投球障害−症例研究:減速期−忘れ去られた最後の投球フェーズ

今週は、投球時の肩痛を抱えている水球選手に関する興味深い症例がありました。この痛みは、全力投球時にのみ発生していました。現在、私は多くの水球選手に会う機会がないので、これは挑戦でした。評価に関して、更に一層の課題となるために、私は、身体の上半身と下半身にかかる異なる2つの抵抗(空気と水の抵抗)と同様に、床反力が異なるという事実を脇に置いておくことに決めました。 すぐに私に興味を抱かせたものは、通常、最大出力時だけでなく、最大出力に近づくにつれて、組織の断裂、もしくは炎症部位が痛む可能性が高いのですが、この場合、最大出力時においてのみ発生するということです。私は、身体が対応できない最大限の力を減少させる方法が痛みであると感じました。私達全員が、ヘルスケア業界の中で学び始めているように、痛みは興味深く、絶え間なく変化するものであり、私達が教えられてきた従来の方法で作り出されたり、知覚されたりするものではないのかもしれません。 最初に行ったことは、私が精通していない動作を考察することでした。私にとって水球の投球は、野球の投球にとてもよく似ているように見えました。また、どの投球フェーズ(期)において、痛みが発生しているのかを知りたいとも思いました。それは、コッキング期かもしれません、加速期かもしれません、それとも、減速期かもしれません。多くの場合、私達は、ゴルフ・ショットのバック・スウィングにより焦点を当てる傾向があるのと同様に、投球の初期段階に注目します。これら両方の機能はまた、技能と痛みの観点から軽視され得る減速期を有しています。身体が動作を減速できないのであれば、身体は減速を見越して、その加速を変化させるかもしれません。身体は、防御疼痛反応を作り出すことによって、どのくらい加速するかをも制限しているのかもしれません。野球の投球中のピーク力は、トルクにして27,000インチ/ポンドと見積もられています。これは、サッカーのキックの力の4倍です。 この症例で、その水球選手は左利きで、左腕が右脚の上で投球を終えるということを意味しています。これは、右脚が投球時の力の減速に極めて重要であるということを意味しているでしょう。投球動作中に部分を制限することによって、投球中の部分的寄与の考察をし、加速期間と減速期間の両方で必要とされる力と運動エネルギーの観点から、身体の他部位からの多大な寄与について議論している研究もいくつかあります。投球に関する多くの研究はいまだに、医療従事者からの肩損傷プロトコルを行うように、主に肩に重点的に取り組んでいます。私が言えることは、肩損傷が野球界で多発していることから、医療従事者は肩だけを見ることから離れ、より身体の全体を考え始めるべきかもしれないということです。とても大きな力に直面すると、人体のような賢い生命体は、身体の一部分だけではなく、身体全体にわたって力を消散しようとするでしょう。私達は、それが起こっていないかもしれない理由を考えるべきであり、より全体的なアプローチを用いるべきかもしれません。 この知識を持って、私は最初に患者の運動歴を掘り下げて考えました。するとすぐに、右脚にかけて坐骨神経痛の既往歴があることが分かりました。私見ですが、後部構造として、坐骨神経はしばしば、硬直した後部の伸展筋群によって影響を受けます。坐骨神経の問題を示す人たちはしばしば、下に手を伸ばす際に、股関節屈曲位になっているときに痛みを覚えます。これは、他の機能的連鎖が寄与しないため、主に腰椎から屈曲を得る必要があるからかもしれません。これにより即座に警鐘が鳴らされます。 歩行を見ることが、評価の次の部分でした。私は、他の機能において、彼がどのように動くかを見たかったのです。彼が彼の右側に踏み出した際に、私は彼が右股関節/右脚を十分に屈曲させていないことに気がつくことができました。特に動作が大きくなった時に、脊柱を通しての動きがどの位みられるのかは、良い指標になります。これは、身体に働いている床反力のためです。下方で力が軽減されないのであれば、運動連鎖の上方において軽減される必要があります。私達の身体は、骨と組織の動きを通して、これを行い、それによって私達は過度な動作を見ることができます。これは、前額面、もしくは矢状面(脊柱後弯)においてかもしれません。この症例では、右脚が床に接地した際に、上方向への運動連鎖における力の増大を示している、過度の右への側屈がみられました。これはボトムアップ(上昇型)の加力であり、また投球中下半身へのトップダウン(下降型)の伝達ができないということも意味しているでしょう。前額面における股関節内転(前額面における歩行中の前脚の動作)をみてみると、明らかに制限されています。これは、力が上方に押されているということを意味しているでしょう。 では、もし投球から右脚を取り除いたら、何が起こるでしょうか?私は、彼に以前に左脚一本で立っていたときに痛みを引き起こしたのと同様の力で、片脚での投球を行ってもらいました。これは、痛みを引き起こさず、彼にとっては驚きでしたが、私にとっては、かなり理にかなうことでした。そして、今度は同じ投球を右脚で立ってもらうと、痛みが再発しました。 これら全ては、痛みの犯人は、左肩ではなく、右脚であると指し示していました。また、右足を見て、代償性の後足部内反(後足部の内反位)があることも発見しました。これは回内力の増加を作り出し、力の減速にあまり寄与しない足を作り出すでしょう。これはまた、運動連鎖の下から上への力の転移も作り出すでしょう。トップダウンの動作の間、足の変形のような、本質的に不均衡で不安定な構造への力の転移を止めるために、股関節は固くなります。身体は不安定な状況にさらされたとき、安定性/硬直を作り出すでしょう。それが、BOSUの上でうまく動けない理由なのです!!私はしばしば、増強した力に直面するとき、股関節のボトムアップの駆動とトップダウンの駆動の両方の構造を保護するために、身体が固有感覚的に股関節動作を休止することを選択するのに気づきます。

ベン・コーマック 2611字

腕の頭上への可動性向上

上半身にテーマを置いたセミナーから、マイクが参加者をモデルとして、腕の頭上への挙上の動きと身体を交差する動きのリストアのための方法として、大円筋周辺の軟部組織へのアプローチと、それによる変化をデモで紹介してくれます。

マイク・ライノルド 4:56

アクティブなアーチの引き上げ

2014年6月22日にSYNERGYにて開催させていただいたITTピラティスのジーン・サリヴァンのセミナー”足部から股関節へのコネクション”から、アクティブに足部のドーミングを行いつつ下腿部を動かすことで、股関節周辺の筋肉も働かせ、キネティックチェーン全体のコネクションを感じつつアーチを引き上げていくアプローチをご紹介します。

ジーン・サリヴァン 8:01

筋膜切開と筋膜リリーステクニック

最近は良くなってきていますが、多くの医者は、(もし彼らが筋膜という言葉を聞いたことがあるとしたら )「筋膜切開」と呼ばれる処置の一環としてしか筋膜を知りませんでした。気管切開が気管を切って開くことであるように、筋膜切開とは筋膜を切って開くことです。でもなぜ筋膜を切り開くのでしょうか? 血管や神経は、神経血管の束として筋膜のスリーブに覆われた状態で、四肢に張り巡らされています。このような束は、片手の親指を反対側の脇の下に入れて、上腕骨(上腕骨の中央)の内側の表面に向かって押し出すことによって感じることができます。親指の腹を行ったり来たりさせて神経の束を感じてみてください;この束は、上は腕神経叢、下は肘頭まで辿ることができます。 これらの束になっているけれども、もろい「内臓器官」は、四肢の骨、筋肉、関節をとても巧妙に張り巡っています。神か、母親か、ダーウィンか(あなたの信じるものを選んでください)が作り出した賞賛に値するデザインにより、この束は直接の圧力や外部からの攻撃から逃れ、私たちが普段、四肢にかけている相当な負担も、この束の主要な役割である、手や足に向けての、そして手や足から向けられる血液の運搬や信号の発信を阻害することはまずありません。確かに、腕を枕にして寝て、しびれが切れてしまうことや、椅子の角に肘(尺骨神経)を打つこともありますが、こういった些細な不快感は、筋膜切開が必要になるほど長くは続きません。 下腿の筋膜区画 かわいそうな男性、マイルズは、不運にも長期間治まらないほどの腫れをもたらす怪我を患い、その腫れにより血管に相当な圧力がかかった結果、血液循環が止まり、腕を失いました。しかし、筋膜切開が必要とされる大半のケースは、アスリートの脚で起こります。脚の筋肉が発達し、とても強力になっても、筋膜が筋肉の発達に見合うほど拡張しない場合です。このような場合は、このコンパートメント内(ゆえに「コンパートメント症候群」以前は「シンスプリント」と呼ばれる)に圧力が生じ、神経血管の束を圧縮し、血液循環を阻害します。これは始めはやっかいなだけですが、危険な状況につながる可能性があります。 こういった場合には、筋膜切除が手術手段となり、このビデオで詳細に示されているように、外側区画の筋間中隔付近で行われます。 この映像がちょっと強烈に感じる方、私も同感です。手術が成功する場合もあれば、手術の効果が表れなかったり、一時的にしか効果がなかったりする場合もあります。これには、1)患者が術後も激しく競技を続け、「拡張性のある」筋膜を持ち得なかった(エラスチンが少なすぎる?繊維交差が多過ぎる?私にはわかりませんが)か、2)手術によって生じた瘢痕組織が、術後数ヶ月にわたり、筋膜が筋肉の成長に応じて変化する力を無能にしてしまうからです。正直なところ、成功より失敗した方が訪ねてくることを多く経験してきたため、私の見解は少しゆがんでいます。 術後に、施術者としてあなたができること、筋筋膜ローラーやボールを使ってできることは、伸ばしたり空間を作ることに対する瘢痕組織の反応が低下しているため、手術前にできることに比べると、あまり効果はありません。それでもとにかく、やってみる価値はあります。しかし、患者がまずあなたのところに来たのなら、症状が手に負えなくなる前に、時々またはしばしば、一時的に症状を取り除くことができます(これは患者が、痛みや活動レベルに応じて時々、あなたのところに来る必要があることを意味します)。 まずは、縦方向から始め、腓骨筋のどちら側かの二つの筋間中隔を開いていき(上記のNetterの図を参照のこと)、その後、横後方中隔を開きます(私たちの「ピンチ」技術を使うといいかもしれません – ディープフロントライン パート1のDVDを参照)。ヒラメ筋と腓腹筋への施術は、あまり効果がないので、脚の深層にある小さい区画を、届く範囲で上から下へ開いていく必要があります。

トム・マイヤーズ 1719字

アルティメイトサンドバック アラウンドザワールド

2014年7月3日に開催されたDVRTレベル1認定コースから、アラウンドザワールドのエクササイズでコアの安定、胸椎の可動性、肩の屈曲を向上させる方法を、ジョシュ・ヘンキンがシェアします。ダンベルやケトルベルでの応用も可能。

ジョシュ・ヘンキン 4:46

TRX TV 5月1週目のシークエンス(ビデオ)

足首の可動性と膝を安定させるコントロール能力を向上させるエクササイズを行うことで、ピストルスクワット=シングルレッグスクワットを、より効果的に行うためのシークエンスをご紹介します。様々な動きの要素とフォーカスの理解に役立ちます。

TRXトレーニング 3:09

実用的な強さのための動きを学ぶ

様々な面で動きつつ、前額面の動きに抵抗するUSBを使った4つのドリルをシリーズでご紹介します。ひとつひとつの動きを分解した丁寧で分かり易い解説に沿って、是非4つの動きにチャレンジしてみてください。

ジョシュ・ヘンキン 4:38

グレイインスティチュートニュースレター 7月 パート1/2(ビデオ)

ストレングスコーチ、パティ・マックがワールドカップの試合開始後20分目にハムストリングスの挫傷をしたUSチームの選手を例に、動きによるハムストリングスへのボトムアップ(下から上への)ドライバーと、トップダウン(上から下への)ドライバーの影響を考察します。

グレイインスティテュート 6:21

アキレス腱痛:あなたは正しい方の足を見ていますか?

この記事は、私が最近扱い、コーキネティックにおける思考過程のアイデアを提供したいと思った症例に起因しています。症状と問題の原因は常に一つというわけでも、同じというわけでもありません。 この症例の患者は、左アキレス腱に問題を抱えていて、同側足の外側痛もあります。興味深いことに、速く走れば走るほど、痛みは減少するのですが、これについては後でより詳しく述べます。 私が最初に行ったことは、足への体重負荷をみることで、患側足から始めました。私は、その足の動作能力と、取り組もうとしている足のタイプを感じ取りたかったのです。視覚的には右側足とほぼ同様で、ハイアーチと尖足(前足部の底屈位)をみることができました。もう一つの明確な兆候は、偏平足というより凹足(ハイアーチ)の足部に対しての膝の外旋でした。その足は明らかに問題として、早急に私に警告を発していました。 これは、裸足での立位においてでさえかなり明白でした。私は足の動作と、足が固まって柔軟性に欠けるのか、過可動的なのかを感じ取りたいので、彼にベッドに乗ってもらい、足がどうなっているのかをみるために、揺らすように動かしてみました。間違いなく柔軟性に欠けるタイプでした!それだけではなく、回内と回外に関しても見てみたいと思いました。回内を作り出すために、前額面に対して踵骨を外反させ、横断面に対してSTJ(距骨下関節)外転を作り出すように距骨を内転させました。回外時よりも回内時の方が回内の背屈構成要素を必要としないので、私は回内の背屈構成要素に関してはあまり気にかけていません。回内の欠如が、特に回外位(ハイアーチ)で固定された足において、アキレス腱痛の原因の可能性があるのかどうかを見たかったです。とはいえ、固まっている側の足はかなり回内しているようにみえます。そして、回外にも着目してみました。このために、回外時に背屈の必要性がかなり高いため足を背屈位にし、踵骨を内反位に持っていき、アーチを上げつつ、脛骨/距骨を外旋させます。この場合も先と同様に足はよく動いたため、私は問題の原因は他にあると考え始めました。先に述べたように、コーキネティックにおける思考過程は、人体において損傷の原因と症状は、お互いに離れたところにあるということなのです。 では、右足をチェックしてみましょう。こちら側の方がより固まっていて、背屈が少ない、状態の悪い足のように感じました。足に背屈の需要が与えられると、回内位にこっそりと戻りたがっているようでした。尖足は、地面に足をついているだけで背屈を使い切ってしまっているため、回外時に脛骨傾斜角が増大する際、尖足は、足のロック解除、もしくは回内によってアクセス可能となる背屈のリソースを得ようとします。これは、動きの順序の後半での後ろ足の回内と、しばしば反対側への体重移動を引き起こします。効果的な回外の重要な構成要素である第一趾もかなり硬直していて、背屈が制限されていました。警鐘は鳴ってていますが、評価の残りの部分を終わらせたいと思います。 私は、彼が体重負荷での回内/回外を行う際、何ができるかもみてみたいと思いました。ですから、立位で、足を回内、回外するために、反対側の脚・足を使ってもらいました。左側は効果的に回内と回外することができました。これは、私に左足は問題ではないということを信じ始めさせるものでした。しかし、右足は、背屈/脛骨傾斜角の需要が増加した際に、必死で回外しようとして、回内位に戻っていきました。 次に、歩行時に何が起きるのかをみたかいと思いました。先にも述べたとおり、右足は、歩行周期終盤に回内していました。何が起こっているのかについて、かなり素晴らしい手掛かりが得られました。右足が回外できなかったことが、骨盤の右経の回旋を妨げていました。後ろ側の足であり、回内している右足は、右足が回外し脛骨が外旋すべき時に、右脛骨を内旋させてしまっていました。ボトムアップの駆動が、トップダウンの駆動よりも強いため、これは大腿骨と骨盤が右に回旋するのを妨げていて、実際に、前額面において足の左側への横方向体重移動を作り出していました。これは明らかに左足の外側への圧力とその後の痛みを引き起こします。骨盤の回旋を抑制することは、足の回内に大腿骨と脛骨が反応するのを妨げるでしょう。距骨下関節運動の欠如によるボトムアップ駆動が原因ではなく、後ろ側の足からの連鎖反応の欠如によるトップダウン駆動により回内の問題が引き起こされていたのです。歩行時のように動作において足が連動する際、連鎖のいかなる部分も問題を引き起こす可能性があります。 これは、彼が速く走れば走るほど痛みが緩和される理由を説明しています。私達は速く走れば走るほど、片脚で費やす時間が長くなり、左右の足の運動を連動させる時間が短くなります。右足はもはや、痛みなく十分な関節可動域を持つ左足に影響を及ぼすことがないのです。 私は彼に左足を前にして立ってもらった状態で、左膝を曲げて(骨盤が右に回旋するはず)低くランジをしてもらい、動作を注視すると、左足の回内と骨盤の右回旋が起こることなく、左側への体重移動が明白でした。この機能的に本質的な姿勢で、右足の回外を補助してあげると、左足が回内し無痛の関節可動域を通ることを可能にしました。この症例における治療のカギは、左足の痛みを緩和させるために、右足を回外させることであり、それは患者のための宿題の大部分を形成していました。 この症例での教訓は、“多くの場合、私達は症状を治療しても、結果が得られない”ということです。カギは、“症状に惑わされない評価を行い、真の大きな問題を探す”ことです。私達は足が個別に、そして連動したときに何をすることができるのかを分析する必要があります。また、歩行のような機能的活動で連動したときに、足が何をすることできるのかも分析する必要があります。

ベン・コーマック 2511字

足趾屈筋群のエクササイズ

2014年6月22日にSYNERGYにて開催させていただいたITTピラティスのジーン・サリヴァンのセミナー”足部から股関節へのコネクション”から、足趾屈筋群の強化の簡単なエクササイズをご紹介します。ビデオを見ながら一緒にできるエクササイズを、是非お試し下さいね。

ジーン・サリヴァン 5:08

見過ごしているかもしれない評価

ストレングス&コンディショニング業界に入ってくる新人には、“評価しないのであれば、それはただ単に推測しているにすぎないのです”といつも伝えています。シット&リーチテストをして、体重計に乗せるというような単純なものではありませんが。このシリーズでは、評価の過程においてもっともよく見過ごされるいくつかの部分に焦点を当てていきます。見過ごしてしまいそうな3つの評価は下記の通りです。 1.過去のスポーツ/トレーニング負荷: もしあなたがクライアントの求めていることを達成させるようサポートを試みるのであれば、彼らが今までどのような状態であったかということをしっかりと理解することが重要です。例えば、今までにオーバーワークをしたことがあるクライアントであれば、ボリュームの少ないプログラムに、良く反応するでしょう。あるいは、ボリュームの多いウエイトトレーニングを経験したことがないアスリートが筋肉量を増やしたい場合、いくつかの“控えめ”なセットと補助的な運動を追加することが役に立つでしょう。 これは、プロの投手にとっても非常に重要な議論となります。仕事量の多い先発投手(過去8-9ヶ月の間で200イニング以上の過度の投球をしている投手もいる)は、シーズン中に40イニング以上も投球していないかもしれないリリーフ投手よりも、投球練習を開始するまでに長い時間が必要になります。先発投手は1月1日まではオフシーズンの投球プログラムを開始しないかもしれませんが、リリーフ投手はその時期までに、すでに8週目のトレーニングをしていることになるかもしれません。 仕事容量の構築に関する議論は、ストレングス&コンディショニング分野で頻繁に行われていますが、スポーツコーチもまた、アスリートの実際にスポーツの中で、仕事容量の構築を追求しているという事実を見逃していることが多いと思います。現在、これら2つのことは互いに相容れないことである必要はありませんが、皆が常に高い運動量を強いてしまえば、事態は急速に悪化してしまうでしょう。 2.大腿四頭筋と内転筋の長さ: 正直に認めましょう:かなり多くの人々は十分なトレーニングをしていませんし、定期的にトレーニングをしている人の大多数も、可動性の必要性に注意を向けていません。結果として、かなり小さい関節可動域で、全体のトレーニングプログラムが行われており、これでは大幅な関節の可動域を獲得することはあり得ません。これが最もよく現れる2つの部位は、大腿四頭筋と内転筋の長さです。 踵がお尻についているとき、大腿四頭筋は最大限に伸張しています。日常生活の中で、誰かがこのポジションにいる場面をどの位頻繁に見かけますか? 股関節が外転している時、内転筋は伸ばされています。日常の活動のなかで、氷の上で転ぶ以外に、このポジションを最後にとったのはいつですか? これら2つの部位の状態に関して素早く簡便な評価をしたいのであれば、これら2つの評価を試してみてください(評価と矯正DVDから借用): 腹臥位膝屈曲: 骨盤や腰が動くことなく、少なくとも120°の膝自動屈曲の可動域をもっているべきです。 仰臥位外転: 腰椎や骨盤の代償動作、あるいは、股関節回旋なしに、少なくとも45°の外転可動域をもっているべきです。 私は通常、クライアントがトレーニングを開始するときに、トレーニング表に沿ってこれらをチェックしますが、フィットネスの専門家でない読み手の方々にとっても、これらは自分でできる優れたチェック方法になるでしょう。また、これらのテストで基準に達していなかった場合は、まずこれら2つの写真のストレッチをしてみてください。 3.シャツを脱がせる: これは、当然女性のクライアントにできませんし、男性のクライアントに対しても、彼らが快く受け入れてはくれないかもしれないという事実に注意を払う必要はあります。とはいえ、単なるTシャツだけで、どれだけ多くの上肢機能不全が覆い隠されてしまうかには驚かされます。例として、この左利きの投手の肘内側部痛は尺骨神経炎と診断され、抗炎症薬を処方され、医師が彼のシャツを脱がせて、肩と首を評価することもなく、家に帰されてしまいました。 言うまでもなく、彼の左側の肩甲骨はかなり下制していて、尺骨神経症状は、連鎖部位の更に上位に起因していると疑うのも、拡大解釈ではないでしょう。腕神経叢・尺骨神経がどのように鎖骨の下を走行して、肘のほうにまで伸びていっているのかを注意して見てください。 肩甲骨と鎖骨を下に押せば、簡単に神経(血管構造)は圧迫され、胸郭出口症候群が出現することになるのはとても良くあることですが、オーバーヘッドで投球をするアスリートにとって、診断が充分にされていないコンディションでもあります。より先進的な上肢の整形外科医は、最近この症状をより頻繁に診断するようになってきています;肘の問題は常に肘の問題ではないのです。 シャツを脱ぐことで、多くのことが見えるということを学びました。あなたのクライアント・アスリートにとってこれがまさに当てはまるのであれば、是非取り組んでみてください。

エリック・クレッシー 2231字

ドライニードリング(乾性穿刺)について

私の臨床の現場で、ドライニードリング(乾性穿刺)は使用頻度が最も高い治療法のひとつになってきました。異なるテクニックや生理学、損傷へのアプローチ、パフォーマンスとリカバリーなどを学べば学ぶほど、さらに使用頻度が増し、その効果も上がり続けています。ドライニードリングに関して、いくつもの誤解や一般的な誤報があるようですが、この投稿が少しでもこれらの理解に役立てれば幸いです。 1)ドライニードリング(乾性穿刺)と鍼とは異なります。 同じツール(細い糸状の針)を使用しますが、類似点はそれだけです。鍼は伝統的な東洋医学に基づいたものです。私自身は経絡や脈診、舌診、気、陰と陽のバランスや五要を特に勉強したことはありませんが、解剖学と生理学、筋骨格系機能障害、神経系、動き、触診、傷害の医学的評価や整形学的検査などに10,000時間以上じっくり時間を費やしました。その事実(そして私の免許を発行している州の医療行為の法令)によって私たち(理学療法士、アスレチックトレーナー、カイロプラクティックドクター、医師、看護師)は、ドライニードリングを施すことができるのです。計算機を使う人がすべて会計士とは限らないように、細い針を使う人すべてが鍼灸師とは限らないのです。 2)ドライニードリングは、全く何も治療しない!にも関わらず全てに驚異的効果があるのです! 針が組織内に穿刺される時に起こる生理学的変化は、きわめて複雑ですが、ここで押さえておきたい3つのポイントを示します。 a)局所的には、針が穿刺されるとカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出されます。CGRPは、血管拡張や血管新生を促進し、損傷からの回復を促進します。 b)部位的には、針が身体の細い有随神経を刺激し、脊髄の後根神経節におけるエンケファリンの分泌を誘発します。エンケファリンは、その神経が始まる脊髄レベルで疼痛伝達を制御します。 c)全身的には、脳からβエンドロフィン(オピオイド神経ペプチド)が分泌され、総合的に鎮痛効果が得られます。脊椎マニピュレーションを受けたときに分泌されるオピオイドと同樣、モルヒネと同族に属します。 これでお分かりですね。この治療法がこれほどまでにパワフルなのは、局所的、部位的、全身的な効果があるからです。 3)客観的に見てみましょう。 みなさんの医療介入の反応の出現は、即効型ですか、それとも遅延型ですか?これらの反応は測定可能ですか?いくつかの症例をみていきましょう(ここでは、完全なリハビリやスポーツへの統合、動き、ストレングス、四肢や全身の神経筋の再教育などの詳細について論議するのではありません。投稿の目的として、純粋に関節可動域の変化を客観的に観察してみたいと思います)。 上の写真は、投球側の肘の屈筋腱修復術の6ヶ月後の投手です。左の写真1は、治療前、真ん中の写真は、治療後1、右の写真3は、治療後2(2日後)です。私は素晴らしい徒手療法士と言いたいところですが、そうではなくて、ドライニードリングが秘訣だったのです。 次の写真は、投球側の肩の痛みを抱えている投手の写真です。多少暗いですが(お気づきかもしれませんが、翼状肩甲骨もあります)、内旋の可動域に、即時的な変化が見て取れると思います。「ストレッチ」をした訳ではありません。ドライニードル穿刺前と穿刺後の写真です・・・この2枚の写真に介入したものは、ドライニードリングのみです。 この写真に写っているのは、私です。あまり素敵とは言えない写真ですが、教育目的のために私の虚栄心は脇に置いておきましょう。左の写真は、両側の顎関節に激痛を感じた時です。明らかにトラッキングが上手くいっていないのが分かります。およそ10本のドライニードルを10分間穿刺しただけです。右の写真がそのドライニードルを抜いた直後の状態です。これ以外に、この2枚の写真に介入したものはないのです。 もちろん、これらの変化は維持されています。治療と治療の間に多少の後退はみられるものの、治療計画にドライニードリングを組み込んで以来、時間経過とともに顕著な改善がみられました。控えめに言っても、驚くべき変化です。 4)ドライニードリングにも「絶対に正しいテクニック」はありません。 他の徒手療法やエクササイズの処方と同様です。人体にドライニードルを使用するには芸術性(アート)が必要です。理論や見解が異なるいくつかのテクニックや、その指導者達がいます。どのテクニックをみても、単に異なるというだけで、優劣はつきません。先ほども述べましたが、何事も正しい方法はひとつだけではないのです。ドライニードルも例外ではありません。有効なテクニックはたくさんありますから、私はいつも学生に、複数のアプローチ方法を学ぶように伝えています。そうすれば、自分の臨床や哲学にぴったりの方法が見つけられるからです。 5)ドライニードリングは、危険を伴いえる施術です(車の運転も同様に危険を伴いえます)。 この危険性というものは、正しい知識とケアで緩衝することができます。人体解剖学に忠実に、危険ゾーンを熟知し、ドライニードリングの適応と禁忌を知っておくことが重要です。このことを理解し、侵襲的手技を尊重している臨床家を見つけましょう。適切な普遍的予防策は、患者と臨床家の安全に常に適用されるものです。 一冊の本が書けるほど他にも話したいことはたくさんあります。未だその必要はないようですが! Dr.Yun-tao MaやJan Dommerholt、Adrian Whiteの素晴らしい著書があります。ますます多くの査読文献が発表され、不明点の謎を解くための研究が行われています。

スー・ファルソニ 2436字