評価において重要な追加10項

しばらく前に私が書いた「評価において重要な10項」という記事は、その年の最も人気のある記事の一つでしたー今回はその続編です!頭に浮かんだいくつかのことを書いてみます。 1.トレーニングと同じように、アセスメントもより専門的になってきている スポーツパフォーマンス、そしてパーソナルトレーニングの世界までもがより専門的になるにつれ、わたしたちがクライアントに用いるべきアセスメントは、目の前にいる人々に正しくマッチさせたものである必要があります。例えば、ローテーターカフの筋力テストは、野球の投手にとっては大きな意味を持ちますが、サッカー選手にとっては比較的重要ではありません。バスケットボール選手にとってのシングルレッグ・スクワットテストの結果は、カヤック選手にとっての結果よりもより重要なものとして”重きをおく“でしょう。クライアントの目標と彼らの競技の機能的要求ーの両方が、どのテストを行うのか、そしてその結果をどのように評価するかという観点からアセスメントを導くのです。 しかしながら、すべてをテストすることはできないという難点があるため、優先順位をつけることが重要です。もしこの世のすべてのアセスメントを使用したら、評価は一日中続きーそして一つのセッションを丸ごと費やして誰かの問題点をすべて指摘することになるでしょう。私はそれよりも、信頼関係を築くためにこの時間を使いたいですね。 VO2maxテストは、たとえ野球選手の有酸素能力をいくらか明らかにする可能性があるとしても、私の野球選手の優先事項においては優先度が高いものではありません。恐らく、安静時心拍数をさっと測定することにより、必要な情報を同じくらい簡単にーそしてはるかに手ごろな金額でー得ることができるでしょう。 2.良いテストは、好ましくない結果が出たらすぐにもっと有効な再テストを提示してくれる アセスメントによって、ある人の動き方で間違っているまたは正しいかもしれない部分を垣間見ることができます。もっと重要な質問は:どのような介入が違いを生むのか?前方にカウンターバランスを与えると彼らのスクワットパターンは改善するか?コアの動員をいくらか追加すると彼らの股関節内旋は改善するか?マッサージ・セラピストが斜角筋に取り組むと、彼らの肩の痛みはなくなるのか? セレクティブ・ファンクショナル・ムーブメント・アセスメント(SFMA)(によるスクリーニング・)システムの一つの信条は、常に機能不全で痛みを伴わないパターンから始めるということです。どのような介入が、痛みのない領域における異常な動きを整え、“楽な”適応を生み出すのでしょうか?これは私たちの動作のレパートリーを広げるだけでなく、アスリートやクライアントの積極的な取り組みも促進してくれるのです。 3.ムーブメントスクリーンを行う際には、必ず最初に徹底的な既往歴及びクライアントの“問診”を行うこと 参加前に行う評価がトレーニングでのけがの可能性を劇的に低下しうるということは、誰もが賛同するところだと思います。そして、この評価で最も重要な部分は、動作スクリーンの部分を始める前に行う既往歴及び彼らとの会話であると私は考えています。 例えば、外科的治療を受けていない深刻な肩関節前方不安定性の既往歴のある、関節過可動の女性クライアントがいると想像してください。もしあなたが徹底的に書類を確認し、彼女と詳細な会話をすれば、肩関節外旋を含む動きには注意が必要であることがすぐにわかるでしょう。しかし、もしそのような導入作業をしなければ、基本的な肩関節外旋可動域の検査をして、彼女の肩をひどく脱臼させてしまうかもしれません。 まとめ:書類が第一次に会話、動きは三番目! 4.痛みや低い運動能力のために特定のテストを実行できない人たちには、アセスメントを退行させる 私は胸椎の回旋を評価するのに、Titliest Performance Instituteのスクリーンー腰椎をロックした状態での回旋―を使うのが好きです。しかしそのテストでは、被験者は膝を大きく屈曲させなければなりません。そのため、大腿四頭筋が極端に短縮している人―あるいは人口膝関節置換術を受けてその動きを永久に失ってしまった人がいる場合、これは確実なテストではありません。 そのような人には、座位での胸椎回旋スクリーンを行った方がよいでしょう。 確かな経験則として、一般的なスクリーン(関与する関節や運動制御の課題がより多い)には、特定のアセスメント(関与する関節や運動制御の課題がより少ない)よりも多くの代替案が必要になるでしょう。ですから、アセスメントのアプローチに目を通しながら、物事が計画通りに行かない場合にどのようにテストを退行させるか検討し始めましょう。 5.アセスメントの手段として、トレーニング・テクニックを評価することを見逃さない 痛みやパフォーマンスに悩む人(まさにすべての人ですが)のほぼすべての評価において、私は彼らがよく行っているエクササイズのテクニックを見ます。投手であれば、腕のケアのためのエクササイズ、またはブルペンでのビデオでしょう。パワーリフターであれば、スクワット、ベンチプレス、またはデッドリフトのテクニックかもしれません。アセスメントのプロトコルをどれだけ完璧にしても、彼らが実際にトレーニングするのを見ることから得られる特異性を完全に提供することは決してできないでしょう。 6.人に恥をかかせるためにテストを使わない 先述のポイントの延長ですが、もしその人があるスクリーンでひどく失敗することがわかっているならば、そのテストをするのはやめましょう。もし200パウンド(90.7㎏)痩せたいという350パウンド(158.8㎏)の女性がいるとしたら、彼女は腕立て伏せのテストはあまりうまくできないでしょう。彼女の上半身の筋力及びコアの安定性が、彼女の体重を扱うには十分でないことは推測できますよね。 私が繰り返し思い出すのは: 「アセスメントとは、信頼関係を築き、あなたが気にかけていることを示すチャンスである。誰かに不可能なテストを連発することは、相手に自分は無力だと感じさせてしまうだけである。」 7.緊張をよく見る これは、私がこれまで見た中で最高のマニュアルセラピスト(徒手療法治療家)の一人であり、私のビジネスパートナーであるシェーン・ライ氏のそばで時間を過ごしてから、ここ数年より注意深く見るようになったことです。彼は人々の動きを見て、その人がどこに緊張をため込む傾向があるかを見抜く達人です。例えば、ローテーターカフの筋力テストをするときに歯を食いしばることや、またはアクティブ・ストレートレッグレイズを測定しているときに拳を強く握りしめることなどです。付帯的な緊張の変化を観察することは、あなたの徒手療法施術で最大の利益を得られる場所―そしてトレーニング中どのように指導方法を変えればよいかについて垣間見ることができます。 8.アセスメントの最良の成果とは、実はより精密なアセスメントへの紹介かもしれない 少なくとも年に一度、私はアセスメントを引き受けますがートレーニングをせずに、彼らを精密検査に送ります。それは大抵、実際にとても“病的な”何かが見られ、彼らとワークアウトを始める前に医療専門家に診てもらった方がよいと感じるからです。頻繁に起こることではありませんが、私は目の前にいる人を助けるために、私よりも他の人の方が装備が整っていると感じたときは、“委ねること”を決してためらいません。 9.体重についての彼らの言葉を鵜吞みにしてはいけない 以前、ある身長6フィート8インチ(203.2㎝)の投手が、自分の体重は235パウンド(106.6 kg)だと言ってきたことがあります。翌日、彼は部屋に入ってきて言うのです、「コーチ、今朝実際に体重を測ったら、253パウンド(114.8 kg)でした」。身長6フィート8インチ(203.2㎝)、体重253パウンド(114.8 kg)の青年における18パウンド(8.2 kg)は、110パウンド(50.0 kg)の14歳女子における18パウンド(8.2 kg)ほどは大きな体重比ではありませんが、それでも彼が感じることさえなく18パウンド(8.2 kg)という重さを勘違いしていたことからは、いろいろなことがわかります。それは、身体認知が低く、栄養制御が不十分(間違いなく良い18パウンド(8.2 kg)ではない)なアスリートのサインです。ただ尋ねるよりも、計測した方がよいですよ。 補足:これが適用されるのは男性アスリートのみです;明らかな理由により、私は女性アスリートの体重は絶対に測定しません。 10.綿密なメモをとる 私はよく、長期のクライアントに関するメモを振り返り、彼らの動き(そして処方されたトレーニング)が何年にもわたってどのように進化してきたかを見ることがあります。これは、私があまり詳細にメモをとっていなかったらできないことでしょうーわたしたちは自分たちのビジネスに持続可能なシステムを作り出したいと考えているので、向上するために私は常にこのことに努めています。 従業員の異動により、クライアントのプログラミングの責任が他のスタッフに移されることもあるでしょう。スポーツ医学の専門家は、わたしたちのメモのいくらかを元に取り組みたいと思っているかもしれません。チームや代理人が、わたしたちが選手について発見したことや、それらにどのように対処する予定かという情報が欲しいこともあるかもしれません。文書で記録すればするほど、こうしたコラボレーションが必要な状況により備えることができるでしょう。 ですが最も重要なことは、クライアントのために新しいプログラムを作成するときはいつも、彼らの評価フォームと以前のプログラムをコンピュータ上に開いておくということです。私がはじめに気付いたことを確かめ、それを最新のプログラムと並べて、わたしたちの進捗を確認するためです。このような記録のおかげで、わたしたちの施設だけでなく、国内外にいる何十人ものアスリートに対してプログラムを作成することができるのです。

エリック・クレッシー 4289字

10代における筋力:見過ごされている長期的な運動発達の競争優位性

数年前にこんなツイートを投稿したところ、かなり大きな反響がありました: 大学生アスリートから聞く最大の後悔とは?それは、もっと早く筋力トレーニングを始めるべきだったということである。より強くなることは、パフォーマンスそして新しいスキルを習得する能力に大きな変化をもたらす。もしあなたが21歳で、16歳の時に得ているはずだった筋力をようやく身につけているところだとしたら、かなり遅れをとっていることになる。 ですが私が特に注目したのは、一つの返信です: 「発達上にある若いアスリートが一番やってはいけないことは、一つの生体運動能力を最大値にすることで、すべての能力を発達させることを妨げてしまうことです。長期的なプログラムは、ただ筋力だけでなく、すべてを発達させなければなりません。筋力、持久力、スピード、柔軟性...。搾取はゆるされないのです。」 これは長期的な運動発達に関する最も明白な誤解の一つであり、詳細な返答が必要だと思います。 はっきり言って、私は若い年齢で多くの生体運動能力に優先順位をつけ、運動寿命を通してそれらの能力を発達させ続けることに大賛成です。単にアスリートをパワーリフターにするわけにはいきません。 しかしながら、私がこの発言に同意できないのは、これらの異なる性質はすべて独自の領域であり、別々にトレーニングされなければならないとほのめかしてているところです。実際には、それらの性質を個別のサイロの集まりとしてではなく、一つのピラミッドとして見なければなりません。そのピラミッドの基盤は、間違いなく最大筋力です。 このことについては、私の電子書籍『The Ultimate Off-Season Training Manual(究極のオフシーズン・トレーニングマニュアル)』の中でとても詳しく触れています。以下は、パワーの発達についてさらっと抜粋したものです: 「…最大相対筋力は、あらゆる運動において“じわじわと浸透する”効果をもたらします。もしあなたがスクワットの最大重量を200 lb.(約91 kg)から400 lb.(約181 ㎏)に伸ばしたら、一回の自重スクワットははるかに楽に感じるのではないでしょうか?単発の垂直跳びはどうでしょう?典型的な垂直跳びテストにおいては、力発揮をする時間は約0.2秒間です;RFD(Rate of Force Development;力の立ち上がり率)がどれだけ優れていても、持っている筋力をすべて使うことは決してないでしょう。」 「しかしながら、(仮に)その短時間の中で最大筋力の50%を働かせることができるとしましょう。もしそのパーセンテージが常に一定なのだとしたら、より大きな最大筋力を持つアスリートは自動的に極めて有利な立場にありますよね?200 lb.(約91 ㎏)のスクワットをできる人は、100 lb.(約45 ㎏)の力を地面に対して及ぼすことができる;400 lb.(約181 ㎏)のスクワットをできる人は、200 lb.(約91 ㎏)の力を及ぼすことができる。誰がより高くジャンプできるか、明確ですよね?」 この主張は、研究の世界で一貫して立証されてきました:最大筋力の不足は、その人のパワーの潜在能力を制限するのです。筋力の基盤を持つことで、プライオメトリック、スプリント、そしてアジリティの発達を最大限に活かすことができます。 連続体の持久力端との関わりもあります。 「それでは、このことをスペクトラムの持久力端へとさらに一歩進めてみましょう。もしあなたのスクワットの最大挙上重量が200 lb.(約91 kg)から400 lb.(約181 ㎏)になれば、1セット20回の自重スクワットはより容易に感じるのではないでしょうか?」 「もし100 lb.(約45 ㎏)のダンベルを両手に持ってランジができるなら、ただ自分の体重だけで5マイル(約8 ㎞)走ることはより容易に感じるのではないでしょうか?考えたことがなかったかもしれませんが、あらゆる運動持久力活動は、実際には一連の最大下努力での運動にすぎないのです。」 明らかに、これらの筋力の数値は、圧倒的多数の高レベルな持久系アスリートにとっては非現実的ですが、筋力、パワー、そして持久力の混合を必要とする他のスポーツの競技アスリートにとっては現実的な数値です。 筋力は、アスリートがどれほどうまく動けるかにも関わります。はじめの返信が言及していた柔軟性とは、ウィキペディアによると、「関節または一連の関節における可動域」のことです。これは静的な尺度であるのに対し、運動での成功は可動性、その人がある体勢または姿勢をとる能力にもっと左右されるものです。その違いは与えられた状況下での安定性の有無であり、そしてそれは筋肉の制御に影響を受けます。事実、現に私は、最大筋力の最大の“じわじわ損等する”効果は関節の安定性であり、それが可動性に影響を及ぼすと考えています。 すべての運動能力が重要ではありますが、それらが常にすべて平等に訓練されるべきだと言うのはー特に適応の大きなチャンスを目の前にした若いアスリートたちにおいてはー極めて近視眼的です。言語スキルを習得する前に、数学、科学、そして歴史の講座を受講しようとした子供を想像してみてください。もし読み書きができなければ、これらのより高度な課題を習得するのに苦労するでしょう。筋力はこれと同じように基礎を成すものであり、私はそれをこのピラミッドのように考えています: より底辺に近い項目ほど、筋力による影響がより大きくなります。これらの項目がそれぞれピラミッドのどこに位置づけられるべきか議論することはできますが(そしてそれは問題となっているアスリートによるでしょう)、筋力がこれらの他の性質すべての重要な基盤だということについては誰も議論できません。それは多くのエリートコーチの逸話的な経験だけでなく、非常に数多くの研究にも根差しています。 最後に、しばらく前に、私はマイク・ボイル氏の素晴らしいリソースである『Complete Youth Training(完璧なユース世代のトレーニング)』のレビューをしました。そのレビューの後、私はマイクに、ストレングス&コンディショニングコーチとしてだけではなく双子の娘を持つ親としても楽しませてもらったよと伝えました。そのリソース全体の中でマイクが示した最も説得力のある発言は、彼が自分の娘(大学一部リーグの優秀なアイスホッケー選手)にしたことの中で最も影響力のあったことの一つは、彼女が11歳の時から最低週2日筋力トレーニングをしたことだった、という部分だと思います。若い年齢で筋力を得た場合―そしてそれを何年もかけて維持し増強することでー残りのトレーニングははるかにより生産的なものになるのです。

エリック・クレッシー 2874字

私のストレングス&コンディショニングにおける失敗から学んで強くなろう

わたしたちは2010年10月に愛犬のタンクを購入しましたー以来彼は家の中でわたしたちの親友であるだけでなく、ほぼ毎日私と一緒にジムに来るため、Cressey Sports Performance(CSP)体験には欠かせない(そして楽しませてくれる)一部となっています。 彼はまた、CSPアスリートの一人の家族の憧れを勝ち取ることに成功し、その家族はちょうど彼のようなクリーム色のパグル(パグとビーグルのミックス)を飼おうと決めてしまったほどでした。彼が小さかった頃、妻と私はハウス(クレート)トレーニングをし、彼を夜通し眠らせようとするのに何か月もかかったので、彼らがわたしたちのような失敗をしないようにとたくさんのアドバイスをしました。 今ではその家族はすっかり子犬と落ち着きましたが、そのことで私はストレングス&コンディショニングプログラムの世界において他人の失敗から学ぶことの重要性について考えるようになりました。子犬の飼い主を一人助けることができるなら、毎月このウェブサイトを訪れる何千人もの訪問者を助けることもできるかもしれません!そのことを念頭に置いて、私が修正したストレングス&コンディショニングの失敗のうち、大きな変化をもたらしたこと5つをここに挙げます: 1.トレーニング後の時間帯に食べる量が少なすぎる:あなたが新進気鋭のリフターか、あるいは筋量を増加させることで利益を得られるアスリートなら(私は間違いなくそうでした)、ワークアウト後の時間は摂取カロリーを節約してはいけないタイミングです。私が本当に大きな進歩を遂げ始めたのは、トレーニング後のシェイクとその一時間後にとる食事の間に1,000カロリー以上を摂取するようにしてからですーこれは他の人たちに見たことと比較すると軽めでした。私たちが指導するアスリートの一人がトレーニングセッションを終えてーそれから何も食べないままオフィスに2-3時間居座っているのを見ること以上に私をいらつかせることは、あまり思い浮かびません。彼らがジムでくつろいでいるのは大好きなのですが、ただカロリーを摂取しながらくつろいでほしいのです! 2.筋力のためのトレーニングを十分早い時期にしない:これから”より大きくする”ことをできるだけ簡単に説明しますが、依然数学的ではあります。あなたは“筋肉を損傷”させ、それから再構築しなくてはなりません。仕事をしなければ、ダメージは受けません。仕事=力x距離 これから一生かけて大きくなるつもりでいる(あるいはエクササイズに可動域を加え続ける魔法の方法を見つける)なら話は別ですが、行う仕事量にプラスの影響を及ぼす最も簡単な方法は、より大きな力を与えること―またはより強くなることです。そのために、私はここで大胆な発言をしましょう:リフティングを始めた最初の2年間は、単純にバーベルに重さを追加することを主な目標にしましょう(ただし良いテクニックで痛みなく行えることが条件です)。それが複合的な筋力トレーニングである以上は、その結果にとても満足することでしょう。Cressey Performanceには、わたしたちとトレーニングを始めた最初の2年間で雑草のように伸びるリフティング初心者達がいますーこれまで”パンプ“について誰かに聞かれたことがあるかは言えませんが。私が18歳の頃にその質問をしたとき、「黙れ」と言ってくれる人がいたらよかったのにと思います! 3.主要でないものを行うのに時間をかけすぎる:これは先ほどの見解と密接に関連しています。重要な筋力エクササイズで良い数値を挙げるには程遠かった私は、実際バイセプスカールやトライセプス・エクステンション、その他のアイソレーションエクササイズをしている場合ではありませんでした。そのせいで私はジムに長くいすぎてしまい、本当に重要な部分のリカバリーを妨げてしまっていたのです。おもしろいことに、かなり強くなった今、アイソレーションエクササイズをやろうという気は大してなくなりましたーなぜなら主要な筋力エクササイズこそが私を本当に発展させてくれたものだと気が付いたからです。 4.エネルギー系のトレーニングがよりアスレチックでない:幼少期、熱心なサッカーとテニスの選手だった私は、フィールドやコートで過ごしたすべての時間のおかげで、それなりに速く、方向転換も上手でした。20代前半になったとき、筋力トレーニングを”フルタイムで”追及するために、それらのスポーツから距離を置くことにしました。 その数年後、エリス・ホッブス選手、リシェ・コールドウェル選手、ピエール・ウッズ選手、ローガン・マンキンス選手(そのほか多数)といった当時ペイトリオッツにいた大勢の選手たちと、バスケットボールでチャリティゲーム(慈善試合)をしようと誘われました。NFL選手はバスケットボールができないなんて誰にも言わせませんよ、彼らはわたしたちをこてんぱにしたんですから。 その結果はまったく驚くものではなかったのですが、私が実にショックを受けたのは、高校時代に比べてはるかに強くなったにもかかわらず、以前ほどの運動能力をちっとも感じられなかったということです。私は地面に力を加えていたのですが、素早く行うことができずーそして自分が快適に感じる運動面上で動けていませんでした。 驚くことではありませんが、当時私のエネルギー系トレーニング(それほど多くはありませんでしたが)のほとんどは、マシンの上で行われていました:エリプティカル、バーサ・クライマー、ロウイングマシン、そしてバイクです。私はすぐに、意識を集中せずに反復運動を行う有酸素運動を減らすことに全力を注ぎましたーそれ以来、私のエネルギー系トレーニングのほぼすべては、スプリントやストロングマン系エクササイズのメドレー、方向転換トレーニング、スライドボードトレーニング、そしてメディシンボールを使ったサーキット(それとエアダイントレーニングも少々)となっています。その成果は?垂直跳びは37.2インチ(約94.5センチ)―当時よりも12インチ(約30.5センチ)以上も伸び、体重も増え、あらゆる“ハムスター式有酸素運動”をしていた時と同じくらい引きしまっています。さらに重要なことに、私はかなり運動能力が上がったと感じていますーそしてジムで他の人を楽しませるためにばかげたことをしてしまいがちです。 5.良いトレーニング仲間を早くに見つけなかった:幸運なことに、私はコネチカット大学のキャンパスで過ごした時代から、South Side Gym、そして現在Cressey Sports Performanceで一緒にリフティングをする仲間まで、何人かの素晴らしいトレーニングパートナーとともにリフティングしてきました。しかしそれ以前は、かなり長い間単独でトレーニングをしていました。一言言わせてください:良いトレーニングパートナーは大きな違いを生みます。彼らはあなたがのろのろしているときに励ましてくれ、重量を選ぶのを手伝ってくれたり、スポッターをしてくれたり、実際にトレーニングを漸進させてくれる最高の社交的雰囲気を作ってくれるのです。 しかし、“単独で行うこと”は、ただ一緒にリフティングができるトレーニングパートナーを持つことを引き合いに出しているわけではありません。それはあなたが頼れる専門的なリソースーあらゆるグリップ動作で肘が痛むときに頼るマッサージセラピスト、またはストレングス&コンディショニングプログラムを助けてくれる誰かなどーを持つことも引き合いに出しています。本当のことを言うと:私も昔あまりよくわかっていないとき、いくつかひどいプログラムを行いました。もし偏見のない立場の人が助けてくれていたら、私自身多くの問題を回避できたことでしょう。

エリック・クレッシー 3263字

ユーススポーツのパフォーマンストレーニングに関してふと思いついたこと

1. 少年スポーツにおいてもウォームアップは重要です。 私の記事を長年読んでくださっている方なら、私が、その後のパフォーマンスを最適化し、ケガのリスクを軽減する手段として、質の高いウォームアップを大いに推奨していることをきっとご理解いただいていると思います。 しかし、この点に関する私の著作のほとんどは、野球や筋力トレーニングなど、より高度な、そしてより年齢の高い人々に焦点を当てたものであることを認めざるを得ません。 一方、ユーススポーツのウォームアップの中には、包括的とは言いがたいものがあります...ウォームアップ自体が、実際に存在していたとして、というところですが。 幸いなことに、この見落としを正すために、「Effectiveness of Warm-Up Intervention Programs to Prevent Sports Injuries Among Children and Adolescents」という最近のメタ分析を紹介する機会を得ました。全文はこちらでご確認いただけます。 Dingらの懸命な研究の簡単な概要は、21,576人の総アスリート(7~18歳)を対象とした15の綿密に選択された研究において、15~20分のウォームアップは怪我を36%減少させたというものです。 健康維持に役立つことはもちろんですが、この結果で興味深いのは、さまざまなウォーミングアップの工夫が怪我の軽減に役立ったということです。 より年齢が高くトレーニングを受けている人たちでは、体温の上昇、ひいては組織の伸長性からくる効果が大きいと思われます。 逆に、このメタ分析にあるような若くてあまりトレーニングを受けていない集団では、ウォームアップによって実際のトレーニング効果(バランスの改善、筋力の強化、着地のメカニクスの最適化など)が得られるので、おそらくより慢性的にケガから守られているのでしょう。 そのため、アスリートにとって重要なトレーニングを「マイクロドーシング」することは常に有益であり、ウォームアップはコーチがそれを行うことができる手段の1つであると考えています。 もし、ドリルを別の時間に行ったら、これほど効果が顕著になったかどうかを考えるのは興味深いことですが、適応は適応ですし、ウォームアップはグループ環境での説明責任を保証する最良の方法でしょう。 2. グラウンドからスタンディングへのトランジションは、若いアスリートにとって最もハードルの低いものでしょう。 私の最も親しい幼なじみの一人は、農場で育ちました。私が干草を積むのを手伝いに彼の農場に行った最初の時のことを忘れられません...私達は巨大な畑を6時間かけて歩き回り、トラックの荷台に干し草を積んでいったのです。 今まで干し草の俵の重さをわざわざ調べてはいませんでしたが、どうやら40ポンドから75ポンドまであるようです。 1週間くらい全身が痛かったのも説明がつきます。 驚くべきことでもないかもしれませんが、その友人は3種目のスポーツが得意で、レスリングでは州チャンピオンになりました。 明らかに、農場は彼に一貫して努力する方法を教えてくれたのです。 干し草の運搬、家畜への給餌、掘削など、ほとんどの肉体労働は、低から高への力の伝達を伴うことに気づかずにはいられません(これは、多くの運動競技と大差ありません)。 もしあなたが農場に住んでいないのであれば、ターキッシュ・ゲットアップ以外にも、トレーニングでこのダイナミクスに挑戦する良い方法があれば教えてください。

エリック・クレッシー 2252字

スピードデッドリフトを筋力トレーニングプログラムに使用する5つの理由

2008年に私の最初の本が出版されたとき、私がスピードデッドリフトを取り上げたことに多くの人達が驚きました。なぜなら彼らは、それは「簡単すぎる」と感じたり、「重くない」デッドリフトは生産性がないと考えたりしたからです。興味深いことに、4ヶ月のプログラムを完了後、彼らのデッドリフトが必ずと言っていいほど向上したとき、誰もスピードデッドリフトが含まれたたことに疑問を持つことはありませんでした。そこで今日は、スピードデッドリフトを筋力トレーニングに取り入れるべき5つの理由を紹介します。 しかし、まず、スピードデッドリフトとは何かということを概説することが重要だと思います。デッドリフトのあらゆるバリエーションを、より軽い割合で実行するだけです。ワンレップマックス(1RM)の35-80%を1-5レップでセットします。パーセンテージが高いほどレップ数が低くなり、その逆も然りです。例えば、1RMの80%で8x1、1RMの50%で6x3、1RMの35%で4x5などです。チェーンやバンドが手に入るなら、エクササイズに追加することも可能です。セット間は30秒から120秒の間で休むことになります。 しかし、最も重要な要素は、完璧なテクニックと優れたバースピードとなります。 バーが床から爆発するような感覚で、ロックアウトまでまっすぐ上がるようにします。

エリック・クレッシー 3575字

プロフェッショナルの成長:プロセス vs. アウトカム

何度か、ニューバランスのエリアコードゲームズで、カリフォルニア州ロングビーチに足を運んだことがあります。全国の高校野球のトップ選手230人が一堂に会するイベントです。2016年、私はオープニングセレモニーの一部として講演を行いました。 簡潔に伝えたい、そんな思いから、プロセスとアウトカムを区別することの重要性を強調することにしました。これは、クレッシースポーツパフォーマンスで指導するアスリート全員に叩き込むように試みていることですが、すべてのプレーヤーにとって重要な差別化であると感じています。 アウトカムとは、(他にもっと良い表現がないのですが)結果です。それは、4打数4安打であったり、オールスターチームに選ばれたり、期末試験で「A」を取ったりすることです。また、ネガティブな場合もあり得ます:4打席0安打であったり、チームから外れたり、期末テストで落第したり。結果のみの中に成長があるわけでは決してなく、成長とはすべての仕事を終えた後に起こるものです。残念ながら、私の経験では、非常に多くの人々、特に若くして大きな成功を収めた若いアスリートたちは、結果志向になりすぎています。彼らは、そこに至るまでのプロセスを認識するのではなく、成功の喜びを味わうことに時間とエネルギーを費やし過ぎています。 これに対して、プロセスとは、アウトカムにつながるすべての習慣や行動を構成するものです。これら4打席の前に、ケージでスイングの微調整をした時間なのです。そのオールスター選考の判断よりも前の、あなたの努力や態度なのです。そして、最終的な試験の準備度(または準備不足度)に結実するのは、あなたの学習習慣です。 驚くなかれ、結果重視の育児は、プロセス重視の育児よりも劣ったアプローチであることを示唆する証拠があります。結果を褒めるよりも努力を褒める方が一層良いのは、そのような努力の積み重ねが、子供に将来のあらゆる場面で頑張ることを思い出させてくれるからです。Tボールの頃からの倫理と振る舞いは、税金納付のシーズンがきた時、会計士としてのあなたの仕事を何十年間も助け続けてくれるものですが、20年前のトロフィーが、大人になってから困難な状況に陥ったときに、あなたを助けてくれるとは思わないでください。 しかし、興味深いことに、このメッセージは、私が長年フィットネス業界に関して行ってきたいくつかの会話と重要な類似性を持っています。実際、その年の夏、シカゴで105名のトレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、リハビリの専門家を集めて肩のセミナーを開催した際に、詳しく取り上げたのを覚えています。 イベントのまとめの段階で、何人かの若いトレーナー達から、「どうして今の私があるのか」と聞かれました。実際、ある人は「私が10年後にあなたのようになるためにはどうすればいいのか」と質問した人もいました。私はこれらの質問に答えることが難しいと感じていました。というのも、私は成功について考えることがほとんどなく、正直なところ、自分が成功したと決めるには早すぎると思ったからです。さらにより有意かもしれないことに、私は、5年後(10年後は言うまでもなく)の自分の姿を鮮明に描くことができないのです。自分がどこに向かっているのかがはっきりしないのに、新進気鋭のフィットネスプロフェッショナルに、10年後の自分がどうありたいかを語ることができるでしょうか? そう考えると、私の答えは必然的に曖昧になるのが常です: プロセスを受け入れ、結果は成るに任せること。 問題は、フィットネス業界の特徴として、これらのプロセスのどれもが明確に定義されていないことです。別の言い方をするなら、この分野の多くの仕事が完全に基礎となっている厳密な基盤がないのです。このような業界はあまり多くありません。 例えば、私の妻は検眼医ですが、医師になるまでに学部教育4年、その後検眼学校4年(臨床ローテーションを含む)、そして医師会試験を経ています。カリキュラムが決まっていて、そのカリキュラムで重視される分野の能力を判断するための指標があったのです。そして、その熟練した技術を確立した後も、アンナはさらに1年間、角膜とコンタクトレンズを専門とするレジデントを経験しました。ある日突然、自分は検眼士であると宣言してキャリアをスタートさせることはできませんが、パーソナルトレーニングでは、参入障壁が全くないため、そういうことをする人が多くいます。 では、この教訓を、本当に偉大になりたいと願うフィットネス関係者にどう生かせばいいのでしょうか。まずは、キャリアを築くための土台となる最低限の教育を重視することが必要だと思います:基礎の上にキャリアを構築することができるのです。 NFLのストレングス&コンディショニングコーチとして成功するために必要なスキルセットは、臨床運動生理学の場で心臓や肺のリハビリテーションを行うために必要なものとは明らかに異なりますが、これらの領域(そしてその間のすべて)には多くの共通点があることは確かです。ここでは、フィットネスに携わるすべての人が、確かな土台を作るために知っておくべきと思うことをいくつか紹介します: 1. 解剖学、キネシオロジー、バイオメカニクス:構造が機能を決定します。良い動き(機能)を作る、維持する、あるいは再確立するためのプログラムを構成する前に、良い動き(機能)が何であるかを知る必要があるのです。 2. 生理学:クレブスサイクルを暗唱できる必要があるとは言いませんが、エネルギーシステムの発達、運動に対する内分泌反応、さまざまな疾病状態が運動に与える影響、クライアントが服用しているさまざまな薬物の役割、その他多くの生理学的考察について明確に理解している必要があります。 3. コーチング・アプローチ:率直にいきましょう:私は、まず他の複数の資格のあるコーチのもとでインターンシップを経験した人でなければ、誰かをトレーニングすることは許されないと思います。マッサージセラピストは、独立する前に何百時間(時には何千時間)もの時間をこなす必要があります。私は、悪いフィットネスの専門家は、悪いマッサージセラピストよりもずっと早く人を傷つけることができると主張します。優れたコーチは、効果的なコーチングの指示を提供するだけでなく、最も効率的な方法でそれを行う方法を理解しています。そのためには、あらゆる分野の個人を指導し、期待通りにいかなかったときに微調整していくしかないのです。 4. 対人関係:私はいつも、フィットネスのプロを目指す人たちが、一般的な運動科学のカリキュラムの中で、心理学の正式なトレーニングをほとんど受けていないことに驚いてきました。そして、正直なところ、「典型的な」大学の博士が教室で教える心理学の授業は決して軽蔑的な意味ではなく)、何十年も顧客を抱えている成功したパーソナルトレーナーや、何世代も大学のウェイトルームで繁栄してきたストレングス&コンディショニングコーチから学ぶものとは、かなり異なる可能性が高いと思います。モチベーションというのは、非常に複雑なテーマです。私のキャリアの中で何度も、クライアントが入ってきて、(下記のような言葉)でセッションを始めたことがあります:「そう、離婚するんですよ。」リバースランジとブルガリアンスプリットスクワットのどちらを選ぶかは、ちょっと二の次になルカもしれませんよね? これらが私にとって意味したこと この4つの基礎的な教育プロセスを見ると、私はこの業界に入ったとき、#1、#2ともに本当によく準備できていたと感じます。学部の学生時代の経験として肉眼的解剖学のクラスがあったことは考え方を大きく変えてくれましたし、また、キネシオロジー、バイオメカニクス、運動生理学の教授達にも恵まれ、単純な暗記を超えるような授業を受けることができました。 しかし、最初の頃、私はコーチングのアプローチに苦労しました。私は早口で、指示を数多く出しすぎてしまい、多くの選手を混乱させてしまったようです。コネティカット大学の偉大なコーチたちの仕事ぶりを見て初めて、私はもっと明瞭で簡潔であること、そしてアスリートにとって複雑なものをシンプルに見せることを学んだのです。 成長期の夏休みに8年間テニスクラブで働き、複数の年齢層の会員と常に交流していたためか、対人関係は自然に身に付いていたようです。しかし、実はこの3~4年、これが私の最大の勉強分野であり(特に今は雇用者を抱えているので)、リーダーシップ、コミュニケーション、モチベーション、および関連分野に関しては、常にオーディオブックを聞いています。 あなたにとってこれらの意味するのは フィットネスの分野では、誰もが特有な準備をしています。技術指導は上手でも、コミュニケーションは苦手な人もいます。トレーナーの中には、そのきれいな動きを支配する正確な解剖学的構造を知らなくても、動きをきれいに見せるコツを知っている人もいます。専門家の中には、根本的な生理的変化を説明できなくても、優れた結果を出している人もいます。こうした成功(結果)があるからといって、常に改善(プロセス)を求めるべきでないというのではなく、ぜひ「自己監査」をして、最大の成長分野を見極めることをお勧めします。 このような知識不足の多くは、本やDVD、オンラインのメンターシップ・プログラムなどで補うことができます。しかし、私は、4つの構成要素の情報を拾い、それらがどのように組み合わされているかを確認できる、最も速い学習方法は常に対面指導であると信じています。インターンシップやメンターシップは、リアルタイムで応用やフィードバックがあるため、この点において素晴らしいものです。セミナーも素晴らしいものです。特に、講義と実践(実習)の両方がある場合は、なおさらです。

エリック・クレッシー 4151字

ハーフニーリング・バンドY

アスリートにありがちな伸展姿勢を修正するために、投手達の肩甲骨上方回旋の動きを改善するために、エリック・クレッシーが活用しているラバーバンドでのYのエクササイズ。セットアップ時の注意点をエリックが丁寧にカバーします。

エリック・クレッシー 3:06

肘がストレングス&コンディショニングプログラムデザインに関して伝えてくれること

2~3年前クレッシーパフォーマンスで行ったイベント「プロと過ごす夜(ナイトウィズプロ)」の初回に、私達とオフシーズンにトレーニングをしている15人のプロ野球選手達と円卓に座り、彼らのキャリア、長期発達におけるアプローチ、大学のリクルーティングプロセス、シーズン中における週毎のルーティーン、その他のトピックについての質問に答えてもらいました。 15人の選手に登壇してもらいましたが、同じようなストーリーは二つとなく、成功への道のりは皆それぞれ異なるものでした。それに応じて、私のライブデモンストレーションの時間になった時、私は全ての腕におけるユニークな性質について−そしてちょっとした肘の評価が全身のストレングスコンディショニングプログラムで何をする必要があるか、多くの情報を提供してくれるということを強調したいと思いました。 何よりも、ちょっとした「ショッキングな価値観」として、私はトミージョン手術後のリハビリ中に、伸展が完全に取り戻せなかったプロ選手に協力してもらいました。翌日、参加した多くの若い同席者と話をしましたが、内側部に沿って存在する「ジグザグの」傷跡と25°の屈曲拘縮は、腕のケアにもっと真剣になる必要があると、彼らの目を覚まさせるものだったようです。 私達は関節における一般的な先天的弛緩と特定の弛緩を、ベイントンスケールで評価することができます。このスクリーニングには5つのテストを用い、そのうち4つは片側ずつ行います。 肘の過伸展>10°(左右両側) 膝の過伸展>10°(左右両側) 親指を屈曲させ前腕に触れる(左右両側) 小指を手の他の部位と共に>90°の角度で伸展させる 膝を曲げずに両方の手のひらを床につける つまり、とても弛緩している状態であれば最大で9ポイントになります。これは男性よりも女性によくみられ、弛緩の発生は、フットボールやアイスホッケーといったものよりも、水泳、野球、体操競技、そしてテニスなどのスポーツ(可動域がある方が優位なもの)において、より顕著にみられます;ある程度は単に自然な選択とも言えるでしょう。 冒頭で私は、肘の評価だけで(私の見地では他の多くのものに比較して、これは最も素早く簡単な手法なのです)ストレングスコンディショニングプログラムを作成する際に何を優先すべきかに関して沢山のことがわかる、と述べました。週ごとに遭遇するシナリオは、たった4つだけなのです。 覚えておいていただきたいのですが、リハビリ業界で行われている関節のエンドフィール(最終稼動域における施術者側の感覚)の記述は私が例としてあげているものよりかなり詳細なもの(そして各関節特有のもの)です;専門家ではない方にとっても、ユーザーフレンドリーなものにしたいと思い下記の例をご紹介します。最初にご紹介するシナリオは、肘の過伸展です: 通常、肘の過伸展におけるエンドフィールは非常に柔らかい、もしくは“カラッポ”な感じがします−より過伸展させたら前腕が抜け落ちてしまうかのような感じです。このような場合、高い確率でその人は高いベイントンスコアを持ち、その人に対して(もし必要であるとしても)−特に上半身に対して(肩で上方へ200°のトータルモーションが起こると予測もできます。)あまりストレッチする必要がないということがわかります。 もちろん、他にも具体的、及び一般的なスクリーニングも更に行い、このハイバーモビリティー(過剰運動性)は肘特有のものなのか、上半身、それとも全身によるものなのかを判別していきます。 通常、こういった人達には、スタビライゼーションエクササイズが必要になります − ですから充分なストレングストレーニングが望ましいのです。残念ながら、多くの人は自分が得意なことを続けたがります。ですから、先天的弛緩が顕著な方がヨガのクラスを渡り歩き続け、なぜ腰が痛むのか不思議がるということは良くあることです。これは単に、不安定な身体を何度も何度も最終稼働域に持ち込んでしまっているために起こることなのです。 特定のヨガエクササイズは、ある人には非常に有益なものだと思います、しかしながらこのような先天的弛緩を持っている人がアプローチするには注意が必要です。そして、もちろん若い体操選手を人間の形をしたプレッツェルにしようとするのも、長期的な健康を考えると良いアイデアではないでしょう;一人のオリンピック選手に対して、10,000人の子供が脊柱に疲労骨折を負っているのです。 これを踏まえて、高いベイントンスコアを出しながらも上手に動けないという人の場合、私の考えでは4つのシナリオがあり得ます。 初めに、そして最も明らかに、加重されない限り症状が出てこない怪我があり得ます。このようなケースに関しては医師の診察を勧めます。 次に、“全体的に”不安定で、指導されている動きに対して、単に慣れと強さが必要な人達もいます。ランジのボトムポジションに降りられる柔軟性があるからといって、そのポジションを保持できる適切な関節安定性があるということにはなりません。前述のように、各関節が理想的に動くためには、隣接した関節に適切な剛性(安定性)が必要なのです。 三つ目には呼吸の問題(例えば骨盤が前傾し肋骨が開いている人達)もしくは軟部組織の制限(あまりありそうにないのですが、起こるのです)があるのかもしれません。こういった問題はベイントンスコアのみでは明らかにならないかもしれません。なぜなら充分にリラックスしている時には、受動的関節可動域を“ごまかす”ことができるからです。 例として、私は、内転筋が恥骨に付着する部位の軟部組織が乱雑に繊維化している状態でありながらも、素晴らしい外転可動域を持つ人を見たことがあります。 四つ目に、私は足首以外の全身至るところに過剰運動性を持つ人を何人も見てきました。これは何年にも渡ってハイカットのスニーカー、ハイヒールや足首のテーピングで足や足首を完全に破壊してしまったからかもしれません。 また、これは、以前に起こった足首の捻挫が正しくリハビリされなかったことにより、保護するために痙攣が起こっているからかもしれません。または重心がかなり前方にシフトしたことにより(前述した姿勢の歪みによるもの)単に足底屈筋がシャットオフできなくなっているのかもしれません。 ですから、これが短縮なのか(受動的背屈の計測、もしくはウォールアンクルモビリティーテストを行いましょう)もしくは硬直(カウンターバランスによって−ゴブレットスクワットのように−背屈が増すかどうか確かめましょう)なのかを決めるのは皆さん自身です。 次は肘の全伸展、筋肉的なエンドフィール - これは全伸展位において、“からっぽ”な、エンドフィールがないものです;ゆったりと筋肉をストレッチします(肘の屈筋)。 これは恐らく一般の人々に最も良くあるパターンで、通常同量のモビリティーとスタビリティートレーニングの必要性があることが予測できるでしょう。さらに評価を行うことで、どこに重点を置くべきかの情報を得ることができます。 不完全な肘の伸展、骨っぽいエンドフィール - これらは多くの場合、手術後に肘の伸展が完全に戻らなかったケースです。もしくは骨棘が関節下にあり肘の伸展を阻害しているのかもしれません。 大胆な憶測ですが、こういった人々はほぼ確実に(私の経験上) 他の部位に明らかな制限を持つアスリート達です。不十分な肩関節のモビリティー、ローテーターカフの機能、肩甲骨の安定性、胸椎のモビリティー、そして質の悪い組織といったものはすべて、肘に現れている症状の起因となるものになり得ます。 ですから、私がこのように「お粗末な」肘を目の当たりにし、触診した時、通常何をするべきかすぐにわかります。通常、かれらには、沢山のモビリティートレーニング、軟部組織へのワーク、呼吸のドリル、そして長い時間をかける静的ストレッチが必要になります。 その上で、肘自体に関しては、彼らが持っているもの全てを維持することを認識する必要があります。もし骨の変異により伸展が10°欠けている状態であれば、恐らくなんとかやり過ごすことができるかもしれません。しかしその10°が軟部組織の短縮/硬直が加わることで30°になってしまったとしたら、より大きな問題がやってくるのを待っているようなものです。 そのためにも、私はいつも彼らに、今ある肘の伸展を保つために習慣的な軟部組織に対するワークとたくさんの静的ストレッチを行うように声かけをしています。 不完全な肘の伸展、筋肉的なエンドフィール - この人達は前のカテゴリーによく似ていますが、エンドフィールにもう少し“遊び”があります;それは“コンクリートとコンクリート”のようなエンドフィールではありません。 これはご存知の通り、取り戻すことができるのでとても良いことです。例えばこの選手は、私たちのマニュアルセラピストによる、ほんの数分のグラストンテクニックのトリートメントとフォローアップのストレッチを行うことで15°の肘の伸展を取り戻しました。 毎回のトリートメントで、このような改善を100%保つことを期待しているわけではありませんが、このコースを3−4回繰り返した後には、この選手があるべき状態までたどり着くことができるでしょう。 肘の伸展不足が単独で起こることはほとんどなく、同じようなことが身体の他の部位で起こると考えられます。投擲の選手においては、通常投げるサイドの肩関節の内旋不足、前脚の股関節の内旋不足、そしてその他の固さ/短縮の問題が伴います。一般の人達においては身体中が固まってしまっている人たちに見受けられます - 特に一日中座ってコンピューター作業をしている人達に。

エリック・クレッシー 4188字

野球のストレングストレーニングプログラム:ディップスは安全で効果的なのか?

今日、ある野球少年の父から次の質問を受けました。この質問に対する私の答えは、多くの選手にとって役に立つ内容だと思い、これをQ&A形式で書いてみることにしました。 Q:野球選手がバーディップスを行うことについて、どう思いますか?私の息子の高校のコーチが、バーディップスを含むストレングストレーニングプログラムを行っているのですが、私自身は、野球選手にとってのバーディップスの安全性と効果に疑問を持っています。 A:私は、一般のフィットネスクライアントのストレングストレーニングプログラムには、時折ディップスを取り入れますが、野球選手のプログラムに使うことは決してありません。 下記の写真の通り、ディップを行う時には、肩甲骨に対して上腕骨が「ニュートラル」な位置でスタートします。腕は身体の横にあります。(屈曲も伸展もしていません) このエクササイズの遠心性の(下がる)動きでは、上腕骨がニュートラルを遥かに超えて伸展します。 この状態は多くの人の肩にとって、特にオーバーヘッドで投擲をするアスリートの肩にとって、非常に脆弱なポジションです。ご存知のように、水泳、野球、バレーボール、クリケット、テニスなどの選手は何度も何度も繰り返し肩の完全外旋を行うことによって、いわゆる前方不安定性になります。最終的に、レイバック=腕を後ろに位置すると(外旋=骨運動学)、上腕骨頭が前方に変位する傾向がおきます(関節運動学)。 ローテーターカフと、肩甲骨を安定させる筋群の強さが完璧ではなく、発火するタイミングも完璧ではない場合、上腕骨頭が前方に突出するのを防ぐことができるのは、上腕二頭筋長頭腱と肩の前側の関節上腕靭帯だけです。これらの靭帯は時間が経過するにつれ過剰に引き伸ばされ、前方関節包がゆるくなったり、上腕二頭筋腱が安定せずあちこちに動いてしまったり、あるいはオーバーユースにより単に退化していく可能性があります。そして、硬くてごりごりする上腕二頭筋腱を体験したことがある人なら誰でも、それ以上酷使したくないと言うでしょう。 ちょっと余談ですが、これがヨハン・サンタナ投手に象徴される、前方関節包をひだ化(関節包拘縮)する手術がよく行われる一つの理由です。問題は、外科医が関節包を締めた後、ピッチャーが投球動作のレイバックの段階の「感覚」を再獲得できるほど関節包がなじむには相当な時間がかかってしまうことです。さらに経験的に、私は去年、今まで以上に上腕二頭筋腱固定術が行われるのをみました。外科医は、関節唇修復のため患部にアプローチする際に、より状態の悪い上腕二頭筋腱を発見していることでしょう。これらの症状は、肩の構造を根本から変えてしまうため(典型的な関節唇修復はそのリストアをします)、投手にとって、長期的な成功/失敗データのない、大変なリハビリであると同時にこんな疑問を投げかけてきます。「ピッチャーに上腕二頭筋腱は必要か?」 ディップスの話に戻すと、全てのプッシュ系とプル系のエクササイズをニュートラルから屈曲した動きの弧の中で行うように、つまり上腕骨を身体の前方、あるいは身体と平行な位置に保つようにします。これはニュートラルを超えた上腕伸展(ディップスにみられるように)が投球動作同様に、前方不安定性を増す影響を持つからです。 平行バーは、身体のすぐ横に位置できますが、ベンチディップスを行う際、ベンチは必ず身体の後ろに置かなければならないため、ニュートラルな位置からスタートすることさえできないために、ベンチディップスは、更に大きなマイナスの影響を与えます。 まとめると・・・ オーバーヘッドの投擲をする人々にとって、ディップスは良いアイデアではありません。ベンチディップスは、現場にいるコーチにとって便利なため、おそらくよく使われているのですが、特に避けたい動きです。 通常のディップスは、おそらく大半の人々、特に姿勢の悪い人や、肩甲骨周辺を支える筋肉が弱い人、ローテーターカフの機能が低い人、さらには過去および現在肩に痛みがある人にとって行うべきエクササイズではないでしょう。 特に肩鎖靱帯損傷の経歴がある人やこのエリアに慢性的な痛み(例:鎖骨遠位端骨溶解症など)がある人はディップス(およびその他の肘を身体の後ろに位置して行うエクササイズ)は避けるべきです。 ベンチディップスは、全ての人にとって避けるべき、とんでもないエクササイズです。

エリック・クレッシー 1918字

投球は、腕の筋力を“強化”するとは言えない

今日は、野球界で最も不満に感じていることの一つに立ち向かおうとしています: 人々は、投球は腕の筋力を“強化”すると言いますが、残念ながら、そうではないのです。 私が今から書くことは、言葉遊びのように見えるかもしれませんが、とても重要な差別化なのです。もし若い選手が、投球は腕の筋力を強化すると信じているとすれば、彼らは、通年の投球が安全であり容認できると、自分自身をあっさりと納得させてしまうかもしれませんが、実際には、これは、長期的な健康と発達のために、最悪なことの一つなのです。 知っておくべきなのは: 投球は、腕のスピード、つまりパワーを強化します。パワーは筋力に大きく依存しています。もし大きな力を作用させることができなければ、大きな力を素早く作用させることはできません。 また、投球は腕の筋持久力も強化します。筋持久力も、大きく筋力に依存しています。もし筋力がなければ、筋持久力をつけることはできません。 筋力を強化すれば、パワー、筋持久力も、通常向上します。これは、投手やその他の競技者達の両方の状況において、研究で再三再四、証明されています。しかし、パワーと筋持久力を鍛えたとしても、筋力が向上することは、まずありません。そうでなければ、私たちは、シーズン序盤よりも終盤に、数多くのより強靭な選手達をみることができるはずです。現実には、シーズン終了時に回旋腱板の強さと肩甲骨安定筋群の習熟度をチェックしてみると、通常、シーズン序盤よりもかなり低くなっています。マイク・ライノルド理学療法士は、シーズン中の腕の筋力の管理は、“制御された弱化”と、表現しています。 これは、回旋腱板の強度の向上と肩甲骨のコントロールの最適化のための、オフシーズン(投球を全く行わない期間を含む)の使い方の重要性を強調しています。同時に、投手は(投球によって副次的に増大した外旋)後天的な肩の前部不安定性を減少させると共に、肩に受動的安定性を獲得します。 現在、その真偽性を確認するために、より多くの研究を必要としますが、私は、重量を付加したボールの投球の隠れた恩恵は、基本的に腕の筋力とスピードの境界線を不鮮明にすることに役立つことであろうと考えています。

エリック・クレッシー 982字

ピッチングの障害とパフォーマンス:踏込足の接地と完全な外旋

今日の投稿では、投手をトレーニングするときに理解する必要のある、最も重要な姿勢、踏込足の接地と完全な外旋について少し説明したいと思います。 外旋が最大化する直前に踏込足の接地は起こります。足が着地する際、胴体がまだ逆方向に回旋している間に、骨盤はホームベースに向かって回旋し始めて分離を作り出し、これにより速度は増加します。外旋の最大化‐もしくは "レイバック" - は、この分離の終了を意味します。ここで、下肢で発生するエネルギーは、すでに身体上部まで連鎖して作用しているのです。ニッセン他(2007)は、この素晴らしい図解を発表し、分離の発生を解説しています。この図では右利きのピッチャーの場合を表現しており、上の図が骨盤、下が胴体を表しています(左右の肩関節は回旋の中心)。 この図を見るだけでも、多くの場合の、斜筋へのストレスと腰部の痛みの原因を辿ることができます。とてつもない回旋ストレスですよね。 さらに、なぜ投手に、かつてないほど股関節の傷害が多いのかもわかるはずです。外旋が最大化する際、骨盤と胸郭が同じ方向を向くよう(そうでないと腕が引っぱられてしまいます)に、遅れずついていくためには股関節の回旋にかなりの加速度を必要とするのです。この図では、下肢とコアで起こっていることを解説しているにすぎません。では肩では何が起こっているのかを見てみましょう。 完全なレイバック(外旋の最大化)時、肩には外傷性および慢性的な損傷の可能性がいくつも潜んでいます。ピールバックメカニズムとして知られるパターンにおいて、上腕二頭筋腱はねじれ、上部関節唇を引っ張ります。回旋腱板の関節側(下部表面)は、関節窩の上後部においてインピンジメント(関節内インピンジメント))を起こす可能性があり、回旋腱板の部分的な裂傷に至ります。最後に、ボールがソケット内で外旋する際、上腕骨頭は前方に滑る傾向があります。それによって上腕二頭筋腱と前方靭帯の構造にストレスが生じます。 同様に、肘では、外反のストレスはグラフからはみ出すほどの大きさとなります。これは肘内側側副靭帯損傷、屈筋/回内筋損傷、内側上顆疲労骨折、外側圧迫損傷、尺骨神経への刺激、あるいは、その他の問題を引き起こす原因にもなりえます。 読者の皆さんが、これらの損傷がどんなものなのかを知っていることを期待しているわけではありませんが、ただ、投手がこれらのポジションにおいて、機能的な強さと可動性を持つようにトレーニングすることは、大変重要なことである、ということが伝われば充分だと思います。 そして、これにより、オーバースローの選手の強化とコンディショニングを目的としたプログラムに関する根本的な問題が明るみに出ることになります。一般的なトレーニングでは、これらのポジションにおいて「安全」であるようにトレーニングすることについて、全く触れられていないのです。 「クリーン、スクワット、デッドリフト、ベンチ、懸垂、シットアップ」だけでは役に立ちません。 着地の際に前足側でフォースを受け止めるためには片足のスタンスで強くなる必要があります。

エリック・クレッシー 2111字

肩の健康をサポートするウォームアップ(ビデオ)

障害をおこしやすい肩関節周辺の構造をサポートするための動きの数々をご紹介します。シンプルな動きを使い、身体の近位から遠位に向って可動域を高めるドリルをウォームアップのプログラムに加えてみてください。

エリック・クレッシー 5:38