マイクロラーニング
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スポーツのためのランジの能力を養う方法とは?
ランジはスクワットに比べ、あまり研究がなされていないものの、スカッシュ、バトミントン、フェンシングなどの多くのスポーツにおいて頻繁に起こる大切な動きである。 しかし、いったい何がアスリートにランジを上手く行えるようにしてくれるのだろうか? どの筋肉の動作変数が、ランジの能力を予測するために最適なのだろうか? この研究は、その疑問を詳しく調査するために試みたものである。 研究論文: ランジ動作とその決定要因、クローニン、マクネアー、マーシャル、2003年スポーツサイエンスジャーナル 背景 様々な筋肉動作のパラメーターと、スプリントランニングやジャンプ等の、スポーツの動きやエクササイズとの相関関係の計測は、スポーツの成功のために最も大切な特性を見抜く力を、研究者たちへ与えることができる。 例として、いくつかの研究により、力産出の割合(RFD)は、スプリントランニングと垂直跳び両方のパフォーマンスを予想するのに最適であるとされているため、幾人かの研究者達は、RFDは、スポーツにおける成功のために最も大切な身体的特性であるかもしれない、という説を提案している。 しかしながら、RFDがランジ動作の良い予測要因なのかどうかを調査した研究はほとんど無い。スカッシュ、バトミントン、フェンシングなどの、より専門化したスポーツの動きにとって、ランジの動きは鍵となる特性である。 実際、幾人かの研究者たちは、より経験の長いフェンシング選手の方が、より素晴らしいランジの動き(ランジ中の最大コンセントリック速度よって評価)をすると報告している。 しかし、ランジの動きは、負荷の無い垂直跳びやスプリントランニングに比べ、よりゆっくりとした動きであるため、最大力産出やパワーの方が、RFDよりも重要かもしれないという可能性もある。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ランジ動作の予測に最も適している、筋肉動作の生体力学的要素を突き止めようと考えた。そのため、彼らは、下肢の動きを伴う様々なスポーツを行っている31名のアスリートを集めた。 背臥位スクワットマシンテスト 研究者たちは、下肢の力産出とRFDをテストするために、線形変換器を設置した特注の背臥位スクワットマシンを使用し、90度の膝の屈曲における、両脚での最大動力とパワーの最高値を測定した。 力の最大値を測定するために、研究者たちは1RMを評価し、出力の最大値を測定するにあたり、被験者が可能な限り爆発的な動きを行えるよう、1RMの50%が使用された。 ランジ動作テスト 研究者たちは、また、別の線形変換器を被験者それぞれの胴体に装着し、脚の長さの1.5倍という、標準的な歩幅を使ったランジを行う際の、水平変位とその変位の速度を測定した。 *** 何が起こったのか? 基本測定 研究者たちは、両脚での1RM背臥位スクワットマシンテストを行った際の、被験者の平均最大力は、127 ± 36kg もしくは体重の1.65倍であったと報告した。 両脚での1RM50%での背臥位スクワットマシンテストでは、平均のパワーは364 ± 96.8W であり、平均のピークパワーは932 ± 258W であったと報告されている。 最終的に研究者たちは、おそらくスクワットでの負荷が理由であろうが、ランジにおける最大動作速度は、1RMの50%で行った背臥位スクワットにおける最大動作速度よりも、はるかに速いと報告している。この速度測定の結果は、下記のグラフで示されている。 ランジ動作の予測要因 研究者たちは、解明された分散の55%以下の割合しか占めていないにも関わらず、(ランジを行っている際の最大コンセントリック速度を評価)ピーク力までの時間が、最適なランジ動作の単体予測要因であったと報告した。これは様々な要因がランジ動作に対して重要であり、その要因は人により様々であり得るということを示唆している。 研究者たちは、3つの変数を含むモデルにおいては、絶対的なランジ動作の予測に最適なのは、各個人のランジ動作において変数の85%を占める、ピーク力までの時間、脚長と柔軟性の組み合わせであると報告した。 研究者たちは、3つの変数を含むモデルにおいては、体重を標準化したランジ動作の予測に最適なものは、各個人のランジ動作において変数の76%の割合を占める、ピーク力までの時間、平均背臥位スクワットパワー、そして体重を標準化した背臥位スクワット最大力の組み合わせであった、と報告した。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、背臥位スクワットマシンにて得られた変数の中で、RFDの代わりとなるランジ動作の単体予測要因は(ランジ中の最高コンセントリック速度によって評価)、ピーク力までの時間であると結論付けた。そのため彼らは、高速伸長一短縮サイクルの能力を向上させるための方法は、ランジ動作を向上させるのに最も有効である、という結論を出した。 しかし、研究者たちは又、ピーク力までの時間は各個人のランジ動作の変数の55% にしかあたらず、このことは、1つの生体力学的測定がランジ動作の仕組みを網羅することは不可能であると示唆している、と結論づけた。 研究者たちは、ランジ動作を予測できる唯一の力のパラメーターが、相対的測定であったため、このことは相対的筋力が絶対的筋力よりも、より重要であり、体重の重さは不利に働くかもしれないということを示唆している、と観察した。そのため、彼らはランジ動作を向上させるためのレジスタンストレーニングの方法として、筋肥大よりも、むしろ神経の適応に重きを置くべきであると提案している。 研究者たちは、ランジ動作はいくつかの異なった筋動作変数に依存しているため、リハビリの専門家は受傷後のスポーツ復帰を決定する際、1つの生理力学的な測定に頼るべきではなく、パワー、相対的最大力、最大力までの時間、を含むいくつかの要素を測定するべきであると提案している。 同様に、これは、特にランジ動作を含むスポーツにおいて、ピークパフォーマンスに向けて選手をトレーニングする際、コーチは、パワー、相対的最大力、最大力までの時間の質を向上させるためのトレーニングに重きをおくべきであり、他の要素を考慮することなく1つだけの質に集中するべきではない、と示唆している。 *** 制限要素は何か? この研究には、被験者にあまり馴染みがないであろう、特注の背臥位スクワットマシンを用いてスクワットを行う際に生体力学的変数の測定が行われた、という点において制限があった。 更にこの研究では、被験者の過去のレジスタンストレーニングの経験が明らかでなかったため、彼らはトレーニングされていないと仮定されていた。それ故、レジスタンストレーニングの経験を持つ被験者では、異なる結果が観察されたかもしれない。 同様に、すべての被験者たち全員が、スカッシュ、バトミントン、フェンシングなどの、ランジの動作を多用する同一のスポーツを行っているわけではなかった。もし被験者が単一のスポーツから選ばれていたら、異なる結果が得られたかもしれない。 最後に、この研究は、どの筋肉動作の特性が最も良いランジ動作の予測要因となるかを明らかにはしたものの、それらの特性を向上することが、ランジを行う際の、最大コンセントリック速度の向上につながるのかどうか、ということの証明とはなっていない。 *** 実践的な意義は何か? アスリートに対して: ランジの能力を向上するために、アスリートはまず、力の発生率を向上させることに集中するべきであり、それは、高速低負荷のトレーニング、プライオメトリックストレーニング、そして様々な種類のレジスタンストレーニングを含む、いくつかの方法を使用することで成し得ることができる。 又、アスリートは、ランジの能力を発達させるために、パワーと最大相対力の生産能力を向上させるためのトレーニングを行うべきである。これらは、高速低負荷のレジスタンストレーニング、プライオメトリックストレーニング、様々な種類のレジスタンストレーニングと、低速高負荷のレジスタンストレーニングを組み合わせることによって成し得ることができる。 ランジ能力を向上させるための筋力を発達させようとする場合、アスリートとコーチは、神経適応を高めることに集中し、高い相対筋力を維持するために、必要以上の筋肥大は避けるべきである。 リハビリの専門家に対して: 臨床医やストレングスコーチは、ランジの動きを常に行うアスリートに対して、一つの生体力学的測定に頼り、怪我からの復帰を決定するべきではなく、パワー、相対最大力、最大力までの時間等を含む複数の要素を測定するべきである。
肘がストレングス&コンディショニングプログラムデザインに関して伝えてくれること
2~3年前クレッシーパフォーマンスで行ったイベント「プロと過ごす夜(ナイトウィズプロ)」の初回に、私達とオフシーズンにトレーニングをしている15人のプロ野球選手達と円卓に座り、彼らのキャリア、長期発達におけるアプローチ、大学のリクルーティングプロセス、シーズン中における週毎のルーティーン、その他のトピックについての質問に答えてもらいました。 15人の選手に登壇してもらいましたが、同じようなストーリーは二つとなく、成功への道のりは皆それぞれ異なるものでした。それに応じて、私のライブデモンストレーションの時間になった時、私は全ての腕におけるユニークな性質について−そしてちょっとした肘の評価が全身のストレングスコンディショニングプログラムで何をする必要があるか、多くの情報を提供してくれるということを強調したいと思いました。 何よりも、ちょっとした「ショッキングな価値観」として、私はトミージョン手術後のリハビリ中に、伸展が完全に取り戻せなかったプロ選手に協力してもらいました。翌日、参加した多くの若い同席者と話をしましたが、内側部に沿って存在する「ジグザグの」傷跡と25°の屈曲拘縮は、腕のケアにもっと真剣になる必要があると、彼らの目を覚まさせるものだったようです。 私達は関節における一般的な先天的弛緩と特定の弛緩を、ベイントンスケールで評価することができます。このスクリーニングには5つのテストを用い、そのうち4つは片側ずつ行います。 肘の過伸展>10°(左右両側) 膝の過伸展>10°(左右両側) 親指を屈曲させ前腕に触れる(左右両側) 小指を手の他の部位と共に>90°の角度で伸展させる 膝を曲げずに両方の手のひらを床につける つまり、とても弛緩している状態であれば最大で9ポイントになります。これは男性よりも女性によくみられ、弛緩の発生は、フットボールやアイスホッケーといったものよりも、水泳、野球、体操競技、そしてテニスなどのスポーツ(可動域がある方が優位なもの)において、より顕著にみられます;ある程度は単に自然な選択とも言えるでしょう。 冒頭で私は、肘の評価だけで(私の見地では他の多くのものに比較して、これは最も素早く簡単な手法なのです)ストレングスコンディショニングプログラムを作成する際に何を優先すべきかに関して沢山のことがわかる、と述べました。週ごとに遭遇するシナリオは、たった4つだけなのです。 覚えておいていただきたいのですが、リハビリ業界で行われている関節のエンドフィール(最終稼動域における施術者側の感覚)の記述は私が例としてあげているものよりかなり詳細なもの(そして各関節特有のもの)です;専門家ではない方にとっても、ユーザーフレンドリーなものにしたいと思い下記の例をご紹介します。最初にご紹介するシナリオは、肘の過伸展です: 通常、肘の過伸展におけるエンドフィールは非常に柔らかい、もしくは“カラッポ”な感じがします−より過伸展させたら前腕が抜け落ちてしまうかのような感じです。このような場合、高い確率でその人は高いベイントンスコアを持ち、その人に対して(もし必要であるとしても)−特に上半身に対して(肩で上方へ200°のトータルモーションが起こると予測もできます。)あまりストレッチする必要がないということがわかります。 もちろん、他にも具体的、及び一般的なスクリーニングも更に行い、このハイバーモビリティー(過剰運動性)は肘特有のものなのか、上半身、それとも全身によるものなのかを判別していきます。 通常、こういった人達には、スタビライゼーションエクササイズが必要になります − ですから充分なストレングストレーニングが望ましいのです。残念ながら、多くの人は自分が得意なことを続けたがります。ですから、先天的弛緩が顕著な方がヨガのクラスを渡り歩き続け、なぜ腰が痛むのか不思議がるということは良くあることです。これは単に、不安定な身体を何度も何度も最終稼働域に持ち込んでしまっているために起こることなのです。 特定のヨガエクササイズは、ある人には非常に有益なものだと思います、しかしながらこのような先天的弛緩を持っている人がアプローチするには注意が必要です。そして、もちろん若い体操選手を人間の形をしたプレッツェルにしようとするのも、長期的な健康を考えると良いアイデアではないでしょう;一人のオリンピック選手に対して、10,000人の子供が脊柱に疲労骨折を負っているのです。 これを踏まえて、高いベイントンスコアを出しながらも上手に動けないという人の場合、私の考えでは4つのシナリオがあり得ます。 初めに、そして最も明らかに、加重されない限り症状が出てこない怪我があり得ます。このようなケースに関しては医師の診察を勧めます。 次に、“全体的に”不安定で、指導されている動きに対して、単に慣れと強さが必要な人達もいます。ランジのボトムポジションに降りられる柔軟性があるからといって、そのポジションを保持できる適切な関節安定性があるということにはなりません。前述のように、各関節が理想的に動くためには、隣接した関節に適切な剛性(安定性)が必要なのです。 三つ目には呼吸の問題(例えば骨盤が前傾し肋骨が開いている人達)もしくは軟部組織の制限(あまりありそうにないのですが、起こるのです)があるのかもしれません。こういった問題はベイントンスコアのみでは明らかにならないかもしれません。なぜなら充分にリラックスしている時には、受動的関節可動域を“ごまかす”ことができるからです。 例として、私は、内転筋が恥骨に付着する部位の軟部組織が乱雑に繊維化している状態でありながらも、素晴らしい外転可動域を持つ人を見たことがあります。 四つ目に、私は足首以外の全身至るところに過剰運動性を持つ人を何人も見てきました。これは何年にも渡ってハイカットのスニーカー、ハイヒールや足首のテーピングで足や足首を完全に破壊してしまったからかもしれません。 また、これは、以前に起こった足首の捻挫が正しくリハビリされなかったことにより、保護するために痙攣が起こっているからかもしれません。または重心がかなり前方にシフトしたことにより(前述した姿勢の歪みによるもの)単に足底屈筋がシャットオフできなくなっているのかもしれません。 ですから、これが短縮なのか(受動的背屈の計測、もしくはウォールアンクルモビリティーテストを行いましょう)もしくは硬直(カウンターバランスによって−ゴブレットスクワットのように−背屈が増すかどうか確かめましょう)なのかを決めるのは皆さん自身です。 次は肘の全伸展、筋肉的なエンドフィール - これは全伸展位において、“からっぽ”な、エンドフィールがないものです;ゆったりと筋肉をストレッチします(肘の屈筋)。 これは恐らく一般の人々に最も良くあるパターンで、通常同量のモビリティーとスタビリティートレーニングの必要性があることが予測できるでしょう。さらに評価を行うことで、どこに重点を置くべきかの情報を得ることができます。 不完全な肘の伸展、骨っぽいエンドフィール - これらは多くの場合、手術後に肘の伸展が完全に戻らなかったケースです。もしくは骨棘が関節下にあり肘の伸展を阻害しているのかもしれません。 大胆な憶測ですが、こういった人々はほぼ確実に(私の経験上) 他の部位に明らかな制限を持つアスリート達です。不十分な肩関節のモビリティー、ローテーターカフの機能、肩甲骨の安定性、胸椎のモビリティー、そして質の悪い組織といったものはすべて、肘に現れている症状の起因となるものになり得ます。 ですから、私がこのように「お粗末な」肘を目の当たりにし、触診した時、通常何をするべきかすぐにわかります。通常、かれらには、沢山のモビリティートレーニング、軟部組織へのワーク、呼吸のドリル、そして長い時間をかける静的ストレッチが必要になります。 その上で、肘自体に関しては、彼らが持っているもの全てを維持することを認識する必要があります。もし骨の変異により伸展が10°欠けている状態であれば、恐らくなんとかやり過ごすことができるかもしれません。しかしその10°が軟部組織の短縮/硬直が加わることで30°になってしまったとしたら、より大きな問題がやってくるのを待っているようなものです。 そのためにも、私はいつも彼らに、今ある肘の伸展を保つために習慣的な軟部組織に対するワークとたくさんの静的ストレッチを行うように声かけをしています。 不完全な肘の伸展、筋肉的なエンドフィール - この人達は前のカテゴリーによく似ていますが、エンドフィールにもう少し“遊び”があります;それは“コンクリートとコンクリート”のようなエンドフィールではありません。 これはご存知の通り、取り戻すことができるのでとても良いことです。例えばこの選手は、私たちのマニュアルセラピストによる、ほんの数分のグラストンテクニックのトリートメントとフォローアップのストレッチを行うことで15°の肘の伸展を取り戻しました。 毎回のトリートメントで、このような改善を100%保つことを期待しているわけではありませんが、このコースを3−4回繰り返した後には、この選手があるべき状態までたどり着くことができるでしょう。 肘の伸展不足が単独で起こることはほとんどなく、同じようなことが身体の他の部位で起こると考えられます。投擲の選手においては、通常投げるサイドの肩関節の内旋不足、前脚の股関節の内旋不足、そしてその他の固さ/短縮の問題が伴います。一般の人達においては身体中が固まってしまっている人たちに見受けられます - 特に一日中座ってコンピューター作業をしている人達に。
スクワットにおける足幅は筋活動へどのように影響を及ぼすのでしょうか?
多くの筋電図による研究は、バックスクワットにおいて、ハムストリングスがアクティブに活動していないことを示しています(例として、エベン, 2009年, ライト, 1999年, マッコウ, 1998年 and パオリ, 2009年)。筋電図での活動はいかに筋肉が活発に活動しているかを示す良い指針とされているため、この結果は、バックスクワットがハムストリングの発達にとっての最適な選択ではないということを示唆しています。 しかし、足幅はスクワット中のハムストリングスの活動量に影響を及ぼすのでしょうか?この研究は、それを解明しようと試みたものです。 研究論文: パラレルスクワット中の脚の筋活動へ対する足幅とバーの負荷の影響、マッコウ、メルローズ、1998年スポーツ&エクササイズの中の医学&サイエンス *** 背景: 研究者たちが研究を行っていた当時、足幅に関するほとんどの疑問は、ボディビルダーたちによって提起されていました。主な疑問は、ハムストリングスの活動に違いがあるのかどうかというものはなく、大腿四頭筋の個々の筋肉において、活動レベルに違いがあるのかどうかということでした。 実際、様々なボディビルディングの雑誌においては、足幅をコントロールすることによって、ある程度大腿四頭筋の異なった部位を強化することができると主張されてもいました。 具体的には、広い足幅は内転筋群と内側広筋を活性化し、狭い足幅はより外側広筋を活性化すると信じられていましたが、これらの主張がなされた当時、それ以前に、これが事実か否かを検証するための研究はなされていませんでした。 *** 研究者たちは何をしたのでしょうか? 研究者たちは、異なった足幅で、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、長内転筋、大腿二頭筋、大臀筋の筋電図による活動を調査したいと考えていました。彼らは7 ± 2年のレジスタンストレーニングの経験を持つトレーニングされた男性9名を集めました。彼らのスクワットの1RMは118 – 250kgでした。 研究者たちは、被験者が1RMの60%と75%でスクワットを行っている間に表面電極を使ってこれらの筋肉の筋電図での活動を測定しました。被験者はそれぞれの負荷で3つの異なった足幅:狭い(肩幅の75%)中間(肩幅)広い(肩幅の140%)でのスクワットを実施しました。被験者は各自、股関節の開き具合等によって、心地の良い足の位置を選択することが許されました。 研究者たちは、それぞれの筋肉の最大随意等尺性収縮(MVIC) への筋電図を正規化しませんでした。最大随意等尺性収縮(MVIC) への筋肉の活動を正規化することによって研究者たちは、その最大能力に対して筋肉がどれほど活発に活動しているかを知ることができるにも関わらず、彼らは単に値をミリボルト(mV)で記録しました。これは明らかに不利益といえます。 他の筋肉群よりも、より多くの脂肪で覆われている筋肉群においては、脂肪が筋肉のテストの妨げとなり、筋電図の値が低く表示されます。それ故、電圧(mV)の数値のみを見ても、様々な筋肉の相対的な筋電図の活動に関しての、強固な結論を引き出すに十分な情報を与えてくれることにはなりません。しかしながら同じ筋肉の、異なる状態(足幅)においての筋電図の活動を比較することは可能です。 *** 何が起こったのでしょうか? 1RMの60% の負荷にて 研究者たちは、下記のグラフで表されている通り、狭い、中間、広い足幅でのスクワット中、どの筋肉においても筋電図の活動に著しい違いはないことを発見しました。 加えて、グラフが示す通り、1RMの60% の負荷においては、より多数の被験者をテストすれば、明らかな影響があったかもしれない、と示す傾向さえも見当たりませんでした。さらに筋電図の活動レベルは正規化されなかったにも関わらず、ハムストリングスや大臀筋と比較して、大腿四頭筋の筋電図の活動レベルがいかに大きかったかが記述されていたということは有益です。 1RMの75% の負荷にて 研究者たちは、下記のグラフで表されている通り、狭い、中間、広い足幅でのスクワット中、大臀筋以外の、どの筋肉においても筋電図の活動に著しい違いはないことを発見しました。 詳細には、研究者たちは、1RMの75% の負荷における大臀筋の活動は、狭い足幅よりも広い足幅での方が明らかに大きいことを発見しました。しかしながら、広い足幅と中間の足幅の間、そして中間と狭い足幅の間には著しい違いはありませんでした。 足幅による筋電図の活動における違いは、多くの研究が示しているように、大臀筋の繊維が、その長さが長い時よりも短い時により活発に活動する傾向にあることに起因しているようです。広い足幅をとることで、股関節は大きく外転し、大臀筋は短縮します。また、広い足幅をとることで、股関節は通常外旋する傾向にあり、これによって筋繊維は、また短縮します。 *** 他の研究結果の調査 この研究の結果は、パオリ(2009年)によって行われた同様の研究によって支持されています。この研究において、研究者たちは3年間のレジスタンストレーニングの経験を持つ6名のトレーニングされた男性被験者たちの、内側広筋、外側広筋、大腿直筋、半腱様筋、大腿二頭筋、大臀筋、中臀筋、大内転筋の筋電図の活動をテストしました。 研究者たちは3通りの足幅(左右の大転子間の距離の100, 150, 200%)と3つの負荷(1RMの 0, 30 、70%)をテストしました。1RMの70%において、ここでも、研究者たちは、大臀筋のみがそれぞれの足幅間で筋電図の活動の度合いにおいて著しい違いを示したことを発見しました。このテストにおいても、同様に、広い足幅が狭い足幅よりもより大きい筋電図の活動を表しました。下記のグラフはその結果を表しています。 ここでも又、筋電図の活動レベルは正規化されなかったにも関わらず、ハムストリングスや大臀筋と比較して、大腿四頭筋の筋電図の活動レベルがどれほど大きかったかが記述されていたということは有益です *** 研究者たちはどのような結論をだしたのでしょうか? 研究者たちは、バックスクワット中の足幅は、大腿四頭筋やハムストリングスの筋活動の割合に影響をおよぼさない、という結論に至りました。しかしながら、彼らはより広い足幅は大臀筋の活動の増加につながると記述しています。 *** 制限要素な何なのでしょうか? 上に記述されている通り、研究には、それぞれの筋肉の最大随意等尺性収縮(MVIC) への筋電図を正規化しなかったということにおいて制限がありました。むしろ彼らは、単に値をミリボルト(mV)で記録しており、これには明らかな不利益があります。他の筋肉群よりも、より多くの脂肪で覆われている筋肉群においては、脂肪が筋肉のテストの妨げとなり、筋電図の値が低く表示されます。それ故、電圧(mV)の数値のみを見ても、様々な筋肉の相対的な筋電図の活動に関しての、強固な結論を引き出すに十分な情報を与えてくれることにはなりません。 *** 実践的な意義は何でしょう? ボディビルダーやフィジークアスリートに対して: スクワット中に異なった足幅を使うことは、優先的に大腿四頭筋の異なった部位を強化することにはなりません。それゆえ個々の大腿四頭筋に刺激を与えるには他のエクササイズが必要かもしれません。 スクワット中に広い足幅を使うことは、大臀筋の活動を増やす助けになるかもしれません。これにより、スクワットを大臀筋の強化の方法としてより有益に使うことができるかもしれません。 パワーリフターに対して: 広い足幅でのスクワットは、より大臀筋を使うためにパワーリフターにとっては有益だと証明できるかもしれません。
腰痛のケアと予防のためのDVRTトレーニング
人口の80%の人が、経験する腰痛。DVRTのプログラムを使って、股関節の可動性を向上させ、臀筋やハムストリングス、体幹の筋肉群が適切に働くように動きのトレーニングを行うことで、腰痛を予防したり、ケアをしたりするためのアイデアをご紹介します。
怪我からストレングストレーニングへの復帰
怪我をした人々を診る機会や指導する機会があれば、必ず患者やクライアントから「怪我をした後はどのように運動を再開していくのか」という質問を受ける時があるでしょう。すでにフィットネスや筋力トレーニングの経験がある人ならば、怪我の程度によっては、トレーニングへの復帰はそんなに難しいものではないかもしれません。このようなクライアントには、単に個人それぞれの怪我に対するプログラムの調整の仕方を示す、道しるべがあれば良いのかもしれませんが、同時に、私はこの機会を、クライアントに理想のプログラムとはどのようなものかを教える場としても利用しています。 しかし、実際にはフィットネスや筋力トレーニングの経験がない人が、怪我をしたことを運動を始めるための発奮剤として使うことの方がよくあります。素晴らしいことですね。 これから筋力トレーニングを始める人や、怪我から復帰してプログラムを始めるという人にはまず、プログラムを注意深く吟味して、それぞれの怪我に合わせてプログラムを調節してあげることをお薦めします。 良いストレングストレーニングの要素 私はまず、プログラムの総体的な構成要素をみて、フィットネスや筋力トレーニングの評価をします。準備、実践、トレーニングからの回復の、どの側面においても成功するのに必要な一定の要素が含まれていることを確認するのです。 筋力トレーニングの初心者には、これが、成功して運動を続けることができるか、失敗してソファに戻ってだらけてしまうかの明暗をわけるともいえます。 これは怪我からトレーニングへの復帰を目指す人にとってはさらに大切です。プログラムが過度すぎれば、怪我を再発させたくないと思うのは当然です。 私がプログラムに求める要素は以下の通りです。 自己筋膜リリーステクニックとダイナミックなモビリティーエクササイズで構成された、良いウォームアップ トレーニング中に適切に発火できるように、特定の筋群を”活性化”するエクササイズシリーズ レジスタンストレーニングを主としながら、同時に可動性とコーディネーションも向上できるエクササイズの組み合わせ 栄養情報を含む適切な組織の再生戦略 必要性、目標、経験に応じて、個々にとって適切なプログラムを作るための選択オプション 次に私が評価するのは、エクササイズの選択や、順序、ピリオダイゼーションなど、プログラムそのものです。2週間もの間、歩けなくなってしまうような、馬鹿げたエクササイズや構成を含んだプログラムは、筋力ストレーニングをこれから始める人や、怪我からの復帰段階にある人々にとって逆効果です。 残念なことに、世間に出回っている人気エクササイズの中には、利点よりも害をもたらしているものも多くあります。エクササイズが効果的であると同時に不利益を起こさないことを確かめるのに、単純なリグレッション(後退)とプログレッション(漸進)を応用することができます。これには純粋に、技術、運動科学の知識、そして、その人に何が効果があり何が効果がないのか、の理解が必要となります。 本音をいえば、この時点でのこのようなグループの人々のプログラムはシンプルであってほしいと思います。もし派手なエクササイズバリエーションによってプログラムが過度に見えてしまえば、それは怪我からの復帰を試みている人にとって最善なプログラムではないでしょう。
レジスタンストレーニングは、前十字靱帯損傷の生体力学的危険要因を減少させることができるか?
多くのストレングス・コンディショニングコーチが傷害予防としてレジスタンストレーニングプログラムを取り入れている。コーチが女性選手に対して予防しようとしている一般的な外傷は、前十字靱帯(ACL)の損傷である。 しかし、レジスタンストレーニングは、ACL損傷の危険要因を減らすことができるのだろうか? この最近の研究はその議題に光を当てた。 バーティカルドロップジャンプ時の、股関節と膝の運動学に対する短期的なレジスタンストレーニングの効果、マッカーディ、ウォーカー、サックス、ウッズ、ストレングス・コンディショニングリサーチジャーナル2012 *** 背景: 過去の研究者たちの多くは、女性選手は男性よりも、よりACLを損傷する傾向にあると認識していた。実際に研究では、同じスポーツを行った場合、女性は男性よりも3-4倍ACLを損傷する可能性が高いであろう、と示している(例:グリンドスタッフ2006年)。 そのため、多くの研究者たちが、女性が男性よりもACLを損傷する危険性が高い理由を見つけようとしてきた。女性は男性に比べ、着地時の膝と股関節の屈曲が少なく、膝の外反の角度がより大きい傾向にあるということが、多くの研究によって発見されていたことから、何人かの研究者たちは、その理由は、爆発的な下半身の運動を行う際の、脚関節角度の動きの違いに関係があるのではないかと示唆した。 ジャンプからの着地における、このような関節角度のパターンは、ACLへの負荷の増加につながる可能性がある。より短い角度の可動域において、同程度の減速の努力が必要とされ、より関節の硬さが必要になる。これにより力がより大きな関節可動域で吸収されるような着地と比較すると、より衝撃の強い着地を生み出すこととなる。 女性が、ACLへの負担の多いこれらの動きのパターンを使う理由として、女性は男性よりも下腿部の筋力が劣るから、という理論がある。実際に下肢の筋力レベルの低さは、ACL損傷の危険因子として報告されている。そのため、レジスタンストレーニングは、ACL損傷の予防として一般的に処方されている。しかしながら、ストレングストレーニングが、実際に爆発的な動きにおける下肢の関節角度を変更できるか否かに関しては明確ではない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ドロップジャンプからの両脚、片脚での着地において、荷重負荷レジスタンストレーニングが、女性選手の股関節及び膝の屈曲、そして膝の外反角度に与える影響を調査しようと考えた。 対象者は誰か? 研究者たちは、趣味でスポーツを行っている27名の女性を集め、レジスタンストレーニングのグループと、下半身のレジスタンストレーニングを行わないコントロールグループに分割した。被験者は様々なスポーツ(サッカー、バスケットボール、バレーボール、ソフトボール)を少なくとも1週間に1度のペースで行っており、1年以上のレジスタンストレーニングの経験を持っていた。 研究者たちは何を測定したのか? 8週間に渡るレジスタンストレーニングの前後に、研究者たちは、被験者が片脚、両脚、両方でのドロップジャンプ実施時に計測を行った。片脚でのドロップジャンプは30センチの箱から行われ、両脚でのドロップジャンプは60センチの箱から行われた。 研究者たちはビデオカメラを使用し、股関節と膝の関節角度の動きを測定した。彼らは膝の外反、膝及び股関節の屈曲角度の最大値と平均値を記録した。 レジスタンストレーニングのグループはどのようなトレーニングを行ったか? レジスタンストレーニングのグループは、8週間に渡り1週間に2日、フリーウェイトエクササイズを取り入れた、リニアに期分けされた下半身のプログラムを行った。プログラムの基盤は、両脚でのバックスクワットとルーマニアンデッドリストであったが、トレーニング期間の中盤で片側性のエクササイズが追加された。 被験者は、セット間及び様々なエクササイズの間に2-3分のレストを入れ、全てのエクササイズを2-4セット行った。片側性のエクササイズには、バーベルとダンベルの負荷を使用した、ランジと高さ30.5cmのボックスステップアップが含まれていた。負荷のプロトコールは1RMの50-85%の範囲であった。 *** 何が起こったのか? 関節角度の変化 研究者たちは、 8週間レジスタンストレーニングを行わなかったコントロールグループにおいては、両脚でのドロップジャンプ中の膝の屈曲が著しく減少し (82.4 ± 3.9 から69.6 ± 5.2 度) 、その一方で、レジスタンストレーニングのグループにおいては、膝の屈曲が著しく増加 (77.2 ± 4.1 から83.2 ± 3.7度) したことを報告した。 全ての関節角度における平均の変化は、下記のグラフに表されている。 全体として、唯一の著しい変化は、コントロールグループでは、両脚でのジャンプの着地時に膝の屈曲が減少したこと、そして、レジスタンスグループでは、同じく両脚でのジャンプの着地時に膝の屈曲が増加したことである。しかしながら、それほど著しくない傾向もまた参考となる。 コントロールグループは、片脚、両脚のジャンプ時共に膝の外反が増加し、膝と股関節の屈曲が減少するという傾向を示した。コントロールグループの被験者も又、1年以上のレジスタンストレーニングの経験がある人たちである為、この研究は、根本的にはこのグループにおいては、脱トレーニングの影響を記録しているということを記述する価値があるだろう。 一方、レジスタンストレーニングのグループは、片脚、両脚のジャンプ時共に、(両側の膝の外反ではなく)片側の膝の外反が減少し、膝と股関節の屈曲が増加するという傾向を示した。そのため、総合的に、レジスタンストレーニングのグループは、ACLへの負荷を減少するのに有益である(前頭面での可動域の減少と矢状面での可動域の増加)という傾向を示し、その一方で、コントロールグループは、潜在的によりACLにリスクを持つ(前頭面での可動域の増加と矢状面での可動域の減少)という傾向を示した。 膝の屈曲の可動域が、レジスタンストレーニング後著しく増加した一方、股関節の可動域は増加しなかったということは、興味深いことである。このことは、プログラムに股関節主導(ルーマニアンデッドリフトとランジ)と膝主導(スクワットとステップアップ)のエクササイズが両方含まれているにもかかわらず、着地のコーディネーションが変えられ、より膝主導になっているということを示唆しているのかもしれない。 女性が膝主導のパターンで着地する傾向にある、ということは、以前の研究においても観察されており、これらの結果が男性に対しても観察されるかどうかは明らかでない。股関節の外旋と外転を組合わせた、完全に股関節主導のエクササイズのプログラムが同様な結果をもたらすのか、それとも異なる結果をもたらすのかを調べるのは興味深いであろう。 両脚と片脚でのジャンプの違い 研究者たちは、コントロールグループ、レジスタンストレーニングのグループ共に、膝の屈曲、股関節の屈曲、膝の外反の最大値と平均値の両方に関する限り、ドロップジャンプ中の両脚の測定値は片脚の測定値よりも著しく大きかったと報告している。 これらの片脚と両脚での結果は、膝と股関節における矢状面の角度の平均値と最大値が、両脚でのジャンプにおいてより大きかったことを明らかにしている。これは、同じ高さから飛び降りた時、両脚での着地の方が片脚での着地よりもより柔らかく着地することができるということを示している。これは当然のことのようだが、とても重要な情報である。 この観察を基にすると、片脚で着地することが多い選手は、柔らかく着地し、関節にかかる負荷を減少させるために脚を強化する必要がある。特に女性は、このような状況において、ACLへの負荷を減少させるために脚の筋力が必要である。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、フリーウェイトのレジスタンストレーニングによって、選手はより大きな膝の屈曲を伴い、柔らかく飛び降り着地することが可能になる、と結論づけた。彼らは、下半身の筋肉群を、着地時の負荷を吸収するように向上させることにより、レジスタンストレーニングはACL損傷の危険を減少させるであろうということを示唆している、と提言した。 研究者たちは、ドロップジャンプ時の股関節の屈曲と膝の外反を改善する為には、レジスタンストレーニングと組み合わせて、他のトレーニング方法が必要かもしれないとも提案している。しかしながら、股関節の屈曲においては、膝関節の屈曲のような際立った傾向は見られないため、股関節において同様な効果を生み出す為には、より長期間にわたる、あるいはより高強度の股関節主導のトレーニングが必要かもしれないと示唆している。 *** 制限要素は何か? この研究には、下記のようないくつかの点において制限があった。 研究は女性選手を対象に行われた為、男性選手では異なる結果が得られたかもしれない。 研究は8週間のみ、特に被験者は1週間のうち2回のみしかレジスタンストレーニング行わなかった為、もっと長期での研究がなされたら、さらに顕著な結果が得られたかもしれない。 研究者たちは、関節角度のみを記録し、関節モーメントや筋電図の活動を記録していないが、それらの記録があれば、ドロップジャンプ中に何が起こるかに関する全体像を、より包括的に提供することができたであろう。 ドロップジャンプは両脚で60センチの箱から、そして片脚で30センチの箱から行われたが、選手たちは、いつも両脚でジャンプし両脚で着地するわけでも、片脚でジャンプし片脚で着地するわけでもなかった。加えて、両脚でのジャンプは片脚でのジャンプの半分の高さにしか満たない。この相違により、片脚と両脚のジャンプからの着地のデータは、現実として直接的な比較対象とはなり得ないかもしれない。同じ高さの箱からのジャンプ時の関節角度の動きを考察することによって、よりよい比較が得られたであろう。 その研究は行われたスクワットの方法やスタイルが明記されていなかった。それ故、レジスタンストレーニングの間、膝の外反が観察されていたかどうかを知るのは不可能である。 行われたトレーニングは、股関節主導のエクササイズは一種のみであり、純粋な前額面や横断面の股関節の強化トレーニングは全く含まれていなかった。より多くのエクササイズが行われていれば、また違った結果が得られたかもしれない。 *** 実践的な意義は何か? 女性選手に対して: ACL損傷が多く見られるスポーツを行っている女性選手は、障害のリスク低下のために、両側性、及び片側性の脚の筋力を発達させる必要がある。 片脚でのジャンプからの着地は、矢状面での股関節と膝における関節角度可動域の減少により、両脚の場合よりも、ACLに対する危険性が高い可能性がある。 競技シーズン中などの理由により、レジスタンストレーニングを中止した女性選手は、脱トレーニングの結果によってACL損傷の危険性が増す可能性のあることを知っておくべきである。
野球のストレングストレーニングプログラム:ディップスは安全で効果的なのか?
今日、ある野球少年の父から次の質問を受けました。この質問に対する私の答えは、多くの選手にとって役に立つ内容だと思い、これをQ&A形式で書いてみることにしました。 Q:野球選手がバーディップスを行うことについて、どう思いますか?私の息子の高校のコーチが、バーディップスを含むストレングストレーニングプログラムを行っているのですが、私自身は、野球選手にとってのバーディップスの安全性と効果に疑問を持っています。 A:私は、一般のフィットネスクライアントのストレングストレーニングプログラムには、時折ディップスを取り入れますが、野球選手のプログラムに使うことは決してありません。 下記の写真の通り、ディップを行う時には、肩甲骨に対して上腕骨が「ニュートラル」な位置でスタートします。腕は身体の横にあります。(屈曲も伸展もしていません) このエクササイズの遠心性の(下がる)動きでは、上腕骨がニュートラルを遥かに超えて伸展します。 この状態は多くの人の肩にとって、特にオーバーヘッドで投擲をするアスリートの肩にとって、非常に脆弱なポジションです。ご存知のように、水泳、野球、バレーボール、クリケット、テニスなどの選手は何度も何度も繰り返し肩の完全外旋を行うことによって、いわゆる前方不安定性になります。最終的に、レイバック=腕を後ろに位置すると(外旋=骨運動学)、上腕骨頭が前方に変位する傾向がおきます(関節運動学)。 ローテーターカフと、肩甲骨を安定させる筋群の強さが完璧ではなく、発火するタイミングも完璧ではない場合、上腕骨頭が前方に突出するのを防ぐことができるのは、上腕二頭筋長頭腱と肩の前側の関節上腕靭帯だけです。これらの靭帯は時間が経過するにつれ過剰に引き伸ばされ、前方関節包がゆるくなったり、上腕二頭筋腱が安定せずあちこちに動いてしまったり、あるいはオーバーユースにより単に退化していく可能性があります。そして、硬くてごりごりする上腕二頭筋腱を体験したことがある人なら誰でも、それ以上酷使したくないと言うでしょう。 ちょっと余談ですが、これがヨハン・サンタナ投手に象徴される、前方関節包をひだ化(関節包拘縮)する手術がよく行われる一つの理由です。問題は、外科医が関節包を締めた後、ピッチャーが投球動作のレイバックの段階の「感覚」を再獲得できるほど関節包がなじむには相当な時間がかかってしまうことです。さらに経験的に、私は去年、今まで以上に上腕二頭筋腱固定術が行われるのをみました。外科医は、関節唇修復のため患部にアプローチする際に、より状態の悪い上腕二頭筋腱を発見していることでしょう。これらの症状は、肩の構造を根本から変えてしまうため(典型的な関節唇修復はそのリストアをします)、投手にとって、長期的な成功/失敗データのない、大変なリハビリであると同時にこんな疑問を投げかけてきます。「ピッチャーに上腕二頭筋腱は必要か?」 ディップスの話に戻すと、全てのプッシュ系とプル系のエクササイズをニュートラルから屈曲した動きの弧の中で行うように、つまり上腕骨を身体の前方、あるいは身体と平行な位置に保つようにします。これはニュートラルを超えた上腕伸展(ディップスにみられるように)が投球動作同様に、前方不安定性を増す影響を持つからです。 平行バーは、身体のすぐ横に位置できますが、ベンチディップスを行う際、ベンチは必ず身体の後ろに置かなければならないため、ニュートラルな位置からスタートすることさえできないために、ベンチディップスは、更に大きなマイナスの影響を与えます。 まとめると・・・ オーバーヘッドの投擲をする人々にとって、ディップスは良いアイデアではありません。ベンチディップスは、現場にいるコーチにとって便利なため、おそらくよく使われているのですが、特に避けたい動きです。 通常のディップスは、おそらく大半の人々、特に姿勢の悪い人や、肩甲骨周辺を支える筋肉が弱い人、ローテーターカフの機能が低い人、さらには過去および現在肩に痛みがある人にとって行うべきエクササイズではないでしょう。 特に肩鎖靱帯損傷の経歴がある人やこのエリアに慢性的な痛み(例:鎖骨遠位端骨溶解症など)がある人はディップス(およびその他の肘を身体の後ろに位置して行うエクササイズ)は避けるべきです。 ベンチディップスは、全ての人にとって避けるべき、とんでもないエクササイズです。
投球は、腕の筋力を“強化”するとは言えない
今日は、野球界で最も不満に感じていることの一つに立ち向かおうとしています: 人々は、投球は腕の筋力を“強化”すると言いますが、残念ながら、そうではないのです。 私が今から書くことは、言葉遊びのように見えるかもしれませんが、とても重要な差別化なのです。もし若い選手が、投球は腕の筋力を強化すると信じているとすれば、彼らは、通年の投球が安全であり容認できると、自分自身をあっさりと納得させてしまうかもしれませんが、実際には、これは、長期的な健康と発達のために、最悪なことの一つなのです。 知っておくべきなのは: 投球は、腕のスピード、つまりパワーを強化します。パワーは筋力に大きく依存しています。もし大きな力を作用させることができなければ、大きな力を素早く作用させることはできません。 また、投球は腕の筋持久力も強化します。筋持久力も、大きく筋力に依存しています。もし筋力がなければ、筋持久力をつけることはできません。 筋力を強化すれば、パワー、筋持久力も、通常向上します。これは、投手やその他の競技者達の両方の状況において、研究で再三再四、証明されています。しかし、パワーと筋持久力を鍛えたとしても、筋力が向上することは、まずありません。そうでなければ、私たちは、シーズン序盤よりも終盤に、数多くのより強靭な選手達をみることができるはずです。現実には、シーズン終了時に回旋腱板の強さと肩甲骨安定筋群の習熟度をチェックしてみると、通常、シーズン序盤よりもかなり低くなっています。マイク・ライノルド理学療法士は、シーズン中の腕の筋力の管理は、“制御された弱化”と、表現しています。 これは、回旋腱板の強度の向上と肩甲骨のコントロールの最適化のための、オフシーズン(投球を全く行わない期間を含む)の使い方の重要性を強調しています。同時に、投手は(投球によって副次的に増大した外旋)後天的な肩の前部不安定性を減少させると共に、肩に受動的安定性を獲得します。 現在、その真偽性を確認するために、より多くの研究を必要としますが、私は、重量を付加したボールの投球の隠れた恩恵は、基本的に腕の筋力とスピードの境界線を不鮮明にすることに役立つことであろうと考えています。
フォームローリングは、動脈機能にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
研究論文: フォームローラーを使用した自己筋膜リリースの、動脈機能への即時的影響、オカモト、マスハラ、イクタ、ストレングス、コンディショニングリサーチジャーナル(未出版) *** 背景 動脈の硬化は、収縮期血圧の上昇につながる可能性があることから、心血管系イベントに対する危険要因となります。動脈硬化は血管内皮機能によって影響を及ぼされます。血管内皮細胞は、よく知られている一酸化窒素を含む、血管作用物質の放出を通じて血管の活動を規制します。 フォームローラーを使用した自己筋膜リリースは、筋肉痛や筋膜の堅さに対してのよく知られている対処法ではありますが、その動脈硬化や血管内皮機能に対する影響は、明白ではありません。動脈の硬化は、脈波伝播速度を用い測定することができます。 *** 研究者たちは何をしたのでしょうか? 研究者たちは、脈波伝播速度を用い、フォームローラーを使用した自己筋膜リリースの動脈硬化や血管内皮機能に対する急性効果を調査するために、10名の運動はあまりしない健康な被験者を集めました。(男性7名、女性3名) 研究では、2つのコンディションが用意されました:フォームローラーを使用しての自己筋膜リリースを行うコンディションと、コントロールされたコンディションです。筋膜リリースを行うコンディションのもとでは、被験者は内転筋群、ハムストリングス、大腿四頭筋、腸脛靱帯、そして僧帽筋を含む背中の上部にフォームローラーを使用しました。 全ての被験者は、ランダム化されたクロスオーバー計画において、異なった日に両方のコンディションを実行しました。2つのコンディションは、少なくとも3日間空けて実行され、研究者たちは、両方の状況下において実行前と実行後の30分で、上腕、足首脈波伝播速度と、血漿一酸化窒素の濃度を測定しました。測定は、被験者が仰向けで30分間休息した後に実施されました。 *** 何が起こったのでしょうか? 脈波伝播速度への影響 研究者たちは、フォームローラーを使用した自己筋膜リリースのコンディション後、上腕、足首脈波伝播速度が著しく減少することを発見しました。(1202 ± 105 から 1073 ± 106 cm/sへ). しかしながら研究者たちは、コントロールされたコンディションにおいては、上腕、足首脈波伝播速度が変化しないことを記述しています。(1198 ± 118 から 1184 ± 105 cm/sへ) 研究者たちは、この2つのコンディションにおける相違は明らかであると記述しています。これらの結果は下記のグラフに表されています。 血漿一酸化窒素濃度への影響 研究者たちは、フォームローラーでの自己筋膜リリース後、血漿一酸化窒素の濃度が著しく上昇することを発見しました。(from 20.4 ± 6.9 から 34.4 ± 17.2 μmol/Lへ) しかしながら、研究者たちは、コントロールした状況においては、血漿一酸化窒素の濃度は変化しなかったことを記述しています。(from 19.1 ± 4.3 から 17.5 ± 4.7 μmol/Lへ) これらの結果は下記のグラフに表されています。 研究者たちはどのような結論を下したのでしょうか? 研究者たちは、フォームローラーでの自己筋膜リリース後、動脈の硬化は(脈波伝播速度の測定による)急激に減少し、血漿一酸化窒素の濃度は著しく上昇するという結論に至りました。それゆえ彼らは、フォームローラーによる自己筋膜リリースは、運動をあまりしない対象者においては、動脈の硬さを減少させ、動脈機能を向上させ、血管内皮機能を改善することができると提唱しています。 *** 制限要素は何なのでしょうか? この研究は、フォームローラーでの自己筋膜リリースにおける急性効果のみを評価しており、何もしない状態との比較のみであったということに制限がありました。今回の研究結果と同様のデータを表示しないかもしれない、ストレッチや軽いエクササイズと自己筋膜リリースとの比較研究があれば、より有益でしょう。 *** 実践的な意義は何でしょう? 一般の方に対して: フォームローリングは、動脈硬化や血管内皮機能に関しての、健康的意義があります。長期的な効果を証明するにはさらなる研究が必要ですが、健康を目的とする一般の人に対して、フィットネスプログラムの中にフォームローリングを組み込むことは意義があるのかもしれません。 ***
肩甲骨の安定性は神話でしょうか? パート2/2
安定性の問題2:能動的な肩甲骨の安定性の欠如 胸椎の正常な湾曲を回復したら、肩甲骨の動的安定性に焦点を合わせる時です。 クライアントを評価する際、とにかく沢山のベンチプレスやローイングをしてきた人たちを見つけ出すのは、とても簡単です。パワーリフターを評価する機会があれば、彼らにこのシンプルなテストを行わせてみてください。 背後からクライアントの姿勢を評価する際、両手を腰においてもらうようにしてください。 菱形筋支配 もし肩甲骨が胸椎から翼のように離れていたり、肩甲骨を引き寄せて固定しようとしているのであれば、これは、私たちが“菱形筋支配”と呼ぶものの指標となります。 鋸筋や僧帽筋下部線維が働くのではなく、菱形筋が肩甲骨を後方に引っ張り、胸郭から持ち上げるようにしています。 動的安定性を向上させるために、様々な面や動きで安定性を鍛えることが重要です。私は以前のようにIフライ、Tフライ、Yフライといった伝統的な方法の熱烈な支持者ではなくなりましたが、初期段階で適切な位置や運動制御を教えるのに間違いなく役立ちます。 読者の皆さんは、運動パターンを分解した下記のような基本的なトレーニング用語に、おそらく、精通していることと思います。 水平プレス(例:プッシュアップのバリエーション、ベンチプレスのバリエーション等) 水平プル (例:ローイングのバリエーション) 垂直プレス(例:オーバーヘッドプレスのバリエーション) 垂直プル (例:チンニングのバリエーション) 上肢の安定性パターンの再構築を始める際、水平種目は通常最も安全です。オーバーヘッド種目と比較して、水平プレス・水平プルを行う際には、可動性と安定性の需要が少ないのです。 さらに、クローズド・キネティックチェーン(閉鎖運動連鎖)(例:プッシュアップ、インバーテッド・ロウ)で始め、オープン・キネティックチェーン(開放運動連鎖)(例:ベンチプレス、チェスト・サポーテッド・ロウ)へと漸進していくことが、プログラムの初期段階では優れています。 コーチングやトレーニングの分野で、肩甲骨のトレーニングをする際の胸郭の役割について話されることは稀です。肩甲骨の安静性に重要な構成要素は、体幹部/胸郭を固定し、肩甲骨を安定した胸郭と胸椎の上で動かせることです。 このように考えてください:プッシュアップにおいて、身体を低くする際、肩甲骨が自然に近づいていくようにし、上昇時に能動的に身体をできるだけ床から離すように押し上げることに集中します。 インバーテッド・ロウでは、上背部を能動的に伸長し、身体を下ろしていく時には、肩甲骨が、胸郭の周りを滑らかにグライドし、身体を引き上げたポジションで、肩甲骨を引き寄せることを考えてみてください。 上記の2例では、肩甲骨が自由に前進と後退をする一方で、胸郭は終始安定しているべきです。 大きな成功を得ているもうひとつの漸進は、これらのラインに沿っているものです。 垂直プルへの漸進(水平プル→フェイスプル→垂直プル) このように漸進をすることによって、必要とされる肩の可動性と安定性を最小限にすることができ、その一方で、効果的な安定性パターンの再構築を始めることができます。賢明なコレクティブ・ウォームアップとエクササイズの漸進を併用すれば、あっという間に顕著な動きの向上が得られるでしょう。 大事なことを言い忘れていましたが、私は決して、プレス種目が悪いことだと言っているのではありません。それどころか、プレス種目は肩関節の安定性とコントロールの向上に役立てることができると考えます。 しかし、私たちのアプローチに対し思慮深くあるべきです。 繰り返しますが、数週間、数か月の過程を通して、水平のクローズド・キネティックチェーン動作(例:プッシュアップ)から始めて、オーバーヘッド動作へ移行することを考えてください。これを言うことに幾分プレッシャーを感じますが、私が考えるに、もっと多くの人たちは、オーバーヘッド・プレス動作が可能であり、取り入れるべきですが、安全かつ効果的に行うためには、その基盤を築き上げる必要があるのです。 誰かに、負荷をかけたオーバーヘッドのプレス動作を指導する意図がない場合であっても、できる範囲で、生体力学的に動きのトレーニングを行うことでしょう。 それは、胸椎の位置、肩甲骨の安定性、動的な回旋腱板の強さの向上、そして、それらはプログラム作成の不可欠な構成要素になることを意味しています。このパターンに、実際に負荷をかけることは、決してないかもしれませんが、彼らが、オーバーヘッドプレスの動きを、安全に効果的に行うに必要な、根本的な動きのクオリティーを持っていて欲しいのです。 要約 肩甲骨の安定性は神話ではないかもしれませんが、間違いなく肩甲骨を引き寄せて固定させ、最良を願うというような簡単なものではありません。 そうではなく、肩甲骨の安定性は、2つの主要構成要素に辿りつきます:最適な胸椎の位置と、ダイナミックな肩甲骨の安定性のための多面的トレーニングです。 上記の2つの重要な領域に焦点を合わせることによって、より健康な関節とパフォーマンスの向上という恩恵を受けとることができるのです!
肩甲骨の安定性は神話でしょうか? パート1/2
この1年間、私は“コレクティブエクササイズの事実と虚偽”について、10億回もプレゼンテーションを行ってきました。 というのは少し大げさかもしれませんが、間違いなく数多くのプレゼンテーションを行いました。 私が常に立ち返る話題の一つは、肩甲骨の安定性ですが、最近は、より多くの質問を自問自答するようになっています。ここで問題なのは、白黒はっきりした明確な回答は、ほとんど出てこないということ。これは問題のようでありながら、実は間違いなく良い事なのです。 ジョイント・バイ・ジョイント(各関節)アプローチの要約 マイク・ボイルは、トレーニングにおいてジョイント・バイ・ジョイントアプローチを普及させたことでよく知られています。 この前提は身体の主要関節は、より可動性トレーニングが必要な関節と、より安定性トレーニングが必要な関節とが交互に存在しているという、シンプルなものです。 ジョイント・バイ・ジョイントアプローチによれば、足関節は典型的により可動性を必要とし、足関節より上位の関節(膝関節)と下位の関節(足部関節)では、より安定性を重視したトレーニングが必要です。 この概念をよくご存知でない場合は、下記の図をご覧ください。 ジョイント・バイ・ジョイントアプローチ もし私たちが肩甲骨へのジョイント・バイ・ジョイントアプローチに従えば、肩甲骨はより安定性を必要とし、肘関節と肩甲骨より上位の関節(例えば、胸椎と肩関節)は、より可動性を必要としているということになります。 しかし、全ての事と同様に、私はその答えがそんなに白黒がはっきりしているとは考えていません。そして、全ては1つのとても簡単な疑問から始まります。 安定性とは何でしょうか? 私は、下記の引用文が大好きです: “安定性は、変化の統制である” ~ チャーリー・ワイングロフ しかし、ほとんどの人が肩甲骨の安定性を考える際、自然に静的安定性に焦点を合わせる傾向にあると思います。 ベンチプレスの準備をどのようにするのかを考えてみましょう。もしゴールがベンチの上でパフォーマンスを最大化するためならば、できる限り上体を安定させる必要があることを私たちは知っています。 そこでどうしますか? 肩甲骨を後ろに引き下げてピンで留めるようにし、菱形筋と僧帽筋下部でしっかり締めて、等。 リル・スティービーによる肩甲骨の静的安定性 繰り返しますが、これは静的安定性です。つまり、肩甲骨は一度が固定されると、そこから動かない。もし目指すゴールが、ベンチプレスで500パウンドもしくは1000パウンドを持ち上げることであれば、これは当然重要なことです。 しかし、これは私たちの大半が焦点を当てるべきことでしょうか? もしあなたがアスリートや体脂肪減少を目的としたクライアント等を指導されているのであれば、私は動的安定性の方が日々の生活の中で、より重要で役立つということを主張するでしょう。 動的安定性は、チャーリー・ワイングロフが定義している“安定性は、変化の統制である”ということに関して、より真実である(少なくとも私の見解では)。 物体の頭上への拳上、懸垂、野球ボールの投球の際に、肩甲骨を正しい位置におくことができ、コントロールすることができることは、非常に重要です。 ここでの問題は、多くの人は、少なくとも2つの主な理由において、能動的な肩甲骨の安定性に乏しいということです。 それでは、それぞれの理由について、深くみてみましょう。 安定性の問題1:胸椎の位置の悪さ この問題に関しては、以前から数えきれない程言及してきましたが、まだ繰り返し足りないようでもあります。 胸椎が安静時に良くないアライメントにあると、肩甲骨は決して最適な位置になりえません。 再度読んでください:胸椎が安静時に良くないアライメントにあると、肩甲骨は決して(何があっても)最適な位置になりえません。 私たちがIFASTで人々を評価する際、通常、2種類の異常な胸椎姿勢のうちのひとつをみることができます。 典型的な過度に脊椎後弯した姿勢/コンピュータを常に使用する男性のような姿勢、もしくは 過度に平坦な胸椎 過度な脊椎後弯 過度な脊椎後弯は、見ればわかると思います。脊椎後弯が、本来あるべき長さよりも長いか、脊椎後弯の頂点に過度に高さのあるか、sのどちらかが存在します。 誇張された脊椎後弯を持つクライアントがあなたの元を訪れる際、肩甲骨下縁の翼状がみられることが一般的です。 私は過去に、嫌になるほどこのことに関して話してきたので、ここで長く論じるつもりはありません。 過度に平坦な胸椎は、脊椎後弯ほど頻繁に議論されない姿勢的な欠陥です。このようなクライアントを側面から見る際、胸郭及び肋骨は信じられないほど薄くみえます。 これは女性でより頻繁にみられますが、男性にも、また同様にみることができます。 平坦な胸椎 さらに、背後から観察する際、肩甲骨の内縁全体がみえる傾向にあります。 以前であれば、前鋸筋が弱いと診断し、それに沿って進めてしまっていましたが、しかし必ずしもそうであるとは限りません。 ここで、私たちが行わなければならないことは、胸椎にある程度の屈曲を回復させることです。 肩甲骨の解剖学をみると、肩甲骨には自然のカーブ、もしくは弧があります。正常で自然な脊椎後弯の場合は、肩甲骨は胸椎に対して平らに乗っています。 上背部に手を這わせると、肩甲骨の骨の隆起を見つけることができないはずです。 対照的に、平坦な胸椎の場合は、肩甲骨にとても明らかな骨の隆起をみつけることができます。胸椎が過度に平坦な場合、カーブしている肩甲骨が、文字通り、落ち着く場所が無く、骨の指標をより際立たせています。 もしあなたのゴールが、十分な肩甲骨の安定性を得ることならば、全ては胸椎において自然で正常な脊椎後弯を得ることから始まるのです。 過度や不足では、肩甲骨は決してあるべき安定性を得ることはできません。 書き留めてください: 自分自身の身体(この場合は胸椎)の安静時の位置を知っておかなければなりません。まず最初に、適切な位置について知ることなく、やみくもにストレッチ、活性化、強化を始めるのは、間違ったことなのです。 (パート2/2はこちらへ)
臨床検査から機能的なパフォーマンスについて多くを知ることはできるのか? トーマステスト
私たちのコースでよく持ち上がる議題の一つに、より静的な臨床テストが毎日の動的な機能的な動きに対し、どれ程の関連性があるのだろうかというものがあります。私たちは、このブログでこの議題を取り上げることにしました。 これは基本的に、臨床的なモデルと機能的なモデルの比較です。かつてコースの参加者のひとりに、従来のテスト、特にトーマステストは、どのように人が動くのかについて必要なことをすべて教えてくれると言った人もいます。明らかにこれは逸話的なコメントではありますが、ここでの疑問は、これを支持するような科学的見解はあるのだろうかということです。 人々が診察台を離れた時、どれほどよく動くことができるのかを知りたいのであれば、“私たちはまだトーマステストを使い続けるべきなのか?”という問いかけに対する答えは、おそらく“いいえ”でしょう。スケッチ及びその他は、イギリスのスポーツ医学のジャーナルにおいて、2009年に関連性のある研究を行いました。それは“ランニング中の骨盤前傾の、股関節伸展の臨床的、運動学的測定に対する関係性”を観察したものでした。 彼らの目的は: ”ランニング中の骨盤の前傾、及びランニング中に測定された股関節伸展の最高可動域と臨床的に測定された股関節伸展の柔軟性に対する関係性を評価すること”でした。” 彼らは股関節の伸展を臨床的に測定する為に、広く使われている修正版のトーマステストを用い、動的な測定には、動作分析のソフトウェアが使用されました。 研究を行ったチームによる結論は: “トーマステストを使用して測定した静的な股関節伸展の柔軟性は、動的な動き(ランニング)に反映されない。それゆえ、ランニング中の骨盤や股関節の矢状面における動きのパターンに関して、測定を行うクリニシャンがトーマステストの結果を解釈できる能力には、制限があるであろう。”というものでした。 さらに彼らは: “この研究及び、その他の研究の発見の結果として、クリニシャンは、トーマステストの結果を基に、矢状面での動的な骨盤や股関節の動きの予測をすることに対して充分に注意深くある必要がある。”と付け加えています。 この研究論文は、股関節の静的測定と動的測定の相関関係はきわめて低く、動的な測定を確実にするための静的な測定の使用は”予測”にしかすぎないと強調しています。 動的に、機能的に何が起こるのかは、単純に治療台の上で起こるこの反映ではありません。人々はよく「自分にとっては使えるから」とか、「誰それがこれを使っていたから私も使います」と言ったりますが、より科学的な根拠が存在する中、これらは十分な理由と言えるのでしょうか? 違うのではないでしょうか。 ただ単に、現在何かを行っているから、又は、臨床テストの方法を教わったからということだけでは、機能的にふさわしい他の検査方法を試してみるべきではないということにはならないでしょう。 更に科学的根拠を見てみましょう。マックギルとモレサイドは、2013年のストレングス&コンディショニングジャーナルの“股関節の柔軟性の向上は、機能的な動きのパターンにおける可動性に置き換えられない”という彼らの論文の中で、股関節における受動的可動域の向上の、機能的動作パターンへの置き換えの可能性を取り上げています。 彼らは: ”これらの結果は、受動的可動域における変化やコアの持久力における変化が、自動的に機能的動作パターンの変化に反映されることはない、と示している“と結論づけています。” 静的、受動的な臨床テストのみではなく、受動的なエクササイズやストレッチも、動的な股関節の可動域の向上とは相関関係が無いようです。どちらも世界中のクリニックで一般的に使用されているものですが、動きの評価や、動きの変化に関しての影響は、あまりないようです。私たちは、正しい答えを引き出すための正しい問いかけををすることができているのでしょうか? 両方の研究において、静的から動的な状況への少ない相関関係しか示されていない一つの理由は、それらが異なる動作パターンだからです。私たちは時として、局部構造(骨や組織)を基盤として動きを見ます。特定の動きは、特定された動きであり、局部組織の長さや構造上的な方向性によって規制されているというよりも、むしろ脳によってコントロールされているということがより明らかになってきています。 私たちの脳は、固有感覚、視覚、そして、前庭の感覚系からのフィードバックを用い、状況に応じて、記憶されている動作パターンを自動的に関連づける、記憶予測モデルに働きかけます。これらのシステムは、視覚的な水平、重力に対する方向性、関節の圧縮、角度と捻転、組織の張力と長さを認識します。これらの全ての要素が、動的な動きを臨床のテストとはかなり異なったものとし、それゆえ動作パターンに関しては、このシステムが全く異なった遠心性の反応を引き起こすのです。 動的な動きにおいて、重心をコントロールすることもまた、身体に対して、仰向けでの臨床の環境では再現できないような、大きなチャレンジを与えることとなります。バランスとスピードという変数要素を加えると、動きの本質が見えてきます。単純な生物力学のレベルにおいては、治療台から降りた途端に、動きに対しての回旋と移動という要素も加わることになります。これらは治療台の上で再現することが困難な要素です。これら追加された動きの変数要素は、フィードバックと運動制御にも変化をもたらします。 実際、スケッチ及びその他は、静的股関節伸展と動的股関節伸展の相関関係の欠如は: “静的な柔軟性のみというよりも、むしろ複雑な動的神経運動パターンによって決定づけられるかもしれない”と示唆しています。 柔軟性は、ガンマ運動ニューロンシステムと紡錘内線維(筋紡錘)を通じて遠心性に制御されている為、状況に依存します。同様に、紡錘外線維(骨格筋)を動かす為にアルファ運動ニューロンが駆動します。動きにおける柔軟性や硬さのレベルは、脳が作り出すものであり、感覚システムからの情報を通じて何を受け取ったかという状況に依存しています。柔軟性、それ自体は技術ではなく、技術としてトレーニングされるべきではありませんが、動きの成功の構成要素ではあります。適切な量の柔軟性を、適切なタイミングで、適切な動きにおいて達成できる必要があります。 マックギルとモレサイドはまた: “新しく発見された可動域が使用されるのであれば、新しい運動パターンを刻み込むことに更に集中をすることによって、トレーニングやリハビリプログラムは恩恵を受けるかもしれない”と示唆しています。 私たちがこれを実行するとすれば、クロスオーバーを確実にする為に、可能な限り最も本質的なパターンを組み込む必要があります。しかし、これは入力情報が常に機能的ででなければならない、という意味ではなく、運動皮質における保存、及び呼び起こしのために、最大の運動パターンの露出を確実にするため、ある時点では機能性に取り組まなくてはいけないということなのです。 私たちの意見を取り入れた最も有益な尺度は、受動的に得ることができる可動域と、より機能的な状況において、アクセス可能な受動的可動域の範囲との相違です。 主観的なものを客観的に計測するのは、難しいことのひとつです。運動パターン戦略や構造の多様性は、文字通り誰ひとりとして、他と同じに機能する人はいないということを意味します。これは、私たちが同じように見えたり話したりしないという事実や、身長、足の大きさや幅が様々だという事実と似ています。平均値が実際の人間の構造や働きを反映するのか?これは疑問といえるでしょう。 踵骨下関節(STJ)は、この構造と機能の両方における多様なバリエーションの良い例です。つまり、実験的な研究において、中心軸の位置の広域なバリエーションと、距骨下関節の中心軸の位置に相関関係を持つ人は少数であり、それゆえ、“正常な”足の機能には多様性があるということを意味します。(マンター1941年、ランドバーグ1993年) この“平均”や中央値からの偏差に関連している多くの病理は、一貫して原因となることを判明するのが難しいとされています。この例として膝の痛みが挙げられます。(パワーズ2002年、ヘトスロニ2006年)。例えば、歩行のような、ある特定の生体力学のセットに関して、ある個人を比較する場合、痛みの原因となる客観的な中央値からの偏差に原因があると、決め込まないように注意する必要があります。この偏差は、おそらく単に個人的な多様性によるものでしょう。 スケッチ及びその他は、また: ”最大股関節伸展の可動域は相対的な脚長と正の相関関係にある。これは相対的に脚長が長い人は、最大股関節伸展の可動域を減少して走る傾向にあるということを意味する。これは身体のサイズの異なる人達が、トレッドミルで全く同じ速度で走ることから”と報告しています。 人間の、主観的で自然な構造の多様性は、比較対象となり得る客観的なデータに影響を及ぼします。今までに習得した異なった運動パターン、ランニングスタイル、既往歴等の複雑さを考慮に入れなくとも、です。 スケッチ及びその他は、彼らの実験の中で: “矢状面での骨盤と股関節の動きのパターンは、同じスピードで走る被験者のグループ内においても異なるのが明白である”と記述しています。 コ-キネティックでは、あるシステムとそれ自体との比較、例えば右対左など、をみています。特にランニングなどの循環活動においての、部位毎の能力の多様性に関して、対象者からの平均可動域の客観的な比較よりも、統合的システムが、仕事量増大や、脳及び身体の回避戦略に対しての、より多くのヒントを与えてくれるかもしれません。 投球やスイングにおける部分的な貢献に対しても、同じことが言えるでしょう。もしある1つの部分、特に股関節のような大きな部分が貢献していないとすれば、他の部分がより貢献しなくてはならなくなります。これは実際の、もしくは知覚的な組織への脅威につながります。身体は如何なる方法であれ、一般的には最も抵抗が少ない方法で、目指す課題を出来る限り達成しようとします。 部分的な評価として、もし私の左の股関節が右よりも可動域が広く動きの質が良いとすれば、これは左右非対称運動を引き起こし、システムに対する実際のもしくは知覚的な脅威やストレスを増大する可能性があります。既に、ある程度の左右非対称は正常であると知ってはいますが、どの程度の左右非対象性が存在することが問題なのでしょうか? どの段階で私たちの動きにおける個人的な多様性が制限要素となるのでしょうか? 前述のように、個人の脅威分析やストレス忍耐閾値によって変化する、主観的な状況で客観的であることは、容易ではありません。 コーキネティックは、“正しい答えを引き出すための正しい質問”を可能にするための、最も本質的な環境を作り出すために、機能的な基準を設けています。これはテストされている動きと相関関係のある、脳からの反応を引き出すよう試みていることを意味し、最高の治療戦略を作り出す助けとなります。機能基準を使用して評価をする能力は、私たちがその個人についての治療の成功率を向上させるための、重要な情報を持っているということを意味します。客観的な傷害予測を得るのは難しいことは、証明されているのです。 機能基準には下記のものが含まれます: 重心の移動 直立の 能動的な 動的な 統合的な 3次元の 固有受容的信頼性―生体力学・動きのパターン