マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
ストレングスとは何か?パート3/3
NHL(全米アイスホッケーリーグ)の選手達はシーズン中、組織のモビリティー、安定性を確実にするためにどのようなことをしているのでしょうか?スクリーニングの取り入れ方や、軟部組織のコンディショニング、動きのトレーニング等、他のスポーツにも共通する要素もありそうですね。
ストレングスとは何か?パート2/3
NHL(全米アイスホッケーリーグ)のトップレベルの選手達に必要とされるストレングスとは?ベンチプレスやスクワットがどの位挙げられるか?というような強さは、試合での成功につながるのか?NHLのS&Cコーチ、サイモン・ベネットとViPRの創始者ミショールが、 競技に特有なストレングスの要素を動きの特性を語ります。
トレーニングの原則:人間の形のデザイン パート2/2
トレーニングの原則 ー 集合体の原則 集合体とはこのように定義されます”...ひとつのボディに集められたパーツやユニットの集合体により形作られたもの、質量や量;別々の物が合わさった、もしくは関連づいた質量;収集物 真の基本的な原則のひとつは、身体は”集合体”として存在しているということです。私たちの全ての肉体構造は、関係性を含有しています。全てなのです!まさに身体の型は、統合された機能に従っているのです。私たちは明らかに部分の集合体であるよりも全体としてのほうが明らかにより強く、より効率的で、より安定し、より機動的です。 前述した ”膝について考える実験” を例としましょう。私たちはマニュアルの評価から、タスク評価やムーブメント観察とは全く異なった情報を与えられることを目の当たりにしました。明らかな違いは、ひとつは局所的な(孤立した)膝の機能であり、もう一方は包括的な(統合された)膝の機能であるということです ひとつは膝を孤立して見て、もうひとつは身体と関連づけて見ています。人体のデザインは単に構造としてだけではなく、身体を形作る構造の集合体として全体の構造を考えることを必要としています。効果的な人間というのは全体性を持ち、部品の集合体よりも途方もなく素晴らしいものなのです! 私たちが行ったタスク評価で、より膝の動きが見られたということは、理にかなっているのではないでしょうか?なぜなら、ただ単に膝が動いていたからではないからです。より広義な観察においても、股関節と足首はより膝の動きに関与していることがわかります...空間において。 それは膝がその構造内で動いているというのではなく、膝はより多く動く余地を持っているのです(動くためのより大きな閾値がある ー 図4参照)。足首が生理学的動作をする時にも同じことが言えます。 膝も動きについていきます。その結果、私たちは膝全体が、全ての動作面においてより多くの動きの可能性を持つということを目の当たりにします。これは実際、他の関節に力を分散させることで膝の構成の摩耗を減少させる効果を持ちます。 図4 今日におけるムーブメントの評価は、集合体の原則と人体動作力学のより統合的視点を取り入れなければなりません。結果として私たちの矯正的戦略が変わることになります。 トレーニングの原則 ー 自然の秩序 私たちは単なる滞留物ではなく、永続するパターンを持っているのである - ノルバート ウィーナー トレーニングの世界では(人生の全ての側面においても)、自然秩序は明確な枠組みに従っています。それは以下のように述べることができます。 刺激->反応->変化/適応 私たち人類の身体には、ある種のパターンや順序というものが存在します。私たちはそれを特異性の原則(SAID原則)と称します。しばしばこれは、身体にかけられた負荷増大によって起こった筋肉の適応に関連して定義されています(負荷トレーニング、もしくは持久性トレーニングにおいて)。 しかしながら自然秩序は、単なる筋肉の変化だけに留まりません。この枠組みは全ての生物学的システムに影響を及ぼします。人体は、驚くべき可塑的な媒体なのです。身体は、より規則的でエネルギー効率の良い構造に急速に変化を遂げることができるのです。 身体は、規則的ではなく、更にエネルギーを必要とする構造に急速に変化を遂げることもできるのです。例えば、私たちが慣れている座位の姿勢を思い浮かべてください。もし私たちがある座り方をしてこのポジションを保持していると、時間の経過とともに、身体はこの形に自ずと“固定”していきます(特に脊柱)。 トレーニングの質問が問いかけてきます:私たちのクライアント/アスリートはどちらの環境に適応していっているのだろうか?環境により、彼らがより効率的になっているのか、それとも環境により、エネルギー漏れが強まっているのだろうか?以下の二つの図を考えてみてください。 図5 図6 トレーナーとして、私たちはクライアントの動きを観察することで、定期的に評価を行っています。過去に私は、二元論的な考え方に行き詰まっていることがよくありました。つまりこのエクササイズが正しくて他のものは間違っている、といったものです。 現在私は、私の選択したエクササイズから、どのような適応が起こりえるかを考えます(自然秩序に従って)。そして “このエクササイズはクライアントをより効率的にするか否か?” と自問します。自然秩序の原則を元に、上記の2つの図について考えてみましょう。 図5では、脊柱において著しい側屈と前屈が、股関節では閉じられた屈曲と足部には外旋が見られ、それらは全て静的姿勢においておこっています。刺激が反応を生み出すとすれば、どのような変化や適応が結果としてうまれるのでしょうか? 人体構造は常に、最も慣れ親しんだポジションに適応します。図5の人は、彼自身がそのポジションに調整をした結果なのです。これはコラーゲン繊維が生成され、疎性結合組織内の細胞外基質に放出されたからです。 結果として、身体は筋膜的にそのパターンに”落ち着き”ます。言い換えれば身体は(より厳密にいうと、筋膜)は、可塑性を持つ媒体なのです。結合組織は、経験するストレス要因に基づいて、継続的に形をかえていくのです。 結合組織細胞は、力学的力によって自らを再配列します。(これは活動している筋肉の動きによるもの、怪我によるストレスや、静的姿勢を長く保持し続けていること等によるものかもしれません) この結合組織を通るストレス(力学的力)は、組織を変形させ、分子間の繋がりを”ストレッチ”させるのです。その結果、組織の電荷が変わります。結合組織細胞はこの変化に反応し、そのエリアの細胞間の構成要素を集合体とするか、減少する、もしくは変化させます。 例えば上部交差症候群を例にとりましょう。胸椎の後弯の増加に気づきます。その結果、肩関節包が前方に移動し、それに呼応して頸椎の前弯が増加します(頭部前突の姿勢)。人体には、より多くのストレスがかかることになります。 身体の分節がニュートラルから外れ、長期間静的にその姿勢が保たれていると(「悪い姿勢」のように)、筋肉は長さを変えます(短くなるものもあれば、長くなるものも)。「短縮した」筋肉(ここでは小胸筋)は短縮位で固まり、「伸長した」筋肉(ここでは僧帽筋上部)は伸長位で固まります。これは周辺細胞間基質の筋膜的繋がりが増えたためです。 図6は何が違うのでしょうか。一つには、より“オープン”な身体であり、構造自体が重力に対して図5とはかなり違った形で位置しているということです。(他の原則でもみたように) そこで問いかけるべきなのは “あなたはクライアント/アスリートにどのように自然の秩序に従い、適応して欲しいですか?” ということ。図5は”クローズな”身体のポジションに適応し、図6は“オープン”なポジションに適応する傾向があります。 トレーニングの原則 ー 自然の力 私たちは、力に支配された媒体の中に存在しています。重力と床反力は、トレーニング領域において親しまれている2つの力です。重力は下に引っ張り、床反力は身体を押し上げ動きを作り出せるものだということを、私たちは知っています。 私たちの身体は、これらの相反する力の間でバランスを取っています。私たちは地面を”プッシュオフ”する際に、重力フィールドの“中”を動き”横切り”ます。重力フィールドは地面とともに、私たちの身体を形づくることを助けているのです。 私たちの身体の股関節後面には沢山の筋肉があるのに対して、前面にはあまりないのはなぜなのかを考えてみましょう。 私たちの足が地面についた時に、身体を減速させる(重力が身体を引っ張り下げる時)際、主に責任を負うのは股関節後部筋群(すなわち臀筋等)になります。 我々の生物学的システムは、我々を取り囲む自然の力の中で発達してきました。その影響から逃れることは不可能です。しかし私たちは滅多に(もしあるとしても極めてまれ)これらの力を見ることはなく、私たちの身体を助ける為に使うことも滅多にありません。 私たちの身体は、この力を助けの為に使うのではなく、屈服してしまうことが、あまりにも多すぎます。落ちたアーチ、頭部前突の姿勢、腰背部の弱さなど。 これら全ての状態は、重力の影響に対して耐えることができないことによるものです。重力は私たちを下に引っ張ります、そして私たちの身体は更にパワフルな自然の力に屈する:化学結合です。 もし私たちがある姿勢を長時間保っていると、重力はゆっくりとしかし確実に私たちに影響を与えます。私たちは自分自身の中に“沈み込み”、潰れはじめていくのです。脊柱はそのカーブを増し、頭部は前方にこぼれ落ち、肩は前方に巻き込まれます。 身体全体に及ぶカスケード効果がおこります。そこから化学結合が取って代わります。そして、この化学結合は重力よりもずっと強力なのです!自然秩序の原則を受けて、重力(刺激)は脊柱を引き寄せます。 筋肉と結合組織はストレッチし始め(反応)、より多くの結合組織(そしてその化学結合)が新しい、ストレッチされたスペースに(新たな筋肉構造にとっての筋膜を含む“静止長”)配置されます。それは単に筋肉が長く引き延ばされたわけではないのです。 それは結合組織(そして全ての化学結合)が身体を新しい長さにリセットしたのです。それはこのようなものです:重力->力学的ストレス ->新たな化学結合構造 元々の構造を取り戻すには、この化学結合に打ち勝たなければなりません。通常これは柔軟性/ストレングス/スタビリティーのプロトコールによって行われます。化学結合に打ち勝つには、良く考え抜かれたプログラムに対しての時間、献身的姿勢、そして忠実さが必要となります。 ですからもし私たちの誰かが、ある姿勢の”機能不全”を取り除くことに対してイライラしているとしたら、繰り返しさらされる姿勢への適応(すなわち座位のような静的ポジション)が私たちの身体を”セット”し、硬直性を増加させていることを念頭に置き、辛抱強くなければなりません。 私たちがこれらの原則と、いかにそれらが私たちの身体に影響を与えているかを考えることで、いかに現行のトレーニングモデルを、これらの真実に適応させられるのかも考えていきましょう。他の原則のように、もし私たちが身体の原則を犯すような事があれば、私たちは身体に反抗して働きかけていることになり、私たちは人類のパフォーマンスと機能を最大限活用できないことになります。 私たちの身体の不思議を楽しみながら探ってみてください、そして原則を犯さないということを覚えておきましょう!
トレーニングの原則:人間の形のデザイン パート1/2
人間の形の構造やデザインを学べば学ぶほど、特定のパターンやそこにある真実に気づきはじめます。ムーブメント、筋筋膜、そして関節の健康やパフォーマンスは、人間の構造とそれに対応したデザインにすべて由来しています。下記の基礎的な真実から(私達は原則と呼びます)、トレーニング原則を適合させることができ、多くの疑問をよりはっきりとさせることができるでしょう。 このトレーニングの原則についての記事の目的は、これらの真実を探求することで、これらの真実をエクササイズに適用した際に、私たちのプログラムデザインをよりシンプルにかつ効果的にすることです。 次の思考実験について考えてみてください:あなたが人類の膝を初めて発見したとしましょう。誰もその機能を見たこともなければ、間近で見たこともなく、当然皮膚の下から見たこともありません。 この構造に対するあなたの分析にあたって、事前情報や信頼できる知識というものをあなたは持ち合わせていません。観察したものからのみ、情報を集めることができます。科学者は、どのようにしてこの構造をより学び始めるのでしょうか? まずはじめに、あなたはこの構造がどのように動くのか確かめようとするかもしれません。人々の歩行、屈んだり、遊んでいるところなどを観察するでしょう。被験者として健康な4人を雇い、4人のカメラマンも雇い、被験者が歩行、屈曲、遊んで動いているところを、膝の構造だけを撮るようにカメラを固定します。 被験者の様々な動作のタスク(課題)を2日間録画したのち、あなたはそのビデオを見返します。もしあなたが常識にとらわれずに考えることができるなら、この録画された実験観察から膝は以下のことを行う、ということを発見するのにさほど時間はかからないでしょう。 私たちが現在知っている矢状面での前後の動き 被験者グループが方向を変える時、屈曲しながら前後にローテーションをする 前額面で左右に動く 実のところ、あなたは膝が全方向に動くことをはっきりとみることになるでしょう。あなたの科学的思考は、膝の動作についてのより深い探求へと誘われていきます。 言い換えると、あなたは孤立した膝の評価をしたことになります。その評価において、あなたは被験者を横たわらせ、膝の可動域を計測するために脛骨を動かす際に大腿骨を固定することが最善のやり方だと決めます。 あなたは同じアセスメントを左右にも(図1参照)、前後にも、そしてローテーションに対しても行います。結局、これはあなたが最初に観察した膝の動きだったのです。覚えていますか? 図1 即座にあなたは、膝は矢状面では良く動くことができるけれど、他の2つの面ではそうでもないということを目の当たりにします。しかしこれはある問題を提起することになります、なぜならあなたのタスクの評価(観察)はマニュアル評価とは全く違うものを測定したからです。それぞれの評価は、非常に価値のあるものです。 しかしながら、現時点ではこれらは矛盾しているようです。これにイライラして、あなたはより深く調査し、解剖をして皮膚の下から観察することを決意します。 解剖をして膝の構造をみていくと、あなたは他の組織、構造、そして血管が密集していることに気づきます。それらはすべて、身体の他のエリアと明確なコミュニケーションをとっているのです。ついに膝関節包にたどり着いた時、あなたは非常に興味深いものを発見するのです。 図2 膝自体の構造は、実は蝶番関節です。より大きい内側の半月板により横断面での自由性が生まれ、垂直性が半月板の境で生まれる(半月板の外側により高さがある)ことにより前額面での自由性が生まれます。 さらに、膝を身体の他の部分と統一する多くの構造は(図2では示されていない)斜交軸を通ります(三軸での動きを好む)。 それらの構造には、幾つか名称を挙げるだけでも、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、 膝窩筋、内側広筋などがあります。 我々の”局所的な”評価方法(テーブルの上に寝るもの)と膝の観察可能な動き(ビデオに録画した”タスク”)に対する調査というのは”構造的矛盾”となります。 もし我々が、人体構造が関連性を含蓄するという事実を捨て去ったとしたら、私たちは確実に、膝の機能を主に矢状面で(局所的評価に基づいて)見て、他の2つの面では限られた動きしか見ていないことになります。 結果、我々の結論として、膝はひとつの面においてのみトラッキングするべきであり、より具体的にいうと第2中足骨の上をトラッキングする、ということになります。ではタスク評価の際に観察したことはどうなるのでしょうか? 膝が、第2中足骨の上のみをトラッキングするのを見ることは殆どありません。一つの面でのみ起こるトラッキング(矢状面、水平面、前額面どれにおいても)は、膝の消耗を少なくするためのプロトコールなのでしょうか?もしそうであるならば身体の他の部分についてはどうなのでしょう? 図3 これを試してみてください。もし私が身体を回旋しようとして(水平チョップのパターンで)、膝を第2趾の上に留めた際、私の股関節は動くことができるでしょうか?答えはNoです。では、もし股関節が動かなければ腰椎には何が起こるでしょうか? このウッドチョップツイストを達成するためには、腰椎部分の回旋を無理強いしすぎることになり、脊柱の摩耗を悪化させてしまう事になるかもしれません。それでは誰が正しいのでしょうか?どのプロトコールを我々は使うべきなのでしょう? まず始めに、私たちは人体のデザインと構造を理解することが重要です。なぜなら私たちがデザインと調和して動けば動く程、より安全だからです。そして基本的真実であるトレーニングの原則を理解する事により、私たちは、より効果的にそして安全にクライアント/アスリートをコンディショニングする戦略を開発することになります。 答えは、我々の生まれもって与えられたデザインという普遍的真理の中にあります。前述したように、このシリーズ記事は人間の構造とデザインを支配し存在する原則についてのエッセイであり、それにより私たちは、動いている身体そして身体のデザインに対する現在のアイデアを問うことができるのです。 異なり変化する視点でみてみると、私たちがトレーニングやコンディショニングで使っているコンセプトは、単に理にかなっていないこともあります。しばしば矛盾していることもあります。 リサーチは何度もこれに直面しています。ある研究はある結論を示唆し、他の研究は何か違ったことを示すこともあります。この矛盾が起こり結論が差異を示す時、研究者は明確にするために全体に関わることや、より一般的で包括的なアイデアを探すのです。 そのため、科学は自然界の基礎的な働きを説明する原則を取り入れてきました。運動科学も何ら変わりはないのです! パート2/2では、あなたがあるトレーニング方法を使用したり、プログラムデザインを作り出そうとしている時にガイドとなりうるトレーニングの原則をご紹介します。これらの原則の表示には特に決まった順番があるわけではなく、互いに影響を与えあうものとなっています。 (パート2/2はこちらへ)
ストレングスとは何か?パート1/3
このNHLのストレングス&コンディショニングコーチ、サイモン・ベネットとミショールのスカイプインタビューでは、トレーニングジムの中でも強さと、氷の上のゲームにおける強さは、必ずしもイコールではないことが取り上げられています。本当の強さとは、何を指すのでしょうか?
背骨は柱ではない
ViPR創始者であり、インスティテュートオブモーションの代表であるミショール・ダルコートが、背骨のテンセグリティー構造を解説します。英語でも日本語でも柱(Column/脊柱)と表現される背骨ですが、柱ではなく、柔軟性も弾力性もあるテンセグリティーなのです。
物体を移動する?シフティングを考慮しよう!
私達がジムで行っているトレーニング方法に関して、じっくりと見直してみる時期がきています。私達は主に、重力に逆らって、物体を持ち上げる “リフティング(持ち上げる)” を含むトレーニング方法に、重きを置いています。スクワット、ショルダープレス、デッドリフト、バイセプス・カール、ベンチプレス、ターキッシュ・ゲットアップ、これらはすべて、リフティング(持ち上げる)の動作を含んでいます。 リフティングから多くの恩恵を受ける一方、リフティングだけでは、トレーニング方法として完璧とは言えません。リフティングの利点は、タイムアンダーテンションの増進ができるということであり、その刺激に対する身体の適合の結果として筋肥大が望めます。しかし、この適合がフィットネス専門家、ストレングス・コーチの唯一のゴールになるべきではないのです。 “シフティング”とは何でしょうか? 簡単に言うなら、“シフティング”とは、前述の“リフティング”のように、ただ重力に逆らって物体を持ち上げることとは異なり、重力の中で物体を持ち上げ移動させることを意味します。リフティングは、まだトレーニング方法の主流ではありますが、トレーニングや移動の成功のためには、リフティングとシフティングの両方が非常に重要となります。日常生活における人体の機能的動作には、物体を持ち上げ、その物体と共に移動することが含まれています。それが“シフティング”なのです。私達はトレーニングプログラムに、この実践的なシフティングパターンを取り込むことによって、より強靭に、より可動性を得ることができます。 物体の移動を含むシフティングは、リフティングとは異なる生理的反応を引き起こします。まずはじめに、シフティングは、リフティングとは異なる神経的反応を生み出します。筋肉は、シフティングパターンが作り出す素早い“オン‐オフ”のシークエンスの神経反応にとても敏感です。筋肉がその“オンとオフ”を素早く切り替えることのできるということは、効率的でスピードのある動きを作り出すことができるということでもあります。 ふたつめのポイントとして、筋肉はシフティングパターンの際、より等尺性収縮をする傾向にあります。それは効率的な動きに有利なだけでなく、腱や筋膜により負荷をかけることもできます。そして、そこから発生したエネルギーをより効率的に伝達することができ、より大きな力を作り出すことができるのです。さらに、シフティングパターンでは、床反力が筋膜の発達を刺激して、身体全体の安定性向上を促進します。筋膜の発達は、筋の発達に比較して遅いため、ピリオダイゼーショントレーニングにシフティングを適切に組み込むこと、そして適切な栄養摂取の導入が、最適な筋膜発達へのカギになります。 より多くの張力、より少ない圧縮。 リフティングは、重力の向きと平行な荷重パターンを生み出しますが、その恩恵とトレーニング効果は、圧縮の増大というあまり嬉しくない結果ももたらします。 軸荷重と絶え間ないストレスは、筋肥大をもたらします。しかし、この荷重は、関節に、とてつもない負担をかけ、不利な圧縮を加え、関連する軟部組織から水分を押し出し、最適なパフォーマンスに必要な神経効果を制限します。よって、長期にわたる成功のために、賢明な応用とバランスのとれたピリオダイゼーションプログラムを取り入れることが、極めて重要なのです。加えて、従来のリフティングは、動作の制限や、適切な適合に重要で必要とされる、あらゆる方向への荷重に関する制限を含んでいます。 私たちの身体は、身体組織への絶え間ない圧縮荷重に耐えられるようには作られていません。組織変形、低酸素状態、ヒステリシスは、絶えず荷重された際に起こる一貫性のある身体組織の反応であり、しばしば不都合な効果を人体に与えます。一方で、断続的な荷重は生物学的組織に対して、より確実なものであり、シフティングパターンの本質でもあります。 対照的に、シフティング荷重でプログラムのバランスをとることは、身体に軸荷重をかけることなく、圧縮を生み出さず張力が発生する角度で荷重することになります。そして、これは神経感度を最大化すると同時に、軟部組織適合を最適化するための必要なあらゆる方向への荷重と荷重の変数を提供します。 タイミングは? 神経感度は、人体の機能に必要不可欠です。神経は、固有受容器が効率的な運動効果を筋肉に伝えて起動するために、十分な情報を受け取る必要があります。そして、筋肉と比較して筋膜には、その9倍もの固有受容器が存在するため、神経が筋膜感度を必要とすると同時に、筋肉は神経感度を必要としていることを理解することが重要です。科学的根拠が、筋膜は荷重方向の変化、さまざまな荷重角度、テンポ、多様な負荷により、より良く鍛えられることを示唆しています。よって、シフティングは、このような幅広い変動性を作り出す理想的な方法なのです。 最適化された筋膜によって、神経系の求心性入力は最大化されることでき、効率的で改良された運動効果を作り出すために、神経により多くの情報を与えることができます。そのうえ、シフティングは物体の運動量を発生させ、より少ない筋肉活動によって動きを起こし、累積的な効力を作り出すことを可能にします。その結果、筋肉はオンとオフを切り替えることができ、神経はより敏感に適合することができます。 神経感度は、恐らく、人体の機能の中で最も重要で、人々が切望している適合でしょう。反応の早い神経系は、クライアントやアスリートを悩ませるケガのリスクや、ケガによる致命的な遅延を減少するための効果性を提供します。 私たちのアプローチはバランスが取れているでしょうか? バランスの取れたプログラムを作ろうとする際、リフティングとシフティングのプロトコールを混合することを考えてください。理想的なプログラムは、リフティング、もしくはシフティングのどちらかのみに偏ることではなく、むしろ、バランスが取れていて、転換可能なトレーニング効果を生み出すために、これら2つを混合したものとなります。 ViPRは、そのような目的のために作られた道具です。わたしたちは、理想的なトレーニング効果を生み出すViPRシフティングの無数の使用例を持っています。ここにいくつかのシフティングパターン例があります。
負荷をかけたムーブメントトレーニング パート1/2
昨今のトレーニングプロトコルで欠けているもの 過去を尊重し、未来に繋げる 先日中国を訪れた際、幸運にもViPRのビデオ撮影の為に万里の長城を訪れることができました。その際、この万里の長城がどのようにして建てられたのか、建設に関わった労働者達の肉体にかかった負担に思いを馳せることになりました。 この何千マイルにも及び、完成させるまでに何百年とかかった万里の長城を建設した労働者たちは、この最も壮大な建造物を作るために石を拾い、道具を持ち上げ、これらの負荷と共に自身の身体を動かさなければなりませんでした。 実際、考えて見ると、ジムの外で起こるほとんどのワーク(労働)は、質量と共に、またはそれに対して動く必要があったり、質量を持ち挙げたり下げたりすることを必要とします。過去においてそれは肉体労働と言われていましたが、昨今では殆ど行わなくなりました。 しかし、生物学的に私たちは、最も基本的な課題である、負荷と共に動く、ということに対してうまく適応できるようになっているのです。 生物学的に、ある種の肉体的労働が必要であるという観点からすると、私たちは特定のトレーニングコンセプトを、注意深く見ていく必要があります。そうすることによって私たちのトレーニング哲学を排除的なものではなく、より包括的なものにすることができるのです。 この記事では、多くの人が知っている様々な様式のトレーニングコンセプトを簡潔に議論し、よくあるトレーニングプロトコルに欠けている、負荷をかけたムーブメントトレーニングのコンセプトについて議論をしていきます。 重要な質問 異なったトレーニングコンセプトにおいて、どのように力が身体を通過し、その力によって、どのような適応が生まれるかを細かい所まで考えましょう。以下の質問は最も効率的なプログラムをデザインする時に問うべき重要なものです: 通常のトレーニングプログラムではどのように負荷が扱われているだろうか?その負荷は決まったパターンによるものか、それともランダムなものか?負荷は(重力のラインに沿って)持ち上げられているのか、それとも(重力フィールドの中を)移動しているのか? 今あるレジスタンストレーニングの考え方に、動きに基づいたレジスタンスワークを取り入れることが出来るか? 私たちが知っているトレーニングコンセプト 負荷をかけたムーブメントトレーニングを綿密にみていく為には、まずトレーニング&コンディショニングのよくあるコンセプト(それ自体にも有効性はあります)を検証することが重要です。 近年ジムに足を踏み入れた人たちは、トレーニング器具に示されているコンセプトに従うことに慣れていると思います。下の表をみてください。右に記載されている製品は、左に書かれている一般的な概念にしっかりと根をおろしたものになっています。これらのコンセプトは研究、検証、それを一般化したことにより、ユーザーに対してなぜ、そしていつ、これらのツールを使うのかをよりはっきりと示すこととなりました。 ひとたび、「なぜ」、「いつ」が答えられれば、ツールはより確実に、そして正確に使われることになります。そうすることで、どのツールが他のものよりもより優れているかという議論から離れ、正しい理由で使用された時、全てのツールは有効であるという観点に立つことができるのです。 コンセプト トレーニングスタイル/ツール コアトレーニング スタビリティーボール SAQトレーニング スピードラダー、コーン、等 レジスタンス・ストレングストレーニング バーベル、ダンベル、ケトルボール ファンクショナルトレーニング デュアルケーブル、3Dフリーウェイト 筋膜リリース フォームローラー(ストレッチポール) ファンクショナル フレキシビリティ トレーニング ストレッチケージ ピラティス リフォーマー ベアフット トレーニング ”ミニマル” シューズ コアの構造の構成要素、その生物力学的な機能、そして、コアの機能がいかに重要かを理解していることが、スタビリティーボールやその他のツールを選ぶ助けとなります。 スピード/アジリティー/クイックネスから運動への本質的な変遷を理解することが、がスピードラダーやコーンといったツールの必要性を強めます。 ストレングストレーニングの知識、そのコンセプトと生物学的適応に対する重要性により、バーベル、ダンベル、ケトルボール等が必要な理由がサポートされ、トレーニングの中で有効に使われるのです。 モビリティー(可動性)/フレキシビリティー(柔軟性)の発達や修復の必要性に対する見識が、セルフ筋膜リリースとフォームローラーやグリッドといったツールの必要性を高めます。 最終的には、正当で適切な筋の通ったコンセプトに対する明確な気づき、そのものが、トレーニングツールをヘルス&フィットネスの専門家にとって価値があるものにするのです。 負荷をかけたムーブメントトレーニングの定義 負荷をかけたムーブメントトレーニングは、以下のように定義されます。 動きの中でのレジスタンストレーニング;全身を使う、負荷を用いた明確な課題がある動きのパターン。 私たちは皆、昔からあるレジスタンストレーニングが何なのか、そしてなぜそれがトレーニングルーティーンの中で大事なのかわかっていると思います。 それではバランスの取れたトレーニングプロトコルのために、なぜレジスタンストレーニングに、ある種の動きを加える必要があるのか少し詳しく見ていきましょう。 生物学によって明かされる秘密 生物学の研究は、我々の機能に備わっている重要な適応プロセスを明らかにしました。人間の組織にかけられた外部荷重とそれに適応する姿勢(動き)は、我々の健康と生存に重要な役目を果たしているのです。 人々が非常に長く、健康に生きる社会において、一日における、そして毎日の、間欠運動が最も大切であると疫学研究は明らかにしました。この日常的に動くこと(特定の食事/環境のみではなく)が長寿を享受する人々に共通することなのです。 しかしながら、近代の工業化された社会では、職場、自宅、そして通勤時に座ることが多く、昔は行っていた恒常的な動きの要素が、現代社会においては失われてしまいました。私達の身体に、今までにない程に病気や衰退が起こっているのは、決して偶然ではないのです。 ムーブメントは病気や体力の衰退に対する解毒剤である 外部からの負荷と共に動くこと ー すなわち負荷のかかったムーブメントトレーニングは、組織の再構築を引き起こす様々な「ストレスのライン」に沿って身体を調整し、生物学が提示する必要な動きをもたらしてくれます。 このようにして特定の組織(筋肉、筋膜、骨、皮膚 )は、自らを調整しているのです。 負荷のかかった動きの中で引き起こされる、ストレスライン上の数々の有機的な刺激は、可動性と弾力性に富み、理想的に機能する強く安定した身体を構成するために、適切で多種多様な運動、力学的な負荷を提供してくれます。 さらに、こういった形のトレーニングは、様々なポジションで、強さと安定性を発揮できる身体を作り上げていく一助となります。これらの理由から(他の理由は後述)、負荷をかけたムーブメントトレーニングは、バランスの取れたトレーニング、及びコンディショニングプログラムに必要不可欠なものなのです。 質量を様々な方法で動かすことで多岐に渡る生物学的構造の適応変化が起こります。それには以下のものが含まれます: 少ない圧縮力。負荷が単に身体上に「乗る」はなく、身体と「共に」移動するため。 身体が動きの中で経験する、多くの順応によって起こる様々なポジションでのスタビリティー/ストレングス/パワーの向上。負荷をかけたムーブメントは身体を耐久性のある強固な構造にする。 筋内コーディネーションの向上 — 移行動作を伴う運動指示は神経システムが系統立たなければならないコーティネーションパターンを課すため 全身の統合:古いことわざは正しい — 生物学的構造はそれぞれの部分を足した物よりも、全体としての方がより強固なものとなる — 農場の子供に聞いてみよう… これがなぜ彼らが強く安定しているかという大きな理由なのです。 筋肉、神経、皮膚、筋膜に起こるより多くの適応(これらの組織にかかる、多種多様のストレスラインの) (パート2/2はこちらへ) 参照文献: Andrews JG (1985), A general method for determining the functional role of a muscle, J Biomech Eng,107: 348-353. Andrew s JG (1982), On the relationship between resultant joint torques and muscular activity, Med Sci Sports Exerc., 14:361-367. Andrews JG (1987), The functional role of the hamstrings and quadriceps during cycling: Lombard’s paradox revisited,J Biomech, 20:565-575. Baechle TR and Earle RW (2000), Essentials of Strength Training and Conditioning, second edition, Human Kinetics. Basmajian J (1978), Muscles Alive, Williams and Wilkins Co, Baltimore. Borelli, GA (1680-1681), De motu animalium, Rome. Busquet L (1992), Les chaines musculaires, Vols 1-4, Freres, Mairlot, Maitres et Clets de la Posture. Carlsoo S (1972), How Man Moves, Kinesiological Methods and Studies, WilliamHeinemann Ltd. Chen CS and Ingber DE(1999), Tensegrity and Mechanoregulation: from skeleton to cytoskeleton. Osteoarthritis Dykyj D (1988), Anatomy of Motion, Cli Pod Med and Surg, 5(3):477-90. Elftman H (1966), Biomechanics of Muscle, J Bone Joint Surg Am, 48:363-377. 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負荷をかけたムーブメントトレーニング パート2/2
移行動作 負荷をかけたムーブメントトレーニングの際、取り入れたいタイプの動きを”移行動作”と呼ぶことにしましょう。 移行動作とは、単純に明確な課題の元で行われる全身運動のパターン化と定義づけることができます。つまりそれは、ある場所から別の場所に全身を移動させる、ということです。庭仕事、スポーツや活動で身体を動かしたり、どのような場合でも全身を使って動いているのであれば、それは移行動作を取り入れている、ということになります。 移行動作には運動連鎖における全ての関節が、まとまり、調和した動きの中で様々な角度の動作に関わってきます。身体全体を一つのものとして動かすということは、チェーンリアクションバイオメカニクス®(連鎖反応生体力学)や身体機能の基本原則を、より強固にするのです。 複数の関節動作が統合されるということは、生体力学的に一定の箇所からストレスを軽減させ、負荷が分散するように、全てのシステムに振り分けるということです。 以下のイメージは、トレーニングやコンディショニングおける移行動作を描いたものです。 外部負荷 レジスタンストレーニングは、しばしば人体に外的質量をかけることだと考えられており、それは間違いではありません。しかし、この外的質量がいかに操られ、どのような適応が結果として起こるのか、そのための多くの方法を探っていきたいのです。多くの場合、トレーニングでは、外的質量はリニアパターン(面の/直線的なパターン)で動かされます。これには多くの利点がありますが、刺激という意味では不完全なものとなります。 干し草を転がす時にかかる幾多ものストレスのラインと、バイセップスカールを比べてみてください。これは非常に重要であり、適応とパフォーマンスの測定においても重要な関連が見られます。(図1、2参照) 図1:バイセップスカール時のストレスラインを描写したもの。腕の縦方向にかかる力のラインを示したもので、この単独の張力は肥大効果を生み出すという利点がある。 図2:負荷をかけた動作時のストレスラインを描写したもの。複数のストレスラインが存在し、全身にかかる負荷を軽減しているため、全身の再構築を促進している。 負荷をかけたムーブメントトレーニング:欠けていたもの 負荷をかけたムーブメントトレーニングは、今までに論じてきたことや前述の身体適応をサポートする多くのリサーチに基づき、最近では、フィットネスやトレーニングでも、より頻繁に行われるようになりました。 身体とその適応について学ぶと、負荷をかけたムーブメントトレーニングは、筋肉、筋膜、神経系、皮膚、そしてその他の身体のシステムに挑戦し、調子を整えるということがわかります。負荷と共に動くことで、バランス、アジリティー、動的強さが向上し、日常生活における機能性の向上やスポーツにおけるパフォーマンス向上にも繋がるということが、リサーチにより証明されています。負荷をかけたムーブメントトレーニングの効用の、科学的背景に関しては今後の記事で詳しく解説をします。 こういったトレーニングは、バランスの取れた健康とフィットネスのプログラムに含まれるべきものです。負荷をかけたムーブメントトレーニングは、現行のトレーニング方法と取り替えることを目的としたものではなく、すでに構造化されているプログラムに加えるもの、であるということを強調しておきたいと思います。 下に示す図3の4つのカテゴリーは、現在の様々なトレーニングの種類を描写したものです; 負荷あり(ウエイトを使用) -OR- 負荷なし(自体重の操作) リニア(面での動き) -OR- 3次元(3次元移行動作) 図3:バランスの取れたプロトコールの多様かつ非常に重要な側面を記述。それぞれのエリアに描かれているトレーニングは、バランスの取れたフィットネスプログラムの重要な要素を表しています。理想的なプログラムのテンプレートには、それぞれのエリアの要素が含まれています。 左上に書かれているものは、何年にも渡り細かい所まで徹底的に調べられてきた外的抵抗や不可を用いたリニアムーブメント(直線運動)で、昔からあるレジスタンストレーニングに取り入れられているものです。それに含まれる利点や適応には、以下のようなものがあります: より多くの筋肥大 緊張状態を保つ時間 ホルモン分泌量の増加 スタビリティー/ストレングス/パワーの向上 筋肉内のコーディネーション向上 左下に書かれているものは、負荷のないリニアムーブメントで、神経筋を活性化させるための再教育や、関節の可動性を高めるため、運動効率を促進させるため等の目的でしばしば用いられます。以下を含む数々の効用があります: 神経筋システムの再教育 スタビリティー/モビリティーのトレーニング 繋がりが弱いところへの刺激 筋肉などの対象とした組織の向上 筋肉内コーディネーションの向上 右下に書かれているものは、負荷なしで行われる移行的もしくは3次元での動きとなります。これらの自体重でのドリルは、スピードラダーやコーン等の道具を使用するものもあれば、使用しないものもあり、3次元での動きを生み出します。利点や適応については以下のようなものが含まれます: 迅速な神経システムの活性化 ダイナミック スタビリティー トレーニング 運動学習の向上 スピード、アジリティー、クイックネスの向上 ファンクショナルな反応能力の向上 右上に書かれているものは、負荷をかけた移行動作や、3次元での動きを用いたもので、トレーニングで著しく欠けている事が多いものです。負荷をかけたムーブメントトレーニングは、このエリアに属します。 負荷をかけた状態で身体を移動させる人を、ジムの環境で見ることは、ほとんどありませんが、これは一連のトレーニングにおいて重要なものなのです。負荷をかけたムーブメントトレーニングには、以下のものを含み更に多くの利点があります。 筋肉、神経、皮膚、筋膜におけるより多くの適応 (移行動作時のプレロードのため) 少い圧縮力(圧縮ではなく引張荷重のため) ホルモン分泌の増加(負荷のかかった移行動作による強度と代謝要求のため) 多方向へのスタビリティ/ストレングス/パワーの向上(プレポジションローディングに関与するため)、筋肉内コーディネーションの向上(相乗的な筋活動を必要とする累加力によるもの) 負荷をかけたムーブメントトレーニングを始めるにあたって 「一番シンプルに、このムーブメントトレーニングをフィットネスプログラムに入れるにはどうしたらいい?」と良く聞かれます。 ここから始めましょう。今現在行っているトレーニングプロトコルに、負荷をかけたムーブメントトレーニングを加えることから始めましょう。今現在行っていることを止めてしまう必要は、何ひとつありません。「胸の日」や「腕の日」に対して「身体全体の日」と考えてみてください。 徐々に負荷を増やしましょう。新しいトレーニング要素全般に言える事ですが、フィットネスの専門家は、身体にかかるストレスと要求を上手にコントロールするシステム化されたアプローチを取る必要があります。負荷をかけたムーブメントトレーニングでは、最初はより軽い負荷で、よりシンプルな動作パターンを、より小さな可動域から始めていきます。当然、エクササイズにおける全体の負荷は、クライアントや選手が日中に受けている、その他のストレス要素も考慮してコントロールされなければなりません。 休息を取りましょう。このトレーニングを行っている間、より複雑な動きを行っているために、いつも以上に神経的な疲労を感じ、セット間でいつもよりも休憩時間が必要な人もいるかもしれません。 頻繁に行いましょう。負荷をかけたムーブメントトレーニングは統合されたもので、力や力学的な負担は一部分にかからず分散されます。ですから耐えうる限り、週の中のトレーニングに頻繁に取り入れてください。 一般的なルールとして: 初心者の方は、負荷をかけたムーブメントトレーニングを週に2回 より経験のある方は、週3回 熟練のクライアントやアスリートは、何らかの負荷をかけたムーブメントトレーニングを毎セッション取り入れましょう 参照文献: Andrews JG (1985), A general method for determining the functional role of a muscle, J Biomech Eng,107: 348-353. 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ベアフットランニングの生体力学
裸足で走る=ベアフットランニングや、ビブラム等のミニマリストシューズでのランニングが話題になってしばらくたちます。裸足で走る時の生体力学は、シューズを履いては知るときとどのように異なるのか?ベアフットランニングを始めるとすれば、どのようにスタートすれば良いのでしょうか?
ベアフットランニングに関する推奨
アーチが高過ぎる足や、低過ぎる足にとって、ベアフットランニング、つまり裸足でのランニングや、五本指のミニマリストシューズを履いてのランニングは、どのような影響があるのでしょうか? ViPRの開発者でもあるミショールからのアドバイスです。
膝関節は3D
蝶番関節と思われがちな膝関節。勿論、一番大きな動きは矢状面で起きていますが、前額面や横断面の動きはどうなのでしょうか?ViPRの創始者であるミショールの、短いけれど分かり易いビデオです。