未だかつてない速さで回復するためのトレーニング方法 パート1/3

ハイパフォーマンスリカバリートレーニングの新しい科学 フィットネス業界に携わるほとんどの人は、回復という言葉を聞くと、より多くの睡眠を取る、より良く食べる、常にストレスを抱えないようにするなど、ありきたりなことを考えます。(より新しい流行に傾倒していれば、ホットサウナやアイスバス、フロートタンク、クライオセラピー、瞑想などを考えるかもしれません) もちろん、これらは全て良い戦略です。唯一の問題は:ほとんどの人が、こういったことを一貫性を持って行うことができていないことです。 私はこれまでのキャリアを通じて、常に実際に何が起きているのかという大きな視野で物事を見るようにしてきました。回復について考える時に、私が見てきた一番大きなことは、上述のような戦略は一般的にジムの外で行われるということです。 これは重要なポイントです。そしてこのポイントこそ、私たちが回復にどのくらいの価値を置いているのかを示しており、大抵の場合、いかにそれが口先だけで終わっているのかを表しています。 現在、多くの人のフィットネスに対する取り組みは、全身の力を振り絞り、疲労の限界まで追い込む場であるジムでの時間です。一方で、回復は一般的には課外活動ポイントのようなもので:行えば、いくらかボーナスポイントをもらえますが、主要な課題(ワークアウト)がすでに行われているのであれば重要なことではないと考えられています。 私の記事である、なぜ高強度トレーニングに対する執着が私たちをダメにするのか、をすでに読んでいれば、あなたはすでにこのアプローチにどのような欠点があり、なぜうまくいかないのかを理解しているでしょう。今回は、あなたがこれまで一生懸命行ってきたことの成果をようやく得ることができる新しいアプローチの出番です。 これが、なぜ私が今回、すぐに行うことができ、回復を促進し、より良い結果を得ることができ、ジムに来た時よりもより良い気持ちでジムを後にするための、特別な種類のワークアウトを共有したい理由です。 しかし、詳細について述べる前に、どのようにしてこのワークアウトができたかの背景を知ってもらうことが大切です。 一流のパフォーマーをその他大勢と分けるもの(あるいは、フィットネス業界が知らない軍隊の知恵) 90年代の後半、そして2000年代の初め、米軍は、様々な特殊部隊の「燃え尽き症候群」や疲労についての研究に莫大なお金と資源を投資し始めました。彼らの目的は、なぜ戦場でのストレスをうまく扱える(ナビゲーションスキルを保ち、精確に銃を撃ち、正しい戦略判断をする)兵士とそうでない兵士がいるのかを明らかにすることでした。 この研究の一部として、米軍は、特殊部隊の兵士たちを、選抜や高レベルの戦術訓練コースなど、様々なストレスのかかる期間にわたって追跡しました。 この期間中に、米軍は、様々な認識及びパフォーマンステストを用いて、パフォーマンスを測定するとともに、アドレナリン、コルチゾール、ニューロペプチド Y(NPY)といった様々なストレスホルモン、さらには心拍変動(HRV)を計測、追跡しました。 目標は、ストレスに対処できる兵士と対処できない兵士を隔てる特定の生理的な特性があるのかどうかを理解することでした。 疑いの余地なく、最も突出していたのは心拍変動(HRV)のデータでした。「一流の兵士」-選抜およびサバイバルスクールを通過することができた兵士 -は、ストレスのかかる事象が起こった24時間後に、かなり高い心拍変動(HRV)の値を示しました。 下記の写真を見てください。一流の兵士と一般の兵士を比べた場合、両者のHRVには明確な違いが見て取れます。 「どうして以前は気づかなかったのだろう…?」 数年前に軍の研究を初めて読んだときは、面白いと思いながらも、それほどの驚きはありませんでした。そのデータを再度読み返したのは1年前でした…そして、以前は見逃していたものが飛び込んできたのです。 私が見逃していたのはこの段落です: 「優れたストレス耐性を持つ人は、ベースライン及びストレスにさらされているときのどちらにおいても、有意に異なるHRVのパターンを示していました。HRVのこれらの違いは、ストレスにさらされている最中、及びストレスにさらされた後に行う実際のミリタリーテストや認識神経心理学テストのパフォーマンススコアの予兆となるものです。」 これこそが、私の目に飛び込んできたものです:「HRVのパターン…テストパフォーマンスの予兆となる」 つまり、軍は、HRVの特定のパターンが、ストレスに直面した状態で兵士がうまくパフォーマンスを発揮できるかどうかを実際に予測できることを発見したのです。 このことに気づいた時、私はこの発見をフィットネス業界に応用する方法を見つけなければいけないと思いました。軍が、HRVのパターンにより、兵士がストレス下に置かれた状態で能力を発揮できるかを予測することができるのなら、アスリートにも同様のことができるかもしれないと考えたのです。 これが、私が、フィットネスに関する予測ができるHRVのパターンを見つけるために機械学習-人工知能(AI)の型-を使い始めた経緯です。 世界最大のHRVのデータベース – そのデータが語る物語 2011年の後半にバイオフォースHRVを発表した時、私の目標は、私が過去10年間にわたってクライアントやアスリートに使用してきたものと同じ強力なテクノロジーに、多くの人がアクセスできるようにすることでした。 それまでは、最大3万ドル(約330万円)もするHRVシステムを使っていました。しかし、モバイル機器技術の成長がHRVを全ての人に手が届くものにすることを可能にしました。 その時は認識していませんでしたが、6年以上にわたって数千人から集めた150万を超えるHRV測定のデータベースを構築することは、私が想像していた以上にはるかに価値のあることでした。全ての数字を掘り出して、トレーニング、ストレス、回復、及びフィットネスの変化の関係性に対するより良い理解に役立つ何らかのパターンや傾向がないかを見ていた時、突然あるパターンが浮かび上がってきたのです: 高強度のトレーニングセッションの翌日にHRVに増加が見られる人は、300%高い確率で、その後3~5日間の平均HRV(一般的な有酸素フィットネスレベルの指標)にも増加が見られます。 つまり、私は軍が発見したのと同じHRVのパターンを見つけたのです。データが示していることは、ストレスにさらされた(この場合は高強度トレーニングの)翌日に測定したHRVは、その後数日間のうちに、フィットネスの向上があるかどうかの予測に役立つということです。 なぜそれがそんなに重要なのでしょうか? その答えは、激しいトレーニングセッション後の最初の24時間の回復とその後に得ることができる成果との間の、明確なつながりを示しているからです。 繰り返します。 激しいトレーニングセッション後の最初の24時間の回復と、その後に見られる成果には、明確なつながりがあります。 これはつまり、成果を最大化するために行うことができる最も重要なことは、高強度セッションの直後の24-48時間以内に、私が「回復状態」と呼ぶ状態に身体を移行することです。 これはフィットネスのアプローチとして、高強度のトレーニングセッションをひたすら繰り返すことよりもはるかに重要なものです。 フィットネスの一つの指標に対して、24時間のHRVしか評価できませんでしたが、軍の研究と同じデータを支持することから、この二つの関係性は非常に重要なものです。これは回復がどのくらい重要なのかを表しています。 身体を回復状態に移行する能力は、ハードワークから最大の成果を得ることができるか、それともバーンアウトしてしまうかを真に分けるものです。 しかし、なぜ私がこのパターンが存在すると信じているか、そしてそれがあなたにとって何を意味するのかを説明するために、回復とは一体何であるかについて少し考える必要があります。

ジョール・ジェイミソン 3453字

コンディショニングの真実:なぜ強く、速く、フィットしていることだけでは十分ではないのか パート1/2

コンディショニングコーチとしての私のキャリアのはじまりを振り返ると、認めたくはありませんが、私は本来あるべくしてよりも、もっと成功していたかもしれません。私はエネルギーシステムについて出来る限りすべてを勉強していて、スポーツ界の最高のコンバットアスリートの何人かと働いていましたが、真実は、私にはまだ学ばなくてはならないことが沢山あったのです。 成功は時折あなたを甘やかします。成功は、あなたが本当に知っている以上に知っていると思わせ、すべてが本来よりももっと簡単になってしまうのです。 何度も、世界の別な地域から来る他のジムからのコンバットアスリートのトレーニングを頼まれ始めた頃、私は結局コンディショニングについて分かっていなかったのかもしれないと気が付き始めました。 これが起こった時、私はファイターと週1、2回、時にはもっと少ない頻度でしか働いていませんでした。これは、すべてのスキルワークをAMC Pankrationでマット・ヒュームと行いながら、彼らの試合まで毎日指導するという、かつて私がしていたようなアスリートとの働き方とは劇的に異なりました。 これらの新しいアスリート達が海外から到着し、評価をして、彼らが家に帰った後自分たちで行うためのプログラムを作成します。 彼らが去った後、もちろん私は定期的に彼らと連絡を取り、彼らはどのように進んでいるか私に知らせるために経過レポートを送ってきます。 当初、私はこれらの新しいファイターたちが、パーソナルで指導していたファイターたちと同じくらい良いパフォーマンスをするようになると期待していました。無知な私は同じエネルギーシステム発達の基礎原理を用いていたので、彼らの数字が改善すれば、彼らのコンディショニングも改善するだろうと単純に思っていたのです。 しかしながら、現実は、常にこのようにはいきませんでした。彼らのフィットネス指標(安静時心拍数、VO2 max、無酸素性作業閾値、など)が劇的に向上しても、彼らのパフォーマンスがそれらに一致しない時もあるのです。 コンディショニング数値では、彼らがキャリアの中で最高の調子であるように見えているにもかかわらず、彼らは試合が進むにつれて疲れているように見えたり、ガス欠で倒れてしまったりしました。 共に働いていたアスリートが残念なパフォーマンスをしているのを見るというのは、非常にいらだたしいものです。あなたが彼らをだめにしたように感じることも多いでしょう。自分自身に問いかけたことを覚えています、「一体ここで何が起こっているんだ?私が彼らにデザインしたプログラムは役目を果たして、彼らの数値は(たいてい劇的に)向上し、あるべきところにいたのに、彼らのコンディショニングは伴っていなかった。何が間違ってしまったのだろう?」 その経験―そしてそれらの失敗のつらい問いかけに直面しなくてはならないことーは、パフォーマンスに対しいかにトレーニングをしていくかについての、私のキャリアにおける最も大きい転換の主な要因となりました。 この問題について取り組みながらたどり着いた答えは、コーチとトレーナーが全体として“コンディショニング”にどのようにアプローチするかに革命を与えるために、今日私がしていることのすべてにおける駆動力となりました。 フィットネス対コンディショニング(あるいは、なぜすごく強く、速く、そしてフィットしていることだけでは十分ではないのか) コーチまたはアスリートとして、私たちは皆ここにいたことがあります:ハードにトレーニングして、練習やトレーニングセッション中のフィットネスは良く見えるのに、試合となるとだめになってしまう。 …練習で良いパフォーマンスをしているチームが、第4クオーターで猛烈にパフォーマンスが落ち、衰退し、リードを失う。 …5ラウンド問題なくトレーニングしていたアスリートが、試合本番では第1ラウンドで衰退しガス欠になってしまう。 私たちの誰もが関連づけられることでしょう。きつい練習やトレーニングをこなして調子が良いように感じているのに、表に出てパフォーマンスすると、私たちのフィットネスは私たちが期待しているものにはならないのです。 これが起こるとき、実際何が起こっているのでしょう? この困惑しいら立たせる現象を理解するためには、ここから始めなくてはなりません: "フィットネス"(強いことや速いこと、あるいはVO2 maxや安静時心拍数などのような"の良い指標"を持つこと)と"コンディショニング"には違いがあるのです。 フィットネスはパフォーマンスの潜在能力です。非常に重いウエイトを上げられること、とても強いパンチが打てること、または非常に速く走れることです。 これらの全ては、パフォーマンスの"エネルギー出力"サイドにあります。質は極めて重要で効果的なあらゆる効果的なトレーニングプログラムにとっての極めて重要な質ではありますが、それらのこと単体では、必ずしも最高のパフォーマンスになるということではないのです。 パフォーマンスのもう一つの側面が、“コンディショニング”のあるところです。 コンディショニングは数値や数字の集まり以上のものです。それよりも、コンディショニングは効果的にエネルギーを用い、管理し、私たちのフィットネスを働かせるための能力を与える、私たちが発展させるスキルセットです。 なので、“パフォーマンス方程式”は本来このように見えます: フィットネス(エネルギーシステム、強さ、パワー)=エネルギー生産、パフォーマンスに対する潜在能力 コンディショニング=フィットネスの質+エネルギー消費(パフォーマンスの要素すべてが一体となる場所)を促すスキルセット 表に出て、できるだけ最高のレベルでパフォーマンスをするために、私たちはパフォーマンスを単にフィットネス要素の集まりとして扱うことを止め、どうしたらコンディショニングを発展出来るか見始めなくてはなりません。 単にフィットネスのみでなく、コンディショニングを発展させるための最も重要な3つのスキル 多くの人々にとって、その人が疲れているかいないかの評価ではなく、スキルセットであるコンディショニングの考えというのは新しいものです。そのため今日は、本当に重要な場面で、あなたの指導するアスリートたちが出来る限り最高のパフォーマンスをする手助けをするために、あなたが発展させなければならない3つの重要なスキルを述べていきます。 たとえあなた自身がコーチやアスリートでないとしても、これらの3つのスキルは、実際にあなたのフィットネスを日常生活のストレスに対応するために使えるようにするにも非常に重要です。 これらのみが、コンディショニングを最大化するために発展させなければならないスキルではないことを、頭に置いておいてください。しかし、私の15年以上の経験に基づいて、これらは最も重要なのです。 覚え書き:フィットネス(パワー、ストレングス、スピード、持久力)はパフォーマンスの“エネルギー生産“側である。これらは明らかに重要だが、本当にただパフォーマンスの潜在能力を築くだけである。 実際に潜在能力のすべてをパフォーマンスに置き変えるためには、私たちはコンディショニングのスキルを発達させることに集中しなくてはなりません。 これらの3つのスキルは、これを行うためのあなたの出発点です。 コンディショニングスキル#1:ダイナミック・エネルギー・コントロール(心拍数と出力をコントロールする能力) コンディショニングスキル#2:回復と呼吸(よりよい呼吸をし、より早く回復し、より良いパフォーマンスをする) コンディショニングスキル#3:疲労したモーターコントロール(疲労が出てきた時になぜテクニックと動作の質を維持しなくてはならないのか)

ジョール・ジェイミソン 3338字

コンディショニングの真実:なぜ強く、速く、フィットしていることだけでは十分ではないのか パート2/2

コンディショニングスキル#1:ダイナミック・エネルギー・コントロール(心拍数と出力をコントロールする能力) コンディショニングのゴールはフィットネスレベルをずっと100%、すべて出し切れるよう十分に高く発達させること、そうですよね? 多くの人々がそう考えますが、ただそれは現実ではないのです。 スタートからフィニッシュまで100%出せるという考えは良いアイデアのように聞こえる一方で、競技またはトレーニングセッション中の間ずっと最大出力を維持することは人体には不可能なのです。 そこで疑問はこうなります:いつ100%、あるいは60%か70%でいくかをどうやって知ることが出来るでしょうか?それと同様に重要なこととして、それらの出力レベル間の違いを私たちは本当に知っているのでしょうか? いつどのようにエネルギーをコントロールすれば、ある時にはエネルギーを縮小し保存することができて、本当に重要な場面でアクセル全開にできるのか、私たちはどのように知ることができるのでしょうか? それらの疑問に対する答えは、私が“ダイナミック・エネルギー・コントロール”と呼んでいるものですーあなたの出力や消費を十分に認識し、疲労を避けパフォーマンスを最大化するために意識的にコントロールすることのできる能力です。 このスキルを持っていない人々は、出ていってガス欠になり、エネルギー生産の容量を超えて、必然的に急速な疲労を導くことになるでしょう。これは非常によく起こることで、気づきとコントロールの欠如以上のなにものでもありません。 現実は、あなたはエネルギー消費と生産の限界が何かを認識できる必要があり、それらを超えそうな時を認識した場合の戦略を持っていなくてはなりません。これがあなたがエネルギーを効果的に管理できるようになるための唯一の方法であり、すべての中で最も重要なコンディショニングスキルです。 これをどう行うのでしょうか? フィットネスの質を発展させている時、あなたは心拍数モニターを使わなくてはならず、アスリートたちにどのように心拍数を上げ下げするか、そしてどのように心拍数の限界と力発揮の容量を知るかを教える必要があります。 もしあなたが“もっと頑張ること”が常に答えであると思いながら、それらの限度を超えて押し続ければ、より早く疲労するでしょうー第4クォーターや最終ラウンドなど、最高でなくてはならない時にガス欠になりやすくなるのです。 しかし、もし疲労の警告サインを認識し、異なるレベルの力発揮がどのように見え感じるかの認識を発達させることが出来れば、それをどのように対処し操るかを学ぶことが出来ます。 たとえ競技中、心拍数モニターを着けていなくても、あなたは疲労の警告サインを認識することが出来ます。もしあなたが、無理をしすぎる強度がどのように見え、感じるかを認識していれば、エネルギー消費を管理し、最高のパフォーマンス維持の対処をするための戦略を用いることが出来ます。 これが実際何に行き着くのかというと、マインドセットの移行です。トレーニングのゴールが誰かを何度も繰り返し疲れさせることだと考えるよりも、どのようにエネルギー消費をコントロールし管理するか学ぶことを選ばなくてはなりません。 要点:エネルギー消費を認識し、本当に必要な時のためにエネルギーを保存し、試合を通してパフォーマンスを維持するためにどのように調整するかを知るダイナミック・エネルギー・コントロールは、アマチュアとエリートアスリートを分けるものであるーそしてそれはしばしば勝利と敗北の間の違いである。 コンディショニングスキル#2:回復と呼吸(よりよい呼吸をし、より早く回復し、より良いパフォーマンスをする) 多くのコーチやトレーナーたちは、彼らのアスリートがフィールド上、コート、またはトラックで行っていることに努力を注いでいます。そしてそれは明らかにとても重要です。 しかし、同じくらい重要なのは、試合の“余白”―フットボールであなたがフィールドから出てきたときやホッケーで氷上から出てきたとき、あるいはクォーターやハーフタイムの間―に何が起きるかです。それらのすべては、実際のプレー期間と同じくらいコンディショニングにとって重要なのです。 試合やトーナメント、またはマッチのラウンドの合間に渡ってパフォーマンスを維持するために、回復のスキルを教えることが、勝つために必要なレベルでパフォーマンスし続けることを可能にするのです。 もし素早く回復しストレス反応を抑える方法を学ばなければ、あなたは、とても早く疲労しきってしまうことでしょう。 回復については、私たちが話せる様々なことがたくさんありますが、競技の途中で最も容易にコントロール出来ることが呼吸なのです。 もしより効果的な呼吸の方法を学ぶことが出来れば、競技の休憩時間中に心拍数を"回復"状態に戻すことができるため、その時がくれば、試合に戻り100%を出す準備が出来ているのです。 理想的なパフォーマンスのためには、人々にどうやって高いレベルでエネルギーを消費するかを教えるだけでは十分ではありません。 私たちは彼らに、彼らが運動時間にエネルギー消費を管理し、競技のトランジションや"休憩"時間の間に出来るだけ素早く回復することが出来るよう、効率的に呼吸をする方法を指導しなくてはなりません。 コンディショニングスキル#3:疲労運動制御(疲労が出てきた時になぜテクニックと動作の質を維持しなくてはならないのか) コーチやトレーナーたちが犯している最大の間違いの一つは、疲労下においてだめなテクニックと動作の質を許していることです。 もっと悪いことに、多くの人々が疲労に対処する最も良い方法は、疲労の中で苦しむことだと考えているために、アスリートを意図的に過度に疲れさせてトレーニングさせているのです。これはしばしば"精神的な強さ"を築くという名目で行われます。 真実は、厳しいトレーニングセッションを遂行させることは、彼らを非常に疲労させることになり…だいたいが非常に悪い動作の質と運動パターンを増強することに至ります。 こうしたアスリート達が試合に行った時何が起こるかというと、彼らはこうした不十分な運動制御パターンとテクニックにおける間違いを持ち込み、より多くのエネルギーを消費し、さらに早く疲労してしまうことになるのです。 だめなテクニックや動作の質を許してしまうことーたとえ"ただの"練習やトレーニングであってもーは、確実にアスリートのパフォーマンス潜在能力を制限し、彼らのコンディショニングをよくするどころか悪くしてしまう方法です。 言及したように、私たちは"精神的な強さ"の名目で行なっていますが、私たちが本当に行なっているのは、最も大切な時にだめなテクニックとパフォーマンスを容易にさせているのです。 真実は、彼らが疲労していない時に良い動きを教えられるように、彼らが疲労している時でさえもどうやって良く動くかを教えることが出来る(そして教えなくてはならない)のです。 疲労運動制御とは、a)疲労がどう動作に悪い影響を与えるか認識出来る、そして、b)できるだけ最高のレベルでパフォーマンスできるよう疲労のマイナス効果にどう対処するか学ぶ、というコンセプトです。 あなたが疲れた時、ゴールは全力を出すことや闇雲にもっと頑張ることではなく、動作とテクニックの質を維持し、エネルギー保存を死守することなのです。なぜなら、それが私たちのスキルを効果的にし、限られたエネルギーの供給を保存させるものだからです。 悪いテクニック/動作の質=より多いエネルギー消費(低下したパフォーマンスを導く) 疲労が出てきた時にどこが崩れ始めるかをアスリートが認識する手助けをするのは、コーチとしての、あなたの責任です。 私たちは、彼らが自分の悪い傾向が何かを知っているということを確実にしたいのですーどのように悪い動作パターンやテクニックの間違いにパフォーマンスが影響されてしまっているのかーそしてそれらにどう対処していくかを学ぶ手助けをしたいのです。 彼らは、疲れた時にテクニックが低下し始めるのを認識しなくてはなりません。頭の中で「おい、元に戻れ」と言う声の“スイッチを入れる”か、正しい動作とテクニックのための他の特定のキューを引き起こすことを学ばなくてはいけないのです。 アスリートに疲労を扱うことは“なんとかやりきる”ということではないと理解させるのは、コーチとしての、あなたの仕事です。 理想的なパフォーマンスを維持しながら効果的に疲労を扱うために、疲労が出てきた時の正しいテクニックと動作を強調しなくてはなりません。その人が疲れた時にも、動作のコーチングと良い運動パターンの強化を止めるべきではありません。 トレーニングセッション中、特にアスリートが疲れているとき、常に動作の質を強化すべきです。そうすれば、あなたのアスリートたちはさらなるギアを見つけ、他の誰もが疲労や悪い動作の質、そして低いパフォーマンスに屈服しているときに秀でる存在になるでしょう。

ジョール・ジェイミソン 3882字

より良いパフォーマンスと回復のための呼吸ストラテジー パート2/2

動きと回復を改善する3つのシンプルな呼吸エクササイズ マイク・ロバートソンです。 私は、今しがたパフォーマンスとリカバリーにおいて呼吸がどれほど大切かについて話し終えたビルと共に、IFASTの共同経営者です。 私はおよそ18年前に健康及びフィットネス業界での仕事を始めました。これまでに、すべてのメジャースポーツのプロアスリートと働く機会に恵まれ、彼らのパフォーマンス、及び健康を、次のレベルへと進める手助けをしてきました。 でも、堅苦しいことはこのくらいにして、みなさんがここにいる真の理由に戻りましょう:動きを改善し、回復を促進するための呼吸の使い方です。 ビルは、なぜ適切な呼吸のメカニクスが、最適な動きと回復にそれほど重要なのかをとても上手に説明してくれました。 次のステップは、適切な呼吸のメカニクスを教えるために、あなたのプログラムに特定のエクササイズを取り入れることです。不思議に聞こえるかもしれませんが、多くの人々 -あなたが見ているクライアントやアスリートを含め- は、効果的ではない呼吸をしています(少なくとも理想的ではない)。 ビルが上述したように、良いニュースは、呼吸は、健康、フィットネス、パフォーマンスプログラムなどの構成要素と同様に、鍛えることができるということです。 ここで、今すぐに始められるエクササイズを紹介します。 ベア呼吸 床に四つん這いになる 手は肩の真下、膝は股関節の真下に位置する 床から身体を離すように、肩甲骨の間にストレッチを感じるまで、腕を通じて床を押す 脛が床と平行になるように、床から膝を持ち上げる このポジションを保ち、鼻から吸って、口から吐く、充分な呼吸を3-5回する 数秒間、リラックスして自然な呼吸をする 上記を3-5回繰り返す 壁呼吸 壁を背にして立ち、足は腰幅に開いて、壁から10-12インチ(25-30cmくらいのところに位置する) 骨盤を後傾し、壁に対して下背部を平らにする 上背部を前方へ丸めながら、両手を前方へ最大限伸ばす このポジションを保ちながら、3-5回呼吸をし、リラックスする 3-5回繰り返す 前腕プランク呼吸 床にうつ伏せになる 手のひらを床に向けて、人差し指と親指でダイアモンドの形を作るようにして、手を顔の下に位置する。 前腕を通じて押し、肩を前に押して、胸とお腹を床から持ち上げ、体重が前腕と恥骨のみに乗っているようにする この上向き姿勢を保ちながら、鼻から吸って、口から吐く、完全な呼吸を3-5回します スタートポジションに戻る これを3-5回繰り返す。 これらの回復呼吸エクササイズにおける素晴らしい点は、ほぼいつでも行うことができることです。 これらのエクササイズは、動的なウォームアップやクールダウンに取り入れるのも非常に簡単で、ジムの以外の場所、自宅でも行うことができます。ビルが述べたように、こういった種類の呼吸を数分行うと、副交感神経系を活性することができるため、より緩んで、リラックスした状態になることに気がつくでしょう。 日常のルーティンの中にこれらのエクササイズをいくつか組入れてみてください。すぐに違いを感じることができるでしょう。

マイク・ロバートソン & ジョール・ジェイミソン 1416字

より良いパフォーマンスと回復のための呼吸ストラテジー パート1/2

数年前、私は取り除くことができないと感じる慢性的な肩の痛みを抱えていました。 私は、その肩の痛みを治すために、よくある方法をいろいろと試しました:アクティブリリース、様々な種類のマッサージ、電気刺激、その他考えられることの全てを。そのどれもが、短期間の痛みの緩和をもたらす以外は、ほとんど役に立ちませんでした。 数日後には、元の状態に戻ってしまいました。 数ヶ月後、私はビル・ハートマンとマイク・ロバートソンのセミナーを受講していました。彼らに、私が肩に抱えている問題、知り得る全ての治療法を試したこと、それでもまだ痛みがあることを説明しました。 ビルの答え?より良い呼吸をすること。 彼は、私をテープルの上に載せ、素早い評価をし、一連の呼吸エクササイズと数種のモビリティードリルを紹介しました。「よし、じゃあ立ち上がって、肩を動かして、どう感じるか教えて」 私は立ち上がって、肩を動かしました、すると…痛みがなかったのです。 もちろん、私は一連のエクササイズが効いたことに感動しましたが、それまでに試した全ての方法と同じような結果になるだろうと思っていました:一時的な緩和をもたらしても、数日後には痛みが戻ると。しかし、数日が経っても、数週間が過ぎても、痛みが戻ってくることはありませんでした。 ビルは、何ヶ月も私に取り憑いていた、時には物凄く痛み、眠ることさえできなかった障害を、たった数分で改善することができたのです。 それは、私が初めて呼吸の大切さに触れた機会であり、ビルとマイクは、他にほんの数名しか意識さえしていない健康とフィットネスの側面をカバーしていることがわかりました。 過去数年にわたり、私は、パフォーマンス、回復、一般的な健康においてさえも、呼吸がどれほど重要な役割を担っているかについて学んできました。適切に呼吸をする方法を学ぶことから、文字どおり全ての人が恩恵を受けることができます。もしあなたがコーチまたはトレーナーなら、これはあなたのクライアントにとっても人生を変え得るものでもあるのです。 これこそが今日、より良いパフォーマンスとリカバリーのために適切に呼吸をする方法について、深く話すために、私がビルとマイクを招待した理由です。 ビルとマイクは、インディアナポリスフィットネス&スポーツトレーニング (IFAST)という、メンズヘルスマガジンによるアメリカのジム、トップ10に、過去6年間で3回ランクインしている施設を所有しています。 ビルから始め、その後にマイクから聞きますが、まずここに、呼吸ストラテジーがどのようにリカバリーを改善できるかを説明する短い動画があります。 現在のパフォーマンスとリカバリーのモデルは破綻している(人間はなぜ機械ではないのかの理由) 皆さんこんにちは、ビルです。IFASTフィジカルセラピーのオーナーとして、またインディアナポリスフィットネス&スポーツトレーニングの共同経営者として、私は、他の形式の治療では改善できなかった痛みを持つ人々の解決方法を見つけています。 プロアスリートから一般の人々まで、彼らが皆、調子の良い、痛みのない身体を取り戻し、パフォーマンス及び健康を最適化できるように取り組んでいます。 今日の私の目標は、呼吸がどのように動きやリカバリーに影響するのかに対して簡潔な概要を与え、局所から全体の回復へとつながるパフォーマンスモデルを提供することです。 パフォーマンス(または動き)と回復となると、コーチやトレーナーの多くは、決定的要素として筋系に注目する傾向があります。大抵はこんな感じです: パフォーマンス、または体組成(あるいは両方)を向上するために、より大きく、より強く、より調整され、よりパワフルにしたい筋肉に適切な刺激を与えます。 ワークアウトや競技の間に十分な休息を取り、関わった筋肉の修復に必要な栄養素を身体に与え、必要な時にまた仕事ができるように準備します。 少なくともこの大半を正しく行う事で、物事は、あなた、またはあなたのクライアントやアスリートにとって良い方向に向かいます。単純でしょう? この通りなら素晴らしいです。問題は、人間は機械ではないという事です。個々のパーツの集合として身体を見ることができるほど、単純ではないのです。 パフォーマンスと回復を、筋系に対して純粋に局所的なものとして捉える事は、単純に不十分なのです。 実際には、身体は多くのサブシステムにより繋がっていて、それぞれが、パフォーマンス、回復、そして全体的な健康に対して重要な役割を担っています。筋系の動きと回復を最適化しようとすることは、パズルの一つのピースにすぎないのです。 動きと回復のためのより良い、より完全なアプローチは、一つのスーパーシステム – または「ヒューマンシステム」に集約するそれぞれのサブシステムを考慮し、統合されたモデルを通して物事を見ることです。 これらのサブシステムそれぞれが、他のサブシステムのパフォーマンスの成果とそこからの回復の両方を管理し、促進する能力に影響を与えます。 動きと回復の最適化における最初のステップは、すべてが筋系に始まり、筋系で終わる時代遅れのモデルから脱却し、身体の様々なサブシステム全てを考慮した、統合されたモデルを採用することから始まります。 すなわち、私たちは、個々の部分の寄せ集めとして身体を見ることをやめ、相互に連結し、共に働く、密着したシステムの集合体として身体を見ることを始めなければなりません。 この転換ができたら、次のステップは身体の様々なサブシステム全てが大切であると理解することですが、私は、そのうちの一つが他のすべての土台であると考えています。 (効果的に)呼吸をしていない時に悪いことが起こる 健康とパフォーマンスの「パズル」の最も大切な二つのピースである、動きと回復を最適化することにおいて、適切な呼吸の仕組み以上に大切なものは他にありません。 呼吸は、他の全てのサブシステムが健康に働くための土台であるにも関わらず、動きとリカバリーという側面において、最も十分に使われておらず、最も軽視されている部分です。 カレル・ルウィット博士はかつて言いました:「呼吸が正常化されていなければ - 他のどの動きのパターンも正常化できない」 呼吸が不十分だと、少なくともある程度は、他の全てのことが良い状態ではなくなります。適切な呼吸はそれほど大切なのです。 呼吸を正しく行うことができれば、身体の他の全ての「システム」が、最適な動きと回復を促進するために共に働く原材料があることになります。 動きやパフォーマンスという観点からすると、これは当然であるべきです。 もし、効果的に、効率的に呼吸をしていないとすれば、最も基本的な要求が酸素の効果的な活用である運動において、どうして良いパフォーマンスが期待できるのでしょうか? 呼吸の流れの力学的効果、及び、呼吸がどのように動きを損ない、あるいは促進するのかについては、いくら強調してもしすぎることはありません。不十分な呼吸パターンにより、姿勢や動きの質が損なわれ、やがてエクササイズや競技における非効率的な動きにつながり、パフォーマンスは、本来行うことのできるレベルから明らかに減少します。 呼吸は、筋骨格系のポジションを変えることにより、動きのパターン、姿勢、痛み、またパフォーマンスに影響し、肺の膨張不足、または過膨張につながる気流の制限を招き、動きを制限する力学的障壁を作り出します。 すなわち、まさに本当の意味で、パフォーマンス及びエクササイズ時に最適に動くことができることは、効果的に呼吸ができる能力に起因しているのです。 回復も同様に、悪い意味で影響を受けます。最適な回復について本当に理解するためには、筋肉を通り越えて、神経系を観察しなければなりません。 神経系の回復は、動動系への出力をもたらす能力の再獲得に関わる強力なインフルエンサーです。しかし、健康を維持する能力と同様に、こういった局所における適応が起こることを可能とする、幾つものサブシステムの反応に与える影響にも基づいて考慮をしなければなりません。 神経系が慢性的な疲労を抱えていると、あなたが計画したトレーニングプログラムやコンディショニングプログラムがどんなに「効果的」であるかに関わらず、「トリクルダウン(流れ落ちる)」効果により、成果は最適状態には及ばなくなります。 例えば、強力に活性された、硬直した、適応しにくい神経系は、他のシステムの能力にも同様の低下をもたらす可能性のある広範囲の影響を持ちます。 自律神経系が無理を強いられ、交感神経系優位な状態に居続けると、ストレスホルモン過多となった血液循環が、エネルギーの修復メカニズムが効果的に働くのを遅らせるかもしれません。これにより、消化が阻害され、必要なエネルギーや栄養素の吸収が制限されることにもなりえます。 忘れないでください:全ては相互に繋がっているのです。 「交感神経支配」にあることは、免疫システムが炎症を管理する能力を弱め、軟部組織が肥大化する能力や、順応して再建する能力を低下させます。 やがてこれは、腱などの組織の退化を招き、最終的に怪我につながります。 簡潔にまとめると、過度な負担、過度なストレス、疲労にさらされた状態のために、神経系が、より「交感神経支配」状態にあればあるほど: 身体が動きを促進することに対して非効率的になります(例 ワークアウトや競技時のパフォーマンスが、「理想的な」生理学的環境下で可能なパフォーマンスに及ばない)。 身体が、ワークアウトセッションや競技の後に回復プロセスを促進する能力が低くなります(つまり、身体は低いレベルの疲労状態に居続け、次回のワークアウトや競技でのパフォーマンスが代償されます。またそれが長期にわたって続くと、全体的な健康にもマイナスの影響を与えます)。 身体により多くの「ストレス」がかかると、神経系への要求はより大きくなります。神経系に過度に負担をかける要因となるものには下記が含まれます: 貧しい睡眠習慣 長引く健康問題(たとえ「少し」でも) 悪い食事の選択による必要栄養素の欠如 やる気に満ち溢れた、忙しい、「絶対諦めない」タイプの人であること フィジカルトレーニング/コンディショニング(そうです、核心的な部分ではエクササイズは身体にとって「ストレス」です) 望ましくない呼吸パターン もちろん、これらストレスの環境的、行動的側面のそれぞれに取り組むことは大切ですが、もし私が、これらに「優先順位」を作らなければならないとすれば、良い呼吸のパターンを発達させることが常に最上層にくるでしょう。 回復に関して言うと、適切な呼吸は、神経系をストレスにさらされた交感神経支配状態から、より修復的な、回復基盤の副交感神経支配状態へと移行することを可能にします。結論はこうです:エクササイズや競技時に最適に動き、かつ回復を促進するためには、あなたの神経系状態を確認しなければなりません。 良いお知らせ? 呼吸は、筋肉や、他の健康及びフィットネスの構成要素のように「鍛える」ことができます。より良い呼吸のメカニクスを発達させることにより、時間とともに、無理を強いられてきた神経系の結果を望ましい状態に変えることができます。 練習をすれば、効果的な動きと回復プログラムの一部として、クライアントやアスリートは、パフォーマンスを維持するために、練習のセットの繰り返しの間に回復を促進することができるとともに、健康と長期間という観点から、より良い回復をする能力を向上することができます。

マイク・ロバートソン & ジョール・ジェイミソン 4989字

カロリーを減らしてもうまくいかない理由 パート2/2

回復負債とその体重との関係 要点をおさらいすると、回復負債とは、身体活動や日々の生活からくるストレスに対処するために非常に多くのエネルギーを消費してしまい、身体を再構築したりより強くて健康な体づくりをするための十分なエネルギーがもう残っていないときに起こります。 わたしたちの代謝は、一日に生産できるエネルギー量が限られていることを忘れてはいけません。つまり、脳はこの限りある資源をどこに分配するか優先順位をつけることを余儀なくされます。 身体をカロリー不足の状態に曝せばいつでも、身体はエネルギー確保のためにその組織を分解するよう強いられるのです。もちろん、みなさんは貯蓄されている脂肪だけが燃焼されることを望んでいますが、実際のところ、貯蓄された糖(グリコーゲン)も分解されます。そして、大幅な不足になると、筋肉までも分解し始めるのです。 結局のところ:体脂肪を落とすために、カロリーを制限して高強度トレーニングを積み上げれば、身体をいとも簡単に回復負債に陥らせてしまいます。そうなると、体内では様々な現象が次々に起こり始めます。それが共同して働き、主にドーパミン機能の変化を介して行動に影響します。 ドーパミンや行動を誘発するプロセスすべてが、詳細に理解されてはいませんが、高強度トレーニング、生活のストレス、低カロリーの食事が組み合わされると起こるさまざまな結果を指摘する研究が増えています。 -炭水化物を減らすことによるカロリー不足と高強度トレーニングの組み合わせは、炎症レベルを増大させます。2012年に実施された研究を含めたいくつかの研究は、グリコーゲン枯渇状態でのトレーニングは、炎症性たんぱく質のレベルを正常時よりも上昇させることを示唆しています。このことは、グリコーゲンのストックが少なくなってきた時に、エネルギーを非常に必要とする高強度エクササイズを実施することはかなりのストレスであることを意味しています。 -慢性的なコルチゾール濃度の増加は、グルココルチコイド受容体抵抗を引き起こし、それがさらに炎症を悪化させます。コルチゾールが、お腹の周りに脂肪貯蔵として脂肪細胞を蓄えることは、たいていの人は気づいていますが、それが強力な抗炎症ホルモンであることを多くの人が忘れています。最近の研究では、慢性的なストレス期間でコルチゾール結合受容器(グルココルチコイド受容器として知られている)は消耗されることがあると示唆しています。つまり:A) コルチゾールが炎症を抑えるという効果が薄れてしまう、そして、B) コルチゾール値が慢性的に上昇してしまう。 -炎症はインスリン感受性を低下させます。慢性的な高レベルの炎症には、広範囲のマイナスの影響がある一方、健康や身体組成において最も重要なことのひとつに、炎症とインスリン感受性との関係があります。いくつかの論文で、炎症は筋や脂肪、肝臓、脳までものさまざまな組織でインスリンへの感受性を低下させる可能性があるとしています。 -レプチン抵抗性は、食べることの報酬に影響を与えるためにドーパミンと相互に作用します。レプチン(脳に食べることを止めるよう指示する脂肪細胞から生産されるホルモン)が私たちの行動、特に食欲に影響を与えるためにドーパミンと相互作用することを示す研究が増えてきています。つまり、レプチン抵抗性は、報酬駆動のドーパミン回路に変化を与えることがあるので、食べることから得る同レベルの満足感を感じるためにより多くの食べ物を摂取するようになるのです。 自覚があるかどうかは別として、もっと食べるように誘発されてしまいます。 これらのホルモン経路が相互に関連し合うことによってどのようなことが起こるのかを説明している最も分かりやすい例として、ある素晴らしい研究があります。そこでは、16人の正常体重を持つ男性と女性が短期の低負荷トレーニングを実施しました。トレーニング後、被験者はどのぐらいのカロリーを燃焼したかを予測し、それから、彼らはビュッフェに連れて行かれ、トレーニングで燃焼したと思われるカロリー量にできる限り近い分量を食べるように指示されました。 言い換えれば、もし彼らがこのトレーニングで300カロリー燃焼したと考えれば、ビュッフェで300カロリー分を食べるということです。この研究者らは、トレーニング後に自分が消費したエネルギー量とその後の摂取量をどれだけ正確に把握できているかを調べたかったのです。 その結果を、下記のチャートにまとめました。目を見張るような結果が出ました。 下記の“カロリー予測”の棒グラフは、被験者がトレーニングによって800カロリーを消費したと信じていることを示しています。実際はたった200カロリーでした。 同時に、ビュッフェに連れて行った時、被験者は600カロリー近くの量を食べました。これは、トレーニングで彼らが実際燃焼したカロリー量のおおよそ3倍にもなります。 “結論:この結果は、正常体重の人が運動によるEE(エネルギー消費量)を3−4倍も過大に見積もることを示している。さらに、運動によるEEを、食べ物を摂取することで正確に補充するよう伝えられても、エネルギー摂取は、実際に運動量から測定されたEEよりさらに2−3倍多い結果となった。” 解釈として:研究に参加した人たちは、自分が燃焼したカロリーがどれくらいか測定することに苦戦しました。さらに、どのぐらい食べたかを推量するのはもっとひどい結果となりました。生理学がいかに自分たちに反発してくるかを示す完璧な例だと思います。 脳はいつも勝つ(脳に逆らおうとすると、自分はいつも負けてしまう) 自覚している以上に食欲を刺激するホルモンの相互作用は、結局のところひとつの単純なことで決まります:運動や生活からのストレスによる多量のエネルギー消費と食物摂取量が十分でない場合、脳は生理学的にそれに抵抗するようにプログラミングされています。これは、私たちに備わっている最も原始的な生存本能の仕業です。それにしても、多くの人はこれに背こうとします。さらに悪いことに、自分たちが脳に勝てると思っているのです。 人々はジムへ行き、できる限り多くのカロリーを燃焼しようとトレーニングに精を出します。多くカロリーを燃焼すればするほど、多くの脂肪を減らせる・・・・と思っているわけです。食べる量や炭水化物を減らし、低脂肪を食べるよう心がけていることに誇りを感じるわけです。 多ければ多いほど良いと信じるがゆえに、強度主導の考え方は結局このような結果をもたらすのです。カロリーを減らすことがいいとなれば、カロリーをもっと減らす方がさらに良い、トレーニングで500カロリー燃焼するのがいいとなれば、800カロリー燃焼した方がもっと良い、といった具合に。 おかしなことに、ほとんどだれもがこのアプローチをある時点で一度は試したことがあり、減量に失敗したことがあります― それにもかかわらず、また次に少し体重を落とす必要があると思った時、まったく同じアプローチを試みてしまい、何度も同じことを繰り返してしまうのです。 ダイエットの名称は変化するかもしれませんが、結局のところ同じ戦術なのです:我慢できる限界までカロリーを減らした食事をし、できる限り運動する。現実的にはそれは脂肪を落とす方策ではありません。それはむしろ、回復負債やそれに伴うすべての問題に陥る方法なのです。 週末ともなると一生懸命やってきたことへのご褒美としてボリューム満点のディナーやデザートを食べてしまい、それを単に正当化すために、みなさんの多くは平日に健康的な食事をしてトレーニングに精を出している訳なのです。身に覚えがありますね? アメリカの三分の一は肥満で、また三分の一は体重過多であるにもかかわらず、人口の75%が健康的な食事をしていると考えている理由もこれで分かります。より健康的な食べ物を食べてはいるのかもしれませんが、それでもまだ食べ過ぎています。“チートミール”(好きなものを食べてしまう食事)が多すぎて、せっかく平日に達成した成果を邪魔してしまうようなチートウィークエンド(好きな物を食べてしまう週末)になってしまいます。 結論として:身体と戦おうとすればするほど、最終的には早く戦いに負けてしまうということです。

ジョール・ジェイミソン 3499字

カロリーを減らしてもうまくいかない理由 パート1/2

この投稿では、栄養学とトレーニングについて、これまでとは異なる見解をみなさんと共有していきたいと思います。体脂肪を減らそうとするとき、ほとんどの人が陥る非常に単純ではありますが定番の間違えについてお話します。 食事やトレーニングのことになると、多くの人がほぼ正しく行っていると思い込んでいますが、かなり頑張っているわりには身体組成にまったく改善がみられないのはなぜか、という理由を探ってみたいと思います。 フィットネス業界の話を始める前に、まず肥満のまん延についての話から始めます。なぜかというと、ジムに通う平均的な人で体重を10ポンド(4.5kg)減量したいと思っている人には、30ポンド(13.6kg)は減らす必要がある体重過多の人との共通点が多いからです。 またしても、昔からあるこの課題に対する答えは、エネルギーと回復の関係、そして何よりも人間の生存のためにこれらがどのようにプログラミングされているのか、を理解するところまでさかのぼります。この観点から、高負荷エクササイズとダイエットの組み合わせは必然的に失敗に終わるということが簡単に分かるでしょう・・・ たいていのアメリカ人は、自分たちは健康的な食事をしていると言いますが、果たして本当なのでしょうか? 2016年に行われたトルベン・ヘルス・アナリティクスによる世論調査では、何千人ものアメリカ人を対象にあるひとつの簡単な質問をしました:“あなたの食生活はどのぐらい健康的であると考えますか?” その結果? この研究によると75%以上の人たちは自分たちの食事を“良い”から“すばらしい”の間で評価しました。 同時に、ここ16年間、ジムに入会する人が増えており全体的な活動量が増えているという研究の結果があります。下記のグラフでは、ジムへの入会数が安定して増加していることを示しています。 2000年~2016年におけるフィットネスセンターやヘルスクラブに登録されている登録人数の合計(単位:百万) 要するに、これまでにないほど多くの人がトレーニングし、健康的な食事をしていると言うのです。これらの統計からすれば、アメリカ人は一般的に活動的で適切な食事をして、健康的な生活を送っていると考えられがちです。 この考えには一つだけ問題があります:活動レベルの向上と健康的な食事(真偽のほどは分かりませんが)にもかかわらず、アメリカの国としてみれば、依然どんどん太り続けているのです。ここで私が伝えたいことは、下記のグラフが示しているのでご参照ください。 1997~2015年の間、ジムに入会した人数はおおよそ2倍になりました。同じ期間で、肥満に分類された人数は50%近くも増加しました! もし、これまでにないほどに、みんながより良い食事をしてエクササイズをしているならば、なぜこの国は全体的に未だに太った人が増えているのでしょうか? 結局、栄養学の専門家たちのほとんどは、肥満のまん延の原因は、人々があまり動いていないのに食べ過ぎていることにあると言っています。 運動が本当に問題なのか? この状況をつかむためにも、最も基本的な仮定から見ていかなくてはなりません・・・ ダイエットやフィットネスの指導者の間でも、身体的運動不足は肥満のまん延に大きな影響を与えているという点でほとんど意見が一致しています。その一方で、研究ではまったく異なる見解を示しています。 アメリカ、ノルウェー、日本の人口データを比較したところ、私たちが信じこまされているように、運動量の増加は肥満や体脂肪の減少に必ずしもつながらないことが明確に示されています。 見て分かるように、アメリカには、ノルウェーや日本と比べて運動する人口が多いにも関わらず、肥満度は顕著に高いことが分かります。日本の人口の約60%は非活動的と考えられている一方、肥満率はアメリカが33%のところ日本はたった5%にとどまっています。 アメリカ人に比べると、日本人の運動量は1/3少ないことを示しています。しかし、肥満率は600%以上も低いことが分かります。もし、運動不足が肥満の主な誘因の一つであるならば、運動をしている人口がアメリカよりも少ない国々と比べて、どうしてアメリカの肥満率はこれほどまでに高いのでしょうか? トレーニングすればするほど、体重は減り難い? 多くすれば良いというものではない場合。 この不可解なことを解決するために、運動がどのように身体組成と体重の減少に関係するかより深く見ていく必要があります。それをするために、被験者を1週間のエクササイズ量を変えた3つの異なるトレーニングプログラムに振り分け、実際どうなるかを見てみましょう。 この特定の研究では、研究者は、体重過多で座ってばかりいる女性を4つのグループに振り分けました:まったくエクササイズをしないグループ、1週間に72分(4KKW)のエクササイズをする“軽度”グループ、一週間に136分(8KKW)のエクササイズをする“中度”グループ、そして1週間に194分(12KKW)のエクササイズをする“高度”グループ。全てのグループの被験者は、この研究期間である6ヶ月間は彼らの食習慣を変えないように伝えられていました。 摂取したカロリーの自己報告と1週間で測定したエネルギー消費総量を基に、研究者は体重の減少の予測値(単純にカロリーの出入りの公式を使い、被験者の体重が理論上どのぐらいになるのか)を計算しました。研究の最後に、グループごとの予測した値と実際に減少した体重を比べました。 たいていの人は、最も多くエクササイズをしたグループが最も多く体重を減らしたと予想するところですが、まったくそうではなかったのです。 グラフから読み取れるように、1週間で最も多くエクササイズをしたグループは、実際、中度のエクササイズ量であったグループよりも体重の減少は小さくなりました。さらに興味深いことに、高度のグループは、結局、軽度のグループとまったく同じ重さ(1.4kgに対して1.5kg)しか体重を減らすことができませんでした。 1週間に194分(約3時間強)のエクササイズをしたグループは、1週間に1時間強しかエクササイズをしなかったグループより良い結果を出すことができませんでした。言い変えれば、運動を3倍に増やしても同じ結果だったということです。 つまり、運動を多くしたからといって、必ずしもそれに見合った体重の減少や結果が出せるということではないことが分かります。実際、運動を増やすことによって体重の減少が小さくなったということもあります。 それにしても、なぜ? 脳、ドーパミン、エネルギーのホメオスタシス― 脂肪の減少を理解する上で完全に欠けている部分。 ドーパピンと聞くとほとんどの人は、“幸福感”や“報酬”などを起す化学物質を思い浮かべると思います― チョコレートを食べている時やトレーニングなど幸福感を感じられる何かを行っている時、急上昇するものです。確かに、ドーパミンはこのような活動に関連していることは事実ですが、本当は、幸福感や報酬よりももっと関係しているものがあります。 むしろ、ドーパミンはエネルギーに関係しています。もっと詳しくみると、ドーパミンの重要な最大の役割は、身体のエネルギーのホメオスタシスを保とうとする行動を駆り立てることです。 エネルギーのホメオスタシスは、エネルギーの消費と摂取の両方の調整です- 私たちが生きて行く上で必要なエネルギーを確保するための明らかに重要な要素です。 エネルギーのホメオスタシスを調整するために、ドーパミンは、運動(エネルギー消費)と食事(エネルギー摂取)の両方に関わる行動を誘導する役割を果たしています。言い換えれば、私たちのトレーニングや食べることへの欲望を掻き立てるのがドーパミンなのです。また、進化生物学に遡るかもしれませんが、動くことや食べることへの強い動因(たとえば、食べるものを探し求め、それを食べずにはいられなくなるといった動機付け)がなければ、私たち人間は種として長く生き残る生物ではなかったでしょう。 動くという行動と食べるという行動を誘導してくれる役割を持つドーパミンは、生存のために必須であるが故に、必死になって運動量を増やし食事を減らし減量を目指している私たちを妨害してくることもあります。前回の私の投稿、高強度トレーニングへの執着は、なぜ私たちの期待に背いたのかでも述べましたが、運動し過ぎればすぐに回復負債を引き起こします。 自分のからだの限界に達するまでジムでトレーニングに明け暮れ、同時にカロリーを制限すれば、このプロセスはさらに加速し、脳はすぐに反撃をするでしょう。

ジョール・ジェイミソン 3769字

HRVでさらにストレングスをハックする パート2/2

強くなるための黄金律 マイクのケーススタディは、健康でいながら長期に渡るストレングスをつけるために最も重要な原則の一つの完璧な例です:常に量よりも質に注目すること。 ストレングスを向上しようとする人々は、常にもっとやることがもっと良いと考える罠に落ちてしまうことが多くありすぎます。より多くの回数、より多くのセット、より多くのウエイト、より多くのトレーニングセッション。 彼らはより多く、というのが成功へのカギだと信じていて、それが常に答えではないことに気が付くまでしばしば何かしらの怪我、あるいは複数の怪我をしてしまいます。事実、それが答えであることは滅多にありません。 あなたの具体的なストレングスのゴールが何であれ、それを達成する最良のアプローチは、常にトレーニングの量よりもトレーニングの質に重きを置く考え方から始まります。長期的な筋力の発達を臨む鍵は、身体が実際にこなせる時にのみ最大強度でトレーニングをすることです。 HRVの変化を見ることで、いつがその時かがわかるでしょう。 ストレングスのゴールを達成するための最良のアプローチは、トレーニングの量よりもトレーニングの質に重きを置くことから始まる。 ほぼ全ての人に対して、これは最大努力のトレーニングは週2回、あるいは最大でも週3回にとどめておくべきだということを意味しています。最終的に怪我をしてしまわずに、長期に渡ってそれ以上きついトレーニングをすることはできないのです。 HRVのパターンはこれを繰り返し示しています。あなたがどれだけ頑張って試してみても、身体の裏をかくことはできないのです。 身体は、より多くのきついトレーニング日数から回復することはできず、この原理が間違っていることを証明しようとしたほぼすべての人達は遅かれ早かれ代償を払ってきました。 上のマイクのHRV表示を見てわかる通り、彼の身体が抱えているストレスを指す明確な下降傾向があります。HRVの減少は、より高いレベルの交感神経活動の結果であり、上昇は一般的により高い副交感神経機能の反映です。 マイクのケースでは、交感神経過負荷が彼の怪我の直前に起こり始めているのが見られるかもしれません。過剰なストレスがあるとき、身体は重要なストレス反応ホルモンの受容器を減らすことで反応し、筋肉は同じレベルの力を生み出すことができないということを覚えておいてください。 これが起こるとき、身体は力ポテンシャルの減少により、かなり高い怪我の危険にさらされているのです。 これを防ぐ最もシンプルな方法は、準備がよく整っている時、つまりHRVに反映されるように自律神経のバランスが良い時にのみ最大でのトレーニングを行うことです。これは、HRVが緑で比較的疲労が低いことを示している日に限定して1RMの90%以上、そして(あるいは)失敗するまでのリフティングをするべきだという意味です。 このたった一つの戦略に従うだけで、過剰なストレスの落とし穴を避け、不可避の交感神経過負荷を防ぐのに役立つでしょう。 それだけでなく、可能な最高レベルの刺激を提供し、強くなることによって身体を順応させることによって、より速く筋力をつけることにもなるでしょう。 同じように、もしトレーニング週間全体に渡りHRVが3~4ポイント以上低下しているようであれば、翌週のトレーニング量を最低でも10~15%減らし、最低でも休息日を1日追加するように計画しましょう。これは交感神経過負荷への進行を防ぎ、怪我ではなくストレングスへの道をたどっていることを確実にしてくれるでしょう。 まとめ 近年では、高強度トレーニングへの熱中が、皆をより多く、よりハードにトレーニングするように駆り立てるという不運な結果を招いています。要するに、量が質よりも優先されており、身体は多くのトレーニングを短い期間こなせるとしても、長い目で見れば、この方法はプラトーやしばしば怪我を引き起こすことに繋がるのです。 90%を上回る最大努力の日を、身体がそれをこなす準備ができていると自律神経機能が示す日のためにとっておくことは、非常にシンプルですが、あなたのストレングスをより高くし、怪我をせずに一貫した進歩を見るためのとても効果的な方法です。 ストレングスに関して、常に質は量に勝るのです。

ジョール・ジェイミソン 1837字

HRVでさらにストレングスをハックする パート1/2

前回、人々が筋力向上のプラトーに悩み、オーバートレーニングし、そして真の筋力の潜在能力に達することができない最も大きな一つの理由は、誰もが考える理由のせいではなく、むしろ交感神経と副交感神経系の間の良いバランスを維持できないからであると書きました。交感神経過負荷は大きなストレングスキラーです。 最高レベルのストレングスとパワーを発達させるためには、沢山のトレーニングが必要であり、それは多くのストレスを意味します。問題は、それが注意深く監視されコントロールされていない限り、このレベルのストレスは簡単に交感神経過負荷、プラトー、そして怪我でさえも引き起こしうるということです。そしてこれらすべては非常によく起こるのです。 今日、私はトレーニングへの異なるアプローチを取ることを学んだ高レベルのストレングスアスリートの実在の例を共有し、彼の話の中に発見されるストレングスの原理についてお話ししたいと思います。彼は20代のとき競技ウエイトリフターで、オリンピック出場をかけてトレーニングしていました。 彼の経験から学ぶことのできる教訓について、いいこともあれば悪いこともありますが、お話しましょう… 彼は、HRVを用いた自律神経のバランス維持の重要性における完璧な例です。不運なことに、彼はそれを、身をもって厳しい方法で学ばなくてはならなかったのですが… マイク・ナッコウル マイク・ナッコウルは、コロラドスプリングにあるオリンピックトレーニングセンターの元専属リフターです。彼の最終ゴールは、アメリカ・オリンピックウエイトリフティングチームに入ることです。 そのため、彼は重いウエイトを何度も何度も繰り返し挙げ、他のことは何も心配せずにより重い重量を挙げたり、より強くなるために努め、数えきれない時間をジムで過ごしてきました。 このアプローチは時には有益でしたが、一方でそれは必然的にオーバートレーニングや怪我を引き起こすことにもなりました。オリンピックへの挑戦を危ぶませる、進歩のなさや慢性的な怪我にイライラさせられて、マイクはもっと賢いアプローチが必要であると決心しました。 彼が彼自身の言葉で伝えてくれるように、彼はその前年を通してHRVを計測してきましたが、データを聞き入れたりそれが彼に何を伝えているのか注意を払ったりしていませんでした: 「私のキャリアの初期は、ほとんど自分の感覚に基づいてトレーニングをしていました。私は普段計画を持っていたものの、毎日『とことんやる』姿勢で取り組んでいました。不運なことに、この取り組み方が私にオーバートレーニングへの片道切符を与え、複数の手術を招いたのです。 この期間、私はHRVを計測していましたが、たいてい無視していて、もしできそうならやるべきだと感じていました。今は、けがから復帰して、バイオフォースHRVで計測できる残留及び潜在的なストレスに注意を払っています。 手術後ストレングスを取り戻そうとする中で、かつて私が容易で自動的だと考えていたオリンピックリフティングとストレングスエクササイズは、今、より多くのストレスをもたらしています。一例として、実際のオリンピックリフトのためにトレーニング強度を上げ始めたら、次のようなHRV表示が記録されました: 私がもっと良いトレーニング状態でもっと多くの量をトレーニングすることができた時、私は前の日のワークアウトでの黄色信号(アンバー)表示を楽だと認識し、次の日またきついトレーニングをしなくてはならないと感じていたでしょう。 この罠にまた陥るところでした。 今回は、私の身体は同じワークアウトから回復するのに、より多くのストレスに満ちた時間を抱えていることが理解できました。バイオフォースHRVは、私がこうなるはずだと考えていることに偏らない客観的な道具です。その代わりに、それは私の身体と心臓が与えているストレス信号を利用し、内面では実際何が起きているのかを伝えてくれるのです。 以前はジムにすぐ戻り、できる限り頑張って無理をしていましたが、今回私は耳を傾け、自分自身を回復させることにしました。 過去を振り返り私のトレーニングを解析してみると、よくない出来事の前にしばしばHRVの変化があったことに気が付きました。下は、腰の怪我をする前の週からの表示です。私の身体は、私がかけたストレスに応えるのに苦労していたのに(複数の黄色信号(アンバー)表示に反映されている)、私はその警告を無視しました。 その結果、私は怪我をしてしまいまったのです。 データを見てものごとをつなぎ合わせてみれば、警告信号となるべきであった傾向をはっきりと見ることができました。私は、向上したければ頑張ってトレーニングをしなくてはならないという感情でバイオフォースHRVが与えてくれた客観的データを遮るという過ちを犯したのです。 二度目にしてバイオフォースを正しい方法で用いることで、私は、身体がよりはっきりとした(そしてたいてい優しくない)メッセージを送ってくるのを長い間待つのではなく、自分の身体に耳を傾け、トレーニングが引き起こしているストレスをうまく管理することができるようになりました。 私は、身体のストレス状態を客観的に計測する道具(バイオフォース)を持っているだけではなく、どのようにそこへたどり着くのかを伝えてくれる道具を持っているのです。 非常にパワフルであり、この組み合わせが私の過去の記録に近づき、願わくば超えるようにうまく準備してくれていると信じています。 ウエイトリフティングのためのトレーニングは、すべてはストレスの問題です。有酸素性から無酸素性への領域で、私は可能な限りほぼ無酸素性に近づいています。それでもなお、バイオフォースHRVは、私の身体の通常のストレス反応に関して、良い日と悪い日共に価値のある情報を提供してくれています。 私はバイオフォースからの警告信号をあまりにも長い間無視して、その結果、代償を払いました。今回私は、測定値に耳を傾けており、今のところ強く健康でいます。客観的に監視し、自身により高い成功の可能性を与えるべく順応しているため、私は目標を達成する自信があります。」

ジョール・ジェイミソン 2634字

ムーブメントトレーニングに欠けているリンク パート3/3

解決策 とても多くのトレーニングプログラムを悩ませている大きな問題について力説してきましたが、どのように修正するかについてお話ししましょう。 幸い、疲れている時にも他の時と同じ原則をトレーニングに適用するので、主に2つの基本原則をトレーニングプログラムに取り入れるだけです: 第一に、運動の質は、低レベルのムーブメントスクリーニング中や動的ウォームアップ中だけではなく、すべての状態において一貫して評価されなくてはなりません。これらのようなツールに価値があることは疑いがありませんが、低レベルでのアスリートの動き方は、彼らの最高スピードの中での動きや最も疲労が高まった時の動きとはほとんど関係がありません。 運動とメカニクスを3つのカテゴリーに分けるのは最も簡単です:低閾値、高閾値、そして疲労です。 低閾値の運動は、力生産を主に遅筋線維に依存する、低レベルで自重の、比較的ゆっくりとした運動で構成されます。 高閾値のメカニクスは、より高いレベルのスピードとパワーを生産させるために速筋繊維が働くことを強いることによって実行されることができます。 しばしば低閾値と高閾値の運動の質の間にはいくらかのキャリーオーバーがあるものの、脳は基本的に低スピードと高スピードの運動の問題には異なって取り組みます。 例えば、多くのアスリートはFMSで良いスコアを出せるのに、実際競技をプレーしている時は比較的よくない運動とメカニクスだったりもします。 これが、低レベルのムーブメントスクリーンは、ただそれだけのことである理由です:一般的なスクリーンは、全体の運動の問題を拾い上げるためのものなのです。これらの類のツールは、決してアスリートの運動についてあなたが知らなくてはならないすべてのことを伝えるようには作られていません。 3つ目のカテゴリーである疲労したメカニクスは、私がちょうど述べたことですが、繰り返せば、低閾値と高閾値運動の間には限られたキャリーオーバーしかありません。 事実、低閾値運動は、運動の連続体の両端にあるために、疲労閾値運動パターンへの移行はほとんどありません。 完全な運動とコンディショニングプログラムは、常にこれら3つのカテゴリーそれぞれにおける運動の質と力学的問題の評価から始まります。 アスリートが疲労している中でどのように効果的に運動を分析するかについての詳細を述べることは、一つの記事の中で取り上げられる域を超えています。 アスリートが疲労している時どのように動くかを評価することの他に、第2の原則は、全てのトレーニングの側面において具体的に運動の質に注目しなくてはならないということです。 これは、ウォームアップ中、最もスピードとパワー生産のレベルが高まるとき、そしてもちろん疲労した時に、運動の質が重視されるべきであるということを意味しています。 事実、あなたはコンディショニングプログラムをただエネルギーシステム、精神的強さ、あるいは他のそのようなことを発展させるための方法として考えるのをやめるべきであり、むしろトレーニングを通して、疲労した状態の中で基本的に運動を向上させる機会として考えるべきなのです。 実際に疲労まで追い詰めていないにもかかわらず、疲労した状態を模擬して適切な運動を発達させることは無理です。 Yet fatigue itself is simply a means to an end; it should never be the sole goal of a conditioning program. Making an athlete tired just for the sake of making them tired serves no purpose and often does far more harm than good. しかしながら疲労自体は単に終了の手段にすぎず;決してそれがコンディショニングプログラムの唯一のゴールであってはなりません。アスリートをただ疲れさせるだけのために疲労させることは何の意味もなく、大抵きわめて有害無益です。 疲労は、運動の向上の目的のためのツールとしてのみ用いられるべきです。 To achieve this, it’s absolutely vital to give the athlete the right feedback. これを達成するためには、アスリートに正しいフィードバックを与えることが絶対に不可欠です。 アスリートに、疲れ始めたらできるだけ速く行けとか頑張れと伝えるのではなく、その代わりに、正しい運動の手がかりを与えることを重視しなくてはなりません。 格闘技選手が疲れ始めたら、コーチは選手に“もっと強くパンチしろ”や“君の持っているすべてを出すんだ”と怒鳴るよりもむしろ、彼または彼女に対して手を高い位置に維持し続けろ、姿勢を維持するんだ、良いメカニクスを使え、などのキューを与えるべきです。 決して、スピードを維持させるためにいい加減なテクニックやメカニクスを使ってもいいという考えを選手に与えないでください。 要するに、アスリートが疲れているとき、強調すべきことは、ただアスリートを出来る限り頑張らせることではなく、いつも運動の質の手がかりを与えることであるべきなのです。 運動の他の領域全てにおいてもそうであるように、疲労状態の中でよい運動パターンを発達させるには、時間と正しいコーチングを要しますが、それによってアスリートのパフォーマンス方法に大きな違いを生み出すことができます。 試合や大会が進むにつれて、運動の質が崩れていったり低下していくのではなく、アスリートは最も疲労が高まった時でさえ、彼らのメカニクスの変化を最小限にしたり排除する能力を発達させることができるのです。 この能力は非常に大きな競争上の優位性を与えるだけでなく、健康で怪我なくあるための重要な要素でもあります。 まとめ コンディショニングは、トレーニング全てにおいてもっとも誤解されているトピックの一つであることに疑いはありませんが、パフォーマンスのために最も重要なものの一つでもあります。 近年、運動の質への注目が高まってきたのを受けて、プログラミングは全体的に向上してきましたが、運動の考え方は、どういうわけか完全にコンディショニングプログラムの外へと置いていかれてしまいました。 頑張ってトレーニングすることに集中し、やみくもな強度で、運動の質など関係なくコンディショニングをただ向上しようとすることは、今日のトレーニングプログラムを悩ませる一つの最大の問題であり、変わらなければならないものです。 あなたがコーチ、治療家、アスリート、あるいはただフィットネスや健康のためにトレーニングしているのだとしても、この変化はあなたから始めることができるのです…。

ジョール・ジェイミソン 2945字

ムーブメントトレーニングに欠けているリンク パート2/3

学習するコンピューター 計算を行い運動とパフォーマンスの問題を解決することができる、脳の信じられないスピード以外で、脳の最も素晴らしい特徴は、学習し適応する能力です。 それは運動とコンディショニングの間のギャップを埋める学習過程です。 これがどのように働くかの核心に迫るために、私たちは、そもそも脳がどのようにその運動パターンを学習し適応するかについて、もう少しお話しなくてはなりません。 例えば、格闘技になじみのない人が、どのようにパンチを繰り出すかを学んでいるのを考えましょう…。 最初、彼らは効果的なテクニックでパンチを繰り出す正しい動き方が、まったく分かりません。事実、彼らはコーチが適切なパンチの運動パターンを実演するまで、何が“良いテクニック”なのかまったく知りさえもしないのです。 この場合、脳が解決しなくてはならない問題は、パンチを繰り出すための適切な運動パターンを導く方法で、全身に渡る何百もの筋肉の発火をどのようにコーディネイトするかということです。 練習を積んでいない目には、ひとつのパンチは単純な動作のように見えるかもしれませんが、実際は、正確なタイミングとコーディネイトされた回旋運動に依存する、非常に複雑な運動パターンなのです。 この運動を学習し完成させるために、脳はフィードバックに依存します。 コーチはアスリートに技術的なフィードバックを与え、やっていることの何が正しく何が誤りなのかを脳が理解する手助けをします。アスリートは他の人たちがパンチを繰り出すのを見て、視覚的なフィードバックも受け、彼らがどのように動いているかを分析することができます。 時間をかけ、数えきれない回数を通して、アスリートのメカニクスは向上し、彼または彼女のパンチはもっと速く、より強く、より正確になります。 脳はどのように正しくパンチを繰り出すか、という問題を解決するために学習をしました;アスリートがもっとパンチを繰り出せば、より多くの運動パターンが脳にしみこむでしょう。 このパンチ動作は、いまや脳内のジェネラルモータープログラムと私たちが呼んでいるものの一部となったのです。 ジェネラルモータープログラムは、脳内の似たような運動のグループを整理する一手段で、そうすることによって、脳は各々のありうるバリエーション全てを個別に保管する必要がなくなります。 脳がどのように時速1マイルで歩くか、どのように時速2マイルで歩くか、どのように時速3マイルで歩くか、あるいは平らな地面ではなく丘をどのように歩いて上るか、などのすべての詳細を学習し保管しなくてはならなかったらと想像してみてください。 わずかに異なる速さでの歩行は、同一の一般的な順序で動く同じ基本的な筋肉群を含んでいるため、これは明らかに学んだ運動を保管する最も効率的な方法ではないでしょう。 場合によって異なる歩行速度を生み出すために、ただひとつの一般的なモータープログラム、基本的な歩行方法を保管し、そしてタイミングのような変数に対し小さな調整をするのは、より理にかなっています。 これらすべてが意味することは、脳は基本的な運動を学び、それらをジェネラルモータープログラムの形式で保管するということです。そして脳は、状況や解決しようとしている特定の運動問題に基づき、どのように適応しジェネラルモータープログラムを変化させるかを学習します。 例えば、急勾配の丘を歩いて登ったり、食料品の重い袋を運びながら歩くことは、平らな地面をジョギングするのとは明らかに異なります。 異なる環境での似たような運動でさえ、脳はそれぞれについて特定のモータープログラムのバリエーションを作らなくてはなりません。オリンピックで満員の人々のスタジアムの前で100m走を走ることは、地元の陸上トラックで何回かスプリントを走るのとは全く異なる状況であり、解決がずっと難しい問題です。 コンディションされた運動 今頃あなたは、この運動と学習についての議論のすべてがコンディショニングと何の関係があるのかと疑問に思っているかもしれません。短い答えは、それは全てがコンディショニングに関わっているということ。 現実は、コンディショニングは運動の延長にすぎず、特定の問題を解決しようとしている脳の試みの一つの例にしか過ぎないのです。 疲労は、脳がトレーニングを通して解決の仕方を学ぶ特定の種類の問題であり、一つの特定の状態でしかありません。 ジムでヘビーバッグに向かってパンチを繰り出すことは一つのことですが、激しい5ラウンド勝負の最後の数分間に疲労困憊している時にパンチを繰り出すことは、脳を考慮する際にはまったく別の問題を表しています。 私が言おうとしていることを明確にするなら、疲労は脳がトレーニングを通して解決の仕方を学ぶ特定の種類の問題であり、一つの特定の状態でしかないということです。 パンチを繰り出す基本的なメカニクスがジェネラルモータープログラムとして保管されているとしても、あなたが疲れているときにどのようにパンチを繰り出すかを学ぶことは、脳が解決するために学習しなくてはならない別な問題を表しているのです。 それでは、脳はこれをどのように学ぶのでしょうか?初めて運動パターンを学ぶのと同じ方法です:主にコーチ、トレーナー、そして視覚的手がかりのような感覚フィードバックからのフィードバックを通してです。 これが、ほぼすべてのコンディショニングプログラムが完全に失敗する部分であり、問題のあるところなのです…。 ほぼどのコンディショニングセッションを見れば、あなたは必ずコーチが“もっと速くしろ、もっと強く投げろ、遅くなるな、やめるな、最後まで頑張れ、止めるな!”という意味の何かを叫んでいるのを聞くでしょう。 それではこの指示の何が問題なのでしょうか?結局のところ、何十年間何千人ものコーチたちによって、このようにコンディショニングプログラムが指揮されてきたわけです。 これが大きな問題である理由は、どのように脳が動きを学ぶかについて話してきた今、簡単に理解できるでしょう。 コンディショニングと疲労に関して、“もっと速く”と叫んでいたり、あるいは時計の残り時間をカウントダウンしているコーチは、文字通り疲労している時にどのように動くかを脳に教えています。 作業量に注目すること、つまりアスリートが疲れ始めるときに、スピードやパワーを維持することは合理的な取り組み方のように見えるかもしれませんが、それが失敗する理由は、脳は今、作業量を主な解決すべき問題として見ているからなのです。 言い換えれば、脳はテクニックと運動の質を犠牲にして、運動のスピードを維持しようとしているのです。 テクニックが完全に崩れ始めていても、コーチやトレーナーはまだテクニックを維持することよりももっと速くし、スピードを維持するためのフィードバックを与えています。 ラウンドの終わりに疲労困憊し、口は開いて手は下がり、いい加減な弧を描くパンチでフェンスに大きく振りかぶっている格闘技選手を想像してください。疲労はこう見えるべきなのではなく、選手がトレーニングで疲れた時の動き方としてこう教わってきたために、このように見えるだけなのです。 これは、疲労が始まった時にどのように速く動き続けるか、という問題を脳が解決しようとする際に起こることです。どのように運動の質とテクニックを維持するかを学ぶよりもむしろ、脳はただできるだけ速く動くことを学ぶのです。 選手が疲労した時、もしコーチが彼らにもっと速く、あるいはもっと強く行けと怒鳴る代わりに、基本的メカニクスに基づいた異なるフィードバックを与えていたならば(例えば手を高い位置に維持したり、姿勢を保つことなどを彼らに思い出させる、など)、彼らが発達させた運動パターンは極めて良いものになるでしょう。 これがコンディショニングとムーブメントトレーニングの両方で欠けている一つの最大のパズルピースであり、まったくうまくいかなくなってしまうところです。 運動の質とテクニックをはじめから終わりまで維持することのできるアスリートは、10回中9回勝つアスリートです。 コーチやトレーナーは、低レベルで低スピードのムーブメントドリルやコレクティブエクササイズを通して、運動の質を向上させようと限りない時間をかけますが、本当に重要な時の運動の質を指導し、向上させることを怠っているのです:アスリートが疲労した時の。 試合は第4クオーターで勝ったか負けたかだ、という古いことわざは真実です。運動の質とテクニックをはじめから終わりまで維持することのできるアスリートこそが、10回中9回勝つであろうアスリートなのです。 先ほど述べた通り、コンディショニングは運動の延長でしかなく、学習した運動パターン、そしてより大きいモータープログラムの一部なのです。そのため、もしアスリートが疲労した際によくない運動をするように教われば、それが試合で彼らが実行する運動の種類になるのです…。 多くの今日のコンディショニングプログラムが行われている方法のせいで、あまりにも多くのアスリートが、あるべきパフォーマンスよりももっと悪いパフォーマンスに終わったり、さらに/また、良くない疲れた運動パターンにより、予防できたはずの怪我に陥ってしまいます。

ジョール・ジェイミソン 3982字

ムーブメントトレーニングに欠けているリンク パート1/3

この数年間で、ストレングス&コンディショニングの現場は劇的な変貌を遂げました。ストレングスがすべてだという唯一の考えでプログラムを作成するのではなく、コーチとアスリートたちは“ファンクショナルムーブメント”のような用語を取り入れ、どのように身体が動き、それがどのようにトレーニングされるべきかをより学ぼうと理学療法士に問い合わせるようになってきました。 手短に言うと、“機能”や“機能不全”は現場において身近な用語になり、世界中のウエイトルームやプログラムはどちらもフォームローラー、ムーブメントスクリーン、そしてコレクティブエクササイズで満たされてきました。 これらのすべてがパフォーマンスを向上したり怪我を予防するのに役立つことには何の疑問もありませんが、何かが欠けているのです… ファンクショナルムーブメントが流行りだしたのとだいたい同じ頃、私はコンディショニングについてのベストセラーの本や数えきれない記事を書いたり、世界中のクリニックやワークショップで講演したり、またエネルギーシステムの専門家として業界に知られるようになり忙しくしていました。 ほとんどの人々が、ムーブメントトレーニングやコレクティブエクササイズをコンディショニングやエネルギーシステムとは全く異なるカテゴリーとしてきて、多くの場合はそれらをトレーニングセッションの両端に置いてさえもいるのですが、この記事で私があなたと共有したいのは、なぜこのアプローチが全くの間違いであるかということです。 さらに、私はなぜ多くのコンディショニングプログラムがしばしば有害無益であるのか、そして実際パフォーマンスを低下させ、怪我を予防するどころか引き起こしてしまうのかを説明しましょう。 同時に、なぜ運動の向上に焦点をあてた数多くのプログラムが、パフォーマンスパズルの大きなピースを欠いているのかもお伝えします。 私がお話ししようとしている原理原則は非常に重要で、文字通りすべてのコーチ、トレーナー、アスリート、そして治療家がパフォーマンスを最大化し怪我を予防したいなら理解しなくてはならないものです…しかしおかしなことに、誰もそれについて話してさえもいません。 この原理原則が何か、そしてどのように働くかについて詳しくお話し始める前に、私たちはどのように身体が動くかをもっと詳細に見ることから始めなくてはなりません… 運動とモータースキル101 いろいろな意味で、人間の身体は本当に運動の驚異です。 650以上の筋肉、何千もの腱や靭帯、そして全てをつなぎ合わせている終わりなき筋膜組織の迷路により、私たちはまさに動くために設計されていると言って間違いないでしょう。 (非常に明確ですが)もしあなたが動けなければ食料を探すことができないし、危険な環境から逃げ出すこともできない、あなたが生き続けて繁殖するために必要なことのほとんどをすることができないわけですから、これは生物学的視点から納得がいきます。 言い換えれば、自然の視点からすれば、運動とはサバイバル(生存)なのです。 たったこの数千年間の間に、人体の運動の目的は、いかに上手にボールをゴールに蹴ることができるか、あるいはいかに速くトラックを走ることができるかを含むまでに広がりました。 運動とコンディショニングの間に欠けているリンク、それは脳です。 サバイバルの方法として運動の主な機能を理解することが非常に重要な理由は、脳が運動を調整するためにどのように働くかの核心を突くからです…。 そして、脳こそ運動とコンディショニングの間の欠けているリンクなのです。 脳は主に巨大な問題解決機械で、直面しているどのような問題についても最良の答えを見つけ出すために、何千ものデータポイントを瞬時に計算することが出来るものです。 運動に関しては、適切な運動反応をコーディネイトするという問題に答えるために、脳はその異なる感覚システムを通して処理する膨大な量の情報を持っています。 例として、ファストボールを打つという問題について運動の視点から考察してみましょう… 表面的には、ボールをバットで打つことは比較的簡単な問題のように見えるかもしれませんが、実は非常に複雑なのです: 打者がボックスに立って投球を待つと、彼または彼女の脳は、投げられるであろう全ての起こりうる投球の種類を予測し始めます。ボールの軌道とスピード、そしてそれを打つために身体がどのように動いていかなくてはならないかをより良く予測できるよう、脳が各投球の可能性を計算します。 一旦ボールが投手の手を離れたら、脳はボールがどのように回転しているように見えるか、どれくらい速く動いているように見えるか、投手の手のどこで離れたかを特定しようと視覚的手がかりを使います。 これらの視覚的手がかりに基づいて、脳は正確にいつ、どこでボールがプレートを交差するかを予測するのです。 一度その予測が立てられたら、脳はボールが実際にプレートを越す瞬間にボールを打つための最良の動き方を計算します。 この計算の一部には、向かってくる投球を予測している間、脳が予期したボールの動き方と比較しながら、実際にボールがどのように動いているかを把握することが含まれます。 詰まるところ、ファストボールを打つのとチェンジアップやスライダーを打つのには、打者は振り方を変えたり異なるタイミングを持たなくてはならないため、脳がボールの軌道やスピードを見い出したら急いで調整しなくてはなりません。 もちろん、脳がより効果的に投球を予測し、いつどこでボールがプレートを交差するかをより正確に計算することができれば、正確に動き実際にボールを打つ可能性は更に高まります。 正しい運動を実行する一つの大きな構成要素は、脳が練習を通して異なる種類の投球に対するスイングをどのように学んだかということでもありますーこの後でもっと詳しくお話ししましょう。 この全過程における素晴らしいことは、これらの計算や予測全てがいかに素早く起こるかということです。 例えば、時速100マイルの速球はたった0.4秒間でプレートに達します。その短い時間の中で、平均的なメジャーリーグ選手は、ボールの通り道を計算して予測し、時速70マイルを超えるバット速度を生み出すのに十分な速さでスイングすることができるのです。 もちろんたった0.4秒間では、打者が意識的に考えたり、これら全ての計算を行う時間はありませんー過程はすべて、何年もの練習や何千ものスイングによって開発された、完全に潜在意識の、反射として起こるのです。 覚えておくべき一つの重要なことは、野球に関しては、脳が運動の問題に対する“正解”を得るのに成功したか失敗したかは非常に明確です:打者がボールを打ったか、あるいは打てなかったか。 この場合、運動の目的は非常にはっきりしています:ボールを打つということ。 メジャーリーグ投手によって投げられた投球を打とうとするユニークな挑戦であるにもかかわらず、平均的選手の脳と身体は、問題を正しく解決し、平均25~30%の確率でボールを打ち塁に出ることができるのです。

ジョール・ジェイミソン 3052字