マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてXPとKoinを獲得すれば理解も深まります。
理学療法によって回旋筋腱板断裂の手術を防ぐことは可能か?
回旋筋腱板の再建手術、及び、術後のリハビリは、整形外科や理学療法の学会において、肩のトピックの中で最も議論される論題の一つであり続けています。回旋筋腱板再建手術の失敗率を報告している研究は、数多く発表されており、その範囲は25%-90%となっています。 この失敗率は間違いなく注目するべきものですが、まずは「失敗」という言葉を定義する必要があります。従来の研究モデルでは、手術の成功とは回旋筋腱板が完全な状態であることと定義されており、これは理にかなっています。しかし、これらの研究における、さらに興味深い発見の一つは、再腱に「失敗した」にも関わらず、多くの患者が機能状態、および手術の結果にかなり満足しているということです。放射線検査の所見よりも、患者の術後の経過や満足度がより重要であれば、「失敗」をどう定義するかという問いかけをしなければなりません。 こういった研究により、回旋筋腱板再建手術後の理学療法の役割についての討議が活発になり、また多くの医師がより保守的になり、経過を見て、時間をかけて治療するようになりました。これは、明らかに複数の医師が、初期の理学療法が手術の失敗の原因だと信じていることを示しています。しかし、この考え方は完全ではなく、組織の質、断裂の度合い、患者の選択、手術の技術などの要素の方がより、最終的な失敗率に関係しているかもしれません。 もう一つ考慮すべき見解は、回旋筋腱板の再腱に失敗したのにもかかわらず、患者の満足度が高いということです。たとえば、下記の状況を満たしていれば、患者は満足だといえます。 痛みが少ない 可動域を取り戻した 機能的活動ができる そのため、真に問われるべきは、次のような質問です。手術失敗率が90%にも迫る一方で、手術後の満足度や結果には高い改善が見られるのであれば、回旋筋腱板断裂に対し、手術をせずに理学療法のみに専念することは、患者の痛みの軽減、可動性の復元、日常生活への復帰に、手術をするのと同様の効果をもたらすことができるのでしょうか? 回旋筋腱板断裂に対する理学療法は手術の必要性を妨げることができるか? Journal of Shoulder and Elbow Surgeryで最近発表された研究は、まさにこの問いについて検証します。米国の複数の場所に拠点を持つ研究チームであるMOONショルダーグループが、外傷なしの回旋筋腱板完全断裂を持つ381人の患者グループを最低二年間追跡しました。患者の平均年齢は62歳で、年齢の幅は31歳から90歳でした。 患者は、手術をせずに、回旋筋腱板筋群の強化、軟部組織のモビリゼーション、関節モビリゼーションを中心とした6-12週間の理学療法を受けました。 6週間経過した時点で一度評価をし、9%の患者が回旋筋腱板再腱手術を受けることを選びました。12週間経過したところでまた評価をし、さらに6%の患者が手術を選びました。2年間の追跡経過の時点において、全部で26%の患者が手術を選択しました。統計分析によると、最初の12週間内に手術を行わないリハビリテーションの方法を選んだ場合、手術をする必要はなくなるようです。 患者の75%近くが、回旋筋腱板の完全断裂があるにもかかわらず、理学療法を行うことによって、再腱手術を避けることができました。 これはとても重要な発見です。 保存療法時の回旋筋腱板のリハビリの鍵 この研究結果は、回旋筋腱板断裂の治療において、大きなインパクトを持っています。たとえ回旋筋腱板が完全に断裂していても、手術の前に理学療法が施されるべきです。治療の結果を最大限にするためにも、包括的なリハビリプログラムを作成するべきです。私が回旋筋腱板断裂のある患者を診るときには、3つのキーポイントに注目します。 肩の可動性の復元 これは、受動的可動性と能動的可動性の両方を含みます。受動的可動性において、肩の可動域は回旋筋腱板の症状がひどくなるにつれ、徐々に失われます。これは、痛みを避ける行動や、肩を動かさなくなること、あるいはその他の要因などが原因だと考えられます。関節窩上腕関節包の可動性の低下や、軟部組織の制限などがよくみられるでしょう。患者それぞれに固有な、動きの制限によって、軟部組織のモビリゼーション、関節モビリゼーション、可動性を高めるエクササイズを選択する必要があります。 動的安定性を得るために回旋筋腱板の機能を回復する これは、肩の能動的可動性の復元と本質的に同じことです。制限のない能動的可動性を得るためには、回旋筋腱板が適切に機能する必要があります。以前の記事で、つり橋理論、および、症状なしに回旋筋腱板断裂が起こる理由について説明しました。次の図で御覧のとおり、前部および後部の回旋筋腱板筋群が適切に機能していれば、棘上筋が断裂していても腕を挙上することができます。 肩の筋力と動的安定性を向上するエクササイズが取り入れられるべきです。私の経験では、外旋の筋力が最も制限されており、最も注目する必要があるものだと思います。 キネティックチェーンに与える衝撃を減らす 肩の可動性と安定性の復元に加え、肩の機能におけるキネティックチェーンの影響についても考える必要があります。肩甲胸郭関節、頚椎、胸椎、腰椎骨盤複合体における機能に、何らかの障害があるかを見極めるべきです。これらのエリアは、関節窩上腕関節のアライメント、可動性、安定性に重要な影響を与えます。 これらの原則を用いれば、回旋筋腱板断裂を持つ患者の75%を再腱手術から救うことができる可能性を持つプログラムを作成することができます。このような研究が、手術の有無に関わらず、理学療法が回旋筋腱板断裂を持つ患者の満足度と結果に与える影響を明らかにしていくことを望みます。
肩甲骨エクササイズの神話
肩甲骨エクササイズはとても一般的で、リハビリテーションや姿勢矯正エクササイズに必要とされることが多いエクササイズです。他のことと同様に、肩甲骨エクササイズに関連して共通に認められているテーマがいくつかあるようであり、多くの人々はそれを厳格な規則だと思い込んでいます。すべての人にとって正しいプログラムはありません。ここに、私が討論する価値があると考える3つの肩甲骨エクササイズの神話があります。 肩甲骨をぎゅっと引き寄せる 肩甲骨をぎゅっと引き寄せましょう。肩甲骨を同時に引き寄せましょう。肩を後退させてください。肩甲骨を集めてください。これらはすべて、肩甲骨エクササイズを行うとき、コーチが与える指示によくあるものです。これらすべての考えの目的は、よりよい姿勢をとり、肩甲骨を後ろに“安定”させることであり、最終的には、エクササイズを行うときに、良い姿勢となり、よりよい動きのパターンに繋げるということです。社会全体としてとらえれば、私たちには様々なタイプの姿勢をした人たちがいます。頭部前方偏位、猫背といった典型的な上位交差症候群。 通常の肩甲上腕リズムには、肩と肩甲骨が同時に一連の動きとして起こる必要があります。左右の肩甲骨をぎゅっと引き寄せるには、中部僧帽筋を収縮させることが必要になり、肩甲骨を完全に後退させ、そして、腕を動かします。これは肩のメカニズムを考えた場合、肩甲骨を完全に前突した状態で腕を上げることほど悪くはありませんが、完全に後退した状態で腕を上げることがもっとも有益であるとも思いません。僧帽筋を等尺性に収縮させる必要がありますが、肩甲骨を後ろに引いておくことで、腕を挙上し、動かすときに起こる、正常な前突と上方回旋を制限することになります。 この典型的なコーチング指示の目的が、腕のエクササイズを行う際の姿勢を改善し、メカニクスを向上することであるならば、より効果的な指示は胸椎の伸展を誘導することでしょう。さらには、我々が最近話題にしていた、姿勢エクササイズのチンノッドを行うときのように、胸椎伸展と上位頸椎伸展を同時に行うことが良いでしょう。これは本当に姿勢を改善します。胸椎後弯が強く、背中が丸まったままであっても、肩甲骨を内転できることを認識しましょう。肩甲骨を後退させていることは、視覚的には悪くはありませんが、胸椎を伸展させることが本当の目的なのです。 肩甲骨の左右対称性を向上させるためには、可動性と筋力に働きかける 私たちは皆誰かの姿勢を評価するという無礼なことをしたことがあります。頭部前方変位、猫背姿勢を見つけ、大胸筋と上位頸椎の可動性に働きかけ、同時に、下部僧帽筋と深部頚部屈曲筋を強化する必要があると推測します。これらすべてに働きかけることはいいことですが、単純化しすぎた見方のようです。 まず、一歩下がって、邪魔なものを取払いましょう。あなたの肩甲骨は左右対称ではありません。ほぼすべての人々は左右対称ではなく、かなり左右差のない人でさえ、微妙な違いがあると断言してもいいでしょう。事実として、私たちは片側性の生物なのです。私たちは典型的に片方が利き手であり、これに関連して、利き手優位の運動パターンで機能します。このことは、1日中片手の動作を繰り返し行う人について話を始めるとき、本当に問題になります。私はなにも、野球の投手のようなアスリートだけの話をしているわけではありません。皆さんも、コンピュータの前に座り、右手でマウスを使っているわけです。 これは、本質的に股関節、脊柱、胸郭、そしてもちろん肩甲骨を含む、身体全体に左右非対称性を生み出します。 私の意見としては、肩甲骨の位置は、硬くなった筋肉や弱化した、または、抑制された筋肉を含む、他のなによりも、肋骨と胸椎の位置との関連が大きいと考えます。肩甲骨は胸郭に乗っていますし、結果、胸郭と共に動きます。これら筋肉のアンバランスに働きかける必要はありますか?もちろんあります。しかし、適切なアライメントも同様に必要であり、まずこれが最初に評価されるべきです。 皆“安定性より先に可動性である”と言っていますが、そうでしょうか?私はこのことを付け加えるでしょう。これはどうですか: 安定性の前に可動性、その前にアライメント 肩甲骨のエクササイズは両側性に行う 従来のYTWLエクササイズ。なぜ私が典型的なYTWLエクササイズを腹臥位で、ベッドの端、または、バランスボール上のどちらでも、あまりたくさん行わないかについてお話しました。頭部を安定させるために必要な上部僧帽筋の活動をあまり好みませんし、求めているような適切な運動パターンを獲得するようにも思えません。姿勢改善には役立つのかもしれませんこれには賛否両論があることでしょう。 しかし、おそらくより重要なのは、私たちはこのように腕を動かすような運動パターンで動かないだろうということです。最後に、Tエクササイズを行うように、両方の腕を水平伸展させたのはいつですか? 筋肉の強化を目的としているなら、私は片側の腹臥位エクササイズをして、筋力と運動コントロールに集中します。それが私の優先順位です。 それでは、機能と動作パターンが次の課題になったとき、肩甲骨の相反性活動に働きかけることが最良なのでしょうか?私たちはかなり頻繁に,片腕が引く動作をしているとき、反対の腕は押す動作をする、というように腕を使っています。この動作は、テニス、バレーボール、ソフトボール、野球などの片腕のオーバーヘッドスポーツや、歩行、ジョギング、ランニングなどのよくある運動時にも、とてもよくみることができます。 両方の肩甲骨を動かすべきときがありますか?もちろんあります。ちょうど頭に浮かんだのですが、競泳の選手はこれを行いますし(特に、平泳ぎとバタフライでは)、1日中重いもの押したり引いたりしなければならない人も、これを行います。トレーニングの特異性の話に戻ります。 覚えておいて欲しいのは、必ずしも肩甲骨を両側同時に動かす必要はないということです。なぜ左右反対方向に動かし、その代わりに相反性の押すー引くパターンが働くのかについて、とても分かりやすい理由があります。 この記事がで、少なくとも考えたり討論を起こ須きっかけになってほしいと願います。すべてにおいて適切な時と場所がありますが、時には1つの方向にアプローチが偏ってしまうことがよくあります。おそらく、これら3つの肩甲骨エクササイズの神話によって、次回肩甲骨の強化トレーニングを行うとき、立ち止まり、考えることになるでしょう。どう思いますか?
YTWLショルダーエクササイズが好きではない理由
YTWLショルダーエクササイズが普及しはじめた頃を覚えています。「YTWL」という頭文字は、肩のエクササイズをうまい具合に説明しており、覚えやすい名称でした。私も時流に乗り、すべての人に両肩のトレーニングを適用していました。肩を負傷しリハビリ中の人たちにさえも行っていました。YTWLショルダーエクササイズでは同時に両側を行うことで、より短い時間で左右対称にトレーニングできます。それでも、私はあまりこのエクササイズに満足しておらず、たくさんの異なるバリエーションを試してみました。 まず初めに試みたのは、立位で前屈することです。シンプルでスタートとしては良いですよね? ただ、すぐに気がついたのは、実際、このエクササイズをするのに適切なポジションがとれない方が多いということ。ほとんどの人達は、上半身を床と水平にするのが困難で、床から約45度の角度で行っています。これでは、三角筋の関与を増やしてしまうのが気に入りません。回旋腱板と肩甲骨のエクササイズを行う際に、三角筋の関与は一番望ましくないことですから。 次に試みたのは、バランスボールの上に腹臥位になることです。すごくいいアイデアですよね? 体幹を安定させながら、肩や肩甲骨周囲の筋群のトレーニングをしようというわけです! ところが、そうでもないようです。このトピックに関する研究では、これまで意見が対立してきましたが、一概にバランスボールの上でエクササイズをしても、肩周囲の筋群とコアの筋群のEMGの継続的な上昇は見られないということを数々の研究が示しています。しかし、このリサーチからひとつの傾向が浮かび上がってきます。それは、筋出力量の減少です。これは、バックスクワットとレッグプレスの違いに似ています。レッグプレスでは、それほど安定性を要求されないために、より重いウェイトを持ち上げられます。この試みはそれほど悪くありませんね。特に機能向上のためにトレーニングしている健康な人たちやスポーツ選手には適しているのかもしれません。でも、YTWLショルダーエクササイズをする理由は、肩の強化と肩の機能向上のためだということを思い出してみてください。不安定な表面でYTWLエクササイズを行ったところで、その目的は果たせそうにありません。 バランスボールの上でこのエクササイズを行っている人たちのポジションが、あまり感心できないものであったことも述べておくべきでしょう。ここでもほとんどの人たちは、上半身が床と平行ではなく、バランスボールより腕が長い場合は、充分な可動域でトレーニングできません。つまり、肩や肩甲骨周囲の筋群のための効果を最大限に発揮できないわけです。しかも、体幹の安定性が十分でなければ、動きのパターンを完成させるために後方に揺れて、腰椎が過伸展してしまうのです。 その次に試みたのは、YTWLエクササイズを不安定な表面ではなく、単にマッサージテーブルに腹臥位になって行うことでした。このエクササイズを行うには、頭と肩をマッサージテーブルやベンチの端からはみ出した位置におく必要があります。悪いアイデアではないようです。実際、YTWLショルダーエクササイズをこのポジションで行うことは、適切だと思いました。腰椎をニュートラルポジションに安定(マッサージテーブルにまっすぐにうつ伏せになり、腰椎を過伸展しないように指導)しなければなりませんが、通常のウェイトを利用することもできます。これまで試みたポジションで探していた「身体が床と平行なポジション」にようやくたどり着いたのです。 あぁ~、やっとここまで来ましたが、まだ満足できません。マッサージベッドの端から頭がはみ出した状態で両側性のショルダーエクササイズをすれば、上部僧帽筋と肩甲挙筋の活動を助長してしまいます。上部僧帽筋の活動や上部僧帽筋優位の姿勢を低減させたいという私の考え方を皆さんもご存知ですね。そのうえ、これらのエクササイズの目的は、肩と肩甲骨機能の向上なのですから、上部僧帽筋と三角筋を強化するようなエクササイズは、かえって私たちの目的の妨げとなってしまいます。特に上部僧帽筋と下部僧帽筋の活動の割合が肩のインピンジメントに影響することが分かっている場合、やはりこの方法は逆効果を招くと考えられます。 なぜ私はYTWLショルダーエクササイズを好まないのか おわかりの通り、YTWLショルダーエクササイズを実施するにはいくつかの制限があります。私が懸念しているこれらの制限をまとめると: 身体が床と平行で実施しなければ、筋にかかる角度が変わり、より三角筋を動員することになる。 腰椎が過伸展しやすい傾向にある。 不安定表面で実施することにより、筋出力量を減少させ、肩と肩甲骨周囲の筋群に重点を置きにくくなる可能性がある。 バランスボールの上では、充分な可動域で実施することができない。 マッサージベッドやベンチの端で実施すると、頭を保持するために上部僧帽筋と肩甲挙筋を動員し過ぎてしまう。 YTWLショルダーエクササイズを適用する時に提案したいこと 主要な目的が回旋腱板と肩甲骨周囲の筋群の強化であれば、YTWLエクササイズは、あまり推奨できません。実施する場合、安定面(たとえばマッサージテーブル)の上で身体は床と平行にし、片側ずつ行うように単純化する必要があります。そうです、頭の位置はニュートラルではなく横に向けてください。少なくとも首の筋群はリラックスさせておきます。Wショルダーエクササイズはこれまで通り両側で行いますが(Wショルダーエクササイズテクニックについては、私の過去のポストとデモンストレーション動画をご覧ください)、YとT、Lは片側ずつ行います。 特定の損傷や手術のリハビリテーションでない場合、または第一目的が肩と肩甲骨周囲の筋群の強化でない場合、また左右対称性と運動機能の向上が目的であれば、YTWLショルダーエクササイズを行っても悪くはないでしょう。もし特定の欠点強化に取り組んでいるのであれば、従来の古いやり方が適切かもしれません。まずはそこから始めて、筋力がリストアされれば、他のポジションに漸進すればよいでしょう。リハビリテーションとフィットネスの専門コーチは、両側のYTWLエクササイズの際、上記で述べた代償的パターンが起こらないように必ず指導するべきです。 両側でYTWLショルダーエクササイズを行うのが適している場合もありますが、ほとんどの場合、私は肩と肩甲骨の強化と機能向上を目的としています。両側のYTWLエクササイズは、肩と肩甲骨に十分な強度と安定性が備わってから実施するプログレッションと捉えています。YTWLショルダーエクササイズを両側で行うことは、目標から少し外れてしまうのではないかと私は思うのですが、皆さんはどうお考えになりますか?
肩関節インピンジメント-評価・治療のための3つの要点 パート1/2
今日の投稿は、肩関節インピンジメントのリハビリテーションに関して、私が受けた質問に対する答えになります。 こんにちは、マイク。あなたが、烏口下インピンジメントと肩峰下、あるいは、関節内インピンジメントをどのように区別してケアを行っているのか、とても興味があります。肩関節インピンジメントに対する治療のオプションは何が適切でしょうか?ありがとう、マリオ 肩関節インピンジメント-識別の3つの要点 肩関節インピンジメントはかなり広義の用語で、私たちの多くはそれを当然のように思っています。“膝蓋大腿関節痛”のように、かなり無意味な用語になってきました。一般の人々に対して障害を説明するとき、“肩関節インピンジメント”のように、非専門的な用語を使用することは問題ありませんが、専門家として、適切な評価と治療を保証するためには、できる限り詳細に明記することが得策と言えるでしょう。ノートから引っ張りだし、特定の人に使える、魔法のような“肩関節インピンジメントのプロトコールはありません。 肩関節インピンジメントを分類し区別するために私が考えている3つの要素。 1. 部位 これは一般に、回旋腱板の、滑液包側なのか関節面側か、どちら側でインピンジメントが起きているのかということです。下の肩MRI画像を見てください。赤い矢印で示されている通り、滑液包側は回旋腱板の外側になります。これはおそらく、一般に“肩関節インピンジメント”と呼ぶときに、皆が意味している“標準的な肩関節肩峰下インピンジメント”です。緑の矢印は、回旋腱板の内側、または、関節面を指しています。ここでのインピンジメントは、“関節内インピンジメント”と呼ばれています。この2つは、原因、評価、治療の観点からも違いがありますし、だからこそ、最初の識別が重要になります。詳細はまた後で。 2. 衝突している構造 私にとっては、これは滑液包側、あるいは、肩峰下インピンジメントのことであって、回旋腱板がどの構造に対して衝突しているのかについて言及しています。下の写真に見ることができるように(両側の写真)、肩峰下のスペースはとても狭く、あまり余裕もありません。事実、“スペース”というものはほとんどなく、回旋腱板や肩峰下滑液包を含む、多くの組織がこの空間を横切っています。実際には、腕を動かすときは、いつも衝突が起こっています。インピンジメント自体は正常なもので、私たちすべての人に普通に起こっているのですが、それが過剰になったとき、病変が起こります。組合わさって、または、どちらか単独で起こることもある、肩峰アーチと烏口肩峰アーチインピンジメントを識別してみたいと思います。評価と治療に関してはとても似通っていますが、烏口肩峰インピンジメントに関して、小さな修正を2、3していきたいと思います。これに関しては以下で述べます。 3. インピンジメントの原因 これが、私が“一次的”と“二次的”肩関節インピンジメントと言及していることです。一時的なインピンジメントとは、インピンジメント自体がその人にとって主要な問題であるということです。これについて良い症例は、下の写真にあるように、フック状の肩峰のような解剖学的な問題があって、インピンジメントが起こっている場合です。肩峰の多くは、平坦であるか、カーブしているのですが、フック状、または、先端に棘がついているような人もいます(赤で示している)。 二次的インピンジメントとは、おそらく活動や姿勢、硬さや筋力のアンバランスが原因で、上腕骨骨頭が回旋軸から逸脱し、インピンジメントを起こしていることを意味しています。もっとも単純な症例は、回旋腱板の弱化です。このシナリオでは、三角筋が回旋腱板の筋力を上回り、上腕骨骨頭を上方に移動させ、結果として、上腕骨頭と肩峰の間で回旋腱板が衝突します。
肩関節インピンジメント-評価・治療のための3つの要点 パート2/2
肩関節インピンジメントのタイプによる区別化 最適な肩のパフォーマンスという私たちのDVDの中で、リハビリテーションやトレーニングに影響を与えるであろう肩関節インピンジメントの評価方法に、いくつかのやり方があるということについて話をしています。上記で述べた、それぞれのタイプの肩関節インピンジメントを評価するための特定のテストがあります。もっとも知られている2つの肩関節インピンジメントテストは、ニアーテストとホーキンステストです。ニアーテストでは(下記 - 上の写真)、検者は肩甲骨を安定させ、肩を他動的に挙上させ、上腕骨骨頭を肩峰に押し込むようにします。ホーキンステストでは(下記 - 下の写真)、検者が腕を90度まで外転させ、肩に内旋を強制させ、肩峰下アーチの下で腱板を衝突させます。 これらのテストに少し変化を加えることで、烏口肩峰アーチタイプの肩峰下インピンジメントをより示唆するであろう異なった症状を引き出すことができます。これは、より前方での腱板インピンジメントが関与しており、下記のテストでは、この部位でのもろさを再現しようと試みます。ホーキンステスト(下記 - 上の写真)に変更を加え、より水平内転させた姿位で行うことができます。別の肩関節インピンジメントテスト(下記 - 下の写真)では、反対側の肩をつかませて、能動的に肩を挙上させるように促し、検査することができます。 肩峰下インピンジメントを患っている患者の多くは、上記のテストすべてで症状を呈する可能性が高いですが、上記4つのテストにおけるちょっとした症状の変化を見つけることで、肩峰下インピンジメントの部位(肩峰に対して烏口肩峰アーチ)を特定することができるかもしれません。 関節内インピンジメントは異なったタイプです。オーバーヘッドアスリートにもっともよく見られますが、このタイプのインピンジメントは、典型的に、前方方向への過度なゆるさが原因です。例えば、野球の投球、テニスのサーブなどのように、選手が完全外旋位をとる場合、上腕骨骨頭が僅かに前方にシフトし、回旋腱板の下部表面が関節窩後方と関節唇に対して衝突を起こします。これは多くの場合、野球選手が“部分的に肥厚した回旋腱板断裂”を起こしたときに、よく聞きます。 このためのテストは単純で、前方不安感テストとまったく同じです。検者は90度外転した姿位で腕を外旋させ、痛みを調べます。肩関節不安定性のある患者とは異なり、関節内インピンジメントを患っている人は、前方への不安定感を示しません。むしろ、肩の後方上方部付近のかなり特定の部位に圧痛があります(下記 - 上の写真)。上腕骨骨頭を後方に少しシフトさせ、検者が肩をあるべき位置に戻すと、後方上方部の痛みは消失します(下記 - 下の写真)。 3 肩関節インピンジメントを治療するための3つの要点−どのように治療を変えるのか? 上記の情報には3つの主要な要点があり、呈しているインピンジメントのタイプによって、治療やトレーニングプログラムを変更することができます。 肩峰下インピンジメント – 肩峰インピンジメントと烏口肩峰インピンジメントを区別する:これら2つのタイプのインピンジメントでは本質的に治療は同じとなりますが、烏口肩峰アーチインピンジメントの場合、水平内転のストレッチングに注意する必要があります。残念なことですが、これらの患者の場合、後方軟部組織をストレッチする必要はあるものの、インピンジメントしている部位を挟むようなことはできません。はさむことはインピンジメントになります。また、矢状面での挙上、または、水平内転エクササイズは避けたほうがよいでしょう。 一次的 対 二次的インピンジメント – これは重要な点で、若い治療家やトレーナーにとってフラストレーションの元になります。二次的インピンジメントを扱う場合、患者の症状に対して、試したい治療法はすべて行うことはできても、傷害の原因に焦点を当てなければ、彼らはまた戻ってくるでしょう。ですから、患者や、その姿勢、筋肉のアンバランス、動きの機能不全などすべてを大きな視点で見ていく必要があります。このような見方で、患者を見ていけば、より良い結果が得られるでしょう。 関節内インピンジメント – 関節内インピンジメントについて認識すべきことの1つは、それがかなり二次的な問題であるということです。回旋腱板の弱化、疲労、動的安定性能力の低下などが原因で起こることもありますし、腕を振りかぶったポジションにあるとき、過度な緩さを呈する選手もいます。回旋腱板を治療し、その動的安定性を向上させることで、インピンジメントの症状が改善します。
回旋腱板
ローテーターカフ/回旋腱板の傷害を人生の中のどこかで経験する人の数はかなりの数にのぼります。治療対象/指導対象の個人が、回旋腱板障害のどの段階にあるのかを見極めることの重要性に関して、マイク・レイノルドのセミナーからの抜粋です。
ローテーターカフ(回旋筋腱板)エクササイズの4つの神話
ローテーターカフエクササイズは、リハビリテーション、および矯正エクササイズにおいて、とてもよく行われるエクササイズの一つです。肩関節の過剰な可動性や、肩にかけている大変な負担を考えると、成人人口の20%が回旋筋腱板に、なんらかの損傷を抱えていることも不思議ではありません!さらに、年齢を重ね、肩にかかるストレスが蓄積されていくにつれ、回旋筋腱板損傷の疾患率は上がっていきます。 以前に書いた、肩甲帯エクササイズの3つの神話という記事がとても人気だったので、次はローテーターカフエクササイズの出番だろうと考えました。 以下は、私の気にいっているローテーターカフエクササイズの神話です。おそらく神話は4つ以上ありますが、まずはこれがスタートです。 ローテーターカフエクササイズは機能的ではない 最近大流行しているのが、「機能的な」トレーニングを重視することで、当然ながら私も機能的なトレーニングを考えています。しかし、多くの人々が、個別のローテーターカフエクササイズは機能的ではなく、価値がないとさえ言っているのを耳にします!あぁ、反論せずにいられるでしょうか。 これは最近、講演でも言っていることですが、私たちの「機能的」トレーニングへの変遷は、一方向に傾きすぎているのかもしれません。こういった流行は周期的に起こります。あなたがこの業界にはいって10年以上経っているのなら、私が言っている意味がわかると思います。私たちは今、まさに「機能的動作」サイクルの只中にいるのです。 それ自体は素晴らしいことだと思います。私たちの職業は、人間の身体がどのように機能しているかについての理解において、目を見張るような進歩を遂げました。機能的動作パターンの概念を理解し、応用することで、人々がよりよく動き、よりよいパフォーマンスを発揮する手助けができます。 しかし、基本を忘れることはできません。私はよく、前十字靭帯(ACL)のリハビリにおいて、従来の強化プログラムと神経筋コントロールを重視したプログラムを比較した研究に意見します。これらの研究はいつも、両方のグループが良い結果を示し、機能が改善したことが示される傾向にあります。いつも言うのですが、なぜ一つを選ぶのでしょう?どちらも個別で効くのなら、二つを組み合わせたら何ができるか想像してみてください! ローテーターカフエクササイズは意味がないというのは、行き過ぎた発言です。私も、ローテーターカフの主要な役割は、安定性を供給することにあるのは理解しており、これまでのキャリアにおいても何度もそう指導してきました。しかし、弱い筋肉は安定性を供給することはできないと考えずにはいられません。筋力が弱く不均衡がある状態で、いったいどうやって効率的に機能的動作パターンを実現することができるのでしょうか? 筋力が不十分なときは、ローテータ-カフエクササイズをしっかりやるべきです。強くなって、それから機能的になる、そうしなければ、ただ不利な代償パターンを作っているだけになります。 他のエクササイズを行っている間に、ローテーターカフにも十分な負荷が与えられている 確かに、ローテーターカフは、全ての上半身の強化エクササイズの際に働いていますが、様々な動きの中で、ローテーターカフがどのように機能しているかを理解することが大切です。ローテーターカフは、動きの最中に、肩関節の安定性を維持するために活動的になります。ここでローテーターカフが活動しているのは事実ですが、強化が得られるレベルの活動ではありません。 とても強く、パワフルな重量上げの選手やアスリートでもローテーターカフがとても弱いことがあります。それはやがて必ず仇となります。 重いウエイトを使うと、ローテーターカフの活動が止まり、より大きな筋肉が活動する これは私のお気に入りです。みなさんも一度は聞いたことがあると思います。魔法の数字は5ですよね?5 lb(2.3kg)以上のウエイトを持ち上げると、ローテーターカフは、魔法にかかったように活動をやめてしまい、三角筋などの大きな筋肉が働く。 これについて、基本に戻って考えてみたことはありますか? この考えがどこから来たのか、わかる気がします。たとえば、あなたはローテーターカフがとても弱く、横向きに寝た状態で肩の外旋エクササイズをしているとします。3 lb(1.4kg)なら楽にエクササイズを行うことができます。もし私があなたに15 lb(7kg)の重りを渡したら、あなたのフォームはひどく崩れ、三角筋の後部や僧帽筋を使って腕を後ろに振っているだけのような状態になるでしょう。これは、もちろん良くなく、弱い筋肉に負荷を与えすぎると、必ず代償動作が起こります。これは身体のすべての筋肉に当てはまります。 しかし、だからと言って、強くなるにつれてゆっくり重さを上げていっても5 lb以上の重りは使えないということではありません。なぜ5 lb(2.4kg)でやめるのでしょう?5 lbでは十分な負荷が得られないとしたら?十分な負荷が得られないのに続ける意味は?スクワットをする際、ある一定の重量で負荷を増やすのをやめて、その重量で永遠にスクワットを行うでしょうか? 私は日常的に、5 lb以上のウエイト、時には10 lb(4.8kg)以上のウエイトを使って、患者にローテーターカフエクササイズを指導しています。もし代償動作を生じ、大きな筋群を使ってしまっているのなら、その重量に対して十分な筋力がないだけかもしれません。 全てのローテーターカフエクササイズにおいて同じウエイトを使う これを聞くと笑ってしまって、申し訳なく思っています!クライアントに肩のプログラムを処方するときに、なぜすべてのエクササイズで同じウエイトを使うよう指示するのでしょう?身体のその他の部位においても同じことを指示しますか?今日は、同じ重りでスクワットとランジとデッドリフトをします・・・おかしくありませんか? それぞれのエクササイズにおいて、それぞれの筋肉にとってチャレンジとなる負荷を与える。あるエクササイズにおいて、負荷が軽すぎたら、負荷を上げる。すべてのエクササイズで同じ重量のウエイトを使うような習慣に陥ってはいけません、それでは、それぞれの筋群における十分な強化ができません。忘れないでください、目標は強くなることです。
すべてのプログラムで必要な2つのエクササイズ パート1/2
そうです。すべてのプログラムにおいて、これら2つのエクササイズが必要だと言っているのです。まぁいいでしょう、すべてのプログラムではないかもしれませんが、この2つの動き:肩の外旋と股関節外旋は、ほぼすべての人のプログラムに含まれるべき、とても重要な動きであると考えます。 なぜこれら2つの動きがとても重要で、すべてのプログラムに含まれるべきであると考えているのでしょうか? ここには2つの主要な理由があります。 私たちの動きの多くは矢状面で起こっています。私たちの真ん前で起こっている動きの多くは、前額面と横断面での動きの弱化に繋がっていきます。残念なことに、矢上面での活動中、それ以外の面上における動きの弱化が障害に繋がることがあります。矢上面で動いている際にも、基本的には、前額面、横断面における安定性が必要になります。股関節の強さが、膝蓋大腿痛やその他の障害にどのように影響を与えるかに関しては、充分に話してきました。 私は筋肉群に働きかけることによってそれらが“活性される”、または、より大きな多関節の動きを行う前に、“それらの筋肉を使えるようにしておく”べきであると考えます。これに関しての具体的な例として、上半身運動の前に肩外旋を、下半身運動の前に股関節の外旋運動を行うでしょう。 残念なことに、これらのエクササイズは見た目があまりカッコ良いものではなく、ビーチ用の見せる筋肉をつけることはできないでしょうし、退屈かもしれません。しかし、健康体でいること、障害が起こる可能性を最小限にすることは、常に良いことなのです。 肩外旋・股関節外旋を行うには、とても多くの方法がありますが、スタートするにあたって私が勧めるのは、肩W外旋エクササイズと股関節クラムシェルエクササイズという下記の2つのエクササイズです。 肩W外旋エクササイズ 過去数年間に私の講演を聞いたことがあればご存知でしょうが、肩“W”エクササイズが私の最も好きな新しいエクササイズであると言い続けています。時間が経ち、もはや新しいわけではないのですが、未だにこのエクササイズは私のお気に入りです。 このエクササイズは、肩の外旋に肩甲骨の後退、後傾の動きが加わった、とても素晴らしい動きの組み合わせであり、後方回旋腱板(棘下筋、小円筋)と下部僧帽筋の活動を促すため、多くの人々にとって有用です。 それに加えて、両側で行うことで、姿勢や肩の安定性に効果があり、同時に両腕に働きかけることができます。つまり、より効率的なのです。 私が肩Wエクササイズを好きな理由 過去の記事でお話してきたように、以前からずっと肩Wエクササイズが好きでよく使っています。私の“Optimal Shoulder Performance”(最適な肩のパフォーマンス)というDVDをご覧になれば、私が言っていることがお分かりになると思います。このエクササイズは、肩の外旋に肩甲骨の後退、後傾の動きが加わった、とても素晴らしい動きの組み合わせであり、後方回旋腱板(棘下筋、小円筋)と下部僧帽筋の活動を促すため、多くの人々にとって有用です。 McCabeらの研究によると(NAJSPT2007)、肩Wエクササイズでは、後方回旋腱板と下部僧帽筋において中等度の筋活動があることが認められています。しかし、私がより注目したことは、このエクササイズでは上部僧帽筋の活動が最小限しか見られず、下部僧帽筋と上部僧帽筋の筋活動比率がもっとも大きかったことです。上部僧帽筋がどのように肩の機能に影響を与え、上部と下部僧帽筋のアンバランスがどのように肩のインピンジメントを起こしていくのかについて説明してきました。ですから、下部僧帽筋と後方回旋腱板に重点をおくエクササイズを私がどれだけ気にいっているかおわかりになるでしょう。 肩Wエクササイズビデオデモンストレーション 下の肩Wエクササイズのビデオデモンストレーションでは、だいたい肩幅程度の長さでセラバンドを握り、親指を上に向けているのが分かると思います。多くの人が、親指を斜め後ろに向けたポジションを奨励しているようですが、前腕を回外することでエクササイズが変化するとは思わないので、前腕はニュートラルに保持し、肩と肩甲骨の動きのみに集中させます。 私が奨励するもう1つのことは、“W”エクササイズの名前の起源にもなりますが、肘の角度を90度に保持してほしいということで、こうすれば外旋の最終域に達したとき“W”の形になります。広背筋の厚みのため、腕が身体よりほんの少し外転することでこの形になります。前腕を地面と平行になるように保持するようには勧めません。
すべてのプログラムで必要な2つのエクササイズ パート2/2
股関節クラムシェル クラムシェルはすぐにできる簡易な方法で、股関節外旋筋群を強化することができます。これは、ゴムバンド、あるいは、同様の抵抗があるバンドを使って行える簡単な方法ですが、とても有効です。さらに、両膝の周りに抵抗性のあるバンドを装着するため、同時に両側をトレーニングできます。下側の脚では、このエクササイズを行うために、股関節外旋筋群を使い安定させなければなりません。 もちろん、これはすべてテクニック次第です。下で御覧の通り、下側の腕を使って頭をニュートラル位に保ち、反対の腕を股関節の上に置きます。これによって、腰部で代償しないようサポートができます。 私が股関節外旋クラムシェルエクササイズを好きな理由 繰り返しになりますが、私が毎日使っている股関節外旋のエクササイズは数多くありますが、この簡便さと有効性の理由から、私はクラムシェルエクササイズを強調しています。 中殿筋強化の重要性と、前額面上の強度不足によって起こされるいくつかの機能不全について、過去に話してきました。私たちは矢状面で多く動く社会に生きていますし、このことが、機能不全の動きのパターンの多くに多大な影響を与えています。ですから、股関節を外旋させる筋群の強化は重要になります。もし今まで、このことに重点を置いてきていないのであれば、一度上記のリンクの記事をいくつかを読んでみてください。 股関節屈曲位における股関節クラムシェルエクササイズ 筋電図による研究によると、特にテクニックが優れている場合は、クラムシェルを行うとき、中殿筋と大臀筋の筋活動量が良いことが示されています。下のビデオを注意してみてください。私は腸骨稜に沿って手を置くことを強調しています。こうすることで、身体が回旋せず、腰部と共同して働かないように注意を促すことができます。この動きは、このエクササイズを行っている際に、最も良く見られる間違った動きで、特に、臀筋群がかなり弱い人によく見られます。また、このように骨盤に手を置くことで、親指を臀筋群の上に置き、その活動を感じ、収縮を促すことができます。これは、正しいテクニックで行うのに、本当に役立ちます。
ACL再建術後の早期リハビリテーション 6つの重要なポイント パート2/2
膝屈曲の動きを徐々に改善 膝の屈曲制限は伸展制限より一般的でない傾向ではありますが、起こり得ることであり、屈曲への取り組みも見過ごさないようにしたいものです。屈曲と伸展の間にシーソーのような関係があることが多くあります。一方の方向に取り組めば取り組むほど、もう一方の方向がより硬くなる傾向にあるのです。これは、慎重に、しかし漸進的に、関節可動域の向上に頻繁に取り組むことにより解決されます。 また、膝の屈曲を回復させるために、ストレッチと同時に浅いスクワットや、ゆくゆくはランジなどの機能的動作のトレーニングを行うようにします。可動域のエクササイズの漸進性を自分自身で制御できれば、知覚的脅威は減少し、動作は回復しやすくなります。 膝の約90度までの屈曲は、1週間ほどでゆっくり回復します。それから徐々に改善し、4~6週間かけて完全に屈曲できるようになります。 膝蓋骨の可動性を維持 可動域減少の原因のひとつに、膝蓋骨の可動性が失われていることがあります。膝の屈曲と伸展には、膝蓋骨の充分な可動性を必要とします。膝に痛みと腫れがあり、動かしづらくなると、瘢痕組織が形成され、膝蓋骨の動きを制限します。これは特に、膝蓋腱を移植腱として用いたACL再建術でよく起こります。膝蓋骨の可動性に注意を払わなければ、可動域減少の可能性は著しく高くなるでしょう。 膝周囲の軟部組織と膝蓋骨のモビリゼーションは、術後すぐに実施します。また、患者には、これらを自分自身で出来るように指導し、家でも行うよう促しています。 大腿四頭筋の随意制御の回復 前述の通り、術後の疼痛や炎症、腫脹によって膝周囲の筋調整に反射性抑制が起こります。これらの要因への対処に加えて、大腿四頭筋の随意制御の回復のために実施するテクニックがあります。 デラウェア大学のリン・スナイダー・マクラー氏は、ACL手術後に大腿四頭筋に神経筋電気刺激(NMES)を使用することについて多くの論文を発表しています。NMESを使用しないで単にエクササイズした場合に比べ、NMESを使用することで大腿四頭筋の筋力と機能のより早い回復を促します。 当然、NMESはACLリハビリテーションの初期段階の重要な構成要素になります。最も早い段階で大腿四頭筋セット、ストレートレッグレイズ、ニーエクステンションなどの大腿四頭筋のエクササイズにNMESを併せて実施するでしょう。 大腿四頭筋を収縮させるこれらのトレーニングは、膝の伸展可動域の回復にも役立つという付加効果もあります。 独立歩行の回復 さて、これまでに疼痛と腫脹に取り組み、膝の動きや膝蓋骨の可動性は回復し始め、大腿四頭筋を活性化できるようになったところで、これらすべてを統合し、制限や跛行することなく歩行できるようにします。前述した、焦点を置くべき分野でのひとつでも対処されていなければ、独立歩行はたいてい困難になるか、少なくとも正常には機能しません。 他の組織が損傷していたり保護する必要がある場合を除いて、私は通常、ほぼ1週間で耐えられる範囲で体重をかけられるようにします。2週目までは松葉杖を使用するかもしれませんが、松葉杖に頼ってしまうのではなく、あくまでも補助的に利用し歩けるようにします。 体重をかけるエクササイズ、たとえば体重を移動させるウェイトシフトや膝をロックする練習などが、初期段階では役に立つことが分かりました。また、体重移動と片脚立ちへの移行パターンを定着させるために、コーンを用いたウォーキングドリルもよく利用します。さらに、コーンを跨ぐ後ろ向き歩行も、足部の上で身体が後方に揺れ膝の伸展に役立つことが分かりました。 ACL再建術後の早期リハビリテーションの6つのポイントについて述べてきました。患者とのセッションの際、これらひとつひとつに注意を払うようにしています。この6つのポイントは非常に重要ですから、全てにしっかり取り組むためにもリハビリテーション過程の初期には、むしろセッションを増やし、その後、(保険の限度回数により)ペースを緩めていく方が良いでしょう。
ACL再建術後の早期リハビリテーション 6つの重要なポイント パート1/2
ACL(前十字靭帯)再建術後のリハビリテーションは、この25年間で大きく進歩してきました。膝をギプスで固定することから、術後すぐに膝を動かし、さらに短時間であれば体重をかけるといった方向に進化しています。リハビリテーションの概念に対する理解が進歩するにしたがい、ACL再建術後の効果を最大限にするために不可欠である、機能的なエクササイズや漸進的リハビリテーションに、私たちの焦点はシフトしてきています。 最近では、術後リハビリテーションに100%集中するプロ選手達をみるようになってきました。エイドリアン・ピーターソンがACL断裂を負い、再建術のあと数ヶ月足らずでナショナル・フットボール・リーグで勝利をおさめ、MVPに選ばれたということから、彼は、現在ACL再建術後のスポーツへの復帰の象徴となりつつあります。もちろん、彼の症例は特別ではありますが、術後リハビリテーションは、手術後の回復度合いを大きく左右する要因です。 アドバンスエクササイズやスポーツへの復帰は誰もが望んでいることではありますが、合併症を避け、やがて難易度を上げたアドバンスドリルを可能にするためにも、早い段階でのリハビリテーションが確実かつ適切に実施されることは何よりも重要でしょう。ACLの早期リハビリテーションが不十分であれば、リハビリテーション期間は長期化してしまいます。 これに関連して、ACL再建術後の早期リハビリテーションの6つのポイントについて議論したいと思います。これらの基礎をマスターすれば、アドバンス期は容易になります。 疼痛と炎症の緩和 まず、ACLリハビリテーションのひとつめのポイントは、手術にともなう痛みと炎症を抑えるという単純なものです。これは考えるまでもないことですが、なぜ重要なのかを復習する価値はあります。実際、痛みや腫れを処置しなければ、下記に挙げるACLリハビリテーションの6つの重要なポイントを遂行するのは難しくなります。いくつかの重要な考察すべき事柄をご紹介しましょう: 疼痛と腫脹は、基本的に膝周りの筋群、特に大腿四頭筋をシャットダウンしてしまうことが、数多くの研究で示されています。腫れによる液体がわずかに関節に存在しても、大腿四頭筋の収縮能力を低下させることが分かっています。 大腿四頭筋なしでは、機能するのは困難で、膝が曲がり固まった状態で歩くようになります。 疼痛と腫脹は、関節可動域の改善を妨げてしまうのです。 このように、概念的には単純だとしても、痛みと炎症を軽減することは、術後すぐに焦点を当てるべき分野なのです。圧迫やアイシング、間欠性圧迫、挙上、アンクルパンプ、電気刺激、活動をしすぎないようにすることなど、すべてが役に立ちます。 術後の患者への最も重要なアドバイスは、アイシングを充分行うことです。 完全な膝伸展の動きを回復させる 膝の伸展の可動域を完全に回復させることは、おそらくACL再建術後に行うリハビリテーションの最優先事項になるでしょう。しかし、ここで私が第2項目目に挙げることになった理由は、疼痛と腫脹への対処が、本稿で議論するすべてに密接に関係しているからです。しかし実際のところ、やはり膝の伸展を可能な限り早く回復させるというとことに、私は常に重点を置いています。ACL手術後の比較的一般的な合併症のひとつは、動きの減少ですが、屈曲よりも伸展に制限があることの方が大きな問題が生じます。 疼痛や腫脹があると、膝が軽度に屈曲している方が楽です。ただし、この肢位をあまり長く保っていると、瘢痕組織の形成や関節線維化のリスクが生じます。いったん硬くなってしまったら、動きを回復させることが難しくなるため、術後直ちに膝の伸展を確保することは、非常に大切です。硬くさせてしまってから動きを改善するために激しく努力するより、私は、初期の段階で膝の伸展を回復させ、それからゆっくり動きを回復させることに集中します。 膝の完全な伸展が多少なりとも損なわれると、膝は適切に機能できません。さらに、可動域の減少は、ACLの術後に起こりうる関節炎への進行に関わる重大な要因のひとつであることが研究で示されています。 幸いなことに、適切なリハビリテーションによって、可動域の減少は回避できます。 可動域と軟部組織モビリゼーション、徒手治療に加えて、家での可動域のトレーニングとストレッチエクササイズを十分に、基本的に1時間毎に実施するように必ず指導します。ハムストリングのストレッチとタオルを利用したふくらはぎのストレッチを紹介しています。これは、ハムストリングやふくらはぎの柔軟性を高めることが本来の目的ではなく、これによって同時に膝の伸展をトレーニングするためです。そのため、焦点は膝の伸展に置かれます。 可動域の減少が問題化した場合、私は躊躇なく低負荷で長めのストレッチを指導し始めます。術後1週間で完全な膝の伸展を回復することが目標です。生体力学の研究では、膝の伸展時にかかるACLの移植組織への負荷は、一般的な機能的活動から加わる力よりも低いことが示されています。よって、この動きを避ける必要はありません。
クライアントが嫌う6つのこと パート2/2
クライアントが欲していることの代わりにあなたが欲していることを行わせる 主役はあなたではありません。シンプルな概念ですが、大切な出発点です。 たとえば、クライアントが来て、「キネシオテープをするとかなり良く感じる」と言ってきたとしましょう。それに対して、あなたが、「肩の痛みは脳からの信号から来ています。キネシオテープは、その信号に対して何もできませんし、特に効果はないのです」と返したら、クライアントはどんな反応をするでしょう。うーん、おそらく残念なことになりますね。 あなたは、キネシオテープは「何もしない」と言って、クライアントは、「とても効く」と言う。これでは連携ではなく、対立のように聞こえます。 正直に言って、私達は、自分で考えているほど、人間の体について知らないのです。私は、その施術に害や、長期的影響、効果的ではないと裏付ける確かな研究が出ていない限りは、キネシオテープのような施術をすることにも抵抗はありません。もちろん、その施術が効果的でないと完璧に示す科学的根拠があれば、話は別です。 誤解しないでください。私は、クライアントに対して私が行いたい治療も行いますが、キネシオテープも施すかもしれません。おそらく、そうすることで私の施術はさらに効果的になるかもしれないのです。 フィットネスの世界における、他の良い例は、動きへのフォーカスと矯正エクササイズです。これらは大切なことですが、ポイントを見失わないようにしましょう。クライアントが脂肪を減らしたいという目的であなたのところに来たのに、あなたはクライアントの動きが悪いことを説明し、FMSのストレートレッグレイズにおける非対称のポイント1を矯正したいと言っているとしたら、それではクライアントにあなたのやりたいことを押し付けて、彼らの要求を見失ってしまっています。クライアントは、ストレートレッグレイズがどう見えるかなんて全く気にしていないのですから。 繰り返しますが、動きのパターンの改善には取り組むべきです。でもそれはプログラムの主要点ではないのです。まずは、クライアントの目標に合わせなければなりません。もちろんそのプログラムに、私たちの目標もこっそり組み込みますが、注意して行ってください。 クライアントに理解できないことを話す おわかりのように、コミュニケーションや人間力は、私たちの職業にとても重要です。私がよく問題だと感じているのが、専門家が話をクライアントのレベルに合わせていないことです。 クライアントのエネルギーレベルに合わせる努力をするべきなのと同様に、私は、話のレベルをクライアントのレベルに合わせるようにしています。 学生や若い治療家は、いくつかの理由でここに問題があります。 自分が行っていることを教授に正当化するために、科学的に話すことに慣れている。 とっさに使える例え話のデータベースが蓄積できていない。 残念なことに、エゴイスティックで自分がどれだけ知っているかを自慢しようとしてしまう。 相手に理解できないことを話し、混乱させることで、相手を感心させることはできません。科学的なことを詳細に聞きたい人もいますが、そういったことは全く聞きたくない人もいます。どう話すかは、クライアントの反応をみて、調節する必要があります。それぞれのクライアントと良い関係を築けるようにポイントやメッセージを伝える能力は、人々を感心させることができます。 私はこれを実現するために、会話がどう進んでいるかに応じて、異なる方法を用意していますが、定番の方法は下記の通りです。 評価の中で、写真や動画を使う。 複雑なポイントをクライアントがわかる例で比較する。車の例えは有効です!たとえば、「タイヤが整列していない状態で運転していれば、タイヤはやがて不均等に擦り減っていきます。」というように。 ホワイトボードを使って考えを表現する。これは必ずしも絵を描くということではありません。文字を書いたり、リストを作成するのにも使います。視覚からより多くの情報を得る人もいます。終わったときに、携帯電話を取り出して、ホワイトボードを写真に取る人がいたら、彼は視覚から学ぶ人だと言えるでしょう。 科学的根拠を示すことは大事ですが、そこで終わらずに、クライアントが理解できる例で理解を補足しましょう。 クライアントの他のヘルスケアの専門家や過去の経験を批判する 私たちの業界において、このような批判が、いかに頻繁に起こっているのかに驚かされます。多くのクライアントから、これまでに施術を受けた専門家が、過去に関わった他の専門家の人達全ての批判していたということを聞きます。パーソナルトレーナーが理学療法士を批判する、理学療法士がカイロプラクターを批判する、というのがその一例です。クライアントは長年をかけてそういった専門家との信頼や尊敬を構築してきていて、あなたとはまだその蓄積がないということを忘れないでください。 批判することは、批判された人が自分の過去の選択に対して気分を害するだけでなく、あなたが誰かをけなすことで自分を良く見せようとしているだけなのが明らかです。 私には、多くの「名声のある」人々が、こういった過ちをおかすのを見てきた中から作り上げた経験則があります。他の人を悪く見せることで自分を良く見せてはいけません。短期的には有効にはたらくかもしれませんが、後で必ず痛い目をみます。 何が失敗したかをわかった上で対処する能力があれば、天才になれます。何かを振り返るときには、どんなことであれ、より鮮明にできます。クライアントがかかっている、あるいは過去にかかった他の専門家を敬いましょう、あなたがいつも正しいわけではないのです。 実際のところ、ここにもう12個くらいリストを付け足すこともできますが、ここで挙げた6つは良い出発点になります。クライアントが嫌うこれら6つのことを避け、クライアントとのいい関係を築き、声を聞き、時間をかけ、クライアントの目標達成における過程の中で、その効果を最大限に発揮できるようにしてください。