ストレングストレーニングは脳震盪の予防に役立つか? パート1/2

脳震盪は、今注目の話題です。議論のほとんどが、防具の使用についてや、あるいは競技の危険性を減らすためにどのようにルールを変更するかということに注目しがちですが、ルールの変更は長年のファンたちを挑発してしまうかもしれないものです。 対照的に、ストレングストレーニングが脳震盪の発生を減らす可能性があると想像する人はあまりいません。しかし、それがまさに一部の研究者たちが調査してきていることなのです。 研究の中には少し分かりにくいものもありますが、私はストレングストレーニングが脳震盪の発生を減らせるかもしれない理由についていくつか考えがあります。 脳震盪とは何か? 見解報告書では、通常脳震盪を以下のように定義しています: 「生体力学的力により引き起こされる、脳に影響を及ぼす複雑な病態生理学的過程(McCrory et al. 2013)」 あなたは「生体力学的力により引き起こされる」という部分を「頭を強く打たれること」と解釈したくなってしまうかもしれませんが、実際にはそれは少し間違っています。 スポーツ医学研究を定期的に読んでいない人が知ったら驚くかもしれませんが、事実、脳震盪を引き起こすには、生体力学的力が直接頭に与えられなくてはならないというわけではないのです。実際に同じ見解報告書の中で下記を知ることができます: 脳震盪は、頭部へ伝達される“衝撃的”力を伴う頭部、顔、首、あるいは身体の他の部位への直接の強打によって引き起こされる(McCrory et al. 2013) 私はスポーツ医師である仲間たちから、実際に多くのスポーツでは頭を打たれることが脳震盪の一般的な原因であると教わっていますが、脳震盪は頭を強く打たれなくてはならないという考えは正確ではないのです。 たとえそうだとしても、このことはあなたに何が脳震盪を本当に引き起こしているのだろうか?と考えさせませんか? 脳震盪を本当に引き起こすものは何か? 脳震盪は、与えられた外力によって頭部が大きく加速または減速をすることで起こります(Broglio et al. 2010; Blennow et al. 2012)。この外力によって頭部のスピードが突然変えられると、脳はそれまで進んでいた方向に進み続け、それによって内的な力が生じることになります(Guskiewicz & Mihalik, 2006)。 先ほど言及したように、これらの外力は、何も装着していない頭部への強打のように直接与えられることもあります。また、それらの外力がむち打ち効果で身体の別な部位に間接的に与えられる、ということも稀にあります(Tucker, 2014)。 生体力学的に、私たちは頭部に与えられた加速または減速を、三つの運動面(矢状面、前額面、そして水平面)に分解して評価することができます。文献では、よくそれらを直線的運動(矢状面または前額面)と回旋的運動(水平面)として分類しています(Meaney & Smith, 2011)。これらの加速または減速によって、剪断荷重と圧力の両方が脳にかかります。 回旋的運動の方が脳内でより大きい剪断力を生み出す能力が高い可能性があるため、回旋的運動は直線的運動よりもわずかながら脳震盪を引き起こす可能性が高いようです。どちらのタイプの運動も脳震盪を引き起こしますが(Broglio et al. 2010)、回旋的運動の方がより大きなダメージを与えると考えられています(Zhang et al. 2004; Kleiven, 2007; Forbes et al. 2012)。 正確なメカニズムが何であれ、私たちに必要なものは、衝撃中にエネルギーを吸収するのを助けることのできる何かのようです。それによって頭部に伝達される運動エネルギーをより小さくし、身体の他の部分でもっと消散されるようにできるでしょう。 もしかしたら、首のストレングストレーニングがその役目を果たせるでしょうか? 首のストレングストレーニングによって、頭部に影響を及ぼす衝撃中により多くのエネルギーを吸収できるようになるだろうか? もしストレングストレーニングが衝撃中にエネルギーを吸収する筋肉の能力を高めることができるのであれば、それはいくらかの脳震盪が起こるのを防ぐのに役立つかもしれません(Barth et al. 2001; Cross & Serenelli, 2003)。 私たちは、下半身のストレングストレーニングが、ドロップジャンプを含む多くの運動動作において筋肉のエネルギーを吸収する能力を高められることを知っています。 また、私たちは、このストレングストレーニングによって向上したエネルギーを吸収する能力は、筋力の向上によって引き起こされること、更に具体的に、特定の伸張性筋力の向上によるものであろうと推測しています。 それでは、特定の首のストレングストレーニングエクササイズは、運動エネルギーが頭部に届く前、あるいは衝撃が直接頭部に与えられたときのいずれかにおいて、それが運動エネルギーを吸収する能力を発達させるのに役立つのでしょうか? その可能性は大いにあります。 研究は、この質問を様々な方法で調査することができます。 第一に、私たちが電極で計測することのできるアクティベーションの度合いは、筋肉が生み出す力の量と関連していることから、筋電図(EMG)調査は、頭部の加速の要因となる衝撃中の首の筋肉の機能を見るための手段を提供してくれます。 第二に、関連性を調査している観察調査は、首の筋力がより強い人たちは、衝撃中に受ける頭部の加速がより小さくなる傾向があるかどうかを私たちに示してくれます(もちろん、首の筋力があるからといってそれが使われているという保証はないのですが)。 第三に、介入を用いた長期的調査は、頭部に影響を及ぼす衝撃中に経験する頭部の加速量を、首の筋力トレーニングが実際に変化させるかどうかを教えてくれます。 首の筋肉のより大きいアクティベーションは、衝撃中の頭部の加速を減らすか? 筋電図調査は、私たちに運動中の筋肉の習性について多くのことを伝え、またそれは頭部に影響を及ぼす衝撃中の首の筋肉を調査するとき特に有益です。 例えば、ハムストリングがスプリントで着地(グラウンドコンタクト)する前にプレアクティベーションをする時と同じように、首の筋肉と僧帽筋は、サッカーボールをヘディングする際、ボールが当たる前にプレアクティベーションをします(Bauer et al. 2001)。 このことは、衝撃時に放出する前に弾性エネルギーを蓄える、首の筋肉の伸張性収縮を伴う準備反応があることを示唆しています(Dezman et al. 2013)。この準備反応は、なぜ差し迫った衝撃への認知が頭部の加速を減らすのかを説明しているかもしれません(Kumar et al. 2000)。 加えて、首の筋肉のより高いアクティベーションは、制御試験での頭部の加速の減少と関連しており(Eckner et al. 2014)、衝撃時に首の筋肉のアクティベーションを高めるためにマウスガードを噛みしめることにより、ラグビーのドリル中(Hasegawa et al. 2014)、そしてサッカーボールをヘディングした時(Narimatsu et al. 2015)の両方において、頭部に与えられた加速が減少しています。 マウスガードを噛みしめることで頭部の加速は減少する 筋肉のアクティベーションはその筋肉により生み出された力に関連することから、これらの発見は、衝撃時に首の筋肉によって発揮されたより大きな力が頭部の加速の減少を導くことを示唆しています。 より大きな首の筋力は衝撃中の頭部の加速を減らすのか? 観察調査では、首の筋力がより高い人は、頭部に影響を与える衝撃中に受ける頭部の加速がより低いのかどうかについて知ることができます(上でも述べたように、単に筋力を持っているからと言ってそれが使われるという保証はないのですが)。 この調査は、一セッション中(横断調査)あるいは競技シーズンを通して(縦断調査)、首の筋力及び頭部の加速についてのデータを記録することによって行うことができます。 Tierney et al. (2005; 2008)は、二つの似たような調査の中で男女のグループを比較し、首の筋活動を事前に始動し、最大能力のより高い割合まで上げていたにも関わらず、女性のピーク加速が男性よりも大きかったことを発見しました。これは女性の首のサイズがより小さいことに加え、首の筋肉の最大等長性(アイソメトリック)筋力がより低いからかもしれません。複数の研究が、女性は男性よりも脳震盪の受傷リスクが高いことを示唆しているように、これは極めて重要なことです(Covassin et al. 2003; Dick et al. 2009)。 他の研究者たちは、一回のテストセッション中の単一被験者グループ内における、頭部の加速と首の筋力との関連性を調査してきました(Dezman et al. 2013; Schmidt et al. 2014; Gutierrez et al. 2014; Eckner et al. 2014)。彼らは相反する結果を報告しており、非アスリートを使った2つの研究では、より大きな首の筋力は頭部の加速の減少と関連していないと報告しており(Dezman et al. 2013; Schmidt et al. 2014)、またコンタクトスポーツのアスリートにおける2つの研究では、その関連性があることを発見しています(Gutierrez et al. 2014; Eckner et al. 2014)。 シーズン開始時の首の筋力を評価し、その後経時的に頭部の加速を測定した別の研究では、2つの変数の間に関係は見つかりませんでした(Mihalik et al. 2011)。しかしながら、調査の対象者が皆同じ数、または同じような性質の衝突を受けているわけではないことは明らかであり、シーズン中のプレー固有の変動性は、これらの調査結果を評価するのを難しくしています。 全体的に見て、このことは、首の筋力は一要素であるとはいえ、常習的に頭部の加速を受けているアスリートの被験者は、衝撃に対し身構えるために首の筋力を十分に使うことがより良くできるということを示唆しているでしょう。その一方で、トレーニングを積んでいない人たちは、頭部の加速に抵抗するために首の筋力を効果的に使うことができない可能性があり、このことが頭部の加速と首の筋力との関連性を減らしてしまうのかもしれません。 参照 Barth, J. T., Freeman, J. R., Broshek, D. K., & Varney, R. N. (2001). Acceleration-Deceleration Sport-Related Concussion: The Gravity of It All. Journal of Athletic Training, 36(3), 253. Bauer, J. A., Thomas, T. S., Cauraugh, J. H., Kaminski, T. W., & Hass, C. J. (2001). Impact forces and neck muscle activity in heading by collegiate female soccer players. Journal of Sports Sciences, 19(3), 171-179. Blennow, K., Hardy, J., & Zetterberg, H. (2012). The neuropathology and neurobiology of traumatic brain injury. Neuron, 76(5), 886-899. Broglio, S. P., Schnebel, B., Sosnoff, J. J., Shin, S., Feng, X., He, X., & Zimmerman, J. (2010). The biomechanical properties of concussions in high school football. Medicine & Science in Sports & Exercise, 42(11), 2064. Burnett, A. F., Naumann, F. L., Price, R. S., & Sanders, R. H. (2005). A comparison of training methods to increase neck muscle strength. Work, 25(3), 205-210. Collins, C. L., Fletcher, E. N., Fields, S. K., Kluchurosky, L., Rohrkemper, M. K., Comstock, R. D., & Cantu, R. C. (2014). Neck strength: a protective factor reducing risk for concussion in high school sports. The Journal of Primary Prevention, 35(5), 309-319. Conley, M. S., Stone, M. H., Nimmons, M., & Dudley, G. A. (1997). Specificity of resistance training responses in neck muscle size and strength. European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology, 75(5), 443-448. Covassin, T., Swanik, C. B., & Sachs, M. L. (2003). Sex Differences and the Incidence of Concussions Among Collegiate Athletes. Journal of Athletic Training, 38(3), 238-244. Cross, K. M., & Serenelli, C. (2003). Training and equipment to prevent athletic head and neck injuries. Clinics in Sports Medicine, 22(3), 639-667. Dezman, Z. D., Ledet, E. H., & Kerr, H. A. (2013). Neck strength imbalance correlates with increased head acceleration in soccer heading. Sports Health: A Multidisciplinary Approach. Dick, R. W. (2009). Is there a gender difference in concussion incidence and outcomes?. British Journal of Sports Medicine, 43(Suppl 1), i46-i50. Eckner, J. T., Oh, Y. K., Joshi, M. S., Richardson, J. K., & Ashton-Miller, J. A. (2014). Effect of neck muscle strength and anticipatory cervical muscle activation on the kinematic response of the head to impulsive loads. The American Journal of Sports Medicine, 42(3), 566-576. Forbes, J. A., Awad, A. J., Zuckerman, S., Carr, K., & Cheng, J. S. (2012). Association between biomechanical parameters and concussion in helmeted collisions in American football: a review of the literature. Neurosurgical focus, 33(6), E10. Gilchrist, I., Storr, M., Chapman, E., & Pelland, L. (2015). Neck Muscle Strength Training in the Risk Management of Concussion in Contact Sports: Critical Appraisal of Application to Practice. Journal of Athletic Enhancement 4: 2. of, 19, 2. Guskiewicz, K. M., & Mihalik, J. P. (2006). The Biomechanics and Pathomechanics of Sport-Related Concussion. In Foundations of Sport-Related Brain Injuries (pp. 65-83). Springer US. Gutierrez, G. M., Conte, C., & Lightbourne, K. (2014). The relationship between impact force, neck strength, and neurocognitive performance in soccer heading in adolescent females. Pediatric Exercise Science, 26(1), 33-40. Hasegawa, K., Takeda, T., Nakajima, K., Ozawa, T., Ishigami, K., Narimatsu, K., & Noh, K. (2014). Does clenching reduce indirect head acceleration during rugby contact? Dental Traumatology, 30(4), 259-264. Herman, D. C., Oñate, J. A., Weinhold, P. S., Guskiewicz, K. M., Garrett, W. E., Yu, B., & Padua, D. A. (2009). The effects of feedback with and without strength training on lower extremity biomechanics. The American Journal of Sports Medicine, 37(7), 1301. Hrysomallis, C. (2016). Neck Muscular Strength, Training, Performance and Sport Injury Risk: A Review. Sports Medicine, 1-14. Kleiven, S. (2007). Predictors for traumatic brain injuries evaluated through accident reconstructions. Stapp Car Crash Journal, 51, 81-114. Kramer, M., Hohl, K., Bockholt, U., Schneider, F., & Dehner, C. (2013). Training effects of combined resistance and proprioceptive neck muscle exercising. Journal of Back and Musculoskeletal Rehabilitation, 26(2), 189-197] Kumar, S., Narayan, Y., & Amell, T. (2000). Role of awareness in head-neck acceleration in low velocity rear-end impacts. Accident Analysis & Prevention, 32(2), 233-241. Leggett, S. H., Graves, J. E., Pollock, M. L., Shank, M., Carpenter, D. M., Holmes, B., & Fulton, M. (1990). Quantitative assessment and training of isometric cervical extension strength. The American Journal of Sports Medicine, 19(6), 653-659. Lisman, P., Signorile, J. F., Del Rossi, G., Asfour, S., Eltoukhy, M., Stambolian, D., & Jacobs, K. A. (2012). Investigation of the effects of cervical strength training on neck strength, EMG, and head kinematics during a football tackle. Int J Sports Sci Eng, 6, 131-140. Maeda, A., Nakashima, T., & Shibayama, H. (1994). Effect of training on the strength of cervical muscle. The Annals of Physiological Anthropology, 13(2), 59-67.] Mansell, J., Tierney, R. T., Sitler, M. R., Swanik, K. A., & Stearne, D. (2005). Resistance training and head-neck segment dynamic stabilization in male and female collegiate soccer players. Journal of Athletic Training, 40(4), 310. McCrory, P., Meeuwisse, W. H., Aubry, M., Cantu, B., Dvořák, J., Echemendia, R. J., & Sills, A. (2013). Consensus statement on concussion in sport: the 4th International Conference on Concussion in Sport held in Zurich, November 2012. British Journal of Sports Medicine, 47(5), 250-258. Meaney, D. F., & Smith, D. H. (2011). Biomechanics of Concussion. Clinics in Sports Medicine, 30(1), 19-31.] Mihalik, J. P., Guskiewicz, K. M., Marshall, S. W., Greenwald, R. M., Blackburn, J. T., & Cantu, R. C. (2011). Does cervical muscle strength in youth ice hockey players affect head impact biomechanics? Clinical Journal of Sport Medicine, 21(5), 416-421. Naish, R., Burnett, A., Burrows, S., Andrews, W., & Appleby, B. (2013). Can a specific neck strengthening program decrease cervical spine injuries in a men’s professional rugby union team? A retrospective analysis. Journal of Sports Science & Medicine, 12(3), 542. Narimatsu, K., Takeda, T., Nakajima, K., Konno, M., Ozawa, T., & Ishigami, K. (2015). Effect of clenching with a mouthguard on head acceleration during heading of a soccer ball. General Dentistry, 63(6), 41-46.] Nezamuddin, M., Anwer, S., Khan, S. A., & Equebal, A. (2013). Efficacy of pressure-biofeedback guided deep cervical flexor training on neck pain and muscle performance in visual display terminal operators. Journal of Musculoskeletal Research, 16(03), 1350011. O’Leary, S., Jull, G., Kim, M., & Vicenzino, B. (2007). Specificity in retraining craniocervical flexor muscle performance. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 37(1), 3-9. Portero, P., Bigard, A. X., Gamet, D., Flageat, J. R., & Guézennec, C. Y. (2001). Effects of resistance training in humans on neck muscle performance, and electromyogram power spectrum changes. European Journal of Applied Physiology, 84(6), 540. Schmidt, J. D., Guskiewicz, K. M., Blackburn, J. T., Mihalik, J. P., Siegmund, G. P., & Marshall, S. W. (2014). The influence of cervical muscle characteristics on head impact biomechanics in football. The American Journal of Sports Medicine, 42(9), 2056. Taylor, M. K., Hodgdon, J. A., Griswold, L., Miller, A., Roberts, D. E., & Escamilla, R. F. (2006). Cervical resistance training: effects on isometric and dynamic strength. Aviation, Space, and Environmental Medicine, 77(11), 1131-1135. Tierney, R. T., Sitler, M. R., Swanik, C. B., Swanik, K. A., Higgins, M., & Torg, J. (2005). Gender differences in head-neck segment dynamic stabilization during head acceleration. Medicine & Science in Sports & Exercise, 37(2), 272-279. Tierney, R. T., Higgins, M., Caswell, S. V., Brady, J., McHardy, K., Driban, J. B., & Darvish, K. (2008). Sex differences in head acceleration during heading while wearing soccer headgear. Journal of Athletic Training, 43(6), 578-584. Zhang, L., Yang, K. H., & King, A. I. (2004). A proposed injury threshold for mild traumatic brain injury. Journal of Biomechanical Engineering, 126(2), 226-236.

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4522字

スプリントのためのレジスタンストレーニング

目的 この記事は、趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングを行う成人アスリートのいずれかにおいて、従来のレジスタンストレーニングは、スプリントスピードを向上するためにどの程度効果的であるかということを堤示している。 背景 序論 レジスタンストレーニングは、スポーツパフォーマンスを向上するための、極めて伝統的な方法のひとつである。それは筋力および筋サイズを増加し、アスリートの力生成能力を向上する。レジスタンストレーニングの幅広い導入以前、多くのコーチたちは、ウェイトリフティングは(エクササイズが競技に特化していないため)無効であり、アスリートを大きく、強く、そして筋骨隆々とするため、彼らを減速するであろうと信じていたが、後にこの批評は不当であるということが発見されている。興味深いことに、30-40年前にレジスタンストレーニングの反対者により行われた議論と、現在、高負荷レジステッドスプリントトレーニングの使用に反対するコーチたちによる議論には、多くの共通項が見られる。レジステッドスプリントトレーニングと同様に、レジスタンストレーニングの際の実際の負荷は、(スクワットやデッドリフトのような軸方向エクササイズを使用する)垂直方向、もしくは(プルスルー、ヒップスラスト、グルートブリッジ、もしくは水平バックエクステンションのような、前後方向のエクササイズを使用する)水平方向のどちらも有りえる。 動作のメカニズム レジスタンストレーニングが、スプリント速度を向上するためのトレーニングプログラムに一般的に含まれるようになったのは、過去数十年ほどのことである。レジスタンストレーニングは、その低速における力生成を向上する能力により効果的であり、また、本来筋肉に備わっている力対速度の関係により、より高速における力生成能力を向上する。 メタ分析 趣味としてトレーニングを行うアスリート レジスタンストレーニングは、スプリント速度を向上するために広く調査されているため、様々な研究のメタ分析が可能である。ルンプおよびその他(2014年)は、趣味としてのアスリートにおける、スプリントパフォーマンス向上のための異なるトレーニング方法の影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らは、トレーニング方法を特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)、および非特異(プライオメトリック、レジスタンストレーニング、及びバリスティックトレーニング)へと分類した。彼らは、趣味としてのアスリートにおいて、スプリント速度を向上するために、特異および(レジスタンストレーニングのような)非特異両方のトレーニングは同様に効果的であったと記述している。実際に数人の研究者たちは、一般的なレジスタンストレーニングおよび特にスクワットエクササイズは、スプリント能力を向上するために効果的であるということを確認している。クローニンおよびその他(2007年)は、研究論文を再考察し、長期のレジスタンストレーニングプログラムから得られる最大スクワット強度の増加は、スプリントタイムの減少と関係があるということを報告している。しかし彼らはまた、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいて、有意義なスプリントタイム減少のためには、スクワット強度の大幅な増加が必要であると記述している。具体的に彼らは、約2%のスプリントタイムの減少のためには、約23%のスクワット強度の増加が必要であると観察している。より最近にはサイツおよびその他(2014年)が、(バックスクワットの1RMによる測定において) 下半身の筋力の増加と、40m以下の距離におけるスプリントパフォーマンスの間の長期的な関係を調査している。彼らは、スクワット効果量およびスプリント効果量の間において、統計的に有意である比較的大きな(R-squared = 0.60)相関関係を報告している。これは、1RMバックスクワットおよび短距離スプリント能力の間における密接な関係を発見した過去の筋断面解析(例、ヴィスロフおよびその他、2004年)を支持している。ゆえに一般的なレジスタンストレーニング、特にバックスクワットエクササイズは、スプリントパフォーマンスを向上することが可能であるということは比較的明白である。しかし両方の研究は、非常に限られたトレーニング経験しかない人を含む、広範な被験者を含んでいたという点で制限があった。上記の分析から、十分にトレーニングされた個人がより少なく除外されていた場合、そのような強い関係が存在していたかどうかは明確ではない。 高度にトレーニングされたアスリート 上記のようにメタ分析は、レジスタンストレーニングはスプリント能力を向上することが可能であり、また、彼らの比較的浅いトレーニング経験にもかかわらず、趣味としてトレーニングを行うアスリートにおいて、最大スクワット強度の増加はスプリントタイムの減少と関連があるということを報告している。このような発見は、高度にトレーニングされたアスリートに対しても、少なくともある程度は適用されるようである。実際にヴィスロフおよびその他(2004年)は、国際的レベルの男性サッカー選手において、最大スクワット強度および短距離スプリントパフォーマンス間の強い断面的相関関係を報告している。ルンプおよびその他(2014年)は、高度にトレーニングされたアスリートにおける、スプリントパフォーマンスに対する様々なトレーニングタイプの影響に関し、メタ分析を行った。最初に彼らはトレーニング方法を、特異(スプリントもしくはレジステッドスプリント)および非特異(プライオメトリックス、レジスタンストレーニング、そしてバリスティックトレーニング)に分類した。彼らは、特異および非特異な両方のトレーニング方法は効果的ではあると発見している。しかしながら彼らは、高度にトレーニングされたアスリートに対しては、レジスタンストレーニングのような非特異な方法は効果が低いということを記述している。彼らは、アスリートが既に筋力、パワー共に発達した基板を持ち、これは、追加のレジスタンストレーニングにより更に向上しなかったことに起因している可能性があると示唆している。高度にトレーニングされたアスリートは、相当量の最大スクワット(もしくは他のエクササイズ)強度を発達させることは不可能であるようであるという事実と併せ、これは、高度にトレーニングされたアスリートは、非特異な方法を使用する時間を減らし、より多くの時間を特異な方法に費やすべきであるということを示唆している可能性がある。 アスリートにおけるレジスタンストレーニングのスプリント速度への影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングされた成人アスリート 介入 – レジスタンストレーニング 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、ノートレーニングコントロール 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:フライ(1991年)、ホフマン(1991年)、ウィルソン(1993年)、ウィルソン(1996年)、マーフィ(1997年)、ハリス(2000年)、ブレイゼビッチ(2002年)、アスクリング(2003年)、ホフマン(2004年)、コチャマンディス(2005年)、ドッド(2007年)、レネスタッド(2008年)、ムジカ(2009年)、シェリー(2009年)、ヘルガード(2011年)、ヘルマシー(2011年)、レネスタッド(2011年)、ロッキー(2012年)、コンフォート(2012年)、サンダー(2013年)、ロツゥーコ(2013年)、クードラスキー(2014年)、ブリット(2014年)、トーマス(2014年)。これらの研究のほとんどは、レジスタンストレーニングは、アスリートにおけるスプリントパフォーマンスを向上するということを発見している。バックスクワットが使用されていなくとも向上が観察されたといういくつかの例(例:アスクリングおよびその他、2003年)は存在するが、含まれている研究の多くはバックスクワットを使用していた。 スプリント速度に対する、レジスタンストレーニングの際の負荷の影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングされた成人アスリート 介入 – 2つ以上の異なる負荷(つまりバー速度)におけるレジスタンストレーニング 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、ノートレーニングコントロール、および異なる負荷におけるレジスタンストレーニング 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:ハリス(2000年)、ブレイゼビッチ(2002年)。両方の研究は、低速および高速でのレジスタンストレーニングの間における差違を発見しなかった。これは、トレーニングされたアスリートにおいて、より低負荷およびより速いバー速度を使用することは、レジスタンストレーニングからのスプリントへの適応を最大化するために重要ではないかもしれないということを示唆している。 レジスタンストレーニングの際の、スプリント速度に対するエクササイズの影響 研究選択基準 集団 – 趣味としてトレーニングを行う、もしくは高度にトレーニングされた成人アスリート 介入 – 2つ以上の異なるエクササイズにおけるレジスタンストレーニング 比較 – ベースライン、ノーマルトレーニングコントロール、ノートレーニングコントロール、および異なる負荷におけるレジスタンストレーニング 結果 – 100m以下の距離におけるスプリントパフォーマンス 結果 以下の研究が選択基準に適合していると確認された:スピアーズ(2015年)。この研究は、両脚スクワットおよび後ろ足を挙上したスプリットスクワットトレーニングの間において、チームスポーツを行うアスリートにおけるスプリント能力の向上に差違はないということを確認している。これは、トレーニングされたアスリートにおいて、下半身の筋肉を発達させるために、ここで使用されたタイプのエクササイズは、レジスタンストレーニングからのスプリントへの適応を最大化するために重要ではないかもしれないということを示唆している。 スプリントに関する結論 様々なエクササイズを使用したレジスタンストレーニングは、アスリートにおけるスプリントパフォーマンスを向上させるために効果的なようである。低負荷およびより速いバー速度を使用することは、高負荷および遅いバー速度の使用に比べ、よりよい結果を生み出すわけではないようである。現在のところ、エクササイズ選択の影響は明確ではない。 高度にトレーニングされたアスリートは、レジスタンストレーニングのような非特異な方法からはより少ない恩恵しか受けない可能性があるが、趣味としてトレーニングを行うアスリートは、特異および非特異両方の方法から同様に恩恵を受ける可能性がある。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4687字

的確に構成されたウォームアップはパフォーマンスにどれだけの違いを生み出すのか?

多くのコーチやアスリートは、スポーツ前のウォームアップの内容に対しあまりこだわりを持っていない。しかし最近のいくつかの研究では、いくつかのスポーツにおいて、的確な内容のウォームアップはパフォーマンスに対し大きな影響を及ぼし得ると示している。この研究はボブ・スケルトンのスピードに及ぼす影響を論証している。 研究論文: エリートボブ・スケルトン選手のためのウォームアッププロトコールのデザイン、クック、ホルドクロフ、ドローア、キルダフ、スポーツ生理学&パフォーマンス、2012年 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、様々な異なるウォームアップの内容をコントロールされたウォームアップ、すなわち現在アスリートによって行われている標準的なウォームアップと比較し、その後実施されるスケルトンのパフォーマンスに及ぼす影響を評価しようと考えた。彼らは、イギリスオリンピックチームへの選抜に参加した6名(男性3名、女性3名)のスケルトン選手を集め、下記のようなウォームアップを実行した。 テストの35分前に終了する、20分間のアスリート自身のウォームアップを標準化したバージョン。これは、復路をウォーキングとした往路20mのジョギングとスキップを3セット、20mの最大下速度でのスプリントを3セット、20mのスプリントフォームドリルを3セット、20mのレッグスイング、クイックランファストフィート、ハイニーを2セット、10mの最高速度でのスプリントを3セット、30秒の混合体操(プレスアップ、デッドバグ、プランク)、2分のダイナミックストレッチから構成されていた。 より多くのスプリントドリルとスプリント、そしてより短いインターバルにより、ボリュームと強度が増したコントロールウォームアップのバリエーション。 2番目のバリエーションと同じだが、テストの35分前ではなく15分前に終了。 2番目のバリエーションと同じだが、それぞれ10分の2つのセグメントに分けられ、1つ目はテストの40分前に終了し、2つ目は15分前に終了。 4番目のバリエーションと同じだが、受動的に熱を保持するため、保温用の衣服を2つのウォームアップ間とテストまでの間に使用。 *** 何が起こったのか? 研究者たちは、3番目のウォームアップのバリエーションが最も速く、次に5番目、4番目と続くことを発見した。5番目のバリエーションはアスリートに最も人気があり、6名のアスリートに渡り全体で3.5%の向上がみられた。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは強度、継続時間、体温の全てがより良いウォームアップを生み出すことに有益であるという結論に達した。彼らは、2番目とほぼ同じだが、テストの35分前ではなく15分前に完了するという3番目のウォームアップバリエーションが最良だと結論付けた。しかしながら、5番目のウォームアップバリエーションは同じようなパフォーマンスの向上につながり、さらにこれはアスリートの間で最も人気があった。 *** 実践的な意義は何か? アスリートとコーチに対して スポーツのコーチは、特に寒い環境においては、的確な構成のウォームアップがエリートアスリートのパフォーマンスに非常に大きな違いを生み出すということに気づくべきである。 パフォーマンスイベント間際に終了し、より強度の高いウォームアップはよい良いパフォーマンスにつながる。 それに加え、寒い環境での熱の保持はパフォーマンスに明らかな差異を生み出すため、保温衣類の使用は有益である。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 1587字

ストレッチは筋力強化に対し逆効果なのか?

多くのコーチが、怪我を防ぐ為にウェイトトレーニングの前にストレッチを取り入れ、多くのボディービルダーが、ストレッチは筋肥大を助長すると信じ、セット間にストレッチを行う。しかしながら、この研究は、この方法が逆効果であるかもしれないと示している。 研究論文:静的ストレッチの筋力パフォーマンスと基底血清IGF-1レベルに対する慢性的影響、バストス、ミランダ、バーレ、ポータル、ゴメス、ノバエス、ウィンチェスター、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル2012年 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、レクリエーション程度にトレーニングを行っている30名の参加者を集め、下記のような3つのトレーニンググループへランダムに振り分けた。 ストレングストレーニング前に静的ストレッチを行った、事前ストレッチと呼ばれるグループ。 ストレングスエクササイズのセットの間、エクササイズ実施直前に、ある特定の同じ筋肉に対し静的ストレッチを行った、中間ストレッチと呼ばれるグループ。 トレーニング前、及びトレーニング中に全くストレッチを行わずストレングストレーニングを行った、ノーストレッチと呼ばれるグループ。 研究者たちは、10週間に渡るトレーニング期間の前後に、IGF-1レベルと様々なエクササイズ(ベンチプレス、ラットプルダウン、レッグエクステンション、レッグカール)の8RMを測定した。 *** 何が起こったのか? 研究者たちは、テストを行った4種類のエクササイズ全ての8RM強度において、2つのストレッチグループとノーストレッチグループとの間に著しい統計的な違いがあることを報告した。それに加え研究者たちは、ノーストレッチグループにおいてのみIGF-1の発現量が増加し、2つのストレッチグループのいずれにおいてもその著しい増加は見られなかったことを報告した。 研究者たちは、2つのストレッチグループ間における違いは確認しなかった。下記のグラフは4つ中3つのエクササイズにおいて強度が増したことを示している。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、10週間に渡るトレーニングプログラムの結果として、3つのグループ全てにおいて8RM の強度は増したものの、2つのストレッチグループにおいては、ノンストレッチグループに比べ、強度の増加が著しく低かったという結論に至った。 *** 制限要素は何か? この研究には下記のような2つの重要な点において制限があった。 この研究は、30秒間のストレッチを行った場合のみが調査された点において制限があった。他の研究では、ストレッチを保持している長さ(15秒に対し45秒)によりパワー産出に対する即時的影響に違いがでることが発見されている。故に、より短い時間でのストレッチでは、筋力の増強に対し同じような有害な影響は出ないかもしれない。 スプリントトレーニングやジャンプトレーニングにより何が得られるのか、というように、ストレッチがアスレチックパフォーマンスに対し同じような影響を及ぼすのかどうかということは知られていない。 *** 実践的な意義は何か? 全ての人に対して ストレッチのルーティーンがトレーニング前、もしくはセット間に行うことによって、ストレングストレーニングによる筋力増強度は、低下するであろう。 ボディービルダーや身体形状向上に対して セット間に徹底的にストレッチを行うボディービルディングのルーティーンは、筋肉を増強し肥大させるというゴールに対し逆効果である。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 1589字

異なる種類のトレーニングは前十字靱帯 (ACL) 損傷の生体力学的危険要因に異なった影響を及ぼすのか? パート2/2

何が起こったのか? 関節角度可動域の変化 研究者たちは、プライオメトリックグループが、膝関節の屈曲可動域と内旋可動域の著しい減少を示したことを発見した。一方、コアスタビリティのグループは、膝関節の屈曲可動域の著しい減少と、膝関節内旋可動域の著しい増加を示した。下記のグラフは両方のトレーニングプログラムによる変化を示している。 特に顕著であった結果は、両方のトレーニングプログラムが膝の屈曲可動域を減少させ、プライオメトリックトレーニングのみが膝の内旋可動域を減少させ、そしてコアトレーニングプログラムのみが膝関節の内旋可動域を増加させたことであった。 この膝関節屈曲に関する結果は、両方のトレーニングがより小さな可動域の中で減速が起こる「硬い」着地を行うことにつながり、より大きな関節負荷によってACL損傷のリスクを増加させる可能性がある、ということを暗示していることから、少々懸念されるものである。プライオメトリックトレーニングプログラムに関して、これは、プライオメトリックトレーニングは著しい最大膝関節屈曲可動域と最高膝関節屈曲可動域までの時間への減少につながるというレファート(2005年)の発見とは異なることとなる。しかしながら、ポラード(2006年)は、プライオメトリックトレーニングは、女性サッカー選手において膝関節屈曲可動域の大幅な減少にはつながらないということを発見している。 膝関節内旋可動域の結果は、プライオメトリックトレーニングプログラムが前額面の関節可動域の減少に対して有益であったのに対し、コアトレーニングプログラムは大いに有害であった、ということを示唆している。以前にも数人の研究者たちが、コアトレーニングの下肢の飛び降り着地の生体力学に対する影響についての調査を行ったが、チャペル(2008年)が統括的な神経筋トレーニングの一部としてコアスタビリティトレーニングを使用し、膝関節の内旋可動域の増加に対しての傾向は、強いものの、特に有意ではないと報告している。これらの発見は、ACL損傷の危険性のあるアスリートに対しては、コアトレーニングのみでは十分ではなく、レジスタンストレーニングやプライオメトリックなどの他のトレーニングも一緒に行うべきであると示唆している。 それほど有意ではない傾向に関して、この結果は、コアトレーニンググループに関しては唯一の大きな変化が股関節で起こっているということを示している。コアトレーニンググループは、股関節の屈曲と内旋可動域において、大きいが非有意な減少を示した。これらの変化は次のセクションで報告されている著しい関節モーメントの変化に対応しており、それ故興味深いものである。 関節モーメントの変化(トルク荷重) 研究者たちは、プライオメトリックグループが膝関節の屈曲と外転モーメントの著しい減少を示し、コアスタビリティグループが、著しい股関節の屈曲と内旋モーメントの減少を示したと観察した。下記のグラフは両方のプログラムの結果としての全ての変化を示している。 両方のトレーニングプログラムは膝関節屈曲関節モーメントの減少につながるが、プライオメトリックプログラムのみが膝関節外転関節モーメントの著しい減少につながった。より大きな膝関節外転関節モーメントはACL損傷の重要な危険要因であり、このことはプライオメトリックトレーニングがACL損傷予防に対し有益であるかもしれないということを示している。 コアトレーニンググループは、大きいが非有意な股関節の屈曲可動域と内旋可動域の減少を示し、これらの非有意な変化は、同等の股関節の関節モーメントの著しい変化に対応していた。このことは、コアトレーニングにおける股関節の関節角度可動域の変化は、統計的には有意ではないものの、意味深いということを示唆している。 それに加え、重要なこととして、より大きな股関節の内旋関節モーメントはACL損傷の非常に大きな危険因子であり、このことはコアトレーニングがACL損傷予防に対し有益な役割を果たし得るということを示している。 以前の研究評価では、8週間に渡る股関節主導と膝関節主導のエクササイズは膝関節の屈曲可動域の変化につながるが、股関節の屈曲可動域にはつながらないと記述されている。当時は、これはおそらく研究期間が短すぎたか、もしくはエクササイズの介入が股関節における変化をもたらせるのには十分でなかったからであろうと考えられていた。同じ事がこの研究においても起こる可能はあったが、股関節の関節角度可動域では著しい発見がなかったにもかかわらず、関節モーメントでは著しい変化がみられたことはとても興味深いことである。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、シーズン中、高校の女子アスリートへの4週間のトレーニングプログラムの実行は、関節モーメントと関節角度を変化させ、その結果がドロップジャンプの着地の際に現れていたという結論に至った。研究者たちは、プライオメトリックトレーニングは主に膝関節の関節角度と関節モーメントの変化につながり、コアスタビリティトレーニングは主に股関節と膝関節両方の関節角度と関節モーメントの変化につながると結論付けた。 関節角度の動きに関しては、両方のトレーニングプログラムは膝関節屈曲可動域の減少につながり、プライオメトリックトレーニングのみが膝関節内旋可動域を減少させ、コアトレーニングのみが膝関節内旋可動域を増加させた。コアトレーニンググループは、大きくはあるが非有意な股関節の屈曲可動域と内旋可動域の減少を示した。 関節モーメントに関しては、プライオメトリックグループは著しい膝関節屈曲と外転関節モーメントの減少を示し、コアスタビリティグループは股関節の屈曲及び関節内旋モーメントの著しい減少を示した。 プライオメトリックトレーニングは、膝関節の前額面と横断面の関節角度動作と関節モーメント(膝関節内旋可動域と膝関節外転関節モーメント)を減少させるという点において有益であった。また、コアトレーニングプログラムは股関節の横断面の関節角度動作と関節モーメント(股関節の内旋可動域と内旋モーメント)を減少させるということにおいて有益であった。 両方のプログラムは矢上面での関節可動域動作(膝関節屈曲可動域)を減少させるという点で有害であり、コアトレーニングプログラムもまた、(非有意ではあるが)股関節の屈曲可動域減少と膝関節の内旋可動域の増加につながるという点で有害であった。 それゆえ研究者たちは、プライオメトリックとコアスタビリティの両方がACL損傷予防に大切な役割を果たすと結論付けた。しかし、「柔らかい」着地をするために膝関節屈曲可動域を増加させ弊害を相殺するためには、プライオメトリックとコアスタビリティプログラムの両方をレジスタンストレーニングと一緒に行うべきである、と薦めるのが賢明であると思われる。 *** 制限要素は何か? この研究には下記のような点において制限があった。 被験者はランダムにそれぞれのグループへ振り分けられたわけではなく、異なるスポーツからのアスリートがそれぞれのグループを構成していた。 被験者はレジスタンストレーニングを行っているアスリートではなかった為、よりトレーニングされた人たちでは異なる結果が得られたかもしれない。 被験者はすべて女性であった為、男性では異なる結果が得られたかもしれない。 ここでテストされたのはコアトレーニングとプライオメトリックトレーニングの介入のみであり、レジスタンストレーニング、ストレッチ、アジリティなどのACL損傷予防プログラムとして一般的な他のトレーニング方法がこの研究には組み込まれていなかった。 研究者たちは様々な筋肉の筋電図活動や筋力を測定しなかったため、筋力、及び筋活動の増加や減少があった場合、同じような変化が起こるのかどうかを解明するのは困難である。 *** 実践的な意義は何か? ACL損傷の危険性のあるアスリートに対して: 特定の神経筋制御疾患がないアスリートは、コアトレーニング、プライオメトリックス、レジスタンストレーニングの組み合わせをACL損傷予防プログラムへ組み込むべきであり、1つのトレーニング方法のみに限るべきではない。 常に膝関節が外反しているアスリートは、股関節の内旋、膝関節の外転関節角度動作、関節モーメントを減少させるため、より一層コアトレーニングとプライオメトリックスをワークアウトに組み込むべきである。 特に「硬い」着地をする危険性のあるアスリートや、ジャンプの着地時に膝関節の関節可動域が少ないアスリートは、更に多くのレジスタンストレーニングをワークアウトの中に組み込むべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3767字

異なる種類のトレーニングは前十字靱帯 (ACL) 損傷の生体力学的危険要因に異なった影響を及ぼすのか? パート1/2

レジスタンストレーニングのプログラムは、アスリートがより「柔らかく」ジャンプから着地するようサポートすることで、ACL損傷の危険性を減らすことができる。 しかし、コアスタビリティプログラムやプライオメトリックプログラムもまた、ジャンプ着地時の生体力学を改良することにより、ACL損傷の危険性を減らすことができるのだろうか?だとすれば、いったいどのようにして? この研究は下記のことを解明するために行われた: 女子高校生アスリートにおける、異なるエクササイズトレーニングの介入と飛び降り着地の生体力学、 ピーファイル、ハート、ハーマン、ハーテル、ケリガン、インガソル、2013年アスレチックトレーニングジャーナル 背景 非接触のACL損傷は、男性よりも女性アスリートにより多く見られる。実際に研究では、同じスポーツを行った場合、女性は男性よりも3−4倍ACLを損傷する可能性が高いであろう、と示されている(例:グリンドスタッフ2006年)。 ジャンプ着地時の、いくつかの生体力学的特徴は、ACL損傷に対してより危険性が高いと認識されており、それらのいくつかは男性よりも女性において多くみられる。横断面や前額面における股関節や膝関節のより大きな関節角度可動域や、股関節と膝関節における関節モーメント(例:より大きな膝関節の外転、股関節の内転、股関節と膝関節の内旋)は、アスリートをより高いACL損傷の危険性にさらす可能性があると考えられている。 更に、膝の外反は、股関節の内旋、内転、及び膝関節の外転を含むため、しばしば明らかな危険要因と考慮される。一方、矢状面での股関節と膝関節のより大きな関節可動域(より大きな股関節屈曲及び膝屈曲)は、柔らかい着地を可能にすることによりACL損傷の危険性を減少させると考えられている。 必然的にほとんどの障害予防プログラムは、スポーツの動きの際、これらの生体力学的条件が満たされてしまうことを減少させるよう構成されている。 このようなプログラムは多くの場合、神経筋制御を向上させるために、バランス、下半身の強化、プライオメトリック、アジリティトレーニングを含んでいる。しかしながら、このようなプログラムの様々な要素の有効性を評価することは困難であり、どの側面が飛び降り着地の生体力学を良い方向へ変化させるのに有益であり、どれが不要であるのかは明確ではない。 以前の研究評論において私たちは、レジスタンストレーニングが実際に膝の屈曲の度合いを増加させるということを見てきた。これはレジスタンストレーニングがACL損傷の予防プログラムに有益であるということを示唆している。以前のある研究では、プライオメトリックも同様に有益であるかもしれないと示している。 例えば、レファート(2005年)は、8週間に渡り、下肢の関節角度の動きに対する、プライオメトリックトレーニングプロクラムとレジスタンストレーニングの影響を調査し、両方のプログラムが、初動での股関節の屈曲可動域、最大股関節屈曲可動域、最大膝関節屈曲可動域、そして最大膝関節屈曲可動域までの時間の著しい増加につながると発見した。また彼らは、両方のプログラムが、最大膝関節屈曲モーメントと最大股関節屈曲モーメントの減少につながるとも記述している。 これは、私たちが、レジスタンストレーニングが矢状面での下肢の関節角度可動域と関節モーメントにもたらす効果と同じような効果を、プライオメトリックトレーニングに期待することができるかもしれないということを示唆している。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 対象者は誰か? 研究者たちは、ドロップジャンプの際の下肢と体幹の生体力学に対する、4週間のコアスタビリティトレーニングと、同じく4週間のプライオメトリックプログラムの効果を比較しようと考えた。そのため彼らは、3地域の高校から14.8 ± 0.8歳の23名の女子を集めた。被験者はランダムに分けられたのではなく、コントロールグループとスタビリティグループはラクロスとサッカーチームの選手により構成され、プライオメトリックグループはラクロス選手のみで構成された。 何が行われたのか? グループは4週間に渡り、追加トレーニングなし(コントロールグループ)、追加のプライオメトリックトレーニング(プライオメトリックグループ)、もしくは、追加のコアトレーニング(コアスタビリティーグループ)を行った。研究者たちは、20分間の、機材を使わずに行うプライオメトリックトレーニングとコアスタビリティトレーニングをデザインした。 プライオメトリックトレーニングの構成要素は何か? プライオメトリックプログラムは、柔らかく、バランス良く、コントロールされた動きでの、テイクオフと着地のフォームに重点を置いた、両脚、片脚でのジャンプとスキップのエクササイズのシリーズにより構成されていた。最初の2週間のエクササイズは、前後の片脚ラインジャンプ、側方への片脚ラインジャンプ、ハイスキップ、ディスタンススキップ、ブロードジャンプ、タックジャンプ、交互の片脚ラテラルジャンプから構成されていた。 続く2週間のエクササイズは、フォワード片脚ホップ、ホップ~ホップ~着地、スクワットジャンプ、片脚最大垂直跳び、片脚幅跳び、ブロードジャンプ、垂直跳び、180度ジャンプ、片脚ラテラルジャンプから構成されていた。 コアスタビリティトレーニングプログラムの構成要素は何か? コアスタビリティプログラムは腹部、腰椎のスタビライザーと股関節の伸筋、外旋筋、外転筋のコーディネーションを向上させることを意図していた。最初の2週間のエクササイズは、アブドミナルドローイン、サイドプランクニーベント、サイドライングヒップアブダクション、サイドライングヒップエクスターナルローテイション(クラムシェル)、クランチ、手を頭へ置いての腰椎伸展、手を腰に当ててのウォーキングランジから構成されていた。 その後の2週間のエクササイズは、アブドミナルドローインをしながらのハムストリングブリッジ、四つん這いでの外旋と外転を合わせた股関節伸展、肘を対角の膝につけるクランチ、両腕を真っ直ぐに伸ばしたままでの腰椎伸展、両腕を頭上に挙げてのスクワット、ボールを投げながらのランジから構成されていた。 研究者たちは何のテストを行ったのか? 4週間に渡るトレーニングの前後に、研究者たちはジャンプの際の体幹側屈角度、股関節の屈曲、内転、及び内旋角度、膝関節の屈曲、外転、内旋角度、股関節の屈曲、内転、内旋、外旋関節モーメント、膝関節の屈曲、外転、内旋モーメントを含む数々の変数をテストした。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2896字

ランジをより股関節主導にするための方法とは?

ランジはレジスタンストレーニングのプログラムや生体力学的研究において、赤毛の継子のようなものである。つまりランジは、他の人気のあるエクササイズに比べあまり注目されていない。しかし幸運なことに、私のお気に入りの研究者のひとりであるブライアン・リーマンが孤軍奮闘して、スクワットについて既になされている一連の研究に沿い、ランジに対する生体力学的研究を行っている。 研究者たちはこの研究の中で、ランジがどの特性(例えば、ステップ幅やランジの種類)によって、より股関節主導になるのか、または膝関節主導になるのかを調査している。 研究論文:様々なステップ幅でのフォワードランジとサイドランジの生体力学的比較、リーマン、コングルトン、ワード、デービス、スポーツ医学&フィジカルフィットネスジャーナル2013年 *** 背景: フォワードランジやサイドランジ等のランジのバリエーションは、ストレングス&コンディショニングやリハビリテーションのプログラムの中で頻繁に使われている。 研究では、ほとんどのタイプのランジが、股関節の伸筋主導であると報告されているが、股関節、膝関節、足関節モーメントの様々な働きを評価するためのフォワードランジとサイドランジの比較に関しては、わずかな研究しかなされていない。加えて、ランジ幅の標準化、あるいは、ステップ幅の自己選択の、どちらがより最適かに関する評価を行った研究は、一つとして存在しない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、著しい違いがあるかどうかを確かめるため、フォワードランジとサイドランジを行う際の股関節、膝、足首における関節モーメント力積を比較しようと考えた。彼らは又、ランジを行う際、標準化されたステップ幅と自己選択したステップ幅との間に、著しい違いがあるかどうかを調べたいと考えた。 そのため彼らは、様々な活動レベルの32名(女性16名、男性16名)の被験者を集めた。被験者はまず、自己選択したステップ幅にて裸足でフォワードランジとサイドランジを行い、その間研究者たちは、床反力を記録する為にフォースプレートを使用し、又、関節角度の動きを記録するために電磁追跡システムを使用し、情報を収集した。 研究者たちはこのデータを使い、それぞれのタイプのランジにおける関節モーメント力積を計算した。身長の60%を基準に標準化されたステップ幅のランジにおいても、この過程が繰り返された。これにより、標準化されたステップ幅と自己選択されたステップ幅での関節モーメント力積の違いを比較することが可能となった。 *** 何が起こったのか? フォワードランジ、サイドランジにおけるステップ幅 フォワードランジにおいては、標準化されたステップ幅と自己選択されたステップ幅の違いは大きく、研究者たちは、自己選択したステップ幅の方がかなり小さいということを発見した。しかしサイドランジにおいては、それぞれのステップ幅に著しい違いはなかった。 更に研究者たちは、自己選択をしたステップ幅は、フォワードランジに比べサイドランジの時の方が、かなり大きかったことを観察した。これらの発見は下記のグラフに示されている。 フォワードランジとサイドランジにおける最大屈曲角度 研究者たちは、下記のグラフで示されているように、自己選択をしたステップ幅と標準化されたステップ幅の両方において、膝の最大屈曲角度は、サイドランジよりもフォワードランジを行う際の方が大きく、足首の最高背屈角度は、フォワードランジよりもサイドランジの方が大きかったと報告している。 フォワードランジにおいては、自己選択をしたステップ幅よりも標準化されたステップ幅を使用した際の方が、股関節の最大屈曲角度が大きかったことも、グラフから見て取ることができる。しかし、フォワードランジとサイドランジの間で、股関節の最高屈曲角度に違いは無かった。 フォワードランジとサイドランジにおける最大関節モーメント力積 研究者たちは、下記のグラフで見られるように、自己選択したステップ幅と標準化されたステップ幅の両方において、足首と膝の総関節モーメント力積はフォワードランジよりもサイドランジを行う際の方が大きく、股関節の総関節モーメント力積はサイドランジよりもフォワードランジを行う際の方が大きかったと報告した。 フォワードランジでは、股関節の総関節モーメント力積は、自己選択をしたステップ幅よりも標準化されたステップ幅を使用した際の方が大きく、膝の総関節モーメント力積は標準化されたステップ幅よりも自己選択をしたステップ幅を使用した際の方が大きかったということも、グラフから見て取ることができる。サイドランジでは、ステップの幅の実際の影響は見受けられなかった。 スポーツの動きの中で増えている股関節の役割、という私のプレゼンテーションを見たことのある人は、私が、股関節の膝関節に対する伸展モーメント力積の比率のそれぞれの動きの間での比較したとしても驚くことはないであろう。 専門的に言えば、全ての動きが1.0以上の比率で股関節主導ではあるが、標準化されたステップ幅でのフォワードランジは、他の動きより何倍も股関節主導であるということは明らかである。 標準化されたステップ幅でのフォワードランジを有利にするこの違いは、より大きいステップ幅の働きが、恐らく、股関節のより長いモーメントのアームと、股関節のより大きな最大屈曲角度につながり、このバリエーションにおいて必然的な、股関節のより大きな可動域につながるのであろう。 (1)スポーツ活動における股関節の伸展トルクの重要さ、そして(2)デッドリフトのバリエーション以外で、軸方向に負荷がかかる股関節主導のエクササイズは希少である、ということを考慮に入れると、これはとても有益な発見である。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは下記のような結論を導き出した: 関節の屈曲 — サイドランジではより大きな足首の最大背屈が見られ、フォワードランジではより大きな膝の最大屈曲が見られた。 関節モーメント力積 — フォワードランジでは股関節のモーメント力積がより大きく、サイドランジでは膝関節と足関節のモーメント力積がより大きく示されていた。 関節モーメント力積の比率 — フォワードランジにおける標準化されたステップ幅は、股関節の総関節モーメント力積を増加させ、膝関節の総関節モーメント力積を減少させ、股関節の可動域を向上させる最高股関節屈曲を増加させることにより、更にエクササイズを股関節主導にした。 *** 制限要素は何か? この研究には、以前の研究により発見されていた、ランジを行う際の生体力学に影響を及ぼす、体幹の傾きの影響について、研究者たちが調査しなかったことに制限があった。加えて、研究者たちは様々なランジのバリエーションを行う際、バーベル、ダンベル、弾性レジスタンスなどの負荷の使用が、生体力学に与える影響について報告していなかった。更に、バックランジやウォーキングランジの評価は、されていなかった。 *** 実践的な意義は何か? トレーニングプログラムでのランジの使用のために: 股関節の伸展トルクを最大化させ、ランジをできる限り股関節主導にするためには、サイドランジではなく、より広いステップ幅でのフォワードランジが最適である。 一方、ランジを行う際の膝の伸展トルクを最大化させ、ランジをできる限り膝関節主導にするためには、狭いステップ幅でのサイドランジが最適である。 ダイナミックストレッチの動きの中で、足関節の背屈を最大化させるためには、フォワードランジよりもサイドランジが優れている。 ダイナミックストレッチの動き中で、股関節の屈曲を最大化させるためには、少なくとも身長の60%に標準化されたステップ幅でのフォワードランジが最適である。 一方、できる限り膝の屈曲を減少させるためには、自己選択をしたステップ幅でのサイドランジが最適である。そのため、これはリハビリテーションの場に於いて、フォワードランジを始める前段階のリグレッションとして有益であろう。とはいえ、体幹を前傾させたバックランジは、サイドランジよりも更に膝に負担がかからないと考えられる。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3578字

スポーツのためのランジの能力を養う方法とは?

ランジはスクワットに比べ、あまり研究がなされていないものの、スカッシュ、バトミントン、フェンシングなどの多くのスポーツにおいて頻繁に起こる大切な動きである。 しかし、いったい何がアスリートにランジを上手く行えるようにしてくれるのだろうか? どの筋肉の動作変数が、ランジの能力を予測するために最適なのだろうか? この研究は、その疑問を詳しく調査するために試みたものである。 研究論文: ランジ動作とその決定要因、クローニン、マクネアー、マーシャル、2003年スポーツサイエンスジャーナル 背景 様々な筋肉動作のパラメーターと、スプリントランニングやジャンプ等の、スポーツの動きやエクササイズとの相関関係の計測は、スポーツの成功のために最も大切な特性を見抜く力を、研究者たちへ与えることができる。 例として、いくつかの研究により、力産出の割合(RFD)は、スプリントランニングと垂直跳び両方のパフォーマンスを予想するのに最適であるとされているため、幾人かの研究者達は、RFDは、スポーツにおける成功のために最も大切な身体的特性であるかもしれない、という説を提案している。 しかしながら、RFDがランジ動作の良い予測要因なのかどうかを調査した研究はほとんど無い。スカッシュ、バトミントン、フェンシングなどの、より専門化したスポーツの動きにとって、ランジの動きは鍵となる特性である。 実際、幾人かの研究者たちは、より経験の長いフェンシング選手の方が、より素晴らしいランジの動き(ランジ中の最大コンセントリック速度よって評価)をすると報告している。 しかし、ランジの動きは、負荷の無い垂直跳びやスプリントランニングに比べ、よりゆっくりとした動きであるため、最大力産出やパワーの方が、RFDよりも重要かもしれないという可能性もある。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ランジ動作の予測に最も適している、筋肉動作の生体力学的要素を突き止めようと考えた。そのため、彼らは、下肢の動きを伴う様々なスポーツを行っている31名のアスリートを集めた。 背臥位スクワットマシンテスト 研究者たちは、下肢の力産出とRFDをテストするために、線形変換器を設置した特注の背臥位スクワットマシンを使用し、90度の膝の屈曲における、両脚での最大動力とパワーの最高値を測定した。 力の最大値を測定するために、研究者たちは1RMを評価し、出力の最大値を測定するにあたり、被験者が可能な限り爆発的な動きを行えるよう、1RMの50%が使用された。 ランジ動作テスト 研究者たちは、また、別の線形変換器を被験者それぞれの胴体に装着し、脚の長さの1.5倍という、標準的な歩幅を使ったランジを行う際の、水平変位とその変位の速度を測定した。 *** 何が起こったのか? 基本測定 研究者たちは、両脚での1RM背臥位スクワットマシンテストを行った際の、被験者の平均最大力は、127 ± 36kg もしくは体重の1.65倍であったと報告した。 両脚での1RM50%での背臥位スクワットマシンテストでは、平均のパワーは364 ± 96.8W であり、平均のピークパワーは932 ± 258W であったと報告されている。 最終的に研究者たちは、おそらくスクワットでの負荷が理由であろうが、ランジにおける最大動作速度は、1RMの50%で行った背臥位スクワットにおける最大動作速度よりも、はるかに速いと報告している。この速度測定の結果は、下記のグラフで示されている。 ランジ動作の予測要因 研究者たちは、解明された分散の55%以下の割合しか占めていないにも関わらず、(ランジを行っている際の最大コンセントリック速度を評価)ピーク力までの時間が、最適なランジ動作の単体予測要因であったと報告した。これは様々な要因がランジ動作に対して重要であり、その要因は人により様々であり得るということを示唆している。 研究者たちは、3つの変数を含むモデルにおいては、絶対的なランジ動作の予測に最適なのは、各個人のランジ動作において変数の85%を占める、ピーク力までの時間、脚長と柔軟性の組み合わせであると報告した。 研究者たちは、3つの変数を含むモデルにおいては、体重を標準化したランジ動作の予測に最適なものは、各個人のランジ動作において変数の76%の割合を占める、ピーク力までの時間、平均背臥位スクワットパワー、そして体重を標準化した背臥位スクワット最大力の組み合わせであった、と報告した。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、背臥位スクワットマシンにて得られた変数の中で、RFDの代わりとなるランジ動作の単体予測要因は(ランジ中の最高コンセントリック速度によって評価)、ピーク力までの時間であると結論付けた。そのため彼らは、高速伸長一短縮サイクルの能力を向上させるための方法は、ランジ動作を向上させるのに最も有効である、という結論を出した。 しかし、研究者たちは又、ピーク力までの時間は各個人のランジ動作の変数の55% にしかあたらず、このことは、1つの生体力学的測定がランジ動作の仕組みを網羅することは不可能であると示唆している、と結論づけた。 研究者たちは、ランジ動作を予測できる唯一の力のパラメーターが、相対的測定であったため、このことは相対的筋力が絶対的筋力よりも、より重要であり、体重の重さは不利に働くかもしれないということを示唆している、と観察した。そのため、彼らはランジ動作を向上させるためのレジスタンストレーニングの方法として、筋肥大よりも、むしろ神経の適応に重きを置くべきであると提案している。 研究者たちは、ランジ動作はいくつかの異なった筋動作変数に依存しているため、リハビリの専門家は受傷後のスポーツ復帰を決定する際、1つの生理力学的な測定に頼るべきではなく、パワー、相対的最大力、最大力までの時間、を含むいくつかの要素を測定するべきであると提案している。 同様に、これは、特にランジ動作を含むスポーツにおいて、ピークパフォーマンスに向けて選手をトレーニングする際、コーチは、パワー、相対的最大力、最大力までの時間の質を向上させるためのトレーニングに重きをおくべきであり、他の要素を考慮することなく1つだけの質に集中するべきではない、と示唆している。 *** 制限要素は何か? この研究には、被験者にあまり馴染みがないであろう、特注の背臥位スクワットマシンを用いてスクワットを行う際に生体力学的変数の測定が行われた、という点において制限があった。 更にこの研究では、被験者の過去のレジスタンストレーニングの経験が明らかでなかったため、彼らはトレーニングされていないと仮定されていた。それ故、レジスタンストレーニングの経験を持つ被験者では、異なる結果が観察されたかもしれない。 同様に、すべての被験者たち全員が、スカッシュ、バトミントン、フェンシングなどの、ランジの動作を多用する同一のスポーツを行っているわけではなかった。もし被験者が単一のスポーツから選ばれていたら、異なる結果が得られたかもしれない。 最後に、この研究は、どの筋肉動作の特性が最も良いランジ動作の予測要因となるかを明らかにはしたものの、それらの特性を向上することが、ランジを行う際の、最大コンセントリック速度の向上につながるのかどうか、ということの証明とはなっていない。 *** 実践的な意義は何か? アスリートに対して: ランジの能力を向上するために、アスリートはまず、力の発生率を向上させることに集中するべきであり、それは、高速低負荷のトレーニング、プライオメトリックストレーニング、そして様々な種類のレジスタンストレーニングを含む、いくつかの方法を使用することで成し得ることができる。 又、アスリートは、ランジの能力を発達させるために、パワーと最大相対力の生産能力を向上させるためのトレーニングを行うべきである。これらは、高速低負荷のレジスタンストレーニング、プライオメトリックストレーニング、様々な種類のレジスタンストレーニングと、低速高負荷のレジスタンストレーニングを組み合わせることによって成し得ることができる。 ランジ能力を向上させるための筋力を発達させようとする場合、アスリートとコーチは、神経適応を高めることに集中し、高い相対筋力を維持するために、必要以上の筋肥大は避けるべきである。 リハビリの専門家に対して: 臨床医やストレングスコーチは、ランジの動きを常に行うアスリートに対して、一つの生体力学的測定に頼り、怪我からの復帰を決定するべきではなく、パワー、相対最大力、最大力までの時間等を含む複数の要素を測定するべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3764字

スクワットにおける足幅は筋活動へどのように影響を及ぼすのでしょうか?

多くの筋電図による研究は、バックスクワットにおいて、ハムストリングスがアクティブに活動していないことを示しています(例として、エベン, 2009年, ライト, 1999年, マッコウ, 1998年 and パオリ, 2009年)。筋電図での活動はいかに筋肉が活発に活動しているかを示す良い指針とされているため、この結果は、バックスクワットがハムストリングの発達にとっての最適な選択ではないということを示唆しています。 しかし、足幅はスクワット中のハムストリングスの活動量に影響を及ぼすのでしょうか?この研究は、それを解明しようと試みたものです。 研究論文: パラレルスクワット中の脚の筋活動へ対する足幅とバーの負荷の影響、マッコウ、メルローズ、1998年スポーツ&エクササイズの中の医学&サイエンス *** 背景: 研究者たちが研究を行っていた当時、足幅に関するほとんどの疑問は、ボディビルダーたちによって提起されていました。主な疑問は、ハムストリングスの活動に違いがあるのかどうかというものはなく、大腿四頭筋の個々の筋肉において、活動レベルに違いがあるのかどうかということでした。 実際、様々なボディビルディングの雑誌においては、足幅をコントロールすることによって、ある程度大腿四頭筋の異なった部位を強化することができると主張されてもいました。 具体的には、広い足幅は内転筋群と内側広筋を活性化し、狭い足幅はより外側広筋を活性化すると信じられていましたが、これらの主張がなされた当時、それ以前に、これが事実か否かを検証するための研究はなされていませんでした。 *** 研究者たちは何をしたのでしょうか? 研究者たちは、異なった足幅で、大腿直筋、内側広筋、外側広筋、長内転筋、大腿二頭筋、大臀筋の筋電図による活動を調査したいと考えていました。彼らは7 ± 2年のレジスタンストレーニングの経験を持つトレーニングされた男性9名を集めました。彼らのスクワットの1RMは118 – 250kgでした。 研究者たちは、被験者が1RMの60%と75%でスクワットを行っている間に表面電極を使ってこれらの筋肉の筋電図での活動を測定しました。被験者はそれぞれの負荷で3つの異なった足幅:狭い(肩幅の75%)中間(肩幅)広い(肩幅の140%)でのスクワットを実施しました。被験者は各自、股関節の開き具合等によって、心地の良い足の位置を選択することが許されました。 研究者たちは、それぞれの筋肉の最大随意等尺性収縮(MVIC) への筋電図を正規化しませんでした。最大随意等尺性収縮(MVIC) への筋肉の活動を正規化することによって研究者たちは、その最大能力に対して筋肉がどれほど活発に活動しているかを知ることができるにも関わらず、彼らは単に値をミリボルト(mV)で記録しました。これは明らかに不利益といえます。 他の筋肉群よりも、より多くの脂肪で覆われている筋肉群においては、脂肪が筋肉のテストの妨げとなり、筋電図の値が低く表示されます。それ故、電圧(mV)の数値のみを見ても、様々な筋肉の相対的な筋電図の活動に関しての、強固な結論を引き出すに十分な情報を与えてくれることにはなりません。しかしながら同じ筋肉の、異なる状態(足幅)においての筋電図の活動を比較することは可能です。 *** 何が起こったのでしょうか? 1RMの60% の負荷にて 研究者たちは、下記のグラフで表されている通り、狭い、中間、広い足幅でのスクワット中、どの筋肉においても筋電図の活動に著しい違いはないことを発見しました。 加えて、グラフが示す通り、1RMの60% の負荷においては、より多数の被験者をテストすれば、明らかな影響があったかもしれない、と示す傾向さえも見当たりませんでした。さらに筋電図の活動レベルは正規化されなかったにも関わらず、ハムストリングスや大臀筋と比較して、大腿四頭筋の筋電図の活動レベルがいかに大きかったかが記述されていたということは有益です。 1RMの75% の負荷にて 研究者たちは、下記のグラフで表されている通り、狭い、中間、広い足幅でのスクワット中、大臀筋以外の、どの筋肉においても筋電図の活動に著しい違いはないことを発見しました。 詳細には、研究者たちは、1RMの75% の負荷における大臀筋の活動は、狭い足幅よりも広い足幅での方が明らかに大きいことを発見しました。しかしながら、広い足幅と中間の足幅の間、そして中間と狭い足幅の間には著しい違いはありませんでした。 足幅による筋電図の活動における違いは、多くの研究が示しているように、大臀筋の繊維が、その長さが長い時よりも短い時により活発に活動する傾向にあることに起因しているようです。広い足幅をとることで、股関節は大きく外転し、大臀筋は短縮します。また、広い足幅をとることで、股関節は通常外旋する傾向にあり、これによって筋繊維は、また短縮します。 *** 他の研究結果の調査 この研究の結果は、パオリ(2009年)によって行われた同様の研究によって支持されています。この研究において、研究者たちは3年間のレジスタンストレーニングの経験を持つ6名のトレーニングされた男性被験者たちの、内側広筋、外側広筋、大腿直筋、半腱様筋、大腿二頭筋、大臀筋、中臀筋、大内転筋の筋電図の活動をテストしました。 研究者たちは3通りの足幅(左右の大転子間の距離の100, 150, 200%)と3つの負荷(1RMの 0, 30 、70%)をテストしました。1RMの70%において、ここでも、研究者たちは、大臀筋のみがそれぞれの足幅間で筋電図の活動の度合いにおいて著しい違いを示したことを発見しました。このテストにおいても、同様に、広い足幅が狭い足幅よりもより大きい筋電図の活動を表しました。下記のグラフはその結果を表しています。 ここでも又、筋電図の活動レベルは正規化されなかったにも関わらず、ハムストリングスや大臀筋と比較して、大腿四頭筋の筋電図の活動レベルがどれほど大きかったかが記述されていたということは有益です *** 研究者たちはどのような結論をだしたのでしょうか? 研究者たちは、バックスクワット中の足幅は、大腿四頭筋やハムストリングスの筋活動の割合に影響をおよぼさない、という結論に至りました。しかしながら、彼らはより広い足幅は大臀筋の活動の増加につながると記述しています。 *** 制限要素な何なのでしょうか? 上に記述されている通り、研究には、それぞれの筋肉の最大随意等尺性収縮(MVIC) への筋電図を正規化しなかったということにおいて制限がありました。むしろ彼らは、単に値をミリボルト(mV)で記録しており、これには明らかな不利益があります。他の筋肉群よりも、より多くの脂肪で覆われている筋肉群においては、脂肪が筋肉のテストの妨げとなり、筋電図の値が低く表示されます。それ故、電圧(mV)の数値のみを見ても、様々な筋肉の相対的な筋電図の活動に関しての、強固な結論を引き出すに十分な情報を与えてくれることにはなりません。 *** 実践的な意義は何でしょう? ボディビルダーやフィジークアスリートに対して: スクワット中に異なった足幅を使うことは、優先的に大腿四頭筋の異なった部位を強化することにはなりません。それゆえ個々の大腿四頭筋に刺激を与えるには他のエクササイズが必要かもしれません。 スクワット中に広い足幅を使うことは、大臀筋の活動を増やす助けになるかもしれません。これにより、スクワットを大臀筋の強化の方法としてより有益に使うことができるかもしれません。 パワーリフターに対して: 広い足幅でのスクワットは、より大臀筋を使うためにパワーリフターにとっては有益だと証明できるかもしれません。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3375字

レジスタンストレーニングは、前十字靱帯損傷の生体力学的危険要因を減少させることができるか?

多くのストレングス・コンディショニングコーチが傷害予防としてレジスタンストレーニングプログラムを取り入れている。コーチが女性選手に対して予防しようとしている一般的な外傷は、前十字靱帯(ACL)の損傷である。 しかし、レジスタンストレーニングは、ACL損傷の危険要因を減らすことができるのだろうか? この最近の研究はその議題に光を当てた。 バーティカルドロップジャンプ時の、股関節と膝の運動学に対する短期的なレジスタンストレーニングの効果、マッカーディ、ウォーカー、サックス、ウッズ、ストレングス・コンディショニングリサーチジャーナル2012 *** 背景: 過去の研究者たちの多くは、女性選手は男性よりも、よりACLを損傷する傾向にあると認識していた。実際に研究では、同じスポーツを行った場合、女性は男性よりも3-4倍ACLを損傷する可能性が高いであろう、と示している(例:グリンドスタッフ2006年)。 そのため、多くの研究者たちが、女性が男性よりもACLを損傷する危険性が高い理由を見つけようとしてきた。女性は男性に比べ、着地時の膝と股関節の屈曲が少なく、膝の外反の角度がより大きい傾向にあるということが、多くの研究によって発見されていたことから、何人かの研究者たちは、その理由は、爆発的な下半身の運動を行う際の、脚関節角度の動きの違いに関係があるのではないかと示唆した。 ジャンプからの着地における、このような関節角度のパターンは、ACLへの負荷の増加につながる可能性がある。より短い角度の可動域において、同程度の減速の努力が必要とされ、より関節の硬さが必要になる。これにより力がより大きな関節可動域で吸収されるような着地と比較すると、より衝撃の強い着地を生み出すこととなる。 女性が、ACLへの負担の多いこれらの動きのパターンを使う理由として、女性は男性よりも下腿部の筋力が劣るから、という理論がある。実際に下肢の筋力レベルの低さは、ACL損傷の危険因子として報告されている。そのため、レジスタンストレーニングは、ACL損傷の予防として一般的に処方されている。しかしながら、ストレングストレーニングが、実際に爆発的な動きにおける下肢の関節角度を変更できるか否かに関しては明確ではない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ドロップジャンプからの両脚、片脚での着地において、荷重負荷レジスタンストレーニングが、女性選手の股関節及び膝の屈曲、そして膝の外反角度に与える影響を調査しようと考えた。 対象者は誰か? 研究者たちは、趣味でスポーツを行っている27名の女性を集め、レジスタンストレーニングのグループと、下半身のレジスタンストレーニングを行わないコントロールグループに分割した。被験者は様々なスポーツ(サッカー、バスケットボール、バレーボール、ソフトボール)を少なくとも1週間に1度のペースで行っており、1年以上のレジスタンストレーニングの経験を持っていた。 研究者たちは何を測定したのか? 8週間に渡るレジスタンストレーニングの前後に、研究者たちは、被験者が片脚、両脚、両方でのドロップジャンプ実施時に計測を行った。片脚でのドロップジャンプは30センチの箱から行われ、両脚でのドロップジャンプは60センチの箱から行われた。 研究者たちはビデオカメラを使用し、股関節と膝の関節角度の動きを測定した。彼らは膝の外反、膝及び股関節の屈曲角度の最大値と平均値を記録した。 レジスタンストレーニングのグループはどのようなトレーニングを行ったか? レジスタンストレーニングのグループは、8週間に渡り1週間に2日、フリーウェイトエクササイズを取り入れた、リニアに期分けされた下半身のプログラムを行った。プログラムの基盤は、両脚でのバックスクワットとルーマニアンデッドリストであったが、トレーニング期間の中盤で片側性のエクササイズが追加された。 被験者は、セット間及び様々なエクササイズの間に2-3分のレストを入れ、全てのエクササイズを2-4セット行った。片側性のエクササイズには、バーベルとダンベルの負荷を使用した、ランジと高さ30.5cmのボックスステップアップが含まれていた。負荷のプロトコールは1RMの50-85%の範囲であった。 *** 何が起こったのか? 関節角度の変化 研究者たちは、 8週間レジスタンストレーニングを行わなかったコントロールグループにおいては、両脚でのドロップジャンプ中の膝の屈曲が著しく減少し (82.4 ± 3.9 から69.6 ± 5.2 度) 、その一方で、レジスタンストレーニングのグループにおいては、膝の屈曲が著しく増加 (77.2 ± 4.1 から83.2 ± 3.7度) したことを報告した。 全ての関節角度における平均の変化は、下記のグラフに表されている。 全体として、唯一の著しい変化は、コントロールグループでは、両脚でのジャンプの着地時に膝の屈曲が減少したこと、そして、レジスタンスグループでは、同じく両脚でのジャンプの着地時に膝の屈曲が増加したことである。しかしながら、それほど著しくない傾向もまた参考となる。 コントロールグループは、片脚、両脚のジャンプ時共に膝の外反が増加し、膝と股関節の屈曲が減少するという傾向を示した。コントロールグループの被験者も又、1年以上のレジスタンストレーニングの経験がある人たちである為、この研究は、根本的にはこのグループにおいては、脱トレーニングの影響を記録しているということを記述する価値があるだろう。 一方、レジスタンストレーニングのグループは、片脚、両脚のジャンプ時共に、(両側の膝の外反ではなく)片側の膝の外反が減少し、膝と股関節の屈曲が増加するという傾向を示した。そのため、総合的に、レジスタンストレーニングのグループは、ACLへの負荷を減少するのに有益である(前頭面での可動域の減少と矢状面での可動域の増加)という傾向を示し、その一方で、コントロールグループは、潜在的によりACLにリスクを持つ(前頭面での可動域の増加と矢状面での可動域の減少)という傾向を示した。 膝の屈曲の可動域が、レジスタンストレーニング後著しく増加した一方、股関節の可動域は増加しなかったということは、興味深いことである。このことは、プログラムに股関節主導(ルーマニアンデッドリフトとランジ)と膝主導(スクワットとステップアップ)のエクササイズが両方含まれているにもかかわらず、着地のコーディネーションが変えられ、より膝主導になっているということを示唆しているのかもしれない。 女性が膝主導のパターンで着地する傾向にある、ということは、以前の研究においても観察されており、これらの結果が男性に対しても観察されるかどうかは明らかでない。股関節の外旋と外転を組合わせた、完全に股関節主導のエクササイズのプログラムが同様な結果をもたらすのか、それとも異なる結果をもたらすのかを調べるのは興味深いであろう。 両脚と片脚でのジャンプの違い 研究者たちは、コントロールグループ、レジスタンストレーニングのグループ共に、膝の屈曲、股関節の屈曲、膝の外反の最大値と平均値の両方に関する限り、ドロップジャンプ中の両脚の測定値は片脚の測定値よりも著しく大きかったと報告している。 これらの片脚と両脚での結果は、膝と股関節における矢状面の角度の平均値と最大値が、両脚でのジャンプにおいてより大きかったことを明らかにしている。これは、同じ高さから飛び降りた時、両脚での着地の方が片脚での着地よりもより柔らかく着地することができるということを示している。これは当然のことのようだが、とても重要な情報である。 この観察を基にすると、片脚で着地することが多い選手は、柔らかく着地し、関節にかかる負荷を減少させるために脚を強化する必要がある。特に女性は、このような状況において、ACLへの負荷を減少させるために脚の筋力が必要である。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、フリーウェイトのレジスタンストレーニングによって、選手はより大きな膝の屈曲を伴い、柔らかく飛び降り着地することが可能になる、と結論づけた。彼らは、下半身の筋肉群を、着地時の負荷を吸収するように向上させることにより、レジスタンストレーニングはACL損傷の危険を減少させるであろうということを示唆している、と提言した。 研究者たちは、ドロップジャンプ時の股関節の屈曲と膝の外反を改善する為には、レジスタンストレーニングと組み合わせて、他のトレーニング方法が必要かもしれないとも提案している。しかしながら、股関節の屈曲においては、膝関節の屈曲のような際立った傾向は見られないため、股関節において同様な効果を生み出す為には、より長期間にわたる、あるいはより高強度の股関節主導のトレーニングが必要かもしれないと示唆している。 *** 制限要素は何か? この研究には、下記のようないくつかの点において制限があった。 研究は女性選手を対象に行われた為、男性選手では異なる結果が得られたかもしれない。 研究は8週間のみ、特に被験者は1週間のうち2回のみしかレジスタンストレーニング行わなかった為、もっと長期での研究がなされたら、さらに顕著な結果が得られたかもしれない。 研究者たちは、関節角度のみを記録し、関節モーメントや筋電図の活動を記録していないが、それらの記録があれば、ドロップジャンプ中に何が起こるかに関する全体像を、より包括的に提供することができたであろう。 ドロップジャンプは両脚で60センチの箱から、そして片脚で30センチの箱から行われたが、選手たちは、いつも両脚でジャンプし両脚で着地するわけでも、片脚でジャンプし片脚で着地するわけでもなかった。加えて、両脚でのジャンプは片脚でのジャンプの半分の高さにしか満たない。この相違により、片脚と両脚のジャンプからの着地のデータは、現実として直接的な比較対象とはなり得ないかもしれない。同じ高さの箱からのジャンプ時の関節角度の動きを考察することによって、よりよい比較が得られたであろう。 その研究は行われたスクワットの方法やスタイルが明記されていなかった。それ故、レジスタンストレーニングの間、膝の外反が観察されていたかどうかを知るのは不可能である。 行われたトレーニングは、股関節主導のエクササイズは一種のみであり、純粋な前額面や横断面の股関節の強化トレーニングは全く含まれていなかった。より多くのエクササイズが行われていれば、また違った結果が得られたかもしれない。 *** 実践的な意義は何か? 女性選手に対して: ACL損傷が多く見られるスポーツを行っている女性選手は、障害のリスク低下のために、両側性、及び片側性の脚の筋力を発達させる必要がある。 片脚でのジャンプからの着地は、矢状面での股関節と膝における関節角度可動域の減少により、両脚の場合よりも、ACLに対する危険性が高い可能性がある。 競技シーズン中などの理由により、レジスタンストレーニングを中止した女性選手は、脱トレーニングの結果によってACL損傷の危険性が増す可能性のあることを知っておくべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4820字

フォームローリングは、動脈機能にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

研究論文: フォームローラーを使用した自己筋膜リリースの、動脈機能への即時的影響、オカモト、マスハラ、イクタ、ストレングス、コンディショニングリサーチジャーナル(未出版) *** 背景 動脈の硬化は、収縮期血圧の上昇につながる可能性があることから、心血管系イベントに対する危険要因となります。動脈硬化は血管内皮機能によって影響を及ぼされます。血管内皮細胞は、よく知られている一酸化窒素を含む、血管作用物質の放出を通じて血管の活動を規制します。 フォームローラーを使用した自己筋膜リリースは、筋肉痛や筋膜の堅さに対してのよく知られている対処法ではありますが、その動脈硬化や血管内皮機能に対する影響は、明白ではありません。動脈の硬化は、脈波伝播速度を用い測定することができます。 *** 研究者たちは何をしたのでしょうか? 研究者たちは、脈波伝播速度を用い、フォームローラーを使用した自己筋膜リリースの動脈硬化や血管内皮機能に対する急性効果を調査するために、10名の運動はあまりしない健康な被験者を集めました。(男性7名、女性3名) 研究では、2つのコンディションが用意されました:フォームローラーを使用しての自己筋膜リリースを行うコンディションと、コントロールされたコンディションです。筋膜リリースを行うコンディションのもとでは、被験者は内転筋群、ハムストリングス、大腿四頭筋、腸脛靱帯、そして僧帽筋を含む背中の上部にフォームローラーを使用しました。 全ての被験者は、ランダム化されたクロスオーバー計画において、異なった日に両方のコンディションを実行しました。2つのコンディションは、少なくとも3日間空けて実行され、研究者たちは、両方の状況下において実行前と実行後の30分で、上腕、足首脈波伝播速度と、血漿一酸化窒素の濃度を測定しました。測定は、被験者が仰向けで30分間休息した後に実施されました。 *** 何が起こったのでしょうか? 脈波伝播速度への影響 研究者たちは、フォームローラーを使用した自己筋膜リリースのコンディション後、上腕、足首脈波伝播速度が著しく減少することを発見しました。(1202 ± 105 から 1073 ± 106 cm/sへ). しかしながら研究者たちは、コントロールされたコンディションにおいては、上腕、足首脈波伝播速度が変化しないことを記述しています。(1198 ± 118 から 1184 ± 105 cm/sへ) 研究者たちは、この2つのコンディションにおける相違は明らかであると記述しています。これらの結果は下記のグラフに表されています。 血漿一酸化窒素濃度への影響 研究者たちは、フォームローラーでの自己筋膜リリース後、血漿一酸化窒素の濃度が著しく上昇することを発見しました。(from 20.4 ± 6.9 から 34.4 ± 17.2 μmol/Lへ) しかしながら、研究者たちは、コントロールした状況においては、血漿一酸化窒素の濃度は変化しなかったことを記述しています。(from 19.1 ± 4.3 から 17.5 ± 4.7 μmol/Lへ) これらの結果は下記のグラフに表されています。 研究者たちはどのような結論を下したのでしょうか? 研究者たちは、フォームローラーでの自己筋膜リリース後、動脈の硬化は(脈波伝播速度の測定による)急激に減少し、血漿一酸化窒素の濃度は著しく上昇するという結論に至りました。それゆえ彼らは、フォームローラーによる自己筋膜リリースは、運動をあまりしない対象者においては、動脈の硬さを減少させ、動脈機能を向上させ、血管内皮機能を改善することができると提唱しています。 *** 制限要素は何なのでしょうか? この研究は、フォームローラーでの自己筋膜リリースにおける急性効果のみを評価しており、何もしない状態との比較のみであったということに制限がありました。今回の研究結果と同様のデータを表示しないかもしれない、ストレッチや軽いエクササイズと自己筋膜リリースとの比較研究があれば、より有益でしょう。 *** 実践的な意義は何でしょう? 一般の方に対して: フォームローリングは、動脈硬化や血管内皮機能に関しての、健康的意義があります。長期的な効果を証明するにはさらなる研究が必要ですが、健康を目的とする一般の人に対して、フィットネスプログラムの中にフォームローリングを組み込むことは意義があるのかもしれません。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 1987字

フォームローリングは関節可動域を広げるのでしょうか?

研究論文:即効性のある自己筋膜リリースは、筋肉の活性化や力を低下させることなく可動域を広げる;マクドナルド、ペニー、ムラレイ、クコンナト、ドレイク、ベーム、バットン、ストレングス、コンディショニングリサーチジャーナル 2012 *** 背景: この研究が出版された時点では、自己筋膜リリースに関する研究はあまり行われていませんでした。この研究の前に行われた可動域の変化に関する唯一の研究では、フォームローリングのプログラムは効果的ではないという結果が出ていました。 *** 研究者は何をしたのでしょうか? 研究者たちは、フォームローラーを使用した自己筋膜リリースが、膝の可動域、随意的、不随意的な筋力、力発生の速度、EMG活動に影響を及ぼすかどうか、確定したいと考えました。筋力を測定する理由は、運動前にストレッチを行うことは、力の産出に対する即効的な減少につながるということが、既に発見されていたからです。もし自己筋膜リリースによって、同様な力生産の減少なく可動域を広げることができれば、これはとても興味深い進歩となるでしょう。 研究者たちは、研究の為に大学から11人の男性の被験者を集め、それぞれのセッションの間を23-48時間空け、4セッションに渡り実験的なコンディションを実施しました。最初の2つのコンディションはコントロールされたもので、次の2つのコンディションはフォームローラーを使用したものでした。フォームローラーのコンディションの間、被験者は、それぞれのセット間に1分のレストを入れて、右の大腿四頭筋に対して1分間を2セットの、自己筋膜リリースを行いました。 *** 何が起こったのでしょうか? 大腿四頭筋の強度 研究者たちは筋力、力発生の速度、筋肉の活性化において、コントロールとフォームローラーのコンディション間に、著しい違いはないことを発見しました。 膝関節の可動域 研究者たちは、コントロールとフォームローラーのコンディションの間で、膝関節の可動域に明らかな相違があることを発見しました。フォームローラーの使用は、コントロールコンディションよりも約10度可動域の向上につながると、確認されました。下記のグラフは膝関節の可動域に対する相違を示しています。 研究者たちはどのような結論を出したのでしょうか? 研究者たちは、1分間を2セットのフォームローリングは著しく関節可動域を広げ、筋力の産出を妨げたり、力発生の速度を遅らせたりはしないという結論に至りました。 *** 制限要素は何なのでしょうか? この研究には、比較する文献がとても少ないという制限がありました。その結果として(例えば)1分間を2セット行うという方法が、関節可動域の向上に有益だった一方、これは、ただその方法が有益だったというのみであり、それが最も良い方法だということを意味するわけではありません。加えて、同じように膝関節の可動域を向上させるために同様な方法を用いた場合、静的ストレッチは力産出を減少させてしまいますが、研究者たちはこの実験を実践しなかった為、明らかではありません。 *** 実践的な意義は何でしょう? アスリートに対して:フォームローリングは、関節可動域を即効的に著しく広げ、筋力の産出を妨げたり、力発生の速度を遅らせたりすることはありません。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 1470字