マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
筋限界に至るまでのトレーニングは更なる筋肥大につながるか? パート2/2
筋力強化に対する筋限界の効果は何か? 下記のトレーニング研究は、様々な異なるアプローチを用い、同じエクササイズを筋限界に至らぬよう(もしくは少々の疲労程度まで)行った量を適合させたグループと比較して、筋限界(もしくは単に重度の疲労)に至るまでエクササイズを行ったグループの筋力への影響について調査している。 イスキエルド (2006年) – 研究者たちは身体的に活発な42名の男性において、11週間に渡るレジスタンストレーニングと、それに続く5週間の全く同じ最大筋力及びパワートレーニングを、限界に至るまで行うこと、もしくは限界に至らぬよう行うことによる効果を評価した。最初の11週間の段階では、研究者は、両方のグループが1RMのベンチプレスとスクワットにおいて同等の向上を示し、スクワットの際の最大レップにおいて同等の向上を示したが、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは、ベンチプレスの際の最大レップにおいてより大きな向上を示したということを発見した。しかしながら5週間のピーク段階では、限界にまで至らなかったグループが、下半身における下肢のより大きな筋出力を示し、ベンチプレスを行う際の最大レップにおいてもより大きな向上を示した。研究者たちは、限界に至るまでのトレーニングが筋持久力を高める可能性があるのに対し、限界にまで至らないトレーニングには最大筋力とパワーへの恩恵があるかもしれないと示唆している。 ドリンクウォーター (2006年) – 研究者たちは、エリートジュニアアスリートにおいて、6RMのベンチプレスと40キロでのベンチスローパワーに対する、レップの限界に至るまでのトレーニングの効果について評価した。2つのグループの被験者は、6週間に渡り週に3回のベンチプレストレーニングを同量行った。一方のグループは260秒毎に6レップを4セット行うことで、レップの限界に至るまでトレーニングを行い、他方のグループは113秒毎に3レップを8セット行うことにより、総合的には同量のレップ数ではあるが、限界にまでは至らぬようトレーニングを行った。研究者たちは、限界までトレーニングを行ったグループがレップの筋力とベンチスローのパワーの両方においてより大きな向上を示したことを発見した。 ロートン (2004年) – 研究者たちは、26名の男性エリートジュニアバスケ選手とサッカー選手における2つのトレーニング方法の影響について比較した。2つのグループにおいて被験者は、6週間に渡り6レップを4セット、もしくは3レップを8セットのベンチプレスを行った。より疲労度が大きかった6レップを4セット行ったグループは、3レップを8セット行ったグループ(4.9%)に比べ、6RMの筋力が著しく向上した(9.7%)が、パワーの向上に関しては2つのグループの間で著しい違いは無かった。 フォランド (2002年) – 研究者たちは、健康な23名の成人における2つのトレーニング方法の効果を比較した。一方のグループはセット間に30秒のレストを挟んで10レップを4セット(より大きな疲労のグループ)、他方のグループは各レップ間に30秒のレストをとりながら、40レップ(より少ない疲労のグループ)の両側ニーエクステンションマシーンを使用したトレーニングを、平均1RMの73%で週に3回行った。9週間に渡るトレーニングの後、研究者たちは、最大等尺性膝伸展筋力の測定において両方のグループで類似した向上が見られたということを発見した。 ルーニー (1994年) – 研究者たちは、量を適合させたプログラムの中において、42名の健康な被験者に対しセット内のレストが筋力に及ぼす影響を評価した。被験者たちは、レスト無しグループ、レストグループ、コントロールグループへと振り分けられた。2つのトレーニンググループは6週間に渡り、週に3回、6RMの負荷にて6-10回のカールを行うことにより上腕二頭筋のトレーニングを実施した。レスト無しグループは全てのレップをレスト無しで行い、レストグループは各レップ間に30秒のレストを入れた。研究者たちは、限界に至るまでトレーニングを行ったグループは著しく大幅な筋力の増加を示したと発見している。しかしコントロールグループと比較すると両方のトレーニンググループともに、筋力は増加していた。 ショット (1995年) – 研究者たちは、7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く断続的な筋収縮(より少ない疲労のグループ)と長く継続的な筋収縮(より大きな疲労のグループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは、短い断続的な筋収縮よりも、長く継続的な筋収縮の方がより著しくMVICを向上させると発見した。 研究プロトコールと結果の評価基準のばらつきにより、結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らぬよう(もしくはより少ない疲労)トレーニングを行った際に比べ、限界まで(もしくはより大きな疲労)トレーニングを行った際の方が、ほとんどの測定値において、その筋力は、より大幅に向上しているようである。しかしながら、全ての研究が全ての筋力の測定値に対してこれを示しているわけではない。例えばフォランド(2002年)は、2つのトレーニング方法においてMVICの筋力に差異はないと報告しており、イスキエルド(2006年)は1RMの筋力に関する限りでは違いはないと発見している。 加えてドリンクウォーター(2007年)は、4x6,8x3,もしくは12x3(セットxレップ)のベンチプレスを週に3回、6週間に渡りトレーニングを行った22名のチームスポーツ選手において、限界を超えたトレーニングが限界に至るまでのトレーニングよりも優れた結果を生み出すかどうかを評価した。8x3のプログラムと比較し、4x6のプログラムにはより長いインターバルが含まれており、12x3のプログラムにはより多いトレーニング量が含まれていた。ゆえにこれら両方のプログラムは、望ましいレップ数を完了するためにより多くの強制的なレップを行うようデザインされていた。研究者たちは、レップの限界には達したものの、追加の強制的なレップも追加のセット量も、基本の8x3のプログラムに比べ、更に大きな筋力の獲得へは繋がらなかったということを発見した。 *** 実践的な意義は何か? ストレングスアスリートに対して ストレングスのアスリートに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことが、より筋力の増加につながり得るという根拠のあるエビデンスがある。しかし、限界までのトレーニングは回復に影響を及ぼし得ることから、各アスリートにふさわしい限度内で慎重に使われるべきである。 ストレングスアスリートとボディビルダーに対しては、限界に至るトレーニングを組み込むことは、より大きな筋肥大につながる可能性があるといういくつからの限られたエビデンスがある。しかしながら、おそらくトレーニング量がより重要な要素であるため、筋限界は回復が確実に行われることができる範囲で使われるべきである。
筋限界に至るまでのトレーニングは更なる筋肥大につながるか? パート1/2
限界に至るまでトレーニングを行うべきか否か、というフィットネス業界における大きな議論にもかかわらず、研究者たちはこの問題を十分に調査していない。実際に多くの人が信じてはいることとは裏腹に、限界(もしくは重度の疲労)に至るまでのトレーニングが筋力強化や筋肥大にとって望ましいかどうかということに関する、量を適合させた長期のトレーニングの研究は、非常に希である。下記のものは我々の知識の要約である。 背景 瞬間的な筋限界までのトレーニングは、フィットネス業界における一般的な概念であり、ほとんどのトレーニング中級、上級の人たちは、セットを行っている際に限界に近づいていることを本能的直感により感知する。また、多くのアスリートが定期的に限界に至るトレーニングを行っているが、パワーリフターやボディビルダーなどを含むかなりの割合の人たちは、ワークアウトにおいて常に限界に至るまで行っているわけではない。 しかしながら、ある一定期間のトレーニング後の筋力と筋肥大を調査した研究論文においては、一般的に全てのセットが限界に至るまで行われている。研究論文が伝えていることと、トレーニングを行う人達によって実際に行われているであろうことの間で矛盾が生じている。 それに加え上述の通り、一方のグループが限界までセットを行い、他方のグループが同量のプログラムを限界以前で行うという量を適合させたトレーニング方法の比較をした研究は希である。ゆえに、この短い総括には、これらの研究と量を適合させたプロトコールでの異なる疲労度合いの違いについて調査したものがいくつか含まれている。これは理想的ではないかもしれないが、より充実した全体像を提供しており、下記に詳細が述べられているサンドストラップ(2012年)の発見に基づいて、有効なものであると思われる。 幾人かの研究者と限界までトレーニングを行うことの支持者は、限界に至るまでトレーニング行うことは、全ての運動単位を動員するために必要であると提言しているが、研究者たちはその見解を十分に支持しているわけではない。サンドストラップ(2012年)は、限界に至るまで行われた15RMでの各レップにおけるラテラルレイズの筋電図活動を調査した。彼らは、筋活動のプラトーへは15RMの負荷での10-12レップで達するということを発見し、それは少なくともトレーニングを行っていない個人においては、全ての運動単位を完全に動員するために完全なる限界までトレーニングする必要はないということを意味すると解釈した。 *** 筋限界の筋肥大に対する効果は何か? 下記のトレーニング研究は、多様な異なる方法を用い、量を適合させた同じエクササイズを筋限界へ至らぬ程度まで行った(もしくはより少ない疲労)グループと比較し、筋限界(もしくは多大な疲労)までエクササイズを行ったグループの筋力に対する効果を調査している。 ゴトウ (2005年)は同量の大腿四頭筋のレジスタンストレーニングの組み合わせの中での、大腿四頭筋の筋肥大に対する限界の効果を調査した。各トレーニンググループが、ラットプルダウンとショルダープレスを10RMで3セットと、両脚でのニーエクステンションを10RMで5セット行ったが、一方のグループは、エクササイズ実行中にはレストを取らず、各エクササイズの間、及びセット間に1分のレストを入れ、もう一方のグループは1分のレストに加え、各セットの半分のところで、更に30秒のレストを取った。研究者たちは、セットの間にレストを入れたグループはレストを取らなかったグループに比べより少ない筋肥大を示しており、それは筋限界が筋肥大の重要な修正因子であるかもしれないということを示していると発見した。しかしながら、このような結果が起こった正確なメカニズムは明確ではない。 ショット (1995年) - 研究者たちは7名の被験者において、14週間に渡り週に3回、最大随意等尺性収縮(MVIC)の70%での、短く断続的な筋収縮(より少ない疲労グループ)と、長く継続的な筋収縮(より大きな疲労グループ)という2つのタイプの等尺性ストレングストレーニングによる適応を比較した。右脚のトレーニングとして、各筋収縮の間に2秒のレストとセット間に2分のレストを入れた、3秒間の筋収縮が10回4セット行われ、左脚のトレーニングとして、セット間に1分のレストを入れた30秒の筋収縮が4セット行われた。研究者たちは短く断続的な収縮よりも長く継続した収縮での方が、筋肉の断面積の増加が著しく大きいことを発見した。 研究の少なさにより結論を出すことは多少困難ではあるが、要約すると、限界まで至らないトレーニングに比べ、限界に至るトレーニングでは筋肥大に著しい向上がみられるようである。しかしながら筋肥大の追求において、より多くのトレーニング量をこなすことを支持するエビデンスがとても多く、トレーニングの量と筋力がたびたび互いに相反しているため、現在のエビデンスは、適切な回復が可能な範囲での筋限界を伴う、より多量のアプローチを支持しているようである。
脚の最大の発達のために“ただスクワット”すればいいのか?
一日おきに、誰かが、フォーラムに下半身のトレーニングを作成する一番の方法についての質問を掲示します。 少なくとも一人の善意あるリフターが、「ただスクワットをしなさい」という薦めを回答します。 しかし、スクワットのみで本当に最適な脚の筋発達のために十分なのでしょうか? ただスクワットをするとはどういう意味ですか? 誰かが“ただスクワットをする”という時、彼らがどういう意味で言ったのかははっきりしているわけではありません。 もしあなたがそのアドバイスを文字通り読むならば、それはあなたのレッグトレーニングのすべてとして“ただスクワットをする”という意味になるでしょう(なのであなたはその他のレッグエクササイズを何もしません)。しかし、人々は時々、ハムストリングスを除くすべてのエクササイズとして“ただスクワットをする”ことを意味しています(なのであなたはいくらかのハムストリングカールもします)。そして時には、人々が“ただスクワットをする”と言っているのに、あなたは後で彼らがデッドリフトやヒップスラストもしていて、基本的に彼らの“ただスクワットをする”という助言が、本当は大腿四頭筋だけに当てはまるのだと知るのです。 上のような混乱に関係なく、私はこの記事で二つの問題に注目したいと思います: スクワットはハムストリングスの発達のために良いエクササイズかどうか、 そしてスクワットは大腿四頭筋すべてに効果的なのかどうか。 明らかに、これは臀筋(Bret氏、ごめんなさい!)と内転筋の議論を除きますが、それらの筋肉はまったく独自の別な記事にする価値があると私は思います。 #1. ハムストリング:ただスクワットをする、でもデッドリフトもする? 知識のあるフィットネスプロフェッショナルとして、あなたはスクワットが大腿四頭筋、大内転筋、そして大臀筋に非常に効果的であるが、ハムストリングスにはそれほど効果がないことをほぼ確実にすでに理解していることでしょう(Wright et al. 1999)。 基本的に、それがポステリアチェーンのための良い筋力トレーニングプログラムの中にデッドリフトバリエーション(そして他のエクササイズ)がいつも含まれている理由です。ハムストリングスのアクティベーションは、一般的にスクワットでは低いのです。 しかしながら、ハムストリングスがスクワット中に働いているという考えを却下する次のような他の理由もあります: スクワットのバーベル負荷の増加は、ハムストリングスのアクティベーションを増加させないが、大腿四頭筋及び大臀筋両方のアクティベーションが顕著に上昇する要因となる(Li et al. 2013) スクワットの力とハムストリングスのアクティベーションの間の相関関係は、ハムストリングスでは低~中程度だが、大腿四頭筋では強い線形相関がある(Luera et al. 2014) スクワットの深さを同じバーベル負荷で増加させることは、ハムストリングスのアクティベーションを増加させないが、大腿四頭筋及び大臀筋のアクティベーションの大きな増加の要因となる(Gorsuch et al. 2013; Contreras et al. 2015b) 筋骨格系モデルは、ハムストリングスが大臀筋と同じくらいの度合で貢献する股関節伸展のストラテジーを用いることは、そのストラテジーが膝関節でのコ・アクティベーション(同時活性化)を増加させて大腿四頭筋をより使わせることから、非効率的であると示唆している(Bryanton et al. 2015) なぜハムストリングスはスクワットで活性しないのか? 身体力学的に、スクワットにおけるこの乏しいハムストリングスのアクティベーションは、恐らく4つのハムストリングスの筋肉のうち3つが二関節筋であるからです。 それゆえに、これらは股関節伸展筋及び膝関節屈曲筋として働きます。 そのため、身体が下に下がる(股関節屈曲及び膝関節屈曲をしながら)につれて、筋肉は膝関節で短縮し、股関節で伸張しようとして、結局ほとんど同じ長さのままになります。そして上に上がる(股関節伸展及び膝関節伸展をしながら)につれて、筋肉は膝関節で伸張し、股関節で短縮しようとし、また結局ほぼ同じ長さのままになるのです。 これはハムストリングスをスクワットでの股関節伸展筋として極めて非効率的にします。 もしあなたがまだ信じていないのであれば、今この瞬間も、研究がハムストリングスのアクティベーション不足について何といおうが気にしない、だってスクワットをしているとき脚の裏側が働いているのを感じることができるから、と考えているかもしれません。 私が偉そうに反論できるでしょうか? あなたはスクワット中に、太ももの後面が働いているのを感じるはずなのです。それはあなたの大内転筋がある場所です。 奇妙なことに“内転筋”と呼ばれていますが、大内転筋は実際、スクワットにおいて非常に重要で大きな股関節伸展筋で、ハムストリングスのかなり近くにあります。 しかしその脚の後ろの感覚は、多くの場合恐らくハムストリングスによってもたらされたものではありません。 #2. 大腿四頭筋:4つすべての筋肉 それでは、質問のより難しい部分に取り組みましょう。大腿四頭筋です。 最近、研究者のグループが、中間広張筋(tensor of the vastus intermedius)と呼んでいる新たな大腿四頭筋の筋肉を発見しましたが(Crob et al.2016)、大腿四頭筋は太ももの前面にある4つの筋肉で作られています。これは解剖学的命名にとって非常に厄介な意味あいを持っています。 それはさておき、4つの主な大腿四頭筋は: 外側広筋 内側広筋 中間広筋 大腿直筋 その4つの筋肉のリストのうち、はじめの3つは膝関節の伸展筋としてのみ機能する単関節筋です。大腿直筋は、ハムストリングのように二関節筋で、股関節屈曲筋及び膝関節伸展筋として働きます。 全体的に、外側広筋は最も大きい筋量を持ち(674㎤)、次に中間広筋(580㎤)、内側広筋(461㎤)、最後に大腿直筋(339㎤)が続きます。 筋肉の力の生産能力を駆動する生理学的筋断面積の観点から見ると、下のチャートでも示されている通り、これらは実際驚くほど類似しています(Erskine et al. 2009)。 ここで私たちが取りあげるべきなのは、もし私たちが脚のサイズをその最大範囲まで発達させたければ(そしてただスクワットが上手になるだけでないなら)、用いているエクササイズが4つの大腿四頭筋すべてに働いていることを確かめなくてはならないということ。 そうしなければ、私たちは筋肉の発達をいくらかのやり残してしまうでしょう。 スクワットは大腿直筋を発達させるか? 従来、スクワットは大腿四頭筋全体を最も発達させるものだと考えられてきました。 この考えは、大腿四頭筋の単関節筋を解析した研究によって、間違いなく支持されてきました。例えば、Signorile et al. (1994)は、外側広筋と内側広筋のスクワットにおけるアクティベーションを筋電図(EMG)で調査し、それをニーエクステンションと比較しました。彼らはスクワットの方が優れていることを発見しました。同じように、Ebben et al. (2009)は、外側広筋にはニーエクステンション、ステップアップ、そしてデッドリフトよりもスクワットの方がよかったことを発見しました。 一方で、“ただスクワットをする”というのは、大腿直筋にはあまりよく効果がないように見えます。 これは、ニーエクステンションエクササイズにおける大腿直筋のアクティベーションレベルが、スクワットと比較してより高いことを示す筋電図の研究(Ebben et al. 2009)からのみでなく、長期的試行からも見ることができます。 ある重要な研究、Fonseca et al. (2015)は、スクワットのみを行う2つのグループと、様々なエクササイズ(スクワット、レッグプレス、デッドリフト、ランジ)を行う2つのグループの、4つの異なるグループを、長期的トレーニングプログラムに渡り比較しました。様々なエクササイズを行った2つのグループは、大腿四頭筋のサイズが4つすべての筋肉(大腿直筋を含む)において増加しましたが、ただスクワットだけを用いた2つのグループでは、3つの単関節筋のみ大腿四頭筋のサイズが増加しました。 スクワットトレーニング後の大腿直筋の成長不足は、恐らくこの筋肉が股関節屈曲筋と膝関節伸展筋の両方であるからです。 身体が下に下がる(股関節屈曲及び膝関節屈曲をしながら)につれて、大腿直筋は膝関節で伸張し、股関節で短縮しようとして、結局ほとんど同じ長さのままになります。そして上に上がる(股関節伸展及び膝関節伸展をしながら)につれて、筋肉は膝関節で短縮し、股関節で伸張しようとし、また結局ほぼ同じ長さのままになるのです。 これは大腿直筋をスクワット中極めて非効率的にし、そのためこの筋肉は恐らく(ハムストリングスのように)通常それほど使われないのです。 大腿直筋を発達させるエクササイズは何か? 上で述べた通り、ニーエクステンションエクササイズでは、スクワットに比べより高いレベルの大腿直筋のアクティベーションがあります(Ebben et al. 2009)。これは、長期的なトレーニング研究による証拠で支持されています。 事実、下のチャートで示されているように、大腿直筋は単関節の、マシンによるニーエクステンショントレーニングによって、他の3つの大腿四頭筋よりも比較的成長するように見えます(Ema et al. 2013): ここでマシン・ニーエクステンションに表れされているように、同時に(そして同じような大きさで)股関節屈曲及び膝関節屈曲動作をさせないエクササイズにおいて、大腿直筋を非常に効率的に鍛えることができるように見えます。 まとめ もしあなたがスクワットを上手になりたいのであれば、もちろん“ただスクワットしましょう”。 一方で、もしあなたが完全な脚の発達を臨むのであれば、あなたは“主にスクワットをする”と言いつつも、さらにいくつか追加でハムストリングスのエクササイズ、そして大腿直筋のエクササイズを一つ加える方がよいでしょう。 これに関して、いくらかのトレーナーには無視されがちですが、ニーエクステンションは少なくともボディビルダーにとっては恐らく理想的なエクササイズなのです。 参照 Bryanton, M. A., Carey, J. P., Kennedy, M. D., & Chiu, L. Z. (2015). Quadriceps effort during squat exercise depends on hip extensor muscle strategy. Sports Biomechanics, 14(1), 122-138. Contreras, B., Vigotsky, A. D., Schoenfeld, B. J., Beardsley, C., & Cronin, J. (2015). A Comparison of Gluteus Maximus, Biceps Femoris, and Vastus Lateralis EMG Amplitude in the Parallel, Full, and Front Squat Variations in Resistance Trained Females. Journal of Applied Biomechanics. Ebben, W. P., Feldmann, C. R., Dayne, A., Mitsche, D., Alexander, P., & Knetzger, K. J. (2009). Muscle activation during lower body resistance training. International Journal of Sports Medicine, 30(1), 1-8. Ema, R., Wakahara, T., Miyamoto, N., Kanehisa, H., & Kawakami, Y. (2013). Inhomogeneous architectural changes of the quadriceps femoris induced by resistance training. European Journal of Applied Physiology, 113(11), 2691-2703.] Erskine, R. M., Jones, D. A., Maganaris, C. N., & Degens, H. (2009). In vivo specific tension of the human quadriceps femoris muscle. European Journal of Applied Physiology, 106(6), 827-838. Fonseca, R. M., Roschel, H., Tricoli, V., de Souza, E. O., Wilson, J. M., Laurentino, G. C., & Ugrinowitsch, C. (2014). Changes in exercises are more effective than in loading schemes to improve muscle strength. The Journal of Strength & Conditioning Research, 28(11), 3085-3092. Gorsuch, J., Long, J., Miller, K., Primeau, K., Rutledge, S., Sossong, A., & Durocher, J. J. (2013). The effect of squat depth on multiarticular muscle activation in collegiate cross-country runners. The Journal of Strength & Conditioning Research, 27(9), 2619. Grob, K., Ackland, T., Kuster, M. S., Manestar, M., & Filgueira, L. (2016). A newly discovered muscle: The tensor of the vastus intermedius. Clinical Anatomy, 29(2), 256-263. Li, Y., Cao, C., & Chen, X. (2013). Similar electromyographic activities of lower limbs between squatting on a reebok core board and ground. 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ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート2
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要(続き) FMSの得点は外傷のリスクを予測するか? FMSの基本原理は、有害である代償パターンの保有率を測定するというものである。少なくとも18の研究が、FMSの得点が外傷率を予測することができるのかどうかを評価している。これらの18の研究のうち11の研究が、FMSの得点が14点を超える人と比較し、14点以下の個人における外傷に対する相対的な危険性を評価した。これらの11の研究のうち4つの研究が、FMSの得点は外傷の危険性を予測することはできないということを発見した。残りの7つの研究では、14点以下の個人の外傷に対する相対的な危険性は1.65から11.67倍であり、これは、FMSが個人の外傷の危険性の大小を、区別することができるかもしれないということを示唆している。 FMSの得点はアスレチックパフォーマンスを予測するか? FMSの背景にある概念のひとつは、非効率であると考えられる代償パターンの発生率を測定することであり、ゆえにパフォーマンスの低下度合いを予測する、というものである。アスレチックパフォーマンスとFMSの総合得点の相関関係を評価した8つの試験において、2つのみがアスレチックパフォーマンスとFMSの得点の相関関係を発見した。この2つの試験両方において、カウンタームーブメントジャンプのパフォーマンスとFMSの総合得点の間に、ある程度の相関関係が見いだされた。これは、FMSが有害となる代償パターンを発見することができないか、もしくは見つけられた代償パターンがパフォーマンスへ悪影響を及ぼさないかのどちらかであるということを示唆している。 エクササイズトレーニングはFMSの得点を向上させるか? もしFMSが有益であるのならば、基準テストの結果を基に行動を起こし、後のテストにおける得点を向上させることが大切である。少なくとも9つの研究が様々な集団において、FMSの得点を向上させるための異なるエクササイズプログラムの能力について評価している。9つの研究のうち8つが、ある種のエクササイズがFMSの得点を向上させることができたと報告している。しかしながら、コレクティブエクササイズやファンクショナルエクササイズと従来のレジスタンストレーニングを比較した2つの研究において、研究者たちは両方のケースで、2つの方法の間にFMSの得点の向上に対し著しい違いはなかったことを発見している。 ボディ・マス・インデックス(BMI)はFMSの得点に影響を及ぼすか? いくつかの研究がFMSの得点に対するBMIの影響について報告している。FMSの得点に対するBMI指数の影響についての報告をした全ての研究は、より高いBMI指数がより低いFMSの得点と関連していることを発見している。 ある研究でもまた、FMSの得点が身体活動に積極的に関係していると発見されていることから、BMIとFMS得点の間の逆相関関係は、過体重/肥満の人が身体活動をあまり行わないという傾向によりもたらされている可能性がある。 FMSの得点と他のテスト結果との関連性はあるか? FMSは、肩関節の内旋や外旋の可動域の計測とは関連性が無いようである。しかし、スター・エクスカーション・バランステスト(SEBT)の結果と、FMSにおいても乏しいパフォーマンスが予測される、片脚垂直跳びでの高い非対称性とは関連性をもつようである。 FMSについて他に何がわかっているか? 他にも様々な研究がFMSに関して行われている。研究者たちは単にFMSを行うことは自己知覚近位安定性の低下に繋がると観察した。研究者たちはまた、FMSの得点が悪かった(14点未満)人と良かった(14点超え)人の間で、腰部にかかる負荷に著しい差異は無かったと記述している。 キーポイントは何か? FMSは、ある程度外傷の危険性が高いアスリートを識別する予測能力のある、比較的信頼性の高いフィールドテストであるようだが、アスレチックパフォーマンスとの関連性は無いようである。加えて、多くのエクササイズ、トレーニング、そして身体活動はFMSの得点を向上させることができる可能性が高いようである。しかしながら、テスト基準に関する知識と発達段階がテストの結果に影響を及ぼすようであること、テスト動作が高速で行われ負荷がかけられた場合、同様に行われることができなくなること、総合得点を構成する個々の要素に相関性がないことから、総合得点による外傷リスクの予測は、適切ではなく、テストの有効性に関しては深刻な懸念がある。
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)の使用はエビデンスに支持されているか? パート1
ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)は最近人気のある話題であり、多くの議論を引き起こしている。これは、これらの議論をより建設的にするための論文の総括である。 概要 ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは何か? ファンクショナル・ムーブメント・スクリーン(FMS)とは、標準化された複合的な動きから成る7つの個々のテストにより構成された、スポーツ参加前のスクリーニング手段である。各テストは試験者により0から3に評価され、総合得点が与えられる。これには、ディープスクワット、ハードルステップ、インラインランジ、ショルダーモビリティ、アクティブストレートレッグレイズ、トランクスタビリティプッシュアップ、ロータリースタビリティが含まれる。痛みがある場合は0、対象者が動作を行うことが不可能な場合は1と評価される。また、対象者が動作を行うことは可能であるが、代償動作を伴う場合は2と評価され、対象者がその動作を正しく行うことができた場合は3と評価される。各動作に対するそれぞれの得点は、21満点中の最終的な得点として集計され、この総合得点が外傷のリスクを予測すると考えられている。このテストを研究した研究者たちは、得点が14点以下の個人は、14点を越える個人に比較して、外傷のリスクがより高いと示唆している。 標準的なFMSの得点は何点か? 健康ではあるが、トレーニングを行っていない人たちにおける標準的なFMSの得点は、14.14 ± 2.85 点から to 15.7 ± 1.9 点の範囲である。トレーニングを行っていない人たちのほとんどが、代償パターンを示していることが考えられ、また外傷のリスクの増加とパフォーマンスの低下が予測できると思われている14点以下という区切りの得点を多少上回っている、ということを示唆している。 FMSは信頼性の高いテストか? テストが有効であるためには、それが信頼性の高いものである必要がある。信頼性とは、テストが多少異なった時間に同人物によって(評価者内)、もしくは、同時に違う人たちにより(評価者間)繰り返されることができ、同じ結果を生み出すことができるかどうかということを示す。少なくとも14の研究が、FMSの評価者間の信頼性、または評価者内の信頼性を調査している。14の研究の内、13の研究がFMS総合得点の評価者間の信頼性についての報告をしており、8つの研究がFMS総合得点の評価者内の信頼性に対しての報告をしている。FMS総合得点の評価者間の信頼性について調査した13の研究の内1つの研究のみが、信頼性が中等度以下であったことを報告している。この唯一の研究では、相関関係を分析する為に他とは異なった統計的方法を用いていたこと、また、かなり多種多様の背景をもつ評価者を採用していたということは注目に値する。評価者内の信頼性について報告をしている8つの研究の内、1つの研究が学生評価者によるテストが低い信頼性を示したということを発見したが、7つの研究では少なくとも中等度の信頼性が報告されている。これは、FMSはおそらくほとんどの人に対し、フィールドテストとして許容できる程度の信頼性があるということを示唆している。 FMSは有効なテストか? テストが有益であるためには、それが有効である必要がある。有効性とは、テストが測定するべきものだけを実際に測定しているのかどうかということを表す。FMSの場合、テストの目的は、スポーツで同じ動作を行う際の代償パターンを特定することである。いくつかの研究が、FMSが有効かどうか、またスポーツの動きの中で行われる際の代償パターンのみを測定しているのかどうかを評価した。1つの研究は、テスト基準に関する知識がテストの結果に著しい影響を及ぼすと報告しており、これはテストのパフォーマンスがアスリートからの影響を受ける可能性があるということを示唆しているかもしれない。他の研究は、発育段階もまたテストの結果に影響を及ぼすと報告しており、テストが若いアスリートには適していないということを示唆している可能性がある。その他の研究では、様々なテストの結果間での相関関係が乏しいと報告されており、外傷の危険性を予測するために各テストの得点を合計して総合得点を出すことに対する有効性が疑問であるということを意味している。最後に、ある研究では、高速で高い負荷をかけて行われた類似するエクササイズでは、異なる動作特徴が現れたと報告されており、FMSを行う際にアスリートによって示される代償パターンが、スポーツの動きの中で示される代償パターンとは異なるかもしれないということを示唆している。結果として、これらの研究はFMSの有効性を疑問視している。
我々はスプリットスクワットについて何を知り得ているか? パート3/3
急性試験では何が発見されたか? (つづき) 筋電図活動 スプリットスクワットと従来のバックスクワットの際に、筋電図活動に関する有意な差違があるかどうかについての研究は相反している。マッカーディ(2010年)は、同様の相対負荷(3RM の85%)を使用した、後ろ足を挙上したスプリットスクワット、および従来のバックスクワットを行う女性アスリートの中臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋の筋電図活動を調査した。彼らは中臀筋とハムストリングの筋電図活動は従来のバックスクワットの際に比べスプリットスクワットの際に有意により高く、大腿四頭筋の筋電図活動はスプリットスクワットに比べ、従来のバックスクワットの際に有意により高かったということを発見した。しかしジョーンズ(2012年)は、持久系のトレーニングを行っている男性アスリートにおいて、同様の相対負荷(10RM) を使用し、後ろ足を挙上したスプリットスクワット、および従来のバックスクワットを行う際の大腿二頭筋、脊柱起立筋、中臀筋、外側広筋の筋電図活動を測定したが、2つのエクササイズの間に筋電図活動におけるいかなる差違も認識しなかった。マッカーディ(2010年)もまた、同様の相対負荷(3RMの85%)を使用し、後ろ足を挙したスプリットスクワットと従来のバックスクワットを行う女性アスリートの外腹斜筋の筋電図活動を調査した。彼らは、外腹斜筋の筋電図活動は、スプリットスクワットの際に非有意により高かったということを発見している。これらの発見は、スプリットスクワットの際にハムストリングスがより効果的に刺激され、大腿四頭筋に対しては、あまり効果的に刺激されない可能性があるという条件付きで、下半身の様々な筋肉の筋力を同様に向上させるためには、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替になり得るということを示唆している。しかしながら、これらの発見を確認するためにはさらなる研究が必要である。 エクササイズに対するホルモン反応 レジスタンストレーニングは運動後、特に筋肥大のために作られるワークアウト後の内分泌性ホルモン値を変化させる可能性がある。この観察はホルモン仮説として知られるものに通じる。ホルモン仮説は、運動後の急性なホルモン分泌は筋肥大の過程の助けとなると提議している。しかし、この仮説は何年にもわたり強い支持を受けていたにもかかわらず、近年になり疑問視されてきている(詳細はショーンフェルド2013年参照)。ワークアウトに両側性の下半身のエクササイズを取り入れることは、運動後のタンパク同化ホルモンの増加を生み出す、ということはリナーモ(2005年)から知り得ていたが、ミギアーノ(2010年)は、片側、両側両方での上半身レジスタンストレーニングは、運動後のタンパク同化ホルモンを増加させることができなかったということを発見している。ゆえに片側性の下半身レジスタンストレーニングは、上半身のエクササイズと同様に、運動後のホルモン上昇を生み出さない可能性があると示唆されている。 しかしながらジョーンズ(2012年)は、持久系トレーニングを行っている男性アスリートにおいて、同様の相対負荷及びセット・レップ数を使用した後ろ足を挙上したスプリットスクワット、もしくは従来のバックスクワットを行ったワークアウト後のテストステロン濃度を測定し(セット間に90秒のレストを入れた10RMを4セット)、スプリットスクワットおよび従来のバックスクワットのワークアウトの両方とも、運動後にテストステロン濃度が上昇したということを発見している。ゆえにホルモン仮説が支持している程度までは、スプリットスクワットと従来のバックスクワットは、運動後のホルモン環境に対して同様に有益な影響を及ぼすようである。 慢性試験は我々に何を伝えているのか? マッカーディ(2005年)は2つの8週間にわたるレジスタンストレーニングプログラムを比較した。被験者は1週間に2日、両脚もしくは片脚どちらかのスクワットトレーニングを行った。両脚グループは従来のバックスクワットとフロントスクワットを行い、片脚グループは後ろ足を挙上したスプリットスクワット、ランジ、およびステップアップを行った。両グループとも同様の負荷と量のプロトコルを実行した。従来のバックスクワットにおける向上においても、スプリットスクワットの向上においても、グループ間に有意な差違は存在せず、それは両方のエクササイズとも、両側、片側両方の下半身の強度を向上させるために適しているということを示唆している。 実践的意義は何か? スプリットスクワットの試験・再試験測定は非常に信頼性が高いことが報告されているため、スプリットスクワットは下半身の強度を評価するために自信を持って使用することが可能である。 筋電図研究の結果は、スプリットスクワットと従来のバックスクワットの間にわずかな差違しかないということを示していたため、下半身の強度を向上させるために、スプリットスクワットが従来のバックスクワットの代替となることは可能である。 スプリットスクワットは、より大きな股関節と膝関節モーメントの比率、より大きなハムストリングの筋電図活動、より少ない大腿四頭筋の筋電図活動を含んでいる可能性がある。ゆえに股関節主導のエクササイズに重点を置く必要のあるプログラムに対しては、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替として有益であるかもしれない。 スプリットスクワットは低い胴体角度を伴う。スクワットの際の低い胴体角度は腰椎モーメントの減少と関連している。ゆえに腰椎負荷の減少が望まれる場合、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替として有益であるかもしれない。 スプリットスクワットおよび従来のバックスクワット両方のエクササイズ後、テストステロン濃度は同様に上昇するため、両タイプのスクワットは、運動後のホルモン環境およびその結果として生じる筋肥大に対し同様に有益な影響があるようである。 パワーリフターにとって、バックスクワットは、トレーニングでありながら同時にイベントそのものであるということを留意することは重要なことである。ゆえに特異性およびイベント練習がここでは必要になってくる。そのため一部のパワーリフターにとっての補助的な運動としては、スプリットスクワットは有益かもしれないが、パワーリフティングプログラムにおいてスプリットスクワットが従来のバックスクワットに取って代わることができる可能性は極めて低い。
我々はスプリットスクワットについて何を知り得ているか? パート2/3
急性試験では何が発見されたか? (つづき) スプリットスクワットパフォーマンスとバランスの相関関係 一部の研究者たちは、下半身の強度とバランスは密接に結び付いていると提議している。フカガワ(1995年)は、老人ホームの入居者により行われたバランステストのパフォーマンスに対する、強度の独立した影響を報告した。しかしスプリットスクワットパフォーマンスは、特定のバランス課題とは相関関係が無いようであった。マッカーディ(2006年)は、トレーニングを行っていない男女において、スプリットスクワットの1RMの強度と、片脚立ち及びコンピューター制御されたバランスボード上でのバランス能力の間の関係を調査した。彼らは男女両方において、コンピューター制御されたバランスボード上のバランスとスプリットスクワットの1RM強度の間にも、片脚立ちのバランス得点とスプリットスクワットの1RM強度の間にも、いかなる有意な相関関係は発見しなかった。ゆえにバランスの向上が必要な場合にスプリットスクワットの強度を向上させることは有益ではないかもしれない。 関節モーメント スプリットスクワットの関節モーメントは、従来のバックスクワットのものとは異なるようである。メイヤー(2005年、未発表の修士論文)は男性アスリートにおいて、後ろ足を挙上したスプリットスクワットにおける関節モーメントを調査し、それを従来のバックスクワットにおける関節モーメントと比較した。アスリートたちは従来のバックスクワットを低、中、高負荷(1RMの60、70、80%)にて行い、スプリットスクワットを低、中、高負荷(従来のバックスクワットの1RMの20、25、30%)にて行った。メイヤーは、同様の相対負荷(323 ± 89Nm 対 288 ± 97Nm)において、スプリットスクワットにおける股関節伸展トルクは従来のバックスクワットよりもより大きかったということを報告している。さらに彼らは、同様の相対負荷(118 ± 26Nm 対186 ± 30Nm)において、スプリットスクワットは従来のバックスクワットよりもより小さな膝関節伸展モーメントを示していたということを発見している。その結果は下記のグラフに示されている。 これらの数字から我々は、股関節と膝関節の伸展モーメントの比率は、従来のバックスクワットに比べスプリットスクワットにおいてより高かったということを計算することが可能である(1.57 ± 0.53 対 2.80 ± 0.71)。ゆえにスプリットスクワットは、従来のバックスクワットよりも1.8倍より股関節主導である。この研究は未発表であったため再考察はされていないが、従来のバックスクワットの比率が、ブラントン(2012年)により報告されたもの、つまり同様の相対負荷において1.2-1.5の範囲であった、という比率と非常に類似しているため、これらのデータに関してはいくらかの安心を得ることができるであろう。それゆえ、プログラムが股関節主導のエクササイズに重点を置く必要がある場合は、従来のバックスクワットの代替としてスプリットスクワットが有益であるであるかもしれない。 関節角度 スプリットスクワットの際の胴体角度は従来のバックスクワットにおける角度よりもより小さいようである。マッカーディ(2010年)は女性アスリートにおいて、同様の相対負荷(3RMの85%)を使用し、後ろ足を挙上したスプリットスクワット、および従来のバックスクワットを行っている際の関節角度モーメントを調査した。彼らはスプリットスクワットの際の最大胴体角度は、従来のバックスクワットの際のものよりも小さかった(33.68 ± 7.6度対40.65 ± 7.0度)ということを発見している。メイヤー(2005年、未発表の修士論文)もまた、後ろ足を挙上したスプリットスクワットと従来のバックスクワットの際の関節角度を調査し、スプリットスクワットにおける胴体の前傾は、従来のバックスクワットにおけるものよりも少なかったということを観察している(25 ± 12度対35 ± 6度)。その結果は下記のグラフに示されている。 メイヤーは、胴体角度におけるこの差違は、脊柱負荷の程度の減少を暗示しているかもしれないと提議している。これが同様のケースであるかどうかは明確ではないが、スウィントン(2012年)は従来のスクワット、パワーリフティングスクワット、およびボックススクワットの差違を調査し、ボックススクワットが従来のスクワットに比べ有意により低い胴体角度(26.9 ± 3.8 度対33.5 ± 4.6度)を示し、同時に有意に低いL5/S1のモーメントを示したということを発見している。従って胴体角度の減少は実際には腰椎負荷の減少を暗に意味している可能性がある。ゆえに、腰椎負荷の減少が必要である、もしくは望ましい場合は、スプリットスクワットは従来のバックスクワットの代替として有益であるかもしれない。 力、パワー、力産出の速度 特定の力に関する変数は、スプリットスクワットのテクニックを使ったジャンプスクワットと、従来のバックスクワットのテクニックを使ったジャンプスクワットの間で異なる。スレイバート(2004年)は男性アスリートにおいて、従来のバックスクワット、およびスプリットスクワットのテクニックの両方を使用し、ジャンプスクワットの出力を検査した。1RMの30-70%の出力に対する最適な負荷が各ケースにおいて比較された。彼らは最大出力および平均出力において、従来のバックスクワットとスプリットスクワットのテクニックの間で有意な差違はなかったということを報告している。しかしながら彼らは、最大力はスプリットスクワットの際に有意により大きく(19.10 ± 3.25N/kg 対 14.88 ± 2.22N/kg)、力産出の最高速度はスプリットスクワットの際に有意により高かった(41.10 ± 12.59N/s/kg 対 33.04 ± 8.74N/s/kg)が、最高速度はスプリットスクワットの際に有意に低かった(1.64 ± 0.17m/s 対 1.97 ± 0.13m/s)ということを報告している。彼らは、スプリットスクワットの際の、より大きな力と低い速度は、パワーに対する最適な負荷における両方のスクワットテクニックにおいて、同様の出力に繋がったということを記述している(測定は1RMの30-70%においてのみしか行われていないが)。しかしながら、そのような差違がスプリットスクワット、従来のバックスクワット、およびスプリットスクワットと従来のバックスクワットのテクニックを使用して行われたジャンプスクワットにおいて同様に存在するかどうかは明確ではない。
我々はスプリットスクワットについて何を知り得ているか? パート1/3
比較的最近まで、従来のバックスクワットは下半身の筋力増進のための選択肢であった。しかしながら、現在はスプリットスクワットが支持率を上げてきており、多くのストレングス&コンディショニングコーチたちにより使用されている。しかし我々は、スプリットスクワットについて実際に何を知り得ており、それは従来のバックスクワットと比較しどうなのだろうか?この論説ではクリス・ベアスリー(@SandCResearch)が研究論文の再考察を行う。 背景 スプリットスクワットは、後ろ足を床につけたまま、もしくは後ろ足をベンチや箱の上に乗せて行うことが可能である。スプリットスクワットには、ブルガリアン(スプリット)スクワット、後ろ足を上げたスプリットスクワット、ピッチャースクワットまたは調整された片脚スクワット、として知られるバリエーションが含まれている。これは従来のバックスクワットの代替としてストレングス&コンディショニングコーチにより頻繁に使われている。しかし、従来のバックスクワットは幅広く研究されている一方(ショーンフェルド2010年参照)、スプリットスクワットは同様の綿密な調査が行われていない。 スプリットスクワットは、矢状面における身体の重心を両脚でまたぐようにして行われる。バックスクワットポジションで上部僧帽筋の上に置かれたバーベル(マッカーディ2010年)、身体の両脇に腕を伸ばして持たれたダンベル、もしくは前足の下と肩の上をまわし輪にしたレジスタンスバンド(ジャコブソン2012年の中で行われたランジのように)を使用し、行うことが可能である。 前述のように、スプリットスクワットは通常後ろ足を箱やバーの上に乗せて行われる(マッカーディ2010年)が、後ろ足を床について行うことも可能である。マッカーディ(2010年)は、後ろ足を箱の上へ乗せた場合、負荷のおおよそ85%は前足によって支えられていたということを発見している。少数の研究がスプリットスクワットの際の急性の生体学的変数を調査しており、1つの研究がスプリットスクワットを含むトレーニングのプログラムの長期的効果を調査している。 急性試験では何が発見されたか? 運動能力の信頼性 鍵となる強度測定における向上を評価するために使用される場合、信頼性はレジスタンストレーニングエクササイズの重要な特性である。マッカーディ(2004年)はトレーニングを行っていない男女の被験者において、同等の相対負荷(1RMおよび3RMの負荷)を使用し、従来のバックスクワットと、後ろ足を挙上したスプリットスクワットの信頼性を検査した。彼らは、スプリットスクワットにおける1RMおよび3RMの平均負荷は、(初回/2回目)男性においてはそれぞれ114.6 ± 17.9/121.6 ± 17.7kg および 98.6 ± 21.5/103.0 ± 21.5kgであり、女性においてはそれぞれ44.0 ± 9.9/45.76 ± 10.7kg および35.9 ± 10.4/39.77 ± 10.4kであったことを発見している。その結果は下記のグラフに示されている。 研究者たちは、試験・再試験測定法は非常に信頼性が高く、ゆえにスプリットスクワットは下半身の片側性強度を評価するために、自信を持って使用することができるということを報告している。 利き脚と非優位脚の間におけるスプリットスクワット強度の差違 片側性のエクササイズに関する一般的な仮説は、利き側は非優位側よりもより強いと証明されるであろうというものである。実際に一部の研究は、下半身の課題における利き側と非優位側の間の差違を報告している(ハンター2000年)。しかしながらマッカーディ(2005年)は、トレーニングを行っていない男女において、利き脚と非優位脚におけるスプリットスクワットの1RM強度の差違を調査し、男女ともに利き脚は非優位脚よりも非有意にごくわずかに強かったが、それぞれの脚間におけるスプリットスクワット強度に有意な差違は発見しなかった。男性のスプリットスクワットの強度は(利き脚/非優位脚)、107.0 ± 5.2 /106.0 ± 5.2kgであり、女性のスプリットスクワットの強度は45.3 ± 2.5/45.0 ± 2.5kgであった。その結果は下記のグラフに示されている。 グラフは、トレーニングを行っていない被験者における利き脚と非優位脚の強度は非常に類似しているということを示している。これが、活動脚における総関節トルクが同様であるということを示唆しているのかどうかは明確ではないが、フラナガン(2007年)は、従来のバックスクワットの際の左右の総関節トルクは同等ではなかったいうことを発見している。ゆえにトレーニングを行っている被験者において、スプリットスクワットにおける利き脚と非優位脚の強度の類似性を確認するため、また、総関節トルクは同様の負荷にもかかわらず左右の脚において差違があるということを解明するためには、さらなる研究が必要である。しかしながら両側の強度が同等であるということが、同じフォームが使用されたということを意味するわけでも、また大腿四頭筋とポステリアキネティックチェーンが同等の割合で使われていたということを意味しているわけでもない、ということに留意することは重要なことである。
何故スプリントコーチは水平力について知る必要があるのか?
ストレングス、コンディショニングの分野において、スプリントのスピードに対して垂直床反力の大切さを信じているコーチや研究者たちと、水平床反力の大切さを信じているコーチや研究者たちとの間で、激しい議論の一つが続いています。 何についての議論なのでしょうか?そうですね、この総説がその争点について解説をし、水平力の大切さについて論証することになるでしょう。 研究論文:スポーツパフォーマンスへの強度の移行とパワーの適応 – 水平、垂直力の生産 ランデル、クローニン、キオウ、ギル ストレングス、コンディショニングリサーチ2010 *** 背景 ストライドの長さと頻度 スプリントや速いランニングは、陸上競技やほとんどのチームスポーツにおいて選手達の重要な特性です。より速いランニングの速度は、歩長を大きくするか、その頻度を高めるか、もしくはその両方によって達成することができます。 ストライド頻度とより速いランニング ストライド頻度は1つの歩行周期を行うためにかかった時間の逆数です。それゆえ、ストライド頻度は、ランニングストライドを行うためにかかった時間に依存しています。ストライド全体の時間はさらに、滞空時間とスタンス時間の2つに分けることができます。評論家たちは、ランニングのトップスピードにおいて、その2つの部分それぞれの時間の長さは等しくはなく、滞空時間は全体のストライド時間の約75%になると説明しています。 しかし、速いランニングから、更に速いランニング速度へ移行する間では、ストライド頻度の大幅な増加は起こりません。評論家たちは、ウェイアンド(2000)が、滞空時間の増加が、より速い速度でのランニングスピードとは関連していないと発見したことを記述しています。 また一方で評論家たちは、ヌメラ(2007)、Kyröläinen(2001)、マンロウ(1987)全てが、スタンス時間の減少とランニング速度の上昇の関係を発見したことに注目しています。 スタンス時間は、全てのストライドの時間の中のほんの一部でしかないため、スタンス時間のみがランニング速度と関係しているという事実は、より速い速度において、何故全体のストライド頻度がランニング速度の上昇と強く結びつかないのか、ということを説明しているかもしれません。 ストライドの長さとより速いランニング ストライド頻度のように、ストライドの長さも、いくつかの段階に分けることができます。ストライドの長さの合計は、テイクオフの距離、滞空距離、着地の距離からなっています。その中でテイクオフと着時の距離は、合わせてスタンスの距離とすることが出来ます。しかしながら、ストライドの長さの合計は、ストライドの頻度とは異なり、より速い速度において、走る速度の上昇と関連があります。評論家たちは、ウェイアンド(2000)が、ストライドの長さが6.2m/sと比較して、11.1m/sにおいては1.96倍も長かったことを発見したと述べています。その一方、評論家たちはストライドの頻度とは違い、スタンスの距離の変化は走る速度とは関連がないとも解説しています。 床反力とストライドの制限要因 床反力は、通常フォースプレートを使って研究者たちにより測定されます。フォースプレートは、床に足を着いた時にアスリートの足に対して床から生み出された力を記録します。それゆえ、床反力と言うのです。ニュートンの第三の法則によると、この力はアスリートによって生み出された力と等しく、それぞれの方向において相反する方向に向かうべきです。ランニング時、アスリートは上下に動くため、その力は垂直、そして水平にかかることとなるでしょう。その一方で、垂直跳びにおける水平力は最小となります。 基本的な物理原理と同じく、一般的に、ランニングにおけるストライドの長さとストライド頻度は、より大きな床反力の結果として増加します。しかし、評論家たちは、コーチと研究者たちの間で、ランニングのスピードを上げるために大切なのは、垂直床反力なのか、水平床反力なのかについて激しい論争が繰り広げられていると解説しています。 *** 垂直床反力はより速いランニングの要因となるのか? ある研究者たちとコーチたちは、一定の速度でのランニングや、より速い速度でのランニングにおいても、少ない水平抵抗しかないと信じています。それゆえ、彼らは一定の速度において水平の推進力の必要性は、制動力に対抗するのに必要なだけでよいと提唱しています。それゆえ、彼らは垂直力の方がより大切だと提案しているのです。 例えば、ウェイアンド(2000)は、垂直床反力の増加は、ランニングの速度を速くするための重要な要素だと示唆しています。評論家たちは、ウェイアンドは、最高速度において、相対的な垂直床反力は、遅いランナーに比較して速いランナーでは1.26倍の大きさだったことを発見した、と記述しています。下記のグラフで示されているように、最大下速度から他へと増加する中で、同じ要因が数名の研究者たちによって観察されています。(薄い青色の棒は遅い速度、濃い青色の棒は速い速度を示します) ランニングの速度が上昇するに従い、時には著しく水平力も増えていることが、グラフから読み取れます。水平力が垂直力よりも上昇していることも予想できますが、次のセクションで更にみていくことにしましょう。更に詳細な内容を知りたい読者の皆さんには、ランダル及びその他、マンロウ(1987)、Kyröläinen(2001)、Kyröläinen(2005)、ベリ(2002)によって参照された文献を読まれることをお薦めします。 *** 水平床反力はより速いランニングの要因となるのか? その他の研究者たちは、より大きな水平力がより速い走りの速度には必要だと提唱しています。一体何を言おうとしているのか説明する必要がありますね。この時点では、より速いランニングの速度へ加速することについて話しているのではなく、単に、加速した後にそのより速いランニングの速度で動くことに関して述べています。そのことを頭に置いておくと、一定のスピードにおいては、水平推進力と水平制動力は等しくあるべきであるということになります。そうでなければ、速度は一定になりません。 そうはいっても、ある速度において力が同等であるからといって、それよりも遅い速度での力よりもその速度での力の方が大きいということにはなりません。より速い速度においては、より大きな水平制動力を予想することができ、それゆえ、より大きな水平推進力が必要となり、そして、推進力と制動力を合わせた総水平力がより大きいということになります。 しかしながら、これが実際にそうであるのかどうかは、研究の結果をみることによってしかわかりません。下のグラフはランニングの速度の上昇と水平力の変化を表しています。(薄い青色の棒は遅い速度を示し、濃い青色の棒はより速い速度を示しています) グラフから、垂直床反力はランニングの速度の上昇と共に増すことがわかります。更に詳細を知りたい皆さんには、ランダル及びその他、マンロウ(1987)、ニグ(1987)、Kyröläinen(2001)、Kyröläinen(2005)、ベリ(2002)によって参照された文献を読むことをお薦めします。 *** 垂直床反力と水平床反力の比較 評論家たちは、水平力と垂直力に関して2つの重要な違いがあると記述しています。最初の点は、垂直床反力は、ほぼ常に水平力よりもかなり大きいということです。これは重力によるものです。もう一つは、下のグラフが示しているように、水平力はランニングの速度の上昇と共により大きくなるようにみえるということです。 グラフは、4つ全ての研究において、水平力の増加の割合は、ランニングの速度の上昇と共に同等に上昇した垂直力よりも、はるかに大きかったことを示しています。(全てのデータは同じ速度範囲でセットされています) *** 垂直力の増加はランニングの速度の上昇と共に小さくなるかもしれない 評論家たちは、いくつかの研究では、ランニングの速度が速くなるにしたがい垂直床反力の増加が小さくなることを示していると記述しています。(言い換えれば、垂直床反力の上昇は直線ではないということです)しかし、これは水平力の場合は同じではないようです。 マンロウ(1987)とニグ(1987)による早期の研究では上昇は直線的であると提唱していますが、Brughelli(2011)を含めるその後の研究では、同じような関係性は発見されていません。下のグラフではBrughelliのデータが示されており、水平力の増加がどの速度においても概ねなだらかな一方、垂直力の上昇がいかに急激に減少しているのかをはっきりと示しています。 このグラフでは、垂直床反力の増加は主に、ランニングの最高速度の40%-60%の間で起こっていることが示されています。ランニングの最高速度の60%-100%では顕著な垂直床反力の上昇とは関わりがないように思われます。 *** 評論家たちはどのような結論に至ったのでしょうか? 評論家達は、垂直面、水平面の両方における力の生産が必要とされることが明白ではあるが、速いスピードでのランニングにとっては水平力がより重要であると結論づけた。 現在ほとんどのストレングスコンディショニングプログラムは、スクワットやデットリフトによる、垂直力の生産にフォーカスをおいて実施されているが、彼らはまた、この結果が、スプリントパフォーマンスのサポートとして使用されるストレングストレーニングのルーティンに関して重要な派生効果をもたらすであろうとも結論づけている。彼らはまた水平方向のエクササイズはより上位の、あるいは相補的な結果をもたらすであろうことを示唆している。 研究論文は下記のような制限がありました: 水平力を基にした筋力トレーニングがスプリントの動作に有益がどうか評価するための、スプリント選手におけるストレングスを介入したテストが行われていないため、実践におけるアドバイスは困難です。 ランニングやスプリント中の床反力の測定は、違う速度を比較した時、ほとんど統一されていません。スプリントは通常最高速度で行われますが、人によってその速度はまちまちであり、ランニングの速度は、他の研究と統一するというよりも、むしろ実験の目的によって選ばれることが多いため、異なった研究間でのそれぞれの速度における力の増加を比較することは、必ずしも正しいわけではありません。 参照されたある研究はその分析にトレッドミルを使っており、それらの研究からのデータを基にした推測は有効でないかもしれません。 この総説の作成以降、Brughelli(2011)、カワモリ(2012)、モーリン(2011)、モーリン(2012)を含むいくつかの研究が出版されていますが、水平力の大切さに関して、これらの研究論文はこの総説内のランダル及びその他によって導き出された結論を支持しています。 *** 実践的な意義は何でしょう? スプリントアスリートに対して: スクワットやデッドリフトなどのように、垂直力の発達を含む筋力トレーニングのプログラムは、最高速度でのスプリントのための筋肉の強化をするには適していないか、もしくは十分ではないかもしれません。 同様に、ジャンプスクワット、垂直跳び、その他の垂直プライオメトリックなどの動きを使ってのパワーの向上は、最高速度でのスプリントをするための筋肉の最大出力をトレーニングするためには適していないか、もしくは十分ではないかもしれません。 臀筋のブリッジ、ヒップスラスト、水平バックエクステンション等の水平方向のレジスタンストレーニングは、最高速度でのスプリントのために最適な水平力を生み出すために、スクワットやデットリフトに加えて行うことが必要かもしれません。 ケトルベルスイングなどの、水平方向のパワーを基にしたエクササイズは、最適な水平力を生み出すために、スクワットやデットリフトに加えて行うことが必要かもしれません。
エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート4/4
エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷を減小させるか?(つづき) ガバー (2006) は、7つのアマチュアオーストラリアンフットボールクラブにおいて、プリシーズンにおけるハムストリング損傷を予防するためのエキセントリックトレーニングプログラムの有効性を評価するために、試験的な無作為化比較試験を行った。選手たちは、エキセントリックトレーニング介入グループ、もしくはストレッチのみしか行わないコントロールグループへと、クラブ内で無作為に振り分けられた。介入グループは12週間にわたり5つのトレーニングセッションを行ったが、コンプライアンスは非常に低かった。分析を、少なくとも最初の2セッションに参加した介入グループおよびコントロールグループの選手に限ると、介入グループの4.0%、コントロールグループの13.2%の選手がハムストリング損傷を負い、その相対的リスクは0.3倍であった。 アスクリング (2003) は、スウェーデンのディビジョン首位2チームからの32名の男性エリートサッカー選手において、エキセントリック段階を強調したハムストリングスのためのプリシーズンストレングストレーニングが、ハムストリング損傷の発生率を減少させることができるのかどうかを調査した。被験者は無作為に介入グループとコントロールグループに振り分けられた。介入グループは10週間にわたり週に1-2回トレーニングを行った。介入グループにおいては3件のハムストリング損傷、コントロールグループにおいては10件のハムストリング損傷が見られた。 グッディ (2014) は、エキセントリックハムストリングス強化プログラムの、ハムストリング損傷の危険性に対する影響について決定するため、最近になり上記の試験のうち4つのものを総説し、また、介入のコンプライアンス不足の結果に対する影響を特に調査した。彼らは、エキセントリックハムストリングトレーニングを含むこの試験は、ハムストリング損傷の危険性(0.59倍の危険率)を有意に減少はさせなかったが、これは有意な異質性のためであったということを発見している。重要なことに、この異質性のほとんどはコンプライアンスからきたものであった。エキセントリック強化プログラムを順守できた被験者のみを考慮に入れると、全体のハムストリング損傷の危険性の有意な減少(0.35倍の危険率)と、この効果にはわずかしか特異性がないということがわかるであろう。 要約すると我々は、個人が与えられたプログラムを遵守した場合、エキセントリックハムストリングストレングストレーニングは、新たなハムストリング損傷の危険性を減少するようである、という素晴らしい科学的証拠が存在すると結論付けることが可能である。 ちなみに、メタ分析愛好家たちに対しては、グッディによるメタ分析は、これらの種類の研究において、どのように多様性のある問題にアプローチすればよいのかを説いている素晴らしい教えである。ある評論家たちがそうする傾向にあるように、それを無視することは適切なこととは言えない。 エキセントリックトレーニングはハムストリングの再損傷を減少させるか? 下記の研究は、エキセントリックトレーニング(主にノルディックハムストリングカールエクササイズを使用)のハムストリング再損傷に対する影響を調査した長期の試験である。下記の表はその結果を要約している。 アスクリング (2013) は、エリートスウェーデンサッカー選手において、急性のハムストリング損傷後における異なるリハビリテーション方法の有効性を比較した。ゆえに彼らは、急性のハムストリング損傷を負った(MRIにて確認)75名のサッカー選手を無作為に2つのリハビリテーション方法へと振り分けた。選手達は、伸張エクササイズを使用したものか、もしくは従来のエクササイズを使用したハムストリングトレーニングを行った。チームトレーニングへの全復帰と試合選手としての準備が完了する日までの日数が結果測定の鍵として評価されたが、12ヶ月間にわたる再受傷率も測定された。研究者たちは、トレーニング復帰までの時間は主に伸張トレーニングを使用した選手においてより短く(28 ± 15日対 51 ± 21日)、再損傷は1件のみであり、それは従来のトレーニングを行ったグループにおいてであったということを発見している。 ニコラス (2013)、シャーシェ (2012)とペターソン(2011) はみな、デンマークにおける上位5部サッカーチームにて競技している男性サッカー選手において、新たなハムストリング損傷の発生率に対する、10週間にわたるハムストリングエクササイズトレーニングプログラムの有効性を調査した同じ試験について報告をしている。チームは介入グループ、もしくはコントロールグループへと無作為に振り分けられた。介入チームはシーズンの中休みである10週間においてノルディックハムストリングエクササイズを(ウォームアップの後に)、1週間に1-3回、5-12回を2-3セットの合計27セッションを行った。研究者たちは、介入グループにおいて3件、コントロールグループにおいて20件の再受傷を報告している。介入グループは、悪影響の報告はしていないが、遅延性筋肉痛(DOMS)の増加は明記している。 要約すると、エキセントリックのみ、もしくはエキセントリックに集中したハムストリングストレングストレーニングの、ハムストリング再損傷の危険性に対する効果を調査した研究は、受傷数の減少とより短いリハビリテーション時間という有意に有益な影響を発見している。 制限要素は何か? この総説の主な制限要素は、メンディグーシャが素晴らしい総説において示したように、他のいくつかの要因もハムストリング損傷の危険因子として示唆されているということである(2012)。メンディグーシャおよびその他は、ハムストリング損傷の原因論は多元的であり、それらの要因は下記の図表で示されているように、互いに関連し合っている可能性があると議論している。 実践的意義は何か? エキセントリックハムストリングトレーニング、特にノルディックハムストリングカールは、サッカーを含む高速で走る活動に携わるチームスポーツ選手において、新たなハムストリング損傷の危険性を減少する可能性がある。これらは傷害予防プログラムの中に含まれているべきである。 ノルディックハムストリングカールのような、エキセントリックハムストリングエクササイズは、サッカーを含む高速で走る活動に携わるチームスポーツ選手において、ハムストリング再損傷の危険性を減少する可能性がある。これらはリハビリテーションプログラムの中に含まれているべきである。
エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート3/4
急性のハムストリング損傷に対する受傷機転は何か? ハムストリング損傷は、高速でのランニングにおいて最も頻繁に発生すると考えられている。特にそれらは、スプリントの際の遊脚相終期、もしくは立脚相初期において起こると考えられている。 立脚相初期: 立脚相初期においては、膝関節屈曲及び股関節伸展のモーメントの両方が最大である(マン1980年)。これは、ハムストリングは立脚相の初期において損傷の危険性が最も高いということを示唆しているのかもしれない。 遊脚相終期: 接地の直前、股関節は屈曲し、膝関節は伸展する(ハムストリングスは股関節の伸筋であり、膝関節の屈筋である)ため、ハムストリングスは急激にそして大幅に伸張する。リーバーとフライデン(1993年)は、筋損傷は力の働きによるものではなく、むしろ機械的な変形(例として、長さの変化)によるものであると説明しており、これは歩行サイクルにおいてこのポイントが最もハムストリングに対して危険性の高いポイントである、ということを示唆しているのかもしれない。 一部の研究者たちがこれらの説明のうち1つを支持して議論をしている一方、サン(2014年)による最近の研究は、実際には両方とも同等に起こり得るであろうと示している。サン及びその他は、彼らの分節間の動力学の分析は、立脚相初期及び遊脚相終期の両方において、ハムストリングスへ非常に高負荷がかかるということを示唆している、と記述している。 何故エキセントリックハムストリングトレーニングが有効である可能性があるのか? 筋束長の増加 いかなる筋肉のエキセントリックトレーニングも、ハムストリングスにおいてトルクが生まれる最適な長さを変化させる(ブロケット2001年)。トルクが生まれる際のこの最適な長さにおける変化は、個々の筋繊維の長さを伸ばすこと(サルコメアジェネシス)により起こるようである。筋長の増加は、筋繊維がより少ない抵抗でより速く長さを変化させることを可能にするため、筋損傷の危険性を減らす助けとなるかもしれない。 エキセントリック筋力の増加 いくつかの研究は、ハムストリングのエキセントリックな筋力不足はハムストリング損傷の危険因子であり、エキセントリックハムストリングトレーニングはこの問題に対処するために有益である可能性があるということを発見している。実際にエキセントリックなハムストリングの筋力(モジョーセン2004年)、及びハムストリング全体の筋力(カミニシ1998年)を向上するためには、エキセントリックハムストリングトレーニングは、コンセントリックハムストリングトレーニングよりもより有益であると発見されている。 どのタイプのエキセントリックハムストリングトレーニングが使用されるのか? 最も人気のあるタイプのエキセントリックハムストリングトレーニングエクササイズはノルディックハムストリングカールである。しかしながらそれ以外にも様々なタイプが存在しており、それはブログヘリとクロニン(2008年)による素晴らしくとても実践的な総説において説明されている。 ノルディックハムストリングカールエクササイズはトレーニングを行っている人が膝をつき上体を起こした状態から始まる。トレーニングを行っている人の足はパートナーにより床へ押さえられる(足を固定する器具も存在するが)。ハムストリングを使い動きに抵抗しながら、トレーニングを行っている人は膝関節を伸展し、上体を床に向かって下げてゆく。この動きにはエキセントリックな膝関節屈曲が含まれている。そしてトレーニングを行っている人は、どのような方法でも良いので最も簡単な方法にて直立位に戻る。もっとも一般的には動きを変えるために手で押し上げ、コンセントリックな膝関節屈曲を行いながら戻るようである。 エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷を減小させるか? 下記の研究は、エキセントリックトレーニング(主にノルディックハムストリングカールを使用)の、最初のハムストリング損傷の危険性に対する影響を調査した長期試験である。下記の表はその結果を要約している。 ニコラス (2013), シャーシェ (2012), ペターソン (2011) はみな、デンマークにおける上位5部サッカーチームにて競技している男性サッカー選手において、新しいハムストリング損傷の発生率に対する、10週間にわたるハムストリングエクササイズトレーニングプログラムの有効性を調査した同じ試験について報告をしているようである。チームは無作為に介入チームとコントロールチームへと分けられた。介入チームはシーズンの中休みである10週間においてノルディックハムストリングエクササイズを(ウォームアップ後に)、1週間に1-3回、5-12回を2-3セットの合計27セッション行った。研究者たちは、新しい傷害のX倍の危険比率に対して(合計傷害件数に対して0.29倍)、介入グループにおいては12件の新しい傷害(合計15件)、及びコントロールグループにおいては、32件の新しい傷害(合計52件)を報告している。介入グループは悪影響に関する報告はしていないが、遅発性筋肉痛(DOMS)の増加は明記している。 インガーブレッセン (2008) は31のチームから508名の選手を集め、傷害の既往歴および/または機能についてのアンケートを基に、ハムストリング損傷に対する高リスクグループと低リスクグループに振り分けた。そして研究者たちは、高リスクグループの被験者を無作為に介入グループとコントロールグループへと振り分けた。低リスクグループは、もうひとつのコントロールグループとして作用した。研究者たちは、傷害発生率は低リスクコントロールグループにおいて3.2、高リスクコントロールグループにおいて5.3、また高リスク介入グループにおいて4.9であったことを発見している。高リスクの介入グループとコントロールグループの間には差違はなかった。しかしながら、高リスクの介入グループにおけるコンプライアンスは劣っており、被験者の20%程が最低トレーニング量しか行っていなかったということが記述されている。 アルナソン (2008) は、アイスランド及びノルウェーからのエリートサッカーチームにおける、エキセントリックストレングストレーニングと柔軟性トレーニングの、ハムストリング損傷の発生率に対する影響を調査した。介入チームとコントロールチームは無作為に分けられていたわけではなかった。しかし研究者たちは、柔軟性トレーニングプログラムを使っていたチームと使っていなかったチームの間に、ハムストリング損傷の発生率に関する差違はなかったが、エキセントリックトレーニングを使用していたチームにおいては、ハムストリング損傷の発生率が低かったということを発見している(0.43倍の相対リスク)。
エキセントリックトレーニングはハムストリング損傷予防の助けになるか? パート2/4
ハムストリングの弱さは(過去に溯って)傷害の危険因子であるか? ハムストリングの強度とハムストリング損傷の危険性の間の関係を過去に溯って調査した研究は、歴史的に見て相反する結果を報告してきている。強度測定は昔から等運動性の方法を用い記録されていたが、より最近の測定方法は代わりにアイソイナーシャル(エキセントリック)及び等尺性のテストを使用している。 ティミンズ (2014) は、20名の無傷の被験者と16名の傷害を負った被験者のエキセントリックのハムストリング強度を比較した。彼らは、被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのデバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。彼らは、エキセントリックの強度は、反対側の健側の脚 (341.1 ± 100.2N) に比べ、患側の脚 (288.6 ± 84.8N) において有意に低く、その違いは15.4%であったということを発見している。 オパー (2013) は、片脚のみハムストリング損傷を負った20名のエリート選手において、エキセントリックのハムストリング強度を比較した。彼らは、被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのディバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。彼らは、以前に受傷している脚は逆の傷害のない脚よりも15%弱かったということを報告している。 オパー (2013) は、1秒間に60度及び180度の速度において等運動性動力測定法を用い、片脚にハムストリング損傷の既往歴がある13名のレクリエーションとしてのアスリートと、以前に傷害を負っていない15名のレクリエーションとしてのアスリートにおける、エキセントリック、及びコンセントリックの膝関節屈曲トルクの比較を行った。研究者たちは、傷害の既往歴のある被験者の膝関節屈曲トルクは、傷害のない脚に比べ傷害既往歴のある脚において、1秒間に60度及び180度の両方の速度において、より弱かったということを発見した。傷害既往歴のないグループにおいては脚間の差違はなかった。 ブロケット (2004) は、9名のアスリートの傷害既往歴のある脚と無い脚の筋肉の比較、及び18名の傷害既往歴の無いアスリートとの比較を行った。しかしながら、等運動性最大トルク、及びハムストリングスと大腿四頭筋の等運動性トルクの比率に有意な差違はなかった。 ウォレル (1991) は、半数がハムストリング損傷の既往歴のある、32名の学生アスリートにおける等運動性筋力測定値を調査した。測定には、1秒間に60度及び180度の速度において動力計を使用した、コンセントリック及びエキセントリックな大腿四頭筋とハムストリングの最大トルク、さらにはその比率が含まれていた。研究者たちはハムストリング損傷の既往歴を持つグループと持たないグループの間に、有意な強度の差違は無かったということを発見している。 ハイザー (1984) は1973年から1982年の期間に溯り、回帰分析を行った。1977年以前には、選手に対するハムストリングと大腿四頭筋の強度の比率の検査や修正は行われていなかった。1977年以降では、564名の選手がハムストリングスと大腿四頭筋の強度に対する基礎となる等運動性テストを受け、ハムストリングと大腿四頭筋の比率が>0.60であった選手は、特定のハムストリングトレーニングを受けた。最初の期間には534名の選手がおり、第2期間には564名の選手が存在した。最初の期間においては、7.7%がハムストリング損傷を負い、その負傷者のうち31.7%が再受傷した。第2期間においては、1.1%の選手のみがハムストリング損傷を負い、再受傷した選手はいなかった。 等運動性の測定技術を使用している多くの早期の研究は、膝関節屈曲トルクに関して、傷害既往歴のある被験者と無い被験者の間における有意な差違を示すことができていなかった。しかしながら、より最近には、3つの研究が有意な、そして臨床的に意味のある差違を報告しており、そのうちの2つは共にアイソイナーシャルテスト方法を使用していた。 それでもなおこれら全ての研究は回帰的であるため、どの程度のハムストリングの弱さが傷害前に存在していたのか、もしくは受傷後の不使用により引き起こされたものなのかは不明である。ゆえに、ハムストリング損傷の危険因子としての膝関節屈曲の強度を理解するためには、この科学的根拠には問題がある。 ハムストリングの弱さは(将来の)傷害の危険因子であるか? ハムストリングの強度とハムストリング損傷の危険性の間の将来的な関係を調査した研究もまた、相反する結果を報告している。ここでもまた、強度測定は昔から等運動性の方法を用い記録されていたが、より最近の測定方法は代わりにアイソイナーシャル(エキセントリック)及び等尺性のテストを使用している。 オパー (2014) はシーズン中210名のオーストラリアンフットボール選手におけるハムストリング損傷の危険因子を評価した。彼らは28件のハムストリング損傷を記録した。彼らは被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのディバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。彼らはエキセントリックなハムストリング強度の減少は将来のハムストリング損傷の危険性を2.7-4.3倍に増加させたということを発見した。 グーセンス (2014) は1学年の間、102名の体育教育学部新入生におけるハムストリング損傷の危険因子を評価した。彼らは、被験者がノルディックハムストリングカールを行っている際、パッド入りのディバイスに組み込まれた一軸負荷セルにより、エキセントリックのハムストリング強度を測定した。1年間で16件のハムストリング損傷が記録された。研究者たちは、より低いエキセントリックのハムストリング強度、及び等尺性とエキセントリックハムストリング強度のより高い比率は、ハムストリング損傷の有意な危険因子であるということを発見した。 イェン (2009) は12ヶ月に渡り、44名のスプリンターにおいてハムストリングの強度がハムストリング損傷の危険因子であるかどうかを調査した。研究者たちはそのシーズン中に8名のアスリートがハムストリング損傷を負ったと記録している。その回帰分析は、ハムストリングと大腿四頭筋の最大トルクの割合が、1秒に180度の速度において スギウラ (2008) は30名の男性エリートスプリンターにおいて、次年度のハムストリング損傷の発生率に対して彼らを調査する前に、股関節伸展、膝関節屈曲、及び膝関節伸展トルクの等運動性テストを行った。研究者たちは経過観察期間中、6名の被験者がハムストリング損傷を負ったことを記録している。研究者たちは、患側の脚は1秒間に60度の速度で、股関節伸展(コンセントリックに)及び膝関節屈曲(エキセントリックに)の両方においてより弱かったということを発見している。 クロイサー (2008) は462名のサッカー選手における、等運動性コンセントリックトルクとエキセントリックトルクの間の関係を調査した。その後の期間中、35件のハムストリング損傷が記録された。筋損傷の発生率は、バランスの崩れの無い選手と比較し、無調整な筋力のバランスの崩れのある被験者において4.7倍有意に大きかった。 バネル (1998) はシーズン中、102名の男性オーストラリアンフットボール選手において、ハムストリング損傷の危険性と関連して、ハムストリング、及び大腿四頭筋の等運動性筋力、また、ハムストリングと大腿四頭筋の筋力比率を評価した。彼らはそのシーズン中、12名の選手がハムストリング損傷を負ったと報告している。しかしながら、ハムストリングまたは、大腿四頭筋の等運動性筋力、もしくはその比率と傷害の危険性との間に関連はなかった。 オーチャード (1997) は、37名のプロオーストラリアンフットボール選手における、ハムストリングの強度とハムストリング損傷の危険性との関係を調査した。ハムストリング及び大腿四頭筋のコンセントリック等運動性最大トルクは、プリシーズンにおいて、動力計を使用し1秒間に60度、180度、300度の速度で計測された。シーズン中、6名の選手がハムストリング損傷を負った。ハムストリング損傷は、患側における1秒間に60度の速度でのハムストリングと大腿四頭筋の最大トルクの比率の低さ、およびハムストリング左右相互の最大トルクの比率の低さと有意に関連している。 要約すると、ほとんどの研究論文が、特にエキセントリックの筋活動におけるハムストリングの弱さは、選手がハムストリング損傷を負う危険性を増加させると報告している。これは、我々は通常の伸張・短縮サイクルトレーニングに加え、ハムストリングスのエキセントリックな筋力を増大させるため、特定のトレーニングを熱心に行うべきであると示唆している。