広背筋:味方か敵か?パート1/2

広背筋はよく深く崇拝される筋肉のグループです。 ほとんどの男性はあの“先細りしたVの型”でムキムキに見られることに夢中です。 女性にとっては、自分の体重を動かせるという事がとても力づけられることのようで、IFASTを訪れる女性には、懸垂をできるようにゴール設定している方が非常に多いのです。 しかし、全ての広背筋はキレキレでなければいけないのでしょうか? そして、もし広背筋を取り囲む前後にある他の筋肉とバランスをとらなければどうなってしまうでしょう? それでは広背筋通りを旅して、何が学べるかみてみましょう! 広背筋の解剖学と機能 広背筋は身体の中で最も大きな筋肉グループのひとつです。付着部位のひとつは上腕骨の前面にあり(上腕の骨)、他の付着部は、胸腰筋膜を横切り、腰部、骨盤上部、そして仙骨になります。 もしインターネットで、広背筋が行うことの情報を調べてみようとすると、おそらくこのような事を見つけるのではないかと思います。 肩の内旋 – 腕/手を内側にまわす。 肩の伸展 – 頭上の位置から腕を下/後ろに降ろす。 肩の内転 – 腕を身体の中心線に向けて動かす。 しかしこれらは非常に限られた考え方です。多くの場合我々は筋肉が遠心性(筋肉の伸長時)において行うことよりも、単に求心性(筋肉の短縮時)に注目しすぎてしまっているのです。 上記のものは全てその通りなのですが、広背筋はこうでもあると言えます: 肩の外旋に抵抗、もしくはコントロールする。 肩の屈曲に抵抗、もしくはコントロールする、そして 肩の外転に抵抗、もしくはコントロールする。 しかしこの見方でさえも、広背筋が行うことを公平に表してはいません。単純に腕の動きをみるのではなく、広背筋が骨盤や腰椎に与える影響を見てみてはどうでしょうか? 広背筋の腰部や骨盤への連結により、腕を頭上にあげた時(懸垂やオーバーヘッドプレスを行うような時)、あなたは広背筋をストレッチ、もしくは伸長させています。 もしあなたが腰部や骨盤を適切にコントロールできないとしたら、何が起こるのでしょうか? もし広背筋が固すぎたら? 答えは単純:骨盤が前傾し、腰椎前弯が増加します。 皆さんお分かりでしたよね?そうだと思いましたよ! あなたは機能不全ですか? 腰椎前弯のクライアントやアスリートは、一般的に広背筋も固いですが、どうすれば、これを確実に知ることができるでしょうか? 不十分な頭上への挙上 もし手軽な評価方法を自分自身に行いたいのであれば、これを試してみてください。鏡に対して90度の角度で立ち、腕をできるだけ高く持ちあげてください。 コアや腰椎の位置を犠牲にすることなく、腕を完全に頭上に挙上(~180度)させることができるべきなのです。 もし、頭上への挙上ができたけれど、腰をそらしたり、届かせる為に肋骨下部を広げたりしたのであれば、申し訳ないですが、あなたにはやらなければならないことがありますよ。 次の質問は必然的に “どうしてこんなことになったのか?”、もしくは“こんなことになるのに、一体何をしたのか?”となります。 明らかな最初の選択はプログラミングでしょう。背面上部と広背筋を鍛えるのに多くの時間を費やしてきた殆どの人は、その部分が固くなっています。これはかなり明らかなことでしょう。 しかし、時には、広背筋は道連れになっていることで固くなるということもあります。 もしあなたが、腰椎の伸展を強調したリフト(デッドリフト、グッドモーニング、RDL、バックスクワット、など。)を非常に多くの回数行っているとしたら、広背筋はそれらの副産物として固くなり得ます。 こう考えてみてください。もしあなたが、常時骨盤前傾で、腰椎前弯が強調されているとすれば、どこかの時点で、あなたの身体はこれが普通だと判断するようになります。ですから脊柱起立筋が固く短くなるのと同じように、広背筋も固くなり得るのです。 最後に、もし呼吸が上手に出来ないのであれば(股関節屈筋群/傍脊柱筋優位の戦略を使っている)、繰り返しになりますが、常に悪い位置に置かれている副産物として広背筋は短縮位に固められてしまっているのです。 その上で20,000回の呼吸を一日に行うわけです。もし呼吸に問題があるのであれば、明らかにこれも対処をしなければならないことになります。 あなたが機能不全かどうかに対して、より良いアイデアを持つことができたところで、今度は、少し構造のバランスが大事であるということについて話をしましょう。 良い状態の広背筋が悪くなるとき 最近、肩のモビリティーがとてつもなく悪いクライアントが沢山、私のジムを訪れています。 最も明らかな例としては元IFASTのインターンであるパトリック・カスティリャ、またの名を”パット ザ ラット(広背筋のパット)です。パトリックは、どんな時でも15-20回の懸垂ができました。さらに彼は、インターンを終える頃には、ベルトなしで500パウンドのデッドリフトも行っていました。 彼は明らかに強いわけですが、彼の動きの質は、望んでいるものには、まだ何かが足りませんでした。 このインターンシップの終わりに向けて、我々は彼の肩のモビリティーを取り戻すことに、朝の時間全てを費やしました。エリック・オッターと私はアセスメントルームにこもり、彼の肩のモビリティーを再発達させる為にできることを全て行いました。 そして、テーブルの上で、彼は全てのモビリティーを取り戻しました。私達は全ての多様な肩の可動域を通して彼の肩を動かしましたが、彼は大丈夫だったのです。 しかし、彼が再び床の上に立ち、活動的に彼自身を安定させる為にコア/体幹を使い始めると、すぐに彼はそれを“失って”しまいました。 この話の教訓はこうです: 大きく、固い広背筋を埋め合わせる、強く安定した腹筋がなければ、あなたはトラブルにまきこまれる。

マイク・ロバートソン 2648字

伏臥位のシングルアームトラップレイズ(ビデオ)

肋骨に対しての肩甲骨の動きを助長しながら、僧帽筋下部のアクティベーションを促す、伏臥位でのトラップレイズ。ピッチャーのトレーニングの一部としても、とても効果的なエクササイズでありながら、間違って実行しがちなこのエクササイズの注意点をエリックが丁寧にカバーしてくれます。

エリック・クレッシー 8:56

座位での脊柱回旋アセスメント パート1/2

2013年11月9日&10日の2日間、SYNERGYで開催したITTピラティスの創始者、ジーン・サリヴァンのアセスメントWSから、椅子に座った状態での、頚椎の回旋の左右差、骨盤と脊柱全体の回旋の動きの評価をご紹介します。

ジーン・サリヴァン 8:10

広背筋:味方か敵か?パート2/2

コア/体幹の安定性を伴った肩の動きを鍛える私のお気に入りのエクササイズのひとつは、昔からあるダンベルのプルオーバーです。 ここでのゴールは肋骨を広げたり、これ以上ない位に脊柱をそらせることではありません。私達は1960年代のボディビルディングについて話している訳ではないのです(全世代通じて最も優れた体格の持ち主もいますけれどね!)。 その代わり、下に記述している二つのバリエーションは広背筋を抑制したり/もしくは伸長したりするだけでなく、コアと腰椎を通じて安定性を保ちながら行うことができます。 ダンベル、もしくはケトルベルを手に持ち、仰向けになります。もしスリーマンスポジション(3ヶ月ポジション)を行っているのであれば、股関節と膝を屈曲させて、腰部をリラックスさせましょう。もしもサポートバージョンで行っているのであれば、足をエアレックスパッドの上に置くか、せめて足を臀部にできる限り近づけましょう。 スタートポジションから、力強く息を吐き腹筋を働かせます。他の指示としては、首の後ろ側を伸ばすというのがあります。ゆっくりとケトルベル/ダンベルを頭上に降ろしていき、背中は平らで腹筋が働いているように気をつけます。 もし動きのどこかで、背中が反ったり、伸展させたりしている感じがある際には動きを止め、再びスタートポジションに戻ります。 私はこれをレップで行ったり、ストレッチされた/中間点の位置で(ビデオで示されているように)3−5秒停止するといった、よりゆったりとしたレップで行ったりします。大きな呼吸を1、2度行いスタートポジションに戻ります。 これらのエクササイズは腹筋を直撃するだけでなく、本来のオーバーヘッドのモビリティーも向上させることができます。 広背筋をトレーニングする ひとたび上記のエクササイズをマスターしたら、懸垂に戻る時です。 広背筋をムキムキにしたければ、懸垂を行わなければならないということは皆知っていることです。これは説明する必要もありませんよね。 でもこれは、私がクライアントをスタートさせる典型的な方法ではありません。 何よりもまず、私が懸垂を教える時は、さほど広背筋の発達具合は気にしておらず、僧帽筋下部の強さと発達を気にします。 非常にシンプルなことですが、私は単に顎がバーを超えるようなことはして欲しくありません ー 胸がバーに触れるようにして欲しいのです! ゴールは単に広背筋を発達させることではありません。僧帽筋下部の筋肉も発達させて、どのようにして肩甲骨を下制するのかも教えたいのです。 複雑にきこえるかもしれませんが、実はそうではないのです。 残念ながら、多くのクライアントは、僧帽筋下部が強くないために、バンドを使ってアシストする懸垂のバリエーションですら行える状態ではないので、私は更に一歩後退させた形で行います。こういった場合には、片膝立ちと両膝立ちが素晴らしいバリエーションになります。 片手の片膝立ちで行うラットプルダウンの場合、この順番でおこなうことでいくつかの利点があります。 引く角度はより肩に優しくなります。真のオーバーヘッドの動きに対して、45度の角度に保つことができれば、モビリティーは、さほどの問題ではなくなります。 “肋骨を落として”という指示だしを染み込ませ始めることが出来ます。オーバーヘッドの動きを行う時、肩にモビリティーの問題があるのでしょうか?それとも腰部/骨盤の安定性の問題でしょうか?前提として、これらの両方の問題があるのです ーですから両方改善しましょう。この指示が役に立ちます。 適切な肩甲骨の動きを教えることができます。本来の肩甲骨の下制は多くのクライアントにとって未知のコンセプトですから、45度の角度から始めることで、そのギャップの橋渡しを行います。これは “後ろに引いてから下に下げる”というような動きになります。 そして最後になりますが、より安定性があります。 両膝立ちのことを私はしばしば”コアアイランド(コアの島)”と表現します。ですから、初期段階で(片膝立ちを通じて)もう少し外的安定性をもたらすことは悪いことではありません。 ひとたび片膝立ちバージョンをマスターしたら、両膝立ちに移行しましょう。この漸進を嫌がる人もいるかもしれませんが、これはやりがいのあるエクササイズだと思います。正しくコーチングされ、指示出しをされていると仮定すれば。 ここで着目する重要なことは以下を含みます: 腰椎/骨盤がニュートラルとなるように強く息を吐くこと、 エクササイズを通して肋骨を下げること(特にトップポジションに戻る時)、そして 中間点で肩甲骨を引き寄せること。. 漸進の全行程は以下のようになります: 片手、片膝立ちのラットプルダウン 両膝立ちのラットプルダウン バンドでアシストされた懸垂 ネガティブチンニング(懸垂) 懸垂 この漸進の順番に沿って行うことで、広背筋を発達させるだけでなく、更に重要なこととして、僧帽筋下部も鍛えられます。 要約 あなたのゴールがスポーツのフィールドで獣のようになることでも、開いた口が塞がらないような肉体を手に入れることであろうと、それがまるで自分の仕事であるかのように懸垂をやりまくることであろうと、広背筋は素晴らしい筋肉グループです。 しかしながら、広背筋をチェックするために不可欠な腹筋と僧帽筋下部も同時に鍛えることなく、素晴らしい広背筋を作り上げることは、あなたをトラブルに巻き込むことになるでしょう。 どうぞ可能な限り、強く、そしてマッチョになってください。しかしその過程で、健康を維持するための細かいことも追加してみてください。そうすれば、あなたの身体はあなたに感謝してくれるでしょう!

マイク・ロバートソン 2494字

座位での脊柱回旋アセスメント パート2/2

2013年11月9日&10日の2日間、SYNERGYで開催したITTピラティスの創始者、ジーン・サリヴァンのアセスメントWSから、椅子に座った状態での、骨盤と脊柱全体の回旋の動きの評価をご紹介します。脊柱と骨盤の分化、分節間の動き、回旋の起こる場所、他の面の動きとの関係性等、様々な要素に注目しています。

ジーン・サリヴァン 7:19

ベクトルのバリエーション

より健康な結合組織は、ただ弛めるのみではなく、より弾力性のある強さを向上させる必要があります。筋膜の弾性リコイルを向上させるためには、様々に異なった角度で、様々に異なったスピードで、様々なタイプの負荷を使って動くことが不可欠です。どんな運動が効果的なのでしょうか?

トム・マイヤーズ 7:57

実用最小限のエクササイズ

先日、私がオフシーズンの間トレーニングをみている大リーグのピッチャーの一人と会話をしていたのですが、その時の話は、皆さんとシェアする価値があると思いました。彼の腕のケアのプログラムの取り組みで、長距離投球プログラムの最初の構成を考えていたとき、私たちは、どのくらい遠い距離の投球を試すべきかについて話し合いました。以前は、彼は36mから54mの間の距離しか投げませんでしたが(若い皆さん、メモを取ってください。オフシーズンは54mの投球をするだけでもメジャーリーグに行くことができるのです)、91m以上の距離を投げる流行の長距離投球プログラムを耳にしていたのです。 私の返答は、説得とは程遠く、「状況による」というものでした。私は、それぞれのピッチャーに個別化されたプログラムを作る必要性を強く感じています。私はさりげなく、彼は結構激しく投げていること、彼は既に大リーガーであるということを思い出させました。ただのプロ野球選手ではなく、実際の大リーガーだということを。 ”そうだね、しっかり投げているけど、もっと強く投げられたらどうなのかな?“というのが彼の反応だったのです!これに同意はしたものの、私が言ったのは”OK, だけど何の結果として?“ということでした。 実用最小限の製品(MVP=Minimum Viable Product) このことが、「実用最小限の製品」の概念へとつながりました。 ビジネスの世界にいる人ならば、「実用最小限の製品」という概念を聞いたことがあるはずです。実用最小限の製品とは、これだけあれば発売できるという最小限の要素を備えた製品をいいます。削ぎ落とされた製品だと考えてください。無駄のない製造業ビジネスモデルでは、この実用最小限の製品というアプローチは、大きな賭けをした後にそれが間違っていたことがわかるというのではなく、売っていく中で製品を評価して、調整するという考え方を中心とした多くの利点があります。もしあなたが、一つの製品に全てを賭けて、その製品が失敗してしまったら問題です。なぜならあなたは、その製品に少なからぬ時間、エネルギー、お金をかけてきたからです。 なんというビジネスとリハビリやパフォーマンスの世界の共通性なのでしょう!どちらも、評価して、調整するなかで成長します!これまで何回これと同じことを述べてきたでしょう(沢山です)! ビジネスの世界では、これは成功か倒産かという違いになり得ます。 私たちの世界では、これはパフォーマンスの向上か怪我の受傷かという違いになり得ます。 実用最小限のエクササイズ ここで、「実用最小限のエクササイズ」が役に立ちます。実用最小限のエクササイズは、最低限の強度で、望ましい効果を出すエクササイズです。はい、その通りです、私は今これをでっち上げてしまいました。でもこれが、私の実用最小限のエクササイズの定義の仕方なのです。 パフォーマンスを向上し、怪我を最小限に抑えるためには、最低限の強度で、望ましいトレーニング効果を出すエクササイズを選択します。 長距離投球を「エクササイズ」の例、速度を理想的な「効果」として使い、速度を速めるのに必要なだけ遠くに投げてみる、それだけです。これは常に「多ければ多い程良い」というアプローチではありません。このことを考えるとき、私は、ジェリー・セインフェルドが、「最大の強さのものを与えてくれ。どこまでいけば私が死ぬかがわかったら、そこから少しだけ弱めるんだ。」と言った、最も強力な薬物療法に関するジョークを思い出さずにはいられません。 この考え方は、重量ボールを投げることにも適用されますが、一年を通して投げることの方に、より適用されると言えるでしょう。多くの野球指導者は、オフシーズンに投球を休むことは、改善の機会を失うことだと感じています。一年に8ヶ月以上投げることにより、怪我は5倍に膨れ上がるという統計的研究があるにも関わらずです!私たちは大抵、「実用最小限のエクササイズ」よりも断然に「最大強度のエクササイズ」を選ぶ傾向にあります。 最初の長距離投球の議論に戻ると、これには2つの実施方法が考えられます。一つ目は、速度が上がることを願って(そして怪我をしないことを願って)、いきなり91mを超える長距離投球プログラムを始めることです。それに対し、実用最小限のエクササイズのアプローチでは、ゆっくりと、徐々に距離を伸ばしていき、再度評価を行います。 速度は上がりましたか?その距離で適切なメカニクスで、長距離投球を行うことはできましたか?その距離でかかるストレスに、身体が耐えることができていないサインはありますか?こういった情報によって、手遅れになる前に、段階を進めていくのか、戻るのか、あるいはこの段階で満足してこのレベルを維持するのかといった正確な調整をすることができます。 その反対が、よく見かける、若いアスリートが急に強度を上げて「最大強度」のエクササイズを行うことにより怪我をしてしまうことでしょう。リスクと報酬の明確なラインは、この時点では見極めが非常に難しいのです。 実用最小限のエクササイズは、野球だけに限らず、リハビリテーション、フィットネス、パフォーマンストレーニングの様々な場面に応用することができます。ここでの話題の文脈として使っているわけですが、私は、この実用最小限のエクササイズという概念は、私たちが実感している以上に既に使われていると思っています。デッドリフトの強度を上げようとしているとしたら、重りを急激に上げて、悪いフォームでリフティングを行うリスクや怪我をするリスクを取ろうとはしないでしょう。その代わりに、小さく、徐々に重りを増やしていき、評価をして、調整していくことでしょう。 誤解しないでください、私は追い込むなと言っているわけではありません。そうではなく、賢く、体系的な方法で追い込んで欲しいのです。 欲張って、急に最大強度のエクササイズを行うようなことはしないで下さい。途中で評価、調整できる賢いプログラムを作ってください。それが実用最小限のエクササイズなのです。

マイク・ライノルド 2638字

SLDLのリグレッション

シングルレッグのデッドリフトを行う際に、骨盤が回旋してからだが開いてしまう人を指導する際、アライメントの矯正のために効果的に使えるリグレッションの方法を、マイク・ボイルが紹介してくれます。MBSCで指導を担当するケビン・ララビーの来日セミナー開催も2014年3月1日と近づいてきましたよ。

マイク・ボイル ストレングス&コンディショニング 3:48

股関節内側のモビリゼーション

深くしゃがむことができる能力、これは私達誰もが、子どもの時に持っていた能力であるにも関わらず、その可動域を充分に使わない生活習慣が続くことで、失ってしまいがちです。関節の本来持っている自由さを取り戻すため、そして組織の弾性リコイルを取り戻すためのモビリゼーションをレニーがシェアしてくれます。

レニー・パラシーノ 6:16

なぜ動作が重要なのでしょうか?

これまでに、私は、基本原則に基づくアプローチを持つことが、私達のクライアントへのトレーニング、治療、評価の方法の礎を築きいていると言いました。私達はまた、基本原則の幾つかについても触れ、そして、それらが私達のエクササイズと評価の戦略・技法の両方を、どのように導くのかについても触れました。今回は、なぜ動作を理解することが重要なのか、なぜ私達は、筋肉を評価・トレーニングするのではなく、動作を評価・トレーニングするのかについて、もう少し話をしたいと思います。 身体に関わる仕事をする専門家として、動き方を理解することは、私達の学習項目において、最初の項目であるべきです。実際は、おそらくあなたが勉強する際に、教わることの無いものの一つかもしれません。教わるほぼすべてのことは、身体を静的に保った状態で、一部位の動作のみに基づいています。それは、私達の動き方ではありません。実のところ、歴史的にみて、人体解剖学の研究の多くは、テーブルの上に横たわっている身体、もしくは解剖用死体を対象に行われています。最後に解剖用死体が動くのを見たのはいつでしたか?もし見たのであれば、実に怖いことです。 私達は、個々の筋肉に関して多くのことを学習していますが、実際は、身体は個々の筋肉を識別せず、筋肉が集合的に作り出す動作を識別します。19世紀の時点で、有名な解剖学者、チャールズ・ビーヴォーは、このことを示唆していたのです!私達のクライアントは、ほぼ常に動いているわけですから、これは非常に重要なコンセプトです。私達が一つの関節を動かすときはいつでも、その関節周辺の多くの筋肉が大きな役割を果たしています。いくつかの筋肉は伸長し、いくつかの筋肉は収縮し、そして、またいくつかの筋肉は関節を安定させています。実際、もしあなた肩の筋肉周辺に、小さなライトが沢山ついた状態で、腕を動かすならば、そのライトの一群全体が点灯するでしょう。関節の角度の変化や異なる筋肉の強調によって、ライト点灯のパターンが変化するでしょう。実のところ、筋肉は、動作を作り出す前に、動作に反応します。筋肉は、身体に作用している重力、地面反力、推進力のような力に反応します。筋肉は、これらの力に対して、動作をコントロールし、関節を安定させ、その際、求められる動作をもたらす力を作り出します。 従って、それは、私達は動作と動作がどのように作り出されるのかについて、もう少し詳しく学ぶべきで、個々の筋肉ついてはあまり悩むべきではない、ということを意味しています。よって、“筋肉ではなく、動作を評価、トレーニングする”が、コーキネティックにおいて、根本的な基本原則の一つです。事実、私達は、努めてどのように動作が作り出されるかを、理解しようとしています。一つの関節には、同一の関節動作を作り出すために、5通りの方法があります。よって、動作を作り出すために、私達は動作をトレーニングしたいだけではなく、最も機能的で本質的な方法をトレーニングしたいのです。 動作が誤ってしまう時 身体は、筋肉ではなく動作を認識するために、動作を評価しトレーニングすることは、私達の機能の基本原則です。私達が大切にしている、もうひとつの重要な基本原則は、動作はタスクによって駆動される、ということ。 これは、意識的に、テニスボールを打つというようなタスクを遂行したい場合、その人の身体が、そのタスクを達成する方法を決定している、ということを意味しています。あなたは意識的に筋肉を活性化したり、関節を動かしたり、どの動作がどの部位から来るのかを決定したりはしません。それらすべてが、潜在意識で発生します。これは、身体は最も抵抗の少ない方法をとり、制限された筋肉や関節を動かさず、より多くの動作は、しっかりと動く関節からもたらされる必要がある、ということを意味しています。残念ながら、これは、組織へのストレスと慢性的な使い過ぎによる損傷を招く可能性があります。 クライアントが動作を遂行しているからといって、彼らにとって、その動作が良いというわけではありません。実際、多くの場合において、私達は一番大きな動作、もしくは一番重い重量を探求しています。私達は、これが達成、もしくは成功を指し示すと思っているのです。 短期間においては、これは真実なのかもしれませんが、能力以上かもしれないタスクを達成するために、身体は、変容、もしくは代償性パターンを見つける必要のある可能性が更に高い、ということも意味しています。私達のクライアントの動作の漸進方法のプロセスはまた、クライアントにとってのコントロールされていない、誤解された、障害を与える可能性がある動作を避けるために重要なのです。クライアントを上手に扱うことができれば、彼らは何度でも戻ってきますが、そうでなければ、二度と戻ってはきません。これは同様に、私達が、どのように彼らの動作を向上させるか、もしくは妨げるかにも当てはまりまるのです。 クライアントにタスクを実行してもらう際、どのように彼らがタスクを遂行するかに注目していますか?どの関節や筋肉が、十分に活用されていないか、過度に使用されていて、障害の危険性が高いかを理解しようと努めていますか?クライアントを効果的、かつ効率的に動かすための準備をしようと努めていますか?コーキネティックにおいては、これら全ての点が考慮されています。

ベン・コーマック 2300字

コンペティションのための最善なテーパリング方法とは? パート1/2

コンペティションのためのテーパリングは、最近まで研究者によりあまり研究が成されていなかったという理由からか、科学というよりもむしろ芸術のように思われている。しかし現在は、テーパリングや、様々なタイプのアスリートにおいてパフォーマンスを最大に引き出すための計画に関する論文が数多く存在している。 この総説は、テーパリングに関する研究内容を理解するための有益な枠組みを提供する。最新の情報を提供するため、この総説には最近の系統的レビューからの結論も含むこととした。 研究論文: コンペティション前のテーパリング戦略に関する科学的基本原理、ムジカ&パディラ、スポーツ&サイエンス、メディスン&サイエンス2003年 背景 テーパリングとは、重要なコンペティション前の最終週において、激しいトレーニングにより蓄積された疲労の影響を減少するために、トレーニング量やトレーニング強度、もしくはその両方を減少させることである。 正しく行えば、様々な有益な生理的変化が起こり、著しいパフォーマンスの向上へとつながる。間違った方法で行うと有害となり得る。テーパリングの際に起こる生理的変化には下記のものが含まれる。 最大酸素摂取量の増加 (e.g. Banister, 1999 and Neary, 1992) 無酸素性作業閾値の上昇 (e.g. Zarkadas, 1995) 筋パワーの増加 (Johns, 1992) 酸化酵素の増加 (Neary, 1992) 筋グリコーゲンの増加 (Neary, 1992) ヘモグロビン値とヘマトクリット値の上昇 (Mujika, 1998 and Mujika, 2000) テストステロンの増加とコルチゾールの減少 (Mujika, 2000 and Mujika, 2002) 筋力の増加 (Martin, 1994) タイプIIa筋繊維のサイズ、強度、速度、パワーの増加 (Trappe, 2001) 睡眠の質の変化 (Taylor, 1997) 気分の変化 (Raglin, 1996) これらの生理的変化のほとんどは、テーパーの有益な効果に貢献すると考えられているが、それぞれの変数要素のカテゴリーが一般的に観察されるパフォーマンスの向上にどれほど貢献しているかは明らかではない。 テーパーの3つの主なタイプは、段階的なテーパー、直線形のテーパー、急激なテーパーである。段階的なテーパーにおいては急激なトレーニング仕事量(ワークアウトの量、強度、頻度の組み合わせ)の減少が起こる。直線形のテーパーでは、トレーニング仕事量が直線的に減少する。 急激なテーパーでは、仕事量は非直線形で減少し、テーパーの早い時期に仕事量が加速的に減少する。テーパーはトレーニング仕事量の減少速度によっても定義することができる。直線形の減少、急激な減少共に、仕事量の減少速度によりさらに調節することが可能である。 *** 評論家たちは何を発見したか? トレーニング強度を維持することの重要性 持久系アスリートに対して評論家たちは、トレーニングされている選手と (e.g. Hickson, 1985) されていない選手の (e.g. Shepley, 1992) 両方において、有酸素プログラム後の最大酸素摂取量向上を維持するためにはトレーニング強度を維持することが重要であると発見した。 ストレングス&パワーアスリートに対しては、かなり少数の研究しかなされてはいないが、強度を維持することによる効果は同様なようである (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 下記のグラフは、4週間に渡る少量で高強度のテーパリングによる、上半身と下半身の強度とパワーに対する有益な効果を示している。 研究者たちは、テーパーを行う際に強度を維持(もしくは増加)する重要な役割に対する様々なメカニズムを提案した。少量で高強度でのテーパーに関するこれらの要素には、全血液量、赤血球容積、クエン酸シンターゼ活動(酸化容量の指針)、筋グリコーゲン濃度、テストステロン値が含まれる (e.g. Shepley, 1992 and Mujika, 2002)。 この点において、テストステロンが垂直跳びのような下半身の爆発的なパフォーマンスと良好な相関関係にあるということは興味深い (e.g. Cardinale and Stone, 2002)。 *** トレーニング量を減少させることの重要性 評論家たちは、持久系アスリートにおいては、テーパーを通じてトレーニング量を減少させることはトレーニング量を加減するよりもパフォーマンスの向上に対して良いということを発見した。しかし、パフォーマンスを向上させるために必要であるトレーニング量の減少度合いに関しては、多少驚きがあるかもしれない。 トレーニングを積んでいる持久走の選手 (e.g. Houmard, 1990)と自転車競技の選手 (Rietjiens, 2002) において、50−70%のトレーニング量の減少はパフォーマンスを維持もしくは多少向上させるように思われるのに対し、約85%の減少はパフォーマンスの著しい向上につながるようである (Mujika, 2002)。 しかしながら、競技選手におけるテーパリングの効果についての後の系統的レビューとメタ分析において、最適なトレーニングの減少量は実際にはこれよりもかなり少なく、テーパーを行う前の量の41−60%である、とバスキット(2007年)が発見したことは注目すべきことである。 今までに行われたこれらの研究は中レベルや低レベルのトレーニング量との比較をしておらず、脱トレーニングとの比較しか行っていないため、ストレングス&パワーアスリートにおいてのトレーニング量減少の効果を評価するのは困難である (e.g. Gibala, 1994 and Izquierdo, 2007)。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2640字

TRX 40/40チャレンジ(ビデオ)

TRX 40/40チャレンジは、TRXアトミックプッシュアップとTRXローロウという2つのエクササイズを組み合せて行います。運動強度の高い複合的な種目を、誰もが確実に成功しつつ漸進することができる、効果的なリグレッションの方法を、ダン・マクドウが指導してくれます。

TRXトレーニング 4:04