マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
Kaori’s Update #43 - 肩の不安定性
肩の不安定性と一口に言っても、外傷性のものから慢性的なものまで、原因も症状も様々であれば、当然評価やリハビリの方法も多岐にわたるはずです。理学療法士としての立場からマイク・ライノルドが提案するリハビリのための6つの秘訣とは?
「壊れない」アスリートを作り上げるのは可能か?
負荷管理とは高性能なアスリートを作り上げることである 高い慢性的な負荷が、怪我の発生率の低さと関連しているというエビデンスが増加しています(1)。その結果として、スポーツチームのメディカルとパフォーマンスのスタッフは、負荷のモニタリングデータの見方を変えてきました。それは単に「アスリートにけがをさせない」ためのみでなく、今では現場のスタッフらは、彼らのアスリートの「頑健性」や「レジリエンス」を向上させるための情報として用いています。もし、トレーニング負荷の効果についての知識が増加していっているのであれば、いつの日かパフォーマンスとメディカルのスタッフが「壊れない」アスリートを作り上げることは可能なのでしょうか? 最近のBritish Journal of Sports Medicineの論文において、オーストラリアやヨーロッパ、南アメリカ、北アメリカ、そして英国の研究者と現場の人間が、この疑問に取り組むため提携しました。その論文において、スポーツメディシンの専門家(ストレングス&コンディショニングコーチ、スポーツ科学者や理学療法士)が協力してこの問題を解決できるような枠組みを提供したのです(2)。 アクセルをベタ踏みするか、急ブレーキを踏むか!キャパシティを増加させることは負荷を増加させる以上のことを必要とする VerhagenとGabbett(3)は、最近、負荷、負荷のキャパシティ、健康、そしてパフォーマンス間の関係性について言及しました(図1)。トレーニングの正の適応は、負荷が徐々にそして体系的に、アスリートの現在の負荷のキャパシティ以上に増加したときに起こります。これは、負荷への耐性を向上させるためには、ただ現在のキャパシティを超えて安全に負荷を漸進させればよいということを示唆しています。しかし、ちょっと待ってください!負荷のキャパシティは健康に関連した要素(例:気分やストレス、睡眠の質など)によっても影響されます。そのため、今日耐えることのできた負荷は、明日は耐えることができないかもしれません(3)。これは、安全に負荷を漸進させるためには、現場の人間はアスリートの健康も考慮しなければならないことを示唆します。負荷のキャパシティを構築するとき、アクセルをベタ踏みする(または賢く負荷を漸進させる)前に、緩やかにブレーキを踏む(時として負荷を減退させる)必要があるかもしれません! 図1スポーツにおける負荷、負荷のキャパシティ、パフォーマンス、そして健康の統合された見解。点線は負の関係性を表し、実線は正の関係性を表す。 どの要素が負荷-キャパシティの関係性に影響を及ぼすか? もし、キャパシティを増加させるために、単に負荷を増加させること以上のことが伴うのであれば、どの要素が現場の人間の意思決定の過程へ情報を提供できるでしょうか?いつ負荷を増加または減少させるべきか?負荷への耐性を理解する時にどの要素を考慮するべきでしょうか?まず、負荷への耐性はバイオメカニクス的な要素(4)や、様々な感情や生活のストレス要因(5~7)によっても影響されることが証明されています。例えば、増加したストレス(5、6)や不安(7)は怪我のリスクを増加させます。次に、十分な睡眠をとらないアスリートは、毎晩8時間かそれ以上の睡眠をとる同様の人よりも、スポーツ障害のリスクがより高くなっています(8)。青少年のエリートアスリートにおいてトレーニング強度と量の増加が短い睡眠時間と重なったとき、怪我のリスクは2倍になります(9)。これらの発見は、トレーニング負荷の他に、アスリートの睡眠の質や気分、ストレスの大きさのモニタリングからも良い見識を得ることができることを示唆しています。 何が先か−高いトレーニング負荷か、頑健なアスリートか? 負荷のキャパシティに影響を与える健康面の要素の他に、様々な身体能力もトレーニングと怪我の関係性をコントロールすることが示されています。例えば、トレーニング負荷の「急激な上昇」に対する耐性は、有酸素性持久力と下半身の筋力によってコントロールされます;身体能力の高いアスリートは怪我のリスクが低く、一方で、負荷が同様に増加しても身体能力があまり発達していないアスリートは怪我のリスクがより高くなっています(10,11)。しかし、これは「鶏が先か、卵が先か」のような問題を呈すのです;何が先か、負荷か、それとも負荷に耐える能力か?それは、身体能力(負荷の「急激な上昇」に対して保護する)の発達には、高いトレーニング負荷が必要ですが;高いトレーニング負荷を耐えるには良く発達した身体能力が必要ということです。おそらく、身体のキャパシティの度合い(例:有酸素性持久力、筋力)と関連している、身体構造に特異的な負荷のキャパシティによって、人はトレーニング負荷に耐えることができるようになるのでしょう。その結果、トレーニング負荷の適応はこれらの身体能力をさらに発達させ、結果的にスポーツに特異的な負荷のキャパシティへとつながります。(図2 ) 図2負荷、負荷のキャパシティ、そして負荷の耐性に影響する要素の相互関係 「壊れない」アスリートは現実的な可能性か? 「壊れない」アスリートを作り上げることは、スポーツメディシンの専門家にとって価値のある探究です。アスリートに関しては、ストレングス&コンディショニングコーチが「トレーニング」し、スポーツ科学者が「モニタリング」し、そして理学療法士が「治療」します。しかし、サイロにこもって仕事をすること(それぞれの専門の情報を共有しない)では、解決策を導き出せません;これら専門家たちそれぞれは、お互いに協力することでより効果的になるのです。モニタリングだけでは怪我を予防できません;頑健性を向上させるためには、適切な負荷が必要です。しかし、適切な負荷には「ウェイトトレーニング」以上のことが必要です;ある程度の負荷のモニタリングが必要なのです!そして最後に、もし、「壊れない」アスリートを作り上げるのであれば、身体構造に特異的な負荷のキャパシティ(一般的にメディカルスタッフによって評価されます)が考慮されなければなりません。 参照 1. Gabbett, T.J. (2018). Debunking the myths about training load, injury and performance: empirical evidence, hot topics and recommendations for practitioners. Br J Sports Med, (in press). 2. Gabbett, T.J., Nielsen, R.O., Bertelsen, M., Bittencourt, N.F., Fonseca, S., Malone, S., Molller, M., Oetter, E., Verhagen, E., and Windt, J. (2018). In pursuit of the “unbreakable” athlete. What is the role of moderating factors and circular causation? Br J Sports Med, (in press). 3. Verhagen, E. and Gabbett, T. (2018). Load, capacity and health: critical pieces of the holistic performance puzzle. Br J Sports Med, (in press). 4. Vanrenterghem, J., Nedergaard, N.J., Robinson, M.A., and Drust, B. (2017). Training load monitoring in team sports: A novel framework separating physiological and biomechanical load-adaptation pathways. Sports Med, 47:2135-2142. 5. Ivarrson, A., Johnson, U., Andersen, M.B., et al. (2017). Psychosocial factors and sports injuries: meta-analyses for prediction and prevention. Sports Med, 47:353-365. 6. Mann, J.B., Bryant, K.R., Johnstone, B., et al. (2016). Effect of physical and academic stress on illness and injury in division 1 college football players. J Strength Cond Res, 30:20-25. 7. Li, M., Moreland, J.J., Peek-Asa, C., and Tang, J. Preseason anxiety and depressive symptoms and prospective injury risk in collegiate athletes. Am J Sports Med, 45:2148-2155. 8. Milewski, M.D., Skaggs, D.L., Bishop, G.A., et al. (2014). Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes. J Petriatr Orthop, 34:129-133. 9. von Rosen, P., Frohm, A., Kottorp, A., et al. (2017). Multiple factors explain injury risk in adolescent athletes: Applying a biopsychosocial perspective. Scand J Med Sci Sports, 27:2059-2069. 10. Malone S, Hughes B, Doran DA, et al. (2018). Can the workload-injury relationship be moderated by improved strength, speed and repeated-sprint qualities? J Sci Med Sport, https://doi.org/10.1016/j.jsams.2018.01.010. 11. Malone S, Roe M, Doran A, et al. (2017). Protection against spikes in workload with aerobic fitness and playing experience: the role of the acute:chronic workload ratio on injury risk in elite Gaelic football. Int J Sports Physiol Perform, 12:393-401.
負荷管理とは何か?
トレーニングの負荷管理とは一体何を意味しているのでしょうか?誤解されている部分も多いこのコンセプトについて、そしてこのコンセプトに対してのよくある間違った通念について、エキスパートであるティムがわかりやすく解説をしてくれます。
アスリートはスマートにハードにトレーニングすべきか?
ハードにトレーニングすることは、スマートに(賢く)トレーニングすることを意味するのかもしれない。アスリートのピークパフォーマンスの実現と怪我のリスクの最小化にとって、トレーニングの強度はどのような役割を担うのでしょうか?
ウェービングヒンドゥプッシュアップ
ヒンドゥプッシュアップと呼ばれるプッシュアップには、バリエーションも、そしてついている名前も山ほどあるのではないでしょうか?オリジナルストレングスのティムが、最近楽しんでいるというハイブリッドバージョンをぜひ試してみてください。
クロックトアームバー
2020年6月27&28日の週末に、イマキュレートダイセクション上肢クラス、そして29日に骨盤底のクラスの開催が決定したばかりのDr.キャシー・ドゥーリーから届いたビデオでは、なんとキャシーが、キネティコスのTシャツを超寒いニューヨークの冬の公園で披露してくれています。キャシーのゲットアップチャレンジにプラスされたクロックトアームバーの要素とは?皆さんも試してみてください。
いつ、どれだけ食べるべきかを知っていますか?直感的な食べ方101
クライアントから最も一般的に寄せられる質問の1つは、「1日に何カロリー食べるべきですか?」または「1日にどれくらいの頻度で食事をするべきですか?」です。大抵の場合、彼らは、いつ、どれほどの量を食べるべきなのか、目安あるいはルールを求めているのです。 食習慣を導くために外部のルールに依存することには、いくつかの問題があります。あなたが食べる必要な量は、日によって、また、朝と夜との間にも大きく変わります。その日にどれだけの活動をしたかは、必要な食事量に影響を与える一つの要因にすぎません。さらに、日常的に食習慣に関して厳格なルールに従うこと、特に通常のルーティンから逸れた日には、従うことは困難です。長いハイキングをした日はどうでしょうか?または、前の夜よく眠れなかった日は?バケーション中はどうでしょう?文化的な祝日中はどうしますか?それ以上に、精神的にも感情的にも楽しい生き方ではありません。食べ物は、ストレスや不安の原因ではなく、栄養補給とともに楽しむものでなければなりません。 「食べることの喜びがなくなると、栄養が損なわれる」 エリン・サッター それでは、食事量と、いつ食べるべきかという質問に対する答えは何でしょう?直感的な食べ方。 直感的な食べ方の基本的な考え方は、最適な健康と機能のために必要な食事の量と頻度は、あなたの身体が本質的に知っているということです。誰もがこの機能を備えて生まれてきています : 赤ちゃんを見ると、成長と発達に必要な量だけを食べます。しかし、私たちの現在のダイエット文化において、多くの人達は、身体の空腹感と満腹感の信号を無視し、代わりに、外部の規則やガイドラインに従うように教えられてきました。身体のキューや信号を無視すると、それらに気づくのが難しくなるか、または食事制限に続いて暴食のサイクルにつながることさえあります。多くの場合、これは最終的に罪悪感や恥を感じる結果となります。 「健康的に食べることの定義は、バランスの取れた健康的な食べ物と、食べ物に対して健康的な関係を持っていることです。」 エヴェリン・トリボール 直感的な食事方法とは、空腹感と満腹感を尊重することです。直感的な食事方法を開始する最も簡単な方法の一つは、空腹・満腹感スケールです。空腹感の度合いは、1(絶対的に飢えている)から10(吐き気がするほど満腹)までです。 空腹・満腹感スケール 1.飢え、衰弱感、めまい 2.非常に空腹、不機嫌、低エネルギー、胃がかなりゴロゴロ鳴る 3.かなり空腹、胃が少しゴロゴロ鳴る 4.少し空腹を感じ始め、食べ物について考え始める 5 満足している: 空腹でも満腹でもない、食べ物を考えずに別の作業に集中している 6.心地よく満腹である 7.やや不快な満腹感 8.詰まった満腹感 9.非常に不快な満腹、胃が痛い 10.吐き気がする満腹、具合が悪い、膨張感 このスケールの使用方法は: 食事や軽食をする前に、「私は空腹・満腹感スケールのどこにいる?」と自問をしてください。3と4の間が理想的です。 食事や軽食を半分食べた時点で、10秒間食べるのを停止し、もう一度「今、空腹・満腹感のどこにいるの?」と自問してください。 6か7になるまで食べたら、食事をやめてください。 場合によって、お皿に食べ物を残す場合もあれば、お代わりをする場合もあります。どちらも100%大丈夫です! 日によっては、少量の食事や軽食を食べた後に満腹感を感じるかもしれません。また他の日には満腹感を感じずにたくさん食べているように感じることがあります。どちらも普通の空腹感と満腹感の自然な変動です。 このエクササイズを3~4日間試してください、または自分の空腹感と満腹感の信号に気づくまで続けてください。 念頭におくこととして、空腹感・満腹感のキューは変化することがあるので、必要と感じた時には、このエクササイズはいつでも繰り返すことができます! このエクササイズをやってみて、空腹感または満腹感のキューを特定できない場合。次の質問に答えることから始めてください: 定期的に食事や軽食を食べていますか? 空腹なのに、食事や軽食をスキップしていますか? 空腹を感じることなく、一日中食べ物を食べていますか? 体の空腹感・満腹感を尊重しないと、あなたの身体はキューを混乱するか、認識するのが難しくなります。 時には、お腹が空いていないのに食べたり、満腹になっても食べ続けることがあるかもしれません。あなたの食習慣が空腹感や満腹感ではなく、感情によって指示されていることに気づくかもしれません。これが問題だと気がついたなら、食習慣に影響している感情と向き合って対処できる免許を持つカウンセラーの支援を求めることを強くお勧めします。 直感的な食事方法に従うことによって、外部のルールやキューを守るストレスなく、正確にいつ、どれだけの量を食べるべきか、自分の身体を信頼して知ることができます!
あなたが使っていない最高のケトルベルエクササイズ
ある日、私がシェアしたケトルベルの動作に関したインスタグラムにコメントがきました。変わったコメントを受け取るのはいつものことです。特に何か新しそうなことや完全に理解できないようなものに対して、人々はいつもコメントします。 自分にとって何か理解できないものを見たとき、当然のように「それはバカげてる」や「何の意味もない」とコメントすることが、最近はトレンドのようになっているように思えます。多くの人達のこのような態度を見ることは、実際悲しいことです。私は、もし自分が何かを知らなかったり、何かが違って見えたり、見慣れなかったりしたときに、「それは何をするのですか?」や「どのように働くのですか?」とシンプルに質問する時代に育つことができました。質問をすることは、人が学ぶ方法であり、会話を始めさせるので、それが失われるのを見るのは非常に残念なことです。 さて、そのコメントは何だったのでしょう? 「これが適切であるとか、あるいは僅かでも効果的なエクササイズとなるような場面を、ただ一つも思いつくことができません」−インスタグラムでコメントをした人 あなたは今、その動作が何なのか疑問に思っていることでしょう。 それは、ドロップステップランジ(又の名をリバースランジ)からのケトルベルクリーンのシリーズでした。
旅行中のワークアウト
飛行機や列車、自動車での旅行が続くと、身体は固まってしまいがちです。運動をする場所がすぐに見つけられない時でも、TRXサスペンショントレーナーがあれば、ホテルの部屋でも自宅の部屋でも、簡単にエクササイズすることが可能になります。ドアアンカーを使って是非お試しください。
カウントダウンワークアウト
FTIのコーチ・タレクが、朝の公園からケトルベルを使ったカウントダウンワークアウトの例をご紹介します。カウントダウンワークアウトは、下降ラダードリル同様に、各ラウンド毎にエクササイズのレップを減少していくタイプのもの。場所も取らず、限られた用具でも短時間でも効果的なドリルです。
ラテラルゲイトスピード
側方に向かっての歩様のサイクル、つまり側方に向かって進む場面は、スポーツにおいて数多くみられます。股関節の側方へのパワーの発揮のための効果的なドリルをリー・タフトがご紹介します。
私たちの患者には、治療が必要なのでしょうか?それとも、もっと大きい容量のカップが必要なのでしょうか?
私自身を含め多くの人たちが痛みと損傷を理解するために、いくつかの事柄を簡潔にまとめようと思います。痛みをとらえるために最も分かりやすい方法の一つは、カップの比喩です。間違いなく欠点はありますが、治療の“全体像”を見るのに役立ちます。カップの比喩では、私たちの生活の中にあるストレス要因や負荷などすべてが、カップの許容量を超えると痛みが起きると考えます。つまり、溢れ出すと痛みを感じるというわけです。 あなたのカップには何が入っているのか? ストレス 組織の損傷 睡眠不足 心配 恐れ 不安 習慣 痛みは、あなたにとって有害であるものすべて(あなたのカップの中味)と快適なものすべて(カップの容量を増やすこと)とのバランスです。 これは、2つの方法で助けられるという、すぐに実施可能な比喩と言えます。 1) カップの中にあるストレス要因や負担になるものを減らす。 2) もっと大きなカップを作る。 このカップの比喩は、基本的に、生活の中のストレス要因に対して、前向きに適応できない時に私たちは痛みを感じるということを示しています。また、ストレス要因は、身体にかかる物理学的負荷だけではないことが分かります。つまりX線画像で見つけられるような退行変性に限ったことではないのです。(これについて詳しくはこちら)どのぐらい持ち上げたり曲げたりする動作をしなくてはならないかということだけでもありません。また、心配や恐怖、落ち込み、痛みに対する破局的思考、睡眠不足、病歴、家族、仕事など他のストレス要因もカップに入っているかもしれないことに気がつきます。 これらのストレス要因は、本質的に悪いことではなく、実際、生活におけるこのようなストレスが触媒となって私たちに反応を起こしてくれます。このようなストレス要因が、私たちを強くし、耐久性を持たせ、上手に対応できるように、レジリアンシー(回復力)を構築してくれるのも事実です。古くからのことわざで「何かしてもらいたければ忙しい人に頼むとよい」というのがあります。 じっくり考えるべき問いかけ・・・痛みに結びつく要因で、治療されるべき要因はこれまでにありましたか?私は、いつもこの質問を投げかけてから私の講義を始めます。驚くことに、治療を必要とする痛みの原因や症状は、ほとんどないように思います。 たとえば、痛みに関連していると通常考えられている次のような生体力学的要素を私たちは治療しますか、また治療しなくてはなりませんか? MFD脂肪浸潤 腹横筋の発火のタイミング 内側広筋の発火のタイミング カッティング動作中の膝の外転モーメント 膝関節炎における内反モーメント 膝関節炎 関節唇断裂 回旋腱板断裂 腱症 骨棘 椎間板ヘルニア 肩甲骨の運動学 あなたがこれらを治療する必要はないと、私は考えます。確かにこれらは存在し、痛みに関与していることがありますが、治療後に痛みがなくなり機能が回復しても、これらが消えることはありません。そこで、カップの容量を大きくしてみたり、カップの中のものに対して耐えられるように訓練してみたりすればどうかという考えになるのです。これに関連するトピックを扱っているブログがあります:こことここ。 心理社会的影響も同様です 痛みに対する破局的思考も、コアの弱化についての信念、熟考、不安、落ち込みなども同様です。これらのすべてが痛みとリンクしていて、問題に関与していることがあります。しかし、これらすべてを治す必要はないのです。 私たちは耐えることができます。 私たちは適応することができます。 すべてのことに共通していますが、私たちは偏った考え方に挑戦する必要があります 私たちはストレスに適応可能であるということから、生活の中で発生するストレス要因を変える必要がないかもしれませんが、それらに取り組む努力をする価値はあると私は思います。実際、何が関連して、何を変えなければならないのかが定かではないということが、痛みや他の全てのことの難しいところでもあるからです。 ですから、臨床で自分に問うべき質問は: 具体的に何かしなければならないことがあるか? または 対処しなければならない具体的なことがあるか? これらの質問は似ていますが、異なります。ひとつは問題に対処する方法が1つまたは2つしかないと言い、もう一方は、できる限り良い状態にするために対処すべき痛みの原因が確実にあると言っています。ふたつの例を挙げてみます。 1) あなたの患者がアキレス腱障害を患っているとします。あなたは、トレーニング負荷をある程度減らし、アキレス腱に適応力をつけるために、活動への耐久性を構築し、トレーニング負荷をゆっくりと増やしていくことによりアキレスに特定の負荷を追加しなくてはならないと考えるでしょう。この場合、あなたが腱症を実際に“治療”するかどうかはわかりませんが、その人がその腱症に耐えられるようになるために、かなり特定されたこと(アキレス腱への負荷)が必要となったのです。 2) あなたが治療に関わっている腰痛を患っている患者の問診をし、状況を把握した後、サイクリングやガーデニング、ランニングを再開することに効果があると判断します。2年間もこれらを一時的に中断していました。しかし、あなたがた二人とも、再負傷するのではないかと彼らが異常なほど恐怖感を持っていることに気がつきます。脊柱にストレスを与えてはならない、再び始めたいと思っていても、これまでしてきたような運動は椎間板にダメージを与えてしまう、と完全に思い込んでおり心配になります。サイクリングやガーデニング、ランニングだけでも効果があるかもしれませんが、怪我に関するこれらの信念にまず対応し、脊柱の捉え方を再概念化することの方が先決かもしれません。または、それらの有意義な活動の再開中でも構いません。他の意味での治療を施す前に、彼らの信念を最初に“治療”した方が、役に立つという一例です。 最後に、治療を改善するためのもう一つの重要な質問は: 大きなカップを作るにはどうすればよいか? これについては、少しズルをします。一緒に取り組む相手にたくさんのヒントがあると考えます。患者のストーリーを聞いて、しっかりそれを理解したならば、痛みの原因となるものが何か、痛みがどのように作用するかについてあなたの意見を説明します(患者の特定のストーリーに関連させながら)。次に彼らがより大きなカップを作るために何ができると思うかをたずねてもいいでしょう。もちろん、その前にコップのたとえ話を伝えておき、それから大きなコップを作るために何ができる気がするかをたずねます。これは、キーラン・オサリバンが“あなたにとって良いことは何ですか?”とたずねるのと大変よく似ています。または、デビッド・バトラーとロリマー・モーズリーが“あなたのSIMs (Safety in Me:私の中の安全)は何ですか”とたずねるのに似ています。 また、次のような大きな質問を投げかけてみたらどうでしょうか: あなたはどうすればより健康になれるのか? あなたがより健康になるために私がどのように手伝えるのか? 私が、この“(痛みを)落ち着かせ、(カップを)作り直せ”というアプローチで気に入っていることは、これを行う方法がたくさんあることです。だから一見互いに非常に異なったアプローチをしているかのように見えるセラピストでも、臨床で同じような成果を出しているのはこれが理由だと思います。この見方により、みなさんがより大きなカップを作れるように、私のサポート力の向上のため、異なる業種の専門家からさまざまなコースを受講し続ける必要があると思っています。まとめとして、カップを大きくできる領域と痛みの緩和に役立つ領域を列挙します。 認知要因:肯定的な信念、高い自己効力感、認知の柔軟性、受け入れ、マインドフルネス 感情的要因:ストレス回復力、不安の少なさ、ポジティブな気分 対処反応:適応的で柔軟な対処 社会的要因:ポジティブな文化的要因、協力的な家族および職場環境、経済的安心感、教育 身体的要因:身体への段階的な負荷、コンディショニング、適応できる機能的行動 ライフスタイルの要因:身体的に活動的であること、健康的な睡眠、健康的な体重、非喫煙者