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脚の最大の発達のために“ただスクワット”すればいいのか?

一日おきに、誰かが、フォーラムに下半身のトレーニングを作成する一番の方法についての質問を掲示します。 少なくとも一人の善意あるリフターが、「ただスクワットをしなさい」という薦めを回答します。 しかし、スクワットのみで本当に最適な脚の筋発達のために十分なのでしょうか? ただスクワットをするとはどういう意味ですか? 誰かが“ただスクワットをする”という時、彼らがどういう意味で言ったのかははっきりしているわけではありません。 もしあなたがそのアドバイスを文字通り読むならば、それはあなたのレッグトレーニングのすべてとして“ただスクワットをする”という意味になるでしょう(なのであなたはその他のレッグエクササイズを何もしません)。しかし、人々は時々、ハムストリングスを除くすべてのエクササイズとして“ただスクワットをする”ことを意味しています(なのであなたはいくらかのハムストリングカールもします)。そして時には、人々が“ただスクワットをする”と言っているのに、あなたは後で彼らがデッドリフトやヒップスラストもしていて、基本的に彼らの“ただスクワットをする”という助言が、本当は大腿四頭筋だけに当てはまるのだと知るのです。 上のような混乱に関係なく、私はこの記事で二つの問題に注目したいと思います: スクワットはハムストリングスの発達のために良いエクササイズかどうか、 そしてスクワットは大腿四頭筋すべてに効果的なのかどうか。 明らかに、これは臀筋(Bret氏、ごめんなさい!)と内転筋の議論を除きますが、それらの筋肉はまったく独自の別な記事にする価値があると私は思います。 #1. ハムストリング:ただスクワットをする、でもデッドリフトもする? 知識のあるフィットネスプロフェッショナルとして、あなたはスクワットが大腿四頭筋、大内転筋、そして大臀筋に非常に効果的であるが、ハムストリングスにはそれほど効果がないことをほぼ確実にすでに理解していることでしょう(Wright et al. 1999)。 基本的に、それがポステリアチェーンのための良い筋力トレーニングプログラムの中にデッドリフトバリエーション(そして他のエクササイズ)がいつも含まれている理由です。ハムストリングスのアクティベーションは、一般的にスクワットでは低いのです。 しかしながら、ハムストリングスがスクワット中に働いているという考えを却下する次のような他の理由もあります: スクワットのバーベル負荷の増加は、ハムストリングスのアクティベーションを増加させないが、大腿四頭筋及び大臀筋両方のアクティベーションが顕著に上昇する要因となる(Li et al. 2013) スクワットの力とハムストリングスのアクティベーションの間の相関関係は、ハムストリングスでは低~中程度だが、大腿四頭筋では強い線形相関がある(Luera et al. 2014) スクワットの深さを同じバーベル負荷で増加させることは、ハムストリングスのアクティベーションを増加させないが、大腿四頭筋及び大臀筋のアクティベーションの大きな増加の要因となる(Gorsuch et al. 2013; Contreras et al. 2015b) 筋骨格系モデルは、ハムストリングスが大臀筋と同じくらいの度合で貢献する股関節伸展のストラテジーを用いることは、そのストラテジーが膝関節でのコ・アクティベーション(同時活性化)を増加させて大腿四頭筋をより使わせることから、非効率的であると示唆している(Bryanton et al. 2015) なぜハムストリングスはスクワットで活性しないのか? 身体力学的に、スクワットにおけるこの乏しいハムストリングスのアクティベーションは、恐らく4つのハムストリングスの筋肉のうち3つが二関節筋であるからです。 それゆえに、これらは股関節伸展筋及び膝関節屈曲筋として働きます。 そのため、身体が下に下がる(股関節屈曲及び膝関節屈曲をしながら)につれて、筋肉は膝関節で短縮し、股関節で伸張しようとして、結局ほとんど同じ長さのままになります。そして上に上がる(股関節伸展及び膝関節伸展をしながら)につれて、筋肉は膝関節で伸張し、股関節で短縮しようとし、また結局ほぼ同じ長さのままになるのです。 これはハムストリングスをスクワットでの股関節伸展筋として極めて非効率的にします。 もしあなたがまだ信じていないのであれば、今この瞬間も、研究がハムストリングスのアクティベーション不足について何といおうが気にしない、だってスクワットをしているとき脚の裏側が働いているのを感じることができるから、と考えているかもしれません。 私が偉そうに反論できるでしょうか? あなたはスクワット中に、太ももの後面が働いているのを感じるはずなのです。それはあなたの大内転筋がある場所です。 奇妙なことに“内転筋”と呼ばれていますが、大内転筋は実際、スクワットにおいて非常に重要で大きな股関節伸展筋で、ハムストリングスのかなり近くにあります。 しかしその脚の後ろの感覚は、多くの場合恐らくハムストリングスによってもたらされたものではありません。 #2. 大腿四頭筋:4つすべての筋肉 それでは、質問のより難しい部分に取り組みましょう。大腿四頭筋です。 最近、研究者のグループが、中間広張筋(tensor of the vastus intermedius)と呼んでいる新たな大腿四頭筋の筋肉を発見しましたが(Crob et al.2016)、大腿四頭筋は太ももの前面にある4つの筋肉で作られています。これは解剖学的命名にとって非常に厄介な意味あいを持っています。 それはさておき、4つの主な大腿四頭筋は: 外側広筋 内側広筋 中間広筋 大腿直筋 その4つの筋肉のリストのうち、はじめの3つは膝関節の伸展筋としてのみ機能する単関節筋です。大腿直筋は、ハムストリングのように二関節筋で、股関節屈曲筋及び膝関節伸展筋として働きます。 全体的に、外側広筋は最も大きい筋量を持ち(674㎤)、次に中間広筋(580㎤)、内側広筋(461㎤)、最後に大腿直筋(339㎤)が続きます。 筋肉の力の生産能力を駆動する生理学的筋断面積の観点から見ると、下のチャートでも示されている通り、これらは実際驚くほど類似しています(Erskine et al. 2009)。 ここで私たちが取りあげるべきなのは、もし私たちが脚のサイズをその最大範囲まで発達させたければ(そしてただスクワットが上手になるだけでないなら)、用いているエクササイズが4つの大腿四頭筋すべてに働いていることを確かめなくてはならないということ。 そうしなければ、私たちは筋肉の発達をいくらかのやり残してしまうでしょう。 スクワットは大腿直筋を発達させるか? 従来、スクワットは大腿四頭筋全体を最も発達させるものだと考えられてきました。 この考えは、大腿四頭筋の単関節筋を解析した研究によって、間違いなく支持されてきました。例えば、Signorile et al. (1994)は、外側広筋と内側広筋のスクワットにおけるアクティベーションを筋電図(EMG)で調査し、それをニーエクステンションと比較しました。彼らはスクワットの方が優れていることを発見しました。同じように、Ebben et al. (2009)は、外側広筋にはニーエクステンション、ステップアップ、そしてデッドリフトよりもスクワットの方がよかったことを発見しました。 一方で、“ただスクワットをする”というのは、大腿直筋にはあまりよく効果がないように見えます。 これは、ニーエクステンションエクササイズにおける大腿直筋のアクティベーションレベルが、スクワットと比較してより高いことを示す筋電図の研究(Ebben et al. 2009)からのみでなく、長期的試行からも見ることができます。 ある重要な研究、Fonseca et al. (2015)は、スクワットのみを行う2つのグループと、様々なエクササイズ(スクワット、レッグプレス、デッドリフト、ランジ)を行う2つのグループの、4つの異なるグループを、長期的トレーニングプログラムに渡り比較しました。様々なエクササイズを行った2つのグループは、大腿四頭筋のサイズが4つすべての筋肉(大腿直筋を含む)において増加しましたが、ただスクワットだけを用いた2つのグループでは、3つの単関節筋のみ大腿四頭筋のサイズが増加しました。 スクワットトレーニング後の大腿直筋の成長不足は、恐らくこの筋肉が股関節屈曲筋と膝関節伸展筋の両方であるからです。 身体が下に下がる(股関節屈曲及び膝関節屈曲をしながら)につれて、大腿直筋は膝関節で伸張し、股関節で短縮しようとして、結局ほとんど同じ長さのままになります。そして上に上がる(股関節伸展及び膝関節伸展をしながら)につれて、筋肉は膝関節で短縮し、股関節で伸張しようとし、また結局ほぼ同じ長さのままになるのです。 これは大腿直筋をスクワット中極めて非効率的にし、そのためこの筋肉は恐らく(ハムストリングスのように)通常それほど使われないのです。 大腿直筋を発達させるエクササイズは何か? 上で述べた通り、ニーエクステンションエクササイズでは、スクワットに比べより高いレベルの大腿直筋のアクティベーションがあります(Ebben et al. 2009)。これは、長期的なトレーニング研究による証拠で支持されています。 事実、下のチャートで示されているように、大腿直筋は単関節の、マシンによるニーエクステンショントレーニングによって、他の3つの大腿四頭筋よりも比較的成長するように見えます(Ema et al. 2013): ここでマシン・ニーエクステンションに表れされているように、同時に(そして同じような大きさで)股関節屈曲及び膝関節屈曲動作をさせないエクササイズにおいて、大腿直筋を非常に効率的に鍛えることができるように見えます。 まとめ もしあなたがスクワットを上手になりたいのであれば、もちろん“ただスクワットしましょう”。 一方で、もしあなたが完全な脚の発達を臨むのであれば、あなたは“主にスクワットをする”と言いつつも、さらにいくつか追加でハムストリングスのエクササイズ、そして大腿直筋のエクササイズを一つ加える方がよいでしょう。 これに関して、いくらかのトレーナーには無視されがちですが、ニーエクステンションは少なくともボディビルダーにとっては恐らく理想的なエクササイズなのです。 参照 Bryanton, M. A., Carey, J. P., Kennedy, M. D., & Chiu, L. Z. (2015). Quadriceps effort during squat exercise depends on hip extensor muscle strategy. Sports Biomechanics, 14(1), 122-138. Contreras, B., Vigotsky, A. D., Schoenfeld, B. J., Beardsley, C., & Cronin, J. (2015). A Comparison of Gluteus Maximus, Biceps Femoris, and Vastus Lateralis EMG Amplitude in the Parallel, Full, and Front Squat Variations in Resistance Trained Females. Journal of Applied Biomechanics. Ebben, W. P., Feldmann, C. R., Dayne, A., Mitsche, D., Alexander, P., & Knetzger, K. J. (2009). Muscle activation during lower body resistance training. International Journal of Sports Medicine, 30(1), 1-8. Ema, R., Wakahara, T., Miyamoto, N., Kanehisa, H., & Kawakami, Y. (2013). Inhomogeneous architectural changes of the quadriceps femoris induced by resistance training. European Journal of Applied Physiology, 113(11), 2691-2703.] Erskine, R. M., Jones, D. A., Maganaris, C. N., & Degens, H. (2009). In vivo specific tension of the human quadriceps femoris muscle. European Journal of Applied Physiology, 106(6), 827-838. Fonseca, R. M., Roschel, H., Tricoli, V., de Souza, E. O., Wilson, J. M., Laurentino, G. C., & Ugrinowitsch, C. (2014). Changes in exercises are more effective than in loading schemes to improve muscle strength. The Journal of Strength & Conditioning Research, 28(11), 3085-3092. Gorsuch, J., Long, J., Miller, K., Primeau, K., Rutledge, S., Sossong, A., & Durocher, J. J. (2013). The effect of squat depth on multiarticular muscle activation in collegiate cross-country runners. The Journal of Strength & Conditioning Research, 27(9), 2619. Grob, K., Ackland, T., Kuster, M. S., Manestar, M., & Filgueira, L. (2016). A newly discovered muscle: The tensor of the vastus intermedius. Clinical Anatomy, 29(2), 256-263. Li, Y., Cao, C., & Chen, X. (2013). Similar electromyographic activities of lower limbs between squatting on a reebok core board and ground. The Journal of Strength & Conditioning Research, 27(5), 1349. Luera, M. J., Stock, M. S., & Chappell, A. D. (2014). Electromyographic amplitude vs. concentric and eccentric squat force relationships for monoarticular and biarticular thigh muscles. The Journal of Strength & Conditioning Research, 28(2), 328-338. Signorile, J. F., Weber, B., Roll, B., Caruso, J. F., Lowensteyn, I., & Perry, A. C. (1994). An Electromyographical Comparison of the Squat and Knee Extension Exercises. The Journal of Strength & Conditioning Research, 8(3), 178-183. Wright, G. A., Delong, T. H., & Gehlsen, G. (1999). Electromyographic Activity of the Hamstrings During Performance of the Leg Curl, Stiff-Leg Deadlift, and Back Squat Movements. The Journal of Strength & Conditioning Research, 13(2), 168-174.

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4510字

股関節屈曲の理解とトレーニング

私のウェブサイトのフォーラムにおける最近の投稿で、複雑な質問に対して短い回答をすることは、大抵の場合、有効ではないということを実感しました。私のウェブサイトの読者の数名は、弱い、または、不活性の腰筋に関する最近の話は全て、人々が流行に乗っているだけだと思っているようです。私はそれに強く反対する一人です。 股関節屈曲の生体力学に関する知識の向上は、ここ5年間で私が学んだことの中で最も価値のあることの一つだと思っています。一般的に、股関節屈曲、特に腰筋を理解することにおける問題は、5つの筋肉に対して、そのうち4つは、残りの1つに対し、てこの位置が明らかに異なっているのに、「股関節屈筋」という一般的な言葉を使って総称されてしまっていることでしょう。私も、過去には、この業界の専門家の多くと同じように、股関節屈筋群の筋肉に対して何も区分けをしていなかったことを認めなければなりません。股関節屈筋群の筋肉は全て一緒に作用して股関節を屈曲しているようだというだけで、その時の私には十分でした。しかし、理学療法士のシャーリー・サーマンの著書を読み進めるうちに、私の股関節屈筋群に対する考え方は、他の多くの筋群に対する考え方と同様に変わったのです。 サーマンが著書「Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes (運動機能障害症候群のマネジメント)」で述べている見識は、ストレングス&コンディショニングの分野の障害における謎の多く、特に「股関節屈筋」や「大腿四頭筋」の肉離れの謎を説明しています。股関節屈曲の動作を理解する鍵は、股関節屈曲に関与している複数の筋肉の解剖学的作用を考えることです。股関節屈曲に関与することのできる筋肉は5つあります: 大腿筋膜張筋(TFL)、大腿直筋(大腿四頭筋の一部であり股関節屈筋でもあるところが異なっている)、腸骨筋、縫工筋、そして腰筋です。前述の通り、このうち3つの筋肉には共通するものがあり、2つは明らかに異なっています。 常套句ではありますが、ポイントは類似ではなく、相違にあります。大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋は全て腸骨稜に停止部があります。これは、これらの筋肉が股関節の高さまで股関節屈曲ができることを意味します。これは単純に機械的テコの原則による機能です。腰筋と腸骨筋は異なります。腰筋は腰椎すべてに起始があり、腸骨筋は腸骨の内側に起始があります。これにより2つのはっきりした違いが生まれます。 1. 腰筋は脊柱に直接的に働く。脊柱の安定筋および屈筋として働くことも可能である。 2. 腰筋と腸骨筋だけが股関節屈筋の中で、股関節屈曲を90度以上にすることのできる筋肉である。 腰筋および腸骨筋が弱い、または不活性の場合、大腿骨が股関節より上の高さまで動くこともありますが、これは腰筋および腸骨筋の作用ではなく、他の3つの股関節屈筋群によって生み出されたモメンタムによるものです。私はこの知識をもとに、腰痛や、「股関節屈筋の損傷」、「四頭筋の肉離れ」に対する私たちの知識は劇的に拡張されていると考えています。特定の障害の話をする前に、腰筋および腸骨筋の機能の評価方法を見ていきましょう。サーマンのテストはシンプルです。片脚で立った状態で、膝を胸の方向へひきつけ、放します。膝を股関節屈曲が90度より高い位置で10-15秒維持できないことは、腰筋、または腸骨筋が弱いことを示唆します。 他のサイン: - 腸骨陵の大腿筋膜張筋のエリアの攣り - 即時に起こる後傾による代償動作 - 左右への大きな骨盤移動 - トップポジションからの即時の下降と90度の位置における「キャッチ」 これらのサインは全て、クライアントまたはアスリートが弱い、あるいは不活性の筋肉を代償しようとしていることを示唆しています。大腿筋膜張筋の攣りは、典型的な相乗的優位の表れです。不利な位置で収縮を試みると、筋肉は痙攣します。股関節屈曲が90度を超えた状態では、大腿筋膜張筋はすでに収縮していて、不利なてこのポジションでは、保持するのに必要な力を発揮することができません。そのため、臀筋が不活性の状態でブリッジを行うとハムストリングが痙攣するのと同様に、結果として痙攣につながるのです。ハンギングニーレイズをしようとすると(代償動作につながるためほとんどの場合行われないエクササイズ)、痙攣や肉離れが起こるのは大腿直筋ですが、ここでも同じ影響が見られます。 試験者が、被験者が代償動作に長けていることを心配しているのなら、腰筋/腸骨筋のエクササイズとして私たちが開発し、気に入っている、より良いテストがあります。実際は、このテストは、ストレングス&コンディショニングコーチのカレン・ウッドによって開発されました。クライアント、またはアスリートの片足をプライオボックス(大抵の場合、61cmが良い)の上にのせ、膝を股関節より高い位置にします。両手は頭上もしくは頭の後ろにおき、足をボックスから浮かせた状態で5秒維持します。足を挙げられない、または保持できなければ、腰筋および腸骨筋が弱いことがわかります。負荷を加え、エクササイズをテストとして使うためには、側方からの抵抗やバンドを使って等尺運動の難易度を高めることができます。 股関節よりも低い位置からの腰筋のテストは、腸骨起始の股関節屈筋群が優位なてこのポジションにあるため、もともと無効だということは特筆すべきです。腰筋と腸骨筋のユニークな機能的関与を理解すると、弱い筋肉や不活性の筋肉が、いかにして腰痛および大腿四頭筋の損傷、両方の原因になり得るかがわかります。腰痛があり、股関節を90度以上屈曲できないと、クライアントやアスリートは腰椎を屈曲して股関節屈曲をしているような錯覚を作り出そうとします。膝を胸に近づけるように指示されたときに、何人のクライアントおよびアスリートが即座に腰椎を屈曲するかを観察してみてください。膝を胸に近づけるのと胸を膝に近づけるのには、はっきりとした違いがあります。膝を胸に持ってくること、および股関節より上に持ってくることは、腰筋と腸骨筋を使う、または使おうと試みることを強います。もしこれができなければ、下記のうちのひとつ、あるいは3つ全てが起こります。 1. アスリートやクライアントは、脊柱を屈曲して胸を膝に近づけるでしょう。最初の観察ではこれは同じように見えますが、腰痛という点からみると、これほどの違いはありません。腰椎の屈曲は骨盤変形の主要な原因です。股関節の動きを腰の動きで置き換えるアスリートやクライアントは腰痛になります。 2. アスリートやクライアントは、大腿筋膜張筋や腸骨に起始を持つ他の股関節屈筋を使って股関節を屈曲するでしょう。この場合、彼らは低レベルの大腿筋膜張筋の痛みを訴え始めるでしょう。これは、協働筋の酷使によるもので、大腿筋膜張筋の相乗的優位につながり、さらには腰筋および腸骨筋の機能不全につながります。これは屈曲姿勢を強いられるホッケー選手によく見られるものです。 3. アスリートやクライアントは、股関節屈曲をするために大腿直筋を使うでしょう。これがスプリンターやフットボールの40ヤードダッシュ時に起こる、謎の「四頭筋の肉離れ」です。この場合、障害の仕組みは上で述べたものと同様ですが、犯人は大腿筋膜張筋ではなく、大腿直筋になります。ほとんどの「四頭筋の肉離れ」や「四頭筋の損傷」は、多関節の大腿直筋に限られるということは特筆に値します。一般的に、痛みは大腿直筋が大腿四頭筋に入っていく腿の真ん中あたりに起こります。腰筋および腸骨筋は股関節の前側、臀筋は股関節の後ろ側にあります。弱い大臀筋はハムストリングの相乗的優位につながり、股関節伸展を代償するために腰椎伸展が起こります。これが、腰痛、股関節の前方の痛み(これもハムストリングを股関節伸展の主動筋として使うと、大腿骨のてこが変わり、関節包前部の痛みが起こる、というサーマンのポイント)、ハムストリングの緊張につながります。この逆は文字通り、弱い、または不活性の腰筋による、伸展ではなく屈曲による腰痛、大腿筋膜張筋および大腿直筋の損傷です。 障害予防や障害のリハビリテーションにおける鍵は、機能解剖学の正しい理解です。過去の過ちを繰り返すことをやめ、解剖学、生体力学の観点から学ぶことがまだまだたくさんあることを認識しなければなりません。少し深く学んだことで、私が解剖についてどれほど少ししか理解していなかったかに驚愕しました。私が過去3年間で読んだ中で、最も素晴らしかったものの一つがシャーリー・サーマンの次の言葉です。「筋肉が挫傷した場合、最初に行うことは、弱い、または不活性の協働筋を探すことです。」 怪我について考えるとき、それはただ起こるのではなく、物理の法則に沿って、機能解剖学に則った理由を持って起こるものなのです。

マイク・ボイル ストレングス&コンディショニング 3744字

腰痛を抱える人のトレーニングのための7つのコツ パート2/2

#4 胸郭を解放する 何年もかけて、私が発見したことの一つは、腰部に問題を抱えている人々は、多くの場合、胸郭の動きが少ししか(あるいは全く)ないということです。 私は、この発見に関して全ての賞賛を貰いたいところですが、私の豆サイズの脳の中でこの考えを具体化させたのは、実は2016年のフィジカルプリパレーションサミットでのビル・ハートマンの話でした。 まずはじめに、「胸郭」という単語を恐れないでください。こちらが定義です: “哺乳類の首と腹部の間の身体部分。肋骨に囲まれた腔、胸骨、背側椎骨を含み、循環と呼吸の主要器官を内包する;胸” つまり基本的に、胸と上背部のエリアのことです。 胸郭を解放する際、私は一般的に、胸郭の動きを大まかに二つ考えています: 胸郭を回旋する(より横断面の動き) 胸郭を屈曲する(より前額面の動き) この描写に関して、より詳細または技術的にすることができる人は確実にいると思いますが、レーナード・スキードのように、私はシンプルな男なので、これで行きます! 私達が胸郭を回旋について語る際、腕の動作はより水平に注目しています(前後と考えてください)。 片膝立ちのオルターネーティングケーブルプレスは、素晴らしい例です。私たちの目標は、下半身とコアを固定し、胸郭を通して、上から回旋を引き出すことです。

マイク・ロバートソン 3154字

腰痛を抱える人のトレーニングのための7つのコツ パート1/2

私は、このトレーニングというものを20年近く行ってきて、皆さんに一つ言えることがあります: あなたとトレーニングをするほぼ全てのクライアントやアスリートは、何らかの問題を抱えています。 実際、痛みや問題が全くない新しいクライアントやアスリートのトレーニングを行うことは、近所のコーヒーショップでハリー・ポッターに会うようなものです。 それってすごいことじゃないですか?もちろんです! 美味しいアメリカーノを飲みながら、悪のヴォルテモート卿を打ち負かすことについて話したくない人なんていないでしょう? しかし残念ながら、それは(もしあったとしても)滅多にないことなのです。 膝や股関節、肩の機能不全を抱える人々が間違いなくある程度いる一方で、腰部の問題ほど、トレーニングによる成果を押しつぶす怪我は他にないように感じています。 腰部に関する問題は、確かに扱うことが厄介になり得ますが、同時に、それがあらゆるリフティングのキャリアの終了宣告になるべきではありません。 事実、その背景となる可能性のある全ての問題に重点を置いた、全体的なトレーニングプログラムをまとめるときには、クライアントを今までよりも、そしてそれが怪我をした後だとしても、より大きく、より引き締まった、より強い身体にすることができると、私は強く信じています。 先にも述べたように、私はもう長いことこういったトレーニングを行っていますーそれは、私に十分すぎるほどの失敗をさせてもくれました。 今から述べるのは、腰痛を抱えるクライアントやアスリートのトレーニングを助けるだけでなく、そのプロセスを通して、彼らが限りなく良く動き、良く感じることを助けるために、私が長年使ってきた7つの策略です。 はっきりさせておきたいので(そして個人的な責任のために)、これを言わせてください: 腰部に深刻な問題を抱えているクライアントやアスリートがいたら、真剣なトレーニングプログラムを始める前に、資格ある医学の専門家に許可をもらってください。 ではさっさと本題に入りましょう、腰痛に対してどのようなトレーニングができるかについて! #1 矢状面から抜け出せ 私にはパワーリフティングをしていた経歴があり、全ての人がプログラムの中に健全な量の爆発的な、複合的リフトが必要だと強く信じています。 スクワットであれ、デッドリフトであれ、ベンチプレスであれ、これらのリフトは、あなたの強さを増し、筋肉を構築し、体脂肪を削ぐことに役立ちます。 しかし、私が全てのクライアントやアスリートにこれらのリフトのバリエーションや派生的なものを学んで欲しいと思っていても、場合によっては、それが困難な戦いになるとわかっています。 クライアントがやってくるときは大抵、彼らは矢状面の扱い方を理解していません。身体を安定させるための彼らの唯一の戦略は、膝、股関節、そしてもちろん腰部に問題を引き起こし得る、伸展です。 そのため、伸展ベースの戦略に陥ることを許してしまう両側性のスタンスのエクササイズはやらせずに、動きの3面で安定させることを強いるスプリットスタンスやシングルレッグのエクササイズをやってもらいます。 これは、腰部に問題を抱える人に対して、複数の良いことをしてくれています: 動きの3面全てで安定させることを強いる スプリットスタンスのエクササイズの場合、股関節屈筋群の緊張および硬さ(伸展を促進する)を和らげる スプリットスタンスおよびシングルレッグのリフトでは、外的負荷を減らす傾向にあり、それが症状の緩和につながる ここで私は、あなたがクライアントやアスリートにスクワットやデッドリフトをさせることはできないとは言っていません。先に述べたように、私の目標は、最終的には全員がこれらのリフトの何らかのバリエーションを行うようにすることです。 でも初期段階で、誰かが両側性のリフトに相当苦しんでいるとしたら、問題の周囲から取り組み、スプリットスタンスやシングルレッグのエクササイズを使うことを考えてください。 #2 直立姿勢を保つ フロントスクワットは高重量でできるのに、次にヒンジをさせると、クリスマスツリーのように腰が点灯するクライアントやアスリートを抱えたことはありますか? もちろんありますね。 私たちは皆あります。 広い、一般論を述べるのは好きではありませんが、多くの場合、腰部は圧倒的に、剪断力よりも圧縮の力をうまく扱っています。 次のパートは少しわかりにくいかもしれませんが、最善を尽くして簡単にします… 脊柱をまっすぐに保つ時(プレート、ゴブレット、2つのケトルベルを持ったフロントスクワットでするように)、脊柱の椎骨は互いに積み重ねられています。重力が下に引くことを考えると、胴体が直立していれば、力は脊柱を通してまっすぐ下にに向かいます。 対照的に、前屈したり、ヒンジを行う時は、重力は同じく下に引っぱりますが、脊柱は地面に対して平行になります。この場合、椎骨は、互いに”滑る“ことがないように働きます - 椎骨は脊柱の本来の位置を保つために剪断力に対抗しています。 繰り返すと- ほとんどの脊柱は、最初は剪断力よりも圧縮の力を好みます。 これこそが、私が腰部に問題を抱える人にプログラムの初期でスクワットをさせるとすれば、上体を起こした状態で行うバリエーションに留まる理由です。プレートやゴブレットスクワットは、どちらも始めるのにとても良いものです。 #3 本物の腹筋を構築する クライアントやアスリートから下記のような言葉を何度聞いたかわかりません: “私はただ腰が弱いんです。” いや。 いや。 いや、いや、いや、いや、いや、いや。 復唱してくださいーあなたは弱い腰を持ってはいません。 脊柱および骨盤のポジションが悪いと、腹部は安定性を作り出すのに最適ではない位置に置かれ、腰部の筋肉(脊柱起立筋、多裂筋など)が通常の役割以上に働くことを強いられます。 今では、私はこのトピックに関しては、覚えられないほど多くの記事を書いていますので、私のコアトレーニングへのアプローチに関してより学びたい場合には、是非ともこちらの記事を読むことから始めてください。 とにかく、あなたが抱えるクライアントやアスリートが腰部に関する問題に苦しんでいるのなら、プログラミングの初期の段階で、安全に成功するためのコアトレーニングエクササイズを見つけてください。

マイク・ロバートソン 2771字

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フィットネス業界で働くことに関して、面白いと感じていることがあります。私が参加する全てのパーティーにしている人たちは皆、フィットネスや健康の専門家のようです。これは、私が世界宗教を教えているときにも全く同じで:このクラスに入ってくる人は大抵、定期的に教会に通っているから、特定の祭日や祝日をお祝いしているから、これにもあれにも祈りをささげているから、宗教学の分野に飛び込むために必要なバッググラウンドを備えていると思っているのです。私たちは皆、自分の身体を持っているから、フィットネスについて知っている。私たちは皆、お金を扱っているから、ビジネスを知っている。これらが正しいのかどうか、私にはわかりません! 全ての学びに共通して、下記のように要約できる過程があります。 無意識な無能力 -何を知らないかを知らない 意識的な無能力 -何ができるか知っているが、できない 意識的な有能力 -プロセスを通して自分で考える 無意識な有能力 -技術を自動的に適用する フィットネスやトレーニングを学ぶ過程では、大抵の人は(あなたが人生で出会うほとんどの人は)、単純に「知らないことを知りません」。多くの人が、10億の実践者の中のある一人の攻撃的なステレオタイプをもとに、他の信仰の慣例を理解しています…ケチな奴、人食い人種、強姦者、あるいは何でも思いつくままに。もちろん、そうではないのですが。 フィットネス業界では、「太っている人は、なまけものである」、または長時間の有酸素運動が、完璧なフィットネスへの道だと考える傾向にあります。ビジネスでは、私たちはこう考える、… ちょっと待って、ほとんどの人が、フィットネス業界のビジネス的側面について実際に考えているかどうかは疑問です。 これは、無意識の無能力のよくある例の一つです。ジムを所有することの基本について、これといって何の知識がなくても、最低でも税金を支払い、適切で安全な道具を揃え、保険や掃除備品を準備することが期待されます。実は、こういったことをやらなければいけないことに気づくことが、次の段階である意識的な無能力へとつながるのです。 学び始めると、ビジネス要素だけでなく、グループトレーニングの展開の仕方を学び、「テレビやインターネットでこれを見た」といった無数の質問に答えるといった基本ステップを通じて、意識的な無能力と意識的な能力が融合していく傾向にあります。ある食べ物が良いか悪いかを判断するような単純なことは、実質的に不可能ではないのです。私はいつも冗談で言っていますが、下記にあげているものはみな、良いものとも悪いものとも証明されてきました。 コーヒー(何だって?)  ワイン 野菜(そうです、農薬) 水道水 肉 大豆 牛乳 穀物 私は、これらについていくことはできませんし、私のクライアントもこういった情報に悩まされています。食べ物のことになると、みなその過程で考えていると思います。エクササイズに関しては、かなり大きく前進してきたと思いますが、公共のジムへ行くといつも、一般の人々に良質な情報を届けることに関しては、まだ石器時代にいるのだと認識します。 私の経験では、無意識な能力の状態は常に、メンターや良質の指導によってサポートされます。私は、アスリートからこれまでに何度も、私がスナッチを行う様子や円盤を投げる動作を「見る」ことが、彼らが行う様々な練習ドリルよりも、はるかに良いと言われてきました。もちろん、反復を繰り返す時間は必要ですが(「反復は実行の母です」)、誰かが「到達している、やっている」というモデルがあることで、想像力が覚醒します。 文字通り、コネクションを“イメージし”、その上に築き上げるのです。私よりも優れた作家が、これをより上手く言い表しています。 「詩人の目は、微妙にも狂乱的に揺らぎ、天上から地上を、地上から天上を眺める; そして想像力が、知られざるものの外形を心に描くにつれ、詩人の筆はそれらを形あるものにし、空気のように何もないところにはっきりとした形象と名称を与える。」 ~ウィリアム・シェイクスピア 真夏の夜の夢 この「想像力が形を与え前に進める」ことの実践的な例は、経験豊富な旅行者と世界について語ると感じることができます。彼らの経験と回想が、全ての感覚を取り込み、ナショナル・ジオグラフィックの優れた写真にも勝る明確なイメージを与えてくれるのです。フィットネスでもビジネスの世界でも、講演者が「私ができるのだから、あなたもできる」と言っているのをよく聞きますが、まさにほとんどその通りなのです。ところで、 ストーリーを語ることは、人間の他のどんな活動よりも脳をより多く活性させると読んだばかりです。それである話を思い出したのですが。。。 フィットネスの専門家であるためには、教育への真に統括的なアプローチを要します。人間の身体の、様々な形状、動きおよび動きのトレーニング、モチベーション(全てのタイプ)、栄養、スポーツ、試合、そしてもちろん他の多くの分野においても、一通り理解している必要があります。しかし、こういったつながりを知るために、何度も世界を周る必要はありません。メンターと一緒に働き、近くにある機会を楽しみ、想像力が「前に進む」ことを可能にすることで、大抵はカバーすることができます。もちろん、できるならば是非、旅をして直接経験できることをつかんでください。でも、すでにそこへ到達している、到達したことのある人に聞くことでプロセスを簡単にできる機会も見過ごさないで下さい。

ダン・ジョン 2359字

エクササイズ処方の神話

始める前から問題への答えを持ち合わせていることはいいものです。考えなければならないような厄介で不確実なものを拭い去ってくれるという点で、エクササイズ処方という考えが、非常に魅力的である訳です。 しかし、患者の2回目の来院時に多くのセラピストが患者に尋ねる最初の質問のひとつは、“これらのエクササイズはうまくいきましたか?”ということだと思います。そして、私たちは答えが欲しい一方で、心の底では、物事が必ずしも私たちが望むようにうまくいくとは限らないと経験から分かっているのです。 では、私たちはなぜそれを処方的と考えるのでしょうか。あなたが対応しようとしているのは、症状なのか、評価基準なのか、または異なるニーズと機能を持つ実際の人間なのでしょうか? 私にとってリハビリとは、最初に設定された一つの処方的な手段ではなく、むしろ徐々に改善されていくような適応的な過程です。選択した成果に対する反応を測定しながら、繰り返し行う過程で加減したり作り変えたりしていくものです。強度、頻度、種類すべては、その人によって変化させ、彼らのニーズや要望に応じていつでも調整することができます。 私の個人的な意見として、それを心地よく感じられることは、積極的な運動ベースの介入に取り組むためのカギになると思います。 評価というものも、改善するためのひとつのプロセスです;新しい情報が明らかになったり、仮説が期待どおりに展開しなかったりした場合、問題となっているものは何かについての考えが変わる可能性があります。とにかく、私たちがしているほとんどのことは、とにかく情報に基づいた試行錯誤なわけですから、とうとう言ってしまいました! 初回の介入とそのパラメータは、単なる始まりに過ぎず、次に何が起こるかを確認するための試行であり、情報に基づいた推測でさえありますが、このことは実際、あまり話題になっていないようです。処方は、私達が認めたがるよりも、より提案に近いのでしょう。(大変面白いトレバー・ノアが、南アフリカでは信号機を“提案”であると解説するのに、いつも笑ってしまいます)。 身体的適応のためのエクササイズでさえ、処方的ではなくなってきています。身体的な適応は、非常に幅のあるレップ数と負荷で得られる可能性があることが分かってきています。努力と強度が身体的適応のカギであるように思われます。多くの場合、リハビリ研究では決して測定されないパラメータです! 学習過程 セラピストもその患者も、このことを学習プロセスとして見るべきです。これは、失敗でも、内省的でも、何もわからないことの現れでもありません。私たちが事前に答えを持ち合わせているという考えは、しばしば有害になることもあります。そのことによって、セラピストが自分の能力に自信を失い、リハビリの現実とは異なる期待を生み出す可能性があるからです。私たちは多くの場合、痛みと機能回復の間でどちらかを達成するためにどちらかを犠牲にしながら、試行する必要があります。 データ 研究データは、少し切れ味の悪いツールとして使用されることもあります。もちろん臨床経験も同じです。それぞれの患者特有の症状や治療および治療の効果はすべて、論文に書かれていることと一致すると想定してしまう可能性があります。しかし、データの報告の詳細を見ると、すでに設定されている変数の推定値があり、実際の患者にどのように効果があるかは、やはり適用前ではなく、適用後にしか知ることができません。 私たちの患者と彼らが紹介する症例は、研究では必ずしも正確に反映されていない可能性があります。どの論文も調査対象が人口全体でなく、ごく一部を対象としているため、信頼区間というものが設けられているのです。データを患者とマッチングさせるのが、臨床における課題です。 「研究の視野を広げる」は、ロジャー・ケリーの素晴らしい論文です。 “酔っ払いが灯かりを求めるためでなく、体を支えるために街灯にしがみつくように、統計学を使う人がいる” A. E. Housman また、現代の生物心理社会的な理解では、私たちが直面する多くの問題に対して、文字通り処方することなんてできないということを認識する必要があります。前にも言った通り、私が取り組んでいる主要なことのひとつは、身体を使って再び物事に従事する自信です。そのための処方は何でしたか? また、論文では、どのようなことをしたかについて明確な概要が示されていないことがよくあります。多くの場合、彼らは、別の論文や決して一覧されることもない付録を見るようにと指図します。それを実際に見てみると、強度や休憩時間などの重要な変数が欠落していることがよくあります。そのため“エビデンスに基づく” リハビリは、多くの場合、みなさんが考えているものとはまったく異な流ことが多いのです。 研究におけるプロセスが必ずしも臨床のプロセスを反映しているとは限らないと言ってしまうと、意見が分かれますかね? これはひとつのプロセスです 残念ながら、臨床的推論はカッコよくありません。治療が効くか効かないかを明白に示す方がかっこいいですし、その方が共感を呼びます。臨床での取り組みのニュアンスは、しばしばなおざりにされ、偏見と二極化に支配されます。臨床的に難しいのは、研究に基づく情報を、個人の症状や経験/信念などと調和させることです。 ただし、これは1回限りの取引ではありません。推論と改善のプロセスは、ケア期間を通して継続する必要があります。単に診断して初期評価で処方、ということを繰り返し行うだけではありません。 ツイッターでの会話でとても素晴らしいコメントがあったので紹介します: “エビデンスに基づく臨床とは、利用可能なエビデンスをやみくもに患者に投げつけることを意味するのではなく、来院するすべての患者それぞれに合った最適な戦略を見つけるための繊細な調節をするプロセスです”-Nihar Palan 私の意見として、偉大なセラピストは最高の処方や計画を持っている人ではなく、計画的に進まないときに何をすべきかを知っている人です。対処しなくてはならない状況や人の変化に応じて、適応し調整することができる人です。 他の方法 1. 臨床的推論 研究データ 病歴 検査 診断 適用 2. 反応 成果はなにか? どのくらいの期間がかかったか? 3. 適応 同じことを続けるか、または、変えていくか? 何を変えますか? 結論 処方とは、実は提案です 私たちは反応に基づいて時間をかけて改善していきます 実際、情報に基づいた試行錯誤です 研究は、明らかに結果のバリエーションが反映されます 研究では、処方に関して明確に示されないことがよくあります 適応方法を理解していることがスキルであり、フローチャートに従うことではありません 推論、反応 & 適応は、より優れたモデルです

ベン・コーマック 2938字

フロントスクワット

脚部の強化は、極限まで腰を落とし、お尻が踵につき、背筋はまっすぐで、肘の位置は高く保ったフロントスクワットをすることによって実現できます。ディック・ノットマイヤー*は、「フロントスクワットを3連続でできなければ、同じ重量のクリーン&ジャークはできない」と感じています。多数回のバックスクワットは、補助的に脚部のトレーニングに役立ちますが、重要なのはフロントスクワットです。 *ディック・ノットマイヤー パシフィカバーバルクラブのウエイトリフティングのコーチ ゆっくり下がって、早く上がる 数年前、オリンピックリフトの選手たちと交流するために、コロラドスプリングスのトレーニングセンターに、円盤投げの選手グループと一緒に行きました。そこで生活しているアスリートたちのクリーン後の回復能力に感動し、ドラゴマイヤー*に「秘密」を聞きました。「ゆっくり下がって、早く上がる!」 *ドラゴマイヤー コロラド州オリンピックセンターに所属。ウエイトリフティングのコーチ プレスが消滅して以来、強い脚を持っていないオリンピックリフターであること自体が難しいことではありましたが、私はその数少ないひとりだったのです。大学3年生の時、ウエイトリフティングの大会に出たのですが、そこで勝つためには、165kg/363パウンドを持ち上げる必要がありました。クリーンをして、勢いよく持ち上げ、成功の3つの白いライトを獲得するジャークをしました。興味深いことに、私のフロントスクワットのベスト記録は365パウンドでした。ディック・ノットマイヤーの格言、「3回フロントスクワットができれば、クリーン&ジャークができる」。その後、1991年にユタで行われた夏季大会で、私は182.5kg/402パウンドをクリーンして立ち上がり、ジャークを逃しました。このときも私のフロントスクワットのベスト記録は405パウンドでした。 なぜ過去から学んだ教訓を語って皆さんを飽きさせているのでしょうか?単純に、私が大学4年生のときに、円盤投げで190ft(約58m)を達成できたのと同じテコの長さが、私がスクワットマシンになることを阻止したのです!ここからは、スクワットがイマイチな私たちに役立つアイデアを少し紹介します。 「弾みを吸収する」プロになる。深くしゃがみこんだポジションからさっと立ち上がることを可能にする、素晴らしい伸張反射は、鍛えることができます。ディックは、「バースキークリーン」という練習ドリルを使っていました。バーにストラップを固定した状態で、立ち上がり、肩が適切なポジションに引き込まれるように、少し後ろに身体を傾けます。そこから膝のすぐ下くらいまで、前方に沈み、スクワットクリーンをしてまっすぐ立ち上がります。これは、現在のルーマニアンデッドリフトからするとスクワットクリーンと呼ばれるものですが、リフトのタイミングを学ぶ上でとても役に立ち、脚の問題も問題ではなくなります。 ワークアウトの始めにフロントスクワットをしてみてください。私がこれを始めたときは、フロントスクワットの後に、他の種目を行うということに慣れるのに数週間かかりました(特にジャーク、そしてスナッチも大変です)。また、一週間か二週間の間、全てのセッションの前にフロントスクワットをやってみてください。何も大げさに考えることはなく、2回を2セット、80%くらいで行って、さらに重いウエイトで1回行います。「神経システムの刺激」が必要な人もいるのです。これは単に、私が、開発しただけですが、役に立つと感じています。言語を習得する方法は、その言語にどっぷりとつかることですから、フロントスクワットの成功のためには、脚にどっぷりとはまることが必要なのかもしれません。 陸上競技のシーズンがフロントスクワットにとても役立つと気付きました。なぜでしょうか?オリンピックリフトから離れて、ボディビルディングや階段/丘の上り下りを多く行いました。シーズンが終わって1、2週間後、私の脚は4.5kgから9kgほど強くなっていました。恐らく一般的なコンディショニングでも役に立つでしょう。ジョー・ミルズ*は、問題の解決に、速いデッドリフトとスクワットの反復を推奨していました。ディック・ノットマイヤーのもとで、私たちは様々な「コンテスト」を行いました。102kgのベンチプレスの反復、自体重のスクワットの反復、シットアップ等、その他様々な楽しく、かつ生産的なコンテストを行いました。 *ジョー・ミルズ セントラルフォールズウェイトリフティングクラブ(ロードアイランド州)のコーチ 最後に、なんらかの弱みがあることを認める必要があります。私がソビエトスクワットのルーティンを行っていたとき、フロントスクワットの記録を184kgまで伸ばし、ジャークのフォームは、すっかり消えてなくなっていました。ジャークを再びやりだしたときには、ボトムポジションがより安定し、強くなっていました。秘訣は、ラルフ・マウンコーチ*が教えてくれた「弱みを強みに変えろ」にあると思います。もちろん、それを達成した瞬間にまた新たな弱みを見つけるのです! *ラルフ・マウン ユタ州立大学で選手引退後、40年ほど監督を務めたハンマー投げの名手 フロントスクワットは単純に、バーベルを胸で支えた状態でのスクワットです。理想は、重量を手で支えるのではなく、肩と鎖骨でバーを支えることです。それには「ちょっとした」柔軟性が必要です。この柔軟性を手に入れるのに一番良い方法は・・・フロントスクワットです!ゲーリー・バレンタイン*は、ジョー・ミルズの「両手のひらを後頭部におくことができれば、フロントスクワットができる」という言葉を師事しています。フロントスクワットの習得に専念すれば、やがて必ずあなたのものになります。 *ゲーリー・バレンタイン コネティカットオリンピックウエイトリフティングクラブのヘッドコーチ これはとても大切なことですが、ポイントは、まっすぐ脚と脚の「間」に座るように下がり、「お尻が芝生に付く」まで下がることです。 「脚と脚の間」とは何を意味するのでしょうか?スクワットやオリンピックリフトの真のポイントの一つがこのシンプルな概念です。私は、これを次のように教えます:アスリートをドアノブから腕の長さ分、離れた位置に立たせます。ハンドルを両手でつかみ、胸を「上げ」ます。上げる?私はアスリートに、カリフォルニアのビーチで水着のモデルとすれ違うところを想像してもらいます。アスリートは、すぐに胸をふくらまし、それにより腰部が収縮し、上半身全体が安定します。広背筋は自然にちょっと広がり、肩が「少し」後ろにきます。 腕が「ハンマー投げ」のポジションになるまで続け、ドアから離れるように後傾し、マッスルビーチの胸を保ちます。そこから、腰を下します。この瞬間、私たちは、基本的な生理学的事実に気付きます:脚は胴の支柱のように固定はされていないということです。それよりも、胴が脚の間に吊り下がっていると言ったほうが正しいのです。腕をまっすぐ保ったまま後傾して、身体を下げていくと、リフティングの本当の鍵である「脚と脚の間」にスクワットをすることが理解できます。アコーディオンのようにたたんだり、ひろげたりをするのではなく、脚の間に沈み込んでいくのです。座ってこの記事を読んでいるだけではなく、実際にやってみてください!スクワットや、スナッチ、スクワットクリーンの技術を高めるためには、この原則が欠かせません! フロントスクワットは、バーを胸にクリーンした後や、バーをラックから取って行うことができます。どちらの方法にも価値があります。私は、クリーンをした後にフロントスクワットをすることが、「本番の備え」にとても役立つと感じています。二回目のレップに向け、心身ともに気合の入った状態になります!

ダン・ジョン 3334字

背中に手を回す動きは実際に肩関節内旋を測定するのか?

私が、内旋可動域を出すために肩を背中に回してストレッチするのをあまり好きではないというのは、周知の事実です。過去にこのことについて書いたこともありますし、私の最も嫌いなエクササイズ5選にも入れました。この意見に対して、肯定的にも否定的にも、多くのフィードバックをいただきました。 多くの人が、これがアグレッシブなストレッチであり、ローテーターカフを極めて不利なポジションにさせるものだと私に同意する一方で、それは彼らの患者にとってやはり機能的なポジションであると主張する人も多くいました。 これが重要な機能的ポジションであることには完全に同意しますが、だからと言って、背中に手を回す動きが肩関節内旋を正確に反映しているとか、あるいはこのポジションでのストレッチが何の欠点もなく効果的であるというわけではありません。 どうやら、過去にこのことについて疑問を持ったのは私だけではないようです。私は、背中に手を回すことが肩関節内旋を正確に測定するのかを評価する、いくつかの調査研究に出会いました。 調査は何と言っている? Wakabayashiら(JSES 2006)は、電磁気式トラッキング法を用いて、背中に手を回しているときの肩関節内旋、伸展、内転、及び肘関節屈曲の大きさを評価しました。 著者らは、肩関節内旋の大部分は、患者の手が仙骨に触れる前に起こっていると報告しています。また、仙骨に触れるには、肩関節伸展及び内転が著しく増加します。手が仙骨を通過した後の動作の大部分は、肘関節の屈曲によるものです。手が第12胸椎を通過した後は、内旋の顕著な増加はありません。 つまり、仙骨に到達することがこの動作の鍵であり、肩関節内旋、内転、及び伸展は、どれも仙骨に到達する能力を制限する可能性があるようです。 Mallonら(JSES 1996)は、健常者を対象に、背中に手を回す際に貢献する動作をレントゲン撮影を用いて評価しました。著者らは、動作の35%は、実際には肩関節ではなく肩甲胸郭関節で起こっていると結論付けました。彼らはまた、肘関節屈曲がこの動作の重要な要素であることを認め、背中に手を回す姿勢での肩関節内旋測定は無効であると考えました。 Ginnら(JSES 2006)による別な研究では、肩に痛みを抱える137名の被験者グループにおいて、肩関節内旋の減少を評価する際の、背中に手を回す動作の妥当性を評価しました。著者らは、背中に手を回す動作と、標準の角度測定法による肩関節外転45度または90度での肩関節内旋を測定しました。その結果、両動作の間には低から中程度の相関しか見られなかったのですが、より重要だったのは、背中に手を回す能力が能動的肩関節内旋の減少とは相関がなかったということでした。 臨床的意義 それでは、このすべては何を意味するのでしょうか?私の考えはこうです: 背中に手を回すことは、肩関節内旋の有効な測定方法ではない。その動作は、肩甲骨の傾き、肩関節内旋、内転、伸展、及び肘関節屈曲の組み合わせによって生み出されます。これらの要素のどの組み合わせも、この動作に影響を与えるでしょう。 この動作を使用して肩関節内旋運動を定量化する、肩のアウトカムスケールを使う際には注意する。残念ながら、Constant (Shoulder) Scoreのスケールや、American Shoulder Elbow Surgeons (ASES)スケールのように、この動作を使用しているものがあります。 肩関節内旋を計測したいなら、実際に肩関節内旋を測定する。ほこりをかぶった引き出しから、古い角度計(ゴニオメーター)を持ち出しましょう、実は結構便利ですよ! 背中に手を回す動作に基づいて治療介入をしない。たとえば、その人がただ背中に手を回す動作ができないからと言って、関節包後部のモビライゼーションを行ってはいけません。仮定せずに、評価しましょう! 背中に手を回す動作を改善する方法 これらすべてに基づいて、背中に手を回す動作に制限のある人がいたら、何をすべきでしょうか? これが機能的なポジションであることは、私も理解していますし、同意します。 これをストレッチとして用いることはやはり避けるべきだと思います。私は良い結果を得られたことがありませんし、そのストレッチは肩関節及びローテーターカフを不利なポジションに持って行っていると本当に信じています。 これらの研究からの情報を用いて、なぜその人が背中に手を回すことができないのかを探りましょう。肩甲骨、肩関節伸展、内転、及び肘関節屈曲を評価しましょう。それらの動きのうちどれに制限がかかっていますか?すべて肩関節の内旋であるとただ思い込んではいけません。 これが、背中に手を回す動作を改善させる私のアプローチです。肩甲骨、肩、そして肘、それぞれの動きを分解し、見つけた制限を治療していくのです。 多くの場合、制限されている個々の動作に焦点を当てることによって、背中に手を回すための機能的な能力は向上するでしょう。

マイク・ライノルド 2147字

ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート2

ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要(続き) FMSの得点は外傷のリスクを予測するか? FMSの基本原理は、有害である代償パターンの保有率を測定するというものである。少なくとも18の研究が、FMSの得点が外傷率を予測することができるのかどうかを評価している。これらの18の研究のうち11の研究が、FMSの得点が14点を超える人と比較し、14点以下の個人における外傷に対する相対的な危険性を評価した。これらの11の研究のうち4つの研究が、FMSの得点は外傷の危険性を予測することはできないということを発見した。残りの7つの研究では、14点以下の個人の外傷に対する相対的な危険性は1.65から11.67倍であり、これは、FMSが個人の外傷の危険性の大小を、区別することができるかもしれないということを示唆している。 FMSの得点はアスレチックパフォーマンスを予測するか? FMSの背景にある概念のひとつは、非効率であると考えられる代償パターンの発生率を測定することであり、ゆえにパフォーマンスの低下度合いを予測する、というものである。アスレチックパフォーマンスとFMSの総合得点の相関関係を評価した8つの試験において、2つのみがアスレチックパフォーマンスとFMSの得点の相関関係を発見した。この2つの試験両方において、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスとFMSの総合得点の間に、ある程度の相関関係が見いだされた。これは、FMSが有害となる代償パターンを発見することができないか、もしくは見つけられた代償パターンがパフォーマンスへ悪影響を及ぼさないかのどちらかであるということを示唆している。 エクササイズトレーニングはFMSの得点を向上させるか? もしFMSが有益であるのならば、基準テストの結果を基に行動を起こし、後のテストにおける得点を向上させることが大切である。少なくとも9つの研究が様々な集団において、FMSの得点を向上させるための異なるエクササイズプログラムの能力について評価している。9つの研究のうち8つが、ある種のエクササイズがFMSの得点を向上させることができたと報告している。しかしながら、コレクティブエクササイズやファンクショナルエクササイズと従来のレジスタンストレーニングを比較した2つの研究において、研究者たちは両方のケースで、2つの方法の間にFMSの得点の向上に対し著しい違いはなかったことを発見している。 ボディ・マス・インデックス(BMI)はFMSの得点に影響を及ぼすか? いくつかの研究がFMSの得点に対するBMIの影響について報告している。FMSの得点に対するBMI指数の影響についての報告をした全ての研究は、より高いBMI指数がより低いFMSの得点と関連していることを発見している。 ある研究でもまた、FMSの得点が身体活動に積極的に関係していると発見されていることから、BMIとFMS得点の間の逆相関関係は、過体重/肥満の人が身体活動をあまり行わないという傾向によりもたらされている可能性がある。 FMSの得点と他のテスト結果との関連性はあるか? FMSは、肩関節の内旋や外旋の可動域の計測とは関連性が無いようである。しかし、スター・エクスカーション・バランステスト(SEBT)の結果と、FMSにおいても乏しいパフォーマンスが予測される、片脚垂直跳びでの高い非対称性とは関連性をもつようである。 FMSについて他に何がわかっているか? 他にも様々な研究がFMSに関して行われている。研究者たちは単にFMSを行うことは自己知覚近位安定性の低下に繋がると観察した。研究者たちはまた、FMSの得点が悪かった(14点未満)人と良かった(14点超え)人の間で、腰部にかかる負荷に著しい差異は無かったと記述している。 キーポイントは何か? FMSは、ある程度外傷の危険性が高いアスリートを識別する予測能力のある、比較的信頼性の高いフィールドテストであるようだが、アスレチックパフォーマンスとの関連性は無いようである。加えて、多くのエクササイズ、トレーニング、そして身体活動はFMSの得点を向上させることができる可能性が高いようである。しかしながら、テスト基準に関する知識と発達段階がテストの結果に影響を及ぼすようであること、テスト動作が高速で行われ負荷がかけられた場合、同様に行われることができなくなること、総合得点を構成する個々の要素に相関性がないことから、総合得点による外傷リスクの予測は、適切ではなく、テストの有効性に関しては深刻な懸念がある。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2049字

ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート1

ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要 ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは何か? ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは、標準化された複合的な動きから成る7つの個々のテストにより構成された、スポーツ参加前のスクリーニング手段である。各テストは試験者により0から3に評価され、総合得点が与えられる。これには、ディープスクワット、ハードルステップ、インラインランジ、ショルダーモビリティ、アクティブストレートレッグレイズ、トランクスタビリティプッシュアップ、ロータリースタビリティが含まれる。痛みがある場合は0、対象者が動作を行うことが不可能な場合は1と評価される。また、対象者が動作を行うことは可能であるが、代償動作を伴う場合は2と評価され、対象者がその動作を正しく行うことができた場合は3と評価される。各動作に対するそれぞれの得点は、21満点中の最終的な得点として集計され、この総合得点が外傷のリスクを予測すると考えられている。このテストを研究した研究者たちは、得点が14点以下の個人は、14点を越える個人に比較して、外傷のリスクがより高いと示唆している。 標準的なFMSの得点は何点か? 健康ではあるが、トレーニングを行っていない人たちにおける標準的なFMSの得点は、14.14 ± 2.85 点から to 15.7 ± 1.9 点の範囲である。トレーニングを行っていない人たちのほとんどが、代償パターンを示していることが考えられ、また外傷のリスクの増加とパフォーマンスの低下が予測できると思われている14点以下という区切りの得点を多少上回っている、ということを示唆している。 FMSは信頼性の高いテストか? テストが有効であるためには、それが信頼性の高いものである必要がある。信頼性とは、テストが多少異なった時間に同人物によって(評価者内)、もしくは、同時に違う人たちにより(評価者間)繰り返されることができ、同じ結果を生み出すことができるかどうかということを示す。少なくとも14の研究が、FMSの評価者間の信頼性、または評価者内の信頼性を調査している。14の研究の内、13の研究がFMS総合得点の評価者間の信頼性についての報告をしており、8つの研究がFMS総合得点の評価者内の信頼性に対しての報告をしている。FMS総合得点の評価者間の信頼性について調査した13の研究の内1つの研究のみが、信頼性が中等度以下であったことを報告している。この唯一の研究では、相関関係を分析する為に他とは異なった統計的方法を用いていたこと、また、かなり多種多様の背景をもつ評価者を採用していたということは注目に値する。評価者内の信頼性について報告をしている8つの研究の内、1つの研究が学生評価者によるテストが低い信頼性を示したということを発見したが、7つの研究では少なくとも中等度の信頼性が報告されている。これは、FMSはおそらくほとんどの人に対し、フィールドテストとして許容できる程度の信頼性があるということを示唆している。 FMSは有効なテストか? テストが有益であるためには、それが有効である必要がある。有効性とは、テストが測定するべきものだけを実際に測定しているのかどうかということを表す。FMSの場合、テストの目的は、スポーツで同じ動作を行う際の代償パターンを特定することである。いくつかの研究が、FMSが有効かどうか、またスポーツの動きの中で行われる際の代償パターンのみを測定しているのかどうかを評価した。1つの研究は、テスト基準に関する知識がテストの結果に著しい影響を及ぼすと報告しており、これはテストのパフォーマンスがアスリートからの影響を受ける可能性があるということを示唆しているかもしれない。他の研究は、発育段階もまたテストの結果に影響を及ぼすと報告しており、テストが若いアスリートには適していないということを示唆している可能性がある。その他の研究では、様々なテストの結果間での相関関係が乏しいと報告されており、外傷の危険性を予測するために各テストの得点を合計して総合得点を出すことに対する有効性が疑問であるということを意味している。最後に、ある研究では、高速で高い負荷をかけて行われた類似するエクササイズでは、異なる動作特徴が現れたと報告されており、FMSを行う際にアスリートによって示される代償パターンが、スポーツの動きの中で示される代償パターンとは異なるかもしれないということを示唆している。結果として、これらの研究はFMSの有効性を疑問視している。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2050字

人生を掌握する

握力はアルツハイマー病を抑えるのに役立つのでしょうか? そうかもしれません。 著書「Outlive」の中で、Dr.ピーター・アティアは、握力と認知症発症率の間に関連があることを示す研究結果について説明しています。握力が弱い人ほど、認知症になる可能性が高くなります。握力が強いからといって、必ずしも認知症にならないとは限りませんが、統計的にはそうならない確率の方が高いようです。あるいは、そうなったとしても、人生の後半になるのでしょう。Dr.アティアの本では、運動が神経や認知機能の低下に対する最善の防御策の一つであることも語られています。実は、運動はすべての生命を脅かす病気に対する最高の防御策の一つなのです。 皆さんはどうかわかりませんが、私にとっては、認知症で自分を見失うというのは、この世で最悪なことのひとつです。その人だけでなく、周りの人たちにとっても。現在、アルツハイマー病の患者数は670万人以上と推定されています。この数字は、アルツハイマー病に影響されている人の数には遥かに及びません。精神的な衰えや自分らしさの喪失は、友人や家族に多大な傷を与えるのです。愛する人が目の前でゆっくりと消えていく姿は、誰だって見たくないものです。それは、誰にとっても拷問に近いものです。 しかし、もし認知症を予防したり、遅らせたりすることができるとしたらどうでしょうか?運動は病気から身を守るのに役立ち、強い握力は神経学的退行から脳を守る可能性があるとすれば、一種の生活保険として、毎日の簡単な運動計画を立ててみてはいかがでしょうか?自分のためではないとしても、自分を愛してくれる人のために? 私は、私たちが強い握力を身につけることで、人生をよりよく把握し、生きている時間を最適化できる可能性があることは、みんなの最善の利益だと思います。握力の強さを活用し、鍛えるための日々のシンプルな運動計画は、私たちにとって、少しの時間の投資で大きな利益を得ることができる、最良の時間投資のひとつとなり得るでしょう。 その一助になればという望みを込めて、そのような運動計画がどのようなものかを提供します。何から手をつけていいかわからないなら、ここから始めればいいのです...。 これを毎日実行しましょう 舌を口蓋につけて鼻呼吸をする練習をします。肺を下から上へ満たすように試みます。これは、神経系を和らげ、さらには体内の炎症に対抗するのに役立ちます。これを5~10分ほど行います。 床に手と膝をついて前後にロッキングします。水平線に視線を向け、頭を上げておきます。これにより、前庭系が活性化され、脳の両半球が活性化されます。脳に「健康的」で安全な情報を「与える」のです。これはまた、神経系を和らげます。また、両手をついてロッキングすることで、手の感覚受容器や筋肉が刺激されます。この刺激は、実は手や肩の健康や強さに寄与しているのです。これを3~5分ほど行います。 ぶら下がる練習をします。ドア枠に安全に設置された懸垂棒は、大きな健康投資となるかもしれません。毎日のぶら下がりに、とても実用的な方法を提供してくれます。ぶら下がりにはとても多くのメリットがあります。背骨の減圧をし、肩関節の回復を助け、ぶら下がることで握力が強くなるので、脳を守る可能性もありそうです。全体重でぶら下がることができない場合は、単に足を床につけたまま、体重を一部かけて握力に挑戦してください。足をつけた状態でぶら下がることには大きなメリットがあるのです!また、足が浮いている状態でのぶら下がりにも大きなメリットがあります。できることを、そして両方やりましょう!これを1日3~5分程度行ってください。1回30秒のぶら下がりを5回くらいやってみるかもしれません。それが簡単にできるようになったら、それぞれのぶら下がりに10秒ずつ追加してください。2分までできるようになったら、それを2-3セット行うだけです。1日を通してぶら下がりを行うことも可能です。 ぶら下がれない場合はもちろん、ぶら下がれる場合でも、重いスーツケースキャリーを行います。重いウエイト(重いというのは相対的なものですよね)を手で体側に抱えて、時間や距離を歩きます。片方の手で体重の20%-30%を目安にします。30秒から1分ほど歩いたら、手を入れ替えます。これを総歩行時間10分程度行います。歩きながら、舌を口蓋につけて鼻呼吸をする練習をします。これは呼吸を良くすることを助けるのみでなく、握力を増幅させます。スーツケースキャリーは体幹も素晴らしい強さを構築し、握力は体幹の強さにつながるものです。 これは、20分から30分程度でできる超簡単な日々のルーティンです。好きなものを加えたり、取り除いたりすることができます。大切なのは、日々の積み重ねの部分です。毎日実行することで、自分の脳と身体に「お願い」をするのです。この「お願い」は、神経経路の強さと身体組織の強さの適応で応えられます。基本的には身体を使うわけですが、身体を使えば、身体を使うことを怠った場合よりも長く身体を維持することができるようになるのです。 老後も脳を健康に保つことを助けるために、さらに身体を動かしたいのであれば、毎日早足で散歩をしましょう。できれば、毎食後に1回行ってください。8,000-10,000歩を目安に頑張ってください。そして、舌を口蓋につけて鼻呼吸の練習をしたり、股関節の動きに合わせて肩を揺らしたりしましょう。歩くときは四肢を使います!これは本当に脳全体を活性化させ、健康維持に役立ちます。 あまりに単純に思えるかもしれませんが、これが出発点なのです。もしそうしたければもっと動いて良いのですが、毎日これだけやっていれば、気分が最高に良くなるだけでなく、身体的にも精神的にも、そして感情的にも、内側も外側も健康になるでしょう。そして、あなたの大切な人やあなたを必要とする人たちのために、あなたが心身ともに健全な状態で、人生の後半に立ち会うことができる可能性は十分にあるのです。このような理由から、また、その希望のためだけでも、毎日の運動計画を持つことには間違いなく価値があります。毎日、自身の握力を動かし、使い、挑戦します。長い人生の中で、これほど大切なことはそれほど多くはないかもしれません。

オリジナルストレングス 2662字

筋肉の孤立?あなたはそうやって動作を覚えましたか?

今回のブログは昨日子供を公園に連れてった時に思いついた事をまとめました。特に科学的事実に基づいてるというわけではないのですが、個人的に伝えたいことを書いてみました。 私の息子は今16ヶ月を迎えたところですがその成長のスピードには目を見張るものがあります。特に言語と動作・身のこなし方の二つの分野での成長は著しく、息子の成長過程をみるにつれ、私たちがどうやって人の動作やそれに関する問題を矯正し、より効率よく動く事を教えることが出来るのか、について考えさせられました。 よく私たちは、動作の機能不全の原因は“特定の筋肉が電気信号を正しいタイミング・強度で発していない事”(筋繊維動員)や、違う筋肉が本来すべき筋肉に代わりその働きをしていることに起因すると聞きます。そこで正しい“筋繊維の動員”という名目の元、人を横たわらせ、様々な部位を突っついたり、今までにしたこともないような動きをするように命じることで筋肉の動きを誘発し、問題を矯正しようとします。この”筋繊維動員パターン”という用語は私のブログに関してグーグルでもっとも検索されている用語のひとつですが、そこである疑問が浮かびました: 人は最初からこういう特別な意識をもって動作を覚えたのだろうか? きっと、違うのだと思います。前述されたような筋動員テストは特定や細かな動きを求めていますが、息子の動作や言語に関する成長において、私が一つ気づいたのは、それらは特定されず大雑把に習得されていくという事。彼はまず大まかな動きや声を出すことを覚え、それらを土台に複雑な言葉や動作を習得していきます。その基本的な動作などを体に染み込ませ、生涯をかけて磨きをかけ、改良していくのだと思います。 身体の動きの中で特定の筋肉のみを孤立して動かすことはできませんが、特定な動きを孤立することは出来ます-例えば股関節の外転のように、関節周辺の筋肉が調和して働くことで、特定の関節に孤立した動きを起こすことはできます。しかし、私の息子が、横向きに地面に寝そべりながら脚を外転したり、ブリッジの体勢で臀部の筋肉を狙って緊張させたり、ハーフスクワットのように屈みながら横歩きするのは見たことがありません。彼が特別なだけなのかもしれませんが、私は今まで他の赤ちゃんがこういう特定な動きを狙って行っているところを見たことはありません。(その分野での私の見識は限られてはいますが) では、元々細かな意識で動作を学習していないのに、なぜ私たちはそのような方法で動作を学びなおそうと試みるのでしょうか? 今、私の息子は世界と触れ合いながら様々な仕草や実用的な動作(そのほとんどは現時点ではあまり使えないとは思いますけど!)を覚え、これからの人生の糧となっていくであろう膨大な貯えを養っています。寝返り、這うこと、歩くことを学び、そして走ることを学ぶようになります。しゃがみ、立ち上がり、身体を起こし、よじ登り、これら全てを深く考えることなく、様々な方法で学びます。そして私達からしてみれば簡単な動作である、物を拾い、落とす仕草を繰り返して、彼の運動制御系統が発達しているのがわかります。やがて、これらの作業の難易度は増し、早くなり、無意識な状態で行われるようになるのでしょう。 これが、完璧で、深く考えられた、機能的とはいえない孤立した筋肉の動員を通して動きの矯正をしようとする私達の試みに、どのように関連づけられるのでしょうか?関連性はあまりないですよね。息子は遊びながら、探求心をもって様々なことを学ぼうとしています。私たちの脳は新しい動きを好みます-特にその動作の種類、また引き出しが日々の生活やその繰り返しの中で失われてく日常生活の中では。 これら全ては息子の脳に神経可塑性の変化を生み出し、生涯にわたって神経レベルでの発達を続けていきます。ニューロンは共に発火し、配線されます。動きのパターンの中で同時に働くニューロン数が少なければ、共に発火、配線するニューロン数も少なくなります。筋肉を孤立させようとする、というよりも、動きを孤立させようとすることで、私達は運動パターンの連結も、なめらかで可変的な運動学習の環境をも損なうことになってしまうのです。 私たちが時に問題に直面するのは、細かい動作の欠落が原因ではなく、もっと単純で根本的な、幼少期に覚えたはずの動きをどこかで失ってしまうからではないでしょうか。 私達の動きの能力が、日々の暮らしの中で、徐々に衰退していくこともあります。座位中心、不自然で型にはまったエクササイズ、特定の筋肉のみを活性化しようとするエクササイズ等のために。私達は、子供の頃のように遊び心を持って、体の動き・動かし方を探求することで、動きのポテンシャルを模索しようとすることをしなくなっています。 神経可塑性の変化が常にポジティブなものであるとは限りません。 神経学の表現で“使うか失うか”というものがありますが、これは使われていない神経接続は時と共に失われていくことを表してしています。これは、私たちが、幼少時に遊び、模索しながら培ったものに対しても言えることでしょう。 私たちは失敗を通して学びます。失敗は、私達が学習の過程で通り過ぎる、生物学的に必要なものです。最初から完璧な動きができるのではなく、常に新しい動作や流れを覚えたりします。私たちは、完璧なフォームでエクササイズや動きが実施できないのであれば、実行する価値がない、と感じてしまいがちです。どんなスポーツを習うにも、最初のうちは、上手くできるわけではなく、我慢して努力して上達しようとします。私達は、最初から、完璧な運動パターンや筋肉を活性化できるわけではなく、出来の良くない状態からスタートし、関連性のある動きを学習しながら徐々に上達をしていくのです。 私達は賢くなりすぎて、それが逆に私達の首を絞めているのでしょうか?私たちの人体の解剖学に関する知識は膨大になり、人体解剖を行い、身体中の筋肉の付着部や働きに関する詳細を素晴らしいイラストレーションで伝える分厚い書籍が出版されています。それ自体は素晴らしい業績ではありますが、臨床や、エビデンスを基本とした研究などによって実証された手法によって、何をすれば良いのかを判断する指標としている風潮もあります。これでは、どこかポイントがズレてしまってはいないでしょうか? 私たちが、どのようにして運動コントロールを学習してきたのかを鑑みることをしなければ、進化はそこで止まってしまうでしょう。なぜなら自然は、あらゆる変数を計算しつくし、何億年もの時間をかけ、もっとも実用的で、効率的な人間の身体を作りあげてきたからです。 私達は、三次元の環境に存在する私達人間のスピリットや、多面的な動きの能力を大切にする替わりに、ある意味、本能に逆らうように、調査に調査を重ね、身体を複雑化しているようにみえます。 私達に、一番問題が少なく、身体が自由に、痛みなど無く動いたように思えた時代を振り返ってみましょう。赤ちゃんのようにスクワットをすべきだとか言っているわけではないのです。ただ、私達が動きの基本を形成した運動学習の時期を振り返って、どのように行ってきたのかを伝えているだけなのです。 あまり科学的な内容ではないことをお詫びします。ただ考えていたことをシェアしたかったので。

ベン・コーマック 3100字