マイクロラーニング
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何故スプリントコーチは水平力について知る必要があるのか?
ストレングス、コンディショニングの分野において、スプリントのスピードに対して垂直床反力の大切さを信じているコーチや研究者たちと、水平床反力の大切さを信じているコーチや研究者たちとの間で、激しい議論の一つが続いています。 何についての議論なのでしょうか?そうですね、この総説がその争点について解説をし、水平力の大切さについて論証することになるでしょう。 研究論文:スポーツパフォーマンスへの強度の移行とパワーの適応 – 水平、垂直力の生産 ランデル、クローニン、キオウ、ギル ストレングス、コンディショニングリサーチ2010 *** 背景 ストライドの長さと頻度 スプリントや速いランニングは、陸上競技やほとんどのチームスポーツにおいて選手達の重要な特性です。より速いランニングの速度は、歩長を大きくするか、その頻度を高めるか、もしくはその両方によって達成することができます。 ストライド頻度とより速いランニング ストライド頻度は1つの歩行周期を行うためにかかった時間の逆数です。それゆえ、ストライド頻度は、ランニングストライドを行うためにかかった時間に依存しています。ストライド全体の時間はさらに、滞空時間とスタンス時間の2つに分けることができます。評論家たちは、ランニングのトップスピードにおいて、その2つの部分それぞれの時間の長さは等しくはなく、滞空時間は全体のストライド時間の約75%になると説明しています。 しかし、速いランニングから、更に速いランニング速度へ移行する間では、ストライド頻度の大幅な増加は起こりません。評論家たちは、ウェイアンド(2000)が、滞空時間の増加が、より速い速度でのランニングスピードとは関連していないと発見したことを記述しています。 また一方で評論家たちは、ヌメラ(2007)、Kyröläinen(2001)、マンロウ(1987)全てが、スタンス時間の減少とランニング速度の上昇の関係を発見したことに注目しています。 スタンス時間は、全てのストライドの時間の中のほんの一部でしかないため、スタンス時間のみがランニング速度と関係しているという事実は、より速い速度において、何故全体のストライド頻度がランニング速度の上昇と強く結びつかないのか、ということを説明しているかもしれません。 ストライドの長さとより速いランニング ストライド頻度のように、ストライドの長さも、いくつかの段階に分けることができます。ストライドの長さの合計は、テイクオフの距離、滞空距離、着地の距離からなっています。その中でテイクオフと着時の距離は、合わせてスタンスの距離とすることが出来ます。しかしながら、ストライドの長さの合計は、ストライドの頻度とは異なり、より速い速度において、走る速度の上昇と関連があります。評論家たちは、ウェイアンド(2000)が、ストライドの長さが6.2m/sと比較して、11.1m/sにおいては1.96倍も長かったことを発見したと述べています。その一方、評論家たちはストライドの頻度とは違い、スタンスの距離の変化は走る速度とは関連がないとも解説しています。 床反力とストライドの制限要因 床反力は、通常フォースプレートを使って研究者たちにより測定されます。フォースプレートは、床に足を着いた時にアスリートの足に対して床から生み出された力を記録します。それゆえ、床反力と言うのです。ニュートンの第三の法則によると、この力はアスリートによって生み出された力と等しく、それぞれの方向において相反する方向に向かうべきです。ランニング時、アスリートは上下に動くため、その力は垂直、そして水平にかかることとなるでしょう。その一方で、垂直跳びにおける水平力は最小となります。 基本的な物理原理と同じく、一般的に、ランニングにおけるストライドの長さとストライド頻度は、より大きな床反力の結果として増加します。しかし、評論家たちは、コーチと研究者たちの間で、ランニングのスピードを上げるために大切なのは、垂直床反力なのか、水平床反力なのかについて激しい論争が繰り広げられていると解説しています。 *** 垂直床反力はより速いランニングの要因となるのか? ある研究者たちとコーチたちは、一定の速度でのランニングや、より速い速度でのランニングにおいても、少ない水平抵抗しかないと信じています。それゆえ、彼らは一定の速度において水平の推進力の必要性は、制動力に対抗するのに必要なだけでよいと提唱しています。それゆえ、彼らは垂直力の方がより大切だと提案しているのです。 例えば、ウェイアンド(2000)は、垂直床反力の増加は、ランニングの速度を速くするための重要な要素だと示唆しています。評論家たちは、ウェイアンドは、最高速度において、相対的な垂直床反力は、遅いランナーに比較して速いランナーでは1.26倍の大きさだったことを発見した、と記述しています。下記のグラフで示されているように、最大下速度から他へと増加する中で、同じ要因が数名の研究者たちによって観察されています。(薄い青色の棒は遅い速度、濃い青色の棒は速い速度を示します) ランニングの速度が上昇するに従い、時には著しく水平力も増えていることが、グラフから読み取れます。水平力が垂直力よりも上昇していることも予想できますが、次のセクションで更にみていくことにしましょう。更に詳細な内容を知りたい読者の皆さんには、ランダル及びその他、マンロウ(1987)、Kyröläinen(2001)、Kyröläinen(2005)、ベリ(2002)によって参照された文献を読まれることをお薦めします。 *** 水平床反力はより速いランニングの要因となるのか? その他の研究者たちは、より大きな水平力がより速い走りの速度には必要だと提唱しています。一体何を言おうとしているのか説明する必要がありますね。この時点では、より速いランニングの速度へ加速することについて話しているのではなく、単に、加速した後にそのより速いランニングの速度で動くことに関して述べています。そのことを頭に置いておくと、一定のスピードにおいては、水平推進力と水平制動力は等しくあるべきであるということになります。そうでなければ、速度は一定になりません。 そうはいっても、ある速度において力が同等であるからといって、それよりも遅い速度での力よりもその速度での力の方が大きいということにはなりません。より速い速度においては、より大きな水平制動力を予想することができ、それゆえ、より大きな水平推進力が必要となり、そして、推進力と制動力を合わせた総水平力がより大きいということになります。 しかしながら、これが実際にそうであるのかどうかは、研究の結果をみることによってしかわかりません。下のグラフはランニングの速度の上昇と水平力の変化を表しています。(薄い青色の棒は遅い速度を示し、濃い青色の棒はより速い速度を示しています) グラフから、垂直床反力はランニングの速度の上昇と共に増すことがわかります。更に詳細を知りたい皆さんには、ランダル及びその他、マンロウ(1987)、ニグ(1987)、Kyröläinen(2001)、Kyröläinen(2005)、ベリ(2002)によって参照された文献を読むことをお薦めします。 *** 垂直床反力と水平床反力の比較 評論家たちは、水平力と垂直力に関して2つの重要な違いがあると記述しています。最初の点は、垂直床反力は、ほぼ常に水平力よりもかなり大きいということです。これは重力によるものです。もう一つは、下のグラフが示しているように、水平力はランニングの速度の上昇と共により大きくなるようにみえるということです。 グラフは、4つ全ての研究において、水平力の増加の割合は、ランニングの速度の上昇と共に同等に上昇した垂直力よりも、はるかに大きかったことを示しています。(全てのデータは同じ速度範囲でセットされています) *** 垂直力の増加はランニングの速度の上昇と共に小さくなるかもしれない 評論家たちは、いくつかの研究では、ランニングの速度が速くなるにしたがい垂直床反力の増加が小さくなることを示していると記述しています。(言い換えれば、垂直床反力の上昇は直線ではないということです)しかし、これは水平力の場合は同じではないようです。 マンロウ(1987)とニグ(1987)による早期の研究では上昇は直線的であると提唱していますが、Brughelli(2011)を含めるその後の研究では、同じような関係性は発見されていません。下のグラフではBrughelliのデータが示されており、水平力の増加がどの速度においても概ねなだらかな一方、垂直力の上昇がいかに急激に減少しているのかをはっきりと示しています。 このグラフでは、垂直床反力の増加は主に、ランニングの最高速度の40%-60%の間で起こっていることが示されています。ランニングの最高速度の60%-100%では顕著な垂直床反力の上昇とは関わりがないように思われます。 *** 評論家たちはどのような結論に至ったのでしょうか? 評論家達は、垂直面、水平面の両方における力の生産が必要とされることが明白ではあるが、速いスピードでのランニングにとっては水平力がより重要であると結論づけた。 現在ほとんどのストレングスコンディショニングプログラムは、スクワットやデットリフトによる、垂直力の生産にフォーカスをおいて実施されているが、彼らはまた、この結果が、スプリントパフォーマンスのサポートとして使用されるストレングストレーニングのルーティンに関して重要な派生効果をもたらすであろうとも結論づけている。彼らはまた水平方向のエクササイズはより上位の、あるいは相補的な結果をもたらすであろうことを示唆している。 研究論文は下記のような制限がありました: 水平力を基にした筋力トレーニングがスプリントの動作に有益がどうか評価するための、スプリント選手におけるストレングスを介入したテストが行われていないため、実践におけるアドバイスは困難です。 ランニングやスプリント中の床反力の測定は、違う速度を比較した時、ほとんど統一されていません。スプリントは通常最高速度で行われますが、人によってその速度はまちまちであり、ランニングの速度は、他の研究と統一するというよりも、むしろ実験の目的によって選ばれることが多いため、異なった研究間でのそれぞれの速度における力の増加を比較することは、必ずしも正しいわけではありません。 参照されたある研究はその分析にトレッドミルを使っており、それらの研究からのデータを基にした推測は有効でないかもしれません。 この総説の作成以降、Brughelli(2011)、カワモリ(2012)、モーリン(2011)、モーリン(2012)を含むいくつかの研究が出版されていますが、水平力の大切さに関して、これらの研究論文はこの総説内のランダル及びその他によって導き出された結論を支持しています。 *** 実践的な意義は何でしょう? スプリントアスリートに対して: スクワットやデッドリフトなどのように、垂直力の発達を含む筋力トレーニングのプログラムは、最高速度でのスプリントのための筋肉の強化をするには適していないか、もしくは十分ではないかもしれません。 同様に、ジャンプスクワット、垂直跳び、その他の垂直プライオメトリックなどの動きを使ってのパワーの向上は、最高速度でのスプリントをするための筋肉の最大出力をトレーニングするためには適していないか、もしくは十分ではないかもしれません。 臀筋のブリッジ、ヒップスラスト、水平バックエクステンション等の水平方向のレジスタンストレーニングは、最高速度でのスプリントのために最適な水平力を生み出すために、スクワットやデットリフトに加えて行うことが必要かもしれません。 ケトルベルスイングなどの、水平方向のパワーを基にしたエクササイズは、最適な水平力を生み出すために、スクワットやデットリフトに加えて行うことが必要かもしれません。
ウォームアップの異なる要素はジャンプ動作にどのような影響を及ぼすのか?
研究論文:大学フットボール選手における、様々なウォームアップのプロトコールがジャンプ動作に及ぼす影響、パガデュアン、Pojskić、Užičanin、Babajic、 ヒューマンキネティックジャーナル 2012年 *** 背景 チームスポーツ参加前のウォームアップは、通常、有酸素運動とそれに続く様々なストレッチエクササイズから構成されている。しかし、ストレッチ、特に継続時間の長いストレッチは、出力の減少につながるようだという考えに基づき、スポーツ直前に静的ストレッチを行うことが疑問視されている。そのようなストレッチは怪我を減少させることに役立つと思われていたが、研究はその考えを支持していない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、アスリートのカウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスに対する、異なるウォームアッププロトコールの影響を調査しようと考えた。そのため、彼らは29名の大学のフットボール選手を集め、下記のような異なるウォームアッププロトコール実施後のカウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスを観察した。 ウォームアップなし 一般的なウォームアップ 一般的なウォームアップ+ダイナミックストレッチ 一般的なウォームアップ+ダイナミックストレッチ+静的ストレッチ 静的ストレッチ、静的ストレッチ+一般的なウォームアップ 静的ストレッチ+一般的なウォームアップ+ダイナミックウォームアップ 一般的なウォームアップは5分間のランニングから構成されていた。ダイナミックウォームアップと静的ストレッチウォームアップはそれぞれ10秒のレストを入れた20秒間を2セット行う、合計7分間の7つのエクササイズから構成されていた。ダイナミックウォームアップは、ストレイトレッグマーチ、バットキック、カリオカ、ハイニー、ツイストを加えたリバースランジ、パワーシャッフル(ステップスライド)、スクワットが加わったジョギングから構成されており、静的ストレッチは立位大腿四頭筋ストレッチ、立位カーフストレッチ、立位ハムストリングストレッチ、片脚ストラドル、反転ハードラーストレッチ、臥位シングルニートゥチェスト、座位クロスレッグ臀筋ストレッチから構成されていた。 *** 何が起こったのか? 研究者たちは、それぞれのウォームアッププロトコール後の平均カウンタームーブメントジャンプの高さは、下記のグラフに示されている通りであると発見した。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、一般的なウォームアップの方法と、ダイナミックストレッチが後に続く一般的なウォームアップが、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスを最適化するために最良のウォームアップであるという結論に至った。 *** キーポイントは何か? この研究からは下記のようなキーポイントが挙げられる: 一般的な有酸素のウォームアップや、ダイナミックストレッチが後に続く有酸素のウォームアップは、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスを最適化するために最良のウォームアップである。 静的ストレッチは、ウォームアップのどこで行ったとしてもパフォーマンスの低下につながる。 ウォームアップにおいて静的ストレッチを行うタイミングは、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスに著しい影響を及ぼす。ウォームアップの最後に行う静的ストレッチは、ジャンプパフォーマンスを著しく低下させ、ウォームアップの始めに行う静的ストレッチも、少しではあるがパフォーマンスの低下を引き起こす。 全関節可動域を得るために静的ストレッチが必要な場合、静的ストレッチはウォームアップ以外の時間に行われるのが最良である。 総体的に、ウォームアップはパフォーマンス向上においてあまり注目されていないエリアであり、今後のリサーチによって、あらゆる種類のスポーツのコーチ達にとって、いかに適切なウォームアップを導入すれば良いかに関しての有効な情報が提供されていくことになるのであろう。 ***
ウォームアップ後の筋温低下の減少は、自転車スプリントのパフォーマンスを向上させるのか?
研究論文:ウォームアップ後の筋温低下の減少による自転車スプリントパフォーマンスの向上、フォークナー、ファーガソン、ギャレット、フペレッツ、ホダー、ハベニス、スポーツ&サイエンスにおけるメディスン&サイエンス、2012年 背景 筋温が筋機能に影響するという原理は、エクササイズ前にウォームアップをするという概念の要となっている。研究者たちは、エクササイズ前に筋温を上昇させることは、特に高いレベルでのパワー産出を必要とする活動において有益であると発見した。言うまでもなく、筋温は体を動かすことと外部熱源を使うことにより得ることがきる。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ウォームアップと30秒自転車スプリントテストの間に、筋温を維持する異なる方法を試し、どの方法がそのスプリントテスト中の最適な出力に対して最良かを知りたいと考えた。そこで彼らは、11名の男性の自転車競技選手とトライアスロンの競技選手を集め、ウォームアップとテストの間、異なる保温コンディションにて(一般的なトラックスーツパンツ、保温機能付きアスレチックパンツ、保温機能付きアスレチックパンツと外部加熱要素の組み合わせ)一般化されたウォームアップ後、30秒の最大速度でのスプリントを3セット行わせた。 何が起こったのか? 研究者たちは、外部熱源を使用したコンディションにおいては、他の2つのコンディションよりもより高い筋温を維持していたことを報告した。彼らはまた、下記のグラフで示されているように、このコンディションにおいては最大出力がより高かったと報告している。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは保温衣類と外部熱源の併用はウォームアップとスプリントテスト間での筋温の低下を減少することができ、最大速度での30秒自転車スプリントテストにおいて最大出力を約9%向上することができると結論付けた。 *** キーポイントは何か? この研究は、トレーニングやパフォーマンス前のウォームアップに関する、下記のようなアドバイスの提供を可能にした。 保温衣服と外部熱源の併用は、ウォームアップとスプリントテスト間の筋温の低下を減少することができる。 しかしながら、外部熱源なしでの保温衣服の使用は有効的ではない。 保温衣服と外部熱源の併用による筋温の保持は、最高速度での30秒自転車スプリントテストにおいて最大出力を約9%向上させる。 総合的には、ウォームアップ中の筋温の上昇はとても重要であり、その上昇した筋温をウォームアップからパフォーマンスやトレーニングまでの間維持することは、パフォーマンス向上の鍵かもしれないと思われる。
ケトルベルが一部のリフターに対しては腰痛を引き起こし、他の個人にとってはリハビリの助けとなるのは何故だろうか? パート1/2
ケトルベルは、アスリートや趣味でリフティングを行う人たちに頻繁に使われている。それゆえその使用については、多くの逸話が存在している。 ケトルベルの使用に関する逸話的特徴のひとつに、他の股関節伸展エクササイズを多く行っているにも関わらず、股関節伸展強度の増加や機能の向上がアスリートにより頻繁に報告されるということがある。他の逸話的特徴として、一部の人が、他の股関節伸展エクササイズを行う際には痛みを感じないが、ケトルベルスイングでは腰の痛みを感じるということがある。 下記の研究は、よく見られるこれらの2つの報告の背景にある理由を調べようと試みたものである。 研究論文:ケトルベルスイング、スナッチ、ボトムスアップキャリー:背中と股関節の筋肉の活性化,動作、腰への負荷、マッギル、マーシャル、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2012年 *** 背景 ケトルベルは現在、唯一のトレーニングツールとして、また、バーベルや徒手体操と併用して、より多くのウェイトリフターやフィットネス愛好家によって使われるようになってきている。しかしながら、ウェイトリフターによる事例証拠は混在しているようである。 ウェイトリフターの中には、同じ目的の為に他の動作を行っているにも関わらず、スイングが腰部損傷後のリハビリの助けになる、または、股関節伸展強度の増加の助けになるとして、ケトルベルのエクササイズを賞賛ている人たちがいる。一方、他のウェイトリフターたちは、バーベルリフトは無痛で行えるが、ケトルベルの動き、特にスイングは腰を悪化させる動きの一つであると示している。 更に、一部のケトルベルの専門家は、革命的な武道家であるブルース・リーに由来する技術を使いスイングを実践している。「キメ」と呼ばれるこの技術は、筋肉の収縮と弛緩を訓練する為の短時間の筋肉の振動である。これはスイングの動きの頂点で行われる。 研究では、MMA(混合武道家)ファイターは攻撃する際、一撃の効果を強めるため、実際に素早い筋肉の収縮と弛緩を使うということが確認されている。しかしながら、一般的なケトルベルエクササイズを行う際の力学や、腰への負荷を数値で表そうとした研究はこれ以前には存在していない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ケトルベルスイング、キメを伴うケトルベルスイング、ケトルベルスナッチ、ケトルベルボトムスアップキャリー、ケトルベルラックキャリーといった、ケトルベルエクササイズを行う際の脊椎への負荷と、体幹、脚、背中の筋肉の様々な活動を数値で表そうと試みた。 研究者たちは、ある人にとっては治療的または有益であるが、他の人にとっては不快であるといったような、ケトルベル特有の特徴が存在するのかどうかを発見したいと考えた。彼らはまた、キメにどのような効果があるのかを発見しようとした。研究者たちはスイングとスナッチに7名の被験者、キャリーに5名の被験者を使った。 研究者たちはまた、パベル・サッソーリン が行うスイングの特徴を記録する許可を得た。この研究には16キロのケトルベルが使用され、解剖学的目印に置かれた反射マーカーと、9台のカメラモーションキャプチャーシステムを使用し、3D身体部位の運動学が評価された。床反力は、2つのフォースプレートをそれぞれの足の下に一枚ずつ使用し測定された。 筋電図のデータが表面電極を使用して記録され、研究者たちはその筋電図のデータを最大随意等尺性収縮(MVIC)へと正規化した。大臀筋に対して使われたMVICのポジションは、Bierring-Sorensen ポジションや、テーブルに腹臥位で膝関節を90度に屈曲させ股関節を伸展したポジションよりも高かった。中臀筋に対して正規化されたポジションは、横臥位で、股関節を少し外旋させ、45度に外転した状態で抵抗に耐えるポジションであった。 *** 何が起こったのか? 筋電図活動:スイング 研究者たちは、スイングの中で様々な筋肉の活動が最も活発な位置を調べた。彼らは下記のグラフで示されているように、スイングの際、最も活発な筋肉は、大臀筋、中臀筋、広背筋、そして脊柱起立筋であるということを発見した。 研究者たちはまた、臀筋の活性化のピークはスイングサイクルの後半で起こり、股関節伸展の最終ポイントと密接に関係していたと記述している。このことは次に挙げる2つの理由により有益である。第一に、スイングを行う際の臀筋活動のピークは、臀筋の活動が最大になり得るところ(すなわち股関節のフル伸展)の股関節の屈曲角度において起こる。これはケトルベルスイングが、股関節屈曲位において臀筋を最大に活性化する他のエクササイズよりも、より多く臀筋を活性化するかもしれないということを示唆している。 第二に、ケトルベルスイングにおけるこの臀筋活動のピークは、そのポイントにおいて股関節伸展トルクが最大であるため、臀筋の活動が股関節の大きい屈曲角度において最大であると信じられている、スクワットやデットリフトのような軸方向のエクササイズを行う際の臀筋活動のピークとは対照的である。このことは、ケトルベルスイングは股関節の異なる角度において臀筋を活性化するため、スクワットやデットリフトの補助的なエクササイズとして有益であるかもしれないということを示唆している。 *** 筋電図活動:キメを伴うスイング 研究者たちは、スイングにキメを加えることは、外腹斜筋において起こっている活性化の向上(右外腹斜筋において101%、左外腹斜筋において140%の向上)を伴い、主に腹筋に影響を及ぼすと報告した。下記のグラフは様々な筋肉間での差異を示している。 *** 筋電図活動:スナッチ 研究者たちは、スナッチは右外腹斜筋、右大腿直筋、左内腹斜筋の3つの筋肉の活性化を向上させることを発見した。これはケトルベルを高く振り上げる必要性があるからであろうと思われる。下記のグラフは様々な筋肉間での違いを示している。 しかしながら、スイングやスナッチを行っている被験者の写真を確認したところ、使われたフォームは標準的なヒップヒンジではなく、スクワットスタイルに近いものであった。これは、この研究での結果に影響を及ぼし、大腿直筋のより高い活動につながった可能性がある。これに対して、ヒップヒンジスタイルでのスナッチは、大腿二頭筋の活動をより大きく生み出すかもしれなかったが、更なる研究なくして、これを知ることは不可能である。 *** 筋電図活動:ケトルベルキャリー 研究者たちは、筋活動は全てのウォーキングエクササイズにおいてとても低かったと記述している。実際、大臀筋の活動の平均値は、いかなるウォーキングエクササイズにおいてもMVCの1%以上に達したことはなく、中臀筋の活動の平均値はMVCの3%以上に達したことはない。このことは、これらの筋肉においてトレーニング効果を得るためには16kgよりも更に重い負荷が必要だということを示している。しかしながら、研究者たちは、その他のウォーキングテストと比較した場合、左外腹斜筋以外の全ての筋肉の筋電図活動は、ボトムアップキャリーを行う際により高かったと記述している。 ***
ケトルベルが一部のリフターに対しては腰痛を引き起こし、他の個人にとってはリハビリの助けとなるのは何故だろうか? パート2/2
何が起こったのか? (続き) 脊椎の動き:スイング ケトルベルスイングを行う際、脊椎は動きのボトムポジションで26度屈曲し、頂点では6度伸展するといったように、合わせて32度の屈曲、伸展が起こったということは記述しておくべきである。より高度なケトルベルの熟練者が、スイングの際に同じようなレベルの脊椎の動きになるのか、それとも違うレベルでの動きになるのかを判明するには更なる調査が必要である。 *** 脊椎負荷:スイング、キメとスナッチを伴うスイング 最も重要なこととして、研究者たちは、圧縮負荷に対する剪断負荷の比率は一般的なバーベルエクササイズに比べ、スイングやキメとスナッチを伴うスイングにおいてより大きく、そのことが、個人が時としてケトルベルエクササイズを不快に思う理由であるかもしれないと観察した。 研究者たちはまた、剪断負荷や圧縮負荷はスイングの始めに最も高かったと報告している。彼らはスイングやキメを伴うスイングにおいて、スイングの頂点では、キメを伴うスイングでは剪断負荷と圧縮負荷が高いまま維持され、通常のスイングでは著しく減少したが、スイングの頂点以外では、剪断負荷と圧縮負荷が似通っていたことを発見した。下記のグラフはそれぞれのタイプのスイングとスナッチにおける剪断負荷と圧縮負荷を示している。 上記のグラフは、3つのエクササイズ全てにおいて、動きの最初から中間までの間に、どのように剪断負荷が減少するかを示している。(注意:スナッチに対しての中間部分の測定は行われていない)しかしながら、このグラフはまた、通常のスイングに比較してキメを伴うスイングでは、いかに剪断負荷の高さが維持されているかも示している。研究者たちはより少ない剪断負荷の方が望ましいと考えられると記述している。腰痛や外傷の既往歴がある人においては、キメを伴わないスイングの方がより良い選択肢であるかもしれない。 このグラフはまた、スイングやスナッチにおける圧縮負荷は、動きの漸進と共に減少することを示している。しかしながら、キメを伴うスイングにおいての圧縮負荷は、高いまま維持されている。脊椎の硬さを高め、より高い剪断力による悪影響を減少させる為に、腹筋の活性化が促進されることによってこのような圧縮負荷の上昇が起こっているようであるが、これをこの研究から確実に証明することは不可能である。 *** 脊椎負荷:ケトルベルキャリー 研究者たちはまた、関節の圧縮負荷や剪断負荷はラックポジションや通常のウォーキングに比べて、ボトムアップポジションで著しく大きかったと報告している。 *** 事例研究 研究者たちは、パベル・サッソーリンが32キロのケトルベルを右手、及び両手で持ちスイングを行う際の筋電図活動を記録した。この実験の間、パベルは左の脊柱起立筋においてMVCの150%の活性化、また、左臀筋において100%以上の活性化を示した。 この事例研究は、それほど熟練してはいない被験者が、ケトルベルスイングを行う際に記録した筋電図活動のデータの結果、すなわち全ての筋肉の中で臀筋の活動が最も活発であったという結果とは著しく異なっている。臀筋はケトルベルスイングにおいて明らかに大切な筋肉である。しかし、パベルはスイングを行う際、コアスタビリティを確保するため、より一層脊柱起立筋を硬くすることもできたのである。 ヒップヒンジスタイルのスイングを習得することに集中したケトルベルのトレーニングの前後に、様々な負荷を使いながら、トレーニングされていない被験者グループの股関節の伸筋とコアの筋電図活動を記録し、改善されたフォームと訓練を通じて、より大きな活動を得ることができるのかどうかを観察することは興味深いでことであろう。 *** 制限要素は何か? この研究は、全ての動きにおいて軽量のケトルベルのみが使用され、被験者はほとんどが未経験者であったことに制限があった。更に、写真に示されているこの研究で使われたフォームは、理想的なヒップヒンジスイングではなかったようである。このことが、より大きな股関節屈筋、大腿四頭筋、脊柱起立筋の活動、そして、腹筋、臀筋、ハムストリングの活動の低下へとつながったのかもしれない。 最後に、この研究には脊柱負荷に関するデータが含まれておらず、そのデータがあれば、正しいヒップヒンジスイングのフォームと臀筋の活性化ができるアスリートを指導しているコーチたちにとって、より有益であったかもしれない。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、ケトルベルスイングは、かなり大きな筋肉の素早い活性化と弛緩というパターンと共に股関節を軸にしたヒップヒンジの動きを生み出すようだという結論に達した。 しかしながら、研究者たちはまた、ケトルベルスイングは、圧縮負荷に対して剪断負荷がとても高いという、腰椎における独特な圧縮負荷と剪断負荷の比率を生み出すようであるとも記述している。それゆえ、この動きに対する恩恵を痛みなしに受けるためには、後方の剪断負荷に対する剪断安定性と剪断応力が必要である。 *** 実践的な意義は何か? アスリートと趣味でリフティングを行う人たちに対して: 脊椎の剪断負荷の圧縮負荷に対する比率は、バーベルエクササイズよりもケトルベルスイングの方がはるかに大きく、このことは、剪断負荷に対して抵抗力の低い個人は、軸方向に負荷がかかるバーベルエクササイズを心地よく行うことができるにも関わらず、ケトルベルスイングを不快だと感じる可能性があるということを意味するかもしれない。 一部のリフターたちがリバースハイパーやケトルベルスイングのような動きを有益だとみなすという事実は、腰椎におけるわずかな伸展によるものであろう。この多少の伸展は正しいフォームで行われている限り問題はない。 剪断負荷は、一般的なスイングに比べ、キメを伴うスイングにおいては高いまま維持される。腰痛や外傷の既往歴がある人にとっては、キメを伴わないスイングの方がより良い選択肢であろう。 スイングにおける臀筋の活動は股関節完全伸展近くでピークとなり、これによりケトルベルスイングは、股関節屈曲において股関節の伸展トルク(そして臀筋の活動量も同様に)が最大となるスクワットやデットリフトの補足トレーニングとして有益なエクササイズであるとみなされる。 ***
デプスジャンプはスクワットの最大強度を即時に向上させことができるのか?
活性化後増強作用(PAP)効果とは、「コンディショニング収縮」と呼ばれる筋収縮が、それに続く筋活動におけるパフォーマンスの向上につながるという現象である。 PAP効果はほとんどの場合、コンディショニング収縮として、1RMの80-90%でのスクワットのような高負荷のレジスタンストレーニングを使い、それに続く筋活動、またはパフォーマンス測定として、垂直跳びのようにパワフルなスポーツの動きを使って研究される。 しかしながら、下記の2つの研究が示しているように、PAP効果は最大筋力でのスクワットのような高負荷での筋活動においても観察することができる。 背景 PAP効果は、コンディショニング収縮として高負荷を使用し、パフォーマンス収縮として低負荷、又は自重でのパワフルな動きを使用した際に効果を発揮する。多くの場合、コンディショニング収縮にはバックスクワットが使われ、パフォーマンス収縮には垂直跳びが使われる。 研究者たちは、PAP効果は多数の要因により影響を受け、その最も顕著なものは、コンディショニング収縮による疲労の度合いであるということを発見した。コンディショニング収縮が多大なる疲労を引き起こす場合、PAP効果は疲労の弊害により覆い隠されるか、もしくは、無効となる。 それに加え、PAP効果は(他の要因の中で)アスリートの強さ(例:ザイツ2013年)、レストの間隔(例:ゴウビア2013年)、スクワットの深さ(例:エスフォーメス2013年)により変化する。その他の変数要因には、筋収縮の種類(例:等尺性、短縮性、もしくは伸長性など)、相対的な負荷、量(例:レップ、セット、ケイデンス、収縮時間)、そしておそらく異なる筋肉群の様々な反応(ロビンス2005年を参照)が含まれる。 研究者たちは、PAPが働く可能性のある様々なメカニズムを提案した。その3つのメカニズムとは、(1)筋小胞体からのCa2+放出が上昇することによる、免疫軽鎖のリン酸化の増加により引き起こされる、アクチン・ミオシン相互作用の感度の上昇、及びミオシン頭部の構造の変化によるクロスブリッジのより高い力発生状態。(2)前の筋収縮に続く励起電位の上昇による運動単位動員数の増加(3)筋繊維の羽状角度における有益な変化、である。 *** 研究1: 男性アスリートにおける、最大スクワットパフォーマンスに対するプライオメトリックエクササイズの即時的影響、マサモト、ラーソン、ゲイツ、フェイゲンバウム、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2003年 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、1RMでのパラレルスクワットに対する、3つの異なったウォームアッププロトコールの影響を調査したいと考えた。そのため、彼らは平均5.2年のレジスタントトレーニングと1年以上のプライオメトリックエクササイズトレーニングの経験を持つ12名の野球選手を集めた。 1試験では、被験者は1RMテストの前に従来のウォームアッププロトコールを行った。別の試験では被験者は、1RMテストの30秒前にタックジャンプを3回行い、第三試験に於いては、1RMでのリフトの30秒前に高さ43.2cm(17インチ)の箱からのデプスジャンプを2回行った。 *** 研究者たちは何を発見したのか? 研究者たちは、下記のグラフに示されているように、1RM前のデプスジャンプは従来のウォームアップに比べ、著しく高いリフトパフォーマンスにつながったということを発見した。 デプスジャンプの効果は、絶対値で見た場合決して大きいものではなかったが(4.9Kg)、これらの1RMスクワットにおける向上の比率は3.5%であった。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、最大筋力でのスクワット実施30秒前に行われた、17インチの箱からの2回のデプスジャンプは、ストレングストレーニングを行っている野球選手の1RMのパラレルスクワットパフォーマンスを著しく向上させたという結論に至った。 *** 研究2: プライオメトリックエクササイズ後の、最大スクワットパフォーマンスに対する、多様なレスト間隔の影響、ラヒミ、インターナショナルフィットネスジャーナル、 2008年 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、1RMのパラレルスクワットパフォーマンス前にデプスジャンプを行うことから得られるPAP効果に対する、異なる休息時間の影響を調査したいと考えた。そのため研究者たちは、3年以上のレジスタンストレーニングとプライオメトリックトレーニング両方の経験を持つ10名の男性バスケットボール選手を集めた。 1試験では、被験者は1RMテストの前に従来のウォームアッププロトコールを行い、更なる3試験では、被験者は1RMリフトの30秒前と60秒前に45cm(17.7インチ)の箱からのデプスジャンプを2回行った。 *** 研究者たちは何を発見したのか? 研究者たちは、下記のグラフに示されているように、最大スクワットを行う15-30秒前にデプスジャンプを行うことは、従来のウォームアップに比べ、著しい1RMリフトの向上につながるということを発見した。 グラフから見て取れるように、60秒後にはデプスジャンプによるPAP効果は消滅していた。興味深いことに、デプスジャンプの効果は絶対値としては(4.2Kg)前述の研究での結果にきわめて近かったが、絶対的な負荷がより大きかったため、1RMのスクワットに対する向上率は2.7%であった。これは、その効果がより強靱なリフターにおいては小さいのか、もしくは他の要素(例えば、被験者のタイプ、使用されたのが少々高さの高い箱であったこと、等)による影響であったのかを示しているのかどうかは明確ではない。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、最大スクワットの15-30秒前に17インチの箱から行われた2回のデプスジャンプは、ストレングストレーニングを通常行っている男性バスケットボール選手において、パラレルスクワットの1RMパフォーマンスを著しく向上させたという結論に至った。 *** 制限要素は何か? この2つの研究には下記のような点において制限があった。 スクワットは、通常からレジスタンストレーニングを行い、プライオメトリックトレーニングの経験のある、男性のバスケットボール選手、もしくは野球選手によって行われた。パワーリフターのようなプライオメトリックトレーニングの経験が無い人たちでは異なった結果が得られたかもしれない。 被験者のスクワットの最大筋力は、バスケットボール選手や野球選手において予想していた通り(体重の約1.5倍)であった。パワーリフターのようにスクワットの強度がより高い人たちでは、異なった結果が得られたかもしれない。 両方の研究では最大スクワット、すなわち1RMに対するデプスジャンプの効果のみが調査された。1RMの80-90%のように、より軽い相対負荷に対しては異なった結果が得られたかもしれない。 この研究は即時的な効果の観察であったため、最大スクワット前にデプスジャンプを行うことがより良いトレーニング効果を生み出すのかどうかは明確ではない。 *** 実践的な意義は何か? ストレングスコーチとパワーリフターに対して アスリートが既にプライオメトリックトレーニングに馴染みがある場合は、最大、準最大スクワットリフトの15-30秒前に適度な高さ(例:17インチ程度)の箱からのデプスジャンプを2回行うことは、リフトの負荷を3-4%上昇させることにつながる。 この研究はプライオメトリックを通常行っているアスリートに対して行われたため、この技術を利用したいと考えるパワーリフターは、おそらく、最大リフトの前にデプスジャンプを使用する以前に、時間をかけて漸進的なプライオメトリックスの導入をするべきであろう。
運動不足の若い成人に対し、中程度から強度の有酸素運動は睡眠の必要性にどのような影響を及ぼすか?
研究論文:運動不足の若い成人における、中程度から強度の有酸素運動の、睡眠の必要性に対する影響、ウォン、ハラキ、チュウ、スポーツサイエンスジャーナル、2013年 背景 睡眠の必要性は、個人が完全に目覚め、日中の最適なパフォーマンスを行うことを可能にする毎日の睡眠量として、とても大まかに定義されている。睡眠の必要性が満たされない場合、睡眠負債と呼ばれるものが引き起こされ、これは機能的、生理学的の両方において、日中のパフォーマンスの低下に関連する。研究者たちは、睡眠の必要性には大きな個人差があり、年齢や性別によっても大きく異なるということを発見している。しかしながら、日中の活動による睡眠の変化の程度は明確ではない。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、睡眠障害の無い、運動不足の若い成人、12名(女性9名、男性3名)のグループにおいて、異なる有酸素運動がどのように睡眠に影響を及ぼすのかを調べようと考えた。彼らは、シフト制の仕事をしている人や過去2週間以内に時差のある国へ旅行をした人を被験者から除外した。 何が起こったのか? 研究者たちは、異なるエクササイズコンディション間には、著しい睡眠時間の差異はなかったと報告した。しかしながら、睡眠が浅い時と深い時を分析した結果、研究者たちは、下記のグラフで示されているように、被験者は65%から75%でのエクササイズ後は、何もエクササイズを行っていない状態に比べ、全体の睡眠時間において、浅い眠りにいる時間の方が長かったということを発見した。 研究者たちは、エクササイズ強度の増加に伴い急速眼球運動(REM/レム)睡眠の時間が減少するという傾向は、特に有意ではなかったと記述している。 実践的な意義は何か? 就寝6時間前に、VO2-max(最大酸素摂取量)の65%以上で40分間のトレッドミルエクササイズを行うことは、レム睡眠の減少という非有意な傾向と共に、深い眠りを妨げ、浅い眠りの時間を増加させるということへとつながる。
家庭環境における軽度の睡眠制限は、多様な代謝と内分泌マーカーにどのような影響を及ぼすのか?
研究論文:家庭環境においての、3週間に渡る軽度の睡眠制限の健康な若い男性の多様な代謝と内分泌マーカーに対する影響、ロバートソン、ラッセル・ジョーンズ、アンプレビー、ダイク、代謝作用 臨床と実験 2013年 背景 睡眠時間と概日リズムの乱れは、特に体重の増加、耐糖能障害、高血圧との結びつきにより、メタボリック症候群、肥満、2型糖尿病の発症に影響を及ぼす要因であるという証拠が増加してきている。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、標準の体重である健康な個人において、3週間に渡る多少の睡眠の欠如(1.5時間)の影響を調査したいと考えた。研究者たちは特に、この程度の睡眠欠乏がインスリン感受性を低下させ、レプチンの血中濃度を変化させるのかどうかを見たいと考えた。 何が起こったのか? 睡眠時間 研究者たちは、通常よりも1時間30分早く目覚まし時計をセットすることにより、故意に1時間31分睡眠時間を短縮した睡眠欠乏のグループにおいて、その介入の結果として、通常の睡眠時間に著しい影響が出たことを報告している。 インスリン感受性への影響 研究者たちは、インスリン感受性は、睡眠制限のあるグループでは、最初に低下し、その後基準レベルまで回復したが、コントロールグループにおいては変化が無かったと報告した。 レプチン濃度への影響 研究者たちは、睡眠欠乏のグループにおいて、レプチン濃度は最初の2週間は基準値近くに留まり、その後、3週間目で著しく低下し、その基準値を著しく下回る値を維持していたと報告した。コントロールグループにおいてはそのような変化は見られなかった。レプチンは食欲を抑制する作用があるため、レプチン濃度の低下は食欲を促進すると考えられる。 体重への影響 睡眠欠乏のグループにおいて、体重は最初の2瞬間は基準値を下回ったが、3週間目で著しく増加した。コントロールグループにおいては著しい変化は無かった。 実践的な意義は何か? 多少の睡眠欠乏は、最初は体重を減少させるが‘、その後著しい血中レプチン濃度の減少に伴い著しい体重の増加へとつながる。レプチンは食欲を抑制するとされているため、レプチン濃度の低下は食欲の増加へとつながると予想される。それゆえこれは、睡眠時間の減少が体脂肪の増加へとつながり得るメカニズムである。
睡眠の断片化は、24時間の食欲と、それに関連するホルモン濃度にどのような影響を及ぼすのか?
研究論文:健康な男性における、24時間の食欲と、関連するホルモン濃度に対する睡眠断片化の影響、ゴニッセン、ハーセル、リュッタース、マートンズ、ウェスターテラップ・プランテンガ、英国栄養学ジャーナル、2013年 背景 今の時代における最も切迫した医療問題は、おそらく、肥満の急速な増加であろう。多くの研究者たちは、近年変化しているその他のライフスタイルとの関係性を見ることにより、この増加の正確な原因をつきとめようとしてきた。睡眠時間の減少傾向という一要因は、あまり頻繁に研究がなされてはいないが、肥満の増加に伴い、実際に睡眠時間が減少していることは明白である。しかしながら、これらの2つの傾向の間に因果関係があるのかどうかは明確ではない。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、睡眠阻害が睡眠時間の減少を引き起こすのと同じように、食欲制御の低下につながるのかどうかを調査したいと考えた。そのため彼らは、睡眠阻害のあるコンディションと無いコンディションの2つのコンディションにおいて被験者を調査した。睡眠阻害の無いコンディションにおいて、被験者は夜を通して眠ることを許され、阻害のある(断片的な)コンディションでは、被験者は夜間に何度か起こされた。 何が起こったのか? 睡眠時間 研究者たちは、睡眠阻害のあるコンディションと無いコンディションの間で、睡眠時間、もしくは目覚めている時間において著しい違いはなかったと報告している。阻害のある夜において、被験者は平均5回起こされた。研究者たちは、阻害の無い夜に比べ、睡眠阻害のある夜においてはレム睡眠の時間が著しく短かったと報告している。 グルコースとインスリン濃度 研究者たちは、阻害のあるコンディションにおいては、阻害の無いコンディションよりも朝食後のインスリンの上昇が、著しく低かったが、夕食後では阻害のあるコンディションの方が高かった、と報告した。 コルチゾール濃度 研究者たちは、睡眠阻害のあるコンディションでは、阻害の無いコンディションに比べ、夕方のコルチゾール濃度が著しく高かったことを発見した。 実践的意義は何か? 睡眠阻害は、全睡眠時間や目覚めている時間を変化させはしないが、確実にレム睡眠の減少へとつながる。レム睡眠は健康と回復の為に大切だと信じられているため、これは、睡眠阻害が健康の妨げとなり得ることを示唆している。 加えて、睡眠阻害は、グルコースの分泌は変化させないが、一日の食後のインスリン分泌のパターンを変化させる。 睡眠阻害は朝のインスリン分泌を減少させ、午後のインスリン分泌を上昇させる。このことは夜の食料摂取量と間食を増加させることにつながる可能性がある。それゆえこれは、睡眠の質の低下が体脂肪増加を引き起こし得るメカニズムである。
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート1
(パート2はこちらへ) ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要 ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは何か? ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは、標準化された複合的な動きから成る7つの個々のテストにより構成された、スポーツ参加前のスクリーニング手段である。各テストは試験者により0から3に評価され、総合得点が与えられる。これには、ディープスクワット、ハードルステップ、インラインランジ、ショルダーモビリティ、アクティブストレートレッグレイズ、トランクスタビリティプッシュアップ、ロータリースタビリティが含まれる。痛みがある場合は0、対象者が動作を行うことが不可能な場合は1と評価される。また、対象者が動作を行うことは可能であるが、代償動作を伴う場合は2と評価され、対象者がその動作を正しく行うことができた場合は3と評価される。各動作に対するそれぞれの得点は、21満点中の最終的な得点として集計され、この総合得点が外傷のリスクを予測すると考えられている。このテストを研究した研究者たちは、得点が14点以下の個人は、14点を越える個人に比較して、外傷のリスクがより高いと示唆している。 標準的なFMSの得点は何点か? 健康ではあるが、トレーニングを行っていない人たちにおける標準的なFMSの得点は、14.14 ± 2.85 点から to 15.7 ± 1.9 点の範囲である。トレーニングを行っていない人たちのほとんどが、代償パターンを示していることが考えられ、また外傷のリスクの増加とパフォーマンスの低下が予測できると思われている14点以下という区切りの得点を多少上回っている、ということを示唆している。 FMSは信頼性の高いテストか? テストが有効であるためには、それが信頼性の高いものである必要がある。信頼性とは、テストが多少異なった時間に同人物によって(評価者内)、もしくは、同時に違う人たちにより(評価者間)繰り返されることができ、同じ結果を生み出すことができるかどうかということを示す。少なくとも14の研究が、FMSの評価者間の信頼性、または評価者内の信頼性を調査している。14の研究の内、13の研究がFMS総合得点の評価者間の信頼性についての報告をしており、8つの研究がFMS総合得点の評価者内の信頼性に対しての報告をしている。FMS総合得点の評価者間の信頼性について調査した13の研究の内1つの研究のみが、信頼性が中等度以下であったことを報告している。この唯一の研究では、相関関係を分析する為に他とは異なった統計的方法を用いていたこと、また、かなり多種多様の背景をもつ評価者を採用していたということは注目に値する。評価者内の信頼性について報告をしている8つの研究の内、1つの研究が学生評価者によるテストが低い信頼性を示したということを発見したが、7つの研究では少なくとも中等度の信頼性が報告されている。これは、FMSはおそらくほとんどの人に対し、フィールドテストとして許容できる程度の信頼性があるということを示唆している。 FMSは有効なテストか? テストが有益であるためには、それが有効である必要がある。有効性とは、テストが測定するべきものだけを実際に測定しているのかどうかということを表す。FMSの場合、テストの目的は、スポーツで同じ動作を行う際の代償パターンを特定することである。いくつかの研究が、FMSが有効かどうか、またスポーツの動きの中で行われる際の代償パターンのみを測定しているのかどうかを評価した。1つの研究は、テスト基準に関する知識がテストの結果に著しい影響を及ぼすと報告しており、これはテストのパフォーマンスがアスリートからの影響を受ける可能性があるということを示唆しているかもしれない。他の研究は、発育段階もまたテストの結果に影響を及ぼすと報告しており、テストが若いアスリートには適していないということを示唆している可能性がある。その他の研究では、様々なテストの結果間での相関関係が乏しいと報告されており、外傷の危険性を予測するために各テストの得点を合計して総合得点を出すことに対する有効性が疑問であるということを意味している。最後に、ある研究では、高速で高い負荷をかけて行われた類似するエクササイズでは、異なる動作特徴が現れたと報告されており、FMSを行う際にアスリートによって示される代償パターンが、スポーツの動きの中で示される代償パターンとは異なるかもしれないということを示唆している。結果として、これらの研究はFMSの有効性を疑問視している。
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート2
(パート1はこちらへ) ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要(続き) FMSの得点は外傷のリスクを予測するか? FMSの基本原理は、有害である代償パターンの保有率を測定するというものである。少なくとも18の研究が、FMSの得点が外傷率を予測することができるのかどうかを評価している。これらの18の研究のうち11の研究が、FMSの得点が14点を超える人と比較し、14点以下の個人における外傷に対する相対的な危険性を評価した。これらの11の研究のうち4つの研究が、FMSの得点は外傷の危険性を予測することはできないということを発見した。残りの7つの研究では、14点以下の個人の外傷に対する相対的な危険性は1.65から11.67倍であり、これは、FMSが個人の外傷の危険性の大小を、区別することができるかもしれないということを示唆している。 FMSの得点はアスレチックパフォーマンスを予測するか? FMSの背景にある概念のひとつは、非効率であると考えられる代償パターンの発生率を測定することであり、ゆえにパフォーマンスの低下度合いを予測する、というものである。アスレチックパフォーマンスとFMSの総合得点の相関関係を評価した8つの試験において、2つのみがアスレチックパフォーマンスとFMSの得点の相関関係を発見した。この2つの試験両方において、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスとFMSの総合得点の間に、ある程度の相関関係が見いだされた。これは、FMSが有害となる代償パターンを発見することができないか、もしくは見つけられた代償パターンがパフォーマンスへ悪影響を及ぼさないかのどちらかであるということを示唆している。 エクササイズトレーニングはFMSの得点を向上させるか? もしFMSが有益であるのならば、基準テストの結果を基に行動を起こし、後のテストにおける得点を向上させることが大切である。少なくとも9つの研究が様々な集団において、FMSの得点を向上させるための異なるエクササイズプログラムの能力について評価している。9つの研究のうち8つが、ある種のエクササイズがFMSの得点を向上させることができたと報告している。しかしながら、コレクティブエクササイズやファンクショナルエクササイズと従来のレジスタンストレーニングを比較した2つの研究において、研究者たちは両方のケースで、2つの方法の間にFMSの得点の向上に対し著しい違いはなかったことを発見している。 ボディ・マス・インデックス(BMI)はFMSの得点に影響を及ぼすか? いくつかの研究がFMSの得点に対するBMIの影響について報告している。FMSの得点に対するBMI指数の影響についての報告をした全ての研究は、より高いBMI指数がより低いFMSの得点と関連していることを発見している。 ある研究でもまた、FMSの得点が身体活動に積極的に関係していると発見されていることから、BMIとFMS得点の間の逆相関関係は、過体重/肥満の人が身体活動をあまり行わないという傾向によりもたらされている可能性がある。 FMSの得点と他のテスト結果との関連性はあるか? FMSは、肩関節の内旋や外旋の可動域の計測とは関連性が無いようである。しかし、スター・エクスカーション・バランステスト(SEBT)の結果と、FMSにおいても乏しいパフォーマンスが予測される、片脚垂直跳びでの高い非対称性とは関連性をもつようである。 FMSについて他に何がわかっているか? 他にも様々な研究がFMSに関して行われている。研究者たちは単にFMSを行うことは自己知覚近位安定性の低下に繋がると観察した。研究者たちはまた、FMSの得点が悪かった(14点未満)人と良かった(14点超え)人の間で、腰部にかかる負荷に著しい差異は無かったと記述している。 キーポイントは何か? FMSは、ある程度外傷の危険性が高いアスリートを識別する予測能力のある、比較的信頼性の高いフィールドテストであるようだが、アスレチックパフォーマンスとの関連性は無いようである。加えて、多くのエクササイズ、トレーニング、そして身体活動はFMSの得点を向上させることができる可能性が高いようである。しかしながら、テスト基準に関する知識と発達段階がテストの結果に影響を及ぼすようであること、テスト動作が高速で行われ負荷がかけられた場合、同様に行われることができなくなること、総合得点を構成する個々の要素に相関性がないことから、総合得点による外傷リスクの予測は、適切ではなく、テストの有効性に関しては深刻な懸念がある。
筋限界に至るまでのトレーニングは更なる筋肥大につながるか? パート1/2
限界に至るまでトレーニングを行うべきか否か、というフィットネス業界における大きな議論にもかかわらず、研究者たちはこの問題を十分に調査していない。実際に多くの人が信じてはいることとは裏腹に、限界(もしくは重度の疲労)に至るまでのトレーニングが筋力強化や筋肥大にとって望ましいかどうかということに関する、量を適合させた長期のトレーニングの研究は、非常に希である。下記のものは我々の知識の要約である。 背景 瞬間的な筋限界までのトレーニングは、フィットネス業界における一般的な概念であり、ほとんどのトレーニング中級、上級の人たちは、セットを行っている際に限界に近づいていることを本能的直感により感知する。また、多くのアスリートが定期的に限界に至るトレーニングを行っているが、パワーリフターやボディビルダーなどを含むかなりの割合の人たちは、ワークアウトにおいて常に限界に至るまで行っているわけではない。 しかしながら、ある一定期間のトレーニング後の筋力と筋肥大を調査した研究論文においては、一般的に全てのセットが限界に至るまで行われている。研究論文が伝えていることと、トレーニングを行う人達によって実際に行われているであろうことの間で矛盾が生じている。 それに加え上述の通り、一方のグループが限界までセットを行い、他方のグループが同量のプログラムを限界以前で行うという量を適合させたトレーニング方法の比較をした研究は希である。ゆえに、この短い総括には、これらの研究と量を適合させたプロトコールでの異なる疲労度合いの違いについて調査したものがいくつか含まれている。これは理想的ではないかもしれないが、より充実した全体像を提供しており、下記に詳細が述べられているサンドストラップ(2012年)の発見に基づいて、有効なものであると思われる。 幾人かの研究者と限界までトレーニングを行うことの支持者は、限界に至るまでトレーニング行うことは、全ての運動単位を動員するために必要であると提言しているが、研究者たちはその見解を十分に支持しているわけではない。サンドストラップ(2012年)は、限界に至るまで行われた15RMでの各レップにおけるラテラルレイズの筋電図活動を調査した。彼らは、筋活動のプラトーへは15RMの負荷での10-12レップで達するということを発見し、それは少なくともトレーニングを行っていない個人においては、全ての運動単位を完全に動員するために完全なる限界までトレーニングする必要はないということを意味すると解釈した。 *** 筋限界の筋肥大に対する効果は何か? 下記のトレーニング研究は、多様な異なる方法を用い、量を適合させた同じエクササイズを筋限界へ至らぬ程度まで行った(もしくはより少ない疲労)グループと比較し、筋限界(もしくは多大な疲労)までエクササイズを行ったグループの筋力に対する効果を調査している。 ゴトウ (2005年)は同量の大腿四頭筋のレジスタンストレーニングの組み合わせの中での、大腿四頭筋の筋肥大に対する限界の効果を調査した。各トレーニンググループが、ラットプルダウンとショルダープレスを10RMで3セットと、両脚でのニーエクステンションを10RMで5セット行ったが、一方のグループは、エクササイズ実行中にはレストを取らず、各エクササイズの間、及びセット間に1分のレストを入れ、もう一方のグループは1分のレストに加え、各セットの半分のところで、更に30秒のレストを取った。研究者たちは、セットの間にレストを入れたグループはレストを取らなかったグループに比べより少ない筋肥大を示しており、それは筋限界が筋肥大の重要な修正因子であるかもしれないということを示していると発見した。しかしながら、このような結果が起こった正確なメカニズムは明確ではない。 ショット (1995年) - 研究者たちは7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く断続的な筋収縮(より少ない疲労グループ)と、長く継続的な筋収縮(より大きな疲労グループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは短く断続的な収縮よりも長く継続した収縮での方が、筋肉の断面積の増加が著しく大きいことを発見した。 研究の少なさにより結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らないトレーニングに比べ、限界に至るトレーニングでは筋肥大に著しい向上がみられるようである。しかしながら筋肥大の追求において、より多くのトレーニング量をこなすことを支持するエビデンスがとても多く、トレーニングの量と筋力がたびたび互いに相反しているため、現在のエビデンスは、適切な回復が可能な範囲での筋限界を伴う、より多量のアプローチを支持しているようである。