リハビリテーションにおける教育 – それは一体何を意味するのか…?

教育、教育、教育。現代の筋骨格系の臨床に関連して、この言葉をどれくらいの頻度で耳にするでしょうか? ごめんなさい、間違えました。教育&運動、教育&運動、教育&運動 : ) いつだって答えはシンプルです! しかし、教育もエクササイズと同じように、非常に一般的な言葉で語られながら、実際に適用するためのフレームワークがほとんどないという問題を抱えているのです。どのガイドラインをみても、教育が治療の中心であるかのように示していますが、実際には何の方向性も示されていないことが多いのです。私には、セラピストが不確実性に直面し、より伝統的な視点に戻ってしまう理由が分かるような気がします。 では、教育とは何について? いつ? どのように? 誰に対して? よくよく考えてみるとこのような疑問が湧いてきます。教育はここ数年、痛みに関する教育に乗っ取られていますが、実際には筋骨格系の臨床の根幹を成しています......永遠に。教育については、私が授業でたくさん話していることですが、生徒は、“ベン、早く本当の治療の話をしてくれ、こっちは退屈しているんだ”と感じているのが私には伝わってきます。 教育が適切な治療と見なされますか? 私はまだ確信していません。 人は常に情報を求めてきた これは今に始まったことではありませんね! “私の今回の腰痛は、いつもより少し長く続いているので、診てもらった方がいいと思って”と来院される方がよくいらっしゃいますね。 例えば、腰痛は2~6週間続くことがあり、これは全く普通のことだと私達は知っています。しかし、これまで数日間しか問題がなかった人にとっては、おそらく少し心配になり、ストレスの多い状況で膨らんでくる心配を減らすために、何が起こっているのか知りたくなるのでしょう。 人々は痛みを取るために私達のところへ来るのは確かなのですが、それだけではなく、自分の問題やその意味を理解し、対処法を知りたいと思っているのです。 Louis Giffordは、多くの人の間でかなり普遍的な事柄を強調しました。それは何なのか? いつまで続くのか? それに対して何ができるのか? その他に私が定期的に受ける質問は、“XXXはまだできますか…”というものです。人々はまだ何かをしたいのですが、問題を悪化させたくないと考えています。しかし、しばしば、分別良く対処するための知識を得るよりも、怖くなって活動を減らしてしまいます。 教育かまたは知識の伝達か? 私たちは“教育”という言葉を使いますが、“教育”というと、学校でやんちゃな子供たちを前にした厳しい教師のイメージがあり、私たちが実際に行なっていることをあまり反映していないように思います。 教育とは、その人が問題を理解するのを助け、問題に関する不確実性や危険性を減らし、前進する道筋を提供することなのかもしれません。これは、従来の教訓的な教育モデルよりも、知識の伝達を組み込んだパートナーシップの視点と言えるでしょう。つまり、知識の伝達や意味付けという言葉の方が適切なのかもしれませんね? 私たちは何について‘教育’できるのでしょうか? (たくさんのこと、というのがシンプルな答えです・・・) それは何か? おそらく、人々が最も望んでいるのは、診断ではないでしょうか。診断名が分かれば、効果的な治療ができる、ということですね? そうかもしれません・・・しかし、多くの筋骨格系の問題では、構造的な観点からそれが不可能であることが分かっています。このような条件下で、私たちは、問題に対して前向きで一貫性のある説明が必要なのです。その中には、痛みに関する教育も含まれますが、痛みに関する情報が優先である必要はありません。 "非特異的な筋骨格系の痛みで、痛みの原因が明らかではなく、画像診断でも所見がなく、治療によって痛みが完全に緩和されるとは限らない症例では、特定の診断がなくても、具体的で明確、かつ一貫した情報が回復の助けになる“ Carroll et al 2016 回復にどのぐらいかかるのでしょうか? 腰や膝、肩の痛みなど、診断がはっきりしない場合、予後とそれに影響する要因を知ることが、とても役に立ちます。現実的な予測を設定することも重要です。期待値が高すぎると、それが達成されなかったときに失望することになりますし、低すぎると、それを取り組むモチベーションが低下し、成果が限定的になってしまいます。 それに関して何ができるのでしょうか? 健康やライフスタイル、エクササイズ、活動、自己管理など、私たちがお手伝いできることはたくさんあります。私が思うに、管理計画を効果的に作成するための手助けが断然不足しています。ここでもまた、これを治療と見なしてもらえるのかという疑問がありますね? 相手が知りたいことは何なのか? 実際に効果的な知識の伝達のためには、相手が何を知りたがっているのか、時間をかけて探ってみることが重要かもしれません。ただ情報を流すだけでは、重要な疑問が解決されないままになってしまうかもしれません。私たちが考えもしなかったこと、あるいは重要でないと思っていることで、他の人が抱いている疑問は非常に多くあります。もし、その人にとって重要なことであれば、私たちにとっても重要であるはずです! "あなたの問題で一番心配なことは何ですか?" "私に話しておきたい大きな悩みはありますか?" "この件で一番恐れていることは何ですか?" "私が今日お答えできる最も重要な質問は何でしょう?" 状況 私の友人であるJoletta Beltonが言うように、“生物学的、経歴的な意味”を持たせる必要があるのです。これが痛みの教育で大きく欠如していたことだったと私は思うのです。自動的にその人の話に溶け込めるわけではありません。パブで見知らぬ人が自分の人生について話しているときに、自分とは関係ない話をされているようなものです。自分のことばかり話す友人もそのひとつ例で、あなたはその場から逃げ出したくなるでしょう。 ですから、あなたの知識の伝達が、実際にその人とその人のストーリーに関連する形で行われるようにしてください。 失敗 私たちが役に立つと期待するものの中に成功しないものがあるのは、このためかもしれませんね? 例えば、何をすべきか、なぜそれをするのか、それがどのように役立つのかという知識がなければ、そのエクササイズは、その人とその人が抱える問題には関係がなくなってしまいますね? 私の失敗の多くは(プロとしての)、相手と治療哲学の点で一致しなかったことが原因だったと思います。私のビジョンと相手のビジョンが一致しないのは、私が、何を、なぜ、どのように、を‘教育’することができなかった、または失敗していたからかもしれません。 まとめ 教育 は治療です。 実際はどのような意味があるのか? たいていの人は常にセラピストからの情報を求めています。 教師のスタイルではなく、人中心で考えましょう。 何であるか?回復にどのぐらいの期間かかるのか?何ができるのか? 相手が知りたいことを見つけましょう。 状況に応じた情報を応用しましょう。

ベン・コーマック 3064字

セラピストと膝関節内側の痛み

金曜日の朝、私はストレスフルな状況に置かれていました。片手に40ポンド(約18kg)のケトルベルを持ち、もう片方の手で50ポンド(約23㎏)のスーツケースを引きずりながら、空港内を走り回っていたのです。 この非効率的な荷重と支持されていないシステムが速度と合わさったとき、私がめったに経験しないあることが現れました:膝関節内側の痛みです。 ああ!たしかにーセラピストは完璧ではありません。 私は痛みを恐れはしませんー痛みで落胆することもありません。痛みはある種のギフトであり、知覚された脅威や不耐性がある可能性を警告する、システムの求心性表現なのです。 その島にはしっかりしたリハビリテーションの専門家がいなかったため、私は自力で何とかしなくてはなりませんでした。 私は、膝の痛みを抱える患者にいつも行う基本的なチェックリストを、一通り行いました。私はいつも、まずは局所的な部分から始め、それから全体的に、という順序でチェックします。 利用可能な運動面上において、膝及び股関節で大腿骨は何をしているか? とりわけ膝において、大腿骨が動きを持たない面で大腿骨が動こうとしているか? 足部―特に後足部―は、それら運動面に対し何をしているか? コアと反対側の肩は、それら利用可能な運動面と正常に同期して動いているか? 股関節では大腿骨は3つの運動面を持つため、私はまず股関節での大腿骨を評価しました。私は前額面上、すなわち横方向の動きに制限があることに気が付きました。 そこで同じ前額面上において膝で動きを出そうと、大腿骨が固定点を作り出したのだと悟りました。 唯一の問題は、膝は前額面では動かないということです。膝には前額面上の機能はありません。そのため、膝を前額面上で動かそうとすると、脛骨内側顆及び大腿骨内顆を走行する腱(それらの腱は滑液包によって骨から離されている)を傷める傾向があるのです。 これらの腱はすべて膝を屈曲させるため、膝関節屈曲の終末可動域は非常に痛むでしょう。また、ここには伏在神経膝蓋下枝があるため、この神経の炎症により、膝関節前方や膝蓋骨の下に広がる膝関節内側の痛みを生じる可能性があります。 さっそく私は仕事に取り掛かりました。 片脚の膝を立てたハーフ・ニーリングになり、膝関節を前額面上に固定した状態で、股関節の大腿骨内転に取り組みました。 私は足部をチェックし、よくコントロールされた後足部の回内によってこの動きが適切に支持されていることを確かめました。 それから、夫と一緒に長い散歩に出かけました。散歩中、膝を屈曲させすぎないようにしながら、股関節を3つの面上でうまく動かすことに集中しました。 翌日、私の不快感は95%なくなり、(膝関節屈曲を多く含む)ピストル・スクワットを再開させました。 評価と認知は、バイオメカニクス的な不一致によって生じる痛みを本当に改善することができます。 自分自身―またはほかのだれかーの膝の痛みを評価するセラピストのために、あといくつかヒントを挙げましょう: 股関節と足部がうまく動いているか、そして膝が動かないはずの面に入ろうとしていないかを確認しましょう。 股関節をしっかり意識してゆっくり歩くことにより、膝関節及び足部に対する股関節の動作パターンをより良くすることができます。 痛みを打ち消そうとしないでください。身体の現在の許容範囲を自分に教えるためのガイドとして、痛みを用いましょう。 膝関節の滑液包に直接圧力をかけないようにしましょう。滑液包にはすでに十分な圧力がかかっています。触ると痛いからと言って、それをわざわざ押す必要はないんですよ! 膝関節内側の痛みを、『内側半月板の痛み』と呼ぶのはやめましょう。内側半月板は線維軟骨性で、侵害受容器(痛みの受容器)はほとんどありません。あなたや患者の不快感が強いのは、滑液包炎または滑膜炎が原因である可能性がはるかに高いでしょう。 膝関節やその滑液包、そして伏在神経膝蓋下枝の解剖学的構造を見てみましょう。滑液包炎は、10段階中最も高い10程度の痛みを示すかもしれませんが、その診断は深刻なものではなく、良い動作によって比較的簡単に改善できるものであることを理解しましょう。 評価及び修正を裸足で行うことを検討しましょう。足部のダイナミズムが膝の動作にどのように影響するか、よく見てください。 すべての診療評価ツールを駆使して、原因となるものを特定しましょう。膝や膝の痛みの症状以外のものに目を向けることを恐れてはいけません。おかしくなんかありませんよ!

キャシー・ドゥリー 2001字

怪我を予測する:筋力のみで怪我のリスクを減少させるのに十分か?

筋力とは、外的な負荷を克服するために力を発揮する能力です。筋力が、日常活動の正常な機能にとって重要であり、死亡率の改善に関連していることが研究によって示されています(Ruiz et al, Philips, Fujita et al, Laukkanen, Heikkinen & Kauppinen)。要するに、より筋力が強ければ、より長生きする可能性があり、そして健康面の問題がより少ないということなのです。 筋力トレーニングは、多くの場合で筋骨格系の怪我のリハビリや予防を助けるために処方されます。怪我を減少させるためにレジスタンストレーニングを用いた特有の適応は、靭帯、腱、腱と骨及び靭帯と骨の接合部の強さ、関節軟骨、そして筋中の結合組織鞘の構造的な統合性の成長及び増加です(Fleck, S. J. & Falkel, J. E.)。 筋量の減少とそれに伴う筋力の減少は機能的な能力の喪失だけでなく、筋骨格系の怪我のリスクを増加させることにつながります。多くの急性的な筋挫傷は、突発的で大きな力のかかる筋活動のエキセントリック局面に起こると考えられています。 Journal of Sports Medicineのある研究では、より大きな力を発揮できる筋力の強いアスリートである、アメリカンフットボール選手における怪我の予測について考察しました。FMS(ファンクショナルムーブメントスクリーン)を用いて、低い能力でムーブメントテストを実行し、そして関節の非対称性を示した選手がより高い怪我のリスクを示したことを発見しました。 その論文からの引用;「この研究は、プロのフットボールプレーヤーにおけるプレシーズン中のプレー機会を遺失する怪我に対する特定できるリスク要因が、基礎的な動きのパターンとパターンの非対称性であることを示唆している。」 ファンクショナルムーブメントスクリーン(FMS)を使用した別の研究では、433名の消防士を調査し、彼らのエントリーレベルの動きの能力を評価し、柔軟性と体幹の安定筋またはコアの筋群の筋力を向上させることを目的としたフィットネスプログラムを処方しました。 結果は特筆すべきものでした:12ヶ月の期間にわたって、トレーニンググループは、怪我によって仕事ができない時間を62%減少させ、怪我の総数は42%減少しました。これらの発見は、体勢の悪い姿勢をとることのある仕事に従事する人に対する怪我を防ぐための、コアの筋力とファンクショナルムーブメントの向上プログラムが正当化されることを示唆しています。 このような筋力のより強いアメリカンフットボール選手や消防士が、FMSで非常に低いスコアを記録したのは、柔軟性が欠如していたからでしょうか? 異なる柔軟性を有した様々なアスリートや、それに関連した怪我の発生率については多くの文献があります。一つの例は、(大多数よりも)硬い大腿四頭筋やハムストリングスを持つプロのサッカー選手は、シーズンを通して筋挫傷や肉離れをする可能性がより高いということです。 しかし、「過可動」と分類される、または単に柔軟性がかなり高いアスリートは、足関節捻挫のような関節にかかわる怪我のリスクがあります(C. Decoster, N. Bernier, H. Lindsay, C. Vailas) 一般的な見解であるにも関わらず、いくつかの研究はストレッチすることでは怪我のリスクが減少しないことを発見しました。ストレングス&コンディショニングジャーナルからの複数の結果では、ストレッチは絶対に全てのアスリートのトレーニングプログラムの一部であるべきだと結論付けていますが、ストレッチすることが怪我を減少させることができるという証拠は存在しません。最もよく怪我の起こる筋肉、ハムストリングス、を調査した時、彼らはハムストリングスの筋挫傷の原因は筋の筋力不足であることを発見しました。 そうです、柔軟性の欠如はFMSに影響しますが、ストレッチすることではスコアは向上しないでしょう。 しかし、もしあなたが何らかの理由で隣の人よりも柔軟性が高くても、あなたが怪我をしにくいということではありません。Nicholas Institute of Sports Medicine and Athletic Trauma に所属するG.GleimとM.McHughによる「柔軟性とそれがスポーツの怪我とパフォーマンスに与える影響(Flexibility and Its Effects on SportsInjury and Performance)」というタイトルの論文では、柔軟性とスポーツ傷害の関係性についての断定的な見解は樹立できないことを発見しました。その代わりに、特有の柔軟性のパターンが特有のスポートと、さらにはスポーツのポジションが関連していました。柔軟性とスポーツのパフォーマンスとの関係性はスポーツに依存する可能性が高いのです。 適切な神経筋のコントロールの欠如が、怪我を予測するための最も顕著なリスク要因であるようです。 私たちは、正確な怪我の予測因子として、動きのパターンの質をテストすべきです。 神経筋のコントロールとは、正しい筋を適切な順番で、私たちが達成しようとしている目標に対して最適な正しい力の量で発揮するという神経系の能力です。 過去の研究では、レジスタンストレーニングの重大な効果は、筋力を増加させることよりも、様々な筋群を協調させることを学習することであることを示しました。これは、協調している筋は、筋それ自体が弱くても、関節の動作をスムースに減速させることができることを示唆しています。 関節のアンバランスさや非対称性があったり、もしくは良いFMSのスコアを出すために自身の身体を調整できない/姿勢を取れなかったりしたのは、上記の研究のアメリカンフットボール選手でした。柔軟性のトレーニングとコアの安定性のためのドリルの組み合わせが、消防士が自身の身体を安定させる方法を向上させ、そしてそれが彼らのFMSスコアも向上させたのです。必ずしも筋力や柔軟性の問題ではありません。 筋力は必要不可欠なものであり、これからも常にそうあり続けるでしょう。しかし、怪我のリスクを減少させるためのトレーニングは、筋/関節の協調性、モビリティ、固有受容器、バランス/安定性、そして複雑な動きのパターンを向上させるドリルを含まなくてはならないようです。

ファンクショナル・トレーニング・インスティチュート 2722字

高齢化人口のサポート

世界中の複数の国で高齢化が進んでいます。 アメリカにおける65歳以上の人口は、2040年までに倍増すると予測されており、8,000万人に到達します。これが意味することは、2030年までにアメリカ人の5人に1人は65歳以上になると予測されます。 日本では、2021年後半に65歳以上の人口が過去最高の3,6 40万人に到達しました。そして、2040年までに3人に1人の日本人が65歳以上になると予測されます。 なぜこのことが重要なのか考えてみましょう。 我々が歳を取り続けるにつれて、通常、高齢化人口は、ヘルスケア、長期介護、そして高齢者を支援するサービスのニーズを高めます。65歳以上の人々は、その多くが心臓疾患、関節炎、高血圧、糖尿病、そして他の慢性疾患があるため、子どもや若い頃とは異なったヘルスケアの必要性があることが研究で示されています。実際、アメリカの国勢調査局による研究によると、65歳以上の90%以上の成人は、1つ以上の慢性疾患を患っており、特別な治療と医療ケアが必要であると推定されており、他の世代とは異なっています。 高齢者はできる限り長く自宅で独立して過ごしたいと考えている方が多いので、ヘルスケアへのアクセスや健康維持の方法というものは、特に高齢者にとって重要になります。 興味深いことに、昨日、私は故郷を発展させるための会議に出席し、AARPから「高齢化社会に対応した住みよいコミュニティ」の構築方法に関するプレゼンテーションと、活気に満ちた健康なコミュニティの構築方法に関する基調講演を聴講しました。 高齢化するコミュニティに関するこれらプレゼンテーションや記事の全てにおいて共通するものは何だと思いますか? 人々が自立し、健康で、幸せを維持するために動き続けることが必要だということです。 私が参加したイベントは、フィットネス関連のものではありませんでした。ノースカロライナ州全域の町役場職員がダウンタウンのコミュニティをより良くするためのイベントであり、町役場職員やリーダーに、歩きやすい屋外スペースを作ることを優先することで、高齢者が生活しやすいコミュニティ作りを奨励する内容のプレゼンテーションを数多く目にし、本当に素晴らしいと思いました。 それ以外に素晴らしかったことは、人々が健康の基本に興味を持ち、外に出てたくさん動く必要があることを現在よりよく理解しているのが明確になったことです。 では、健康で自立し続けたいと願う高齢化人口に、あなたの地域やビジネスで何かできることはないでしょうか?あなたは彼らをしっかり助けるためのツールを持っているのです。 ノースカロライナの我々のジムで行っているいくつかのことをここに挙げます: 私達は、シニアに特化したプログラムを用意しています。45分間の少人数制シニアプログラムはとても好調で、シニアたちは素晴らしい状態です。彼らはプレスリセットをし、人間の核となる動きを練習し、コミュニティサポートを楽しみ、ハードワークしています。 私達は、歩くことを奨励しています。自分自身のためにできる最良の事の一つは歩くことです。ウォーキンググループを作る時にはいつでも、ウォーキングチャレンジを提供したり、あるいはウォーキングの効果を伝えたりします。人々にとってウォーキングがどれほど素晴らしいリセットとなるかを知ってもらうことが重要になるのです。 私達は、両親や近隣者に共有するためのリソースをメンバーに提供し、リセットボタンを押す方法を両親や家族に教えることを勧めています。 アメリカでは、ブーマー世代が実際にエクササイズを喜んで受け入れた最初の世代になり(一般的には楽しむというよりも必要だというマインドセットからですが)、信じられないくらいそのルーティーンに忠実です(一度始めると)。2018年のIHRSAのレポートでも、ウォーキングは彼らの身体活動の最良の選択肢になっています。 高齢化が進み、より多くの動きを必要とする社会に対して、どのように貢献できるかを考えて始めてほしいので、この情報を伝えたいと思いました。 ポストコロナの世界では多くのフィットネス、ウェルネスの専門家が新しい参加者たちに新鮮なリセットを簡単に取り入れてもらえる状態にあるので、このことを考慮してほしいと願っています!

オリジナルストレングス 1835字

エビデンスに基づいた臨床 - 好きですか、嫌いですか? パート1/2

最近、エビデンスに基づいた臨床(EBP)に対する反発があるようですが、その問題の一つは、エビデンスに基づいた臨床とは何か、そうでないものは何かについて、実際かなり大きな誤解があるのからはないかと私は考えています。 この反発は、EBPがあまりにも限定的で、すべてに答えを見出せないという考えと、自分たちの実践において“エビデンス”をあまりにも重視しすぎてしまうこともできるという考えを中心に展開しているようです。おそらく十分な批判的評価がなされず、厳格で柔軟性に欠けた視点になっているのでしょう。私の意見では、過度な経験的見解は、EBPがすべての疑問に答えを提供してくれず必ずしも100%正しいわけではない、という理由でEBPを単に拒否するのと同じくらい問題があると認識する必要があります。 ですから、EBPをよりよく理解する必要があるのではないでしょうか? ‘エビデンスに基づく’ということで、何が‘効果的’で何が‘効果的でない’のかについて確信が持てるようになるわけではありません。個体間で一貫した結果をもたらす厳格なプロトコルということでもありません。誰かの意見や経験だけではなく、科学的なプロセスに基づいて、詳細な情報を得た上で意思決定をする方法なのです。 明らかになってきたこととして、このようなトピック(ここではEBP)がセラピストの業界で話し合われる際、二者択一的で部族主義的なアプローチになっているということがあります。あなたはエビデンに基づいたセラピストですか?あなたはマニュアル(手技)セラピストですか?あなたはエクササイズを主に行うセラピストですか?痛みの科学を追求するセラピストですか?このようにレッテルを貼ることが他者を一般化し、非難するために使われているようです。 EBP(エビデンスに基づいた臨床)とBPS(生物心理社会モデル) もしかしたら、ただもしかしたらですが、この議論はEBPについてではなく、EBPがどのように使われているかということなのかもしれませんね。EBPは、Sackettが提案したような“賢明な”方法で使用されなければ、かなり鈍いツールとなります。EBPは生物心理社会モデル(BPS)に似ていて、ステップバイステップ(段階を追って)で実行する方法というよりも、哲学や考え方のようなものなのです。 EBPとBPSの両方とも、従来の臨床的な方法/モデルよりもはるかに概念的で広範であり、それは素晴らしいことでもあれば、困ることかもしれず、臨床の応用性を明確に提供しないことがしばしば批判されています。私が思うに、EBPとBPSの両方のアプローチの最大の欠点は、臨床的な意思決定を正当化するためにある領域だけを意図的に選択してしまうことです。EBPの3つの領域、すなわち研究データ、臨床経験、患者の意向は、3つが揃って使われるべきで、3分され臨床上の決定を支持したり正当化したりするためではありません。Housmanは、統計学の利用について、彼の有名な格言で指摘しています。 “酔っぱらいが灯りを求めるためでなく、体を支えるために街灯にしがみつくように統計学を使う人がいる” EBPの基準を満たすために患者の意向を利用することは、EBPがこのように変容してしまった良い例です。患者の意向は、単にどのような介入を受けるべきということだけではありません。患者が関わる必要のありえる判断は、介入以外にもたくさんあります。“患者が鍼治療を希望したので(単に一例として)、鍼治療を行いました”ということは、EBPの要件を満たしているため、使用する正当な理由にはなりますが、そうではなく、治療過程におけるより広い視野を伴った患者の視点という言葉を使った方がもっと適切かもしれません。 どのような課題があるのでしょうか。 EBPを好意的に受け取る一個人として、EBPに関して存在する問題や課題、そしておそらく誤解に直面することが重要です: EBPは単に明確な答えを与えてくれるものではありません エビデンスはしばしば不明確で矛盾していることがあり、臨床の成功への明確で間違いのない道筋を示すものではありません。このことは、研究のエビデンスを利用するプロセスの一環として受け入れなければなりませんね。残念ながら、これはEBPを拒否する人たちの原因の一つにもなりえるかもしれません。 出版されたからと言って、それが“真実”になるわけではありません 論文の結論に書いてあるからということで、それが非難や批評を超えて、魔法のように確固とした真実となるという考え方は、おそらくEBPの使われ方の大きな欠点でしょう。これは、セラピストが様々なソーシャルメディア上でパブメドの論文抄録をやり取りし合う事態につながるかもしれません。時には(おそらく頻繁に)その論文を読みもしないで。しかし同じように、自分の偏見に合わなければ、問題点を見つけるために徹底的に探すでしょう。 答えはしばしば望んでいるほど広範ではない もしかすると臨床医は、EBPが現時点で提供できること以上のことを望んでいるのかもしれません。例えば、本当に大きな疑問に対して、1つの論文で完璧な答えを欲しがるようなものです。よくある例としては、“エクササイズは手技療法よりも効果があるのか”という問題があります。この質問は、あまりにも範囲が広すぎるため、これまで一度も訊ねられたことがありません(私たちも欲しがっている答えかもしれませんが)。どのような状態に“働きかける”のか、“効果”をどのように測定するのか、研究対象者、エクササイズや手技療法を行う方法などを定義しなければなりません。

ベン・コーマック 2370字

エビデンスに基づいた臨床 - 好きですか、嫌いですか? パート2/2

どのような課題があるのでしょうか。(つづき) イエスかノーかの二者択一ではない もう一つの問題は、この“効果がある”という概念です。これは、フリクエンティスト・アプローチのような、仮説を受け入れるか拒否するかという考え方に由来していると思われます。簡単に言うと、2つの二者択一があるわけで、仮説を受け入れるか拒否するかで、効果があるかないかが決まるのです。 P値はこのような判断をするためにしばしば使われてきましたが、ありがたいことに、今回のような判断の目的にはあまり適していないので使われなくなってきました。P値は、仮説の正しさよりも、統計モデルの正しさについて示してくれます。統計情報は、それを生成するために使用された方法や、なぜ方法論は論文から得られた結論に大きな影響を与えるかという理由次第なのです。 データだけではない また、患者さんの話も、私たちが意思決定をする際に用いるべきエビデンスの重要な部分です。二重盲検法や無作為化法ではありませんが、私たちの助けを必要としている目の前にいる人の体験談です。患者さんの話は、患者さんの話の信頼性の低さを指摘するためによく使われる、彼らがどのような治療を受け、どれだけ成功したかということだけではないのです。 ひとつの論文ではなく数多くの文献を 腰痛を例にとると、このテーマに関するエビデンスは膨大なものになるでしょう。ですから、偏見を裏づけしてくれるようなお気に入りの論文だけでなく、上記のことも考慮する必要があります。こっちの論文がそっちの論文に勝るというのは、トップ・トランプのゲームのようなもので、EBPの本来の活用の仕方ではありません。 前へ進もう EBPを受け入れるか否かを決める前に、EBPとは何か、EBPは何を教えてくれるのかについて、自分なりの考えをまとめておく必要があるかもしれません。この分野における自分なりのアプローチや哲学は何でしょうか?おそらく、この分野や他の分野に関する個人の哲学は、時間をかけて自分自身の哲学を確立するというよりかは、他の人の哲学に影響されることが多いのではないでしょうか? 私の見解は?そうですね、EBPは、目の前の患者さんに対して確固たる答えを与えてくれるわけではありません。2週間後、6週間後、12週間後に何が起こるかを正確に予測することはできませんし、多くの場合、なぜ起こったのかという理由を正確に教えてくれるわけではありません。制御できないことや測定できない事はたくさんあります。しかし、より広い集団レベルで偏りの少ない方法であれば、問題に関する確率や見解を理解するのに役立ちます。自分の患者が反映されていそうなサンプリングが行われ、適切な方法が用いられていれば、何が最も起こりやすいかという予測やパラメータを得ることができるはずです。 統計学者がフィッシャースタイルの仮説検定から、信頼区間を重視した効果推定に移行しつつあるように見えるのは、まさにこのためです。また、私たち人間として当然持っている先入観をある程度制御するのに役立ちます!無作為化や盲検化などは、研究手法の批判として非常に無遠慮に適用されることがありますが、メリットもあります。 EBPが完璧でなく、またすべての答えを提供していないからといって、単純に否定されるべきではありません。それはまさに私たちをここまで導いてきた二者択一的なアプローチであり、EBPを受け入れるか否かは、答えではありません。もし、私たちがアプローチ方法や介入を試す立場でなかったら?と想像してみてください。リハビリの無法地帯になるでしょう。要は、EBPの本質とそこで問われているテーマに関する現在把握できる最良のデータを理解することを含んだエビデンスの賢明な使用に尽きるのです。エビデンスは、多くの場合、私たちに何をすべきかを正確に教えてくれないかもしれませんが、その価値は、何をすべきでないかを教えてくれることにあり、私はこのことに大きな価値があると考えています。 確実性ではなく見込み つまり、研究をベースにすることは、私に意思決定の出発点と絞り込みの方法を教えてくれます。研究を単に拒否してしまえば、理想的なヘルスケアとは決して言えない多くのでたらめなものに置き換えられてしまうのです。EBPはすべてに答えてはくれませんが、私が理解するにそもそもそういうものなのです。 私たちは、セラピーを、研究論文で予測されるような確定されたプロセスではなく、情報に基づいた試行錯誤であると捉える必要があります。研究は情報に基づいた部分であり、応用や結果はもう少し流動的で試行錯誤の部分が多いのです。 結論 このような議論では妥協点に落ち着くあたりに真実が存在するのかもしれません。研究やエビデンスを受け入れ過ぎたり、頼り過ぎたりすると、研究とは何かという大事な点を見失ってしまいます。しかし、完璧ではないという理由で研究を否定したり、効果がないと“証明”されていることが有効であるといった対極的な立場は、前進ではなく、むしろ後退することになってしまうのではないでしょうか。そうではなく、研究が何をもたらし、何をもたらさないかをよく理解した上で、研究を賢く利用することに立ち戻ろうではありませんか。

ベン・コーマック 2208字

スポーツにおいて子供たちを比較すべきではない理由

青少年のスポーツにおいて私が目にしている、憂慮すべきトレンドの一つに、最も年齢の若い子供たちが他の子供たちと比較されることがいかに多いか、ということがあります。これはスポーツへの参加を収益化するプログラムや、技能の向上や確認に責を担うコーチたち、そして自分の子供が落ちこぼれることを心配する両親たちの間で見られる問題です。 最終的にプロのアスリートになっていくであろう12歳の子供の発達過程に関わっていることから、私はこの問題について話をするにあたってある意味ユニークなポジションにあります。そして、更に重要なことに、私は3人の娘の父親でもあります。年長の2人、リディアとアディソンは7歳の双子です。 双子の両親として学ぶ最も重要なレッスンは、人々は常にとんでもなく陳腐な「ダブルトラブル」という言い方を面白いと思って使うということ。それを一旦やり過ごせば、2つめのレッスンは、より実行可能なものです:双子同士を決して比較してはならないということ。 これは彼女たちが子宮内にいた時でさえ明白でした。私達が超音波の診察に行くと、リディアはど真ん中の前側にいて、私達は彼女の顔はガラスに押し付けられているよねとジョークを言っていたくらいでした。一方で、常に「隠れている」アディソンを見つけるのには、技師の力と時間を要する必要がありました。ある時の超音波検査では、彼女の足の裏しか見えなかった時もありました。 彼女たちが生まれた時、オリーブ色の肌でブルネットのリディア(彼女の母親似)が出てきて、ストロベリーブロンドで色の白いアディソン(父親である私同様サンバーンしやすい肌)が出てきました。 リディアは泣き叫びながら世界を相手に戦う準備をして生まれてきました。アディソンは、少し苦労して、NICUで酸素供給と栄養チューブをつけたまま4日間過ごす必要がありました。リディアは元気いっぱいな赤ちゃんで常に母親を求め、アディソンは超メローで、母親がリディアを抱っこしている間、通常は父親の腕の中にいるような赤ちゃんでした。 18ヶ月になった時点で彼女たちは入れ替わりました。リディアはルールに従う子になり、アディソンは態度が悪くなってきたのです。リディアは、私達が用意した食べ物はなんでも食べましたが、アディソンの味蕾は、約5種類程度の食べ物以外の存在を認識することを拒否していました。 リディアはアディソン(少し背が高く体重も重かった)よりも5ヶ月早く歩き始めました。アディソンはリディアよりもスイミングをより早く覚えました。リディアはバットを右利きで、アディソンは左利きでスイングします。アディソンがまだサイトワード(一文字ずつ発音しなくても見た瞬間に認識できるようにしておくべき基本単語)を覚えている間に、リディアは本を読み始めました。これに対してアディソンは、リディアよりも数学が得意でした。 リディアはより速く、アディソンはより強い。リディアは意図を持って傾聴し、テニスやソフトボールや体操のような、より「徹底したコーチング」スポーツを選択しました。これに対してアディソンは、ソフトボールの試合のフィールドなどではボーッとしていて、草を蹴りながら隣のフィールドを眺めていましたが、音楽やアートやダンスといったクリエイティブなことにおいては本領を発揮していました。 私は、アスリートを発達させることを仕事としています、そして躊躇うことなく言えるのは、私の子供たちが来週楽しんで行うのはどのスポーツなのか、更に今から何年も先に楽しむのは何なのかなんて、全くわからないということです。私達の双子は、受胎から今までの人生を99%ともに過ごしてきていますが、今の彼女たちは全く異なっていて、彼らが現在のポイントに至るまでに数々の予測不可能なことの繰り返しを目撃してきています。 私達はスポーツでの成功をうまく予測することもできません。私達は、子供たちがどのスポーツを楽しむのかさえも予測できないのです。どれだけ多くのプロアスリートたちが天才児とか中学レベルのスポーツで目立つような存在でなかったか、皆さんは驚かれるでしょう。現実として認めましょう:思春期は数多くのコーチたちを実際よりもより賢く見せてくれるものです。 言い方を変えるなら、私達にコントロールできる「唯一」のことは、彼らがスポーツに参加している際の、彼らの経験をより豊かなものにすることだけなのです。何が効果的なのか? まず最初に、結果よりも努力を讃えること。チームメイトや友達と何かを行うことに起因する楽しさと、その反復が、重要なことです。私の指導するリトルリーグのゲームから、ある特定のスコアを伝える話はできませんが、物事を深刻に受け止めすぎる嫌なコーチについてなら本を書くこともできます。振り返ってみれば、このコーチは野球に関してもあまりよく理解していなかったようです。 2つめに、目新しさを賞賛すること。新しいことは、子供たちをワクワクさせ、また若い年齢で様々なスポーツに参加することは、後に特化したスキルを構築することができるかけがえのないアスレチックな基礎を培う固有受容感覚の豊富な環境を提供します。この幅広いアスレチックな基礎は、運動面における多様性、動きのスピードと関わる力などを含みます。これらの経験が合わさることで、アスリートに複数の関節にストレスを分散することや特定の部位のオーバーユーズ障害を避けることを教えてくれるのです。 3つめに、スキル獲得に関しては、ランダムな練習は長期的にブロックされた練習よりもより良い結果を生み出すことを理解すること。様々なドリルを組み込んで、それらの順番や継続時間を変化させて、そしてそれらを楽しい競技にまとめていくようにします。 4つめに、インシーズンとオフシーズンの期間を認識すること。このシーズンの変動は、子供たちが特定のスポーツに退屈してしまうことを防ぐのみでなく、ストレス因子に対する段階的な露出も促進することになります。10歳児が、年間12ヶ月間野球のボールを投げ続けるというのは、とんでもないアイデアです;異なる方法での発達を促しつつアクティブな状態を維持するためにサッカーやバスケットをプレーするのは素晴らしい方法でしょう。 5つめに、子供が十分に成熟をしてきたら、できるだけ早めに基礎的なストレングストレーニングプログラムに参加させるようにすること。これは彼らの怪我のリスクを低減させるとともに、様々なアスレチッククオリティに「徐々に浸透する」効果を持つことでしょう。ここでも、他の全てのことと同様に、楽しいものである必要があります! まとめとして、子供たちを比較しないこと;比較するのではなく、彼らは皆それぞれにユニークで、異なる方法で、異なるスピードで発達するということを理解します。青少年のスポーツは、ゲームへの情熱を吹き込み、コミュニティの感覚を楽しみ、エクササイズとの生涯を通したポジティブな関係性を育てることに尽きるのですから。

エリック・クレッシー 2947字

機能的動作の評価…わたしたちは一体何を評価しているのか? パート1/2

動作のスクリーニングは、フィットネスコーチたちが彼らのクライアントに合った運動を処方し、トレーニング中に怪我をする可能性を減少させることができるという期待から、フィットネス業界にとって不可欠なものとなっています。 この記事では、実際のスクリーニングの適用、そしてトレーニング前にスクリーニングを介入し高リスク要因を特定する方が、点数化されたリスク要因なしでトレーニングするよりも良いのかについて分析します。 怪我のリスクを強調するよりもむしろ、安全で効果的なエクササイズ処方を導くことに主眼を置いていますが、動作の質の評価が運動の現場において重要な役割を果たすという別の見解も提示したいと思います。 わたしたちが本当にスクリーニングしているものは何か? スクリーニングは、ある個人がある病態特有の症状を示す前に、その病態を特定するために用いる戦略を説明してくれます。 しかしそれが機能するためには、観察された機能不全と関連する怪我との間に明らかな関係性があり、早期発見が可能な段階がなくてはなりません。また、機能不全を修正するためのトレーニングを行うことで、傷害発生の可能性が低くなるということ、そしてその機能不全には早期の介入が必要なのか、またはトレーニング周期の後半で介入すればよいのかについても示す必要がありますが、いずれも複数の系統的文献レビューによるエビデンスで強く支持されているものではありません。 ある人の動き方がその人の怪我のリスクに影響するというのは論理的に思えますが、怪我のメカニズムは非常に複雑で多因子的です。 身体の組織にかかる物理的負荷が、その組織の負荷に耐える能力を上回ったときに、怪我が起こります。急性の怪我の場合、この能力は内在的及び外在的要因が出会うところであり、それらの要因が、特定の行動またはタスク中のある瞬間に、組織の負荷を調整する能力を圧倒してしまうのです。 ランナーのハムストリングスの怪我を例にとってみましょう:ランナーがハムストリングを損傷する可能性は、筋力、可動域、持久力、現在の行動(例えばハイスピードでのランニングや方向転換)、彼らの急性または慢性疲労の度合い、神経筋の協調性、バランス、動作の質、そして左右非対称性などの外在的要因が重なって決まります。そして、年齢、性別、過去の怪我など、トレーニングの影響では変えることのできないものが、アスリートの内在的要因にあたります。 上の表は、上記の要因を用いた受傷リスクの仮想ピラミッドです。これらの要素は、単独では怪我にあまり寄与しませんが、組み合わされることによって怪我のリスクがより高くなります。あなたのアスリートにこれらの要因を積み重ねれば積み重ねるほど、怪我のリスクは高くなるのです。 『怪我のリスクのスクリーニング』から『エクササイズ処方を提供するための動作の質評価』への移行 人間の健康状態の大部分は複雑です。スポーツ傷害の多因子的で複雑な特性は、単独因子と予測因子間の線形相互作用からではなく、網目のように存在する決定因子同士の複雑な相互作用から生じるものです。 (論文はこちらへ) したがって、怪我のリスクの単独因子をスクリーニングしてそのリスクを防ぐ行為は、機能不全を解決することなく、あなたを再発のループに陥れてしまうでしょう。 ご覧の通り、上にあるのが発生する怪我、下にあるのが怪我の発生を左右する様々な影響です。単独の要素(例えば臀筋の弱さや動的な膝関節外反)をスクリーニングしてトレーニングし、それらを要素のウェブ(決定因子)に戻せば、通常のトレーニングやスポーツを再開したとたんに怪我が再発することは免れないことがおわかりでしょう。 動作の質の重要性 良い動作の質とは、バランスと協調性をうまくとりながら基本的な動作を遂行することによって定義されます。逆に、動作の質が悪いというのは、一般に正しいとされる理論的基準に従ってこれらと同じ動作課題を達成できないということです(例:ランジ中の過剰な膝関節外反)。 最適なテクニックを優先することは、エクササイズプログラムを処方し提供する際、コーチたちの重要な考慮事項です。不十分なテクニックでエクササイズを継続して行うことは、望ましくない運動パターンや筋肉の不均衡、そして姿勢の偏向の発展につながる可能性があり、それらはすべて危険因子を増加させ助長させるものです。

ファンクショナル・トレーニング・インスティチュート 1868字

機能的動作の評価…わたしたちは一体何を評価しているのか? パート2/2

動作の質のスクリーニングがどのようにエクササイズ処方を導くのか? すべての動作評価ツールは、一つの重要な類似点を共有しています:それらは基本的な動作を評価し、動作の質の尺度を提供しています。少なくともこれによって、ワークアウトのルーティンに参加するまたはそれを始めるための能力水準を得ることができます。そして、コーチは、その人が特定のエクササイズやほかのエクササイズのバリエーション、さらに後々その他のより複雑なエクササイズを行えるようにするために必要な補足的運動を行うのにふさわしいかを見なすことができるのです。 まず最初に、アスリートが何をよくできて、何をあまり上手にできないのかを特定することが重要です。 しかし、動作の質の評価は、エクササイズの現場においてさらなる価値を提供します。 ワークアウト中に動作の質を評価することは、個々の関節、筋肉、動作評価からは得ることのできない情報を提供してくれます。疲労やより重い負荷、神経筋制御、異なるレベルの注意力などの中で、動作の質がどのように持続されているのかがわかるでしょう。この評価データから、コーチは機能不全をより深く理解し、適切に自信をもってそれを防ぐことができるようになります。 例えば:スクワット中に膝関節が外反するクライアントが、初期の評価中では非常に軽度の外反しか見られなかったのに、トレーニングでは、そのアスリートがある疲労度に達すると、膝関節外反が増加し高リスクな機能不全になることに気が付きました。ここから、その機能不全がフィットネスの問題、あるいは筋持久力の問題に絞られ、それらの問題が、低衝撃で最大酸素摂取量を改善するためにロウワーを使用した付加的なHIITを追加し、筋持久力のためにウォールシットを加えることによって阻止できることがわかりました。そうではなく、もしわたしたちがただ初期の評価だけを用いれば、そのアスリートは、問題点はフィットネスの欠如の中にあるかもしれないのに、筋力及び神経筋制御を改善するための「膝関節内側」修正エクササイズを永遠にプログラムされてしまうことでしょう。 動作の質を評価し、エクササイズ処方を提供するための簡単な思考プロセスは次のとおりです: アスリートが現在良い動作の質で行うことのできる動作をリストアップし、それらの動作を漸進的な過負荷によりトレーニングする。 アスリートが現在良い動作の質で行うことのできない動作をリストアップし、それらを機能的動作の目標に向けて漸進させるような介入を設定する。 基本的な人間の動作全体で質の高い動作が達成されたら、機能不全が再び生じる前に、どこにある何が限界点なのかを見出すためにトレーニングをきつくすることができる。それによって再発は指摘され阻止されることになる。 アダプティブ・(適応可能な)トレーニングシステムへの適用 FTIのアダプティブ・(適応可能な)ファンクショナルトレーニングシステムにより、コーチたちは、簡単に期分けをしたり、彼らのクライアントに安全で効果的なワークアウトプログラムを案内することができます。 それは5つの柱からなる漸進的なシステムによって機能します。初期の動作の質評価から始め、そこからコーチは、パフォーマンスのためにプログラムする動作と後退させる動作とを強調させて、質の向上を目指すことができます。 1つ目は、「機能及び動作の可動性の回復」の柱です。これは、クライアントが動作の質の基礎能力を達成するために必要な、すべての補足的運動をプログラムすることです。 そこから、2つ目の柱は「自重の適用」、アスリートに外部荷重なしで基本的な動作の実行を教えます。 第三の柱は、「負荷をかけた動作」です。アスリートがすでに十分できる動作で彼らをトレーニングするのはもちろん、彼らがあまりできない、まだ負荷をかける準備ができていない動きにも取り組むところです。 第4の柱は、「筋力とパワーの発展」です。良い動作の質が達成されたら、その動作パターンは漸進的な過負荷によって進展させることができます。第4の柱では、動作の質の評価で、ある関節内の弱さや、トレーニング量の増加や疲労などに対し彼らがどのように良いテクニックを維持して行うかというような、初期の評価では見つからなかったかもしれないさらなる問題が浮き彫りになるでしょう。 第5の柱は、アスリートを「運動制御及び複雑性」へと導きます。アスリートが無意識で有能に基本動作をできるようになったら、今度は複雑なバリエーションを実行することができます。これにより、神経筋制御の問題を浮き彫りにすることができます。その問題は後で改善させるために書き留めておきましょう。 このアダプティブ・(適応可能な)トレーニングモデルによって、アスリートが上手にできることや向上させるべきこと、そしてアスリートが潜在的な怪我を避けるためにさらに取り組むべき部分を絶えず評価すると同時に、あなたの得意な部分や改善の必要な部分もさまざまなトレーニングの側面を通して漸進させることができます。 まとめ スポーツ傷害の多因子的で複雑な特性は、単独因子と予測因子の線形結合によって生じるのではなく、組み合わされた複数の要素の相互作用によって生じます。そのため、動作の評価は、単純に怪我のリスクを点数化して、トレーニングでその点数を改善させようとするための最良のプラットフォームを与えるものではないかもしれません。 その代わり、エクササイズの現場における動作の評価は、アスリートがパフォーマンスや修正処置が必要なエクササイズ、そして適切な修正処置の性質を特定するために取り組むことのできるエクササイズをプログラミングするためのデータを提供してくれます。この情報は、エクササイズ処方を導き、トレーニングの安全性を高め、長期的な機能的効果及びパフォーマンス成果を向上させるために使うことができます。

ファンクショナル・トレーニング・インスティチュート 2503字

股関節置換手術に関する全てのこと

両側の股関節全置換手術を経験しているストレングスコーチ、ダン・ジョンに届いた質問に対して彼が自分自身の経験をシェアします。痛みの要因も手術後の状況も個人差があるのは当然ですが、参考になるポイントは必ずあるのではないでしょうか?

ダン・ジョン 4:37

評価において重要な追加10項

しばらく前に私が書いた「評価において重要な10項」という記事は、その年の最も人気のある記事の一つでしたー今回はその続編です!頭に浮かんだいくつかのことを書いてみます。 1.トレーニングと同じように、アセスメントもより専門的になってきている スポーツパフォーマンス、そしてパーソナルトレーニングの世界までもがより専門的になるにつれ、わたしたちがクライアントに用いるべきアセスメントは、目の前にいる人々に正しくマッチさせたものである必要があります。例えば、ローテーターカフの筋力テストは、野球の投手にとっては大きな意味を持ちますが、サッカー選手にとっては比較的重要ではありません。バスケットボール選手にとってのシングルレッグ・スクワットテストの結果は、カヤック選手にとっての結果よりもより重要なものとして”重きをおく“でしょう。クライアントの目標と彼らの競技の機能的要求ーの両方が、どのテストを行うのか、そしてその結果をどのように評価するかという観点からアセスメントを導くのです。 しかしながら、すべてをテストすることはできないという難点があるため、優先順位をつけることが重要です。もしこの世のすべてのアセスメントを使用したら、評価は一日中続きーそして一つのセッションを丸ごと費やして誰かの問題点をすべて指摘することになるでしょう。私はそれよりも、信頼関係を築くためにこの時間を使いたいですね。 VO2maxテストは、たとえ野球選手の有酸素能力をいくらか明らかにする可能性があるとしても、私の野球選手の優先事項においては優先度が高いものではありません。恐らく、安静時心拍数をさっと測定することにより、必要な情報を同じくらい簡単にーそしてはるかに手ごろな金額でー得ることができるでしょう。 2.良いテストは、好ましくない結果が出たらすぐにもっと有効な再テストを提示してくれる アセスメントによって、ある人の動き方で間違っているまたは正しいかもしれない部分を垣間見ることができます。もっと重要な質問は:どのような介入が違いを生むのか?前方にカウンターバランスを与えると彼らのスクワットパターンは改善するか?コアの動員をいくらか追加すると彼らの股関節内旋は改善するか?マッサージ・セラピストが斜角筋に取り組むと、彼らの肩の痛みはなくなるのか? セレクティブ・ファンクショナル・ムーブメント・アセスメント(SFMA)(によるスクリーニング・)システムの一つの信条は、常に機能不全で痛みを伴わないパターンから始めるということです。どのような介入が、痛みのない領域における異常な動きを整え、“楽な”適応を生み出すのでしょうか?これは私たちの動作のレパートリーを広げるだけでなく、アスリートやクライアントの積極的な取り組みも促進してくれるのです。 3.ムーブメントスクリーンを行う際には、必ず最初に徹底的な既往歴及びクライアントの“問診”を行うこと 参加前に行う評価がトレーニングでのけがの可能性を劇的に低下しうるということは、誰もが賛同するところだと思います。そして、この評価で最も重要な部分は、動作スクリーンの部分を始める前に行う既往歴及び彼らとの会話であると私は考えています。 例えば、外科的治療を受けていない深刻な肩関節前方不安定性の既往歴のある、関節過可動の女性クライアントがいると想像してください。もしあなたが徹底的に書類を確認し、彼女と詳細な会話をすれば、肩関節外旋を含む動きには注意が必要であることがすぐにわかるでしょう。しかし、もしそのような導入作業をしなければ、基本的な肩関節外旋可動域の検査をして、彼女の肩をひどく脱臼させてしまうかもしれません。 まとめ:書類が第一次に会話、動きは三番目! 4.痛みや低い運動能力のために特定のテストを実行できない人たちには、アセスメントを退行させる 私は胸椎の回旋を評価するのに、Titliest Performance Instituteのスクリーンー腰椎をロックした状態での回旋―を使うのが好きです。しかしそのテストでは、被験者は膝を大きく屈曲させなければなりません。そのため、大腿四頭筋が極端に短縮している人―あるいは人口膝関節置換術を受けてその動きを永久に失ってしまった人がいる場合、これは確実なテストではありません。 そのような人には、座位での胸椎回旋スクリーンを行った方がよいでしょう。 確かな経験則として、一般的なスクリーン(関与する関節や運動制御の課題がより多い)には、特定のアセスメント(関与する関節や運動制御の課題がより少ない)よりも多くの代替案が必要になるでしょう。ですから、アセスメントのアプローチに目を通しながら、物事が計画通りに行かない場合にどのようにテストを退行させるか検討し始めましょう。 5.アセスメントの手段として、トレーニング・テクニックを評価することを見逃さない 痛みやパフォーマンスに悩む人(まさにすべての人ですが)のほぼすべての評価において、私は彼らがよく行っているエクササイズのテクニックを見ます。投手であれば、腕のケアのためのエクササイズ、またはブルペンでのビデオでしょう。パワーリフターであれば、スクワット、ベンチプレス、またはデッドリフトのテクニックかもしれません。アセスメントのプロトコルをどれだけ完璧にしても、彼らが実際にトレーニングするのを見ることから得られる特異性を完全に提供することは決してできないでしょう。 6.人に恥をかかせるためにテストを使わない 先述のポイントの延長ですが、もしその人があるスクリーンでひどく失敗することがわかっているならば、そのテストをするのはやめましょう。もし200パウンド(90.7㎏)痩せたいという350パウンド(158.8㎏)の女性がいるとしたら、彼女は腕立て伏せのテストはあまりうまくできないでしょう。彼女の上半身の筋力及びコアの安定性が、彼女の体重を扱うには十分でないことは推測できますよね。 私が繰り返し思い出すのは: 「アセスメントとは、信頼関係を築き、あなたが気にかけていることを示すチャンスである。誰かに不可能なテストを連発することは、相手に自分は無力だと感じさせてしまうだけである。」 7.緊張をよく見る これは、私がこれまで見た中で最高のマニュアルセラピスト(徒手療法治療家)の一人であり、私のビジネスパートナーであるシェーン・ライ氏のそばで時間を過ごしてから、ここ数年より注意深く見るようになったことです。彼は人々の動きを見て、その人がどこに緊張をため込む傾向があるかを見抜く達人です。例えば、ローテーターカフの筋力テストをするときに歯を食いしばることや、またはアクティブ・ストレートレッグレイズを測定しているときに拳を強く握りしめることなどです。付帯的な緊張の変化を観察することは、あなたの徒手療法施術で最大の利益を得られる場所―そしてトレーニング中どのように指導方法を変えればよいかについて垣間見ることができます。 8.アセスメントの最良の成果とは、実はより精密なアセスメントへの紹介かもしれない 少なくとも年に一度、私はアセスメントを引き受けますがートレーニングをせずに、彼らを精密検査に送ります。それは大抵、実際にとても“病的な”何かが見られ、彼らとワークアウトを始める前に医療専門家に診てもらった方がよいと感じるからです。頻繁に起こることではありませんが、私は目の前にいる人を助けるために、私よりも他の人の方が装備が整っていると感じたときは、“委ねること”を決してためらいません。 9.体重についての彼らの言葉を鵜吞みにしてはいけない 以前、ある身長6フィート8インチ(203.2㎝)の投手が、自分の体重は235パウンド(106.6 kg)だと言ってきたことがあります。翌日、彼は部屋に入ってきて言うのです、「コーチ、今朝実際に体重を測ったら、253パウンド(114.8 kg)でした」。身長6フィート8インチ(203.2㎝)、体重253パウンド(114.8 kg)の青年における18パウンド(8.2 kg)は、110パウンド(50.0 kg)の14歳女子における18パウンド(8.2 kg)ほどは大きな体重比ではありませんが、それでも彼が感じることさえなく18パウンド(8.2 kg)という重さを勘違いしていたことからは、いろいろなことがわかります。それは、身体認知が低く、栄養制御が不十分(間違いなく良い18パウンド(8.2 kg)ではない)なアスリートのサインです。ただ尋ねるよりも、計測した方がよいですよ。 補足:これが適用されるのは男性アスリートのみです;明らかな理由により、私は女性アスリートの体重は絶対に測定しません。 10.綿密なメモをとる 私はよく、長期のクライアントに関するメモを振り返り、彼らの動き(そして処方されたトレーニング)が何年にもわたってどのように進化してきたかを見ることがあります。これは、私があまり詳細にメモをとっていなかったらできないことでしょうーわたしたちは自分たちのビジネスに持続可能なシステムを作り出したいと考えているので、向上するために私は常にこのことに努めています。 従業員の異動により、クライアントのプログラミングの責任が他のスタッフに移されることもあるでしょう。スポーツ医学の専門家は、わたしたちのメモのいくらかを元に取り組みたいと思っているかもしれません。チームや代理人が、わたしたちが選手について発見したことや、それらにどのように対処する予定かという情報が欲しいこともあるかもしれません。文書で記録すればするほど、こうしたコラボレーションが必要な状況により備えることができるでしょう。 ですが最も重要なことは、クライアントのために新しいプログラムを作成するときはいつも、彼らの評価フォームと以前のプログラムをコンピュータ上に開いておくということです。私がはじめに気付いたことを確かめ、それを最新のプログラムと並べて、わたしたちの進捗を確認するためです。このような記録のおかげで、わたしたちの施設だけでなく、国内外にいる何十人ものアスリートに対してプログラムを作成することができるのです。

エリック・クレッシー 4289字

アナトミーエンジェル:股関節圧縮

股関節は、三軸関節で膨大な動きのポテンシャルを持つ球関節です。大腿骨(腿の骨)が、寛骨臼(骨盤のランドマーク)と関節を形成し、股関節は屈曲、伸展、外転、内転、内旋、外旋へと動きます。 健康で適切に動くシステムにおいて、股関節は空間で動くにつれて自然に圧縮し減圧します。 歩行において下肢がスイングをすると、股関節は自然に圧縮します。サスペンションでの十分な圧縮に向けて、ヒールストライク(踵接地)において股関節は減圧します。この段階は股関節の屈曲、内旋、内転あるいは十分な圧縮を伴います。 このアクションは、数多くの筋肉によって引き起こされますが、健康な股関節においてはその2/3が中臀筋によるものです。 サスペンションからプロパルジョン(推進)へと動く際、股関節は伸展、外旋、外転へ向かうために減圧されなくてはなりません。 ここに問題があります。人々は、数々の理由からこの移行にかなり苦労をするのです。よくあるいくつかの要因は下記のようなものです: 右側の腹部安定性不足 回内時の踵骨の外反不足がプロパルジョン(推進)への移行を制限する 大臀筋のような股関節の推進にかかわる筋群の活性不足 転倒や事故などにより大腿骨が内旋し内転したポジションに押し込まれている これらの要因は、左右非対称な横隔膜/肝臓の位置から右手の優位性、そして一日中座るというような全てのことに関わっています。 これは股関節の間違った運動パターンという結果となり、関節を圧縮されたポジションで維持してしまうこともあります。 関節を十分に減圧することができなければ、股関節はモビリティに飢えることになります。また栄養や潤滑にも飢えさせてしまうことにもなります。 これが、鼠蹊部から股関節外側そして臀筋群へとアルファベットの「C」の形状の痛みという結果となる人たちもいます。彼らが、この「C」の形状を描くように説明すると、私はいつも「圧縮」ということを考えます。その人が前に向かって推進するための股関節の減圧が十分できないために、痛みは歩行によってより悪化することもあり得ます。 また痛みは、足関節の底屈を伴って股関節が適度な屈曲をする座位やしゃがむ動作を過剰に行うことでも悪化するかもしれません。 その人は、股関節の詰まった感覚を解消するために、下肢を単に引っ張ってほしいと周りにいる人誰彼なく懇願するでしょう。 でも引っ張ったりしないでください。 その人が転倒やトラウマ的外傷を経験したのでない限り、股関節の圧縮は間違った運動パターンの結果であり、骨盤から下肢を引っ張り出すようにしたとしても改善されるものではないのです。 最も多くの場合において、股関節は緊張に欠けた腹部のために安定性を生み出そうと試みて圧縮をしているのです。このエネルギー漏れに取り組むことなく股関節を引っ張れば、引っ張ることをやめた途端にその人は、更に股関節が詰まるような可能性を生み出そうとするでしょう。 グレイ・クックは、これについて「スタビリティの問題にモビリティを持ち込む」と呼んでいます。 緊張に欠けた腹部は、大腿骨と骨盤をつなぐ股関節内転筋である恥骨筋のような筋肉を動員して更に股関節が圧縮されたポジションを促進します。 この内旋し内転した股関節は、深部に位置する閉鎖筋をエキセントリックに伸長した状態でロックし、表層の臀筋の機能を下行制御する病理学的圧縮を生み出すようになります。 結局のところ閉鎖筋はより関節に近い位置にあるわけで、位置を感じとるシステムとして他の臀筋群に「圧縮は私達がここでやってますから。あなた方が健康的な圧縮(中臀筋)や、減圧(大臀筋)をする必要はないですよ。」と伝えます。 というわけで、より表層の臀筋の機能による健康的な股関節の圧縮と減圧が、関節表面により近い位置にあるサイズの小さい、やる気がありすぎる安定させるための筋肉群による不健康な圧縮とトレードされてしまうわけです。 お願いします。お友達や家族に股関節を引っ張ってとリクエストするのはやめてください。あなたは、更なる圧縮という結果を引き起こし得る長期的な不安定性を生み出しているのです。そして圧縮が強くなればなるほど、骨関節炎的変化へとつながり得るのです。 私のYouTubeページでは、ハーフニーリングやデッドリフト、ケトルベルスイング、3面的安定性、プロパルジョン(推進/股関節減圧)そして腹部と臀筋群の活性化ドリルを紹介しています。 どのドリルが自分自身に適しているかわからないかもしれませんね。もし痛みを感じているのであれば、分析に加えて治療も必要となるかもしれません。 もしあなたがこの問題を経験しているのであれば、腹部のエネルギー漏れそして股関節の圧縮の要素に関して、この通りの順番で取り組むことができるムーブメントスペシャリストを訪問してください。 いつも通り、どうするかはあなた次第です。

キャシー・ドゥリー 2151字