すべてのトレーナーとコーチが読み、理解するべき研究

健康、そして、人間のパフォーマンスの世界で絶対というものはほとんど存在しません。すべての質問に対する答えは正に“おそらく”です。裏付けに乏しい観察と専ら科学的根拠に基づく医療の間の論議でさえ、白熱した討論になることもあるグレーゾーンが存在します。 しかし、すべてのトレーナー、コーチ、リハビリテーション専門家、そして、フィットネス愛好家が読み、理解するべきだと私が考える研究が1つあります。私の長年の友人であるスチュワート・マックギル博士-まぎれもなく世界トップの脊柱の権威である-が主要著者の1人でもあります: Frost DM, Beach TA, Callaghan JP, McGill SM. 消防士のためのエクササイズに基づいたパフォーマンスエンハンスメントと傷害予防:2つのトレーニングメソッドに関する、フィットネスと動きに関連した適応の対比:J Strength Cond Res. 2015 Sep;29(9):2441-59. あなたが考えていることは分かります:“消防士のトレーニング方法から何を学べるのですか?私のスポーツ、ライフ、職業的要求はまったく別物です。” なぜこの研究があなたたちそれほど重要なのか、そして、どのようにトレーニングするのかを理解するためには、その方法論を見る必要があります。 基本的に、研究者は52名の消防士を対象に、彼らを3つのグループに分けました: 1. 動きを指導されるフィットネス群(MOV)はプログラムと正しく動く方法を指導されます。 2. 従来のフィットネス群(FIT)はプログラムだけを受け取り、指導は受けません。 3. コントロール群(CON)はエクササイズの介入はまったく受けていません。 12週間のトレーニング介入前後に(コントロール群ではトレーニングはしていません)、すべての消防士は一連のフィットネステストとラボでのスクリーニングを受けました。体組成、有酸素能力、握力、筋持久力(プッシュアップの最大回数とプランクの持続時間)、下肢パワー(垂直跳び)、そして柔軟性(座位でのリーチテスト)を計測しました。 特に重要なことは、前後のテストにはトレーニングの介入ではどの部分にも含まれていない“5つの全身運動タスク”が含まれていることです。その介入は、ボックスデッドリフト、スクワット(自重)、ランジ、スプリットスタンスでの1アームケーブルプレスとケーブルロウです。目的は、どれだけ混沌とした人生(あるいは、より具体的に消防の活動)においてでも、トレーニングがより効率的で質の高い動きに実際どの程度転移されているのかを評価することでした。これらのタスクで、動きの低さや速さといった様々な状況下での動きの質を詳細に検査するために、研究者は反射板を使用し、脊柱と膝の動きを見ました。研究者が記録したのは(太字は私が強調するものです): FITとMOV群はフィットネスのすべての点において優位な改善が見られた:しかし、それぞれの転移タスクを行ったときの、脊柱と前額面における膝の動きの制御に改善が見られたのは、MOV群のみであった。FIT群では、スクワット、ランジ、プッシュ、プルの動作中で脊柱と前額面における膝の動きはそれほど制御されていなかった。トレーニング後で改善が見られた参加者は、FIT群(30%)とCON群(23%)と比較して、MOV群がもっとも多くみられた(43%)。トレーニング後ではマイナスな変化がほとんどみられなかったことも記録された(MOV, FIT, CONがそれぞれ19,25,36%)。 では、これは一体全体どういうことを意味しているのでしょうか?トレーニングの質が重要であるということです。 質の高いコーチングを受けたグループでは、平均的に動きが格段によくなり、実質的なマイナスの結果はほとんどありませんでした。コーチングのないトレーニング群では、平均的な“改善”は低く-マイナスな適応という事象がより見られました。 この研究は、質の高い片脚RDLをコーチングすることで、投手がコントロールして安全に足を接地することに繋がるということを証明しています。 ジムで我々が指導する“正しい”股関節伸展はまた、アスリートが走るとき、跳ぶときにも起こることであることを示しています。 我々が指導するラテラルランジは、選手がラクロス場で安全に方向転換を行う一助になっていることを示しています。 我々がジムでかなり厳しく指導しているデッドリフトでのヒップヒンジテクニックは、日々の生活でよちよち歩きのわが子を抱き上げるときに背中を痛める可能性を減少させていることを示しています。 90/90での腱板の筋力とポジションのタイミングを我々が極めて細かいところまでコーチングし、トレーニングすることで、スローイングの外旋時に腕を後方に持っていくときに選手を傷害から守っていることを意味しています。 良質なストレングス/コンディショニングの結果とは、単なるプログラム、さらには、恵まれたトレーニング環境によるものではなく;マイナスな影響を出さずに、動きの質を好ましく適応させる可能性を顕著に上げるために、一貫して質の高い負荷を繰り返しかけることであるということを意味しています。 この研究では、すでに用意された腱板プログラムがしばしば肩痛の患者に効果がでない原因も説明しています。怠慢なコーチングと一緒になった画一的なアプローチでは、患者を痛みから救えないことが多く、ちょっとした技術とプログラム調整が体制を一変させるきっかけになりえるのです。そして、まったく問題を持たない友人とまったく同じプログラムを行っている健康だったはずの人に、結局傷害が起きてしまう原因も説明しています。私たちのところに、たった1回だけ相談に来るような人達によくみられることです;少しのコーチング、あるいは、プログラムの変更によって、大きな違いを産み、彼らが無症状で、楽しくトレーニングし続けられるようにすることができます。 あなたのコーチングへのプライド、そして、トレーニング技術に対してその人が持っているプライドが問題なのです。決してそれを忘れないでください!

エリック・クレッシー 2639字

肩甲骨プッシュアップが好きではない理由

肩甲骨の後退と前突の動きを学ぶエクササイズとして人気のあるスキャププッシュアップ/肩甲骨プッシュアップを、かつては頻繁に使用していたエリック・クレッシィが、このエクササイズを使わなくなった理由とは?

エリック・クレッシー 2:55

バンドプルアパートの微調整

上半身の姿勢を整え、ローテーターカフの筋強化にも効果的なバンドを使ったエクササイズを、より正しく行うための注意点をエリック・クレッシィがご紹介します。

エリック・クレッシー 2:23

可動性トレーニングに関して私が学んだ5つの事

とても単純なことで、可動性とはその人が望んだポジションや姿勢をとることのできる能力のことです。多くの人は可動性と柔軟性(ある特定の関節における可動域)を間違って混同しているため、業界全体として、すべての可動性の問題が、関節をまたいだ組織そのものの短縮であると考える傾向がありました。しかし、時間と共に、私たちはより賢明になり、人が人あるポジションをとることに苦労している原因が、関節構造(例、大腿寛骨臼インピンジメント)、隣接する関節の不十分な硬度(例、コアコントロール不足が股関節の可動性不足として“現れる”)、前述した関節をまたいでいる組織の(ただの長さというよりは)固さ、そして、その他多くの要素にあると気がつきました。より簡潔にいうと、可動性はただ組織の長さよりも、もっと、より多くのものに依存しているということです。 1. 理由が正確に分からないとしても、軟部組織ワークは重要です。 誰かが、フォームローリングは悪いことであるので、決して行ってはならないと主張しているのを聞いた時、正直私は笑いそうになります。フォームローリングを行ったあとは、とても良い感じになり、さらに動くようになり、続いて起こる可動性の初期動作の質を高めてくれるようです。 実際に、瘢痕組織を力学的に分解しているとは考えていませんが、1つか、それ以上のメカニズムによって、一時的に標的となる組織の固さを完全に減少させます。完全に説明できないからといって、必ずしも“良いことが起こっていない”ということではないのです。 2. 呼吸によって悪い固さを減少させ、良い硬さを産み出す。 そのポイントはこうも呼ぶことができます、“ヨガを行う人は、長い間呼吸に関して正しかった。” ポジションによる呼吸ドリルを行うことで、柔軟性と可動性がどちらもが、一時的に向上するということは珍しいことではありません。私にとって、悪い固さを減少させ、良い硬さを産み出すことは1つの方針なのです。例として、四つ這い屈曲位での呼吸があります。

エリック・クレッシー 2920字

より良い呼吸 より良い動き パート2/2(ビデオ)

より良い呼吸ができれば、姿勢も向上します。より良い姿勢は、より楽な呼吸を助けます。トレーニングを行う前のウォームアップに取り入れることができる呼吸と姿勢の向上のためのエクササイズを、エリック・クレッシィがご紹介します。パート2

エリック・クレッシー 4:28

より良い呼吸 より良い動き パート1/2(ビデオ)

より良い呼吸ができれば、姿勢も向上します。より良い姿勢は、より楽な呼吸を助けます。トレーニングを行う前のウォームアップに取り入れることができる呼吸と姿勢の向上のためのエクササイズを、エリック・クレッシィがご紹介します。パート1

エリック・クレッシー 4:12

サイドラインでの肩外旋エクササイズ注意点

サイドラインでの肩外旋のエクササイズは、回旋腱板の後ろ側の筋活動のために効果的なエクササイズです。このエクササイズのセットアップでよく見られがちな間違いのポイントをエリックがシェアします。

エリック・クレッシー 2:13

ピッチングがうまく行かない時:立て直すための5つの戦略

投手は、コマンド、球速、「配球」、あるいは実際の痛みや筋肉痛など、さまざまな理由で苦労することがあります。歴史的に、このような厳しい状況に陥ったとき、選手はまずメカニクスに目を向けるように仕向けられてきました。そしてしばしば、状況を深く検討する前に、メカニクスの面で不必要な修正が行われることがあります。それを理解した上で、本日の記事では、その他の「大局的な」考察を簡単にご紹介したいと思います。 1. 健康 簡単に言うと、怪我をすると、動作パターンが変わります。そうすると、投球の準備の仕方も変わり、ひいては投球の仕方も変わってきます。 ピッチングパフォーマンスの最適化に関して言えば、痛みに関する難しい点は(これはクレイジーに聞こえるかもしれませんが)、それをカバーすることができることです。抗炎症剤や鎮痛剤は症状を覆い隠し、投手が長期間にわたって悪いパターンで過ごすことを許してしまうのです。 2. 動きの質 アスリートには、症状がないにもかかわらず、かなり良くない動作パターンを持っている場合があります。このような選手の目標は、明らかに、メカニクスを修正することなく、痛みが出る前に、動きの質を最適化して改善を図ることです。 3. 疲労 疲労は、急性的(試合中)にも慢性的(シーズン中)にも、投手の一貫性に著しい影響を与える可能性があります。また、これは栄養状態、初期作業能力、睡眠の質、環境条件、その他多くの要因によって影響を受けるため、より深く掘り下げる必要があるテーマです。疲労は、メカニクスだけでなく、準備運動で達成しようとしている運動学習にも影響を与えることが分かっています。 4. 外的要因 寒い気候の中でひどいピッチングをする(そして具合悪く感じる)人がいます。また、本当に暑くて湿度の高い日が問題な人もいます。 整備されていないマウンドで投げることは、最も優秀な投手であってさえもその効果を最小化することがあります。 下手な捕手に向かって投げたり、下手な審判の前で投げることは、投手の成功に劇的な悪影響を与えることがあります。 これらの要因のうち、修正できるのは一部だけですが、重要なのは、このリストとは異なるカテゴリーに困難が起因していると自動的に判断しないように、それらを認識できるようになることなのです。 5. 感触 これはおそらく、最も主観的で説明しにくい問題でしょう。ある日、ある週、ある月の特定の投球に対して「感覚」を持てないことがあるのです。若いレベルでは、それは通常、私が概説した最初の4つの要因のうちの1つにおける二次的なものです。しかし、より高度なレベルでは、ほとんどちょっとしたランダムな変動のせいだとみなす必要があるでしょう。どんなに優れた投手でも、投球ごとのスピン量や球威にかなりのばらつきがあるものです。 この「感触」の議論は、ある投手が1回の登板で苦労したからといって、赤ちゃんをお風呂の水と一緒に捨ててしまうようなこと、つまり良くないことと一緒に良いことも失ってしまうようなことはしたくないということを思い出させてくれるものだと思います。誰かがマウンドで苦しんでいるとき、傾向を探り、多くの質問をすることです。 まとめ これらの要因は、単独で存在するわけではありません。例えば、身体的な問題(例:肩の痛み)が、メカニカルな問題(例:低いアームスロット/ボールルリリース時の前腕の角度)になることもあるのです。さらに、胸郭出口症候群は、健康、動きの質、感触、疲労の領域にまたがる状態として見なされるでしょう。 メカニカルな修正を行うタイミングと場所はありますが、その道を進む前に、まずこれらの要素をチェックしてください。私たちは、すべての投手に対して、このような順序立てた開発アプローチを適用し、最も深いパフォーマンスの改善をもたらす「大きな石」を早い段階で特定することを目指しています。

エリック・クレッシー 1675字

「私の子供を速く走れるようにしてくれ」

私達は、多くの若いアスリート達を指導しているため、このような質問を毎週数回はされます。 「息子/娘にスピードトレーニングはやりますか?彼/彼女は速くなる必要があります。」 私は頭の中でいつもこう考えています。「いいえ、私たちのプログラムは全て、アスリートを遅くするようにできています。本当に私たちが得意としていることはそれです。」 冗談はさておき、私の口から出る言葉は全く異なります。私たちのトレーニングアプローチは、その若いアスリートが発逹段階のどこにいるかによって決まり、子供はそれぞれ特有であることを説明しなければならないからです。 一方で、可動性および安定性が著しく低い、つまり非常に悪い身体コントロールに相当する、若いアスリートを抱えることがあります。悲しいことに、早期の特定スポーツへの特化と過剰なコンピューターの使用時間のおかげで、今日、アメリカの13-16歳のアスリートの大多数がこの状態になっています。 スプリントを行う際にアスリートが経験する凄まじい床反力(ストライドごとに体重のおよそ4-6倍の負荷が片脚にかかる。たとえば、68kgの子供では272-408kg)を考えると、トレーニングをしていない、身体的に許容不可な子供達に、積極的なスプリントや方向転換のドリルをやらせることは、実際は非常に危険であると考えられることが議論できるでしょう。彼らは、単純にこの衝撃を減速するための遠心性の筋力を有しておらず、言うまでもなく、それに続く最適な収縮性の活動もできません。こういったアスリートは、筋力および可動性のしっかりとした基礎−これによって、より短く単純な練習で、良い着地のメカニクスを教えることができる−を発達させる時間が必要です。やがて、彼らがいくらか身体コントロールを向上させることができたら、本当のスプリントトレーニングや敏捷性の練習を、より有効に役立てることができるようになります。 彼らはできるでしょうか? このような若いアスリートは、恐らく、トレーニング(クローズドループ、または予測できる、練習)に予期せぬことを投げかけられる準備ができていませんが、ジム以外の場所では何をしているのでしょうか?彼らは一年中スポーツを行なっています(オープンループ、予測できない/無秩序)。 これはまるで、1979年製のピント(フォード社の車)のエンジンが時限爆弾であると認識して、オイル交換のために、整備士のところに週に1時間持っていっている−デイトナ500に持って行って運転するためだけに−ようなものです。あなたは、流れに逆らって泳いでいるのです。 ですから、質問はこうなります:今日の「常にシーズン中の」高校生アスリート達は、敏捷性およびスプリントに専念したトレーニングが本当に必要な状態になることはあるのでしょうか?ここまでの数段落に基づけば、アスリートによってはそうではないと言えるでしょう:彼らにはそういったトレーニングはほぼ必要ありません。彼らがスポーツにおける競争を行なっている限りは、フォームローリング、良質な動的ウォームアップ、それに続く素早い、要を得た動きのドリル、そしてしっかりとしたレジスタンストレーニングを行えば十分なはずです。 それに対して、最近はよくある状況ではありませんが、組織的スポーツに積極的に関わっていない期間が年に一定ある上級レベルのアスリート(しっかりとしたストレングスの基礎がある)も実際にいます。こういったアスリート達は、間違いなく、その「オフ」期間に、特定のスプリントや方向転換のトレーニングを行う必要があります。ウォームアップの合間やレジスタンストレーニングの要素の合間に組み込むこともできますが、私たちは大体、リフティングとは完全に別の日にこういったトレーニングをプログラムに入れます。彼らは、高ストレスの反応ドリルを本当に有益で安全なものにするために脚のトレーニング(しゃれのつもりはありません)を行なっているがゆえに、このトレーニングの組み入れを最大限に活かすことができると認識することが極めて重要です。 でも、何が面白いかわかりますか? こういった、より上級のステージに到達したアスリート達は、すでに速くなっています−ここまでの過程で、地面により大きな力を伝える方法を学び、足首や股関節の可動性を向上させてきているからです。スプリントや敏捷性のドリルに、全く、あるいは、ほぼ時間をかけることなく速くなっているのです。そして、一旦筋力の基礎を築けば、こういった補助的な動きのドリルは実際にさらに高い効果を発揮します。 それはまるで大きな円のようです。筋力の基礎を築けば、それが反応能力の発展を助けます。反応能力をさらに鍛えると、連続体の最後にある「絶対速度」へとつながります。そのため、さらに重いウエイトを挙げることができ、それが彼らを連続体の真ん中へと引き戻し、今度は反応能力をさらに高めることにつながります。なぜなら彼らはより速く走り、より高く跳び、今までで一番うまく立ち回るようになっていくからです。 先に言及した初級レベルの子供たちは、連続体にさえ達していません。彼らは「運動する人/運動しない人」のシーソーの上にいます。彼らがそれまでに知っていることは走り回ることだけですから、習慣的にエクササイズを行うようにして、筋力を構築すると、連続体の最後にある絶対速度をつかみ始めます。彼らは、あなたが彼らを強くして、連続体の最後にある絶対筋力を超えさせない限りは速く走れません−これはあなたが各セッションの90分間を敏捷性ラダーを走らせたり、スキップドリルを行うことに費やしているだけでは、単純に起こりえません。 必要な動きのトレーニングの量が大幅に過剰見積もりされているのならば、何故、この業界で週に何時間も動きのトレーニングに費やしているこんなにも多くのコーチや施設があるのでしょうか?とても単純に、お金が世界を回しているのです。す言い換えれば、ただコーンやハードル、敏捷性用ラダーを設置して、熱心に頑張るように指示したら、集中的なコーチングを行わずに、より多くの子供達を大きなグループで「安全に」トレーニングすることができるというわけです。ただ、実際に子供を強くするためには、個別のキューイングやエクササイズプログラミングの多様性が必要です。ストレングスエクササイズは、高リスク/高メリットのため、1対1の指導の方がより効果があります−13歳の子供20人に対してコーチが一人というのは厳しいでしょう。これは、私が私たちのビジネスモデルにクレッシースポーツパフォーマンスでのトレーニングモデルを絶対に決定させないと常に言っている理由の一つです。 まとめると:動きのトレーニングが必要な子供もいれば、まだその準備ができていない子供もいます。99%の確率で−論理を無視しているかもしれませんが−、親が子供が遅いことを言及してきたら、その若いアスリートを外に出してもっと走らせることは、その問題を扱う方法として、最も効果がなく、最も危険なものです。

エリック・クレッシー 2974字

アスリートの股関節痛:大腿骨前方すべり症候群の理解

股関節痛―特に前方(股関節の前側)−はウエイトトレーニングをしている人々にとても良くみられます。 シャーリー・サーマンは、彼女の著書である運動機能障害症候群のマネジメント・理学療法評価の中で、大腿骨前方すべり症候群についてとても詳細に語っています。そして、あまり知られていない診断のように見えますが、ウエイトトレーニングをしている人々に我々が実際に非常によく見る機能不全なのです。 この症候群を理解するために、ハムストリングと大殿筋の付着部と機能について認識しなければなりません。ハムストリングは、骨盤の坐骨結節に付着し(大腿骨に付着している大腿二頭筋短頭を除いて)、膝の下方(下)まで走行しているのが分かるでしょう。言い換えると、ハムストリングは二関節筋群なのです。すべてのハムストリングが膝の屈曲に作用し、大腿二頭筋短頭を除く他の全ては股関節伸展にも作用します。 これに対して、殿筋は骨盤と大腿骨に付着しています;単関節筋であり、そのため股関節の健康に直接的に影響することになるのです。 ハムストリングが股関節を伸展するとき(スクワットのしゃがんだポジションから立ち上がってくるときに起こる股関節の動きを想像してください)、“おおまかな”様式でこれを行います。言い換えれば、脚全体が伸展します。その過程において、大腿骨頭(“球関節”である股関節の“球”)の動きの制御はほとんどなく、股関節伸展時に前方へ移動する傾向にあり、そのことが大腿骨の前方すべりを引き起こします。その過程で、前方関節包を刺激し、その刺激が股関節前方の詰まり感を引き起こします。 幸運なことに、殿筋群がこの問題の予防を助けてくれます。付着部が大腿骨の上方(股関節に近い位置)にあるため、股関節伸展時に大腿骨をより直接的にコントロールすることになります。結果として、股関節伸展時に大腿骨頭を後方に引っ張ることができます。つまり、理想的には、股関節を伸展するときに、ハムストリングと殿筋が効果的な共同収縮をします;それらの筋はお互いの抑制と均衡のシステムを持っています。股関節伸展時にハムストリングを使い過ぎてしまうと、大腿骨前方すべり症候群だけでなく、ハムストリングと大内転筋(鼠径部)の筋挫傷、そして、伸展由来の腰痛が起こるのを待つことになるのです。 余談になりますが、このハムストリングと殿筋の関係性は、肩において肩甲下筋が上腕骨頭を下方に引き込み、棘下筋と小円筋が上腕骨頭の前方すべりを促すこととどこか相似しています。これは、また別のニュースレターでまとめましょう! 一担大腿骨前方すべりの問題が起ってしまえば、最初に行うべきことは股関節屈曲筋群を積極的にストレッチすることを止めることです。この問題では股関節屈曲筋の“つまり”感を実際に引き起こしますが、その部位をストレッチすることは股関節前方痛を悪化させることにしかなりません。より良い方針は数日間ストレッチをサボり、その代わりに、殿筋の活性化エクササイズを行うことです。最終的には股関節屈筋群の静的、動的ストレッチを再統合することができるようになります。

エリック・クレッシー 1685字

子供に対するストレングストレーニングの真実

しばらく前に、私はヒューストンでのセミナーに参加し、その主なトピックが、ピッチングパフォーマンスの向上方法であった一方で、私が持ち帰った最も重要なことの一つは青少年期の生理的発達についてでした。長年のフィリーズのリハビリコンサルタントであるPhil Donleyが、骨が実際にいつ骨格的に成熟するかについて素晴らしいデータを発表しました。その翌日、別の講演者が、発育を妨げるので子供達が幼い年齢でストレングストレーニングを行うべきでない、と言う、私の見解としては、十分な知識に基づいていない発言、をしました。 Donleyの非常に興味深い数字(実際、20年以上にわたって文献で知ることができるようになっています)から始めましょう;話題が逸れないように肩帯に注目を維持します。野球人口において、投球によって肩で最も多く損傷する骨端板は上腕骨の近位に位置します(リトルリーグショルダー);この骨端軟骨(成長板)は上腕骨の成長の80%を担っており、そして多くの人において19歳で成熟します。 私たちは多くの子供達が、投球(投球時の上腕骨の内旋はスポーツの中で最も速い動きです)や、さらには外傷性の転倒による、この問題を抱えて私の施設にやってくるのを目にしましたが−しかし、ストレングストレーニングによる問題を目にしたことはないと公明正大に言うことができます。そのため、私の経験則的なエビデンスは、子供に対するストレングストレーニングは、成長途中の骨にとって私たちが「危険」と考えるものとは程遠いことを示しています。 さて、ここからがより興味深くなるところです:骨の成熟は身体全体で均一ではないのです。上腕骨近位成長板が19歳でほとんど成熟するのに対して、遠位(肘の近く)の自然成長原理は10歳から16歳の間で閉じてしまいます。橈骨の近位と遠位の骨端板は14歳から23歳のどこかで成熟するでしょう。一方で、鎖骨は22~25歳で成熟し、肩甲骨は一般的に22歳で成熟します。ベンチプレスをすることで鎖骨や肩甲骨の成長を妨げるかもしれないために、大学フットボール選手が4年間の競技生活全てにおいてウェイトトレーニングを禁止されたと言うことを皆さんのうちの何人くらいが聞いたことがあるでしょうか?そんなことは全く起こりません!現実では、私たちは、筋量と筋力の増加というストレングストレーニングの効果は、実際にはフィールド上の怪我を予防してくれるということを知っています。 言い換えると、激しい(投球)、そして外傷性(転倒)の出来事は、環境がコントロールされ、そしてアスリートが慣れるに従って過負荷が時間をかけて徐々にそして計画的に増加するようなストレングストレーニングで私たちが青少年のアスリートの骨に対してかけられるどんなストレスにも勝るのです。私は、幼いアスリートは彼らの集中力の持続時間が許す限り早期に、レジスタンスとレーニンングを開始するべきだ、と提案したいと思います;もちろんその重点は、自体重のエクササイズ、技術の向上、そして、最も重要なこととして、楽しさを維持することにおくのです。 よくよく考えてみれば、アスリートは非常に大きなストレス(誰に聞くかによりますが、床反力は体重の4~6倍)を、スプリント動作時のストライド毎にかけています。子供はしょっちゅう、木から飛び降ります。彼らは自身の体重に比べとてつもなく重いバックパックを担いであちこち動きます。パフォーマンス、健康全般、そして自尊心という効果を別としても、彼らに怪我を回避させようとする可能性を与えることは真っ当なことです。 さらに、Philが主張したもう一つの素晴らしい点は(関係のないトピックにおいてでしたが、私たちに関連したことです)、青少年期のアスリートが成長するにつれ、彼の重心は地面から上に遠ざかっていくということです。これが、子供の成長期に見られるコーディネーションの「衰退」の理由の大きな部分です。ちょっとした筋力は、重心を支持基底面の内側に維持するために大いに役立ち、アスリートは、重心を支持基底面に近づけるために「腰を落とす」(股関節と膝関節の屈曲)ことに余裕を持てるでしょう。 さらに、適切なレジスタンストレーニングは子供に対して安全なだけではありません;それは凄まじく有益でもあるのです。FaigenbaumとMyerによって発表されたレビューの中で、著者らは次のように結論づけています: 現在の研究では、資格のある専門家が全てのセッションを監督し、そして適切なエクササイズ方法に対する年齢に合わせた指示と安全なトレーニングのガイドラインがあれば、レジスタンストレーニングは子供と青少年に対して安全で、効果的で、そしてそれだけの価値のある運動になり得ることが示されています。プレシーズン中から始まり、動作のバイオメカニクスについての指導を含む多面的なレジスタンストレーニングプログラムへの定期的な参加は、青少年アスリートにおいてスポーツに関した怪我のリスクを減少させるかもしれません。 Dr. Avery Faigenbaumは、実際に近年の子供のストレングストレーニングのトピックについての非常に多くの素晴らしい研究(数々の団体の公的声明を含む)を発表しています;それら全てをwww.pubmed.com上で、彼のラストネームを検索することで見つけることができます。 ストレングスコーチのマイク・ボイルは、青少年期のストレングストレーニングの支持者のひとりであり、私はストレングス&コンディショニングコーチとしてだけでなく、3人の娘の親としてもこのトピックについての彼の姿勢を聞くことを楽しんでいます。マイクが発した非常に説得力のある声明は、彼が自身の娘(多くを成し遂げたD1アイスホッケー選手)に対して行った最も影響のあることの一つが、彼女が11歳の頃から最低でも週に2日ストレングストレーニングを行ったことであると述べたことだと私は思います。若い年齢で筋力を得たならば−そして年月をかけてそれを維持・向上させたならば−それ以後のあなたのトレーニングはより効果的なものになるのです。 この記事が一般の人における、レジスタンストレーニングは子供にとって有効とはなり得ない、という大きな誤解を取り除く助けとなればと思います。正しく行い、そして楽しくできれば、レジスタンストレーニングは青少年代とその前の年代の両方において安全であり、子供達に非常に大きな効果をもたらします。

エリック・クレッシー 2720字

スポーツにおいて子供たちを比較すべきではない理由

青少年のスポーツにおいて私が目にしている、憂慮すべきトレンドの一つに、最も年齢の若い子供たちが他の子供たちと比較されることがいかに多いか、ということがあります。これはスポーツへの参加を収益化するプログラムや、技能の向上や確認に責を担うコーチたち、そして自分の子供が落ちこぼれることを心配する両親たちの間で見られる問題です。 最終的にプロのアスリートになっていくであろう12歳の子供の発達過程に関わっていることから、私はこの問題について話をするにあたってある意味ユニークなポジションにあります。そして、更に重要なことに、私は3人の娘の父親でもあります。年長の2人、リディアとアディソンは7歳の双子です。 双子の両親として学ぶ最も重要なレッスンは、人々は常にとんでもなく陳腐な「ダブルトラブル」という言い方を面白いと思って使うということ。それを一旦やり過ごせば、2つめのレッスンは、より実行可能なものです:双子同士を決して比較してはならないということ。 これは彼女たちが子宮内にいた時でさえ明白でした。私達が超音波の診察に行くと、リディアはど真ん中の前側にいて、私達は彼女の顔はガラスに押し付けられているよねとジョークを言っていたくらいでした。一方で、常に「隠れている」アディソンを見つけるのには、技師の力と時間を要する必要がありました。ある時の超音波検査では、彼女の足の裏しか見えなかった時もありました。 彼女たちが生まれた時、オリーブ色の肌でブルネットのリディア(彼女の母親似)が出てきて、ストロベリーブロンドで色の白いアディソン(父親である私同様サンバーンしやすい肌)が出てきました。 リディアは泣き叫びながら世界を相手に戦う準備をして生まれてきました。アディソンは、少し苦労して、NICUで酸素供給と栄養チューブをつけたまま4日間過ごす必要がありました。リディアは元気いっぱいな赤ちゃんで常に母親を求め、アディソンは超メローで、母親がリディアを抱っこしている間、通常は父親の腕の中にいるような赤ちゃんでした。 18ヶ月になった時点で彼女たちは入れ替わりました。リディアはルールに従う子になり、アディソンは態度が悪くなってきたのです。リディアは、私達が用意した食べ物はなんでも食べましたが、アディソンの味蕾は、約5種類程度の食べ物以外の存在を認識することを拒否していました。 リディアはアディソン(少し背が高く体重も重かった)よりも5ヶ月早く歩き始めました。アディソンはリディアよりもスイミングをより早く覚えました。リディアはバットを右利きで、アディソンは左利きでスイングします。アディソンがまだサイトワード(一文字ずつ発音しなくても見た瞬間に認識できるようにしておくべき基本単語)を覚えている間に、リディアは本を読み始めました。これに対してアディソンは、リディアよりも数学が得意でした。 リディアはより速く、アディソンはより強い。リディアは意図を持って傾聴し、テニスやソフトボールや体操のような、より「徹底したコーチング」スポーツを選択しました。これに対してアディソンは、ソフトボールの試合のフィールドなどではボーッとしていて、草を蹴りながら隣のフィールドを眺めていましたが、音楽やアートやダンスといったクリエイティブなことにおいては本領を発揮していました。 私は、アスリートを発達させることを仕事としています、そして躊躇うことなく言えるのは、私の子供たちが来週楽しんで行うのはどのスポーツなのか、更に今から何年も先に楽しむのは何なのかなんて、全くわからないということです。私達の双子は、受胎から今までの人生を99%ともに過ごしてきていますが、今の彼女たちは全く異なっていて、彼らが現在のポイントに至るまでに数々の予測不可能なことの繰り返しを目撃してきています。 私達はスポーツでの成功をうまく予測することもできません。私達は、子供たちがどのスポーツを楽しむのかさえも予測できないのです。どれだけ多くのプロアスリートたちが天才児とか中学レベルのスポーツで目立つような存在でなかったか、皆さんは驚かれるでしょう。現実として認めましょう:思春期は数多くのコーチたちを実際よりもより賢く見せてくれるものです。 言い方を変えるなら、私達にコントロールできる「唯一」のことは、彼らがスポーツに参加している際の、彼らの経験をより豊かなものにすることだけなのです。何が効果的なのか? まず最初に、結果よりも努力を讃えること。チームメイトや友達と何かを行うことに起因する楽しさと、その反復が、重要なことです。私の指導するリトルリーグのゲームから、ある特定のスコアを伝える話はできませんが、物事を深刻に受け止めすぎる嫌なコーチについてなら本を書くこともできます。振り返ってみれば、このコーチは野球に関してもあまりよく理解していなかったようです。 2つめに、目新しさを賞賛すること。新しいことは、子供たちをワクワクさせ、また若い年齢で様々なスポーツに参加することは、後に特化したスキルを構築することができるかけがえのないアスレチックな基礎を培う固有受容感覚の豊富な環境を提供します。この幅広いアスレチックな基礎は、運動面における多様性、動きのスピードと関わる力などを含みます。これらの経験が合わさることで、アスリートに複数の関節にストレスを分散することや特定の部位のオーバーユーズ障害を避けることを教えてくれるのです。 3つめに、スキル獲得に関しては、ランダムな練習は長期的にブロックされた練習よりもより良い結果を生み出すことを理解すること。様々なドリルを組み込んで、それらの順番や継続時間を変化させて、そしてそれらを楽しい競技にまとめていくようにします。 4つめに、インシーズンとオフシーズンの期間を認識すること。このシーズンの変動は、子供たちが特定のスポーツに退屈してしまうことを防ぐのみでなく、ストレス因子に対する段階的な露出も促進することになります。10歳児が、年間12ヶ月間野球のボールを投げ続けるというのは、とんでもないアイデアです;異なる方法での発達を促しつつアクティブな状態を維持するためにサッカーやバスケットをプレーするのは素晴らしい方法でしょう。 5つめに、子供が十分に成熟をしてきたら、できるだけ早めに基礎的なストレングストレーニングプログラムに参加させるようにすること。これは彼らの怪我のリスクを低減させるとともに、様々なアスレチッククオリティに「徐々に浸透する」効果を持つことでしょう。ここでも、他の全てのことと同様に、楽しいものである必要があります! まとめとして、子供たちを比較しないこと;比較するのではなく、彼らは皆それぞれにユニークで、異なる方法で、異なるスピードで発達するということを理解します。青少年のスポーツは、ゲームへの情熱を吹き込み、コミュニティの感覚を楽しみ、エクササイズとの生涯を通したポジティブな関係性を育てることに尽きるのですから。

エリック・クレッシー 2947字