トータッチプログレッションでつま先に触れてみよう パート2/3

トータッチプログレッション 段階2:トーダウン 段階2も同様に行いますが、ここでは踵を持ち上げます。これによって、平衡を移動させ正しい体重移動を指導します。 両足を揃えて立ち、踵同士とつま先同士を付けます。板のようなものを利用して両側の踵を1~2インチ(2.5~5cm)上げます。 足の位置を変えないようにし、両膝を軽く曲げます。左右の膝の間にフォームローラーまたは巻いたタオルを挟みます。 腕を天井に向かって伸ばし、手の平は前方に向けます。 呼吸を変えないようにして腹部をできる限り引っ込めます。 そして、ゆっくり緩やかにつま先に手を伸ばしていきます。スティッキングポイントではフォームローラーまたはタオルをしっかりと挟みます。 つま先に触れられない場合は、膝を弛めてチーティングします。 再テストを行います。 この2つの段階を完了したら、板やフォームローラー、タオルを外し、トータッチ動作を行ってみます。 腕を天井に向かって伸ばし、腹部を引っ込め、つま先に手を伸ばします。 腰やハムストリングに多少強めの緊張を感じるかもしれません。また、段階1よりふくらはぎの緊張はやや軽めになるかもしれません。 トータッチプログレッションに沿って行えば、手がつま先にずいぶん近づくはずです。 これで効果がなかったらどうしますか? このプロセスを試みたにも関わらず、成功しない人もこれまでにいたことでしょう。なぜでしょうか?それは、はじめにアクティブストレートレッグレイズをチェックしなかったためです。 アクティブストレートレッグレイズができなかったら、それをまずできるようにすることが先決です。簡単なアクティブまたはパッシブレッグロワーリングドリルが、下半身を整えてくれるでしょう。 しかし、私たちのアウトラインに忠実に従って行えば、トータッチの大きな改善が見られます。 向上を“定着”させる方法 つま先に触れないというのは悪い習慣ではありませんが、痛みなしでつま先に触れることは、明らかに良い習慣です。 どうしたら悪い習慣を崩せるでしょうか。何かもっと良いものに置き換える必要があります。 これは、特定の筋のストレッチやストレングスということではなく、パターンを変えるということなので、誤ったパターンを打破した直後に、新たな情報をシステムにしっかりとアップロードしなくてはなりません。 そのパターンを打破しさえすれば、誤ったパターンに立ち戻る前の短期間のチャンスを得ることができます。 背中に棒のようなものを当てがえば、脊椎を真っすぐに起立した状態が保てるでしょう。 デッドリフトのメカニクスを練習してみましょう。簡単な方法は、壁から約30cm離れ、壁にお尻がつくように後方へ出来る限り近づけます。しかし、壁に寄りかかってはいけません。 ちょうどこれからトータッチをしようとしている人への良い教え方があります。「つま先に触れられるまでに5分も必要ありません。朝、外出する前や就寝する前に5分間ぐらいする時間はありますね。それだけです。」 デッドリフトやケトルベルスウィング、あるいは何らかのタイプの股関節のヒンジを伴う動き、ジャンプやハングクリーン、パワークリーンなど、もっとバリクティックな動きがあるようなエクササイズをするならば、これらを行う前につま先が触れるかどうか確かめてください。 最後に、3人の別々の患者がトータッチで改善した3つの症例を記したいと思います。これによって、トータッチのような簡単な動きがどれだけ強力で実践的かがおわかりになるでしょう。 トータッチ症例1:腰痛を訴える高齢の女性 グレイ・クックが、腰痛を患う高齢の女性を彼と同僚が担当したときの話をしてくれました。彼女の評価を始めたとき、信じられないほどバランスが損なわれていることが分かりました。彼女の腰痛は、伸展することで出ますが、トータッチに制限がありました。 前屈では痛くなく、後屈で痛みがありました。さらに、彼女のバランスは、極端にやっかいなものでした。グレイはこう言いました。「彼女がクリニックまで歩いて来られたこと自体が驚きです」。 彼女に片脚でバランスをとらせると、ふらふらとバランスを崩しどこかにつかまらなくてはならなかったり、3秒も経たないうちに挙げていた脚を下ろさなくてはなりませんでした。片脚立位は左右両方とも損なわれていました。前屈は痛くはないが、曲げることができませんでした。そして、後屈は痛みがありました。 臨床医として彼女の腰痛に対処する責任はありましたが、彼女の症状を悪化させないで初日から行えそうなエクササイズは2つしかありませんでした。痛みが出る方向に動かすのではなかったので、腰痛を悪化させるものではありませんでした。むしろ、前屈や片脚立位の機能的障害がある方向に動くものでした。 片脚立位は複雑です。多くの運動制御を必要としますが、動きはほとんど伴いません。グレイは常に、安定性や運動制御を改善しようとする前に可動性を増加させようとします。 彼らは、この高齢の女性がアクティブストレートレッグレイズを行うのをチェックしてみましたが、それほど悪いように見受けられませんでした。彼女が仰臥位になり、一方の下肢が上がらないようにしながらもう一方の下肢の膝は真っすぐにして、股関節がどれくらい屈曲できるかを見せてくれたとすれば、それを見た私たちは全員「この女性が、つま先に触れられないはずは絶対にない」と言ったことでしょう。 しかし、立位ではそれができなかったのです。 そこで、彼女を、両脚を前に伸ばした長座位で座らせました。彼女は、この肢位ではつま先に触れることができたのです。更に、つま先を触れるだけの可動性があることを示してくれたわけですが、立位になるとどうしてもつま先に触れることができないのでした。 彼女のバランスにチャレンジするために、彼らは、もうひとつのトータッチプログレッションを実施しました。彼女のサポートができる位置で、解説をしながら、彼女が呼吸を止めていないか、呼吸をしているかどうか確認しながら行いました。つま先を挙げた状態で10回トータッチを行い、休憩を入れました。 次に、つま先を下げた状態で10回トータッチを行い、休憩を入れました。グレイは言いました。「では立ってつま先を触ってみてください」。 彼女は完全につま先を触れたのです。 「片脚立ちでのバランスも見せてもらえませんか?」 彼らは、彼女の片脚でのバランス能力を、ほぼ4倍にしたと彼は言いました。 更に彼らが「後屈をしてもらえますか?」と加えて、彼女がした伸展は、以前よりも2倍の可動域がありました。可動域最終域で少しだけ違和感があっただけでした。 片脚立ちのバランス能力がトータッチを改善することで向上するというのは、どういうことでしょうか? 彼らは、彼女の矢状面上の動きを変えることにより、彼女の動作を改善しました。動きが改善されれば必ず入ってくる感覚入力も改善します。 可動性が高ければ高いほど、多くの情報がインプットされます。情報がバリアに達した瞬間に支障を来たし渋滞を起こし情報が止まってしまいます。可動性の制限があるところはどこでも、インプットされる情報は減少します。減少した情報がインプットされるということは、結果的に洗練性が減少することになります。 安定性または運動制御は単に、脳にインプットされる情報の処理および筋緊張の適切な振り分けによるものです。 安定性と運動制御は、決して筋の最大収縮によってもたらされるものではありません。ブレーキを急に強く踏むのではなく、軽く踏んで調整するのです。もしブレーキを強く踏みすぎれば、横滑りしてしまいます。逆に、踏みが十分でなければ、カーブを曲がり切ることはできません。これらの微調整には、インプットが必要なのです。 どうすれば、繰り返し説明しなくても質の良いインプットが作れるでしょうか? それには、可動性をもっと増やすことです。そしてなにか変化を起こせたかを確認してみます。 この症例で、彼らは幸運にもトータッチを正常化し、片脚立ちが可能な時間も質も4倍にすることができました。

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トータッチプログレッションでつま先に触れてみよう パート3/3

トータッチ症例2:膝の術後の患者 この患者は1ヶ月間、膝を20−25°以上には充分に伸展したことがありませんでした。彼は手術を受け、当初取り組むべきリハビリテーションに十分に参加していなかったのかもしれません。または、家でのエクササイズをしていなかったのかもしれないし、もしくは、担当者が、彼が行うエクササイズの重要性を説明せず、彼の疑問に十分応えていなかったのかもしれません。 この症例は、グレイと彼のパートナーが担当した、膝が伸展できない患者についてです。彼らは、ポステリアチェーンに鍼を施し、それからモビリゼーションを行いました。 彼の膝にテーピングをすることで、膝はほぼ完全に伸展できましたが、問題がありそうな行動パターンがあり、グレイは治療家としてこの効果は続かないと直感しました。この患者は膝が屈曲位のまま4週間も歩き回っていたのです。膝が15分間だけ伸展したからといって彼の行動を変え、いま治療したばかりの膝を使うには十分なはずはありません。 彼は、屈曲位の膝に長い間慣れてしまっていて、膝を伸ばすことに抵抗や恐怖感があったでしょう。そこで、彼らは、この患者が考えることなく膝の伸展を行える環境を作る必要がありました。 トータッチプログレッションはどうでしょうか? トータッチプログレッションで、彼は膝に力を入れるでしょう。 予想通り、彼らは、この患者にトータッチプログレッションを行ってもらいました。そして、毎回終わるたびに膝の伸展の動きは増えました。 トータッチ症例3:頚部痛 首に問題があると訴える患者ですが、彼の首には問題が見つかりませんでした。首を動かすと痛いのですが、動きの制限や筋力低下は見つかりませんでした。 彼の肩は調子が良さそうに見えますが、これまで診てきた患者の中で最もこわばった姿勢をしているひとりでした。 彼らは、彼の歩行を観察し、コアと骨盤、腰部が共同で機能していないことに気づきました。そして、彼らが、この患者に片脚立ちをしてくださいと伝えると、バランスをとる為に、いつも同じ側の肩をすくめなくてはなりませんでした。彼は、首や肩をまるでコアであるがごとく使わなくてはならなかったのです。コアが動員されるべき時、彼は代わりに上半身を使っていました。 これは、とても良く動く痛い頚部とまったく動かない痛みのない腰部の症例でした。 そこで、彼らはどのような方法を使ったのでしょうか? トータッチです。 彼らは、トータッチプログレッションに腰が耐えられるかを、臨床的に確認しました。そして、トータッチブログレッションを実施し、悪いパターンを壊し、つま先に触れることができるようにしたのです。 再び、片脚立ちを確認すると、今度は僧帽筋を使わずにバランスをとることができました。 僧帽筋がどれだけ強力か考えてみてください。スクワットで持てる重さより、シュラッグで持ち上げられる重さの方が大きいかもしれません。デッドリフトの達人ではない限り、シュラッグで持ち上げられる重さは、デッドリフトで持ち上げられる重さと同じぐらいでしょう。 安定させる手段が他にない為に、地面に足が着くたびに僧帽筋を動員しなければならないとしたら、首にどれだけのストレスを与えるか考えてみてください。 この患者の頸椎には何も悪いところはなかったのですが、コアが身体全体と共に矢状面の動きにおいて機能していなかったため、首が酷使されてしまっていたのです。 トータッチプログレッションを使うタイミング グレイ・クックによれば: 若い臨床医がかつて私にこう言いました。「クックさん、あなたはひとつしか芸当がない馬のようですね。どんな人にもトータッチプログレッションをさせています。」 私は、彼に言いました。「そうお考えになっても結構ですよ。あるいは、ここにあと2ヶ月いてそれを使うのを二度と見ることがないか、それとも30倍使っているのを見るかしても良いですよ。」 トータッチを使宇野は、それが私の好みだからではなく、必要な状況で使うのです。 3人目の患者は、サイドプランクを使った方がコアをより発火できたかもしれません。しかし、そうすることで、すでに過活動になっている頚部や僧帽筋はどうなるでしょうか。トータッチであれば、問題のある部位に負担をかけずにコアの発火を助けられる方法でした。 膝を伸ばせない患者に、家に帰ったら大腿四頭筋のエクササイズを何セットか行うように言うのは簡単だったでしょう。しかし、その機能性はどうだったでしょうか? 彼が立ち上がる時、すでに膝の伸展は行っていたのではないでしょうか? トータッチプログレッションでは、彼はすでに立位であり、膝は負荷下で伸展になることをすでに学習していたわけです。 高齢の女性は、腰痛の他にバランスにも問題がありました。トータッチプログレッションによって、バランスとることに一生懸命になるように言わなくても、どちらにも改善がありました。 バランスに問題がある人の多くは、バランスをとろうと一生懸命になると、かえって悪化してしまいます。なぜなら、もしバランスのとりかたを知っているのであれば、すでにそうしていたでしょうから。更にがんばるということは、そもそも間違った方向に更に努力することです。このような理由で、トータッチプログレッションは大変役に立つのです。 これらすべての症例で、トータッチを私が使いたかったから使ったのではなく、これが全てを救済すると信じているから使ったわけでもありません。必要とされる状況であったから使ったのです。

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トータッチプログレッションでつま先に触れてみよう パート1/3

簡単なテストで、その人が持つ潜在的な問題の多くを明らかにすることができます。 トータッチは、そのようなテストのひとつです。 深いスクワットのようにトータッチも、かなり細かいところまで観察すると、たくさんのことが分かる基本的なムーブメントパターンです。 それでは、どうしてつま先に触れることができない人がいるのか、そしてそれは何を意味するのかを見ていきましょう。 つま先に触れることができない理由 つま先になかなか届かない場合、ハムストリングの硬さのせいにされることがよくあります。なぜなら、この動作をするとそのように感じるからです。 しかし、ハムストリングの硬さが本当の原因なのでしょうか。それともこれは、なにか他の問題の症状にすぎないのでしょうか? 多くの場合は、後者です。過去のケガが完治していなかったり、トレーニングにおける悪い癖があったり、ポステリアチェーン(身体後面の連鎖)に対してアンテリアチェーン(身体前面の連鎖)のトレーニングの方が過多になってしまうなど不均等なトレーニングであったり、可動域が十分でなかったり、他の多くの原因の可能性があるかもしれません。これらどれがあっても、つま先に触れることができる生まれ持った能力を低下させる可能性があります。 なぜ皆さんやクライアントが、つま先に触れることができないのか、その主な理由は下記の通りです。 不十分な後方への体重移動—上半身が下方と前方に傾いた時、後方へ体重を移動できなければバランスを崩し、前方に倒れないようにするために、ハムストリングが収縮します。この場合、ハムストリングは、単にケガを食い止めるサイドブレーキにすぎません。 こわばった腰部—つま先に触れる際、腰を丸めたがらない人がいますが、おかしなことに、このような人ほど、デッドリフトなどの負荷下で危ない腰の曲げ方をしたがるのです。 頸椎や胸椎のこわばり—頸椎と胸椎のこわばりもまた、床に向かって手が届く距離を制限することがあります。 底屈筋群の緊張の増加—緊張の増加は、膝関節と足関節をまたがる腓腹筋に主に見られます。底屈筋群の緊張は、関連する痛みがない限り、ほぼ必ずといってよいほどハムストリングに感じられます。 では、どのように原因を絞り込んでいきますか? FMSのアクティブストレートレッグを行ってみてください。 片側の脚を動かさずに床にぴったり置いた状態で、もう一方の脚が約80°あるいはそれ以上挙上するにも関わらず、つま先に触れることができない場合、問題は骨盤よりも上部に潜んでいる可能性があります。 脚が70°前後にも挙上できない場合、問題は骨盤より下部にありますが、骨盤より上部に潜む問題を除外できるわけではありません。 注: ファンクショナルムーブメントスクリーンでは、トータッチはプログレッションではありますが、スクリーンではありません。 SFMA(メディカルムーブメントスクリーン)では、最初にトータッチを行います。もし、症状が引き起こされたら、その原因を見つけるためにリグレッション(後退)を行います。 デッドリフトをする前にトータッチができている必要がある理由とは つま先にしっかり触れることができない人は、矢状面での低速でテンションの高い動きをする時や、高速でテンションの高い動きをする時の、生体力学的な動きと体重移動が不完全です。 その動作に必須であるコアの安定化と脊椎の安定化を放棄してしまい、屈曲動作の初期に、安定し硬くなっているべき部位を使って屈曲しようとしているのです。 これは、適切なヒップヒンジが行えないということを意味します。この場合、軽いウェイトであってもデッドリフトをしようとする姿勢をとったとき、動作の初期には腰部を丸くしてしまいます。股関節を働かせるのではなく、最終的に、脊椎に負荷をかけてしまうのです。 注:非荷重の動きであるトータッチで脊椎を丸めることは、オーケーです。トータッチで脊椎を丸くしないことは、機能不全を示しています。なぜなら、それは正常な体重移動や身体力学、アライメントが乱れているということだからです。 トータッチは、腰部の緊張を緩め、踵からつま先へ滑らかに、一貫した体重移動ができるようにします。これらは共に深いスクワットとヒップヒンジに極めて重要です。 つまり、クライアントにトータッチを指導することにより、デッドリフトや深いスクワットを指導する為のより良い環境を提供します。 体力があって健康的に見える人を指導する時、確証がない限りその人がトータッチのような基礎動作パターンを遂行できると推測しないでください。デッドリフトやケトルベルスウィングのような負荷下の動作を行う前に、必ずスクリーニングを実施し、つま先に触れることができるかどうか確認しましょう。 つま先に触れるようになるためにどう指導するか つま先に触れることができない人のほとんどは、アクティブストレートレッグレイズの際、ある程度の困難が生じます。もしそれが問題であれば、常にまずアクティブストレートレッグレイズを先に正常化します。 もし、アクティブストレートレッグレイズが完璧であるにもかかわらずトータッチが行えないならば、立位でこの動作を行う際、完全な可動域を妨げる何かがあるのかもしれません。 この場合、簡単に行えるトータッチプログレッションに従います。ここではストレッチや軟部組織のモビリゼーションは一切必要ありません。 トータッチプログレッション 段階1:トーアップ 両足を揃えて立ち、踵同士とつま先同士を付けます。板等を利用して両側の前足部を1~2インチ(2.5~5cm)挙げます。 つま先に触れることができない人は、矢状面の動きにおいてのバランスのとりかたが異なります。体重の移動を正しく行うことができず、平衡を保つために、底屈と背屈に偏っているのです。 つま先を上に向けておくことで、バランスを保つために脚に頼ることが少なくなり、より体幹と体重移動の能力に頼るようになります。 足の位置を変えず、膝を軽く曲げます。フォームロールまたは筒状に巻いたタオルを膝と膝の間に挟みます。 前屈を妨げるのは、アンテリアチェーンやポステリアチェーンだけではありません。外側線である腸脛靭帯と大腿筋膜張筋も、前屈を妨げることがあります。両膝が触れていなければ、外側ハムストリングと腸脛靭帯に偏ってしまい、膝のロックが解除されます。これは、関節の後面を保護するためのハムストリングの発火をストップさせます。 両膝の間に何かを挟むことは、持越し効果もあります。内転筋群が発火すると、腹筋へも影響してそれらも発火します。そうすれば、相反抑制と背部の筋群の弛緩を得ることができます。 このポジションは不自然に感じるかもしれません。もしクライアントがこの足のポジションを保持できないようであれば、フォームローラーやタオルから他の小さめの道具に代えてください。 まず、両腕を天井に向かって伸ばし、手のひらは前方を向けるようにします。 呼吸を変えることなく腹部をできる限り深く引っ込めます。 ここで、ゆっくり緩やかにつま先に向かって手を下げて伸ばします。スティッキングポイントに達成したらフォームローラーやタオルをしっかりと挟みます。 スティッキングポイントに達したら、フォームロールまたはタオルをしっかりと挟むことにより、腹筋群を活性化させ、大腿の外側と背部を弛緩させ、さらにつま先に近づくことができます。 腹部を引っ込めた状態を保つことを忘れないようにしましょう。 つま先に手が届くまで繰り返し行います。 つま先に触れることができない、少しチーティングします。 これでもまだつま先に届かない時、足の位置を変えなくても膝を曲げることによりチーティングします。 息を吐いて、つま先に手を伸ばします。 たとえ膝を軽く曲げてしまうことでチーティングしたとしても、毎回きっちりと成功することが重要です。 「毎回、できる限りチーティングを少なくするようにし、チーティングする必要がなくなるまで改善させていきましょう」とクライアントに伝えます。

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運動制御の全て パート2/2

もし動作パターンが崩れていれば、深みにはまってそのパターンの理解を分析しなければなりません。乏しい入力を促進している可動性の問題なのか?または乏しい安定性と運動制御を割り振っている処理の問題なのでしょうか? 私達はこういった問題を見つけて対処し、修正することができるのです。筋を見るのではなく、筋の不適切な緊張を生み出しているパターン(またはそれの欠如)を見る事によってこういった問題を管理することができるのです。こわばりと弱さは、スペクトラムの両端にありますが、同じ問題を現していることを忘れないでください。 過剰で不必要な筋緊張は、表面上では可動性に乏しく、ケアしなければいけないように見えます。それは何かに駆動されているのか、または単純にクリーニング可能なハードドライブにひっかかっているクセなのでしょうか? その弱さはただセット数と回数を必要とするものなのか、それとも代償動作の原因となっている不適切な可動性、運動制御または非効率的な動作パターンによって引き起こされているのでしょうか? その代償動作は可動性の欠如、または長年気づかずにいた身体のどこかの運動制御、もしくは単純にクリーニングされるべきハードドライブの何かでしょうか? これらの問題を簡単に見つけるために、システムが必要なのです。しかし私達が局所の筋のこわばりや弱さにこだわり続ける限り成功することはないでしょう。よく言われることですが、月を指差すことは月を見せる為ですが…大抵の人はその指を見ているのです。 不適切な筋の緊張はシステム内の不調和を現しています。不調和は適切に処理された不適切な入力の問題、または適切な入力の不適切な処理かのどちらかが原因で起こります。 私達はこの明確で系統だった方法でアプローチすることで、どちらの問題か見つけ出す必要があります。常に明確であるというわけではないのですから。お決まりの答えは不適切な入力と不適切な処理がいかなる場合にも起きているということでしょう。 それもある程度は正しいかもしれませんが、これでは行動項目が広がりすぎて、介入の為のフィードバックを得ることができません。もし、これとは反対に誰かの股関節の乏しい運動制御が足首の可動性からきているとすれば、あなたはソーシャルメディアに頼ることなくその質問に簡単に答えることができるでしょう。足首にもう少し可動性を作り、股関節の運動制御をもう一度チェックして下さい。もし足首の問題が股関節の乏しい入力と不適切な運動制御、弱化を操作しているのなら、そこで答えが出るでしょう。たとえそうでなくとも、それもまた答えとなるのです。 この演繹的推理はファンクショナルムーブメントシステムの背景にある “ソースコード”です。もしそれが可動性の問題か、運動制御の問題なのかを知りたいのであれば、テストをして下さい。そのために作ったのです。 自分達の為に。私達も同じ疑問を持ち、論理的な答えがあるしっかりとしたシステムを見つけられなかった。スクリーンやシステムを発展させようとしていたわけではありませんでした…ただ競争における優位性が欲しかったのです。何が不適切な緊張をもたらしているのか見つけたいのなら、確実に行える評価方法が私達にはあります。信じられないくらい効率的なファンクショナルテストで、運動制御を評価したいのなら、私達はそれも提供できるのです。 私達は、明確なフィードバックをする際の助けになるような方法で動作基準を活用しようとしています – 個別の矯正か、プログラミング修正に焦点をあてる必要があるかを判断するために。 どんな時でも、こういった動きは大きな違いを生み出します。破綻した生体系システムの理解 – 生命体または環境 – は正しい科学の証明であり、運動行動をたどることはエクササイズやリハビリテーションのスタート地点なのです。 私達はファンクショナルムーブメントシステムであり、エクササイズ会社ではありません。 あなたのプログラミング、リハビリテーションや専門のパフォーマンストレーニングを頼りにする人達の為に、私達は動作をチェックしてフィードバックをする優れたツールを提供します。ムーブメントスクリーン、テストそして評価は時間がかかるのは事実です。実行計画を発展させるためには、より多くの時間を費やすべきであり、それは仕方ないことです。評価で費やした時間はリハビリテーションや動作の矯正、身体的発達に費やす実験的な時間を節約できるのです。 これは昔の大工のルールです:2度測って一度で切る 新しい評価基準ができて適切に検査された時、このしっかりとしたフィードバックループを専門的な仕事に受け入れられない場合、そこには理由が2つだけあります: 新しいツールを信頼していない。多くの記事や投稿は信頼を与えません…それを実際におこなう必要があるのです。 その方法がベースラインにプラスに影響することを信頼していない。それは、私達皆が直面する挑戦ではないでしょうか。

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運動制御の全て パート1/2

運動制御のキーポイントとなる要素は筋緊張ですが、ここでは不適切な筋緊張に重点を置きたいと思います。 かなり頻繁に、理学療法とリハビリテーションという観点から、私達は必ずしもこわばりや弱さのみを評価しているわけではありません こわばりは、本来あるべきブレーキシステムが機能しない場合において、たびたび身体がサイドブレーキを使う方法です。身体が持つブレーキシステムは運動制御と呼ばれ、入力、処理、正しい出力をする為に細かく調整されています。システム内に欠陥が存在する時 – 動作やコーディネーション、タイミングや対称性のいずれかにおいて – 機能不全が観察されます。 身体は生き残る為、そして身体本来の働きが危険にさらされるような状況下においてサイドブレーキシステムを作り出すようにセットされています – それはトラブルから遠ざける為に常に働き続け、ブレーキをかける傾向にあるのです。このサイドブレーキは疲労、怪我、その他組織の保護や痛みを避ける安全装置です。より良い制御を得られるかもしれませんが、同時にエネルギーを浪費して効率性を失ってしまうことになります。弱化という問題は残ったままです。これは多くの場合失調であり、局所的なものではなく全身性のもので、朝起きて動きだしたり、翌日もう少し動いたりすることによって簡単に解決されてしまいますが、局所的弱化が、ただの弱化であることは滅多にありません。 単体の筋や筋群の局所的な抑制は、リハビリテーションにおいて神経性の問題や怪我からくる障害、病気や機能不全として診断されています。私が述べている微妙で目立たない抑制とは、姿勢やパターンを遂行するために適度な緊張の度合いを支配する筋の能力不全です。ここでの本当の問題は、私達が筋のこわばりや弱さを単純に評価した時にそれを筋の問題であると考えて道に迷い込んでしまうことです。多くの場合、それは指令の問題なのです。 もし、深筋膜から表層の傷跡や過去の怪我による瘢痕組織まで、全ての組織に拘縮がある場合、筋は単純にシステム障害から身体を保護する為に事前に緊張したり、安静時の筋緊張を極端に高めるように指示されるのです。この拘縮はまた他の組織からのシグナルだけでなく、すでに治ったはずの過去の怪我からも持続されてしまいます。筋肉は、怪我の治癒という情報を受け取っていなかったのです。 脚を骨折している子供を想像してみて下さい。理学療法を終えて最大可動域、筋力、そしてムーブメントスクリーンにおいても極めて良い状態ですが、まだ早歩きやランニングで跛行をします。なぜでしょうか?なぜならそれが習慣となっているからです。入力は正しくされていますが、痛みを抱えた習慣的な生活習慣とリハビリテーションが跛行を生み出し、それ自体が実際の問題となってしまっています。新しい機能不全パターンができてしまったのです。怪我の後の跛行は、ストレスを軽減しある程度の可動性を維持することができるため、機能的なものです。ストレスを軽減する必要がなくなった時、跛行の原因となる問題が解決された時に、これが機能不全となるのです。 跛行の原因となる怪我は解消しても、まだ脚を引きずっている –これはプロセスの問題です。不必要なこわばりや乏しい関節可動性、または乏しい組織の伸張性からくる不適切な入力が、私達がこわばりと捉える防御性の緊張の原因となっているのです。たとえこういった代償が無くなった時でさえ、クセや防衛機能はまだ残っているのです。  柔軟性や可動性が問題の場合、高まった緊張に対処する最善の方法はパターンに注目することです。パターンの中に答えがあるのです。それは私達が考えていなかった可動性や柔軟性に関与している可能性のある他の全ての問題に気づかせてくれるでしょう。 同様に、私達が強化やエクササイズのルーチンで改善しようとしている弱点も、負荷や動作パターンの難易度が抑制となることがあります。抑制は、自動的にうまくリセットできません。私達が自分達のシステムをリセットするか単純に代償するかの選択をする時、たいていは代償を選ぶのです。 コレクティブエクササイズとは、通常は後退性の発達パターンを活用することにより、代償してしまう生物学的ニーズと代償作用のきっかけを取り去ることを理解する方法論です。全てを機能的な足部のポジションで行うのではなく、私達を最初の一歩に導いたパターンや姿勢に戻るのです – そのパターンがローリング、ハイハイ、膝つき、両膝立ち、四つ這いです。私達は全てのレベルの姿勢やパターンが次のレベルへのプログレッションを支えるということを示す為に動作を加えるのです。 これらのパターンは、代償作用だけが唯一の手がかりとなる立位になる前に、問題箇所を浮き彫りにしてくれます。部分的な柔軟性の問題を評価することもできますし、部分的なストレングスの問題を評価する事さえ可能ですが、最終的には運動制御システムがこれらを引き起こしているということを理解しなくてはなりません。 運動制御システムは入力、処理、そして出力を扱います。信じられないかもしれませんが、最も簡単なチェック方法は単純に出力を見ることです。もし動作パターンの質が許容範囲であれば、その特定の動作パターン、形や姿勢で得られる身体の資質を見つける為にそのパターンに負荷やストレスをかけてください。

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伝統 パート1/2

伝統はもはや役に立たない。そうです。そう言いました。 伝統は、独立した持続可能な文化を築けない場合、役に立たなくなります。 革新は伝統の敵ではありません。実際、伝統は革新するための安定した基盤を提供してくれます。また、伝統は、探究心を刺激する知識を与えてくれます。 まず、 “私たちは目標位置に立てているのか?”と自問してみます。伝統的な道をたどっていて、伝統的な方法を開発していないのであれば、あなたは今分岐点に来ています。進歩させてくれない伝統をとがめますか? それとも、伝統的な方法に対応し適応できないあなた自身を責めますか? これは、生物または環境を表すしゃれた言い方です。 特定の人たちや集団にはもはや有効でない伝統を保存するのか、それとも変化していく環境のニーズに伝統が合わなくなるかのどちらかです。 伝統をどう分析するのでしょうか? 文化をどう分析するのでしょうか? 西洋ではテストを行います・・・たいていの場合、それが間違いの元になのですが。 西洋におけるヘルスケアで私たちが行う対策のほとんどは、長生きすることに焦点を合わせます。つまり、生きていくことに喜びや貢献の意欲を持ち続けている高齢者に社会との繋がりを持たせ活動的にすることです。 では、伝統的にこの水準を満たしている文化を研究してみてはどうでしょうか?西洋モデルでは、病人の研究ばかりで健人の研究はされていません。なぜならその方が簡単ですし、西洋モデルでは病気や症状がない状態に着目してしまうからです。 私たちのシステムは、病気や疾病、障害に対する恐怖の上に築かれています。本来の健康モデルは、長寿で活動的な営みのある生活に焦点を当てるべきです。西洋の伝統は、要は快適さと便利さがすべてなのです。そしてその結果がこれです。 世界地図の青いゾーンは、百歳以上の人が珍しくない地域です。これらの人口分布から気づく幾つかの点があります: 家族との繋がりが深い。 ダイエットをしない。 エクササイズをしない。 食べ物の選択は、文化に根差しており、彼らの活動量は健康と体調を維持できるレベルです。彼らは活動的であり忙しく生活しています。(私たちが考えているような)フィットネスの習慣はありません。 私たちがダイエットやエクササイズに取り憑かれている傍ら、どうすれば、このようなたくましい百歳が生活できる文化を取り入れることができるでしょうか? パレオダイエットが再発見されたとき、数千ものブログで「パレオとは何か?」や「パレオではないダイエットとは何か?」について意見が交わされました。ひとつ私が言えることは、パレオは、毎日3回の肉中心の食事ではないということです。パレオ的狩猟採集民は、通常断食から満腹へを行き来します。断食/満腹をしっかり理解したいのであれば、オリ・ホフメクラーのウォリアーダイエットを調べてみてください。 パレオ式ダイエットが悪いと言っているのではありませんが、重要なのは除外であって、必ずしも包含ではないということです。しかし、西洋文化は抜け道を見つけます。弁護士が憲法の抜け穴を探し、学生が勉強しないで試験に合格する方法を模索するように。 教師達も大したことはありませんが、彼らの批判に飛びつくのはやめておきましょう。かつて教えることの焦点は、学習の向上と問題解決スキルを身につけることでした。残念ながら現在の環境下では、多くの場合、“学習水準”テスト(そうです、バージニア州ではSOLsと呼ばれています)があるために、先生は単にテストのためだけに教えることを強いられます。本当の意味での問題解決や批判的思考に専念する時間はほとんどありません。 フィットネスも同様です。私たちは、フィットネスにおけるバイオマーカーを定め、そして、そのバイオマーカーを達成できるように、それまでのプログラムを完全にひっくり返してしまうのです。例を挙げてみましょう: もし、サイドプランクで左右等しく45秒間完全に静止できなければ、体幹が減弱しているか、またはバランス不良と考えられます、という最新の研究を発表したとします。そうなると、フィットネス業界とアスレチック産業のお決まりの反応として、エクササイズに45秒間のプランクを取り入れるようになるでしょう。 ここで自問しなくてはなりません:この無作為なサイドプランクの実施時間は、問題そのものや問題の原因と関連しているのかどうか? 握力に関連する統計を見てみましょう。握力は信じられないほど体力全体を反映しています。そして、生涯を通しての体力を予測するよい指標です。高齢の入院患者のうち握力の強い方がより早く退院するという研究もありました。 握力はバイオマーカーでしょうか? もちろんそうです。これは、良いことに関連するバイオマーカーのようです。では、だからといって早速、握力強化を図る必要があるということでしょうか? 違います。整った身体を維持する生活習慣こそが、首や肩、肘、手首、手を健康に保ち、握力の強化を促進するような姿勢を保つのです。 握力の問題は、単に手や前腕の筋群にとどまる問題ではありません。握力測定器を使ってひどく悪い姿勢やポジションで測定すれば、誰の握力にも影響を及ぼします。試しにやってみてください。握力は、環境に対して本質的に自立的に持続性のある関わり合いやつながりを持っているかどうかを見極めるバイオマーカーのようです。

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伝統 パート2/2

私が大学に通っていた頃、なぜリストラップを巻かなくてはならない選手がいるのか疑問に思いました。握力のせいでラットプルダウンがこれ以上できないのならば、それ以上ラットプルダウンをする必要は全くないのではないか? システムのうち握力が最も弱い要素であるならば、システム全体がバランスを取れるようになるまで、その状態でのトレーニング効果を得ればよいのではないか? と私は自問しました。 西洋ではどうするでしょうか? 最も弱いリンクを見つけ、フィットネスやエクササイズの器具が豊富にあるために、その対策を練るのです。 大学1年生のほとんどが受講する運動学入門講座では、身体の筋の分布を学び、同時に私達がぬぐい去ることができない筋への孤立化したアプローチの背景を作ってしまいます。 “学んだことは忘れなさい” とヨーダは言います。身体を解剖学的に見ることが問題なのではありません。その解剖学的知識でフィットネスへの取り組みやパフォーマンス向上への対策を短絡的に作ることが問題なのです。 個々の筋の働きを理解したと思ったとたん、構造や機能を生み出す多くの補助的な課題の周囲に壁を作り、その筋が持つ相乗効果や、その拮抗筋が強く収縮しているときの筋への影響などが理解できなくなってしまうかもしれません。 新しいテストを採用し、そのテストのためだけに教えたがる西洋文化の傾向が直接の原因である有効性の低下を、かなり憂慮しています。ある意味、私はテスト会社を設立しました。なぜ私たちはテストをするのでしょうか? それは、次のステップに進むにあたって達成可能なレベルにいるのかどうかを見極めるためにです。 テストへの取り組み方が正しくても、テストの不合格が続けば、それは、次の段階や強度や難易度がさらに高い環境でうまくいかないであろうことをかなり良く予測できることになります。つまりテストは単に予測のために使われているのです。 テストのためになぜ指導するのでしょうか? ファンクショナル・ムーブメント・スクリーンや Yバランステストなどいくつかのパフォーマンス測定は、たいていすでに独自のテスト方法を持ち合わせている人たちに実施されています。私たちは決して彼ら独自のテストを止めさせるつもりはありません。 実際のところ、プロ選手チームや軍隊など特有の文化を持つ集団を対象に、機能性や身体運動能力をテストする時、何かを変えたいとは思いません。彼らが物差しのどのレベルにいるかを把握したいのです。機能障害や欠如が見つけられても、その問題に修正を加え、単にその人がテストをもっとうまくできるように矯正するようなことが目的ではありません。 何も加えないようにしています。身体文化の不要な側面を取り除くことで、そうした行為から生じるマイナスの副作用から解放されるだけではなく、真の効果を生み出すことに集中する有意義な時間を得ることができるのです。 リハビリテーションや訓練、指導、教育の旅路に乗り出すにあたり、テストを使わなければプロフェッショナルとは言えません。また、テストのための指導を行うのはプロフェッショナルとしてとても“青い”と言えます。テストのために教えるのであれば、文化を変えることはできません。かつて利用価値があったバイオマーカーを単に破壊してしまうのです。 製薬会社が血圧やコレステロール値に対して何をしたかに注目してみましょう。これらの値を下げる方法を与えてくれましたが、生活習慣を変えてはくれませんでした。これらの値を下げたところで、私たちはこのままでは肥満や糖尿病、心疾患、癌の罹患率の世界記録に突入してしまうでしょう。 数値を合成的に調整することは、その完全な文化から良いテスト結果を生み出す文化的環境を作ることとは、全く異なったことです。クリストファー・マクドーガルは、このことについて彼の著書『BORN TO RUN 走るために生まれた』で触れています。『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ』では、しっかりとした文化的伝統の概念まで掘り下げて触れています。 もし、みなさんが現在、あまり良い結果を出せない伝統の中にいるならば、文化を変えるタイミングかもしれません。偉大な業績を上げた伝統をみれば(デ・ラ・サル・フットボールチームやジョン・ウッデン野球チームなど継続的に勝利を納めているチーム、または、世界中のブルーの地域で見られる長寿)、そこではテストのための指導以上のことを行っていることに気がつくでしょう。 彼らは、継続的に彼らの文化を調整しているために、私たちが発案するテストで欠点を検出することはまずないでしょう。このように、たったひとつの評価基準で良い結果を求めるのとは対照的に、彼らは私たちのテストで調べられるすべての要素の総合的な相互のつながりに注目し、すべての要素をつなぐ共通の変数を見つけるのです。 私の会社、ファンクショナルムーブメントシステムは、動きや身体能力、パフォーマンスのバイタルサインとなるべきものをテストすることに貢献しています。 テストの心配をすることなく人々を漸進させることを可能にする、自由な文化的体験の流れをもたらす練習の焦点やトレーニングへの適応を獲得。 そうすれば、テストされることがあっても大丈夫です。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2234字

なぜ両膝立ちなのか? パート2/2

このポジションホールドをしている最中にまず行わなければならないのは、経験をするということです。――障害や問題がどこに存在しているのかを気づかせてくれます。この静的なホールドができたら、頭を回し首の可動域を調べてみます。目で動きをリードするようにして、ケトルベルや両肩を動かさないように、振り向ける限り後ろを見てみます。 両サイドでこれを行い、左右ほぼ等しいと感じたならば次に進みます。左右等しくなく、痛みを感じたならば、中止します。ほとんどのトレーニングをはるかに下回る強度で、すでに痛みがある場合、検査を受けた方が賢明でしょう。 では、首がこわばっていて一方にだけ回旋しにくい場合、これまでに呼吸について学習してきたすべてのことをここで応用できます。 呼吸をゆっくり行うようにします。 吸う息よりも吐く息をずっと長く行うようにします。 吐く息でさらに可動性を広げ、吸う息で元の姿勢に戻します。 そしてもう一度、数回動いてみましょう。 “何でこんなに硬いのか?”と問いかける頃には既に、呼吸を行うだけでかなりほぐれてるかもしれません。 硬いのは、しばらくその方向に動かしていなかったからかもしれません。または、コンピューターの画面を左に置いて仕事をしていたからかもしれません。実際のところ原因は分かりませんし、質問する暇もなく5分ほどでほぐれてくるのであればそれほど重要ではありません。質問ばかりしていないで動いてみましょう。 次に、これまでとまったく同じ動きに肩の回旋を加えます。左右対称でなければ回旋が少ない側のトレーニングをします。もし痛みが伴うようであれば、痛みの原因を探ってみます。最後に頭と肩、そしてケトルベルを順に回旋します。股関節の位置を変えずに肩を可動域の最大限まで回旋します。 可動域の最終に達すると呼吸が楽にできなくなります。1インチ(2.5cm)ほど手前で動き、呼吸を何回か繰り返します。たいてい片側で“これ以上このポジションをキープしたくない”と感じるでしょう。それは、ちょうど誰かに締め付けられているような感じで、深い呼吸がしにくくなります。不快であるというより、不自然と感じるでしょう。 もし、この感覚を痛みと区別できるのであれば、そのポジションであと数回の呼吸をしても害はありませんね? パニック呼吸とは正反対のコントロールされた呼吸を約10回行った後、改善が少しでもあれば、さらに10回呼吸します。 両膝立ちで、フロントキャリーポジションができ、回旋が左右対称にできるようになったら、強度を上げていきます・・・ただし、重さを上げるわけではありません。 ケトルベルを身体の後ろに回し、常にケトルベルを床に押し付けるように持つことを覚えておきましょう。すべての異なるポジションを通して、床に押すようにホールドすることを忘れないようにします。特にケトルベルを後ろに回す時、肩をすくめる傾向がありますが、そうしないためにも床に押すようにすることが最良です。これは、肩をすくめないようにするためですが、ポジションを真っすぐにリセットするための対策でもあります。 ケトルベルを後ろに回したら、統合性を保ちながら股関節をできるだけ伸展できるように筋を収縮させます。腹筋と股関節屈筋群の活動が早すぎると、防御のために股関節を屈曲したくなるのです。不必要な緊張を持つことなしに統合性を得ることができます。 辛抱強く。時間をかけて。すぐにできるようになります(たぶん私たちにとってはすぐではないかもしれませんが)。無理に行っているからではなく、時間をかけて呼吸が楽になるにつぃれて、統合性も良くなるからです。 投手やゴルファーを考えてみてください――片側に偏ったアスリートです。彼らには、まだ試したことのない可動性があります。彼らには姿勢を矯正するようなエクササイズを薦め、正常な姿勢の統合性を取り戻すようにします。 このような姿勢はリセットされるべきで、どんなときも必ず中心を取り戻すようにします。両側で複雑な動きをする必要はありません。両側の基本的な動きで十分です。これは、呼吸や胸椎の可動性を確認するとてもよいチャンスです。 両膝立ちのホールドの後、プレスや肩のトレーニングがよくなったと感じる人もいます。これは、ヤンダの上位交差症候群で確認できます。下位交差症候群では、腹筋群が働かない不足分を股関節の屈筋群がどのように補ったり、臀筋群が働かない不足分を腰の筋群がどのように補ったりするのかを説明しています。 同様のことは、上半身でも起こります。統合性がなければ、肩をすくめてばかりで、僧帽筋や首を不適切に使ってしまいます。しかし、この膝立ちのホールドポジションを保つにはアライメントが重要なのです。アライメントが崩れていると、きちんと行うことができません。アライメントが整っていれば、 “たいしたことないよね?” と、周りを見て言うことでしょう。 姿勢筋は1日中ずっと活動していることを忘れないでください。姿勢筋がアライメントを制御する一方で、主導筋は関節角度を変え、こうしてパターンを作り出しているのです。姿勢筋と主導筋が共にに働けば、効率よく動くことができます。両方がなければ効率性は得られません。まずは姿勢筋のトレーニングで、その次にパターンを構成する筋群です。 これらのポジションで胸椎の可動性を調べます。胸椎の右と左への回旋が、より対称に近づいたら、胸椎の伸展が改善したことになり、肩甲骨の安定や腕を頭上に上げることが楽にできるようになります。 もし、オーバーヘッド動作を行っている時に肩の統合性や腰椎のアライメント、骨盤の高さが整っていないのであれば、両膝立ちホールドをすることによってターキッシュゲットアップやミリタリープレスをより向上させることができるでしょう。大腿四頭筋やハムストリングスの活動やしっかりとした強い足と足首を除外したうえで、膝立ちしてみて何が残っているか見てみましょう。 とても力がある人にとって両膝立ちは、謙虚であり屈辱的なこともあるポジションです。それでも、しっかりと注目し、呼吸を活用すれば、ただのエクササイズではなく経験をすることができるでしょう。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2635字

なぜ両膝立ちなのか? パート1/2

私がなぜニーリングホールド(膝立ち姿勢の保持)を開発したか、どのようにその利用が功を奏したか、どういう場面で役に立つのかという背景をここで説明しましょう。 まず初めに、私たちはこれまでの長い間、両膝立ちや片膝立ち動作をコレクティブエクササイズとして利用してきました。なぜか? このポジションはパターンと同じ位に重要だからです。ポジションは姿勢を構成し、パターンは動きを構成します。 ポジションと姿勢には統合性が必要であり、動きのパターンには経済性、または効率性が要求されます。しかし、姿勢を考慮することを忘れ、パターンにばかり関心が寄せられていることに、私は気づきました。 動きのパターンの合間にとる姿勢やポジションは、ちょうど音と音の間に起こる空白のようではありませんか? もし音がすべてつながっていたならば、はっきりと音は聞こえてきません。もしすべてが空白であれば、何も聞こえません。 静と動のブレンドが、実は動きのパターンを形成するのです。 私見ではありますが、膝立ちをすることが重要な理由は、生活の中で不可欠だからではなく、これが四つん這いやローリングパターンよりも重要であると思うからです。もし、ローリングパターンをリセットする必要がある場合や、簡単な腰部のエクササイズ、また時にはベアークロールのように複雑なエクササイズをして、しばし四つん這いの姿勢で脊椎に負荷がかからないようにする必要がある場合はよいのですが、発達段階において両膝立ちは、脊椎に実質的に荷重がかかる最初の動作なのです。 幼児が床をハイハイするのを観察してみてください。彼らがハイハイからいきなりスクワットをすることはありません。まずは、膝立ちを試みて、たくさん膝で立つことによってコアや安定性に照準を合わせます。足首や足部、膝はまだここでは大きな役割を果たしていません。主に働いているのは股関節、骨盤、脊椎、体幹といったコアです。腕は補助的に使われ体重を支えたりバランスをとったりします。 これらの膝立ち姿勢は素晴らしくもあり、謙虚でもあります。両足で立つ状態でなくなると、間違いが見つけやすくなります。世界中の多くの宗教で、ある種の膝立ち、もしくは服従姿勢があるのはそれが理由かもしれません。 たとえば、ある立位の姿勢で、両足で立っている時には上手く姿勢がとれていないが、膝立ちでは素晴らしく姿勢が良いとします。だとすれば、少し演繹的に推論してみましょう。もしかしたら、大きな問題が膝より上ではなく膝より下に潜在しているのかもしれません。しかし、もし立位で問題が隠れていて見えず、膝立ちになった時に表面化した場合、問題は‘股関節’にある、‘コア’にある、そして‘安定性’にあると考えます。 両膝立ちの姿勢は、股関節や脊椎、上部胸椎をターゲットにする最善の方法です。 両膝立ち この特定のドリルにおける両膝立ちでは、両膝が広く開いていることが重要です。そうすることで土台がそれほど安定していなければ試すことができないような(補助輪のようなものです)動きを試すことができます。そうすれば楽になるということではなく、実際には、とてもやりがいがあるものです。 両膝立ちでは、能動的機能不全(主導筋がもうこれ以上短縮できない時)と受動的機能不全(拮抗筋がもうこれ以上伸張できない時)が起こります。これらの定義を考えてみましょう。大腿四頭筋が伸ばされすぎてしっかり働くことができない時やハムストリングスが短縮しすぎていてしっかり働くことができない時は、臀筋群や骨盤、腹筋群を使うしかありません。ブラディミア・ヤンダが述べている下位交差症候群を、ここでの動きの中で試してみたいと思います。 まずケトルベルを正面に持ち、それから自分の身体の後ろに回します。ここで大きな注意点があります: もし、ファンクショナルムーブメントスクリーンで肩の可動性またはアクティブストレートレッグレイズが‘1’だった場合、それは、運動制御や安定性のトレーニングに可動性の問題を持ち込むことを意味するのです。 そうしないように。 なぜそれが問題なのか? 可動性が不足しているということは、感覚が遮断されており、このエクササイズでは、ありったけの感覚情報を処理する方法を最大限に引き出すように要求するからです。 もし数分間のフォームローリングやちょっとしたストレッチでより多くの感覚情報が得られるのであれば、なぜそんなに不完全な情報を処理しようとするのでしょうか? 股関節の伸展角度でたった3~4度の変化でも、新しいポジションでの運動制御のためのトレーニングできる負荷を追加することになります。 これはウォームアップでもあり、スーパーセットでもあります。トレーニングの開始や終了時に、このように股関節が伸展位で腰椎が真っすぐになるポジションでも、コアの姿勢やポジションにある程度の統合性があることを確認する最適な手段です。 両膝立ちをもっと詳しく見てみると、三角形の姿勢になっています――足は内側に向け、膝は楽な範囲で大きく広げます。きつくなるぐらい広げても構いませんが、股関節はしっかり伸展位になっている必要があります。正面でケトルベルを持ち上げるところから始めます。そして、単にそれを1~2分間ホールドしていられるかやってみます。頑張ってみましょう。両肩を下げ、ケトルベルを常に床に押すようにします。こうすれば、自分の中心を意識することができるでしょう。 約1分間その姿勢のままでいると、かなりの負荷を感じます。肩をすぼめたり、ケトルベルをきつく握りすぎたりしてはいけません。この点においては、常に効率的であってほしいのです。そうすれば、“必死になってケトルベルを10分間ホールドしてください”と指示することができますし、みなさんにはそれをできるようになってもらいたいのです。みなさんをグッタリさせようというわけではありません。グッタリする人がいたとしても、それを意図しているのではありません。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2536字

熟練 パート2/2

ムーブメントスクリーンを紹介すると、エクササイズの専門家の多くは、とても躍起になって、動きの完璧さを求め、動きが完璧でない限り負荷やストレスについては考慮しません。これは決して私たちが伝えようとしたことではないのです。 私たちは、最低限の到達レベルと動きの障害に対する戦略的注目について主張してきましたが、多くの人々は、ムーブメントスクリーンを、きついワークアウトや、抵抗、衝撃、三面的動きを体系的に減らすことに使いました。人間の身体を腫れ物に触るように扱い、詳細なコレクティブエクササイズを使って、恐らくは正す必要のない動きまで矯正しようとしていました。 これは残念なことです。なぜなら私たちは、生まれたその日から、決して完璧に動いたことはないからです。将来も、私たちが完璧に動くことはないでしょう。私たちには常に改善できる何か小さなことがあり、ここで問いかけなければいけないのは、「それは障害なのか?」ということです。動作不全は、あなたが到達したいレベルへの前進を妨げていますか? ムーブメントスクリーンに問題がないなら、何か別の問題があるかもしれません。それが私の最後のポイントに繋がります。 全てを正しく行っているとすれば-正確なムーブメントスクリーンができ、根元的な医学的問題も何もないが、クライアントやアスリートにコレクティブエクササイズがうまく働いていないとすれば、するべきことは一つです。  身体に、進行中の医学的問題や構造的異常の既往歴がない状態で、特定のパターンに焦点をおいて、正確に実行されたムーブメントスクリーンの戦略が効果を発揮していないとすれば、そこにはまだ、適応されるべき論法があります。 もしかしたら、環境? グレッグ・ローズと私は、この夏、パフォームベターと共にアメリカ合衆国の異なるタイムゾーンに渡ってツアーをし、Three Principles You Can Apply to Any Movement (どんな動きにも応用できる3つの原則)という、環境から生命体を離すことを徹底的に調べた内容で、カンファレンス前のシンポジウムを行いました。生命体に関わる仕事をする私達は、生命体そのものを問題にしがちです。 私たちは理学療法士であり、カイロプラクターであり、アスレチックトレーナーであり、そして医者です。私たちの前に、戦略的に環境を設計して、人々の身体的概要を形成し、決定づけたのは、コーチ、トレーナー、インストラクター、そして戦術的、および、技術的達人たちです。   私たちが行っていることが環境設計のみであれば、その環境に反応していない生命体が存在するにもかかわらず、私たちは環境設計を続けるでしょう。同様に、環境よりも生物に馴染みのある人々は、環境が壊れていても常に生命体を手直ししようとするでしょう。 グレッグと私は、非常に生物科学的側面からこの課題にアプローチしました。患者やクライアント、そしてアスリートを生命体と呼ぶことは恐らく適切ではないでしょう。そして、我々が触れる全てのものを環境として単純化することは、単純化しすぎです。しかし、ここは私に合わせて、科学的になってみましょう。 動きの健康が確立されていても、動きの機能、環境との相互作用、動きの能力が損なわれてしまっているとすれば、あなたは誤った方向に順応し始める環境に身を置いてしまっている(あるいは誰かに置かされてしまっている)かもしれません。 骨棘、腱炎硬化、機能的脊柱側湾、足底筋膜炎などはすべて誤った方向への順化です。忘れないでください、疲労骨折の一番の原因は人間の脳なのです。自然界において疲労骨折はめったにありません。人間の脳だけが構造的枠組みに疲労骨折を起こすほど愚かなのです。なぜでしょう?量を追求する前に、質を求める尺度がないからです。そのくらい単純なことなのです。 本の通りにすべてを行ったとすれば、-ムーブメントスクリーンがとても良くて、スコアリングも正しく、コレクティブエクササイズの処方も素晴らしいのであれば、原因はあなたにはないかもしれません。あなたは、目の前にいるその人にできる全てのことをしているのかもしれません。あなたがまだ行っていないことは、環境をチャレンジングにすることなのかもしれません。もし彼らが、合計2時間の睡眠で、レム睡眠のサイクルを1回しか得ていないとすれば、身体化学、休息、再生は完全に虐げられています。 もし、彼らの食生活がとても偏っていたり、完全に間違ったサプリメントを摂取しているのなら、感情ストレスがとんでもなく高かったり、目標が現在の能力からかけ離れたものであったり、ワークアウトの指標が、弱点とは180度間逆の方向に向けられているとすれば、問題を正すより、より複雑な状況にしているかもしれません。 次回あなたが、コレクティブエクササイズがもう少し早く効果を発揮しないかと悩むことがあれば、まずは正しいコレクティブエクササイズを行っているかを確認し、次に正しい土壌に種を蒔いているかを確認してください。以前、記事で、農夫は種の質のみに専念しているわけではないというのがありました。農夫は土壌の質にも注意を払っています。生命体を環境から切り離して考えることは絶対にできません。 西洋の医学モデルはそれを試みました。医者が生活習慣を問題にすることはほぼなく、するときは、月並みなきまり文句として、「タバコをやめろ」「体重を減らせ」と言うだけで、誰も直接的な行動はできませんでした。ですから薬を処方するだけの方が、簡単だったのです。健康に相関する数字を探してくれば、合成的にその数字を作って、その数字の効果や生物学的マーカーを減らしますよと。 生命体と環境を同じ硬貨の2つの側面として考えるようにしてみてください。たとえその片面しか見ていなくても、もう一つの面が確実に存在し、その二つを分けることはできないことをよく理解してください。熟練したコーチになりたいのなら、熟練したコーチを模範としてください。コレクティブエクササイズに精通したいのなら、見落としているものがないか十分に確かめてください。 コレクティブエクササイズにおいて、見落とされがちなトップ3の障害は以下の通りです。 不適切に処置されている、あるいは誤って診断されている根源的な医学的問題 機能レベルとフィットネスの独立性と持続性を困難にする休息と再生の習慣 機能的フィードバックのループを度外視して、短期的、またはプロトコール優先になり、実際には問題を複雑化させているワークアウトとエクササイズプログラム

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2790字

熟練 パート1/2

コーチングの熟練は芸術です。それは、何をすべきかを知っていることと同時に、何をせぬべきかを知っているということです。 コレクティブエクササイズを指導し、利用することは、全くもって新しい取り組みです。ここで、全くもって新しい、という表現を使っているのは、おそらく歴史上、現代の私たちが最も多くの動作不全を認識しているからです。現代社会における私たちの身体的退化は、多くの人たちから指摘されてきました。私たちは、いまだかつてないほどに運動不足で、動作不全は問題となっています。 従来のコーチング法では、うまくいかないことがありますが、それはそのコーチング法が悪いからではありません。これらのコーチング法は、機能不全に悩まされている人々を対象にはしていませんでした。または、その機能不全は最小限で、優良なコーチング戦略(そしておそらく次のステップを紹介する必要もない)が、システムに過剰負荷がかかることを防ぐのに十分だった可能性もあります。 もう一つ、考慮するべき重要なことがあります。西洋社会は、忍耐強くありません。従来の身体のコンディショニングは、個人個人が常に、自立、才覚、決意、とりわけ忍耐を振り絞って行われるものでした。 私たちはもはや、こういった資質を持っていないことが多く、中でも忍耐は最も大きな欠損です。その欠損に、より大きくなった機能不全が加わると、「ワークアウトをできるような状況にはとてもなれない。矯正するべきことが山のようにある。」ということになるのです。 これが、私たちがファンクショナルムーブメントスクリーンを紹介したときに経験した事実でした。私たちが最も避けたいことは、人々の、身体文化に対する熱心な追求、スポーツへの情熱、身体、そして身体的なライフスタイルを再編する必要性を損なわせてしまうことです。 ファンクショナルムーブメントスクリーンの創設者達はそれぞれ、身体文化に関して多大な献身をしてきています。私たちは、ワークアウトを前進させたいと願っています。アスリート達にさらに漸進してほしいと考えています。人々が賢く楽しむことができる若いときの身体を取り戻してほしいと願っています…しかし、その理想は、必ずしも私たちが最初に経験したことではありませんでした。私たちが鏡を、観点を、機能の測定法を提供したとき、世界は唖然としていました。 人々の動きがこんなに良くないなんてありえない。 あなたが目の検査票を、世の中に最初に紹介した人だと想像してください。どれくらいの人が、認識していたよりも少ない視覚しかない生活に苦しんでいたかを垣間見ることができたでしょう。それを理解していれば、個人間の意思疎通の失敗や、貧しい決断を、今より理解できるようになるかもしれません。フィルターが曇っているため、彼らにとっては視覚にたよるもの全てが困難になるのです。 動作に関してはどうでしょう? 私たちが、ムーブメントスクリーンを紹介すると、始めは反発を受けます。なぜでしょう?それは、多くの人々が下降状態にあり、動きのスキルが非常に長い期間にわたって、浸食されてきているからです。これはとても悲惨な発見ですが、機能不全に対してしっかりしたフィルターを紹介すれば、必ず直面することです。 ここで、コレクティブエクササイズが助けとなります。コンディショニングではなく、エクササイズと自助努力に的を絞り、与えられたパターンの中で最低限必要な動きの質を取り戻すのです。まずこれができなければ、身体のことを学び、再編する旅路の障害となり、また、それ以上のことは、競争的優位を与えるかもしれないし、与えないかもしれません。全ては、あなたが何を目指しているか次第でしょう。 動きの質を考えるときには、最小限の要求で済みますが、環境によっては、さらに上のレベルのパフォーマンスが求められます。ファンクショナルムーブメントスクリーンは、各パターンにおける最低限必要な動きの質を保ち、認識や動作経験のフィードバックを変える質の悪いフィルターによる不利益なしに、動作を自然な生物学的資源、環境資源によって形作ることを可能にします。 あなたが視力検査でかなり悪い結果をだし、メガネを与えられても、結果が変わらないとすれば、そこでの最初の仮説は、問題がより複雑であるとか、あなたが頑張っていないとかではないでしょう。多分、正しい処方箋が与えられていなかったのです。その場合は、視力検査票と視力矯正の知識を駆使して、あなたの視力がそれまでよりも格段に良くなり、良くなったことをあなた自身が客観的にわかるメガネを与えるようにします。 ですから基準がとても大切なのです。 コレクティブエクササイズのフィードバックループもこれと同様です。コレクティブエクササイズを提供するとき、そのエクササイズは、あなたのために戦略的にデザインされたものです。ルールに従い、スコアを適切に用いれば、驚くほど短時間で、劇的に動きが改善されます。 短い期間というのは、残念ながら相対的なものです。あなたが、ごく最近、動きの低下を経験しているのであれば、矯正にはあまり時間がかからないかもしれません。でももし人生の3分の1の期間、動きに問題を抱えているとすれば、コレクティブエクササイズがあなたの動きの全体像を再建、再構築し始めるまでに、一ヶ月か二ヶ月は待ってほしいとお願いするでしょう。辛抱強く続けてください。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2293字

動きの原則 パート2/2

動きの原則2:守る、正す、発展する 基礎動作ができていないとすれば、フィットネスおよび健康への道のりは、補助的なエクササイズからは始まりません。補助的なエクササイズから始めることは、質の前に量を重視する考え方であり、機能不全という土台の上にフィットネスを構築しようとしているにすぎず、部分にしか注目していません。一番目の原則は、どういわけか順序が覆され、人々は沢山動くことで、より良い動きになると期待してしまっているのです。そんなことはありません。動作の問題は、頻度が高くなればなるほど悪くなる一方です。 解決方法はシンプルです。フィットネスの基準を下げるのをやめることです。動作の標準値を高めれば、昔の基準を満たすことができます。また、部分に焦点を置くこともやめるべきです。還元主義、動きを孤立した部分に分解することは、筋骨格系の障害を減らすことにつながってはいませんし、それによってより健康になるとか、フィットネスレベルが上がるということもありません。 パターンや連続性は、生物学的生命体の働きにおいて最適な方式であり、それこそ私たちが重視するべきものです。 原則1はなぜ機能するのでしょうか?私たちはなぜ動くのでしょうか?動きは私たちに機会を与えてくれるからです。発達はSAID原則(Specific Adaptation to Imposed Demand: 身体に一定の負荷をかけると、身体はその負荷に見合った適応を示す)を通して起きるというのが、基礎動作の基盤にあります。 沢山動く前に、より良く動く。この順番は、私たちに最大の機会とリスクを与えてくれます。沢山動く前により良く動くことはまた、環境への最適な適応を可能にします。 少し戻って、リスクという言葉について考えてみましょう。リスクは、修正する前に必ず保護し、それが発達へとつながります。という原則2を知っていれば、それほど恐れるべきものではありません。共通の真実に戻るとすれば、私たちは、強さを育み、身体が優雅に年齢を重ねるうち負かすことのできない自然の能力を信じていますが、同時に自然は、私たちの個人的な発達や特定の発達に関して考えたりしませんし、気づいてさえいません。 自然は偉大であると同時に厳しくもなりえます。自然は、私たちの適応や発達を待ってはくれませんし、時には生き抜くことを許さない教訓さえ与えてくれます。二番目の原則は、失敗しない環境を作ることを要求するものです。 SAID原則は、より重い重りを持ち上げたり、より速く走ったり、より高く登ったり、より激しく泳いだり、より大きな対戦相手と戦ったりすることの唯一の理由として使われるべきではありません。こういう考え方は、より良くなる前に、より沢山行うことを強いてしまいます。 この声明は、いかなる場合にも否定的に受け取るべきものではありません。成功の追求は、大きなリスクと失敗を伴います。各段階において、失敗しないことに集中し、新たな能力に対する安定した基盤を作りましょう。 残念なことに、私たちは望む成功を見るばかりで、ゆっくりとした成長、長期間にわたる好結果の発達を作り上げる文化的アプローチを受け入れていません。運動科学において、初期の段階での特化を支持するものはありませんが、それが現在では標準のようになってしまっています。 生産的なフィードバックがない、またはリスクにさらされる機会から保護をしてください。 学習の過程にある見誤った障害を強調することで、フィードバックを修正してください。 自立性と生産的な自己規律を推進するため、豊富な感覚的経験、明確でしっかりとしたフィードバックを使って段階的に発展してください。 現在のレベルに精通し、自立し、かつその状態を維持できるまでは、次の発展レベルには進みません。 原則2は倫理的原則であり、身体を痛めるよりは、プライドを痛めるべきです。 原則3:哲学を実行するシステムを創出する 発達の段階的レベルを考える時、私たちはその本質よりも早く安全に発達できると信じています。この信念が原則3へとつながり、哲学を守るシステムを創出するというところへつながります。 原則3は実践的な原則です。 標準操作手順と聡明な選択が、私たちに健康とフィットネスをゆだねる人々を守ります。 でもシステムはどこから始めたら良いのでしょう?私たちは認識することなしに何かを知ることはできません。基準なしに先へ進むことはできないのです。先ほど、動きは、血圧や体温その他の要素同様に間違いなく生命に必要な生命徴候であると主張しました。 その長いリストとは異なり、私たちは現在動きを生命徴候として理解するための基準を持っていません。 基礎動作のパターンを見るシステムがあれば、基準ラインを作ることができます。 その基準ラインがあれば、欠けていたり、不足していたり、機能していない基礎動作を確認し、表現することができます。もし動きが生命徴候やその能力を満たしていなければ、これは機能不全であり、環境的標準以下であり、欠損です。(必要だが十分ではない)この状態を同僚や医療の専門家に共通の言語を通して伝えることで、責任と説明責任が強調されます。 動きの問題に関する共通言語と知識があれば、個々人が基礎を取り戻す手助けができます。保護し、修正し、発達する戦略を決定するためにそれらの数値を使うことができます。こうして、戦いの前のチェックリストが出来上がるのです。 FMSはフィットネスのインテイクのために使うことができます。フィットネスを構築するための基準ラインを確立し、適切な医療機関への紹介をするために必要な健康問題を判断することができます。FMSはリハビリを終える判断をする基準として設定することもできます。この人は沢山動くことができるほど健康か?発達に関してはどうか? 怪我の危険因子のトップは何か知っていますか?そうです、過去の怪我です。とても多くの人が、適応不順、過去の怪我、不適切な環境の選択による能力不足を示す生命兆候がなくなる前に活動を許可されてしまっています。現在のシステムは、うまく機能していないのです。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2625字