力レベル、ストレスレベル、健康状態、情動状態が、この調節に影響を与えます。ありとあらゆるものが、情報の中枢処理に影響を与えるでしょう。 私たちの感覚経路は、再帰的である、つまり、脳の高次中心が、入力される感覚情報を修正し形成しています。私たちの世界に対する知覚は、外面的にも内面的にも私たち自身によって形成されています。それは、私たちが解釈する情報が、私たちの政治的、道徳的信念によって形成されることとほぼ同様です。二人の人間が、彼らの内面的な調節に基づいて、同じ情報を違うように解釈する可能性があります。知覚は、我々の周囲の世界の直接的記録ではなく、主観的解釈なのです。ドイツ人哲学者のカントは、これらの脳の特性を‘演繹的な’知識と称しました。 ”脳は、実在の現実にではなく、認識したものに反応する” ~Moseley & Flor 2012年 私たちの身体からの主な感覚情報の発信源は、脊髄から小脳や大脳皮質に向かって上方に流れる上行性体性感覚経路です。 私達は、脳の意識領域と潜在意識領域に情報を伝達する信号を持っています。高次感覚皮質は、掻く必要のある痒みや痛みといった、留意すべき意識的情報を受信します(島皮質と帯状皮質にも投射される)。 小脳は、意識的な思考を必要とすることなく、私たちが効果的に動くことを可能にする潜在意識の情報を受信します。 これら身体からの感覚経路には、下記を含みます: 脊髄後索・内側毛帯路(DCML)は、触覚のように身体から視床を介して、感覚皮質に到達する意識的な固有感覚情報を伝達します。  脊髄小脳路の4区分は、潜在意識の固有感覚情報を、身体から小脳に伝達します。 前外側脊髄視床路は、温度と痛みの情報を視床に伝達し、そこからより上方の様々な皮質領域に伝達します。 小脳 小脳は、脳全体の10%しか占めていませんが、ニューロン全体の50%以上を含んでいる驚くべき領域です。この事実のみからも、その重要性が伝えられます。 小脳は、結果の予測を作り出し、そして、この情報を脳幹と運動皮質に中継する手助けをするために、意図する動作もしくは、パターンを感覚情報と一致させます。このような方法で、感覚系を介してパターンの変化に反応することができ、脳内のパターン、知覚、予測のモデルにとって必要不可欠なのです。 小脳は、意図する動作を繰り返す内在的フィードバック情報と、実際の動作を繰り返す外的フィードバック情報を比較します。絶えず様々な感覚を統合し、それらを蓄積したパターンと比較し、私たちが目的を遂行するために調整する手助けをしています。小脳は、協調的な運動調節の遂行中、その計画と修正の両面において重要です。小脳は、私たちの動作を比較し、そして、多くの蓄積したパターンに適応させることを可能にしている大脳皮質の高次脳機構と(視床を介して)コミュニケーションを取っています。皮質と小脳の間の、この不変の感覚と運動の情報の環が、私たちの動作の達成には重要なのです。 小脳は、3つの機能的区分に分けられます: 前庭小脳 -バランスと眼球運動を調節します。 前庭小脳は、視覚野と前庭神経核から情報を受信します。 前庭動眼反射のような重要な反射をサポートしています。前庭動眼反射は、頭部の動きによって誘発される代償性眼球運動を特徴としています。通常、頭部は常に体の動きに沿って動くため、この反射は特に重要です。 脊髄小脳-身体と四肢運動 脊髄小脳は、脊髄を介して、主に体性感覚受容体から情報を受信します。 小脳は、動作を調節するためのフィードフォワード運動制御を提供するために、パターンを習得します。この予測能力が、(感覚フィードバックが発生する前でさえも)円滑で正確な動作の発生を可能にしているのです。これは、私たちが動作の語彙を形成する際に、動作パターンに割り当てられた習得行動であり、瞬間的なフィードバックではなく、以前の感覚フィードバックに基づいているに違いありません。 大脳小脳 -動作計画 大脳小脳は、橋の橋核を介して、大脳皮質から情報を受信します。 大脳小脳は、動作計画に取り組み、皮質性動作パターンを調節する高水準の内部フィードバック回路に関わっています。

ベン・コーマック 2592字

肩帯のシリーズ#2 肩甲骨の動き

(肩帯のシリーズ#1はこちらへ) (肩帯のシリーズ#3はこちらへ) 外傷を伴わない慢性的な肩の痛みに関連したシリーズ。肩の健康のためには、肋骨に対して肩甲骨がスムーズにグライドをすることが必要になります。肋骨に対しての肩甲骨のグライドを向上させることで肩の可動域は大きく変化します。

谷 佳織 5:57

ストレングスとは何か?パート2/3

NHL(全米アイスホッケーリーグ)のトップレベルの選手達に必要とされるストレングスとは?ベンチプレスやスクワットがどの位挙げられるか?というような強さは、試合での成功につながるのか?NHLのS&Cコーチ、サイモン・ベネットとViPRの創始者ミショールが、 競技に特有なストレングスの要素を動きの特性を語ります。

ミショール・ダルコート 11:58

トレーニングの原則:人間の形のデザイン パート2/2

トレーニングの原則 ー 集合体の原則 集合体とはこのように定義されます”...ひとつのボディに集められたパーツやユニットの集合体により形作られたもの、質量や量;別々の物が合わさった、もしくは関連づいた質量;収集物 真の基本的な原則のひとつは、身体は”集合体”として存在しているということです。私たちの全ての肉体構造は、関係性を含有しています。全てなのです!まさに身体の型は、統合された機能に従っているのです。私たちは明らかに部分の集合体であるよりも全体としてのほうが明らかにより強く、より効率的で、より安定し、より機動的です。 前述した ”膝について考える実験” を例としましょう。私たちはマニュアルの評価から、タスク評価やムーブメント観察とは全く異なった情報を与えられることを目の当たりにしました。明らかな違いは、ひとつは局所的な(孤立した)膝の機能であり、もう一方は包括的な(統合された)膝の機能であるということです ひとつは膝を孤立して見て、もうひとつは身体と関連づけて見ています。人体のデザインは単に構造としてだけではなく、身体を形作る構造の集合体として全体の構造を考えることを必要としています。効果的な人間というのは全体性を持ち、部品の集合体よりも途方もなく素晴らしいものなのです! 私たちが行ったタスク評価で、より膝の動きが見られたということは、理にかなっているのではないでしょうか?なぜなら、ただ単に膝が動いていたからではないからです。より広義な観察においても、股関節と足首はより膝の動きに関与していることがわかります...空間において。 それは膝がその構造内で動いているというのではなく、膝はより多く動く余地を持っているのです(動くためのより大きな閾値がある ー 図4参照)。足首が生理学的動作をする時にも同じことが言えます。 膝も動きについていきます。その結果、私たちは膝全体が、全ての動作面においてより多くの動きの可能性を持つということを目の当たりにします。これは実際、他の関節に力を分散させることで膝の構成の摩耗を減少させる効果を持ちます。 図4 今日におけるムーブメントの評価は、集合体の原則と人体動作力学のより統合的視点を取り入れなければなりません。結果として私たちの矯正的戦略が変わることになります。 トレーニングの原則 ー 自然の秩序 私たちは単なる滞留物ではなく、永続するパターンを持っているのである - ノルバート ウィーナー トレーニングの世界では(人生の全ての側面においても)、自然秩序は明確な枠組みに従っています。それは以下のように述べることができます。 刺激->反応->変化/適応 私たち人類の身体には、ある種のパターンや順序というものが存在します。私たちはそれを特異性の原則(SAID原則)と称します。しばしばこれは、身体にかけられた負荷増大によって起こった筋肉の適応に関連して定義されています(負荷トレーニング、もしくは持久性トレーニングにおいて)。 しかしながら自然秩序は、単なる筋肉の変化だけに留まりません。この枠組みは全ての生物学的システムに影響を及ぼします。人体は、驚くべき可塑的な媒体なのです。身体は、より規則的でエネルギー効率の良い構造に急速に変化を遂げることができるのです。 身体は、規則的ではなく、更にエネルギーを必要とする構造に急速に変化を遂げることもできるのです。例えば、私たちが慣れている座位の姿勢を思い浮かべてください。もし私たちがある座り方をしてこのポジションを保持していると、時間の経過とともに、身体はこの形に自ずと“固定”していきます(特に脊柱)。 トレーニングの質問が問いかけてきます:私たちのクライアント/アスリートはどちらの環境に適応していっているのだろうか?環境により、彼らがより効率的になっているのか、それとも環境により、エネルギー漏れが強まっているのだろうか?以下の二つの図を考えてみてください。 図5 図6 トレーナーとして、私たちはクライアントの動きを観察することで、定期的に評価を行っています。過去に私は、二元論的な考え方に行き詰まっていることがよくありました。つまりこのエクササイズが正しくて他のものは間違っている、といったものです。 現在私は、私の選択したエクササイズから、どのような適応が起こりえるかを考えます(自然秩序に従って)。そして “このエクササイズはクライアントをより効率的にするか否か?” と自問します。自然秩序の原則を元に、上記の2つの図について考えてみましょう。 図5では、脊柱において著しい側屈と前屈が、股関節では閉じられた屈曲と足部には外旋が見られ、それらは全て静的姿勢においておこっています。刺激が反応を生み出すとすれば、どのような変化や適応が結果としてうまれるのでしょうか? 人体構造は常に、最も慣れ親しんだポジションに適応します。図5の人は、彼自身がそのポジションに調整をした結果なのです。これはコラーゲン繊維が生成され、疎性結合組織内の細胞外基質に放出されたからです。 結果として、身体は筋膜的にそのパターンに”落ち着き”ます。言い換えれば身体は(より厳密にいうと、筋膜)は、可塑性を持つ媒体なのです。結合組織は、経験するストレス要因に基づいて、継続的に形をかえていくのです。 結合組織細胞は、力学的力によって自らを再配列します。(これは活動している筋肉の動きによるもの、怪我によるストレスや、静的姿勢を長く保持し続けていること等によるものかもしれません) この結合組織を通るストレス(力学的力)は、組織を変形させ、分子間の繋がりを”ストレッチ”させるのです。その結果、組織の電荷が変わります。結合組織細胞はこの変化に反応し、そのエリアの細胞間の構成要素を集合体とするか、減少する、もしくは変化させます。 例えば上部交差症候群を例にとりましょう。胸椎の後弯の増加に気づきます。その結果、肩関節包が前方に移動し、それに呼応して頸椎の前弯が増加します(頭部前突の姿勢)。人体には、より多くのストレスがかかることになります。 身体の分節がニュートラルから外れ、長期間静的にその姿勢が保たれていると(「悪い姿勢」のように)、筋肉は長さを変えます(短くなるものもあれば、長くなるものも)。「短縮した」筋肉(ここでは小胸筋)は短縮位で固まり、「伸長した」筋肉(ここでは僧帽筋上部)は伸長位で固まります。これは周辺細胞間基質の筋膜的繋がりが増えたためです。 図6は何が違うのでしょうか。一つには、より“オープン”な身体であり、構造自体が重力に対して図5とはかなり違った形で位置しているということです。(他の原則でもみたように) そこで問いかけるべきなのは “あなたはクライアント/アスリートにどのように自然の秩序に従い、適応して欲しいですか?” ということ。図5は”クローズな”身体のポジションに適応し、図6は“オープン”なポジションに適応する傾向があります。 トレーニングの原則 ー 自然の力 私たちは、力に支配された媒体の中に存在しています。重力と床反力は、トレーニング領域において親しまれている2つの力です。重力は下に引っ張り、床反力は身体を押し上げ動きを作り出せるものだということを、私たちは知っています。 私たちの身体は、これらの相反する力の間でバランスを取っています。私たちは地面を”プッシュオフ”する際に、重力フィールドの“中”を動き”横切り”ます。重力フィールドは地面とともに、私たちの身体を形づくることを助けているのです。 私たちの身体の股関節後面には沢山の筋肉があるのに対して、前面にはあまりないのはなぜなのかを考えてみましょう。 私たちの足が地面についた時に、身体を減速させる(重力が身体を引っ張り下げる時)際、主に責任を負うのは股関節後部筋群(すなわち臀筋等)になります。 我々の生物学的システムは、我々を取り囲む自然の力の中で発達してきました。その影響から逃れることは不可能です。しかし私たちは滅多に(もしあるとしても極めてまれ)これらの力を見ることはなく、私たちの身体を助ける為に使うことも滅多にありません。 私たちの身体は、この力を助けの為に使うのではなく、屈服してしまうことが、あまりにも多すぎます。落ちたアーチ、頭部前突の姿勢、腰背部の弱さなど。 これら全ての状態は、重力の影響に対して耐えることができないことによるものです。重力は私たちを下に引っ張ります、そして私たちの身体は更にパワフルな自然の力に屈する:化学結合です。 もし私たちがある姿勢を長時間保っていると、重力はゆっくりとしかし確実に私たちに影響を与えます。私たちは自分自身の中に“沈み込み”、潰れはじめていくのです。脊柱はそのカーブを増し、頭部は前方にこぼれ落ち、肩は前方に巻き込まれます。 身体全体に及ぶカスケード効果がおこります。そこから化学結合が取って代わります。そして、この化学結合は重力よりもずっと強力なのです!自然秩序の原則を受けて、重力(刺激)は脊柱を引き寄せます。 筋肉と結合組織はストレッチし始め(反応)、より多くの結合組織(そしてその化学結合)が新しい、ストレッチされたスペースに(新たな筋肉構造にとっての筋膜を含む“静止長”)配置されます。それは単に筋肉が長く引き延ばされたわけではないのです。 それは結合組織(そして全ての化学結合)が身体を新しい長さにリセットしたのです。それはこのようなものです:重力->力学的ストレス ->新たな化学結合構造 元々の構造を取り戻すには、この化学結合に打ち勝たなければなりません。通常これは柔軟性/ストレングス/スタビリティーのプロトコールによって行われます。化学結合に打ち勝つには、良く考え抜かれたプログラムに対しての時間、献身的姿勢、そして忠実さが必要となります。 ですからもし私たちの誰かが、ある姿勢の”機能不全”を取り除くことに対してイライラしているとしたら、繰り返しさらされる姿勢への適応(すなわち座位のような静的ポジション)が私たちの身体を”セット”し、硬直性を増加させていることを念頭に置き、辛抱強くなければなりません。 私たちがこれらの原則と、いかにそれらが私たちの身体に影響を与えているかを考えることで、いかに現行のトレーニングモデルを、これらの真実に適応させられるのかも考えていきましょう。他の原則のように、もし私たちが身体の原則を犯すような事があれば、私たちは身体に反抗して働きかけていることになり、私たちは人類のパフォーマンスと機能を最大限活用できないことになります。 私たちの身体の不思議を楽しみながら探ってみてください、そして原則を犯さないということを覚えておきましょう!

ミショール・ダルコート 4676字

トレーニングの原則:人間の形のデザイン パート1/2

人間の形の構造やデザインを学べば学ぶほど、特定のパターンやそこにある真実に気づきはじめます。ムーブメント、筋筋膜、そして関節の健康やパフォーマンスは、人間の構造とそれに対応したデザインにすべて由来しています。下記の基礎的な真実から(私達は原則と呼びます)、トレーニング原則を適合させることができ、多くの疑問をよりはっきりとさせることができるでしょう。 このトレーニングの原則についての記事の目的は、これらの真実を探求することで、これらの真実をエクササイズに適用した際に、私たちのプログラムデザインをよりシンプルにかつ効果的にすることです。 次の思考実験について考えてみてください:あなたが人類の膝を初めて発見したとしましょう。誰もその機能を見たこともなければ、間近で見たこともなく、当然皮膚の下から見たこともありません。 この構造に対するあなたの分析にあたって、事前情報や信頼できる知識というものをあなたは持ち合わせていません。観察したものからのみ、情報を集めることができます。科学者は、どのようにしてこの構造をより学び始めるのでしょうか? まずはじめに、あなたはこの構造がどのように動くのか確かめようとするかもしれません。人々の歩行、屈んだり、遊んでいるところなどを観察するでしょう。被験者として健康な4人を雇い、4人のカメラマンも雇い、被験者が歩行、屈曲、遊んで動いているところを、膝の構造だけを撮るようにカメラを固定します。 被験者の様々な動作のタスク(課題)を2日間録画したのち、あなたはそのビデオを見返します。もしあなたが常識にとらわれずに考えることができるなら、この録画された実験観察から膝は以下のことを行う、ということを発見するのにさほど時間はかからないでしょう。 私たちが現在知っている矢状面での前後の動き 被験者グループが方向を変える時、屈曲しながら前後にローテーションをする 前額面で左右に動く 実のところ、あなたは膝が全方向に動くことをはっきりとみることになるでしょう。あなたの科学的思考は、膝の動作についてのより深い探求へと誘われていきます。 言い換えると、あなたは孤立した膝の評価をしたことになります。その評価において、あなたは被験者を横たわらせ、膝の可動域を計測するために脛骨を動かす際に大腿骨を固定することが最善のやり方だと決めます。 あなたは同じアセスメントを左右にも(図1参照)、前後にも、そしてローテーションに対しても行います。結局、これはあなたが最初に観察した膝の動きだったのです。覚えていますか? 図1 即座にあなたは、膝は矢状面では良く動くことができるけれど、他の2つの面ではそうでもないということを目の当たりにします。しかしこれはある問題を提起することになります、なぜならあなたのタスクの評価(観察)はマニュアル評価とは全く違うものを測定したからです。それぞれの評価は、非常に価値のあるものです。 しかしながら、現時点ではこれらは矛盾しているようです。これにイライラして、あなたはより深く調査し、解剖をして皮膚の下から観察することを決意します。 解剖をして膝の構造をみていくと、あなたは他の組織、構造、そして血管が密集していることに気づきます。それらはすべて、身体の他のエリアと明確なコミュニケーションをとっているのです。ついに膝関節包にたどり着いた時、あなたは非常に興味深いものを発見するのです。 図2 膝自体の構造は、実は蝶番関節です。より大きい内側の半月板により横断面での自由性が生まれ、垂直性が半月板の境で生まれる(半月板の外側により高さがある)ことにより前額面での自由性が生まれます。 さらに、膝を身体の他の部分と統一する多くの構造は(図2では示されていない)斜交軸を通ります(三軸での動きを好む)。 それらの構造には、幾つか名称を挙げるだけでも、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、 膝窩筋、内側広筋などがあります。 我々の”局所的な”評価方法(テーブルの上に寝るもの)と膝の観察可能な動き(ビデオに録画した”タスク”)に対する調査というのは”構造的矛盾”となります。 もし我々が、人体構造が関連性を含蓄するという事実を捨て去ったとしたら、私たちは確実に、膝の機能を主に矢状面で(局所的評価に基づいて)見て、他の2つの面では限られた動きしか見ていないことになります。 結果、我々の結論として、膝はひとつの面においてのみトラッキングするべきであり、より具体的にいうと第2中足骨の上をトラッキングする、ということになります。ではタスク評価の際に観察したことはどうなるのでしょうか? 膝が、第2中足骨の上のみをトラッキングするのを見ることは殆どありません。一つの面でのみ起こるトラッキング(矢状面、水平面、前額面どれにおいても)は、膝の消耗を少なくするためのプロトコールなのでしょうか?もしそうであるならば身体の他の部分についてはどうなのでしょう? 図3 これを試してみてください。もし私が身体を回旋しようとして(水平チョップのパターンで)、膝を第2趾の上に留めた際、私の股関節は動くことができるでしょうか?答えはNoです。では、もし股関節が動かなければ腰椎には何が起こるでしょうか? このウッドチョップツイストを達成するためには、腰椎部分の回旋を無理強いしすぎることになり、脊柱の摩耗を悪化させてしまう事になるかもしれません。それでは誰が正しいのでしょうか?どのプロトコールを我々は使うべきなのでしょう? まず始めに、私たちは人体のデザインと構造を理解することが重要です。なぜなら私たちがデザインと調和して動けば動く程、より安全だからです。そして基本的真実であるトレーニングの原則を理解する事により、私たちは、より効果的にそして安全にクライアント/アスリートをコンディショニングする戦略を開発することになります。 答えは、我々の生まれもって与えられたデザインという普遍的真理の中にあります。前述したように、このシリーズ記事は人間の構造とデザインを支配し存在する原則についてのエッセイであり、それにより私たちは、動いている身体そして身体のデザインに対する現在のアイデアを問うことができるのです。 異なり変化する視点でみてみると、私たちがトレーニングやコンディショニングで使っているコンセプトは、単に理にかなっていないこともあります。しばしば矛盾していることもあります。 リサーチは何度もこれに直面しています。ある研究はある結論を示唆し、他の研究は何か違ったことを示すこともあります。この矛盾が起こり結論が差異を示す時、研究者は明確にするために全体に関わることや、より一般的で包括的なアイデアを探すのです。 そのため、科学は自然界の基礎的な働きを説明する原則を取り入れてきました。運動科学も何ら変わりはないのです! パート2/2では、あなたがあるトレーニング方法を使用したり、プログラムデザインを作り出そうとしている時にガイドとなりうるトレーニングの原則をご紹介します。これらの原則の表示には特に決まった順番があるわけではなく、互いに影響を与えあうものとなっています。 (パート2/2はこちらへ)

ミショール・ダルコート 3167字

肩帯のシリーズ イントロ

(肩帯のシリーズ#2はこちらへ) 接触による外傷を伴わない、慢性的な肩の痛み。その原因は肩関節そのものにあるよりも、他の身体部位の働きによるところが大きい場合が多くみられます。このシリーズでは、肩の痛みの要因となり得る身体部位との関係性や、改善のためのアプローチの数々をご紹介していきます。まずは、イントロからスタート。

谷 佳織 13:34

ストレングスとは何か?パート1/3

このNHLのストレングス&コンディショニングコーチ、サイモン・ベネットとミショールのスカイプインタビューでは、トレーニングジムの中でも強さと、氷の上のゲームにおける強さは、必ずしもイコールではないことが取り上げられています。本当の強さとは、何を指すのでしょうか?

ミショール・ダルコート 10:27

ランジをより股関節主導にするための方法とは?

ランジはレジスタンストレーニングのプログラムや生体力学的研究において、赤毛の継子のようなものである。つまりランジは、他の人気のあるエクササイズに比べあまり注目されていない。しかし幸運なことに、私のお気に入りの研究者のひとりであるブライアン・リーマンが孤軍奮闘して、スクワットについて既になされている一連の研究に沿い、ランジに対する生体力学的研究を行っている。 研究者たちはこの研究の中で、ランジがどの特性(例えば、ステップ幅やランジの種類)によって、より股関節主導になるのか、または膝関節主導になるのかを調査している。 研究論文:様々なステップ幅でのフォワードランジとサイドランジの生体力学的比較、リーマン、コングルトン、ワード、デービス、スポーツ医学&フィジカルフィットネスジャーナル2013年 *** 背景: フォワードランジやサイドランジ等のランジのバリエーションは、ストレングス&コンディショニングやリハビリテーションのプログラムの中で頻繁に使われている。 研究では、ほとんどのタイプのランジが、股関節の伸筋主導であると報告されているが、股関節、膝関節、足関節モーメントの様々な働きを評価するためのフォワードランジとサイドランジの比較に関しては、わずかな研究しかなされていない。加えて、ランジ幅の標準化、あるいは、ステップ幅の自己選択の、どちらがより最適かに関する評価を行った研究は、一つとして存在しない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、著しい違いがあるかどうかを確かめるため、フォワードランジとサイドランジを行う際の股関節、膝、足首における関節モーメント力積を比較しようと考えた。彼らは又、ランジを行う際、標準化されたステップ幅と自己選択したステップ幅との間に、著しい違いがあるかどうかを調べたいと考えた。 そのため彼らは、様々な活動レベルの32名(女性16名、男性16名)の被験者を集めた。被験者はまず、自己選択したステップ幅にて裸足でフォワードランジとサイドランジを行い、その間研究者たちは、床反力を記録する為にフォースプレートを使用し、又、関節角度の動きを記録するために電磁追跡システムを使用し、情報を収集した。 研究者たちはこのデータを使い、それぞれのタイプのランジにおける関節モーメント力積を計算した。身長の60%を基準に標準化されたステップ幅のランジにおいても、この過程が繰り返された。これにより、標準化されたステップ幅と自己選択されたステップ幅での関節モーメント力積の違いを比較することが可能となった。 *** 何が起こったのか? フォワードランジ、サイドランジにおけるステップ幅 フォワードランジにおいては、標準化されたステップ幅と自己選択されたステップ幅の違いは大きく、研究者たちは、自己選択したステップ幅の方がかなり小さいということを発見した。しかしサイドランジにおいては、それぞれのステップ幅に著しい違いはなかった。 更に研究者たちは、自己選択をしたステップ幅は、フォワードランジに比べサイドランジの時の方が、かなり大きかったことを観察した。これらの発見は下記のグラフに示されている。 フォワードランジとサイドランジにおける最大屈曲角度 研究者たちは、下記のグラフで示されているように、自己選択をしたステップ幅と標準化されたステップ幅の両方において、膝の最大屈曲角度は、サイドランジよりもフォワードランジを行う際の方が大きく、足首の最高背屈角度は、フォワードランジよりもサイドランジの方が大きかったと報告している。 フォワードランジにおいては、自己選択をしたステップ幅よりも標準化されたステップ幅を使用した際の方が、股関節の最大屈曲角度が大きかったことも、グラフから見て取ることができる。しかし、フォワードランジとサイドランジの間で、股関節の最高屈曲角度に違いは無かった。 フォワードランジとサイドランジにおける最大関節モーメント力積 研究者たちは、下記のグラフで見られるように、自己選択したステップ幅と標準化されたステップ幅の両方において、足首と膝の総関節モーメント力積はフォワードランジよりもサイドランジを行う際の方が大きく、股関節の総関節モーメント力積はサイドランジよりもフォワードランジを行う際の方が大きかったと報告した。 フォワードランジでは、股関節の総関節モーメント力積は、自己選択をしたステップ幅よりも標準化されたステップ幅を使用した際の方が大きく、膝の総関節モーメント力積は標準化されたステップ幅よりも自己選択をしたステップ幅を使用した際の方が大きかったということも、グラフから見て取ることができる。サイドランジでは、ステップの幅の実際の影響は見受けられなかった。 スポーツの動きの中で増えている股関節の役割、という私のプレゼンテーションを見たことのある人は、私が、股関節の膝関節に対する伸展モーメント力積の比率のそれぞれの動きの間での比較したとしても驚くことはないであろう。 専門的に言えば、全ての動きが1.0以上の比率で股関節主導ではあるが、標準化されたステップ幅でのフォワードランジは、他の動きより何倍も股関節主導であるということは明らかである。 標準化されたステップ幅でのフォワードランジを有利にするこの違いは、より大きいステップ幅の働きが、恐らく、股関節のより長いモーメントのアームと、股関節のより大きな最大屈曲角度につながり、このバリエーションにおいて必然的な、股関節のより大きな可動域につながるのであろう。 (1)スポーツ活動における股関節の伸展トルクの重要さ、そして(2)デッドリフトのバリエーション以外で、軸方向に負荷がかかる股関節主導のエクササイズは希少である、ということを考慮に入れると、これはとても有益な発見である。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは下記のような結論を導き出した: 関節の屈曲 — サイドランジではより大きな足首の最大背屈が見られ、フォワードランジではより大きな膝の最大屈曲が見られた。 関節モーメント力積 — フォワードランジでは股関節のモーメント力積がより大きく、サイドランジでは膝関節と足関節のモーメント力積がより大きく示されていた。 関節モーメント力積の比率 — フォワードランジにおける標準化されたステップ幅は、股関節の総関節モーメント力積を増加させ、膝関節の総関節モーメント力積を減少させ、股関節の可動域を向上させる最高股関節屈曲を増加させることにより、更にエクササイズを股関節主導にした。 *** 制限要素は何か? この研究には、以前の研究により発見されていた、ランジを行う際の生体力学に影響を及ぼす、体幹の傾きの影響について、研究者たちが調査しなかったことに制限があった。加えて、研究者たちは様々なランジのバリエーションを行う際、バーベル、ダンベル、弾性レジスタンスなどの負荷の使用が、生体力学に与える影響について報告していなかった。更に、バックランジやウォーキングランジの評価は、されていなかった。 *** 実践的な意義は何か? トレーニングプログラムでのランジの使用のために: 股関節の伸展トルクを最大化させ、ランジをできる限り股関節主導にするためには、サイドランジではなく、より広いステップ幅でのフォワードランジが最適である。 一方、ランジを行う際の膝の伸展トルクを最大化させ、ランジをできる限り膝関節主導にするためには、狭いステップ幅でのサイドランジが最適である。 ダイナミックストレッチの動きの中で、足関節の背屈を最大化させるためには、フォワードランジよりもサイドランジが優れている。 ダイナミックストレッチの動き中で、股関節の屈曲を最大化させるためには、少なくとも身長の60%に標準化されたステップ幅でのフォワードランジが最適である。 一方、できる限り膝の屈曲を減少させるためには、自己選択をしたステップ幅でのサイドランジが最適である。そのため、これはリハビリテーションの場に於いて、フォワードランジを始める前段階のリグレッションとして有益であろう。とはいえ、体幹を前傾させたバックランジは、サイドランジよりも更に膝に負担がかからないと考えられる。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3578字