新たに発見された「臓器」、間質に出会う

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科学的リサーチの現場では、つい最近になって、細胞と細胞の間、組織と組織の間に存在する、繊維と液体で埋められた空間=間質が、新たな内臓器として”発見”されたというニュースが、様々なリソースから発表されています。この”発見”については、多数のメディアから発表をされていますが、その中から、Scientific American の記事をご紹介します。

https://www.scientificamerican.com/article/meet-your-interstitium-a-newfound-organ/

日本語訳は、下記をご覧ください。(トム・マイヤーズのコメントはこちらへ。


今日、この時代において、人間の解剖学に関して知られている全てのことから考えると、医者が身体の新しい部分を発見することなど予想しないでしょう。しかし今、研究者たちは見つけたと言っています:これまでに見られたことがない液体で満たされた空間のネットワークを組織内に見つけたと。

今日(3月27日)出版されたScientific Reportsという機関誌にある、この発見の詳細を述べた新しい研究よると、これらの液体で満たされた空間は、皮膚の表面下、消化器管の内壁、肺、泌尿器系、周辺の筋肉など、全身の結合組織にわたって発見されました。

過去には、研究者らは、これらの組織の層は結合組織内に見られる強力な構造タンパク質である、コラーゲンの密集した「壁」であると考えていました。しかし、研究の共同シニア著者、ニューヨーク大学ランゴン医学部の教授であるニール・セイス医師によると、この新しい発見は、この組織が「壁」ではなく、「開かれた、液体で満たされたハイウェイ」のようなものであることを示しています。セイス医師は、この組織は、相互に連結した、液体で満たされた空間であり、分厚いコラーゲンの「束」の格子によって支えられていると言います。

研究者らは、この液体で満たされた空間は、細胞の世界を覗き見るために使う標準的な顕微鏡スライドには現れないため、長い間見逃されてきたと言います。科学者が、組織のサンプルをこのスライド用に準備する際には、サンプルに対して化学薬品を用い、薄いスライス状に切断し、重要な部分をハイライトするために染めます。しかし、この決まったプロセスが、液体を排出し、新たに発見された液体で満たされた空間の消失を招くのです。

研究者らは、そのようなスライドを使う代わりに、新しい映像技術を用いることにより、顕微鏡レベルで生きた組織を調査することを可能にし、この液体で満たされた空間を発見しました。

研究者らは、この液体で満たされた空間のネットワークを、臓器として - 間質と呼んでいます。しかし、これは非公式な区別です;身体の部位が公式に臓器になるためには、より多くの研究者がこれを研究し、この考えに関する共通認識が発達することが必要になると、セイス医師はライブサイエンス誌に伝えています。彼は、この液体で満たされた空間の存在に対して他の研究グループからも確証を得るべきだと付け加えています。

公式な決定はさておき、セイス医師は、この発見はがん研究を含む様々な医学領域においても密接な関係があるかもしれないと考えています。例えば、この発見により、なぜ組織のこの層に侵入した癌腫瘍がリンパ節に拡がり得るのかの説明ができそうです。研究者によれば、癌腫瘍のリンパ節への分散は、この液体で満たされた空間がリンパと呼ばれている液体の源となるものであり、リンパ系に排出されるために起こります(リンパとは、感染と戦う白血球を含む液体です)。

新しい臓器?
人間の身体のおよそ60%は水です。そのうち約3分の2の水分は細胞内にありますが、残り3分の1は細胞外にあり、「間質」液として知られています。セイス医師によると、研究者はすでに個々の細胞の間に液体があることは知っていましたが、組織内部の液体で満たされた空間という、より大きな、結合した間質という考えは、文献で曖昧に述べられていただけでした。新しい研究は、この組織内部の構造化された、液体で満たされた空間を見せることにより、間質という概念を拡げ、間質それ自体、それ自身を臓器として定義した最初のものでした。

比較的新しい技術を用いた新たな調査は、「プローブベースの共焦点レーザー内視鏡検査」またはpCLEと呼ばれています。この器具は、内視鏡を、反射した蛍光性パターンを分析するレーザー及びセンサーと組み合わせ、生きた組織の顕微鏡映像を提供してくれます。

2015年当時は、研究の著者の二人である、当時ニューヨークシティーのマウントシナイ-ベスイスラエルメディカルセンターに在籍していたデービッド・カー-ロック医師とペトロ・ベニアス医師は、癌の拡散を調べるために患者の胆管を調べる際にこの技術を使用し、いつもとは違う何かを発見しました。報告書によると、彼らは知られている解剖学の何にも適合しない、相互連結した空洞の連続を組織の層に見出していたのです。病理学者がこの組織を使ってスライドを作成すると、この空洞は消えていました –後にスライド作成過程の結果であることがわかった謎です。

新しい研究では、研究者らはまず、膵臓と胆管を除去する手術を経験した癌患者にpCLEを使いました。この映像技術は、実際に、結合組織内部の液体で満たされた空間を映し出しました。組織サンプルは身体から取り出されるとすぐに凍結され、それにより液体で満たされた空間が維持され、研究者は顕微鏡を通じてその空間を観察することができたのです。

その後、研究者らは、これと同じ液体で満たされた空間を、癌ではない人々の他の身体の部分から取り出した他の結合組織のサンプルでも発見しました。「組織をたくさん見れば見るほど、この空間はあらゆる場所に存在することを確信した」とセイス医師は言います。

研究者らは、この液体で満たされた空間は、日常機能において組織を守る衝撃吸収として働いている可能性があると考えています。

セイス医師は、この液体で満たされた空間については、すでにかなり多くの情報が知られているかもしれないと指摘しています;ただ研究者が「何を見ているかを知らない」だけだと。実際、研究者らは、「この[身体の部位]について知っているすべてのこと、しかし知っていることを知らなかったこと」についての科学文献のレビューを行うことを計画していると、セイス医師は言います。

新たな問い
この研究には携わっていない、エール大学医学部の消化器系疾患部門の部長であるマイケル・ネイサンソン医師は、この研究で発表された考え方は「完全に新しい概念」あるといいます。ネイサンソン医師は、「彼らが発表した証拠によれば、彼らが正しい可能性はかなり高い」とライブサイエンス誌に語りました。

ネイサンソン医師によると、医者はこれまでに、間質空間に関して幾らかの漠然とした理解がありました。細胞外で見られる液体を含んだ空間であることは知っていましたが、それが何を意味するかを完全に説明できた者はいませんでした。新しい研究は、それを定義するために「良い仕事をした」とネイサンソン医師は言います。

この研究の発見は、ネイサンソンと彼の仲間が、2011年に発表した研究で観察したことと一貫しています。その時、ネイサンソンと彼の仲間は、濃色の繊維のネットワークを観察しましたが、それが一体何であるかを明らかにすることはできませんでした。ネイサンソン医師は言います、「彼らが、このネットワークが存在するという私たちの印象を実証し、さらに定義することができたことを嬉しく思っています」。

ネイサンソン医師は、この新しい発見は、「これまでは聞くことを知らなかった、あらゆる種類の質問を聞くことを可能にした」と言います。例えば、この領域は病気により変化するのか、または病気を誘導する役割があるのか、といった問いを。