マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
肩関節包後部の硬さを評価する
肩関節包後部の硬さを評価するための、前後の遊びをチェックする評価方法の実践において、正しく読み取れている自信はありますか?評価の実行時に間違った方向性で行ってしまって偽りの結果を得ることにならないように、正しい評価方法を再確認することは大切です。
検査の際にどのSLAPスペシャルテストを実行するかを選択する
関節唇上部、またはSLAP損傷には非常に多くの異なるスペシャルテストがありますが、あなたはどのテストを実行するかをどのように選択しますか? 私には、実行するテストを判断するための少数の異なる方法がありますが、まずは、これらのテスト全てに対して、エビデンスが何と言っているかを見てみましょう。 SLAP損傷のためのスペシャルテストは、近年これらのテストの精度に関して相反する報告が複数発表されているため、かなりの精査を受けるようになっています。これらのテストに関する研究レポートを見ると、それぞれのテストの元の引用文献は、非常に高い感度、特異度、陰性および陽性の的中度を持っているようであることを発見するでしょう。良い例として、アクティブ・コンプレッション・テストがあります。 O'Brienによる元の論文では、感度100%、特異度98.5%、陽性的中率94%、陰性的中率100%を示していました。これはかなり高い数字で、実際にMRIよりも優れていル高い数値なのです!これ以降、このような値を示した著者は他にはいません。 これは、アクティブ・コンプレッション・テストのみではなく、詳述されているほぼ全てのSLAPテストでも同様です。 DessaurとMagrayは17本の査読付き原稿をレビューし、SLAP損傷に対する精度の高いテストを報告している論文の大部分は、他の研究者に支持されていない質の低い結果であることを指摘しました。JonesとGalluchもこれに同意し、独立したSLAPテストに続くテストは、元々発表されている研究と比較してはるかに低いパフォーマンスが示されていることを指摘しました。これに同意する研究レビューやメタアナリシス研究は他にも多数あります。 AJSMのOhらの興味深い研究では、一緒に使用するテストの組み合わせが最良の結果につながると示唆しています。彼らは、感度が高いことが示されている複数のテストと特異度が高いことが示されている複数のテストを組み合わせた場合、これらの感度と特異度の値は70~95%に達したと述べています。これらのテストはどれも完璧ではないため、これは理にかなっていると思います。いくつかのテストで基盤をカバーしていると考えられるのです。 これには複数の理由があるのではないかと感じています。 異なる患者集団は、異なる損傷のメカニズムを示します。ほとんどの研究では、データを解析するのに十分な統計力を得るために、SLAP損傷のいくつかのバリエーションをグループ化しています。 私は、呈示されているSLAP損傷のバリエーションによって、異なるテストが、異なる特異度と異なる感度を示すと考えています。 例えば、タイプIIまたはタイプIVの上後方剥離型SLAP損傷を有するオーバーヘッドアスリートは、上腕二頭筋負荷テストII、クランク(clunk)、クランク(crank)、疼痛誘発テスト、および回内負荷テストのような、損傷を悪化させるポジションおよびメカニズムを模倣するテスト中に、より症状が強く露呈するでしょう;一方で、外傷性のタイプの損傷によるタイプIまたはタイプIIIのSLAP損傷を有する患者は、アクティブ・コンプレッション、コンプレッション・ローテーション、前方スライドテストのような、関節唇複合体を圧迫するテストに、より症状が強く露呈するでしょう。 SLAP損傷の種類に応じたテストの診断特性については、さらなる調査が求められます。 検査の際にどのSLAPテストを実行するかを選択する ありきたりに聞こえるかもしれませんが、何よりもまず第一に、あなたの主観的な検査によって実行する臨床テストが導き出されるべきです。もしあなたの患者が建設作業員で、腕を外側に伸ばした状態で転倒したならば、剥離型損傷を模倣するテストを行う必要はないでしょう。また逆に、患者がデスクワークを行っている、楽しみでテニスを行う人で、テニスのサーブをする時のみ痛みを感じるのであれば、すぐにピールバック(剥離)テストを行うことができるでしょう。 シンプルにするという目的で、SLAP損傷を3つのカテゴリーに分けましょう(詳細については、SLAP損傷の分類に関する私の記事をお読みください): 剥離型損傷を呈するオーバーヘッドアスリート 外側に伸ばした腕、または肩の側面から転倒した人の圧迫損傷。これは、半月板損傷と同様に、関節唇を圧縮、剪断します。 突発的な上腕二頭筋の遠心性収縮による牽引損傷。これは最も一般的でなく、私はこのメカニズムに軽い疑念を持ってさえいます。 傷害のメカニズムによってSLAPテストを選択する 私が、傷害のメカニズムの種類を基にして行っているテストを紹介します。これは、テストを選択する際に、研究結果だけに基づいて選択するよりも、遥かに参考になると感じています。 これらの研究報告書の正確な患者集団や損傷のメカニズムはわからないのですから、これだけで判断できないことを忘れないでください!しかし、診察室であなたの目の前に座っている患者のために、この情報があるのです。 各テストの詳細な説明については、私の記事であるSLAP損傷のスペシャルテストを参照してください。 剥離型損傷(オーバーヘッドアスリート) 回内負荷 抵抗に対する回外・外旋 上腕二頭筋負荷 圧迫傷害 アクティブ・コンプレッション コンプレッション・ローテーション クランク(Clunk) 牽引傷害 ダイナミック・スピード アクティブ・コンプレッション SLAP損傷の種類によってテストを選択する SLAP損傷の種類、タイプI、タイプII、タイプIII、タイプIVかを判断したい場合には、これはより難しいことですが、下記のテーブルを参考にして予測をしてみることができます。これは間違いなく推測の要素が強いですが、より多くの情報を得ようとすることで、より良い結果を得られるでしょう。 ここで紹介しているテストそれぞれが、異なる形で症状を再現しようとしていることを覚えておいて、異なる種類のSLAP損傷の発生要因と特定のスペシャルテストとの関連付けを試みるべきです。 これを鵜呑みにしないで使用してください。これは役に立つかもしれませんが、この分類がどのくらいうまく機能するかは、研究によって実証されてはいません(これは私が自分自身と対戦するためのゲームのようなものです!)。 Type I SLAP: コンプレッション・ローテーション Type II SLAP: 回内負荷 抵抗に対する回外・外旋 上腕二頭筋負荷 Type III and IV SLAP: クランク(Clunk)とクランク(Crank) コンプレッション・ローテーション まとめると、無数にあるSLAPテストの研究結果はかなり多種多様であり、患者にどのテストを行うべきかを決定するために単独で頼るべきものではありません。これに対し、私は以下のことを提案します: 患者の怪我のメカニズムを使って、どのテストのグループを行うかを判断してください。主観的検査が重要です! テスト結果の精度を向上するために、テストを1つだけ行うのではなく、テストのグループを使って、そのグループに対して感度と特異度がきちんと示されている複数のテスト群を実行してください。 1つのテストを当てにしてはいけません。特定の患者集団には有効かもしれませんが、別の患者集団には有効ではないかもしれません。 苛立たないでください。SLAP損傷は、臨床検査で発見することが難しいものです。疑わしい場合は、医師にMRI検査を依頼しましょう。
背中に手を回す動きは実際に肩関節内旋を測定するのか?
私が、内旋可動域を出すために肩を背中に回してストレッチするのをあまり好きではないというのは、周知の事実です。過去にこのことについて書いたこともありますし、私の最も嫌いなエクササイズ5選にも入れました。この意見に対して、肯定的にも否定的にも、多くのフィードバックをいただきました。 多くの人が、これがアグレッシブなストレッチであり、ローテーターカフを極めて不利なポジションにさせるものだと私に同意する一方で、それは彼らの患者にとってやはり機能的なポジションであると主張する人も多くいました。 これが重要な機能的ポジションであることには完全に同意しますが、だからと言って、背中に手を回す動きが肩関節内旋を正確に反映しているとか、あるいはこのポジションでのストレッチが何の欠点もなく効果的であるというわけではありません。 どうやら、過去にこのことについて疑問を持ったのは私だけではないようです。私は、背中に手を回すことが肩関節内旋を正確に測定するのかを評価する、いくつかの調査研究に出会いました。 調査は何と言っている? Wakabayashiら(JSES 2006)は、電磁気式トラッキング法を用いて、背中に手を回しているときの肩関節内旋、伸展、内転、及び肘関節屈曲の大きさを評価しました。 著者らは、肩関節内旋の大部分は、患者の手が仙骨に触れる前に起こっていると報告しています。また、仙骨に触れるには、肩関節伸展及び内転が著しく増加します。手が仙骨を通過した後の動作の大部分は、肘関節の屈曲によるものです。手が第12胸椎を通過した後は、内旋の顕著な増加はありません。 つまり、仙骨に到達することがこの動作の鍵であり、肩関節内旋、内転、及び伸展は、どれも仙骨に到達する能力を制限する可能性があるようです。 Mallonら(JSES 1996)は、健常者を対象に、背中に手を回す際に貢献する動作をレントゲン撮影を用いて評価しました。著者らは、動作の35%は、実際には肩関節ではなく肩甲胸郭関節で起こっていると結論付けました。彼らはまた、肘関節屈曲がこの動作の重要な要素であることを認め、背中に手を回す姿勢での肩関節内旋測定は無効であると考えました。 Ginnら(JSES 2006)による別な研究では、肩に痛みを抱える137名の被験者グループにおいて、肩関節内旋の減少を評価する際の、背中に手を回す動作の妥当性を評価しました。著者らは、背中に手を回す動作と、標準の角度測定法による肩関節外転45度または90度での肩関節内旋を測定しました。その結果、両動作の間には低から中程度の相関しか見られなかったのですが、より重要だったのは、背中に手を回す能力が能動的肩関節内旋の減少とは相関がなかったということでした。 臨床的意義 それでは、このすべては何を意味するのでしょうか?私の考えはこうです: 背中に手を回すことは、肩関節内旋の有効な測定方法ではない。その動作は、肩甲骨の傾き、肩関節内旋、内転、伸展、及び肘関節屈曲の組み合わせによって生み出されます。これらの要素のどの組み合わせも、この動作に影響を与えるでしょう。 この動作を使用して肩関節内旋運動を定量化する、肩のアウトカムスケールを使う際には注意する。残念ながら、Constant (Shoulder) Scoreのスケールや、American Shoulder Elbow Surgeons (ASES)スケールのように、この動作を使用しているものがあります。 肩関節内旋を計測したいなら、実際に肩関節内旋を測定する。ほこりをかぶった引き出しから、古い角度計(ゴニオメーター)を持ち出しましょう、実は結構便利ですよ! 背中に手を回す動作に基づいて治療介入をしない。たとえば、その人がただ背中に手を回す動作ができないからと言って、関節包後部のモビライゼーションを行ってはいけません。仮定せずに、評価しましょう! 背中に手を回す動作を改善する方法 これらすべてに基づいて、背中に手を回す動作に制限のある人がいたら、何をすべきでしょうか? これが機能的なポジションであることは、私も理解していますし、同意します。 これをストレッチとして用いることはやはり避けるべきだと思います。私は良い結果を得られたことがありませんし、そのストレッチは肩関節及びローテーターカフを不利なポジションに持って行っていると本当に信じています。 これらの研究からの情報を用いて、なぜその人が背中に手を回すことができないのかを探りましょう。肩甲骨、肩関節伸展、内転、及び肘関節屈曲を評価しましょう。それらの動きのうちどれに制限がかかっていますか?すべて肩関節の内旋であるとただ思い込んではいけません。 これが、背中に手を回す動作を改善させる私のアプローチです。肩甲骨、肩、そして肘、それぞれの動きを分解し、見つけた制限を治療していくのです。 多くの場合、制限されている個々の動作に焦点を当てることによって、背中に手を回すための機能的な能力は向上するでしょう。
怪我からストレングストレーニングへの復帰
怪我をした人々を診る機会や指導する機会があれば、必ず患者やクライアントから「怪我をした後はどのように運動を再開していくのか」という質問を受ける時があるでしょう。すでにフィットネスや筋力トレーニングの経験がある人ならば、怪我の程度によっては、トレーニングへの復帰はそんなに難しいものではないかもしれません。このようなクライアントには、単に個人それぞれの怪我に対するプログラムの調整の仕方を示す、道しるべがあれば良いのかもしれませんが、同時に、私はこの機会を、クライアントに理想のプログラムとはどのようなものかを教える場としても利用しています。 しかし、実際にはフィットネスや筋力トレーニングの経験がない人が、怪我をしたことを運動を始めるための発奮剤として使うことの方がよくあります。素晴らしいことですね。 これから筋力トレーニングを始める人や、怪我から復帰してプログラムを始めるという人にはまず、プログラムを注意深く吟味して、それぞれの怪我に合わせてプログラムを調節してあげることをお薦めします。 良いストレングストレーニングの要素 私はまず、プログラムの総体的な構成要素をみて、フィットネスや筋力トレーニングの評価をします。準備、実践、トレーニングからの回復の、どの側面においても成功するのに必要な一定の要素が含まれていることを確認するのです。 筋力トレーニングの初心者には、これが、成功して運動を続けることができるか、失敗してソファに戻ってだらけてしまうかの明暗をわけるともいえます。 これは怪我からトレーニングへの復帰を目指す人にとってはさらに大切です。プログラムが過度すぎれば、怪我を再発させたくないと思うのは当然です。 私がプログラムに求める要素は以下の通りです。 自己筋膜リリーステクニックとダイナミックなモビリティーエクササイズで構成された、良いウォームアップ トレーニング中に適切に発火できるように、特定の筋群を”活性化”するエクササイズシリーズ レジスタンストレーニングを主としながら、同時に可動性とコーディネーションも向上できるエクササイズの組み合わせ 栄養情報を含む適切な組織の再生戦略 必要性、目標、経験に応じて、個々にとって適切なプログラムを作るための選択オプション 次に私が評価するのは、エクササイズの選択や、順序、ピリオダイゼーションなど、プログラムそのものです。2週間もの間、歩けなくなってしまうような、馬鹿げたエクササイズや構成を含んだプログラムは、筋力ストレーニングをこれから始める人や、怪我からの復帰段階にある人々にとって逆効果です。 残念なことに、世間に出回っている人気エクササイズの中には、利点よりも害をもたらしているものも多くあります。エクササイズが効果的であると同時に不利益を起こさないことを確かめるのに、単純なリグレッション(後退)とプログレッション(漸進)を応用することができます。これには純粋に、技術、運動科学の知識、そして、その人に何が効果があり何が効果がないのか、の理解が必要となります。 本音をいえば、この時点でのこのようなグループの人々のプログラムはシンプルであってほしいと思います。もし派手なエクササイズバリエーションによってプログラムが過度に見えてしまえば、それは怪我からの復帰を試みている人にとって最善なプログラムではないでしょう。
マコーネル膝蓋テーピングに効果がある理由
膝蓋大腿痛の最も一般的でありながら、理解が進んでいない治療法の1つは、膝蓋骨テーピング、またはマコーネルテーピングとも呼ばれる方法です。1984年にオーストラリアの理学療法士ジェニー・マコーネルによって初めて紹介された膝蓋テーピングは、ますます人気が高まっています。膝蓋テーピングを行う元々の意図は、膝蓋骨の傾きと位置を変更することで、最も一般的には、横方向に変位した膝蓋骨をより内側に移動させて、膝蓋大腿「トラッキング」の問題を修正することでした。 現在までに、膝蓋大腿テーピングの有効性について多くの研究が行われており、それらの結果は矛盾しています。変化した膝蓋運動学、向上したEMGと筋肉機能、改善された動的アライメント、そして膝蓋大腿関節反力の減少を示す全ての研究に対して、まった反対の結果を示す別の研究があるようです。しかし、1つだけ確かなのは、ほとんどの研究が、膝蓋骨テーピングが膝蓋大腿痛症候群患者(PFPS)の痛みを軽減することに同意している傾向があるということです。ここでの質問は、なぜなのか? 膝蓋テーピング - なぜ効果があるのか、その理由として考えられるものは何か? 2010年に発表された研究は、膝蓋テーピングが働くメカニズムを説明していると思います。実際、この研究の著者は論文でこのメカニズムについて全く触れておらず、彼らが研究したのは実際それではなかったのですが、この論文を読んだ後、私は「なるほど」という瞬間を経験したのです!後で説明しますが、まずはこの論文について話し合いましょう。 マコーネルテーピングとダイナミックMRI Journal of Physical Therapyに掲載されたDerasariらの研究では、ダイナミックMRIを用いたマコーネルテーピング後の膝蓋大腿痛患者の膝蓋運動を調べることを試みました。これは、能動的な膝の伸展中に6自由度で膝蓋大腿運動を評価する最初の研究です。 1年以上PFPSを患っていた14人の被験者がこの研究に含まれ、膝蓋テーピングの有無にかかわらず、能動的な膝伸展中にダイナミックMRIを受けました。この写真のように、膝蓋骨を内側にグライドさせるために、標準的なマコーネルテーピングを外側から内側に向かって適用しました。 この研究の結果、膝蓋テーピングは、膝蓋骨を内側ではなく、下方向に有意に移動させたことが示されました。実際、この研究では、すべてのPFPS患者が膝蓋骨の外側への変位をもっていたわけではなく、内側に変位した人もいたことが示されました。しかし、(ここで私の電球が消えたのですが)、内側に変位した膝蓋骨を持つ人は、テープが標準的な外側から内側に向かって貼付されたにも関わらず、実際に膝蓋骨の位置の外側方向へのシフトが見られました。膝蓋骨はテープの方向に反して動いたのです!おそらくこれが、文献に矛盾する研究が数多くある理由でもあるでしょう。 なぜ膝蓋テーピングが本当に効果があるのか この研究は私にとって大きな「なるほど」の瞬間であり、膝蓋大腿テーピングがなぜ効果があるかを説明するための有望な理由を見つけたのかもしれないと思います。考えてみてください。外側から内側への膝蓋骨テーピングは、外側に変位した人の膝蓋骨の内側へのシフトを引き起こしましたが、内側に変位した人では、膝蓋骨が実際にテーピングの方向と反対方向に動いたのです。なぜでしょうか? この研究を読んだ後、テーピングは膝蓋骨を一方向に動かすのではなく、膝蓋大腿関節を圧迫するのだと考えます。下の図を見てください。左側の図は、膝蓋骨が外側に変位した膝蓋大腿関節を示しており、膝蓋骨は膝蓋溝の中心に位置していません。右側の図は、同じ膝ですが、膝蓋骨テープ(オレンジ色の線)を貼付した状態です。ご覧の通り、膝蓋骨を溝内中央に配置し圧迫し、膝蓋骨は滑車の突起部に対してグライドします: 内側に変位した膝蓋骨についても同じことが言え、外側から内側に向かってテープを貼付しても、関係なく、この場合、膝蓋骨は膝蓋溝に沿ってグライドするため、実際には外側にシフトします。 これは本質的に、膝蓋溝内で膝蓋大腿関節を圧迫することによって、膝蓋大腿関節の「センタリング効果」を引き起こします。その後、この「センタリング効果」は膝蓋大腿の接触面積を増加させ、これが痛みに大きな影響を与える可能性があります。 変位した膝蓋骨は、膝蓋大腿接触面積を減少させ、同じ量の力をより局所的な領域に加えることはよく知られています。膝蓋骨を滑車の中央に配置することにより、この力はより大きな表面積に分散され、軟骨へのストレスが減少します。以下の図でご覧いただけるように、同じ量の力がより大きな接触面に加えられると、力は軟骨全体に均等に分散されます: 明らかに、さらに研究を行う必要がありますが、この仮説はいくつかの潜在的な妥当性を有するようであり、なぜ膝蓋テーピングが機能するのか、なぜ文献に非常に多くの矛盾があるのかを説明することができるかもしれません。
「運動年齢」がプログラムデザインに与える影響
ある程度適切なストレングス&コンディショニングプログラムであれば、トレーニングを受ける人のユニークなニーズと目標に合わせて個別化されている必要があります。クライアントの「ゴール」に特化したプログラムを開発することは、かなりわかりやすいものですが、クライアントの「ニーズ」も考慮したプログラムの設計方法をマスターすることで、パーソナルトレーナーやストレングスコーチとして次のレベルに進むことができます。 トレーニングプログラムを設計する際、私たちはしばしば年齢に基づいて個別化を開始します。それは出発点としては素晴らしいですが、年齢だけを使うことには多くの制限があります。私は、実年齢、生物学的年齢、およびトレーニング年齢のレビューから始めて、「年齢」を使用してプログラムを設計する方法をまとめたいと思います。 さらに重要なのは、Championで使用している「運動年齢」と呼ばれる新しい「年齢」を紹介したいということです。これは最も重要であるかもしれないのに、最も無視されていることです。 実年齢と生物学的年齢 クライアントの「年齢」について話し合う際、スペクトラムの最初にあるのは、実際の実年齢、つまり正確な年齢です。これは、34歳と38歳の2人のトレーニングプログラムを議論する場合にはそれほど大きな問題ではないかもしれませんが、14歳と18歳の2人を比較する場合には、はるかに関連性があります。 実年齢は明らかに出発点として良いのですが、彼らの生物学的年齢ははるかに重要です。14歳の解剖学的成熟度は18歳のそれと大きく異なり、プログラムデザイン内で調整する必要がある変数となります。 14歳の子供を6人並べると、違いがわかるでしょう。1人は10歳のように見え、もう1人は18歳のように見え、残りはすべてその間のどこかに位置します。ウィキペディアに蓄積されているデータによると、女子は10歳から16歳の間に思春期を迎え、男子は11歳から17歳の間に思春期を迎える傾向があります。6年間の範囲があるのです! 実年齢が低い人々に対する私たちの焦点は、年長の高校生のアスリートとは異なります。年長のトレーニング対象者では、筋力やパワーがより重視される傾向がありますが、私たちは若いトレーニング対象者では、敏捷性、バランス、そして調整力に焦点を当てた、ABCの動きと呼んでいることに焦点を当てています。筋力トレーニングは含まれていますが、結果は明らかにホルモンと骨格の成熟の違いによって制限されるでしょう。 しかし、私はこの運動能力開発の段階を軽視しないように強くお勧めします。運動スキルの基礎を身につけることは重要ですが、残念ながら今の世代の子供たちは過去の世代と同じ成長を遂げていません。実際、Championの若いアスリートは、運動能力に大きな変化を示しています。これらのプログラムには影響力があります。 ですから、実年齢の有用性は限られており、生物学的年齢の方がはるかに良い出発点であることは明らかです。しかし、実年齢はトレーニングを受ける人の経験を考慮していません。 トレーニング年齢 年齢の高いトレーニングを受ける人においては、実年齢はそれほど関係なくなり、次に考慮すべき変数はトレーニングの経験となります。3人の違いを想像してみましょう。 トレーニングを受ける人1:28歳。10ポンド減量したい。成長期に運動競技に参加しておらず、ストレングス&コンディショニングプログラムに参加したことが全くなく、現在デスクワークをしています。 トレーニングを受ける人2:28歳。10ポンド減量したい。高校時代は複数のスポーツをして育ち、大学では楽しみのためにクラブスポーツをしていて、高校時代はスポーツパフォーマンスセンターでトレーニングをしていましたが、ここ10年間は一貫したトレーニングはしていません。 トレーニングを受ける人3:28歳。10ポンド減量したい。高校時代は複数のスポーツをして育ち、大学では楽しみのためにクラブスポーツをしていて、高校時代はスポーツパフォーマンスセンターでトレーニングをしていて、大学時代も一貫したトレーニングを続け、大学卒業後も続けています。 28歳で10ポンド減量したい人たちがいます。同じ年齢、同じ目標。彼ら全員が同じプログラムで開始するのでしょうか?もちろん違います。 トレーニング年齢は、トレーニングを受ける人の経験を考慮しています。彼らは以前に筋力トレーニングをしたことがあるのか?適切なフォームでリフトを行う方法を知っているのか?意図的に力を発揮する方法を知っているのか? プログラムの成功は、身体が加えられたストレスにいかに適応するかに基づいていることを忘れないでください。トレーニングを受ける人1に対しては、変化をもたらすのに十分なストレスを刺激するために何でもできる、これは、学ぶことがたくさんあるので良いことです!スペクトラムのもう一方にあるトレーニングを受ける人3は、トレーニングの方法をよく理解しており、長年にわたってさまざまなストレスに身体をさらしてきました。このトレーニングを受ける人に進歩をもたらすためには、彼らの身体に異なる刺激を与えるために、より複雑なピリオダイゼーションスキームが必要になるでしょう。 トレーニング年齢には大きな欠陥が1つあります。数年間トレーニングをしてきたからといって、トレーニングの方法を理解しているわけではありませんし、適切なテクニックを知っているわけでもないのです! ある人が何年も一貫してトレーニングをしてきたからといって、正しくトレーニングをしてきたとは推測しないでください! これは、過去に筋力トレーニングをやったことがあり、正式なプログラムを開始したり、パーソナルトレーナーやストレングスコーチと初めて仕事を始めたりする人々によく見られることです。 運動年齢 ストレングス&コンディショニングプログラムを設計する際に考慮する最後の年齢は、最も重要なものの1つですが、しばしば無視されているものです。実年齢、生物学的年齢、およびトレーニング年齢に関して、上級のトレーニングを受けている人がいたとして、彼らはうまく動くことができますか?Championでは、人の動く能力を議論するために「運動年齢」という用語を使い始めました。 これを複雑にする必要はなく、彼らはヒンジ、スクワット、ランジ、ステップ、回旋、プッシュ、プルができるのか? 私たちは単に、「動く」能力を、動きの全可動域を通して適切なフォームを使用することとして定義します。そしてこれは尺度になります: 彼らは補助を伴って動くことができるのか? 彼らは補助なしで動くことができるのか? 彼らは負荷を伴い補助なしで動くことができるのか? 彼らは負荷と速度を伴い補助なしで動くことができるのか? プログラムデザインに関しては、「運動年齢」が常にトレーニング年齢を上回ります。 私たちの動きのスキルがどれだけ劣化しているかは驚くべきことです。あなたの高校生アスリートの中で、足の指に触れることができる人は何人いますか?驚きませんか? Championのプログラムデザインシステムで、初心者から中級者、上級者へと進むためには、実年齢、生物学的年齢、トレーニング年齢、運動年齢の成熟を示す必要があります。 Championのパフォーマンスセラピーの側面では、私たちは自分自身を最適化し、身体を最大限に活用したいと考えている多くのアスリートと関わっています。私たちが見る「上級」のアスリートの多くが、動きのスキルに乏しいことには驚かされます。彼らは、ヒンジをうまく行えず、あるいはニュートラルを超えてうまくスクワットができず、ハーフニーリングポジションでさえバランスを取ることができないのです! これは、不均衡、非対称、および代償パターンにつながり、パフォーマンスを損ない、組織の過剰使用、そして最終的には故障につながる可能性があります。これは、特に、不十分な動きのスキルを強行して、リフトに負荷と速度を追加しようとする場合に当てはまります。 高度で複雑な筋力トレーニングのピリオダイゼーションスキームが必要ない場合もあり、動きのパターンをクリーンアップする必要がある場合もあるのです。これは、一歩後退して、5つの大きなステップを踏み出すことだと考えてみてください。運動年齢は、ストレングス&コンディショニングプログラムを設計する際に考慮すべき最も重要な変数かもしれません。
ストレッチは本当にパフォーマンスを低下させるのか?
静的ストレッチは、複数の研究によって、筋力、パワー、スピード、パフォーマンスなどを低下させることが示され、ここ数年相当のバッシングを受けています。ストレングス業界、フィットネス業界の多くの人々はこれらの研究結果に従い、競技前のストレッチを行わなくなりました。 しかし、他の多くの研究にもいえるように、研究を詳細に評価してみると競技前のストレッチというのは、それほど単純なものではないことがわかります。もたらすのが良い効果であれ、悪い効果であれ、ストレッチのタイプや研究の被験者などの変数を慎重に考慮することなく、“ストレッチ”が何かの起因となると結論づけてしまうのは単純すぎといえるでしょう。 また、これらの研究とは相反する結果を示した報告もいくつかあり、問題はさらにややこしくなります。最近のレビューではストレッチについての研究の69%には、筋力、パワー、スピードに重要な低下はみられなかったと報告しています。 最近の研究とメタ分析は、ストレッチが本当にパフォーマンスを低下させるのかという問いに対して、より深く洞察しています。その結果は非常に興味深く、競技前のウォームアップに静的ストレッチを取り入れる余地もありそうです。特に、静的ストレッチが肉離れの減少に役立ちうることを示した研究は考慮するべきでしょう。 ストレッチを継続する時間が大切 ストレッチがパフォーマンスの低下につながると言われる原因のひとつは。ストレッチを継続する時間の長さに関連しているようです。Medicine and Science in Sports and Exerciseで最近発表された研究では、106の研究のメタ分析を行い、ストレッチの継続時間がパフォーマンスに与える影響について調べています。 ストレッチの継続時間を基に研究結果を分析してみると、30秒以下のストレッチにはパフォーマンスの低下との相関性はない一方で、60秒以上のストレッチはパフォーマンスを低下させていることがわかります。 この論文の著者は、30秒以下のストレッチがパフォーマンスをはっきりと低下させた研究は14%しかないのに対し、1分以上ではその数は61%であると報告しています。これは大きな違いであり、私はストレッチを短い時間行うことのリスクは比較的低いと考えています。さらにいえば、この研究結果は、たとえ1分以上ストレッチを継続しても、ストレッチが100%パフォーマンスを低下するとは示していないのです。 ストレッチをするタイミングが大切 他に考えられるパフォーマンス低下の要素として、静的ストレッチを行ってから競技を開始するまでのタイミングがあります。発表されている研究の多くは、ストレッチの即時反応をみているのですが、一体私たちがどのくらい頻繁に、ストレッチ後すぐにフィールドに出て競技をするというのでしょうか。 タイミングは一つの論題であり、複数の研究者によって、ストレッチから競技開始までの時間を5分にすることが奨められています。これは理にかなっていると思いますし、私もこれを推奨します。 静的ストレッチと動的ストレッチの組み合わせが大切 ストレッチがパフォーマンスを低下させるという研究による反射的な反応のあと、多くの人々は、スポーツの前に静的ストレッチをする代わりに動的ストレッチを行うようになりました。これは、よりよいダイナミックウォームアップの発展につながり、それ自体はとてもよいことです。しかし、最近の研究によると、静的ストレッチと動的ストレッチを組み合わせて使うことが有効かもしれないということを示唆しています。実際、静的ストレッチを動的ストレッチと組み合わせて行った場合、静的ストレッチのマイナス面が打ち消されたという報告もあります。 この研究結果がダイナミックウォームアップによるものなのか、それとも単に、静的ストレッチと試験プロトコルの間が15分だったことによるものなのかは、結論づけがたいものがあります。 上記のどちらであるかに関わらず、静的ストレッチと動的ストレッチを両方用いることが効果的かもしれず、少なくとも、静的ストレッチから競技までの時間を確保することになるため、両方のストレッチを取り入れるべきであるという優れた理由になると考えます。 静的ストレッチをなぜ、どのように行うのか これまでの情報を整理すると、静的ストレッチを取り入れたい場合には、適切な導入方法がありそうだということがわかります。私は、静的ストレッチを行いたい理由には2つあると考えています。 ひとつ目は、クライアントが明らかにストレッチから恩恵を受けると考えられる、制限を持っている場合です。ストレッチの研究に見られる大きな制限の一つに、被験者のほとんどが健康な個人であるということがあります。しかし、何らかの受傷歴や障害がある人ではどうでしょう。このような状況では、パフォーマンスを低下させる可能性を考慮するよりも、まず制限を扱う必要があります。 このように制限を持っている人々にとって、静的ストレッチは必要であり、適切な障害予防プログラムの一部として静的ストレッチが取り入れられるべきだと思います。これは、一般的な広範囲にわたるストレッチという意味ではなく、ストレッチが必要なところに焦点をあてるということを意味します。そしてここでも、私は上記で述べてきた原則に従い、継続時間、タイミング、ダイナミックウォームアップとの組み合わせを考えます。 私が競技前に静的ストレッチを使うもう一つの状況は、試合や練習の蓄積により、選手が筋肉に固さや痛みを感じているときです。180日間で162試合するようなスポーツでは特に。この試合数に加え、バス、飛行機での移動、環境の悪いホテルなど度重なる身体の酷使により、選手たちの身体はかなり固くなります。実際にプレーをしない私だって固く感じるんですから。 私は、このような状況で、組織を伸ばすという目的で、静的ストレッチを長い時間ホールドさせたりすることはありません。そうではなく、神経への作用から筋緊張を和らげ、選手の固いという感覚を取り除くことに努めています。3-5秒のストレッチを3-5回行い、最終可動域に働きかけずに組織のゆるみを取るというように、実施しています。。 また、選手が最初に行うダイナミックな動作が、競技中のランニングや投球、ジャンプ動作になって欲しくないので、まず軽く動いてもらうことが役に立ちます。このことについては以前にも簡単に論述しています。私はこれを“fluff(フラッフ)”ストレッチと呼んでいます(fluff=ふわふわしたもの、毛羽、綿毛など)。正直なところ、私が最後に1分はおろか30秒以上ストレッチを保持したのがいつだったか思い出せません。私の経験では、私達は、すでに弛んでいる多くのアスリート達を頻繁に、アグレッシブにストレッチをさせてしまっています。ですから、ほとんどの場合、ストレッチを控えめに行うことにしています。 おそらく、最適なアプローチは必要なところのみストレッチをして、残りは適度にリラックスさせ、2つの状況を組み合わせることではないでしょうか。 最適な答えはわかりません。でも、30秒以下の静的ストレッチを行い、ダイナミックウォームアップを含み、ストレッチと競技の間に一定の時間を取れば、ストレッチがパフォーマンスを低下させることはなさそうです。 とにかく、適切な状況で正しく行えば、競技前に静的ストレッチをすることを恐れたり、避けたりする必要はないと思います。
大円筋:投手にとって軽視されがちな重要な筋肉
野球のピッチャーやその他のオーバーヘッドアスリートは、投げることによって筋肉が硬くなっていることに疑いの余地はありません。これは以前、私がAJSMで出版した研究で示しており、ピッチャーはマウンドから45球投げた後、即時に肩関節内旋の損失が見られました。 私はよく、この動きの損失は対処せずにいると簡単に蓄積されると言っているのですが、残念ながら私が診ている大半の野球のピッチャー達は、軟部組織の可動性を改善する必要があります。これは、筋肉へのトラウマの蓄積が、一定の期間対処されずに放置されたことに直接関係していると思います。 私は、野球のピッチャーにとって、日常的な軟部組織のメインテナンスが大切だと固く信じていますが、多くのアスリートにとって、私のような専門家にアクセスを持つことがあまり現実的ではないことも理解しています。 フォームローリングやマッサージスティック、トリガーポイントボールなど、自分で軟部組織をケアするための道具はたくさん開発されてきました。私たちは投手にこれらの道具を使うことを薦めてきたので、ローテーターカフ後部や広背筋、胸筋など、いくつかの重要なエリアに焦点をあててケアしている人々を見ることもよくあると思います。これにはちゃんとした理由があるのです。 しかし上記以外にも、私がとても大切だと思っていて、ケアすればすぐに状態を向上させるけれど、みなさんが忘れてしまっているであろうスポットがあります。 大円筋 大円筋は、そもそも値するに十分な敬意をもたれていません。「ローテーターカフ」筋群のひとつに含まれるほどの幸運もない。Men’s Healthの筋肉の強化方法に掲載される胸筋や広背筋のように大きくもない。しかも時々忘れ去られる! 大円筋は、注目すべきとても重要な筋肉です。 大円筋は腕の内旋筋と内転筋として機能しています。ボールに速度をつけるメカニクスを通して腕は何をするか想像してみてください。そうです、腕を内旋し、内転させますよね! しかし、同じ動きを担う胸筋や広背筋と異なり、大円筋は肩甲骨と上腕骨により密接な関係があるのです。野球のピッチャーをみると、大きくて、過剰発達し、肥大した大円筋を見ることが多いと思います。これもまた、大円筋が投げることにおいて重要な筋肉であることを示しています。(写真転載: ウィキペディア ) オーバーユースや投げることによって大円筋が硬くなり、短縮すると、肩甲上腕関節の運動に変化が見られ始めます。評価の際に、投げる動作を行う側の肩甲骨が、より上方回旋しているように見えるときがあると思いますが、私は、これは大円筋が短くなっていることにより、肩甲骨と上腕骨の動きが適切に分化されていないことに起因していると思います。結果的に、硬い大円筋は腕とともに肩甲骨を引き上げてしまいます。 この人は一見、腕の挙上を適切に達成しているように見えますが、実際は肩甲骨の上方回旋によって動きを代償しているだけです。詳しく見てみると、腕の挙上は少なく、肩甲骨の上方回旋の方が大きいことさえわかります。これはいずれ、肩のインピンジメントや炎症につながるでしょう。下記が良い例です。 (上腕骨挙上の減少;肩甲骨上方回旋の増加) 大円筋のセルフ筋膜リリースと軟部組織へのアプローチ みなさんを助けたい、一緒に働きたいと思うと同時に、私はみなさんにある程度自分自身で管理できるようになって欲しいと思っています。投げた後は動きが失われると言ったことは覚えていますか?みなさん自身が、最善の努力をして管理することが大事なのです。 大円筋へのシンプルなアプローチ方法は、トリガーポイントボールやラクロスのボールを使って、セルフ筋膜リリースをすることです。私たちはよく、肩の後ろ側やローテーターカフ後部にボールをあてることを薦めますが、私の経験上、大円筋には十分なケアがなされていません。大円筋に焦点をあててアプローチするには、単純に大円筋の解剖学の理解とボールを当てる位置の調整が必要となります。 広背筋をフォームローリングすることは、大円筋の弛緩にはあまりつながらないということにも言及しておきましょう。大円筋は短くて、脇の下に近い高い位置にあり、これではあまり効果がないのです。より小さなトリガーポイントボールを使って、焦点を絞り、大円筋に入りこんでいく必要があります。 どのトリガーポイントボールを買うべきか? 私は通常、その時々に必要な固さによって、複数の異なるトリガーポイントボールを使いわけます。初心者には柔らかめのボールをお薦めしますし、上級者には固めのボールをお薦めします。下記が私のお薦めです。 初心者:トリガーポイントセラピーマッサージボール。これらはラクロスボールよりも高く3000円くらいしますが、よりやわらかく、いろんなエリアを押すことができる私が好きな小さい突起があります。これは最初の一歩として良いものですが、新しいトリガーポイントセラピーXファクターボールは少し大きめでより固くなっています。私はこれらをよく使っています。 上級者:SKLZリアクションボール。この小さくて黄色い、落とすと四方八方にバウンドしていくリアクションボールを知っていますか。私はつい最近、友人に紹介されたこれらのトリガーポイントツールに魅了されました!とてもよく効くんです。これらは固くて、組織にしっかり入りこんでいく素晴らしい小さな突起がついてます。しかも1000円以下で簡単に見つけることができます。 もちろんシンプルにラクロスボールを使うこともできます。ラクロスボールは良いと思いますが、結構固いですし、突起がないので、エリアによってはあまり理想的ではありません。それを考慮しても、これらはたった200円くらいです。 皆さん自身が大円筋をケアしてみれば、またはアスリートにケアを薦めてみれば、すぐに効果を実感できるでしょう。セルフ筋膜リリーステクニックを使って大円筋の軟部組織をケアすることは、重要なのにも関わらず軽視されがちです。野球のピッチャーやその他のオーバーヘッドアスリートにとって、大円筋はもっと注目されるべきエリアなのです。
硬い股関節屈筋は、硬いハムストリングスの原因となりうるか?
私はこの記事のタイトルが好きです ー 硬い股関節屈筋は、硬いハムストリングスの原因となりうるか? これってなぞなぞのようではありませんか? 私は最近、解剖学について知識を持ち、良く理解しているクライアントと仕事をしました。 彼はいくつかの理由で私のところに来ていたのですが、そのリストの上にあるのが”私のハムストリングスが硬い”、こと、そしてつま先を触ることができない、とういうことでした。 膝が曲がった状態でも、彼の手はおよそ7.5cm程床から離れていたのです!彼は ”なんでつま先を触れないのかがわからないよ、何ヶ月もストレッチしてハムストリングスに働きかけているのに!” と付け加えました。 頭のてっぺんからつま先まで、彼を評価する時間を費やした後、私は、彼のハムストリングスが “硬い” のは股関節屈筋が硬いからだと思うと伝えました。 彼はそれについて少しの間考え、“もし私のハムストリングが硬いのであれば、股関節屈筋は緩いはずではないですか?”と反論してきました。 私の答えは “あなたのハムストリングは硬いとは思いません。”だったのですが、この時点で彼はセッションから去ろうとするところでした。私のことを、世界一狂ってる人だと思いつつ、彼は “それなのに私はつま先が触れないって?!?” と発言。 いかにして硬い股関節屈筋が硬いハムストリングの原因となるか 皆さんも、過去にこのようなクライアントをお持ちになったことがあると思います。彼らは危険な程に、十分な程度の知識を持っている人達。 私のなぞなぞの答えは、何よりもより意味論的(セマンティクス)なものです。そうなのです。ハムストリングスの固さは床を触る能力を制限します。しかしそれが唯一の原因ではありません。 私達は、過去数年にわたり、実際にこのコンセプトを良く理解する上で素晴らしいことを行ってきました。 グレイ・クック、リー・バートン、ブレット・ジョーンズ、その他の人々が、多くの人達に、なぜ床に触る能力が制限されるかという他の理由、特に乏しい運動制御とコアの安定によるものであり得る、と指導するという素晴らしいことを成し遂げてきました。 しかしながら、反対のように思えるものの、硬い股関節屈筋もその要因となりうるのです。 ここでもまた意味論的なものとなります。私は実のところ、骨盤前傾が床を触る能力を制限するという話をしているのです。 ここに興味深い例があります。下の図では、どちらがより短いハムストリングでしょうか? 左脚と答えたあなた、推測で言っていますね!包括的なテストなくしては、単に推測に過ぎないのです。 もし左の骨盤が前傾していたらどうなるでしょうか?これにより、ハムストリングスの近位付着部が上方に動く為に、この例のように、硬いハムストリングスのように見えます。 硬いハムストリングスを持っていそうな人や、床を触れない人の場合、私は最初に、骨盤のアライメントが極端な前傾かどうかを見ます。全てが最初のポイントの評価を中心として思いめぐらされるのです。 下の例で見て取れるように、誇張された前傾からスタートするとすれば、理論的にはハムストリングスが長い状態から始まります。 私はシンプルな数字である45度と90度を使用しました、これらはかなり極端ではありますが私が何を言おうとしているかわかりますよね。 誇張された骨盤前傾において、この例のように通常のスタートポジションはすでに45度に近いものになるのです! 硬い股関節屈筋は硬いハムストリングの原因となりうるでしょうか?私はそれについてはよくわかりません。しかし骨盤前傾でいることが床に触れる能力の制限になりうることは知っています。繰り返しますが、常に辿り着くのはここなのです: 評価をすること、推測をしないこと 単に処置を開始する前に、アライメントの評価をすること。それが爪先を触れない理由であるか否かを、本当に評価することなく、ハムストリングスをフォームロール、マッサージ、ストレッチするという衝動に耐えましょう。時に、固い股関節屈筋と骨盤前傾は同程度に、つま先に触る能力を制限しえるのです。
腕の挙上動作を評価する
私が包括的なアセスメント(評価)プロセスにおいて見る多くの中の一つが、腕を頭上に挙げる際の動きの質です。あなたが収集したその人のこのような基礎的なタスクを行う能力に関する情報は、リハビリやトレーニングプログラムをデザインする際に、しばしば非常に貴重なものとなります。 下に私が最近行ったアセスメントのビデオがあります。これは興味深いものなのでシェアをしたいと思います。 少し経緯をあげておきましょう。患者は高校の競泳選手で、長時間泳いだ後、両肩全体に広がる違和感と、疲労感 がプールにおいてみられていました。疲労の多くは肩後部にみられましたが、特定はされません。検査では、水泳選手によく見られる関節のゆるさは明らかでしたが、問題になるような構造的な病理は発見されませんでした。総評
実用最小限のエクササイズ
先日、私がオフシーズンの間トレーニングをみている大リーグのピッチャーの一人と会話をしていたのですが、その時の話は、皆さんとシェアする価値があると思いました。彼の腕のケアのプログラムの取り組みで、長距離投球プログラムの最初の構成を考えていたとき、私たちは、どのくらい遠い距離の投球を試すべきかについて話し合いました。以前は、彼は36mから54mの間の距離しか投げませんでしたが(若い皆さん、メモを取ってください。オフシーズンは54mの投球をするだけでもメジャーリーグに行くことができるのです)、91m以上の距離を投げる流行の長距離投球プログラムを耳にしていたのです。 私の返答は、説得とは程遠く、「状況による」というものでした。私は、それぞれのピッチャーに個別化されたプログラムを作る必要性を強く感じています。私はさりげなく、彼は結構激しく投げていること、彼は既に大リーガーであるということを思い出させました。ただのプロ野球選手ではなく、実際の大リーガーだということを。 ”そうだね、しっかり投げているけど、もっと強く投げられたらどうなのかな?“というのが彼の反応だったのです!これに同意はしたものの、私が言ったのは”OK, だけど何の結果として?“ということでした。 実用最小限の製品(MVP=Minimum Viable Product) このことが、「実用最小限の製品」の概念へとつながりました。 ビジネスの世界にいる人ならば、「実用最小限の製品」という概念を聞いたことがあるはずです。実用最小限の製品とは、これだけあれば発売できるという最小限の要素を備えた製品をいいます。削ぎ落とされた製品だと考えてください。無駄のない製造業ビジネスモデルでは、この実用最小限の製品というアプローチは、大きな賭けをした後にそれが間違っていたことがわかるというのではなく、売っていく中で製品を評価して、調整するという考え方を中心とした多くの利点があります。もしあなたが、一つの製品に全てを賭けて、その製品が失敗してしまったら問題です。なぜならあなたは、その製品に少なからぬ時間、エネルギー、お金をかけてきたからです。 なんというビジネスとリハビリやパフォーマンスの世界の共通性なのでしょう!どちらも、評価して、調整するなかで成長します!これまで何回これと同じことを述べてきたでしょう(沢山です)! ビジネスの世界では、これは成功か倒産かという違いになり得ます。 私たちの世界では、これはパフォーマンスの向上か怪我の受傷かという違いになり得ます。 実用最小限のエクササイズ ここで、「実用最小限のエクササイズ」が役に立ちます。実用最小限のエクササイズは、最低限の強度で、望ましい効果を出すエクササイズです。はい、その通りです、私は今これをでっち上げてしまいました。でもこれが、私の実用最小限のエクササイズの定義の仕方なのです。 パフォーマンスを向上し、怪我を最小限に抑えるためには、最低限の強度で、望ましいトレーニング効果を出すエクササイズを選択します。 長距離投球を「エクササイズ」の例、速度を理想的な「効果」として使い、速度を速めるのに必要なだけ遠くに投げてみる、それだけです。これは常に「多ければ多い程良い」というアプローチではありません。このことを考えるとき、私は、ジェリー・セインフェルドが、「最大の強さのものを与えてくれ。どこまでいけば私が死ぬかがわかったら、そこから少しだけ弱めるんだ。」と言った、最も強力な薬物療法に関するジョークを思い出さずにはいられません。 この考え方は、重量ボールを投げることにも適用されますが、一年を通して投げることの方に、より適用されると言えるでしょう。多くの野球指導者は、オフシーズンに投球を休むことは、改善の機会を失うことだと感じています。一年に8ヶ月以上投げることにより、怪我は5倍に膨れ上がるという統計的研究があるにも関わらずです!私たちは大抵、「実用最小限のエクササイズ」よりも断然に「最大強度のエクササイズ」を選ぶ傾向にあります。 最初の長距離投球の議論に戻ると、これには2つの実施方法が考えられます。一つ目は、速度が上がることを願って(そして怪我をしないことを願って)、いきなり91mを超える長距離投球プログラムを始めることです。それに対し、実用最小限のエクササイズのアプローチでは、ゆっくりと、徐々に距離を伸ばしていき、再度評価を行います。 速度は上がりましたか?その距離で適切なメカニクスで、長距離投球を行うことはできましたか?その距離でかかるストレスに、身体が耐えることができていないサインはありますか?こういった情報によって、手遅れになる前に、段階を進めていくのか、戻るのか、あるいはこの段階で満足してこのレベルを維持するのかといった正確な調整をすることができます。 その反対が、よく見かける、若いアスリートが急に強度を上げて「最大強度」のエクササイズを行うことにより怪我をしてしまうことでしょう。リスクと報酬の明確なラインは、この時点では見極めが非常に難しいのです。 実用最小限のエクササイズは、野球だけに限らず、リハビリテーション、フィットネス、パフォーマンストレーニングの様々な場面に応用することができます。ここでの話題の文脈として使っているわけですが、私は、この実用最小限のエクササイズという概念は、私たちが実感している以上に既に使われていると思っています。デッドリフトの強度を上げようとしているとしたら、重りを急激に上げて、悪いフォームでリフティングを行うリスクや怪我をするリスクを取ろうとはしないでしょう。その代わりに、小さく、徐々に重りを増やしていき、評価をして、調整していくことでしょう。 誤解しないでください、私は追い込むなと言っているわけではありません。そうではなく、賢く、体系的な方法で追い込んで欲しいのです。 欲張って、急に最大強度のエクササイズを行うようなことはしないで下さい。途中で評価、調整できる賢いプログラムを作ってください。それが実用最小限のエクササイズなのです。
トミージョン手術の神話 パート1/2
2014年、全米スポーツ医学機構主催の、野球における傷害セミナーでの大きな話題の一つは、トミージョン手術として広く知られている、肘内側側副靭帯再建手術の術後経過に関する理解の進化であった。我々は、初めてフランク・ジョーブ博士が手術を行って以来、トミージョン手術を受けたことのある選手の手術結果に関するデータを毎年蓄積し続けてきた。 ジェームス・アンドリュー博士とフランク・ジョーブ博士 過去数年間、我々は、間違いなく世界中で、最もトミージョン手術を行っている医師であるジェームズ・アンドリュー博士による、とても重要な研究結果を見てきた。2010年に彼らは、19年以上にわたって調査してきた1281名のアスリートの2年間の短期的結果を発表した。さらに最近では、少なくとも10年以上前に手術を受けている256名の、10年間以上のフォローアップの結果を公表した。 これらの画期的な研究から得られる情報をもとに、現在我々は、トミージョン手術の結果についてより多くのことを理解している。しかし、トミージョン手術に関する一般の理解は正しいのだろうか、また、我々の見解はメディアで騒ぎたてられている情報に左右されていないだろうか? ニューヨークヤンキースのクリス・アマッド博士はトミージョン手術についての 、選手、コーチ、両親の見解を調査し最近その論文を公表した。著者の言及によると: 28%の選手と20%のコーチは、トミージョン手術を受けることで競技力が向上するだろうと考えている。 23%のユース世代、32%の高校生、53%の大学生投手、33%のコーチ、そして、36%の両親がトミージョン手術後に球速が上がると考えている。(私は昨日ツイッターとフェイスブックのフォロワーにも調査し、大多数の人々がトミージョン手術後球速が上がると考えているという結果を得た) 24%の選手、20%のコーチ、そして44%の両親が9カ月以内に復帰できると考えている。 もっとも衝撃的なものとしては: 33%のコーチ、37%の両親、51%の高校生選手、26%の大学生選手が、肘の傷害がなくても、パフォーマンス向上のためにトミージョン手術を受けるべきだと考えている。 これはまったく的外れである! この話題におけるアマッド博士の研究と最新の調査に基づいて、これらの考えに関して討論し、これらの考えの多くが間違っているということを人々に理解していただきたい。 選手、コーチ、両親が正しく理解すべきトミージョン手術に関する間違った神話は以下のとおりである。 すべての選手がトミージョン手術から復帰する 肘の傷害がなくてもトミージョン手術を受けるべきだと、37%の両親と51%の高校生選手が考えているとすると、その考えではすべての選手が元通り投球できると推測しているわけだが、本当にそうだろうか? まず、大リーグ関係者は同意しない。ロサンジェルスドジャーズのヘッドアスレティックトレーナーであるスタンカントが、2014年全米スポーツ医学機構主催の野球における傷害のセミナーで興味深いデータを公表している。 その中で、メジャーリーグ、マイナーリーグを合わせたすべてのプロ野球投手のうち16%の投手が、そしてメジャーリーグ投手の25%がトミージョン手術を受けていると言及している。仮にトミージョン手術が確実な方法であるなら、その数字はほぼ100%近くになっているはずである。 アンドリュー博士が行った短期的、長期的研究のどちらにおいても、83%の投手が手術前とほぼ同レベルか高い水準で競技復帰している。83%はとても良い結果であるが、100%ではない。 必要としない限り、だれもトミージョン手術を受けようとは思わないということが言える。手術からの復帰は保障されているわけではない。 トミージョン手術では合併症がない 良質な手術とリハビリテーションで、合併症というものは最小限に抑えることができるということに賛成しているが、トミージョン手術が常にうまくいくわけではなく、合併症が起こることもあるということ忘れてはいけない。 上記に言及されているケイン博士とアンドリュー博士が行った研究では、アンドリュー博士が執刀したすべての手術において20%の合併症が発症し、そのうち16%は深刻な合併症ではなかった。これらの合併症は尺骨神経の問題から感染症、さらには移植片不全にいたる。 この合併症の発生率は、この術式において最高と考えられ、もっとも多くトミージョン手術を行っている医師によって報告されていることを忘れないこと。 100%完璧な手術などはなく、常に合併症が起こるリスクがある。 トミージョン手術