マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
自律神経と感覚入力の再調整 パート2/2
身体システムをリラックスさせて、左右からの脳への入力のバランスをとるために自宅でもできるシンプルで容易なアクティビティを、マイケル・ムリンが紹介しています。
自律神経と感覚入力の再調整 パート1/2
左右対称ではない私達の身体における目や耳や鼻からの感覚入力には、どのような傾向があるのか?感覚入力と自律神経系の働きの関係性とは?
膝のトルクと圧縮と陽性サンドイッチサイン
マイケル・ムリンが、膝関節を構成する大腿骨と脛骨の間にミスマッチが起こることで生じる圧縮とトルクが、膝関節にどのような影響を与えるかについて、サンドイッチにかぶりつく状態を例にとって、現象をわかりやすく解説してくれます。
アーチサポートより良い名前は沢山ある
シューズになんらかのサポートを加える際、単にアーチを持ち上げるために使用するという側面から考えるのではなく、神経系への入力を高めるという側面から使用する場合、どのように使い分けることができるのでしょうか?
ターン、アンターン、リターンを解説する
ある特定の方向へ動こうとするときに、動きの障壁、バリアを感じる時、そこからさらに動きの可動性を引き出すための、ターン、アンターン、リターンという概念が何を意味するのか?マイケル・ムリンが雪に埋まった車を押す動作を使って解説をします。
横隔膜が身体を人質にとる「姿勢筋」になる
呼吸の主導筋であるはずの横隔膜が、身体構造のポジションの変化による影響を受けて、本来の仕事ではなく姿勢を支える筋肉として働き始めてしまう時、身体にはどのようなことが起こるのか?マイケル・ムリンがクライアントに説明をする解説のビデオは私達の理解を深めることも助けてくれます。
正座の基本ポジションへの沢山の入力
日本の家屋内で正座をする際に、シューズを履いているってことはまずないよねぇ、というツッコミは聞こえてきそうではありますが、このビデオでは、マイケルが正座のポジションのメリットと、そのポジションからの様々な応用による神経系への入力の変化について興味深い解説をしてくれています。
バランスの見つけ方 パート3/3
PRIは、呼吸筋のエクササイズの為に様々な形で循環系トレーニングを使います。ここにゾーン・オブ・アポジションの非徒手テクニックの例をいくつか紹介します: ステア・ショート・シーテッド・バルーン:最適な呼吸を回復するその有効性から、これは運動の前に行うにはベストなエクササイズです。風船は呼気筋群を鍛える為に使われます。なぜならば風船が呼気に抵抗をかけ、正しい再吸気に役立つフィードバックを呼吸システムに送るからです。(ゴムにアレルギーがある場合、または風船が手元にない場合は、曲がるストローを代わりに使用することができます。) まず始めに、ステップ台に座って足部と膝を合わせます。左手の指先を左脚の親指の下に置きます。背中を丸く保ち、頚部の筋群や頬を使ってこの運動をするのを避けることが重要です。 右手を使って、風船を軽くすぼめた唇の間に入れます。背中を丸め、両側で坐骨結節、または坐骨が感じられるように骨盤を丸め込むようにします。鼻から吸った後 – 丸まった姿勢を崩さないように – 右手で風船を固定して、息をゆっくりと吐ききります。3秒間静止し、空気が漏れるのを防ぐ為に舌を口蓋上部に向かって押しつけます。 このポジションをキープし、鼻から次の息を吸います。ゆっくりと空気を風船に入れ、この動作を4回目の吸気まで繰り返します。終わったら、風船を口からはずして空気を抜きます。これを3~5回繰り返します。 モディファイドオール4ベリーリフト:これも運動前に行うのに優れたエクササイズです。背中を天井に向かって丸めて四つ這いになります。骨盤を丸め込み、鼻が指先を通り越すまで体重を前方にシフトします。腹筋群の活性を最大化するように背中を丸めながら、十分に息を吐き出す前に、深く強制的にならないように吸いこみます。 呼気の段階で3秒間静止し、このシークエンスを4回呼吸するまで繰り返します。呼吸に制限がなくなってきたら、両手と両爪先をついて臀部を持ち上げたポジションでエクササイズをおこなって下さい。 ゾーン・オブ・アポジションを獲得して横隔膜がリポジションされれば、身体はレフトアンテリア・インテリアチェーンパターンのストレスを軽減させる為に、より楽に再学習ができるようになります。そうすることで左の骨盤は後方に回旋し、立位、蹴り出し、回旋、そしてターンをサポートできる正しくコントロールされたポジションに戻るのです。 このポジションでは、過剰もしくは抑制された筋群はポジションの変更のために違う役割を担ってしまいます。ある筋肉は片側では抑制される必要がある一方で、他の筋群は反対側で促通される必要があります。左の近位側の大腿二頭筋と内転筋群、左の中殿筋と腹斜筋群、そして右の腸腰筋は骨盤と体幹の修正パターンを使いながら促通されなければなりません。 PRIではこれらのポジションを修正することを 左の大腿骨を後方に引き、続いて左の骨盤を後方に回旋させることによって、左の骨盤に”シフトする”能力として説明しています。この筋のリポジション作業はアスリート達の身体のバランスを保ち 関節の圧縮や組織のストレスにとって最小限のリスクで自由な屈曲、スクワット、そして回旋を可能にします。以下のリポジショニングエクササイズはレスト・アンテリア・インテリアパターンの修正の為に使われますが、これらはゾーン・オブ・アポジション作業の後におこなわれるべきです。アンバランスの悪化を防ぐ為に、下記に記すリスト通りに行われる必要があり、逆側の身体には行わないで下さい。 ライト・サイドライング・リスピレトリー・レフトアダクター・プルバック:身体の右側を下にして横向きになり、身体を丸めて股関節と膝を90度に曲げます。脚の間に丸めたタオルのようなボルスター(補助枕)をはさみながら両足で壁を押します。左脚の膝は左脚の踵よりも低くなるようにしてください。 左脚を後方に引きながら、ゆっくりと鼻から息を吸います。この動きは前方に回旋した左の骨盤を修正します。次に、左膝をギュッとしめて右腿に向かって下げた状態で息を吐ききります。再び吸って、左腿をさらに後方に引き、そこから息を吐いて左膝を再び下に押します。この流れを4回から5回の完全呼吸で繰り返し、呼吸毎に左腿をより後方に引くようにします。これを3~4セット繰り返します。 90/90 ヒップリフト・ヘミブリッジ:壁に足裏をつけて仰向けに寝ます–できれば靴をはいた状態が望ましいでしょう – 両膝と股関節を90度に曲げます。鼻から息を吸い、口から息を吐きながら尾骨を床から少し浮かせて骨盤を後傾させます。壁に向かってただ足を押すのではなく、かかとから足を引いてくるイメージで尾骨を上げていきます。 次に、左脚を壁につけたままヒップリフトを保ち、右脚を壁から持ちあげて真っすぐに伸ばします。強すぎない完全呼気を意識しながら正しい呼吸パターンを維持し、伸ばした右脚をゆっくりと壁から上げ下げします。各10回3セットをおこなって下さい。 レフト・サイドライング・ニー・トワード・ニー:左側を下にして横向きに寝て、股関節と膝を90度に曲げて背中を丸め、下にボルスターをおいた足で壁を押します。右腿を前方にシフトして、持ち上げるか外に回します。このポジションをキープして左腿が右腿のすぐ後ろにくるまで持ち上げるか、内側に回します。このポジションを4~5呼吸キープしてこれを3~4回繰り返します。 PRIのコンセプトをトレーニングやコンディショニングプログラムに導入することには沢山のメリットがあります。パフォーマンスレベルがプラトーに落ち入っているアスリート達は、身体の根本的なアンバランスが必要不可欠な出力を低下させてしまっている状態です。トリートメントの前に評価をおこなうことは それがブレキアルチェーンなのか、アンテリア・インテリアチェーンなのか、またはポステリア・エクステリア・チェーンマッスルが原因なのかを明確にし、ゾーン・オブ・アポジションの獲得とリポジショニングエクササイズを通して、アスリートは自由で制限のない動作を取り戻すことが可能になるのです。 PRI要素を準備運動、筋ウォームアップ、そしてより強度の高いトレーニングや傷害予防プログラムに取り入れることは、アスリートのパフォーマンスやリカバリーを向上させます。より最適な昨日のために彼らにシステムのポジションを整えることは、彼らをその先のレベルにも引き上げてくれることでしょう。
バランスの見つけ方 パート2/3
アスリートがよりアクティブになって呼吸筋に負荷をかけるにつれ、横隔膜は骨盤底筋群や腹部の深層筋と共により強く素早く引かなければならなくなります。キーとなるアンテリアインテリアチェーンマッスルの右側での強固な引っ張りにより、骨盤と腰椎は右側に回旋するようになります。胸郭はその引っ張りのバランスをとる為にカウンターとして逆方向に回旋し、肩と頚椎もこれと同様に影響します。骨盤より下では、大腿骨と下腿の方向も大抵影響を受けます。これが身体において大きなトルクを発生させるのです。 このアンバランスが続くと、複数の筋群のポジションと機能を変化させていきます。これらの筋群は過活動または低活動になり、新しいポジションに適応する為に筋の機能を変えてしまうこともあるのです。例えば横隔膜は、増加した呼吸速度と身体の動きをコントロールする固定筋群を補助する為に短くて硬くなっていきます。このケースは、とりわけ過剰な胸椎や腰椎の伸展(アーチバック)、息切れ、足部を平にしてのディープスクワットやジャンプができなかったり、下肢のコントロールに乏しいアスリートに見られます。 最終的に筋のアンバランスは多関節筋連鎖に影響し、連動性を失う原因となります。そして結果的にレフト・アンテリア・インテリアチェーンと呼ばれるパターンになります。右側の優位性は 右の横隔膜、内転筋群、大腿二頭筋、そして左の大腰筋、大腿筋膜張筋、外側広筋の過活動の結果として現れます。これはアスリートが体重をより右にかけて立ち、寄りかかり、蹴り出し、側屈するのを好むということです。 レフト・アンテリア・インテリアチェーンパターンにおける代償動作の典型的な例は、胸郭の左側への過剰回旋であり、それがライト・ブレキアルチェーンパターンと呼ばれる上肢のアンバランスの原因となります。これが次に背部の伸展筋群の過伸展や過活動の原因となり、ポステリア・エクステリアチェーンパターンと呼ばれる、矢状面でのアンバランスへと導きます。 この身体の連鎖反応のキーポイントは横隔膜のアンバランスです。徒手以外でのテクニックや、場合によっては徒手と徒手以外のテクニックのコンビネーションを使う事で、PRIは胸郭のエリアで横隔膜から形成されているゾーン・オブ・アポジションを確立し、適切でバランスのとれた呼吸を回復することを目的としています。ゾーン・オブ・アポジションは横隔膜を適切なポジションへ戻して、正常に機能させることを可能にする為のニュートラルスペースです。 姿勢トレーニング ゾーン・オブ・アポジションを獲得して呼吸器系のバランスを保つ為に、身体は呼気を通して肺の空気を空にしなければいけません。加えて多関節筋連鎖のバランスも回復させて、コレクティブエクササイズで適切な筋群への再教育を行い、アスリート達が自分の動き方を変える必要もあるのです。 まず始めに、いくつものテストが呼吸、骨盤、そして胸郭のアンバランス評価の為に使われます。アスリートはそこから徒手以外のテクニックでゾーン・オブ・アポジションの獲得方法を学び、その後に彼、または彼女の目指すエリアにニュートラリティが獲得されたかどうかを簡潔に再評価します。もし獲得されていなければ、セラピストは徒手テクニックを使ってそれを補助します。そこでその人の新しいポジションを保つ為に必要な、正しい筋の発火パターンを強化する為のコレクティブ、リポジショニングエクササイズが処方されるのです。 最初のステップ PRIテクニックを使ったアスリートのトレーニングは、アスリートの身体にとって制限となり得る全てのアンバランスを見極めることから始めます。評価は以下のような種類のテストを通して行われます: アダクション・ドロップ・テスト:オーベルテストに似たもので、骨盤のポジションを評価します。片側、又は両側の大腿骨が内転できずテーブルにつかない場合は、骨盤のポジション異常を示唆します。 ホライゾンタル・アダクション・テスト:胸郭上における肩甲骨のポジションのチェック、 腕がテーブルの横から出ている時に、左右等しくなるべきです。アンバランスは胸郭の回旋を示唆します。 ヒュメラル・グレノイド・インターナルローテーションテスト:胸郭における肩甲骨のポジションを検査します。テーブルで背臥位になり、腕が90/90ポジションの時に前腕は自由に回旋できるべきです。アンバランスは胸椎の回旋を示唆します。 ショルダー・フレクション:テーブルの上に胸郭と骨盤を平らになるようにつけ、腕は自由に屈曲し、両側共にテーブルにつくべきです。アンバランスは胸郭の過伸展を示唆します。
バランスの見つけ方 パート1/3
生まれながらの非対称はアスリートのパフォーマンスに影響を与えます。この新しいトリートメントプログラムは、身体の内部のバランスを姿勢と呼吸エクササイズで回復させることに重点を置いています。 アスリートの目標達成への手助けをすることは、複雑で多角的なアプローチが要求されます。栄養、傷害予防、そしてリカバリーは考慮されるべき要素のほんの一部なのです。しかし,もう1つの重要なパズルのピースはようやく注目され始めてきたばかりです – 構造的で機能的な身体の非対称性は私達の呼吸や動作に影響を与えます。 人体の内部構造は非対称的であり、身体の様々なシステムも同様です – 神経系、呼吸系、循環系,視覚系 – は右と左で異なり、通常どちらかの側が優位となります。筋骨格系のパターンは、これらのシステムがどのように統合されるかで決定されることから、左右の非対称性はヒトの身体のアライメントと姿勢、呼吸機能や動作の形成に直接影響するのです。 こういった構造的な非対称性はごく正常なことであり、 自身の身体をコントロールできなくなる程顕著にならない限り、基本的に問題の原因にはなりません。これは高強度のスポーツやエクササイズにおいて、長時間特定の動作が繰り返されることで習慣化したり、またはイスの座り方などのちょっとした日常生活動作においても起こります。 非対称性が顕著になった場合、身体はそのエリアのスタビリティを保てなくなり代償を始めます。時間の経過とともに、これが骨や関節– そしてそれに付着する筋群–を顕著にシフトさせ、バランスやニュートラルな位置を失い、影響を受けたエリアの筋の働きが抑制されて筋骨格系の痛みや傷害のリスクが高まるのです。 このような非対称性を抑える為に効果的な方法はPostural Restoration Institute (PRI)の設立者であるロン・ハラスカによって発展したトリートメントアプローチです。このシステムは特異的なエクササイズや徒手テクニック、身体の先天的なバランスメカニズムと関連しているポジションの修正によって、スポーツパフォーマンスの向上やスポーツ関連傷害のケアをおこないます。 新たなバランス 相反性活動は、顕著なアンバランスを予防できる身体の基本的方法です。筋の活動が活発な時、身体はその活動に対して他の筋群をリラックスさせるなどして様々な方法でバランスをとります。PRIでは、セラピストは身体の片側の筋の活動を逆側の筋のカウンターバランスとして捉えています。 歩行のように基本的なこともこのコンセプトの良い例でしょう。 歩行における左スタンスでは、骨盤は左脚が身体の下に来た時に身体の左側で後方回旋し、その時中部から上部にかけての胸椎が動きのバランスをとるように拮抗して右に回旋します。右腕もまた後方にスイングして左脚の動きに合わせることでバランスを保っているのです。このプロセスは相反性交互活動と呼ばれ、身体の両側で等しく均一に起こるべきなのです。 もしも身体の片側で筋が過活動になり、過剰に働いてしまった場合、相反性活動はこの筋の過活動を抑制する為に身体のどこか他の場所でおこなわれます。しかし、これがまたアンバランスを相殺して身体が効率よく動くように、他の筋群を活性化したり促通させたりもするのです。これはアスリートのパフォーマンスにおいてマイナスにも働きます。なぜならその活動に1番適している筋群は活性化されず、別の適していない筋群が代わりに使われてしまうからです。PRIテクニックはこういった非対称性にアプローチし、患者にその動作を保持することを目的としています。 呼吸がキーポイント パフォーマンスに影響する、最も一般的な構造的非対称性は呼吸システムです。右側の横隔膜は強固で、ポジションに優れ、より優れたレバーアームを持っています – 横隔膜の腱(脚)は、右側では3つの腰椎に付着し、左は2つのみ付着、右の肺は3つの肺葉に対し左は2つであり、肝臓は右側に付着して、より強固なサポートを右の横隔膜に提供しています。 コアの筋群がバランスを保てなくなった時、横隔膜はより静的な姿勢保持の役割を担うようになります。これが横隔膜の方向性や長さを変える要因となり、適切な呼吸換気の効率を下げてしまうのです。結果として、他の筋群が横隔膜の通常の機能をおこなうようになります。これが頭部前方位や肩甲骨の位置異常、そして過剰な後弯や前弯姿勢などの構造的異常や、過呼吸、奇異呼吸、息切れ、疲労、そして運動性ぜんそくなどの呼吸機能不全など、様々な形で代償作用や機能不全へと繋がるのです。もし対処されなければ、不適切なポジションで固定された横隔膜が最終的にアスレティックパフォーマンスの低下や先程述べたような急性または慢性傷害を招く結果となるでしょう。 複数の骨や関節をまたいでいる多くの筋群は、多関節筋連鎖と呼ばれています。こういった筋群は同じ走行性を持ち、構造的、そして神経的に繋がっています – 筋の1つが活性している時、他の筋群も同様に影響を受けます。呼吸機能に大きく作用する、3つの主要な多関節筋連鎖があります – それぞれ左右に1つずつあります。遠位の頚椎エリアから、これらのチェーンは: ブレキアルチェーン: 脊柱の前方にあるブレキアルチェーンマッスルは、頭部と胸郭の動きを繋げて連動させるのに役立ちます。このチェーンは横隔膜、前方と側方の肋間筋、三角筋と大胸筋、胸骨筋、胸鎖乳突筋、そして斜角筋です。 アンテリアインテリアチェーン:アンテリアインテリアチェーンマッスルは脊柱の前方にあり、胸郭と骨盤の動きを繋げて連動させるのに役立ちます。このチェーンは横隔膜、腸骨筋、大腰筋、大腿筋膜張筋、外側広筋、そして大腿二頭筋を含みます。 ポステリアエクステリアチェーン:脊柱の後方にあるポステリアエクステリアチェーンマッスルは、相反機能を抑えて交互性をだす手助けをします。このチェーンは広背筋、腰方形筋、前鋸筋、そして肋骨の外旋筋を含みます。
ハラスカのアダクションドロップテストの考察 パート2/2
AFとFAの両方における動きの質を評価するのに役立つHADT 評価のためのポジショニングをとることが簡単だったり難しかったりすることや、また、評価を行っているときに患者をリラックスさせるのが困難だったりすること、患者が何をしようとしているかなどは、患者の状態を知るための貴重なヒントになります。 臨床家は、これによってその人がそのパターンをどのぐらい強くもっているかのフィードバックが得られます。 患者やクライアントへの指導の道具としてのHADT 同一対象にこのテストを1、2回行った場合、最初に陽性を示した人が、リポジショニングの後に行ったら陰性になったとします。彼らは、バランスの整ったポジションがいかに重要であるかをよりよく理解しています。その違いを感じ認識することができるのです。 在宅プログラムの順守に劇的な改善があります。 ペルビックアセンションドトップテストと共に使われるとき、患者は適切なポジションを保てているか自分で把握できることもあります。 PADT www.posturalrestoration.com 股関節に潜在しているかもしれない病理を評価するHADT HADTを実施中、患者が訴える痛みや圧迫感、弾けるような音、引っかかる感じなどの症状と臨床家が評価する骨性エンドフィールやゴリゴリした音、関節の摩擦音などは、すべて関節内の損傷や他の病理の潜在の関与を示唆していると考えられます。 もし、右側の骨盤片側に陰性が示されても(特にPECパターンを軽減するための手技を施した後)、右側が適正なポジションにあるという意味ではありません。結果が陰性ということは、単にその股関節が内転できるということを示します。しかし、右側に過剰な内転と内旋があれば、腸骨大腿靭帯と関節包の上部が伸ばされているということかもしれません。 PRIテストの範疇で、最終ポジションがよりオープンエンドフィールである場合特に、陰性というのは必ずしも良い結果であるとは限りません。過度の陰性もありえます。そのような場合、パソ(病理的状態)と言います。 いろいろな人と会話する中で、また、これまで読んできた文献への反応として、何度か耳にしたコメントに次のようなことがあります:“時に、左側に陽性の結果を出そうとしているような気がします。” 実際その通りだと思います。つまり、何か問題があるのであれば、それを見つけ出したいものなのです。治療の順序は、次の段階に進む前にクリアすべき一定の基準を基に組み立てられます。次の段階に進む前に適切な姿勢を保たなければ、患者の反応やその結果もまた、影響を受けてしまうでしょう。 HADTの臨床におけるその他の利用方法: その人に合った靴をはいているかどうか、また正しい靴を選ぼうとしているかどうかを調べるのに役立ちます。新しい靴を持って来た人に、靴を履く前と履いた後でHADTを実施し結果に変化があるか調べてみます。 しかし、これはパズルのひとつのピースに過ぎません。その結果はHADTには影響を及ぼさず、他の所見に影響するかもしれません(たとえば、HG IR、水平外転など)。またはその逆かもしれません。 位置の測定をヴィジュアルインテグレーションストラテジーと共に利用した場合、環境の改善、周辺処理が制定されたかを見極めることを助けます。 一定の運動をした後に行うテスト結果に変化があることによって、在宅プログラムをなぜしなくてはならないのか、患者やクライアントに分かってもらうための素晴らしい教材になります。 臨床家が組み立てたプログラムで、その人が中立を維持しているかどうか、治療やトレーニングセッションの最後に、これを利用することによって素早くチェックできます。 セッション中に、リポジショニングのエクササイズが正しくおこなわれているかどうか、最も適切なものを行なっているかどうかを知るためにも使えます。全ての要素が取り扱われ、適切な神経可塑性が確立されるまで、さらに一貫したリポジショニングのエクササイズが必要か否かをはっきりさせるのに役立ちます。 パフォーマンストレーニングやウェイトトレーニング中、運動している間ずっと“ニュートラル”を維持しない方がいい選手もいるかもしれません。最も重要なことは、運動後の高揚した交感神経優位の状態を抜け、休息と回復できる状態に戻って来られるかということです。 これは決してHADTの効用についての総記ではありません。いくつものPRIテストと同じように、コース教材に載っている事柄のみではなく、更に他の利用方法から与えられる恩恵があります。同時に、患者/クライアントの症状やニーズが何であるのかを洞察するのに役に立ちます。
ハラスカのアダクションドロップテストの考察 パート1/2
ハラスカのアダクションドロップテスト(HADT)は、ポスチュラル・リストレーション・インスティチュート®で最も認知度が高く、最も広く使用されている評価方法のひとつです。骨盤に対する股関節の位置、とりわけAF(大腿骨の上で動く寛骨臼)/FA(寛骨臼の中で動く大腿骨)の位置や整合性に関する有用な情報を与えてくれます。これは、骨盤のニュートラリティ(中立性)や寛骨臼に対する大腿骨の関節の中心性、軟部組織の張りの異常を調べるのに役立つポジションテストです。両側または片側の大腿骨が寛骨臼に最適に位置していない場合、悪いフォースカップリング(偶力)を生み出し、骨盤の片側に更なる機能障害を引き起こしやすくします。疼痛や損傷、機能低下、パフォーマンス低下などが結果として生じるかもしれません。正確に実施すれば、テストとしてだけでなく他の多くの根拠から、PRI(ポスチュラル・リストレーション・インスティチュート®)の臨床家の引出しの中でも非常に役立つツールのひとつになるはずです。 HADTに熟練すれば、セットアップや動きの質、エンドフィールから得られる情報は臨床家にとって有用になるでしょう。さらに付け加えられた観察は、より主観的で実験的な要素がありますが、一方で骨盤の状態全般の貴重なデータを提供してくれます。特に、他のテストの所見と相互関係を比較すれば、随伴運動や異常運動、内在する全体的な軟部組織の張り、脊柱の関与の度合い、関節に起こっているかもしれない損傷などの情報が収集できます。HADTを実施することによる成果の最適化と、この有用な評価が提供できる他の情報について注目し考えてみたことを下記に述べます。 ポジションテストとしてのHADT テストにはいくらかの機微があり、これが結果の質に違いを生み出すようです。 “患者は左右どちらかを下に横になり、下腿部と股関節を屈曲します(90°)。患者の後方に立ち、上になった方の膝を90°の屈曲に保ちながら、股関節を他動的に屈曲、外転、伸展、そして中立位に動かします。” 上になった骨盤の片側を安定させておくのが困難である場合や、患者が脚に力を入れてしまうようであれば、陽性と考えられます。 下腿部が90°の屈曲を保てない場合や、上になっている脚を動かしていると伸展し始める場合、陽性と考えられます。 “中立位まで股関節を伸展” していく時、これはセットアップ時の上になった骨盤と相対的に見てということなので、0°または“中立位”を見極めるために身体の面を基準にするため、厳密にはどちら側をテストしているかによって異なることもあります。内転する前に右股関節を中立位まで動かすということは、左脚と同じように右脚も身体の面まで達するとは限りません。これは、左側よりすでに伸展位になっている右側の寛骨臼の位置によるものです。 “患者が後方へ転がったり、大腿が内旋したりしないように、他動的に骨盤を安定させます。” 患者の骨盤が後方へ転がらないように、自分の身体を患者の上になっている側の骨盤の後面に密着させる方が良いでしょう。あまり支えようと押し過ぎても、かえって骨盤を前方へ転がす結果になってしまうので注意すべきです。患者によって、または患者の臨床家の身体の大きさや体力によって支持の強さを変化させることにより上手くいきます。 大腿骨は内旋しがちですが、そうならないように・・・ www.posturalrestoration.com “上になっている側の寛骨が下になっている寛骨の真上に位置していることを確実にし、前頭面のスタートポジションンで偽陽性(上になっている側の寛骨が頭方へずれている)や偽陰性(上になっている側の寛骨が尾方へずれている)にならないようにします。” 股関節を適切な位置に揃えるために、右側と左側は多少異なるセットアップや固定が必要かもしれないことを覚えておいてください。 右側の脚をテストするために左側を下に横になっている人は、骨盤の右片側が側方へ傾き後方へ転がりやすいので(特に強いパターンがある場合)、それを安定させなくてはならないでしょう。 左側の脚をテストするために右側を下に横になっている人は、骨盤片側が通常の休息ポジションよりも前方へ回旋しやすく、また胸郭が内転/外転しやすいので、それを防ぐために固定しなくてはならないでしょう。骨盤を(これ以上)前方へ傾けないように、または胸部を(これ以上)伸展させないように支持する注意が必要です。 HADT陽性 HADT陰性 エリザベス・ノーブルによるイラストはポスチュラルリストレーションインスティトゥート®が所有します。ポスチュラルリストレーションインスティトゥート®2014より著作権使用の許可を取得しております。 www.posturalrestoration.com ”寛骨臼縁の前下部、横靭帯、梨状筋の制限や後下部の寛骨臼縁と大腿骨頭の後下面の衝撃(可能性として、左右どちらかの骨盤が前方に回旋、つまり前傾に伴う)などは、陽性結果を示します。特に左のエクステンションドロップテストで、左AICの変位が陽性の患者において、左側によく見られます。” 偽陰性は、偽陽性よりも起こりやすいことがあります。そして、結果としてそれ以降の治療計画に大きな影響を与えることになるのです。時間をかけて確実にセットアップをし、最適な状態でテストを行うことが必須です。 正確な結果を導き出せたか臨床家が確信を持てない場合、何回か繰り返しテストを行うことは珍しくありません。 上になっている方の骨盤を固定することはきわめて重要であり、たいていどちら側をテストしているかによって、または、骨盤の位置やパターンの強さによって、支える力を加減しながら安定させる必要があるでしょう。 上に置く手は単に支えているだけでなく、上になっている骨盤や大腿でどのようなことが起きているか(つまり随伴運動)を評価しています。 テストを行ってもまったく確信が持てなかった場合、骨盤を少し前方へ転がし再度実施してください。それから、少し後方へ転がし同様に行い、その結果を比較します。ここでは、動きの質とエンドフィールの評価が役立ちます。 また、ここで他のテストの結果とこれらの所見を比較することが重要になります。 骨盤が大きい人は、左右どちらかはベッドまで完全に下げることができないかもしれませんが、そのような場合でも検査の結果を自動的にPECとはしません。 どのような評価の結果でも、単なる陽性と陰性の両極端ではなく変動幅があります。しかし、いくつかの結果を比較して区別する能力をつけるには、他のどの特殊な整形外科的検査と同様に、繰り返しさまざまな体格の人を検査し練習する必要があります。