ケトルベルが一部のリフターに対しては腰痛を引き起こし、他の個人にとってはリハビリの助けとなるのは何故だろうか? パート2/2

何が起こったのか? (続き) 脊椎の動き:スイング ケトルベルスイングを行う際、脊椎は動きのボトムポジションで26度屈曲し、頂点では6度伸展するといったように、合わせて32度の屈曲、伸展が起こったということは記述しておくべきである。より高度なケトルベルの熟練者が、スイングの際に同じようなレベルの脊椎の動きになるのか、それとも違うレベルでの動きになるのかを判明するには更なる調査が必要である。 *** 脊椎負荷:スイング、キメとスナッチを伴うスイング 最も重要なこととして、研究者たちは、圧縮負荷に対する剪断負荷の比率は一般的なバーベルエクササイズに比べ、スイングやキメとスナッチを伴うスイングにおいてより大きく、そのことが、個人が時としてケトルベルエクササイズを不快に思う理由であるかもしれないと観察した。 研究者たちはまた、剪断負荷や圧縮負荷はスイングの始めに最も高かったと報告している。彼らはスイングやキメを伴うスイングにおいて、スイングの頂点では、キメを伴うスイングでは剪断負荷と圧縮負荷が高いまま維持され、通常のスイングでは著しく減少したが、スイングの頂点以外では、剪断負荷と圧縮負荷が似通っていたことを発見した。下記のグラフはそれぞれのタイプのスイングとスナッチにおける剪断負荷と圧縮負荷を示している。 上記のグラフは、3つのエクササイズ全てにおいて、動きの最初から中間までの間に、どのように剪断負荷が減少するかを示している。(注意:スナッチに対しての中間部分の測定は行われていない)しかしながら、このグラフはまた、通常のスイングに比較してキメを伴うスイングでは、いかに剪断負荷の高さが維持されているかも示している。研究者たちはより少ない剪断負荷の方が望ましいと考えられると記述している。腰痛や外傷の既往歴がある人においては、キメを伴わないスイングの方がより良い選択肢であるかもしれない。 このグラフはまた、スイングやスナッチにおける圧縮負荷は、動きの漸進と共に減少することを示している。しかしながら、キメを伴うスイングにおいての圧縮負荷は、高いまま維持されている。脊椎の硬さを高め、より高い剪断力による悪影響を減少させる為に、腹筋の活性化が促進されることによってこのような圧縮負荷の上昇が起こっているようであるが、これをこの研究から確実に証明することは不可能である。 *** 脊椎負荷:ケトルベルキャリー 研究者たちはまた、関節の圧縮負荷や剪断負荷はラックポジションや通常のウォーキングに比べて、ボトムアップポジションで著しく大きかったと報告している。 *** 事例研究 研究者たちは、パベル・サッソーリンが32キロのケトルベルを右手、及び両手で持ちスイングを行う際の筋電図活動を記録した。この実験の間、パベルは左の脊柱起立筋においてMVCの150%の活性化、また、左臀筋において100%以上の活性化を示した。 この事例研究は、それほど熟練してはいない被験者が、ケトルベルスイングを行う際に記録した筋電図活動のデータの結果、すなわち全ての筋肉の中で臀筋の活動が最も活発であったという結果とは著しく異なっている。臀筋はケトルベルスイングにおいて明らかに大切な筋肉である。しかし、パベルはスイングを行う際、コアスタビリティを確保するため、より一層脊柱起立筋を硬くすることもできたのである。 ヒップヒンジスタイルのスイングを習得することに集中したケトルベルのトレーニングの前後に、様々な負荷を使いながら、トレーニングされていない被験者グループの股関節の伸筋とコアの筋電図活動を記録し、改善されたフォームと訓練を通じて、より大きな活動を得ることができるのかどうかを観察することは興味深いでことであろう。 *** 制限要素は何か? この研究は、全ての動きにおいて軽量のケトルベルのみが使用され、被験者はほとんどが未経験者であったことに制限があった。更に、写真に示されているこの研究で使われたフォームは、理想的なヒップヒンジスイングではなかったようである。このことが、より大きな股関節屈筋、大腿四頭筋、脊柱起立筋の活動、そして、腹筋、臀筋、ハムストリングの活動の低下へとつながったのかもしれない。 最後に、この研究には脊柱負荷に関するデータが含まれておらず、そのデータがあれば、正しいヒップヒンジスイングのフォームと臀筋の活性化ができるアスリートを指導しているコーチたちにとって、より有益であったかもしれない。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、ケトルベルスイングは、かなり大きな筋肉の素早い活性化と弛緩というパターンと共に股関節を軸にしたヒップヒンジの動きを生み出すようだという結論に達した。 しかしながら、研究者たちはまた、ケトルベルスイングは、圧縮負荷に対して剪断負荷がとても高いという、腰椎における独特な圧縮負荷と剪断負荷の比率を生み出すようであるとも記述している。それゆえ、この動きに対する恩恵を痛みなしに受けるためには、後方の剪断負荷に対する剪断安定性と剪断応力が必要である。 *** 実践的な意義は何か? アスリートと趣味でリフティングを行う人たちに対して: 脊椎の剪断負荷の圧縮負荷に対する比率は、バーベルエクササイズよりもケトルベルスイングの方がはるかに大きく、このことは、剪断負荷に対して抵抗力の低い個人は、軸方向に負荷がかかるバーベルエクササイズを心地よく行うことができるにも関わらず、ケトルベルスイングを不快だと感じる可能性があるということを意味するかもしれない。 一部のリフターたちがリバースハイパーやケトルベルスイングのような動きを有益だとみなすという事実は、腰椎におけるわずかな伸展によるものであろう。この多少の伸展は正しいフォームで行われている限り問題はない。 剪断負荷は、一般的なスイングに比べ、キメを伴うスイングにおいては高いまま維持される。腰痛や外傷の既往歴がある人にとっては、キメを伴わないスイングの方がより良い選択肢であろう。 スイングにおける臀筋の活動は股関節完全伸展近くでピークとなり、これによりケトルベルスイングは、股関節屈曲において股関節の伸展トルク(そして臀筋の活動量も同様に)が最大となるスクワットやデットリフトの補足トレーニングとして有益なエクササイズであるとみなされる。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2767字

デプスジャンプはスクワットの最大強度を即時に向上させことができるのか?

活性化後増強作用(PAP)効果とは、「コンディショニング収縮」と呼ばれる筋収縮が、それに続く筋活動におけるパフォーマンスの向上につながるという現象である。 PAP効果はほとんどの場合、コンディショニング収縮として、1RMの80-90%でのスクワットのような高負荷のレジスタンストレーニングを使い、それに続く筋活動、またはパフォーマンス測定として、垂直跳びのようにパワフルなスポーツの動きを使って研究される。 しかしながら、下記の2つの研究が示しているように、PAP効果は最大筋力でのスクワットのような高負荷での筋活動においても観察することができる。 背景 PAP効果は、コンディショニング収縮として高負荷を使用し、パフォーマンス収縮として低負荷、又は自重でのパワフルな動きを使用した際に効果を発揮する。多くの場合、コンディショニング収縮にはバックスクワットが使われ、パフォーマンス収縮には垂直跳びが使われる。 研究者たちは、PAP効果は多数の要因により影響を受け、その最も顕著なものは、コンディショニング収縮による疲労の度合いであるということを発見した。コンディショニング収縮が多大なる疲労を引き起こす場合、PAP効果は疲労の弊害により覆い隠されるか、もしくは、無効となる。 それに加え、PAP効果は(他の要因の中で)アスリートの強さ(例:ザイツ2013年)、レストの間隔(例:ゴウビア2013年)、スクワットの深さ(例:エスフォーメス2013年)により変化する。その他の変数要因には、筋収縮の種類(例:等尺性、短縮性、もしくは伸長性など)、相対的な負荷、量(例:レップ、セット、ケイデンス、収縮時間)、そしておそらく異なる筋肉群の様々な反応(ロビンス2005年を参照)が含まれる。 研究者たちは、PAPが働く可能性のある様々なメカニズムを提案した。その3つのメカニズムとは、(1)筋小胞体からのCa2+放出が上昇することによる、免疫軽鎖のリン酸化の増加により引き起こされる、アクチン・ミオシン相互作用の感度の上昇、及びミオシン頭部の構造の変化によるクロスブリッジのより高い力発生状態。(2)前の筋収縮に続く励起電位の上昇による運動単位動員数の増加(3)筋繊維の羽状角度における有益な変化、である。 *** 研究1: 男性アスリートにおける、最大スクワットパフォーマンスに対するプライオメトリックエクササイズの即時的影響、マサモト、ラーソン、ゲイツ、フェイゲンバウム、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2003年 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、1RMでのパラレルスクワットに対する、3つの異なったウォームアッププロトコールの影響を調査したいと考えた。そのため、彼らは平均5.2年のレジスタントトレーニングと1年以上のプライオメトリックエクササイズトレーニングの経験を持つ12名の野球選手を集めた。 1試験では、被験者は1RMテストの前に従来のウォームアッププロトコールを行った。別の試験では被験者は、1RMテストの30秒前にタックジャンプを3回行い、第三試験に於いては、1RMでのリフトの30秒前に高さ43.2cm(17インチ)の箱からのデプスジャンプを2回行った。 *** 研究者たちは何を発見したのか? 研究者たちは、下記のグラフに示されているように、1RM前のデプスジャンプは従来のウォームアップに比べ、著しく高いリフトパフォーマンスにつながったということを発見した。 デプスジャンプの効果は、絶対値で見た場合決して大きいものではなかったが(4.9Kg)、これらの1RMスクワットにおける向上の比率は3.5%であった。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、最大筋力でのスクワット実施30秒前に行われた、17インチの箱からの2回のデプスジャンプは、ストレングストレーニングを行っている野球選手の1RMのパラレルスクワットパフォーマンスを著しく向上させたという結論に至った。 *** 研究2: プライオメトリックエクササイズ後の、最大スクワットパフォーマンスに対する、多様なレスト間隔の影響、ラヒミ、インターナショナルフィットネスジャーナル、 2008年 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、1RMのパラレルスクワットパフォーマンス前にデプスジャンプを行うことから得られるPAP効果に対する、異なる休息時間の影響を調査したいと考えた。そのため研究者たちは、3年以上のレジスタンストレーニングとプライオメトリックトレーニング両方の経験を持つ10名の男性バスケットボール選手を集めた。 1試験では、被験者は1RMテストの前に従来のウォームアッププロトコールを行い、更なる3試験では、被験者は1RMリフトの30秒前と60秒前に45cm(17.7インチ)の箱からのデプスジャンプを2回行った。 *** 研究者たちは何を発見したのか? 研究者たちは、下記のグラフに示されているように、最大スクワットを行う15-30秒前にデプスジャンプを行うことは、従来のウォームアップに比べ、著しい1RMリフトの向上につながるということを発見した。 グラフから見て取れるように、60秒後にはデプスジャンプによるPAP効果は消滅していた。興味深いことに、デプスジャンプの効果は絶対値としては(4.2Kg)前述の研究での結果にきわめて近かったが、絶対的な負荷がより大きかったため、1RMのスクワットに対する向上率は2.7%であった。これは、その効果がより強靱なリフターにおいては小さいのか、もしくは他の要素(例えば、被験者のタイプ、使用されたのが少々高さの高い箱であったこと、等)による影響であったのかを示しているのかどうかは明確ではない。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、最大スクワットの15-30秒前に17インチの箱から行われた2回のデプスジャンプは、ストレングストレーニングを通常行っている男性バスケットボール選手において、パラレルスクワットの1RMパフォーマンスを著しく向上させたという結論に至った。 *** 制限要素は何か? この2つの研究には下記のような点において制限があった。 スクワットは、通常からレジスタンストレーニングを行い、プライオメトリックトレーニングの経験のある、男性のバスケットボール選手、もしくは野球選手によって行われた。パワーリフターのようなプライオメトリックトレーニングの経験が無い人たちでは異なった結果が得られたかもしれない。 被験者のスクワットの最大筋力は、バスケットボール選手や野球選手において予想していた通り(体重の約1.5倍)であった。パワーリフターのようにスクワットの強度がより高い人たちでは、異なった結果が得られたかもしれない。 両方の研究では最大スクワット、すなわち1RMに対するデプスジャンプの効果のみが調査された。1RMの80-90%のように、より軽い相対負荷に対しては異なった結果が得られたかもしれない。 この研究は即時的な効果の観察であったため、最大スクワット前にデプスジャンプを行うことがより良いトレーニング効果を生み出すのかどうかは明確ではない。 *** 実践的な意義は何か? ストレングスコーチとパワーリフターに対して アスリートが既にプライオメトリックトレーニングに馴染みがある場合は、最大、準最大スクワットリフトの15-30秒前に適度な高さ(例:17インチ程度)の箱からのデプスジャンプを2回行うことは、リフトの負荷を3-4%上昇させることにつながる。 この研究はプライオメトリックを通常行っているアスリートに対して行われたため、この技術を利用したいと考えるパワーリフターは、おそらく、最大リフトの前にデプスジャンプを使用する以前に、時間をかけて漸進的なプライオメトリックスの導入をするべきであろう。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3541字

運動不足の若い成人に対し、中程度から強度の有酸素運動は睡眠の必要性にどのような影響を及ぼすか?

研究論文:運動不足の若い成人における、中程度から強度の有酸素運動の、睡眠の必要性に対する影響、ウォン、ハラキ、チュウ、スポーツサイエンスジャーナル、2013年 背景 睡眠の必要性は、個人が完全に目覚め、日中の最適なパフォーマンスを行うことを可能にする毎日の睡眠量として、とても大まかに定義されている。睡眠の必要性が満たされない場合、睡眠負債と呼ばれるものが引き起こされ、これは機能的、生理学的の両方において、日中のパフォーマンスの低下に関連する。研究者たちは、睡眠の必要性には大きな個人差があり、年齢や性別によっても大きく異なるということを発見している。しかしながら、日中の活動による睡眠の変化の程度は明確ではない。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、睡眠障害の無い、運動不足の若い成人、12名(女性9名、男性3名)のグループにおいて、異なる有酸素運動がどのように睡眠に影響を及ぼすのかを調べようと考えた。彼らは、シフト制の仕事をしている人や過去2週間以内に時差のある国へ旅行をした人を被験者から除外した。 何が起こったのか? 研究者たちは、異なるエクササイズコンディション間には、著しい睡眠時間の差異はなかったと報告した。しかしながら、睡眠が浅い時と深い時を分析した結果、研究者たちは、下記のグラフで示されているように、被験者は65%から75%でのエクササイズ後は、何もエクササイズを行っていない状態に比べ、全体の睡眠時間において、浅い眠りにいる時間の方が長かったということを発見した。 研究者たちは、エクササイズ強度の増加に伴い急速眼球運動(REM/レム)睡眠の時間が減少するという傾向は、特に有意ではなかったと記述している。 実践的な意義は何か? 就寝6時間前に、VO2-max(最大酸素摂取量)の65%以上で40分間のトレッドミルエクササイズを行うことは、レム睡眠の減少という非有意な傾向と共に、深い眠りを妨げ、浅い眠りの時間を増加させるということへとつながる。

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家庭環境における軽度の睡眠制限は、多様な代謝と内分泌マーカーにどのような影響を及ぼすのか?

研究論文:家庭環境においての、3週間に渡る軽度の睡眠制限の健康な若い男性の多様な代謝と内分泌マーカーに対する影響、ロバートソン、ラッセル・ジョーンズ、アンプレビー、ダイク、代謝作用 臨床と実験 2013年 背景 睡眠時間と概日リズムの乱れは、特に体重の増加、耐糖能障害、高血圧との結びつきにより、メタボリック症候群、肥満、2型糖尿病の発症に影響を及ぼす要因であるという証拠が増加してきている。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、標準の体重である健康な個人において、3週間に渡る多少の睡眠の欠如(1.5時間)の影響を調査したいと考えた。研究者たちは特に、この程度の睡眠欠乏がインスリン感受性を低下させ、レプチンの血中濃度を変化させるのかどうかを見たいと考えた。 何が起こったのか? 睡眠時間 研究者たちは、通常よりも1時間30分早く目覚まし時計をセットすることにより、故意に1時間31分睡眠時間を短縮した睡眠欠乏のグループにおいて、その介入の結果として、通常の睡眠時間に著しい影響が出たことを報告している。 インスリン感受性への影響 研究者たちは、インスリン感受性は、睡眠制限のあるグループでは、最初に低下し、その後基準レベルまで回復したが、コントロールグループにおいては変化が無かったと報告した。 レプチン濃度への影響 研究者たちは、睡眠欠乏のグループにおいて、レプチン濃度は最初の2週間は基準値近くに留まり、その後、3週間目で著しく低下し、その基準値を著しく下回る値を維持していたと報告した。コントロールグループにおいてはそのような変化は見られなかった。レプチンは食欲を抑制する作用があるため、レプチン濃度の低下は食欲を促進すると考えられる。 体重への影響 睡眠欠乏のグループにおいて、体重は最初の2瞬間は基準値を下回ったが、3週間目で著しく増加した。コントロールグループにおいては著しい変化は無かった。 実践的な意義は何か? 多少の睡眠欠乏は、最初は体重を減少させるが‘、その後著しい血中レプチン濃度の減少に伴い著しい体重の増加へとつながる。レプチンは食欲を抑制するとされているため、レプチン濃度の低下は食欲の増加へとつながると予想される。それゆえこれは、睡眠時間の減少が体脂肪の増加へとつながり得るメカニズムである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 1063字

睡眠の断片化は、24時間の食欲と、それに関連するホルモン濃度にどのような影響を及ぼすのか?

研究論文:健康な男性における、24時間の食欲と、関連するホルモン濃度に対する睡眠断片化の影響、ゴニッセン、ハーセル、リュッタース、マートンズ、ウェスターテラップ・プランテンガ、英国栄養学ジャーナル、2013年 背景 今の時代における最も切迫した医療問題は、おそらく、肥満の急速な増加であろう。多くの研究者たちは、近年変化しているその他のライフスタイルとの関係性を見ることにより、この増加の正確な原因をつきとめようとしてきた。睡眠時間の減少傾向という一要因は、あまり頻繁に研究がなされてはいないが、肥満の増加に伴い、実際に睡眠時間が減少していることは明白である。しかしながら、これらの2つの傾向の間に因果関係があるのかどうかは明確ではない。 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、睡眠阻害が睡眠時間の減少を引き起こすのと同じように、食欲制御の低下につながるのかどうかを調査したいと考えた。そのため彼らは、睡眠阻害のあるコンディションと無いコンディションの2つのコンディションにおいて被験者を調査した。睡眠阻害の無いコンディションにおいて、被験者は夜を通して眠ることを許され、阻害のある(断片的な)コンディションでは、被験者は夜間に何度か起こされた。 何が起こったのか? 睡眠時間 研究者たちは、睡眠阻害のあるコンディションと無いコンディションの間で、睡眠時間、もしくは目覚めている時間において著しい違いはなかったと報告している。阻害のある夜において、被験者は平均5回起こされた。研究者たちは、阻害の無い夜に比べ、睡眠阻害のある夜においてはレム睡眠の時間が著しく短かったと報告している。 グルコースとインスリン濃度 研究者たちは、阻害のあるコンディションにおいては、阻害の無いコンディションよりも朝食後のインスリンの上昇が、著しく低かったが、夕食後では阻害のあるコンディションの方が高かった、と報告した。 コルチゾール濃度 研究者たちは、睡眠阻害のあるコンディションでは、阻害の無いコンディションに比べ、夕方のコルチゾール濃度が著しく高かったことを発見した。 実践的意義は何か? 睡眠阻害は、全睡眠時間や目覚めている時間を変化させはしないが、確実にレム睡眠の減少へとつながる。レム睡眠は健康と回復の為に大切だと信じられているため、これは、睡眠阻害が健康の妨げとなり得ることを示唆している。 加えて、睡眠阻害は、グルコースの分泌は変化させないが、一日の食後のインスリン分泌のパターンを変化させる。 睡眠阻害は朝のインスリン分泌を減少させ、午後のインスリン分泌を上昇させる。このことは夜の食料摂取量と間食を増加させることにつながる可能性がある。それゆえこれは、睡眠の質の低下が体脂肪増加を引き起こし得るメカニズムである。

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スクワットのトレーニングはデッドリフトを向上させるか? パート1/2

オンラインのパワーリフティングコミュニティーでは、スクワットのトレーニングがデッドリフトのパフォーマンス向上につながるのかどうか、という議論が引き起こされている。多くのリフターが、スモロフスクワットやロシアンスクワットプログラムのサイクルによるデッドリフトの向上を報告しているが、他のリフターはそれほど運が良いわけではなく、デッドリフトを行うことからよりよいデッドリフトのパフォーマンスを得ている傾向にある。 スクワットとデットリフトのクロスオーバー効果を分析するだけの十分なトレーニング研究がなされていない状況において、我々はその2つのエクササイズの生体力学的な類似性を調査している、即時的研究に目を向けなければならない。 この研究は、デッドリフトに関する個人の生体力学的な特性に関しての非常に興味深い手掛かりに加え、いくつかの有益な洞察を提供している。 研究論文: コンペティション中の、パワーリフティングスタイルのスクワットと標準的なデットリフトの運動学的解析:これらのリフト間にクロスオーバー効果はあるのか? へールズ、ジョンソン&ジョンソン、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2009年 *** 背景 多くのパワーリフターたちは、スクワットとデッドリフトが非常に類似した特性を持っていると信じており、ゆえに、どちらか一方のリフトを行うことは、そのクロスオーバー効果によりもう一方のリフトを著しく向上させると考えている。しかしながら、このクロスオーバー効果が起こるのかどうかは明確ではない。 スクワットとデッドリフトパフォーマンスの間の関係を評価するために最適な研究デザインは、一方のパワーリフターのグループがスクワットエクササイズのみのトレーニングサイクルを行い、もう一方のグループがスクワットエクササイズとデッドリフトの組み合わせのトレーニングサイクルのみを行うというようなトレーニング研究であろう。デッドリフトに関しても、デッドリフトのみのグループとデッドリフトとスクワットのグループといったように、同じような研究を行うことができる。しかしながら、このような研究が存在しない状況においては、この2つのリフトの生体力学的類似性の即時的評価が行うことができるであろう。 このような生体力学的評価に関して、これまでの研究では、スクワットとデッドリフトの両方に膠着領域(スティッキングリージョン)があるということを確認している。そのスティッキングリージョンこそが、どのようにしてパフォーマンスを最も向上させるかの評価のために分析するべき、リフトの重要な部分なのかもしれない。スティッキングポイントでは、バーが減速した前段階を受けて、バーの速度は最小である。(そしてそのため、リフターによってバーベルにかけられた力は、重力によってバーベルにかけられた力よりも少ない。) 結果的に、スクワットとデッドリフトのスティッキングリージョンを調査することは、その2つのリフトが生体力学的に類似するのか、もしくは異なるのかを評価するために有益であるかもしれない。 しかしながら、特にデッドリフトにおいて、そしてある程度スクワットにおいても、個人のパワーリフターが、より膝を屈曲させたポジションや上体を起こしたポジションでのレッグリフト戦略を導入しているか、もしくは、より膝を伸展させ、上体をより屈曲させたポジションでのバックリフト戦略を導入しているのかにより、個体差があるかもしれない。これは、デッドリフトのパフォーマンスに対してスクワットトレーニングからの恩恵を受け得る人達が存在する、ということを示唆しているのかもしれない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、生体力学的な観点から、類似の程度を究明するため、スクワットと標準的なデッドリフトの関節角度の動きを比較したいと考えた。そのため彼らは、地域のパワーリフティングコンテストにおいて、全国大会への出場権を得た男性競技者25名を集めた。 研究者たちは、4台の同期化されたビデオカメラを使用し、パワーリフターがコンベティションにおいてスクワットとデッドリフトを行う際の3D分析を行った。このセットアップにより様々な関節角度と可動域(ROM )の計算が可能となり、リフトオフ、ニーパッシング、ロックアウト、の3段階においてリフトが分析された。 *** 何が起こったのか? バーの速度 研究者たちは、リフトオフではスクワットとデッドリフトの間で、バーの平均速度に著しい違いがあるが、バーの最高速度地点や、スティッキングリージョンにおいては差異がないことを発見した。下記のグラフで見られる通り、スクワットにおいて、コンセントリック段階の始めではバーの速度は非常に低速であった。 デッドリフトは完全停止からのコンセントリック段階から始まり、スクワットはエキセントリックの段階があることにより得られた伸張—短縮サイクルの恩恵から始まるということを考えると、非常に興味深い。それは、スクワットのボトムポジションからの加速に比較して、床から持ち上げるデッドリフトの加速は、より大きいかもしれないということを示唆している。しかしながら、研究者たちが提供しなかった加速の数値なくしては、これが事実であるのか否かを述べるのは困難である。 もしデッドリフトが床からバーベルを持ち上げる際、かなりの加速を要するとするのであれば、デッドリフトは、スポーツパフォーマンスの鍵である力産出の速度を訓練するために非常に有益であると言えるだろう。これは確実に更なる研究が有用となる領域である。 リフトオフにおける関節角度 研究者たちは、非常に大まかな各部位の長さを仮定した後、リフトオフのにおける胴体、大腿部、脛の絶対的な関節角度を規定し、下記のようなリフトオフにおける平均関節角度の図を作り出した。 この図は、リフトオフ(コンセントリック段階の始まり)の時点で、デッドリフトでは胴体がより水平となり、スクワットでは、胴体がより直立の状態となるということを示している。 その他にも注目すべき点が2つある。第一に、パワーリフターは、デッドリフトの際に非常に小さな脛の角度を示しており、この角度はスクワットにおける角度よりも実際に小さかったということは注目に値する。私は、より垂直な脛骨を想定していた。以前デッドリフトのスティッキングリージョンについて記述したように、このことは、これらの被験者たちは経験豊富ではなかった可能性があり、より経験豊富なアスリートでは異なった結果が観察されたかもしれないということを示唆している。 あるいは、リフトオフのポイントが最初のプル直前であった可能性があり、バーにテンションがかかった瞬間に脛骨の角度が著しく増加したのかもしれない。しかしながら、スティッキングポイント(下記参照)における脛骨の角度は90度よりもはるかに小さかったため、これには確認が持てない。 第二に、この研究におけるスクワットの深さは非常に乏しいものであった。これは、被験者たちが経験豊富でなかった可能性があり、より経験豊富なアスリートでは異なった結果が観察されたかもしれないという観察を支持している。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3073字

スクワットのトレーニングはデッドリフトを向上させるか? パート2/2

スティッキングポイントにおける関節角度 研究者たちは、非常に大まかな各部位の長さを仮定した後、リフトオフのにおける胴体、大腿部、脛の絶対的な関節角度を規定し、下記のようなスティッキングポイントにおける平均関節角度の図を作り出した。 この図は、2つのリフトにおけるスティッキングポイントは、非常に異なった体位で起こるということを示している。研究者たちは実際に、スティッキングポイントでの股関節と膝関節の角度は、スクワットにおいては比較的類似しているが、デッドリフトにおいては大きく異なるということを観察している。 これは、デッドリフトにおけるスティッキングポイントでの膝関節角度が、スクワットにおける膝関節角度よりもより伸展位にあるためである、ということが図から見て取れる。研究者たちは、デッドリフトが膝関節から股関節へと順番に起こる動きであるのに対し、スクワットは膝関節と股関節の動きが同時に起きるため、このような結果になったと記述している。 スティッキングリージョンにおける関節角度可動域 研究者たちはスティッキングリージョンにおける各関節角度の可動域、つまり、バーが最大速度となる地点からスティッキングポイント(最小速度となる地点)までの可動域を計測した。研究者たちは、膝関節と股関節の可動域はスクワットにおいては類似しているが、デッドリフトにおいては異なることを発見した。これはデッドリフトでは、スティッキングリージョンにおいて膝関節が股関節よりも小さな可動域内で動くためである。 このことは、スティッキングリージョンを通過するためには、スクワットでは、股関節と膝関節両方の伸展トルクが必要であり、デッドリフトでは、膝関節の伸展トルクよりもより大きな股関節伸展トルクが必要であるということを示唆している。この可動域は下記のグラフに示されている。 その他の観察報告 研究者たちは、スクワットとデッドリフトに対するバー速度の第2のピーク(スティッキングポイント後)に関するグラフは提示しているが、データは提供していなかった。グラフでは、スクワットにおける第2のピークは最初のピークよりも著しく高かったことが示されている。一方、デッドリフトにおいては、実質的に第2のピークは第1のピークよりも低かった。 この報告は、スクワットにおいては、スティッキングポイントからロックアウトへより楽に移行することができる一方、デッドリフトにおいては、リフターはスティッキングポイントからロックアウトへと移行するために懸命に努力しなくてはならないと示唆しているために、非常に興味深いものである。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、スクワットとデッドリフト両方のスティッキングポイントが、各リフトにおいて異なる場所で起こるということを観察した。彼らは、デッドリフトが膝関節から股関節へ順番に起こる動きにより行われるのに対し、スクワットは膝関節と股関節で同時に起こる動きにより行われるということを記述している。 そのため研究者たちは、個々のリフトには著しく差異があり、これらのリフト間にはクロスオーバー効果は存在しない、と示唆していると結論付けた。それゆえ彼らは、スクワットやデッドリフトのどちらかを、その他方を向上させる為に行うことは効果的ではないかもしれないと示唆している。 *** 制限要素は何か? この研究には下記のようないくつかの点において制限があった。 これはスクワットとデッドリフトの即時的な生体力学の比較であり、トレーニングに関する研究ではなかった。それゆえ我々は、その研究は、スクワットトレーニングがデッドリフトのパフォーマンスに反映するかどうかの有益な洞察を提供したとしても、トレーニングの研究が提供するようなレベルでの情報は与えてはくれないということを知っておくべきである。 この研究はパワーリフターにおいて行われているため、その結果を他のアスリートへ当てはめるには注意が必要である。 この研究はそれぞれの主なポイント、もしくは、主な段階におけるバーの最大加速度を記録していなかった。2つのリフト間で、特に床から持ち上げる際のバーの最大加速度を比較すれば非常に興味深かったであろう。 この研究は、それぞれの主なポイント、もしくは主な段階において、各関節の最大角度の速度と加速度を記録していなかった。特に床から持ち上げる際の2つのリフトの最大関節角度の速度と加速度を比較すれば非常に興味深かったであろう。 この研究には、パワーリフターが1つのリフトからもう一つのリフトへの移行に気がついたかどうか、また、そのリフトが相互に成り立っていることを感じたかどうかというような質的情報が含まれていなかった。スクワットのフォームがデッドリフトのフォームと似通っている個人では、2つのフォームが著しく異なる個人よりも、よりトレーニングのクロスオーバー効果がみられるかどうかを見るために、長期にわたるトレーニング研究で測定されたスクワットとデットリフトのフォームの相互個性を比較できればよかったであろう。 *** 実践的な意義は何か? パワーリフターに対して スクワットとデッドリフト両方のスティッキングポイントは、各リフトにおいて異なる場所で起こる。ゆえに、パワーリフターが、向上の戦略を練るためには、それぞれのエクササイズにおいて別々にスティッキングリージョンを確認する必要があるかもしれない。 スクワットは膝関節と股関節で同時に起こる動きであり、デッドリフトは膝関節から、そして股関節へと順番に起こる動きである。これは、スティッキングポイントの差異と共に、スクワットをトレーニングすることはデッドリフトのパフォーマンスにそれほど良く移行することはないであろうということを示唆している。ゆえに、パワーリフターは、各リフトに対して別々のトレーニングルーティンを特定するべきである。 デッドリフトのスティッキングポイントは、股関節を比較的屈曲し、膝関節を比較的伸展させたポジションで起こる。この関節角度の組み合わせは、伸張され、そのため活発になったハムストリングスの筋肉群を示唆する。それゆえ、補助的なエクササイズで、特に股関節の伸展を通じてハムストリングスの筋肉をトレーニングすることは、デッドリフトのパフォーマンスの向上に有益であるかもしれない。 デッドリフトのスティッキングリージョンでは、膝関節の可動域よりも股関節の可動域がかなり大きい。これは、デッドリフトのスティッキングリージョンを通過するためには、股関節の伸展トルクは膝関節の伸展トルクよりもより重要であることを示唆している。ゆえに、デッドリフトのパフォーマンスを向上させるための戦略は、股関節の伸展トルクを向上させることから始まるべきである。 スクワットのスティッキングリージョンでは、股関節と膝関節の可動域が類似している。これは、スクワットのスティッキングリージョンを通過するためには、股関節と膝関節の伸展トルクが同等に大切かもしれないということを示唆している。ゆえに、スクワットパフォーマンスを向上させるための戦略は、股関節と膝関節の伸展トルクの両方を同等に向上させることから始まるべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3147字

ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート1

(パート2はこちらへ) ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要 ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは何か? ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは、標準化された複合的な動きから成る7つの個々のテストにより構成された、スポーツ参加前のスクリーニング手段である。各テストは試験者により0から3に評価され、総合得点が与えられる。これには、ディープスクワット、ハードルステップ、インラインランジ、ショルダーモビリティ、アクティブストレートレッグレイズ、トランクスタビリティプッシュアップ、ロータリースタビリティが含まれる。痛みがある場合は0、対象者が動作を行うことが不可能な場合は1と評価される。また、対象者が動作を行うことは可能であるが、代償動作を伴う場合は2と評価され、対象者がその動作を正しく行うことができた場合は3と評価される。各動作に対するそれぞれの得点は、21満点中の最終的な得点として集計され、この総合得点が外傷のリスクを予測すると考えられている。このテストを研究した研究者たちは、得点が14点以下の個人は、14点を越える個人に比較して、外傷のリスクがより高いと示唆している。 標準的なFMSの得点は何点か? 健康ではあるが、トレーニングを行っていない人たちにおける標準的なFMSの得点は、14.14 ± 2.85 点から to 15.7 ± 1.9 点の範囲である。トレーニングを行っていない人たちのほとんどが、代償パターンを示していることが考えられ、また外傷のリスクの増加とパフォーマンスの低下が予測できると思われている14点以下という区切りの得点を多少上回っている、ということを示唆している。 FMSは信頼性の高いテストか? テストが有効であるためには、それが信頼性の高いものである必要がある。信頼性とは、テストが多少異なった時間に同人物によって(評価者内)、もしくは、同時に違う人たちにより(評価者間)繰り返されることができ、同じ結果を生み出すことができるかどうかということを示す。少なくとも14の研究が、FMSの評価者間の信頼性、または評価者内の信頼性を調査している。14の研究の内、13の研究がFMS総合得点の評価者間の信頼性についての報告をしており、8つの研究がFMS総合得点の評価者内の信頼性に対しての報告をしている。FMS総合得点の評価者間の信頼性について調査した13の研究の内1つの研究のみが、信頼性が中等度以下であったことを報告している。この唯一の研究では、相関関係を分析する為に他とは異なった統計的方法を用いていたこと、また、かなり多種多様の背景をもつ評価者を採用していたということは注目に値する。評価者内の信頼性について報告をしている8つの研究の内、1つの研究が学生評価者によるテストが低い信頼性を示したということを発見したが、7つの研究では少なくとも中等度の信頼性が報告されている。これは、FMSはおそらくほとんどの人に対し、フィールドテストとして許容できる程度の信頼性があるということを示唆している。 FMSは有効なテストか? テストが有益であるためには、それが有効である必要がある。有効性とは、テストが測定するべきものだけを実際に測定しているのかどうかということを表す。FMSの場合、テストの目的は、スポーツで同じ動作を行う際の代償パターンを特定することである。いくつかの研究が、FMSが有効かどうか、またスポーツの動きの中で行われる際の代償パターンのみを測定しているのかどうかを評価した。1つの研究は、テスト基準に関する知識がテストの結果に著しい影響を及ぼすと報告しており、これはテストのパフォーマンスがアスリートからの影響を受ける可能性があるということを示唆しているかもしれない。他の研究は、発育段階もまたテストの結果に影響を及ぼすと報告しており、テストが若いアスリートには適していないということを示唆している可能性がある。その他の研究では、様々なテストの結果間での相関関係が乏しいと報告されており、外傷の危険性を予測するために各テストの得点を合計して総合得点を出すことに対する有効性が疑問であるということを意味している。最後に、ある研究では、高速で高い負荷をかけて行われた類似するエクササイズでは、異なる動作特徴が現れたと報告されており、FMSを行う際にアスリートによって示される代償パターンが、スポーツの動きの中で示される代償パターンとは異なるかもしれないということを示唆している。結果として、これらの研究はFMSの有効性を疑問視している。

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ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート2

(パート1はこちらへ) ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要(続き) FMSの得点は外傷のリスクを予測するか? FMSの基本原理は、有害である代償パターンの保有率を測定するというものである。少なくとも18の研究が、FMSの得点が外傷率を予測することができるのかどうかを評価している。これらの18の研究のうち11の研究が、FMSの得点が14点を超える人と比較し、14点以下の個人における外傷に対する相対的な危険性を評価した。これらの11の研究のうち4つの研究が、FMSの得点は外傷の危険性を予測することはできないということを発見した。残りの7つの研究では、14点以下の個人の外傷に対する相対的な危険性は1.65から11.67倍であり、これは、FMSが個人の外傷の危険性の大小を、区別することができるかもしれないということを示唆している。 FMSの得点はアスレチックパフォーマンスを予測するか? FMSの背景にある概念のひとつは、非効率であると考えられる代償パターンの発生率を測定することであり、ゆえにパフォーマンスの低下度合いを予測する、というものである。アスレチックパフォーマンスとFMSの総合得点の相関関係を評価した8つの試験において、2つのみがアスレチックパフォーマンスとFMSの得点の相関関係を発見した。この2つの試験両方において、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスとFMSの総合得点の間に、ある程度の相関関係が見いだされた。これは、FMSが有害となる代償パターンを発見することができないか、もしくは見つけられた代償パターンがパフォーマンスへ悪影響を及ぼさないかのどちらかであるということを示唆している。 エクササイズトレーニングはFMSの得点を向上させるか? もしFMSが有益であるのならば、基準テストの結果を基に行動を起こし、後のテストにおける得点を向上させることが大切である。少なくとも9つの研究が様々な集団において、FMSの得点を向上させるための異なるエクササイズプログラムの能力について評価している。9つの研究のうち8つが、ある種のエクササイズがFMSの得点を向上させることができたと報告している。しかしながら、コレクティブエクササイズやファンクショナルエクササイズと従来のレジスタンストレーニングを比較した2つの研究において、研究者たちは両方のケースで、2つの方法の間にFMSの得点の向上に対し著しい違いはなかったことを発見している。 ボディ・マス・インデックス(BMI)はFMSの得点に影響を及ぼすか? いくつかの研究がFMSの得点に対するBMIの影響について報告している。FMSの得点に対するBMI指数の影響についての報告をした全ての研究は、より高いBMI指数がより低いFMSの得点と関連していることを発見している。 ある研究でもまた、FMSの得点が身体活動に積極的に関係していると発見されていることから、BMIとFMS得点の間の逆相関関係は、過体重/肥満の人が身体活動をあまり行わないという傾向によりもたらされている可能性がある。 FMSの得点と他のテスト結果との関連性はあるか? FMSは、肩関節の内旋や外旋の可動域の計測とは関連性が無いようである。しかし、スター・エクスカーション・バランステスト(SEBT)の結果と、FMSにおいても乏しいパフォーマンスが予測される、片脚垂直跳びでの高い非対称性とは関連性をもつようである。 FMSについて他に何がわかっているか? 他にも様々な研究がFMSに関して行われている。研究者たちは単にFMSを行うことは自己知覚近位安定性の低下に繋がると観察した。研究者たちはまた、FMSの得点が悪かった(14点未満)人と良かった(14点超え)人の間で、腰部にかかる負荷に著しい差異は無かったと記述している。 キーポイントは何か? FMSは、ある程度外傷の危険性が高いアスリートを識別する予測能力のある、比較的信頼性の高いフィールドテストであるようだが、アスレチックパフォーマンスとの関連性は無いようである。加えて、多くのエクササイズ、トレーニング、そして身体活動はFMSの得点を向上させることができる可能性が高いようである。しかしながら、テスト基準に関する知識と発達段階がテストの結果に影響を及ぼすようであること、テスト動作が高速で行われ負荷がかけられた場合、同様に行われることができなくなること、総合得点を構成する個々の要素に相関性がないことから、総合得点による外傷リスクの予測は、適切ではなく、テストの有効性に関しては深刻な懸念がある。

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筋限界に至るまでのトレーニングは更なる筋肥大につながるか? パート1/2

限界に至るまでトレーニングを行うべきか否か、というフィットネス業界における大きな議論にもかかわらず、研究者たちはこの問題を十分に調査していない。実際に多くの人が信じてはいることとは裏腹に、限界(もしくは重度の疲労)に至るまでのトレーニングが筋力強化や筋肥大にとって望ましいかどうかということに関する、量を適合させた長期のトレーニングの研究は、非常に希である。下記のものは我々の知識の要約である。 背景 瞬間的な筋限界までのトレーニングは、フィットネス業界における一般的な概念であり、ほとんどのトレーニング中級、上級の人たちは、セットを行っている際に限界に近づいていることを本能的直感により感知する。また、多くのアスリートが定期的に限界に至るトレーニングを行っているが、パワーリフターやボディビルダーなどを含むかなりの割合の人たちは、ワークアウトにおいて常に限界に至るまで行っているわけではない。 しかしながら、ある一定期間のトレーニング後の筋力と筋肥大を調査した研究論文においては、一般的に全てのセットが限界に至るまで行われている。研究論文が伝えていることと、トレーニングを行う人達によって実際に行われているであろうことの間で矛盾が生じている。 それに加え上述の通り、一方のグループが限界までセットを行い、他方のグループが同量のプログラムを限界以前で行うという量を適合させたトレーニング方法の比較をした研究は希である。ゆえに、この短い総括には、これらの研究と量を適合させたプロトコールでの異なる疲労度合いの違いについて調査したものがいくつか含まれている。これは理想的ではないかもしれないが、より充実した全体像を提供しており、下記に詳細が述べられているサンドストラップ(2012年)の発見に基づいて、有効なものであると思われる。 幾人かの研究者と限界までトレーニングを行うことの支持者は、限界に至るまでトレーニング行うことは、全ての運動単位を動員するために必要であると提言しているが、研究者たちはその見解を十分に支持しているわけではない。サンドストラップ(2012年)は、限界に至るまで行われた15RMでの各レップにおけるラテラルレイズの筋電図活動を調査した。彼らは、筋活動のプラトーへは15RMの負荷での10-12レップで達するということを発見し、それは少なくともトレーニングを行っていない個人においては、全ての運動単位を完全に動員するために完全なる限界までトレーニングする必要はないということを意味すると解釈した。 *** 筋限界の筋肥大に対する効果は何か? 下記のトレーニング研究は、多様な異なる方法を用い、量を適合させた同じエクササイズを筋限界へ至らぬ程度まで行った(もしくはより少ない疲労)グループと比較し、筋限界(もしくは多大な疲労)までエクササイズを行ったグループの筋力に対する効果を調査している。 ゴトウ (2005年)は同量の大腿四頭筋のレジスタンストレーニングの組み合わせの中での、大腿四頭筋の筋肥大に対する限界の効果を調査した。各トレーニンググループが、ラットプルダウンとショルダープレスを10RMで3セットと、両脚でのニーエクステンションを10RMで5セット行ったが、一方のグループは、エクササイズ実行中にはレストを取らず、各エクササイズの間、及びセット間に1分のレストを入れ、もう一方のグループは1分のレストに加え、各セットの半分のところで、更に30秒のレストを取った。研究者たちは、セットの間にレストを入れたグループはレストを取らなかったグループに比べより少ない筋肥大を示しており、それは筋限界が筋肥大の重要な修正因子であるかもしれないということを示していると発見した。しかしながら、このような結果が起こった正確なメカニズムは明確ではない。 ショット (1995年) - 研究者たちは7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く断続的な筋収縮(より少ない疲労グループ)と、長く継続的な筋収縮(より大きな疲労グループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは短く断続的な収縮よりも長く継続した収縮での方が、筋肉の断面積の増加が著しく大きいことを発見した。 研究の少なさにより結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らないトレーニングに比べ、限界に至るトレーニングでは筋肥大に著しい向上がみられるようである。しかしながら筋肥大の追求において、より多くのトレーニング量をこなすことを支持するエビデンスがとても多く、トレーニングの量と筋力がたびたび互いに相反しているため、現在のエビデンスは、適切な回復が可能な範囲での筋限界を伴う、より多量のアプローチを支持しているようである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2198字

筋限界に至るまでのトレーニングは更なる筋肥大につながるか? パート2/2

筋力強化に対する筋限界の効果は何か? 下記のトレーニング研究は、様々な異なるアプローチを用い、同じエクササイズを筋限界に至らぬよう(もしくは少々の疲労程度まで)行った量を適合させたグループと比較して、筋限界(もしくは単に重度の疲労)に至るまでエクササイズを行ったグループの筋力への影響について調査している。 イスキエルド (2006年) – 研究者たちは身体的に活発な42名の男性において、11週間に渡るレジスタンストレーニングと、それに続く5週間の全く同じ最大筋力及びパワートレーニングを、限界に至るまで行うこと、もしくは限界に至らぬよう行うことによる効果を評価した。最初の11週間の段階では、研究者は、両方のグループが1RMのベンチプレスとスクワットにおいて同等の向上を示し、スクワットの際の最大レップにおいて同等の向上を示したが、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは、ベンチプレスの際の最大レップにおいてより大きな向上を示したということを発見した。しかしながら5週間のピーク段階では、限界にまで至らなかったグループが、下半身における下肢のより大きな筋出力を示し、ベンチプレスを行う際の最大レップにおいてもより大きな向上を示した。研究者たちは、限界に至るまでのトレーニングが筋持久力を高める可能性があるのに対し、限界にまで至らないトレーニングには最大筋力とパワーへの恩恵があるかもしれないと示唆している。 ドリンクウォーター (2006年) – 研究者たちは、エリートジュニアアスリートにおいて、6RMのベンチプレスと40キロでのベンチスローパワーに対する、レップの限界に至るまでのトレーニングの効果について評価した。2つのグループの被験者は、6週間に渡り週に3回のベンチプレストレーニングを同量行った。一方のグループは260秒毎に6レップを4セット行うことで、レップの限界に至るまでトレーニングを行い、他方のグループは113秒毎に3レップを8セット行うことにより、総合的には同量のレップ数ではあるが、限界にまでは至らぬようトレーニングを行った。研究者たちは、限界までトレーニングを行ったグループがレップの筋力とベンチスローのパワーの両方においてより大きな向上を示したことを発見した。 ロートン (2004年) – 研究者たちは、26名の男性エリートジュニアバスケ選手とサッカー選手における2つのトレーニング方法の影響について比較した。2つのグループにおいて被験者は、6週間に渡り6レップを4セット、もしくは3レップを8セットのベンチプレスを行った。より疲労度が大きかった6レップを4セット行ったグループは、3レップを8セット行ったグループ(4.9%)に比べ、6RMの筋力が著しく向上した(9.7%)が、パワーの向上に関しては2つのグループの間で著しい違いは無かった。 フォランド (2002年) – 研究者たちは、健康な23名の成人における2つのトレーニング方法の効果を比較した。一方のグループはセット間に30秒のレストを挟んで10レップを4セット(より大きな疲労のグループ)、他方のグループは各レップ間に30秒のレストをとりながら、40レップ(より少ない疲労のグループ)の両側ニーエクステンションマシーンを使用したトレーニングを、平均1RMの73%で週に3回行った。9週間に渡るトレーニングの後、研究者たちは、最大等尺性膝伸展筋力の測定において両方のグループで類似した向上が見られたということを発見した。 ルーニー (1994年) – 研究者たちは、量を適合させたプログラムの中において、42名の健康な被験者に対しセット内のレストが筋力に及ぼす影響を評価した。被験者たちは、レスト無しグループ、レストグループ、コントロールグループへと振り分けられた。2つのトレーニンググループは6週間に渡り、週に3回、6RMの負荷にて6-10回のカールを行うことにより上腕二頭筋のトレーニングを実施した。レスト無しグループは全てのレップをレスト無しで行い、レストグループは各レップ間に30秒のレストを入れた。研究者たちは、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは著しく大幅な筋力の増加を示したと発見している。しかしコントロールグループと比較すると両方のトレーニンググループともに、筋力は増加していた。 ショット (1995年) – 研究者たちは、7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く断続的な筋収縮(より少ない疲労のグループ)と長く継続的な筋収縮(より大きな疲労のグループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは、短い断続的な筋収縮よりも、長く継続的な筋収縮の方がより著しくMVICを向上させると発見した。 研究プロトコールと結果の評価基準のばらつきにより、結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らぬよう(もしくはより少ない疲労)トレーニングを行った際に比べ、限界まで(もしくはより大きな疲労)トレーニングを行った際の方が、ほとんどの測定値において、その筋力は、より大幅に向上しているようである。しかしながら、全ての研究が全ての筋力の測定値に対してこれを示しているわけではない。例えばフォランド(2002年)は、2つのトレーニング方法においてMVICの筋力に差異はないと報告しており、イスキエルド(2006年)は1RMの筋力に関する限りでは違いはないと発見している。 加えてドリンクウォーター(2007年)は、4x6,8x3,もしくは12x3(セットxレップ)のベンチプレスを週に3回、6週間に渡りトレーニングを行った22名のチームスポーツ選手において、限界を超えたトレーニングが限界に至るまでのトレーニングよりも優れた結果を生み出すかどうかを評価した。8x3のプログラムと比較し、4x6のプログラムにはより長いインターバルが含まれており、12x3のプログラムにはより多いトレーニング量が含まれていた。ゆえにこれら両方のプログラムは、望ましいレップ数を完了するためにより多くの強制的なレップを行うようデザインされていた。研究者たちは、レップの限界には達したものの、追加の強制的なレップも追加のセット量も、基本の8x3のプログラムに比べ、更に大きな筋力の獲得へは繋がらなかったということを発見した。 *** 実践的な意義は何か? ストレングスアスリートに対して ストレングスのアスリートに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことが、より筋力の増加につながり得るという根拠のあるエビデンスがある。しかし、限界までのトレーニングは回復に影響を及ぼし得ることから、各アスリートにふさわしい限度内で慎重に使われるべきである。 ストレングスアスリートとボディビルダーに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことは、より大きな筋肥大につながる可能性があるといういくつからの限られたエビデンスがある。しかしながら、おそらくトレーニング量がより重要な要素であるため、筋限界は回復が確実に行われることができる範囲で使われるべきである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3185字

コンペティションのための最善なテーパリング方法とは? パート1/2

コンペティションのためのテーパリングは、最近まで研究者によりあまり研究が成されていなかったという理由からか、科学というよりもむしろ芸術のように思われている。しかし現在は、テーパリングや、様々なタイプのアスリートにおいてパフォーマンスを最大に引き出すための計画に関する論文が数多く存在している。 この総説は、テーパリングに関する研究内容を理解するための有益な枠組みを提供する。最新の情報を提供するため、この総説には最近の系統的レビューからの結論も含むこととした。 研究論文: コンペティション前のテーパリング戦略に関する科学的基本原理、ムジカ&パディラ、スポーツ&サイエンス、メディスン&サイエンス2003年 背景 テーパリングとは、重要なコンペティション前の最終週において、激しいトレーニングにより蓄積された疲労の影響を減少するために、トレーニング量やトレーニング強度、もしくはその両方を減少させることである。 正しく行えば、様々な有益な生理的変化が起こり、著しいパフォーマンスの向上へとつながる。間違った方法で行うと有害となり得る。テーパリングの際に起こる生理的変化には下記のものが含まれる。 最大酸素摂取量の増加 (e.g. Banister, 1999 and Neary, 1992) 無酸素性作業閾値の上昇 (e.g. Zarkadas, 1995) 筋パワーの増加 (Johns, 1992) 酸化酵素の増加 (Neary, 1992) 筋グリコーゲンの増加 (Neary, 1992) ヘモグロビン値とヘマトクリット値の上昇 (Mujika, 1998 and Mujika, 2000) テストステロンの増加とコルチゾールの減少 (Mujika, 2000 and Mujika, 2002) 筋力の増加 (Martin, 1994) タイプIIa筋繊維のサイズ、強度、速度、パワーの増加 (Trappe, 2001) 睡眠の質の変化 (Taylor, 1997) 気分の変化 (Raglin, 1996) これらの生理的変化のほとんどは、テーパーの有益な効果に貢献すると考えられているが、それぞれの変数要素のカテゴリーが一般的に観察されるパフォーマンスの向上にどれほど貢献しているかは明らかではない。 テーパーの3つの主なタイプは、段階的なテーパー、直線形のテーパー、急激なテーパーである。段階的なテーパーにおいては急激なトレーニング仕事量(ワークアウトの量、強度、頻度の組み合わせ)の減少が起こる。直線形のテーパーでは、トレーニング仕事量が直線的に減少する。 急激なテーパーでは、仕事量は非直線形で減少し、テーパーの早い時期に仕事量が加速的に減少する。テーパーはトレーニング仕事量の減少速度によっても定義することができる。直線形の減少、急激な減少共に、仕事量の減少速度によりさらに調節することが可能である。 *** 評論家たちは何を発見したか? トレーニング強度を維持することの重要性 持久系アスリートに対して評論家たちは、トレーニングされている選手と (e.g. Hickson, 1985) されていない選手の (e.g. Shepley, 1992) 両方において、有酸素プログラム後の最大酸素摂取量向上を維持するためにはトレーニング強度を維持することが重要であると発見した。 ストレングス&パワーアスリートに対しては、かなり少数の研究しかなされてはいないが、強度を維持することによる効果は同様なようである (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 下記のグラフは、4週間に渡る少量で高強度のテーパリングによる、上半身と下半身の強度とパワーに対する有益な効果を示している。 研究者たちは、テーパーを行う際に強度を維持(もしくは増加)する重要な役割に対する様々なメカニズムを提案した。少量で高強度でのテーパーに関するこれらの要素には、全血液量、赤血球容積、クエン酸シンターゼ活動(酸化容量の指針)、筋グリコーゲン濃度、テストステロン値が含まれる (e.g. Shepley, 1992 and Mujika, 2002)。 この点において、テストステロンが垂直跳びのような下半身の爆発的なパフォーマンスと良好な相関関係にあるということは興味深い (e.g. Cardinale and Stone, 2002)。 *** トレーニング量を減少させることの重要性 評論家たちは、持久系アスリートにおいては、テーパーを通じてトレーニング量を減少させることはトレーニング量を加減するよりもパフォーマンスの向上に対して良いということを発見した。しかし、パフォーマンスを向上させるために必要であるトレーニング量の減少度合いに関しては、多少驚きがあるかもしれない。 トレーニングを積んでいる持久走の選手 (e.g. Houmard, 1990)と自転車競技の選手 (Rietjiens, 2002) において、50−70%のトレーニング量の減少はパフォーマンスを維持もしくは多少向上させるように思われるのに対し、約85%の減少はパフォーマンスの著しい向上につながるようである (Mujika, 2002)。 しかしながら、競技選手におけるテーパリングの効果についての後の系統的レビューとメタ分析において、最適なトレーニングの減少量は実際にはこれよりもかなり少なく、テーパーを行う前の量の41−60%である、とバスキット(2007年)が発見したことは注目すべきことである。 今までに行われたこれらの研究は中レベルや低レベルのトレーニング量との比較をしておらず、脱トレーニングとの比較しか行っていないため、ストレングス&パワーアスリートにおいてのトレーニング量減少の効果を評価するのは困難である (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2640字