ミヤギ・ピンボール:ケトルベルスナッチを攻略しよう!

「君はこの辺りで一番だ。そして、何も君のことをずっと抑え付けておけないよ。」あなたが、以下の秘訣をスナッチのテクニックに応用した後には、人々がこんな歌を歌うことでしょう。これから紹介する秘訣はあなたのケトルベルスナッチを改善させ、そしてもし近いうちにRKCのワークショップがあれば、RKCのスナッチのテストに合格する助けになるでしょう。 ケトルベルスナッチは、実際には比較的単純な動作ですが、皆はそれを難しくしたいようです。ここ何年かの間で、私はそのテクニックを、パンチ(またはクレーンキック)のある2つの簡単な言葉に分解しました-ミヤギ・ピンボール!(ベストキッド(原題:空手キッド)を覚えていますか?) ハードスタイルのケトルベルスナッチにおける、2つのかなり頻繁に起こるエラーは: ケトルベルが上下移動するにつれ、ケトルベルを手首の周りで回したり捻ったりする。 スナッチ動作全体において腕がまっすぐである。 ここで「ミヤギ」を使います。フェンスにペンキを塗るのです!あなたがダニエルさんになって、フェンスの前に立っているのを想像してください。あなたの手をブラシと仮定します。指の背を使って上方向にペンキを塗るように始め、フェンスのてっぺんに近づいたら、指をピンと上に向けます。このポジションの時、手のひらは外に向きます。それから、同じ動きを下降動作でも反転して行います。これにより、前述の、頻繁に起こるエラーの一つ目(ねじるような回転)を解決できます。フェンスにペンキを塗るように行うことで、高回数のケトルベルスナッチを行う際の手の消耗も劇的に減らせるでしょう。 スティーブ・“怒れるコーチ”・ホリナーがケトルベルスナッチの「フェンスをペイントするように」のキューをデモンストレーションしているところ 「腕がまっすぐのまま」という問題を解決するために、次のことをしましょう:壁に向かって、足を揃え、そして右腕を完全に伸ばして立ちましょう。拳を握って腕がまっすぐのまま壁に十分に近づけて、拳を壁につけましょう。そのまま半歩前に出て、腕を曲げます。この状態からフェンスにペンキを塗りましょう。これであなたのケトルベルスナッチの孤の軌道が短くなりました。これはとても良いことなのです。 軌道を短くしすぎてしまうこともあり得ることを覚えていてください。それにより、ケトルベルがほぼまっすぐに身体に沿って落ちてきて、ムチのように肘と肩が引き伸ばされます。孤の軌道を全て取り除くのではなく、短くしたいのであり、 スムーズなバックスイングへの移行のためには幾らかのスペースが必要なのです。 さあ、ケトルベルを掴んで、「ミヤギ」をやってみましょう!ケトルベルを後ろに引き上げ、股関節を前に弾いて、肘を曲げ、頭上でケトルベルをロックアウトするまでフェンスにペンキを塗るように挙げましょう。軌道を逆戻りさせて繰り返しましょう。もしそれが今までと違うように感じたなら、あなたはJC Pennyで売っているベストキッド(原題:空手キッド)の黒帯を得るに値します。 さて、ここから「ピンボール」を使います。今までに100回以上、スナッチのテストを完了させ、目撃し、そして運営してきた中で、もう一つ、頻繁に起こる(そして致命的な)間違いに気づきました。多くの人がスナッチを重ねるにつれてヒンジ動作が浅くなっていき、そしてこれが起きると非常に大きなパワーを産み出す能力を失うことになります。 あなたの股関節は、ピンボールのハンマーです。ケトルベルがピンボールです。股関節を深く後ろに引いてヒンジポジションにします(常に肩を股関節より高く、そして股関節を膝の上に保ちながら)。「フェンスを塗る」ようにスナッチの下降エキセントリック局面になるにつれ、深いヒンジ動作によって「ハンマーを引き」、それから臀筋を 強くそして素早く絞るように収縮させ、足で地面を押し出して、まっすぐに立って、「フェンスを塗る」!ケトルベルは頭上に舞い上がるでしょう。 「ミヤギ・ピンボール」の練習に役立つ組み合わせです: 高重量のデッドスイング×5回 スナッチ×片腕5回*「フェンスを塗るように」を忘れずに 高重量のデッドスイング×3回 スナッチ×片腕8回 高重量のデッドスイング×1回 スナッチ×片腕10回 これが効果的な理由は次の通りです: ケトルベルスナッチは効率性が全てです。孤の軌道を短くするということは、ケトルベルを短い距離で頭上まで投げ出さなくてはならないということです。また、孤の軌道が短いとロックアウトに近づいたときのケトルベルの勢いを小さくすることができます。これにより肩の消耗のリスクを大幅に減らすことができます。ケトルベルを振り上げるために股関節を使うことは、肩と腰を健全に保ち、同時に高回数のスナッチを行うときの不要な疲労を減らすことができます。 上記のことはRKCスナッチテストに合格するために役に立つと思いますか? 私はそう思います。

コーチ・フューリー 2110字

減速の方法

スポーツの場面では、あまり見かけることのない純粋な減速。純粋な減速の動きと方向転換のための減速&再加速の動きの違いを理解してコーチングできていますか?SAQのスペシャリストであるリーのビデオを御覧ください。

リー・タフト 4:41

Kaori’s Update #28 - MRT:メタボリックレジスタントトレーニングとは

コーチ・ドスが紹介するメタボリックレジスタンストレーニングとは、どのようなタイプのトレーニング方法なのでしょうか?ワークとレストの組み合わせが変わることで、期待できる効果がどのように変化するのでしょうか?

谷 佳織 6:24

ハイプル

肩の後ろ側にある筋群の働きを整えることで、オーバーヘッドの腕の動きを改善することができれば、肩の動きの機能の向上に繋がります。効果的に使えるドリルであり、スナッチテストに向けて練習する人にとっても効果的な、ハイプルのドリルをキャシー・ドゥーリーがご紹介します。

キャシー・ドゥリー 4:36

内転筋を自由に!

股関節内転筋群の可動性の有無は、様々な動きのクオリティーに関わっているのに、あまり注目をされることがないエリアではないでしょうか?内転筋を自由にするためのロッキングのドリルを是非お試しください。

オリジナルストレングス 3:07

エキスパートとグールー:その違いは?

グールーとエキスパートの違いは何でしょうか?辞書によると2つの言葉は基本的に同じ意味を持ちます:特有の分野において高度な知識を持つ人。しかし、ある状況において、グールーという言葉は間違いなく好ましくない意味を含んでいます。人々はエキスパートを尊敬しますが、グールーのことは崇拝し、彼らがもの凄く非現実的なレベルの知識と力を持っていると想像します。科学の分野では、それが問題なのです。 その人がグールーまたはエキスパートだということは、見る人によって変わるのでしょうか?人気があるからといって、その人を非難するのはフェアではないでしょう。リチャード・ファインマンやアルベルト・アインシュタインは、尊敬されていたがために「グールー」なのでしょうか?彼らを嫌っている人だけがそう言うでしょう!その人の誇張された名声−嘘っぱちの資格を作り出したり、人々の無知さに付け込んだり−を非難できる場合のみ、その人をグールーと呼ぶべきでしょう。 見たことがあるであろう、素晴らしいグラフ(サイモン・ワードリーより)に基づいた、もう一つの区別の仕方があります。このグラフは、実際に持っている知識の量に対して、知っていると思っていることの量と、知らないと実感していることの量の関係性を示しています。 真ん中のステージを見てください:「ハザードゾーン」では自身の知識のレベルをかなり過大に評価し、知らないことの量を過少に評価します。あっていますか?多くの人が一度や二度このゾーンに入っていたことがあると思います。 このグラフに基づいて、ハザードゾーンで導き出された意見を売り込んでいる人気の先生をグールーと定義できると思います。グールーはビギナーに感銘を与えるだけの知識はありますが、本物のエキスパートではありません。彼らは、カリスマ的な個性、マーケティングの優れたスキル、他人を助けたいという本当の欲求、そして彼らの推測に反する情報を学ぶことに対する興味の欠如を持ち合わせています。 残念なことに、慢性痛を含む健康に関する分野で人気の非常に多くの先生達は、グールーでありエキスパートではありません。もし、あなた自身が「エキスパート」ではなく、または「ビギナー」でしかなかった場合、どのように見極めればよいでしょう?答えはグラフにあります−グールーは自身の知識の限界を知らず、そのためそれについて絶対に言及しません!本当のエキスパートは、自身の理解度、問題の複雑さ、逆説、または対立するエビデンスの存在に言及します。 例えば、ロリマー・モーズリー、ポール・ホッジスやグレッグ・レーマンのよう人々は、痛みと動作の研究と調査に長年を費やしてきましたが、自分たちがどれだけ知らないということを彼らの聴衆に度々思い起こさせていました。彼らが、自身の知識をどのように応用してある問題を解決するかを問われた時、彼らは度々「一概には言えない」、「もっと情報が必要だ」や、それどころか「誰も本当は知らないんだ!」と答えます。 この謙謙さは、痛みの科学の現状に対する正確な知識を反映しています。痛みの複雑さを理解は、ようやく前進し始めたところなのです。おそらく、物理や科学の分野のようにエキスパートによってほぼ解明されているものもありますが、慢性的な痛みについてはその通りではありません!運動制御やバイオメカニクスもそうです。これらの分野に対して全てを知っている様に振る舞う人は、ほぼ間違いなくエキスパートではなくグールーでしょう。 例を挙げると、動作や徒手療法のグールーは、慢性的な痛みについて、それは独特の方法や計画にそったり、トリックや秘訣、裏技などを駆使したりすることで簡単に解決できる問題だと語るでしょう。 腰痛?コレクティブエクササイズのグールーは、本当の問題は、コアの筋力不足や骨盤の前傾、股関節屈曲筋の硬さ、または臀筋の弱さではないか、とすぐに教えてくれるでしょう。そして、痛みをなくしたり、または完全に消し去ったり、そのプロセス内で腰痛への耐性をつけさせるような簡単なエクササイズを提供してくれるでしょう。 マッサージセラピストのグールーは、様々な処方の組み合わせをしますが、同時に自信満々に、どの筋肉の固まりや筋膜の癒着が問題を起こしているかを教えてくれるでしょう。カイロプラクターのグールーはどの脊柱がずれているか見極め、姿勢のグールーは、ほとんどの腰痛は座位や立位の時に、ある特定の筋群が活性化されてないためである、と説明してくれるでしょう。そして、彼らは肩痛や足痛、膝痛などに対しても同様に自信に満ちた処方をするでしょう。 この様に早くて簡単な解決策、特に同じ分野の異なる10人の「エキスパート」が、同じ問題に対して全く違う10通りの解決策を出した時には、極度の疑いの目を持つべきです。もしこれらのエキスパート達の一人が本当に全てを解明していて、難なく痛みを取ることができるのであれば、説得力のあるエビデンスを用いてそれを証明するのは比較的簡単なはずです。もしできたのであれば、世界中で一番大きくて難しい健康に関する問題を解決したとしてノーベル医学賞を受賞するでしょう。 私はとても好奇心が旺盛で、様々な分野−栄養や経済、政治、スポーツトレーニング、社会学、心理学、動作、痛み等についてオンラインで読みます。私はこれらの分野において本当のエキスパートではありませんし、いくつかの分野ではビギナーのレベルでしょう。そのため、私が読んでいるものに、明らかで重要な欠点があることに気づくほどの知識がありません。それでは、私は誰を信じれば良いのでしょう?私は、問題の複雑さと不確定さを認識し、自身の知識の範囲を打ち明け、対立するエビデンスによって考え方を変え、異なる意見を敬意をもって考慮する人を信じます。そして、私は、これとは反対のことをする人達を避けます。 実際に、この二つのスタイルの違いを理解するのは難しいことではなく、その違いを認識する方法を学ぶことがエキスパートとグールーを見分ける最良の方法なのだと思います。

トッド・ハーグローブ 2538字

WOW:バーベルコンプレックス

バーベルを使用した3種類の動きを5回ずつ組み合わせたシンプルな”コンプレックス”で、心臓血管系の機能向上と強化の両方の達成を目指すトレーニングの例をコーチ・ドスが紹介します。ワークとレストの割合にご注目ください。

コーチ・ドス 2:22

知識は力なり ー 腰痛を患っている人たちが知るべきこと

ここに、腰痛を患っているみなさんに知ってもらいたい情報を紹介します。初めて腰痛を経験する人、または何年にもわたって腰痛を患っているみなさんへ。 腰痛についての情報 腰痛はよくあることです。毎年最大20%ぐらいの人は、毎年何回か腰痛を経験する可能性があり、なんと私たちの80%は、生涯のうちに腰痛を何回か経験するようです。実際、腰痛を経験したことのないという方が珍しいかもしれません。 腰痛は6週間ぐらいまで長引くことがあります。これは、みなさんが予想する以上に長いかもしれません。ですから、少し長引いたからといって過度に心配する必要はありません。たった数日で治まる痛みが多い一方、長引くこともよくあるのです。 長期的に続く腰痛を患い、そのことで多くの問題を抱えている人がみなさんの周りにもいるとは思いますが、実際には通常より長く継続する腰痛を患う人は約10%から25%です。つまり、腰痛が6週間以上は続かないという望みは高いということです。 肩や足首、膝の痛みのように他の身体部位の痛みと何ら変わりはありませんが、腰痛はより以上に心配される傾向があります。 痛み自体は正常であり、怖がることではありません。痛みは、私たちを守ってくれる防御機構なのです。これなしで生きていくわけにはいかないのです! 腰部にしても他の身体部位においても、痛みは身体的状況を正確には反映してくれません。たいした損傷がないにも関わらずひどい痛みに襲われることもあります。紙で指を切ってしまったことやハチに刺されたことを考えてみてください。強烈な痛みではありますが、それほど損傷を負ってはいないのです。 診断 腰痛において診断を下すことは厄介なことが多いですが、患者はたいてい答えを求めます。助けるために必ずしも明確な答えが必要であるということではありません。 分かっていることとして: 腰痛の圧倒的多数、実に99%は重症ではありません。残りの1%は骨折や癌が考えられるにしても、頻度としては大変まれなことです。 約10%は、椎間板や神経など特定の組織に絞り込めます。 これらの統計から、その腰痛が「すべり症」や神経障害である可能性は少ないことを示しています。これらの用語をよく理解しないまま腰痛の原因として安易に口にする人が多く見受けられますが、それでは解決になりません。 セラピストは、腰痛がその10%に当てはまる問題であるかを調べるテストをします。筋力や知覚、反射テストだけではなく、神経や神経根の臨床テストもあります。 MRIのみから診断するのは大変困難です。多くのMRI所見は、痛みを持たない人にでも存在するからです。つまり、画像と伴に臨床テストが不可欠なのです。 MRIの所見は、痛みを映し出すことはできません。 ですから特定の組織や病理に絞り込むことは、9割は不可能です。狭いスペースにさまざまな無数の組織があり、それらがもし刺激を受けたり炎症を起こしたりしているならば、その影響はひとつの組織には収まらないでしょう。 炎症は良いことです。これは身体がしっかり機能しており、修復の役割を果たしていることを意味しています。 医学的見解から、この種の腰痛はいわゆる“非特異的”と呼ばれ、重大な問題はないということで、私たちはこれを前向きな診断と考えるべきです。かなり痛いですけれども。 “非特異的”という用語は、組織に対してという意味であり、あなた自身に対して非特異的であるとか、あるいは原因がないということではありません。あなたの痛みは必ず本当に存在しており特異的なのです。 非特異的な痛みに厳密な病名を付けることができなくても、たいてい運動に対し良好な反応を示すので、効果的な処方ができないとか腰痛が発症した原因についての基本的な説明ができないということではありません。 その他の要因 さまざまな多くの要因(あなたが考えたこともないような多くのこと)が、腰痛に影響することがあります。 このことは、腰痛が別の生き物であるかのようにあなたは感じるかもしれませんが、恐らく、潜在的なすべての要因についてまだ知らされていなかったか考慮していなかったからかもしれません。 これら他の要因には、異常な睡眠、仕事と家族など生活から来る多くのストレス、この痛みは決してなくなることはないだろうという感情、腰痛に対するネガティブな考えや、日常的な活動を行うことに対してのネガティブな気持ちなどがあります。 脊柱の姿勢や骨盤の傾き、小さい筋が発火していないとか、腰痛を起こしている部位の位置を戻す必要があるとか、そういうことではないかもしれません。どうしてそのようなことが言えるのでしょうか? 私たちは、このようなことを嫌というほど勉強してきました。 このような説明をあなたがセラピストから受けたとしたならば、そのセラピストはこの分野の最新の研究に精通していないのかもしれません。これまでに、たくさんの意見を提供され、そして、たいていそれは混乱を招くだけだったでしょう。ここで、この分野の科学的データを認識する必要があります。 治療 残念ながら万人の腰痛に効く魔法のような治療はありません。 ひとつの問題だけとは限らず、いくつか異なる問題が同時に起こっているかもしれません。小さな痛みでも、あなたを過敏にさせるような他の要因によって増悪するかもしれません。 セラピストは、基本的なアドバイスを提供したり、より専門的な介入が必要であれ他のセラピストを紹介したりすることができます。 数時間や数日間など短期的に役に立つさまざまな治療法はたくさんありますが、自分の回復を単に他人の手に委ねてはいけません。そうなると長い目で見ると悪化させることが分かっています。 短期間であれば増悪するような活動は避けなくてはならないかもしれませんが、いずれはその活動に必ず戻るようにしましょう。長期的には何も制限するべきではありません。違うことを言う人がいても気にしないでください。 腰部を保護する必要があると感じている人も、結果的には悪化させるかもしれません。 自分にとって何が効果的か、また何が悪化させるかを学ぶことは、腰痛に対処する上で重要です。あなたのセラピストがそれを行う手伝いをするべきです。 運動やエクササイズも効果的かもしれません。 残念ながら、腰痛に効く魔法のようなエクササイズはありません。何でも楽しめそうなものを見つけ、行ってみてください。ピラティスでも筋強化トレーニングでも、友達とスポーツをしたり、ただ単に公園へ散歩にでかけたりするだけでもいいのです。 強くなるために、あるいは体力をつけるために自分を追い込まなくてはならないと思わないでください。でも、時には疲れるほど身体を動かしてみるのもいいでしょう。身体はその動きに慣れてきます。 運動やエクササイズは、身体に自信を取り戻してくれます。身体的問題を治すよりも、このことの方が回復のカギとなるかもしれません。 長引く腰痛 持続する痛みに対して一般的に使用される用語に慢性疼痛があります。慢性という言葉には「悪化する」という意味は含まれていません。実は、3ヶ月以上続く疼痛を表す一般的な用語です。 もしあなたが自分の痛みや回復に対してとてもネガティブな考えをしたり、特定の行動を避けたりするなど活動面での振る舞い方を変えてしまうとすれば、腰痛に対する私たちの反応が、どのぐらい長引かせてしまうのかに影響するかもしれません。 持続的な腰痛を防御機構として捉えることもできます。このような場合、痛みが役割を果たし過ぎているということになります。 痛みは正常で好ましいことですが、これを赤ワインによく似田母野として捉えることもできます。少量であれば素晴らしいものですが、素晴らしいものでも飲み過ぎては二日酔いになってしまいます。 最近では持続的な痛みを、身体の状態を単に反映する反応ではなく、防御機構そのものの問題と捉えています。 痛みに関与するメカニズムを治そうとすればするほど、痛みを強く感じるのです。ジムで上腕二頭筋を鍛えているのに似ています。筋肉と同様に、防御機構も順応することができ、これまで以上に保護してくれるようになるのです。 このことは、これまで痛みを感じることがなかったようなことが、今や痛みを感じさせ、これまで正常であったことにとても過敏になり得ることを示しています。 以上のことすべては、あなたの症状の改善は見込めないと言っているのではありませんが、痛みの「スイッチを切る」というような単純なことではないということです。

ベン・コーマック 3642字

フィボナッチ、螺旋と人間の動き

フィボナッチ数列は、数学的連続としてよく知られている数列です。フィボナッチ数列とは、数字が直前の二つの数字の合計になっている数字の連続です:0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34....というように。これらの数字は、自然界、建築、銀河系、そして、この後述べる動きなど、多くの形で出現していることがわかっています。 フィボナッチの本名は、レオナルド・ピサノで、12世紀の終わりにイタリアのピサで生まれました。1400年代の学者が、レオナルドの、現代は有名な本である「算盤の書(原題:Liber Abaci)」の手書きのコピーを間違って解釈したために、彼はフィボナッチとして知られるようになりました。フィボナッチが、今では有名な数字の連続の発見のきっかけになった、ウサギの群れの成長に関する疑問を思いついたのもこの本でした。偶然にも、「算盤の書」は、私たちが今日も使っている数字のシステムについて、彼が初めて述べた本でした。彼は、旅の途中で似たような法則に気がつき、その0-9の数字のシステムが、商人が共通性を持つために使ったり、異なる地域の異なるシステムで利用したり、より複雑なその時代のローマ数字を使ったり、様々な方法で使えることを説明しました。 フィボナッチ数列は、数字の連続それ自体の重要性を超えて、図表的に、幾何学的形状の連続として表すことができ、相互に組み合わせていくと「黄金長方形」、つまり審美的に最適な比率の長方形の連続が創り出されます。さらに一歩踏み込み、それぞれの長方形から四分円を描くと、螺旋ができます。これは完璧な螺旋ではありませんが、自然界において様々な形で見ることができるものです:カタツムリや貝殻の殻の形、ゼンマイ、波、竜巻、そして銀河系それ自体にさえ!そして、この長方形の縦横比が「ファイ(φ)」の数—1.61803…(無限)と同じになる、つまりは「黄金比」がありますが、これについては、まとめて全く違う投稿ができるでしょう。 フィボナッチ螺旋 - 自然界のDNAの螺旋の鎖から竜巻、広がり続ける銀河系まで! では、これがどのように人間の動きと関連しているのでしょうか?フィボナッチ螺旋を単に全てのものの上に置きたくないことは承知の上で、これが非常にうまく当てはまるものがあります。これから述べる例は、これまでにはこのような解釈では考えられたことがない、真の機能的構造を正しく認識することに役立つツールであり、リハビリやトレーニングの際にどのようにキューを与えるかの助けにもなるかもしれません。 波は周期的な螺旋の素晴らしい例です まず、私の娘のナタリーが水から髪をかっこよく引き上げている写真(数年前のもの)から始めましょう。間違いなく、この写真の色彩とかっこよさが、この写真をを楽しいものにしています。 この写真を見ることを、これほど心地いいものにしているものは何なのでしょう? この写真に螺旋を加えてみたらどうでしょう?この側面を考えると、何がこの写真を「黄金」にしているのかの説明に役立ちそうです。 幾何学を重ね合わせた時、多分これが、この写真をめちゃくちゃカッコよくしているものなのでしょう。 では次にスプリントを見てみましょう。特にスタートの時です。この写真のアスリートは、はっきりと、スタートブロックから飛び出すのに非常に良い直線を描いており、レースのスタートにおいて、可能な限り効率的で強い、素晴らしい身体のポジションを取っています。 間違いなく、彼はこのスタートの練習をしてきています… 彼は小さく丸まったクラウチングポジション—コイルのように巻き込んだポジションからスタートし、ピストルスタートの音が鳴る瞬間に潜在的なエネルギーを創出しようとしています。ここで、彼の「コア」を中心にして、スタート時の腕と脚の動きを螺旋の小さい渦巻きとし、レースに入っていくに連れ、より大きな螺旋へと漸進していくのを表し、フィボナッチ螺旋を適応してみると何が起こるかを見てみましょう。彼の凝縮された渦巻き構造から、徐々に運動エネルギーが放出され、本質的にスリングショットのように彼の身体をトラックに押し出すのを助けています。 肋骨が前方、下方、後方へ回旋し、腕と脚が前方、下方、後方へ、押し出される 同じスプリンターを例にして、今度は内部ではなく、外部に注力して考えてみると、同様の螺旋を地面とスプリンターの関係性から描く—地面がスプリンターの下で回旋し、本質的に彼を前方へと推進する手助けしている--ことができます。もし彼がこれを視覚的に「見る」ことができれば—トラックの前方をまっすぐ見つめると同時に、固有受容的に地面が彼の下から転がるように上がってくるのを見る--、スプリントの技術を助ける他の感覚の活用にも非常に役立つでしょう。 地面が下から上がってくると同時に、地面を押し離す これと同じ法則を頭において、人間の機能をより深く見てみましょう。その良い例は、横隔膜であり、無意識の安息時の周期性呼吸(安静時の通常の呼吸)、無意識の能動的な呼吸(エクササイズ時に起こる)、意識的な周期性及び能動的呼吸(意識をして能動的に呼吸のメカニクスを変える時に起こる)の際に、側方への理想的な胸郭膨張が起こるように、どのように横隔膜が位置されているべきかということです。腹筋群は、横隔膜のこの引く力に相対する為に、能動的に肋骨を下方、後方の位置に維持できるべきです。これは、理想的な呼吸のメカニクスを維持するのに役立つだけでなく、相互に機能的な関係性を保つ理想的な胸郭と骨盤のポジションを維持するのにも役立ちます。フィボナッチの原則をこの仕組みに応用すると、自己完結型の、活動の巡回螺旋が出来上がります。この紫の矢印を見ると、これら全てが同じ方向へ向かってはいないことに気がつきます。息を吐き出し始めると、横隔膜が上がり、あるいは半球形に膨らみ、まずはより後方に、それからより前方へと動き、渦巻きが巻き上がり始め、前側/外側の層は、呼気のサイクルを終えるために、下方、後方へと下がってきます。これがどのように見えるかの例としては、あなたが柔軟なテープメジャーを持っていて、そのメジャーを戻して、しっかりと巻き上げたい場合に、巻き上げていく過程で、巻かれた中身または中心の部分を回旋させ、下記の図の外側の矢印と同様に、外側の部分を実際に反対方向へ引いて、きつく締め、最終的にまとめ上げることです。これはより完全に近い、深い呼気であり、再度吸気が起こる際に、外側の層(例 腹部と肋骨/骨盤のポジション)がこの状態を保つことを可能にします。理想的な呼吸機能の重要な構成要素です。

マイケル・ムリン 2812字

なぜ私は機能不全の状態で強化するのか

理学療法で一般的に認められている原理は、機能不全の状態で強化しないということです。その背景にある考えは、間違いなく多数の異なる方法で見ることができますが、私はいつも、もし誰かが痛みを持っていたら、ただそれを無視して無理をしながら一生懸命トレーニングをするのではなく、潜在的な痛みの原因であるものを、それがなんであれ“治そう”とするべきだと意味していると解釈してきました。 動作の質の世界では、もし誰かが膝の痛みを抱えていたら、それは彼らの呼吸パターンやコアの“運動制御”を“修正”すべきだとか、動作パターン/運動学を変えるべきだとか、臀部を活性化すべきだということを意味するかもしれません。根本的に、それは局所的相互依存の臨床症状なのです。もしある人が“下手に”動いているなら、彼らのゴールである活動(ランニング、ストレングストレーニング、など)を始めるために、その下手な動きは修正されなければならないということを意味しているのです。 私は多くの部分において(例外はあるはずだと認めています)、そうする必要はないと主張します。人々が痛みに打ちのめされ、彼らを敏感にさせているものを無視すべきだと言っているのではなく、私たちは順応することができ、私たちが動作において欠陥だと考えるものは痛みと無関係であるかもしれないと主張しているのです。その人が一番やりたいこと(例:ランニングやストレングストレーニング)は、彼らが”治る”まで避けられなくてもよくて、彼らはそれらのことを今すぐに始めることができると言いたいのです。 誰もが機能不全の状態で強化をしても良いいくつかの例を挙げましょう。 1. 膝蓋大腿痛症候群:たしかにあなたは誰かの歩容を変えたり、どのように階段を上るかを変えたり、あるいはスクワットパターンを変えることができます。これらはすべて一時的に感作を減らすもので、膝の痛みを“落ち着かせる”ことができますが、あなたはこれらのことをしなくてもよいし、それらが永遠にされなければならないわけではありません。これらを行いながら、さっそく膝に負荷をかけ始めるべきです。痛みのある場所とそこから離れた場所の両方にシンプルなストレングスエクササイズを用います(こちらをご覧ください)。シンプルなローディングが膝の痛みの助けになり、これらの効果が動作パターンの変化には関係しないことを示しているたくさんの良い研究があります。それは、ある人がかなりの膝関節外反を伴っても走ることができ、痛みを解消してもう悩まされないようにするために、膝関節外反が変えられる必要はないことを意味しているのです。治療家が感作を引き起こすその他の要因に対処したり治療をすることで、感作が減り負荷耐容性を改善しました。 2. 腱障害:この機能不全は強化するべきです。動作の質を変えることよりも、負荷のマネジメント(すべての生物学的及び心理社会的ストレッサーを意味する)が、これらのコンディションを治療するために重要だという非常に多くの証拠があります。もしあなたのアキレス腱が痛いのであれば、それに対して毎日ストレングスエクササイズで負荷をかけ、頑張らせ、順応するよう求めるのです。あなたが無理をさせすぎて、より多くの痛みをもつことを“学ばなければ”、スポーツをし続けることができます。ストレングストレーニングは、腱が負荷に耐える許容量を改善し、鎮痛剤としても機能する上に、その人に有意義な活動をし続けさせることは、感作を減らすものと考えることもできます。私たちは動作の現存について必要以上に騒ぎませんが、その代わり、身体はストレッサーに順応するという事実を患者に納得させます。痛みとは正常なもので、損傷を示しているわけではないのです。痛みがないというのは変なのかもしれません。私たちは痛みを抱えながら運動に参加し続けることができ、順応するにつれてよくなっていくでしょう。私たちは、彼らの生活の中にあるすべての感作要因(ストレス、睡眠、感情的健康、痛みについての信条)を探し、それらに対処することも考えます。 3. ACL傷害予防でさえも:組織にかかる負荷がその組織の耐性を超える高負荷の活動は、生体力学と動作の質がもっとも重要となるエリアです(IMO)。屋根から飛び降りるよりも、もっといい方法がありますが、動作のテクニックが重要となるこれらの例においてさえも、まだ基礎的な筋力が重要だといういくらかの驚くべき(推測するに、何人かにとっては)研究があります。神経筋系トレーニングがACL傷害のリスクを下げうるといういくつかの証拠は存在しますが、これが被験者の動作の質が変わったということを必ずしも意味するわけではないのです!衝撃ですね。Zebis氏(2015)による研究を見ると、動作に関連する運動学も運動力学も介入後に変化していなかったことがわかります。ですから、ここでもまた、介入は、私たちがしばしば重要だと考えている変数を変える効果を持っていなくとも、よい治療上の成果があるのです。 4. 肩:肩甲骨の運動学を修正することは、ただ忘れてしまいましょう。全く必要ありません。もしローテーターカフが痛むなら、それを鍛えましょう。肩甲骨に焦点をあてたエクササイズをすべきですか?もちろんです。なぜそれらが助けになるのかわかっていますか?もちろんわかりません。それらは一貫して運動学を変えますか?いいえ。それらは一貫して発火パターンを変えますか?いいえ?それらに治療上の効果を得られなければなりませんか?いいえ。素晴らしい。痛い部分を局所的に、そして離れたところに負荷をかけ始めましょう。これは治療的です。いくつか他のこともするかもしれません。それはあなたにおまかせします。 それでは、動作パターンはどうなのか? 私は、その人がどう動くかを変えるなと言っているのでしょうか?いいえ。それには意味がありますが、多くの人があなたに信じさせたことよりもっと単純です。もし何かが痛むなら、私たちには4つの選択肢があると言っていいでしょう: 1. それを避けて、痛い箇所にニュートラルで負荷をかける 2. 動作を変更し、動かし続ける(例:リフティングで肩の痛みのために胸部の位置を変える)*これは機能不全の状態で強化をしないこととよく調和したアプローチでしょう。 3. ゆっくりと動作を試し、その人に感作を減少させるよう求める(“エッジワーク”と呼ばれる、習慣性を利用した段階的な露出アプローチ) 4. かなりの負荷をかけて肩に順応するよう求める(恐らく低感受性コンディションに最も適切でしょう) これらのケースで動作を変更させるものを用いると、多くの人は、私たちが動作パターンを“理想的”あるいはより良い動作の質に変えているに違いないと言うでしょう。しかし、ただ何か違うことをしているだけだと私は主張します。私たちは新しい動作の選択を築いていて、それが身体の脱感作につながるのです。これは、多次元的な感作の本質を扱う他の治療と連携して行われるかもしれません。しばらくしたら、あなたは新しい動作パターンを行う必要などなくて、かつては過敏だったけれども今はそうでない古いパターンに戻ることができるでしょう。このアプローチは認知機能療法の文献の中でもっともよく説明されています。動作の習慣は変えられていますが、永遠に行われるものではありません。いくつかの良い例は、このサイトとこのサイトをご覧ください。ロウワーの例はとても興味深いものです。それは、痛みがやわらげられて、有意義なタスク(ロウイング)中の、多くの人が間違っていると考えるかもしれない脊椎の動きの習性には、何の変化もないことを示しています。 動きを間違っていると見るかわりに、多分私たちはそれらを過敏であると見るべきなのでしょう。 ここでの全体的なテーマは: 動作準備は動作の質に勝る 例外があることはたしかにわかってはいますが、大概私は身体を強く、たくましく、そして順応できるものとして見ています。ゆっくり、段階的に準備すれば、彼らは私たちが与える要求に順応できるのです。 言い換えれば、誰も走る権利を得る必要はないのです。もし何か修正する必要があるとしても、ランニングを再開していいと許可をするというのはめったにないでしょう。もしあなたが彼らに、ひどい動作パターンを持っていますよ、呼吸が下手ですね、モビリティがひどいです、などと伝えるなら、恐らくあなたは彼らを過敏であり続けるように仕向けることになるでしょう。そうではなく、彼らのトレーニングやライフスタイル、そして彼らのストレッサーすべてを見ることができます。生態系を過敏にさせうるものすべてです。シンプルに問いかけてみます: 「何があなたをより健康にできるでしょう?」 順応には時間がかかる(そのため痛めつけることはしない)ことを尊重していますが、私たちが生体力学的な“修正”がまず必要だと伝えることなく、人々は有意義なことを始めることができます。それらの生体力学的“修正”のいくつかは、確かに役に立つでしょう。私はそれらが助けにならないとは言っていません。ただそれらが常に必要だというわけではないのです。時には十分でしょうか?間違いありません。そしてそれらは、生態系の脱感作のための全体的なアプローチの一部でさえあるのです。しかし私は、もしあなたがそれらを行いたいのなら、有意義な活動への段階的な露出アプローチと共に行うことができると主張します。 そしてあなたはおそらく、修正しなくてはならないという感覚から、代わりに私たちが手助けすることがより重要であるという考えへと移行することができるでしょう。

グレッグ・リーマン 4048字

バックスクワットのバイオメカニクス パート1

スクワットは、膝と股関節の筋群のためのよく知られたエクササイズであり、リハビリのプログラムにもよく使われます。バイオメカニクス的に、スクワットはクローズドチェーンの動作であり、足関節、膝関節及び股関節を同時に伸展させる必要があります。スクワットは、足幅(相撲スクワット)や、足のポジション(片足やブルガリアンスクワット)、負荷をかける場所(フロントスクワット、シッシースクワット)、深さ(フルスクワット、浅いスクワット)などのバリエーションを含む、様々な方法で行うことができます。しかし、これらのバリエーションは、どれも膝関節にかかる力や筋の動員パターンに影響を与えることを気に留めておくことが重要です。例えば、ディープ(フル)スクワットの安全性については、多くの議論がされています。コーチ達は、膝の可動域(120〜140度)や大腿の角度(床と平行以下)を見る事によってフルスクワットを定義することが多いようです 。 スクワットの深さは、多くの議論の対象になっていて、一部の研究者は、フルスクワット中の膝への圧縮力の大きさについて懸念を示していますが、この懸念は、ストレングス&コンディションニングの第一人者である全米ストレングス&コンディションニング協会(NSCA)により払拭されています。NSCAのスクワットエクササイズについての方針書では、これらの懸念を払拭し、フルスクワットは膝関節を危険な圧縮力にさらさないことを証明した強力な科学的なエビデンスを提示しています。興味深い事に、研究者は、スクワット中の膝関節の屈曲角度が90〜100度の時に膝蓋大腿関節への力が最大になることから、膝関節への圧縮力はパーシャルスクワットの方が高いという報告もしています(1)。NSCAの方針書(5)によれば、スクワットは、その深さに関係なく、正しく実施され、なおかつ適切な監督下にあれば、安全性が高いだけでなく、膝関節への障害を著しく予防できるとしています。しかしながら、重要な事に、方針書の著者は、スクワットのボトムポジションから、上昇動作を助けるために反動をつけて(弾むように)立ち上がる事で、膝関節への機械的な負荷が増加すると報告しています。これは、典型的に下降動作(エキセントリック)から上昇動作(コンセントリック)への移行時に、スクワット中の力と筋への張力が最大になるためで、 筋の伸長は一般的にフルスクワットにおいてより大きくなります(1)。スクワットスタイルのケトルベルスイング(股関節のヒンジ動作パターンのスイングではなく)が、膝関節をケガの危険にさらし、膝関節の障害を有するクライアントに対して使用するべきではない理由が、まさにこれなのです。要するに、良いテクニックと適切な監督下で行われるフルスクワットは、膝関節に損傷を与えるものではないと思えます。 フルスクワットかパーシャルスクワットかという議論は、運動競技のパフォーマンスにも及んでいます。一部の研究者は、フルスクワットの方がパーシャルスクワットよりもより垂直跳びのパフォーマンスに有効であると信じています(1-3)。これと対照的に、他の研究者は、パーシャルスクワットにおける最大筋力は、スプリントや垂直跳びのパフォーマンスの強力な決定要因であると示しています(4)。フルスクワットと比較した時、レアその他、(6)は、パーシャルスクワットが、スプリント及び跳躍能力の両方により大きな効果の転移をもたらし、また、パーシャルスクワットを含むワークアウトは、スポーツスキルのより大きな向上につながったと報告しています。しかし、この研究(6)の著者は、一般的なスポーツのコンディションニングのプログラムに、フルスクワットが有益であるとも認識しています。パーシャルスクワットによってスプリントと跳躍パフォーマンスの向上が見られた理由は、スプリントと跳躍における股関節と膝関節の可動域が(パーシャルスクワットに)類似しているためでしょう。しかし、パーシャルスクワットにもデメリットがないわけではありません。例えば、最近のケーススタディにおいて、甲谷その他(1)はバレーボール選手に、パーシャルスクワットをより高重量(体重の1〜1.2倍)で処方した場合、腰や膝の不快感が増すとの訴えがあったため、女性のバレーボール選手にはフルスクワットを選択すると報告しています。まとめると、これらの研究の結果は、フルスクワット及びパーシャルスクワット両方にメリットがあることを示唆しています。 フルスクワットは、一般的なコンディションニングに関するメリットがあり、垂直跳びのパフォーマンスを向上させるためにも有効かもしれません。対して、パーシャルスクワットは、スプリントと垂直跳びの両方のパフォーマンスに対して明確なメリットがあるようですが、4分の1の可動域でより高重量を扱えるため、股関節と膝関節に更なるストレスがかかるというデメリットもあるでしょう。ファンクショナルトレーニングの指導者には、パーシャルスクワットかフルスクワットかの選択するにあたって、クライアントの過去のトレーニング歴や、現在の可動域の制限、そしてトレーニングの目標を考慮することを勧めます。 参照 Kotani, Y & Hori, N. From the Field – Directed Topic – The reasons why athletes squat deep in japan volleyball women’s national team. Journal of Australian Strength and Conditioning. 25(3). 2017. Bloomquist, K., Langberg, H., Karlsen, S., Madsgaard, S., Boesen, M.& Raastad, T. Effect of range of motion in heavy load squatting on muscle and tendon adaptations. European Journal of Applied Physiology. 113: 2133-2142, 2013. Hartmann, H., Wirth, K., Klusemann, M., Dalic, J., Matuschek, C.& Schmidtbleicher, D. Influence of squatting depth on jumping performance. Journal of Strength & Conditioning Research. 26: 3243-3261, 2012. Wisloff et al. Strong correlation of maximal squat strength with sprint performance and vertical jump height in elite soccer players. British Journal of Sports Medicine. 38. 2013. N.S.C.A Position Paper: The Squat Exercise in athletic conditioning: A position statement and review of the literature. こちらへ Rhea et al. Joint-angle specific strength adaptations influence improvements in power in highly trained athletes. Human Movement. 2016.17(1).

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バックスクワットのバイオメカニクス パート2

前回の記事では、パーシャルスクワットとフルスクワットの違いに注目しましたが、今回の記事では、スクワットの、下肢の関節にかかる力に与える影響に注目します。スクワットのバイオメカニクスについてのレビュー論文のなかで、Escamilla(2001年)は、スクワットのバリエーションにおける力や筋活動について述べています。スクワットが膝関節に与える影響を理解することは、FTI指導者や実践者が、リハビリ目的でのスクワットの使用を、詳細な情報を得た上で決断するための助けになるでしょう。 せん断力 膝関節に直接的に影響するせん断力には、前方せん断力と後方せん断力という二つのタイプがあります。後方せん断力は、脛骨を後方に引っ張り、後十字靭帯(PCL)に負荷をかけ、前方せん断力は、脛骨を前方に引き出し、前十字靭帯(ACL)に負荷をかけます(Abernethy 2013)。脛大腿関節にかかるせん断力を計算した研究は数多く存在します(Lutz et al. 2003、Wilk et al. 1996)。重要なのは、過度のせん断力が膝の靭帯にとって有害になり得るということです(Escamilla 2001)。ある研究は、スクワット中に中程度の負荷がPCLにかかり、その負荷は膝が屈曲するにつれ上昇すると示唆しています。PCLへの力は、1000~2000ニュートンの範囲の大きさで、膝屈曲角度が60度を超えると−大腿四頭筋が関節に後方せん断力を加える時−表れます(Escamilla 2001)。PCLへの最大の負荷は、4000ニュートンと推測されていて(Race et al. 1994)、そのため、スクワットは、健全なPCLを持つクライアントにとって十分に耐えられるはずのものです。PCLのけがから回復している人には、動作の可動域を、PCLの負荷がかかり始める60度以下の膝の屈曲に制限するべきでしょう(Escamilla 2001)。PCLとは反対に、ACLへの力は、大腿四頭筋が関節に前方への力を加える0から60度の膝屈曲角度で発生します。しかしながら、ACLへの負荷は小さく、最大で500ニュートンです。ACLへの最大負荷がおよそ2000ニュートンと考えると、スクワットがACLにかける負荷は小さいと考えられ、そのため、ACL患者のプログラムに組み込むことは安全と言えるでしょう。スクワット中に体幹の前傾を強めることによって(インクラインボード上でのスクワットがよく膝のリハビリプログラムに組み込まれるのはこのためです)、ハムストリングの活動が増加することにより関節への後方せん断力が増すため、ACLへのストレスが大きく軽減されます。しかし、膝の前方への動作が増すことによって、せん断力も大きくなるため、リハビリを行うクライアントは、膝をつま先より後ろに維持することによってこのような(膝が前に移動する)ポジションを避けるべきです。最後に、エクササイズを行うスピードもせん断力に影響します。ある研究(Hattin 1989)は、速いリズムでのスクワット(上昇1秒、下降1秒)が遅いリズムのスクワット(各局面を2秒ずつ)に比べて、最大で30%も大きいせん断力を生み出していると報告しています。したがって、ゆっくりとコントロールされたテクニックは、十字靭帯を保護すると言えるでしょう。 興味深いことに、挙上する重量が増しても、ACLやPCLにかかる力には、圧力と同様には影響しません。例として、Nisell(1986)がパワーリフターの最大250kgのスクワットの上昇局面における膝関節の負荷試験によると、関節への圧力と大腿四頭筋の発揮筋力がかなり高かった(8000 N)にも関わらず、ACLとPCLへのせん断力は上述の正常の範囲でした。このデータは、せん断力をコントロールするための関節の安定性にとって、より大きな関節圧力が重要であるかもしれないことを示唆しています。スクワット中の足幅も関節圧力を増加させるようで、より広いスタンスは関節圧力を15%増加させます(Escamilla 2001)。足幅はせん断力への影響はありませんが、せん断力はスクワットの上昇局面においてより大きくなります。重要なこととして、実用レベルでは、疲労が増すにしたがって、脛大腿関節へのせん断力と圧力も増加します。ほとんどのバイオメカニクス的な研究(Lutz et al. 2003、Wilk et al. 1996、Dahlkvist et al. 1982)は、少ないレップ数での分析ですが、実際には、患者やアスリートは多数のレップ数を数セット(例:4セット×8回)行います。以前に、Hattin(1989)は(スクワットの)リズムが膝関節へ与える影響を調査する研究を行いました。この研究では、最大で50回のスクワットを異なる負荷(1RMの15~30%)で行いました。その結果、せん断力と圧力が、最初のレップから最後のレップにかけて25~80%増加したと報告しています。これは、膝関節への負荷が、最後の数セットの終盤にかけてより大きくなることを示唆しています。新規または機能的なトレー二ングを行ったことがないクライアントに対しては、処方したスクワットの量を徐々に増加していくことが大切なのはこのためです。 圧力 研究者達は、スクワット中に脛大腿関節にかかる圧力の計算も行いました(Dahlkvist et al. 1982、Escamilla 1998)。膝蓋大腿関節への圧力は、膝蓋の内側と膝蓋と大腿骨との関節結合部の間の接触によって起こります。この負荷は、脛骨と大腿骨が接合している表面にかかります(Escamilla 2001)。このような圧力の計算結果は、500から8000 Nに及び、スクワットでは負荷が増すにつれて圧力も増加します。1RMの70%の負荷でのバーベルスクワットでは、膝蓋大腿関節への圧力の計算から、関節にかかる力は体重の4から7倍になると示しており、これは約4000から5000 Nに相当します(Escamilla 1998)。 これらは、一般的にリハビリプログラムの初期において多くの患者が行う重量より大きく、患者の怪我が癒えて筋力を再獲得するまでは、リハビリの中でこれほどの負荷を関節にかけることはないでしょう。最大圧力がかかるのは、膝の屈曲角度が最も大きくなった時で、一般的には90度以上です。膝蓋大腿部に障害を持つ患者(例:膝蓋軟骨軟化症)は、負荷が適切である0-50度の範囲でスクワットを行う必要があります。これらのデータから、圧力を極力低くしたい時は、広いスタンスよりも狭いスタンスでのスクワットが適していると推測されます。加えて、圧力はスタンスを広げるにつれ増加します。例えば、Escamilla(1997)は、広いスタンスでのスクワットにおいて、下降中の膝蓋大腿関節への圧力が15%増加したと報告しています。さらに、スクワットを、バーベルを肩峰より下で保持するローバーのポジションで行うと、動作中により大きな体幹と股関節の屈曲が起き、膝蓋大腿関節へかかる力が減少します。このデータは、膝痛または膝の障害を持つクライアントは、膝蓋大腿関節への圧力を最小限にするために、狭いスタンスのローバースクワットを行うべきであることを示唆しています。最後に、スクワットにおいてバーベルを保持する位置は膝への圧力に影響します。Escamilla(1997)は、スクワットをローバーポジションで行う事で、膝への圧力が減少すると報告しており、したがって、この方法が、過去に膝の痛みや障害があったクライアントがスクワットを行う時に適していると言えます。加えて、体幹の前傾を増加させるローバーポジションのスクワットは、より大きなハムストリングの活動とより少ない大腿四頭筋の活動が部分的な要因となって、ACLへの負荷を減らし(Ohkoshi et al. 1991)、このことからACL損傷からの回復過程にいるクライアントにとってもこの方法がさらに適していると言えます。 実践への応用方法 FTIのインストラクターと実践者に向けて、これらの研究の実践への応用方法は: スクワット中は、膝関節の屈曲が0から60度の間において低レベルのせん断力がかかります。従って、スクワットをACL損傷歴があるクライアントに処方する時は;スクワットの深さを膝関節の屈曲が最大でも60度になるように管理することが重要です。 膝関節への圧力は、スクワットの深さとともに増加し、したがって、過去に膝の痛みや障害を持っていたクライアントにスクワットを処方する時は、スクワットの深さを膝の屈曲角度で50度以下にすることが推奨されます。 スクワットを狭いスタンスで行うことは、膝関節への圧力をさらに減らし、そのため、この方法が、過去に膝の痛みや障害を持っていたクライアントにスクワットを処方する時にも推奨されます。 ローバーポジション(肩峰より低い位置)でスクワットを行うことで、膝関節への圧力とACLへの負荷が減少します。そのため、過去に膝痛を持っていたり、ACLの損傷歴があったりしたクライアントにスクワットを処方する場合にも、ローバーポジションで行うことが推奨されます。 参照 Escamilla, R. F. (2001). Knee biomechanics of the dynamic squat exercise. Medicine & Science in Sports & Exercise, 33(1), 127-141. Lutz, G. E., Palmitier, R. A., An, K. N., & Chao, E. Y. (1993). Comparison of tibiofemoral joint forces during open-kinetic-chain and closed-kinetic-chain exercises. JBJS, 75(5), 732-739. Wilk, K. E., Escamilla, R. F., Fleisig, G. S., Barrentine, S. W., Andrews, J. R., & Boyd, M. L. (1996). A comparison of tibiofemoral joint forces and electromyographic activity during open and closed kinetic chain exercises. The American journal of sports medicine, 24(4), 518-527. Abernethy, B., Kippers, V., & Hanrahan, S. (2013). Biophysical foundations of human movement. Human Kinetics. Race, A., & Amis, A. A. (1994). The mechanical properties of the two bundles of the human posterior cruciate ligament. Journal of biomechanics, 27(1), 13-24. Nisell, R. (1986). Joint load during the parallel squat in powerlifting and forces analysis of in vivo bilateral quadriceps tendon rupture. 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ファンクショナル・トレーニング・インスティチュート 3848字