柔軟性と可動性への機能的アプローチ
モビリティーや可動域へアプローチする際に、関節や軟部組織がどのような状況かを判断し、適切なアプローチが必要となります。可動性と柔軟性の考え、機能的にアプローチする方法を集めたプレイリストです。より良い治療・機能回復を提供する方法を模索している方々にはチェックして頂きたいプレイリストです。
関節弛緩性の評価
結合組織にも様々なタイプや個人差が存在します。関節に弛緩性を持つ結合組織の密度が低いタイプの個人と、結合組織の密度が高い個人では、必要な運動のタイプも異なるはず。関節の弛緩性の有無を確認する方法をご紹介します。
関節過可動性
柔軟性があることは、常に素晴らしいことのようにみられています。伸びやすければ伸びやすいほど良い!!数多くのありえないようなヨガのポーズをとる能力があること。 しかし、関節過可動性には、それなりの問題がありえるのです。 私達が身体を、動作の成功のために、連鎖反応に依存している統合ユニットとして理解し始めると、ある程度の張力は利点であることをより実感します。 求心性短縮を作り出すために、身体は筋肉の遠心性伸張に依存しています。これは全て、最適な可動域と順序の中で起こる必要があります。関節過可動を持つ人において、ある収縮タイプから別のタイプへの変換を作り出すためのプリテンション(事前張力)は、最適なパラメーターで発生することはないでしょう。 歩行におけるこの連鎖反応の例は、股関節の内旋と足の回外です。遊脚が立脚を通過するとき、立脚は股関節において相対的な内旋を作り出します。この内旋は、立脚における外旋の爆発のための情報とエネルギーを作り出すでしょう。また、股関節における内旋の可動域を使いきることによって、骨盤が大腿骨を駆動することによっても起こります。これら全てが、足が回外する手助けをします。 関節過可動を持つ人において、プリテンション(事前張力)のレベルは最適ではありません。これは、固有感覚情報のための張力を得るためには、骨盤の上から脚へのドライブとそのエネルギーは、より遠くまで移動しなければならないということを意味しています。足元を見てみれば、全ての反応が上部関節で発生した頃には、回外のための適切なタイミングは過ぎてしまっています。これは、伸展に関しての股関節における足の影響もすでに逃してしまっているかもしれないということを意味しているかもしれません。これは効果的でない歩行周期不良につながります。 筋肉の弾性伸長の増大は、動作によって生成された、いかなる張力をも吸収してしまいます。 赤ん坊が歩き方を習得する際、彼らの動作にはプリテンション(事前張力)、もしくは剛性制御の欠如を見ることができます。私達が、より効果的に動けるようになるにつれ、関節可動域はより制御されるようになり、張力の内的レベルは向上します。これは、効果的なエネルギーと情報の伝達を可能にし、従って、生体力学の連鎖反応の発生を可能にします。 関節過可動性は、エネルギー消費と動作のスピードに関連性を持っています。簡単に言えば、関節や筋肉の可動域が大きければ大きいほど、ATPの分解を通して、より多くのエネルギーを熱として消散し、動作制御をするのにより多くの時間を必要とします。 硬直や現在の“コア・スタビリティー(安定性)”のトレンドが推進する安定性ではなく、動作制御として安定性をみるとすれば、過可動性は成功するものではないかもしれません。実際、硬直は、身体が、制御された動作の代わりに、安定性のために使用するものなのかもしれません。これは、機能不全なのです。過可動性関節は、無痛の動作につながる運動の正しい順序を妨げるでしょう。可動域全体を制御するために、身体の他の部位に硬直を無理強いするかもしれません。これもまた順序の妨げとなるでしょう。 私が過可動性を持つ人達を扱った経験から学んだのは、彼らには常に必然的な硬直の部位を見つかるということです。また、システム内に張力を生成する可動域内で動作を行う際、システムに対する張力のデマンドを、自ずと既成することができる体重負荷の状態で動くことが最良といえるでしょう。 大きすぎる張力、もしくは小さすぎる張力もまた、疼痛受容体とその閾値に影響を与えるでしょう。確実に、硬直部位の張力が大きければ大きいほど、痛みの神経終末の活性化閾値は低くなります。私は筋弛緩と痛覚閾値の研究についてはよく分かりませんが、最適から一歩離れることは、何らかの影響を及ぼすかもしれないと確信しています。
筋が張っていると感じるのはなぜ? パート1/2
なぜ筋が張っているように感じるのでしょうか? それは筋が短いということ? リラックスできないということ? 私たちはこれに対して何ができるのでしょうか? 筋が張っていると感じる理由とその対応の仕方について、いくつかの私見を紹介します。 張りは力学的状態だけではなく感覚である 誰かが、ある部位に張りを感じると言う場合、異なるいくつかの訴えを指しているかもしれませんから、それを探るように心がけます。 可動域の悪さのことを言っているのか? または、可動域は正常でも動きの最終域で違和感を覚えるのか、それとも動かすために余計な力が必要なのか。 または、実際の問題は動きにあるわけではなく、その部位がまったく弛緩してくれないかんじがあるのかもしれません。 もしくは、その部位は基本的に弛緩しているにもかかわらず、はっきりしない違和感、つまり痛みとまでは言えない不快感があるのかもしれません。 この曖昧さは、張っていると感じるのは単なる感覚であって、過度の緊張やこわばり、短縮という物理的または力学的性質ではないということを意味しています。これら一方がなくてももう一方が存在することもあり得るのです。 たとえば、ハムストリングの張り感を訴えるクライアントが大勢いますが、前屈してみると簡単に手の平を床につけることができるのです。一方、ハムストリングに張り感をまったく感じなくても、前屈してみると手が膝すら越えることができないクライアントもいます。張り感は可動域の正確な測定にはなり得ません。 また、筋の実際の緊張や硬さ、または“こり”の存在を正確に反映しているわけでもありません。クライアントが張っていると感じている部位を私が触診すると(仮に上部僧帽筋とします)、たいてい彼らは「すごく張っているのが分かりますか?!」訊ねてきます。 たいてい私は次のように言います: うーん・・・いいえ、周りの組織と同じ感じですよ。 そうは言っても、その部位が張ったように感じて不快な思いをされていることは十分理解しています。 私も張り感は好きではありませんので、それを改善するお手伝いをしたいのです。しかし、張り感があるということは、ある部位が本当に物理的に張っているということとは異なるのです。このことは納得していただけますね? 実際、ほとんどの人は納得してくれます。そしていささか興味深く思うでしょう。みなさんにこのことを理解してもらいたいのです。なぜなら、張りを治すつもりですでに立てた見当違いの計画、つまり強引なストレッチや筋膜の圧壊、癒着剥離などを再検討するきっかけになるかもしれないからです。そうすれば、ラクロスボールを胸郭の途中まで押し付けるようなことよりも、もう少し控えめなアプローチを考慮したいと思うでしょう。 筋は実際張っていないのに、なぜ張り感を感じるのか? では、筋は物理的に弛緩しているにも関わらず、なぜ張り感を感じるのでしょうか? 例えとして、痛みをとりあげられると思います。組織の損傷がなくても痛みが存在することがあります。なぜなら、痛みは脅威の知覚から生まれ、その知覚は必ずしも現実と一致するとは限らないからです。痛みは本来、警告であり、そこに本当の危険が存在しなくても作動してしまうことがあるのです。 同様の論理が張り感にも通用するかもしれません。その感覚は、身を脅かす状況が筋に起きていて、動きを正す必要があるということを無意識に私たちが知覚している時(それが正しいか間違っているかは別に)発生します。 では、この張り感が私たちに警告しようとする身を脅かすような状況とは何でしょうか? 確かに、緊張があるということだけではないようです。むしろ筋は緊張を作り出すようにできています。また、筋がほぼ完全に弛緩しているにも関わらず、筋に張り感を覚えることがしばしばあります。 ですから、緊張自体は身を脅かすものではなく、適切な休息や血流の欠如こそが、身を脅かすもので、それが代謝的負荷を起こしたり侵害受容器を化学的に活性化してしまったりすることがあります。張り感が私たちに警告しようとしているのは、緊張の存在ではなくて、緊張の頻度または血流不足(特に血液を必要とする神経において)なのです。 私はこの点を考慮して、張り感とは、痛みとまで呼べない軽い痛み、つまり痛みのバリエーションとしてとらえています。実に煩わしいものです。そして張り感には、明らかな特性や特徴があり、休息中の姿勢を変えてみたり、体を動かしてみたり、ストレッチしてみたりなどの動機を与えます。これは、じっとして動かないようにしていようと思わせる痛みは異なります。おそらく、痛みはその部位を動かすなという警告で、張り感は動きなさいという警告といえるのかもしれません。 筋の緊張にどのように対処すればいいか? 身が脅かされていると神経系に知覚させる多くの“入力”、つまり痛覚や思考、感情、記憶などのひとつを変えることによって、痛みを治療するのと同じように張り感も治療できると考えます。 痛みのなかには、動きや姿勢の癖との関連性がとても明らかなものがあります。これは「こうすると痛いです。そして、もっとこうするとさらに痛くなります。これをしなくなれば、痛みも減ります」などと言われれば分かりやすく、このような場合には、動きや姿勢を改善することによって、痛み(動きによって起こる機械的侵害疼痛)の主な要因を減らせるため効果的であることが多いのです。 一方、ほかにも痛みの原因はたくさんあります。特にもっと複雑な慢性疼痛では、痛みが特定の動きや姿勢にさほど関係しない代わりに、時間帯や睡眠時間、情緒状態、ストレスレベル、食事、日々の運動、あるいは原因不明な要因の変動に関係します。このような時は、動きによって起きる機械的侵害疼痛が痛みの主な要因ではなさそうです。それよりも末梢性と中枢性の感作がより関与している可能性があります。 張り感についても同じように捉えることができると思います。
筋が張っていると感じるのはなぜ? パート2/2
筋の緊張にどのように対処すればいいか? (続き) 単純に張りを感じるケースのほとんどの場合、原因ははっきりしています。長時間同じ姿勢で固まっていたり同じ動きを繰り返したりしていると、部位によっては侵害疼痛を引き起こす血流不足や代謝ストレスを緩和させるために姿勢を変えたり筋の休息が必要となります。たとえば、車または飛行機の中やパソコンの前で何時間も過ごすとします。本能的に、ストレッチをしたり動いたりせずにはいられなくなります。そうすることにより、たいてい張り感や不快感は軽くなります。 当然のことながら慢性の張りを訴えるクライアントの多くは、このような簡単な対策はすでに試していて効果が得られなくなっています。張り感は何時間も何日もずっと続いたり、いつでも構わず現れたり消えたりし、姿勢や動きとの関係は少ないようです。 このようなケースでは不快感の要因は、その部位への血流を増やそうとする必要性に応じて末梢性または中枢性感作になる神経系がより深く関与しているのかもしれません。これらは、局部的な炎症、副腎感受性、後角の感受性の上昇を通して起こりうることで、もしかしたら、ある特定の環境(たとえばコンピューター)とある特定の感覚(最悪の気分)の結びつきを学習したことによって起こるのかもしれません。 では、どのようにこの感受性を下げればよいのでしょうか? この質問に対する簡単な回答はありません。もしあるのであれば、慢性疼痛の問題はすでに解決されているはずですが、まだ誰もどうすればよいか分からないのです。しかし、仮に張り感が痛みの軽症型であるという私の考えが正しければ、その扱いは少し楽になるはずです。 慢性の張り感に取り組むためによく使用されるいくつかの方法を下記に列挙します。そして、各方法について上記に述べてきた観点からの考察を添えています。推奨しているいくつかの事柄は多くの人が行っていることと正反対であることに気がつくでしょう。 ストレッチ 私たちは、しばらく縮めていた筋を本能的にストレッチし、それはたいてい瞬時に楽にしてくれます。 しかし前述のように、慢性の張りに苦しんでいる多くの人は、すでにこれを試みており解決には至っていません。このことは、悪い力学というよりは感受性の亢進の問題であるということを示唆しています。 ここで問題になるのは、簡単なストレッチが効かないならばもっと激しいプログラムが必要であると多くの人や多くのセラピストさえも考えてしまうことです。 このどうしようもない股関節屈筋群はまだ張っている感じがする。 これは、もし問題の根源が組織の短縮や癒着であれば理解できます。しかし、もし問題の根源が実際は感受性の上昇であれば、激しいストレッチはかえって問題を悪化させてしまうかもしれません。一方で、ストレッチは鎮痛や弛緩作用があるとされています。 結局、ストレッチは張りを治す良い方法でしょうか? 何事も共通して言えますが、もし気持ち良いのであればやってみればいいし、そうでなければやめればいいというのが私の考えです。 張りに対する軟部組織アプローチ 短縮した軟部組織を伸ばしたり、癒着を剥がしたり、筋膜を緩めることなどを目的にする多種多様の軟部組織治療(深部組織マッサージ、フォームロール、グラストン、ART、IASTM)が存在します。これはほぼ不可能であることは、私も他の多くの人たちも指摘しています。 しかし、これらの療法で感受性を下げ、張り感を軽減することはできるでしょうか? 当然、侵害刺激の下行性抑制を活発化させることにより軽減できます。これは、健康利益をもたらすと期待される疼痛刺激の効果として広く知られています。 しかし、もちろんこれらの療法自体が侵害刺激を生み出し、感受性を上昇させてしまう傾向もあるのです。個人のもつ体質やその他さまざまな要素による絶妙なバランスです。繰り返しますが、もし気持ち良いのであればやってみればよいのです。これはひとつの選択肢であって必須ではありません。一時的なものであり、実施する理由を忘れないでいるべきです。 筋の張りのための運動制御 さまざまな種類の運動療法は、基本的に運動制御へのアプローチです。つまり、動きや姿勢、呼吸パターンを改善することにより、より効率よくなり、ずっと居座り続ける緊張を取り除き、弛緩方法などを修得します。 習慣を変えることは難しいですが、特に緊張が特定の姿勢や動きに関係するような時には、この対策は試す価値があります。もちろん、状況がより複雑であれば、運動制御のみで問題を解決するとは期待できません。 エクササイズとレジスタンストレーニング ストレングストレーニングを筋の緊張と関連づける傾向があります。エクササイズの最中に筋はもちろんかなりの緊張状態になります。遅発性筋肉痛により次の日になって身体のこわばりを感じる人もいるでしょう。ストレングストレーニングが筋を短縮させ柔軟性を低下させるという(誤った)考え方もあります。 これらは、根も葉もない話です。実際、全可動域を使ったストレングストレーニングは、おらくストレッチ以上に柔軟性を増加させます。筋内の局部的な適応が起こることで、持久力を向上し、代謝ストレスに耐え易くすることもできます。また、エクササイズには鎮痛効果もあり、神経系を過敏にする炎症を抑えることもできます。 個人的な逸話になりますが、私がヨガを行っていた頃、今よりもっと柔軟性がありましたが、常にハムストリングスは張っていると感じていました。その後、ヨガをやめケトルベルスウィングをかなりやり始めました。私の前屈はやや減り、ハムストリングスをかなり使っていたにもかかわらずハムストリングスの張り感は消えていました。その代わりに得たのは機能的な強さと能力の感覚です。これが、ハムストリングスが伸ばされることに関する危機感を減らしたのではないかと思います。 もちろん、ストレングストレーニングで筋を酷使した後、回復させなければ、それらは過敏になり、こわばり、痛くなります。しかし、適切なトレーニング量(適応が起きるのに十分であり、また完全な回復を妨げたりケガを引き起こしたりしない程度)であれば、より健康的で強くなれるでしょう。そうです、もちろんこわばりも少なくなります。 結論 こわばりを感じたならば、それは単なる感覚であり、積極的な構造的解決が必要な組織の短縮という物理的状態では必ずしもないこと覚えておいてください。他の感覚と同様に、過敏であればより強く感じることになります。また、他の種類の感受性と同じように、体調全般や筋力、気づき、運動制御、健康を改善すれば感受性も下がるでしょう。
不必要なストレッチを避けるために
ハムストリングスが硬いようなセンセーションを感じた時、即座にストレッチを実施する前に、まず自己テストをしてみましょう!というDr.ドゥーリーからのアドバイスをご覧ください。
ファンクショナルな柔軟性とは パート1/2
実際の機能に即した柔軟性とは?モビリティーと共にスタビリティーを必要とする私たちの身体と動き。グレイインスティチュートでは、これをモスタビリティーと呼びます。股関節前側の組織を例にとってギャリー・グレイが機能的柔軟性の重要性を解説します。
ファンクショナルな柔軟性とは パート2/2
実際の機能に即した柔軟性とは?モビリティーと共にスタビリティーを必要とする私たちの身体と動き。グレイインスティチュートでは、これをモスタビリティーと呼びます。股関節前側の組織を例にとってギャリー・グレイが機能的柔軟性の重要性を解説します。
身体機能の柔軟性:複雑な構造をシンプルに
ゴルフ、フットボール、サッカーを始めとして、あらゆるスポーツのトレーニングにおいて、多くのアスリートは筋力トレーニングの重要性は知っていても、柔軟性プログラムの重要性についてはほとんど理解していないのが実情です。 しかし実は、身体の柔軟性こそが、私たちの動作の基盤なのです! 実際、身体に柔軟性がなければ、パワーや筋力、心臓血管系能力、また筋持久性を最大レベルにまで引き出すことはできません。柔軟性はリハビリやパフォーマンス向上のための要であり、傷害を防ぎます。にもかからず、柔軟性プログラムはそれほど一般化していないのが現状のようです。 それには様々な理由が存在するのでしょう。 ひとつには、リサーチによる見解にばらつきがあり、それがより多くの混乱を引き起こしているということ(1)。 しかし、ほどんどの調査の背景となっている本質(またはそれすら存在しないという点)をよく検討してみると、様々な見解が混在している理由が簡単に理解できます。 どのようなテクニックを選択して採用するか、しかもそれらが基本原則に基づいた手段であるかということは、専門家にとって重要なことです。しかもこの手段は、各個人を対象とした必要性に限定されるものでなければならず、独断的に考案された指針に従っていてはならないのです。どのような手法を採用するかを決定するには、まず以下に述べる3つの基本原則を検討する必要があります。これらは、患者やクライアントの身体の機能的な柔軟性を評価し対策を立てるための基本原則です。 身体の機能的柔軟性に関する3つの基本原則: 各個人を対象とし、タスク=課題によって決定されるものであること 三次元であること 可動性/安定性のシステムであること 身体の機能的柔軟性とは、私たちの身体がより良く機能することを可能にする柔軟性を意味します。これによって私達は、最適にかつ効果的にタスクを実行することができるのです(2)。機能的柔軟性の的確な働きは各個人、そしてそのタスクによって決定されるものです(3)。従って、筋肉の起始部と停止部に着目しただけの一般のストレッチでは、機能性を最適に提供することはできないのです。 プラクティショナーは、患者またはクライアントのタスク実行時の、筋肉の働きをよく認識する必要があります。言い換えれば、筋肉がどのように働くのかは、そこにあるタスクによって決定づけられるものであって、マニュアルやテキストブックによって決められるものではありません。だからと言って、テキストブックの作者が間違っていると示唆しているのではないのです。テキストブックを作成する際に実践した特定の動きやポジションに関しては、正しい内容であるはずです。 私達の身体が、その角度やポジション等を変更すると、その機能も変化します。ですから、より機能的な柔軟性を得るためには、そこで使用するテクニックが、実際に行おうとする動きの機能に似通ったものである必要があります。そのため、私たちは筋肉や筋膜、腱や靭帯、神経や関節包、そして関節が、特定のタスクにおいてどのように3次元的に動くのかを理解する必要があるのです。単に、どの位動かせるかだけではなく、いかによく動かせることができるかも含めて。 これは可動性と安定性の原則です。3つの面全てにおいての、適切な量の可動性とそれに伴う適切な安定性は、テキストブック通りではなく、個人や意図するタスクによって特定されます。全てのタスクは、それぞれに異なったレベルの可動性と安定性を必要とするのです。 この複雑な内容を単純化するために、私達が実践している、3つの基本原則を適用した実践的な方法をご紹介します。この方法は皆さんが、次回のアセスメントや評価を行う際に使っていただくことができます。 何よりもまず大切なのは、各個人、そして、それぞれのタスクのユニークさを理解することです。各個人の現在のコンディションや、制限要素、懸念事項、何を望んでいるのかを理解した上で、意図するタスクをできる限りアスレチックな機能を伴う状況で評価します。ここで重要なのは、患者やクライアントが何を望み、何を必要としているのか、そして彼らが現在何をうまくやり遂げることができているのかを理解することです。ここから、彼らを正しい方向に向けて、可能な限り迅速に、そして安全に導く方法を作り上げます。例えば、レベル1から始めて、個人やタスクごとに必要性に応じて、レベル2やレベル3に進んでいくといった具合です。 レベル1:タスクによって特定 特定のタスクを正確に実行する能力を評価します。例えば、歩行、ランジ、スクワット、ピボット、ステップ、リーチ、走る、バランスをとる、何かを拾い上げる、右手を伸ばしながら座る、等。 これらを行うことで痛みや不快感を伴ったり、自信をもって実行できない場合には、これらのタスク実行の補助となる、正しいサポートが必要になってきます。 例えば、ある人が、スプリットスタンスの立位から、膝の高さまで前屈した場合、腰部にストレスを感じるとします。この場合、かがむ度合いをウエストの高さまでに変えたらどうでしょう?不快感を同程度に感じるでしょうか?それとも減少するでしょうか? 痛みが減少した場合、初回の評価時の可動範囲で不快感を感じた要因は、背中にあるのでしょうか?それとも股関節にあるのでしょうか? 身体の角度やポジション、高さやドライバー(駆動要因)、可動範囲等を変化させ、探偵のように探ってみましょう。それによって、その人が希望する、あるいは必要とすることを上手く実行するための方法を見つけ出すことができるのです。 これが成功しなかった場合は、レベル2に進んでください(レベル2はレベル1と大きな違いがないように見えますが)。 レベル2:外部補助を伴うタスク 意図する機能の実行に、外的な補助、あるいは安定のポイントを追加します。私達の方法を例にとれば、トゥルーストレッチステーションや戸口等の、外部的なサポート要素を加える、ということになります。こういった外部的補助は、患者やクライアントを特定の可動域、又はゾーンに位置させた状態から、動きのドライバー(駆動要員)を適用することを可能にします。彼らが動きを実行している状態で、触診のスキルを使って、チェーンリアクション全体の評価を行い、一連のチェーンの中の“弱いリンク”を見つけ出すようにします。これが可動性と安定性の基本原則の適用となります。 身体は安定性を知覚し、可動性を表現し、実践します。もし、ある個人に充分に可動性がなく、身体構造の組織の状態や、張力のレベルを評価する必要のある場合は、レベル3の方法で、該当する身体構造(特定の機能ではなく)を確認するようにします。 レベル3:身体構造によって特定 身体構造を評価するための環境として、マッサージテーブル等を用意します。実際の機能的なタスクとは異なる環境となるため、ここで得た結果には偏差が生じることを理解した上で、望む結果が機能的なものであるとすれば、ここで得た結果を機能に関連付け、統合する必要があります。 伝統的には、患者やクライアントの症状や特定の身体構造の緊張具合の確認から始まり、レベル3、最終的にレベル1へ戻れるよう多くのテクニックが指導されています。 このパラダイムシフトでは、特定の身体機能を実行することよって、今現在の状況が、本来あるべき機能からどれだけかけ離れているのかを確定し、それから孤立した構造へのアプローチへと進むようになります。 この方法は、時間を有効に使えるのみでなく、患者やクライアントに、機能によってより良い機能を増幅させることができる、という希望を与えることができます。機能とは常に変化するものであり、その性質上複雑なものではありますが、本来あるべき機能に従うことで、シンプルにより良く働かせることができます。 患者やクライアントの伝えようとすることを聞き取り、彼らの経験や動きを観察することで、より良い健康を実現するための指針とすることができます。 応用機能科学(物理科学、生物科学、行動科学の総体)の基本原則を適用すれば、柔軟性にも新たな意味合いをもたらすことができます。機能的な柔軟性は、各個人の全体性を認識したものです。身体の全体性のダイナミクスを理解することができれば、各部分の相互作用の特性やパターン、そしてその基本原則をも理解することができるでしょう。
圧迫と張力のスペクトラム
東京で開催中のグレイインスティチュートFSTT 機能的軟部組織の変容 上肢コースより。レニー・パラチーノが、組織への圧迫と張力の角度による組み合わせの変化と、牽引による張力要素の役割に関して、分かり易く解説してくれています。
機能的な軟部組織へのアプローチ パート1/2
軟部組織の制限を解消する、メルト(弛める)モールド(型作る)ムーブ(動く)というアプローチのプロセスと、動きと組織のクオリティーを確認するテストの流れを、グレイインスティテュートのファクリティーとして、軟部組織へのアプローチの専門家として定評の高いレニー・パラチーノが紹介してくれます。
機能的な軟部組織へのアプローチ パート2/2
軟部組織の制限を解消する、メルト~モールド~ムーブのアプローチ。弛めた組織をアクティブにストレッチすることでモールド(型作る)し、動きの再評価をするプロセスをレニー・パラチーノが紹介します。