テンセグリティーの解説

私達の身体は、石やブロックを積み重ねて構築されるような構造ではなく、圧縮する要素(骨)と張力の要素(軟部組織)のバランスの基に成り立っている構造をしています。圧縮と張力のバランスに関して、石やボール、テンセグリティーモデルを使ってトムが分かり易く解説をしてくれます。

トム・マイヤーズ 5:09

野球シーズン中のストレングスとコンディショニング

野球選手のシーズン中のストレングスとコンディショニングについて、ここ数週間で、何十件ものメールやFacebookのポスト/メッセージ、ツイッター、電話などを受け取りました。このテーマについて考えをまとめるのは、困難を伴う作業でしたが、同時に嬉しく思いました。なぜなら、これらの問い合わせが寄せられるということは、つまりシーズン中のストレングスとコンディショニングが、極めて重要であることをやっと関係者が理解し始めたということを示しているからです。 これを受けて、シーズン中の投手と野手のストレングスとコンディショニングへの取り組み方を概説していきます。当然、選手には個人差もあり、スケジュールも異なるので、皆さんにとって上手くいくように手直しを加えていく必要があるでしょう。 私が「あえて実施しないこと」にみなさんが驚かれるかもしれないので、参考までに述べておきます。シーズン中のストレングスとコンディショニングにおける私の方針は、下記の項目において他の多くの人とは異なります: 1.私は、フィールドでバンドやチューブを使うことをあまり好みません。一言で言えば、週2回の「従来の」回旋腱板エクササイズ(主に外旋)と週2回のリズミックスタビリゼーションの練習にこだわる傾向にあります。他にも、複合上半身ストレングスエクササイズ(特に水平プルと垂直プルエクササイズ)や、減速キャッチ、コアスタビリティドリル、下半身ストレングスエクササイズ、軟部組織アプローチ、モビリティードリルなどを含めた、他のすべてのプログラムと併用しながら、腕の健全な状態を維持するために必要なことを、できる限り実施します。すでに投球量や強度、頻度を増やしているのに、それ以上どうしてバンドを使った回旋腱板エクササイズをプログラムに加える必要があるでしょうか? 回旋腱板はもう酷使されているのです。血液循環を良くする目的で、かつ、とてつもなく軽い負荷でない限り、日課としてチューブサーキットを行って回旋腱板をさらにダメにする必要はないのです。 多くの投手達(野手も同様に)は、シーズン中に腕を酷使していると私は確信します。それは、投球時の腕にかかる遠心性の莫大な負荷に充分な理解がないまま、次から次へとプログラムを追加するからです。シーズン中に、回旋腱板エクササイズのおかげで健全を保てると主張するコーチに、私は反論するでしょう。それは、オフシーズンに終わらせることができなかった単なる準備不足だろうと。 2.私は、シーズン中にはあまりメディスンボールトレーニングを使用しません。 シーズン中の選手は、すでにバッティングや投球、スプリンティングなどを行うことでスペクトラムの「絶対速度」の活動領域に限りなく近づいているはずだからです。もし、「不本意」で過剰なパワートレーニングが行われているならば、むしろスペクトラムの反対端に留まっておいた方が良いと思います。オフシーズンならば、スペクトラムの中間域により多くの時間を費やすことができるでしょうが。 先ほどメディスンボールは、あまり利用しないと言いましたが、シーズン中に若干使用することもあります。たいてい、選手のスイングや投球とは左右逆に行います。つまり、右打ちの選手は左手でメディスンボールを投げることになります。また、オーバーヘッド練習も軽く行います。これは、この可動域内でのパワーを維持するためです(それに伴った胸椎と肩の屈曲モビリティーも行います)。 3.私の担当する選手には、長距離ランは行いません。すでに仕上がっているのですから、わざわざ一からやり直す必要はないのです。この時点では、私は単に選手に磨きをかける仕上げ作業に徹します: 野球選手に長距離ランをさせるコーチがいたならば、それは手抜きまたは無知(もしくは両者)以外のなにものでもないでしょう。 4.シーズン中のトレーニングは、まさに“less is more”(控えめの方がより効果的)と“quality over quantity”(量より質)という言葉がぴったりです。シーズン中のストレングストレーニングのプログラムが35−40分以上続くことはまれで、だいたい10−14セットで十分です。ただし、フォームローラーを使用したり、モビリティードリルをしたりして、それよりも長い時間ジムにいる選手もいます。 5.シーズン中のストレングストレーニングのプログラムとして、第1週目には量と強度は低めに設定しますが、その後上げていきます。初期の筋肉痛を抑えるためにも、私は通常量と強度をプログラムの第1週目では低くしておくのです。それから、エクササイズに慣れてきた頃、第2−4週(または、プログラムがやや長めに設定されていれば第2−6週)で徐々に上げていきます。 6.ストレングスエクササイズの選択種目は、シーズン中に変えますが、基本は同じです。総合的な複数関節のストレングスエクササイズを多く取り入れるという基本はそのままですが、いくつかの修正は加えます。 シーズン中には、私は垂直プル(プルアップ/チンニング)よりも水平プル(ロウ)を利用します。一年を通してかなりの量の垂直プルをしてきていますが、シーズン中は週1回、それ以上は決して行いません。なかには、難易度を上げるためにかける負荷により、肘を壊す選手もいます。肘を傷めず効果を出すには、クロスオーバー・リバース・フライをプログラムに組み込めばよいのです。

エリック・クレッシー 3058字

スプリンター、オリンピックリフター、パワーリフターのストレングス特性はどのように異なるのか?

ストレングス&コンディショニングコーチは多くの場合、アスリートの筋力、パワー、スプリント能力を養うために陸上競技スプリンター、パワーリフター、オリンピックリフターによって使われているトレーニング方法を活用する。 しかしこれらのトレーニング方法は、どのような特性を養うのだろうか? パワーリフターやオリンピックリフター、もしくはスプリンターのようなトレーニングを行うと何が起きるのだろうか?それを解明する一つの方法は、これらのアスリートのストレングス&パワー特性を評価することである。この研究は遺伝性素因のコントロールは行っていないが、トレーニングがもたらす結果についての概要を与えてくれる。 研究論文: パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター間のストレングス&パワー特性の比較、マックブライド、トリプレットーマックブライド、デービー、ニュートン、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、1999年. *** 背景 パワーを生成する能力はスポーツパフォーマンスにおける主要な要素である。パワーは一般的にストレングスよりも重要であると考えられている。ゆえにアスリートのパワーを向上するために、ストレングス&コンディショニングコーチにより様々なトレーニング方法が使われてきた。そのようなプログラムは多くの場合、スプリンターのみならず、パワーリフターやオリンピックリフターのような純粋なストレングス&パワーアスリートのトレーニングプログラムからも取り入れられている。 しかし、そのような様々なトレーニング方法からもたらされる正確な結果は不明である。トレーニング方法の成果を評価するための興味深い方法の1つは、彼らのパフォーマンスを確認するために、純粋なストレングス&パワーアスリートが持つ資質を見ることである。この点においては、スクワットは下半身の筋力を評価する一般的な方法であり、ジャンプスクワットやカウンタームーブメントジャンプは下半身のパワーの一般的指標であり、いくつかのスポーツ動作とも一致する。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、多様に異なるストレングス&パワーアスリートのグループ(パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター)において、様々な負荷でのジャンプスクワットの能力を調査したいと考えた。これはこれらのタイプのアスリートのストレングス、パワー、スピードに対する異なる必要性を評価するためであった。 研究者たちは、パワーリフターは主に高負荷、低速でのレジスタンストレーニングを行い、オリンピックリフターは主に高負荷、高速でのレジスタンストレーニングを行い、スプリンターは高負荷、低速のレジスタンストレーニングと低負荷、高速のプライオメトリックトレーニングの両方を行っていると記述している。 ストレングス、パワー、スピードの標準的な定義が使用された。ストレングスは最大力産出と定義され、パワーは最大出力(パワー=力/時間)と定義され、スピードは最大速度を算出する能力と定義されている。 研究者たちは、期待通りに、パワーリフターは低速において高レベルの力を産出し、オリンピックリフターは高速において高レベルの力を産出し、スプリンターは高速において低レベルの力を産出するのかどうかということを確認するために、3種のアスリートのグループを比較しようと試みた。これらの特性をテストするために研究者たちは、スミスマシンでのスクワットタイプのエクサイサイズ、スミスマシンジャンプスクワット、及びカウンタームーブメント垂直跳びにおける被験者のパフォーマンスを測定した。 スクワットはスミスマシンでの1RMが行われ、カウンタームーブメントジャンプでは、被験者は自重のみ、自重プラス20キロ、自重プラス40キロでのジャンプを行い、最大跳躍の高さを測定した。ジャンプスクワットでは、被験者はスミスマシンにおける1RMの30%、60%、90%にて最大跳躍の高さのジャンプを試みた。この研究では1RMの計算方法についての規定はされていなかった。 *** 何が起こったのか? 垂直跳びの結果 研究者たちは、垂直跳ではスプリンターとオリンピックリフターの両方がパワーリフターやコントロールグループよりも高くジャンプしたことを確認した。下記のグラフは、各グループのジャンプの高さの差を示している。 グラフはスプリンターが最も高くジャンプしたことを示しており、僅差でオリンピックリフターが続き、かなり離れて3位に、パワーリフター、そしてコントロールグループと続いている。沢山の人達がオリンピックリフターたちは最高の垂直跳びをする、という信念のもとにあるため、この発見は私にとってはとても興味深いものであった。 しかしながらスプリントには主に水平の力産出が必要であり、オリンピックリフトには主に垂直の力産出が必要であるという事実にもかかわらず、スプリンターのより大きな、パワー対重量の比率は、垂直方向への高さを出すことに対し効果的であったようである。自重のみでのジャンプにおいて、スプリンターは63.8W/kg、オリンピックリフターは63.0W/kg、パワーリフターは56.9W/kg、コントロールグループは49.5W/kgを産出した。 一方当然のことだが、オリンピックリフターは垂直力の産出に最も長けていた。下記のグラフは同じシリーズのジャンプにおける最大出力を示している。 *** スミスマシンスクワットの結果 スミスマシンでのスクワット型のエクササイズにおいて研究者たちは、パワーリフターは平均225.5kg(平均体重は78kg)、オリンピックリフターは平均243kg(平均体重85kg)、スプリンターは平均204.3kg(平均体重77kg)を持ち上げることを確認した。 ゆえに研究者たちが記述した通り、オリンピックリフターが最も強靱であるとするのは技術的に正しくはあるものの、オリンピックリフターは体重の2.86倍を持ち上げ、それに比べパワーリフターは体重の2.89倍の重さを持ち上げたと記述する方がより適切であろう。相対的な強さは下記のグラフに示されている。 これは、パワーリフターとオリンピックリフター両方の強度は実際にはほぼ同等か、むしろパワーリフターの方が多少上回っていたということを示唆している。更に驚くべきことは、コントロールグループ(平均体重75Kg)が1RMとして160Kgを持ち上げたこと、つまり全くレジスタンストレーニングの経験がないグループが、体重の倍の負荷を持ち上げたということである。どのようにしてこれが起こったのかは明確ではない。 *** スミスマシンジャンプスクワットの結果 ジャンプスクワットで最も高く飛んだという点では、ここでもまたスプリンターたちが最も成功したグループであり、下記のグラフに示されている通り様々な異なる負荷において(1RMの30%、1RMの60%、1RMの90%)オリンピックリフター(第二位)やパワーリフター(第三位)よりも著しく高く飛んだことが示されている。 ここでもまた、スプリントは主に水平の力産出を必要とし、オリンピックリフトは主に垂直の力産出を必要するという事実にもかかわらず、スプリンターのより大きな、パワー対重量の比率が、垂直方向への高さを出すことに対し効果的であったようである。しかしながら、下記のグラフで示されているように、ジャンプスクワットの際は、オリンピックリフターが最大の力とパワーを産出している。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター、そして通常のコントロールグループの間で、ストレングス、パワー、ジャンプパフォーマンスが著しく異なると結論付けた。 彼らはまた、パワーリフター、オリンピックリフター、スプリンターには同等な強度があり、オリンピックリフターとスプリンターは同等に高く飛ぶ能力を有し、オリンピックリフターは最も大きな出力を産出できるという結論を出した。 *** 制限要素は何か? この研究には下記のような点において制限があった。 この研究はパワーリフター、オリンピックリフター、スプリンター、コントロールグループというグループのパフォーマンス特性しか示していない。被験者たちは比較的年齢(19.8歳から24.1歳までの範囲)や身長は近いが体重に、かなりのばらつきがあった。体重が異なるアスリートたちの強度とパワーの質を比較するには正規化が有益であるため、これは完全な成功とは言いがたい。 この研究では、彼らがそれぞれ秀でているスポーツに向かう傾向にあるという、アスリートの遺伝的素因を考慮していなかった。例えば、高速での動きを行う能力の無いストレングス&パワータイプの人は、パワーリフティングを行う方向へ進む可能性があり、ゆえに、その他のタイプの人達が、パワーリフティングトレーニングが、爆発的な強度を生み出す能力に関して、真実を伝えられていないかもしれない。 パワーリフターは、必要とされる高いバーポジションにおいては、最大股関節伸展トルクが得られないということ、またオリンピックリフターやスプリンターの方がよりその動きに慣れ親しんでいるという強みがあるということから、スミスマシンスクワットにおいては著しく劣っているようである。 パワーリフターは、彼らの自然な動きが股関節主導であるということによって、膝関節主導のパターンを含むジャンプテストでテストされる際、不利になりがちであり、膝関節主導の動きに慣れているオリンピックリフターと比較してパフォーマンスが劣りがちである。ヘックスバーでのデッドリフトジャンプスクワットや最大下負荷でのデッドリフトのテストではパワーリフターに対して有利な結果となり得るであろう。 スプリンターは主に水平方向へのパワーを使用するため、条件的に不利であったようである。ゆえにテストがジャンプスクワットではなくケトルベルを含むものであったならば、彼らは著しくより良いパフォーマンスを示したかもしれない。 *** 実践的意義は何か? アスリートに対して スプリンターは高負荷、高速のトレーニング(高負荷でのスクワットやプライオメトリックなど)を使うため、これは、高速で自重での動きを含むアスレチックパフォーマンス(ジャンプやスプリントなど)に対してはおそらく高負荷、高速でのトレーニングが最適、もしくは少なくとも十分であろうということを示唆している。 外部負荷や相手を持ち上げることを必要とする力強い動きを含むパフォーマンス(ラグビーのタックル、アメリカンフットボールのブロッキング、砲丸投げ、又は丸太投げなど)のためには、出力を増加するためにオリンピックリフターが使用しているような高負荷、高速を組み合わせたトレーニングが有益かもしれない。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4646字

DVRT ハイブリットコンプレックス

4つの異なったエクササイズを、1種ずつ完結させて、エクササイズ間の休憩時間をできるだけ短くして組み合せたハイブリッドのエクササイズシリーズです。基本的な動きも、フォームを確実に、間に入れる休憩を最小限にして組み合せると、驚く程に強度を上げることができます。試してみてくださいね。

ジョシュ・ヘンキン 3:05

強い膝の3S パート1/2

8年前、膝に怪我を負ったことにより、私の身体に対する考えは劇的に変化しました。 若く健康的な時は、それを当たり前のように受け止めてしまうのかもしれません。 しかし、もしもあなたが身体の関節になんらかの問題を抱えた経験があるならば、身体をきちんと動かせて、気分良く居られることの重要性にすぐに気づくのではないでしょうか。どの関節であっても、そしてそれが軽度の怪我であっても、日々の生活における身体機能に、かなり大きな影響を与えうるのです。 最近あまり話をすることはありませんでしたが、私は人々の膝の機能を向上させることに対し、以前と変わらぬ情熱を持ち続けています。そして過去数年間に、膝の機能を最適化することについて、何かしら有益なことを学んだと思います。 長い前置きでつまらなくしてしまうよりも、早速記事の主要部分に触れていきましょう。もしあなたが防弾仕様の膝を望んでいるなら、あなたは適切な場所にきているのです! 私は、誰かの静的姿勢のアライメントを見るだけで、その膝について多くのことを把握することができます。 多くの人が膝だけに目を奪われがちですが、私は、膝を気持ち良く動かすための基盤があるかどうかを判断するためには、膝よりも上位と下位の部分に着目する必要があると考えています。 新しいクライアントの静的姿勢を見る際に、下記の関節をすべて見るようにします: 腰椎 骨盤 股関節 膝 足首と足部 全身は継ぎ目のない、結合した単位として活動しているので、膝の機能は膝の上位と下位の部位の問題により大きく影響を受けます。 アラインメントを向上させるため、私は、健康な膝の”3S”というアイデアを使ってみたりしています。その3Sとは: 矢状面で積み重ね (STACK) 前額面で滑らせ (SLIDE)、そして 水平面で回旋する (SWIVEL)、ことです。 それではこの3つについて、もう少し深く触れていきましょう。 #1 – 膝を積み重ねる 足首、膝、股関節を矢状面で正しく積み重ねることが、最適な膝の機能を得るための最初のステップです。 もし、骨盤が前傾していて、股関節がかなり屈曲してしまい、膝が真っすぐに伸びない状態であれば、間違いなく膝を痛めることでしょう。 膝は馬鹿な関節だ、というのは、私が何年も使い続けている表現です。股関節と足首・足部の複合体は、膝の位置を決定づけるのみでなく、何が出来るかということも決定つけます。 このようにも考えられます: 私たちは皆この言い習わしを聞いたことがあるでしょう。「母の機嫌が悪ければ、皆の機嫌も悪い」 これを膝に例えると、「あなたの股関節と足首の機嫌が悪ければ、膝の機嫌も悪い」 股関節伸展と膝屈曲の不足 これに関しては、膝の強化エクササイズに関するブログでも既に広範囲に記述をしましたが、ここでもう一度まとめてみましょう。 目標は、骨盤、股関節、膝、足首をそれぞれの上にしっかりと積み重ねることです。 これら全ての関節で、充分な可動域と筋力、矢状面でのコントロールができればハッピーな膝を得る基礎を築くことになります。 残念なことに、何年もの間私がみてきたクライアント達は股関節の伸展の制限を克服するのに苦労してきました。私のクライアントの多くは股関節の屈曲筋と腰椎の伸展筋をそれぞれ毎日2万回呼吸するために使っているわけですから、股関節の伸展を充分に得るのは簡単なことではありません。 呼吸にフォーカスを当て、改善させるということはIFASTにおいて大きく流れをかえるものでした。 3、4年前、私たちは適切なことを沢山おこなってはいたものの、呼吸は失われたリンクとなっていたのです。 もしあなたが真剣に股関節の伸展を改善させようとしているならば、まずは呼吸の改善をしなければなりません。もし呼吸が改善できないとしても、ある程度までは漸進するかもしれませんが、最終的には、達成可能なことへの限界がきてしまいます。 座ってこの記事を書いていると、より頭の中がはっきりしてきます。この過程は段階的に進んでいきくのです。 呼吸のパターンを改善させます。そうすることにより股関節の屈曲筋や紡脊柱筋を呼吸のために使わなくてすむようになります。まずこれがによって基礎が築かれます。 股関節の屈曲筋と傍脊柱筋を、フォームローラーで弛めたり、ストレッチしたり動かします。呼吸が最適化されているために、これらもより効果的になります。 最後に臀筋、ハムストリングス、体幹の前面を強化します。 私たちは常に2と3は行っていましたが、1を最初に入れることにより、その後のアプローチのための確かな基礎を手に入れることができるようになりました。 そしてもっと重要なことは、根底にある問題を取り扱うことで、あなたが実現使用としている変化そのものをより定着させることを可能にします。 股関節の伸展は重要ですが、膝の伸展もかなり重要であるということを強調したいと思います。 膝に問題があるクライアントの評価において、膝の可動性がとても悪いケースがとても多くみられます。 膝関節では5-10度の過伸展が得られるべきであり、そのエンドフィールは柔らかくあるべきです。 膝に問題がある人達は可動域が充分にないだけでなく、エンドフィールが硬くスムーズではありません。 膝の伸展制限はいくつかの問題に起因します: 骨盤のアライメントの悪さ(過度の後傾あるいはスウェイバックの姿勢) 大腿四頭筋の筋力不足 ハムストリングスの硬さ ふくらはぎ(腓腹筋)の硬さ または スーパーフィシャルバックライン(筋膜)の硬さ もちろんそれ以外にもあるでしょうが、要点はわかっていただけたと思います。要因は沢山あり得るのです! 誰かがこのような状態を呈している、その理由は何かということを100%間違いなく知りたいと思いつつも、最終的に、私の一番のフォーカスは、その人の膝の伸展を何としてでも取り戻す、ということにあります。 私が膝伸展に制限を持つ人を指導する場合、下記の様式を導入したいと思います:

マイク・ロバートソン 2946字

強い膝の3S パート2/2

#2 – 膝を滑らせる 矢状面での動きを習得してしまえば、次に前額面での動きに進む必要があります。ある人の膝のアライメントを横から見たときには良くて、正面から見ると明らかに前額面、水平面での機能不全があるというケースがよくあります。 これは以前IFASTで私達が指導していたクライアントの写真です。 この若い男性は「ハムストリングスの固さと成長期痛」があると有名な膝専門医に診断されましたが、あくまでその評価は膝の関節にのみ焦点を当てたものでした。 ハムストリングスの固さと成長期痛? もし一歩下がって大局的に見ることができれば、彼には、私達が取り扱い、改善することができるアライメントの問題があることに、皆さん同意されることと思います。 前額面を見る際には、骨盤と股関節の真下に膝関節がくるようにすることがゴールになります。 もしそれが前額面だけの問題であれば、股関節外転筋群と内転筋群のバランスをとることができれば充分でしょう。簡単に説明すると、前額面での機能障害は2つのカテゴリーのうちのどちらかに当てはまります。 外転筋群の硬さ/短縮、内転筋群の伸張/弱さ 内転筋群の硬さ/短縮、外転筋群の伸張/弱さ 例えば、あなたの左の股関節の外側が硬いと、左の股関節の外転筋群が身体を右側に押し出します。そして、これが左股関節の内転筋群を伸張させます。右側では逆のことが起こります。 この問題に気づけば、私達のスタンダードなツールボックスが 適切な筋肉の状態を取り戻す為の基礎(軟部組織ワーク、活性化ドリルなど)を築くことを助けてくれます。 しかし、重りを持つような、楽しいことを実際にする場合に何が起こるでしょうか? 自然な考えとしてはもっと片脚での運動を行う、ですよね? 何といっても、片脚での運動は前額面と水平面での発達を最大化してくれますよね? これは正しいことなのですが、そして、それがまさしく何故私がそこからスタートしない理由なのです。 片脚の運動は安定性の必要性を最大化します。支持基底面が大変小さいために、身体は安定性を自ら“作りだす”ことを要求されるのです。 しかし、もしあなたがその安定性を持っていない、もしくはたった今習得したばかりであるとすれば、片脚での環境は難しすぎるか早すぎるというケースになるでしょう。最適な安定化のパターンを使う代わりに、古くて効果的ではない元のパターンに頼ってしまうことでしょう。 私は、進む段階のスピードを落として、正しい動きができるようになることを確かめたいと思います。 あなたが前額面での機能不全に取り組むにあたり、両脚平行の姿勢から始めることは助けになるでしょう。 両脚スクワット 両脚でのRDL 両脚でのデッドリフト 両脚の姿勢で効果的に両方の脚を使い始めることができれば、片脚での安定とコントロールに段階的にチャレンジしていきます。 片脚での運動にすぐさま飛び移るのは、大惨事の元です。自身の身体に対する安定とコントロールの能力を越えてしまい、思っているような効果は得られないでしょう。 前額面での機能不全に取り組む際には、片脚トレーニングにもっと段階的でスムーズに移行する為に下記の図表をガイドラインとして使用してください。 両脚スタンス・腰幅のスプリットスタンス・インラインのスプリットスタンス・片脚 #3 – 大腿骨と脛骨を回旋する 最後にはなってしまいましたが、大腿骨と頸骨のアライメントを整えられるように、そしてそれらが股関節に対してニュートラルであるように、私たちは大腿骨と頸骨を回旋する必要があります。 これは、ポスチュラルリストレーションインスティチュート(PRI)のインピンジメントと不安定性の講習を受講を終えたときに「なるほど」と思ったことです。 PRIの方々は膝関節を通じてアライメントを最適化することに重点を置いていますが、彼らの考えは、半月板や膝蓋大腿骨間の問題について多くのことを説明できると思います。 このように考えてみてください: 頸骨に対する大腿骨の捻れ 同側の脚において、もし大腿骨が内旋し、頸骨が外旋すれば、膝に対して大きなトルクがかかります。 膝には多少の回旋の容量はありますが、立位の状態で回旋するべきではありません。 頸骨大腿骨関節にトルクが発生すれば、半月板の怪我の受傷発生率は高まります。これを裏付けるリサーチ資料は持っていませんが、常識的に考えれば分かることだと思います。 ですから、私たちは頸骨と大腿骨のアラインメントを揃えるため、頸骨と大腿骨を(相対的に)回旋させる必要があります。 大腿骨と腓骨のアラインメントが揃ったら、次のゴールは、これらを股関節に対してニュートラルにすることです。 膝蓋骨を見ると、大腿骨の滑車溝に固定されていることが分かります。”膝蓋骨のトラッキング”について聞いたことがある内容に関わらず、私たちの多くが、膝のアラインメントのずれを見た時に、大腿骨の位置を戻すことのみに重点を起きがちなのではないでしょうか。 膝蓋大腿骨関節を評価する際には、大腿骨の位置と膝蓋骨の位置の間に、逆の関係性がある事に注意しなくてはいけません。 正常な膝のアライメント 対 膝の外側の “トラッキング” 大腿骨を内旋すると、膝蓋骨は自然に外側に"追従=トラッキング"します。その逆もまたしかり。大腿骨を外旋すると膝蓋骨は内側に追従します。 股関節に対して大腿骨を真っ直ぐにすることが重要であるとされるのはこのためです。そうしなければ、あなたはいずれ膝蓋大腿骨関節の問題に悩まされることになるでしょう。 残念ながら、具体的なアドバイスの紹介となると、一つのブログ記事の範疇を越えてしまいます。今回は、大腿骨と脛骨の回旋によって、お互いのアライメントを整えそれを股関節に対してニュートラルにできれば、膝を長期に渡りハッピーにできる、とだけ言っておきましょう。 まとめ 皆さんのゴールが、競技場を制圧する、高重量のスクワットやデッドリフトを行う、あるいは、ただ単に痛みなく身体を動かす等、どのようなものであったとしても、3Sアプローチに沿うことは、あなたの膝の機能を最大化させてくれるでしょう。

マイク・ロバートソン 2741字

シングルレッグ ストレングストレーニング

私は、どのようなストレングストレーニングを選手に行っているのかという質問を受けることが多々あります。私は決まって、”選手が必要なこと”と答えています。私は、BFSやハスカーパワーのような特定のトレーニングプログラムを導入していません。ストレングストレーニングに必要とされることを行っているのです。しかし、私には哲学があり、そしてその哲学を長い間信じてきました。 ストレングストレーニングとは何か? ストレングストレーニングとは、私が選手の総合的な安定性と力発揮の向上を図るプロセスです。数字に対するこだわりは一切持ったことはありません。つまり、仮に選手が130キロや180キロでのスクワットができなかったとしても、私は少しも気にしないのです。私が選手に望んでいることは、速く、正しく力を発揮することができる能力です。また、片脚で正しく力を発揮することも、同様に選手に期待していることです。 フットボールの監督をしていたとき、私のチームはパワーリフティングの大会に出て、勝つようなことはありませんでした。しかし、私のチームはいつでも速く、強く、安全でした。もし私のチームをオリンピックリフティングの(重量挙げ)大会に出場させていたら、彼らは非常に良い成績を残していたことでしょう。チームに、私は筋力の重要性を強調していました。筋力はパワーに繋げることができるからです。 ランジとステップアップの二つは、私が常に行ってきた主要なトレーニング種目です。そして、シングルレッグスクワットも多く取り入れてきました。これらの種目は、伝統的なスクワットだけを行う場合よりも、より多くの運動能力要素が試される運動であると信じています。誤解をしないでください。片脚の種目程ではないというだけで、私も伝統的なスクワットは大好きで実行しているのです。シングルレッグスクワットや、ランジや、ステップアップといったエクササイズを通じ、選手達が身体の動かし方について多くを学んでいく様子を見てきました。選手達がエクササイズを正しく、より力強くこなすために、重心の調節の仕方を理解していく姿を見てきました。不安定で弱かった選手が、ステップアップとシングルレッグスクワットを行うことで安定感と強さを増していく現場を目にしてきました。安定性を取り戻し、崩れなくなった膝を見ました。高強度で片脚の種目を行っている際、足がアーチを保持している様を見てきました。選手達はこれらの運動種目から非常に多くのことを学び、それが彼らのフィールド、コート、トラックでのパフォーマンスへとつながっている、というのが私の個人的な見解です。 片脚の種目はストレングストレーニングだけでなく、ウォームアップとアクティベーションにもよく取り入れています。片脚でのリープ、ホップ、バランスの運動が気にいっています。上記で述べたように、選手達には片脚でのバランスの維持と、悪い体勢の修正方法を学習することが求められます。私がよく使うルーティーンをご紹介しましょう。 ウォームアップ: 片脚立ちでの遊脚による複数方角へのリーチ:股関節の安定性と筋力を向上させる素晴らしいエクササイズです。足と足首は固有受容的活動を活発に行わざるを得なくなります。通常、各脚20-30秒を2セットずつ行います。 側方へのリープと保持:選手は45センチ~68センチ程リープし、着地後2秒間停止します。側方へリープするため、選手が利用できるバランスツールは足全体ではなく、足幅のみに限られます。これにより股関節(及び股関節による膝の制御力)、足、そして足首に負荷を与えることができます。内転筋とコアへの刺激はいうまでもありません。通常、まず私は各方向に6-8回を1セット行い、次のセットでは着地ごとにシングルレッグスクワットを加えた側方へのリープを行います。 パワー: パワースキップからのランジ保持:選手はパワースキップを行い、ホップする脚の着地後、ランジを行い、低い体勢を1-2秒程度保持します。その後、この低いランジのスタンスから力強く次のパワースキップへ移行します。上半身と下半身の良い姿勢が大切です。選手は身体の正しい減速の仕方を学習します。この運動を、私は選手に各サイド5回ずつ、1-2セット行わせます。 ベンチブラスト:選手は、30センチのボックス上でパワーステップアップを行います。これは、上にある脚(ボックスに着いている方の脚)で爆発的に踏切るということです。この種目は速く行われ、悪い動作が確認しにくいので、私はジャンプ(正しいジャンプ)全体の動きを通じ、身体の位置に着目するようにしています。選手は、踏切の後、足、股関節のアライメントを膝に合わせることを学習します。片脚につき、5-8回、2-3セット行います。 アイススケーターズ:選手は爆発的に右脚で左方向にリープし、左脚で着地します。シングルレッグスクワットの体勢で着地したら、交差ポステリアチェーンを予備伸張するため、右手及び右腕を身体の対角線上に伸ばします。そして、爆発的に右に戻ります。股関節のパワーと安定性を高める素晴らしいエクササイズです。各方向に5回、2-3セット行います。 ストレングス: ランジ:私は全方向へのランジを好んで行います。これらは、優れた筋力向上効果があり、バランスのトレーニングとしても素晴らしいエクササイズです。通常、片脚につき、5-8回、2-4セット行います。 ステップアップ:このエクササイズは常に私のお気に入りです。選手が足の回内を上手にコントロールできない場合は、足のアーチを保つためにフィードバックを少し与えつつステップアップを行わせます。ステップアップは足全体と股関節の筋力、股関節の位置の制御に適した素晴らしいエクササイズです。片脚につき、5-6回、2-4セットずつ行います。 これらは私のお気に入りの片脚エクササイズのいくつかの例です。一回のワークアウトでこれら全てを行うことは決してありません。冒頭で説明したように、私は必要とされていることを行います。片脚でのエクササイズの難易度が高すぎる場合は、徐々に慣らしていくようにします。 片脚のエクササイズを楽しみながら取り組み、そしてテクニックと安定性に意識を集中させましょう。

リー・タフト 2662字

最適な可動域。大きければ大きいほど良いというわけではない!

このブログは、私の良き友人マイクとの会話からの提供によるものです。そのすべては、筋肉の最適な可動域に関することです。それは、下記の文章から生じました: 遠心性収縮的負荷を掛けられた筋肉は、弱い収縮から始まり、次第に強くなっていき、求心性収縮的負荷を掛けられた筋肉は、強い収縮から始まり、収縮が続くにつれ、弱くなっていく。 以前は、あまり考えたこともなかったのですが、長さと張力の関係を考慮に入れる際、とても道理にかなっています。筋肉の長さが長すぎたり短すぎたりする際、筋肉は力発生に苦戦することでしょう。筋肉は、これら両方のポジションで弱くなります。クロスブリッジの付着部には、最適な長さがあります。これは、力発生と省エネルギーの両方に当てはまるでしょう。クロスブリッジ分離過多はまた、ATPを分割し熱として消散する際、熱力学的により高くつく状況を引き起こします。 私は、弾性エネルギーもまた、最適な可動域を持っていると信じています。複数の研究が、ばね剛性(エネルギーを返還する能力)は、最適な関節の角度もしくは、可動域によってもたらされていることを明らかにしています。この可動域を超えることは、エネルギーを抑制、もしくは吸収し、組織の粘弾性を介して、熱として再び消散してしまいます。異なる組織は、様々なレベルの剛性と適合性を持ち、異なる可動域は、遠心性の筋紡錘剛性制御を介して、剛性を運動制御するために、私達の神経的意図(着地またはジャンプの反復)のように、これらの異なる特徴を利用しています。 私達が繰り返しジャンプしたいときのジャンプ方法をみてみると、最終的に着地する時に比較して、より小さな関節可動域を用いているのがみられます。最後に着地する際は、床反力を再利用しようとはせず、床反力を吸収するために膝を深く曲げます。これは、トレーニングプログラムの作成における、高さ、可動域、反復の把握に影響を与えています。 イコンセントリック=遠心性求心性収縮(異なる平面で発生する遠心性・求心性筋収縮の両方を含む)の筋活動は、最適なクロスブリッジの付着部にも関与しているかもしれません。筋肉が全三平面にわたって伸長されるのであれば、力発生と弾性エネルギーのリコイルの観点から、最適な可動域を超えてしまうという状況を引き起こすかもしれません。ひとつの面における求心性収縮を通して、組織の伸長を軽減することによって、私達は最適な可動域を保持しているのかもしれません。これは、最大の力発生よりもエネルギー返還と省エネルギーが重要で、より最大下の状況において発生するのかもしれません。私は歩行が、この良い例であると感じます。最大の力発生は、関節可動域を通して、変換が困難な過度の負荷を作り出すことによって軽減されているのかもしれませんが。 、これによってトレーニング方法について考えさせられることになりました。多くの場合、私達はトレーニングにおいて、最大の可動域を探していますが、最適な可動域により目を向けるべきなのかもしれません。技能を通して可動域を制御できるスポーツに、より影響を与えるかもしれません。ランニングが良い例です。ストライドの長さの制御が、私達を最適な関節可動域内に保つでしょう。また、私達は、最適は個人によって決定されるということを覚えておなかければなりません。これは組織の能力、四肢長、スピード能力、競技種目によっても影響されるでしょう。ランニングの中でも異なる種目、例えば400mでは、オールアウトパワー、パワー持久力、持久力の必要性のバランスを取るのと同時に、マラソンとは異なる関節可動域が必要になるでしょう。最適を超えることは、動作の次の局面(遠心性収縮から求心性収縮、もしくはその反対)を始める能力が危うくなるということを意味しています。減速と加速は、ランニングの不可欠な要素(ポーズランニング法のイデオロギーとは異なる)だと考えますが、私達は、過剰な減速と加速の発生を軽減させ、省エネルギーを向上させることができます。 テニスのゲームについてみてみると、私達の身体を巧みに操作して好位置につける時、より簡単に力強いショットを打つことができます。好位置を外れている際、可動域は ボールに手を伸ばすまで拡大される必要があるかもしれません。遠心性収縮から求心性収縮への変換は最適下で、ショットのパワーに影響を及ぼします。テニスプレイヤーは、多くの場合、限界可動域で守備的なバックハンド・ショットを打つでしょう。それは、勝者となるためのショットではなく、相手コートにボールを返すことを目的としています!遠心性収縮から求心性収縮へのアモチゼーション(償却)期の増加は、クロスブリッジ付着部を弱らせ、エネルギー返還をも減少させます。ボールを打とうと手を伸ばす際、限界可動域に近づけば近づくほど、そして限界可動域を維持すればするほど、負荷運動で得たエネルギーを減少させるアモチゼーション期が長くなってしまします。 これは、非常に理論的な記事であり、主に私の見解ですが、クライアントのトレーニングのために、私達が可動域/高さを設定する際の糧になるかもしれません。 全ての状況において、多ければ多いほど良いというわけではないのです!

ベン・コーマック 2233字

野球の遠投プログラムについて理解すべきこと パート1/2

遠投プログラムは過去数年間で、野球のトレーニングにおけるもっとも人気のある方法の一つになりました。ネット上の全ての人達が、球速の向上を保証する遠投プログラムを持っているようにみえます。我々の投球数制限プログラムや医学的知見が向上しているにも関わらず、若年層における投球傷害数は警告すべき割合で増加し続けています。このことは、積極的な遠投プログラムが、傷害の発生率の増加に関係があるかもしれないという疑問を投げかけます。遠投プログラムを統合していくには、多くの異なった方法があるので、この疑問も公平であるかもしれないし不公平なのかもしれません。 この記事の意図は、遠投が適切、安全、効果的、またはそれ以外のなにかであるかどうかについて意見を述べることではありません。特別な投球プログラムや距離を奨励することが目的でもありません。むしろ、トレーニングプログラムを始める前に、遠投が身体に及ぼす影響についてしっかりと理解をしてほしいだけなのです。あなたのニーズに合致した最適なプログラムを実施するためには、いくつかの点を理解する必要があります。 遠投は重要である まずはこの点“遠投は重要”について考えてみましょう。遠投は、ほぼすべての野球のトレーニングプログラムとして、何らかの形で一般的に見られるため、この点は議論の余地はないと考えます。遠投が好きである、あるいは、好きではないと言うことは、ピザが好きである、あるいは、好きではないということのようなものです。ドミノピザとボストンの北端エリアのピザには、かなり大きな違いがあります。同じことが遠投にも言えます。遠投の定義については、おそらく討論する余地があるでしょう。 遠投とは120フィートであると考える人もいれば、300フィート以上であるという人もいます。これはとても大きな違いです。答えは分かりませんが、投げる距離が遠くなれば変わってくることがあります。このことについても理解が必要になります。 遠投は重要ではありますが、しばしば大げさに捉えられがちです。遠投を提唱している人は、大リーグのどの選手がトレーニングのなかで長距離遠投プログラムを行っているかを興奮ぎみに伝えるでしょう。しかし、プロ野球選手のなかで、トレーニングルーティーンに遠投を多く取り入れていない選手が大勢いることも認識してください。私は、メジャーリーガーで120-150フィート以上の投球をそれほどたくさん行わないという選手たちを知っています。また、私が話をした寒い気候の地域に住んでいる選手の多くは、オフシーズンの間はバスケットボールコートのような室内練習場で投球をするので、投げられる距離に限界があります。 多くの患者やクライアントから、遠投をしている素晴らしいメジャーリーグ選手のことを聞いています。このことは真実である一方で、遠投をしていない選手が多くいることも理解して欲しくて、このことを取り上げているだけです。 遠投は腕を鍛え、力を生み出したり、分散したりすることに慣れさせるためには重要であると考えます。しかし、遠投が身体に及ぼす影響を本当に正確に理解するためには、下記のポイントの多くを理解する必要があります。 遠投は腕の強度を向上させない 遠投が腕の強度を発達させるという概念がどこから来たのかは定かではありませんが、これは本当によく聞きくことです。これはただ単に何となく使われている意味のない言い回しかもしれませんし、選手に関連した安易な考えであるかもしれません。しかし、明確に詳細に言うと、私は、実際には投球は腕の強度を低下させると考えています。 事実、私は数年前に、綿密に作成されたストレングス・コンディショニングプログラムを行っているメジャーリーグの投手でも、シーズンを通して3-4%の回旋腱板の筋力低下が見られるという論文を発表しました。1試合を通しても、11-18%の腕の筋力低下が見られるということも示されています。 そのため、投球は腕の強度をあげることはない、といっても問題ないと考えています。むしろ、投球は肩の疲労を招くと考えられるため、実際には腕の強度にとって逆効果になるかもしれません。遠投は、筋持久力や腕を振るスピードなどといったものを向上させるかもしれません。しかし、スピードや持久力を鍛えることと、過負荷がかかることや疲労を招くことの間には、紙一重の違いしかありません。腕に疲労が蓄積すれば、腕の強度は上がるのではなく、下がりますし、傷害を引き起こすリスクがあります。 若年層の野球選手は、遠投をすることで球速が上がると聞いていて、遠投をすればするほど、強く投げることができると思い込んでいるため、これは理解すべき重要なコンセプトになります。この思い込みは通年を通して投げすぎてしまう結果に繋がります。現在、若年層の野球選手は、シーズン中もオフシーズン中も、試合で投球し、遠投もしています。1年のなかで8カ月以上ピッチングをすると、傷害を起こすリスクが5倍以上になるということを覚えておいてください。 遠投の効果はあります。しかし、遠投することで腕を強化することはできません。強化のためには、投球をしない時間と、適切な腕のケア、ストレングス・コンディショニングプログラムが必要になります。 リハビリの世界では、遠投プログラムは120フィートで終わりにするとは言っていない 私は、この件について責任を負っていきます。遠投プログラムの提唱者からよく聞かれる議論の一つに、120フィートの遠投は十分な距離ではないということがあります。同様の遠投プログラムを、健康な選手にも、傷害からの復帰を目指している選手にも適用している野球界を、多くの人々が非難していることを聞いたり、読んだりしています。そこでは、公表されている投球のリハビリプログラムでは、120フィートまでであるということを引用しています。 これは実際には誤解であり、私の経験からお話します。ジェームス・アンドリュー博士が使用し、もっとも幅広く利用されている遠投プログラムの開発を実際に手伝い、これらのプログラムを整形外科・スポーツ理学療法誌に10年以上前に掲載しました。原稿を実際に読んでいただければ、投球プログラムは120フィートでやめるべきだとは言っていないことが分かると思います。事実、そのプログラムでは180フィート以上まで行っています。 我々は、マウンド上で投げ始める前の基準として、120フィート以上投げる必要があると言及しているだけなのです。120フィート以上投げたい(あるいは、投げるべき)選手もいるでしょうが、そうでない選手もいるでしょう。ここでのポイントは、120フィート以上投げなければいけないということではありません。しかし、マウンド上での投球に進むためには、120フィートの遠投というのは、基準の一つになるということです。 今では、これらの公表されている遠投プログラムが完璧でないとはっきりと認めていますし、私自身も自分が書いたこのプログラムにすべて沿っているわけではありません。すべての人に適応できるプログラムを作ることは、とても大変だということをお分かりいただけると思います。リハビリの環境において、ある程度の一般化は必要なものです。このことについては、最後のポイントとして、パート2/2に話していきます。

マイク・ライノルド 3166字

野球の遠投プログラムについて理解すべきこと パート2/2

遠投によって適切なピッチングメカニズムを身につけることはできない。 遠投しているときに、常に一定のピッチングメカニクスで投げ続けることは不可能です。これは単純な物理学です。遠くに投げれば投げる程、異なった投球メカニクスを使う必要があるため、遠投をすることで、ピッチングメカニクスを改善するとなぜ言えるのか、私には分かりません。グレン・フレイセグとアメリカスポーツ医学研究所は、最近、マウンド上でのピッチングと120フィート、180フィート、最長距離での遠投との間で、投球メカニクスに変化があるかどうか解析しました。 この研究によって、遠投ではメカニクスが大きく変化することが証明されました。マウンドの上から投げるように、くだり坂で投げるわけではありません。体幹はより直立し、距離が離れればはなれるほど、前膝の屈曲は浅くなるため、実際には、のぼり坂で投げているようになります。実際に、胸郭の角度はピッチングと最長遠投とでは4倍も違います。 直立すればするほど、体幹と前側の投球への関わりが変化し、リリースポイントが劇的に変化するため、胸郭と前膝の角度は、投球と密接な関わりがあります。 また、興味深いことに、遠くに投げようとすればするほど、前足の接地はより外に開きます。基本的には、遠投をするときは、前足が身体をほんの少しクロスするように接地する(これが普通)のではなく、よりライン上に接地するようになります。これは、最長距離にボールを投げるためには、回旋動作はあまり必要がないということだと、私は理解しています。基本的に、遠投するときは、メリーゴーランドのようではなく、観覧車のように投げるのです。遠投では、ピッチングのときとは異なる筋肉動員パターンとモータープランニングを使用します。 モーターコントロール、神経筋肉プランニング、トレーニングの特異性に関する我々の最新の研究をすべて考慮すると、遠投は投球メカニクスを改善することはないということが言えるようです。 繰り返し何度も同じメカニクスで投球できる能力は、エリートレベルの投手に最も求められている能力であり、その能力がエリートとその他の選手の分かれ道でもあることを経験から知っています。上記に書いた最初のポイントを忘れないでほしいのですが、遠投は重要です。しかし、それはメカニクスを改善するから、あるいは、何度も遠投することを奨励するからではありません。 遠くに投げれば投げるほど、身体には多くのストレスがかかります。 我々の遠投プログラムが独自に開発されたとき、最初に解決すべき問題点の一つは、ある距離から投げたとき、身体にはどれだけのストレスがかかるのかということでした。上記の情報から、身体に運動学的に変化が起こることは分かっていましたが、身体にかかる運動力はどうでしょうか。フレイセグ博士は、上記に述べている研究の中で、身体にかかる力も計測していました。 180フィートの遠投では、肘に内反トルク、肩に内旋トルクがより大きくかかります。これら2種類の力は、特にトミージョン傷害と呼ばれる、肩や肘の傷害を本質的に引き起こします。 私達は、ピッチングをするということは、それぞれの投球で、身体には最大に近いストレスがかかるということを知っています。180フィート、あるいはそれ以上の遠投は、マウンド上での投球よりも多くのストレスがかかります。これは、怪我をした選手が、マウンド上で投球を始めるための基準を、たった120フィートに設定している主な理由の一つです。120フィートでは、ピッチング時と同等の力が計測されます。そのため、120フィートまで投げることができれば、技術的には、マウンド上での投球のストレスに対処することができます。 アスリートは、180フィート以上の遠投時にかかるストレスを対処できます。しかし、どれだけの距離まで、そして、結果はどうなるのか?私は、フレイセグ博士・アンドリュー博士とこの概念について討論しました。ここで使われた比喩はむしろ不安感を抱かせるものです。-あなたは、1日で1パックの煙草を吸うリトルリーグの子供たちのグループを観察します。リトルリーグ所属中は、誰も肺がんを患わないようですが、ある日、誰か発病するかもしれません。長期的な視点で、我々は彼らに何をしているのでしょうか? リトルリーグとUSA ベースボールによって開発された投球数カウントガイドラインは、オーバーユースを避けることによって、傷害を予防するよう設定されているということを理解してください。180フィート以上の遠投も、この考慮に含まれる必要があります。もし傷害の発生率を5分の1に減らしたいのなら、1年のうち、4か月はピッチングをしない、あるいは、遠投をしないことが必要になります。 遠投に的下時と場所はあります。しかし、遠投はピッチングと同等に扱われる必要があり、オーバーユースにつながる投球カウントとして考慮される必要があります。 最長遠投は身体に多くのストレスを与える。 私にとって、フレイセグ博士とアメリカスポーツ医学研究所の研究の中でもっとも興味深い部分は、最長遠投の解析です。ある距離から投げる時、どのように生体力学が変化するかを分析し、それに加えて、ただ単にできるだけ遠くへ投げる動きの生体力学も評価しています。 結果にはかなり驚かされました。 クローホップあり、投げるボールの角度には制限をつけず、できるだけ遠くに投げるよう指示された場合、投手の平均投球距離は264フィートでした。これは、いくつかの野球のトレーニングプログラムのなかで見られる奨励距離よりも、かなり低い数値でした。 これは、肘内反トルク、肩内旋トルクを10%増加させる結果となりました。180フィートの遠投で、肩と肘にかかるトルクの増加がみられましたが、最長距離を投げる時、これらの力は劇的に上昇したのです。 180フィートの遠投には、リスクと報酬の等式がありますが、より遠くに投球する場合、この2つの割合は、かなりリスクのほうに偏っているように見えます。 最良の遠投プログラム 私は、この記事を、“最良の遠投プログラムなどない”という一つの簡単な理由のために、この記事を書きました。すべての人が求めるものですが、現実に存在しないのです。人は皆、身体のタイプやサイズ、年齢、経験、そして、メカニクスを含め、多種多様です。すべての人に、一般的な遠投プログラムを奨励することは、あまりに単純化しすぎのように思えます。少数の人々には役に立つかもしれませんが、よりも多くの人々に、不利益を与え得るように思えます。だからこそ、私が公表したリハビリのための投球プログラムは、とても基本的に見えるのです。 遠投プログラムのより詳細なポイントを理解していただいたところで、皆さんに、最良の遠投プログラムとは、各個人を対象とする必要があるということを理解していただけることを願っています。メジャーリーガーで行っている選手がいるからという理由で、そのプログラムをするべきではありません。適切な腕のケアとストレングス・コンディショニングプログラムを行いながら、自分のためだけに特別に開発されたプログラムであるか。

マイク・ライノルド 3111字

ACL損傷予防には適切なトレーニングを パート1/2

適切なトレーニングをするだけで、前十靭帯(以下、ACL)損傷予防になるのでしょうか? 私はそう思っています。ACL損傷予防に採用しているプログラムは、実は誰にでも使うプログラムと同じなのです! ACL損傷予防プログラムといっても、目新しい概念というよりはむしろ、従来の内容を組み直したものにすぎません。このプログラムをわざわざACL損傷予防プログラムと呼ぶのは、アスレチックトレーナーや理学療法士、コーチにアピールするためなのかもしれません。いずれにしても、必要であるならば実施するべきです。そして、私達はコーチとして、すべてのアスリートと、週末のみスポーツを楽しむクライアントに対しての、優れた損傷予防のコンセプトを実践する必要性を自覚しなければなりません。 女性アスリートの方が、比較的ACLを損傷しやすいことから、女性アスリートを指導しているコーチ達は、このACL損傷予防の概念に、より大きな関心を示すでしょう。もちろん、性別を問わず損傷の可能性はありますが、実際、ACL損傷は年間10万件を超え、そのうち3万件は高校生の年代の女性だと推定されます。どちらにせよ、コーチはアスリートの性別に関係なく、これらの損傷低減のコンセプトを実践に移すべきです。とはいうものの、ACL損傷予防は、女子バスケットチームのコーチにそのプログラムを受け入れてもらう名案かもしれません。 損傷低減 VS 損傷予防 私が、意味論に捕われていると反論されるかもしれませんが、いかなる損傷においても、私たちは予防という言葉よりも、低減という言葉を使うべきだと思います。アスレチックトレーナーとして、または、スポースコーチ、ストレングス&コンディショニングコーチとして、私たちがどのようなことを行うにしても、損傷の発生を低減することはできても、損傷を予防することはできないのです。予防という言葉を使うことは、私たちに対する期待感を過度に高めてしまうことになります。 女性アスリート 女性アスリートをトレーニングする時、女性アスリートが抱える苦境を嘆くのをやめて、前向きに取り組む必要があると、私は感じています。女性アスリートに降りかかる数多くの損傷について文句を言っても、月経周期のようなことを調べても、状況をまったく改善することはできません。私たちは、性別を変えることはできませんが、下半身の強化や安定性を変えることはできます。特定の要因(Q角、顆間切痕、月経状態など)が影響していることは実感していますが、これらはすべて「私には変えられない事柄」に分類されるのです。 危険な展開 月経周期がACL断裂の確率に与える影響を研究する分野がありますね? しかし、私が疑問に思うのは、それを知ったところで私たちに何ができるのかということです。一流の選手である娘たちを、リスクの高い期間ということで、大きな試合に出場させない親が出てくるのでしょうか? ACL損傷低減の対策 ACL損傷低減は、シンプルではありますが、体系立てられています。下記のすべての事項を実施する必要があります。これは、メニューのように選ぶものではありません。どちらかというとレシピのようなものです。ケーキを焼くのに、重要な材料を忘れてしまったとしたら、どうなるでしょうか? 悲惨なことになりますね。 アクティブウォームアップ パワーとスタビリティ/エキセントリックストレングス=着地スキル ストレングス向上 -(特に片脚立ち) 方向転換のコンセプト - ストップの練習 方向転換のコンディショニング - コンディショニング育成 ファンクショナルトレーニング ファンクショナルトレーニングは、ACL損傷予防プログラムの大きなカギとなるでしょう。ファンクションおよびファンクショナルトレーニングという用語は、乱用されてはいるものの、それでもやはりコンセプトは有効です。ファンクショナルトレーニングを完全に正しく理解するために、機能解剖学をトレーニングに応用するよう考えてみましょう。機能解剖学を理解するポイントは、片脚で立ってみると全てが変化するということを実感することです。 解剖学の観点からしても、これは否定できません。 ACL損傷低減 対策1― アクティブウォームアップ 適切なウォームアップは、ACL予防プログラムの、まず最初のステップとなります。それどころか、ウォームアップをしっかり行うことは、すべてのプログラムの最初のステップです。適切なウォームアップは、片脚の強さと動的柔軟性を向上し、固有感覚を増幅します。 最良のアクティブウォームアップのエクササイズへのカギは、他の筋を伸長しながらひとつの筋を活性化することです。 ハイニーウォーク レッグサークル ウォーキング 踵をお尻に バックランジ スパイダーマン インチウォーム ACL損傷低減 対策2― スタビリティ/エキセントリックストレングスの向上 アクティブウォームアップが最初のステップだとしたら、スタビリティとエキセントリックストレングスの向上は、最も重要なステップと言えるでしょう。一般的に行われているACL予防プログラムの多くでは、主にこの部分が不足しています。たいていのプログラムは、ジャンプに重点を置きすぎており、ホッピング(片足とび)を十分行わなのです。また意味論に捕われていると反論されるかもしれませんが、ジャンプとホップは同じではないことを理解する必要があります。先ほど、片脚立ちをすると全てが変化すると言いましたが、片脚で着地することでも、あらゆることが変化します。損傷予防で重要なのは、片脚で着地する能力を身につけることです。エキセントリックストレングスは、適切に着地する能力です。下記の用語を理解しているか確認してみてください。 ジャンプ- 2本脚から2本脚。一般的なプログラムの基本ではありますが、ACL損傷のメカニズムではありません。 ホップ- 右脚から右脚または左脚から左脚。ホップはほとんどのプログラムで軽視されています。しかし、これこそがACL予防へのカギになるのです。前方と内側、外側へのホップが必要です。 バウンド- 右脚から左脚。 スキップ- 1歩毎に2回の足接地がある。

マイク・ボイル ストレングス&コンディショニング 2662字

関節過可動性

柔軟性があることは、常に素晴らしいことのようにみられています。伸びやすければ伸びやすいほど良い!!数多くのありえないようなヨガのポーズをとる能力があること。 しかし、関節過可動性には、それなりの問題がありえるのです。 私達が身体を、動作の成功のために、連鎖反応に依存している統合ユニットとして理解し始めると、ある程度の張力は利点であることをより実感します。 求心性短縮を作り出すために、身体は筋肉の遠心性伸張に依存しています。これは全て、最適な可動域と順序の中で起こる必要があります。関節過可動を持つ人において、ある収縮タイプから別のタイプへの変換を作り出すためのプリテンション(事前張力)は、最適なパラメーターで発生することはないでしょう。 歩行におけるこの連鎖反応の例は、股関節の内旋と足の回外です。遊脚が立脚を通過するとき、立脚は股関節において相対的な内旋を作り出します。この内旋は、立脚における外旋の爆発のための情報とエネルギーを作り出すでしょう。また、股関節における内旋の可動域を使いきることによって、骨盤が大腿骨を駆動することによっても起こります。これら全てが、足が回外する手助けをします。 関節過可動を持つ人において、プリテンション(事前張力)のレベルは最適ではありません。これは、固有感覚情報のための張力を得るためには、骨盤の上から脚へのドライブとそのエネルギーは、より遠くまで移動しなければならないということを意味しています。足元を見てみれば、全ての反応が上部関節で発生した頃には、回外のための適切なタイミングは過ぎてしまっています。これは、伸展に関しての股関節における足の影響もすでに逃してしまっているかもしれないということを意味しているかもしれません。これは効果的でない歩行周期不良につながります。 筋肉の弾性伸長の増大は、動作によって生成された、いかなる張力をも吸収してしまいます。 赤ん坊が歩き方を習得する際、彼らの動作にはプリテンション(事前張力)、もしくは剛性制御の欠如を見ることができます。私達が、より効果的に動けるようになるにつれ、関節可動域はより制御されるようになり、張力の内的レベルは向上します。これは、効果的なエネルギーと情報の伝達を可能にし、従って、生体力学の連鎖反応の発生を可能にします。 関節過可動性は、エネルギー消費と動作のスピードに関連性を持っています。簡単に言えば、関節や筋肉の可動域が大きければ大きいほど、ATPの分解を通して、より多くのエネルギーを熱として消散し、動作制御をするのにより多くの時間を必要とします。 硬直や現在の“コア・スタビリティー(安定性)”のトレンドが推進する安定性ではなく、動作制御として安定性をみるとすれば、過可動性は成功するものではないかもしれません。実際、硬直は、身体が、制御された動作の代わりに、安定性のために使用するものなのかもしれません。これは、機能不全なのです。過可動性関節は、無痛の動作につながる運動の正しい順序を妨げるでしょう。可動域全体を制御するために、身体の他の部位に硬直を無理強いするかもしれません。これもまた順序の妨げとなるでしょう。 私が過可動性を持つ人達を扱った経験から学んだのは、彼らには常に必然的な硬直の部位を見つかるということです。また、システム内に張力を生成する可動域内で動作を行う際、システムに対する張力のデマンドを、自ずと既成することができる体重負荷の状態で動くことが最良といえるでしょう。 大きすぎる張力、もしくは小さすぎる張力もまた、疼痛受容体とその閾値に影響を与えるでしょう。確実に、硬直部位の張力が大きければ大きいほど、痛みの神経終末の活性化閾値は低くなります。私は筋弛緩と痛覚閾値の研究についてはよく分かりませんが、最適から一歩離れることは、何らかの影響を及ぼすかもしれないと確信しています。

ベン・コーマック 1687字