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運動制御の全て パート2/2

もし動作パターンが崩れていれば、深みにはまってそのパターンの理解を分析しなければなりません。乏しい入力を促進している可動性の問題なのか?または乏しい安定性と運動制御を割り振っている処理の問題なのでしょうか? 私達はこういった問題を見つけて対処し、修正することができるのです。筋を見るのではなく、筋の不適切な緊張を生み出しているパターン(またはそれの欠如)を見る事によってこういった問題を管理することができるのです。こわばりと弱さは、スペクトラムの両端にありますが、同じ問題を現していることを忘れないでください。 過剰で不必要な筋緊張は、表面上では可動性に乏しく、ケアしなければいけないように見えます。それは何かに駆動されているのか、または単純にクリーニング可能なハードドライブにひっかかっているクセなのでしょうか? その弱さはただセット数と回数を必要とするものなのか、それとも代償動作の原因となっている不適切な可動性、運動制御または非効率的な動作パターンによって引き起こされているのでしょうか? その代償動作は可動性の欠如、または長年気づかずにいた身体のどこかの運動制御、もしくは単純にクリーニングされるべきハードドライブの何かでしょうか? これらの問題を簡単に見つけるために、システムが必要なのです。しかし私達が局所の筋のこわばりや弱さにこだわり続ける限り成功することはないでしょう。よく言われることですが、月を指差すことは月を見せる為ですが…大抵の人はその指を見ているのです。 不適切な筋の緊張はシステム内の不調和を現しています。不調和は適切に処理された不適切な入力の問題、または適切な入力の不適切な処理かのどちらかが原因で起こります。 私達はこの明確で系統だった方法でアプローチすることで、どちらの問題か見つけ出す必要があります。常に明確であるというわけではないのですから。お決まりの答えは不適切な入力と不適切な処理がいかなる場合にも起きているということでしょう。 それもある程度は正しいかもしれませんが、これでは行動項目が広がりすぎて、介入の為のフィードバックを得ることができません。もし、これとは反対に誰かの股関節の乏しい運動制御が足首の可動性からきているとすれば、あなたはソーシャルメディアに頼ることなくその質問に簡単に答えることができるでしょう。足首にもう少し可動性を作り、股関節の運動制御をもう一度チェックして下さい。もし足首の問題が股関節の乏しい入力と不適切な運動制御、弱化を操作しているのなら、そこで答えが出るでしょう。たとえそうでなくとも、それもまた答えとなるのです。 この演繹的推理はファンクショナルムーブメントシステムの背景にある “ソースコード”です。もしそれが可動性の問題か、運動制御の問題なのかを知りたいのであれば、テストをして下さい。そのために作ったのです。 自分達の為に。私達も同じ疑問を持ち、論理的な答えがあるしっかりとしたシステムを見つけられなかった。スクリーンやシステムを発展させようとしていたわけではありませんでした…ただ競争における優位性が欲しかったのです。何が不適切な緊張をもたらしているのか見つけたいのなら、確実に行える評価方法が私達にはあります。信じられないくらい効率的なファンクショナルテストで、運動制御を評価したいのなら、私達はそれも提供できるのです。 私達は、明確なフィードバックをする際の助けになるような方法で動作基準を活用しようとしています – 個別の矯正か、プログラミング修正に焦点をあてる必要があるかを判断するために。 どんな時でも、こういった動きは大きな違いを生み出します。破綻した生体系システムの理解 – 生命体または環境 – は正しい科学の証明であり、運動行動をたどることはエクササイズやリハビリテーションのスタート地点なのです。 私達はファンクショナルムーブメントシステムであり、エクササイズ会社ではありません。 あなたのプログラミング、リハビリテーションや専門のパフォーマンストレーニングを頼りにする人達の為に、私達は動作をチェックしてフィードバックをする優れたツールを提供します。ムーブメントスクリーン、テストそして評価は時間がかかるのは事実です。実行計画を発展させるためには、より多くの時間を費やすべきであり、それは仕方ないことです。評価で費やした時間はリハビリテーションや動作の矯正、身体的発達に費やす実験的な時間を節約できるのです。 これは昔の大工のルールです:2度測って一度で切る 新しい評価基準ができて適切に検査された時、このしっかりとしたフィードバックループを専門的な仕事に受け入れられない場合、そこには理由が2つだけあります: 新しいツールを信頼していない。多くの記事や投稿は信頼を与えません…それを実際におこなう必要があるのです。 その方法がベースラインにプラスに影響することを信頼していない。それは、私達皆が直面する挑戦ではないでしょうか。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2133字

運動制御の全て パート1/2

運動制御のキーポイントとなる要素は筋緊張ですが、ここでは不適切な筋緊張に重点を置きたいと思います。 かなり頻繁に、理学療法とリハビリテーションという観点から、私達は必ずしもこわばりや弱さのみを評価しているわけではありません こわばりは、本来あるべきブレーキシステムが機能しない場合において、たびたび身体がサイドブレーキを使う方法です。身体が持つブレーキシステムは運動制御と呼ばれ、入力、処理、正しい出力をする為に細かく調整されています。システム内に欠陥が存在する時 – 動作やコーディネーション、タイミングや対称性のいずれかにおいて – 機能不全が観察されます。 身体は生き残る為、そして身体本来の働きが危険にさらされるような状況下においてサイドブレーキシステムを作り出すようにセットされています – それはトラブルから遠ざける為に常に働き続け、ブレーキをかける傾向にあるのです。このサイドブレーキは疲労、怪我、その他組織の保護や痛みを避ける安全装置です。より良い制御を得られるかもしれませんが、同時にエネルギーを浪費して効率性を失ってしまうことになります。弱化という問題は残ったままです。これは多くの場合失調であり、局所的なものではなく全身性のもので、朝起きて動きだしたり、翌日もう少し動いたりすることによって簡単に解決されてしまいますが、局所的弱化が、ただの弱化であることは滅多にありません。 単体の筋や筋群の局所的な抑制は、リハビリテーションにおいて神経性の問題や怪我からくる障害、病気や機能不全として診断されています。私が述べている微妙で目立たない抑制とは、姿勢やパターンを遂行するために適度な緊張の度合いを支配する筋の能力不全です。ここでの本当の問題は、私達が筋のこわばりや弱さを単純に評価した時にそれを筋の問題であると考えて道に迷い込んでしまうことです。多くの場合、それは指令の問題なのです。 もし、深筋膜から表層の傷跡や過去の怪我による瘢痕組織まで、全ての組織に拘縮がある場合、筋は単純にシステム障害から身体を保護する為に事前に緊張したり、安静時の筋緊張を極端に高めるように指示されるのです。この拘縮はまた他の組織からのシグナルだけでなく、すでに治ったはずの過去の怪我からも持続されてしまいます。筋肉は、怪我の治癒という情報を受け取っていなかったのです。 脚を骨折している子供を想像してみて下さい。理学療法を終えて最大可動域、筋力、そしてムーブメントスクリーンにおいても極めて良い状態ですが、まだ早歩きやランニングで跛行をします。なぜでしょうか?なぜならそれが習慣となっているからです。入力は正しくされていますが、痛みを抱えた習慣的な生活習慣とリハビリテーションが跛行を生み出し、それ自体が実際の問題となってしまっています。新しい機能不全パターンができてしまったのです。怪我の後の跛行は、ストレスを軽減しある程度の可動性を維持することができるため、機能的なものです。ストレスを軽減する必要がなくなった時、跛行の原因となる問題が解決された時に、これが機能不全となるのです。 跛行の原因となる怪我は解消しても、まだ脚を引きずっている –これはプロセスの問題です。不必要なこわばりや乏しい関節可動性、または乏しい組織の伸張性からくる不適切な入力が、私達がこわばりと捉える防御性の緊張の原因となっているのです。たとえこういった代償が無くなった時でさえ、クセや防衛機能はまだ残っているのです。  柔軟性や可動性が問題の場合、高まった緊張に対処する最善の方法はパターンに注目することです。パターンの中に答えがあるのです。それは私達が考えていなかった可動性や柔軟性に関与している可能性のある他の全ての問題に気づかせてくれるでしょう。 同様に、私達が強化やエクササイズのルーチンで改善しようとしている弱点も、負荷や動作パターンの難易度が抑制となることがあります。抑制は、自動的にうまくリセットできません。私達が自分達のシステムをリセットするか単純に代償するかの選択をする時、たいていは代償を選ぶのです。 コレクティブエクササイズとは、通常は後退性の発達パターンを活用することにより、代償してしまう生物学的ニーズと代償作用のきっかけを取り去ることを理解する方法論です。全てを機能的な足部のポジションで行うのではなく、私達を最初の一歩に導いたパターンや姿勢に戻るのです – そのパターンがローリング、ハイハイ、膝つき、両膝立ち、四つ這いです。私達は全てのレベルの姿勢やパターンが次のレベルへのプログレッションを支えるということを示す為に動作を加えるのです。 これらのパターンは、代償作用だけが唯一の手がかりとなる立位になる前に、問題箇所を浮き彫りにしてくれます。部分的な柔軟性の問題を評価することもできますし、部分的なストレングスの問題を評価する事さえ可能ですが、最終的には運動制御システムがこれらを引き起こしているということを理解しなくてはなりません。 運動制御システムは入力、処理、そして出力を扱います。信じられないかもしれませんが、最も簡単なチェック方法は単純に出力を見ることです。もし動作パターンの質が許容範囲であれば、その特定の動作パターン、形や姿勢で得られる身体の資質を見つける為にそのパターンに負荷やストレスをかけてください。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2266字

「歴史」の完璧な歴史 パート2/2

ハックがセルッティとやりとりしていた(パート1/2)のと同じ時期に、トーマス・デローム医師とアーサー・ワトキンズ医師は、ポリオ患者と第二次世界大戦で負傷した軍人たちのケアをしていました。1945年にデロームは、Journal of Bone and Joint Surgery(骨と関節手術のジャーナル)にて、「Restoration of muscle power by heavy-resistance exercieses」(高負荷レジスタンスエクササイズによる筋パワーの復元)という論文を発表しました。 300に及ぶ症例から、各ワークアウトにおいて、10回、7~10セットを行い、合計で70~100回の反復を行う方法を使うことによる「筋肥大とパワーの驚くべき反応、そして症状の緩和」を発見しました。最初のセットでは軽い重量から始め、10RMに達するまで徐々に重くしていきます。量に関しての観点は、時とともに少しずつ考えは変わっていきました。1948年、そして1951年までには、下記のように述べられていました。 「さらなる経験を重ねた結果、この数字は高すぎ、ほとんどの場合、合計20-30回で十分な結果が得られるとわかりました。回数が少ない方が、筋肉により重い負荷をかけるエクササイズをすることができ、より早く、より大きな筋肥大につながります。」 次のように徐々に重量を増やしていく方法で、10回3セットを推奨すると、多くの論文や本においてその説が支持されました。 セット1  10RM の 50% セット2 10RM の 75% セット3 10RM の 100% この方法では、最後のセットでのみ、限界までチャレンジしています。最初の二つのセットは、ウォームアップとも考えられます。1951年に出版された「Progresseive Resistance Exercise(漸増抵抗運動)」では、デロームとワトキンズはこう述べています。「他のコンビネーションも同様に効果的かもしれないという可能性は見過ごせませんが、各セット10回を3セット行うことを支持します。驚くべきことに、多くのアスリートは、一つのエクササイズで5回以上の反復を繰り返すことなく、偉大なパワーを発達させています。」私はこの最後の一行が大好きです。 聴衆である負傷した退役軍人やポリオ患者という点を見過ごしがちです。私の神聖な記憶の中にいる母、アイリーン・バーバラ・マックロスキー・ジョンは、人生において恐れるものがほんとんどありませんでした。彼女は、とても貧しい環境で育ち、不況により、事態はさらに悪くなりました。彼女が人生で関わってきたほぼすべての男性は、様々な戦争に駆り出され、息子がベトナムに行っていたときには、彼女が毎日泣いているのを見ました。しかし彼女を怖がらせたのはポリオ以外には何もありませんでした。ポリオは、子供の天災であり、世代にわたる命の破壊者でした。原因には、スイミングプール、アイスクリーム、開いた窓などが考えられていました。そしてまさに一夜のうちに、ワクチンによってその災いには終止符が打たれました。近代のウエイトリフティングによって、この病気の患者が四肢を元通り使えるようになったことから、バーベルは多くの人の目に、より主流なものとして定着しました。 デロームとワトキンズが、退役軍人のリハビリをしていた頃、スタンフォード大学の若い砲丸投げアスリート、そして後のロサンゼルスタイムズの編集者、オティス・チャンドラーは、砲丸をより遠くに投げるために、ウエイトリフティングを始めました。そして彼はやってのけました。長い間破られていなかった世界記録の一つを破り、砂に一線を刻み込みました。砲丸投げを極めたければ、リフティングをしなければなりません。陸上競技のどんな競技で競うにしても選択肢はありませんでした。リフティングをしなければならないのです。 それでも、20年以上が経って私が最初にウエイトリフティングを始めた時に、次の二つのことを耳にしました。 「ウエイトリフティングは、お前を筋肉バカにする」 「ウエイトリフティングは、お前をホモにする」 どちらも科学的根拠もなければ、人間の尊厳にも反しています。 それでも、ポリオの患者が四肢の機能を取り戻すと共に、スポーツをする多くの人々にとって、リフティングをしなければならないことは明らかでした。さらにその頃、医者であり、理学療法士である偉大なるブラディミア・ヤンダが、トニック(緊張筋)とファジック(相性筋)の考え、様々な「クロスシンドローム(交差症候群)」の提唱を始めました。特筆すべきことは、彼も前世紀の悲惨な病気であるポリオの患者であったことです。ヤンダの一つの筋肉をストレッチ(ゆるめる)し、相反する筋肉を強化するという見解は、方程式の片側だけに働きかけるよりも、より良い構造的統合性を促進します。 もう一つの糸:ロシアでは1700年代に、男たちが勇気試しに、1か2プード(16kg~32kg)のケトルベル挙げという伝統的な計測方法で競い合っていました。この奇妙な形をした器具はロシアの(その後ソビエトの)スポーツとして近代まで続いてきました。私は、ソビエトのアスリートがこのハンドルのついた奇妙な砲丸を投げたり、引っ張ったり、飛び越えたり、ジャグリングをしたりしている小さな白黒の写真を見たのをはっきりと思いだすことができます。西欧では、この器具は、グローブバーベルとともに使われ、標準化された回転式のバーベルの進化によって根本的に消滅するまで使われていました。私は、これらの重要なトレーニングアイテムを読者に思い出させる1950年代の雑誌を持っています。それから、バーバラ・エデンの「ジーニーの夢を見る」のように一瞬で消えてしまいました。 パベル・サッソーリンが舞台に現れるまでは パベルは、閉鎖した銀行の金庫でアメリカ人をコーチし始めました。安価なコミュニティー教育プログラムを提供し、最低限の用具と豊富な知識で、未来の海軍の特殊操縦者のトレーニングをしました。ジョン・デュケインは彼の話を聞き、やがて2人でお茶をして、ともに執筆をし、アメリカのためにケトルベルを開発することを始めました。 パベルは、2004年にチャールズ・ステーリーのブートキャンプで講演をするよう頼まれました。別のスピーカーが、その一週間前にキャンセルをして、チャールズは抜けた1時間の穴を埋めようとあわてていました。マイク・ポコウスキーは、自信を持ってステーリーに言いました、「ダン・ジョンがその一時間を埋められる。」 誰? 次の土曜日、私はパベルに会い、彼は「強くなる方法」を非常に良く教えてくれました。 「次の40のワークアウトで、5つのリフティングを選ぶ。毎回のワークアウトでそれを行う。一回もとばしてはいけない、それどころか苦しんでもいけない。必要なだけ軽くして、どの動きにおいても10回を超えてはいけない。簡単そうに見えるだろう。重さが軽いと感じたら、重りを足すこと。」 そのぐらい単純で、そのぐらい簡単でした。私はその指示に忠実に従い、人生で最も強さを獲得しました。 そして、理由はどうあれ、数名の人がこのシンプルなルールに従うことができました。 イージーストレングス(やさしいストレングス)とその双子であるイーブンイージーストレングス(さらにやさしいストレングス)は、ハック、セルッティ、デローム、ワトキンズ、ヤンダ、そしてギレベック(ケトルベルの愛好家)から得た教訓の集大成です。それが今日において反対意見のように感じる理由は、リフティングの歴史における別の連続性によります。それは、ボディビルディングやフィジークの世界です。アーノルドやジェーン・フォンダが、量をこなすこと、「燃やす」ことを支持して、筋肉を全て一つ一つ孤立することに時間を費やしたい人々やりがいを感じる中で、基本的な動きを通じて強化をする伝統的な方法は、その単純さのために馬鹿げたものに見えるようになりました。 正直に言って、成功とはほぼ常にシンプルな道筋です。このアプローチに従うのはかっこよくはないかもしれませんし、奇人、戦士、スパルタ人、戦術的タイトルや部族衣装はないかもしれませんが、効果があるのです。退屈を売るのは難しいけれど、確かに効果がある。 ですから私にとって、ストレングストレーニングの伝統は、イージーストレングスの方法でトレーニングをするのに道理のあったビジョンをサポートしてくれるのです。理解するのが難しいのは、これはただの面白い歴史教訓ではなく、システムであるということです。

ダン・ジョン 3626字

「歴史」の完璧な歴史 パート1/2

これまでに何度かウエイトに関するちょっとした歴史の知識を綴ってきましたが、今回は全てのストーリーをシェアしてみたいと思います。 歴史の裏の歴史 私は1982年に歴史学で修士号を取得しました。その日からこれまでには確かに長い歴史がありますが、歴史の勉強から学んだ教訓はとても役に立っています。ある教授が私たち学生に、「研究(Research)」という名前はまさにその通りだと忠告していたのをよく思い出します。「最初にプロジェクトを始めるときには、何かしら見つかる。そして、見失う。再び見つけるまでには、数ヶ月、もしかしたら数年がかかる。だから再び探す(RE-search)と言うのだ。」儀礼的に笑って教室を出た私は、私の論文の大部分を占めることになる複数の文献を見つけました。その後9ヶ月間、私はそれらの文献を見つけることができませんでした。 この教訓は私の研究だけではなく、フィットネスやスポーツにも当てはまります。このことを本当に理解したのは、重量挙げと円盤投げを始めた最初の数週間で学んだことが、これまでのキャリアの中で一番大きな教訓だと発見したときです。私の学問のキャリアは、1982年に終わったわけではなく、私はその後30年以上、宗教学について深く勉強しました。ここでも学んだ教訓があります。私のフィットネス、ヘルス、ストレングスへのアプローチを一つのタペストリーにつなぎ合わせる糸には、過去数百年にわたる歴史、そして様々な人々の洞察が関与しています。 私が宗教学のクラスで教える基本講義の一つは、コミュニティに関する重要な概念についてです。私が「横社会」と呼ぶものについて、皆理解してくれているようです。それは、友達、家族、教会、グループ、チーム、社会、兄弟、姉妹、あなたが今属しているもの全てです。血縁関係のある家族や親戚のように個人的なものでも、あるいはインターネットのフォーラム上のコミュニケーションも含まれます。多くの人が見失っているのが「縦社会」です。多くの場合、縦社会は物語に関連しているのですが、悲しいことに私たちはその物語を忘れています。縦社会は、人、イベント、そしてその小さなコネクションがどこかの時点でつながり、ある世代には崇高に他の世代には明らかにみえるものです。ストレングス&コンディショニングの概念を真に理解するためには、過去の長い道のりを遡る必要があります。 私たちは皆、ミロを責めることができると思います。ミロは、レスラーであり、オリンピックで何度も優勝したことがあります。彼のよき友達に、「直角を作る二つの辺の2乗の合計は、直角三角形の斜辺の2乗と等しい」という考えで世の中を変えた、ピタゴラスがいました。また、ミロは毎日、20lb(約9kg)の肉、20lb(約9kg ) のパン、18lb(約8kg)のワインを消費していたと言われています。でもそれが、私達がミロを覚えている理由ではありません。ミロを覚えているのは、彼の雄牛の持ち上げ方のアイデアのためなのです。 物語はこう進みます。ミロは毎日、牧草地まで歩き、ある特定の子牛を持ち上げます。次の日も同じことを繰り返し、雄牛が完全に成長するまでこれを続けます。ミロは、漸増抵抗運動の父であり、多くの人々がストレングストレーニングの成功への道筋は一直線だと考えていることには、彼に責任があります。私はこれまでに何度も、初めてリフティングに取り組む人たちに、今日100lb(45kg)を挙げられたから、一週間に10lb(4.5kg)ずつ足していけば、一年後には600lb(270kg)以上ベンチプレスで挙げることができるようになるよ、と冗談めかして言ってきました。紙の上では確かにその通りのはずなのです。 ストロングマンは、西洋文明の発展において興味深い役割を果たしました。地下に様々なグレンデル(巨人の怪物)がいたら、ベオウルフに来てもらって助けてもらいたいのは当然ですが、リトルジョンだったらロビンフッドのように射撃の技術を高めるよりも打撃の練習をするでしょう。サンプソンは多くのペリシテ人を殺すでしょうが、彼の女性への理解は、せいぜいのところぼんやりとしたものでしょう。 100年前、ストロングマンとウエイトリフティングの概念は、小生意気な口髭をたくわえたヒョウ柄の衣装のサーカスパフォーマーの余興として定着していました。比較的小柄なハリー・フーディーニが手錠を壊している一方で、ストロングマンのショーは観客を持ち上げたり、車やカートに引っぱられたり、考えを牛耳るような様々な片腕のリフトへと進化しました。しかし、そんな中で、どうやって誰が本当に一番強いかを見極めることができたのでしょうか? 近代五輪最初の大会が行われた1896年に、「オリンピックリフト」が競われました。これらは、今日のクリーンアンドプレスの基準からすれば、ほぼ認識できないものでしょう。そのクリーンアンドプレスはオリンピックにおいて最も長く採用されたものの、1972年に競技から外されました。片腕のダンベルリフト、ダンベル下げ、ダンベルカール、片腕のプレスなどは全て、かつてはオリンピックの種目でした。 同時に、ロシアのレスラーであり、早期からスポーツおよび健康全般のためのストレングストレーニングを支持していた、ジョージ・ハッケンシュミットは、様々なリフティングの知識を編集して「The Way to Live(生き方)」という本にまとめました。 近年のリフティングの世界におけるハックの影響は、変わったところからやってきました。オーストラリアの南海で、パーシー・セルッティという男が、病弱な生活を変え、陸上競技のアスリートを指導する新しい目標に向けて取り組んでいました。セルッティは、ハックにアドバイスを求め、この二人の関わりが、昔の「オールドスクール(古典的方法)」から、私がイージーストレングスと呼ぶ現代的アプローチにつながるリンクとなったのです。ハックは、ウエイトトレーニングを二つの部分に分けて概説しました。広範囲―トレーニングの量的(および肥大化)アプローチ-と、集中的-より大きな負荷(およびストレングス)に重点を置いたアプローチ-です。 セルッティは、ハックの考えを受け入れ、採用しました。私はかつて、彼の著書を要約したことがあります。 坂を駆けあがる。 ウエイトリフティング。 私が生まれる前に、彼は、全てのアスリートは主要な5つのリフトを行うべきであると主張しました。 1. デッドリフト 2. 押す動作 セルッティはベンチプレスを好みました。 3. 爆発的な全身動作 彼は、重いダンベルスイングを好みました。 4. 引く動作 彼は、プルアップやチートカールを好みました。チートカールとは、カールのグリップで行うパワークリーン(パワーカール)や、多くの人に見られる反動を使っての重いバーのカールです。 5. 腹筋運動 デッドリフトがある側面を強化するなら、腹筋運動はその逆側を強化します。 これらのリフトを2-5回、2-5セット重い負荷をかけて行ったら(スイングと腹筋運動は比較的高い回数になるので、体力を使い切らないようにします)、プルアップバーからぶら下がって数分ストレッチをします。

ダン・ジョン 3052字

システム論的視点からの慢性疼痛 パート4/4

実用的な活用(続き) 局部的な問題も複雑でありえる もし、反復性ストレス障害のように明らかに動きが関係する問題に対して、休息することや動作のパターンを最適化することで改善しないならば、その痛みはある程度、局部的な複雑性に関与しているかもしれません。たとえば、腱炎や足底筋膜炎、テニス肘のような反復性ストレス障害は、非常に小さい領域の治癒や修復過程の調節異常が関与しています。 システムの観点から見れば、これらの症状を、局所の修復システムの適応能力を凌ぐ程の頻度と強さを持つストレス因子によってもたらされた、組織の質の位相シフトとしてとらえることができます。つまり、ということです。興味深いことに、(休息を除いた)最適な治療は、たいてい遠心性のエクササイズです。少量の損傷を起こすことで治癒過程が再スタートし、フィードバックループの滞りをなくしたり、あるいは体系を動揺させることで、そのバランス状態を取り戻します(ボールを小さいくぼみで押し動かし縁を越えもうひとつのくぼみに入ることを想像してみてください)。 過敏な人もいる 脅威に対して防御反応を調整しているスーパーシステムは、その感度を上げたり下げたり設定できます。 過敏な人にとって、ケガや仕事のストレス、病気、睡眠不足、不適当な食事などの脅威のある刺激があるときはいつも、強い防御反応が現れます。さほど大きくないストレスに曝されるだけでも、疲れや体力減退、筋肉痛を感じ、または元気がなくなると感じます。こうした人の多くは、人生の中で重大なトラウマに苦しんだ経験を持っています。 一方で、重大な脅威に直面したにもかかわらず、防御システムに安定が保たれる人もいます。このような人は、マラソンを走ったり、交通事故に遭ったり、1週間に80時間も働いたり、双子を生んだりしても、エネルギーレベルを落とすことなく、元気で健康で、普通に日常生活を送ることができます。まったく何もなかったかのように! 皆さんやクライアントが、この連続体のどこにいるかを把握しておくことは良策と考えます。そうすれば、その人の脅威に対する感受性のそれぞれのレベルに合わせた適切な介入を計画することができるからです。私のクライアントのなかにも、彼ら自身が特に過敏であることを理解しておくことで役立った人がいたと思います。理解することで彼らは、些細なストレスへの対処にも困難を覚える自分自身にあまり批判的にならなくてすみます。彼らが経験する痛みと疲労感は実際に存在するもので、気のせいではありません(たとえ、友人や家族が疑っても)。自分が過敏であるのを把握しておくことは、ストレスレベルを自己規制できるよう賢く管理するのに役立ちます。 他の役に立つ考えとして、感受性レベルは変化するということがあります。それが悪い方向へ簡単に変化してしまうとのは明らかでしょう。劇的なトラウマによって、防御システムの行動に位相シフトが起き、過度に警戒したり、過剰に反応したりしてしまうのです。しかし、休息やストレス管理、段階的なストレスの露出、健康全般の改善によって、過剰警戒システムは、より適切な設定値にゆっくりと戻ることができます。残念ながら、これは一晩で起きるような速い変化ではありませんが。 漸進は非線形 複雑系はしばしば非線形で変化するため、その漸進も非線形であることが予測されます。つまり良くなるということは、2歩前進したら1歩後退という問題なのです。短期間で明らかなプラスの変化は見つけにくいですが、長期的な時間枠でとらえると、漸進のパターンは明らかになるでしょう。 これらのパターンを広い視野に置いておけば、短期間の挫折で勝利を得られる計画を放棄しなくてすみます。さらに、位相シフトの考え方を心に留めておくとよいでしょう。ゆっくりと長くボールが縁を越えるように押し続けていれば、いずれ縁を越え、そしてその過程で大きな加速を経験するのです。 社会的スーパーシステム ひとりの人間は、通常、より大きな社会システム(家族、職場、地域)の一部であり、それらは複雑に相互関連しています。人間は社会的つながりの中で進化し、それゆえに、痛みを含む防御機構は、周囲の人に助けを求める行動を起こすようにデザインされています。もしあなたが、多大なストレス要因に継続的にさらされ、自分の仕事に虚しさを感じ、高い評価など望むべくもない社会状況の中にいたら、将来、苦痛を経験する見込みは増大します。 結論 現在のヘルスケアシステムは、急性のケガへの対処に関しては素晴らしいものですが、私たちが現在直面している、最も重大な健康問題である広範囲の全身性で複雑な問題(肥満、糖尿病、慢性疼痛など)への対処はまだまだです。 システムの観点から見れば、これらの問題の本質についてより理解を深めることができます。そして、願わくは、薬やクコの実、フォームローラーなど特異性の高い介入によってこれらの問題を解決することはできないということを気づかせてくれることでしょう。率直で非特異的ですが、全身性の健康の調節に有効な方法とは、食事、運動、睡眠、ストレス調整です。これら基礎的なことは、特効性や即効性のある治療に目を奪われて見逃されがちです。

トッド・ハーグローブ 2207字

システム論的視点からの慢性疼痛 パート3/4

連結性 複雑適応系の異なる要素すべての関係性は、個々の要素そのものよりも重要です。たとえば、人間の脳の素晴らしい知性や複雑性は、これらの連結性のおかげです。実際、宇宙に存在する原子の数よりも人間の脳に存在する神経細胞の起こりうる連結の数の方が多いのです。それ自体が一つの世界であり、まるで数百万羽の鳥の群れのようです。 ケガのようにストレスの大きい事象においては、主なサブシステム(神経系、免疫系、内分泌系)の連結性は、反応が全身性であり、包括的であり、高度な協調性を持つことを確実にします。この連結性は、反応を司っているネガティブフィードバックループとポジティブフィードバックループの関係をきわめて複雑なものにします。 下記に、主な要素の防御的作用をごく簡潔にまとめ、それらの連結を表した図解を載せました。 神経系の基本的な機能は、末梢からの情報を収集し、脊髄と脳にその情報を伝達し、受信した情報を処理し、分泌腺や筋などといった特異性の高い身体部位に指令を送ることによって身体を制御することです。身体の防御という面では、これは脅威を予知し、検知することであり、防御的な動きや痛みの経験を意識するといった、身体を保護しようとする反応を引き起こします。このプロセスは、驚異的な正確さと特異性、差別化をもってほとんど瞬時に起こります。 内分泌系もまた情報信号系です。しかし、神経系とは異なり、その効果はゆっくりと即効性はなく、標的の範囲はずっと広く、特異性も低いのです。なぜなら、さまざまな分泌腺(松果腺、下垂体、副腎など)から循環器系へのホルモン分泌を介して作用するからです。ホルモンは、闘争・逃走反応を引き起こす状況を生き抜くための生理学的覚醒を起こすことにより身体を守っています。緊急事態が過ぎると治癒と回復を促進する状態にするためにホルモン変化が起こります。 免疫系は、身体内環境の危機の検知や対処の役割を担っています。―― 侵入微生物を感知し死滅させたり、ケガを治癒させるための炎症を起こさせたりします。 繰り返しますが、これら3つの体系の相互作用は非常に複雑であり、その詳細についてはこの論文(英文)で説明されています。ここでの議論のほとんどは、高度に専門的で、運動療法や手技療法の治療家にとって、直接的に実用的なものではありません。相互作用の種類を覚える必要もあまりないのですが、ただ3つの体系の強い相互関連性を全般的に理解するために、ここで拾い読みをする価値はあるかと考えます。 関連性の図です。 慢性疼痛を引き起こす4つの体系調節異常 この論文は、慢性疼痛を引き起こすであろう4つの調節異常を定義しています。 生体リズムの乱れ。人間は概日リズムに従って食べて、寝て、活動します。これは、ホルモンの変動によって調整されています。これらのリズムは乱れたり、調節異常を来したりすることがあります。実際、睡眠障害は慢性疼痛を含む多くの健康問題と関連性があります。 フィードバック機能障害。上述したように、ポジティブフィードバックループとネガティブフィードバックループの調節異常は、アロディニアまたは自己免疫疾患を引き起こすことがあります。 不完全な回復。ストレス因子は同時に多くの体系に影響を及ぼします。急性または慢性のストレス因子のレベルが過剰であれば、最も弱い体系は、ストレス反応を完結するためのリソースを使い果たしてしまい、壊れてしまうのです。もしくは、体系がストレス因子への反応として、それ自体の設定値を変更し、その後正常挙動に戻ることができないかもしれません。例として、心的外傷後ストレス障害における過覚醒的警戒と過剰反応があります。 サブシステム間の協調性。ひとつの体系が調節異常に陥ると、その体系と他の体系との協調性も異常になります。 実用的な活用 ここまで読んでいただきありがとうございます。これらの情報を基に何をするべきか悩んでいらっしゃいますか? 個人的には、 システム論的視点は健康の問題を考えるのに興味深く魅力的な方法だと考えています。盲点となり得る部分が現実として見えてくるようになるからです。いくつかの点で希望を抱かせてくれるとも感じています。思いつくままにいくつかの例を紹介しましょう。 単純な疼痛と複雑な疼痛 単純で局所的な痛みもあれば、複雑で広範囲の痛みもあります。 背中にナイフが刺さって痛みがあることを想像してください。原因は単純です。誰かがそこにナイフを刺したのです!そして解決も簡単です―ナイフを抜けばいいのです。一般的な疼痛には、このように単純なものもあります。たくさん走った後に足が痛くなるのであれば、解決は簡単で、ランニングをやめて休めばいいのです。また、腰部が痛いのは、その部位に負担がかかりすぎるような動作の悪い癖があるからかもしれません。この場合、単に動きの習慣を改善すればいいだけです(単純なようで必ずしも簡単ではないかもしれません)。 しかし、残念なことに、痛みの多くはそう単純ではありません。長期間患っている腰痛があるとしましょう。その痛みは、動作や身体構造の病理学とはっきりした関係がなく起きるとしたならば、痛みの原因はより広範囲かつ複雑であることが考えられます。つまり、ひとつの因子が原因なのではなく、身体の主な体系間(免疫系、内分泌系、神経系)の関係性がバランスを崩すことにより痛みが起きるのです。この種の広範囲における調節異常が原因となっていることが知られている、糖尿病やうつ病、不安症、過敏性腸症候群、睡眠障害、自己免疫疾患、線維筋痛症、心的外傷後ストレス障害、慢性疲労などの疾患があればなおさらです。 これらのコンディションと関連する痛みには、痛みのある局部的な領域にのみ焦点を当てる治療ではおそらく効果が現れないでしょう。問題はそこではないからです。ピーター・オサリヴァンが述べたように、特定できない腰痛の“特効薬理論”を探し求めることは諦めるべきです。そうではなく、問題はサブシステムではなくスーパーシステムに関わるために、より複雑で広範囲のレベルに焦点を当てた介入を試みるべきなのです。食事や睡眠、運動、マインドフルなストレス低減法などがあります。これらは例えれば先に瓶に入れておくべき“大きな石”であり、姿勢を改善したりコア強化をしたりする、いわば小さな砂粒は、そのあとで集めればよいのです。 多くの人にとって、食事や睡眠、運動、ストレス対処には十分な改善余地があります。身体のさまざまな体系すべての連結性と慢性疼痛との潜在的な関係をもっと深く理解できれば、改善に向かってもっと積極的になるかもしれません。

トッド・ハーグローブ 2803字

システム論的視点からの慢性疼痛 パート2/4

ホメオスタシスとストレスとホルメシス 変化する環境に対応して均衡状態を保つために、複雑適応系は変化します。 ホメオスタシスは、生命の基本条件や最低条件を供給する均衡状態のことです。もし、身体が体温や体液量や血圧を一定値に保ち、ホメオスタシスを維持しなければ、死んでしまいます。 アロスタシスは少し異なるコンセプトで、環境に適応するために状態を変化させる動的プロセスです。よって、理想的な均衡状態とは、静的ではなく、常に動的に変動しているのです。 ストレスは、体系のバランスを崩す外的要因や内的因子に反応するために、リソースを使うプロセスです。たとえば、ケガはストレス反応を起こすストレス因子です。ストレス反応には、たいてい警告、抵抗、回復の3段階があります。 ホルメシスとは、少量の特定のストレス因子が有益で、多量であればかなりの有害を及ぼす時に起こります。 エクササイズは、最も良く知られているホルメシスの一例です。適量、つまり多過ぎず少な過ぎずの量が、ストレス反応系を調整、規制し、より健康的にし、将来遭遇する同様のストレス因子に耐えられるようになるために役立ちます。あまり良く理解されていませんが、このルールは、毒物や暑さ、寒さ、不安、菌などを含むほぼすべてのストレス因子にも適用されます。このように、健康は必ずしもこれらのストレス全般を限りなく除外すれば得られるというものではないのです。それよりも、多過ぎず少な過ぎず適量のストレスを求めるべきなのです。 ストレスレベルがちょうど良いかクロスフィットのコーチが確認している ストレスの時間が長過ぎたり強度が強過ぎたりすれば、リソースを補充するより速くストレス反応がリソースを使い果たしてしまうでしょう。下記で述べるように、こうなると回復不能(疲労)またはストレスがかかっているサブシステムの調節不全に陥ります。 状態や位相の変化 ストレス因子や、その他の環境からの入力に反応するために複雑系が変化できる、あらゆるパターンを表すために複数系理論家たちは「状態」という言葉を使います。これらの変化はたいてい非線形であり、つまり体系への小さな動揺が大きな変化を生むかもしれないし、大きな動揺がほんのわずかな変化しか生まないかもしれません。 著しく非線形な変化は位相シフトと呼ばれています。たとえば、水は気温が下がるとどのように反応するか考えてみます。気温が80°F(26.6℃)から40°F(4.4℃)に低下しても、水は冷たくなりますが、ほぼ同じ物質のままです。しかし、気温がここからさらに15°F(−9.4℃)低下すれば、位相シフトが起こり氷に変わります。 アイスキューブの位相シフト アロディニア(組織の損傷を伴わない痛み)のような特定の慢性疼痛は、ケガへの反応を担うスーパーシステムの行動の位相シフトとして理解されます。 誘引因子 中枢制御なしで複雑系はどのようにホメオスタシスを維持し、ストレスに対し適応反応しているのでしょうか? どのようにして制御は“出現する”のでしょうか? 誘引因子の概念に答えの一部があります。複雑系は、ほぼ無数の異なる状態へとそれ自体を変化させることが可能ですが、複雑系が引き寄せられるある特定の状態が存在します。これらの状態を誘引因子と呼び、安定性を提供します。 次から次へと変化する動的体系が、どのようにある特定の状態に惹き戻されるのか、一般的な比喩を用いて説明しましょう。不均等な地面の円形のくぼみ、または深いくぼみにボールがあるとしましょう。ボールを押したら、ボールはくぼみの中を無秩序に転がったり弾んだり動き回りますが、そのうち最終的にはくぼみの底に落ち着きます。このくぼみが誘引因子であり、ある限られた範囲内にボールを保持しようとします。不均等な地面に落とされたボールは、広めのくぼみに引き寄せられ、そしてそれが深いくぼみであれば、逃げ出すことが難しくなります。 痛みに関しては、体系が引き寄せられる誘引因子を痛覚感受性の正常値と考えることができます。ケガはその体系を動揺させ、損傷部位の周囲の感受性を(末梢性炎症と中枢性感作によって)即座に上げてしまいます。しかし、しばらくするとその体系の感受性は基準レベルに引き戻されるはずです。 では、ボールが強く押されくぼみの縁を越え、他のくぼみに入ったとしたらどうでしょう? これが位相シフトで、これは新たな誘引因子を確立します。 重篤なケガは、損傷部位が治癒した後でも痛覚感受性の規準レベルが正常に戻らないほどに、痛みの警告システムを乱すことがあります。慢性局所疼痛症候群(CRPS)は、防御スーパーシステムの重篤な調節異常を起こす位相シフトの一例です。 フィードバックループ 誘引因子の一部はフィードバックループによって作られます。フィードバックループは、ある時点での体系の状態がフィードバックし、それが次の変化を誘導するといったパターンです。フィードバックループはポジティブにもネガティブにもなりえます。 ネガティブフィードバックは、体系がある方向への変化を検出すると、それとは逆方向への変化を促進します。たとえば、サーモスタットが温度の上昇を検出したら、ヒーターをオフにする、またはその反対もありえます。つまりネガティブフィードバックループは、安定性に貢献するのです。 ポジティブフィードバックループでは、ある方向への変化が、それと同じ方向への変化を促進するように反応します。これは基本的に悪循環を起こします。暴動での群衆の動き、または畜牛の群れの暴走を想像してみてください。あっという間に制御不能になってしまいます。 ポジティブフィードバックループは、身体に非常に素早い変化をもたらします。これは、緊急時の対応に必要なことです。ポジティブフィードバックループは体系を均衡とは逆の方向へ動かすため、通常、均衡の崩れを防ぐ包括的なネガティブフィードバック体系の制御下にあります。 では、ケガに対して適切に反応するために、ネガティブフィードバックループとポジティブフィードバックループがどのように連携して働くのか例を挙げてみましょう。まず、ポジティブフィードバックループは危険に対して感度を急激に上げていきます:組織の損傷は炎症を起こし、侵害受容器の感度を上げ、より頻繁に発火するようになります。侵害受容器の発火が増えることで、神経性炎症が起こり、これによってさらに侵害受容器の感度を上げます。更に、侵害受容器レベルの上昇は脊髄後角を感作し、結果的に侵害受容器のメッセージをより脳へ報告するようになります。 このポジティブフィードバックループはケガに対する正常な反応で、緊急時の反応を開始するために必要な素早い変化を起こすのに役立ちます。ある時点で(特に損傷が治癒した後)、ネガティブフィードバックループがこの一連の過程に加わり、痛みの悪循環と炎症が継続しないようにしなくてはなりません。 ネガティブフィードバックループが疼痛レベルの安定化に役立つ方法のひとつとして、下行性調節を介すものがあります。この方法では、脳がオピオイド様物質を脊髄に送り、痛覚の信号を送らないように脊髄後角を抑制します。手を氷水に浸けることのように、ある種の長時間続く痛みによって(またエクササイズや、おそらくフォームローリングなどによって)下行性抑制は確実に誘発されます。興味深いことに、顎関節症や過敏性腸症候群、線維筋痛症など慢性疼痛に悩まされている多くの人には、下行性抑制を活性化してしまう問題があります。システム論的視点から、彼らのネガティブフィードバックループは、ポジティブフィードバックループを抑制するために働いていないということになります。 アロディニア、偏頭痛、そしてさまざまな自己免疫疾患において、ポジティブフィードバックループが大きな役割を果たします。このような症例では、体系は刺激によってあっという間に制御不能になってしまいます。

トッド・ハーグローブ 3386字

システム論的視点からの慢性疼痛 パート1/4

慢性疼痛は複雑で紛らわしい問題です。 ケガと深く関わる急性疼痛とは異なり、慢性疼痛は組織の損傷とは無関係なことが多く、睡眠や気分、思考、感情など多様な要因によって誘発されるようです。また慢性疼痛は、肥満症や不安症、うつ病、過敏性腸症候群などほかの健康問題と関連しています。 システム理論について学ぶことにより、慢性疼痛の複雑さと、その他の多症状障害との関連性をより深く理解することができるでしょう。私は最近、システム論的視点から疼痛とストレスについて議論した素晴らしい論文を2点見つけました。これらのリンクでこれら論文の全文を読むことができます。ここ & ここ 基本的な考え方は、ケガに対する防御反応を調整する“スーパーシステム”が調整異常となり慢性疼痛が引き起こされるということです。スーパーシステムは、さまざまなサブシステム、とりわけ神経系、免疫系、内分泌系などの動的相互作用に起因しています。 次に、このシステム論的視点からの慢性疼痛について学べることを簡潔かつ詳細に記述します。何より重要なことは、この慢性腰痛に対して私たちに何ができるかです。 まず、ちょっとした警告として、この論文はやや長めです。しかし、私がこれまで書いた中で最も有意義な記事のひとつと言えます。要点を解説するためにたくさんの写真やぴったりの例を挙げています。ですので、コーヒーでも用意して、人間の健康に関わるあらゆることについて深く理解することができるこの興味深い概念を学んでみましょう。 複雑適応系の定義 体系とは、ひとつの統一体を作るために相互に影響を及ぼし合う要素の集合体です。 複雑系は、相互に作用し合う複数の要素で構成され、それは個々の要素の行動の総和より更に複雑な集団的行動を生み出します。たとえば、経済や生態、気象、交通量、鳥の群れ、魚の群れ、個々の作用因子などの行動は単純ですが、これらが相互に作用し合うことにより、とても複雑にもかかわらず秩序立ったパターンを作り出します。 生命体のような複雑適応系は、環境に反応するだけではなく、目的を持ち主体的に行動するものです。よって、複雑適応系は、ある程度の作用や知性を持っています。 ハチの巣や昆虫社会、免疫系を例にとると、それぞれの場合、一つ一つの個体にはその体系の単純な挙動パターンにロボットのように従う役割がありますが、相互作用によって高い知性と適合性を持つ集団行動を生みます。 知性が体系の個々の要素から生じるのでなければ、この知性はどこから発生するのでしょうか? 中枢制御の出現と欠如 単体系の行動は、中枢コントローラーによって支配されています。たとえば、住宅暖房システムではサーモスタットがヒーターのオンやオフを制御します。 複雑系では、特定の領域で制御されているわけではありませんが、あらゆる異なった部分の複雑な相互作用から制御されます。たとえば、シロアリの巣は、信じられないほど洗練された建築プロジェクトですが、この建築方法を知っているシロアリは1匹もいません。そうではなく、個々の単純な行動のアルゴリズムに従って行動します。 シロアリは、ガウディがいなくても彼らのバージョンのサグラダファミリアを建てることができるのです。 これは、人間の知性の本質に関するダニエル・デネットの見方を思い起こさせます:知性が脳内のどの領域に存在するのかは特定できません。認識のための魔法のパワーや知覚データを受信するホムンクルスが組み込まれた“万能組織”が脳にあるわけではないのです。そうではなく、細菌よりとりわけ賢いわけでもない数十億の小さな細胞における複合体相互作用によって認識は発生するのです。 同様に、痛みの警報システムを調整する知性は、必ずしも神経系に収まっているとは限りません。そうではなく、免疫系や内分泌系など身体の他体系と神経系との相互作用から発生します。痛みを生み出す知性は、身体をはじめ脳の全領域に広く分布しているので、誰かを直ちに痛みから解放してあげられるような中枢制御スイッチはないのです。ですから、体系の全体としての行動を変える必要があります。 ネスト化(入れ子構造) 複雑適応系は、入れ子構造になっています。つまり、それはサブシステムで構成され、それらはさらに小さなサブシステムで構成され、またそれらはそれぞれのサブシステムを持つといったように続きます。たとえば、神経系は、脳や脊髄、末梢神経で構成されていて、これらはそれぞれ異なるタイプの細胞で構成されています。 各々のサブシステムはさまざまなレベルの作用や知性を持っています。たとえば、一つの神経細胞は、隣接するどの神経細胞とシナプスで連結するか、ある意味“決める”ことができます。シロアリが掘る場所を決められるように。 入れ子状になった体系における分類体系のさまざまな階層に注目してみましょう。複雑系のそれぞれの階層にクローズアップしたりズームアウトしてみます。全体の中のごく一部の行動について考察することは、それが単に一部の行動に過ぎないことを念頭に置いておけば、還元主義的でも欺瞞でもありません。 多くの場合、この層ばかり治療されています。 では、痛みの原因を調べる際、仮に侵害受容器に焦点を当てるとします。これらは、痛みの警告スーパーシステムの中でも比較的賢くないロボットのような小さいサブシステムですが、ある程度の知性があり、特定の危険を脳へ報告するかどうか“決める”ことができます。局部的な炎症や過敏性を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬を服用することにより、この意志決定行動を変えることができます。 脊髄後角は、もっと動く部分のある複雑なサブシステムですから、より知性と作用があると言えます。ここで侵害受容性シグナルを末梢から受け取り、それから脳へ伝達するか決定します。末梢神経のように、脊髄後角の感度も調整することができます。たとえば、脳は下降調整することで脊髄後角の感度を下げることができるのです。 脳のような上位の階層であるスーパーシステムを見てみると、痛みに対する制御と知性はかなりの高位階層であることに気がつきます。知性が特定の領域に存在するのではなく、素晴らしく複雑に絡み合った連携網にあるという理由から、変化を生み出す際に、単純にスイッチをオンオフするということはありえません。そこで、なぜ複雑系はその行動を変化させるのか?という問いかけに導かれるかもしれません。

トッド・ハーグローブ 2734字

究極のコンディショニングガイド パート2/2

8つの基本的なコンディショニングの原則(続き) 高強度&低強度を使う ここ数年間、“痛みなくして得るものなし”の教義が、カルト的に盛り上がっているようです。これに平行して、強度が高ければ高いほど良いという考え方が出てきました。 反対に、低強度メソッドは評判が悪くなっていきました。高強度を使い、半分の時間で同じ効果を得る事ができるなら、なぜ“低負荷、低速度”でトレーニングするのでしょうか? 高強度、低強度のどちらも使うタイミングと場所があるというのが真実です。 どちらの方法も使用するべきであるだけでなく、高強度と低強度の方法を組織化する方法もまた重要になります。 例えば、低強度トレーニングは、かなり疲れる高強度の日の後の神経系システムの回復を助けてくれますが、それのみをトレーニング手段として使用してしまうと、オーバーユーズ障害を引き起こし、更なる向上の妨げにもなりかねません。 同様に、高強度のトレーニングでは、コンディションを向上させ、無酸素パワーの貯蔵量を増加するために十分な刺激を与える事ができますが、常にそればかりを使用すると、オーバートレーニングになり、パフォーマンスを低下させることもあります。 私は、ロードワーク2.0のような記事や、自書アルティメットMMAコンディショニングによって低強度の方法を再び話題にした者として知られていますが、本当は、どんなスポーツでもストレングス、パワー、持久力のバランスが必要であり、複数のレベルの強度が必要になるのです。 ここ数年、低強度により多くの注目を寄せているのは、単に低強度トレーニングが最も非難を浴びているからです。 後進的に聞こえるかもしれませんが、誰かに持続可能なトレーニングと長期的計画性の重要性を納得させることは、なんとしてでもワークアウトを終了するように盛り上げることよりも難しいことなのです。 ポイントとなるケース:クロスフィットの流行 常に高強度のトレーニングを数ヶ月以上続けると、必然的にプラトーに到達するか、遅かれ早かれ傷害に繋がってしまうため、幸運なことに、この波は後退し、よりバランスのとれたアプローチになってきているようです。 より賢く、より理にかなったトレーニングのアプローチとは、様々な強度を時間をかけて賢く使用し、徐々に身体を壊してしまうことなく強化していくことなのです。 健康でいること まず何よりも、傷害予防の鍵となるのは、多面的なアプローチをすることでそれを達成できるということを理解することです。 フォームローリング、ストレッチ、徒手療法、修正エクササイズなどはどれも重要なパズルのピースの一つですが、全般的なストレス管理、トレーニングのモニタリング、良質な栄養プログラム、十分な睡眠などの価値は、健康でいることと傷害予防に関して言い過ぎることはないでしょう。 傷害予防には本当にこの2つのことが重要ですーすべてを正しい考え方で始め、身体を理解することです。身体がどのようにトレーニング、睡眠、栄養、精神的ストレス、遠征などに反応するのかに注意を払うことで、身体を理解することになります。 すべてのアスリートは、これらの要素を記録し、詳細なトレーニング日誌を時間をかけてつけ続けるべきです。 考え方についてもっとも大きなものは、“より多いことが常に良い”という、かなり多くのアスリートのトレーニングプログラムにこびり付きすぎている考え方を避けることです。適量で十分であり、それを超過した量は、有益というよりむしろ有害になることがほとんどです。 では、“適量”とは正確にどれくらいなのかをどのように知るのでしょうか? それでは、次に話す原則から始めます:モニターし管理する。 モニター&管理 今日、着用可能な機器技術が安価で手に入れやすくなり、急速に広まったため、プログラムをより効果的にするためにすべてのアスリートが自分たちをモニターすることが可能になってきています。 心拍モニター、心拍変動、活動追跡機、GPS、PUSHバンドなどのおかげで、身体について理解し、個人に特化したプログラムを作成するために使用できる不変的なバイドフィードバックをモニターし、管理し、収集することが以前よりも簡易になりました。 この種の技術が機能するためには、2つの真に重要な鍵があります: 最初に、何から何まですべてモニターすることから始めてはいけません。どうするべきかわからない程のデータを収集することは、何よりも更なる混乱へと導きます。時間をかけて、より多くの道具をモニタリングツールボックスに組み入れることができますが、簡単なものから始めましょう。 1つのモニタリングツールを始めたいのであれば、バイオフォースHRVのような心拍変動が始めるのに最も適しています。というのも、それは“トレーニングへのレディネス”を計測し、トレーニングから栄養、睡眠まですべて野影響を1つの数字で正確に計測するのに役立つからです。 そこから、次に追加するツールは、トレーニングセッションの量、強度、ストレスを正確に計測できるものが良いでしょう。PUSHバンドとポーラーRS300のような心拍モニターは、このカテゴリーにおける最良の2つの製品です。 心拍モニターは、すべての心臓血管系のトレーニングの効果を正確に計測できますし、ストレングストレーニングに関しては、PUSHバンドで同じことが言えます。 この種の技術を機能させるための2つ目の鍵は、実際にそれを使い始めることです。 目的地への到達をサポートしてくれるGPSを使用しなければ、全国横断できないのと同じように、実際にいつ結果が現れるのかを思案しながら、毎日漠然とプログラムを行う必要はありません。 チームでも個人でも、多くのデータを収集しているにも関わらず、実際にそれを利用できていないことが多すぎます。費用と時間をかけてデータを収集するのであれば、それを実際に利用することで、結果を向上させたほうがよいでしょう。 ほとんどのトレーニングプログラムで行われている憶測の量を減らすことで、モニタリングと管理戦略が効果的に機能するはずです。今日するべきことを推測する、あるいは、本当に向上するのかどうか迷ったりするべきではありません。 目的地への到達をサポートしてくれるGPSを使用しなければ、全国横断できないのと同じように、実際に結果が現れる時を思案しながら、毎日漠然とプログラムを行う必要はありません。 今あなたがするべきことはこれです。 15年以上、私が上記に記した原則に従うのみで、それ以上のことはせず、すべてのレベルのアスリートのコンディショニングを向上させる手伝いをしてきました。 コンディショニングに関して言えば、魔法の公式も、極秘のエクササイズも、魔法の薬もありません。ただ、これらは本当に必要ではないということが真実です。なぜなら、私が上記に記したアウトラインに沿えば、基本は信じられないくらい効果的なのです。 時間をかけて、ご自身のプログラムに何が足りていないのかを評価してみてください。 あなたが準備する必要のある特別な要求を本当に理解していますか? あなたが使っている方法は確かな科学に基づいていて、身体を正しい方向に適応させていますか? 現在、HRVのような最新技術の有利性を活かして、推測を無くし時間を無駄にしないようにしていますか? これらの質問のどれかに対する答えがいいえであれば、一歩ずつプログラムを変えることから始めてみましょう。コンディショニングを妨げている原因を見つけ、それを改善するために必要なことから変えていきましょう。 目的や能力に関係なく、コンディショニングは改善できることに疑いは無く、この記事の中で記してきた簡単な原則に従うだけで、素早く改善することができます。 さあ、仕事に取りかかる時間です。

ジョール・ジェイミソン 3374字

究極のコンディショニングガイド パート1/2

世界中の様々なスポーツのトップアスリートたちと15年以上一緒に仕事をしてきた経験から抽出された8つの基本的なコンディショニングの原則があります。 そのスポーツの要求を知ること これは単純に思えますが、かなり多くの人がそれぞれのスポーツにおいて間違ったエネルギーシステム(このことについては、#5で詳細に話します)のトレーニングに焦点を当てていることには驚かされます。そのスポーツが身体に課す特別な要求はなんでしょうか? それは、主に短時間で爆発的に出力するものか、または、小さなパワーをより長い時間かけて出力するものか、それとも、その両方でしょうか? すべての原則のなかで最初の最も重要なものは、そのスポーツ、または、特定の目的の要求するエネルギーシステムを完全に理解することから始めなければならないということです。 ここにヒントがあります:そのスポーツにおいて60秒以上の活動があるのであれば、それは有酸素の要素を多くもっていることになるでしょう。 すべての原則のなかで最初の最も重要なものは、そのスポーツ、または、目的の要求するエネルギーシステムを完全に理解することから始めるべきだということです。 言い換えれば、格闘家で5分間3ラウンドの準備をするのであれば、なぜ8-10ラウンドのスパーリングを続けてするのでしょうか?8-10ラウンド行いたいのであれば、まず5分間3ラウンドのトレーニングを行い、10-15分、あるいはそれ以上の休息をおいて、また3ラウンドを行うというようなものが、より適した方法でしょう。 総エネルギー必要量と、そのスポーツの環境を完全に理解し、そしてそれに合わせた身体の準備を行えば、さらに大きなトレーニング効果を得られるでしょう。 そのスポーツがなにを要求しているのかを理解すれば、どこを向上させる必要があるのか判別することができます。これが次のポイント2に導いてくれます。 弱点を評価する 私たちは自分たちの優れているところを強化することを好みますが、それではバランスのとれたコンディショニング全体を考慮していることにはなりません。彼らは自分たちのすでに得意なところのトレーニングのみに時間を費やし、最も苦手としている部分を無視してしまうがために、長年成長できていないアスリートがあまりにも多く存在するのです。 これは、厳しいけれど、賢くないトレーニングの為の素晴らしいレシピになってしまいます。 フィットネスを評価することは、非常に重要であり、そのスポーツの範疇における弱点を理解し最小化することができます。 繰り返しになりますが、そのスポーツが要求するものを集中的にトレーニングするべきであり、評価で持久力欠如が見つかったとしても、砲丸投げのトレーニングをしているのであれば、長距離のランニングをすることには、意味がありません。 評価はどのようなものであるべきか? それぞれのスポーツによって異なる、というのが答えになります。しかし、心にとめておく最も重要なことの1つは、その評価がそのスポーツのパフォーマンスに関連がある、あるいは、目標と相関があるべきだということです。結果が現実世界のパフォーマンスと全く関連しなければ、すべてのテストも評価も意味はないのです。 トレーニングプログラムに従う 行きたい場所への計画図なしに、盲目的に進めていくことは時間の無駄です。トレーニングし、望んでいる結果を得るための、はるかに効果的な方法があります。 トレーニングは組織化されるべきであり、そうすることで、それぞれのワークアウトの利点が時間と共に積み重なっていきます。つまり、日々のワークアウトの裏にある理論的根拠と、それがより大きな全体像においていかに適合しているのかを、ジムに行く前に明確に定義するべきであるということです。 ただジムに行き、一生懸命トレーニングして、結果がでることを期待しているだけでは決して十分ではありません。それはまるで、株式市場にお金をやみくもにつぎ込み、ただ投資をしているというだけで、大きな見返りを期待しているようなものです。 成功するには、知的なアプローチをするべきで、お金を増やしたいのであれば、賢くお金を投資する必要があるように、あなたが本当にコンディションを向上させたいのであれば、賢く時間を使う必要があるのです。 どこかの誰かがオンラインにアップしている“すべての人に適した”トレーニングを使用することは、決して最も効果的なトレーニング方法ではありません(そして、多くの場合、危険です)。あなたのプログラムは、シーズンや、身体的制限、傷害歴などを含め、あなたの目的に特異的であるべきなのです。 要するに、あなたのために設計されているプランを立てることです。 方法と目的が合致する 単純な真実です:すべての方法が平等に作られているわけではない。 かなり多くの人達が、プログラムを設計する過程を、エクササイズを選ぶことのように考えていて、エクササイズの魔法のコンビネーションさえあれば、全て上手くいくかのように考えているようです。 しかし、真実としては、エクササイズとは正しく適応されたときにだけ効果的であり、だから、トレーニング方法が有用になるのです。 方法とは、エクササイズをどのように行うべきなのかを定義しており、それはつまり、最終的にそれらが産み出す効果を決定づけます。 パフォーマンスの目的、能力、使用できる道具などにもよりますが、あなたが達成したい目的に対して最も適した方法があると同時に、単純に適していない方法があるのです。 そのトレーニング方法がどのようなものなのか、それが何を変化させるのか、身体がどのように反応するのか、トレーニングプログラムの中にどのように適合するのかなどについて理解するところから始めるべきです。 それだけではなく、これらの方法はどのトレーニング時期であるかによって変化させるべきです。 動きを改善する フィットネス業界ではここ数年の間、基礎的にしっかりとした動きの重要性というものがかなり高まってきています。ほぼ一夜にして、“ファンクショナルトレーニング”という言葉が業界に席巻し始めたようです。 様々な意味で、強調されることが変化したことで、悪いことよりも良いことに繋がったことは疑いありませんが、現実世界におけるパフォーマンスやコンディショニングに移行できない動きの部分に焦点を当てる傾向もあります。 つまり、負荷のない自重での動きを改善するために評価し、トレーニングすることは確かに意味があり、よいフィードバックもありますが、動きの質はまた、高負荷で、疲労度の高い状態で、実際のスポーツの動きの中で評価される必要があります。 すべての動きにおいて、より基本的に正しく、効率的であることがコンディションを改善させることには疑いはありませんが、それらの動きについて最も重要なことは、その動きが実際のスポーツのなかで行われるのかということなのです。 つまり、幅広く一般的な動きのパターンだけでなく、スポーツや目的に本質的に特化した動きを含んだ動きの評価をするべきだということです。 これがもう一つの大きなヒントであり、今後の記事でより多く語ろうとしていること:疲労状態での身体の動きはトレーニング可能である。疲労した状態へ身体を追い込むことは、メンタルタフネスの挑戦だけではなく、むしろ身体が疲労にどのように反応するのかを再検討する機会を与えてくれると考えるべきです。 これはつまり、真の“ファンクショナルトレーニング”とは何なのか、あるいは、少なくともどうあるべきかということになります。

ジョール・ジェイミソン 3315字

スプリントのためのプライオメトリックトレーニング パート2/2

メタ分析 趣味としてトレーニングを行うアスリート 序論 プライオメトリックスは、スプリント速度を向上するために広く調査されているため、様々な研究のメタ分析が可能である。ルンプおよびその他(2014年)は、趣味としてのアスリートにおける、スプリントパフォーマンス向上のための異なるトレーニング方法の影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らは、トレーニング方法を特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)、および非特異(プライオメトリック、レジスタンストレーニング、及びバリスティックトレーニング)へと分類した。彼らは、この集団において、スプリント速度を向上するために、特異および非特異両方のトレーニングは同様に効果的であったということを発見している。さらに彼らは、プライオメトリックスは(レジスタンストレーニングやバリスティックトレーニングを含む)全ての非特異な方法の中でも最も効果的であったということを発見している。さらに、サエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、プライオメトリックトレーニングの効果を評価するメタ分析を行ったが、この調査はトレーニングされていない個人とトレーニングされた個人の両方において行われており、トレーニングされた被験者およびアスリートに対するサブグループ分析が報告されていなかった。また、トレーニング経験の程度は、研究者により正式に調査されておらず、結果の不均一性に貢献していた。ゆえに、アスリートのためにこれらの研究結果から強い結論を引き出すには慎重である必要がある。とはいえ、このメタ分析において、下記に提示してあるように、サエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、趣味としてトレーニングを行うアスリートに関連する可能性のある、いくつかの興味深い研究結果を報告している。 プライオメトリックスの影響 最初にサエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、プライオメトリックスは、トレーニングされている個人、およびされていない個人の両方において、確かにスプリントパフォーマンスを向上するという結論を出した。サブグループ分析の実行も、含まれていた被験者の経験のレベルから生じた異質性の分析も無かったが、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおける影響は、より具体的なアスレチック集団において、より明確に定義されたメタ分析である他の入手可能な文献の総説から確認することができる。(例:ルンプおよびその他、2014年)プライオメトリックスと他の方法の間の比較は下記において論じられている。 プライオメトリックスの用量反応 次にサエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、トレーニングされている、およびされていない個人の両方において、スプリント能力を向上するためにプライオメトリックスを使用することは用量反応であるという結論に至り、過不足がある場合と比較し、適正な用量も適用することは、より有意に優れていると提議した。彼らは、2週間でおおよそ3回のセッション、1セッションにつき80回以上のジャンプが最適な用量であると提議している。これらの研究結果は、臨床試験によりある程度支持されている。これもまたトレーニングされていない被験者のみにおいて行われてはいたが(サエス・ヴィラリアルおよびその他、2008年)、1週間に2セッション、1セッションにつき60回のジャンプが最適な量であると発見されていた。これらの発見は、幅広い対象者全般に確固としているように見えるが、趣味としてトレーニングを行う成人に関しての正確な用量反応は明確ではない。 プライオメトリックスの際のエクササイズ選択 3番目にサエス・ヴィラリアルおよびその他(2012年b)は、トレーニングされている個人、およびされていない個人の両方において、プライオメトリックスの際のエクササイズ選択は重要であると結論付けた。特に彼らは、様々な異なるプライオメトリックス、もしくは単にスクワットジャンプおよびドロップジャンプの組み合わせのどちらかを使用することは、単独のスクワットジャンプもしくはドロップジャンプのみの使用と比較し、より大きな影響を及ぼすということを発見している。これに対する正確な理由は明確ではないが、それぞれのエクササイズ選択によりトレーニングされる質の差違と関係があるかもしれない。さらに、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいても同様の影響が観察されるかどうかは明確ではない。 高度にトレーニングされたアスリート 上記のようにメタ分析は、プライオメトリックスは、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいて、明確にスプリント能力を向上することが可能であるということを報告している。高度にトレーニングされたアスリートにおいては明確さに欠ける。ルンプおよびその他(2014年)は、高度にトレーニングされたアスリートにおける、スプリントパフォーマンスに対する様々なトレーニングタイプの影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らはトレーニング方法を、特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)および非特異(プライオメトリックス、レジスタンストレーニング、そしてバリスティックトレーニング)に分類した。彼らは、特異および非特異な両方のトレーニング方法は効果的であるということを発見している。しかし彼らは、趣味としてトレーニングを行うアスリートと比較し、高度にトレーニングされたアスリートに対しては、プライオメトリックスのような非特異な方法は効果が低く、(スプリントもしくはレジステッドスプリントのような)より特異な方法の方がより良いということを記述している。彼らは、高度にトレーニングされたアスリートにおいては、既に筋力、パワー共に発達した基板を持ち、これは、追加のプライオメトリックスにより更に向上しなかったことに起因している可能性があると示唆している。 アスリートにおけるプライオメトリックスのスプリント速度への影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングされた成人アスリート 介入 – プライオメトリックス 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、ノートレーニングコントロール 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:ウィルソン(1993年)、ワグナー(1997年)、リマー(2000年)、キメラ(2004年)、ムーア(2005年)レイメント(2006年)、ドッド(2007年)、インペリゼリ(2008年)、トーマス(2009年)、シェリー(2010a年)、セダーノ(2011年)、アラジ(2011年)、ナカムラ(2012年)、ロッキー(2012年)、シェリー(2014年)、ブリット(2014年)。これらの研究のほとんどは、プライオメトリックスは、アスリートにおけるスプリントパフォーマンスを向上するということを発見している。使用されたプライオメトリックスの種類は、従来のデプスジャンプからハードルジャンプおよび標準のカウンタームーブメントジャンプにまで及んでいた。

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スプリントのためのプライオメトリックトレーニング パート1/2

目的 この記事は、趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングを行う成人アスリートのいずれかにおいて、プライオメトリックスは、スプリントスピードを向上するためにどの程度効果的であるかということを提示している。 背景 序論 スプリントとの関連において、プライオメトリックスは、伸張・短縮サイクルを含む爆発的な下半身の複合動作である(マルコヴィッチおよびミクリック2010年による論説を参照)。それらは常に一般的に無負荷もしくは非常に低い負荷にて行われており、そこがバリスティックレジスタンストレーニングとの相違点である。周知のように、「プライオメトリックス」という言葉は最初、ロシアのジャンプコーチ、ベルコシャンスキーにより広められた。ベルコシャンスキーは、ジャンプ練習とレジスタンストレーニングから成る当時の標準の方法を使用し、既に有意な成果を得たアスリートのジャンプ能力を向上する方法を探究したいと考えた。ベルコシャンスキーは、短い接地時間と、三段跳びにおけるよりよいパフォーマンスとの間に相関関係があるらしいことから、これは、より高い剛性(もしくは、弾性エネルギーを貯蔵し、放出するより優れた能力)は、ジャンプ能力を向上するための鍵であり得ると示唆している可能性があると結論付けた。ゆえに彼は、エキセントリック筋収縮動作からコンセントリック筋収縮動作へのより早い切り替えができる能力を向上し、接地時間を短縮するために(ファッキオーニ2001年による論説を参照)、彼らのアスリートに対しデプスジャンプの使用を開始した。 幾人かのコーチたちは未だこのような観点からプライオメトリックスを考えているが、現代の文献における使用のされ方は大幅に変化し、その意味はいくらか広がっている。 動作のメカニズム 序論 スプリントは、エキセントリックおよびコンセントリック筋収縮動作を含んでいるため、ランニングの際の最大力を生成する能力もまた、伸張・短縮サイクルおよび下半身の剛性の作用に依存している。多くの場合、そのようなプライオメトリックスは、筋力とパワー、もしくはその他関連のある筋力の高速表現の質を橋渡しするための鍵であると述べられている(例として、マクリーニー、2005年による論説を参照)が、これがどのように正確に介在しているのかは明確ではない。それはベルコシャンスキーが予測したように、剛性の変化により介在しているのかもしれない。あるいは、高速エキセントリックおよびコンセントリック筋収縮の際の、弾性エネルギーを貯蔵、放出するための能力の向上を引き起こす、他の生理的な適応が起こるのかもしれない。 速度および加速度の影響 スプリントの速度、およびアスリートが加速しているか否かが、弾性エネルギーの貯蔵および・もしくは剛性の程度に影響を及ぼす可能性があるということは、スプリントパフォーマンスにとって重要なことである。速度に関しカヴァーニャ(2006年)は、スプリントの遊脚相終期における、股関節伸筋、および膝関節屈筋の伸張速度の増加は、速度の上昇と共に増加するということを発見している。これは、筋腱単位の弾性要素は、より速いランニング速度において力生成により貢献すると示唆している。ゆえに弾性エネルギー貯蔵の向上を助けるトレーニング方法は、低速に比べ、高速において、よりいっそうスプリントパフォーマンスの向上を助ける可能性があると期待できるかもしれない。さらにロバート(2002年)は、いくつかの動物実験が、一定の速度でのランニングの際、腱が順次に大幅に長さを変化させている間、筋肉はわずかに長さを変えるが、大体が等尺性に収縮していると報告しているということを発見している。これは、コンセントリック収縮において筋肉が大幅に短縮する加速走とは大きく異なっており、筋腱単位の弾性要素は、加速スプリントと比較し、一定速度のスプリントにおいてより力生成に貢献するということを示唆している。ゆえに、弾性エネルギー貯蔵を向上することを助長するトレーニング方法は、加速スプリントの際と比較し、最大速度スプリントの際によりいっそうスプリントパフォーマンスを向上する助けになる可能性があると期待できるかもしれない。 ドロップジャンプの有益な影響 プライオメトリックスが効果的である方法のメカニズムに関する現在の理解から、プライオメトリックスは最大速度スプリントに対し最も効果的であろうということを前提とすると、ある研究が、ドロップジャンプの高さは、様々な水平および垂直ジャンプテストの中においても、最大スプリント速度を予測する最も効果的な方法であると報告している(ビサスおよびハーヴェネティス、2008年、ケールおよびその他、2009年、マッカデイおよびその他、2010年)のは、興味深いことである。ドロップジャンプは、剛性の増加により、弾性エネルギー貯蔵を増幅し、反応性の高い筋力を向上する最も効果的な方法であると信じられている。バランスのために、他のある研究が、ドロップジャンプのパフォーマンスはスプリントパフォーマンスと強い相関関係があるわけではないということを発見している(例:サライおよびマルコヴィッチ、2011年)ということに留意することは重要なことである。またいくつかの研究は、水平ジャンプはスプリントパフォーマンスと高い相関関係があり(例:ホルムおよびその他、2008年、ハドギンスおよびその他、2012年)、垂直跳びと比較し、スプリント能力のよりよい予測因子である(例:マウルダーおよびクローニン、2005年、メイランおよびその他、2009年、ハビビおよびその他、2010年、ロビンズ、2012年、ロビンズおよびヤング、2012年)ということを発見していることも注目すべきことである。全体的には、ドロップジャンプは、接地時のエキセントリック段階において貯蔵されるエネルギーの量の増加により、最大スプリント速度を上昇させるために効果的なトレーニング方法であるようである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2515字