ペインばかりでゲインなし:高強度トレーニングへの執着は私達の期待に背いた。パート3/3

“回復負債”:フィットネスが失敗してしまうところ 私たちの代謝に限度があるという性質と身体のエネルギー要求を考慮する時、強度マインドセットに基づいて構築されたトレーニングプログラムの数多くがなぜ失敗してしまうのかを理解するのは容易であるはずです。 下記の図のトレーニングプロセスの異なった段階を見て、最も際立つ大きなポイントは、トレーニング、回復、フィットネスの向上を駆動する身体の適合は全て、膨大な量のエネルギーを必要とするということです。 ハードにトレーニングすればするほど、より長い時間トレーニングすればするほど、脳は働いている筋肉とその他の組織により多くのエネルギーを分配しなければなりません。と同時に、より大きく強く、そして持久能力を増強するために、全ての細胞を修復し、筋肉、ミトコンドリア、腱、何兆個もの細胞を再構築するには、膨大な量のエネルギーを必要とするのです。 私達の代謝が1日に生産できるエネルギー量には限度があることから、どれだけの食物を食べたとしても、どれだけの休息をとったとしても、週に3,4,5回の高強度トレーニングセッションを積み重ねたとしたら、何が起こると思いますか?これらのトレーニングと日々のストレスが組み合わさった時にはどうなるでしょうか? 答えはシンプル:私が回復負債と呼ぶ状態になってしまいます。 回復負債は、トレーニングに関わる全ての細胞と組織の回復と修復に必要なエネルギーを与えることなく、多大なストレスを与えた時に起こるものです。来る日も来る日もジムに通って、頑張ってウエイトを持ち上げ、終わることのないインターバルを実行し、疲弊ギリギリのところまで頑張り続けても、期待したような結果を決して得ることができないように思えます。 私が過去数年間に発見したのは、人々のフィットネスゴールの達成を邪魔している何よりも大きな唯一の理由は、まさしく:彼らは常に回復負債の状態で生活しているということなのです。私は、これを証明することのできる15,000人以上の人達の15,000,000にも及ぶ心拍変動データも所有しています。(これに関しては次回の記事でより詳細を述べます) データは、ほとんどの人達は沢山の努力をしても、たった一つの理由のために、その報酬を得ることができていないことを提示しています:彼らは多大なエネルギーをトレーニングと日々のストレスに費やしていて、回復や身体の再構築にまわせる余剰が十分に残っていないのです。 忘れないでください、回復と再構築のプロセスが実際にフィットネスの向上へと導くのですから、これが起こらなければ、どれほど努力をしたとしても結果を得ることはできないのです。 “やり遂げること”のネガティブな結果:そしてあなたの身体がいかに反撃するのか 強度マインドセットが不可避的に多くの人たちのフィットネスの失敗を導く理由はこれである、というのが真実です。もしあなたが、結果を駆動する最も重要なことは強度であるという信念でスタートすれば、身体が追いついていけなくなるまで、更なる強度を加え続けていくことになるでしょう。 常に疲れて筋肉痛があると感じ始めますが、それでも頑張り続けます。しつこい怪我が忍び寄り始めますが、それでも頑張り続けます。あなたの筋力も持久力も、あまり向上はしていませんが、それでもあなたは、努力が足りないからだと自らを説き伏せます。仕事でストレスを抱えよく眠れていませんが、あなたはジムで汗を流してストレスを解消するのが最良の方法であると考えています。 遅かれ早かれ、かなり大きな回復負債を抱えるようになれば、身体は反撃を始めます。脳内のドーパミン機能が変化し、より沢山食べてあまり動きたくなくなります。ジムに行くモチベーションを失う、あるいはジムには行くけれども頑張れなくなります。最終的に、ただ何かやっているフリをするだけということになってしまいます。 これが実際に何百万人もの人達が経験している日々の苦しみなのです。努力をしているのに結果を得ることができない。頑張れば頑張るほど、最終的には調子が悪くなる。 これはまた、私がブルガリアントレーニングプログラムを2回目に行った時に、同様の結果を得ることができなかった理由そのものでもあります。もう大学生ではありませんでした。私は、毎週60時間以上働き、ビジネスを運営するというストレスを抱えていました。日々のストレスは、回復から膨大なエネルギーを取り上げ、私の身体は単にそれに追いつくことができなかったのです。 幸いなことに、過去数年間に渡り、私はトレーニングやフィットネス全般への全く新しいアプローチの方法をまとめました。より効果的で、身体がいかに働くのかに関する本物の科学に基づき、全く異なったマインドセットからスタートするような… 回復駆動フィットネス:トレーニング、食事、生き方の新しいモデル 強度ではなく回復に基づいたフィットネスへのアプローチを構築するというアイデアは、思いがけず見つけたものではありません。これは一時的な流行やからくり、あるいは中身のない約束やセールストークではありません。もっと睡眠をとろうとかリラックスに時間をかけようというような、昔から使い古されたものでもありません。皆さんももうすぐ発見することになりますが、回復というのはそれ以上のものなのです。 フィットネス業界で、あらゆるレベルと能力の人々をトレーニングし、正解中のコーチ達、フィットネスの専門家達、研究者達と話をすることに費やしてきた20年近くに渡る私自身の経験から、そのアイデアは生まれてきました。そしてまた、過去6年間に渡り収集してきた15,000,000以上の心拍変動計測のデータベース(世界一大きい)から計算をするためのアルゴリズムを学ぶために機械を使うことからも生まれたのです。 私の経験とデータの両方が明白に示すのは、トレーニングに向けられる強度のみではなく、回復に向けられるエネルギーに駆動された結果を考慮するという、新しいアプローチが必要とされているということです。 回復駆動のフィットネスとは何か? 最も簡単に言えば、回復駆動のフィットネスとは、ただ単に強度を最大化するのではなく回復を最大限に高めることに基づいた、トレーニング、食べ方、日々のストレスのバランスの取り方の方法への新しいアプローチです。 回復駆動のフィットネスは、フィットネスゴールの達成のための最も効果的な方法は、ただトレーニングをハードに行うのではなく、身体をより回復しやすい状態にシフトさせることを助ける特定の戦略やメソッドを取り入れることであるというマインドセットからスタートします。 回復の状態においてのみ、身体はそのエネルギーをかつてないほどに強くするための回復と再構築に向けることができるのです。 今後の記事の中で、私は皆さんにフィットネスへの全く新しいアプローチの方法をシェアしたいと思います。回復駆動のフィットネスの設計図をご紹介し、強度に基づいた計画では決して得ることのできなかった、より素晴らしい結果を届け、全く新しい方法で回復を促す、トレーニング、栄養、そしてライフスタイルの計画の構築方法をご紹介します。 今後カバーすることのいくつかをご紹介しましょう: 身体を回復ゾーンに推し進め結果を加速する、回復駆動トレーニングセッション(HPRT)の使い方に関する段階的なガイド。 様々なデータに迷ってしまうことなく、回復を計測し追跡するテクノロジーの活用方法。 一般的なダイエットや栄養のアプローチが、私達の回復を促進するのではなく遅延させてしまう理由。 身体がワークアウトから多くの成果を得ることを助けるために、すぐに実行することができる最も効果的なライフスタイル戦略。 回復負債を防ぎ身体のエネルギーを回復に方向づけを助けるために利用できる、ターゲットを絞ったサプリメント。

ジョール・ジェイミソン 3352字

ペインばかりでゲインなし:高強度トレーニングへの執着は私達の期待に背いた。パート1/3

大学で、最初にストレングス&コンディショニングの領域に足を踏み入れた時、私は強くなることに取り憑かれていました。可能な限りに最短の時間で強化することを約束したものなら、手当たり次第見つけて読んだものです。 その過程の中のどこかで、偶然ブルガリアのオリンピックウエイトリフター達が1980年代にトレーニングをして数多くのメダルを獲得した方法に基づいていると主張するストレングスプログラムに出会いました。そのプログラムの正確な名称は思い出せませんが、著者は筋力構築の本当の秘訣は、毎日2-3回の短い高強度のトレーニングセッションを週に6日行うことであると主張していました。 当時、私にとってこれは理にかなっているように思えました。ノンストップで莫大なボリュームでトレーニングすることが、本当に、とてつもなく強くなるための秘密のレシピなのかもしれない?と。 これは一度も試したことがなかったので、試してみる価値はあると判断して取り掛かってみました。それからの12週間、私はトレーニングばかりしていました…ひっきりなしに。 その結果は?私は実際かなりとんでもなく強くなったのです! 私の主なリフトは、30-40 ポンドあるいは、それ以上向上し、体重は5ポンド増量しました。疑いなく、私は確実に大きくなって強くなったのです。短期間で、効果がありました。 ブルガリア人達は、もしかするとちゃんとわかっていたのかもしれませんね? 異なった時、異なった結果 6年間ほど早送りをしましょう。私は20代半ばで、自分のジムを運営していました。正直に言うと、毎日トレーニングを指導し、ビジネスを構築しようとするのに忙しく、私自身のフィットネスは衰えていました。 かなりの量のコンディショニングは行なっていましたが、弱く感じていました。大学の栄光の日々からは、確実に筋量を失っていました。何かしなくてはならないと決断し、母のガレージにおいてあった箱を次から次へと掘り出して、昔のブルガリアストレングスプログラムを見つけました。 プログラムを更に効果的にすると考えたいくつかの変更を加えて、取り組み始めました。再び、1日に2-3回高重量のリフトをすることを週に6日行ったのです。 この時の結果は?以前と同じではなかった、とだけ言っておきましょう。 この時は、プログラムに完璧に粉砕されました。 最初の何週間かは強くなったのですが…そこからはずっと下り坂でした。関節が痛み出し、常に筋肉痛があり、いつも疲れているようになるのにあまり時間はかかりませんでした。全てのワークアウトを行なって、できる限りハードにトレーニングしましたが、とても“楽しい”と呼べるようなものではありませんでした。 プログラムの半分くらいまで来たところで、ウエイトをリフティングするのがもう嫌になってしまいました。 なぜ“ハードにトレーニングする”ことが失敗に繋がるのか 二度目に何がうまくいかなかったのかを、十分に理解するには何年もかかりましたが、以来これら全ては私が“強度マインドセット”と呼ぶことからスタートすることを認識するようになりました。 強度マインドセットとは何でしょうか? 単純に述べるなら、成功と結果を駆動するための最も重要な変数要素は、“いかにハードにトレーニングするか”であるという考えでフィットネスにアプローチすることです。 このマインドセットは、あっという間に望む結果を見ることができないのであれば、トレーニングのハードさが足りないために違いないと考えることになっていきます。 あるいは、よくあるように、もしハードにトレーニングして幾らかの結果を見ることができているなら、更にハードなトレーニングをすれば、更に良いあるいは更に短期間での結果になる、というように。 結果を引き起こすのは強度であり、ノーペイン、ノーゲインというマインドセットは、フィットネスにおいて長い間存在していますが、過去10年間のクロスフィット、タバタインターバル、ブートキャンプのクラスなどの隆盛は、このマインドセットをフィットネス文化に更に深く、より深く染み込ませることになりました。 残念なことに、強度トレーニングには一つ大きな問題があるのです:うまくいかない 事実、長期的には利益以上に被害をもたらしてしまうことが多いのです。私は、これこそが多くの人達が努力をしても健康やフィットネスのゴール達成に失敗してしまう理由であると認識するようになりました(証拠もあります)。 説明させてください… 全てはエネルギーに尽きるのです。 強度マインドセットが上手くいかない理由に飛び込んでいくためには、エネルギーに関して話すことから始めなければなりません。私たちの身体の何兆個もの細胞の全てが機能し私たちの生存を維持するには、恒常的に限りのないエネルギーを必要とします。 私達の脳も筋肉も骨でさえも、全てが身体のエネルギー通貨であるATPに依存しています。 エネルギーを必要とすることは当たり前であり、ほとんどの人が理解できることですが、トレーニングやストレス、そして回復の全てが直接的にエネルギーとジムでのトレーニングの結果に関連しているのかについては明確さに欠けています。 この関係性のために、強度マインドセットは常に失敗してしまう運命にあるのです… なぜあなたのフィットビットは嘘つきなのか エネルギーに関して、近年明らかになった最も重要なことの一つは、私達の身体が生産できるエネルギーは、私達が認識しているよりもかなり限定された許容量であるということです。ほとんどの人達は、より歩数を多くすれば全体的によりアクティブである、つまりより沢山のカロリーを燃焼し、身体はより多くの総エネルギーを生産していると信じています。 この考え方は、フィットネス業界のどの時代においても、トレーナーからコーチ、栄養士をはじめ全ての人達の間で繰り返されてきたものです。 より沢山動けば、より沢山燃焼する。これはエネルギー消費の加法モデルとして知られています:これは、活動レベルが高ければ高いほど、最終的により多くのカロリーを燃焼するということを小難しげに表現したものです。 このよく知られた概念は、下のグラフでモデル化されています。"other (その他)”は、安静時に燃焼するカロリー量( RMR/安静代謝率)を示し、PAは、身体活動を表します。このモデルでは、より身体的にアクティブであればあるほど、より多くのエネルギー(カロリー)を1日に燃焼します。 身体はこのように働くのだと考えるのは、完璧に理にかなっているにも関わらず、そうではないことを示すエビデンスがどんどん提示されています。新しいリサーチは、代謝に関して、そして様々なレベルの身体活動に身体がいかに適合するかに関する全く異なることを伝えてくれています。 “Constrained Total Energy Expenditure and Metabolic Adaptation to Physical Activity in Adult Humans:成人における制約された総エネルギー消費量と身体活動への代謝適合“とタイトルづけられたリサーチでは、研究者達が、US及びアフリカに在住する5つの異なるグループの活動レベルとエネルギー消費を研究しています。 ダイエット指導者の多くにおける常識として、アフリカの人達は、より伝統的な狩猟収集民的ライフスタイルで生きてきたためにアメリカ人よりもよりアクティブであり、ゆえにより沢山のカロリーを消費するに違いないと言うことでしょう。 しかしリサーチの結果はそうではなかったのです… “自給自足農民や伝統的狩猟収集民を含む、社会経済的発達途上の人々における総エネルギー消費量は、先進国の人々の総エネルギー消費量と類似している。” ここで理解すべき重要なことは、研究者達は、エネルギー消費量(カロリー燃焼)を決定するために、ほとんどの人達が使うであろうフィットビットやその他の加速度計を使用しなかったということです。彼らは、その代わりに“二重標識水”と呼ばれるより洗練されたテクニックを使用しました。 このメソッドは、ただ単に何歩歩いたかではなく、身体の代謝を計測することで、身体が実際にどれほどのカロリーを燃焼しているのかをより正確に反映した測定値を提供します。全てのデータが入力された時、アクティブさの程度とカロリー燃焼量の間の全く異なった関係性が姿を表しました:下の図で表示されているエネルギー消費の制約モデルと呼ばれるモデルです。 手短に言えば、このモデルは、私達の代謝は、私達が常にそうであろうと考えていた方法で働いているのではないことを表しています。もし私達が1日に2万歩歩いたとしても、私達が1万歩歩いた場合よりも、より多くの総カロリーを燃焼することは実際にはないということが判明したのです。 そうではなく、私達が2万歩歩く時、私達の身体は単にその要求に見合うように、その他の生物学的機能からエネルギーの方向を転換するのです:これに関する詳細は、この後カバーします。

ジョール・ジェイミソン 3888字

ペインばかりでゲインなし:高強度トレーニングへの執着は私達の期待に背いた。パート2/3

狩猟収集民族社会で生活している人達が、体重比で修正された時に、1日あたりほとんどのアメリカ人よりも、より多くのカロリーを燃焼することがないと示唆するのは、クレイジーに思えるかもしれませんが:それがリサーチの結果なのです。 このエネルギー消費の新しいモデルは、私達が1日に燃焼できるカロリー数には上限があるということを明確に示しています。私達がどれほどアクティブであろうと、私達の身体が生産することのできるエネルギー量によって私達の代謝は最終的に制限を受け、そして私達が燃焼できるカロリー量も同様に制限を受けるということがわかりました。 研究者達が、マイスにおける様々な活動レベルとエネルギー消費を二重標識水を用いて分析した“Increases in Physical Activity Result in Diminishing Increments in Daily Energy Expenditure in Mice:マイスにおける身体活動量の増加は結果的に1日のエネルギー消費量値増加減少につながる“と題された同様の研究においても、この働きがよく理解できます。 ご覧の通り、中程度に活動的であったマウスは、実際、運動不足のマウスよりも多くのカロリーを燃焼することになりました。一方で、高度に活動的であったマウスは、中程度に活動的なマウスと基本的に同じ量の総カロリーしか燃焼しなかったのです。 ここでも、この研究は私達の代謝には限度があり、私達の代謝が生み出すことのできるエネルギーの最大量は、私達が理解していたよりももっと固定されたものであるというモデルを支持しています。 エネルギーと、その活動との関係性に関する新しい見方の重要性は、どれだけ誇張してもし過ぎることはない程に、多くのことを説明してくれるものです。 エネルギーのジレンマと、フィットネスゴールについてのエネルギーの重要性の理由 1日に私達の身体が作り出すことのできるエネルギーには限りがあることがわかったところで、常にエネルギーを要求する様々な身体のプロセスを考えてみましょう。これらの要求を3つの大きなカテゴリーにグループ分けすることができます: 生命維持に必要な生物学的機能 身体活動とストレス、そして 組織修復と適合 最終的に、私達の脳とその複雑な計算のパワーが、生み出したエネルギーをどこに分配するかを決定づけることになります。 脳の一番の優先順位:生命を維持すること エネルギー要求の3つのカテゴリー中、生命維持に必要な生物学的機能(心臓、肺、脳のような重要な内臓器が必要とするエネルギー)は、当然ながら生存のために最も重要なものです。 これらの組織が必要なエネルギーを得ることができなければ、あっという間にゲームオーバーとなってしまうでしょう。 このために、身体が生存するために1日に必要な最低限の量が存在することから、脳の第1優先順位は、常にこれらのエリアにエネルギーを与えることになります。 脳の2番目の優先順位:活動にパワーを与え、人生のストレスに対応する 2つ目のカテゴリーである身体活動とストレスは、日々の変動がもっとも高く、そして私達が最も制御できるものでもあります。ワークアウトをするかソファに座っているかを選ぶことができますし、階段を登るかエレベーターに乗るかも選択できます。 私達が身体的により活動的であれば、働いている筋肉やサポートする組織により沢山のエネルギーが必要とされることは、かなり明白でありながら、ほとんどの人たちが十分に理解していないのは、メンタルストレスがどれほど私達のエネルギー分配に影響を与えるのかということです。 それが迫りくる仕事の締め切りやテストであっても、経済的な心配や家族のストレス、あるいは自分の前にいる車の運転手のスピードが遅すぎたりするからであっても、私達がメンタル的なストレスを受けている時はいつでも身体のストレス反応が活性化されることを知っていることは重要です。 こうしたことが起こると、血液中にストレスホルモンが放出され、血圧は上昇し、脳はエネルギー貯蓄を動かすように働きます。これはワークアウトのような(あるいは熊に追いかけられるとか)身体的に要求度の高いことに対応している場合に必要なことそのものなのですが、ストレスを与えているのがスピードの遅い運転手である場合には、あまり良いことではありません。 なぜなら、運転手が邪魔にならなくなった後、あるいはテストが終了した後、または支払いを終えた後にリラックスすることができたら、身体は一旦動かしたけれど必要なくなってしまったエネルギーを元に戻さなければなりません。貯蓄から血中へ、そしてまた貯蓄へとエネルギーを動かすこと自体にもエネルギーを要します。 他の方法で考えると:労働者が常に大きくて重い箱を上の棚から降ろした何分後、あるいは何時間後にまた上の棚に戻している倉庫をイメージしてみてください。彼らの貴重な(限られた)時間を費やすもっとも価値のある方法ではありませんね。 別の言い方をすれば、メンタルストレスには実際の生物学的コストがかかり、それはエネルギーとして支払われるということです。私自身の経験では、人生のストレスはかなりコストがかさみ、フィットネスや、またはその欠如において、ほとんどの人たちが認識したことがない程に、それは大きな役割を果たしています。 脳の最後の優先順位:フィットネス向上(身体を大きく、強く、脂肪を減らしカッコ良くする) エネルギーを要求する3番目で最後の代謝活動は、組織の修復と適合です。ハードにトレーニングしてフィットネスを向上させようとしている時、十分なエネルギーがここに分配されていることは間違いなく重要です。筋組織をより大きく強く再構築するために使われ、持久力を向上させる新しいミトコンドリアを作り出し、調整力やスキルを向上させることに繋がる脳の変化を生み出すために使われるエネルギーです。 もしあなたのゴールがトレーニングから最大の効果を得ることなら、あなたの基本的な代謝のニーズと身体的活動による要求が満たされたうえで、十分な余剰がある時にのみ、脳はより大きく強い組織を構築するためのエネル ギーを提供するのだということを認識することは重要です。 あなたの脳は、より重いウエイトを持ち上げ、より早く走り、あるいは水着が良く似合うようにするために、生命を維持するのに必要なエネルギーを犠牲にすることは決してないのです。

ジョール・ジェイミソン 2761字

コンディショニングの真実:なぜ強く、速く、フィットしていることだけでは十分ではないのか パート1/2

コンディショニングコーチとしての私のキャリアのはじまりを振り返ると、認めたくはありませんが、私は本来あるべくしてよりも、もっと成功していたかもしれません。私はエネルギーシステムについて出来る限りすべてを勉強していて、スポーツ界の最高のコンバットアスリートの何人かと働いていましたが、真実は、私にはまだ学ばなくてはならないことが沢山あったのです。 成功は時折あなたを甘やかします。成功は、あなたが本当に知っている以上に知っていると思わせ、すべてが本来よりももっと簡単になってしまうのです。 何度も、世界の別な地域から来る他のジムからのコンバットアスリートのトレーニングを頼まれ始めた頃、私は結局コンディショニングについて分かっていなかったのかもしれないと気が付き始めました。 これが起こった時、私はファイターと週1、2回、時にはもっと少ない頻度でしか働いていませんでした。これは、すべてのスキルワークをAMC Pankrationでマット・ヒュームと行いながら、彼らの試合まで毎日指導するという、かつて私がしていたようなアスリートとの働き方とは劇的に異なりました。 これらの新しいアスリート達が海外から到着し、評価をして、彼らが家に帰った後自分たちで行うためのプログラムを作成します。 彼らが去った後、もちろん私は定期的に彼らと連絡を取り、彼らはどのように進んでいるか私に知らせるために経過レポートを送ってきます。 当初、私はこれらの新しいファイターたちが、パーソナルで指導していたファイターたちと同じくらい良いパフォーマンスをするようになると期待していました。無知な私は同じエネルギーシステム発達の基礎原理を用いていたので、彼らの数字が改善すれば、彼らのコンディショニングも改善するだろうと単純に思っていたのです。 しかしながら、現実は、常にこのようにはいきませんでした。彼らのフィットネス指標(安静時心拍数、VO2 max、無酸素性作業閾値、など)が劇的に向上しても、彼らのパフォーマンスがそれらに一致しない時もあるのです。 コンディショニング数値では、彼らがキャリアの中で最高の調子であるように見えているにもかかわらず、彼らは試合が進むにつれて疲れているように見えたり、ガス欠で倒れてしまったりしました。 共に働いていたアスリートが残念なパフォーマンスをしているのを見るというのは、非常にいらだたしいものです。あなたが彼らをだめにしたように感じることも多いでしょう。自分自身に問いかけたことを覚えています、「一体ここで何が起こっているんだ?私が彼らにデザインしたプログラムは役目を果たして、彼らの数値は(たいてい劇的に)向上し、あるべきところにいたのに、彼らのコンディショニングは伴っていなかった。何が間違ってしまったのだろう?」 その経験―そしてそれらの失敗のつらい問いかけに直面しなくてはならないことーは、パフォーマンスに対しいかにトレーニングをしていくかについての、私のキャリアにおける最も大きい転換の主な要因となりました。 この問題について取り組みながらたどり着いた答えは、コーチとトレーナーが全体として“コンディショニング”にどのようにアプローチするかに革命を与えるために、今日私がしていることのすべてにおける駆動力となりました。 フィットネス対コンディショニング(あるいは、なぜすごく強く、速く、そしてフィットしていることだけでは十分ではないのか) コーチまたはアスリートとして、私たちは皆ここにいたことがあります:ハードにトレーニングして、練習やトレーニングセッション中のフィットネスは良く見えるのに、試合となるとだめになってしまう。 …練習で良いパフォーマンスをしているチームが、第4クオーターで猛烈にパフォーマンスが落ち、衰退し、リードを失う。 …5ラウンド問題なくトレーニングしていたアスリートが、試合本番では第1ラウンドで衰退しガス欠になってしまう。 私たちの誰もが関連づけられることでしょう。きつい練習やトレーニングをこなして調子が良いように感じているのに、表に出てパフォーマンスすると、私たちのフィットネスは私たちが期待しているものにはならないのです。 これが起こるとき、実際何が起こっているのでしょう? この困惑しいら立たせる現象を理解するためには、ここから始めなくてはなりません: "フィットネス"(強いことや速いこと、あるいはVO2 maxや安静時心拍数などのような"の良い指標"を持つこと)と"コンディショニング"には違いがあるのです。 フィットネスはパフォーマンスの潜在能力です。非常に重いウエイトを上げられること、とても強いパンチが打てること、または非常に速く走れることです。 これらの全ては、パフォーマンスの"エネルギー出力"サイドにあります。質は極めて重要で効果的なあらゆる効果的なトレーニングプログラムにとっての極めて重要な質ではありますが、それらのこと単体では、必ずしも最高のパフォーマンスになるということではないのです。 パフォーマンスのもう一つの側面が、“コンディショニング”のあるところです。 コンディショニングは数値や数字の集まり以上のものです。それよりも、コンディショニングは効果的にエネルギーを用い、管理し、私たちのフィットネスを働かせるための能力を与える、私たちが発展させるスキルセットです。 なので、“パフォーマンス方程式”は本来このように見えます: フィットネス(エネルギーシステム、強さ、パワー)=エネルギー生産、パフォーマンスに対する潜在能力 コンディショニング=フィットネスの質+エネルギー消費(パフォーマンスの要素すべてが一体となる場所)を促すスキルセット 表に出て、できるだけ最高のレベルでパフォーマンスをするために、私たちはパフォーマンスを単にフィットネス要素の集まりとして扱うことを止め、どうしたらコンディショニングを発展出来るか見始めなくてはなりません。 単にフィットネスのみでなく、コンディショニングを発展させるための最も重要な3つのスキル 多くの人々にとって、その人が疲れているかいないかの評価ではなく、スキルセットであるコンディショニングの考えというのは新しいものです。そのため今日は、本当に重要な場面で、あなたの指導するアスリートたちが出来る限り最高のパフォーマンスをする手助けをするために、あなたが発展させなければならない3つの重要なスキルを述べていきます。 たとえあなた自身がコーチやアスリートでないとしても、これらの3つのスキルは、実際にあなたのフィットネスを日常生活のストレスに対応するために使えるようにするにも非常に重要です。 これらのみが、コンディショニングを最大化するために発展させなければならないスキルではないことを、頭に置いておいてください。しかし、私の15年以上の経験に基づいて、これらは最も重要なのです。 覚え書き:フィットネス(パワー、ストレングス、スピード、持久力)はパフォーマンスの“エネルギー生産“側である。これらは明らかに重要だが、本当にただパフォーマンスの潜在能力を築くだけである。 実際に潜在能力のすべてをパフォーマンスに置き変えるためには、私たちはコンディショニングのスキルを発達させることに集中しなくてはなりません。 これらの3つのスキルは、これを行うためのあなたの出発点です。 コンディショニングスキル#1:ダイナミック・エネルギー・コントロール(心拍数と出力をコントロールする能力) コンディショニングスキル#2:回復と呼吸(よりよい呼吸をし、より早く回復し、より良いパフォーマンスをする) コンディショニングスキル#3:疲労したモーターコントロール(疲労が出てきた時になぜテクニックと動作の質を維持しなくてはならないのか)

ジョール・ジェイミソン 3338字

コンディショニングの真実:なぜ強く、速く、フィットしていることだけでは十分ではないのか パート2/2

コンディショニングスキル#1:ダイナミック・エネルギー・コントロール(心拍数と出力をコントロールする能力) コンディショニングのゴールはフィットネスレベルをずっと100%、すべて出し切れるよう十分に高く発達させること、そうですよね? 多くの人々がそう考えますが、ただそれは現実ではないのです。 スタートからフィニッシュまで100%出せるという考えは良いアイデアのように聞こえる一方で、競技またはトレーニングセッション中の間ずっと最大出力を維持することは人体には不可能なのです。 そこで疑問はこうなります:いつ100%、あるいは60%か70%でいくかをどうやって知ることが出来るでしょうか?それと同様に重要なこととして、それらの出力レベル間の違いを私たちは本当に知っているのでしょうか? いつどのようにエネルギーをコントロールすれば、ある時にはエネルギーを縮小し保存することができて、本当に重要な場面でアクセル全開にできるのか、私たちはどのように知ることができるのでしょうか? それらの疑問に対する答えは、私が“ダイナミック・エネルギー・コントロール”と呼んでいるものですーあなたの出力や消費を十分に認識し、疲労を避けパフォーマンスを最大化するために意識的にコントロールすることのできる能力です。 このスキルを持っていない人々は、出ていってガス欠になり、エネルギー生産の容量を超えて、必然的に急速な疲労を導くことになるでしょう。これは非常によく起こることで、気づきとコントロールの欠如以上のなにものでもありません。 現実は、あなたはエネルギー消費と生産の限界が何かを認識できる必要があり、それらを超えそうな時を認識した場合の戦略を持っていなくてはなりません。これがあなたがエネルギーを効果的に管理できるようになるための唯一の方法であり、すべての中で最も重要なコンディショニングスキルです。 これをどう行うのでしょうか? フィットネスの質を発展させている時、あなたは心拍数モニターを使わなくてはならず、アスリートたちにどのように心拍数を上げ下げするか、そしてどのように心拍数の限界と力発揮の容量を知るかを教える必要があります。 もしあなたが“もっと頑張ること”が常に答えであると思いながら、それらの限度を超えて押し続ければ、より早く疲労するでしょうー第4クォーターや最終ラウンドなど、最高でなくてはならない時にガス欠になりやすくなるのです。 しかし、もし疲労の警告サインを認識し、異なるレベルの力発揮がどのように見え感じるかの認識を発達させることが出来れば、それをどのように対処し操るかを学ぶことが出来ます。 たとえ競技中、心拍数モニターを着けていなくても、あなたは疲労の警告サインを認識することが出来ます。もしあなたが、無理をしすぎる強度がどのように見え、感じるかを認識していれば、エネルギー消費を管理し、最高のパフォーマンス維持の対処をするための戦略を用いることが出来ます。 これが実際何に行き着くのかというと、マインドセットの移行です。トレーニングのゴールが誰かを何度も繰り返し疲れさせることだと考えるよりも、どのようにエネルギー消費をコントロールし管理するか学ぶことを選ばなくてはなりません。 要点:エネルギー消費を認識し、本当に必要な時のためにエネルギーを保存し、試合を通してパフォーマンスを維持するためにどのように調整するかを知るダイナミック・エネルギー・コントロールは、アマチュアとエリートアスリートを分けるものであるーそしてそれはしばしば勝利と敗北の間の違いである。 コンディショニングスキル#2:回復と呼吸(よりよい呼吸をし、より早く回復し、より良いパフォーマンスをする) 多くのコーチやトレーナーたちは、彼らのアスリートがフィールド上、コート、またはトラックで行っていることに努力を注いでいます。そしてそれは明らかにとても重要です。 しかし、同じくらい重要なのは、試合の“余白”―フットボールであなたがフィールドから出てきたときやホッケーで氷上から出てきたとき、あるいはクォーターやハーフタイムの間―に何が起きるかです。それらのすべては、実際のプレー期間と同じくらいコンディショニングにとって重要なのです。 試合やトーナメント、またはマッチのラウンドの合間に渡ってパフォーマンスを維持するために、回復のスキルを教えることが、勝つために必要なレベルでパフォーマンスし続けることを可能にするのです。 もし素早く回復しストレス反応を抑える方法を学ばなければ、あなたは、とても早く疲労しきってしまうことでしょう。 回復については、私たちが話せる様々なことがたくさんありますが、競技の途中で最も容易にコントロール出来ることが呼吸なのです。 もしより効果的な呼吸の方法を学ぶことが出来れば、競技の休憩時間中に心拍数を"回復"状態に戻すことができるため、その時がくれば、試合に戻り100%を出す準備が出来ているのです。 理想的なパフォーマンスのためには、人々にどうやって高いレベルでエネルギーを消費するかを教えるだけでは十分ではありません。 私たちは彼らに、彼らが運動時間にエネルギー消費を管理し、競技のトランジションや"休憩"時間の間に出来るだけ素早く回復することが出来るよう、効率的に呼吸をする方法を指導しなくてはなりません。 コンディショニングスキル#3:疲労運動制御(疲労が出てきた時になぜテクニックと動作の質を維持しなくてはならないのか) コーチやトレーナーたちが犯している最大の間違いの一つは、疲労下においてだめなテクニックと動作の質を許していることです。 もっと悪いことに、多くの人々が疲労に対処する最も良い方法は、疲労の中で苦しむことだと考えているために、アスリートを意図的に過度に疲れさせてトレーニングさせているのです。これはしばしば"精神的な強さ"を築くという名目で行われます。 真実は、厳しいトレーニングセッションを遂行させることは、彼らを非常に疲労させることになり…だいたいが非常に悪い動作の質と運動パターンを増強することに至ります。 こうしたアスリート達が試合に行った時何が起こるかというと、彼らはこうした不十分な運動制御パターンとテクニックにおける間違いを持ち込み、より多くのエネルギーを消費し、さらに早く疲労してしまうことになるのです。 だめなテクニックや動作の質を許してしまうことーたとえ"ただの"練習やトレーニングであってもーは、確実にアスリートのパフォーマンス潜在能力を制限し、彼らのコンディショニングをよくするどころか悪くしてしまう方法です。 言及したように、私たちは"精神的な強さ"の名目で行なっていますが、私たちが本当に行なっているのは、最も大切な時にだめなテクニックとパフォーマンスを容易にさせているのです。 真実は、彼らが疲労していない時に良い動きを教えられるように、彼らが疲労している時でさえもどうやって良く動くかを教えることが出来る(そして教えなくてはならない)のです。 疲労運動制御とは、a)疲労がどう動作に悪い影響を与えるか認識出来る、そして、b)できるだけ最高のレベルでパフォーマンスできるよう疲労のマイナス効果にどう対処するか学ぶ、というコンセプトです。 あなたが疲れた時、ゴールは全力を出すことや闇雲にもっと頑張ることではなく、動作とテクニックの質を維持し、エネルギー保存を死守することなのです。なぜなら、それが私たちのスキルを効果的にし、限られたエネルギーの供給を保存させるものだからです。 悪いテクニック/動作の質=より多いエネルギー消費(低下したパフォーマンスを導く) 疲労が出てきた時にどこが崩れ始めるかをアスリートが認識する手助けをするのは、コーチとしての、あなたの責任です。 私たちは、彼らが自分の悪い傾向が何かを知っているということを確実にしたいのですーどのように悪い動作パターンやテクニックの間違いにパフォーマンスが影響されてしまっているのかーそしてそれらにどう対処していくかを学ぶ手助けをしたいのです。 彼らは、疲れた時にテクニックが低下し始めるのを認識しなくてはなりません。頭の中で「おい、元に戻れ」と言う声の“スイッチを入れる”か、正しい動作とテクニックのための他の特定のキューを引き起こすことを学ばなくてはいけないのです。 アスリートに疲労を扱うことは“なんとかやりきる”ということではないと理解させるのは、コーチとしての、あなたの仕事です。 理想的なパフォーマンスを維持しながら効果的に疲労を扱うために、疲労が出てきた時の正しいテクニックと動作を強調しなくてはなりません。その人が疲れた時にも、動作のコーチングと良い運動パターンの強化を止めるべきではありません。 トレーニングセッション中、特にアスリートが疲れているとき、常に動作の質を強化すべきです。そうすれば、あなたのアスリートたちはさらなるギアを見つけ、他の誰もが疲労や悪い動作の質、そして低いパフォーマンスに屈服しているときに秀でる存在になるでしょう。

ジョール・ジェイミソン 3882字

カロリーを減らしてもうまくいかない理由 パート2/2

回復負債とその体重との関係 要点をおさらいすると、回復負債とは、身体活動や日々の生活からくるストレスに対処するために非常に多くのエネルギーを消費してしまい、身体を再構築したりより強くて健康な体づくりをするための十分なエネルギーがもう残っていないときに起こります。 わたしたちの代謝は、一日に生産できるエネルギー量が限られていることを忘れてはいけません。つまり、脳はこの限りある資源をどこに分配するか優先順位をつけることを余儀なくされます。 身体をカロリー不足の状態に曝せばいつでも、身体はエネルギー確保のためにその組織を分解するよう強いられるのです。もちろん、みなさんは貯蓄されている脂肪だけが燃焼されることを望んでいますが、実際のところ、貯蓄された糖(グリコーゲン)も分解されます。そして、大幅な不足になると、筋肉までも分解し始めるのです。 結局のところ:体脂肪を落とすために、カロリーを制限して高強度トレーニングを積み上げれば、身体をいとも簡単に回復負債に陥らせてしまいます。そうなると、体内では様々な現象が次々に起こり始めます。それが共同して働き、主にドーパミン機能の変化を介して行動に影響します。 ドーパミンや行動を誘発するプロセスすべてが、詳細に理解されてはいませんが、高強度トレーニング、生活のストレス、低カロリーの食事が組み合わされると起こるさまざまな結果を指摘する研究が増えています。 -炭水化物を減らすことによるカロリー不足と高強度トレーニングの組み合わせは、炎症レベルを増大させます。2012年に実施された研究を含めたいくつかの研究は、グリコーゲン枯渇状態でのトレーニングは、炎症性たんぱく質のレベルを正常時よりも上昇させることを示唆しています。このことは、グリコーゲンのストックが少なくなってきた時に、エネルギーを非常に必要とする高強度エクササイズを実施することはかなりのストレスであることを意味しています。 -慢性的なコルチゾール濃度の増加は、グルココルチコイド受容体抵抗を引き起こし、それがさらに炎症を悪化させます。コルチゾールが、お腹の周りに脂肪貯蔵として脂肪細胞を蓄えることは、たいていの人は気づいていますが、それが強力な抗炎症ホルモンであることを多くの人が忘れています。最近の研究では、慢性的なストレス期間でコルチゾール結合受容器(グルココルチコイド受容器として知られている)は消耗されることがあると示唆しています。つまり:A) コルチゾールが炎症を抑えるという効果が薄れてしまう、そして、B) コルチゾール値が慢性的に上昇してしまう。 -炎症はインスリン感受性を低下させます。慢性的な高レベルの炎症には、広範囲のマイナスの影響がある一方、健康や身体組成において最も重要なことのひとつに、炎症とインスリン感受性との関係があります。いくつかの論文で、炎症は筋や脂肪、肝臓、脳までものさまざまな組織でインスリンへの感受性を低下させる可能性があるとしています。 -レプチン抵抗性は、食べることの報酬に影響を与えるためにドーパミンと相互に作用します。レプチン(脳に食べることを止めるよう指示する脂肪細胞から生産されるホルモン)が私たちの行動、特に食欲に影響を与えるためにドーパミンと相互作用することを示す研究が増えてきています。つまり、レプチン抵抗性は、報酬駆動のドーパミン回路に変化を与えることがあるので、食べることから得る同レベルの満足感を感じるためにより多くの食べ物を摂取するようになるのです。 自覚があるかどうかは別として、もっと食べるように誘発されてしまいます。 これらのホルモン経路が相互に関連し合うことによってどのようなことが起こるのかを説明している最も分かりやすい例として、ある素晴らしい研究があります。そこでは、16人の正常体重を持つ男性と女性が短期の低負荷トレーニングを実施しました。トレーニング後、被験者はどのぐらいのカロリーを燃焼したかを予測し、それから、彼らはビュッフェに連れて行かれ、トレーニングで燃焼したと思われるカロリー量にできる限り近い分量を食べるように指示されました。 言い換えれば、もし彼らがこのトレーニングで300カロリー燃焼したと考えれば、ビュッフェで300カロリー分を食べるということです。この研究者らは、トレーニング後に自分が消費したエネルギー量とその後の摂取量をどれだけ正確に把握できているかを調べたかったのです。 その結果を、下記のチャートにまとめました。目を見張るような結果が出ました。 下記の“カロリー予測”の棒グラフは、被験者がトレーニングによって800カロリーを消費したと信じていることを示しています。実際はたった200カロリーでした。 同時に、ビュッフェに連れて行った時、被験者は600カロリー近くの量を食べました。これは、トレーニングで彼らが実際燃焼したカロリー量のおおよそ3倍にもなります。 “結論:この結果は、正常体重の人が運動によるEE(エネルギー消費量)を3−4倍も過大に見積もることを示している。さらに、運動によるEEを、食べ物を摂取することで正確に補充するよう伝えられても、エネルギー摂取は、実際に運動量から測定されたEEよりさらに2−3倍多い結果となった。” 解釈として:研究に参加した人たちは、自分が燃焼したカロリーがどれくらいか測定することに苦戦しました。さらに、どのぐらい食べたかを推量するのはもっとひどい結果となりました。生理学がいかに自分たちに反発してくるかを示す完璧な例だと思います。 脳はいつも勝つ(脳に逆らおうとすると、自分はいつも負けてしまう) 自覚している以上に食欲を刺激するホルモンの相互作用は、結局のところひとつの単純なことで決まります:運動や生活からのストレスによる多量のエネルギー消費と食物摂取量が十分でない場合、脳は生理学的にそれに抵抗するようにプログラミングされています。これは、私たちに備わっている最も原始的な生存本能の仕業です。それにしても、多くの人はこれに背こうとします。さらに悪いことに、自分たちが脳に勝てると思っているのです。 人々はジムへ行き、できる限り多くのカロリーを燃焼しようとトレーニングに精を出します。多くカロリーを燃焼すればするほど、多くの脂肪を減らせる・・・・と思っているわけです。食べる量や炭水化物を減らし、低脂肪を食べるよう心がけていることに誇りを感じるわけです。 多ければ多いほど良いと信じるがゆえに、強度主導の考え方は結局このような結果をもたらすのです。カロリーを減らすことがいいとなれば、カロリーをもっと減らす方がさらに良い、トレーニングで500カロリー燃焼するのがいいとなれば、800カロリー燃焼した方がもっと良い、といった具合に。 おかしなことに、ほとんどだれもがこのアプローチをある時点で一度は試したことがあり、減量に失敗したことがあります― それにもかかわらず、また次に少し体重を落とす必要があると思った時、まったく同じアプローチを試みてしまい、何度も同じことを繰り返してしまうのです。 ダイエットの名称は変化するかもしれませんが、結局のところ同じ戦術なのです:我慢できる限界までカロリーを減らした食事をし、できる限り運動する。現実的にはそれは脂肪を落とす方策ではありません。それはむしろ、回復負債やそれに伴うすべての問題に陥る方法なのです。 週末ともなると一生懸命やってきたことへのご褒美としてボリューム満点のディナーやデザートを食べてしまい、それを単に正当化すために、みなさんの多くは平日に健康的な食事をしてトレーニングに精を出している訳なのです。身に覚えがありますね? アメリカの三分の一は肥満で、また三分の一は体重過多であるにもかかわらず、人口の75%が健康的な食事をしていると考えている理由もこれで分かります。より健康的な食べ物を食べてはいるのかもしれませんが、それでもまだ食べ過ぎています。“チートミール”(好きなものを食べてしまう食事)が多すぎて、せっかく平日に達成した成果を邪魔してしまうようなチートウィークエンド(好きな物を食べてしまう週末)になってしまいます。 結論として:身体と戦おうとすればするほど、最終的には早く戦いに負けてしまうということです。

ジョール・ジェイミソン 3499字

カロリーを減らしてもうまくいかない理由 パート1/2

この投稿では、栄養学とトレーニングについて、これまでとは異なる見解をみなさんと共有していきたいと思います。体脂肪を減らそうとするとき、ほとんどの人が陥る非常に単純ではありますが定番の間違えについてお話します。 食事やトレーニングのことになると、多くの人がほぼ正しく行っていると思い込んでいますが、かなり頑張っているわりには身体組成にまったく改善がみられないのはなぜか、という理由を探ってみたいと思います。 フィットネス業界の話を始める前に、まず肥満のまん延についての話から始めます。なぜかというと、ジムに通う平均的な人で体重を10ポンド(4.5kg)減量したいと思っている人には、30ポンド(13.6kg)は減らす必要がある体重過多の人との共通点が多いからです。 またしても、昔からあるこの課題に対する答えは、エネルギーと回復の関係、そして何よりも人間の生存のためにこれらがどのようにプログラミングされているのか、を理解するところまでさかのぼります。この観点から、高負荷エクササイズとダイエットの組み合わせは必然的に失敗に終わるということが簡単に分かるでしょう・・・ たいていのアメリカ人は、自分たちは健康的な食事をしていると言いますが、果たして本当なのでしょうか? 2016年に行われたトルベン・ヘルス・アナリティクスによる世論調査では、何千人ものアメリカ人を対象にあるひとつの簡単な質問をしました:“あなたの食生活はどのぐらい健康的であると考えますか?” その結果? この研究によると75%以上の人たちは自分たちの食事を“良い”から“すばらしい”の間で評価しました。 同時に、ここ16年間、ジムに入会する人が増えており全体的な活動量が増えているという研究の結果があります。下記のグラフでは、ジムへの入会数が安定して増加していることを示しています。 2000年~2016年におけるフィットネスセンターやヘルスクラブに登録されている登録人数の合計(単位:百万) 要するに、これまでにないほど多くの人がトレーニングし、健康的な食事をしていると言うのです。これらの統計からすれば、アメリカ人は一般的に活動的で適切な食事をして、健康的な生活を送っていると考えられがちです。 この考えには一つだけ問題があります:活動レベルの向上と健康的な食事(真偽のほどは分かりませんが)にもかかわらず、アメリカの国としてみれば、依然どんどん太り続けているのです。ここで私が伝えたいことは、下記のグラフが示しているのでご参照ください。 1997~2015年の間、ジムに入会した人数はおおよそ2倍になりました。同じ期間で、肥満に分類された人数は50%近くも増加しました! もし、これまでにないほどに、みんながより良い食事をしてエクササイズをしているならば、なぜこの国は全体的に未だに太った人が増えているのでしょうか? 結局、栄養学の専門家たちのほとんどは、肥満のまん延の原因は、人々があまり動いていないのに食べ過ぎていることにあると言っています。 運動が本当に問題なのか? この状況をつかむためにも、最も基本的な仮定から見ていかなくてはなりません・・・ ダイエットやフィットネスの指導者の間でも、身体的運動不足は肥満のまん延に大きな影響を与えているという点でほとんど意見が一致しています。その一方で、研究ではまったく異なる見解を示しています。 アメリカ、ノルウェー、日本の人口データを比較したところ、私たちが信じこまされているように、運動量の増加は肥満や体脂肪の減少に必ずしもつながらないことが明確に示されています。 見て分かるように、アメリカには、ノルウェーや日本と比べて運動する人口が多いにも関わらず、肥満度は顕著に高いことが分かります。日本の人口の約60%は非活動的と考えられている一方、肥満率はアメリカが33%のところ日本はたった5%にとどまっています。 アメリカ人に比べると、日本人の運動量は1/3少ないことを示しています。しかし、肥満率は600%以上も低いことが分かります。もし、運動不足が肥満の主な誘因の一つであるならば、運動をしている人口がアメリカよりも少ない国々と比べて、どうしてアメリカの肥満率はこれほどまでに高いのでしょうか? トレーニングすればするほど、体重は減り難い? 多くすれば良いというものではない場合。 この不可解なことを解決するために、運動がどのように身体組成と体重の減少に関係するかより深く見ていく必要があります。それをするために、被験者を1週間のエクササイズ量を変えた3つの異なるトレーニングプログラムに振り分け、実際どうなるかを見てみましょう。 この特定の研究では、研究者は、体重過多で座ってばかりいる女性を4つのグループに振り分けました:まったくエクササイズをしないグループ、1週間に72分(4KKW)のエクササイズをする“軽度”グループ、一週間に136分(8KKW)のエクササイズをする“中度”グループ、そして1週間に194分(12KKW)のエクササイズをする“高度”グループ。全てのグループの被験者は、この研究期間である6ヶ月間は彼らの食習慣を変えないように伝えられていました。 摂取したカロリーの自己報告と1週間で測定したエネルギー消費総量を基に、研究者は体重の減少の予測値(単純にカロリーの出入りの公式を使い、被験者の体重が理論上どのぐらいになるのか)を計算しました。研究の最後に、グループごとの予測した値と実際に減少した体重を比べました。 たいていの人は、最も多くエクササイズをしたグループが最も多く体重を減らしたと予想するところですが、まったくそうではなかったのです。 グラフから読み取れるように、1週間で最も多くエクササイズをしたグループは、実際、中度のエクササイズ量であったグループよりも体重の減少は小さくなりました。さらに興味深いことに、高度のグループは、結局、軽度のグループとまったく同じ重さ(1.4kgに対して1.5kg)しか体重を減らすことができませんでした。 1週間に194分(約3時間強)のエクササイズをしたグループは、1週間に1時間強しかエクササイズをしなかったグループより良い結果を出すことができませんでした。言い変えれば、運動を3倍に増やしても同じ結果だったということです。 つまり、運動を多くしたからといって、必ずしもそれに見合った体重の減少や結果が出せるということではないことが分かります。実際、運動を増やすことによって体重の減少が小さくなったということもあります。 それにしても、なぜ? 脳、ドーパミン、エネルギーのホメオスタシス― 脂肪の減少を理解する上で完全に欠けている部分。 ドーパピンと聞くとほとんどの人は、“幸福感”や“報酬”などを起す化学物質を思い浮かべると思います― チョコレートを食べている時やトレーニングなど幸福感を感じられる何かを行っている時、急上昇するものです。確かに、ドーパミンはこのような活動に関連していることは事実ですが、本当は、幸福感や報酬よりももっと関係しているものがあります。 むしろ、ドーパミンはエネルギーに関係しています。もっと詳しくみると、ドーパミンの重要な最大の役割は、身体のエネルギーのホメオスタシスを保とうとする行動を駆り立てることです。 エネルギーのホメオスタシスは、エネルギーの消費と摂取の両方の調整です- 私たちが生きて行く上で必要なエネルギーを確保するための明らかに重要な要素です。 エネルギーのホメオスタシスを調整するために、ドーパミンは、運動(エネルギー消費)と食事(エネルギー摂取)の両方に関わる行動を誘導する役割を果たしています。言い換えれば、私たちのトレーニングや食べることへの欲望を掻き立てるのがドーパミンなのです。また、進化生物学に遡るかもしれませんが、動くことや食べることへの強い動因(たとえば、食べるものを探し求め、それを食べずにはいられなくなるといった動機付け)がなければ、私たち人間は種として長く生き残る生物ではなかったでしょう。 動くという行動と食べるという行動を誘導してくれる役割を持つドーパミンは、生存のために必須であるが故に、必死になって運動量を増やし食事を減らし減量を目指している私たちを妨害してくることもあります。前回の私の投稿、高強度トレーニングへの執着は、なぜ私たちの期待に背いたのかでも述べましたが、運動し過ぎればすぐに回復負債を引き起こします。 自分のからだの限界に達するまでジムでトレーニングに明け暮れ、同時にカロリーを制限すれば、このプロセスはさらに加速し、脳はすぐに反撃をするでしょう。

ジョール・ジェイミソン 3769字

HRVでさらにストレングスをハックする パート2/2

強くなるための黄金律 マイクのケーススタディは、健康でいながら長期に渡るストレングスをつけるために最も重要な原則の一つの完璧な例です:常に量よりも質に注目すること。 ストレングスを向上しようとする人々は、常にもっとやることがもっと良いと考える罠に落ちてしまうことが多くありすぎます。より多くの回数、より多くのセット、より多くのウエイト、より多くのトレーニングセッション。 彼らはより多く、というのが成功へのカギだと信じていて、それが常に答えではないことに気が付くまでしばしば何かしらの怪我、あるいは複数の怪我をしてしまいます。事実、それが答えであることは滅多にありません。 あなたの具体的なストレングスのゴールが何であれ、それを達成する最良のアプローチは、常にトレーニングの量よりもトレーニングの質に重きを置く考え方から始まります。長期的な筋力の発達を臨む鍵は、身体が実際にこなせる時にのみ最大強度でトレーニングをすることです。 HRVの変化を見ることで、いつがその時かがわかるでしょう。 ストレングスのゴールを達成するための最良のアプローチは、トレーニングの量よりもトレーニングの質に重きを置くことから始まる。 ほぼ全ての人に対して、これは最大努力のトレーニングは週2回、あるいは最大でも週3回にとどめておくべきだということを意味しています。最終的に怪我をしてしまわずに、長期に渡ってそれ以上きついトレーニングをすることはできないのです。 HRVのパターンはこれを繰り返し示しています。あなたがどれだけ頑張って試してみても、身体の裏をかくことはできないのです。 身体は、より多くのきついトレーニング日数から回復することはできず、この原理が間違っていることを証明しようとしたほぼすべての人達は遅かれ早かれ代償を払ってきました。 上のマイクのHRV表示を見てわかる通り、彼の身体が抱えているストレスを指す明確な下降傾向があります。HRVの減少は、より高いレベルの交感神経活動の結果であり、上昇は一般的により高い副交感神経機能の反映です。 マイクのケースでは、交感神経過負荷が彼の怪我の直前に起こり始めているのが見られるかもしれません。過剰なストレスがあるとき、身体は重要なストレス反応ホルモンの受容器を減らすことで反応し、筋肉は同じレベルの力を生み出すことができないということを覚えておいてください。 これが起こるとき、身体は力ポテンシャルの減少により、かなり高い怪我の危険にさらされているのです。 これを防ぐ最もシンプルな方法は、準備がよく整っている時、つまりHRVに反映されるように自律神経のバランスが良い時にのみ最大でのトレーニングを行うことです。これは、HRVが緑で比較的疲労が低いことを示している日に限定して1RMの90%以上、そして(あるいは)失敗するまでのリフティングをするべきだという意味です。 このたった一つの戦略に従うだけで、過剰なストレスの落とし穴を避け、不可避の交感神経過負荷を防ぐのに役立つでしょう。 それだけでなく、可能な最高レベルの刺激を提供し、強くなることによって身体を順応させることによって、より速く筋力をつけることにもなるでしょう。 同じように、もしトレーニング週間全体に渡りHRVが3~4ポイント以上低下しているようであれば、翌週のトレーニング量を最低でも10~15%減らし、最低でも休息日を1日追加するように計画しましょう。これは交感神経過負荷への進行を防ぎ、怪我ではなくストレングスへの道をたどっていることを確実にしてくれるでしょう。 まとめ 近年では、高強度トレーニングへの熱中が、皆をより多く、よりハードにトレーニングするように駆り立てるという不運な結果を招いています。要するに、量が質よりも優先されており、身体は多くのトレーニングを短い期間こなせるとしても、長い目で見れば、この方法はプラトーやしばしば怪我を引き起こすことに繋がるのです。 90%を上回る最大努力の日を、身体がそれをこなす準備ができていると自律神経機能が示す日のためにとっておくことは、非常にシンプルですが、あなたのストレングスをより高くし、怪我をせずに一貫した進歩を見るためのとても効果的な方法です。 ストレングスに関して、常に質は量に勝るのです。

ジョール・ジェイミソン 1837字

HRVでさらにストレングスをハックする パート1/2

前回、人々が筋力向上のプラトーに悩み、オーバートレーニングし、そして真の筋力の潜在能力に達することができない最も大きな一つの理由は、誰もが考える理由のせいではなく、むしろ交感神経と副交感神経系の間の良いバランスを維持できないからであると書きました。交感神経過負荷は大きなストレングスキラーです。 最高レベルのストレングスとパワーを発達させるためには、沢山のトレーニングが必要であり、それは多くのストレスを意味します。問題は、それが注意深く監視されコントロールされていない限り、このレベルのストレスは簡単に交感神経過負荷、プラトー、そして怪我でさえも引き起こしうるということです。そしてこれらすべては非常によく起こるのです。 今日、私はトレーニングへの異なるアプローチを取ることを学んだ高レベルのストレングスアスリートの実在の例を共有し、彼の話の中に発見されるストレングスの原理についてお話ししたいと思います。彼は20代のとき競技ウエイトリフターで、オリンピック出場をかけてトレーニングしていました。 彼の経験から学ぶことのできる教訓について、いいこともあれば悪いこともありますが、お話しましょう… 彼は、HRVを用いた自律神経のバランス維持の重要性における完璧な例です。不運なことに、彼はそれを、身をもって厳しい方法で学ばなくてはならなかったのですが… マイク・ナッコウル マイク・ナッコウルは、コロラドスプリングにあるオリンピックトレーニングセンターの元専属リフターです。彼の最終ゴールは、アメリカ・オリンピックウエイトリフティングチームに入ることです。 そのため、彼は重いウエイトを何度も何度も繰り返し挙げ、他のことは何も心配せずにより重い重量を挙げたり、より強くなるために努め、数えきれない時間をジムで過ごしてきました。 このアプローチは時には有益でしたが、一方でそれは必然的にオーバートレーニングや怪我を引き起こすことにもなりました。オリンピックへの挑戦を危ぶませる、進歩のなさや慢性的な怪我にイライラさせられて、マイクはもっと賢いアプローチが必要であると決心しました。 彼が彼自身の言葉で伝えてくれるように、彼はその前年を通してHRVを計測してきましたが、データを聞き入れたりそれが彼に何を伝えているのか注意を払ったりしていませんでした: 「私のキャリアの初期は、ほとんど自分の感覚に基づいてトレーニングをしていました。私は普段計画を持っていたものの、毎日『とことんやる』姿勢で取り組んでいました。不運なことに、この取り組み方が私にオーバートレーニングへの片道切符を与え、複数の手術を招いたのです。 この期間、私はHRVを計測していましたが、たいてい無視していて、もしできそうならやるべきだと感じていました。今は、けがから復帰して、バイオフォースHRVで計測できる残留及び潜在的なストレスに注意を払っています。 手術後ストレングスを取り戻そうとする中で、かつて私が容易で自動的だと考えていたオリンピックリフティングとストレングスエクササイズは、今、より多くのストレスをもたらしています。一例として、実際のオリンピックリフトのためにトレーニング強度を上げ始めたら、次のようなHRV表示が記録されました: 私がもっと良いトレーニング状態でもっと多くの量をトレーニングすることができた時、私は前の日のワークアウトでの黄色信号(アンバー)表示を楽だと認識し、次の日またきついトレーニングをしなくてはならないと感じていたでしょう。 この罠にまた陥るところでした。 今回は、私の身体は同じワークアウトから回復するのに、より多くのストレスに満ちた時間を抱えていることが理解できました。バイオフォースHRVは、私がこうなるはずだと考えていることに偏らない客観的な道具です。その代わりに、それは私の身体と心臓が与えているストレス信号を利用し、内面では実際何が起きているのかを伝えてくれるのです。 以前はジムにすぐ戻り、できる限り頑張って無理をしていましたが、今回私は耳を傾け、自分自身を回復させることにしました。 過去を振り返り私のトレーニングを解析してみると、よくない出来事の前にしばしばHRVの変化があったことに気が付きました。下は、腰の怪我をする前の週からの表示です。私の身体は、私がかけたストレスに応えるのに苦労していたのに(複数の黄色信号(アンバー)表示に反映されている)、私はその警告を無視しました。 その結果、私は怪我をしてしまいまったのです。 データを見てものごとをつなぎ合わせてみれば、警告信号となるべきであった傾向をはっきりと見ることができました。私は、向上したければ頑張ってトレーニングをしなくてはならないという感情でバイオフォースHRVが与えてくれた客観的データを遮るという過ちを犯したのです。 二度目にしてバイオフォースを正しい方法で用いることで、私は、身体がよりはっきりとした(そしてたいてい優しくない)メッセージを送ってくるのを長い間待つのではなく、自分の身体に耳を傾け、トレーニングが引き起こしているストレスをうまく管理することができるようになりました。 私は、身体のストレス状態を客観的に計測する道具(バイオフォース)を持っているだけではなく、どのようにそこへたどり着くのかを伝えてくれる道具を持っているのです。 非常にパワフルであり、この組み合わせが私の過去の記録に近づき、願わくば超えるようにうまく準備してくれていると信じています。 ウエイトリフティングのためのトレーニングは、すべてはストレスの問題です。有酸素性から無酸素性への領域で、私は可能な限りほぼ無酸素性に近づいています。それでもなお、バイオフォースHRVは、私の身体の通常のストレス反応に関して、良い日と悪い日共に価値のある情報を提供してくれています。 私はバイオフォースからの警告信号をあまりにも長い間無視して、その結果、代償を払いました。今回私は、測定値に耳を傾けており、今のところ強く健康でいます。客観的に監視し、自身により高い成功の可能性を与えるべく順応しているため、私は目標を達成する自信があります。」

ジョール・ジェイミソン 2634字

ムーブメントトレーニングに欠けているリンク パート3/3

解決策 とても多くのトレーニングプログラムを悩ませている大きな問題について力説してきましたが、どのように修正するかについてお話ししましょう。 幸い、疲れている時にも他の時と同じ原則をトレーニングに適用するので、主に2つの基本原則をトレーニングプログラムに取り入れるだけです: 第一に、運動の質は、低レベルのムーブメントスクリーニング中や動的ウォームアップ中だけではなく、すべての状態において一貫して評価されなくてはなりません。これらのようなツールに価値があることは疑いがありませんが、低レベルでのアスリートの動き方は、彼らの最高スピードの中での動きや最も疲労が高まった時の動きとはほとんど関係がありません。 運動とメカニクスを3つのカテゴリーに分けるのは最も簡単です:低閾値、高閾値、そして疲労です。 低閾値の運動は、力生産を主に遅筋線維に依存する、低レベルで自重の、比較的ゆっくりとした運動で構成されます。 高閾値のメカニクスは、より高いレベルのスピードとパワーを生産させるために速筋繊維が働くことを強いることによって実行されることができます。 しばしば低閾値と高閾値の運動の質の間にはいくらかのキャリーオーバーがあるものの、脳は基本的に低スピードと高スピードの運動の問題には異なって取り組みます。 例えば、多くのアスリートはFMSで良いスコアを出せるのに、実際競技をプレーしている時は比較的よくない運動とメカニクスだったりもします。 これが、低レベルのムーブメントスクリーンは、ただそれだけのことである理由です:一般的なスクリーンは、全体の運動の問題を拾い上げるためのものなのです。これらの類のツールは、決してアスリートの運動についてあなたが知らなくてはならないすべてのことを伝えるようには作られていません。 3つ目のカテゴリーである疲労したメカニクスは、私がちょうど述べたことですが、繰り返せば、低閾値と高閾値運動の間には限られたキャリーオーバーしかありません。 事実、低閾値運動は、運動の連続体の両端にあるために、疲労閾値運動パターンへの移行はほとんどありません。 完全な運動とコンディショニングプログラムは、常にこれら3つのカテゴリーそれぞれにおける運動の質と力学的問題の評価から始まります。 アスリートが疲労している中でどのように効果的に運動を分析するかについての詳細を述べることは、一つの記事の中で取り上げられる域を超えています。 アスリートが疲労している時どのように動くかを評価することの他に、第2の原則は、全てのトレーニングの側面において具体的に運動の質に注目しなくてはならないということです。 これは、ウォームアップ中、最もスピードとパワー生産のレベルが高まるとき、そしてもちろん疲労した時に、運動の質が重視されるべきであるということを意味しています。 事実、あなたはコンディショニングプログラムをただエネルギーシステム、精神的強さ、あるいは他のそのようなことを発展させるための方法として考えるのをやめるべきであり、むしろトレーニングを通して、疲労した状態の中で基本的に運動を向上させる機会として考えるべきなのです。 実際に疲労まで追い詰めていないにもかかわらず、疲労した状態を模擬して適切な運動を発達させることは無理です。 Yet fatigue itself is simply a means to an end; it should never be the sole goal of a conditioning program. Making an athlete tired just for the sake of making them tired serves no purpose and often does far more harm than good. しかしながら疲労自体は単に終了の手段にすぎず;決してそれがコンディショニングプログラムの唯一のゴールであってはなりません。アスリートをただ疲れさせるだけのために疲労させることは何の意味もなく、大抵きわめて有害無益です。 疲労は、運動の向上の目的のためのツールとしてのみ用いられるべきです。 To achieve this, it’s absolutely vital to give the athlete the right feedback. これを達成するためには、アスリートに正しいフィードバックを与えることが絶対に不可欠です。 アスリートに、疲れ始めたらできるだけ速く行けとか頑張れと伝えるのではなく、その代わりに、正しい運動の手がかりを与えることを重視しなくてはなりません。 格闘技選手が疲れ始めたら、コーチは選手に“もっと強くパンチしろ”や“君の持っているすべてを出すんだ”と怒鳴るよりもむしろ、彼または彼女に対して手を高い位置に維持し続けろ、姿勢を維持するんだ、良いメカニクスを使え、などのキューを与えるべきです。 決して、スピードを維持させるためにいい加減なテクニックやメカニクスを使ってもいいという考えを選手に与えないでください。 要するに、アスリートが疲れているとき、強調すべきことは、ただアスリートを出来る限り頑張らせることではなく、いつも運動の質の手がかりを与えることであるべきなのです。 運動の他の領域全てにおいてもそうであるように、疲労状態の中でよい運動パターンを発達させるには、時間と正しいコーチングを要しますが、それによってアスリートのパフォーマンス方法に大きな違いを生み出すことができます。 試合や大会が進むにつれて、運動の質が崩れていったり低下していくのではなく、アスリートは最も疲労が高まった時でさえ、彼らのメカニクスの変化を最小限にしたり排除する能力を発達させることができるのです。 この能力は非常に大きな競争上の優位性を与えるだけでなく、健康で怪我なくあるための重要な要素でもあります。 まとめ コンディショニングは、トレーニング全てにおいてもっとも誤解されているトピックの一つであることに疑いはありませんが、パフォーマンスのために最も重要なものの一つでもあります。 近年、運動の質への注目が高まってきたのを受けて、プログラミングは全体的に向上してきましたが、運動の考え方は、どういうわけか完全にコンディショニングプログラムの外へと置いていかれてしまいました。 頑張ってトレーニングすることに集中し、やみくもな強度で、運動の質など関係なくコンディショニングをただ向上しようとすることは、今日のトレーニングプログラムを悩ませる一つの最大の問題であり、変わらなければならないものです。 あなたがコーチ、治療家、アスリート、あるいはただフィットネスや健康のためにトレーニングしているのだとしても、この変化はあなたから始めることができるのです…。

ジョール・ジェイミソン 2945字

ムーブメントトレーニングに欠けているリンク パート2/3

学習するコンピューター 計算を行い運動とパフォーマンスの問題を解決することができる、脳の信じられないスピード以外で、脳の最も素晴らしい特徴は、学習し適応する能力です。 それは運動とコンディショニングの間のギャップを埋める学習過程です。 これがどのように働くかの核心に迫るために、私たちは、そもそも脳がどのようにその運動パターンを学習し適応するかについて、もう少しお話しなくてはなりません。 例えば、格闘技になじみのない人が、どのようにパンチを繰り出すかを学んでいるのを考えましょう…。 最初、彼らは効果的なテクニックでパンチを繰り出す正しい動き方が、まったく分かりません。事実、彼らはコーチが適切なパンチの運動パターンを実演するまで、何が“良いテクニック”なのかまったく知りさえもしないのです。 この場合、脳が解決しなくてはならない問題は、パンチを繰り出すための適切な運動パターンを導く方法で、全身に渡る何百もの筋肉の発火をどのようにコーディネイトするかということです。 練習を積んでいない目には、ひとつのパンチは単純な動作のように見えるかもしれませんが、実際は、正確なタイミングとコーディネイトされた回旋運動に依存する、非常に複雑な運動パターンなのです。 この運動を学習し完成させるために、脳はフィードバックに依存します。 コーチはアスリートに技術的なフィードバックを与え、やっていることの何が正しく何が誤りなのかを脳が理解する手助けをします。アスリートは他の人たちがパンチを繰り出すのを見て、視覚的なフィードバックも受け、彼らがどのように動いているかを分析することができます。 時間をかけ、数えきれない回数を通して、アスリートのメカニクスは向上し、彼または彼女のパンチはもっと速く、より強く、より正確になります。 脳はどのように正しくパンチを繰り出すか、という問題を解決するために学習をしました;アスリートがもっとパンチを繰り出せば、より多くの運動パターンが脳にしみこむでしょう。 このパンチ動作は、いまや脳内のジェネラルモータープログラムと私たちが呼んでいるものの一部となったのです。 ジェネラルモータープログラムは、脳内の似たような運動のグループを整理する一手段で、そうすることによって、脳は各々のありうるバリエーション全てを個別に保管する必要がなくなります。 脳がどのように時速1マイルで歩くか、どのように時速2マイルで歩くか、どのように時速3マイルで歩くか、あるいは平らな地面ではなく丘をどのように歩いて上るか、などのすべての詳細を学習し保管しなくてはならなかったらと想像してみてください。 わずかに異なる速さでの歩行は、同一の一般的な順序で動く同じ基本的な筋肉群を含んでいるため、これは明らかに学んだ運動を保管する最も効率的な方法ではないでしょう。 場合によって異なる歩行速度を生み出すために、ただひとつの一般的なモータープログラム、基本的な歩行方法を保管し、そしてタイミングのような変数に対し小さな調整をするのは、より理にかなっています。 これらすべてが意味することは、脳は基本的な運動を学び、それらをジェネラルモータープログラムの形式で保管するということです。そして脳は、状況や解決しようとしている特定の運動問題に基づき、どのように適応しジェネラルモータープログラムを変化させるかを学習します。 例えば、急勾配の丘を歩いて登ったり、食料品の重い袋を運びながら歩くことは、平らな地面をジョギングするのとは明らかに異なります。 異なる環境での似たような運動でさえ、脳はそれぞれについて特定のモータープログラムのバリエーションを作らなくてはなりません。オリンピックで満員の人々のスタジアムの前で100m走を走ることは、地元の陸上トラックで何回かスプリントを走るのとは全く異なる状況であり、解決がずっと難しい問題です。 コンディションされた運動 今頃あなたは、この運動と学習についての議論のすべてがコンディショニングと何の関係があるのかと疑問に思っているかもしれません。短い答えは、それは全てがコンディショニングに関わっているということ。 現実は、コンディショニングは運動の延長にすぎず、特定の問題を解決しようとしている脳の試みの一つの例にしか過ぎないのです。 疲労は、脳がトレーニングを通して解決の仕方を学ぶ特定の種類の問題であり、一つの特定の状態でしかありません。 ジムでヘビーバッグに向かってパンチを繰り出すことは一つのことですが、激しい5ラウンド勝負の最後の数分間に疲労困憊している時にパンチを繰り出すことは、脳を考慮する際にはまったく別の問題を表しています。 私が言おうとしていることを明確にするなら、疲労は脳がトレーニングを通して解決の仕方を学ぶ特定の種類の問題であり、一つの特定の状態でしかないということです。 パンチを繰り出す基本的なメカニクスがジェネラルモータープログラムとして保管されているとしても、あなたが疲れているときにどのようにパンチを繰り出すかを学ぶことは、脳が解決するために学習しなくてはならない別な問題を表しているのです。 それでは、脳はこれをどのように学ぶのでしょうか?初めて運動パターンを学ぶのと同じ方法です:主にコーチ、トレーナー、そして視覚的手がかりのような感覚フィードバックからのフィードバックを通してです。 これが、ほぼすべてのコンディショニングプログラムが完全に失敗する部分であり、問題のあるところなのです…。 ほぼどのコンディショニングセッションを見れば、あなたは必ずコーチが“もっと速くしろ、もっと強く投げろ、遅くなるな、やめるな、最後まで頑張れ、止めるな!”という意味の何かを叫んでいるのを聞くでしょう。 それではこの指示の何が問題なのでしょうか?結局のところ、何十年間何千人ものコーチたちによって、このようにコンディショニングプログラムが指揮されてきたわけです。 これが大きな問題である理由は、どのように脳が動きを学ぶかについて話してきた今、簡単に理解できるでしょう。 コンディショニングと疲労に関して、“もっと速く”と叫んでいたり、あるいは時計の残り時間をカウントダウンしているコーチは、文字通り疲労している時にどのように動くかを脳に教えています。 作業量に注目すること、つまりアスリートが疲れ始めるときに、スピードやパワーを維持することは合理的な取り組み方のように見えるかもしれませんが、それが失敗する理由は、脳は今、作業量を主な解決すべき問題として見ているからなのです。 言い換えれば、脳はテクニックと運動の質を犠牲にして、運動のスピードを維持しようとしているのです。 テクニックが完全に崩れ始めていても、コーチやトレーナーはまだテクニックを維持することよりももっと速くし、スピードを維持するためのフィードバックを与えています。 ラウンドの終わりに疲労困憊し、口は開いて手は下がり、いい加減な弧を描くパンチでフェンスに大きく振りかぶっている格闘技選手を想像してください。疲労はこう見えるべきなのではなく、選手がトレーニングで疲れた時の動き方としてこう教わってきたために、このように見えるだけなのです。 これは、疲労が始まった時にどのように速く動き続けるか、という問題を脳が解決しようとする際に起こることです。どのように運動の質とテクニックを維持するかを学ぶよりもむしろ、脳はただできるだけ速く動くことを学ぶのです。 選手が疲労した時、もしコーチが彼らにもっと速く、あるいはもっと強く行けと怒鳴る代わりに、基本的メカニクスに基づいた異なるフィードバックを与えていたならば(例えば手を高い位置に維持したり、姿勢を保つことなどを彼らに思い出させる、など)、彼らが発達させた運動パターンは極めて良いものになるでしょう。 これがコンディショニングとムーブメントトレーニングの両方で欠けている一つの最大のパズルピースであり、まったくうまくいかなくなってしまうところです。 運動の質とテクニックをはじめから終わりまで維持することのできるアスリートは、10回中9回勝つアスリートです。 コーチやトレーナーは、低レベルで低スピードのムーブメントドリルやコレクティブエクササイズを通して、運動の質を向上させようと限りない時間をかけますが、本当に重要な時の運動の質を指導し、向上させることを怠っているのです:アスリートが疲労した時の。 試合は第4クオーターで勝ったか負けたかだ、という古いことわざは真実です。運動の質とテクニックをはじめから終わりまで維持することのできるアスリートこそが、10回中9回勝つであろうアスリートなのです。 先ほど述べた通り、コンディショニングは運動の延長でしかなく、学習した運動パターン、そしてより大きいモータープログラムの一部なのです。そのため、もしアスリートが疲労した際によくない運動をするように教われば、それが試合で彼らが実行する運動の種類になるのです…。 多くの今日のコンディショニングプログラムが行われている方法のせいで、あまりにも多くのアスリートが、あるべきパフォーマンスよりももっと悪いパフォーマンスに終わったり、さらに/また、良くない疲れた運動パターンにより、予防できたはずの怪我に陥ってしまいます。

ジョール・ジェイミソン 3982字

ムーブメントトレーニングに欠けているリンク パート1/3

この数年間で、ストレングス&コンディショニングの現場は劇的な変貌を遂げました。ストレングスがすべてだという唯一の考えでプログラムを作成するのではなく、コーチとアスリートたちは“ファンクショナルムーブメント”のような用語を取り入れ、どのように身体が動き、それがどのようにトレーニングされるべきかをより学ぼうと理学療法士に問い合わせるようになってきました。 手短に言うと、“機能”や“機能不全”は現場において身近な用語になり、世界中のウエイトルームやプログラムはどちらもフォームローラー、ムーブメントスクリーン、そしてコレクティブエクササイズで満たされてきました。 これらのすべてがパフォーマンスを向上したり怪我を予防するのに役立つことには何の疑問もありませんが、何かが欠けているのです… ファンクショナルムーブメントが流行りだしたのとだいたい同じ頃、私はコンディショニングについてのベストセラーの本や数えきれない記事を書いたり、世界中のクリニックやワークショップで講演したり、またエネルギーシステムの専門家として業界に知られるようになり忙しくしていました。 ほとんどの人々が、ムーブメントトレーニングやコレクティブエクササイズをコンディショニングやエネルギーシステムとは全く異なるカテゴリーとしてきて、多くの場合はそれらをトレーニングセッションの両端に置いてさえもいるのですが、この記事で私があなたと共有したいのは、なぜこのアプローチが全くの間違いであるかということです。 さらに、私はなぜ多くのコンディショニングプログラムがしばしば有害無益であるのか、そして実際パフォーマンスを低下させ、怪我を予防するどころか引き起こしてしまうのかを説明しましょう。 同時に、なぜ運動の向上に焦点をあてた数多くのプログラムが、パフォーマンスパズルの大きなピースを欠いているのかもお伝えします。 私がお話ししようとしている原理原則は非常に重要で、文字通りすべてのコーチ、トレーナー、アスリート、そして治療家がパフォーマンスを最大化し怪我を予防したいなら理解しなくてはならないものです…しかしおかしなことに、誰もそれについて話してさえもいません。 この原理原則が何か、そしてどのように働くかについて詳しくお話し始める前に、私たちはどのように身体が動くかをもっと詳細に見ることから始めなくてはなりません… 運動とモータースキル101 いろいろな意味で、人間の身体は本当に運動の驚異です。 650以上の筋肉、何千もの腱や靭帯、そして全てをつなぎ合わせている終わりなき筋膜組織の迷路により、私たちはまさに動くために設計されていると言って間違いないでしょう。 (非常に明確ですが)もしあなたが動けなければ食料を探すことができないし、危険な環境から逃げ出すこともできない、あなたが生き続けて繁殖するために必要なことのほとんどをすることができないわけですから、これは生物学的視点から納得がいきます。 言い換えれば、自然の視点からすれば、運動とはサバイバル(生存)なのです。 たったこの数千年間の間に、人体の運動の目的は、いかに上手にボールをゴールに蹴ることができるか、あるいはいかに速くトラックを走ることができるかを含むまでに広がりました。 運動とコンディショニングの間に欠けているリンク、それは脳です。 サバイバルの方法として運動の主な機能を理解することが非常に重要な理由は、脳が運動を調整するためにどのように働くかの核心を突くからです…。 そして、脳こそ運動とコンディショニングの間の欠けているリンクなのです。 脳は主に巨大な問題解決機械で、直面しているどのような問題についても最良の答えを見つけ出すために、何千ものデータポイントを瞬時に計算することが出来るものです。 運動に関しては、適切な運動反応をコーディネイトするという問題に答えるために、脳はその異なる感覚システムを通して処理する膨大な量の情報を持っています。 例として、ファストボールを打つという問題について運動の視点から考察してみましょう… 表面的には、ボールをバットで打つことは比較的簡単な問題のように見えるかもしれませんが、実は非常に複雑なのです: 打者がボックスに立って投球を待つと、彼または彼女の脳は、投げられるであろう全ての起こりうる投球の種類を予測し始めます。ボールの軌道とスピード、そしてそれを打つために身体がどのように動いていかなくてはならないかをより良く予測できるよう、脳が各投球の可能性を計算します。 一旦ボールが投手の手を離れたら、脳はボールがどのように回転しているように見えるか、どれくらい速く動いているように見えるか、投手の手のどこで離れたかを特定しようと視覚的手がかりを使います。 これらの視覚的手がかりに基づいて、脳は正確にいつ、どこでボールがプレートを交差するかを予測するのです。 一度その予測が立てられたら、脳はボールが実際にプレートを越す瞬間にボールを打つための最良の動き方を計算します。 この計算の一部には、向かってくる投球を予測している間、脳が予期したボールの動き方と比較しながら、実際にボールがどのように動いているかを把握することが含まれます。 詰まるところ、ファストボールを打つのとチェンジアップやスライダーを打つのには、打者は振り方を変えたり異なるタイミングを持たなくてはならないため、脳がボールの軌道やスピードを見い出したら急いで調整しなくてはなりません。 もちろん、脳がより効果的に投球を予測し、いつどこでボールがプレートを交差するかをより正確に計算することができれば、正確に動き実際にボールを打つ可能性は更に高まります。 正しい運動を実行する一つの大きな構成要素は、脳が練習を通して異なる種類の投球に対するスイングをどのように学んだかということでもありますーこの後でもっと詳しくお話ししましょう。 この全過程における素晴らしいことは、これらの計算や予測全てがいかに素早く起こるかということです。 例えば、時速100マイルの速球はたった0.4秒間でプレートに達します。その短い時間の中で、平均的なメジャーリーグ選手は、ボールの通り道を計算して予測し、時速70マイルを超えるバット速度を生み出すのに十分な速さでスイングすることができるのです。 もちろんたった0.4秒間では、打者が意識的に考えたり、これら全ての計算を行う時間はありませんー過程はすべて、何年もの練習や何千ものスイングによって開発された、完全に潜在意識の、反射として起こるのです。 覚えておくべき一つの重要なことは、野球に関しては、脳が運動の問題に対する“正解”を得るのに成功したか失敗したかは非常に明確です:打者がボールを打ったか、あるいは打てなかったか。 この場合、運動の目的は非常にはっきりしています:ボールを打つということ。 メジャーリーグ投手によって投げられた投球を打とうとするユニークな挑戦であるにもかかわらず、平均的選手の脳と身体は、問題を正しく解決し、平均25~30%の確率でボールを打ち塁に出ることができるのです。

ジョール・ジェイミソン 3052字