マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
肩甲骨の安定性は神話でしょうか? パート2/2
安定性の問題2:能動的な肩甲骨の安定性の欠如 胸椎の正常な湾曲を回復したら、肩甲骨の動的安定性に焦点を合わせる時です。 クライアントを評価する際、とにかく沢山のベンチプレスやローイングをしてきた人たちを見つけ出すのは、とても簡単です。パワーリフターを評価する機会があれば、彼らにこのシンプルなテストを行わせてみてください。 背後からクライアントの姿勢を評価する際、両手を腰においてもらうようにしてください。 菱形筋支配 もし肩甲骨が胸椎から翼のように離れていたり、肩甲骨を引き寄せて固定しようとしているのであれば、これは、私たちが“菱形筋支配”と呼ぶものの指標となります。 鋸筋や僧帽筋下部線維が働くのではなく、菱形筋が肩甲骨を後方に引っ張り、胸郭から持ち上げるようにしています。 動的安定性を向上させるために、様々な面や動きで安定性を鍛えることが重要です。私は以前のようにIフライ、Tフライ、Yフライといった伝統的な方法の熱烈な支持者ではなくなりましたが、初期段階で適切な位置や運動制御を教えるのに間違いなく役立ちます。 読者の皆さんは、運動パターンを分解した下記のような基本的なトレーニング用語に、おそらく、精通していることと思います。 水平プレス(例:プッシュアップのバリエーション、ベンチプレスのバリエーション等) 水平プル (例:ローイングのバリエーション) 垂直プレス(例:オーバーヘッドプレスのバリエーション) 垂直プル (例:チンニングのバリエーション) 上肢の安定性パターンの再構築を始める際、水平種目は通常最も安全です。オーバーヘッド種目と比較して、水平プレス・水平プルを行う際には、可動性と安定性の需要が少ないのです。 さらに、クローズド・キネティックチェーン(閉鎖運動連鎖)(例:プッシュアップ、インバーテッド・ロウ)で始め、オープン・キネティックチェーン(開放運動連鎖)(例:ベンチプレス、チェスト・サポーテッド・ロウ)へと漸進していくことが、プログラムの初期段階では優れています。 コーチングやトレーニングの分野で、肩甲骨のトレーニングをする際の胸郭の役割について話されることは稀です。肩甲骨の安静性に重要な構成要素は、体幹部/胸郭を固定し、肩甲骨を安定した胸郭と胸椎の上で動かせることです。 このように考えてください:プッシュアップにおいて、身体を低くする際、肩甲骨が自然に近づいていくようにし、上昇時に能動的に身体をできるだけ床から離すように押し上げることに集中します。 インバーテッド・ロウでは、上背部を能動的に伸長し、身体を下ろしていく時には、肩甲骨が、胸郭の周りを滑らかにグライドし、身体を引き上げたポジションで、肩甲骨を引き寄せることを考えてみてください。 上記の2例では、肩甲骨が自由に前進と後退をする一方で、胸郭は終始安定しているべきです。 大きな成功を得ているもうひとつの漸進は、これらのラインに沿っているものです。 垂直プルへの漸進(水平プル→フェイスプル→垂直プル) このように漸進をすることによって、必要とされる肩の可動性と安定性を最小限にすることができ、その一方で、効果的な安定性パターンの再構築を始めることができます。賢明なコレクティブ・ウォームアップとエクササイズの漸進を併用すれば、あっという間に顕著な動きの向上が得られるでしょう。 大事なことを言い忘れていましたが、私は決して、プレス種目が悪いことだと言っているのではありません。それどころか、プレス種目は肩関節の安定性とコントロールの向上に役立てることができると考えます。 しかし、私たちのアプローチに対し思慮深くあるべきです。 繰り返しますが、数週間、数か月の過程を通して、水平のクローズド・キネティックチェーン動作(例:プッシュアップ)から始めて、オーバーヘッド動作へ移行することを考えてください。これを言うことに幾分プレッシャーを感じますが、私が考えるに、もっと多くの人たちは、オーバーヘッド・プレス動作が可能であり、取り入れるべきですが、安全かつ効果的に行うためには、その基盤を築き上げる必要があるのです。 誰かに、負荷をかけたオーバーヘッドのプレス動作を指導する意図がない場合であっても、できる範囲で、生体力学的に動きのトレーニングを行うことでしょう。 それは、胸椎の位置、肩甲骨の安定性、動的な回旋腱板の強さの向上、そして、それらはプログラム作成の不可欠な構成要素になることを意味しています。このパターンに、実際に負荷をかけることは、決してないかもしれませんが、彼らが、オーバーヘッドプレスの動きを、安全に効果的に行うに必要な、根本的な動きのクオリティーを持っていて欲しいのです。 要約 肩甲骨の安定性は神話ではないかもしれませんが、間違いなく肩甲骨を引き寄せて固定させ、最良を願うというような簡単なものではありません。 そうではなく、肩甲骨の安定性は、2つの主要構成要素に辿りつきます:最適な胸椎の位置と、ダイナミックな肩甲骨の安定性のための多面的トレーニングです。 上記の2つの重要な領域に焦点を合わせることによって、より健康な関節とパフォーマンスの向上という恩恵を受けとることができるのです!
肩甲骨の安定性は神話でしょうか? パート1/2
この1年間、私は“コレクティブエクササイズの事実と虚偽”について、10億回もプレゼンテーションを行ってきました。 というのは少し大げさかもしれませんが、間違いなく数多くのプレゼンテーションを行いました。 私が常に立ち返る話題の一つは、肩甲骨の安定性ですが、最近は、より多くの質問を自問自答するようになっています。ここで問題なのは、白黒はっきりした明確な回答は、ほとんど出てこないということ。これは問題のようでありながら、実は間違いなく良い事なのです。 ジョイント・バイ・ジョイント(各関節)アプローチの要約 マイク・ボイルは、トレーニングにおいてジョイント・バイ・ジョイントアプローチを普及させたことでよく知られています。 この前提は身体の主要関節は、より可動性トレーニングが必要な関節と、より安定性トレーニングが必要な関節とが交互に存在しているという、シンプルなものです。 ジョイント・バイ・ジョイントアプローチによれば、足関節は典型的により可動性を必要とし、足関節より上位の関節(膝関節)と下位の関節(足部関節)では、より安定性を重視したトレーニングが必要です。 この概念をよくご存知でない場合は、下記の図をご覧ください。 ジョイント・バイ・ジョイントアプローチ もし私たちが肩甲骨へのジョイント・バイ・ジョイントアプローチに従えば、肩甲骨はより安定性を必要とし、肘関節と肩甲骨より上位の関節(例えば、胸椎と肩関節)は、より可動性を必要としているということになります。 しかし、全ての事と同様に、私はその答えがそんなに白黒がはっきりしているとは考えていません。そして、全ては1つのとても簡単な疑問から始まります。 安定性とは何でしょうか? 私は、下記の引用文が大好きです: “安定性は、変化の統制である” ~ チャーリー・ワイングロフ しかし、ほとんどの人が肩甲骨の安定性を考える際、自然に静的安定性に焦点を合わせる傾向にあると思います。 ベンチプレスの準備をどのようにするのかを考えてみましょう。もしゴールがベンチの上でパフォーマンスを最大化するためならば、できる限り上体を安定させる必要があることを私たちは知っています。 そこでどうしますか? 肩甲骨を後ろに引き下げてピンで留めるようにし、菱形筋と僧帽筋下部でしっかり締めて、等。 リル・スティービーによる肩甲骨の静的安定性 繰り返しますが、これは静的安定性です。つまり、肩甲骨は一度が固定されると、そこから動かない。もし目指すゴールが、ベンチプレスで500パウンドもしくは1000パウンドを持ち上げることであれば、これは当然重要なことです。 しかし、これは私たちの大半が焦点を当てるべきことでしょうか? もしあなたがアスリートや体脂肪減少を目的としたクライアント等を指導されているのであれば、私は動的安定性の方が日々の生活の中で、より重要で役立つということを主張するでしょう。 動的安定性は、チャーリー・ワイングロフが定義している“安定性は、変化の統制である”ということに関して、より真実である(少なくとも私の見解では)。 物体の頭上への拳上、懸垂、野球ボールの投球の際に、肩甲骨を正しい位置におくことができ、コントロールすることができることは、非常に重要です。 ここでの問題は、多くの人は、少なくとも2つの主な理由において、能動的な肩甲骨の安定性に乏しいということです。 それでは、それぞれの理由について、深くみてみましょう。 安定性の問題1:胸椎の位置の悪さ この問題に関しては、以前から数えきれない程言及してきましたが、まだ繰り返し足りないようでもあります。 胸椎が安静時に良くないアライメントにあると、肩甲骨は決して最適な位置になりえません。 再度読んでください:胸椎が安静時に良くないアライメントにあると、肩甲骨は決して(何があっても)最適な位置になりえません。 私たちがIFASTで人々を評価する際、通常、2種類の異常な胸椎姿勢のうちのひとつをみることができます。 典型的な過度に脊椎後弯した姿勢/コンピュータを常に使用する男性のような姿勢、もしくは 過度に平坦な胸椎 過度な脊椎後弯 過度な脊椎後弯は、見ればわかると思います。脊椎後弯が、本来あるべき長さよりも長いか、脊椎後弯の頂点に過度に高さのあるか、sのどちらかが存在します。 誇張された脊椎後弯を持つクライアントがあなたの元を訪れる際、肩甲骨下縁の翼状がみられることが一般的です。 私は過去に、嫌になるほどこのことに関して話してきたので、ここで長く論じるつもりはありません。 過度に平坦な胸椎は、脊椎後弯ほど頻繁に議論されない姿勢的な欠陥です。このようなクライアントを側面から見る際、胸郭及び肋骨は信じられないほど薄くみえます。 これは女性でより頻繁にみられますが、男性にも、また同様にみることができます。 平坦な胸椎 さらに、背後から観察する際、肩甲骨の内縁全体がみえる傾向にあります。 以前であれば、前鋸筋が弱いと診断し、それに沿って進めてしまっていましたが、しかし必ずしもそうであるとは限りません。 ここで、私たちが行わなければならないことは、胸椎にある程度の屈曲を回復させることです。 肩甲骨の解剖学をみると、肩甲骨には自然のカーブ、もしくは弧があります。正常で自然な脊椎後弯の場合は、肩甲骨は胸椎に対して平らに乗っています。 上背部に手を這わせると、肩甲骨の骨の隆起を見つけることができないはずです。 対照的に、平坦な胸椎の場合は、肩甲骨にとても明らかな骨の隆起をみつけることができます。胸椎が過度に平坦な場合、カーブしている肩甲骨が、文字通り、落ち着く場所が無く、骨の指標をより際立たせています。 もしあなたのゴールが、十分な肩甲骨の安定性を得ることならば、全ては胸椎において自然で正常な脊椎後弯を得ることから始まるのです。 過度や不足では、肩甲骨は決してあるべき安定性を得ることはできません。 書き留めてください: 自分自身の身体(この場合は胸椎)の安静時の位置を知っておかなければなりません。まず最初に、適切な位置について知ることなく、やみくもにストレッチ、活性化、強化を始めるのは、間違ったことなのです。 (パート2/2はこちらへ)
臨床検査から機能的なパフォーマンスについて多くを知ることはできるのか? トーマステスト
私たちのコースでよく持ち上がる議題の一つに、より静的な臨床テストが毎日の動的な機能的な動きに対し、どれ程の関連性があるのだろうかというものがあります。私たちは、このブログでこの議題を取り上げることにしました。 これは基本的に、臨床的なモデルと機能的なモデルの比較です。かつてコースの参加者のひとりに、従来のテスト、特にトーマステストは、どのように人が動くのかについて必要なことをすべて教えてくれると言った人もいます。明らかにこれは逸話的なコメントではありますが、ここでの疑問は、これを支持するような科学的見解はあるのだろうかということです。 人々が診察台を離れた時、どれほどよく動くことができるのかを知りたいのであれば、“私たちはまだトーマステストを使い続けるべきなのか?”という問いかけに対する答えは、おそらく“いいえ”でしょう。スケッチ及びその他は、イギリスのスポーツ医学のジャーナルにおいて、2009年に関連性のある研究を行いました。それは“ランニング中の骨盤前傾の、股関節伸展の臨床的、運動学的測定に対する関係性”を観察したものでした。 彼らの目的は: ”ランニング中の骨盤の前傾、及びランニング中に測定された股関節伸展の最高可動域と臨床的に測定された股関節伸展の柔軟性に対する関係性を評価すること”でした。” 彼らは股関節の伸展を臨床的に測定する為に、広く使われている修正版のトーマステストを用い、動的な測定には、動作分析のソフトウェアが使用されました。 研究を行ったチームによる結論は: “トーマステストを使用して測定した静的な股関節伸展の柔軟性は、動的な動き(ランニング)に反映されない。それゆえ、ランニング中の骨盤や股関節の矢状面における動きのパターンに関して、測定を行うクリニシャンがトーマステストの結果を解釈できる能力には、制限があるであろう。”というものでした。 さらに彼らは: “この研究及び、その他の研究の発見の結果として、クリニシャンは、トーマステストの結果を基に、矢状面での動的な骨盤や股関節の動きの予測をすることに対して充分に注意深くある必要がある。”と付け加えています。 この研究論文は、股関節の静的測定と動的測定の相関関係はきわめて低く、動的な測定を確実にするための静的な測定の使用は”予測”にしかすぎないと強調しています。 動的に、機能的に何が起こるのかは、単純に治療台の上で起こるこの反映ではありません。人々はよく「自分にとっては使えるから」とか、「誰それがこれを使っていたから私も使います」と言ったりますが、より科学的な根拠が存在する中、これらは十分な理由と言えるのでしょうか? 違うのではないでしょうか。 ただ単に、現在何かを行っているから、又は、臨床テストの方法を教わったからということだけでは、機能的にふさわしい他の検査方法を試してみるべきではないということにはならないでしょう。 更に科学的根拠を見てみましょう。マックギルとモレサイドは、2013年のストレングス&コンディショニングジャーナルの“股関節の柔軟性の向上は、機能的な動きのパターンにおける可動性に置き換えられない”という彼らの論文の中で、股関節における受動的可動域の向上の、機能的動作パターンへの置き換えの可能性を取り上げています。 彼らは: ”これらの結果は、受動的可動域における変化やコアの持久力における変化が、自動的に機能的動作パターンの変化に反映されることはない、と示している“と結論づけています。” 静的、受動的な臨床テストのみではなく、受動的なエクササイズやストレッチも、動的な股関節の可動域の向上とは相関関係が無いようです。どちらも世界中のクリニックで一般的に使用されているものですが、動きの評価や、動きの変化に関しての影響は、あまりないようです。私たちは、正しい答えを引き出すための正しい問いかけををすることができているのでしょうか? 両方の研究において、静的から動的な状況への少ない相関関係しか示されていない一つの理由は、それらが異なる動作パターンだからです。私たちは時として、局部構造(骨や組織)を基盤として動きを見ます。特定の動きは、特定された動きであり、局部組織の長さや構造上的な方向性によって規制されているというよりも、むしろ脳によってコントロールされているということがより明らかになってきています。 私たちの脳は、固有感覚、視覚、そして、前庭の感覚系からのフィードバックを用い、状況に応じて、記憶されている動作パターンを自動的に関連づける、記憶予測モデルに働きかけます。これらのシステムは、視覚的な水平、重力に対する方向性、関節の圧縮、角度と捻転、組織の張力と長さを認識します。これらの全ての要素が、動的な動きを臨床のテストとはかなり異なったものとし、それゆえ動作パターンに関しては、このシステムが全く異なった遠心性の反応を引き起こすのです。 動的な動きにおいて、重心をコントロールすることもまた、身体に対して、仰向けでの臨床の環境では再現できないような、大きなチャレンジを与えることとなります。バランスとスピードという変数要素を加えると、動きの本質が見えてきます。単純な生物力学のレベルにおいては、治療台から降りた途端に、動きに対しての回旋と移動という要素も加わることになります。これらは治療台の上で再現することが困難な要素です。これら追加された動きの変数要素は、フィードバックと運動制御にも変化をもたらします。 実際、スケッチ及びその他は、静的股関節伸展と動的股関節伸展の相関関係の欠如は: “静的な柔軟性のみというよりも、むしろ複雑な動的神経運動パターンによって決定づけられるかもしれない”と示唆しています。 柔軟性は、ガンマ運動ニューロンシステムと紡錘内線維(筋紡錘)を通じて遠心性に制御されている為、状況に依存します。同様に、紡錘外線維(骨格筋)を動かす為にアルファ運動ニューロンが駆動します。動きにおける柔軟性や硬さのレベルは、脳が作り出すものであり、感覚システムからの情報を通じて何を受け取ったかという状況に依存しています。柔軟性、それ自体は技術ではなく、技術としてトレーニングされるべきではありませんが、動きの成功の構成要素ではあります。適切な量の柔軟性を、適切なタイミングで、適切な動きにおいて達成できる必要があります。 マックギルとモレサイドはまた: “新しく発見された可動域が使用されるのであれば、新しい運動パターンを刻み込むことに更に集中をすることによって、トレーニングやリハビリプログラムは恩恵を受けるかもしれない”と示唆しています。 私たちがこれを実行するとすれば、クロスオーバーを確実にする為に、可能な限り最も本質的なパターンを組み込む必要があります。しかし、これは入力情報が常に機能的ででなければならない、という意味ではなく、運動皮質における保存、及び呼び起こしのために、最大の運動パターンの露出を確実にするため、ある時点では機能性に取り組まなくてはいけないということなのです。 私たちの意見を取り入れた最も有益な尺度は、受動的に得ることができる可動域と、より機能的な状況において、アクセス可能な受動的可動域の範囲との相違です。 主観的なものを客観的に計測するのは、難しいことのひとつです。運動パターン戦略や構造の多様性は、文字通り誰ひとりとして、他と同じに機能する人はいないということを意味します。これは、私たちが同じように見えたり話したりしないという事実や、身長、足の大きさや幅が様々だという事実と似ています。平均値が実際の人間の構造や働きを反映するのか?これは疑問といえるでしょう。 踵骨下関節(STJ)は、この構造と機能の両方における多様なバリエーションの良い例です。つまり、実験的な研究において、中心軸の位置の広域なバリエーションと、距骨下関節の中心軸の位置に相関関係を持つ人は少数であり、それゆえ、“正常な”足の機能には多様性があるということを意味します。(マンター1941年、ランドバーグ1993年) この“平均”や中央値からの偏差に関連している多くの病理は、一貫して原因となることを判明するのが難しいとされています。この例として膝の痛みが挙げられます。(パワーズ2002年、ヘトスロニ2006年)。例えば、歩行のような、ある特定の生体力学のセットに関して、ある個人を比較する場合、痛みの原因となる客観的な中央値からの偏差に原因があると、決め込まないように注意する必要があります。この偏差は、おそらく単に個人的な多様性によるものでしょう。 スケッチ及びその他は、また: ”最大股関節伸展の可動域は相対的な脚長と正の相関関係にある。これは相対的に脚長が長い人は、最大股関節伸展の可動域を減少して走る傾向にあるということを意味する。これは身体のサイズの異なる人達が、トレッドミルで全く同じ速度で走ることから”と報告しています。 人間の、主観的で自然な構造の多様性は、比較対象となり得る客観的なデータに影響を及ぼします。今までに習得した異なった運動パターン、ランニングスタイル、既往歴等の複雑さを考慮に入れなくとも、です。 スケッチ及びその他は、彼らの実験の中で: “矢状面での骨盤と股関節の動きのパターンは、同じスピードで走る被験者のグループ内においても異なるのが明白である”と記述しています。 コ-キネティックでは、あるシステムとそれ自体との比較、例えば右対左など、をみています。特にランニングなどの循環活動においての、部位毎の能力の多様性に関して、対象者からの平均可動域の客観的な比較よりも、統合的システムが、仕事量増大や、脳及び身体の回避戦略に対しての、より多くのヒントを与えてくれるかもしれません。 投球やスイングにおける部分的な貢献に対しても、同じことが言えるでしょう。もしある1つの部分、特に股関節のような大きな部分が貢献していないとすれば、他の部分がより貢献しなくてはならなくなります。これは実際の、もしくは知覚的な組織への脅威につながります。身体は如何なる方法であれ、一般的には最も抵抗が少ない方法で、目指す課題を出来る限り達成しようとします。 部分的な評価として、もし私の左の股関節が右よりも可動域が広く動きの質が良いとすれば、これは左右非対称運動を引き起こし、システムに対する実際のもしくは知覚的な脅威やストレスを増大する可能性があります。既に、ある程度の左右非対称は正常であると知ってはいますが、どの程度の左右非対象性が存在することが問題なのでしょうか? どの段階で私たちの動きにおける個人的な多様性が制限要素となるのでしょうか? 前述のように、個人の脅威分析やストレス忍耐閾値によって変化する、主観的な状況で客観的であることは、容易ではありません。 コーキネティックは、“正しい答えを引き出すための正しい質問”を可能にするための、最も本質的な環境を作り出すために、機能的な基準を設けています。これはテストされている動きと相関関係のある、脳からの反応を引き出すよう試みていることを意味し、最高の治療戦略を作り出す助けとなります。機能基準を使用して評価をする能力は、私たちがその個人についての治療の成功率を向上させるための、重要な情報を持っているということを意味します。客観的な傷害予測を得るのは難しいことは、証明されているのです。 機能基準には下記のものが含まれます: 重心の移動 直立の 能動的な 動的な 統合的な 3次元の 固有受容的信頼性―生体力学・動きのパターン
フォームローリングは関節可動域を広げるのでしょうか?
研究論文:即効性のある自己筋膜リリースは、筋肉の活性化や力を低下させることなく可動域を広げる;マクドナルド、ペニー、ムラレイ、クコンナト、ドレイク、ベーム、バットン、ストレングス、コンディショニングリサーチジャーナル 2012 *** 背景: この研究が出版された時点では、自己筋膜リリースに関する研究はあまり行われていませんでした。この研究の前に行われた可動域の変化に関する唯一の研究では、フォームローリングのプログラムは効果的ではないという結果が出ていました。 *** 研究者は何をしたのでしょうか? 研究者たちは、フォームローラーを使用した自己筋膜リリースが、膝の可動域、随意的、不随意的な筋力、力発生の速度、EMG活動に影響を及ぼすかどうか、確定したいと考えました。筋力を測定する理由は、運動前にストレッチを行うことは、力の産出に対する即効的な減少につながるということが、既に発見されていたからです。もし自己筋膜リリースによって、同様な力生産の減少なく可動域を広げることができれば、これはとても興味深い進歩となるでしょう。 研究者たちは、研究の為に大学から11人の男性の被験者を集め、それぞれのセッションの間を23-48時間空け、4セッションに渡り実験的なコンディションを実施しました。最初の2つのコンディションはコントロールされたもので、次の2つのコンディションはフォームローラーを使用したものでした。フォームローラーのコンディションの間、被験者は、それぞれのセット間に1分のレストを入れて、右の大腿四頭筋に対して1分間を2セットの、自己筋膜リリースを行いました。 *** 何が起こったのでしょうか? 大腿四頭筋の強度 研究者たちは筋力、力発生の速度、筋肉の活性化において、コントロールとフォームローラーのコンディション間に、著しい違いはないことを発見しました。 膝関節の可動域 研究者たちは、コントロールとフォームローラーのコンディションの間で、膝関節の可動域に明らかな相違があることを発見しました。フォームローラーの使用は、コントロールコンディションよりも約10度可動域の向上につながると、確認されました。下記のグラフは膝関節の可動域に対する相違を示しています。 研究者たちはどのような結論を出したのでしょうか? 研究者たちは、1分間を2セットのフォームローリングは著しく関節可動域を広げ、筋力の産出を妨げたり、力発生の速度を遅らせたりはしないという結論に至りました。 *** 制限要素は何なのでしょうか? この研究には、比較する文献がとても少ないという制限がありました。その結果として(例えば)1分間を2セット行うという方法が、関節可動域の向上に有益だった一方、これは、ただその方法が有益だったというのみであり、それが最も良い方法だということを意味するわけではありません。加えて、同じように膝関節の可動域を向上させるために同様な方法を用いた場合、静的ストレッチは力産出を減少させてしまいますが、研究者たちはこの実験を実践しなかった為、明らかではありません。 *** 実践的な意義は何でしょう? アスリートに対して:フォームローリングは、関節可動域を即効的に著しく広げ、筋力の産出を妨げたり、力発生の速度を遅らせたりすることはありません。 ***
股関節前面のモビリゼーション
トゥルーストレッチステーションとハンズオンテクニックを使用して、股関節前面の組織とその関連組織を3Dに伸張させ、強化に導くプロセスをご紹介します。組織の可動性を動きの全ての面において充分に向上させた後、実際に使える強さを高める、ファンクショナルなアプローチです。
フォームローリングはパフォーマンスにどのような影響があるのでしょうか?
研究論文:フォームローラーを使用した筋膜リリースの、パフォーマンスに対する影響、ヒーリー、ハトフィールド、ブランパイド、ドルフマン、リーベ、ストレングス、コンディショニングリサーチジャーナル(未出版) *** 背景: 現在では多くのアスリート達が、練習やトレーニングセッションの前に、フォームローリングなどの自己筋膜リリースのテクニックを使用しています。更にフォームローラーは現在、一般のジム、高校や大学のストレングス、コンディショニング施設でもよくみかけられます。しかしながら、フォームローラーの使用が、結果としてトレーニングや練習で行うトレーニング量や強度を増す為に有益かどうかは、未だ不明です。 *** 研究者たちは何をしたのでしょうか? 研究者たちは、フォームローラーを使っての自己筋膜リリースがコントロールした状態と比較して、アスレチックパフォーマンスを急速に促進することができるのかどうかを調査したいと考えました。そこで研究者たちは26名のレクリエーションとして運動をしている大学生(男性13名、女性13名)をフォームローリングとコントロールコンディションの試験用に集め、全ての被験者は、ランダム化されたクロスオーバー計画において、それぞれ違った日に両方のコンディションを実行しました。2つの試験日は、それぞれの試験結果の混在を防ぐ為に5日間あけて実行されました。 フォームローリングは、大腿四頭筋、ハムストリングス、腸頸靱帯、ふくらはぎ、広背筋、菱形筋を含む下肢と背中に対し、それぞれの筋肉に30秒ずつ行われました。コントロールのコンディションとして何もしないよりもむしろ、研究者たちは、自己筋膜リリースの効果を付加することなく、フォームローリングのポジションを再現することに決め、彼らは等尺性収縮により同じような位置を30秒間維持するプランキングを使用することにしました。 実験の前後に、研究者たちは筋肉痛、疲労、主観的運動強度を測定しました。それに加えて、研究者たちはそれぞれの試験後に、フォースプレートを使ってのスミスマシーンスクワットバーにおけるアイソメトリッククウォータースクワットの力、フォースプレートを使ってのカウンタームーブメントジャンプの高さとパワー、そして、5-10-5ヤードのシャトルランにおけるアジリティ、という3つの異なったテストにおけるパフォーマンスを測定しました。 *** 何が起こったのでしょうか? アスレチックテスト 研究者たちは全てのアスレチックテストにおいて、フォームローリングとプランキングのコンディションの間に、著しい違いは無いと報告しました。 疲労、筋肉痛、運動強度の測定 研究者たちは疲労に関する限り、それぞれのエクササイズのテストのどれにおいても著しい違いがあると報告しました。彼らは、フォームローラーの後よりもプランキングの後の方が、明らかに疲労が大きいと記述しています。 *** 研究者たちはどのような結論をだしたのでしょうか? 研究者たちは、下肢と背中へのフォームローリングはプランキングと比較してパフォーマンスに対しては、何の効果も無かったと結論を出しています。研究者たちは又、プランキングは、フォームローリングよりも疲労を生み出すと結論付けました。それゆえ研究者たちは、エクササイズ前のフォームローラーの使用による、アスレチックパフォーマンスの向上はみられない、と提唱しています。 *** 制限要素は何なのでしょうか? この研究の制限要素は、フォームローリングが、急性のパフォーマンス向上以外の、その他の目的に対して有益かもしれないということであり、フォームローリングが、アスリートや一般の人に役立つか否か、ということはこの研究からは明らかではありません。それに加えて、この研究において使われた被験者は常時トレーニングを行っている人ではなく、レクリエーション程度の運動を行っている人であり、もしトレーニングを行っている人を被験者とした場合には、異なる結果が得られたのかもしれません。 *** 実践的な意義は何でしょう? アスリートに対して:運動前のフォームローリングは、それが運動のボリュームや強度をより増大させるという信念のもとに行うべきではありません。しかし、フォームローリングは、重要なバーベルエクササイズのような具体的な目的に対して、急速に可動域を広げるというような目的のために使用することができます。 ***
ウォームアップ パート4/4
新しいウォームアップエクササイズ 身体を効率的に動かすために必要な全てのことをカバーしてきたところで、これら全ての要素をあわせて、素晴らしいウォームアップを作っていきましょう。 これからご紹介するウォームアップは、私とチームが一般的な用途向けに作ったものです。もし特にどこか弱い部分、制限や機能不全がある場合には、何よりも先にまずそれらを改善する必要があります。 あなたの身体が総体的によく動き、主要なものをすべて網羅しているウォームアップを求めているのであれば、これから紹介するウォームアップを気にいっていただけるでしょう! ストレート・レッグ・レイズ トレーニング対象:床に伸ばした脚の股関節伸展、持ち上げる脚の膝関節の伸展、コアの安定性と活性化 方法:自分で選んだゴムバンドを使用し、腹筋群が働くように、バンドを引っ張ります。多くの場合、まず、コア・腹筋が働くように、また同時に腰部の筋肉が働かないように、大きく息を吐くよう指示します。 コアを働かせ、つま先を顔の方に引き上げます。片方の脚をまっすぐにし、踵を地面に押しつけながら、反対の脚をまっすぐのまま持ち上げます。この動作の間、必ず両方の膝をまっすぐにロックし、腰が反らないようにしてください。 ゴブレットスクワット トレーニング対象:膝関節、足首、股関節の可動性、コアの安定性。 方法:ケトルベルの取手部分をつかみ、胸の前で持ちます。足を腰幅~肩幅に開き、つま先を少し外側に向けます。 そのまま下にしゃがみ、膝を外側に押し出します。腰の自然なカーブを失わない範囲で、できるだけ深くスクワットし、またスタートのポジションに戻ります。 捻りを加えたリバースランジ トレーニング対象:軸脚側の股関節の安定性、後ろ脚の股関節の可動性及び伸展、胸椎の回旋。 方法:まっすぐに立ち、頭の後ろに両手を置きます。大きく一歩後ろへ足を踏み出し、膝が肩と股関節の真下にくるようにします。 このバックランジのポジションになったら、そこから身体を軸脚の方向へ回旋し、そしてスタートのポジションへ戻ります。 ハーフニーリングローテーション トレーニング対象:軸脚の股関節の安定性、後ろ脚の股関節の可動性及び伸展、胸椎の回旋。 方法:前側の脚と股関節をそれぞれ90度に曲げ、後ろ脚の膝が股関節の真下にくるように、90/90のポジションになります。両手は頭の後ろへ置きます。 背筋を伸ばし、前脚の方向へ身体を回旋します。 グルートブリッジ トレーニング対象:股関節の伸展と臀部の活性化。 方法:膝を曲げ、足の裏をしっかりと床につけて仰向けになります。少し息を吐き、これから腹部を殴られるかのように、コアを固めるようにします。 コアを固くしたまま、腰を反らせることなく、股関節を伸展します。この時、肩、股関節、膝が一直線になるまで腰を持ち上げるのが理想ですが、股関節屈筋群が硬かったり、臀筋が弱かったりする場合は、腰が反らない程度に骨盤を持ち上げるようにしてください。 1秒そのままホールドし、そこからスタートのポジションに戻ります。 ブルームスティック ペックモビライゼーション トレーニング対象:軸脚の股関節の安定性、後ろ脚の股関節の安定性及び伸展。胸椎の回旋、大胸筋の柔軟性、前面の筋膜のスリング、及びスパイラルラインのストレッチ。 方法:右脚が左脚の前になるように、スプリットスタンスで立ちます。右手はPVCパイプの上に置き、左手はパイプの真ん中におきます。 コアを少し働かせ、左手を使って右手を上方、後ろ側に押し出すようにします。ストレッチに集中するよりも、意識的に右の肩甲骨を腰の後ろのポケットに入れるイメージをします。1秒ホールドし、そしてスタートポジションに戻ります。 腕立て伏せからダウンドックへ トレーニング対象:肩甲骨の上方回旋、前鋸筋の強化、スーパーフィシャルバックラインの筋膜ストレッチ、身体の後ろ側へ空気を送り込む。 方法:両手を肩幅より少し広く開き、つま先を床につけて腕立て伏せの姿勢になります。コアを働かせながら腕立て伏せを行い、そしてすぐにヨガのダウンドックのポーズに移行します。 ダウンドックの姿勢では、背中に深く大きく息を送り込むようにしてください。両膝をまっすぐにし、アクティブに踵を地面に押しつけて、身体の後面のストレッチを増進させます。 もし全ての動きを行うことができないようであれば、腕立て伏せを行わず、ただ腕立て伏せのスタート姿勢からダウンドックの姿勢に移行してみましょう。 前腕のウォールスライド トレーニング対象:肩甲骨の上方回旋、下部僧帽筋の強化と運動制御。 方法:右脚を前にしてスプリットスタンスを取り、右足のつま先を壁につけて壁に向かって立ちます。両肘を90度に曲げ、肩の前の壁につけてください。 前腕を斜め上に向って壁の上で滑らせていき、両腕が10時と2時の方向になったところでとまります。腕を滑らせてながら身体を壁に近づけていき、腕を滑らせ終わった時に胸が壁につくようにします。そして、両腕を壁から少し浮かせて、肩甲骨を下に押し下げるようにしながら(肩甲骨を後ろのポケットへいれるようなイメージで)戻してきます。 この運動を行う際、顎と肋骨をさげるように意識すると良いでしょう。首が伸展したり、腰部が反ったりしないようにします。 グロイナーとオーバーヘッドリーチ トレーニング対象:後ろ脚の股関節伸展の可動性、軸脚の股関節屈曲の可動性、胸椎の回旋、身体の前面の筋膜スリング、及びスパイラルラインのストレッチ。 方法:肩の真下に両手を置き、つま先を地面につけた腕立て伏せの姿勢になります。右股関節を屈曲し、右足首が右手のちょうど外側にくるようにします。 そこから、左手を地面に押し付けるようにして、右手を天井に向って伸ばします。後方の膝をまっすぐに保ち、臀部を締めるように意識すると良いでしょう。 サイドライニング ローテーションリーチ トレーニング対象:胸椎の回旋、胸筋、広背筋、肩甲下筋のストレッチ、下部僧帽筋の強化と運動制御。 方法:右側を下に横になり、左膝を曲げてフォームローラーの上に置きます。左腕を持ち上げ、斜め後ろ、2時の方向まで伸ばします。 ここで、大きく息を吸い込み、そして吐き出します。息を吐き出す時、肩甲骨を下に向って押し下げ、肩の前面をストレッチするよう意識します。 プルバックバットキック トレーニング対象:膝関節の屈曲と伸展、軸脚の股関節の安定性。 方法:まっすぐに立ち、左のお尻の方へ向けて左膝を曲げます。左手で足の甲をつかみ、大腿四頭筋にストレッチを感じるように少しずつ後ろへひっぱります。 この運動を行う際、軸脚がぞんざいにならないようにしましょう。地面についている足を介してまっすぐに立つように考えます。インターンのメドースは左脚が軸脚のときは上手くできていますが、右脚が軸のときはそれほどでもないようです。 だめですね~メドース! ウォールアンクルモビリゼーション トレーニング対象:足関節の背屈。 方法:右脚を前にしてスプリットスタンスをとり、右足のつま先を壁につけます。両手を壁において、バランスを取ります。 三脚の足を保ち、徐々に右膝をつま先の前へと動かします。もし楽に膝が壁についてしまったら、可動性のトレーニング効果を得られるまで、足を1インチずつ後ろへ引いてゆきます。常に足を三脚のポジションに保つようにしてください。
トゥィーコロジー™(微調整学)
人間の動きの専門家としての私達の使命は、身体機能の基本原則とコンセプトを、最も効果的なエクササイズ、活動、テクニックに置き換えて、その機能性を、より向上させるということにあります。機能に関しての統合的な基本原則から、実践的な方策を論理的に導きだすことができなければなりません。 私達の身体の動きの生体力学は複雑です。人間の身体機能を完全に理解するためには、機能的な生体力学の、より正確な表現に基づいた基本原則とコンセプトを理解する必要があるのです。 トゥィーコロジー(微調整学)とは、分析、リハビリテーション、傷害予防、パフォーマンス向上トレーニング、コンディショニング等にとって、より最適な機能的環境を作るための、最も効果的で機能的な変数要素を選択し使用するための学問です。 私達がどれだけ効果的にトゥィーク(微調整)することができるかどうかは、私達がどれだけ人間の身体機能を理解しているか、ということに比例します。トゥィーコロジー(微調整学)は、私達の戦略の基礎となるものです。私達の戦略、そしてその微調整が基本原則とエクササイズを繋ぎ合わせる完全なリンクを作り上げるのです。 トゥィーコロジー(微調整学)は、概念(私達が身体機能に関して知っていること)を、動き(身体機能の表現)に変化させることでもあります。身体機能の基本原則は、私達が知っていることであり、そしてそこに生まれる戦略(微調整)は、私達が既に知っていることの実践的な使い方であり、エクササイズは、私達が既に知っていることを実際に試してみることなのです。 私達が、身体機能とは柔軟性を持ち、可変的で、駆動され、無意識に、恊働して、三次元的に、チェーンリアクションとして存在するものであると理解しているならば、その変容も常に、その概念と一貫したものであるべきです。 私達の用いる微調整、戦略は、純粋な生体力学を直接的に反映したものでなければならず、人間の身体機能のスペクトラム全体を助長し、向上させることができるものであるべきです。人間の動きは複雑なものであるために、それに伴う微調整もまた複雑です。 私達の人間の生体力学に関する理解と認識の旅路が、この複雑さの中の単純な側面に導いてくれたところで、私達の戦略の機能的変数に関する学びは、トゥィーコロジー(微調整学)の複雑さを単純化することを可能にしてくれます。微調整学を論理的に適用する、というタスクにより、プログラムを3つの基本的な微調整にまとめて単純化してみましょう。 動きの微調整 次元の微調整 影響の微調整 エクササイズや活動の動きの面を、特定の面で促進する環境を作り上げるということは、身体機能は三次元的であるという理解を反映して、動きの微調整としての重要な意味を持ちます。人間の身体の動きのすべては、3つの面全てに関与していますが、動きの面の微調整によって、矢状面、前額面、横断面の動きの優先度を微調整することができます。 ポジションの微調整は、身体の重力との関係性、安定の度合いに関してエクササイズに大きなインパクトを与えます。これらの微調整は、仰臥位、伏臥位、横臥位、四つん這い、膝立ち、座位、立位等のポジションの変化を含みます。これらの主要なポジションの要素は、また更に詳細なポジションの微調整によって、変化します。例えば、支持基底面を広くした立位、支持基底面を狭く、スプリットスタンスでの立位、爪先を内側に向けて、爪先を外側に向けて、片脚で、等。 可動域の微調整もまた、重要な機能の変数です。可動域の微調整は、最終域、中間域、開始域、可動域全体等、全ての範囲を含みます。関節の微調整により、全身の動きに対する関節の関わりを増やしたり減らしたりすることができます。これにより、身体の部位全てと統合された状態を保ったままで、一部の関節のみを機能的に孤立させることも可能となります。 次元の微調整は、時間、反復回数、距離等の変数を含みます。時間は、反応を速くしたり遅らせたりする操作にも使うことができます。反復回数の微調整はレップ数、セット数のみでなく、グループ分けやピリオダイゼーションをも含みます。時間と反復回数の微調整は、決まった時間の中でどれだけの反復回数を実行できるのか、あるいは、反復回数が決まったエクササイズを完了するのにかかる時間をトレーニング変数としたりして、お互いに影響を与え合います。 水平、垂直の距離、あるいは回旋度数等、いくつもの距離に関する微調整もあります。 シークエンスの微調整は、レベル分けや漸進にとって重要な要素です。何を最初に行うのか、そして次に何を、そしてなぜ行うのかによって、機能的なシークエンスが理論的に決定づけられます。 コントロール、負荷、機器、フィードバックの微調整を使うことで、効果的に、エクササイズや活動に影響を与えることができます。外部に存在するコントロールのタイプや量を決定することはエクササイズに大きく影響を与えます。 負荷の微調整はエクササイズや活動にパワフルな影響を与えます。フリーウェイトや、バンジーコード、プーリーシステム、マシーン等の負荷のタイプを微調整することで、望む反応を引きだすことができます。 負荷のタイプ、負荷の適用されるポイントによって、望む効果に対しての微調整の機能性が決定されます。使用される機器のタイプは、最終的に機能を促進するための環境作りをするにあたって、チャレンジ要素を与える微調整となります。フィードバックの度合い、タイプ、タイミングはエクササイズの反応に劇的な影響を与え、また活動に対しての継続的な反応も提供します。 トレーニングやリハビリテーションプログラムの漸進と効率性は、エクササイズを成功の閾値内において実行できるか否かによって決定されます。トゥィーコロジー(微調整学)は、身体機能の現時点の閾値を決定するツールでもあります。この閾値は、トゥィーコロジー(微調整学)を適切に使いこなしてデザインされた機能的な環境で実施されることで、その幅を広げていくことができます。ここで使用される方策は、望む身体機能と、私達の持つ、人間の動きに関する理解と知識とに沿ったものでなければなりません。
ケトルベルはスプリントのためのパワー向上に役立つか?
ケトルベルは、しばしば、ストレングス、コンディショニングの現場において、目新しいもの、流行のものとして見られがちです。しかし、ケトルベルスイングの軌道はスクワットやデッドリフトのバーの軌道と全く異なっているので、それらは身体に違った刺激を与えることができるのです。 ですから、ケトルベルはストレングスコーチにとって、特に水平方向の出力を向上させることに関してとても役立つ道具になり得ます。ということは、より早くスプリントできるようにもなり得るということです。それではその研究について細かくみてみましょう。 研究論文:ケトルベルスイング運動の力学的需要 レイク・ローダー、ストレングス、コンディショニングリサーチ2012 *** 背景: 一般のフィットネスの現場において、ケトルベルは多くの場合、有酸素フィットネスと筋力強化の両方を同時に発達させるために有益な道具であると推奨されています。実際には、ケトルベル運動をしている間の著しい有酸素の需要を報告している研究者がいる一方で、何週間にも渡って測定した時、ケトルベルエクササイズが有酸素フィットネスの向上につながるわけではないことを報告する研究者もいます。 筋力に関して、ある評論家は、ケトルベルが大幅な筋力の増強を生み出すのは不可能だと提唱しています。しかし、研究によると、数週間に渡る一般的なケトルベルエクササイズのルーティン実施によって、筋肉の強度、パワー、筋持久力を向上させることは可能だと示されています。 しかしながら、これらのケトルベルの筋力と有酸素フィットネスに対する効果に関しての、長期に渡る調査にも関わらず、ケトルベルスイングの動力学(力、モーメント、力積、出力など)や運動学(関節の角度とバーの軌道)に関しては驚くほど少しの短期的な研究しかありません。これはおそらく、一部にはその目新しさのため、そして一部にはケトルベルによって作られる軌道の角度が、いくつかの側面において、難しい計算を生み出すからなのでしょう。 しかし、その角度のある軌道こそがストレングスニング、コンディショニングの観点から、ケトルベルをより興味深くしているのです。 *** 研究者たちは何をしたのでしょうか? 研究者たちは、両手でのケトルベルスイングという、最も基本的な運動から、ケトルベルエクササイズの力学的需要を理解したい、と思っていました。そしてそのスイングの力学的需要を、ジャンプスクワットと比較したかったのです。 特に、力学的需要を考えた時、研究者は、スイングをしている時にフォースプレートの上に立つことによって計測することが出来る、床反力と出力に最も興味を持ちました。 そこで、研究者たちは16人の男性を募集し、彼らをフォースプレートの上に立たせ、1組の16,24,32キロのケトルベルを使って、両手でのスイングを10回2セット行わせました。それに加えて、研究者たちはデジタルカメラを横に置き、矢状面での動きを撮影しました。 スイングに加えて、対象者は1RMの40、60、80%でバックスクワットを行い、最初のバックスクワットで設定した1RMの0,20,40、60%でジャンプスクワットを行いました。これにより研究者たちは、アスリートのストレングス、コンディショニングプログラムの中でもっとも良く使われる2つのエクササイズと、ケトルベルスイングの結果を比べることができました。 *** 何が起こったのでしょうか? ケトルベルの重さによる比較 研究者たちは、ケトルベルスイングの力学的需要が床反力、出力、そして力積によって測定された時、32キロのケトルベルを使った時に全て最大化されることを観測しました。そして、平均速度、最大速度、は両方とも16キロのケトルベルを使った時が最大でした。 *** ケトルベルスイングとスクワットの比較:力積 研究者たちは、ジャンプスクワットとケトルベルスイングの力学的需要を比較した結果に、矛盾があることに注目しました。 総力積の最大値は32キロのケトルベルを使った時に生み出されています。下のグラフでは力積によってランク付けされている様々な運動が示されています。 力積に関しては、32キロのケトルベルが他の運動に比べて明らかに上位となります。これはおそらくジャンプスクワットやスクワットのストレートバーとは違い、ケトルベルのスイングする軌道が独特なものだからでしょう。角度のある動きであるため、ケトルベルはスイングの中で、持っている人から離れて加速していないポイントはなく、それゆえ持っている人に対して力がかかるのです。 しかし、スクワットやジャンプスクワットでは、力の発揮をしない減速段階が存在します。力積はその力を生み出すためにかかった時間と力の産物である為、加速することに時間がかかればかかる程、より大きい力積を生み出す機会が与えられます。このより長い加速時間は、より大きな解剖学的適合に置き換えられるため、より長い加速段階の時間は、通常、トレーニング効果を向上させることに関連します。しかしながら、これに関して、このより大きい力積が一体何を意味するのかは明らかではありません。 *** ケトルベルスイングとスクワットの比較:力 研究者たちは最も高い床反力の最大値と平均値は、バックスクワットに続いてジャンプスクワットで起こることを発見しました。下のグラフは床反力の最大値を示しています。 グラフは、重い負荷でのバックスクワットが、最も高い床反力の最大値を生み出すことを示しています。グラフはまた、床反力の最大値は、ケトルベルスイングよりも、ほとんどのジャンプスクワットにおいて、より高いことを示しています。これはおそらく、バックススクワットとジャンプスクワットで使われている負荷が、より高負荷であることと、スクワットの真垂直な動きによるものなのでしょう。しかし、とても重いケトルベルスイングの合力と、同じ負荷でのバックスクワットとジャンプスクワットを比べてみたら興味深いかもしれません。 さらに、データは提供されていませんが、研究者たちは水平力の要素はスクワットやジャンプスクワットにおいてよりも、ケトルベルスイングでの方がはるかに大きいことに注目しています。これはトレーニングに対して重大な影響を及ぼし、それゆえ、運動選手のストレングス、コンディショニングプログラムにおけるケトルベルの使用においても、重要な影響があるかもしれません。 *** ケトルベルスイングとスクワットの比較: 仕事率 研究者たちは、32キロのケトルベルをスイングしている間の出力は、バックスクワットの時の出力よりも大きいが、ジャンプスクワットを行っているときの出力とは似通っているということを発見しました。下のグラフはテストを行った様々な運動の最大出力を示しています。 一般的にみられるように、ジャンプスクワットにおいて出力を最大化する負荷は無負荷です。このことが仕事率に関する限り、ケトルベルをとても有益なトレーニングの道具にするとして、より重いケトルベルの負荷がより大きい出力につながるかどうかを見てみるのは、とても興味深いでしょう。 *** 研究者たちはどのような結論を出したのでしょうか? 研究者たちは、1RMの80%でのバックスクワットは、最大力の最高値を生み出すことを記述しています。最大力は筋力と密接に結びついていることから、筋力はジャンプスクワットやケトルベルスイングよりも、重い負荷でのバックスクワットによって、最も発達すると研究者たちは述べています。 バックスクワットは、32キロでのケトルベルスイングよりも、より大きな床反力を生み出すため、ケトルベルスイングは筋力を高めるためには十分でないと研究者たちは提言しました。しかし、これが短期的な研究であり長期に渡ってのものではない為、彼らはこの研究からはこのことを確実だと断言することは出来ませんでした。 研究者たちは、32キロでのケトルベルスイングは、ジャンプスクワットと同じような平均力、及び最大力を生み出すことを観測しています。それゆえ、彼らは、ケトルベルスイングはジャンプスクワットの代わりとして、パワーベースのプログラムに適していると提案したのです。 *** 制限要素は何なのでしょうか? 研究者たちは、床反力は、垂直力と水平力の両方を含んだ合計で表されていると記述しています。ケトルベルスイングはスクワットやジャンプスクワットよりも大きな水平力を生み出しました。それゆえ、力のかかる方向が重要な競技においては、力に関してジャンプスクワットを使うのか、ケトルベルスイングを使うのかで、特定の競技別の適用に大きな違いが出てくるのです。 更に、研究者たちは32キロを上限とし、それ以上重いケトルベルは使用しませんでした。しかし、もしかしたら更に重い負荷では違う結果が得られたかもしれません。 しかも、まだ証明されてはいませんが、経験を積んだケトルベルトレーニーは、ジャンプスクワットよりもスイングによって、より大きな力をうみだすことができるかもしれません。 *** キーポイントは何でしょう? 32キロでのケトルベルスイングは、最大の力積を生み出します。これはおそらく、スイングの軌道は、スクワットやスクワットジャンプでのストレートバーとは違う軌道を通るからでしょう。この状況においてこれが何を明確に意味するのかは、未だ明らかではありません。 床反力の大きさの順番は、次の通りです:高負荷でのバックスクワット、ジャンプスクワット、ケトルベルスイング。それゆえケトルベルスイングは、筋力を高めるには最適とは言えないかもしれません。 特に32キロ程度の重いケトルベルにおいて、ジャンプスクワットとケトルベルスイングの出力は相似しています。それゆえケトルベルスイングはパワーベースのプログラムの代わりとして適切と言えるかもしれません。 ケトルベルのスイングは、ジャンプスクワットに比較して、より大きな水平力を生みだします。ゆえに、スプリントのような水平方向の動きへの移行という観点から、ケトルベルのスイングは、ジャンプスクワットよりも優れたパワートレーニングといえるのかもしれません。 *** 実践的な意義は何でしょう? アスリートに対して: 32キロのケトルベルでの垂直床反力は、ジャンプスクワットやスクワットよりも小さいため、もし選手が強度を増すために使用するのであれば、より重いケトルベルが必要となります。 出力は、ジャンプスクワットと32キロでのケトルベルスイングで相似しています。それゆえ、中程度の負荷でのケトルベルスイングは、パワーを養う為にジャンプスクワットの代わりに使うことができます。 32キロでのケトルベルスイングは、水平方向のパワー(スプリントの為になど)を養うためには、おそらく、ジャンプスクワットよりも優れているでしょう。 ***
フィットネスは常に成功とは限らない
何でも簡単にできてしまう人に親近感を感じるのって、難しいですよね?いやぁ、そういう人って、最低だよね!幼なじみの親友に、ひとりそういう奴がいるんだけれど、彼は素晴らしいアスリートで、成績もクラス一番、とにかくモテモテ。ラッキーなことにそんな彼と物心ついた頃から友達でした。自分自身は、決して彼のような才能を持っていたわけではないけれど、僕たちがいい友達でいられたのには理由があるのです。 クリスは、常に謙虚で、彼のことを直接知っていなければ、彼がそんなに才能にあふれた人だと想像もつかないような、そのくらいの謙虚さを持っていました。彼のこの謙虚さというのは、私が彼を尊敬する理由のひとつだったのですが、それよりも更に私のモチベーションを高めくれたのは、彼が数多くの才能に恵まれていたにも関わらず、とにかく努力しようとするその意志の強さでした。様々な場面で、彼は、たとえそれが誰であったとしても、皆努力をしなければならないのだ、ということ、そしてその目指すゴールが大きければ大きい程、より努力をしなければならないということを見せてくれました。 仕事や努力に対しての素晴らしい倫理を持っている人達の近くにいるということ、これは私が他の人から受け取った素晴らしい贈り物のひとつです。私の家族は、特に身体的才能に恵まれていたわけではありませんが、私の家族達の多くは、”決して諦めない”態度を持つことで、数多くの分野で成功を収めています。 このことを比較的年齢の若い時期に教わることができました。私の少年時代のほとんどは、とにかくバスケットボールが全ての世界でした。実際の生活での難しい問題から逃避することができる素晴らしいものだったのです。何が起こっていようとも、公園でバスケットボールの練習をしていたり、試合を行っていたりすれば、他のことは、もう気にもならなかったんです。 信じられないかもしれませんが、この足首の写真は、私のケガよりも状態が良いものなんですよ! そんなわけで、ある晩、公園でバスケットをしている時に、右足首を完全に損傷してしまった時、自分の世界そのものが、全て終わりの時を迎えたような感じがしたのです。父や医師は、私は将来杖無しでは歩けないだろうという話をしていて、私がバスケットボールをまたできるようになるかどうか、などということは、気にもならない様子だったのをはっきりと覚えています。 兄のグレッグは、このシチュエーションが私に与えたクラッシュ効果に気づいたに違いありません。 私が拗ねたりむくれたりしないように、彼と彼の友人のマークと共にトレーニングに行かないか?と誘ってくれました。私には躊躇もあり、フラストレーションもあり、正直なところ、もうどうでもいい、というところでした。 ただ、グレッグはいいセールスマンで、健康になったらバスケットボールがまたできるように準備をしておかなければならないということを言ってくれたのです。どうすれば、私がやる気になるか知っていたようですね。彼は私が本当に、またバスケットをプレイできるかどうか分からなかったものの、ソファに座って大きなギブスと松葉杖を使って、何もしないでいることが私にとって何ひとつポジティブな要素がないことを理解していたのです。 私達はバリーズというスポーツクラブに行って(そうです。バリーズに行ったんですよ!)若い男性グループのお決まりのパターンである、ベンチプレスへ直行しました。この時まで一度もウェイトを持ち上げたことがなく、一体何をするのか予想もつきませんでした。グレッグがラックからバーベルを外してくれた途端に、バーベルは私の胸の上に落っこちて、そしてそのまま胸の上に留まってしまいました! こんな風に! ピンで留められてしまった!そうです。プレートの付いていない、空のバーベルでピン留めされてしまったんです。私が水から飛び出してきた魚のようにもがいているのが、グレッグとマークには、あまりにも面白すぎたようですが、しばらくすると、バーベルを胸の上から持ち上げてくれるという慈悲の恵みを与えてくれました。彼らには面白かったようですが、私としては、もうとにかく恥ずかしい限りでした。 心のどこかでは、もうその場を即座に離れたいという気持ちがあり、そして他のどこかでは”見せてやろう!”という気持ちがありました。これは、兄弟には決して負けたくない、特に年長の兄弟には負けたくない、という気持ちに根ざしているのだと思いますが、この日、私は帰ることなく、できることをやってみました。 その夏の間中、私は彼らに”見せてやりたい”という気持ちが強く、兄弟、義理の母、とにかく誰にでも頼んでジムまで車で乗せて行ってもらいました。マシーンとマシーンの間を松葉杖をついてピョコピョコと移動し、たまに親切なメンバーの人がいれば、ウエイトを手渡してもらったりしていました。とにかくやる気充分だったのです。 バーベルにピン留めされた日、私には選択肢がありました。止めることもできたし、帰ることもできたし、二度とそこに戻らないこともできました。私のフィットネスに関する最初の経験は、ポジティブなものでも、次に行くのが待ち遠しくなるような成功でもなく、全くその逆だったのです。 これは私達の多くが、フィットネスや健康に関して持っている選択肢と同様です。私達は、しばしば”馬鹿っぽく見える” ”準備ができていない” とおびえてしまったりしますが、実際にはそうした状況が起きないようにすることを防ぐ選択をしているのではなく、ただゴールを達成できない状況を作ってしまうのです。 この年の夏の終わりには、歩くことができるようになり(長期的な治療の後)高校のバスケットボールのチームにも入ることができました。諦めずにたたかうこと、兄がインスピレーションを与えてくれたことが、私が競技に戻ることを可能にしてくれたのです。時には、些細な経験が、大きなゴール を達成することに繋がります。 兄とのこの1日の経験がきっかけで、ディビジョン1のバスケットボールチームに入ることができ、そして人々のフィットネスの見方を変えるトレーニングシステムを開発し、多くの人が夢を実現することを助けることができたのです。 成功している人達は、ただ単に恵まれているとか幸運だから、と考えないでください。ほんの一瞬の決意が、人生を完全に変革するのです!決然として、チャレンジを受け入れるだけの強さを持つこと、間違いを恐れないこと、そうすればDVRTアルティメイトサンドバッグシステムを本当に理解することに一歩近づくことでしょう。
ピッチングの障害とパフォーマンス:踏込足の接地と完全な外旋
今日の投稿では、投手をトレーニングするときに理解する必要のある、最も重要な姿勢、踏込足の接地と完全な外旋について少し説明したいと思います。 外旋が最大化する直前に踏込足の接地は起こります。足が着地する際、胴体がまだ逆方向に回旋している間に、骨盤はホームベースに向かって回旋し始めて分離を作り出し、これにより速度は増加します。外旋の最大化‐もしくは "レイバック" - は、この分離の終了を意味します。ここで、下肢で発生するエネルギーは、すでに身体上部まで連鎖して作用しているのです。ニッセン他(2007)は、この素晴らしい図解を発表し、分離の発生を解説しています。この図では右利きのピッチャーの場合を表現しており、上の図が骨盤、下が胴体を表しています(左右の肩関節は回旋の中心)。 この図を見るだけでも、多くの場合の、斜筋へのストレスと腰部の痛みの原因を辿ることができます。とてつもない回旋ストレスですよね。 さらに、なぜ投手に、かつてないほど股関節の傷害が多いのかもわかるはずです。外旋が最大化する際、骨盤と胸郭が同じ方向を向くよう(そうでないと腕が引っぱられてしまいます)に、遅れずついていくためには股関節の回旋にかなりの加速度を必要とするのです。この図では、下肢とコアで起こっていることを解説しているにすぎません。では肩では何が起こっているのかを見てみましょう。 完全なレイバック(外旋の最大化)時、肩には外傷性および慢性的な損傷の可能性がいくつも潜んでいます。ピールバックメカニズムとして知られるパターンにおいて、上腕二頭筋腱はねじれ、上部関節唇を引っ張ります。回旋腱板の関節側(下部表面)は、関節窩の上後部においてインピンジメント(関節内インピンジメント))を起こす可能性があり、回旋腱板の部分的な裂傷に至ります。最後に、ボールがソケット内で外旋する際、上腕骨頭は前方に滑る傾向があります。それによって上腕二頭筋腱と前方靭帯の構造にストレスが生じます。 同様に、肘では、外反のストレスはグラフからはみ出すほどの大きさとなります。これは肘内側側副靭帯損傷、屈筋/回内筋損傷、内側上顆疲労骨折、外側圧迫損傷、尺骨神経への刺激、あるいは、その他の問題を引き起こす原因にもなりえます。 読者の皆さんが、これらの損傷がどんなものなのかを知っていることを期待しているわけではありませんが、ただ、投手がこれらのポジションにおいて、機能的な強さと可動性を持つようにトレーニングすることは、大変重要なことである、ということが伝われば充分だと思います。 そして、これにより、オーバースローの選手の強化とコンディショニングを目的としたプログラムに関する根本的な問題が明るみに出ることになります。一般的なトレーニングでは、これらのポジションにおいて「安全」であるようにトレーニングすることについて、全く触れられていないのです。 「クリーン、スクワット、デッドリフト、ベンチ、懸垂、シットアップ」だけでは役に立ちません。 着地の際に前足側でフォースを受け止めるためには片足のスタンスで強くなる必要があります。
ウォームアップ パート3/4
関節ごとのウォームアップ:胸椎&肋骨から関節窩上腕関節 胸椎と肋骨 主な必要性:胸椎、腰椎屈曲、肋骨及び胸壁先端部の拡張 上記にあげた「主な必要性」は議論を呼ぶに違いありません。この混乱しがちなエリアを、トレーニングに関する実践的な考え方で、バックアップしてみましょう。 胸骨は最近よく知られるようになった関節の一つであり、それにはちゃんとした根拠があります。 胸椎が最適な位置にあることは、より良い肩の生体力学のためにとても重要です。 最近よくみられるのが、平坦過ぎる胸椎をしている人たちです。胸椎は本来なだらかな後弯を持っているべきであることを忘れないでください。肩甲骨もなだらかにカーブしていますから、胸椎に自然なカーブがあることは重要なのです。 要約してみると。 少しカーブをしている肩甲骨が、少しカーブをしている胸椎の上にのっていれば、そこには自然な安定性が生まれるでしょう。 しかし、平坦過ぎる胸椎の上に、少しカーブしている肩甲骨がのっているとすれば、肩は不安定になってしまいます。 肩甲骨は上背部に直接付着しているのではなく、筋肉によって接合されています。ですから、上背部が平坦になりすぎると、肩の痛みや機能不全の起こるリスクが増してしまいます。 長年にわたって、私たちは、胸椎にもっと伸展を、ということを話してきたのですが、今では、胸椎により屈曲を、という話をしています。 どういうことでしょう? 私たちは、評価の技能のみでなく、適切な矯正エクササイズの処方においても、より明確になってきたのだと思います。 胸椎や肋骨はそれぞれ独自の構造を持っています。もちろん相互に働きますが、それぞれの働きも持っています。 私たちが「過度の胸椎後弯」として分類していたのは、片方もしくは両方の胸壁が落ちくぼんでいる平坦な胸椎です。 伸展を得るためにフォームローラーの上で身体を捻る代わりにするべきことは、胸椎に本来あるべき屈曲を取り戻すことで、ニュートラルな状態に戻し、片方もしくは両方の胸壁の凹みを埋めていくことです。 このように考えてみてください。もし、前面の胸壁に充分な広がりがなければ、私たちがいつも話しているような、前肩で丸まった姿勢になってしまうでしょう。 パンクしたタイヤのように、タイヤに空気を入れ直して充実させることがゴールなのです。 あなたが胸壁を充実させることができれば、自然な胸椎のカーブを取り戻し、改善し、肩甲骨がのるための、安定した基礎を作ることとなります。 要するに。 ウォームアップにおけるゴールは、胸椎のポジションを最適化し、胸の上部を空気で満たすことなのです。 もしあなたの上背部が平坦すぎる場合は、自然なカーブを取り戻す為に、胸椎の屈曲を得る努力をする必要があります。私たちは通常、丸まっている上背部に対して、呼吸に重きをおいたエクササイズをします。この話題に関しての詳細なポストを書くまでの間、下のビデオリンクをお役立てください。 首 主な必要性:ニュートラルであること 首はとても繊細な関節であり、パーソナルトレーナー、ストレングスコーチとして、あまり踏込み過ぎた話をする事は避けたいと思います。 肝心なのは、もしあなたがコーチやパーソナルトレーナーで、首が痛いと訴える人が来た場合には、できるだけ早く理学療法士を紹介することです。 良いアライメントと適切なウォームアップにおいては、私はいつも首をニュートラルな位置にすることに注目します。もし頭部前突姿勢の人がいたら、「顎を引いて」「頭を後ろに引いて」と指示するとよいでしょう。 私が個人的に好きなのは、ビニールのパイプを背骨に沿わせて置き、背骨の上から下までニュートラルな位置を自分自身で見つけてもらい、それから望む動きを指導していくという方法です。 トレーナーの観点から言えば、首はとてもシンプル。ニュートラルな位置にもっていき、そこで維持するだけなのです。 肩甲骨 主な必要性:安定性と上方回旋 胸椎から外側へと進んでいくと、次に登場するのは肩甲骨です。肩甲骨は胸椎の位置に対して「奴隷」的な存在です。もし胸椎が良い位置にないのであれば、まずそれを改善する必要があります。 胸椎のアライメントが良いと仮定したとき、肩甲骨の2つの主な必要な要素は、安定性と上方回旋です。 まず上方回旋から見ていきましょう。 肩甲骨のスムーズな上方回旋を駆動する3つの筋肉は: 上部僧帽筋繊維 下部僧帽筋繊維 前鋸筋 肩甲骨上方回旋 上部僧帽筋が長くなっている場合は、胸壁先端部の拡張不良によることが多いようです。 胸壁を空気で満たすことができれば、上部僧帽筋の位置や長さは改善されます。 一方、前鋸筋と下部僧帽筋は弱い場合が多いようです。これは下記のようないくつかの要因によるものだと思われます。 適切でない運動プログラム これらの筋肉群に強化が必要だということへの一般的な無認識 正しくない基本姿勢やポジション 私たちはウォームアップ中、腕立て伏せや前腕ウォールスライド等の運動により、これらの筋肉群に何回も働きかけます。 関節窩上腕関節、肩関節 主な必要性:回旋、反射的な安定性 最後になりましたが、おろそかにできないのが、関節窩上腕関節、つまり肩関節です。 この関節も、股関節のような球関節であり、可動性に関してとても重要な役割を担っています。 もちろん私は肩関節の可動向上ドリルをウォームアップの中に取り入れていますが、それがやり過ぎになってはいないことに気づかれるでしょう。 解剖学を理解すると、肩関節の可動性は、胸椎と肋骨のアライメントが整っていることのみではなく、肩甲骨が安定していることが前提となっていることに気づきます。 肩の十分な可動域を取り戻すと、安定性も回復します。そして、セラバンドを使って内旋、外旋の運動に無駄に時間を使う必要もなくなります。回旋腱板が、トラクタービームのように肩を肩甲骨へひきよせる為に作用するという、真の肩の安定性が実現するのです。