ローテーターカフ(回旋筋腱板)エクササイズの4つの神話

ローテーターカフエクササイズは、リハビリテーション、および矯正エクササイズにおいて、とてもよく行われるエクササイズの一つです。肩関節の過剰な可動性や、肩にかけている大変な負担を考えると、成人人口の20%が回旋筋腱板に、なんらかの損傷を抱えていることも不思議ではありません!さらに、年齢を重ね、肩にかかるストレスが蓄積されていくにつれ、回旋筋腱板損傷の疾患率は上がっていきます。 以前に書いた、肩甲帯エクササイズの3つの神話という記事がとても人気だったので、次はローテーターカフエクササイズの出番だろうと考えました。 以下は、私の気にいっているローテーターカフエクササイズの神話です。おそらく神話は4つ以上ありますが、まずはこれがスタートです。 ローテーターカフエクササイズは機能的ではない 最近大流行しているのが、「機能的な」トレーニングを重視することで、当然ながら私も機能的なトレーニングを考えています。しかし、多くの人々が、個別のローテーターカフエクササイズは機能的ではなく、価値がないとさえ言っているのを耳にします!あぁ、反論せずにいられるでしょうか。 これは最近、講演でも言っていることですが、私たちの「機能的」トレーニングへの変遷は、一方向に傾きすぎているのかもしれません。こういった流行は周期的に起こります。あなたがこの業界にはいって10年以上経っているのなら、私が言っている意味がわかると思います。私たちは今、まさに「機能的動作」サイクルの只中にいるのです。 それ自体は素晴らしいことだと思います。私たちの職業は、人間の身体がどのように機能しているかについての理解において、目を見張るような進歩を遂げました。機能的動作パターンの概念を理解し、応用することで、人々がよりよく動き、よりよいパフォーマンスを発揮する手助けができます。 しかし、基本を忘れることはできません。私はよく、前十字靭帯(ACL)のリハビリにおいて、従来の強化プログラムと神経筋コントロールを重視したプログラムを比較した研究に意見します。これらの研究はいつも、両方のグループが良い結果を示し、機能が改善したことが示される傾向にあります。いつも言うのですが、なぜ一つを選ぶのでしょう?どちらも個別で効くのなら、二つを組み合わせたら何ができるか想像してみてください! ローテーターカフエクササイズは意味がないというのは、行き過ぎた発言です。私も、ローテーターカフの主要な役割は、安定性を供給することにあるのは理解しており、これまでのキャリアにおいても何度もそう指導してきました。しかし、弱い筋肉は安定性を供給することはできないと考えずにはいられません。筋力が弱く不均衡がある状態で、いったいどうやって効率的に機能的動作パターンを実現することができるのでしょうか? 筋力が不十分なときは、ローテータ-カフエクササイズをしっかりやるべきです。強くなって、それから機能的になる、そうしなければ、ただ不利な代償パターンを作っているだけになります。 他のエクササイズを行っている間に、ローテーターカフにも十分な負荷が与えられている 確かに、ローテーターカフは、全ての上半身の強化エクササイズの際に働いていますが、様々な動きの中で、ローテーターカフがどのように機能しているかを理解することが大切です。ローテーターカフは、動きの最中に、肩関節の安定性を維持するために活動的になります。ここでローテーターカフが活動しているのは事実ですが、強化が得られるレベルの活動ではありません。 とても強く、パワフルな重量上げの選手やアスリートでもローテーターカフがとても弱いことがあります。それはやがて必ず仇となります。 重いウエイトを使うと、ローテーターカフの活動が止まり、より大きな筋肉が活動する これは私のお気に入りです。みなさんも一度は聞いたことがあると思います。魔法の数字は5ですよね?5 lb(2.3kg)以上のウエイトを持ち上げると、ローテーターカフは、魔法にかかったように活動をやめてしまい、三角筋などの大きな筋肉が働く。 これについて、基本に戻って考えてみたことはありますか? この考えがどこから来たのか、わかる気がします。たとえば、あなたはローテーターカフがとても弱く、横向きに寝た状態で肩の外旋エクササイズをしているとします。3 lb(1.4kg)なら楽にエクササイズを行うことができます。もし私があなたに15 lb(7kg)の重りを渡したら、あなたのフォームはひどく崩れ、三角筋の後部や僧帽筋を使って腕を後ろに振っているだけのような状態になるでしょう。これは、もちろん良くなく、弱い筋肉に負荷を与えすぎると、必ず代償動作が起こります。これは身体のすべての筋肉に当てはまります。 しかし、だからと言って、強くなるにつれてゆっくり重さを上げていっても5 lb以上の重りは使えないということではありません。なぜ5 lb(2.4kg)でやめるのでしょう?5 lbでは十分な負荷が得られないとしたら?十分な負荷が得られないのに続ける意味は?スクワットをする際、ある一定の重量で負荷を増やすのをやめて、その重量で永遠にスクワットを行うでしょうか? 私は日常的に、5 lb以上のウエイト、時には10 lb(4.8kg)以上のウエイトを使って、患者にローテーターカフエクササイズを指導しています。もし代償動作を生じ、大きな筋群を使ってしまっているのなら、その重量に対して十分な筋力がないだけかもしれません。 全てのローテーターカフエクササイズにおいて同じウエイトを使う これを聞くと笑ってしまって、申し訳なく思っています!クライアントに肩のプログラムを処方するときに、なぜすべてのエクササイズで同じウエイトを使うよう指示するのでしょう?身体のその他の部位においても同じことを指示しますか?今日は、同じ重りでスクワットとランジとデッドリフトをします・・・おかしくありませんか? それぞれのエクササイズにおいて、それぞれの筋肉にとってチャレンジとなる負荷を与える。あるエクササイズにおいて、負荷が軽すぎたら、負荷を上げる。すべてのエクササイズで同じ重量のウエイトを使うような習慣に陥ってはいけません、それでは、それぞれの筋群における十分な強化ができません。忘れないでください、目標は強くなることです。

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すべてのプログラムで必要な2つのエクササイズ パート1/2

そうです。すべてのプログラムにおいて、これら2つのエクササイズが必要だと言っているのです。まぁいいでしょう、すべてのプログラムではないかもしれませんが、この2つの動き:肩の外旋と股関節外旋は、ほぼすべての人のプログラムに含まれるべき、とても重要な動きであると考えます。 なぜこれら2つの動きがとても重要で、すべてのプログラムに含まれるべきであると考えているのでしょうか? ここには2つの主要な理由があります。 私たちの動きの多くは矢状面で起こっています。私たちの真ん前で起こっている動きの多くは、前額面と横断面での動きの弱化に繋がっていきます。残念なことに、矢上面での活動中、それ以外の面上における動きの弱化が障害に繋がることがあります。矢上面で動いている際にも、基本的には、前額面、横断面における安定性が必要になります。股関節の強さが、膝蓋大腿痛やその他の障害にどのように影響を与えるかに関しては、充分に話してきました。 私は筋肉群に働きかけることによってそれらが“活性される”、または、より大きな多関節の動きを行う前に、“それらの筋肉を使えるようにしておく”べきであると考えます。これに関しての具体的な例として、上半身運動の前に肩外旋を、下半身運動の前に股関節の外旋運動を行うでしょう。 残念なことに、これらのエクササイズは見た目があまりカッコ良いものではなく、ビーチ用の見せる筋肉をつけることはできないでしょうし、退屈かもしれません。しかし、健康体でいること、障害が起こる可能性を最小限にすることは、常に良いことなのです。 肩外旋・股関節外旋を行うには、とても多くの方法がありますが、スタートするにあたって私が勧めるのは、肩W外旋エクササイズと股関節クラムシェルエクササイズという下記の2つのエクササイズです。 肩W外旋エクササイズ 過去数年間に私の講演を聞いたことがあればご存知でしょうが、肩“W”エクササイズが私の最も好きな新しいエクササイズであると言い続けています。時間が経ち、もはや新しいわけではないのですが、未だにこのエクササイズは私のお気に入りです。 このエクササイズは、肩の外旋に肩甲骨の後退、後傾の動きが加わった、とても素晴らしい動きの組み合わせであり、後方回旋腱板(棘下筋、小円筋)と下部僧帽筋の活動を促すため、多くの人々にとって有用です。 それに加えて、両側で行うことで、姿勢や肩の安定性に効果があり、同時に両腕に働きかけることができます。つまり、より効率的なのです。 私が肩Wエクササイズを好きな理由 過去の記事でお話してきたように、以前からずっと肩Wエクササイズが好きでよく使っています。私の“Optimal Shoulder Performance”(最適な肩のパフォーマンス)というDVDをご覧になれば、私が言っていることがお分かりになると思います。このエクササイズは、肩の外旋に肩甲骨の後退、後傾の動きが加わった、とても素晴らしい動きの組み合わせであり、後方回旋腱板(棘下筋、小円筋)と下部僧帽筋の活動を促すため、多くの人々にとって有用です。 McCabeらの研究によると(NAJSPT2007)、肩Wエクササイズでは、後方回旋腱板と下部僧帽筋において中等度の筋活動があることが認められています。しかし、私がより注目したことは、このエクササイズでは上部僧帽筋の活動が最小限しか見られず、下部僧帽筋と上部僧帽筋の筋活動比率がもっとも大きかったことです。上部僧帽筋がどのように肩の機能に影響を与え、上部と下部僧帽筋のアンバランスがどのように肩のインピンジメントを起こしていくのかについて説明してきました。ですから、下部僧帽筋と後方回旋腱板に重点をおくエクササイズを私がどれだけ気にいっているかおわかりになるでしょう。 肩Wエクササイズビデオデモンストレーション 下の肩Wエクササイズのビデオデモンストレーションでは、だいたい肩幅程度の長さでセラバンドを握り、親指を上に向けているのが分かると思います。多くの人が、親指を斜め後ろに向けたポジションを奨励しているようですが、前腕を回外することでエクササイズが変化するとは思わないので、前腕はニュートラルに保持し、肩と肩甲骨の動きのみに集中させます。 私が奨励するもう1つのことは、“W”エクササイズの名前の起源にもなりますが、肘の角度を90度に保持してほしいということで、こうすれば外旋の最終域に達したとき“W”の形になります。広背筋の厚みのため、腕が身体よりほんの少し外転することでこの形になります。前腕を地面と平行になるように保持するようには勧めません。

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すべてのプログラムで必要な2つのエクササイズ パート2/2

股関節クラムシェル クラムシェルはすぐにできる簡易な方法で、股関節外旋筋群を強化することができます。これは、ゴムバンド、あるいは、同様の抵抗があるバンドを使って行える簡単な方法ですが、とても有効です。さらに、両膝の周りに抵抗性のあるバンドを装着するため、同時に両側をトレーニングできます。下側の脚では、このエクササイズを行うために、股関節外旋筋群を使い安定させなければなりません。 もちろん、これはすべてテクニック次第です。下で御覧の通り、下側の腕を使って頭をニュートラル位に保ち、反対の腕を股関節の上に置きます。これによって、腰部で代償しないようサポートができます。 私が股関節外旋クラムシェルエクササイズを好きな理由 繰り返しになりますが、私が毎日使っている股関節外旋のエクササイズは数多くありますが、この簡便さと有効性の理由から、私はクラムシェルエクササイズを強調しています。 中殿筋強化の重要性と、前額面上の強度不足によって起こされるいくつかの機能不全について、過去に話してきました。私たちは矢状面で多く動く社会に生きていますし、このことが、機能不全の動きのパターンの多くに多大な影響を与えています。ですから、股関節を外旋させる筋群の強化は重要になります。もし今まで、このことに重点を置いてきていないのであれば、一度上記のリンクの記事をいくつかを読んでみてください。 股関節屈曲位における股関節クラムシェルエクササイズ 筋電図による研究によると、特にテクニックが優れている場合は、クラムシェルを行うとき、中殿筋と大臀筋の筋活動量が良いことが示されています。下のビデオを注意してみてください。私は腸骨稜に沿って手を置くことを強調しています。こうすることで、身体が回旋せず、腰部と共同して働かないように注意を促すことができます。この動きは、このエクササイズを行っている際に、最も良く見られる間違った動きで、特に、臀筋群がかなり弱い人によく見られます。また、このように骨盤に手を置くことで、親指を臀筋群の上に置き、その活動を感じ、収縮を促すことができます。これは、正しいテクニックで行うのに、本当に役立ちます。

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ACL再建術後の早期リハビリテーション 6つの重要なポイント パート2/2

膝屈曲の動きを徐々に改善 膝の屈曲制限は伸展制限より一般的でない傾向ではありますが、起こり得ることであり、屈曲への取り組みも見過ごさないようにしたいものです。屈曲と伸展の間にシーソーのような関係があることが多くあります。一方の方向に取り組めば取り組むほど、もう一方の方向がより硬くなる傾向にあるのです。これは、慎重に、しかし漸進的に、関節可動域の向上に頻繁に取り組むことにより解決されます。 また、膝の屈曲を回復させるために、ストレッチと同時に浅いスクワットや、ゆくゆくはランジなどの機能的動作のトレーニングを行うようにします。可動域のエクササイズの漸進性を自分自身で制御できれば、知覚的脅威は減少し、動作は回復しやすくなります。 膝の約90度までの屈曲は、1週間ほどでゆっくり回復します。それから徐々に改善し、4~6週間かけて完全に屈曲できるようになります。 膝蓋骨の可動性を維持 可動域減少の原因のひとつに、膝蓋骨の可動性が失われていることがあります。膝の屈曲と伸展には、膝蓋骨の充分な可動性を必要とします。膝に痛みと腫れがあり、動かしづらくなると、瘢痕組織が形成され、膝蓋骨の動きを制限します。これは特に、膝蓋腱を移植腱として用いたACL再建術でよく起こります。膝蓋骨の可動性に注意を払わなければ、可動域減少の可能性は著しく高くなるでしょう。 膝周囲の軟部組織と膝蓋骨のモビリゼーションは、術後すぐに実施します。また、患者には、これらを自分自身で出来るように指導し、家でも行うよう促しています。 大腿四頭筋の随意制御の回復 前述の通り、術後の疼痛や炎症、腫脹によって膝周囲の筋調整に反射性抑制が起こります。これらの要因への対処に加えて、大腿四頭筋の随意制御の回復のために実施するテクニックがあります。 デラウェア大学のリン・スナイダー・マクラー氏は、ACL手術後に大腿四頭筋に神経筋電気刺激(NMES)を使用することについて多くの論文を発表しています。NMESを使用しないで単にエクササイズした場合に比べ、NMESを使用することで大腿四頭筋の筋力と機能のより早い回復を促します。 当然、NMESはACLリハビリテーションの初期段階の重要な構成要素になります。最も早い段階で大腿四頭筋セット、ストレートレッグレイズ、ニーエクステンションなどの大腿四頭筋のエクササイズにNMESを併せて実施するでしょう。 大腿四頭筋を収縮させるこれらのトレーニングは、膝の伸展可動域の回復にも役立つという付加効果もあります。 独立歩行の回復 さて、これまでに疼痛と腫脹に取り組み、膝の動きや膝蓋骨の可動性は回復し始め、大腿四頭筋を活性化できるようになったところで、これらすべてを統合し、制限や跛行することなく歩行できるようにします。前述した、焦点を置くべき分野でのひとつでも対処されていなければ、独立歩行はたいてい困難になるか、少なくとも正常には機能しません。 他の組織が損傷していたり保護する必要がある場合を除いて、私は通常、ほぼ1週間で耐えられる範囲で体重をかけられるようにします。2週目までは松葉杖を使用するかもしれませんが、松葉杖に頼ってしまうのではなく、あくまでも補助的に利用し歩けるようにします。 体重をかけるエクササイズ、たとえば体重を移動させるウェイトシフトや膝をロックする練習などが、初期段階では役に立つことが分かりました。また、体重移動と片脚立ちへの移行パターンを定着させるために、コーンを用いたウォーキングドリルもよく利用します。さらに、コーンを跨ぐ後ろ向き歩行も、足部の上で身体が後方に揺れ膝の伸展に役立つことが分かりました。 ACL再建術後の早期リハビリテーションの6つのポイントについて述べてきました。患者とのセッションの際、これらひとつひとつに注意を払うようにしています。この6つのポイントは非常に重要ですから、全てにしっかり取り組むためにもリハビリテーション過程の初期には、むしろセッションを増やし、その後、(保険の限度回数により)ペースを緩めていく方が良いでしょう。

マイク・ライノルド 1829字

ACL再建術後の早期リハビリテーション 6つの重要なポイント パート1/2

ACL(前十字靭帯)再建術後のリハビリテーションは、この25年間で大きく進歩してきました。膝をギプスで固定することから、術後すぐに膝を動かし、さらに短時間であれば体重をかけるといった方向に進化しています。リハビリテーションの概念に対する理解が進歩するにしたがい、ACL再建術後の効果を最大限にするために不可欠である、機能的なエクササイズや漸進的リハビリテーションに、私たちの焦点はシフトしてきています。 最近では、術後リハビリテーションに100%集中するプロ選手達をみるようになってきました。エイドリアン・ピーターソンがACL断裂を負い、再建術のあと数ヶ月足らずでナショナル・フットボール・リーグで勝利をおさめ、MVPに選ばれたということから、彼は、現在ACL再建術後のスポーツへの復帰の象徴となりつつあります。もちろん、彼の症例は特別ではありますが、術後リハビリテーションは、手術後の回復度合いを大きく左右する要因です。 アドバンスエクササイズやスポーツへの復帰は誰もが望んでいることではありますが、合併症を避け、やがて難易度を上げたアドバンスドリルを可能にするためにも、早い段階でのリハビリテーションが確実かつ適切に実施されることは何よりも重要でしょう。ACLの早期リハビリテーションが不十分であれば、リハビリテーション期間は長期化してしまいます。 これに関連して、ACL再建術後の早期リハビリテーションの6つのポイントについて議論したいと思います。これらの基礎をマスターすれば、アドバンス期は容易になります。 疼痛と炎症の緩和 まず、ACLリハビリテーションのひとつめのポイントは、手術にともなう痛みと炎症を抑えるという単純なものです。これは考えるまでもないことですが、なぜ重要なのかを復習する価値はあります。実際、痛みや腫れを処置しなければ、下記に挙げるACLリハビリテーションの6つの重要なポイントを遂行するのは難しくなります。いくつかの重要な考察すべき事柄をご紹介しましょう: 疼痛と腫脹は、基本的に膝周りの筋群、特に大腿四頭筋をシャットダウンしてしまうことが、数多くの研究で示されています。腫れによる液体がわずかに関節に存在しても、大腿四頭筋の収縮能力を低下させることが分かっています。 大腿四頭筋なしでは、機能するのは困難で、膝が曲がり固まった状態で歩くようになります。 疼痛と腫脹は、関節可動域の改善を妨げてしまうのです。 このように、概念的には単純だとしても、痛みと炎症を軽減することは、術後すぐに焦点を当てるべき分野なのです。圧迫やアイシング、間欠性圧迫、挙上、アンクルパンプ、電気刺激、活動をしすぎないようにすることなど、すべてが役に立ちます。 術後の患者への最も重要なアドバイスは、アイシングを充分行うことです。 完全な膝伸展の動きを回復させる 膝の伸展の可動域を完全に回復させることは、おそらくACL再建術後に行うリハビリテーションの最優先事項になるでしょう。しかし、ここで私が第2項目目に挙げることになった理由は、疼痛と腫脹への対処が、本稿で議論するすべてに密接に関係しているからです。しかし実際のところ、やはり膝の伸展を可能な限り早く回復させるというとことに、私は常に重点を置いています。ACL手術後の比較的一般的な合併症のひとつは、動きの減少ですが、屈曲よりも伸展に制限があることの方が大きな問題が生じます。 疼痛や腫脹があると、膝が軽度に屈曲している方が楽です。ただし、この肢位をあまり長く保っていると、瘢痕組織の形成や関節線維化のリスクが生じます。いったん硬くなってしまったら、動きを回復させることが難しくなるため、術後直ちに膝の伸展を確保することは、非常に大切です。硬くさせてしまってから動きを改善するために激しく努力するより、私は、初期の段階で膝の伸展を回復させ、それからゆっくり動きを回復させることに集中します。 膝の完全な伸展が多少なりとも損なわれると、膝は適切に機能できません。さらに、可動域の減少は、ACLの術後に起こりうる関節炎への進行に関わる重大な要因のひとつであることが研究で示されています。 幸いなことに、適切なリハビリテーションによって、可動域の減少は回避できます。 可動域と軟部組織モビリゼーション、徒手治療に加えて、家での可動域のトレーニングとストレッチエクササイズを十分に、基本的に1時間毎に実施するように必ず指導します。ハムストリングのストレッチとタオルを利用したふくらはぎのストレッチを紹介しています。これは、ハムストリングやふくらはぎの柔軟性を高めることが本来の目的ではなく、これによって同時に膝の伸展をトレーニングするためです。そのため、焦点は膝の伸展に置かれます。 可動域の減少が問題化した場合、私は躊躇なく低負荷で長めのストレッチを指導し始めます。術後1週間で完全な膝の伸展を回復することが目標です。生体力学の研究では、膝の伸展時にかかるACLの移植組織への負荷は、一般的な機能的活動から加わる力よりも低いことが示されています。よって、この動きを避ける必要はありません。

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クライアントが嫌う6つのこと パート2/2

クライアントが欲していることの代わりにあなたが欲していることを行わせる 主役はあなたではありません。シンプルな概念ですが、大切な出発点です。 たとえば、クライアントが来て、「キネシオテープをするとかなり良く感じる」と言ってきたとしましょう。それに対して、あなたが、「肩の痛みは脳からの信号から来ています。キネシオテープは、その信号に対して何もできませんし、特に効果はないのです」と返したら、クライアントはどんな反応をするでしょう。うーん、おそらく残念なことになりますね。 あなたは、キネシオテープは「何もしない」と言って、クライアントは、「とても効く」と言う。これでは連携ではなく、対立のように聞こえます。 正直に言って、私達は、自分で考えているほど、人間の体について知らないのです。私は、その施術に害や、長期的影響、効果的ではないと裏付ける確かな研究が出ていない限りは、キネシオテープのような施術をすることにも抵抗はありません。もちろん、その施術が効果的でないと完璧に示す科学的根拠があれば、話は別です。 誤解しないでください。私は、クライアントに対して私が行いたい治療も行いますが、キネシオテープも施すかもしれません。おそらく、そうすることで私の施術はさらに効果的になるかもしれないのです。 フィットネスの世界における、他の良い例は、動きへのフォーカスと矯正エクササイズです。これらは大切なことですが、ポイントを見失わないようにしましょう。クライアントが脂肪を減らしたいという目的であなたのところに来たのに、あなたはクライアントの動きが悪いことを説明し、FMSのストレートレッグレイズにおける非対称のポイント1を矯正したいと言っているとしたら、それではクライアントにあなたのやりたいことを押し付けて、彼らの要求を見失ってしまっています。クライアントは、ストレートレッグレイズがどう見えるかなんて全く気にしていないのですから。 繰り返しますが、動きのパターンの改善には取り組むべきです。でもそれはプログラムの主要点ではないのです。まずは、クライアントの目標に合わせなければなりません。もちろんそのプログラムに、私たちの目標もこっそり組み込みますが、注意して行ってください。 クライアントに理解できないことを話す おわかりのように、コミュニケーションや人間力は、私たちの職業にとても重要です。私がよく問題だと感じているのが、専門家が話をクライアントのレベルに合わせていないことです。 クライアントのエネルギーレベルに合わせる努力をするべきなのと同様に、私は、話のレベルをクライアントのレベルに合わせるようにしています。 学生や若い治療家は、いくつかの理由でここに問題があります。 自分が行っていることを教授に正当化するために、科学的に話すことに慣れている。 とっさに使える例え話のデータベースが蓄積できていない。 残念なことに、エゴイスティックで自分がどれだけ知っているかを自慢しようとしてしまう。 相手に理解できないことを話し、混乱させることで、相手を感心させることはできません。科学的なことを詳細に聞きたい人もいますが、そういったことは全く聞きたくない人もいます。どう話すかは、クライアントの反応をみて、調節する必要があります。それぞれのクライアントと良い関係を築けるようにポイントやメッセージを伝える能力は、人々を感心させることができます。 私はこれを実現するために、会話がどう進んでいるかに応じて、異なる方法を用意していますが、定番の方法は下記の通りです。 評価の中で、写真や動画を使う。 複雑なポイントをクライアントがわかる例で比較する。車の例えは有効です!たとえば、「タイヤが整列していない状態で運転していれば、タイヤはやがて不均等に擦り減っていきます。」というように。 ホワイトボードを使って考えを表現する。これは必ずしも絵を描くということではありません。文字を書いたり、リストを作成するのにも使います。視覚からより多くの情報を得る人もいます。終わったときに、携帯電話を取り出して、ホワイトボードを写真に取る人がいたら、彼は視覚から学ぶ人だと言えるでしょう。 科学的根拠を示すことは大事ですが、そこで終わらずに、クライアントが理解できる例で理解を補足しましょう。 クライアントの他のヘルスケアの専門家や過去の経験を批判する 私たちの業界において、このような批判が、いかに頻繁に起こっているのかに驚かされます。多くのクライアントから、これまでに施術を受けた専門家が、過去に関わった他の専門家の人達全ての批判していたということを聞きます。パーソナルトレーナーが理学療法士を批判する、理学療法士がカイロプラクターを批判する、というのがその一例です。クライアントは長年をかけてそういった専門家との信頼や尊敬を構築してきていて、あなたとはまだその蓄積がないということを忘れないでください。 批判することは、批判された人が自分の過去の選択に対して気分を害するだけでなく、あなたが誰かをけなすことで自分を良く見せようとしているだけなのが明らかです。 私には、多くの「名声のある」人々が、こういった過ちをおかすのを見てきた中から作り上げた経験則があります。他の人を悪く見せることで自分を良く見せてはいけません。短期的には有効にはたらくかもしれませんが、後で必ず痛い目をみます。 何が失敗したかをわかった上で対処する能力があれば、天才になれます。何かを振り返るときには、どんなことであれ、より鮮明にできます。クライアントがかかっている、あるいは過去にかかった他の専門家を敬いましょう、あなたがいつも正しいわけではないのです。 実際のところ、ここにもう12個くらいリストを付け足すこともできますが、ここで挙げた6つは良い出発点になります。クライアントが嫌うこれら6つのことを避け、クライアントとのいい関係を築き、声を聞き、時間をかけ、クライアントの目標達成における過程の中で、その効果を最大限に発揮できるようにしてください。

マイク・ライノルド 2579字

クライアントが嫌う6つのこと パート1/2

経験を通してしかできないことに対して、何年もかけて考えを蓄積していくというのは面白いことです。古くからある言い草で「今ならわかることをあの時わかっていたら」というのは、まさにその通りでしょう。私はよく、自分が昔やっていたことをおかしく思い、クライアントに、当時の私が経験不足だったことを伝えます。先日、チャンピオン(著者が運営するトレーニング施設)で学んでいる学生とこのような会話をしていて、これはキャリアの発展における通常の過程であると思いました。 自分の個人的な経験を振り返り、治療やトレーニングに反映するのに加えて、クライアントが伝えてくれる、彼らの過去に関わった他の専門家達との経験から学べることもたくさんあります。 私は、過去に他のヘルスケアやフィットネスの専門家を試してみて、何らかの理由で、望んだ結果を達成できなかったクライアントによく出会います。これまでの経験から、その原因には、以下のようなことがあげられると思います。 クライアントの言葉を聞かなかった クライアントとのコミュニケーションが欠けていた クライアントに十分な時間をかけなかった これらの理由は、本質的に「臨床的」ではないことに注目してください。私のクライアントのうち、きちんと診断されず、適切な扱いを受けなかった人も少なくはありませんが、現実として、私自身も完壁ではありません。でも私は、クライアントの言葉をしっかり聞いて、コミュニケーションを取り、時間をかけます。そのため、間違った方向に向かっているかもしれないと感じたら、クライアントに聞いて話し合うことができます。クライアントは私を信じています。クライアントが私を信じていなければ、彼らは次の臨床家を探しに行くでしょう。 最近、私がクライアントから聞いた、過去の他の専門家との経験についての下記の2つのコメントについて考えてみてください。 「セラピストが私に言うことは全て、私が何を間違って行っているかでした。間違って行っているのはわかっています、だから治療に行っているのです。」 「最後にかかっていたセラピストのところを出るときは、いつも自分自身に対して落ち込んでいました。セラピスト達によって私は自分自身を悪く感じるようになりました。」 若い治療家に(経験のある治療家にも!)、私が長年をかけてわかったクライアントが嫌っていることをいくつかシェアしたいと思います。忘れないでください、クライアントに最善を尽くすためには、コミュニケーションを大切にしなければなりません。私の失敗やエラーから学んで、あなたがやってしまっている、でも実はクライアントは嫌っている下記の6つのことをしないようにしてください。 デバイスを凝視する 質問を聞きながら、コンピューターを凝視してタイピングをすることは、クライアントが、ヘルスケアの専門家と初めて接するときに直面する態度として最悪だと思います。これは、クライアントとのコミュニケーションとしてもそうですし、クライアントにあなたが親身になって考えていると感じてもらうためにも良くないことです。クライアントは、あなたがただ評価という「タスク」を終わらせようとしていると感じるでしょう。私は今でも紙と鉛筆で簡単なノートを取り、あとでパソコンに記録します。たしかに、こうすることでより多くの時間がかかりますが、これは正しい方法だと思っています。 セッションの間、携帯電話を眺めることも同様です。急を要するメールや、仕事関係のメールに返信しているのかもしれませんが、クライアントは、あなたがフェイスブックに子猫の写真を投稿していると思っているかもしれません。急を要するメールに返事をしなければいけない場合は、クライアントにしっかり断ってから行い、その場合にもクライアントの目の前では行わないようにしてください。こういった行為は、あなたにとってクライアントが大切ではないように見えます。急用でなければ、携帯電話はポケットにしまっておきましょう。 アップルウォッチは、私たちにとって助けとなるのか、それとも悪影響と働くかはわかりませんが、それはこれからわかるでしょう! セッション中は、クライアントが、あなたにとって世界で一番大切な人だと感じられるようにするべきです。 クライアントの言葉を聞かない クライアントと最初にするやり取りは、複数の理由からとても大切です。もちろん、何から始めるかを決める必要もありますが、最初のやり取りは、クライアントとの関係を築くのに非常に大切です。 まず、クライアントに話してもらうことから始めます。彼らの話を聞きましょう。すぐに核心に入りたい人もいれば、時間をかけたい人もいます。流れに従いましょう。できるだけ邪魔をせず、クライアントに会話をリードさせます。 経験を重ねるうちに、私の行う初期評価の主観的な部分は、たった30秒くらいしかかからなくなりました。でも同時に、クライアントとの関係を築くのに重要なことは、クライアントの主張を聞くことだと学びました。クライアントがあなたに期待していることを話せる、適切な環境を提供しなければなりません。 できていないことのみをすべて伝え、できていることを伝えない アセスメント、評価をしていく中で、「欠陥」を見つけることに夢中になってしまいがちです。良くあることではありますが、気をつけなければいけないのは、それをクライアントにどのように伝えるかです。 小さなことを気にしすぎる人もいれば、ただ純粋に落ち込んでしまう人もいます。 全てのクライアントが、あなたの施設を出るときに、気分がよくなり、楽観的になり、いい気分でいられるようにするべきです。あなたとの時間が、クライアントの一日の中で、最もいい経験の一つになれるようにしましょう。

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肩の不安定性に対するリハビリの6つの秘訣 パート2/2

要素#3:付随する病状 三つめの要素には、影響を受けているその他の組織や、受傷前の組織の状態を考慮することが含まれます。 前述した通り、関節窩からの関節包唇複合体の分離は、一般的に外傷性障害によって起こり、前面のバンカート損傷につながります。しかし、ほかの組織にも影響することもあります。 多くの場合で、肩を復元する時に、関節窩の前面の縁に対して圧迫される際に上腕骨頭の後部側面が埋伏することにより、付随的なヒルサックス損傷などの骨の損傷も所見されるかもしれません。 Wikimediaからの画像 これは脱臼の80%において報告されています。これに対して、後方への脱臼によって、上腕骨頭の前面における逆ヒルサックス損傷が所見されることもあります。同様に、関節窩も骨の損傷を受けることがあります。 骨の損傷が多いほど、不安定性が大きくなることがよく見られます。 たまに、肩の脱臼とともにローテーターカフの損傷をうけた人に骨挫傷が所見することもあります。極度の損傷の稀なケースでは、腕神経叢に影響が及ぶこともあります。他の一般的な不安定な肩の傷害には、上部関節唇を巻き込んだ(SLAP損傷)、関節包前面のバンカート損傷が前面上部の関節唇にまで及ぶことが特徴であるタイプVのSLAP損傷といったものも含まれます。これらの付随的な損傷は、治癒中の組織を守るためにリハビリに大きく影響します。 要素#4:肩の不安定性がある方向 次の考慮するべき要素は、肩の不安定性がある方向です。よく見受けられる三つの種類として、前方、後方、そして多方向のものがあります。 前方不安定性は、整形外科に通う一般的な人達に最も多く見られる不安定性の損傷のタイプです。このタイプの不安定性は、全ての外傷性の肩の不安定性の約95%に上ると報告されてきました。しかし、後方不安定性の発生件数は、患者層によって異なるようです。例えば、プロや大学のアメリカンフットボールでは、肩の後方不安定性の発生件数は一般的な人々よりも多いようです。これはラインの選手において特に当てはまります。多くの場合で、これらの後方不安定性の患者は、75%の患者が手術による安定が必要であったとMairが報告したように手術が必要です。 上腕骨頭が極度の外転そして外旋、または水平外転へと追いやられるような外傷性の出来事の後、関節唇複合体と関節包は関節窩の縁から引き離され、前方不安定性、または前述のバンカート損傷につながります。 これに対し、関節包の冗長性による非外傷性の不安定性を伴う患者が肩を脱臼することは稀です。このような人達は、関節窩の縁から上腕骨が分離することなく、繰り返し関節を亜脱臼する傾向がより強いようです。 肩の後方不安定性はあまり見られず、外傷性の肩の脱臼の5%でしかありません。 このタイプの不安定性は、腕が伸展したまま手をついて転倒する、または押す動作による外傷性の出来事の後によく見られます。しかし、非外傷性の重度の緩さを伴う患者は、特に腕の挙上や水平内転、そして過度な内旋時おいて関節包の後方に張力が加わることにより、時に後方不安定性を訴えます。 多方向不安定性(MDI)は、一つ以上の運動面における肩の不安定性と定義できます。MDIを持つ患者は先天性の体質によって、関節包のコラーゲンの弾性が過度にあることによる靭帯の緩さを示します。 MDIを評価するために行える最もシンプルなテストの一つが、サルカスサインです。 腕が体側へ内転した状態でのサルカス法において、下方への変位が8~10 mm以上を重度な過可動性であると私は考えており、したがって、重度の先天的な弛緩性があることを示唆しています。この画像でこれがよく見えます。サルカスは私の指の幅よりも明らかに大きいのがわかります。 非外傷性のメカニズムとMDIにおいては、急性の組織の損傷がないため、可動域は正常か過度であることが多いです。 MDIによる再発性の肩の不安定性を持つ患者は、通常、ローテーターカフや三角筋、肩甲骨の安定筋が弱く、動的な安定性が不十分で、静的な安定筋が乏しくなっています。初めは、動的な安定性の最大化、肩甲骨のポジション、固有受容、可動域の中程における神経筋機能のコントロールを向上させることに集中します。 さらに、リハビリは、肩甲上腕関節のフォースカップルの効率と効果を、共縮エクササイズや、リズミックスタビリティ、神経筋のコントロールドリルなどを通じて向上させることに集中するべきです。ローテーターカフや三角筋、そして肩甲帯筋群に対する等張性の筋力向上エクササイズも、動的な安定性を向上させるために強調されるべきです。 要素#5:神経筋コントロール 考慮するべき5つめの要素は、患者の、特に最終可動域における神経筋コントロールの水準です。 不十分な神経筋コントロールによって生じる障害は、患者に対して有害な影響につながります。結果として、上腕骨頭が関節窩内で中心を捉えることができず、それ故に周囲の静的な安定筋に負担を強いるのです。神経筋コントロールが弱い患者には、潜在的な障害につながる上腕骨頭の過度な動きが見られます。 複数の研究者らは、肩甲上腕関節の神経筋コントロールは、関節の不安定性によって悪い影響を受けるかもしれないと報告しています。 Lephartは、受動的な動きを感知する能力と関節の位置を再現する能力を、正常な肩、不安定性のある肩、および手術によって修復された肩において比較しました。研究者らは、正常な肩および安定性を修復する手術を行った肩の両方と比較して、不安定性のある肩は、固有受容感覚と運動覚が有意に低下していたと報告しています。 SmithとBrunoliは、肩の脱臼後に固有受容感覚の有意な低下を報告しています。 Blasierは顕著な関節の緩さをもつ人は、正常な肩の緩さやを持つ患者よりも固有受容感覚の低下が見られました。 Zuckermanは、固有受容感覚は患者の年齢に影響され、より年齢が上の被験者は、より若い同様の特性を持つ人よりも固有受容感覚の低下が見られました。 したがって、外傷性または後天的な不安定性をもつ患者は、神経筋コントロールがに乏しく、改善に取り組む必要があります。 要素#6:受傷前の活動水準 肩の不安定性に対する非手術的なリハビリにおいて考慮するべき最後の要素は、患者の利き腕かそうでないかということ、そして希望する活動水準です。 もし、患者が頻繁に頭上への動作やテニス、バレーボール、または投球を伴うスポーツを行うのであれば、リハビリプログラムは、完全で痛みのない動作と十分な筋力をいったん獲得すれば、スポーツに特異的な動的安定性のエクササイズや神経筋機能のコントロールドリル、そして頭上のポジションでのプライオメトリックスエクササイズを含むべきです。 肩より下での動作を含む機能的なニーズのある患者は、最大限の可動域と筋力に戻すために、漸進性のエクササイズプログラムに沿っていきます。利き側の外傷性の脱臼後にオーバーヘッドスポーツに復帰する患者の確率は、多くの場合で低くはありますが、可能です。 それが利き腕かどうかということも、リハビリが成功するかどうかに大いに影響を与えます。不安定性の再発率は年齢、活動レベル、そして利き腕かそうでないかによって異なります。コリジョンスポーツのアスリートにおいて、再発率は86%から94%の間であると報告されています。 肩の不安定性に対するリハビリの秘訣 要約すると、肩の不安定性の非手術的なリハビリには、多くの微細なバリエーションがあるのです。私の思考プロセスを簡単にするために、個々に対して何を焦点に置くかを決める前に、これらの6つの要因を常に考えるようにしています。

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肩の不安定性に対するリハビリの6つの秘訣 パート1/2

肩の不安定性は理学療法において所見の多い障害です。しかし、肩の不安定性には多くの異なるタイプがあります。 投球時に肩が緩いと感じる高校生の野球選手と、氷の上で転んだ際に腕を伸ばしてついて肩を脱臼した35歳の人を同じように治療しますか?彼らは両方とも「肩の不安定性」がありますよね? 微細な繰り返しの亜脱臼から、外傷性の脱臼まで幅広い症候性の肩の不安定性があります。特異的な筋力向上のエクササイズや、動的な安定性向上ドリル、神経筋機能トレーニング、固有受容器のドリル、肩甲帯筋群の筋力向上プログラムや、徐々に目的のアクティビティに戻ることを通して、以前の機能的な動作を取り戻すために肩の不安定性に対する非手術性のリハビリが行われます。 しかし、肩の不安定性をどのようにうまく治療するかということを本当に理解するために、考慮しなければならないいくつかの重要な要素があります。 肩の不安定性のリハビリプログラムを設計する上での重要な要素 肩の不安定性には多くの異なるバリエーションがあるため、リハビリプログラムに影響を与えるいくつかの要素を理解することは非常に重要なことです。これによって、肩の不安定性のリハビリプログラムを個々に合わせて、回復を促進できるのです。 非手術性の肩の不安定性のリハビリに対するリハビリプログラムを設計する際に、私が考慮する6つの主な要素があります。それらを一つずつ詳細に説明していきましょう。 要素#1:肩の不安定性のメカニズムと慢性度 肩の不安定性のある患者に対するリハビリで考慮する最初の要素は、その障害のメカニズムと慢性度です。不安定性には二つの異なるタイプがあり、次のように分類できます:  1.急性的な外傷性の不安定性  2.慢性的な非外傷性の不安定性 病理的な肩の不安定性は、急性的で外傷性の出来事、あるいは慢性的で再発性の不安定性から起こるでしょう。リハビリプログラムのゴールは、けがの発生とメカニズムによって大きく異なります。 外傷性の亜脱臼や脱臼後は、通常、患者は顕著な組織の損傷や痛み、不安を伴います。肩を脱臼した患者は、亜脱臼した患者よりも筋肉の痙攣によってより大きな痛みを訴えます。さらに、脱臼がはじめての場合は、再発したときよりも通常は痛みがより強いものです。 外傷性の脱臼の良い例があります。肩が脱臼したままフィールドを去る際の選手の痛がり方を注意して見てください。

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野球用ウエイトボールが投球速度、そして受傷率を上げる本当の理由 パート2/2

私の過去の研究と同様、多くの人々はわたしたちの発見を読み、その結果に不満を持ちました。恐らくその結果は、彼らの先入観や過去の信条を批判しているのかもしれませんね?あるいは、彼らはただ科学を知りたくないだけかもしれません。 とても多くの人々がわたしたちの方法を批判しようとしてきました。 覚えておいてください、わたしたちには何の偏見もありません。わたしたちは、これらのウエイトボールを用いたプログラムを研究しようとしている科学的な人間です。わたしたちがそれらを利用して利益を挙げることはありません(あなたがけがをするまでは!)。わたしたちはただ科学を知りたいだけで、データが示すことに関して本当に何の嗜好みもありません。私はあなたと同じくらい結果に驚いているのです。 わたしたちの研究についてよく耳にすることを取り上げたいと思います: 2oz(57g)のラン・アンド・ガン投球を入れていた。残念なことに、これは現実世界で起きていることなのです。子供たちがこれを行っているのです。これはちょっとクレイジーだと思う人がいることを嬉しく思うのは、私もちょっとそう思うからですが、わたしたちの研究のゴールは現実世界にあるプログラムの領域を評価することなのです。でも、このことを覚えておいてください…2oz(57g)のラン・アンド・ガン投球をたった3回です。たいしたことではありません。81球のうちの3球、あるいは実験中の4%です。研究の残り96%を見捨てないようにしましょう。 選手たちはウエイトボールを用いたプログラムに準備できていなかった。これは本当ではありません。わたしたちの研究内のすべての選手たちは、これらの研究の前に、野球に特化したトレーニングプログラムや数週間の投球強化プログラムを実施し、適切に準備ができていました。 選手たちはウエイトボールを用いたプログラムに慣れていない。これは何人かの被験者には当てはまるかもしれませんが、すべての被験者ではありません。しかし繰り返しますが、わたしたちは現実世界を模したかったのです。初めてあなたがあるプログラムを始めるとき、どこかの時点でウエイトボールを用いたトレーニングを始めるはずです。 私はこれらのどの因子も非常に関連性があるとは信じていませんし、わたしたちの発見の臨床的価値を限定することは絶対にありません。 なぜ肩関節外旋が増加するのか? このセクションをとても明確に始めましょう:よくわかりません。 しかし、わたしたちは科学的根拠に基づく、非常にもっともらしい教養のある推測をいくつか持っています。 正直、私はウエイトボールによって外旋可動域が増加したのを見て、個人的に非常に驚きました。しかし、これを知っている今、それは完全に納得がいきます。 それでは、なぜでしょうか? ウエイトボール投球後に外旋可動域が増加するのには、二つの理由があるようです: 神経筋系への急性の変化 筋骨格系への慢性的な累積ダメージ ウエイトボールは神経筋系に急性の変化をもたらす 外旋可動域の急激な増加には驚かされました。これが一般的に関節包または筋肉の断裂のような肩の重大なけがを象徴しているとは思いません(それについては下で詳しく述べます…)。 起こっていることとしてもっとも可能性が高いのは、過伸張から守るために伸張を感知し筋肉を発火させるようにデザインされたゴルジ腱器官(またはGTOs)という固有受容器の感度を低下させているということです。 これらのGTOsは、わたしたちの関節がその可動域の終末に近づいているのを感知し、反対側の筋肉を発動させてあなた自身を守るために動きを減速させます。 このメカニズムの感度を低下させることは、モビリティの向上へつながるでしょう。しかし、その代償は? これはわたしたちの身体の中の防御装置です。それなしでは、わたしたちの投球側の肩や肘はもっとストレスを受けやすくなります。 理学療法やトレーニングの世界では、実際に時折これをうまく利用します。プライオメトリック・エクササイズ、ダイナミックストレッチ、そしてPNFのコントラクト・リラックスのようなテクニックは、すべてこの前提の上で働くものです。 あなたがハムストリングをストレッチしその直後にゆるんだように感じるとき、ハムストリングが数秒間のストレッチによって長くなったからではありません。それは構造的に意味を成しませんよね。それは、あなたがハムストリングの伸張反射の感度を低下させたからなのです。 これは通常たいしたことではないのですが、そうやって生理機能の極限の壁を越え、そして投球するとき、そのことはより大きな影響を与えます。投球はすでにとんでもなく大きなストレスをあなたの腕に与えているのですから。 ウエイトボールは筋骨格系に慢性的な累積ダメージをもたらす 幸運なことに、外旋可動域の変化を目にしている主な理由は、先ほどお話しした固有受容器の急性な感度の低下によるものだと思います。 しかしながら、特に、もしこれを利用した投球が外旋可動域を増加させたのであるなら、いくらかの慢性的なダメージも考慮しないというのは短絡的でしょう。 投球中、腕は外旋から内旋へと急速に移行し、ボールを加速し始めます。これが肩の静的及び動的安定筋群にとてつもなく大きなストレスをかけるのです。 統計学的には、これによって肩の前方関節包を損傷する可能性があります。これは嫌ですよね。 力学的には、レイバックや腕の加速への移行を伸張性収縮によって減速させなければならない筋肉に損傷を与えます。これらの筋肉には、広背筋、大円筋、胸筋群、そして肩甲下筋が含まれます。 今野球で広背筋損傷がいかによく見られるかに気づいたことがありますか?これは10-20年前にはほとんど見られませんでした。 急性の変化はまた、慢性的な積み重ねの変化にもつながっているようです。 それではこれらすべては何を意味しているのか? さて、あなたは今肩関節外旋について、恐らくそれまで知りたかったであろうことよりももっと多くのことを知っています。どうしてこれが重要なのか、説明しましょう。 非常にシンプルですが、わたしたちは外旋可動域がより大きくなれば、投球速度もより速くなることを知っています。また、これが肩や肘へのストレスを増加させることも知っています。 これが非常に難しいことのように聞こえる部分なのですが、実際はあたりまえのことなのです。物理学です。より大きなレイバックは腕がより強い投球をすることを可能にし、それが腕により大きなストレスを与えるのです。 図はウィキペディアより引用 当たり前、ですよね?なるほど、そうですよね? なぜウエイトボールが投球速度を上げるのかについて提示された理論のほとんどは、真実ではなさそうです。レイバックの増加が主な要因なのです、間違いはありません。 ウエイトボールを用いたプログラムは、腕のスピードを向上しない、腕の筋力を向上させない(事実わたしたちはそれらが筋力の発展を妨げることを示しました)、そしてその他の提示されてきたことのどれもしません。わたしたちは今正式にこのすべてを研究し、私たちの調査によってこう結論付けました。 ウエイトボールはレイバックを増加させ、それが投球速度を上げ、そのどちらもがストレスを増加させ、そのすべてが受傷率を上げるのです。 どうです、これで完全に納得がいくでしょう? そもそもわたしたちにはウエイトボールを用いたトレーニングプログラムが必要なのか? はいはい、わかりました、まだウエイトボールを使いたいんですね。それらはインターネットでは魔法のようにみえますよね。 私はそれにまったく問題ありません。私自身も、一緒に働く多くの選手たちにそれらを使います。しかしながら、すべての選手にというわけではありません。 より多くのことがわかっていくにつれて、わたしたちは、ふさわしい人に適切なタイミングで提供される投球速度発展プログラムにおいて、ウエイトボールは非常に小さな存在であることに気が付くと思います。 わたしたちが国中のユースや高校、そして大学のチームで実施されているのを目にしているように、大人数のグループでそれらをやみくもに行うべきではないのです。 これはばかげたことです。 人生のその他すべてのことと同じように、量が大事なのです。「ありがた迷惑」というフレーズを聞いたことがありませんか? わたしたちは本当にウエイトボールを使いすぎているのです。 しかし、私はこの記事を疑問で終わらせようと思います…そもそもウエイトボールを用いたトレーニングプログラムは必要なのでしょうか? 私は、ウエイトボールを用いたトレーニングを、筋力トレーニング、パワー発展、腕のケア、そして適切なバイオメカニクスのような、けがを起こすことなく速度を向上させることが証明されてきた多くの方法で置き換えることを話しているのではありません。私は、これらのよくできたウエイトボールを用いたトレーニングプログラムを、オフシーズンの間ずっと行う必要があるのかということを話しているのです。 この現在の研究に基づくと、もしレイバックの可動域が非常に素早く非常に大きく増加するのなら、そしてより大きなレイバックがより速い速度を意味するのであれば、恐らくわたしたちが必要なのは、ウエイトボールでの短くてシンプルなウォームアップだけなのかもしれません。 これが固有受容器の感度を低下させるちょっとした刺激を与え、何週間ものウエイトボールトレーニングプログラムを身体に課す必要なく、レイバックを少しだけ大きく、そして投球速度を少しだけ速くしてくれるでしょう。 私には、これが身体にはるかに安全であるように聞こえます。 また、これは現在進行中であるわたしたちの次の研究のようにも聞こえます。乞うご期待…:)

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野球用ウエイトボールが投球速度、そして受傷率を上げる本当の理由 パート1/2

ウエイトボールを用いたトレーニングプログラムは、投球速度を向上させようとしている野球選手に、とても人気の方法となりました。 残念なことに、ウエイトボールを用いたトレーニングの流行は、わたしたちがその背景にある科学を理解するよりも速く広まってしまいました。 ここ数年間にわたり、Champion PT and Performanceのレニー・マクリナ氏と私は、American Sports Medicine Institute(米国スポーツ医学機関)のグレン・フレイシグ博士とジェームス・アンドリュース医師とチームを組んで、ウエイトボールの安全性と有効性についてもっと理解しようとしてきました。 一連の調査プロジェクトを通して、この数年の間に多くのことがわかりました。しかし、野球におけるウエイトボール使用の安全性、メカニズム、そして有効性に関しては、いまだに多くの疑問があります。 野球用ウエイトボールの投球は腕にかかるストレスを変えることがわかった フレイシグ博士は、高校生および大学生投手のグループにおいて、野球用ウエイトボールの投球のバイオメカニクス的影響について調べました。 著者らは、平らな地面でウエイトボールをラン・アンド・ガン投法(:助走をつけて投げる方法)で投げるとき、肘関節の内反トルク(トミー・ジョン靱帯へのストレス)がマウンドでの投球に比べ有意に増加することを指摘しました。 オコロハ氏は、平らな地面で投げるユースの野球投手グループにおいて、同じような肘関節内反トルクの増加を示しました。彼らは、ボールの重さの増加に伴い、ストレスが統計学的に有意に増加することを立証しました。 ウエイトボールを用いたプログラムを行う野球投手の受傷率はより高いことがわかった わたしたちの研究は、ウエイトボールを用いた投球プログラム中及びその後の受傷率を調査した、初めての研究です。 わたしたちは、6週間のウエイトボールを用いたプログラムを行った高校生野球投手において、投球速度が3.3%向上したことを示しましたが、一方で24%の受傷率をも示しました。ウエイトボールを用いたトレーニングを行わず、通常のウエイトトレーニングにのみ焦点を当てたコントロール群では、けがはありませんでした。 さらに、確かに投球速度の向上を示しましたが、それはすべての投手に見られたわけではなく、コントロール群の67%もまた基本的な投球とウエイトトレーニングだけで投球速度の向上を示しました。 重要なことですが、わたしたちはオフシーズンにウエイトボールを用いたプログラムを実施した後、シーズンを通して選手たちを追跡しました。プログラム実施後のシーズン中に、わたしたちはウエイトボールを用いたプログラムを実際に行っている間よりもはるかに多くのけがを目にしています。 なぜ投球速度の上昇とより高い受傷率の両方を目にするのかわかったとも思っている さらに重要なことに、私は、ウエイトボールによる投球速度の上昇と、ストレスや受傷率の上昇の両方のメカニズムについて、多くのことがわかったと本当に信じています。 わたしたちは肩関節外旋(またはレイバック)可動域の有意な増加を観察し、驚きました。 プログラムの投手らは、6週間のプログラムの後、肩関節外旋の4.3度という有意な増加を示しました。コントロール群はこの変化を示しませんでした。そしてわたしたちは、複数の過去の研究から、野球の投手においてレイバックの大きさはストレス及び投球速度の両方の上昇と相関があることを知っています。 ウエイト野球ボールのトレーニングプログラムは、投球速度の向上において効果的かもしれないが、それらは肩関節の動き、肘へのストレス、そして受傷率も上げる 6週間のウエイトボールを用いたプログラムを実施後、肩関節外旋が増加したことを発見したのち、最初にわたしたちの頭に浮かんだことは、これがすぐに現れるものなのか、あるいは何週間もトレーニングしないと観察できないものなのかを見るために、ウエイトボールを投げた後の即時の変化を研究しなくてはならないということでした。 それがわたしたちの最近の研究につながります。 ウエイト野球ボールの肩関節可動域における即時の影響 Sports Healthに掲載されたわたしたちの最近の研究では、ウエイトボールを投げた直後に肩の関節可動域に何が起こるのかを調べました。 これを研究するために、わたしたちは平均年齢17歳の高校生野球投手16人のグループを調べました。わたしたちはウエイト野球ボールを用いたトレーニングセッションの前後に、彼らの肩関節可動域を計測し、その日一日にどのような変化が起こるのかを評価しました。 よく見られるトレーニングプログラムでは、様々な重さの野球ボールが用いられているため、わたしたちは使われるボールの重さの間に違いはあるのかも気になりました。そこでわたしたちは、研究を3つの異なるテストセッションに分けました。 投手らは連続しない3日間にわたり私たちの施設を訪れ、3つの異なるトレーニングセッションを行いました: 2oz(57g)、4oz(113g)、5oz(142g)の軽めのボール 5oz(142g)、6oz(170g)、9oz(255g)の重めのボール 5oz(142g)、16oz(454g)、32oz(907g)の非常に重いボール 各投手は、それぞれのボールを3つの異なるポジションで3回投球しました: ニーリング投球(膝をついての投球) ロッカー投球(脚を前後に開き、重心を前後に移動させて投げる方法) ラン・アンド・ガン投球 つまり、全体では、各テストセッションに3つの異なる重さのボールを3つの異なるポジションで3回ずつ、合計27球を投球したわけです。これは一セッションとしては多くはありません。実際には、人々はそれよりもずっと多く投げてい流ことが多いのです。 各投球セッションの直後に、わたしたちは彼らの肩関節可動域を再び計測しました。このわずかな時間や投球の後に、関節可動域に多くの変化を見つけるとは予測していませんでした。 軽いボールを投球後に選手らを調べた時、これは正しいことが証明されました。関節可動域には何の変化もなかったのです。これはその他の発見のための良い基準になります。別のセッションで変えた唯一の可変値はボールの重さだけだったので、わたしたちが見つけるすべての変化は、ウエイトボール自体に起因している可能性があります。 ボールの重さが増加し始めるにつれて、わたしたちの発見も増えました。6oz(170g)と9oz(255g)の重めのボールでは、肩関節の外旋可動域、またはレイバックにおける変化が見え始めました。ボールの重さが増加するに伴い、投球による肩関節外旋可動域も大きくなりました。重めのボールでは外旋は3度以上大きくなりましたが、16oz(454g)と32oz(907g)の非常に重いボールでは8度以上の驚異的な増加が見られました。 この研究の発見がいかに重要なことか、強調しきれません。レニー氏と私は、関節可動域を計測しながら文字通りお互いを見つめ、そしてショックを受けました。 どの調査研究においても頭においておくべき一つのことは、これらの数値はグループの平均であるということです。あなたが研究の中で数字を一人当たりで分析すると、その結果はさらに価値のあるものになります。現実的にいえば、投球の強度は結果を変えてしまうでしょう。もし一人のある投手が高い強度で投球しなければ、それがデータを台無しにすることもあり得ます。これはウエイトボールを投げることに慣れていない人々に起こりうることですが。 6oz(170g)と9oz(255g)の重めのボールのセッションでは、何人かの選手らの関節可動域はあまり変化しませんでしたが、この増加傾向は見られました。増加した投手においては、平均では8度以上でしたが、5度、10度、さらには15度以上も外旋可動域が増加した選手がたくさんいました。 外旋可動域の平均3.3度の変化は統計学的に有意ではありましたが、この研究が示唆するよりももっと臨床的にこれは意味があるのかもしれません。それよりもっと増加した選手はたくさんいましたが、私は個人的にはこの3.3度の変化を基準値だと考えています。 16oz(454g)と32oz(907g)を投げる非常に重いセッションを調査すると、結果はさらにより明らかになります。被験者の大半は増加し、それも大きく増加しました: ここでもまた、平均8.8度は統計学的に有意ではあるのですが、臨床的な意味はさらに高く、ほとんどの選手が外旋可動域を10-20度増加しました。 この発見は警戒すべきものであり、投球速度の向上のためにウエイトボールを用いたり、あるいは用いることを勧めるのであれば、全ての人たちが理解すべきことです。 ウエイト野球ボールを投げることは、あなたの外旋可動域を瞬時にかなり大きく増加させます。ボールが重くなればなるほど、関節可動域はより大きく増加します。

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血流制限トレーニング:知る必要のあることすべて パート2/2

理学療法における血流制限 どんな怪我であろうと、一般的に筋萎縮と弱化はよく見られる機能障害です。 これらの機能障害への取り組みは、多くの場合、直ちに行われます。神経筋電気刺激、バイオフィードバック、等尺性運動、および相互教育は、組織がまだ損傷している早期に開始できるストレングスの方法のいくつかの例です。 残念ながら、初期の治癒段階では、治癒しかけている組織に過剰な負荷をかけダメージを与えてしまう可能性があるため、高負荷は適切とは言えません。 これは、怪我からの回復とストレングスの獲得を同時に行おうとする時、問題になります。 レジスタンス・トレーニングのガイドラインでは、最大反復回数が1回(1RM)の60%を超える高負荷で8〜12回の反復を推奨しています。 私たちが求める適応を得るためには、適切な負荷が必要です。さらに複雑な問題は、リハビリテーションの初期段階での1RMテストが適切でないことです。 1RMの推定モデルはありますが、理想的ではありません。 BFRは、負傷後の萎縮を軽減するだけでなく、低負荷環境でも筋力の強化ができる選択肢を提供してくれます。基本的に、トレーニングは、セット毎に1RMの20〜30%の負荷で15〜30回繰り返します。このトレーニングの方が、強度の高い負荷に耐えられるだけの準備がまだ整っていない治癒過程の組織には、はるかに適しています。 血流制限トレーニングに効果があるか? BFRトレーニングの有効性を文献に記した数多くの研究が発表されています。 血流制限トレーニングは、低負荷環境にも関わらず、筋萎縮を軽減し、筋肥大を促進し、筋力を高め、有酸素能力を向上させるなど、すべてに効果があることが示されています。 すべて素晴らしいように聞こえますが、診断別のエビデンスはあるのでしょうか? 血流制限トレーニングの効果が非常に多いのであれば、診断別でもプラスの結果が期待できますね?そう、その通りでしょう! ACL再建後のBFR 長年の研究から、ACL再建術のような膝の手術後に大腿四頭筋の筋力が失われることが分かっています。幸いなことに、BFRは、ACL再建術後の筋力と筋肥大の障害を克服するのに非常に適しており、多くの研究でBFRの使用による効果が示されています。 さて、他の診断名におけるBFRの研究はそうたくさんないかもしれませんが、直感的には、すべての膝の術後には、大腿四頭筋の筋力と肥大化が必要なので、同様の効果をもたらすとポジティブに考えるべきでしょう。 膝の痛みにBFR 間違いなく、私たちのところに来院する人たちの主な動機は、痛みの緩和です。高めの負荷が、すでに過敏になっている組織(または患者!)を増悪させるかもしれないので、低負荷でのBFRトレーニングが魅力的になるのは当然のことです。 多くの研究で、膝蓋大腿痛や変形性膝関節炎の痛みの軽減、およびACL再建術後の機能や変形性膝関節炎における機能にもBFRの効果が示されています。 固定後のBFR 私たちは誰もが、固定が筋に及ぼす悪影響を知っています。そのような患者を見たことがありますね(また、あなた自身が術後に経験したかもしれません!)。ご想像のとおり、BFRは、固定のような症例でも効果があるかもしれません。患者はベッドから立ち上がることができず、まったく動けないかもしれませんが、その場合でも、BFRが役に立つかもしれないのです!素晴らしいですよね? 高齢者におけるBFR もし、あなたのクライアントが、アスリートではなく、どちらかというと中高年や高齢者の場合でも、良いニュースがあります。BFRはこのカテゴリーの人たちにも効果があります。 いくつかの研究では、BFRが高齢患者の痛みの緩和と機能向上に役立っていることが分かりました。 確かに、もっと注意を払い(以下を参照)、このカテゴリーのどのような人を治療しているのかを知る必要があります。しかし、考えてみれば、低めの負荷で筋力トレーニングの効果が十分得られるのならば、それはともに有益な解決策です! このカテゴリーの人たちの中で、私たちが気づいた唯一の問題といえば、不快感ですが、経験から言ってもう少し納得のいく説明が必要なのかもしれません。 血流制限トレーニングは安全か? 安全性について掘り下げる前に、何事も誤った人たちにより不適切に使用されたり、間違った人達に使用されれば、安全ではなくなることがあるということに、留意しておくことが大切です。 そうは言っても、BFRトレーニングは安全であることが示されています。 BFRは、さまざまな筋骨格系の病理で使用されており、これまでのところ、BFRトレーニングの禁忌がない限り重篤な副作用は発生していません。 BFRトレーニングの一般的な副作用は、一過性のことが多く、しびれやあざ、不快感、点状出血、皮膚の擦過傷、遅発性筋痛(DOMS)などがあります。 これらは通常心配ありません。ただし、心臓病や血液凝固の疑いがある患者には注意が必要です。 幸いにも、最近のレビューでは、血栓や深部静脈血栓症(DVT)のリスクが非常に低いことが示されました。 現時点では、有害事象のリスクを軽減するために、手術の約2週間後にBFRトレーニングを開始することをお勧めします。 BFRトレーニングの禁忌とは? 上記の安全ガイドラインに基づいて、BFRの禁忌は、血管不全または心臓関連が中心です。 身体が動脈血を組織に送り込もうとし、拍出量と心拍数の増加により、心臓へのストレスが増す可能性があります。 高血圧、糖尿病、脳卒中または深部静脈血栓症の病歴、心臓疾患、活動性感染症、妊娠、血液凝固障害、またはその他の血管不全(静脈瘤など)のある人は禁忌です。 とはいえ、患者がBFRトレーニングに適しているかどうかを判断するには、かかりつけ医に相談することをお勧めします。よく考えてみれば、これらの多くは他の数ある医療機器の使用や治療方法にも禁忌となっているものです。 つまり、常識的に頭で考えて。 BFRでも、みなさんが使っている他の療法と同じように、臨床的推論と意思決定が重要なのです。

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