マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
動きの原則 パート1/2
身体発達やリハビリテーションを考慮した哲学、プログラム、システムには、基盤となるべき共通の真実や原則があります。 みなさんは下記の声明に同意するでしょうか…私は強く信じています。 私たちは、自分自身または他者を、その本質よりも良く発達させることはできない 私たちは、自分自身または他者を、その本質よりも安全に、より早く発達させることができる 適切な漸進は、次の段階に進む前の発達の1レベルを習得することである これらは原則ではありません。これらは環境の中で生きるための基本概念であり、必要以上に重視するものではありません。それを簡潔に深く表現した環境学者アルド・レオポルドの言葉を借りると、 「完全性、安定性、美しさを保つ傾向にあるものは正しい。そうでないものは誤りだ。」 ファンクショナルムーブメントシステム(FMS)を開発する段階で、これらの真実は10の動きの原則を通して表現されました。動作の観察、スクリーニング、評価、治療をガイドする、詳細で、多面的な行動指標です。 そう、これらの原則は明確に表現することが難しく、学ぶ側にとっては、さらに覚えるのが困難なものでした。私が今も10全てが当てはまる(本当にそうです…読み続けてください)と信じているのと同じくらいに、これらをFMSの哲学の根底に応用すれば、さらに良いものができることもわかっていました。 一貫したテーマにしぼった、動きの根本前提になるものを集めて組み立てていく中で、私はそのことを実感しました。テーマは、明確に見極められるものであり、極めて単純なものである必要がありました。アインシュタインが言ったように、「物事は可能な限り単純にするべきだが、単純すぎてはならない。」のです。 その哲学は、3つの動きの原則に抽出することができます。これらは単純ですが、私たちの理解を高め、努力を導いてくれる、身体発達における全ての側面が含まれています。 原則1は、まず動きを良くし、それからより頻繁に動くべきであると説きます。 量を気にする前に、質の最低ラインを探しましょう。良く動くことが基準であるならば、頻繁に動くことは、予測できる結果です。 原則2は、私たちがケアしている人々の動きを守り、修正し、発達させる方向に導きます。 ヒポクラテスの宣詞に従い、まずは害のないことをし、それから、自立性と持続可能性を持った方向に進めていきます。 原則3は、私たちの哲学を強化するシステムを創出することです。 標準操作手順の実行、聡明な選択の実践は、望まれる成長と発達におけるリスクとチャレンジの比率と常に合致します。 原則1を信じるならば、原則2においても原則1を尊重します。 原則2を行うためには、原則3を取り入れます。 これらは単純な声明ですが、私たちが今現在、発達をどのように見ているかを深く考えさせてくれます。 私は、サイモン・シネックの「WHYから始めよ!」が好きですが、共通のなぜを見つけることが、我々が動きを議論する際の出発点です。多様なバックグラウンドや職業を持っていても、共有している原理の中に共通性はあるのです。 常に、何をするか、どのようにおこなうかは比較的簡単に判断できますが、なぜの部分は大抵欠けているか、忘れ去られてしまっています。「なぜ?」は最も重要な問いであり、なぜに対する答えは、私たちがとる専門的な行動への感情的な結びつきとなっています。 私たちは、あまりにも長い間、共有の専門的な“なぜ”を持たないまま働いてきてしまいました。そしてそれ自体が、動きの健康に関する現在の問題の一部なのです。なぜという問いかけのないまま、動きの基本を誤って見てしまっているのです。 私たちが行っている全てのことの背景にある、このなぜという問いかけが、次の3つの原則にあります。これらの原則を学び、熟考し、吟味し、実行してください。それらができれば、解決策を見つけ、解決策を創出する道筋は整います。 動きの原則1:動きを良くし、それから頻繁に動く 原則1は、まず動きを良くし、それから、より頻繁に動くべきであると説きます。私は、これは自然が私たちに教えてくれる人生の教訓だと強く信じています。この原則は、動物や、身体的にも精神的にも最も健康な人々によく表れています。 原則1は自然の原則です。 この能力-上手く動くこと-と、許容量-頻繁に動くこと-の美しい相互作用を保つことが、毎日仕事に行く理由であることを願っています。これは正に私の原動力なのです。 現在の多くのフィットネス哲学が何と言おうとも、この原則は逆の順序で作用することはなく、守られなければならないものです。不完全な能力の上に許容量を構築することは自然ではありません。少なくとも自然界では、それは良い結果をもたらさないことが多いのです。 FMSのロゴに原則1を取り入れていることに気づかれたかもしれません。頻繁に動くの後に句読点が欠けていることは見落としではなく、洞察です。良く動くの後のピリオドは、私たちには許容量を高めていく前に、生物学的指標が必要であることを意味しています。文の最後に丸がないことは、持続性を象徴しています。 上手く動くことは、適応を可能にします。発達の機会が与えられるからです。そして頻繁に動くことで、環境との接点を保ちます。 私たちは反応するために十分なほど上手く動くべきであり、適応するために十分なほどより頻繁に動くべきです。上手く動ければ、環境的なシグナルに適切に反応することができます。それは、段階的な動きの学習に欠かせないフィードバックをセットアップします。頻繁に動くことができれば、パターンや組織が適応するための時間にわたって、十分な量を得ることができます。 私たちは、動きを、そのものとして見る必要があります-生命の最もわかりやすい指標-真の生命徴候です。発達モデルを考えると、私たちは可動性を持って生まれ、安定性を獲得していきます。そして基礎から機能的な動きへと移行していきます。非常にレベルの高いランニングやクライミング技術でさえ、原点は原初パターンにあるのです。 この驚くべきプロセスを理解することは、動きが知覚と行動を通して行われていることを理解することです。 今日の動きを見るとしたら、何が見えるでしょう?現在の見解では、基礎動作のパターンは低下しています。生まれながらに持っているべき動きの質が欠けている人々がいるのです。 1954年のクラウス・ウェーバーテストを見てみると、アメリカ人の子供の57.9%は、ヨーロッパの子供は8.7%しか失敗しない、姿勢のフィットネステストに失格しています。そのため、アメリカは過去半世紀にわたり、軍隊の基準を継続して減らす必要に迫られているのです。 この低下は、私たちの環境が、快適さと便利さに適応してきた証です。私たちは環境に適応することをやめ、代わりに私たちの必要に応じて環境を変えてきたのです。その結果はほぼうまくいっていません。環境にとっても、そして私たち自身にとっても。 数年ごとにフィットネス関連の改革はあり、学校をより健康的なものにするよう努力する動きはあるでしょう。しかし、業界としては健康問題にフィットネスによる解決策を推進しており、大衆は通常喜んでこれを受け入れているようです。 この状況をうまく表しているのが食べ物です。自然で全体性を持つ食品を食べていた時、私たちに食餌法という前置きをする必要はなく、栄養素を摂取するためにサプリに頼る必要もありませんでした。同様に、機能的という言葉を動きに加える必要はないはずなのです。 もしそれが機能的でないのなら何故行うのでしょうか? ビタミンであれ、なんとなくやっているエクササイズであれ、何かで補うことはほとんど役に立たず、もちろん持続可能な解決策ではありません。
パレオプラス:食事とエクササイズの再考 パート2/2
栄養学について私が今説明したことと同じように、エクササイズにも素晴らしいある共通した方法があります。しかし、この栄養学の方法は万人に効果があるわけではありません。なぜなら、欠乏がある場合があるからです。これらの欠乏は必ずしもホールフードが不足しているからではありません。私たちの身体は、遺伝や環境、ストレスレベル、年齢により栄養やビタミンの吸収率が異なるのです。 エクササイズも同じではありませんか? 吸収率は変化するかもしれません。ケトルベルスウィングで体重が減る人もいれば、腰を痛める人もいます。すばらしい食餌療法のようなものを達成するには、どんな手順を追えばよいでしょうか? まず、欠乏があるかどうか調べて知っておくこと。私たちのほんとんどは、何らかの欠乏が見つかることでしょう。そして、一般的な原理にできるだけ従ってみます。 約8週から10週ぐらい過ぎたら欠乏を再検査して、この一般的原理のアプローチで問題を解決できたかどうかを確認します。問題が解決されない人もいるでしょう。必須栄養素の本来の吸収を妨げる既往症や他の要因があるため、実施した栄養学の一般的原理のほかに、さらにサプリの摂取も必要かもしれません。 この定義はファンクショナルエクササイズにも当てはまります。ムーブメントスクリーニングや他の評価法を通して、機能不全という所見がある場合、ファンクショナルエクササイズの一般的原理にまず従いましょう。どのエクササイズや活動が行い難いか、だいたい見当がついていると思います。 トレーニングの後、痛みを誘発したり、顕著な筋肉痛や緊張(いつも心地よく感じる筋疲労とは比べものにならないぐらいの)が起きたりするエクササイズもあります。これらは、おそらくレッドフラッグでしょう。一連のエクササイズをやり過ぎたか、実際よりもずっとよく見えるものとのギャップを補ったか、私たちの身体がコミュニケーションを取ろうとしているのかもしれません。 残念なことに、私たちはいまだ1980年代や1990年代のエクササイズの進化の過渡期にあります。簡単に機能改善できるはずの一般的原理に従う前に、私たちはこれまでずっと、補助的なものを加えてきました。一般的原理に従っても良い結果が出なかった場合、コレクティブエクササイズ(エクササイズの補助的要素で、不足しないようにしたり、吸収を高めたりするために摂取するいわゆるプロテインシェイクやマルチビタミンに相当するもの)を使います。 残念なことに、トレーニングから何かを取り除かなくてはならないという理由から、ファンクショナルムーブメントスクリーンや他のファンクショナルムーブメントのトレーニングに“良くない”というレッテルが貼られているのが見受けられます。 何かを取り除くことには論理的な理由が2つあります。 まず、何かをひとつ除外してすべて改善したら、何かを学んだことになります。次に、何かをひとつ除外して何も変わらなければ、またひとつ何かを学んだことになります。 こうして学習していくことに何か不安を感じますか? スポーツとストレングス&コンディショニングにおける一番の不安は、どういうわけかパフォーマンスのキレが失われてしまうことだと思いますが、一体それはどのようにして? パフォーマンスに影響する環境変化が分かるぐらい頻繁に私たちはパフォーマンスをチェックしているでしょうか? パフォーマンスにまじめに取り組んでいる人たちは、ある時点でパフォーマンスが最高レベルに達するように計画しており、つまり、彼らのパフォーマンスレベルは、グラフで簡単に追うことができます。より機能的なアプローチを取り入れて、パフォーマンスレベルのグラフに大きな落ち込みが見られたら、すぐにその落ち込みに対して行動を起こし、落ち込みがほんの小さな変化に過ぎないようにすることができるでしょう。 本質的な動きと機能的に動くための基礎を取り戻すためにパフォーマンスの時間をこれに割く不安感は、頻繁にテストを行っていないことと客観性の欠如からくるのではないかと私は思います。クライアントの目標やすべての目標のために私が役に立っていないとしたら、そのことに最初に気がつくのは私でしょう。私は評価基準を体系的かつ客観的な方法で観察しています。これは例外ではなく、規範であるべきです。 特定のエクササイズの除外を正当化し、新たな機能的運動もしくはコレクティブエクササイズを導入するためのデータが揃うでしょう。そうすれば、同じ時間の中で、一般的な身体準備または特定の活動の競技スキルにおいて、実感できるかなり有意な効果がみられます。 では、タイトルにもあるパレオ・・・プラスがどこから来たか説明しましょう。パレオのような除外ダイエットのルールに従って良い結果が得られたならば、たまには幸福感を感じる食べものや便利な食べものを再び摂取したり、または楽しみにできる何かを与えるようにします。そういったものを時々紹介することもできますし、あるいはサボる日を作ることもできるでしょう。 私はできる範囲で地産食材、ホールフード、シンプルな食材、パレオ食材を食べるようにしています。もし、アイスクリームをひとカップ、ピザをひと切れ、とてもしょっぱいポテトチップなどが食べたくなったら、私はそのようなものも食べます。過剰摂取に気がついたら、少し量を減らせばよいのです。 除外ダイエットに従っていたとしても少しサボったり、少しプラスしたりすることによって、ほぼ同等の結果が達成できるのであれば、私にとってはそれで十分なのです。 このアドバイスを、みなさんのエクササイズプログラムの参考にしてみてください。患者さんをリハビリテーション後の活動的な生活スタイルに戻すために、このアドバイスを参考にしてください。(すべての怪我から学ぶことができるレッスンを学習していれば良いのですが)‘このケガを予防するために何かできることはなかっただろうか? また、せめてケガを軽くすることはできたのではないか? 場合によっては、‘ノー’とあなたは言うかもしれませんが、場合によっては、‘うーん、ケガを避けることはできなかったが、リハビリの過程において他に15もの問題が明らかになったせいで、リハビリに時間が長くかかった’と言うかもしれません。 栄養管理計画の除外の目的は、現在の自分自身を取り巻く環境に競争上の優位性を提供することだということを覚えておいてください。筋を維持し、脂肪が少なくよりエネルギーに満ちた状態に保ちたいものです。何かを除外することでこれが達成できるのであれば、それは競争上の優位とパフォーマンス向上でしょう。 機能不全である動きのパターンを改善することは、広範囲にわたる効果をもたらし、これまで行き詰まっていたパフォーマンスの評価基準の多くの要素を変化させます。見てみなければ知り得ないし、初めに検査していなければ再検査もできません。 動きとパフォーマンスの基準を設定しましょう: 補助的と思われるエクササイズや身体の一部に偏ったエクササイズは除外しましょう。 まず全体的な動きのパターンを含みましょう:走る、跳ぶ、運ぶ、登る。 身体が硬かったら、深呼吸して健康を取り戻してから、可動性をつけていきましょう。 力が弱いならば、モノを運んだり持ち上げたりしましょう。 自分自身の動きのパターンを自分のものにしましょう。始めは単純で基本的なことを。最初は負荷はなしで行い、それから負荷を加えます。常に全体性を持って。 身体と動きのパターンの変化を観察しましょう。 理にかなっていなかったり、補助的であると思われるエクササイズは除外してください。基準テストからどのぐらい改善したか見てみましょう。 自分自身のパフォーマンスを観察すれば、パフォーマンスが何であるか否か、などの無限定な発言をする言い訳はできなくなります。パフォーマンスの最初の必要条件は、参加することです。もし、今日のあなたの調子が悪ければ、参加はできないのです。 シンプルかつ基本的で、全体的なエクササイズプログラムを楽しみましょう。一度自分のものにして、楽しんでしまえば・・・こっちのものです!
パレオプラス:食事とエクササイズの再考 パート1/2
たいてい私は、栄養管理とエクササイズを並行して進めていきます。エクササイズは常に約15年ほど遅れてはいるものの、現代のエクササイズの進化と発展は、栄養管理の進化と発展を反映していると確信しています。 栄養学の潮流にたしかに波はありますが、最新動向に学び、熟読し、取り入れることが大好きです。そうは言っても、私たちの文化のなかで最も先進的な栄養アドバイザーと呼ばれる人たちは、歴史的に表現され、純粋に実践的なある一連の原理に従っていると思います。マイケル・ポーランを思い出してください。 新たな方法論がこれらの原理にしっくり合っているならば、いい線をいっているのではないかと思います。もし、身体の代謝や体内と体外の環境における基礎的な原理を無視した栄養学に走ってしまえば、いつものように“万能薬”や“特効薬”といった手段を単に推奨しているだけになります。 もっとナチュラルでホリスティックな食ベ方を観察すれば、スタイルと実体の両面においてうまくいくでしょう。単に何を食べるかではなく、どのようにどこで食べるかということ。身体器官のバランスを整えることを考慮すれば、間欠断食はおそらく何を食べるかということと同じぐらい重要です。 身体の中に取り入れるものは、生命の維持に必須であり、非常に重要ですが、どのような方法で体内に取り入れるかも同等に重要であると私は考えます。 パレオダイエットやそのライフスタイルによって支持されている除外の考え方が最近注目されていることは、良いことだと思います。除外への関心は、マーケティングをも変えました。食品は、オメガ3や繊維を含んでいることだけを表示するのではなく、ホルモンや合成添加物、着色料、グルテンおよびトランス脂肪を含んでいないことも表示しています。 1980年代と1990年代を通して、栄養学の潮流は補助食品にあったように思います。食物のリソースは十分でなく、しかも適切な食材を料理するには時間がかかり過ぎると、補助食品の摂取を正当化していたことを誰もが認めています。シェイクやビタミンパック、クレアチンなどが出てきました。 サプリには利点があるようで、リサーチも急増しました(まだ続いていますが)。食事に明らかな摂取不足や欠乏または損失がある人にサプリを処方すれば、不足分を補うわけですから、どんなサプリを摂取しても当初の段階から効果が現れることが分かっています。これは、マイナス側面を取り除いているだけで、プラス面は加味されていません。 そもそも、なぜ欠乏があったのでしょうか? 過去の考え方は、“いらないものも取り入れ、良いものも加えよう!”でしたが、最近の流れは(願わくは)、本質的なものを見つけ、不要なものは取り除くことに変わりました。残念ながらそれは、拝金主義とマーケティングに陥ってしまいました。彼らは、私たちが求めているものが何なの分かるや否や、私たちの好奇心を満たすために、安価で、決して健康的ではないものを消費させようとたくらむのです。 これに関してマイケル・ポーランは、多くの書籍の中で、シンプルな言葉で次のように素晴らしいことを言っています。 (以下私の言い換え)できる限りホールフード(丸のままの食品)や汚染されていない本質的な食べ物、地産食材を食べ、そして、自分の身体が最高と感じる様々な品質を味わいなさい。パレオの食べ方の根底にあるのは、地産食材でない、ホールフードでない、不確かな多くの食べ物を摂取しないということです。 エクササイズの行い方にも応用できる教訓はあるでしょうか? エリプティカルマシーンが導入された当時、私はすでにフィットネス&リハビリテーションの専門分野にいました。私の多くの同僚は、衝撃がほとんどなく、臀筋の活動が20パーセント向上するというマシーンに飛びつきました。衝撃にうまく反応できない人や特定の場所でテレビを観ながらエクササイズをしたいという人にとっては、素晴らしいエクササイズの方法ですが、エリプティカルマシーンはトレッドミルやステアステッパーとは異なるものを提供しました。 これらは私たちに改善をもたらしたのでしょうか? エリプティカルマシーンが発明されたからといって、私たちは優秀なランナーやハイカー、クロスカントリ―スキー選手、サイクリストを育成できたでしょうか? それとも、これまでと同様、エクササイズの補助的手段のひとつでしたか? 代謝負荷により一時的な効果はあったものの、これによって、より真っすぐ立てたり、歩き方がきれいになったり、歩行において生体力学的エラーが少なくなったのでしょうか? これらの質問に回答するのがこの論考の目的ではありませんが、問いかけてみるには良いものでしょう。 みなさんがアトキンスダイエット、サウスビーチダイエットを覚えているかどうか分かりませんが、もしくはパレオのファンかもしれませんが、これらのすべてでは、食べ物を追加していくよりも、多くの食べ物を除外することが求められます。たいていの人たちは、パレオ食を毎日楽しめます。ことを複雑にしている要因は別にあります。合成食品、過剰な穀物、低品質の乳製品、精製糖、およびエネルギーサプリメントへの依存は、すべてを複雑化させる要因を生み出してきたのです。 パレオのアプローチが、加える食べ物や除外する食べ物によって本当にためになっているのかよく分かりませんが、一般的な常識として、負荷の方が追加負荷よりも大きいことに気がつくでしょう。新しい食べ物が紹介されているのではありません。合成調味料を減らした定番の食物を多く使用しているだけです。そうですね? パンのないサンドイッチはミートサラダと呼ばれます。栄養学における最近の研究は、本物でない食べ物や習慣的間食の除外は両者とも役に立つことを示しています。 調理が必要な本質的なホールフードを摂取しつつ間欠断食を行うことで、生活の質を向上することができます。心理的なご褒美として、一日ぐらいサボる日を設けてみましょう。そうすれば、ダイエットではなく、素敵な食生活であると感じる栄養管理がうまくいくでしょう。 エクササイズもこのようなレベルに達すればいいですね?
FMSスコアで何をみるか? パート2/2
誰かがFMSについてリーサーチをする時、私たちが彼らに1つ伝えることは、研究する前にスコア0を除いてもらうということです。その人達はすでに怪我をしているのです。それを研究に加える事は何のメリットにもなりません。 研究からすでに痛みがある方達を除き、スコア1の人達が他のグループより先に故障するかどうかを調べる、これが研究というものです。 私はFMSに批判の余地がないと言っているわけではありませんが、多くの批判はスコア3がスコア2よりも優れているという推測を前提としています。そうではないのです。全く違うのです。スコアは下から上へと、一方向へのみ見るのみです。上(ハイスコア)から下(ロースコア)へではありません。FMSスコアに目を通す時ー0からです。次に見るべきなのは1です。 FMSのパターンにおけるスコア2と3の競合相違は、恐らく異なる環境において最も現れるでしょうが、0もしくは1はどんな環境でも有害となるのです(0か1のない人と比べた場合)。 身体の非対称性無しにはスコアは語れません。もしスコア1を機能不全、2を許容範囲、そして3を最適と定義した場合、私達は異なる3つの非対称性がありえます。1点と3点、1点と2点、または2点と3点の組み合わせです。 投球系のアスリートにおいては、1点と3点の非対称を多く見かけます。私達は、それが2点と3点の組み合わせになるようにコレクティブエクササイズを行いますが、日常生活動作が非対称である以上、それ以上の改善は難しくその非対称性は残ることでしょう。加えて、恐らくその選手達は人生のほとんどの長さにわたって投球動作を続けてきたはずで、いくらかの骨の変形もあるでしょう。 私は機能障害に比べれば、左右非対称性(片側が許容範囲に対し、逆側が最適、デフォルトとして両側許容範囲)はさほど問題だとは思っていません。繰り返しますが、左右非対称性を議論する必要もないのです。もし左右のランジのように左右の非対称性で1であったり、プッシュアップで1だったなら話は別ですが。 我々のFMSにおける命題は: 0点を除外すること。彼らには更なるアセスメントが必要です。 スコア1に関しては負荷をかけてはいけません。負荷をかける前に、パターンを修正するのに効果的な試みにトライしてみてください。もしスコア1を修正するのならば、非対称性を安定させるか、少なくとも安全な可動域で動かしましょう。もしスコア1を取り除けたら、いい調子です。左右差のあるアスリートをいつもみかけます。円盤投げ選手、槍投げ選手または素早く左回旋する人達には非対称性が見られるでしょう。 ここにアメリカで直面する問題があります。運動競技というものはいつにおいても多少の非対称性を作ってしまうものなのですが、アメリカでは他のどこよりも対称的な負荷を非対称のアスリートにかけてしまう傾向があります。もしあなたがジャマイカ出身のスプリンターでとてつもなく速く、リフティングをする気分でないのであればしなくて良いのです。これは他国の文化が柔軟性に欠けるとか、そういうことではありません。もしあなたに生まれ持った才能があるのであれば、誰もが皆新しいものに関して慎重になるはずですから。 左右の股関節に非対称性(ハードル選手のケース)がある場合、ディープスクワットをすればシフトするでしょう。あなたが尋ねるべき質問は:この非対称性は競技上危険であるかどうか?修正すべきか?でも負荷はかけないべきか?なぜならハードル選手を決してシフトさせない負荷は沢山あるからです。 もしバックスクワットでのシフトに対処すると考えているのなら、なぜスプリットスクワットをしないのでしょう?そしてなぜフロントに負荷をかけて脊柱を真っすぐに保ち、非対称性を “こちら側は8レップできてこっちは15レップ”という形で扱わないのでしょうか? 知らず知らずのうちに、私達は対称的な負荷を非対称的にかけてしまっています。 もしもアスリートが非対称性で故障しているのであれば、それはもしかすると私達がやっていることが原因にもなり得るのです。 しかし、もしも片側が機能不全で逆側は許容範囲もしくは最適であった場合には、私はこれにアタックするでしょう-それは非対称だからではなく、機能不全だからです。これはより明瞭な指導方法だと思います。操作の寛容度を広げてくれます。スコア1に取り組んで下さい。まずはじめの2パターンで、FMSの全てのテストで1点をだしたならば、アクティブストレートレッグレイズをまず先に行うことをお薦めします。骨盤を均等にし、スコアに素早く変化をもたらすでしょう。 レッグレイズと肩関節の可動性は、まず最初に片付ける最初の2つです。次に回旋スタビリティーで、運動制御のチェックとなります。その次はプッシュアップです。立位ではないもの全てが優先となります。もしあなたが全てにおスコア1をとったとして、スクワットの1とランジの1でさえ、レッグレイズや肩関節の可動性に取り組めばスクワットに真正面から取り組むよりも変化を与える可能性があります。基本的ですがしっかりとしています。 ムーブメントスクリーンを最初に発表した時、ディープスクワットは “ディープスクワットを修正すれば全てがうまくいく”と私達が豪語していた程、他の不良スコアの代名詞でした。ですが私達は真正面からディープスクワットに取り組むことはできないことを学んだのです。なぜならその他のムーブメントスクリーンパターンは全て、オーバーヘッドディープスクワットに含まれているからです。 ハードルステップ、ランジ、プッシュアップ、肩の可動性、そしてレッグレイズ、全てがそこにあります。ですからディープスクワットは、全ての複合動作なのです。ディープスクワットで3の場合、他の種目でも3、もしくは3に近い2を見ることができるでしょう。関節の過可動性がある人にとってはプッシュアップで1をだすかもしれませんが、ディープスクワットで1だった場合は他でも1を出すことになるでしょう。 スクリーンを下から上に評価していけば、まさに時間の節約となるでしょう。 その後によく聞かれる質問といえば: “ではなぜ7つ全てのテストを行うのか?”ということです。 私達は他のテストを約7分半で行うか否かで議論していますが、全てのベースラインを設定しながらも痛みを誘発する機会はあるのです。 “もし私が70人の女子のウェルネス指導をしている場合は?” やはり全てのスクリーンを痛みの誘発性とベースラインの為におこなうでしょう。全てのベースラインがとれるチャンスがあるのなら、中途半端はベースラインをとるのは止めておきましょう。なぜならあなたの内的データが次の効果的な動きを教えてくれるからです。 ここでのルールは決して推測しないということです:かなり注意深く、いつでも出来る限りのことを知っていることです。あなたが費やした時間や継続性に目を向けた時、他のパターンは何であったのかということを不思議に思うことでしょう。 単に、知ることはより良いことです。そうすれば、変化を見ることができるようになります。
FMSスコアで何をみるか? パート1/2
“ファンクショナルムーブメントスクリーンスコアで何を探しているのか?” これがファンクショナルムーブメントスクリーンにおいて私が最も頻繁に聞かれる質問でしょう。 グレイクックはスクリーンをする時に何を探しているのでしょう? 私はムーブメントスクリーンでゼロを探しています。 アメリカ海軍SEALのトレーニングにいようが、ボーイスカウトのキャンプにいようが関係なく、ムーブメントスクリーンではゼロを探します。 FMSには、ムーブメントパターンが痛みを引き起こすことによる、かなりの失格率があります。これは筋肉痛や一般にいう硬さのことを言っているのではなく、ほとんどの子供ができるようなムーブメントパターンに伴う痛みに、いくらか驚かされてしまう人達のことです。 考えてみて下さい...痛みが原因による失格率が20%あり、この人達のほとんどはシーズン前のメディカルチェックにパスしているのです。彼らは自体重を超えない負荷で、基本的な動作を必要とするムーブメントパターンに痛みを持っていながらも、自由に動いて良いと医療的に許可を受けているのです。 これはまるで災害を作るレシピのように聞こえるかもしれません...実際その通りなのです。 シーズン前のメディカルチェックはムーブメントについてよりも、目や耳、鼻や喉に関してのものでしょう。しかし怪我の大半はどこにおきるでしょうか? 毎年夏にフットボール中に心臓発作を起こす学生がわずかにいるでしょう。これは痛ましいことであり、それゆえに私達は血圧と脈のスクリーンをするのです。 しかし、どれだけの人数の人達が、もうスポーツに関われなくなるような深刻な膝の怪我をするでしょうか?なぜ私たちは、ムーブメントのスクリーニングをしないのでしょうか?どれくらいの人が足首の捻挫をして、リハビリで完治しないまま競技復帰しているでしょう? もしファンクショナルムーブメントスクリーンに点数をつけるシステムがなく、動作で痛みを伴う人々を見分けるだけだったとしても(動作がスポーツやアクティビティに関わる前であれば)、それでも私はとても価値のあることだと思います。 その10分間の投資が価値のあることなのです。なぜなら自分の娘がスクリーンにひっかかる一人になるかもしれないのですから。 もし痛みがある場合、SAIDの法則(特異性の原則)- 私達がエクササイズから得られると思う全ての利益 – は不確定で予測不可能です。痛みがあっても、我慢できないというわけではありません。 “残りあと60秒、文句を言わない!”とか。 もしもディープスクワットをする度に膝の後ろ側が痛むのだとしたら、私の解決策は “そこまで深くしゃがまない”こと。運動制御は痛みに直面するかどうかに関わらず、まだそのパターンにおいて歪んでいるからです。 まず最初に動作の健康をみなくてはいけません。もし動いた時に痛みがあるなら、あなたが健康かどうかもわかりません。あなたがフィットしていないという意味ではありません。見た目は鍛えていても、とても不健康だということです。肩のインピンジメントの兆候や、プレスアップ時の腰痛、またはランジの際の足首の痛み...それらは医療従事者が違うと言わない限り健康問題なのです。 過剰に警戒しようとしているわけではありません。私はムーブメントへの軽視/不注意が多くの傷害の原因になっていると言っているのです。 それが、エクササイズそのものがリスクの原因となっている理由でもあるのです。エクササイズがリスクファクターであってはなりません。その状況をコントロールできない競技や戦術がリスクファクターであるべきです。 周りの人は私に、“あなたはNFLの傷害予防をしようとしている”と言いますが、そうではありません。 NFLは100%の傷害率を持ちます。そこで仕事をする誰もが皆怪我をするのです。私達は傷害管理の話をしています。その人がどのように動くかを怪我の前に理解する事はとても重要なのです。 今では脳震盪を起こす前に認識力はチェックしますが、怪我の前の動作は見ようとはしないのです。 まず初めに、痛みがあるのにトレーニングをやりたがっている人がいます。痛みは不規則で予測できないものですから、彼らはあなたの成績率(そして彼ら自身の成績率)を損なわせるでしょう。次に、誰かがリスクの高い試みをすることがわかっている時に、見直しが可能なベースラインを設定することは確実に重要なことです。 ここから、議論のエリアになります。私はムーブメントの著書の始めに “まず上手に動き、それから沢山動きなさい”と話しました。これはとてもそっけない発言ですが、もし私がはっきりと定義しなければ、私のした事の全ては、解決策を持たない、別の問題を作っただけになってしまいます。 これらのパターンにおいて、私たちが何を言おうとしたのかというと、もしムーブメントスクリーンで1をとった場合、それはあなたが自分の体重でそのパターンをこなせなかったということを示します。ですからメディカルチェックでは痛みの可能性が無しとはいえないというのが私の仮説となります。 恐らく、痛みは私達にとって考えられる最大のリスクファクターでしょう。 次に、合理的なベースラインは、合理性なベースラインの不在よりも理にかなっています。私はムーブメントスクリーンというものにおいて明確な意志を示しました。もし機能不全があるなら、あなたは恐らくパフォーマンス向上の測定で良い反応を出せず、そういったパターンよりも前の段階で、疲労や、下手をすると怪我によって早々と故障してしまうかもしれません。 FMSスコアで2は許容範囲、3は最適を意味します。 私は、耐久性という観点から評価した場合、どちらが好ましいかという統計データを持っていません(特別な環境下の場合は除きますが、これはまた後でお話します)。 優れたストレングスコーチなら誰でも、FMSスコアで2の選手には出来る限り身体に余裕を作ろうと努力するのではないかと思います。シーズン中に何が起きるかはわかっています。消耗との戦いであり、私達は彼らに動く事を期待するのです。 ムーブメントは、優れた回復のバイオメーカーであると私は考えます。もし誰かがムーブメントスクリーンで18点をだして、私達が3日間のハードトレーニングを課し、スコアが12点に下がったのなら、その日のスケジュールがハードトレーニングの日だとしても追い込むべきではないでしょう。ムーブメントの比較として心拍変動や呼吸の効率性などのデータを是非チェックしたいと思います。 私は底辺のスコアよりも、ムーブメントスクリーンの高スコアに関しての批判には寛容です。なぜなら私達は “痛みが無い”と言っている人達の痛みを探しているからです。 “スクワットをしていない時は痛みがありませんよね?ですがスクワットをした時はどうでしょう?だってそのポジションは週末を迎えるまでに300回はするのですよ?” 痛みを除外し、信頼のおけるベースラインを確立しましょう。例えスコアリングシステムがなかったとしても、私はこの2つの情報において強く主張するでしょう。
運動の糧 パート3/3
もし、私たちから全てのストレッチや矯正エクササイズ、フォームローラー、カイロプラクターや理学療法士との予約を取り除いたら、ゆっくりと着実に持続的な進歩を遂げ改善し、健康を維持するのにピッタリの最小有効運動量に取り組む方法はあるのでしょうか? 身体の機能性を保ち、自分に適していると思われる活動に適応できる最小有効運動量はどうでしょう? もし、400ポンド(180 Kg)のデッドリフトを将来行うつもりがないのであれば、そのようなリフトを補助する運動は必要ありません。そうは言っても、しゃがんだり、ひねったり、振り向いたり、這ったり、登ったり、おそらく軽く走ったりすることをできるようにしておく運動は必要でしょう。もし、ある日とても重い物を持ち上げなくてはならないことがあれば、他の人の手を借りたり、作業を分解したり、力学的に有利な方法で行うようにします。ただそれだけのことです。 健康でいられる程度に動きなさい・・・それを維持できる頻度で動きなさい。 機能的でいられる程度に動きなさい・・・それを学習できる頻度で動きなさい。 フィットでいられる程度に動きなさい・・・十分に適応できる頻度で動きなさい。 上手に行える程度に動きなさい・・・それを継続的に行える頻度で動きなさい。 十分に動きなさい、でもここに書かれた順番で。あなたの本質がそれを求めているのです! 十分な頻度で上手に運動すれば、ちゃんと適応できるようになり、適応できれば不利な方向に働くことはありません。とても重要なことです;不利な方向は、基本的な運動の発達よりも、もっと野心的なレベルの運動の発達を助長します。不健康な腕の動きでボールを投げるピッチャーを過去にどれだけ多く見てきたでしょうか―― 回旋腱板断裂、筋の挫傷や関節の捻挫などがその結果です。もし、運動量が適切でありさえすれば、フィットネスや発達全般において有益な技能が身についたはずです。しかし、身体を酷使し、健康問題を発生させてしまいました。振り出しに戻ってしまった。 体系的なフィードバックの欠如によって、すぐにそうなってしまいます。 みなさんが健康的な動きから技能的な動きにレベルアップする時、または動きを評価する時、何をトレーニングするべきか見つけるためにわたしたちは健康と機能、適性、技能を保つのに必要な最小有効量を分析します。最小有効量はどれくらいか? 私たちがこれが悪いと推測したものが間違っていて、その弱連鎖からかなり外れていることに気がつくことがよくあります。動きにおける弱連鎖は、たいてい上達しなかったり思うように活動できなかったりする原因です。体重が減らない原因かもしれないし、思うように眠れない原因かもしれません。身体は、みなさんがしようとする運動、またはしないと選んだ運動に非常に敏感です。 ダイエットに似ていませんか? エクササイズと比較した時、栄養学の明瞭さに私は信じられないほど刺激を受けます。栄養学の学位を持っているわけではありませんが、栄養学での論理の善し悪しは明らかに区別がつきます。製薬業と同じように、栄養学においても、単に症状だけを元に食べ方を指示されることもあり得るでしょう。しかし、食の善し悪しや健康的で機能的な食べ方、フィットネスのための食事、長期的な食事の原理をいくつか提供することで、完璧で持続的な生活スタイルの変化を起こすほどに、包括的にもなれるわけです。 もし私たちがサプリメントを扱うのと同じようにエクササイズを捉えたら、そして、もし身体活動と新しい環境への露出も食べ物と同じように考えていたならば、運動テクノロジーにおいてさらにもっと進化することでしょう。 歩き方を見ただけで、座りっぱなしの習慣を持つ人だということがはっきりとわかるでしょうか… 世界中どこでもアメリカ人と見分けられるようになりました。単に少し太っているということや服装が他の人たちと多少異なるということだけではありません。 私たちの動きがよくないからです。 私たちは、動きが良くないにもかかわらず頻繁に動く。これが問題を生み出します。明らかな代償を生み出しす。歩行といった単純なことからでさえも、あなた自身と体は運動の本来の糧を味わうというより、断然運動のサプリメントを味わっていることが多いという事実が分かってしまいます。 この投稿がみなさんを喚起できれば良いと思います。運動をじっくり調べたり運動レベルを分解したりする気になっていただければいいと思います。これまで抱いていた推測は捨てて、運動の4つの分類をする新しい物差しに注目してみましょう。それぞれの運動レベルにおいて、みなさんが摂取しているのは運動の糧ですか、それとも、サプリメントですか? トップレベルにおいては、みなさんが最もしたいことを楽しみましょう。たとえば、サイクリング、ロッククライミング、ハイキング、競技スポーツなど。正しく行えれば、技能負荷はかなりのレベルのフィットネスを与えてくれるでしょう。それによって得られたフィットネスで一定の機能が備わり、維持した機能は健康を保つことにもつながります。また、その逆もあり得ます。 運動の最後の段階では、あなたを微笑ませてくれることや、流れるようにスムーズな状態でできることを見つけることです。だからと言って、家での課題や補助的にエクササイズをしなくていいという意味ではありません。残念ながら行ってもらいます。しかし、これらの補助的なエクササイズは、人生という長期にわたる連続的なイベントにとってバランスや調和を整えるための一時的な障害なのです。 もし、運動のサプリメントとしてのエクササイズを数週間や数ヶ月という期間ではなく、何年間も行っているとしたら、何のためにやらされているのか、なぜそうさせたのかを疑問に思います。多くの人は、機能的運動のテクノロジーを採用し、運動のサプリメントとしてのエクササイズをし続けています。私や私のチームであればとうの昔にそんなコレクティブエクササイズなんてやめさせ、健康や機能、適性、技能/競技の全体を再調整しているのですが、そんなことは知る由もありません。運動パターンが悪いからといって、私は特定の運動のサプリメントを一つ加えるだけということはしません。一旦コレクティブエクササイズで運動パターンが改善されると示せれば、まず私が始めにするのは、“オーケー、ではコレクティブエクササイズなしでどれぐらいできますか?”と聞くことです。Xをもう少し多く行うことによって、Yをかなり少なくし、Zはもう二度と行うことはなくなります。なぜなら単に、これは必要としている運動の糧ではなく、あなたには合っていないからです。 私の言うことを鵜呑みにしないでください・・・私の言っていることを試してみてください。生命体と環境をまず単純に見ることから始めましょう。あなたが本当に取り組むべきなのは、今取り組んでいるところではないかもしれないからです。 私たちは私たちのテストをこのように利用します。ひとつの方法論を他と比べて推奨するということではなく、みなさんの運動の中にある薬を見つけ、処方されるべき運動を見つけるのに役に立つからです。
運動の糧 パート2/3
健康の問題に対してフィットネスによる解決を望んでいる人が多い 機能的な問題に対してフィットネスによる解決を望んでいる人が多い、そして、 技能的な問題に対してフィットネスによる解決を望んでいる人が多い。 動きを見る4つの方法の概要です。 もし不健康であれば、診断をする必要があります。 もし機能不全があれば、疑わしい運動パターンを明確にして、それを修正しようとします。 もし単にゴルフができないということならば、サイドプランクをあとどのぐらい行えばいいのか私には分かりませんが・・・たぶん、ゴルフのレッスンが必要なのでしょう。ゴルフを行うのに身体的な壁がありますか? または技能的な壁? 単純なテストを実施することで、素早く簡単にこれらの疑問に答えてくれます。TPIにいる私の友人に聞いてみてください。 動きの健康:健康的に動くこととその動きによって健康に利することの基本的な要素が、あなたにはありますか? 身体のシステム全体にとって運動の最小有効量はどのぐらいでしょうか? 運動学の問題だけではなく、周囲との触覚によるコミュニケーションでもあります。立ったり、ゴロゴロと転がったりして、周囲の環境に対するときの 身体の“柔らかさ”には、異なる感触や経験があります。私たちは、視覚、聴覚、前庭感覚と同様に、莫大な量の固有受容的経験を得ています。 動きの機能:健康な動きの特性をすべて利用し、そして組織化して動きに有能な学習機械となることができますか? 動きの機能性は、あなたが何かを知っているとか、何かに長けているというわけではありません。単に、フィードバックループを構築するための動きのパターンが備わっているということです。したがって、可動性に特に何の問題もなく、平均台を経験してもらうとします。動きと姿勢の制御以外は、バランスが悪くなる理由はありません。つまり動作を実行するための柔軟性はあるものの、できなかったわけです。このようなフィードバックループの能力に働きかける経験によって、人類の先祖に適応力をもたらした自己運動学習体になるのです。 “ここに床から2.5センチの高さに15.2cm幅の平均台があります。落ちるまで、この上でなるべく多くの回数を前向きで歩いてください。平均台の上を歩いて行き、回転して向きを変え、歩いて帰ってきます。落ちずに5回できたら、今度は無駄なエネルギーを使わず、腰から上の上半身の動きを最低限にとどめ、意図的に腕を振り回し、頭の位置を変な風にして、少し左に傾けて5回行ってみましょう。そう、それでも上手く平均台を渡れるか見せてください。” それが終わったら、目を閉じる代わりに、平均台の上を前向きで歩き、そして後ろ歩きで戻ってもらいましょう。平均台の上ではバランスさえ取れない人がいる、とおっしゃる皆さん・・・まず、可動性の問題を見逃しているに違いありません。二つめに、そのような人を平均台の上に立たせたいなら、杖を持たせたり、手を取ってあげたり、何らかの補助を使いましょう。平均台を壁に寄せて設置し、徐々に壁から離していきます。縮小の仕方にはいろいろあります。つまり、バランスを良くするために、悪いバランスのフィードバックを利用し、効果的な最低限の可動性に取り組むのであれば、それを縮小する必要はありません。彼らに身体のどの部分を収縮するように言う必要はなく、彼らは単に、自分はバランスがとれないということを認識すればよいのです。自分自身の固有受容器系、視覚系、前庭系を使って、その状況をどうやって克服するかを見つけ出せばよいのです。 問題の解決は彼らにさせておきましょう。公式のためのパーツはすべて揃っています:視覚、時間と活動。自然に任せ、フィードバックを提供しましょう。 彼ら自身に答えを見つけてもらいましょう。先に答えを与えてしまってはいけません。幼児でも分かることなので、当然大人にもできるでしょう。バランスを養うための近道はありません―― 本質的な方法が最もうまくいきます。歩く前にハイハイし、走る前に歩くように、単純なことです。 動きのフィットネス:基本的な移動運動または作業に必要なエネルギーを示す許容能力です。基本的に、移動したり物を移動させたりすること(または、自分も移動しながら物も移動させること)です。動きのフィットネスとは、非特異的な身体能力と基本的な物理的リソースです。 動きの技能:これは、何かをする時の能力または複雑性です。あるひとつのことに特化した人もいます;いくつかのことに特化した人もいます。技能とは、特定の作業や活動、目的、試合で身体能力を発揮すること、また有効的かつ能率的な方法で技能的能力と戦術能力を実施することです。他の大多数より秀でていれば、報酬を得ることもできます。 さて、これら4つのレベルを考慮すると、あなたの最良の運動の糧は何ですか? 失った運動能力を取り戻す必要のある人へのエクササイズが不適切であるために、多くの場合において、エクササイズを継続的に計測しては調整しなければならなかったり“指導し過ぎ”になったりしてしまいます。運動を分解するとしたら、“健康になるために十分動いていますか?”または“もっと激しく運動し始めれば、かえって健康を脅かすことになりませんか?”というフレーズを使うことができるかもしれません。 “私は少し太り過ぎているので、ウォーキングとジョギングを始めました。そうしたら、シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)と腰痛になってしまいました”ということをよく耳にしますね? 彼らは運動的に健康であるように見えますが、少しでも運動量が多過ぎると、不健康になってしまいます。そう不健康。なぜなら、シンスプリントや腰痛は、フィットネスではなく(フィットネスと同じように、医療でもめちゃくちゃにされている事実はない限り)医療現場で対応されるべきものだからです。つまり、私たちは原因に対処しているのではなく症状だけを治療していることが多いのです。全体的な動きを見ず、そして“あなたの運動はどのようなものですか?”と尋ねることもせず、動きの悪い部位や痛みの部位に近い筋を治療していることが多くあります。
運動の糧 パート1/3
“食事を汝の薬とし、薬は汝の食事とせよ”–ヒポクラテス” – Hippocrates この言葉はその時代において、とくにパフォーマンスの強化や医療の奇跡、人体に精力をつける安易な方法を好む風潮があると思われる現代と同様に、とても賢明な助言でした。 食についての知恵と同じように、成功しようとするあまりわれわれは、どのように行動するべきかという基本原則を軽視しがちだとヒポクラテスは述べています。 わかりやすく言い換えれば:自分は問題抱えていると思い込む前に、基礎的なことをチェックすること。たいていの問題は基礎や基本理念を破り、その上で、複合的な解決方法を探しているのです。 どういうわけか、私たちは運動についてよりも食について、より明確な考えます。私の好きな著者のひとり、マイケル・ポーランは、食についての不必要な心配や思い込みを分析することで有名になりました。彼の業績を簡単に説明すると、食べ物とは丸ごとの食材であり自然なものです。本物の食べ物には、多くの付随成分が豊富で、それらを単独で見てみると、有益であったり、有毒であったり、またはバランスを崩してしまうものかもしれません。 しかし、私たちはサプリメントの時代に生きています。緑茶に含まれるいくつかの健康的な成分を検出し、錠剤やパワーバーや風船ガムの製品にして、緑茶は飲まなくてもよくなりなりたい。 食べ物に関しては、そう上手くはいきません。 運動やエクササイズに関しても、そうはなりません。 基本的に還元主義は、問題を解決するというより、より深刻な問題を引き起こします。なぜなら、持続的な解決にはならないからです。人体はすでに、緑茶からどのように有益な成分を抽出するか知っているのですから、製造会社に頼むことはないのです。 もし、自然で本物の食材を丸ごと(意図的に)食べているのであれば、サプリメントを摂取する理由は、自然由来のビタミンと栄養素の吸収障害がある場合のみです。吸収障害を克服するため、または、自然な食材が損なわれていることを解消するには、欠乏している特定の成分を効果的に多めに摂取し正常に戻さなくてはなりません。 ビタミン剤や栄養剤は、強制的に最適な状態に仕向けるために服用されるよりも、機能不全の状態から抜け出すために摂取する方がよいでしょう。この記述に同意されるならば(歴史と科学を復習してみればきっと同意してくれるはずです)、私たちが抱いているビタミンやミネラル、栄養補助食品に関する思い込みがどれだけゆがんでいるかお分かりになるでしょう。何か欠乏しているものをサプリメントで埋めるとすれば、競争優位のようにになってしまいます。パフォーマンスオクタンブースト(オクタン価向上剤)でしょうか? それは違うでしょう。単に、本来であれば、食べることや、休養、再生によって自然に埋められていくはずの穴を埋めているだけです。 運動の例に戻るとしましょう・・・ エクササイズは、運動の糧ではありません。エクササイズは運動のサプリメントです。 エクササイズは、運動のサプリメントです。なぜなら、多くの場合、運動のより良い将来を望んで行うから。さらに、ひとつのエクササイズが人間の運動能力全体をカバーすることはありません。さて、赤ちゃんや乳幼児、子どもたちは、生物学的に遊ぶように促されています。感覚や動きを通して周りの環境を探検するという子ども時代に、私たちの基礎的なパターンと身体能力が発達します。年齢を重ねる毎に、動きの風景の特定の部分に目を向け、そして遊びを続けるのです。 ボールを投げたい人 長距離を走りたい人 壁を登りたい人 水の中へ飛び込む人 いろいろな種類の活動をしてみる人、そして 専門性にこだわる人−地区、地域、国、はたまた世界で一番になるなど。 このような活動を補助するために、たいてい自分に必要だと思うエクササイズを選択しますが、大好きな活動を本当に補強・補填してくれるエクササイズを論理的な分析なしで選んでいることがあります。 動きを探究するために選択する方法に関わりなく、動きを基本的要素まで分析し、運動の糧を探すこともできます。始めるにあたり最も良い方法は、動きを4つの異なるレベルでみることです: 動きの健康動きの機能動きのフィットネス動きの技能 この20年間これらの言葉は考察され、討論され、詳細に論じられてきたこともあり、この先を読み続ける前にこれらの言葉をみなさんも定義してみてください・・・この話の進む方向がお気に召すかどうか。 運動の発達レベル みなさんが行っている運動は、健康的な動きへと導いてくれますか? ヨガや武道、または私たちが最近開設した、インディアン・クラブコースや筋膜リリースポジション、発達神経学的プログレッションの動きを見てみると、さまざまな姿勢や負荷のパターンを身体が経験する素晴らしい方法が多くあります。しかし、その運動は循環系には役に立たないことでしょうか? 組織系には? 内蔵系には? 固有受容覚系には? 前庭系、視覚系、聴覚系には? 身体を動かすときは常に多感覚の経験をしています。その経験は、建設的であったり非建設的であったり、あるいは単に何の効果もないかもしれない・・・みなさんが活動に時間と労力をかけていることが、効果があったか否かは、私には分かりません。 客観的な身体能力テストでは、あなたがエクササイズや活動にどれだけ費やしたかは、ほとんど区別がつきませんね? つまり、例えばあなたがXをトレーニングして何ヶ月も経過していても、そのことに私が気づかないということになります。Xは筋量を増やし、脂肪を燃焼させ、スピードを持たせ、アジリティを上達させ、左右のバランスを整えるとします(リストは延々と続きます)。しかし、これらの項目を計測しようとしても、あなたがしてきた努力の明白な効果が分からないのです。信じてもらえないかもしれませんが、このようなことが頻繁に起こっています。そのような努力がそもそも必要であるかどうか調べるために使用するバイオマーカーに、あなたの努力はほとんど検知されません。 正確に信頼できるテストがあれば、足首の可動性やコアの安定性、肩の安定性、心血管機能全般、作業能力、スローストレングスや爆発的パワーなど特定の問題に対応する方法を複数見つけることができるでしょう。これらのどれが最大の弱点か見つかりさえすれば、あなたの身体的発達レベルでの特定の問題を容易に判断できます。場合によっては、その問題は動きの機能(可動性と安定性を調整する機能)に根差しているかもしれませんね? またはその問題は動きの健康(正常で理想的、または平均以上の成長、回復、休養、再生をするシステムを提供してくれるもの)に存在することもあるでよう。 FMSやSFMA、そして最近紹介されたファンダメンタル・キャパシティ・スクリーンによってこれらの疑問点を解決しようとしています。
ファンクショナルトレーニングとは何か?:対談 パート2/2
スー: 後でこれらの問題を抱えることになるからこれはOKではないということを示す、動作の観点から私たちが目を向ける物事とは何でしょうか?人々がこれらのことを明確にすることができないというのは驚くべきことです。誰もそれらについて合意できないのです。それにもかかわらず、高齢者を見るとき、彼らは何を見ていますか?“立ち上がって進む”までの時間、そうでしょう?どれくらい素早く椅子から立ち上がり10ヤード歩けるか?床から立ち上がることができない人々と、彼らの死亡率の間には、大きな相関があります。 最近実家に帰ったとき、母が私に対して苛立ったんですー彼女は75歳なのですが、床に座って犬と遊んでいて、立ち上がらなくてはならなくなったら、彼女はまるで床から立ち上がれなくなるような様子だったのです。彼女はカウチまではっていきました。私は「カウチを触わらずに今すぐ床から立ち上がらなくてはだめよ」と言いました。私は彼女が器具を使うことなく床から立ち上がれることを確かめなくてはならなかったのです。 グレイ: . . . そしてそれとは逆に、私はいくつかの調査をしてきて、世界保健機関が運動に関して唯一合意していることは、人生の初めの21か月と運動経路であるということを発見したんだ。 スー: 運動発達経路ですね。 グレイ: あなたがしゃがんだり立ったりしていようと、あるいは初めて立ち上がろうとしていようと、すべての主な姿勢、そして仰臥位または腹臥位から立位へと動くために不可欠な土台であるパターンは、床から立ち上がろうとしている高齢者、あるいは歩くことを学んでいる子供。どちらにおいても示されている。私たちは立ち上がってこの土台に足を踏み入れ、そして最後の最後まで立ち上がれるたくましい状態でこの世を去る。 中間にある全てのくだらないものーウルトラマラソンや臀部のアクティベーション、背屈のモビリティ、よりよいヒールストライク、ミッドフットランナー、ケトルベルスナッチーそれら全ては発達過程の結果です。そしてそれら全てがなくなったら、あなたには「座ってからまた立ち上がれるか?」ということが残る。 あなたがしているどのような活動も、もしそれがうまくいっているのならいい。しかしこれまで私たちがムーブメントスクリーンについて言った唯一のことは、もしあなたがこのテストに合格することができず、あなたがそれまでやってきていることを“機能”と考えるのであれば、私はあなたの権限を傷つけることのない丁重な方法で、それに対し疑問を投げかけるでしょう。 スー: そしてそれは私が人々に、あなたの名前の後ろにどの文字が付いているか気にしない、どの資格を持っているか気にしない、と伝える理由です…関係ないのです。あなたの標準規格、測定基準、終盤である、試合前である、そしてあなたがそこにどのようにたどり着いたかはどうでもいい。それは、私たちの科学に基づいて私たちが行うことの臨床の技なのです。それがあなたの臨床の技なのです。 グレイ: そしてそれが、私たちが調査すべきもの。そうではなく、人々は、私たちが膝、股関節…その他諸々に対し何をすべきか教えてくれる革新的なものを調査するつもりだと思っている。 スー: そして、私たちは皆まったく同じことをしなくてはならないのか?いいえ、それはうまくいかないでしょう。 グレイ: 調査がしていくことは、私たちがすでに行い成功していることの正当性を立証すること、そしてもし可能であれば、私たちが失敗するときなぜそれらの失敗が起こるのか説明すること。そのため、もし私たちが膝を伸張させるための素晴らしいプロトコルを得たとしたら、調査はなぜ私たちが80/20動作を獲得できたのか証明することができる。それは私たちに膝を伸張させるために何をすべきかを教えてはくれない;それを教えてくれるのは、現場での臨床的革新、そして人々の知識に基づいた推測になるだろう。 そしてそれが臨床的革新。その部分は研究室では見えない。それは現場の第一線で見えているもの。それは早期導入者たちに効果を示した10年後に、研究室で確認され検査されるだろう。 スー: そしてそれが、医学解析及び系統的レビューに反対する博士たちの大きなグループが存在する理由です。なぜなら、それらのことのすべての結果は「より多くの調査が必要である」となっているからです。 私たちが専門性を前進させなくてはならないのはここです。系統的レビューや医学解析は非常に興味深いものですが、それらは一つの結論にまとまらず、もっと調査が必要だという最終結果になる。これらの人々は浮世離れしていて、臨床あるいは現場にいる人たちではありません。 私たちは科学に基づいた臨床技術なのですから、私たちが、この専門職を前進させるためにしていくことは、症例シリーズや症例報告です。もし私たちが臨床技術の正当性を立証し、承認し、高く評価し始めなければ、そして科学がその方程式の最も重要な部分であるようにふるまわなければ、私たちは終わりです。 私たちは、臨床の技を承認し、高く評価し、そして立証しなくてはなりません。 グレイ: 最近の世界ゴルフフィットネスサミットで、私はこれまで私たちがK-vest上で見てきた中で最高レベルの回旋スピードを持つ、前途有望なゴルファーのケーススタディを発表した。彼は痩せていたから、ひょろっとしていたから、速筋タイプで非常に“バスケットボール”向きの運動能力を持つだけでなくゴルフの才能もあったから、審査された後に「私たちはあなたを15パウンド太らせなくてはならない」と言われたんだ。 ストレングスコーチとしてそれを何度も言ってきたけれど、私は決してそういうことを意味していたわけではないんだ。私が本当に意味していたのは、いくらか筋力をつけなくてはならないということ。 スー: 彼にはいくらかの筋力、そしていくらかのパワーが必要ですね。彼に本当に必要なのは15パウンドの体重ではない。 グレイ: 私たちは筋力をつけ、彼は15パウンドの副作用を得る。 スー: まったくもって正しい。それは副作用なんですよね。 グレイ: しかし、もし私がただ15パウンド増やさなくてはならないと考えるならば、私はすでに競技特性によって証明された高精度の回旋マシンである人に対し、勝手に重いリフティングを行うことになってしまう。 さて何が起こったか?その選手は世界中の最高の助言すべてに従い、首を強化し、肩を強化し、股関節を強化し、ゲームを強化し、筋量を増やす一方で回旋スピードを失ってしまった。本質的な欠陥は、私たちが賢い筋肉ではなく頭の悪い肉から始めてしまったこと。賢い筋肉は大きくなる前に強くなる。頭の悪い肉は強くなる前に大きくなってしまう。 スー: 私たちはそれを野球でいつも見ています。彼らに一日複数個のチーズバーガーを食べさせようとしても同じなのかもしれない。 グレイ:「あと15パウンドあったらなあ」と言うことで、私自身その問題の一部となってしまったけれど、それは私が意味していたことではないんだ。もっとデッドリフトが上手だったらなあと思う。もっと動作スクリーンが上手だったらなあ。片脚立ちがもっと上手だったらなあ。もっといい胸郭モビリティを見せられたらなあ。もっとオープンチェーン背屈がうまくできたらなあ。 全部もっと良ければいいのにと思っているのだけれど、私は何と言ったのか? 「この子がもう少しがっしりしていたらいいのになあ。」 動作が左右対称であるとき、動作が可能なとき、動作が表現されたとき、そこで私たちは進歩していると知る。 スー: 重要な点ですね:動作が可能である。私たちの仕事は、生命体があらゆる環境においてタスクを実行するためにできるだけ多くの自由度を与えることです。それがファンクショナルトレーニングです。 もし私たちが、神経系が与えられた環境において必要な動作パターンを選択できるように動作の可能度を向上していないのであれば、私たちはちゃんと仕事をしていなかったということです。 それが私たちの仕事です:神経系が与えられたタスク及び環境で適切な動作パターンを選択することができるように、生命体にできる限り多くの自由度を与えること。 それがファンクショナルトレーニングなのです!
ファンクショナルトレーニングとは何か?:対談 パート1/2
グレイ: スー、私は「Bridging the Gap」の本をとても楽しく読ませてもらい、この本を書くよう駆り立てたものは何だったのか…そしてなぜ今?ということについて、君にいくつか質問するのを楽しみにしてきたんだ。私が本から得た重要な情報の一つは、リー(バートン)と私がシステム(ファンクショナルムーブメントシステム)を使ってやろうとしていることのように、あなたは現実の客観的評価をその人が持つ主観的自信に対して提供し、それらがどれくらい、どの方向に離れているのかを明らかにしようとしているということ。 あなたは脳と身体の繋がり方を過大評価または過小評価しているのか?そしてあなたの最大の動作障害物は何なのか? もし私が第一にやらなくてはならないことが、アスリートの自信対現実比を調整することであれば、Functional Movement SystemsまたはSFMAのルールや規則を引用してそれを行うことはしないでしょう。「つま先を触ることは運動動作ではないーそれは世の中のほとんどの人ができること」だと言います。 スー: それは人間の動作ですからね。 グレイ: そして事実、ある人がそれをできないということは、その他の多くのことは顕著な代償運動や不必要なエネルギー消費なしではできるはずがないことを意味している。つまり、今後人生はあなたにとって同じではなくなっていくということ。多くの人々や多くのトレーニングプログラムがあなたは持っているだろうと仮定している動作パターンが、あなたには得られない。あなたの経験は異なるものになっていくわけです。 フィットネスにおいて基準を定めなくてはならないとき、私たちは「簡単になってきたらすぐそれを難しくしよう」と言って物事を難しくしてきた。そうすれば、アスリートの仕事はそれをより簡単にすることであり、私たちの仕事はそれをより難しくすることになる。 これが真の適応です。 スー: その通りです。どれだけ多くの人々が自分の哲学、あるいは自分の評価基準が何なのかを知らないということは、驚くべきことです。人々は自分のツールを自分の哲学と誤解しているのです。それが、私がBridging the Gapでしたように、人々のために一つの組織的なシステムを開発したかった理由の一つです。 どのようなテクニックを行っても構いません。インディアンクラブ、ケトルベル、あるいはTRXを使おうと。 それらはあなたのツールなのです。あなたの哲学は何ですか?あなたの専門的な評価基準は何でしょうか?あなたはいつも何に戻っていますか? あなたが私をツールのない状態で何もないフィールドに置いても、あるいは私にEXOSが作り出せる最も複雑なジムを与えようとも、関係ありません。私の哲学は変わらないのです。あなたは私に鍼を与えることも、インディアンクラブを与えることもできますーなんでも構いません。 それらは私の哲学を表現するツールであり、そのことは私が変化していくのを見たいと思っている事柄の専門的評価基準に基づいています。変化することが重要であると私が考えているものは何でしょうか?あなたが動作を変えたり、あるいはあなたの生命体を変えるのに、何が重要でしょうか?それを行うために私が手元に置いておくツールはなんでもいいのです。 グレイ: もし私たちがライフスタイルコーチ、栄養士、睡眠/覚醒/ライフスタイル/感情マネジメントの人に話していて、「もしあなたが地球上で最高のライフスタイル・マネジメントコーチだとしたら、あなたを評価するのにどの測定基準を使ってほしいですか?」と聞いたとしよう。もし彼女が自尊心や自尊感情のようないんちきくさいことを言ったら、私たちは、うーん、あなたはそれを測定できるかもしれないよね、と思うでしょう。 これは体組成ではない。私は人々にエクササイズしなさいと伝えたり、あるいはするなと伝えるつもりはない。私は彼らのライフスタイルをコントロールしていく。彼らのレム周期をコントロールし、彼らにいくつかの呼吸の情報を与えるー私はただ日常生活をより簡単にするためにいくつかのことをしようとしているだけ。 私たちがエクササイズと呼ばないような活動も盛り込むかもしれないけれど、私の言うことを10週間行った最後に、もしあなたが体組成に期待しているとしたら、私たちがシステムを協調させられたかどうかを知るために見るのにはとても良いものになるだろう。 それでは、もし栄養士あるいはライフスタイルコーチが体組成のためにそれができるとしたら、ムーブメントコーチがあなたに鏡に向かってやってくださいというテストは何だろうか? 私にとっては、それはオーバーヘッド・ディープスクワットのようなものだと思う。そしてもしそれがあまりうまくいかなかった場合には、その半分ほどで行うだろう。それからインラインランジ。そしてそれがうまくいかなければ、片足で立ってぐらつかないようにさせるかもしれない。そしてそれがあまりうまくいかなかったら、プランクを見たいと思う。もしそれがうまくいかなかったら、相互的クローリングをしているのを見せてほしい。 もしそれがうまくいかなかったら、あなたの上半身に硬さがあるかどうか見て、それがうまくいかなかったら、下半身に硬さがあるか見たいと思う。そしてもしあなたの股関節と骨盤が制限されていたら、まずそれを修正することなく、あなたに何も問題ないとは仮定しないでしょう。 ディープスクワットでしゃがんだりレッグレイズで脚を上げることから始まる、まさにそれが動作トレーニングなのです。 フィットネス環境において、もしあなたが痛みを持っていなければ、私はあなたの骨盤を安定させ、動く土台を与えるでしょう。何か医学的に問題があるとは仮定していないけれど、SFMAではまず首と肩をチェックする…もし何か問題があれば、何も正しく働くことはできないから。 FMSはボトムアップアプローチでSFMAはトップダウンアプローチである、と人々はかなり固着しているけれど、医学的に、トップダウンは安全な手段です。そしてもしあなたが痛みを持っていないのであれば、ボトムアップが安全な手段です。 スー: それはこれまで私が聞いてきたあなたのファンクショナルムーブメントスクリーンの説明の中でも、最高の説明の一つですね。 グレイ: まさに薬局にある血圧計カフのような、生涯に渡って使う一つのツールなんだ。 動作スクリーンは成功を予測しない;それは単純に、失敗が起こる準備中であることを展示している。FMSの‘F’は、あなたができることなら避けたいと望む当然の結果と非常に関連している。 スー: そうですね。私は教授であり、いまだATでもあります…私はアスレティックトレーニング博士課程の中で、コレクティブアセスメントとコレクティブムーブメントコースを教えています。私たちのアセスメントコースでは、第一週にあなたはどのように評価するか、あなたのファンクショナルムーブメントの定義は何か?またそれがあなたに何を意味するか?について議論します。 そしてその質問が人々にとっていかに難しいものかというのは、私にとって非常に驚くべきことなのです。私は常にこれを心臓の健康のように関連付けています;私たちは血圧を見て、心拍を見ます。血圧がとても高い場合、それは心臓に問題があるという測定基準です。 それでは、健康の観点から高すぎる血圧が示すものは何でしょうか?心拍が高すぎる。コレステロールが高すぎる。これらのことは全てOKなことではなく、私たちは今介入しなくてはなりません。なぜなら、もし私たちが介入しなければ、あなたはのちに心循環系の問題を抱えることになるからです。
固有受容性神経筋促通法(PNF):ファンクショナルトレーニングの基盤 パート2/2
PNFで筋力向上に用いられるテクニックは、数多くの身体活動の動きや筋収縮を模倣しています。リズミックイニシエーションは一般的に、動作の開始の方法の教育を促進することを補助するために使用されます。それは、受動的なパターン、能動的な補助パターン、能動的な抵抗パターンを組み合わせ、そして反射的なストレッチを避けたものです。スローリバーサルは、主動筋と拮抗筋のコーディネーションを補助するために用いられます。負荷に対する拮抗筋の収縮から主動筋によるプルへと続いて行われます。特定の可動域の筋力の向上は、様々な方法によって行うことができます。筋が疲労すると、収縮を繰り返す方法は繰り返しの筋収縮を必要とします;これは、可動域を通したコンセントリック収縮とエキセントリック収縮を伴うストレッチによってサポートされます。 ストレッチのテクニックは最も多くの場合、痙縮を抑制するために使用されます。PNFストレッチの際に応用される2つの抑制のコンセプトが存在します。自律性の抑制は、筋をリラックスさせるためにストレッチされた筋の神経線維を利用し、そのためより大きなストレッチを可能にします。相反抑制には、主動筋と拮抗筋の作用が関わります。主動筋が収縮し動作を起こすためには、拮抗筋は動作が起きるように反射的に弛緩されなければなりません。Prentice4は、筋力や持久力、そしてコーディネーションを向上させるための以下のPNFストレッチのテクニックを明らかにしました。 コントラクト−リラックスストレッチは筋の硬さによって制限されている可動域の獲得をするために用いられます。患者にストレッチされた姿勢をとらせます。そこから、施術者の抵抗に対して等張性の筋収縮をし、その後リラックスするように指示されます。患者は、その後にストレッチされた姿勢を再度とらせることもできます。ホールド−リラックス法は、収縮がアイソメトリック(等尺性)に起こること以外はコントラクト−リラックス法と同様のストレッチです。 スローリバーサル−ホールド−リラックスは、主動筋と拮抗筋の両方の収縮を伴います。まず、主動筋の収縮で関節の許容可動域まで動かし、これによって拮抗筋がリラックスしストレッチします。主動筋は次にリラックスし、その一方で拮抗筋をアイソメトリックに収縮させます。最後のステップは、主動筋の再度の収縮です。このストレッチのテクニックは拮抗筋の観点から捉えられるべきであり、それはリラックス−収縮−リラックスとなります。 PNFのパターン法は上肢と下肢に用いられ、D1(斜め方向1)とD2(斜め方向2)のパターンに分類することができます。上肢のパターンは肩、肘、手首そして手指を含みます。同様に下肢のパターンは股関節、膝、足首そして足趾を含みます。それぞれの斜めのパターンは、屈曲及び伸展で完了することができます。D1の肩の屈曲パターンは、肩の屈曲、内転、外旋、前腕の回外、手首の屈曲、そして手指の屈曲のポジションから始まります。D1屈曲の最終のポジションは、肩の伸展、外転、外旋、前腕の回内、手首と手指の伸展となります。 D1の伸展パターンは、D1の屈曲パターンを逆にします。D2の屈曲は、肩の屈曲、外転、外旋、前腕の回外、手首と手指の伸展を伴います。 同様に、D2の伸展パターンはD2の屈曲パターンを逆にします。 下肢の斜めのパターンは上肢のパターンを模倣し、伸展パターンは屈曲パターンを逆にします。D1の屈曲は、股関節の屈曲、内転と外旋、足関節の背屈、内反、そして足趾の伸展を伴います。D2の屈曲パターンは、股関節の屈曲、外転と内旋、足関節の背屈と外反、そして足趾の伸展を含みます。 ファンクショナルトレーニングでよく使用されるチョップエクササイズは、上肢のD1とD2の両方のPNFパターンを活用します。抵抗の角度は上方となり、これによって上肢が機能的なプルからプレスを行うことができます。 リフトパターンは同じコンセプトを用い、逆のD1とD2のそれぞれのプルからプレスのパターンを活用し、抵抗は下からかかります。肩膝立ちの姿勢では、より安定性が必要とされ、動作を達成するのに必要な全体のPNFを増加させます。 下肢のファンクショナルトレーニングで一般的に用いられるPNFパターンは、クロスオーバーステップです。この動作は、複数のステップを行う際に、股関節からのD1とD2の両方のパターンを必要とします。難易度とPNFのパターンを増加させるために、レジスタンスバンドを用いることができます。 バンドをウエストに巻くことで、放射の増加が起こることがあり、これにより動作を行うために必要な神経筋の入力を増加させるでしょう。5 一旦、PNFテクニックを導入したならば、機能不全が起こっていたファンダメンタルムーブメントを再びチェックすることが重要です。これによって、モビリティまたはスタビリティの問題への取り組みが、動きにプラスの効果を与えていることを確かにします。このタイプの系統的なプログラムは、動きの評価を基準に漸進させることができる継続的なフィードバックを可能にします。ファンダメンタルムーブメントの向上が見られた際には、個々の状態を維持そして漸進させるために、PNFテクニックの負荷やアジリティ、プライオメトリックを増加させることができます。 PNFは、適切な神経筋の促通または抑制を通して全体的な運動を向上させるようにデザインされています。ファンクショナルトレーニングで最良な結果を出すためには、ファンダメンタルムーブメントが適切でなければならず、そうでなければ代償動作が生じます。多くの場合において、生じる代償動作は神経筋システムの乱れが原因です。これは柔軟性や筋力の問題ではないかもしれず、筋が必要なときに促通または抑制されず、結果としてモビリティやスタビリティの問題となります。PNFは、筋力向上またはストレッチの運動パターンを通して、モビリティとスタビリティのバランスを向上させるために用いられます。その人にとってどのテクニックが最も適しているかを判断するためには、ベースラインとしてのムーブメントスクリーニングを行うべきです。この最初のステップは、PNFとファンクショナルトレーニング方法を処方する際に必要で強く推奨されます。それは最も機能不全を起こしている部位についての所見に加えて、そのテクニックが有効な結果を出しているかを判断する際の素早いフィードバックを提供します。 PNFは長年、治療のテクニックの非常に重要な役割を担ってきました。より最近では、ファンクショナルな活動に焦点が当たることによって、PNFのテクニックはこのようなタイプのエクササイズプログラムの不可欠な要素となりました。PNFは、神経筋システムがファンダメンタルムーブメントの機能不全を起こしている場合に、あらゆるファンクショナルトレーニングに組み入れることができ、また組み入れられるべきものです。これらのテクニックは、漸進させることができるより効果的なエクササイズプログラムとシステムを与えてくれるでしょう。 PNFを含む追加のテクニックについての素晴らしいリソースは: 1.Voss, D. E., Ionta, M. K., Myers, B. J. (Ed. 3). (1985). Proprioceptive Neuromuscular Facilitation: Patterns and Techniques. Philadelphia, PA: Harper & Row. 2. Cook, G. Baseline Sports-Fitness Testing. In: B. Foran, eds. High Performance Sports Conditioning. Champaign, IL: Human Kinetics Inc; 2001: 19-47. 3. Saliba, V., Johnson, G., Wardlaw, C. Proprioceptive Neuromuscular Facilitation. In: Basmajian J., Nyberg R. (1993). Rational Manual Therapies. Baltimore, MD: Williams & Wilkins. 4. Prentice, W. E. & Voight, M.I. (2001). Techniques in Musculoskeletal Rehabilitation. New York, NY: McGraw Hill. 5. Cook G, Fields K. Functional Training for the Torso. Strength & Conditioning.19:2;14-19,1997.
固有受容性神経筋促通法(PNF):ファンクショナルトレーニングの基盤 パート1/2
ファンクショナルトレーニングは、長年にわたってパフォーマンス向上とコンディションを整えるための一部として用いられてきました。1980年代後半から1990年代前半に、伝統的な可動軸が固定された機器から、より基礎的で技能的な動作に移行するにつれ、より一般的になったように思えます。Gary GrayやVern Gambettaのような人たちは、私たちがアスリートや活動的な人たちをどのようにトレーニングするべきかといった考え方の変化を先行していたようでした。全ての考え方の変化と同様に、ファンクショナルトレーニングをどのように定義するかについてある程度の論争が起こるでしょうが、その基盤は全体的な動作の向上に基いているべきです。身体が正しく機能するためには、筋、関節そして神経筋システム間の統合性がなくてはなりません。 動きのトレーニングを見る時、動きを作り出す根本の理解がなくてはなりません。基本的な原理の一部がトレーニングを通じて組み入れられることは、正しい動作のメカニクスを獲得し、維持するために重要です。ファンクショナルトレーニングの焦点は、動きを向上させることであり、しっかりとした動きはモビリティと安定性のバランスを基本としています。このバランスは、効果的な筋と関節間の固有受容性の情報の伝達を必要とします。もし、モビリティと安定性のバランスがなければ、運動パターンは機能不全となるでしょう。機能不全は多くの場合で、神経筋システムの乱れに関連づけることができます。このシステムを改善させることでより効果的な運動を生み出すことになるはずです。調和の取れた動きにおける神経筋システムの有効性を向上させるためには、固有受容性神経筋促通法(PNF)のコンセプトが用いられるべきです。 PNFのテクニックは、Herman Kabatという名前の医師であり神経学者でもある人が、固有受容性のテクニックを、脳性小児まひや、その他の神経疾患を患う若い人たちに用いた1930年代後半や40年代から存在しています。彼は、遠位の体節を刺激することで、より近位の体節の固有受容器が活性化されるのを発見しました。目的は、神経学的システムが損なわれている部位の動きを向上させ作りだすことでした。彼のテクニックは放射、相反神経支配そして抑制に関するSherringtonの原理を基にしています。1 これらの原理は、調和の取れた動きにつながるリズミカルで反射的な動作を説明しています。 PNFは、身体の固有受容的システムを利用して、筋の収縮を促通または抑制します。PNF使用の先駆者の1人であるDorothy Vossは、PNFを、固有受容器への刺激を通して神経筋のメカニズムの反応を助長または促進させる方法、と定義しています。1 動きを起こすために、筋は相乗的に働かなければなりません。これには筋が基本的な運動を行うために、収縮や弛緩するための反射性能力を有することが必要です。スクワットやランジ、そしてステップのようなファンダメンタルムーブメントは、身体のモビリティとスタビリティを効率的に産み出しコントロールする能力に依存するPNFパターンです。これらの運動が機能不全におちいった時、多くの場合で身体の固有受容システムの混乱に遡ることができ、結果として筋が抑制される、または適切な瞬間に促通されないといったことに繋がります。これによってモビリティとスタビリティのバランスを作り出せくなりますが、このバランスを向上させることがファンクショナルトレーニングの基本となります。 今日の多くのエクササイズの専門家が直面する問題は、基本的なファンダメンタルムーブメントを行う能力を失った活動的な人達です。ファンダメンタルムーブメントは、スクワットやランジ、ステップやリーチングなどから成り、習慣や質の低いトレーニング、またはケガ等によって効率性が失われ、姿勢筋や主動筋が課題を行う際に効果性を失うことにつながります。これらの問題は、人々が運動や課題を行うために、モビリティまたはスタビリティを犠牲にした代償動作を作り出すことにつながります。例えば、股関節のモビリティの乏しい人はスクワットで沈むときやランジ、ステップを行うために腰椎のスタビリティを犠牲にします。筋力やパワーに焦点を当てる前に、これらの代償パターンを改善させることが重要です。 PNFテクニックを処方する前に、PNFがその改善のためにデザインされているファンダメンタルムーブメントを理解していることが重要です。スクワットやランジ、ステップそしてリーチを最初に評価することで、どの運動が最も機能不全を起こしているのかを確認するベースラインを定めることができます。ファンクショナルムーブメントスクリーン(FMS)は、どの運動パターンに最も欠陥があるかといった見識を得るために用いることができます。2 一旦欠陥が明確になれば、次のステップでは、これがモビリティあるいはスタビリティの機能不全によるものかどうかを判断します。これによって、PNFテクニックを導入し、漸進させるためのより効果的な方法をとることができます。もし、ファンダメンタルムーブメントが向上しなければ、選択されたテクニックは最も効果的なものではないかもしれません。PNFの適用は、求められる結果に大きく関わります。多くの場合で、PNFは柔軟性や筋力、コーディネーションの分野に欠陥がある時に、それらを向上させるために用いられます。PNFパターンの繰り返しによる教育と補強がコーディネーションを向上させ、同時に関節の安定性と神経筋のコントロールを促進すると考えられています。3 これと同じ原理が、向上した運動プログラムに効果的に作用させるためにファンクショナルトレーニングの際にも取り入れられるべきです。 PNFテクニックを行うときに活用されるべきである共通の原理が存在します。一つ目は、そのテクニックを用いて達成したい目標を完璧に理解することです。まず、どのテクニックがその機能不全を改善するために最善の選択肢であるか判断できるように、運きのベースラインを設定することが重要です。次に、身体活動中に適正な神経筋の反応を引き出すためには口頭及び視覚的なキューイングが必要不可欠です。エクササイズの専門家は、正しい手の位置やメカニクスを用いることができるように最も効果的な位置に自身を置くべきです。最後に、適切な放射が身体中に起こるように、遠位の体節が最初に促通されるべきであり、これはPNFの最も基礎的なコンセプトの一つでもあります。 PNFは、筋力とストレッチのテクニックとパターンの2つの分野に分かれています。最終的な目的は、運動パターンを向上させることであり、基本的なストレッチや筋力向上からパターンへと漸進させることは、非常に重要なことです。効果的な神経筋の促通を起こすためには、運動やパターンを強化する前に適切な関節と筋のモビリティを確立させなければなりません。モビリティが充分であることを確実にすることで、ファンクショナルトレーニングへとより効率的に移行できるでしょう。もしモビリティが確立されていなければ、ファンクショナルトレーニングの際に動きの代償が生じるかもしれません。しかしながら、特定の筋力向上のテクニックは、筋の収縮を維持し促すために、治療状況において推奨されます。 PNFの方法は、基本パターンの動きの可動域を通して最大の負荷がかかるように作られています。関節ではまず最も筋力を発揮できる可動域から開始し、筋力の弱い方へと進めます。PNFは、斜めや回旋の動きであったり多くの場合で身体の正中線をまたいだりする多くの運動パターンを組み込んでいます。水のボトルを拾い上げることから、投げるや蹴るといった日常的な課題や技術は、自然に斜めや回旋の動きを用います。