スクワットのトレーニングはデッドリフトを向上させるか? パート2/2

スティッキングポイントにおける関節角度 研究者たちは、非常に大まかな各部位の長さを仮定した後、リフトオフのにおける胴体、大腿部、脛の絶対的な関節角度を規定し、下記のようなスティッキングポイントにおける平均関節角度の図を作り出した。 この図は、2つのリフトにおけるスティッキングポイントは、非常に異なった体位で起こるということを示している。研究者たちは実際に、スティッキングポイントでの股関節と膝関節の角度は、スクワットにおいては比較的類似しているが、デッドリフトにおいては大きく異なるということを観察している。 これは、デッドリフトにおけるスティッキングポイントでの膝関節角度が、スクワットにおける膝関節角度よりもより伸展位にあるためである、ということが図から見て取れる。研究者たちは、デッドリフトが膝関節から股関節へと順番に起こる動きであるのに対し、スクワットは膝関節と股関節の動きが同時に起きるため、このような結果になったと記述している。 スティッキングリージョンにおける関節角度可動域 研究者たちはスティッキングリージョンにおける各関節角度の可動域、つまり、バーが最大速度となる地点からスティッキングポイント(最小速度となる地点)までの可動域を計測した。研究者たちは、膝関節と股関節の可動域はスクワットにおいては類似しているが、デッドリフトにおいては異なることを発見した。これはデッドリフトでは、スティッキングリージョンにおいて膝関節が股関節よりも小さな可動域内で動くためである。 このことは、スティッキングリージョンを通過するためには、スクワットでは、股関節と膝関節両方の伸展トルクが必要であり、デッドリフトでは、膝関節の伸展トルクよりもより大きな股関節伸展トルクが必要であるということを示唆している。この可動域は下記のグラフに示されている。 その他の観察報告 研究者たちは、スクワットとデッドリフトに対するバー速度の第2のピーク(スティッキングポイント後)に関するグラフは提示しているが、データは提供していなかった。グラフでは、スクワットにおける第2のピークは最初のピークよりも著しく高かったことが示されている。一方、デッドリフトにおいては、実質的に第2のピークは第1のピークよりも低かった。 この報告は、スクワットにおいては、スティッキングポイントからロックアウトへより楽に移行することができる一方、デッドリフトにおいては、リフターはスティッキングポイントからロックアウトへと移行するために懸命に努力しなくてはならないと示唆しているために、非常に興味深いものである。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、スクワットとデッドリフト両方のスティッキングポイントが、各リフトにおいて異なる場所で起こるということを観察した。彼らは、デッドリフトが膝関節から股関節へ順番に起こる動きにより行われるのに対し、スクワットは膝関節と股関節で同時に起こる動きにより行われるということを記述している。 そのため研究者たちは、個々のリフトには著しく差異があり、これらのリフト間にはクロスオーバー効果は存在しない、と示唆していると結論付けた。それゆえ彼らは、スクワットやデッドリフトのどちらかを、その他方を向上させる為に行うことは効果的ではないかもしれないと示唆している。 *** 制限要素は何か? この研究には下記のようないくつかの点において制限があった。 これはスクワットとデッドリフトの即時的な生体力学の比較であり、トレーニングに関する研究ではなかった。それゆえ我々は、その研究は、スクワットトレーニングがデッドリフトのパフォーマンスに反映するかどうかの有益な洞察を提供したとしても、トレーニングの研究が提供するようなレベルでの情報は与えてはくれないということを知っておくべきである。 この研究はパワーリフターにおいて行われているため、その結果を他のアスリートへ当てはめるには注意が必要である。 この研究はそれぞれの主なポイント、もしくは、主な段階におけるバーの最大加速度を記録していなかった。2つのリフト間で、特に床から持ち上げる際のバーの最大加速度を比較すれば非常に興味深かったであろう。 この研究は、それぞれの主なポイント、もしくは主な段階において、各関節の最大角度の速度と加速度を記録していなかった。特に床から持ち上げる際の2つのリフトの最大関節角度の速度と加速度を比較すれば非常に興味深かったであろう。 この研究には、パワーリフターが1つのリフトからもう一つのリフトへの移行に気がついたかどうか、また、そのリフトが相互に成り立っていることを感じたかどうかというような質的情報が含まれていなかった。スクワットのフォームがデッドリフトのフォームと似通っている個人では、2つのフォームが著しく異なる個人よりも、よりトレーニングのクロスオーバー効果がみられるかどうかを見るために、長期にわたるトレーニング研究で測定されたスクワットとデットリフトのフォームの相互個性を比較できればよかったであろう。 *** 実践的な意義は何か? パワーリフターに対して スクワットとデッドリフト両方のスティッキングポイントは、各リフトにおいて異なる場所で起こる。ゆえに、パワーリフターが、向上の戦略を練るためには、それぞれのエクササイズにおいて別々にスティッキングリージョンを確認する必要があるかもしれない。 スクワットは膝関節と股関節で同時に起こる動きであり、デッドリフトは膝関節から、そして股関節へと順番に起こる動きである。これは、スティッキングポイントの差異と共に、スクワットをトレーニングすることはデッドリフトのパフォーマンスにそれほど良く移行することはないであろうということを示唆している。ゆえに、パワーリフターは、各リフトに対して別々のトレーニングルーティンを特定するべきである。 デッドリフトのスティッキングポイントは、股関節を比較的屈曲し、膝関節を比較的伸展させたポジションで起こる。この関節角度の組み合わせは、伸張され、そのため活発になったハムストリングスの筋肉群を示唆する。それゆえ、補助的なエクササイズで、特に股関節の伸展を通じてハムストリングスの筋肉をトレーニングすることは、デッドリフトのパフォーマンスの向上に有益であるかもしれない。 デッドリフトのスティッキングリージョンでは、膝関節の可動域よりも股関節の可動域がかなり大きい。これは、デッドリフトのスティッキングリージョンを通過するためには、股関節の伸展トルクは膝関節の伸展トルクよりもより重要であることを示唆している。ゆえに、デッドリフトのパフォーマンスを向上させるための戦略は、股関節の伸展トルクを向上させることから始まるべきである。 スクワットのスティッキングリージョンでは、股関節と膝関節の可動域が類似している。これは、スクワットのスティッキングリージョンを通過するためには、股関節と膝関節の伸展トルクが同等に大切かもしれないということを示唆している。ゆえに、スクワットパフォーマンスを向上させるための戦略は、股関節と膝関節の伸展トルクの両方を同等に向上させることから始まるべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3147字

スクワットのトレーニングはデッドリフトを向上させるか? パート1/2

オンラインのパワーリフティングコミュニティーでは、スクワットのトレーニングがデッドリフトのパフォーマンス向上につながるのかどうか、という議論が引き起こされている。多くのリフターが、スモロフスクワットやロシアンスクワットプログラムのサイクルによるデッドリフトの向上を報告しているが、他のリフターはそれほど運が良いわけではなく、デッドリフトを行うことからよりよいデッドリフトのパフォーマンスを得ている傾向にある。 スクワットとデットリフトのクロスオーバー効果を分析するだけの十分なトレーニング研究がなされていない状況において、我々はその2つのエクササイズの生体力学的な類似性を調査している、即時的研究に目を向けなければならない。 この研究は、デッドリフトに関する個人の生体力学的な特性に関しての非常に興味深い手掛かりに加え、いくつかの有益な洞察を提供している。 研究論文: コンペティション中の、パワーリフティングスタイルのスクワットと標準的なデットリフトの運動学的解析:これらのリフト間にクロスオーバー効果はあるのか? へールズ、ジョンソン&ジョンソン、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2009年 *** 背景 多くのパワーリフターたちは、スクワットとデッドリフトが非常に類似した特性を持っていると信じており、ゆえに、どちらか一方のリフトを行うことは、そのクロスオーバー効果によりもう一方のリフトを著しく向上させると考えている。しかしながら、このクロスオーバー効果が起こるのかどうかは明確ではない。 スクワットとデッドリフトパフォーマンスの間の関係を評価するために最適な研究デザインは、一方のパワーリフターのグループがスクワットエクササイズのみのトレーニングサイクルを行い、もう一方のグループがスクワットエクササイズとデッドリフトの組み合わせのトレーニングサイクルのみを行うというようなトレーニング研究であろう。デッドリフトに関しても、デッドリフトのみのグループとデッドリフトとスクワットのグループといったように、同じような研究を行うことができる。しかしながら、このような研究が存在しない状況においては、この2つのリフトの生体力学的類似性の即時的評価が行うことができるであろう。 このような生体力学的評価に関して、これまでの研究では、スクワットとデッドリフトの両方に膠着領域(スティッキングリージョン)があるということを確認している。そのスティッキングリージョンこそが、どのようにしてパフォーマンスを最も向上させるかの評価のために分析するべき、リフトの重要な部分なのかもしれない。スティッキングポイントでは、バーが減速した前段階を受けて、バーの速度は最小である。(そしてそのため、リフターによってバーベルにかけられた力は、重力によってバーベルにかけられた力よりも少ない。) 結果的に、スクワットとデッドリフトのスティッキングリージョンを調査することは、その2つのリフトが生体力学的に類似するのか、もしくは異なるのかを評価するために有益であるかもしれない。 しかしながら、特にデッドリフトにおいて、そしてある程度スクワットにおいても、個人のパワーリフターが、より膝を屈曲させたポジションや上体を起こしたポジションでのレッグリフト戦略を導入しているか、もしくは、より膝を伸展させ、上体をより屈曲させたポジションでのバックリフト戦略を導入しているのかにより、個体差があるかもしれない。これは、デッドリフトのパフォーマンスに対してスクワットトレーニングからの恩恵を受け得る人達が存在する、ということを示唆しているのかもしれない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、生体力学的な観点から、類似の程度を究明するため、スクワットと標準的なデッドリフトの関節角度の動きを比較したいと考えた。そのため彼らは、地域のパワーリフティングコンテストにおいて、全国大会への出場権を得た男性競技者25名を集めた。 研究者たちは、4台の同期化されたビデオカメラを使用し、パワーリフターがコンベティションにおいてスクワットとデッドリフトを行う際の3D分析を行った。このセットアップにより様々な関節角度と可動域(ROM )の計算が可能となり、リフトオフ、ニーパッシング、ロックアウト、の3段階においてリフトが分析された。 *** 何が起こったのか? バーの速度 研究者たちは、リフトオフではスクワットとデッドリフトの間で、バーの平均速度に著しい違いがあるが、バーの最高速度地点や、スティッキングリージョンにおいては差異がないことを発見した。下記のグラフで見られる通り、スクワットにおいて、コンセントリック段階の始めではバーの速度は非常に低速であった。 デッドリフトは完全停止からのコンセントリック段階から始まり、スクワットはエキセントリックの段階があることにより得られた伸張—短縮サイクルの恩恵から始まるということを考えると、非常に興味深い。それは、スクワットのボトムポジションからの加速に比較して、床から持ち上げるデッドリフトの加速は、より大きいかもしれないということを示唆している。しかしながら、研究者たちが提供しなかった加速の数値なくしては、これが事実であるのか否かを述べるのは困難である。 もしデッドリフトが床からバーベルを持ち上げる際、かなりの加速を要するとするのであれば、デッドリフトは、スポーツパフォーマンスの鍵である力産出の速度を訓練するために非常に有益であると言えるだろう。これは確実に更なる研究が有用となる領域である。 リフトオフにおける関節角度 研究者たちは、非常に大まかな各部位の長さを仮定した後、リフトオフのにおける胴体、大腿部、脛の絶対的な関節角度を規定し、下記のようなリフトオフにおける平均関節角度の図を作り出した。 この図は、リフトオフ(コンセントリック段階の始まり)の時点で、デッドリフトでは胴体がより水平となり、スクワットでは、胴体がより直立の状態となるということを示している。 その他にも注目すべき点が2つある。第一に、パワーリフターは、デッドリフトの際に非常に小さな脛の角度を示しており、この角度はスクワットにおける角度よりも実際に小さかったということは注目に値する。私は、より垂直な脛骨を想定していた。以前デッドリフトのスティッキングリージョンについて記述したように、このことは、これらの被験者たちは経験豊富ではなかった可能性があり、より経験豊富なアスリートでは異なった結果が観察されたかもしれないということを示唆している。 あるいは、リフトオフのポイントが最初のプル直前であった可能性があり、バーにテンションがかかった瞬間に脛骨の角度が著しく増加したのかもしれない。しかしながら、スティッキングポイント(下記参照)における脛骨の角度は90度よりもはるかに小さかったため、これには確認が持てない。 第二に、この研究におけるスクワットの深さは非常に乏しいものであった。これは、被験者たちが経験豊富でなかった可能性があり、より経験豊富なアスリートでは異なった結果が観察されたかもしれないという観察を支持している。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3073字

ユーススポーツのパフォーマンストレーニングに関してふと思いついたこと

1. 少年スポーツにおいてもウォームアップは重要です。 私の記事を長年読んでくださっている方なら、私が、その後のパフォーマンスを最適化し、ケガのリスクを軽減する手段として、質の高いウォームアップを大いに推奨していることをきっとご理解いただいていると思います。 しかし、この点に関する私の著作のほとんどは、野球や筋力トレーニングなど、より高度な、そしてより年齢の高い人々に焦点を当てたものであることを認めざるを得ません。 一方、ユーススポーツのウォームアップの中には、包括的とは言いがたいものがあります...ウォームアップ自体が、実際に存在していたとして、というところですが。 幸いなことに、この見落としを正すために、「Effectiveness of Warm-Up Intervention Programs to Prevent Sports Injuries Among Children and Adolescents」という最近のメタ分析を紹介する機会を得ました。全文はこちらでご確認いただけます。 Dingらの懸命な研究の簡単な概要は、21,576人の総アスリート(7~18歳)を対象とした15の綿密に選択された研究において、15~20分のウォームアップは怪我を36%減少させたというものです。 健康維持に役立つことはもちろんですが、この結果で興味深いのは、さまざまなウォーミングアップの工夫が怪我の軽減に役立ったということです。 より年齢が高くトレーニングを受けている人たちでは、体温の上昇、ひいては組織の伸長性からくる効果が大きいと思われます。 逆に、このメタ分析にあるような若くてあまりトレーニングを受けていない集団では、ウォームアップによって実際のトレーニング効果(バランスの改善、筋力の強化、着地のメカニクスの最適化など)が得られるので、おそらくより慢性的にケガから守られているのでしょう。 そのため、アスリートにとって重要なトレーニングを「マイクロドーシング」することは常に有益であり、ウォームアップはコーチがそれを行うことができる手段の1つであると考えています。 もし、ドリルを別の時間に行ったら、これほど効果が顕著になったかどうかを考えるのは興味深いことですが、適応は適応ですし、ウォームアップはグループ環境での説明責任を保証する最良の方法でしょう。 2. グラウンドからスタンディングへのトランジションは、若いアスリートにとって最もハードルの低いものでしょう。 私の最も親しい幼なじみの一人は、農場で育ちました。私が干草を積むのを手伝いに彼の農場に行った最初の時のことを忘れられません...私達は巨大な畑を6時間かけて歩き回り、トラックの荷台に干し草を積んでいったのです。 今まで干し草の俵の重さをわざわざ調べてはいませんでしたが、どうやら40ポンドから75ポンドまであるようです。 1週間くらい全身が痛かったのも説明がつきます。 驚くべきことでもないかもしれませんが、その友人は3種目のスポーツが得意で、レスリングでは州チャンピオンになりました。 明らかに、農場は彼に一貫して努力する方法を教えてくれたのです。 干し草の運搬、家畜への給餌、掘削など、ほとんどの肉体労働は、低から高への力の伝達を伴うことに気づかずにはいられません(これは、多くの運動競技と大差ありません)。 もしあなたが農場に住んでいないのであれば、ターキッシュ・ゲットアップ以外にも、トレーニングでこのダイナミクスに挑戦する良い方法があれば教えてください。

エリック・クレッシー 2252字

身体機能の柔軟性:複雑な構造をシンプルに

ゴルフ、フットボール、サッカーを始めとして、あらゆるスポーツのトレーニングにおいて、多くのアスリートは筋力トレーニングの重要性は知っていても、柔軟性プログラムの重要性についてはほとんど理解していないのが実情です。 しかし実は、身体の柔軟性こそが、私たちの動作の基盤なのです! 実際、身体に柔軟性がなければ、パワーや筋力、心臓血管系能力、また筋持久性を最大レベルにまで引き出すことはできません。柔軟性はリハビリやパフォーマンス向上のための要であり、傷害を防ぎます。にもかからず、柔軟性プログラムはそれほど一般化していないのが現状のようです。 それには様々な理由が存在するのでしょう。 ひとつには、リサーチによる見解にばらつきがあり、それがより多くの混乱を引き起こしているということ(1)。 しかし、ほどんどの調査の背景となっている本質(またはそれすら存在しないという点)をよく検討してみると、様々な見解が混在している理由が簡単に理解できます。 どのようなテクニックを選択して採用するか、しかもそれらが基本原則に基づいた手段であるかということは、専門家にとって重要なことです。しかもこの手段は、各個人を対象とした必要性に限定されるものでなければならず、独断的に考案された指針に従っていてはならないのです。どのような手法を採用するかを決定するには、まず以下に述べる3つの基本原則を検討する必要があります。これらは、患者やクライアントの身体の機能的な柔軟性を評価し対策を立てるための基本原則です。 身体の機能的柔軟性に関する3つの基本原則: 各個人を対象とし、タスク=課題によって決定されるものであること 三次元であること 可動性/安定性のシステムであること 身体の機能的柔軟性とは、私たちの身体がより良く機能することを可能にする柔軟性を意味します。これによって私達は、最適にかつ効果的にタスクを実行することができるのです(2)。機能的柔軟性の的確な働きは各個人、そしてそのタスクによって決定されるものです(3)。従って、筋肉の起始部と停止部に着目しただけの一般のストレッチでは、機能性を最適に提供することはできないのです。 プラクティショナーは、患者またはクライアントのタスク実行時の、筋肉の働きをよく認識する必要があります。言い換えれば、筋肉がどのように働くのかは、そこにあるタスクによって決定づけられるものであって、マニュアルやテキストブックによって決められるものではありません。だからと言って、テキストブックの作者が間違っていると示唆しているのではないのです。テキストブックを作成する際に実践した特定の動きやポジションに関しては、正しい内容であるはずです。 私達の身体が、その角度やポジション等を変更すると、その機能も変化します。ですから、より機能的な柔軟性を得るためには、そこで使用するテクニックが、実際に行おうとする動きの機能に似通ったものである必要があります。そのため、私たちは筋肉や筋膜、腱や靭帯、神経や関節包、そして関節が、特定のタスクにおいてどのように3次元的に動くのかを理解する必要があるのです。単に、どの位動かせるかだけではなく、いかによく動かせることができるかも含めて。 これは可動性と安定性の原則です。3つの面全てにおいての、適切な量の可動性とそれに伴う適切な安定性は、テキストブック通りではなく、個人や意図するタスクによって特定されます。全てのタスクは、それぞれに異なったレベルの可動性と安定性を必要とするのです。 この複雑な内容を単純化するために、私達が実践している、3つの基本原則を適用した実践的な方法をご紹介します。この方法は皆さんが、次回のアセスメントや評価を行う際に使っていただくことができます。 何よりもまず大切なのは、各個人、そして、それぞれのタスクのユニークさを理解することです。各個人の現在のコンディションや、制限要素、懸念事項、何を望んでいるのかを理解した上で、意図するタスクをできる限りアスレチックな機能を伴う状況で評価します。ここで重要なのは、患者やクライアントが何を望み、何を必要としているのか、そして彼らが現在何をうまくやり遂げることができているのかを理解することです。ここから、彼らを正しい方向に向けて、可能な限り迅速に、そして安全に導く方法を作り上げます。例えば、レベル1から始めて、個人やタスクごとに必要性に応じて、レベル2やレベル3に進んでいくといった具合です。 レベル1:タスクによって特定 特定のタスクを正確に実行する能力を評価します。例えば、歩行、ランジ、スクワット、ピボット、ステップ、リーチ、走る、バランスをとる、何かを拾い上げる、右手を伸ばしながら座る、等。 これらを行うことで痛みや不快感を伴ったり、自信をもって実行できない場合には、これらのタスク実行の補助となる、正しいサポートが必要になってきます。 例えば、ある人が、スプリットスタンスの立位から、膝の高さまで前屈した場合、腰部にストレスを感じるとします。この場合、かがむ度合いをウエストの高さまでに変えたらどうでしょう?不快感を同程度に感じるでしょうか?それとも減少するでしょうか? 痛みが減少した場合、初回の評価時の可動範囲で不快感を感じた要因は、背中にあるのでしょうか?それとも股関節にあるのでしょうか? 身体の角度やポジション、高さやドライバー(駆動要因)、可動範囲等を変化させ、探偵のように探ってみましょう。それによって、その人が希望する、あるいは必要とすることを上手く実行するための方法を見つけ出すことができるのです。 これが成功しなかった場合は、レベル2に進んでください(レベル2はレベル1と大きな違いがないように見えますが)。 レベル2:外部補助を伴うタスク 意図する機能の実行に、外的な補助、あるいは安定のポイントを追加します。私達の方法を例にとれば、トゥルーストレッチステーションや戸口等の、外部的なサポート要素を加える、ということになります。こういった外部的補助は、患者やクライアントを特定の可動域、又はゾーンに位置させた状態から、動きのドライバー(駆動要員)を適用することを可能にします。彼らが動きを実行している状態で、触診のスキルを使って、チェーンリアクション全体の評価を行い、一連のチェーンの中の“弱いリンク”を見つけ出すようにします。これが可動性と安定性の基本原則の適用となります。 身体は安定性を知覚し、可動性を表現し、実践します。もし、ある個人に充分に可動性がなく、身体構造の組織の状態や、張力のレベルを評価する必要のある場合は、レベル3の方法で、該当する身体構造(特定の機能ではなく)を確認するようにします。 レベル3:身体構造によって特定 身体構造を評価するための環境として、マッサージテーブル等を用意します。実際の機能的なタスクとは異なる環境となるため、ここで得た結果には偏差が生じることを理解した上で、望む結果が機能的なものであるとすれば、ここで得た結果を機能に関連付け、統合する必要があります。 伝統的には、患者やクライアントの症状や特定の身体構造の緊張具合の確認から始まり、レベル3、最終的にレベル1へ戻れるよう多くのテクニックが指導されています。 このパラダイムシフトでは、特定の身体機能を実行することよって、今現在の状況が、本来あるべき機能からどれだけかけ離れているのかを確定し、それから孤立した構造へのアプローチへと進むようになります。 この方法は、時間を有効に使えるのみでなく、患者やクライアントに、機能によってより良い機能を増幅させることができる、という希望を与えることができます。機能とは常に変化するものであり、その性質上複雑なものではありますが、本来あるべき機能に従うことで、シンプルにより良く働かせることができます。 患者やクライアントの伝えようとすることを聞き取り、彼らの経験や動きを観察することで、より良い健康を実現するための指針とすることができます。 応用機能科学(物理科学、生物科学、行動科学の総体)の基本原則を適用すれば、柔軟性にも新たな意味合いをもたらすことができます。機能的な柔軟性は、各個人の全体性を認識したものです。身体の全体性のダイナミクスを理解することができれば、各部分の相互作用の特性やパターン、そしてその基本原則をも理解することができるでしょう。

レニー・パラシーノ 3618字

プロフェッショナルの成長:プロセス vs. アウトカム

何度か、ニューバランスのエリアコードゲームズで、カリフォルニア州ロングビーチに足を運んだことがあります。全国の高校野球のトップ選手230人が一堂に会するイベントです。2016年、私はオープニングセレモニーの一部として講演を行いました。 簡潔に伝えたい、そんな思いから、プロセスとアウトカムを区別することの重要性を強調することにしました。これは、クレッシースポーツパフォーマンスで指導するアスリート全員に叩き込むように試みていることですが、すべてのプレーヤーにとって重要な差別化であると感じています。 アウトカムとは、(他にもっと良い表現がないのですが)結果です。それは、4打数4安打であったり、オールスターチームに選ばれたり、期末試験で「A」を取ったりすることです。また、ネガティブな場合もあり得ます:4打席0安打であったり、チームから外れたり、期末テストで落第したり。結果のみの中に成長があるわけでは決してなく、成長とはすべての仕事を終えた後に起こるものです。残念ながら、私の経験では、非常に多くの人々、特に若くして大きな成功を収めた若いアスリートたちは、結果志向になりすぎています。彼らは、そこに至るまでのプロセスを認識するのではなく、成功の喜びを味わうことに時間とエネルギーを費やし過ぎています。 これに対して、プロセスとは、アウトカムにつながるすべての習慣や行動を構成するものです。これら4打席の前に、ケージでスイングの微調整をした時間なのです。そのオールスター選考の判断よりも前の、あなたの努力や態度なのです。そして、最終的な試験の準備度(または準備不足度)に結実するのは、あなたの学習習慣です。 驚くなかれ、結果重視の育児は、プロセス重視の育児よりも劣ったアプローチであることを示唆する証拠があります。結果を褒めるよりも努力を褒める方が一層良いのは、そのような努力の積み重ねが、子供に将来のあらゆる場面で頑張ることを思い出させてくれるからです。Tボールの頃からの倫理と振る舞いは、税金納付のシーズンがきた時、会計士としてのあなたの仕事を何十年間も助け続けてくれるものですが、20年前のトロフィーが、大人になってから困難な状況に陥ったときに、あなたを助けてくれるとは思わないでください。 しかし、興味深いことに、このメッセージは、私が長年フィットネス業界に関して行ってきたいくつかの会話と重要な類似性を持っています。実際、その年の夏、シカゴで105名のトレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、リハビリの専門家を集めて肩のセミナーを開催した際に、詳しく取り上げたのを覚えています。 イベントのまとめの段階で、何人かの若いトレーナー達から、「どうして今の私があるのか」と聞かれました。実際、ある人は「私が10年後にあなたのようになるためにはどうすればいいのか」と質問した人もいました。私はこれらの質問に答えることが難しいと感じていました。というのも、私は成功について考えることがほとんどなく、正直なところ、自分が成功したと決めるには早すぎると思ったからです。さらにより有意かもしれないことに、私は、5年後(10年後は言うまでもなく)の自分の姿を鮮明に描くことができないのです。自分がどこに向かっているのかがはっきりしないのに、新進気鋭のフィットネスプロフェッショナルに、10年後の自分がどうありたいかを語ることができるでしょうか? そう考えると、私の答えは必然的に曖昧になるのが常です: プロセスを受け入れ、結果は成るに任せること。 問題は、フィットネス業界の特徴として、これらのプロセスのどれもが明確に定義されていないことです。別の言い方をするなら、この分野の多くの仕事が完全に基礎となっている厳密な基盤がないのです。このような業界はあまり多くありません。 例えば、私の妻は検眼医ですが、医師になるまでに学部教育4年、その後検眼学校4年(臨床ローテーションを含む)、そして医師会試験を経ています。カリキュラムが決まっていて、そのカリキュラムで重視される分野の能力を判断するための指標があったのです。そして、その熟練した技術を確立した後も、アンナはさらに1年間、角膜とコンタクトレンズを専門とするレジデントを経験しました。ある日突然、自分は検眼士であると宣言してキャリアをスタートさせることはできませんが、パーソナルトレーニングでは、参入障壁が全くないため、そういうことをする人が多くいます。 では、この教訓を、本当に偉大になりたいと願うフィットネス関係者にどう生かせばいいのでしょうか。まずは、キャリアを築くための土台となる最低限の教育を重視することが必要だと思います:基礎の上にキャリアを構築することができるのです。 NFLのストレングス&コンディショニングコーチとして成功するために必要なスキルセットは、臨床運動生理学の場で心臓や肺のリハビリテーションを行うために必要なものとは明らかに異なりますが、これらの領域(そしてその間のすべて)には多くの共通点があることは確かです。ここでは、フィットネスに携わるすべての人が、確かな土台を作るために知っておくべきと思うことをいくつか紹介します: 1. 解剖学、キネシオロジー、バイオメカニクス:構造が機能を決定します。良い動き(機能)を作る、維持する、あるいは再確立するためのプログラムを構成する前に、良い動き(機能)が何であるかを知る必要があるのです。 2. 生理学:クレブスサイクルを暗唱できる必要があるとは言いませんが、エネルギーシステムの発達、運動に対する内分泌反応、さまざまな疾病状態が運動に与える影響、クライアントが服用しているさまざまな薬物の役割、その他多くの生理学的考察について明確に理解している必要があります。 3. コーチング・アプローチ:率直にいきましょう:私は、まず他の複数の資格のあるコーチのもとでインターンシップを経験した人でなければ、誰かをトレーニングすることは許されないと思います。マッサージセラピストは、独立する前に何百時間(時には何千時間)もの時間をこなす必要があります。私は、悪いフィットネスの専門家は、悪いマッサージセラピストよりもずっと早く人を傷つけることができると主張します。優れたコーチは、効果的なコーチングの指示を提供するだけでなく、最も効率的な方法でそれを行う方法を理解しています。そのためには、あらゆる分野の個人を指導し、期待通りにいかなかったときに微調整していくしかないのです。 4. 対人関係:私はいつも、フィットネスのプロを目指す人たちが、一般的な運動科学のカリキュラムの中で、心理学の正式なトレーニングをほとんど受けていないことに驚いてきました。そして、正直なところ、「典型的な」大学の博士が教室で教える心理学の授業は決して軽蔑的な意味ではなく)、何十年も顧客を抱えている成功したパーソナルトレーナーや、何世代も大学のウェイトルームで繁栄してきたストレングス&コンディショニングコーチから学ぶものとは、かなり異なる可能性が高いと思います。モチベーションというのは、非常に複雑なテーマです。私のキャリアの中で何度も、クライアントが入ってきて、(下記のような言葉)でセッションを始めたことがあります:「そう、離婚するんですよ。」リバースランジとブルガリアンスプリットスクワットのどちらを選ぶかは、ちょっと二の次になルカもしれませんよね? これらが私にとって意味したこと この4つの基礎的な教育プロセスを見ると、私はこの業界に入ったとき、#1、#2ともに本当によく準備できていたと感じます。学部の学生時代の経験として肉眼的解剖学のクラスがあったことは考え方を大きく変えてくれましたし、また、キネシオロジー、バイオメカニクス、運動生理学の教授達にも恵まれ、単純な暗記を超えるような授業を受けることができました。 しかし、最初の頃、私はコーチングのアプローチに苦労しました。私は早口で、指示を数多く出しすぎてしまい、多くの選手を混乱させてしまったようです。コネティカット大学の偉大なコーチたちの仕事ぶりを見て初めて、私はもっと明瞭で簡潔であること、そしてアスリートにとって複雑なものをシンプルに見せることを学んだのです。 成長期の夏休みに8年間テニスクラブで働き、複数の年齢層の会員と常に交流していたためか、対人関係は自然に身に付いていたようです。しかし、実はこの3~4年、これが私の最大の勉強分野であり(特に今は雇用者を抱えているので)、リーダーシップ、コミュニケーション、モチベーション、および関連分野に関しては、常にオーディオブックを聞いています。 あなたにとってこれらの意味するのは フィットネスの分野では、誰もが特有な準備をしています。技術指導は上手でも、コミュニケーションは苦手な人もいます。トレーナーの中には、そのきれいな動きを支配する正確な解剖学的構造を知らなくても、動きをきれいに見せるコツを知っている人もいます。専門家の中には、根本的な生理的変化を説明できなくても、優れた結果を出している人もいます。こうした成功(結果)があるからといって、常に改善(プロセス)を求めるべきでないというのではなく、ぜひ「自己監査」をして、最大の成長分野を見極めることをお勧めします。 このような知識不足の多くは、本やDVD、オンラインのメンターシップ・プログラムなどで補うことができます。しかし、私は、4つの構成要素の情報を拾い、それらがどのように組み合わされているかを確認できる、最も速い学習方法は常に対面指導であると信じています。インターンシップやメンターシップは、リアルタイムで応用やフィードバックがあるため、この点において素晴らしいものです。セミナーも素晴らしいものです。特に、講義と実践(実習)の両方がある場合は、なおさらです。

エリック・クレッシー 4151字

治療に関する議論が嫌いな理由

私がネットで見る、あるいは関わるのが最も嫌いな議論は、治療に関するものです。治療が大事なのはわかりますが、これは本当にセラピストの間で最大の争点になっているようです。このテーマは、確かに人々が非常に熱くなり、あえて言うなら、少し身構えているような気もします。これは、議論、あるいは議論になりがちな不確実性の大きな領域です。議論の展開によっては、「何もかも」うまくいかないように思えたり、「何でもかんでも」うまくいくように思えたりして、少し不満や失望を感じることがあるでしょう。 しかし、ここからが私の問題なのです... 私が本当に不思議に思うのは、なぜ人は、問題を抱えた人をどう扱うのかではなく、問題をどう扱うかに熱狂し、アイデンティティを形成してしまうのか、ということです。これらの論議は、クライアントとのセッション中に起こる他のすべてのことを考慮しているようには決してみえません。もし、あなたが治療によって自分を定義し、それが「うまくいかない」としたら、そしてそれはかなりの割合の人にとってそうだとすれば、それから一体どうするのでしょうか? 私としては、これこそが、誤用されがちなBPS(Biopsychosocial/生物心理社会的)モデルのポイントだと考えています。BPSモデルは、問題そのものよりも、問題を抱えた人について考えることを意図しています/していました。 私は痛みを治療するのではなく、痛みを持つ人を治療するのです。それは、痛みがその人の人生や感じ方に大きな影響を与えることを認識すること、つまり、彼らの身に起きていることすべてに対する考えや気持ちを理解することです。それは、私がどのような介入、治療、モダリティなどを使って痛み(またはその他の結果指標)を治療するかということではなく、治療の全プロセスをどのように進めるかということなのです。 これは、もう少しリサーチ・リテラシーを高めるための良い理由になるかもしれません。治療のエビデンスをめぐっては、多くの大きな意見があり、実際に何がどの程度効果があるのか、そして更に重要なことに何が実際に効果があるのか、に関するバランスのとれた見解を得ることは難しいかもしれません。また、臨床で起こることと、コントロールされた研究で集団レベルで起こることは異なるかもしれないということも覚えておく必要があります。これは、研究を臨床に取り入れる際に常に問題となることです。私の臨床実践では、エビデンスを指針にしながらも、必要に応じて変化し、その人に合わせていくようにしています。 医療との出会いの中で、人々が経験するプロセスを考えたとき、アウトカムには実にさまざまなものが関わっているはずです。 それらは下記のようなものかもしれません: アセスメント(病歴&身体所見) コミュニケーションスタイル 私たちの説明と安心感 私たちが提供するサポートとガイダンス 行動変容の実施 治療はセッションのほんの一部に過ぎないことが多く(私にとっては)、これら他のことの全ては、頻繁に治療の寄せ集めの中に関与し、結果に影響を与える可能性があるのです。 実際、私たちがコントロールすることのできない多くのことが結果に影響するため、結果のうちどれだけが実際に私の治療なのかは、よくわからないことが多いのです。私たちに影響を与えるものの多くは、私たちが存在するシステムや社会に根ざしているのです。特定の治療法の結果にこだわるのではなく、私たちがコントロールできること、例えば、その人とどのようなプロセスを経て、どのような働きかけをするかということに、もっと関心を持つべきかもしれません。私は、適用されるものが何であれ、盲信するよりも、その方がずっと安心です。 ある人は健康状態を、ある人は手技を、ある人は基本的な安心感を、またある人は自分の動きに自信を取り戻すことを、あるいは上記のすべてを組み合わせて必要とするかもしれません。痛みの複雑さや人々の個体差を考えれば、なぜすべての人がたった一つのものを必要とすると期待できるでしょうか?

ベン・コーマック 1721字

エビデンスに基づいた臨床 - 好きですか、嫌いですか? パート2/2

どのような課題があるのでしょうか。(つづき) イエスかノーかの二者択一ではない もう一つの問題は、この“効果がある”という概念です。これは、フリクエンティスト・アプローチのような、仮説を受け入れるか拒否するかという考え方に由来していると思われます。簡単に言うと、2つの二者択一があるわけで、仮説を受け入れるか拒否するかで、効果があるかないかが決まるのです。 P値はこのような判断をするためにしばしば使われてきましたが、ありがたいことに、今回のような判断の目的にはあまり適していないので使われなくなってきました。P値は、仮説の正しさよりも、統計モデルの正しさについて示してくれます。統計情報は、それを生成するために使用された方法や、なぜ方法論は論文から得られた結論に大きな影響を与えるかという理由次第なのです。 データだけではない また、患者さんの話も、私たちが意思決定をする際に用いるべきエビデンスの重要な部分です。二重盲検法や無作為化法ではありませんが、私たちの助けを必要としている目の前にいる人の体験談です。患者さんの話は、患者さんの話の信頼性の低さを指摘するためによく使われる、彼らがどのような治療を受け、どれだけ成功したかということだけではないのです。 ひとつの論文ではなく数多くの文献を 腰痛を例にとると、このテーマに関するエビデンスは膨大なものになるでしょう。ですから、偏見を裏づけしてくれるようなお気に入りの論文だけでなく、上記のことも考慮する必要があります。こっちの論文がそっちの論文に勝るというのは、トップ・トランプのゲームのようなもので、EBPの本来の活用の仕方ではありません。 前へ進もう EBPを受け入れるか否かを決める前に、EBPとは何か、EBPは何を教えてくれるのかについて、自分なりの考えをまとめておく必要があるかもしれません。この分野における自分なりのアプローチや哲学は何でしょうか?おそらく、この分野や他の分野に関する個人の哲学は、時間をかけて自分自身の哲学を確立するというよりかは、他の人の哲学に影響されることが多いのではないでしょうか? 私の見解は?そうですね、EBPは、目の前の患者さんに対して確固たる答えを与えてくれるわけではありません。2週間後、6週間後、12週間後に何が起こるかを正確に予測することはできませんし、多くの場合、なぜ起こったのかという理由を正確に教えてくれるわけではありません。制御できないことや測定できない事はたくさんあります。しかし、より広い集団レベルで偏りの少ない方法であれば、問題に関する確率や見解を理解するのに役立ちます。自分の患者が反映されていそうなサンプリングが行われ、適切な方法が用いられていれば、何が最も起こりやすいかという予測やパラメータを得ることができるはずです。 統計学者がフィッシャースタイルの仮説検定から、信頼区間を重視した効果推定に移行しつつあるように見えるのは、まさにこのためです。また、私たち人間として当然持っている先入観をある程度制御するのに役立ちます!無作為化や盲検化などは、研究手法の批判として非常に無遠慮に適用されることがありますが、メリットもあります。 EBPが完璧でなく、またすべての答えを提供していないからといって、単純に否定されるべきではありません。それはまさに私たちをここまで導いてきた二者択一的なアプローチであり、EBPを受け入れるか否かは、答えではありません。もし、私たちがアプローチ方法や介入を試す立場でなかったら?と想像してみてください。リハビリの無法地帯になるでしょう。要は、EBPの本質とそこで問われているテーマに関する現在把握できる最良のデータを理解することを含んだエビデンスの賢明な使用に尽きるのです。エビデンスは、多くの場合、私たちに何をすべきかを正確に教えてくれないかもしれませんが、その価値は、何をすべきでないかを教えてくれることにあり、私はこのことに大きな価値があると考えています。 確実性ではなく見込み つまり、研究をベースにすることは、私に意思決定の出発点と絞り込みの方法を教えてくれます。研究を単に拒否してしまえば、理想的なヘルスケアとは決して言えない多くのでたらめなものに置き換えられてしまうのです。EBPはすべてに答えてはくれませんが、私が理解するにそもそもそういうものなのです。 私たちは、セラピーを、研究論文で予測されるような確定されたプロセスではなく、情報に基づいた試行錯誤であると捉える必要があります。研究は情報に基づいた部分であり、応用や結果はもう少し流動的で試行錯誤の部分が多いのです。 結論 このような議論では妥協点に落ち着くあたりに真実が存在するのかもしれません。研究やエビデンスを受け入れ過ぎたり、頼り過ぎたりすると、研究とは何かという大事な点を見失ってしまいます。しかし、完璧ではないという理由で研究を否定したり、効果がないと“証明”されていることが有効であるといった対極的な立場は、前進ではなく、むしろ後退することになってしまうのではないでしょうか。そうではなく、研究が何をもたらし、何をもたらさないかをよく理解した上で、研究を賢く利用することに立ち戻ろうではありませんか。

ベン・コーマック 2208字

エビデンスに基づいた臨床 - 好きですか、嫌いですか? パート1/2

最近、エビデンスに基づいた臨床(EBP)に対する反発があるようですが、その問題の一つは、エビデンスに基づいた臨床とは何か、そうでないものは何かについて、実際かなり大きな誤解があるのからはないかと私は考えています。 この反発は、EBPがあまりにも限定的で、すべてに答えを見出せないという考えと、自分たちの実践において“エビデンス”をあまりにも重視しすぎてしまうこともできるという考えを中心に展開しているようです。おそらく十分な批判的評価がなされず、厳格で柔軟性に欠けた視点になっているのでしょう。私の意見では、過度な経験的見解は、EBPがすべての疑問に答えを提供してくれず必ずしも100%正しいわけではない、という理由でEBPを単に拒否するのと同じくらい問題があると認識する必要があります。 ですから、EBPをよりよく理解する必要があるのではないでしょうか? ‘エビデンスに基づく’ということで、何が‘効果的’で何が‘効果的でない’のかについて確信が持てるようになるわけではありません。個体間で一貫した結果をもたらす厳格なプロトコルということでもありません。誰かの意見や経験だけではなく、科学的なプロセスに基づいて、詳細な情報を得た上で意思決定をする方法なのです。 明らかになってきたこととして、このようなトピック(ここではEBP)がセラピストの業界で話し合われる際、二者択一的で部族主義的なアプローチになっているということがあります。あなたはエビデンに基づいたセラピストですか?あなたはマニュアル(手技)セラピストですか?あなたはエクササイズを主に行うセラピストですか?痛みの科学を追求するセラピストですか?このようにレッテルを貼ることが他者を一般化し、非難するために使われているようです。 EBP(エビデンスに基づいた臨床)とBPS(生物心理社会モデル) もしかしたら、ただもしかしたらですが、この議論はEBPについてではなく、EBPがどのように使われているかということなのかもしれませんね。EBPは、Sackettが提案したような“賢明な”方法で使用されなければ、かなり鈍いツールとなります。EBPは生物心理社会モデル(BPS)に似ていて、ステップバイステップ(段階を追って)で実行する方法というよりも、哲学や考え方のようなものなのです。 EBPとBPSの両方とも、従来の臨床的な方法/モデルよりもはるかに概念的で広範であり、それは素晴らしいことでもあれば、困ることかもしれず、臨床の応用性を明確に提供しないことがしばしば批判されています。私が思うに、EBPとBPSの両方のアプローチの最大の欠点は、臨床的な意思決定を正当化するためにある領域だけを意図的に選択してしまうことです。EBPの3つの領域、すなわち研究データ、臨床経験、患者の意向は、3つが揃って使われるべきで、3分され臨床上の決定を支持したり正当化したりするためではありません。Housmanは、統計学の利用について、彼の有名な格言で指摘しています。 “酔っぱらいが灯りを求めるためでなく、体を支えるために街灯にしがみつくように統計学を使う人がいる” EBPの基準を満たすために患者の意向を利用することは、EBPがこのように変容してしまった良い例です。患者の意向は、単にどのような介入を受けるべきということだけではありません。患者が関わる必要のありえる判断は、介入以外にもたくさんあります。“患者が鍼治療を希望したので(単に一例として)、鍼治療を行いました”ということは、EBPの要件を満たしているため、使用する正当な理由にはなりますが、そうではなく、治療過程におけるより広い視野を伴った患者の視点という言葉を使った方がもっと適切かもしれません。 どのような課題があるのでしょうか。 EBPを好意的に受け取る一個人として、EBPに関して存在する問題や課題、そしておそらく誤解に直面することが重要です: EBPは単に明確な答えを与えてくれるものではありません エビデンスはしばしば不明確で矛盾していることがあり、臨床の成功への明確で間違いのない道筋を示すものではありません。このことは、研究のエビデンスを利用するプロセスの一環として受け入れなければなりませんね。残念ながら、これはEBPを拒否する人たちの原因の一つにもなりえるかもしれません。 出版されたからと言って、それが“真実”になるわけではありません 論文の結論に書いてあるからということで、それが非難や批評を超えて、魔法のように確固とした真実となるという考え方は、おそらくEBPの使われ方の大きな欠点でしょう。これは、セラピストが様々なソーシャルメディア上でパブメドの論文抄録をやり取りし合う事態につながるかもしれません。時には(おそらく頻繁に)その論文を読みもしないで。しかし同じように、自分の偏見に合わなければ、問題点を見つけるために徹底的に探すでしょう。 答えはしばしば望んでいるほど広範ではない もしかすると臨床医は、EBPが現時点で提供できること以上のことを望んでいるのかもしれません。例えば、本当に大きな疑問に対して、1つの論文で完璧な答えを欲しがるようなものです。よくある例としては、“エクササイズは手技療法よりも効果があるのか”という問題があります。この質問は、あまりにも範囲が広すぎるため、これまで一度も訊ねられたことがありません(私たちも欲しがっている答えかもしれませんが)。どのような状態に“働きかける”のか、“効果”をどのように測定するのか、研究対象者、エクササイズや手技療法を行う方法などを定義しなければなりません。

ベン・コーマック 2370字

肩の健康:解剖学及び傷害の概要 パート2/2

肩関節安定性 肩関節の安定筋群は、バーベルがぐらつかないようにするためにデザインされているのではありません。それはより、バランス・運動感覚・固有受容器の機能のためなのです。 安定筋群は関節をまとめるのを手助けする筋肉です。再度述べることになりますが、肩甲上腕関節は身体で最も可動性のある、最も不安定な関節です。球関節の構造はあなたが思い描くかもしれないものとは異なりますす;それは、ティーの上に乗っているゴルフボールのようなものなのです。肩関節の結合組織は、周辺の筋肉からの助けを借りて安定性を得ているのです。 ベンチプレスをしているとき、ローテーターカフの筋肉は、まるでゴルフボールをティーに乗せた状態でキープするように、関節をまとめようと必死に頑張って働かなくてはなりません…強要されている間中ずっと。 肩の問題の大きな要因 棘上筋はしばしば、何らかの形で肩の機能が働かないときに犠牲になります。しかしながら、棘上筋のエクササイズをただやるだけでは意味がなく、損傷部位を悪化させる可能性もあります。肩の問題の要因は、次のいずれかの組み合わせによるものでしょう: 硬い手首 硬い胸筋 硬い広背筋 硬い僧帽筋 過度の胸椎後弯 弱い僧帽筋下部 硬い菱形筋 弱い前鋸筋 弱い外旋筋群 硬い肩甲下筋 硬い斜角筋 …あるいは、単に関節をインピンジメントされるポジションに動かしてしまうエクササイズをしているのでしょう。たとえば、アップライト・ロウは基本的にトップポジションで、腱を刻み擦り切っています。バランスの崩れた肩はやがて不健康な肩になり、あなたをあらゆるスポーツや活動から遠ざけてしまうでしょう。 硬さを軽減する バランスの崩れの問題全体において、胸筋をストレッチすることは答えのまる半分です。硬い胸筋は、上背部の筋肉を強化する努力を台無しにしてしまうでしょう。 上背部をフォームロールすることは、胸椎をゆるめるのに役立つと思います。 脊柱上部を伸展させる筋肉を発達させることも役立つでしょう。十分な量のオーバーヘッドエクササイズを行い、水平面でのロウイングに一生懸命取り組みましょう。すべての種類のロウイングが役に立つというわけではありません;広背筋エクササイズとしてではなく、背部全体のエクササイズとして行えるものが良いでしょう。これはロウイングでチーティングすることを意味しているのではなく、まったくその逆です。最良なのは、恐らくストリクト・バーベルロウ(オリンピックコーチのグレン・ペンドレー氏になぞって時々ペンドレースタイル・ロウと呼ばれる)でしょう。 もしあなたが腕を挙上させるときに、前鋸筋を収縮させ肩甲骨を前方に動かしてあげて、腱にいくらかのスペースを作らなければ、オーバーヘッドポジションは関節に対して本当に酷なものとなります。もし胸椎の伸展不足によって猫背になっているのならば、これは良くありませんね。これらすべてがどのように一緒に働くのかわかりますよね? 運動の連鎖 理学療法士が肩甲上腕リズムと呼ぶ肩甲骨と腕の協調された動きは、健康な肩の機能の重要な一部です。肩甲上腕リズムは、関節のスペースが可動域のある地点で失われてしまわないようにします;つまり、これがインピンジメントを防ぐのです。 何の症状や問題もない天性のアスリートにおいて、これは考えることなくただ起こることです。もしけがやバランスの崩れがそのパターンを乱してしまったら、あるいはそのパターンを取り消す運動に励んだとしたら、それを元の状態にするためには再学習が必要です。 特にあなたがたくさんベンチプレスをし、オーバーヘッドエクササイズをあまりやらなければ、あるいは腕立て伏せか一般的な運動、またはこのパターンを存続させる肉体労働さえもしなければ、ベンチプレスはこのパターンを本当に失わせてしまうものの一つです。 ベンチプレスでは、肩甲骨はベンチに対して押しつぶされ、あなたが何をしようとあまり動きはしません。もし肩甲骨を固定すれば、ベンチプレスがもっとできますが、そこにある考えはあなたの肩を健康にするためではなく、ベンチプレスをもっとするためなのです。 ご覧の通り、ベンチプレスはわたしたちがいかにパワフルなエクササイズをやりすぎてしまうかという一つの例であり、時間の経過に伴って、それはわたしたちの動き方に組織的な問題をもたらします。ベンチプレスをするときに固定された肩甲骨のイメージを打ち砕くのは大変です。 教訓はシンプルです:ベンチプレスを制限しましょう。せめてベンチプレスを減らし、水平ロウ(基本的にベンチプレスと逆の動き)やオーバーヘッド・プレスを行いましょう。 肩のインピンジメント 肩峰の種類 もしあなたが両側に長く続く問題を抱えているならば、肩関節の骨である肩峰がより鋭利な形状をしている可能性が非常に高いでしょう。もしこれが事実ならば、それがインピンジメントのこすれる痛みを起こしやすくしているのです。わたしたちは皆いくらかのインピンジメントを抱えていますが、より鋭い肩峰を持つ人たちは、痛みまたはその肩峰による損傷を抱える傾向がより高くなり、このような人々はインピンジメントを引き起こすエクササイズを避けるよう注意すべきです。 タイプ1は最も肩峰が開いている種類です;タイプ2はわずかに閉じているもの;タイプ3はもっとも閉じているもので、理学療法士たちが「くちばし状」と呼ぶものです。くちばし状の肩峰は、関節のスペースが損なわれるときに、骨のとがった部分がノコギリのようにローテーターカフの腱を傷めつけるので問題です。これは誰にとっても起こりうる問題なのですが、骨が平均よりも長かったり、とがっている場合はより深刻な問題となります。 インピンジメント もしあるエクササイズで毎回肩の同じところがポキッと音を立てているならば、それは大抵インピンジメントですー結合組織が誤った方法で摩擦し、骨の突起または結合組織のその他の擦過傷の上を滑っています。腱は骨の上を滑りながらぴんと引っ張られ、それが骨の角や縁の上を通る際に嫌な音を立てるのです。擦過傷は腱で悪化し、徐々にけがを引き起こします。 このままエクササイズをし続けるというのは良いことではありません。もし痛むのであれば、中断しましょう。もしクリック音を立てるのであれば、やめてください。医療専門家に肩を診てもらいましょう。理学療法だけでインピンジメントを解消できる可能性は十分にあります。もしあなたが軟部組織を損傷する前にそうすることができれば、それに越したことはありません。 内旋筋群が硬い、あるいは外旋筋群が弱いとき、肩はインピンジメントを起こす位置に引っ張られてしまいます。内旋筋群とは、胸筋、広背筋、そして肩甲下筋です―これらは大抵ストレッチが必要です。一般的に強化が必要である外旋筋群には、棘下筋、小円筋、そして棘上筋があたります。多くの場合、胸骨に向かってのロウイングに一生懸命取り組むだけで、インピンジメントを和らげることができるでしょう。とりあえずロウイングに一生懸命取り組んでみることをおすすめします。 関節を広げ、骨を腱から離してくれるいくつかのこととは: 胸筋、広背筋、そして僧帽筋をストレッチすること 外旋筋群、僧帽筋下部、そして前鋸筋を強化すること 胸椎の可動性を出すこと インピンジメントを引き起こすもう一つの厄介な問題は、腕と正しく協調して動いていない肩甲骨です。前鋸筋と僧帽筋下部を鍛えることは、健康的な動作の基盤を提供しますが、わたしたちは正しい方法で動くことを学ぶ必要もあり、もし悪い習慣が染みついていたらそれはなかなか難しいかもしれません。インピンジメントは、動作中に骨が正しい位置から外れるときに起こります。それがインピンジメントというもので、骨の間に軟部組織が挟まってしまうのです。もし骨がうまく動いていたら、それらが軟部組織を挟むことはないでしょう。 棘上筋は骨の間の小さい隙間を通っています。もしあなたが肩の弱さや硬さ、あるいはバランスの悪さを抱えているならば、骨は棘上筋を傷める位置に引っ張られてしまいます。それがインピンジメントです。 胸椎の可動性がないときーそれが硬いときや伸展できないときー肩はまたしても悪い位置に引っ張られてしまいます。上背部には胸椎を伸展させる深部筋群があります。フォームローラーでローリングすることは、その部分を動くようにさせるための良い一歩です。 インピンジメントは、動作中に骨が正しい位置から外れてしまうときに起こります。多くの場合、軟部組織の損傷は、ローテーターカフ筋群の起始部の腱の損傷です。 インピンジメントを避けるために多くの人々がやるべきことは: 弱い部分を強化する 硬い部分をストレッチする 腕の動かし方を再習得する そして危険なことを避ける。 しかしながら、硬いと感じるものが硬化ではないかもしれず、それをストレッチすることが新たにより大きな問題を引き起こすこともあるため、医療の専門家からの指導を得ることは重要です。 肩をけがしているとき 肩のけがは、トップダウン(身体上部からの連鎖)で運動に影響を与えます。肩のけががあるときは、歩行またはランニングを含め、どの身体運動も通常通りではありません。 たとえあなたが強いとしても、あなたが肩をけがする方法はたくさんあるのです…特にあなたが強ければなおさらかもしれません。 強く安定した肩の発達には、ローテーターカフの4つの筋肉以上のものが必要です。肩をけがしたからといって、ローテーターカフが弱いと単純に結論付けることはできません。いくらかのローテーターカフの問題は避けられないものかもしれませんが、多くのこと、あるいはもしかしたらほとんどのことは予防することができるでしょう。もし肩の機能を修正しインピンジメントを解消することができれば、あなたは非常に多くの問題から自身を守ることができます。 肩の痛みを持ち、手術を必要とするのはほんのわずかな人々であり、多くの人達は良い治療計画ですぐに効果が現れます。大事なことを最初に ー痛みを悪化させることは何もしないように!痛むならやらない、のです。 次に大事なことは、専門家に診てもらうこと。アスレティックトレーナー、理学療法士、医師、またはカイロプラクターは、まず診てもらうのにふさわしい人たちです。 アスリートを治療する良いカイロプラクターや理学療法士の間での総意は、よくある肩の問題に対し保存療法はとても効果が見られるということです。そしてこれらの治療家の何人かは、非常に基本的な休息、ストレッチ、そして筋力強化による治療でそのような結果を得ています。

スー・ファルソニ 4572字

肩の健康:解剖学及び傷害の概要 パート1/2

肩とは 肩の健康についてのどのような考察も、まず肩が非常に複雑な関節であることを認識する必要があります。そのデザインにより、肩は身体の中で最も可動性のある最も不安定な関節になっており、とても小さな変化でその力学的機能は変わってしまい、問題を引き起こすこともあります。 関節を安定させ支える筋肉は、主にローテーターカフ、そして肩甲骨安定筋群、菱形筋、僧帽筋、そして前鋸筋でありー一般的に肩甲帯と呼ばれるものです。胸骨と接する鎖骨、肩甲上腕関節(肩の球関節)、そして肩甲骨によって、まさにヨーク(くびき)のようになっています。 ローテーターカフ ジムでトレーニングする人達の大部分に向けた肩の健康に関するイントロは、チューブを使ったローテーターカフの内旋及び外旋エクササイズを行うための指示で構成されています。ローテーターカフを強化することは大抵良いアイデアなのですが、だからと言ってそれが理想的な肩のメカニクスを保証しているわけではありません。弱いローテーターカフで適切な肩のメカニクスは得られませんーローテーターカフの働きは必要なのですが、それだけで十分ではないのです。 よくローテーターカフが腱としてみなされるのを目にするでしょうが、ある問題の根本的な原因としてローテーターカフの筋肉を除外してはいけません。事実、骨が腱を擦り減らして生じる損傷のほとんどは、もともと筋肉の問題によるものなのです。 ローテーターカフの構造がどのように負傷するのか ローテーターカフの筋群は2つの理由で痛めつけられます。まず、それらが大きな仕事を持つ小さな筋肉であるということ。そして二つ目は、もし肩が適切に機能していなければ、それらの筋肉は関節に文字通り削られてしまうような位置にあるということです。この研削がインピンジメントと呼ばれます。もしある動きの中で、特定の位置に達するといつもコツンという音やポキッという音が聞こえるのであれば、それはインピンジメントかもしれず、対処するのが賢明です。時間がたつにつれ、小さな摩滅が大きな問題を引き起こしうるのです。 強いローテーターカフは、かかる負担によってけがをすることなく自分たちの仕事をより良く行うことができ、肩が適切に動き続ける手助けをしてくれるでしょう。しかし強い外旋筋群だけでは、健康な肩の動きは保証されません。 もしあなたの胸筋が柔軟でなければ、あなたは問題を抱えることになるでしょう。そして肩甲骨をコントロールする筋肉ーつまり菱形筋、僧帽筋中部及び下部、そして前鋸筋は、十分に強くなければなりません。 たとえすべてが強く、十分に柔軟性を持っていても、協調する運動パターンがうまく順序だっていなければ、あなたはなお問題を抱えるかもしれません。このことを考慮してください:もしローテーターカフをけがしたら、強化をするのは待つ必要があります。医師の診察を受け、手術の必要な断裂がないことを確認しましょう。もし受動的運動が必要であれば、理学療法士のところへ送られるかもしれません。 どのようにローテーターカフを強化するか ローテーターカフについて、理学療法における最新の思考には、良い機能を取り戻すためにいくつかのステップがあります。第一に個々の筋肉の治癒、筋力と可動域の回復、そしてそれらを神経学的にうまく発火させることです。それを行うのが、それらのチューブによるアイソレーション・エクササイズです(わたしたちが理学療法から拝借したエクササイズですね)。 次のステップは、これらの筋肉が全身と協調して働けるようにする運動パターンを再習得することです。コンパウンド・エクササイズ(複合エクササイズ)が良く、安定性に付加的要求をするエクササイズは大いに役立つかもしれません。 突き詰めていくと、多くの人々は、安定筋群の十分な筋力を維持するために直接的な運動をしなくてはならないでしょう。一例をあげると、もしあなたが肘を外側に張り出すロウイングをしていなければ、あなたはローテーターカフをあまりターゲットにしていないかもしれません。たとえしているとしても、大きな主働筋群が安定筋群を上回って、結局それらが分担した以上の働きをしてしまい、ローテーターカフは使われないままになる可能性が非常に高いでしょう。ロウイングによって、ローテーターカフの4つの筋肉すべてが肩を十分に支えられるほど鍛えられるという確率は低いのです。 とるべき方法は2つあります:一つは、ローテーターカフの筋力を定期的にテストし、十分な筋力と可動域が様々なポジションすべてに備わっているかを確認することです。そして、必要に応じて弱点を克服するエクササイズをしましょう。もう一つは、ただいくつかのローテーターカフのエクササイズを行うことです。一週間におよそ10分間程度ですから、それをちょっとずつやるというのは十分簡単ですね。 ローテーターカフの筋力は、通常直接的なローテーターカフ・エクササイズでどれだけの重さを使えるかを見てテストされます。理想的には、他との関連を無視して数字を見るよりもむしろ、統合的な上半身エクササイズの筋力と比較しましょう。 ローテーターカフの外旋エクササイズは、健康な肩を守るためのごく一部にしかすぎません。それらは、ジム仲間が毎トレーニングセッション前にチューブをつかんでウォーミングアップするという、あなたが期待するような万能の策ではないのです。 基本的な肩の健康 関節の可動性と安定性の観点から肩を見るとき、肩甲骨には安定性が必要な一方で肩甲上腕関節は可動性を要するため、私たちは肩甲帯の考えを分けなくてはなりません。 主要な部分に硬さがあるとき、肩はあなたの手、腕、そして胸郭に適切な動きを提供するために安定性を諦めます。肩の安定性なしでは、けがへと一直線です。あなたが肩関節から離れた身体の部位の柔軟性を得るまでは、健全で強くなるためのあなたの努力は、ある程度までしか効果がないでしょう。基本的な肩の機能を確実なものにするために、最低でも適切な柔軟性を得るまで、手首、胸筋、広背筋、そして肩甲下筋をストレッチし、そして生涯を通していくつかの基本的なストレッチをすることを計画しましょう。 幅広い種類のエクササイズを用いて、ローテーターカフと肩甲骨をコントロールする筋肉を鍛えましょう。もしあなたの使っているエクササイズが望ましい結果を出していないのであれば、他のエクササイズを試しましょう。胸筋や上腕二頭筋と同じくらい、上背部の筋肉や肩の安定筋群の筋力強化に頑張って取り組みましょう。 前鋸筋からのインプット 肋骨の背部に対し平らであるべき肩甲骨が突き出てしまっている翼状肩甲骨は、弱い前鋸筋、あるいは習慣的に怠けている前鋸筋が原因です。前鋸筋は肩甲骨を引き下方回旋させますが、それが正しく働いていないとき、肩甲骨縁は上に持ち上がり突き出てしまうのです。前鋸筋を定期的に鍛えることは必要不可欠です。 ウエイトトレーニングをする人たちの間では、何が前鋸筋を働かせるかについて多くの誤解があります。たとえば、前鋸筋も使うエクササイズとして長い間考えられてきていたプルオーバーは、前鋸筋を使ったとしてもそれほどではありません。プルオーバーをしているときに前鋸筋を収縮させることはできますが、それは前鋸筋をそれほど使う動きではないのです。反対に、前鋸筋を本当に発達させる基本的な運動とはオーバーヘッド・プレスで、できれば立位で行うのがよいでしょう。 ベンチプレスをすることは、前鋸筋の機能不全の一因となることがあります。通常水平面で押すとき、前鋸筋と胸筋、三角筋、そして上腕三頭筋は一緒に働きます。肩甲帯は腕に沿って前方に伸展されます。ベンチの上に寝転ぶとき、ことはうまくいかなくなるのです。肩甲骨は体重とバーの重さを合わせた重量の下敷きになってベンチの上で押しつぶされ、自由に動くことができません。加えて、ベンチプレスの「ゴール」は、バーをできるだけ高く上げることではなく腕をしっかり伸ばすことですから、前鋸筋は肩甲帯を伸展させるために使われないということになります。 これをさらに説明するものとして、前鋸筋はボクサー筋と呼ばれることがあります。最大のリーチとパワーのために、腕と肩甲帯の協調された完全伸展が自然と要求されるボクシングでは、この筋肉が非常に発達するのです。 前鋸筋をもとの状態に戻すには、大抵アイソレーション・エクササイズが第一段階です。最良のエクササイズは恐らく、インクラインベンチあるいは立位で、バーをオーバーヘッドで持って行うシュラッグでしょう。もしあなたが片側に問題を抱えているなら、そのエクササイズを二つのダンベルまたはケトルベルを用いて行うか、あるいは片手ずつ行うのは理にかなっています。 もう一つの良いエクササイズは、プッシュアップ・プラス、あるいは肩甲骨プッシュアップと呼ばれるものです。これは通常のプッシュアップのようですが、背中のてっぺんができるだけ高くなるようにプランクポジションを超えてプッシュします。通常のプッシュアップを試し、それからプッシュアップ・プラスをしてみると、プレスと肩の完全伸展との間の違いを感じるでしょう。プッシュアップのポジションになり、そして肘をロックしたまま、肩の後方をできるだけ高く持ち上げることを繰り返します。それはシュラッグのようです;動きは肩甲帯のみで起こりますす。これは肩甲骨の安定性のための優れた導入的コレクティブ・エクササイズです。 前鋸筋が機能的であるとき、オーバーヘッド・プレスは、恐らくその筋肉を強く健康に保つのにふさわしいものでしょう。

スー・ファルソニ 4062字

一般のクライアントたちに対し、シンプルで効果的なコンディショニングプログラムを作成する方法 パート3/3

ステップ4:適切な量と強度を用いる。 疑うことなく、週ごとに適切な量と強度を用いることは、効果的なプログラミングにおいてもっとも重要でありながら、同時に努力を要する部分でもあります。これが極めて重要な理由は、エネルギー恒常性と呼ばれるコンセプトのためです。 エネルギー恒常性は、脳が身体に起こるすべての他のことより優位に、エネルギーの生産と利用を調節するという原則です。体のエネルギー通貨であるATPのコンスタントな供給なしでは、数分以内に細胞もあなたも死んでしまうでしょう。脳が働きのすべては、生存を中心に働き、これが決して起こらないようにしているのです。 脳はエネルギー生産とエネルギー消費の両方をしっかりと調節し、運動やトレーニングはその日にどれくらいのエネルギーを消費したかの大きな構成要素になります。脳がエネルギー恒常性の危険を感じ取った場合(例えば、過剰なエネルギーが使われたとき)、脳の最初の反応は、運動と消費を続けるモチベーションを下げ、同時に食欲とより多くのカロリーを摂取する欲求を上昇させることです。 近年のありとあらゆる高強度トレーニングにおいて、よりよい結果を得るためのキーは単純にもっとやることだと考えることが非常に多くみられるようになりました。より多くの量、より高い強度=よりよい結果…あるいは、そう考えられています。 このアプローチの問題は、しばしばプラトーに陥ることと、典型的な一般のクライアントにとっては単に長期的に持続することが不可能なトレーニングプログラムを作ってしまうことです。 遅かれ早かれ、過剰な量と強度が用いられ、エネルギー恒常性は困難になり、そして脳はモチベーション低下と残念な結果で抵抗することになるのです。 このようなことが起きないようにするためには、まずはじめに、効果的でなおかつ持続可能な週ごとのトレーニングプランを作成することです。用いられる的確な量と強度は様々な要素によって変わりますが、クライアントの現在のコンディショニングやフィットネスレベルに基づいて、非常に多くのクライアントに対して当てはまるシンプルなガイドラインがいくつかあります: 低いコンディショニングレベルのクライアント:30~45分間のアクティベーションゾーンを週3~4日、20~30分間の閾値ゾーンを週1日。 中程度のコンディショニングレベルのクライアント:45~60分間のアクティベーションゾーンを週3~4日、30~40分間の閾値ゾーンを最大週2日まで、15~20分間の酸素摂取ゾーンは週1日以上行わないこと。 高いコンディショニングレベルのクライアント:60分間のアクティベーションゾーンを週2~3日、30~45分間の閾値ゾーンを最大週1~2日まで、20~30分間の酸素摂取ゾーンは週2日以上行わないこと。 これらのガイドラインを頭において、効果的かつ持続可能な週ごとのトレーニングプログラムを構築することは、比較的複雑ではありません。異なるゾーンを週のどの日に集中するのかを決めて、それに従ってワークアウトを計画しましょう。 もちろんストレングストレーニングも組み入れられる必要がありますから、この記事の中で私が設計した原則を使って行いましょう。 最終ステップ:個別化と漸進の熟練者になる 過去10年間、世界中の数えきれない世界級のコーチやトレーナーたちを観察したり一緒に話したりする機会をもち、彼らが皆行っていることで、他の人たちと一線を画していることに一つ気づきました。 彼らが他の人々が知らないようなトップ・シークレットのテクニック、方法、またはエクササイズを使っているというのではありません。そうではなく、彼らはどのように各トレーニングセッションを個別化するか、そして経時的にアスリートやクライアントがどのように絶えず漸進していくかを理解しているのです。 もしあなたが真剣に現場に出ようとしていているならば、これらの二つのスキルを完璧にマスターしなくてはなりません:個別化と漸進です。 これらはあなたが周りに差を付ける能力です。 注意を払い適切な質問をする。各セッションを始める前に、クライアントに調子はどうか、よく眠れたか、食生活はどうか、ストレスレベルはどのような感じか、などを聞きましょう。ウォームアップの間は、彼らのボディーランゲージに注意を払いましょう。疲れて見えますか?よく話しますか?もしくはほとんど何も言わない状態でしょうか?最良のコーチやトレーナーたちは、見て、聞いて、そして知り、あらかじめ計画していたワークアウトを確固として行うのではなく、むしろこの情報を用いてトレーニングセッションを個別化するのです。 テクノロジーを味方につける。どのように効果的にテクノロジーを使うかを知ることは、結果に非常に大きな影響を与えうるあなたのコーチングに一つ層を加えることができます。テクノロジーの役目は、あなたが得られることがなかった情報を提供することであるべきです。その情報を用いることで、より精通したトレーニング判断をすることができます。心拍変動のような強力なツールは、あなたにクライアントの回復に関する識見を与え、量や強度を個別化する手がかりとなります。PUSHバンドのような他の高技術ツールは、バーのスピードやパワーについての有効な識見を与えることができます。テクノロジーは無くなるものではなく、もしあなたがクライアントに出来る限り最善の結果を得てほしいと考えているのならば、テクノロジーを取り入れ、あなたの強みとして用いることを学びましょう。 プログラムを変更することを恐れない。しかし変更する理由を持ちましょう。現場に出たての経験の少ないトレーナーたちは、しばしば流れにまかせてワークアウトを作成実行し、本来の計画やプログラムがないことがあります。平均的なコーチたちは、トレーニングプログラムを作成するために時間を割き、その文字通りに沿って実践します。最高のコーチやトレーナーたちは、データによって補強された彼らの識見や経験を用い、何が働き何が働いていないのかを判断し、その上で必要に応じて変更をします。トレーニングプログラムは道路地図のように考えられるべきですが、もしクライアントを正しい方向に導いていないのであれば、左折することを恐れてはいけません。ただなぜあなたがそうしたかを理解しましょう。 各セッションの中での小さな漸進に注目する。もしあなたが一般のクライアントについてきてほしいと思うならば、避けられない真実として、彼らは漸進をみなければならないということがあります。彼らは一生懸命働いて得たお金と大事な時間をあなたに投資しているのです。もし結果が行き止まり、何も起こっていないと感じるようであれば、彼らが去るのは時間の問題です。私たちは皆、結果が直線であることはほとんどないことを知っています。しかし漸進は、たとえそれが小さな程度であっても、各ワークアウトの中で様々な形で得られるのです。たとえそれがこれまでよりたった5パウンド多く、2回多く、またはもう1セット多く持ちあげられただけでも、どのような漸進の感覚でも、まったくないよりよいのです。ワークアウトを通して、そして最後に、得られた漸進を振り返り、各ワークアウトから次回にかけていつも小さな進歩を得る努力をしましょう。 次に行うこと 1. コンディショニングは誰にでも重要だと理解する。心循環系疾患や脳梗塞、そしてその他の病気の疾患率が空前の高さにある中、フィットネスの専門家がどのように効果的なコンディショニングプログラムを作成し指導するかを理解することは必須です。 2. 成功するコンディショニングプログラムを作成するための4つの主なステップに従う: 心拍数(もしくはHRV)を計測し、12分間コンディショニングテストを実施し、運動後60秒間の心拍数回復を計測することで、コンディショニングのベースラインを確立する。 モチベーションと従順を高めるために、成果のゴールと過程に駆動されるゴールの両方を立てる。 目標心拍数ゾーントレーニング、具体的にはアクティベーションゾーン、閾値ゾーン、そして酸素摂取ゾーンを取り入れ、コンディショニングプログラムを個別化する。 クライアントを次に挙げるフィットネスレベルごとにグループ分けをし、適切な量と強度を用いる:低、中、高レベル。

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一般のクライアントたちに対し、シンプルで効果的なコンディショニングプログラムを作成する方法 パート2/3

ステップ2:スタートから正しいゴールを定める。 一旦ベースラインが確立されたら、次のステップはそれらのベースラインの数値を使ってクライアントのための具体的なゴールを定めることです。ここで用いる戦略は、二つの種類のゴールを含んでいます:成果に基づくものと、過程に駆動されるものです。 成果に基づくゴール 成果に基づくゴールはまさにその通り、クライアントが達成したいと願う具体的な成果のことです。効果的な成果に基づくゴールを定めるために2つの重要な要素があります:まず成果に基づくゴールは、あいまいでおおざっぱというより、計測が可能で具体的である必要があります。『コンディショニングを改善する』というゴールを立てる代わりに、より良いゴールは、『安静時心拍数を67ではなく62にする』や『12分間テストで1.2マイルではなく1.5マイル走れるようになる』というようなものになるでしょう。 クライアントにこれらのゴールをワークシートやワークアウトバインダー、もしくは毎回トレーニングセッションに持って行く何かに書かせましょう。このような、具体的な目標を達成するための計測可能で成果に基づくゴールのタイプは、クライアントのトレーニングに対するモチベーションをより維持する傾向にあります。 (ここでもう1つのポイントは、ゴールがクライアントにとって実現することが現実的であることを常に確かめることです。実現不可能なゴールを立てることほど、大きなモチベーションキラーはありません。ですから、何が達成可能で何が達成不可能かについて、現実的でありましょう。実現不可能だと知っていながら、相手が聞きたいと思っていることを伝えることは決してしないことです。) 過程に駆動されるゴール もう1つ定める必要のあるゴールのタイプは、過程に駆動されるものです。これらのゴールのタイプは、しばしば見過ごされています。なぜなら、皆求めている成果にただ集中したいからです。 過程はクライアントのゴールにたどり着くための道すじであり、日々クライアントをゴールに向かって駆動するものです。その過程には、週何回のトレーニングセッションが行われるべきか、どのような種類の栄養戦略に沿うべきか、などのことがらが含まれています。クライアントがゴールを達成するためになされなければならないトレーニングや栄養、また生活習慣に関係するすべてのことは、過程の一部として見なされるべきです。 一般のクライアントにとって、3つの最も重要な過程の要素は: 必要とされる週当たりのトレーニングセッションをこなすこと 適切な量の高品質の食事をとること、そして 十分な睡眠を取ること クライアントに、『毎週5日、60分間のトレーニングを行う』や『毎晩最低8時間の睡眠をとる』というような過程に駆動されたゴールを立てさせることは、単にどこに向かって行きたいのかということよりもむしろ、実際どのようにたどり着くかということに確実に集中させることに成功するでしょう。 ステップ3:『目標心拍数範囲トレーニング』でコンディショニングプログラムを個別化する。 コンディショニングにおいて、もし人々がしばしば困惑するものが一つあるとしたら、それは心拍数ゾーントレーニングでしょう。すべての異なる心拍数モニター、そして異なる専門家や器具製造会社による様々なゾーンの体系を見ると、なぜそれほど困惑するのか容易に理解できます。 本当は、多くのこれらのゾーンに基づくシステムは30~40年前に開発されたもので、ほぼ時代遅れなのです。 繰り返しますが、最善の戦略は物事をシンプルに保つことです。そして私からのアドバイスは、よく使われている5つのゾーンを避け、その代わりに3つのゾーンのみに絞ることです。多すぎるゾーンを用いてそれぞれのゾーンが何をするかを説明しようとし、それを中心にプログラムを構築しようとすることは、99%の時間をかける価値があるというよりもむしろ問題です。 一般の人たちのコンディショニングプログラムを立てるために、私は典型的に下記の3つのゾーンを用います: ゾーン1:アクティベーションゾーン。この第一のゾーンは最も低い心拍数で、心拍出量やテンポ・インターバルのような低強度の方法を用いるときに主にいるゾーンです。より多い量を用いることが可能なように、心拍数が十分低いものでありながら、低すぎて実際のトレーニング効果がなくならないようにするということです。各個人の年齢やフィットネスレベルにもよりますが、このゾーンはほとんどの人にとって通常約120~150の間にあります。フィットネスレベルの低い人たちは、もちろん範囲の下の方寄りにトレーニングをし、フィットネスレベルの高い人たちは、範囲の上の方寄りにトレーニングをする必要があるでしょう。およそRPE(自覚的運動強度)6くらいのペースで行いましょう。このペースでは会話をし続けることが可能なはずです。 ゾーン2:閾値ゾーン。このゾーンはアクティベーションの上にあり、おおよそ、その人の無酸素性作業閾値範囲くらいまでを指します。もしクライアントが正しく12分間テストを行ったのであれば、最低でもテストで行ったエクササイズに関しては、あなたはこの範囲がどこに当たるか大体の見当が付くはずです。 個人の閾値を推定するもう一つの方法は、RPE(自覚的運動強度)を用いて、運動中に話す能力を見ることです。もしその人が閾値ゾーンにいるならば、彼らは会話のやりとりを維持することはできなくなるペースで運動しているはずです。いくつかの単語をつなぎ合わせたり質問に答えたりはできるはずですが、もしそれ以上のことができるのであれば、彼らの心拍数は低すぎるということです。 閾値ゾーンはRPEの7~8あたりで、平均的なフィットネスレベルの人たちのほとんどに対しては、一般的に心拍数150代から160代半ばほどでの運動になります。もちろん、もっと高いフィットネスレベルや閾値を持つ人々はもっとより高いところになることもあり得るでしょうが、一般のクライアントの中ではまれです。 ゾーン3:酸素摂取ゾーン。これは心血管系全体が最大量の酸素を身体中に送るため最大限に働く、最も高いゾーンです。この地点にたどり着くには、たくさんの量の筋肉量が使われ、数多くの筋繊維がすべてが活動し酸素を要求していることが必要です。このことは、酸素摂取ゾーンが最大心拍数の90%以上であることを意味します。 最大心拍数が200である人の場合、酸素摂取ゾーンは180から最大200までとなります。このくらい高い心拍数でのトレーニングは非常に疲労するため、RPE(自覚的運動強度)は9~10となるでしょう。 一般のクライアントに対して必要な酸素摂取ゾーントレーニングは、ほんのわずかな量です。(そしてまったく体力のない人には、酸素摂取ゾーントレーニングをする必要はまったくありません。)また、クライアントがこのゾーンにいるときには常に適切なテクニックに注意を払うことが、安全と効果的なコンディショニングの発達の両方にとって重要です。

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