マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
ACL損傷予防には適切なトレーニングを パート2/2
段階的なプライオメトリックス 段階的なプライオメトリックスの秘訣は簡単です。1段階は最低3週間で終了し、ジャンプを週2回、組むこともできます。私たちのシステムでは、トレーニングがある日にプライオメトリックエクササイズを実施しますが、1週間で同じエクササイズを2回繰り返すことはありません。 段階 1- ボックスへのジャンプ、またはボックスへのホップ。これは、重力の影響を減らし、遠心性負荷を下げます。ジャンプは前方へ、ホップは前方と内、外側へ行います。 段階 2- 障害物をジャンプまたはホップで飛び越える。段階1では、重力の影響と後続する遠心性負荷を減少する試みでしたが、段階2のコンセプトとして、障害物をジャンプまたはホップで飛び越えることにより、重力による加速を再導入します。上記と同様のコンセプトが適用されていますが、ジャンプまたはホップでボックスに上がる代わりに、ハードルをジャンプとホップで飛び越えます。ハードルは、6インチ(15.24cm)から30インチ(76.20cm)の異なったサイズを使用します。 質 VS 量 重力を加えたことで質が減少するとすれば、ストレングスに問題があります。次の段階に進まずに、むしろ前の段階に戻ります。ストレングス&コンディショニングの巨匠と呼ばれるアル・ヴァーミル氏は、これに関して「選手が大きければ大きいほど(弱ければ弱いほど)、障害物は小さくする」というシンプルなコメントを残しています。 段階 3- 弾性を導入する。段階3では、段階2と同じエクササイズを使用します。異なる点は、段階3には「弾み」を追加することです。 段階 4- 本来のプライオメトリックス。反応としての動き、いわゆる一般的なプライオメトリックスです。 「ジャンプ位置と着地位置が同じである」 ~ジム・ラドクリフ ACL損傷低減 対策3― ストレングス向上 ストレングスの向上は、3番目に重要なことです。ACL予防では、ストレングスプログラムは、機能的な片脚でのローチに向けて進めていきます。 ポイント 体重を利用する- 片脚でのプログレッション 機能的な強さの向上- マシンなし 片脚の強さの向上- 股関節の力学の違い 膝優位、股関節優位両方の片脚でのエクササイズ実践 すべてのアスリートは、本来のシングルレッグスクワットと負荷をかけたワンレッグストレートレッグデッドリフトへと進むのが理想的です。 ACL損傷低減 対策4― 方向転換のコンセプト ほとんどのコーチにとって、方向転換を教えるという発想は馴染みのないものです。私たちは、動きを教えることと動きのタイミングをはかることを区別しておきたいものです。多くのアジリティプログラムでは、選手は単にコーンからコーンへ走るだけです。私たちの方向転換プログラムでは、効果的な動きのコンセプトを教えます。選手にストップとクロスオーバーを教えるために簡単なドリルを実施します。プライオメトリックスエクササイズで教えた着地スキルとコンセプトの上に、更にコンセプトを構築していきます。 ACL損傷低減 対策5― 方向転換のコンディショニング 方向転換のコンディショニングは、新しいコンセプトではありません。バスケットボール選手は往復ダッシュを何年も行ってきていますし、ホッケー選手の練習にも何十年もの間、ストップとスタートスプリントが組み込まれていました。フットボール選手は、クロスフィールドのストップとスタートトレーニングである「ガッサー」を行ってきました。しかしながら、陸上コーチの強い影響力と技術が、悪影響を与えてしまいました。コンディショニングプログラムの多くは、110ヤード(100.6m)220ヤード( 201m)、440ヤード( 402m)ランのような直線距離を基本とした陸上スタイルのインターバルプログラムにシフトしてきたのです。さらに悪いことに、アスリートは、ステーショナリーバイクやエリプティカルトレーナー、ステアクライマーなどの有酸素運動器具でコンディショニングを行うようになってしまいました。コンディショニングプログラムに良く欠けてしまうのは、ストップとスタートを計画的に盛り込むことです。損傷は、加速時と減速時に起こります。私たちは、損傷を最低限に留めるために、ストップとスタートをコンディショニングプログラムに組み込む必要があります。方向転換のランを行わない日には、実際スライドボードを取り入れ、側方へのコンディショニングをします。 結論 結論を言えば、質の良いストレングス&コンディショニングプログラムは、ACL予防プログラムに最適であるということです。レシピの例を覚えておいてください。必要のないレシピ材料はひとつもありません。全てが入っていなくてはならないのです。ストレングス&コンディショニングコーチは、アスレチックトレーナーを理解し尊重するように念頭に置いておきましょう。敵対関係ではなく、協力関係を作りましょう。また、もしあなたがアスレチックトレーナーまたは理学療法士なのであれば、ストレングスコーチとの関係を深め、チームに加えてください。協力関係がうまくいけば、みなさんのそれぞれの仕事がしやすくなります。ストレングスコーチも、リハビリチームの一員になる必要があります。質の高いストレングス&コンディショニングプログラムは、トレーニングルームでの仕事量を減らしてくれるということを、アスレチックトレーナーは、認識する必要があります。そして、私たちは皆、適切なトレーニングをすることだけでACL予防に繋がることを認識すべきです。
野球シーズン中のストレングスとコンディショニング:高校野球
今日は、シーズン中における、高校野球選手向けのトレーニング方法を取り上げていきます。ここでは、野手(捕手を含める)と投手に分類して話を進めていきます。 野手/捕手 私達は、野手と捕手には全身のストレングストレーニングを通常週2回実施しています。しかし、何人かの選手には、より短時間かつ高頻度のトレーニングセッションを行うことにしています。これにあてはまるケースとして、トレーニングをより多く行う方ったほうが調子のよくなるジムラッツ(年中トレーニングに精を出している人々)や、または十分な試合時間が与えられておらず、発達することを強く希望している選手達等が挙げられます。 このような選手達は、ウォームアップや練習中のゴロの処理やスプリントですでに動作トレーニングを十分に行っているため、通常彼等のプログラムに動作トレーニングをそれ以上追加する必要はありません。 彼等は投球や打撃において大量の回旋動作を行っているので、メディスンボールトレーニングの量も抑えるようにします。しかし、フォームローラーやモビリティーのトレーニングは毎日欠かさず実施します。 投手 高校生投手の多くが、投球をしていない時は野手としてプレーする二刀流であるため、彼らのトレーニングは難しいものになります。一般的な方針として、定期的に登板する選手に対しては、捕手、遊撃手、三塁主でのプレーは投球数が増加するため避けるように推奨しています。若い選手で一週間毎の投球回数が3イニング以下の場合は、野手と同じようにトレーニングを行いますが、トレーニング日のうち最低一回は必ず投球翌日に実施します。私がこのアプローチを気に入っているのは、24時間のブロックにストレスをまとめることで、さらなる回復を促すだけでなく、選手が私達と共にモビリティードリル、軟部組織へのアプローチ、そして徒手ストレッチを行わなければならないようにすることで、登板後の可動域を”正常化”することができるからです。
マラソン選手の筋繊維にはどのような特性があるか? パート1/2
長距離走は筋肥大の追求に対し悪影響を及ぼすと多くのコーチが示唆している。長距離走は筋肉量の減少と速筋繊維を犠牲にした遅筋繊維の断面積増加につながると言う人もいる。しかし、ある個人が長距離走を始めた際、実際には筋繊維の種類に何が起こるのだろうか? この研究はそれらを究明しようと試みたものである... 研究論文: 単一筋線維のマラソントレーニングへの適応、トラップ、ハーバー、クレア、ギャラガー、シルヴァ、ミンチェフ、ウィセット、応用生理学ジャーナル、2006年 背景 骨格筋がレジスタンストレーニングに適応することはよく知られており、これには生理学的な断面積、筋繊維の種類、筋束長、筋繊維角度の変化及び、より大きな力を生み出す能力が含まれる。 持久系トレーニングへの反応としても、筋肉適応は起こる。最も重要な2つの変化は、筋肉への血流を向上させる毛細血管網の増加と、ミトコンドリア発生として知られている過程で起こるミトコンドリアの大きさと数の増加である。行われている持久系トレーニングの種類により、筋の大きさや筋繊維の種類の変化が起こり得るとも考えられている。(例:自転車競技選手は典型的に大腿四頭筋が発達している) 私たちには、パワーリフトトレーニングとオリンピックリフトの両方がタイプIIXからタイプIIaの方向への筋繊維の種類の移行をもたらすが、タイプ I からタイプ IIへの移行を起こすことはないということがわかっている。これはタイプIIX筋繊維がパワーに対し最も有益であるという一般的な概念に反して起こる。しかし何故そのようなことが起こるのかは明確ではない。 持久系トレーニングの結果として各種筋繊維の中では、一体どのような変化が起こっているのだろうか? *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、初マラソンを完走しようとしている、レクリエーションとして運動を行う大学生の、筋肉の適応と筋繊維の種類の変化を観察しようと試みた。すべてのテストとマラソンを完了したのは7名(男性4名、女性3名)の被験者であった。 マラソンプログラムは、13週間のトレーニングとそれに続く3週間のテーパリング期間の、2つの段階に分かれた合計16週間のランニングトレーニングから構成されていた。計画は、週に4日間のトレーニング日を設け、13週間のトレーニング期間に渡り、最初の週に比べ全体的に140%のトレーニング量の増加が行われるよう、少しずつランニングの量(1週間に10%程度)を増やしていくという計画であった。テーパーでは急激ではあるが段階的なトレーニング量の減少が行われた。 16週間のトレーニング介入の前後に研究者たちは、腓腹筋から採取された筋繊維の検体を基に、単一線維の生理機能と酸化酵素の活動を測定した。研究者たちは、顕微鏡を使用しての単一筋線維の直径、単一筋線維の力生産能力、単一筋線維の収縮速度、及び単一筋線維の出力を測定した。13週間に渡るトレーニング期間の前後には、最大酸素摂取量(VO2-max)を測定するためトレッドミル検査も行われた。 *** 何が起こったのか? ランニングパフォーマンスと最大酸素摂取量 研究者たちは、7名全ての被験者はマラソンを完走し、平均タイムは4時間54分(3時間56分から5時間35分までに及ぶ)であったと報告している。 研究者たちは、介入前に比較し、介入後では絶対的最大酸素摂取量が増加(3.37 vs. 3.50 L/min)し、相対的最大酸素摂取量(こちらの方がより一般的に使われる)も増加 (49.5 vs. 52.0 ml/kg/min)したという、とりたてて有意ではない傾向があったことを確認した。彼らは、最大心拍数は変化しなかったが (197 vs. 198 beats/min)、最大呼吸も、介入の前に比べ介入後では増加 (93.7 vs. 97.0 l/min)したという有意ではない傾向があったことを報告している。 これらの要素は驚くことに、心臓血管の状態が有意には向上しなかったということを示唆している。しかしながら、最大酸素摂取量の値はむしろ高く、それは被験者がもうすでに(趣味レベルで)とても活発であったということなのかもしれない。 研究者たちは、トレーニング後の絶対的、相対的両方の酸素消費量は最大下ランニング速度である時速9.65Kmにおいて著しく低く(2.43 vs. 2.28 l/min and 36.0 vs. 33.6 ml/kg/min)、ランニングエコノミーに有意な向上があったということを示唆していると報告している。 まとめてみると、持久系トレーニングは最大酸素摂取量の向上にとても有益であると一般的に考えられているため、これらの研究結果は非常に興味深いものである。これらの初心者ランナーたちにおいては、最大酸素摂取量というよりはむしろランニングエコノミーが向上したようである。 酸化酵素の活動 研究者たちはクエン酸シンターゼの活動は37% (19.2 ± 1.4 to 26.3 ± 1.2 umol/g/min) 増加したが、13週間のトレーニング後とその後の3週間のテーパリング期間後では変化がなかったと報告している。これは筋肉の酸化能力がランニングトレーニング後に著しく増加し、持久系エクササイズを行う能力を向上させることにつながったのであろうと示唆している。 最大酸素摂取量に関するデータ(と下記にあるようなタイプI筋繊維の面積の増加)を考慮に入れると、パフォーマンスの向上は、心臓血管系の健康よりもランニングエコノミーによってもたらされるという上記の発見と一致して、これはトレーニングプログラムが、心臓血管系の適応よりもより多くの筋肉の適応をもたらすことを示している。
マラソン選手の筋繊維にはどのような特性があるか? パート2/2
筋繊維の種類 研究者たちはMHC組成による測定により、各種筋繊維に著しい変化があったことを報告している。 彼らはMHCI繊維が8%増加し(48 ± 6 to 56 ± 6%)、MHC I/IIaハイブリッド繊維が5%減少し(7 ± 1 to 2 ± 1%)、全MHC ハイブリッドが減少(24 ± 7 to 13 ± 4%)したことを発見した。しかし、MHC IIa繊維の断面( 30 ± 5 to 30 ± 4%)や、MHC IIa/IIxやI/IIx繊維のハイブリッド集団に有意な変化は見られなかった。下記のグラフはその結果を表している。 パワーリフトやオリンピックリフトの研究からタイプIIa筋繊維の断面積はストレングススポーツの要であるということがわかっているため、この発見は非常に興味深い。これらのデータは、マラソンは優先的にタイプIIa筋繊維を減少させはしないが、どちらかといえばハイブリッド繊維を減少させ、タイプI筋繊維の断面積を増加させるということを示している。 単一線維の直径、力、速度、パワーの測定 研究者たちは各筋繊維の全体的な断面積は測定しなかったが、単一筋線維の直径、力、収縮速度、パワーに関する大変興味深い観察を行った。彼らは単一筋線維の直径が、13週間のトレーニング期間に減少したことを報告している。 彼らは、トレーニングに伴いMHC I筋繊維の直径は21%、MHC IIa筋繊維の直径は23%と著しく減少したことを発見している。これらのデータは筋繊維全体の断面積に直接置き換えることはできないが、ランニングトレーニングがタイプIとタイプIIA筋繊維の筋量を減少させることにつながるということを示している。 研究者たちは トレーニング期間の結果として単一筋線維の力はMHC I 及びMHC IIAのどちらにおいても変化が無かったことを報告している。しかし筋繊維の直径は減少しており、これは筋繊維の単位断面積あたりの力が増加したはずであるということを意味している。単位断面積あたりの最大力の変化は下記のグラフに示されている。 最後に研究者たちは、MHC I筋繊維の収縮速度はトレーニング期間後著しく上昇(28%)したが、MHC IIa筋繊維には有意な変化(6%)は見られなかったと報告している。またトレーニング後、MHC I筋繊維の最大パワーは著しく増加(56%)したが、MHC IIaの最大パワーはトレーニングに伴い有意ではあるが、少量の(16%)増加しか見られなかった。 テーパーの影響 研究者たちは、MHC I単一筋線維の特性に更なる変化は起きなかったが、MHC IIa 単一筋線維の力とパワーが急激に増加したという非常に興味深いテーパーの影響があったことを報告している。これは、テーパー期間の恩恵を最も受けるのはタイプIIA筋繊維であり、この期間中にタイプI筋繊維の機能は変化しないということを示唆している。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは13週間に渡る長距離走のトレーニングは、タイプI筋繊維とタイプIIA筋繊維の直径の減少、タイプI筋繊維の比率の増加、及び、ハイブリッドタイプの筋繊維の減少につながるが、タイプIIA筋繊維の比率の変化にはつながらないと結論付けた。彼らはまた、全ての筋繊維の機能的能力は保持、もしくは向上すると結論付けている。 研究者たちは、最大下ランニングにおける酸素消費量の減少、MHC I筋繊維の割合の増加とクエン酸シンターゼ(酸化)活動の増加により、測定されたこれらの有意な変化は、持久系ランニングパフォーマンスの向上に貢献し得ると結論付けた。彼らはこれらの変化のうち最初の2つは、心臓血管系の健康というよりはむしろ、ランニングエコノミーを向上することで持久系ランニングパフォーマンスを助けているということを示す変化であると記述している。 *** 制限要素は何か? この結果は、少人数の被験者を使用したことによりデータを推定するのが困難であったということにおいて制限があった。また上記にもあるように、筋肉の検体での研究は道義上少人数に限られていた。 この研究は最初から被験者が比較的十分にトレーニングされていたようであり、49.5 ml/kg/minという平均相対的最大酸素摂取量は非常に高い値であったということに制限があった。いかにして最初から被験者がこのように高い最大酸素摂取量の値を得たのかは明確ではない。またこの研究は、研究者が単一線維の直径のみを測定し、全体の筋繊維の断面積を測定しなかったという点においても制限があった。 実践的意義は何か? アスリートに対して 長距離走トレーニングは、タイプI筋繊維を犠牲にしたタイプIIA筋繊維の減少は引き起こさないようであるが、タイプI筋繊維とタイプIIA筋繊維両方の直径(ゆえに断面積も)は減少するようである。これはストレングス&パワーアスリートはコンディショニングとしての長距離走を避けるべきであるということを示唆している。 混合した割合の筋繊維を持つアスリートや、ストレングス、パワー、持久系全ての活動を行うアスリート(クロスフィットなど)は、持久系のスポーツに重きを置くアスリートよりもよりテーパーによる恩恵を受ける可能性が高い。 レクリエーションとして運動を行っている個人に対して 単一の研究から評価するのは困難であるが、これらの結果はすでにレクリエーションとして運動を行っている個人において、マラソンを行うことは、単に走る能力自体は向上させるが、心臓血管系の健康状態を著しく向上させはしないということを示唆している。
ダイナミック・ストレッチング
ストレッチするのか、しないのか?ダイナミック(動的)なのか、スタティック(静的)なのか?というように、フィットネス産業において、提起されている疑問があります。もう一つの疑問は、“ストレッチングはケガを減らせるのか?”ということです。これは、私が議論したい質問ではありませんが、私達の運動技能とパフォーマンスの向上として、ストレッチングを考察してみたいと思います。私にとって、動作を向上させたいのであれば、動作を向上させることでこれを行うということなのです。 まず第一に、私達はストレッチングを組織の長さを伸ばす、力学的な技能として理解していると思います。ある程度、これは真実でしょう。しかし、私はダイナミック・ストレッチングを、身体中の情報の流れを増大する神経学的技能としてもみています。皮膚、筋膜、関節包、筋肉に内在する身体中の数多くの受容体は、変化に反応します。いくつか例を挙げるなら、角度、長さ、張力、圧力、振動における変化です。動的動作は、恒常的な変化を作り出し、体位の静的変化は一つの変化しか作り出しません! 動作の球体が拡大することにより、情報の領域が拡大し、私達は更なる動作の可能性を高めます。動作が増大するにつれて、可動域、もしくは球体を拡大する能力を高めます。私の良き友人は、“動作が動作を作り出す”という言葉を造りました。これは、上記を総括するには、かなり良い考え方だと私は思います。よって、依然としてスタティックに行っているようでは、この動作の球体の拡大はありませんし、身体に動作の球体拡大の可能性を与えることもありません。 体内における情報機構の考察、特にこの情報において、筋肉のみを考察するのであれば、筋紡錘は良い出発点です。筋紡錘は、二種類の遠心性路(脳へ向かう情報)を持っています。一つは組織の長さに基づいていて、もう一つは長さの変化率に基づいています。これらの錘内筋線維が、ガンマ、及びアルファ運動ニューロンを経由する、フィードバックループに極めて重要であり、錘外筋線維の硬直(伸長への耐性)と動作の成功を制御しています。 筋肉の静的な伸長だけでは、ストレッチングの全容の半分だけしか描写できません。動作は成功のために、長さと長さの変化率の情報を必要とします。あなたの車のGPSシステムが情報の半分だけしか伝えず、その省かれた部分はあなたの移動速度であると想像してください。その結果、あなたは数多くの曲がり角を見逃すことになるでしょう! 私達はまた、線維方向、もしくは筋肉の縦軸に沿ってだけストレッチをする傾向にあります。筋紡錘の機械的な特性に目を向けるのであれば、これは筋紡錘を伸長し、張力を掛けた状態にしますが、縦方向に張力を掛けた状態で、垂直と回旋の張力を加えることを想像してください。これもまた、情報の流れに影響を与えることでしょう。これは、三次元性と動作がストレッチング、もしくは一連の過程を強化する動作には不可欠である理由を、筋肉の視点から証明しています。特にファンクショナル動作では、三平面すべてを使用しているのです。 また、私達はストレッチングを統合された手段として考えなければなりません。身体のような統合されたシステムにおいて、ある関節可動域は、他の関節において得られる可動域によって抑制されているかもしれません。私達が特定の機能の連鎖によって関節を分けてストレッチするとすれば、関節全てが統合させた時とは異なる可動域を得るかもしれません。実際、より小さな個別可動域ではあっても、より大きな統合的な動作は、関節が組織へのストレスを回避するために、最も求められる結果かもしれません。 多くの要因もまた、身体の柔軟性に影響を及ぼしています。ストレス、ダイエット、疾病、視覚等も影響を与ええます。私達が、筋紡錘の硬直を上方制御するガンマ運動ニューロンのフィード・フォワード機構と、筋線維の硬直を変えるアルファ運動ニューロンを理解すれば、上記のシステムにおけるストレス要因が柔軟性と身体の生体力学に対するこのような莫大な影響を持ちえる理由を考えるのが容易なのです。
肩のメルト モールド ムーブ
昨年、カリフォルニア州ハーモサビーチにあるレニーのクリニックで4日間の集中研修を受けた際に収録したビデオ。トゥルーストレッチに、分厚くて長いゴムのバンドを付けて行う組織へのアプローチ方法の一つをご紹介します。
呼吸パターン障害
とても幸運なことに、先週、レオン・チャイトー氏の親密でこじんまりとしたワークショップに参加して、呼吸パターン障害への徒手療法アプローチについて議論する機会に恵まれました。私がチャイトー本人から、そして彼の広範囲に渡るボディワークからどれだけのことを学んできたかについては、ためらいなく明かしていますので、彼と共に一日を過ごした経験は、素晴らしいものでした! 下記は、みなさんとシェアする価値があると思ったコースの主要ポイントのまとめです。これらは全て、ワークショップやチャイトー氏の呼吸パターン障害についての本からの引用ですので、もっと学びたい、あるいは、効能や文献を知りたいと感じたら参考にしてみてください。 呼吸パターン障害とは何でしょうか? 米国の患者の10%が過呼吸症候群と診断されている一方、多くの人々が、わずかながらも、臨床的に重要となり得る、継続的な吸気状態にある呼吸パターン障害を持っています。 これは、低炭酸症につながります。低炭酸症とは、過呼吸により血液中の二酸化炭素が不足した状態で、やがては呼吸性アルカローシス、さらには低酸素症や組織への酸素供給の低下へと発展していきます。 これは一般に、胸式呼吸をする人に見られる症状で、こういった人々は本質的に息を吐ききれておらず、肺気量を十分に使えていません。 そのため、交感神経が優位の状態に置かれ、僅かではありますが、かなり継続的な闘争または逃走状態に陥ります。 やがて、不安や、血中pH値、筋緊張、痛覚域値、等の様々な中枢神経系、周辺神経系の症状の変化へとつながります。いくつかの症状は心臓の問題症状に似ています。 私が今回学んだ、最も興味深い情報は、呼吸と日々の行動との関連性を記した二つの研究に関係していました。 一つ目の研究では、キーボードのタイピング動作を調べ、タイピング中の斜角筋、僧帽筋の筋電図の振幅増加、胸郭と腹部の活動の減少を明らかにしました。これはおそらく、元来からある反射的動作ですが、これにより呼吸がさらに浅くなり、横隔膜の活動が減り、胸の上部や首がより活発に働きます。現代人は一日のかなりの時間をタイピングに費やしていますので、これはとても頻繁に起こっているのです。 もう一つの研究では、人々がテキストメッセージを送ったり、受け取ったりするときに、呼吸を保持し、呼吸数を高め、交感神経の優位を経験していることを示しました。 呼吸パターン障害の評価方法 ナイメーガン問診での高いスコアは、呼吸パターン障害を持つ傾向のある人々を発見するのに、感度と特異度がともに高いことが示されています。 呼吸パターンの観察 呼吸保持−人は一般に25秒から30秒間、息を保持することができます。もし15秒も保持できなければ、二酸化炭素耐性が低いことを意味しているかもしれません。 仰向け呼吸ハイローテスト−手を胸とお腹の上に置き、自然に呼吸をします−どこが最初に動きますか?どこが最も動きますか?側部への拡張と、手が上に押し上げられる動きを見てください。 呼吸の波−うつ伏せになり、自然に呼吸をします。脊椎は頭に向けて波のようなパターンで屈曲しているべきです。一体となって上昇している分節があれば、それは胸椎の制限を意味している可能性があります。 座位での側部拡張−胸郭の下部に両手を置き、呼吸中の動きを追います。左右対称の側部拡張ができているか見てください。拡張は下の動画のようであるべきです:
野球シーズン中のストレングス・コンディショニング:大学野球
今日は、シーズン中の大学野球選手の管理について話をしていきます。 大学生と高校生の管理の仕方には、特に、野手/捕手と1週間ローテーションの先発投手に関しては、確実にいくつかの類似点があります。主な相違点としては、大学野球のスケジュールは、週末の試合(金曜日-土曜日)が基本で、時折週半ば(通常は火曜日か水曜日)に試合がある一方で、高校野球のスケジュールはそれよりも変動的であるということです。結果として、大学野球選手のほうが、ウエイトトレーニングをする日が確定される傾向にあります。ポジション毎に見ていきましょう。 野手/捕手 私は、月曜日(週末試合の翌日)に最も厳しいウエイトトレーニングをさせることを好みます。別のウエイトトレーニングの日程は、水曜日か木曜日になります。このスケジュールでは、全体的なトレーニング効果を減少させることなく、試合前、火曜日か金曜日に1日の休養を、コーチが選手に与えることができます。野手は月曜日に全身のウエイトトレーニングを行い、水曜日-木曜日、または、木曜日-金曜日に下半身のウエイトトレーニングと上半身のウエイトトレーニングを連続して行うことを好むことも分かっています。これは、選手の好みと、試合に出ているイニング数に依るところが大きいでしょう。 投手 我々は、大学生先発ピッチャーと高校生で週1回の先発ピッチャーを、まったく同じように管理しています。ここでは、方法を変える必要はありません。 しかし、リリーフ投手に関しては、大学のストレングス・コンディショニングコーチを悩ませます。彼らのスケジュールは予測不能です。水曜日、金曜日、日曜日に投げるかもしれません。または、土曜日だけ投げ、6日間はオフかもしれません。どうするべきなのでしょうか? 混沌としている場合、そこに枠組みを与えるようにと、私は言います。それが、正に私がリリーフ投手を管理する方法です。多くの選手は、彼らのルーティーンワークの中で、少なくても1つは確定していることを好むことに気づきました。そしてその1つがストレングス・コンディショニングセッションでありえるのです。そのため、リリーフ投手はみな、たとえ、不定期な週半ばの試合である、木曜日の夜に投げなければならないとしても、月曜日と木曜日にウエイトトレーニングをするとしましょう(そのセッションの量は少なくすることができます)。沢山の数の新しいエクササイズを与えたりさえしなければ、筋肉痛を起こさせることも、パフォーマンスを下げることもないでしょう。プロ野球界には、投球をする日であったとしても、いつもウエイトトレーニングをするリリーフ投手がいて、実際に多くの投手が、投げる当日にすでにウエイトトレーニングを行っているときは、マウンドで調子が良いと報告しています。どちらにしてもムーブメントトレーニングとして、当日にトレーニングを行う必要があるでしょうし、ウォームアップ中にスプリントをすることに不満をいう人はいません。 さらに、リリーフ投手が特に長いイニングを投げ、数日間は投球しないということが分かっていれば、先発投手と同じようにケアをし、試合後12時間以内にウエイトトレーニングを行わせます。その週の間に、追加のストレングストレーニングセッションを追加することもあるでしょう。
筋紡錘とゴルジ腱受容器:ガンマシステムについて
質問: 筋紡錘ガンマシステム(紡錘の両端にある筋線維)に関するトム・マイヤー氏の解説に少々混乱してします。そこでは、ガンマシステムとは、紡錘からの求心性神経をごまかし、あたかも筋線維の伸張が増加したかのように伝えられるということでした。彼は以前、筋の長さの増加が感知されると、紡錘の求心性神経は、筋の緊張/収縮の増加をももたらすと説明していました。 紡錘の両端にある筋線維が、紡錘の中央部ではなく、紡錘の両端を引き伸ばすということは、それによって、他の筋線維よりも少ない伸張を、紡錘の中央にある求心性神経が感知させるということですね? 彼は、この影響はガンマシステムによるものだとしています。ガンマシステムは、筋の収縮/緊張を伸ばし(減少)および減速し、そして無理に伸張した後には、自然な静止長を取り戻します(これは、神経の影響というよりは、筋膜の可塑性によるものかもしれません)。 ここで言う筋収縮を伸ばすということが、動きをより簡単かつ効果的にするということ以外に、学習をした動きを自動化する(それによって、同時に起こっている別の動きの学習に注意を注ぐことができる)のに、どのように役立つのか、まだ良く理解できないでいます。ただ、私の現在の学習段階では、このトピックは必須というよりは好奇心といった方がいいでしょう。 私が今まであまり理解できなかった筋紡錘/ゴルジ腱受容器についての、明確な説明に感謝しています。微視的構造を知ることは楽しく、今後必要になるかもしれない即興で行うような治療に役立つかもしれません。 ビルより回答: ビル、あなたはご自分の手技の領域を正確にしっかり把握していますね。 神経筋筋膜システムが実際どのように機能するか、まだ初歩的なことしか分からない研究段階ではありますが、あなたの疑問を解消することができるか、試みてみたいと思います。理解が深まると同時にそのまま適用できると思います。 私たち臨床家に理解され始めた、ひとつの重要なことがあります。これまで長年にわたり教えかつ思い込んできたのとは異なり、脳/身体は、筋肉によって動きを統制しているのではなく、筋肉内にある10~100本の筋線維に(繊細の運動制御を必要とする目や舌の筋肉にはより少なく、それぞれの神経が数百の筋繊維に対して指令を与える臀筋では、より多い)存在する神経運動単位を介して動きを調整します。 円滑な加速は、筋肉の筋動員によって起こるのではなく、局所に存在する多くの条件によって協調された各神経筋単位の動員によって起こるのです。しかし、主として脳を介します。その脳は、以前に経験したような運動(加重)の一連の記憶のシグナルを統合する働きをしますが、分かりにくい文章になってしまいましたので、かみ砕いて説明しましょう。 それぞれの神経運動単位は、筋内で機能しています。それは、末端の腱または、その神経筋単位が関与するあらゆる筋膜(筋肉を包むサランラップのような筋外膜も、筋間の疎性組織や中隔組織も含む)と協調しながら、特定の筋を引っ張ります。すべて特異性があり、知覚と予測のつく推測が混ざり合った記憶を通してプログラミングされています。人間の優れた努力の証です。 各神経運動単位には、特定の筋線維があり、その筋線維は特定の腱線維に連結して、ゴルジ腱受容器にシグナルを送り、それからその神経運動単位の筋紡錘が伝達する同じ領域にシグナルを送ります。筋のみにとらわれるのはやめて、神経運動単位を考えるようにしましょう。 では、神経運動単位についてですが、特にガンマシステムについてお話ししましょう。円滑な加速を起こすにあたり、神経系は2つのちょっとしたシンプルな装置を採用しています。それは、筋長と筋長変化率を検出する筋紡錘と、それと筋への張力を感受する筋線維の末端にあるゴルジ腱受容器です。 この絵で筋紡錘が確認できるでしょう。そして、筋の伸張によってどのようにシグナルが増加し、また収縮によってどのようにシグナルが減少するのかがお分かりになるでしょう。 筋が伸張すると紡錘も伸張し、そして、筋内での他動的伸張は神経によって記録されます。よく知られている膝蓋腱反射のような、紡錘を興奮させる短く急な伸張(バリスティック)では、静止長に戻るように働きます。つまり、紡錘を伸張すると、その紡錘を支配している神経運動単位の反射収縮が得られるのです。 「ごまかす」に関して:筋のほんの一部のタスクの遂行による力伝達の円滑な加速と、、筋全体から合成された安定性を得るため、神経筋筋膜ウェブにはうまい具合の仕組みが備わっているのです。つまり、紡錘の各両端に、ひとつのとても小さな運動神経(これをガンマと呼びましょう)を追加することにより、紡錘内のエラスチン線維を引っ張ることができるのです。この小さな運動シグナルは、紡錘の端の細い線維を収縮させます。よって、紡錘を「ごまかし」、あたかも周りの筋組織が伸張しているかのように感受させるのです。筋紡錘が紡錘内の伸張に反応すると、脊髄にシグナルを送り、脊髄は通常のルートで単位全体を収縮するように反応します。 ここで、ガンマ線維が紡錘をどのように引っ張るかが分かります。脊髄を「ごまかし」、遠心性のアルファ神経を興奮させ、神経運動単位を収縮していることがお分かりでしょう。 遠回りであると感じるかもしれません:紡錘の両端を刺激するだけの“それっぽっち”のシグナルを、わざわざ脳からガンマ神経に発信し、それから紡錘が脊髄にシグナルを送り返し、さらに脊髄が下肢に筋収縮を起こすために、またシグナルを送る。アルファ運動神経に直接シグナルを送った方がよっぽど速いのではないでしょうか? もちろん、その通りですが、そうなるとスピードは速いが、協調性を失います。この「ごまかし」システム、つまりガンマシステムは、筋へのシグナル、脊髄へのシグナル、そしてまた筋へのシグナルといった混沌に対して、私達の身体が次に何が起きるか推測できるとき、過去の経験を基にしてマクロ秒の余裕をもって計画ができるときに初めて使われるのです。 子どもが初めて釘を打つ時のシグナルは、直接アルファ運動神経に伝えられます――大人がいっぺんに上手に釘が打てるのは、ガンマシステムが働いているからです。ハンマーの使い方の記憶プログラムを、アルファ神経を動員して、微調整しているのです。一つの部屋から隣の部屋に踏込んだとき、思っていたよりも床が数センチ低かった、というような不意なことに直面した時、ガンマシステムが次に何が起きるか準備し、正確に微調整してくれるのです。 神経科学は私の理解を超えていますが、さまざまなレベルのプログラミングは、「高度な安定化プログラム」(私は、セントラルパターンジェネレーターという用語を使用します)に影響します。しかし、感覚受容器である紡錘やゴルジ腱受容器の発火パターン、および成功のもと完了した動きの記憶の累積を保存する主な部位は、小脳と考えられています。 靴の紐を結ぶことを学習している子どもは、すべてアルファ運動パターンを利用しています。なぜなら、その子どもには、ガンマパターンを使うほど十分な記憶がバックアップされていないからです。一方、大人は、おしゃべりをしながらでもできます。すでに経験したことのある、靴紐を結ぶという指先の感覚が、予測可能パターンとして形成され、なじみのあるプログラムとして表面下で稼動しているからです。 ここで疑問に思うことは、では、私たちはどのようにして、負担が少ない新しい運動パターンをアルファプログラミングの大脳皮質から、ガンマ‐小脳‐大脳基底核‐脳幹 - 応答システムの一部へと深化させていくのでしょうか。それに応えて、もちろん自律神経‐迷走神経‐神経内分泌‐海馬 - 神経系のアラームの部分の影響を受けますが、これに関しては、ここではなく次の機会の別のトピックでお話ししましょう。 ご質問の答えになっていればよいのですが。
膝蓋大腿関節痛:機能的アプローチ
膝痛は、非常に一般的です。膝部の滑液包、腱、靭帯に影響を及ぼす多くのタイプの痛みがありますが、最も一般的なものの一つが膝蓋大腿関節痛です。 このブログで、ささいなことまで深く掘り下げるよりも、良好な膝蓋大腿関節のメカニズムのために必要とされていることについての、概念的な理解をもつことの方が、はるかに良いのではないかと思います。 膝蓋骨は、膝蓋靭帯を経由して、大腿骨と脛骨に付着しています。実際、膝蓋骨は膝窩溝、もしくは大腿骨と脛骨の両方の骨にある、内側顆と外側顆の間に位置しています。これは、膝蓋骨の良好な動作のために、これらの膝窩溝は、近接した状態を保つ必要があるということを意味しています。それを言い表している素晴らしい表現は、“順序通りに”でしょう。そうでなければ、膝蓋骨は膝窩溝に激突し、痛みを発生させることでしょう。 これら二つの骨に付着する重要な身体の部位が、二ヶ所あります。つまり、大腿骨が関節接合している股関節と脛骨が関節接合している足です。それは、膝窩溝の配列が、股関節側、もしくは足側のどちらかの末端においての、過度な動作、もしくは動作の制限の影響を受けるかもしれないことを意味しています。 一般的なアプローチは、股関節と足の動作を、矢状面において膝の動作を追跡することによって、制限しようと試みることで、動作のばらつきを減らす効果があります。球関節の素晴らしい特質は、それが私達にもたらす動作の多大な自由度と多様性です。実際、この自由度と多様性は、“三次元”と言い表されるかもしれません。矢状面における動作縮小の試みは、明らかな三次元の特質を提示している股関節筋群への負荷を減らすことになるでしょう。臀筋群とその斜めに走る線維方向に目を向けてください。大腿骨の前額面と横断面での動作なしには、効果的に働きません。実際、臀筋群は内転と内旋への動作を制御するでしょう。機能的な体重負荷動作においてしばしば発生する、膝の外反(大腿骨内転)と大腿部の内旋のような矢状面からの逸脱は、臀筋群と股関節筋群の遠心性収縮の活動によって、減速させる必要があります。これが、健康的な膝蓋大腿関節機構のために、大腿骨と脛骨の間の最適な順序を保持しているのです。 同様に、足の働きが脛骨の配列に影響を及ぼすでしょう。これもまた、膝窩溝における膝蓋骨の動作の乱れを引き起こすでしょう。一例として歩行(万人に共通する機能)を用いてみると、後足部、もしくは前足部内反は、足の回内後の脛骨への促進作用を有しており、脛骨内旋と外転の増大を作り出しています。回内の順序もまた、膝蓋大腿関節機構の配列に影響を及ぼすでしょう。後足部回内の遅延が、脛骨外旋を減少させ、と共に大腿骨外旋が膝窩溝の密接な順序を保持しています。実際、大腿骨と脛骨の反対方向への回旋が起こるかもしれません。私の友人であるゲイリー・グレイが、“真ん中に挟まってしまって、逃げ場がない状態”と言及するように、膝蓋骨は大腿骨と脛骨の両方に付着しています。 足関節背屈のような矢状面での動作の欠如もまた、膝に影響を及ぼす回内を増大するかもしれません。これが、人々が階段を使う際に、更なる膝の違和感を訴えるかもしれない理由なのです。足関節背屈の増大は、階段の昇降時において、必須とされています。足関節背屈が距腿関節において得られないのであれば、身体は足関節背屈を作り出すために、距骨下関節と横足根関節において、回内を増大するかもしれません。これは脛骨、ひいては膝蓋骨において、前額面力と横断面力を増大させています。よって、膝蓋大腿関節機構を得ようとする従来のエクササイズが行うように、矢状面の要求を増大させることは、実際、痛みを発生させる運動の増大を引き起こすかもしれないのです!足関節背屈が制限されているかもしれない理由を理解することは、ただ矢状面における膝の運動を強いようとするよりも、より成功したアプローチではないでしょうか。 一般的な万能エクササイズではなく、何が膝痛を引き起こしている可能性があるのかを理解するためには、股関節と足関節の両方における機能的三次元評価が求められています。一般人口の中に存在する数多くの構造的な足の機能不全の問題は、機能的な運動力学と構造の理解なしに、効果的に治療することができません。三次元の動作は主に体重負荷がかかっている状態で起こるために、治療用ベッドの上はなく、体重が掛かっている状態で、膝がどのように作動するのかという知識が不可欠なのです。 常に私を困惑させるものは、足の回内と膝の動作間の分離です。回内は動作として、足関節背屈、外転、外反と分類され、十分に解説されています。これは距骨に続いて、脛骨内旋を作り出すでしょう。この大腿骨と接続されている脛骨の動作は、膝の内旋を作り出すでしょう。体重の掛かった状態で、膝はどのようにして矢状面のみの動作をし、単純な蝶番関節として作用することができるのでしょうか??? 同様に、脛骨遠位端が外転することによって、近位端が身体の正中線に向かって傾き、膝の外反をもたらします。この場合も先と同様に、どのようにしたら膝を蝶番関節として、単純に見ることができるのでしょうか? 機能的な成功のために、三平面すべてにおいて大腿骨と脛骨の間の密接な関連が起こることは非常に重要です。つまり足と足関節が、体重の掛かっている状態で動的位置にある際に、評価することは重要なことなのです。
実践的なトレーニングの助言 パート1/2
パーシャルスクワットとフルスクワットを使い分ける最善の方法とは? 研究によると: ストレングスとパワーを向上させる為には高負荷でのパーシャルスクワットが最善であり、スピードを発達させるためには低負荷での深いスクワットが最適である。助言: 高負荷でのパーシャルスクワットと低負荷でのパラレルスクワットの組み合わせは、スピードに重きを置けば、アスリートのスピードとストレングスの質を発達させるための良い組み合わせとなり得る。研究によると: 何セットにも及ぶ高負荷でのより深いスクワットは、大量の作業を行うためには最適である。助言: 筋肥大を必要とする身体組性のプログラムに対しては、作業出力(筋肥大へとつながる機械的張力)は高負荷でのより深いスクワットを行うことで最大化することが可能である。 *** スクワットは高負荷であるべきか、深くあるべきか? 研究によると: 膝伸筋へ要求される力に対しては、負荷よりもスクワットの深さの方がより重要な要素である。助言: 垂直跳びの高さを向上させるために膝関節主導のジャンプ戦略をとっている場合は、大腿四頭筋への刺激を最大化するためにより深いスクワットを行うべきである。同様に大腿四頭筋のサイズを向上させたいのであれば、負荷を軽減し、安全に行える範囲で、できるだけ深いスクワットを行う。 *** スクワットの際、椅子に深く座るような形になるべきか? 研究によると: オリンピックスタイル(椅子に深く腰掛ける形にならない)のスクワットは膝伸筋を最も発達させるようであり、それゆえ大腿四頭筋をより活性化するが、膝には大きな剪断力がかかる。助言: もしオリンピックスタイルのスクワットを、膝の痛み無く行うことができ、かつ大腿四頭筋群を発達させたいのであれば、オリンピックスタイルのスクワットが最適な手段である。少しでも膝に痛みがある場合は行うべきではない。研究によると: 椅子に深く腰掛ける形になるスクワットは股関節の伸筋群をより使うようであり、よって大臀筋(と多少ハムストリングスも)のより大きな活性化につながるようである。助言: もし臀筋やハムストリングスを鍛えたく、椅子に深く腰掛けるような形でのスクワットが問題なく行えるのであれば、制限されたスクワットが有効であろう。(もちろんハムストリングスを発達させるのには、スクワットパターンよりもよりよい選択肢があるが) *** フォワードランジは大腿四頭筋とハムストリングスのどちらに効果的なエクササイズか? 研究によると: フォワードランジの際の外部負荷の増加は、足関節、膝関節、股関節のモーメントを同等に増加させるのではなく、むしろ股関節モーメントを足関節や膝関節のモーメント以上に増加させる。助言: ランジの際、安全に、かつ膝の痛みを回避しながら、臀筋やハムストリングによって行われた仕事量を比例的に増加するためには、高負荷で各セットのレップ数を少なく行うと良い。研究によると: フォワードランジの際、膝関節ではコンセントリックの仕事量よりもエキセントリックの仕事量の方が多い。これは、身体を下に下ろしてゆくにつれて、膝伸筋(大腿四頭筋)が、増加してゆく膝の屈曲を減速することにより関わっているということを示唆している。エキセントリック収縮は辛い筋肉痛を引き起こすため、多くの人がランジは大腿四頭筋がとても痛くなると感じている理由はこれなのかもしれない。助言: 大腿四頭筋により効果的なフォワードランジを行うためには、低負荷で多くのレップ数を行うべきである。(ロニー・コールマンの駐車場ランジのような) *** 広背筋を発達させるためにはプルダウンよりもローイングの方が良いか? 研究によると: シーテッドローはどのようなタイプのプルダウンよりも広背筋と中部僧帽筋/菱形筋の大きな活動を生み出す。背中のエクササイズを「背中の広さ」と「背中の厚み」に分けるという考えは研究者から支持されていない。助言: ボディビルダーや主に身体的発達を考慮する人は、ラットプルダウンよりもローイングを中心に背中の強化パターンを組む方が理にかなっている。そして背中のプログラムを「背中の広さ」と「背中の厚み」で分けるのではなく、背中のトレーニングを2度行うようにすれば十分であろう。研究によると: シーテッドローは肩甲骨の後退を組み合わせた際、広背筋と中部僧帽筋/菱形筋に、より大きな活動を生み出す傾向にある。助言: シーテッドローを行う際は、筋活動を向上させるために、各レップの最後に必ず肩甲骨の後退を行うべきである。可動域を向上させることは肩の健康のためにも好ましいことである。研究によると: プルダウンの際、腕が回内しているか回外しているか(チンニングとプルアップ)の違いは、広背筋と上腕二頭筋の相対的な活動における多少の相違にすぎない。ゆえにこれらの相違は、初心者や中級者に対して大きな違いを生み出すわけではないようである。助言: チンニングやプルアップのどちらを使ってもさほど相違はないため、おそらく好みに応じて選択するか、もしくは飽きることを避けるためにそれらを混合して行うべきである。もし、どうしても選択しなくてはいけないのであれば、より大きな負荷を使えるためチンニングの方が多少優位であろう。 ***
実践的なトレーニングの助言 パート2/2
どのローイングエクササイズが最善か? 研究によると: 広背筋と上背を鍛えるには、ベントオーバーローよりもインバーティッドローの方が良い。ベントオーバーローは全体的な(上部、下部共に)背中の筋活動を生み出し、脊椎の安定性に最も働きかける。助言: 高齢期まで元気にトレーニングを行うためには、ベントオーバーローや片手でのケーブルローよりも、負荷付きのインバーティッドローを中心としたプログラムで上背と広背筋を鍛えるべきである。 *** 筋肥大のためには、相撲デッドリフトは通常のデッドリフトよりも良いのか? 研究によると: 相撲デッドリフトで使われる主な筋肉は大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋である。通常のデッドリフトで使われる下肢の筋肉は、ハムストリングス、大臀筋、腓腹筋、ヒラメ筋である。助言: 両方のデッドリフトのバリエーションを向上させるためのトレーニングにはもちろん、大量の大臀筋とハムストリングスの強化が含まれているべきである。しかし、通常のデッドリフトは大腿四頭筋とふくらはぎの筋力をより強調するのに対し、相撲デッドリフトでは大腿四頭筋と前脛骨筋の筋力に重きが置かれている。研究によると: 通常のデッドリフトよりも相撲デッドリフトの方が、加速段階にいる時間が非常に長い。これは、相撲デッドリフトがよりよい筋肉の適応をもたらすということを示しているのかもしれない。助言: 特に相撲デッドリフトは腰への負担が少ないが、同様の股関節の伸展モーメントを含む可能性が高いため、筋肉のサイズを大きくするためのトレーニングとしては、通常のデッドリフトよりも相撲デッドリフトの方が優れているかもしれない。 *** ストレートバーとヘックスバーはどのように違うか? 研究によると: 膝関節に対する股関節の伸展モーメントの比率はストレートバーデッドリフトでは負荷の増加に伴い上昇するが、ヘックスバーデッドリフトでは変化がなかった。これは、ストレートバーデッドリフトは負荷が上がるにつれてより股関節主導になってゆくが、ヘックスバーデッドリフトでは同様ではないということを意味している。助言: ストレートバーデッドリフトでは、股関節の伸展トルクの重要性が負荷の増加につれて上がるということを考慮に入れると、弱点が股関節の伸展トルクの場合(多くの場合その可能性が高いが)、ストレートバーデッドリフトを向上させるためにヘックスバーデッドリフトを使ってトレーニングすることは、最適な持ち越し効果を生み出さない可能性がある。股関節の伸展トルクを発達させるようなエクササイズの方が、より良い選択かもしれない。研究によると: デッドリフトは両バリエーション共に、オリンピックリフトやそのバリエーションと同様、最大下負荷において多大な力を生み出す。助言: スポーツのために最大力をトレーニングしているが、オリンピックリフトを快適に行うことができない人は、オリンピックリフトを安全に行うために何年も費やしてそのスキルを養う必要なはい。ストレートバーやヘックスバーを使う最大下デットリフトは両方とも同等の出力を生み出す(ストレートバーでは1RMの30%、ヘックスバーでは40%、スクワットでは50−60%を使う) *** フォームローラーは可動性を向上させるか? 研究によると: 被験者がワークアウト前にフォームローラーを使用した場合、使用後彼らはより広い可動域で膝関節を動かすことができた。静的ストレッチとは違い、フォームローリングは被験者に実施直後の筋力低下をもたらさない。助言: ディープスクワット、スプリットスクワット、デフィシットデッドリフトなど、大きな可動域内で関節を動かすようなエクササイズを含むワークアウト前には、筋肉を伸長するためにフォームローラーを使用しよう。 *** 柔軟性を増すためにストレッチを毎日行う必要はあるのか? 研究によると: ハムストリングスのストレッチ実験では、研究者たちは数分のストレッチを毎日行うことと、数分のストレッチを週に3−4回行うことでは同様に可動域が拡大されると発見している。(18.1 ± 6.3度)助言: もしストレッチが優先であるならば、毎日行うことはより早い改善につながる。しかし、時間がないのであれば、数分のストレッチを週に3−4回行うことは同様に良い成果を与えてくれる。毎日数時間もストレッチする必要はないのである。 *** バーの速度は筋力の増加に影響を与えるのか? 研究によると: 自己選択したバースピードよりも、より速いバースピードはより大きな筋力の増加につながる。助言: ワークアウトの際のバースピードをコントロールする習慣がないのであれば、ある一定期期間より速いバースピードを試してみると良いだろう。より大きな向上が見られるかもしれない。 *** レジスタンストレーニングと持久系トレーニングを組み合せて行うことは可能か? 研究によると: レジスタンストレーニングと持久系トレーニングを組み合わせて同時に行うことは(同時訓練という)筋力の増強を妨げはしないが、おそらく力開発速度の低下による結果としてパワーの向上を低下させる。助言: スポーツのためのパワーを最大化することに生計がかかっているのであれば、持久系トレーニングは必要最小限にとどめておくのがよいだろう。 *** ストレングストレーニングと持久系トレーニングを組み合せて行うことはより良い筋肉量の増加につながるか? 研究によると: 多くの人が考えていることに反するが、同時訓練を行うことは実際の筋肉の増加程度を上げる。助言: 体格のためにレジスタンストレーニングを行っているのであれば、ある程度の持久系トレーニングは、実質的にはレジスタンストレーニングの効果を助長する可能性がる。 ***