悪い姿勢は腰痛を起こす? パート2/2

なぜ、痛みと姿勢には関連性がないのでしょうか? 上記のエビデンスは驚きであり、常識を覆すものです。なぜ痛みと姿勢に関連性はないのでしょうか? 姿勢が痛みにさほど関係ないのはどうしてなのか、少なくとも説得力のある理由をここに3つ挙げます。 1. 時間の経過とともに組織はストレスに適応する 悪い姿勢が痛みを発生させるという仮説は、特定の部位に過剰な機械的負荷がかかるという考えを基にしています。これが微小損傷を起こし、時間の経過とともに累積されます。これにはうなずけますが、組織には負荷への適応力があることが考慮されていません。 ウェイトリフトで負荷のかかる筋が強くなるのと同様に、特定の姿勢によって、関節や靭帯、腱も局部的なストレスに耐えられるように適応するのです。[1] 2. 組織の損傷と痛みはイコールではない 姿勢が痛みとは関係のない二つ目の理由として、悪い姿勢が組織の損傷を生むことがあっても、組織の損傷と痛みは同等ではないということがあります。 痛みを伴わない多種多様な組織損傷の罹患の研究は数多くあります。これらは、背中や肩、膝に痛みを伴わない人のかなりの割合 (20-50%) が、椎間板の膨隆や回旋腱板の断裂、半月板損傷などを患っていることを一貫して示しています。[2] つまり、30歳以上の人のMRIを撮影すると、それがどの部位でも、たとえ痛みのない部位であったとしても、著しい損傷を見つける可能性は非常に高いのです。 なぜでしょう? 痛みは複雑で、組織の損傷は痛みを起こすひとつの原因にすぎません。[3] よって、姿勢が何らかの形で長期的な組織損傷を起こしたとしても、必ずしもそれが痛みという結果になるとは限らないのです。 3. 人それぞれ “悪い”と思われる姿勢が痛みとは関係がないという三つ目の理由は、身体の構造が人それぞれ異なるからです。実際に人の骨格を見てみると、骨の形や脊柱の弯曲にかなりの差異があることが分かるでしょう。非対称性や不規則性は当たり前であり、例外ではありません。 ある程度、骨のサイズや形が、立ったり座ったり動いたりするために最も効率の良い快適な姿勢を決定づけるのです。ですから、ある人にとっては“機能不全な”アライメントでも、別の人にとっては最適なのかもしれません。 このような個体差があるわけですから、自分の姿勢を他の理想的なモデルと比較し矯正しようとすることは、本質的に問題があります。 姿勢を心配する代わりに何をするべきか 上記のエビデンスでは、痛みの治療や予防の方法として、ある理想的なモデルに合わせて静的姿勢の誤差を見つけ出そうとすることは、時間の無駄かもしれないことを示唆しています。 では、姿勢がそれほど重要ではないとすると、休息時や運動時の身体のアライメントについて全く気にする必要はないということを意味しているのでしょうか? 答えは“ノー”だと私は思うのです。 1. 大きな力が加わる時には正しい姿勢がとれているか確認 姿勢についての研究が、生体力学とフォームの良さはどうでも良いということを示していると誤解しないでください。激しい運動は、単に座ることや立つこととは異なり、適切なアライメントで行うことに、さらに注意を払う必要があるでしょう。 動かず座っているときや立っている間、関節にかかる機械的負荷はとても小さいものです。しかし、身体は長年の間、一日何千回もこのような習慣的な負荷を受け、そしてそれに対応するためにうまく順応します。 一方、高重量のデッドリフトなど負荷の大きいエクササイズでは、機械的負荷が非常に大きく、これら特定の負荷に身体が順応する機会もあまり多くなかったことでしょう。 高重量のデッドリフトでは姿勢やアライメントが重要になります。ジャンプから着地する時や、スプリントやウェイトリフトなど大きな機械的負荷が加わるような運動をする時にも重要です。これらの場合、身体にかかる負荷を分散させ、ケガのリスクを減らし、パフォーマンスを向上させるためにも、生体力学と脊柱のアライメントが理想的であるかを意識的に努力し、または確実にするために指導することが賢明です。 2. 動きを改善しよう 立位や座位が外見上どうであるかよりも、どのように動くかがより重要です。職場で胸が凹み丸くなって座っていても心配いりません。しかし、オーバーヘッドリーチやローテーション、オーバーヘッドプレスなどの機能的な動きができるように、胸部の完全な伸展可動域を保つことを忘れないようにしてください。 3. 姿勢のバリエーションを広げよう 同じ姿勢で何時間も座ったり、何時間も立ったりしなくてはならない人は多いものです。もし、これがストレスや痛みを生むようであれば、姿勢を少しだけ変化さるようにした方が、常に“完璧”な姿勢をとるよりも快適であり得策です。姿勢を変化させることによって、体重を支持するストレスをいつも同じ部位に集中させるのではなく、いろいろな部位に分散させます。頻繁に休憩をとり、常に動いているようにしましょう。ある特定の姿勢が腰痛を悪化させる場合、他の選択肢を試してみましょう。 良い姿勢なんて忘れよう:良い動きのことを考えよう まとめると、静的な姿勢を理想に沿うように変えようと心配しすぎないことが肝心です。悪い姿勢が腰痛の誘因ではなさそうです。その代わりに、快適な姿勢をとり、常に動き、身体の機能を向上するように努力し、負荷の高いエクササイズを行う時はアライメントやフォームを正しくするようにしましょう。 参照文献 1. http://en.wikipedia.org/wiki/D...'_law 2. http://www.bettermovement.org/... 3. Melzack, Katz (2012) Pain. Wiley Interdisciplinary Reviews: Cognitive Science Volume 4, Issue 1, pages 1–15, January/February 2013. http://onlinelibrary.wiley.com...

トッド・ハーグローブ 2352字

悪い姿勢は腰痛を起こす? パート1/2

悪い姿勢は腰痛を起こすとか、腰痛を治すには姿勢を改善しなさいという意見を、恐らくみなさんは聞いたことがあるのではないでしょうか。理学療法士やカイロプラクター、パーソナルトレーナーなどからのこのような意見を、インターネットの至る所で見つけることができます。Googleで“姿勢と痛み”と検索すれば400万件もヒットします。 こんなに多くの姿勢監視員がパトロール中ですので、遅かれ早かれ権威ある監視員にあなたの姿勢も注意を受けるでしょう。 たとえば、比較的背中が丸く(後弯)なっているとしたら、“上位交差症候群”があると言われるかもしれません。これは、肩が前方へ丸まり、胸が凹み、頭が前方に出ているというパターンです。一般的な“矯正”としては、胸のストレッチと左右の肩甲骨の間の筋群の筋力強化があります。 また、腰の反りが比較的大きい(前弯)としたら、“下位交差症候群”があると言われるかもしれません。これは、骨盤が前方に傾き(骨盤前傾)、腹部が前に出っ張っているというパターンです。多くの人が推薦する矯正としては、腹部と臀部の筋力強化と股関節屈筋群のストレッチ、そして1日を通して腹部を凹ましたりコアを活性化し続けるというものです。 ほかにも頻繁に耳にする考え方として、非対称性が痛みを生むということがあります。たとえば、セラピストは骨盤のアライメントの捻りや歪みを見つけ出し、矯正しようとします。なぜなら、それが背骨を回旋させたり曲げたりしてしまうことを心配するからです。また、一方の下肢長がもう一方より長いことなどを気にするセラピストもいます。それは、その下肢長差が骨盤の左右の高さを変えてしまうからです。 これらの考え方には直感的な訴求力があり、また、数多くの専門家たちから提唱されています。しかし、これらにはエビデンスの裏付けがあるのでしょうか? 姿勢を分析したり、理想的なアライメントとされるものと比較し歪みを矯正することに時間を費やすべきでしょうか? これらの疑問に答えることに役立つ、いくつかのエビデンスをみてみましょう。たいていの書籍や論文からは知り得ないことかもしれませんが、痛みと姿勢測定との関係に注目している研究が数多くあります。しかし、ほとんどの研究で関連性は一つも見つかっていません。では、みてみましょう。 研究によって姿勢と痛みの関係に何があるか分かったのでしょうか? 腰痛と姿勢の関連性を探るリサーチでは、一般的にいくつかの異なる研究設計を使います。 横断研究では、研究者らは被験者となる人を、腰痛ありと腰痛なしのグループに分けます。そして、下肢長差や骨盤の傾斜、腰椎、胸椎、頸椎の弯曲度など骨盤と脊柱のアライメントを計測する方法として、X線画像や放射線写真などを使用します。これらの計測後、研究者らは、腰痛ありと腰痛なしのグループで姿勢に顕著な差があるかどうか調べます。 前向き研究では、研究者らは腰痛なしのグループの姿勢を分析し、ある特定の姿勢の被験者が将来的に腰痛を発症する可能性が高いか低いかを調べます。 これらの研究の結果が完全に明確ではないにしても、ほとんどの研究では、悪い姿勢が腰痛を起こすという主張を裏付けしていません。下記に代表的な所見をまとめます: 下肢長差と腰痛の関連性はなかった。 [1] 重度、中度の腰痛と腰痛なしの3つの男性グループの合計321人において、腰椎前弯や下肢長差に顕著な差はなかった。[2] 頸椎の弯曲の測定値と頚部痛に関連性はなかった。[3] 腰痛ありと腰痛なしの600人を対象にした腰椎の前弯と骨盤の傾き、下肢長差、腹筋とハムストリングと腸腰筋の長さにおいて顕著な差は見られなかった。[4] 非対称性の姿勢、胸椎の過剰後弯、または腰椎の過剰前弯をもつ10代の若者において、姿勢が“良い”他の同年代の若者と比べ、大人になってから腰痛を発症する傾向はなかった。[5] 妊娠中に腰痛の弯曲がより増加した妊婦に、より腰痛を発症する傾向はなかった。[6] 無理な姿勢を強いられる職業に従事している人だからといって、腰痛レベルが高いということはなかった。 [7] 脊柱アライメントの測定値と痛みとの間に関連性があるという研究はあるものの、この法則には例外がある。[8, 9] エビデンスの重要性を示す代表的なものは、おそらく痛みと姿勢の関連性を扱った54件以上もの研究を分析した2008年のシステマティックレビュー[10]でしょう。しかし、研究の質は全般的に低く、また矢状面(前後)における脊柱のアライメント測定と痛みの関連性を支持するようなエビデンスにはなりませんでした。 上記のリサーチでは、姿勢と痛みの間に何らかの相関性が存在するとしても、それは弱いことを示唆しています。腰痛との相関性因子として、エクササイズや仕事への満足感、教育レベル、ストレス、喫煙などが顕著に影響するという研究が数多く発見されていることを考慮すれば、この結果は特筆すべきものです。[11] もし痛みと姿勢の相関性が存在するとしても、因果関係を証明するものではありません。痛みが悪い姿勢の原因となっていて、その逆ではないのかもしれません。これには、かなり真実味があります。腰痛を起こすような溶液を注射された人は、無意識のうちに違う姿勢をとろうとするようです。[12] 驚きですよね!! さらに、もし悪い姿勢が腰痛に関与しているにしても、姿勢は矯正されるものであると結論付けるには無理があります。しかも、“悪い姿勢”を正すことで腰痛が軽減されるという保証もありません。 参照文献 1. Grundy, Roberts (1984) Does unequal leg length cause back pain? A case-control study. Lancet. 1984 Aug 4;2(8397):256-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6146810 2. Pope, Bevins (1985) The relationship between anthropometric, postural, muscular, and mobility characteristics of males ages 18-55. Spine (Phila Pa 1976). 1985 Sep;10(7):644-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4071274 3. Grob, Frauenfelder et al. (2007), The association between cervical spine curvature and neck pain. Eur Spine J. 2007 May; 16(5): 669–678. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2213543/ 4. Nourbakhsh, et al. (2002) Relationship between mechanical factors and incidence of low back pain. J Orthop Sports Phys Ther. 2002 Sep;32(9):447-60. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 5. Dieck, et al. (1985) An epidemiologic study of the relationship between postural asymmetry in the teen years and subsequent back and neck pain. Spine (Phila Pa 1976). 1985 Dec;10(10):872-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 6. Franklin, et al. (1988) An analysis of posture and back pain in the first and third trimesters of pregnancy. J Orthop Sports Phys Ther. 1998 Sep;28(3):133-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 7. Lederman (2010) The fall of the postural–structural–biomechanical model in manual and physical therapies: Exemplified by lower back pain. CPDO Online Journal (2010), March, p1-14. http://www.cpdo.net/Lederman_The_fall_of_the_postural-structural-biomechanical_model.pdf 8. Chaleat-Valleyed, et al. (2011) Sagittal spino-pelvic alignment in chronic low back pain. Eur Spine J. 2011 Sep;20 Suppl 5:634-40. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21870097; 9. Smith, O-Sullivan, et al. (2008) Classification of sagittal thoraco-lumbo-pelvic alignment of the adolescent spine in standing and its relationship to low back pain. Spine (Phila Pa 1976). 2008 Sep 1;33(19):2101-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18758367. 10. Christensen, et al. (2008) Spinal curves and health: a systematic critical review of the epidemiological literature dealing with associations between sagittal spinal curves and health. J Manipulative Physiol Ther. 2008 Nov-Dec;31(9):690-714. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 11. Papageorgeoui, et al. (1997) Psychosocial factors in the workplace--do they predict new episodes of low back pain? Evidence from the South Manchester Back Pain Study. Spine (Phila Pa 1976). 1997 May 15;22(10):1137-42. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu... 12. Hodges, Moseley (2003) Experimental muscle pain changes feedforward postural responses of the trunk muscles. Exp Brain Res (2003) 151:262–271 http://cdns.bodyinmind.org/wp-...

トッド・ハーグローブ 2371字

動きの原則 パート2/2

動きの原則2:守る、正す、発展する 基礎動作ができていないとすれば、フィットネスおよび健康への道のりは、補助的なエクササイズからは始まりません。補助的なエクササイズから始めることは、質の前に量を重視する考え方であり、機能不全という土台の上にフィットネスを構築しようとしているにすぎず、部分にしか注目していません。一番目の原則は、どういわけか順序が覆され、人々は沢山動くことで、より良い動きになると期待してしまっているのです。そんなことはありません。動作の問題は、頻度が高くなればなるほど悪くなる一方です。 解決方法はシンプルです。フィットネスの基準を下げるのをやめることです。動作の標準値を高めれば、昔の基準を満たすことができます。また、部分に焦点を置くこともやめるべきです。還元主義、動きを孤立した部分に分解することは、筋骨格系の障害を減らすことにつながってはいませんし、それによってより健康になるとか、フィットネスレベルが上がるということもありません。 パターンや連続性は、生物学的生命体の働きにおいて最適な方式であり、それこそ私たちが重視するべきものです。 原則1はなぜ機能するのでしょうか?私たちはなぜ動くのでしょうか?動きは私たちに機会を与えてくれるからです。発達はSAID原則(Specific Adaptation to Imposed Demand: 身体に一定の負荷をかけると、身体はその負荷に見合った適応を示す)を通して起きるというのが、基礎動作の基盤にあります。 沢山動く前に、より良く動く。この順番は、私たちに最大の機会とリスクを与えてくれます。沢山動く前により良く動くことはまた、環境への最適な適応を可能にします。 少し戻って、リスクという言葉について考えてみましょう。リスクは、修正する前に必ず保護し、それが発達へとつながります。という原則2を知っていれば、それほど恐れるべきものではありません。共通の真実に戻るとすれば、私たちは、強さを育み、身体が優雅に年齢を重ねるうち負かすことのできない自然の能力を信じていますが、同時に自然は、私たちの個人的な発達や特定の発達に関して考えたりしませんし、気づいてさえいません。 自然は偉大であると同時に厳しくもなりえます。自然は、私たちの適応や発達を待ってはくれませんし、時には生き抜くことを許さない教訓さえ与えてくれます。二番目の原則は、失敗しない環境を作ることを要求するものです。 SAID原則は、より重い重りを持ち上げたり、より速く走ったり、より高く登ったり、より激しく泳いだり、より大きな対戦相手と戦ったりすることの唯一の理由として使われるべきではありません。こういう考え方は、より良くなる前に、より沢山行うことを強いてしまいます。 この声明は、いかなる場合にも否定的に受け取るべきものではありません。成功の追求は、大きなリスクと失敗を伴います。各段階において、失敗しないことに集中し、新たな能力に対する安定した基盤を作りましょう。 残念なことに、私たちは望む成功を見るばかりで、ゆっくりとした成長、長期間にわたる好結果の発達を作り上げる文化的アプローチを受け入れていません。運動科学において、初期の段階での特化を支持するものはありませんが、それが現在では標準のようになってしまっています。 生産的なフィードバックがない、またはリスクにさらされる機会から保護をしてください。 学習の過程にある見誤った障害を強調することで、フィードバックを修正してください。 自立性と生産的な自己規律を推進するため、豊富な感覚的経験、明確でしっかりとしたフィードバックを使って段階的に発展してください。 現在のレベルに精通し、自立し、かつその状態を維持できるまでは、次の発展レベルには進みません。 原則2は倫理的原則であり、身体を痛めるよりは、プライドを痛めるべきです。 原則3:哲学を実行するシステムを創出する 発達の段階的レベルを考える時、私たちはその本質よりも早く安全に発達できると信じています。この信念が原則3へとつながり、哲学を守るシステムを創出するというところへつながります。 原則3は実践的な原則です。 標準操作手順と聡明な選択が、私たちに健康とフィットネスをゆだねる人々を守ります。 でもシステムはどこから始めたら良いのでしょう?私たちは認識することなしに何かを知ることはできません。基準なしに先へ進むことはできないのです。先ほど、動きは、血圧や体温その他の要素同様に間違いなく生命に必要な生命徴候であると主張しました。 その長いリストとは異なり、私たちは現在動きを生命徴候として理解するための基準を持っていません。 基礎動作のパターンを見るシステムがあれば、基準ラインを作ることができます。 その基準ラインがあれば、欠けていたり、不足していたり、機能していない基礎動作を確認し、表現することができます。もし動きが生命徴候やその能力を満たしていなければ、これは機能不全であり、環境的標準以下であり、欠損です。(必要だが十分ではない)この状態を同僚や医療の専門家に共通の言語を通して伝えることで、責任と説明責任が強調されます。 動きの問題に関する共通言語と知識があれば、個々人が基礎を取り戻す手助けができます。保護し、修正し、発達する戦略を決定するためにそれらの数値を使うことができます。こうして、戦いの前のチェックリストが出来上がるのです。 FMSはフィットネスのインテイクのために使うことができます。フィットネスを構築するための基準ラインを確立し、適切な医療機関への紹介をするために必要な健康問題を判断することができます。FMSはリハビリを終える判断をする基準として設定することもできます。この人は沢山動くことができるほど健康か?発達に関してはどうか? 怪我の危険因子のトップは何か知っていますか?そうです、過去の怪我です。とても多くの人が、適応不順、過去の怪我、不適切な環境の選択による能力不足を示す生命兆候がなくなる前に活動を許可されてしまっています。現在のシステムは、うまく機能していないのです。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2625字

動きの原則 パート1/2

身体発達やリハビリテーションを考慮した哲学、プログラム、システムには、基盤となるべき共通の真実や原則があります。 みなさんは下記の声明に同意するでしょうか…私は強く信じています。 私たちは、自分自身または他者を、その本質よりも良く発達させることはできない 私たちは、自分自身または他者を、その本質よりも安全に、より早く発達させることができる 適切な漸進は、次の段階に進む前の発達の1レベルを習得することである これらは原則ではありません。これらは環境の中で生きるための基本概念であり、必要以上に重視するものではありません。それを簡潔に深く表現した環境学者アルド・レオポルドの言葉を借りると、 「完全性、安定性、美しさを保つ傾向にあるものは正しい。そうでないものは誤りだ。」 ファンクショナルムーブメントシステム(FMS)を開発する段階で、これらの真実は10の動きの原則を通して表現されました。動作の観察、スクリーニング、評価、治療をガイドする、詳細で、多面的な行動指標です。 そう、これらの原則は明確に表現することが難しく、学ぶ側にとっては、さらに覚えるのが困難なものでした。私が今も10全てが当てはまる(本当にそうです…読み続けてください)と信じているのと同じくらいに、これらをFMSの哲学の根底に応用すれば、さらに良いものができることもわかっていました。 一貫したテーマにしぼった、動きの根本前提になるものを集めて組み立てていく中で、私はそのことを実感しました。テーマは、明確に見極められるものであり、極めて単純なものである必要がありました。アインシュタインが言ったように、「物事は可能な限り単純にするべきだが、単純すぎてはならない。」のです。 その哲学は、3つの動きの原則に抽出することができます。これらは単純ですが、私たちの理解を高め、努力を導いてくれる、身体発達における全ての側面が含まれています。 原則1は、まず動きを良くし、それからより頻繁に動くべきであると説きます。 量を気にする前に、質の最低ラインを探しましょう。良く動くことが基準であるならば、頻繁に動くことは、予測できる結果です。 原則2は、私たちがケアしている人々の動きを守り、修正し、発達させる方向に導きます。 ヒポクラテスの宣詞に従い、まずは害のないことをし、それから、自立性と持続可能性を持った方向に進めていきます。 原則3は、私たちの哲学を強化するシステムを創出することです。 標準操作手順の実行、聡明な選択の実践は、望まれる成長と発達におけるリスクとチャレンジの比率と常に合致します。 原則1を信じるならば、原則2においても原則1を尊重します。 原則2を行うためには、原則3を取り入れます。 これらは単純な声明ですが、私たちが今現在、発達をどのように見ているかを深く考えさせてくれます。 私は、サイモン・シネックの「WHYから始めよ!」が好きですが、共通のなぜを見つけることが、我々が動きを議論する際の出発点です。多様なバックグラウンドや職業を持っていても、共有している原理の中に共通性はあるのです。 常に、何をするか、どのようにおこなうかは比較的簡単に判断できますが、なぜの部分は大抵欠けているか、忘れ去られてしまっています。「なぜ?」は最も重要な問いであり、なぜに対する答えは、私たちがとる専門的な行動への感情的な結びつきとなっています。 私たちは、あまりにも長い間、共有の専門的な“なぜ”を持たないまま働いてきてしまいました。そしてそれ自体が、動きの健康に関する現在の問題の一部なのです。なぜという問いかけのないまま、動きの基本を誤って見てしまっているのです。 私たちが行っている全てのことの背景にある、このなぜという問いかけが、次の3つの原則にあります。これらの原則を学び、熟考し、吟味し、実行してください。それらができれば、解決策を見つけ、解決策を創出する道筋は整います。 動きの原則1:動きを良くし、それから頻繁に動く 原則1は、まず動きを良くし、それから、より頻繁に動くべきであると説きます。私は、これは自然が私たちに教えてくれる人生の教訓だと強く信じています。この原則は、動物や、身体的にも精神的にも最も健康な人々によく表れています。 原則1は自然の原則です。 この能力-上手く動くこと-と、許容量-頻繁に動くこと-の美しい相互作用を保つことが、毎日仕事に行く理由であることを願っています。これは正に私の原動力なのです。 現在の多くのフィットネス哲学が何と言おうとも、この原則は逆の順序で作用することはなく、守られなければならないものです。不完全な能力の上に許容量を構築することは自然ではありません。少なくとも自然界では、それは良い結果をもたらさないことが多いのです。 FMSのロゴに原則1を取り入れていることに気づかれたかもしれません。頻繁に動くの後に句読点が欠けていることは見落としではなく、洞察です。良く動くの後のピリオドは、私たちには許容量を高めていく前に、生物学的指標が必要であることを意味しています。文の最後に丸がないことは、持続性を象徴しています。 上手く動くことは、適応を可能にします。発達の機会が与えられるからです。そして頻繁に動くことで、環境との接点を保ちます。 私たちは反応するために十分なほど上手く動くべきであり、適応するために十分なほどより頻繁に動くべきです。上手く動ければ、環境的なシグナルに適切に反応することができます。それは、段階的な動きの学習に欠かせないフィードバックをセットアップします。頻繁に動くことができれば、パターンや組織が適応するための時間にわたって、十分な量を得ることができます。 私たちは、動きを、そのものとして見る必要があります-生命の最もわかりやすい指標-真の生命徴候です。発達モデルを考えると、私たちは可動性を持って生まれ、安定性を獲得していきます。そして基礎から機能的な動きへと移行していきます。非常にレベルの高いランニングやクライミング技術でさえ、原点は原初パターンにあるのです。 この驚くべきプロセスを理解することは、動きが知覚と行動を通して行われていることを理解することです。 今日の動きを見るとしたら、何が見えるでしょう?現在の見解では、基礎動作のパターンは低下しています。生まれながらに持っているべき動きの質が欠けている人々がいるのです。 1954年のクラウス・ウェーバーテストを見てみると、アメリカ人の子供の57.9%は、ヨーロッパの子供は8.7%しか失敗しない、姿勢のフィットネステストに失格しています。そのため、アメリカは過去半世紀にわたり、軍隊の基準を継続して減らす必要に迫られているのです。 この低下は、私たちの環境が、快適さと便利さに適応してきた証です。私たちは環境に適応することをやめ、代わりに私たちの必要に応じて環境を変えてきたのです。その結果はほぼうまくいっていません。環境にとっても、そして私たち自身にとっても。 数年ごとにフィットネス関連の改革はあり、学校をより健康的なものにするよう努力する動きはあるでしょう。しかし、業界としては健康問題にフィットネスによる解決策を推進しており、大衆は通常喜んでこれを受け入れているようです。 この状況をうまく表しているのが食べ物です。自然で全体性を持つ食品を食べていた時、私たちに食餌法という前置きをする必要はなく、栄養素を摂取するためにサプリに頼る必要もありませんでした。同様に、機能的という言葉を動きに加える必要はないはずなのです。 もしそれが機能的でないのなら何故行うのでしょうか? ビタミンであれ、なんとなくやっているエクササイズであれ、何かで補うことはほとんど役に立たず、もちろん持続可能な解決策ではありません。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 3368字

構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート3/3

『過剰な呼吸回数による筋緊張』 前回の投稿では『環境的要因による呼吸パターン不全』として、環境要因に対する考察が必要とのお話をさせて頂きました。 今回は“呼吸回数”についてご紹介します。 近年注目されている呼吸ですが、“呼吸パターン”についての議論は数多くされている一方で、“呼吸回数”についての議論は少ないように感じます。 “喘息患者のゼーゼーいう呼吸は、常に喘息の疾患の転帰(病気が進行して行き着い結果)で起こるものだと考えられてきました。“深く呼吸すること”自体が気管支喘息の原因であり、深く呼吸すると喘息の症状を引き起こす可能性があるということを、かつては誰も考えもしなかった” “喘息や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者や他の呼吸器の問題を抱える人は、体が要求するよりも2〜3倍以上の呼吸をしている” ~Konstantin Pavlovich Buteyko (1923~2003) これらは喘息治療の権威でもあるButeyko博士の残した言葉です。 一般的に正常な呼吸回数は1分間に8~12回とされていますが、例えば喘息患者などは20回近く呼吸を行っています。体調不良や精神的ストレスを抱えているときも呼吸回数は増加します。 呼吸回数が多くなると、過剰な酸素供給によりpHバランスも正常値から外れ、また呼吸に関わる筋群も過剰に働くことになります。 「人間は簡単に2、3回の深呼吸でphバランスを変化させることができる。 30秒以下の胸式呼吸でpHは7.4から7.5に上昇する」 ~American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. Vol 168; 10-48 2003. 上記のリサーチで検証されている様に、身体のpHバランスは呼吸により簡単に変化します。 これは呼吸パターンだけではなく、単純に呼吸回数の増加によっても変化する為、過剰に呼吸を行っているクライアントには呼吸回数を減らすアプローチが必要となります。 呼吸回数に介入する際に知っておくべきこと 1. 呼吸のしすぎは単なる習慣でしかない:呼吸を調整する脳の一部(中枢化学受容器)が呼吸をしすぎることに慣れてしまっているだけである。長時間の過剰な呼吸(以下では過呼吸と表記する、“長時間”とは“24時間以上”と定義する)は、脳を敏感にし、さらに過呼吸を長引かせる。過呼吸が、習慣的で、長期的にわたると、主要原因が取り除かれた後でさえもその癖は続いてしまう 引用: 「過換気症候群(HVS)と喘息」 スティーブン・デミター医師 過呼吸になった原因は様々ですが、“一時的に過呼吸になる必要“が生じた(例えば過剰な緊張状態等によって通常より多くの酸素が必要となった)人が、過呼吸の必要がなくなった後も“習慣として”過呼吸を続けるケースが多いです。 セッションの前に、『過呼吸であり続ける必要はもう無いので、呼吸回数を減らすことに何の問題もありません』とクライアントにしっかりと理解してもらう必要があります。(多くの方が呼吸回数を減らしたり、呼吸パターンを変えることに不安を覚えます、まれにセッション中に酸欠になったと勘違いして軽いパニックを起こす方もいらっしゃいます) 実際のセッションでは様々な手法で呼吸回数を減らすワークを行います。(共通しているのはどのエクササイズも4~9分間の継続が必要ということです、これは中枢科学受容器が過呼吸状態をリセットするのに必要とされている時間です) 今回は一番簡単な手法の一つをご紹介します。 2. 片方の鼻の穴で呼吸をする方法 どちらか片方の鼻の穴は反対側に比べて少し詰まっている状態である事が多いものですが、空気不足を作り出すために、通っている鼻の穴を指でふさぎ、少し詰まっている方の鼻の穴で呼吸してみます。通っている方の鼻の穴を閉じることで吸う空気量が減り、息苦しく感じるかもしれません。この状態を4分間維持してみてください。 このワークの後に最初に詰まっていた方の鼻の穴はどのように感じるでしょう ※クライアントは4~9分間の間、常に少し息苦しい、息を吸いたい!と思い続けますが、気持ちを落ち着かせてゆっくりと少ない量の呼吸を維持する必要があります。 何回かの試みの後、呼吸回数または呼吸量が減少していれば成功です。すぐに呼吸回数の減少が見られなくても、数週間の間繰り返しワークを行うことで徐々に効果が表れてきます。 注意: 呼吸エクササイズは、ほとんどの人にとって適切でとても有益ですが、下記の症状がある方には適していません。自分に適しているかわからない場合は、行わないでください。 ・現在がん治療を受けている ・1型糖尿病 ・てんかん ・統合失調症 ・血圧レベルが正常でない ・胸痛や心臓付近に痛みがある ・鎌状赤血球貧血症 ・動脈瘤 ・過去6ヵ月間に心臓の問題があった場合 ・コントロール不良の甲状腺機能亢進症 ・既知の脳腫瘍や腎臓 以下に当てはまる方は、強度の軽い呼吸法であれば問題ありませんが、細心の注意を払いながらワークを行ってください。呼吸法によるストレスが強すぎる場合、症状を誘発、悪化させる可能性があります。 ・重度の喘息患者と肺気腫及びCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者 ・2型糖尿病 ・妊婦(妊娠初期は全く行わないこと) ・不安神経症/鬱病 ・片頭痛の患者 呼吸回数と呼吸パターンは相互に影響しあうため、呼吸パターンへの介入によっても呼吸回数を減らせるかもしれません。 私は呼吸への介入を行った後の効果測定の手段として呼吸回数を活用しています。 ※ちなみに、私は現場で1分間の呼吸回数を数えるような測定はしておりません。その代わりにコントロール・ポーズという時間を図って呼吸回数を予測するのですが、これはまた次回以降にご紹介します。

近藤 拓人 2547字

構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート2/3

『環境的要因による呼吸パターン不全』 肩こりに関して、前回は肩甲骨のポジション不全による胸鎖乳突筋の緊張をご紹介しましたが、今回は環境的要因による呼吸パターン不全、そしてそれに伴う僧帽筋&胸鎖乳突筋の緊張を考察します。 先ず、呼吸パターンはなぜ適切ではなくなってしまうのでしょうか? 主な原因は恒常性(ホメオスタシス)です。ホメオスタシスとは、生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質です。 ホメオスタシスは呼吸パターンを随時変化させます。代表的な理由として、呼吸パターンを変化させることにより血中のpHバランスを一定に保つ必要があるからです。(血中pHは7.4を理想とするが、酸性値、すなわち血中の二酸化炭素量が多くなると7.4より下に下がる、アルカリ性が強くなると7.4より上に上がる) ※酸素は基本的に水に溶けない為、酸性でもアルカリ性でもありません。ただし過呼吸により血中の酸素量が多くなり二酸化炭素量が少なくなると水溶では酸性を示す二酸化炭素量が減ることで血液のpHは7.4より上がります。 下記の要因により、血中のpHバランスが崩れ呼吸回数の増加が起こります(その反対、呼吸回数の増加によりpHバランスが崩れるパターンも多いです)。ここでは過度な呼吸を過呼吸と呼びます(俗に言われる発作的な過呼吸とは違いますが、血中の二酸化炭素濃度の不足という点では同じです) 1. 食生活-過食による余分な食べ物の消化のために呼吸量が増加する。特に加工食品は通常、酸性であり、体は血液のpHを正常に維持しようと呼吸を増やして酸である二酸化炭素を取り除こうとする。→これが過剰な呼吸回数の原因となる。 2. 一定時間以上大きな声で話すとき、行間で大きく息を吸う。営業、電話の応対、教師などの職業に就く人は、話してばかりの日が何日も続くと疲れを感じやすい。単純に呼吸量が多くなることで過呼吸状態につながる。 ※これにあたる症状の人は、会話の際、言葉を発する前に大きく息を吸う、あくびをよくする等がみられる。 3. 精神的ストレス は、闘争・逃走反応を引き起こす。 ※人間は精神的ストレスに対し、ある意味原始的な反応を起こす。例えばその昔、野生動物に直面したときは闘争するか・それとも逃走するか素早く判断する必要があり、その為自律神経が身体を最大に緊張・活性化させる→呼吸量もそれに伴い増加する。 この自律神経の働きは現代社会においての精神的ストレスによっても引き起こされる。必ずしも生命に関わることだけに反応するものではない。 ストレスレベルの高い人は、そうではない人より多くの呼吸をする傾向にある。 4. 筋肉を動かすと大量の二酸化炭素が生成される。これにより血中pHのバランスを保つため&エネルギー生産の為に酸素が大量に必要となり呼吸回数は増加する。 ※必ずしも運動が悪いと述べているわけではありません。むしろ呼吸パターン不全を根本から解決するために運動は必須だと思われます。ただし喘息患者の多くは運動により喘息の症状が誘発されます。これは運動による過呼吸が喘息を誘発すると考えられています。呼吸パターン不全をもった患者は自らの体力レベルに沿った無理のない運動から始める必要があります。 5. 「酸素は身体に良い」という間違った認識。酸素を大量に摂取すれば疲労回復につながる、けがの回復を早める、等の間違った認識により大きな呼吸を推奨する運動、治療、レッスンがある。正しい呼吸パターンによるコントロールされた呼吸であれば問題はないが、副神経筋の過緊張がみられる患者においてそれは難しいことである。 ※ちなみに酸素を過剰に摂取したとしても、血中の二酸化炭素濃度が低ければヘモグロビンと酸素が分離しないため細胞に酸素は供給されない。発作的な過呼吸と同じで、これは二酸化炭素を多く取り入れることで解決する。 6. 喘息の症状。気道が狭くなると息苦しさを感じ、この息苦しさから逃れるために呼吸は増加する。ところが呼吸量が増加すると、前述の血中pHバランスの崩れにより症状はさらに悪化する。 ※喘息患者へのアプローチにおいては、吸気ではなく呼気、また呼気後に息を止める練習が効果的だと思われます。喘息患者は呼気後に息を止めてすぐ苦しいと感じてしまうので、無理のないように注意してください。 7. 高い気温、または室内温度、:体温調節のために大きく呼吸をする必要が発生するため室温の調節は重要である。 ※適切な気温によって呼吸回数をコントロールすしやすくなる為、肩こりの症状がある患者は睡眠時の室温コントロールが効果的だと思われます。また夏は睡眠時の着衣や布団も熱の発散に優れた素材をお勧めします。 ここでは以上7つ環境的要因の例を挙げました。 過呼吸状態になった身体はより多くの空気を吸うために僧帽筋、胸鎖乳突筋を使って呼吸を助けます。 正常な呼吸回数が1分間に8回〜12回だとすると、過呼吸状態の人は1分間に約13回〜20回の呼吸をしていると予測されます。 ということは、最低でも13(1分間の呼吸回数)x60(分)x24(時間)=18720回それらの筋が働いているわけです。 肩こりを持つクライアントに対してアプローチをする際に、呼吸パターンを適切にする必要があると判断した場合、はじめに何をすべきでしょうか?? おそらくストレッチやマッサージではなく、上記に述べた7つの環境的要因(またはその他の環境的要因)に対する介入ではないでしょうか。

近藤 拓人 2361字

アスリートの天性の加速力を向上させる4つの戦略 パート2/2

#3クロスオーバーラン 子供のころ、コーチが”横に動くとき、足をクロスするな!“と叫んでいるのを聞いたことはありませんか。もしそうであれば、そのように伝えた人達はかなり間違っていました。アスリートは実際に足をクロスしません;彼らは単純に股関節を回し、身体を低くして、上半身をシャッフルさせているのです。 これはどういうことでしょう?バスケットボール選手や野球の内野手がデフェンスの時に横方向にシャッフルしているところを想像してください。ディフェンダーがシャッフルできるスピードでボールが動いていれば、シャッフルを使うべきです。しかし、アスリートがシャッフルを使えないスピードと距離でボールが動いていれば、自然とクロスオーバーランになるはずです。この技術はかなり素早い動きですが、自分の前にいるボールやプレイに対して頭や肩を向けた状態でいられます。ですから、私はクロスオーバーランを下半身でのラン、そして上半身でのシャッフルと呼ぶのです。 これが天性の動きであると私が言う理由は、アスリートは移動しなければないならい距離とプレースピードの知覚に基づいて、クロスオーバーの動作を即座に直感的に行うからです。 次のことを試してください: パートナーにテニスボールを持って自分の10−15フィート前に立たせてください。パートナーと向かい合って、アスレチックスタンスをとってください。パートナーはボールをあなたの右側か左側に向かって空中にトスし、あなたは動いてそれをキャッチしなければなりません。ルールは、どんなときでもボールをキャッチするときはシャッフルをしなければならないということです。しかし、シャッフルでそのボールをキャッチできる範囲を超えていると感じた場合は、クロスオーバーランを使うことが許可されます。ボールがシャッフルでキャッチできる範囲を超えた時はどんな時でも、自然にクロスオーバーランを使っていることに、おそらくとても驚くことでしょう。動く方向は織り交ぜ、10−15回行います。 #4直線のリポジショニングステップ(プライオステップ) 高校のフットボールコーチが、私たちが、彼が“フォルスステップ”と呼ぶステップを踏んでいると叫んでいる声が未だに聞こえます。多くの人にとってフォルスステップとは、アスリートが前方に動く前に、後ろにステップを踏むことを意味します。この動作は、アスリートが反応し、まっすぐ前に、あるいは、角度をつけた方向へ動かなければならないすべてのスポーツで起っていると言えます。過去何年も私がびっくりさせられているのは、アスリートはかなり頻繁にこのステップを踏んでいるという事実にも関わらず、“なぜそのスッテプを踏むのか”と疑問に思うコーチがほとんどいないということなのです。説明させてください・・・。 攻撃する、あるいは、逃げるという動作を素早く行うために設計された闘争か逃走の生存反応に戻りましょう。この反応が、素早い加速として実現されるためには、身体が正しいアラインメントにならなければなりません。加速するためには、私たちは動く方向とは反対方向に地面を蹴らなければなりません。アスリートがアスレチックスタンスでいる場合、脚は重心の真下にあり、これは残念なことに、加速するための素晴らしいポジションではありません。蹴り出す足は身体より後ろにある必要があります。刺激が起こり、アスリートが反応し、動く方向も分かっていれば、地面に対し適切な角度の力を産み出すために、足は自然にリポジションするでしょう。私はこれをプライオステップと呼んでいます。 プライオステップ、またはリポジショニングステップは、より効率よく、より直接的な角度にもっていくだけでなく、神経筋系にインパルス、あるいは、伸張反射を与えるために起こります。このことで、接地時間を短くし、より爆発的にさせることができます。 このことが、フォルスステップが問題であるという考え方と直接的に対峙します。加速するという素早い認識に基づき、身体が足をリポジショニングするには理由があるのです:足が接地すれば、より効率的な加速角度とより素早い接地反応時間が必要になります。 次のことを試してください: 下肢を平行なアスレチックスタンスでパートナーと隣合うようにして立ってください。二人で10ヤードのレースをして、どちらが勝つか勝負します。パートナーの方が“GO”と言います。パートナーが“GO”と言って、二人はスタートし、レースをします。いつ動きだすのか正確には分からないため、あなたはおそらくプライオステップを踏むことになるでしょう。そして、多分パートナーもそうでしょう。これを6−8回行ってください。 まとめ アスリートは素早く動けるように設計されているので、彼らがすでに持っている天性の能力を引きだすためにドリルを使用します。この戦略によって、アスリートをより素早く加速させながら、彼らが使用しているメカニクスや姿勢を磨くことができるようになります。

リー・タフト 2141字

構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート1/3

頑固な首・肩こりに対して、ストレッチやマッサージ(または何かしらのリリース・テクニック)をする。 一時は楽になってもまたしばらくして症状がぶり返す。そしてまたストレッチやマッサージを繰り返す。 そのようなケースで、終わりのない戦いをしていると感じることはないでしょうか? 2015年9月、セントルイスでの講義で講師のPavel Kolarは、 “Tightness is not in the muscle. It’s in the brain”~“筋緊張は筋肉ではなく頭にある”と述べました。 また以前から、Dr. Vladimir Janda(ヤンダ博士)、Karel Lewit(レヴェット博士)Václav Vojta(ボイタ博士)ら沢山の臨床家や研究者から神経学的(機能的)アプローチの必要性は訴えられています。 “構造(ハードウェア)+機能(ソフトウェア)によってより効果的なアプローチができる”ことは明白ですが、私はこれにもう一つの要素を加えることにしています。 これから数回に分けてご紹介する内容は、筋緊張に対しての『構造』、『機能』、そしてもう一つの要素である『環境』の3つを統合したアプローチ法です。 首・肩こりを例にすると、 頸部の筋群(ハードウェア)が健康的であり、その筋群を扱う動作パターン&呼吸パターン(ソフトウェア)が正しく働き、“その動作&呼吸パターンが発生する為の姿勢、アラインメント、関節のポジション、心理的状態(ここではこれらを総合して『環境』と表す)を有している“ ということです。 以下に肩こりの“構造的問題”“機能的問題”“環境的問題”の例をあげます。 構造的問題の例 1. 組織の損傷 2. 癒着、滑走不全 3. 血液循環不全 機能的問題の例 1. 筋発火パターン不全(弱化も含む) 2. 呼吸パターン不全 3. 動作パターン不全 環境的問題の例 1. 頸部・胸郭・肩甲骨のポジション 2. 姿勢不全 ※姿勢はポジションの集合体と考えるため、環境的問題とする 3. 不適切な靴、装具、接地面など 4. 心理的ストレス 今回は首・肩こりを“環境的な問題“から考察してみます。 構造的、機能的アプローチが充分な効果を発揮しない場合には、筋が“緊張しなくても良い環境”をつくることで、筋緊張との戦いを終わらせることが出来るかもしれません。 『肩甲骨のポジション不全による胸鎖乳突筋の緊張』 ※関連する筋:肩甲挙筋 胸鎖乳突筋 近位付着部:胸骨頭(胸骨柄の上縁)・鎖骨頭(鎖骨内方の1/3) 遠位付着部:側頭骨乳様突起・後頭骨上項線 胸鎖乳突筋の働き: 胸骨・鎖骨が固定されている場合:頭部の対側への回旋。同側への側屈 頭部が固定されている場合:胸骨と鎖骨の挙上 肩甲挙筋 近位付着部:C1~C4の椎体の横突起 遠位付着部:肩甲骨の上角、内側縁の上部1/3 肩甲挙筋の働き: 1. 頸部が固定されている場合:肩甲骨の挙上、肩甲骨下角の内側への回旋 2. 肩甲骨が固定されている場合:頸椎の伸展、同側への側屈 写真を見てもわかるように、肩甲挙筋は“ねじれ”ています。 この“ねじれ”によって肩甲骨~頸椎&頭蓋骨の位置を適切にコントロールしています。 では、例えば右側の肩甲骨が外転し、さらに内側縁が後退して翼状肩甲に近い状態になると“ねじれ”はどうなるでしょうか? 少しイメージがつきにくいかもしれませんが(肩甲挙筋の写真を見てください)ねじれは解かれて肩甲挙筋の肩甲骨付着部は頸椎方向に動きます。 簡単に言ってしまうと、右側の肩甲挙筋が頸椎方向に“緩んだ”状態です。 この“緩み”により、本来適度に右回旋方向に引っ張られていた頸椎は左回旋方向に向くことが容易になり、頚椎&頭部はやや左回旋位に位置します。 これが頭部の左方向への回旋筋である右側胸鎖乳突筋にレバーを与え”過剰に働きやすい環境”を作り出してしまいます(これに加え呼吸パターン不全によって胸鎖乳突筋が“鎖骨の挙上筋”としても過活動になれば更に緊張は増します)。 この左向きの頸椎によって右側胸鎖乳突筋に回旋筋としての緊張状態が続き“首こり”“肩こり”の症状が現れたとします。 このケースにおいて、 1. 緊張している右側胸鎖乳突筋のストレッチは効果的でしょうか? 2. 深部頸部屈筋の促通は効果的でしょうか? 3. 単純な呼吸パターンへの介入は最高の効果を発揮するでしょうか? (※効果的かもしれません(/・ω・)/テヘ) このケースでは、胸鎖乳突筋のストレッチ(またはリリース)ではなく、“胸鎖乳突筋が過度に働かなくても良い環境“をつくる、すなわちこのケースであれば右側の肩甲骨のポジションを正し、右側肩甲挙筋の”ねじれ“を取り戻すことが最も効果的だと考えます。

近藤 拓人 2103字

アスリートの天性の加速力を向上させる4つの戦略 パート1/2

コーチやアスリートが“40”のタイムについて自慢していることを読んだり聞いたりすることが多くあります。正直に言うと、40ヤードを4.3秒以下で走るアスリートを見ることは、衝撃的な出来事です。しかし、センセーショナルなことは置いておくとして、試合でプレーするためには、40ヤードのタイムよりも、10フィートを走る能力がより重要なのです。 アスリートはかなり短い時間でかなり多方向に動くことを要求されるので、40ヤードのトレーニングをすることは、ある特別な理由(例、混合)を必要とするのはお分かりになりますね。そういうことから、アスリートの天性の加速力を向上させる4つの戦略を皆さんと共有したいと思います。これらの戦略のかなり優れたところは、野球選手の盗塁時のスタートを信じられないくらい良くすることもできるということです。これらのテクニックによって、内野手にとっての欠点である、頭上を超えるポテンヒットを解消させることができるでしょう。バスケットボール選手も、サッカー選手も、フットボール選手も、テニス選手もこの戦略で加速力を向上させることができます。 では、天性の加速力とは何を意味しているのでしょうか?身体はかなり精巧な設計で造られています。身体は恐れを感じる能力があり、さらにそれに攻撃する、あるいは、それから逃げるための能力を持っています:闘争・逃走反応。私はこれを取り入れることで、アスリートをさらに速くする方法を学びました。この反応は生まれつきのものなので、我々がコーチとしてするべきことのすべては、アスリートをその状況下におき、この闘争・逃走反応を引き出すことなのです。ここに主な4つの戦略を紹介します。 #1:方向性ステップ コーチやアスリートにとって、この方向性のステップは戦略というよりも“動作”になります。しかし、加速をより効果的に行うために、身体が駆使する戦略と考えることもできるでしょう。説明させてください・・・ 野球選手が盗塁をするときの“アスレチックポジション”を想像してみてください;選手は右方向に素早く加速することが必要になります。それぞれの脚が重要な役割を担います。後ろ脚は動く方向(横方向)へ身体の重心を押し出す役割を持ちます。身体の押し出しが起こっている間に、前脚には、動いている体重を巧みに利用する素晴らしい機会が与えられます。身体を動かし続ける(加速する)最良の方法は、身体の下で下方、後方に押しだすことであり、そうすることで、前脚は体重を加速し続けることができます。ここで、“方向性のステップ”が関わってきます。 身体が下方・後方に押し出したいのであれば、神経筋系がそのためにポステリアチェーンの筋肉(臀筋、ハムストリングス、ふくらはぎの筋肉)を使用することは理にかなっています。身体が生み出した創造的な戦略は、リード足を外側に開くことで、移動する方向に向かせることです。このことで、本質的に、アスリートは、スプリンターのブロックからのスタートのようになります:リード脚も力強く、下方・後方に押します。なんと素晴らしい戦略でしょうか! さらに深く見ていくことで、方向性のステップが重要になる理由を理解できますが、その動作が実のところなんであるかを考えてみましょう。身体を側方向のスタンスから、直線のランで加速したい場合(盗塁時のジャンプ)、リード脚を外旋することで、足部を外側に開き二塁方向に向けることは、実際に後ろ脚で押し出す動作の補助になります;“作用反作用の法則”と呼ばれています。つまり、リード脚が外に開く(作用)と、その力はまだ地面に接している後ろ脚へ伝わります(反作用)。端的に言うと、方向性のステップとは身体がより素早く動くために生まれ持った素晴らしい戦略なのです。 これを試してください: パートナーを自分の前に立たせ、右か左のどちらかを指す準備をさせます。方向を指し示したら、その方向にターンし、10ヤード加速します。6−8回繰り返すことで、方向性のステップを駆使して、アスレチックポジションから右か左へ加速する能力を構築することができます。 #2:股関節のターン 股関節のターンは、体がアスリートに与えてくれた素晴らしい戦略です。とはいえ、十分に熟練していない、または、スムーズに行えないアスリートもいます。幸運なことに、いくつかの修正アプローチやドリルによって、それを修正することができます。股関節のターンは、アスリートがアスレチックスタンス(内野手やテニス選手のような平行のスタンス)から素早く抜け出し、向いていた方向からリトリートする、あるいは、そこから別の方向へ動き出す方法です。 バスケットボールでは、コーチは良くピボットを教えます。ピボットでの問題は、足を地面に接しながら足を回すため摩擦が必要になるということです;これは敏捷性にとってはいいことではありません。繰り返しになりますが、幸運なことに、身体はアスリートが逃走・闘争反応を素早く行うことができる天性の能力を持っています。股関節をターンしている間に、足を地面からほんの少し持ち上げて、後ろ脚が地面を蹴って離れるために、股関節と脚を空中で素早く回します。アスリートの身体が浮いていないことを確認することが重要になります;むしろ、股関節と下肢は単純に回旋し、地面から離れます。テニス選手が、頭上を超えたロブを追いかけるために素早く切り返すところを想像してください。彼らの駆使している動作というのは、ボールを追って加速するための股関節のターンです。 基本的には、股関節のターンとは、アスリートが加速するためのよりよい角度へ、脚と足部を持っていく方法なのです。これは身体が生まれつきもっている素晴らしい戦略であり、股関節と脚が向きを変えた時に、後ろ脚は実際には伸展し始め、地面に接する直前に“押し始め”ます。結果として生じる衝撃、あるいは、筋肉の伸張反射によって、アスリートは素早く加速を始めます。繰り返しになりますが、後ろ脚・足は積極的に地面を押し出します:これは“プライオメトリック”反応であり、素晴らしいスタートスピードを産み出します。 試してみてください: パートナーを自分の後ろに約12フィート離して立たせ、肩の高さで身体の横に向かってテニスボールを持たせてください。パートナーに背を向けて、アスレチックスタンスで立ってください。パートナーが“GO”と叫び、同時にボールを落とします。これに反応して加速し、ボールが2回バウンドする前にキャッチしてください。これは、股関節のターンを精巧にさせ、改善するための素晴らしいドリルです。右と左にターンするのを5−6回行ってください。

リー・タフト 2820字

馬券売り場へ行くことは、脳、運動、痛みに関して、あなたに何を教えてくれるでしょうか? パート2/2

実践への移行 キャッチボールのような簡単な動作で、どのように予測が展開されるのかについて考察してみましょう。まず最初に、以前にキャッチボールにおいて、“良い”経験がある人の観点からこれを考察してみましょう。 ほとんどの人達、特にスポーツを楽しんでいる人達にとって、キャッチボール相手の手の中にボールを見るとすぐに、この一連の感覚情報と関連性を持ちます。私のこれまでのキャッチボールの経験が私を幸せな気持ちにしてくれるかもしれません。そして、幸福ニューロンとボールからの視覚刺激によるニューロンの活性化の結合が起こっています。これが蓄積された神経パターンです。 私の脳は、視覚刺激への予測として、キャッチボールの運動プログラムを整理し始めるかもしれません。そこで起こりそうな状況は、‘ボールが私のところに飛んでくる、そして、キャッチする必要がある’ということです。 では、もし前回、ボールが私の顔に投げつけられていたらどうでしょうか? 感覚入力と私の関連性は、全く異ったものになるかもしれません。突然、恐怖と不安に関連するニューロンが活性化されます。そして、交感神経系とストレス反応に関連するニューロンに火が付きます。脳の運動野は、一歩後ろに下がる、あるいは顔面を防御するための行動計画を作り出すかもしれません。同じ視覚刺激でも、これまでの経験に基づいた 多くの相互依存のサブシステムにおいて、かなり異なる予測を作り出すかもしれないのです。 私の息子がまだ小さかった頃の事を例に挙げてみましょう。私はボールを拾い、彼に向かって投げましたが・・・何も起こりませんでした。彼に向かってボールを投げると、彼にはまだボールをキャッチする準備をする運動プログラムが構築されておらず、ボールはただ彼の胸に当たって跳ね返っただけでした。 なぜでしょうか? ただ単に、彼は結果の予測を作り出すために利用すべき、記憶を持っていなかったのです。この記憶を獲得する必要があるのです。彼は、ボールからの視覚刺激が何を意味しているのか、その際に彼は何をする必要があるのかを学習する必要があります。そして、私の仕事は、彼がそこから学習できるように、ハッピーな学習体験を提供してあげることなのです。 キャッチングは、ボールの軌道と力に依存している独特な筋肉の活性化パターンを持っていますが、この処理すべき現在の情報、活性化と運動の結果、あるいは予測はまた、知覚される最良(かもしれない?)の結果を作り出すための、これまでの経験に影響されているのかもしれません。 このプロセスは良いのでしょうか?それとも悪いのでしょうか? もちろん、両方であり得るでしょう。そういうものなのです。 予測は、潜在的に‘過保護’になり過ぎることがあるかもしれません。もし問題があるとわかっていたため、ある行動を回避するならば、問題が発生しないことによって、予測は真実になります。回避することによって、有害転帰を被らないというという可能性です。 急性傷害の状況において、防御行動が今後の傷害を防いでくれると完全に保証するかもしれません。しかし、この防御的な予測の維持は、傷害が治癒した時点で問題となるかもしれないのです。 この予測は、荷重耐性のような身体的要因に影響を与えるでしょうか? では、ここでもまた、これを状況に当てはめてみましょう。 私は前屈時に痛みがありますが、前屈をしなければ痛みはありません。前屈が問題であるという私の予測は真実となり、今後、前屈が問題を引き起こす可能性はより大きくなります。従って、今後に関する私の予測は強化されます。 もし私が前屈をすれば、能動運動部位が、損傷の可能性に基づいた制限要素として、硬直、あるいは痙攣へと移行することによって作用するかもしれません。それらの部位は、正常にバランスのとれた筋反応によって調整されず、不均衡な身体的反応よる不適応なプロセスによって調整されているかもしれません。身体的発生要素はとっくに無くなっているかもしれませんが、関連する行動は残存するかもしれません。異なる状況下では、これらの筋肉は硬くも弱くもないかもしれないのです。 私達は、治療で使用される負荷の増加をの増大を目にしています。これは、局部的な細胞反応にとって素晴らしく、不可欠であり、組織の‘ホメオスタシスのゾーン’を増大させるものです。私達はしばしば、関連のある領域での身体的負荷と身体的・生理学的適応の発生を可能にするために、予測行動に取り組まなければなりません。 恐らく、身体的側面よりも、習慣を打破することは、いかなる治療アプローチにおいて最も重要なことであり、身体的要因が影響されることをも可能にしています。 スポーツにおいて予測が利用されているのを常に目にしています スポーツにおいて、私達は、反応することが不可能のような特定の状況において、予測を必要とします。一つの例として、テニスにおいて、私達は予知反応の使用を目にします。エリートテニスプレイヤーのサーブは、人間の反応時間の域を超えているかもしれないという仮定さえたてられているのです。 これは、知覚−行動プロセスとして議論されています*ここをクリックしてください*。知覚するために、私達は、その身体的合図が何を意味するのかに関して、いくらか蓄積された記憶を持たなければなりません。これは、テニスの状況において、初心者プレイヤーよりも、エキスパートプレイヤーのパフォーマンスの方が優れているという事実によってある程度示されていますが、これは非特異的反応における状況では示されていません。 興味深いことに、エキスパートプレイヤーの反応時間は、機械を相手にしたときよりも、生身の人間を相手にしたときの方が速かったのです。ここでも、蓄積された記憶と関連のある身体的合図の増加は、予測的プロセスと反応時間を向上させたということを潜在的に強調しています。 ここに、スポーツにおいてアスリート達が使用する、対戦相手のアスリート達の予測能力を逆手に取るいくつかの状況があります。 テニスにおいて、プレイヤーは、対戦相手を反対方向へ移動させるために、工夫してボールを特定の場所に打ちます。 ボクシングにおいて、ボクサーはカウンターを打つために、パンチをフェイントして対戦相手の反応を引き出します。 サッカーにおいて、PK戦ではゴールキーパーを反対方向に跳ばせるために、その方向に視線を送ります。 多くのスポーツが、‘ゲームを読める’選手を話題にします。これは、より優れた記憶−予測モデルなのかもしれません。 慢性痛に対する影響 これは、痛みの記憶’という概念を持つ慢性痛に関して着目されていて、以前に、私はこれに関する詳細を記述しています。 これは、痛みの関連性が神経パターンとして、あるいは‘記憶’として蓄積されるようになるところであり、もしかすると、身体からの傷害シグナルが無い場合に思い出され、ひょっとしたら固有感覚シグナル、あるいは行動目的/計画とさえ結合されるようになるかもしれません。 このパターン認識、脅威に関連する知覚、関連する防御の感覚予測と運動予測が、特定の運動、あるいは身体の特定部位からの運動に反応した、慢性痛患者の振る舞いにおいて見られるもののいくつかを、いくらか説明可能にしてくれるかもしれません。 覚えておいてほしいこと ここに脳機能の記憶−予測/ベイズ推論モデルに着目することによって、活用することことができると私が感じるいくつかの基本事項があります。 状況が鍵。単に筋肉、神経、関節等ではなく、習慣と行動に注意を向けることが、長期的変化をもたらすために重要である。 蓄積・読み出しを行うために、新しい有益な経験を作り出す。これは、今後の予測的行動に影響を与えるかもしれない。 私達の心理的信念が、運動行動に影響を与えることができる。 私達の運動行動が、局所的な組織耐性に影響を与えるかもしれない。

ベン・コーマック 3376字

馬券売り場へ行くことは、脳、運動、痛みに関して、あなたに何を教えてくれるでしょうか? パート1/2

これは、私達が予測的な脳機能の理解と、その論題に答える手助けをするための私のお気に入りの例えの一つです。最初に、馬券売り場に移動しましょう。 あらゆる自尊心のある“賭け事をする人”は、彼等が賭けようとしているチーム、あるいは馬の調子を熱心に研究するでしょう。そうでなければ、ただ単に手痛い出費を負うだけです。 あなたは下記のように自問するかもしれません: 最初に、彼らは歴史的に勝者なのか?そして、優れた実績があるのか? 次に、あなたは、彼等が最近勝っているのか、負けているのかといった、現在の調子を調査したいかもしれません。 もし私達がマンチェスター・ユナイテッドFCに着目するなら、彼等は20年以上にわたり偉大な勝利の歴史を築いていますが、ここ数シーズンの彼等のパフォーマンが、現在のパフォーマンスに対する自信を抑えることになるかもしれません。 基本的に、2つの要素があります: 1. これまでに何が起こっているのか? 2. 今現在何が起こっているのか? それらの両方が、今後起こるであろう事に関する私の予測に影響を及ぼすでしょう。賭け事の世界では、それが賭ける金額と直接的に関連するのです!  私は、不確実な将来の状況を成立させるために、私の将来の活動を形作る確率比、あるいは尤度比を作り出すために過去と現在の状況を利用しています。 この概念は、18世紀にトーマス・ベイズ師が提唱した‘ベイズの定理’による統計に関連して検査されました。‘ベイズ推論’は、脳機能を含む数多くの状況に適用されています。 では、ベイズ推論は、脳、運動、痛みとどういう関係があるのでしょうか? これぞまさに、私達の脳の働きの仮説となっているものなのです。 潜在的な結果の確率を算出するために、コンピューターのように起こりうる全ての結果を計算するというより、私達は自動的に現在の状況をこれまでの経験と結びつける可能性があり、そこから適切な対応を考案するという、記憶−予測モデルを使用するとされています。 私達は、記憶を感覚情報、あるいは行動計画のような意図とのマッチングを通して、これらの記憶を引き起こします。蓄積された神経パターンを現在の感覚入力とマッチングすることは、潜在的な結果の確率を作り出します。 予測的脳機能に関して、より賢い人たちによって精査を受ける、私自身の単純なモデルがあります。 パターン−感覚情報、あるいは意図パターンに応じてアクセスするための蓄積された神経パターン 知覚−蓄積されたパターンと実際の感覚入力の解釈 予測−知覚に応じた出力プログラム もし私達が、知覚された脅威への反応としての痛みについて考察するならば、私達のこれまでの経験は潜在的な脅威に対する現在の知覚に影響を及ぼすでしょう。これは、痛みとの関係性に関して、モーズレーやメルザックはじめとする研究者達によって、すでに議論されています。 なぜ脳はこのように機能するのでしょうか? 提案する一つの理論は、脳は膨大な力を持っているが、実際は、その働きにおいては非常に遅いということです。潜在的な理由は、人間の生物学的本質です。ニューロンが脱分極を通して活性化され、活動電子が発生されるとすぐに、ニューロンは再分極する必要があり、このプロセスは、その静止状態に戻るまで時間が掛かります。 これは、変化するために細胞内の要素のバランスを必須とするプロセスで、私達は、膨大なニューロンを持っていますが、特にそれらが不応期の際には運動が(幾分)遅いのです。 この予測的な働きはまた、肉体行動の制御を分散化しているモデルの理由としてしばしば挙げられる末梢からの情報の処理時間において、待ち時間(遅延)を減らすかもしれません。 なぜこれが重要なのでしょうか? 私達は、身体的行動を生じさせるための、筋肉、腱、骨の機械的作用の産物として運動反応をしばしば目にします。あなたの筋肉が硬かったり、弱かったりして運動反応に影響を及ぼすので、適切な反応を起こすために、私達は筋肉を強化、あるいは伸ばす必要があります。 恐らく、私達の現在の反応は、単に身体的パラメーターによって制約されているわけではなく、現在の事象、ひいては関連する反応に対する私達の知覚を形作るこれまでの経験によって引き起こされています。 一つの例として、姿勢のような状況を変えるために、私達は歴史的に筋肉の伸長や強化に携わってきています。そして、逸話的な成功は別として、実際に誰かの姿勢を変えることのできる経験的証拠を目にすることはほとんどありません。ランニング時の足運びに関しても同様で、関節可動域や筋の硬さは、筋肉の強さにかかわらず、実際には足が地面に着く前にすでにプログラムされているかもしれず、筋肉のストレッチや強化が、誰かの走り方に与える影響はほとんどないのかもしれません。 私達の筋反応は、より身体的な制約というよりも特定の状況に応えて読み出される、  神経系によって蓄積されたパターンの癖によって引き起こされるのかもしれません。 よって、基本的に、もし私が以前に痛みを経験したことがあれば、これが私の今後の反応を形作るかもしれないということです。 必要とされている状況:腕を挙げる 潜在意識下の分析:以前に腕を挙上することが痛みを起こしているので、またいたみがあるかもしれない。痛みを制限するためにどうしたらよいか?あるいは、他にどのようにしたら痛みなく腕を挙げることができるか? そこで、肩の筋肉の基本的な硬さや弱さにかかわらず、以前の疼痛経験への反応として腕を上げることで、私の運動反応は肩の筋肉群を硬直させるかもしれません。肩の筋肉群は、疼痛発生の確率が高いと見なされる特定の状況に応じて硬直するかもしれません。この確率比は、痛みが長引くほど、高くなるかもしれません。 私達はまた、増大する実際の痛み、あるいは出力応答としての感覚の増大を作り出すことによって、腕の動きを制限するかもしれません。 感覚系を有するポイントの一部は、その人とその人の脳に、身体に起こっている事と、その個人にもたらすかもしれない脅威の末期的な状況を警告することです。

ベン・コーマック 2644字

筋膜の臓器を創る:臓器の筋膜マトリックスを露わにする パート2/2

著者:ロリース・ニーメッツ この数年間に渡って助手として参加してきた解剖ラボにおいて、ほとんどの検体は薬品処理されたものであり、大抵ホルマリン混合薬品が利用されているため、結合組織の大部分が綿飴のような物質に変形し、人工的な硬直がおきています。近年では、新鮮な(冷凍)組織が好まれており、動きがより自然に復元できるうえ、筋膜が根本的に変質していないため「幽霊の心臓」あるいは他の臓器を作り出すことが考えやすくなりました。私は、これらの臓器を幹細胞で再生することではなく、従来の筋骨格の解剖学ではない、筋膜の連結網を地図のように「見る」ことのできるモデルを作ることに関心を持っています。 私のフォーミュラ?私の研究概要より(Nemetz, 2015 FRC): …幾つかの最新文献に基づいて15段階を経て最終モデルを作り出しました。 無菌塩基溶媒の代わりに、著者は卓上塩と水で生理的食塩水を作成。ペプチド結合を切断するトリプシンの代わりには、(パパイヤなどの果実由来の)ブロメレインまたは肉柔化剤を利用することができ、この実験では後方を選択しました。脂肪を分解するトリトン Xの代わりに、ラウリル硫酸ナトリウム、あるいはラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)が原料に含まれた一般的な陰イオン性強力洗剤を使うことができます。これは数回の実験で試用されました。著者は、ラウリル硫酸ナトリウムの含有率が高い一般的なシャンプーを使用。最終的に、酸素と水分との相互関係を利用した非塩素系漂白剤として働く、主原料が過炭酸ナトリウム(2Na2CO3•3H2O2) 、「オキシクリーン」という製品を最終段階で用いました。 私は、科学論文であげられた薬品に類似した一般家庭で使用されている材料を取り上げました。手術に利用するのが目的ではないため、無菌溶媒である必要はないとはいえ、私の過程が十分に正確かどうかに不安はありました。本格的な化学実験において、ラウリル硫酸ナトリウムの代わりに脂肪分解のために一般的なシャンプーが使用されていることを知っており、それを主原料としながらも、あまりにも強力だとECMまで破壊される可能性があることも念頭において、店内の棚を探したのです。私の手法と材料は原始的なので、身体の部分によっては繊細な結合組織を残して細胞組織だけを除去するのは容易ではありません。将来、これがもう少し楽になれば良いと思っています。暗室で写真を現像する際に例えれば、「開始」溶液と「停止」溶液など様々な化学処理過程を踏まえるのと類似しています。まだ現像が途中の写真をある溶液に浸し過ぎると写真がダメになるのと同じように、臓器も長く浸し過ぎるとECM自体まで破壊される可能性があります。 最初の(2015年に比較的成功した)心臓実験以来、私は2016年1月に実施された3週間のアナトミートレインの解剖教室で5つの心臓を用いてこの実験を再現しました。結果は、すべてが組織の枠組みを作り始めましたが、最も成功したのは、解剖前に冷凍されていない献体の心臓でした。これが臓器移植に望まれる過程に最も近いものであったと言えます。深冷凍は細胞壁を弱めるため、非細胞化の開始は必要な過程であるものの、これが長くなり過ぎると、崩壊の度合いも大きくなり過ぎてしまいます。 私は、最後の週に違う臓器で実験することに関心を抱き、腎臓を選びました。正常な量の脂肪に包まれた健康的に見える腎臓を選びながらも、腎臓のECM以外の細胞組織を十分に取り除くことができるかどうかに疑問を抱いていました。しかし、ここで見られるように、腎臓でも満足できる結果が得られたのです。 これが「幽霊」腎臓の結果です(写真参照)。結論として、作家であり美術歴史家、ジョン・バージャーの重要な著書「視覚とメディア」(1972年)の言葉を借りれば、「私達が目で見ることと、頭で理解することとの間の関係は、まとまることがない。毎晩、夕日が沈むのを目で見る。太陽から地球が逆方向に回転していることは知っている。それなのに、その知識、その説明は、目で見ている光景にどうしても添わない。」そもそも私は、従来の物の見方に挑戦することで、アナトミートレインと出会いました。これから先、筋膜のモデルがより一般的になることには疑いの余地もありませんが、それによって人体の見方に対する疑問が新たに生まれてくることでしょう。 ローリーは、アナトミートレイン(AT)の認定教員であり、北米各地においてATのムーヴメント教室を教え、2014年から現在までアナトミートレインの解剖ラボの助手を務めている。長い経歴を持つ認定ヨガ教員(RYT500)、ストット・ピラティス®認定インストラクター、および、ダンス・ムーヴメント・セラピスト・アカデミーの委員会認定メンバーであり、創造美術セラピスト(精神医療士)免許を持つ。YTA(ヨガ教員アソシエーション)の元会長を務め、2007年から現在までペース大学の教授を務める。 www.wellnessbridge.com

キネティコスゲスト 2121字