ケトルベルが一部のリフターに対しては腰痛を引き起こし、他の個人にとってはリハビリの助けとなるのは何故だろうか? パート1/2

ケトルベルは、アスリートや趣味でリフティングを行う人たちに頻繁に使われている。それゆえその使用については、多くの逸話が存在している。 ケトルベルの使用に関する逸話的特徴のひとつに、他の股関節伸展エクササイズを多く行っているにも関わらず、股関節伸展強度の増加や機能の向上がアスリートにより頻繁に報告されるということがある。他の逸話的特徴として、一部の人が、他の股関節伸展エクササイズを行う際には痛みを感じないが、ケトルベルスイングでは腰の痛みを感じるということがある。 下記の研究は、よく見られるこれらの2つの報告の背景にある理由を調べようと試みたものである。 研究論文:ケトルベルスイング、スナッチ、ボトムスアップキャリー:背中と股関節の筋肉の活性化,動作、腰への負荷、マッギル、マーシャル、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2012年 *** 背景 ケトルベルは現在、唯一のトレーニングツールとして、また、バーベルや徒手体操と併用して、より多くのウェイトリフターやフィットネス愛好家によって使われるようになってきている。しかしながら、ウェイトリフターによる事例証拠は混在しているようである。 ウェイトリフターの中には、同じ目的の為に他の動作を行っているにも関わらず、スイングが腰部損傷後のリハビリの助けになる、または、股関節伸展強度の増加の助けになるとして、ケトルベルのエクササイズを賞賛ている人たちがいる。一方、他のウェイトリフターたちは、バーベルリフトは無痛で行えるが、ケトルベルの動き、特にスイングは腰を悪化させる動きの一つであると示している。 更に、一部のケトルベルの専門家は、革命的な武道家であるブルース・リーに由来する技術を使いスイングを実践している。「キメ」と呼ばれるこの技術は、筋肉の収縮と弛緩を訓練する為の短時間の筋肉の振動である。これはスイングの動きの頂点で行われる。 研究では、MMA(混合武道家)ファイターは攻撃する際、一撃の効果を強めるため、実際に素早い筋肉の収縮と弛緩を使うということが確認されている。しかしながら、一般的なケトルベルエクササイズを行う際の力学や、腰への負荷を数値で表そうとした研究はこれ以前には存在していない。 *** 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、ケトルベルスイング、キメを伴うケトルベルスイング、ケトルベルスナッチ、ケトルベルボトムスアップキャリー、ケトルベルラックキャリーといった、ケトルベルエクササイズを行う際の脊椎への負荷と、体幹、脚、背中の筋肉の様々な活動を数値で表そうと試みた。 研究者たちは、ある人にとっては治療的または有益であるが、他の人にとっては不快であるといったような、ケトルベル特有の特徴が存在するのかどうかを発見したいと考えた。彼らはまた、キメにどのような効果があるのかを発見しようとした。研究者たちはスイングとスナッチに7名の被験者、キャリーに5名の被験者を使った。 研究者たちはまた、パベル・サッソーリン が行うスイングの特徴を記録する許可を得た。この研究には16キロのケトルベルが使用され、解剖学的目印に置かれた反射マーカーと、9台のカメラモーションキャプチャーシステムを使用し、3D身体部位の運動学が評価された。床反力は、2つのフォースプレートをそれぞれの足の下に一枚ずつ使用し測定された。 筋電図のデータが表面電極を使用して記録され、研究者たちはその筋電図のデータを最大随意等尺性収縮(MVIC)へと正規化した。大臀筋に対して使われたMVICのポジションは、Bierring-Sorensen ポジションや、テーブルに腹臥位で膝関節を90度に屈曲させ股関節を伸展したポジションよりも高かった。中臀筋に対して正規化されたポジションは、横臥位で、股関節を少し外旋させ、45度に外転した状態で抵抗に耐えるポジションであった。 *** 何が起こったのか? 筋電図活動:スイング 研究者たちは、スイングの中で様々な筋肉の活動が最も活発な位置を調べた。彼らは下記のグラフで示されているように、スイングの際、最も活発な筋肉は、大臀筋、中臀筋、広背筋、そして脊柱起立筋であるということを発見した。 研究者たちはまた、臀筋の活性化のピークはスイングサイクルの後半で起こり、股関節伸展の最終ポイントと密接に関係していたと記述している。このことは次に挙げる2つの理由により有益である。第一に、スイングを行う際の臀筋活動のピークは、臀筋の活動が最大になり得るところ(すなわち股関節のフル伸展)の股関節の屈曲角度において起こる。これはケトルベルスイングが、股関節屈曲位において臀筋を最大に活性化する他のエクササイズよりも、より多く臀筋を活性化するかもしれないということを示唆している。 第二に、ケトルベルスイングにおけるこの臀筋活動のピークは、そのポイントにおいて股関節伸展トルクが最大であるため、臀筋の活動が股関節の大きい屈曲角度において最大であると信じられている、スクワットやデットリフトのような軸方向のエクササイズを行う際の臀筋活動のピークとは対照的である。このことは、ケトルベルスイングは股関節の異なる角度において臀筋を活性化するため、スクワットやデットリフトの補助的なエクササイズとして有益であるかもしれないということを示唆している。 *** 筋電図活動:キメを伴うスイング 研究者たちは、スイングにキメを加えることは、外腹斜筋において起こっている活性化の向上(右外腹斜筋において101%、左外腹斜筋において140%の向上)を伴い、主に腹筋に影響を及ぼすと報告した。下記のグラフは様々な筋肉間での差異を示している。 *** 筋電図活動:スナッチ 研究者たちは、スナッチは右外腹斜筋、右大腿直筋、左内腹斜筋の3つの筋肉の活性化を向上させることを発見した。これはケトルベルを高く振り上げる必要性があるからであろうと思われる。下記のグラフは様々な筋肉間での違いを示している。 しかしながら、スイングやスナッチを行っている被験者の写真を確認したところ、使われたフォームは標準的なヒップヒンジではなく、スクワットスタイルに近いものであった。これは、この研究での結果に影響を及ぼし、大腿直筋のより高い活動につながった可能性がある。これに対して、ヒップヒンジスタイルでのスナッチは、大腿二頭筋の活動をより大きく生み出すかもしれなかったが、更なる研究なくして、これを知ることは不可能である。 *** 筋電図活動:ケトルベルキャリー 研究者たちは、筋活動は全てのウォーキングエクササイズにおいてとても低かったと記述している。実際、大臀筋の活動の平均値は、いかなるウォーキングエクササイズにおいてもMVCの1%以上に達したことはなく、中臀筋の活動の平均値はMVCの3%以上に達したことはない。このことは、これらの筋肉においてトレーニング効果を得るためには16kgよりも更に重い負荷が必要だということを示している。しかしながら、研究者たちは、その他のウォーキングテストと比較した場合、左外腹斜筋以外の全ての筋肉の筋電図活動は、ボトムアップキャリーを行う際により高かったと記述している。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3132字

ケトルベルが一部のリフターに対しては腰痛を引き起こし、他の個人にとってはリハビリの助けとなるのは何故だろうか? パート2/2

何が起こったのか? (続き) 脊椎の動き:スイング ケトルベルスイングを行う際、脊椎は動きのボトムポジションで26度屈曲し、頂点では6度伸展するといったように、合わせて32度の屈曲、伸展が起こったということは記述しておくべきである。より高度なケトルベルの熟練者が、スイングの際に同じようなレベルの脊椎の動きになるのか、それとも違うレベルでの動きになるのかを判明するには更なる調査が必要である。 *** 脊椎負荷:スイング、キメとスナッチを伴うスイング 最も重要なこととして、研究者たちは、圧縮負荷に対する剪断負荷の比率は一般的なバーベルエクササイズに比べ、スイングやキメとスナッチを伴うスイングにおいてより大きく、そのことが、個人が時としてケトルベルエクササイズを不快に思う理由であるかもしれないと観察した。 研究者たちはまた、剪断負荷や圧縮負荷はスイングの始めに最も高かったと報告している。彼らはスイングやキメを伴うスイングにおいて、スイングの頂点では、キメを伴うスイングでは剪断負荷と圧縮負荷が高いまま維持され、通常のスイングでは著しく減少したが、スイングの頂点以外では、剪断負荷と圧縮負荷が似通っていたことを発見した。下記のグラフはそれぞれのタイプのスイングとスナッチにおける剪断負荷と圧縮負荷を示している。 上記のグラフは、3つのエクササイズ全てにおいて、動きの最初から中間までの間に、どのように剪断負荷が減少するかを示している。(注意:スナッチに対しての中間部分の測定は行われていない)しかしながら、このグラフはまた、通常のスイングに比較してキメを伴うスイングでは、いかに剪断負荷の高さが維持されているかも示している。研究者たちはより少ない剪断負荷の方が望ましいと考えられると記述している。腰痛や外傷の既往歴がある人においては、キメを伴わないスイングの方がより良い選択肢であるかもしれない。 このグラフはまた、スイングやスナッチにおける圧縮負荷は、動きの漸進と共に減少することを示している。しかしながら、キメを伴うスイングにおいての圧縮負荷は、高いまま維持されている。脊椎の硬さを高め、より高い剪断力による悪影響を減少させる為に、腹筋の活性化が促進されることによってこのような圧縮負荷の上昇が起こっているようであるが、これをこの研究から確実に証明することは不可能である。 *** 脊椎負荷:ケトルベルキャリー 研究者たちはまた、関節の圧縮負荷や剪断負荷はラックポジションや通常のウォーキングに比べて、ボトムアップポジションで著しく大きかったと報告している。 *** 事例研究 研究者たちは、パベル・サッソーリンが32キロのケトルベルを右手、及び両手で持ちスイングを行う際の筋電図活動を記録した。この実験の間、パベルは左の脊柱起立筋においてMVCの150%の活性化、また、左臀筋において100%以上の活性化を示した。 この事例研究は、それほど熟練してはいない被験者が、ケトルベルスイングを行う際に記録した筋電図活動のデータの結果、すなわち全ての筋肉の中で臀筋の活動が最も活発であったという結果とは著しく異なっている。臀筋はケトルベルスイングにおいて明らかに大切な筋肉である。しかし、パベルはスイングを行う際、コアスタビリティを確保するため、より一層脊柱起立筋を硬くすることもできたのである。 ヒップヒンジスタイルのスイングを習得することに集中したケトルベルのトレーニングの前後に、様々な負荷を使いながら、トレーニングされていない被験者グループの股関節の伸筋とコアの筋電図活動を記録し、改善されたフォームと訓練を通じて、より大きな活動を得ることができるのかどうかを観察することは興味深いでことであろう。 *** 制限要素は何か? この研究は、全ての動きにおいて軽量のケトルベルのみが使用され、被験者はほとんどが未経験者であったことに制限があった。更に、写真に示されているこの研究で使われたフォームは、理想的なヒップヒンジスイングではなかったようである。このことが、より大きな股関節屈筋、大腿四頭筋、脊柱起立筋の活動、そして、腹筋、臀筋、ハムストリングの活動の低下へとつながったのかもしれない。 最後に、この研究には脊柱負荷に関するデータが含まれておらず、そのデータがあれば、正しいヒップヒンジスイングのフォームと臀筋の活性化ができるアスリートを指導しているコーチたちにとって、より有益であったかもしれない。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、ケトルベルスイングは、かなり大きな筋肉の素早い活性化と弛緩というパターンと共に股関節を軸にしたヒップヒンジの動きを生み出すようだという結論に達した。 しかしながら、研究者たちはまた、ケトルベルスイングは、圧縮負荷に対して剪断負荷がとても高いという、腰椎における独特な圧縮負荷と剪断負荷の比率を生み出すようであるとも記述している。それゆえ、この動きに対する恩恵を痛みなしに受けるためには、後方の剪断負荷に対する剪断安定性と剪断応力が必要である。 *** 実践的な意義は何か? アスリートと趣味でリフティングを行う人たちに対して: 脊椎の剪断負荷の圧縮負荷に対する比率は、バーベルエクササイズよりもケトルベルスイングの方がはるかに大きく、このことは、剪断負荷に対して抵抗力の低い個人は、軸方向に負荷がかかるバーベルエクササイズを心地よく行うことができるにも関わらず、ケトルベルスイングを不快だと感じる可能性があるということを意味するかもしれない。 一部のリフターたちがリバースハイパーやケトルベルスイングのような動きを有益だとみなすという事実は、腰椎におけるわずかな伸展によるものであろう。この多少の伸展は正しいフォームで行われている限り問題はない。 剪断負荷は、一般的なスイングに比べ、キメを伴うスイングにおいては高いまま維持される。腰痛や外傷の既往歴がある人にとっては、キメを伴わないスイングの方がより良い選択肢であろう。 スイングにおける臀筋の活動は股関節完全伸展近くでピークとなり、これによりケトルベルスイングは、股関節屈曲において股関節の伸展トルク(そして臀筋の活動量も同様に)が最大となるスクワットやデットリフトの補足トレーニングとして有益なエクササイズであるとみなされる。 ***

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2767字

組織の水和(水分供給)

2013年10月にセミナー指導のため来日した、トーマス・マイヤースのインタビュー第一弾。軟部組織への水分の供給の重要性に関して、トムがわかり易く解説してくれています。

トム・マイヤーズ 7:41

スクワットロジー(スクワット学)

私達に人間にとって基礎の動きのひとつであるスクワット、しゃがんで立ち上がる動きには、動きの面全てにおいて、そしてその深さにおいても、様々なバリエーションがあり得ます。トレーニングを行う時に、同じタイプの動きのみを繰り返すのではなく、全ての動きの可能性をカバーすることの重要性を、レニーがわかり易くシェアしてくれています。

レニー・パラシーノ 7:18

伏臥位の股関節伸展アセスメント

2013年11月9日&10日の2日間にわたって開催された、ジーン・サリヴァン(ITTピラティス創始者)のアセスメントワークショップから、伏臥位での股関節伸展の動きのアセスメントと、動きの矯正エクササイズの考え方をご紹介します。

ジーン・サリヴァン 6:54

コアを強く(ビデオ)

TRXのヨーダことクリス・フランケルが、インクラインプレスに漸進するための準備段階として、しっかりとした強いプランクを作るためのエクササイズを紹介してくれます。コアの安定があってこそ、チャレンジ度の高い動きも可能になりますね。

TRXトレーニング 3:22

生体力学のシンプルな側面

身体の機能的詳細の見方を理解するための重要なカギの一つは、私達の動作の背景にある生体力学です。 私達が、クライアントをトレーニングしたり治療する際に、単純化した生体力学の理解は、真の動作に基づいた技能と、適切な関節の反応を作り出すために、異なる機能を分解することを可能にしています。先週末に指導グループを指導した後、グレイインスティチュートの教義によって影響されている私達の一連の過程を説明する手助けとして、コーキネティックの生体力学指針のいくつかをブログに載せようと思いました。 生体力学という単語は、少々恐ろしい響きがあります。もしあなたが生体力学の本やジャーナルを一度でも開いたことがあるなら、私と同様の反応をしたことでしょう。それは、方程式や記号の特売かと思わせる程の驚異です。 (一見したところ、水泳の生体力学のようです!) 代わりにコーキネティックで使用する過程では、私達は実際の空間においての骨運動とお互いの相対的関係をみています。この相対骨運動は、神経筋骨格系全体における真の反応に関して、付着する筋肉に影響する特定の関節反応を作り出します。 本当のカギは、実際の骨運動と相対関節運動は異なることを理解することにあります。要点としては、実際の空間においては2本の骨が共に外旋している場合であっても、関節における骨間の相対運動は、内旋かもしれないということになります。これは2つの骨の間でのスピードの相違によって決定されます。では、これからいくつかのキーポイントの要点を説明しましょう。 近位と遠位 関節において、どちらが近位で、どちらが遠位かを知ることがカギになります。 付属肢骨格(四肢)では、遠位骨の遠位端が、近位端の部位に相対して、どのように動くかによって、関節運動が決定されます。これは、例えば、近位端が前額面において中心線に向かって動いている際、遠位端は中心線から離れていっている、すなわち外転していることを意味しています! 軸骨格の遠位点は、上側点としても知られています。よって、軸骨格での関節運動を定義するために、私達は上側点をみていきます。 近位骨は、身体の中心に最も近い骨です。よって、骨盤は身体の中で最も近位にあるになるでしょう。その他の骨は、骨盤からは遠位になります。骨盤が常に近位であることが、股関節の近位骨と遠位骨の理解を簡単にしています。膝において、遠位の脛骨に対して、大腿骨は近位骨となります。 骨盤の運動は、異なる点によっても決定されます。遠位端よりも(もちろん両方とも!)、私達は上前腸骨棘(ASIS)と上後腸骨棘(PSIS)間の相対運動をみます。前方回旋は、上前腸骨棘( ASIS )の反時計回りとなり、上後腸骨棘(PSIS )は上前腸骨棘に対して上位になります。 脛骨でも見られるような同様の反時計回りは、遠位端が後方に回旋するため、後方回旋と表現されます。これは時々紛らわしいのですが、脛骨と骨盤は同様の回旋を経るにも関わらず、一方は前方と表現され、他方は後方と表現されます。 相対速度 二関節間の相対速度も相対的関節運動を決定するのに重要な意味を持ちます。 どの骨がより速く動くかを知ることは大切で、相対骨運動を決定する際の手助けになります。一般原則としては、骨が運動のドライバー(伝達機構)に近ければ近いほど、骨はより速く動きます。これは力の消散のためです。一例として、足によって動きが始動する運動は、通常、下肢の遠位骨がより速く動いているということを意味しています。よって、膝において、脛骨は大腿骨よりも早く動いています。しかし、テニスでボールを打つ際、大腿骨近位は手のドライバー(伝達機構)よりも近くにあり、より速く動いていることを意味しています。しかしながら肘においては、橈骨遠位は、より手に近く、上腕骨近位よりも早く動いていることを意味しています。私達はドライバー(伝達機構)が何であるのかを知る必要があり、着目している関節を構成する骨のうち、どれがよりドライバー(伝達機構)により近いのかを知る必要があります。 関節が機能的に動くことができる3つの現実的な方法があります(あと2つの機能性の低いものを含めると5つになります)。これは、同方向に動いている近位と遠位のうち、近位がより速く動く場合。近位と遠位が同方向に動き、遠いがより早く動く場合、そして近位と遠位が反対方向に動く場合。これは、お互いに向かって動いているか、離れていっているかのどちらかで、まるで時計の針がお互いに向かって動いているかのようです。そして、それは一方が時計回りに動いていて、他方が反時計回りに動いているようで、これはお互いに離れていっている際も同様です。 実際の骨運動として遠位骨がより早く動く場合には、とても簡単で、相対関節運動も同様になります。混乱は、近位骨が同方向に遠位骨よりも速く動いている際に起こります。この場合、相対骨運動は、近位骨の骨運動の反対になります。横断面における一例は、歩行時の後脚の股関節です。骨盤と大腿骨の両方の実際の骨運動は、同方向に外旋しています。しかし、近位はより速く回旋するので、相対関節運動は内旋となります。私が発見した最も簡単な方法は、お互いの上端に拳を置くことです。そして、近位骨が回旋している方向に回旋させます。この場合は、外旋です。そのとき、下側の手を反対方向(関節運動を決定するもの)に回旋させます。これが内旋です。横断面では、近位端が一方へ回旋し、遠位端が他方へ回旋するのではなく、全部の骨が同方向に回旋しているので、時により理解しやすくなります。 時に混乱させられる動作は、膝の外転です。これは、最も大きな運動が、中心線に向かっている近位端からきているため、後方から前方に走る軸の周辺を回旋しています。遠位骨の遠位端が、近位端に対して何を行っているかということから関節運動の命名の規則に従うと、遠位骨の遠位端は、身体の中心線から離れていっています。すなわち、外転しているのです。規則を知っていれば、簡単なのです!! いつも通り、これは学術的な認識の中で物事はこうでなければならないと定義された方法ではなく、私達の思考過程の一例です。皆さんの理解の助けになりますように。

ベン・コーマック 2742字

デプスジャンプはスクワットの最大強度を即時に向上させことができるのか?

活性化後増強作用(PAP)効果とは、「コンディショニング収縮」と呼ばれる筋収縮が、それに続く筋活動におけるパフォーマンスの向上につながるという現象である。 PAP効果はほとんどの場合、コンディショニング収縮として、1RMの80-90%でのスクワットのような高負荷のレジスタンストレーニングを使い、それに続く筋活動、またはパフォーマンス測定として、垂直跳びのようにパワフルなスポーツの動きを使って研究される。 しかしながら、下記の2つの研究が示しているように、PAP効果は最大筋力でのスクワットのような高負荷での筋活動においても観察することができる。 背景 PAP効果は、コンディショニング収縮として高負荷を使用し、パフォーマンス収縮として低負荷、又は自重でのパワフルな動きを使用した際に効果を発揮する。多くの場合、コンディショニング収縮にはバックスクワットが使われ、パフォーマンス収縮には垂直跳びが使われる。 研究者たちは、PAP効果は多数の要因により影響を受け、その最も顕著なものは、コンディショニング収縮による疲労の度合いであるということを発見した。コンディショニング収縮が多大なる疲労を引き起こす場合、PAP効果は疲労の弊害により覆い隠されるか、もしくは、無効となる。 それに加え、PAP効果は(他の要因の中で)アスリートの強さ(例:ザイツ2013年)、レストの間隔(例:ゴウビア2013年)、スクワットの深さ(例:エスフォーメス2013年)により変化する。その他の変数要因には、筋収縮の種類(例:等尺性、短縮性、もしくは伸長性など)、相対的な負荷、量(例:レップ、セット、ケイデンス、収縮時間)、そしておそらく異なる筋肉群の様々な反応(ロビンス2005年を参照)が含まれる。 研究者たちは、PAPが働く可能性のある様々なメカニズムを提案した。その3つのメカニズムとは、(1)筋小胞体からのCa2+放出が上昇することによる、免疫軽鎖のリン酸化の増加により引き起こされる、アクチン・ミオシン相互作用の感度の上昇、及びミオシン頭部の構造の変化によるクロスブリッジのより高い力発生状態。(2)前の筋収縮に続く励起電位の上昇による運動単位動員数の増加(3)筋繊維の羽状角度における有益な変化、である。 *** 研究1: 男性アスリートにおける、最大スクワットパフォーマンスに対するプライオメトリックエクササイズの即時的影響、マサモト、ラーソン、ゲイツ、フェイゲンバウム、ストレングス&コンディショニングリサーチジャーナル、2003年 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、1RMでのパラレルスクワットに対する、3つの異なったウォームアッププロトコールの影響を調査したいと考えた。そのため、彼らは平均5.2年のレジスタントトレーニングと1年以上のプライオメトリックエクササイズトレーニングの経験を持つ12名の野球選手を集めた。 1試験では、被験者は1RMテストの前に従来のウォームアッププロトコールを行った。別の試験では被験者は、1RMテストの30秒前にタックジャンプを3回行い、第三試験に於いては、1RMでのリフトの30秒前に高さ43.2cm(17インチ)の箱からのデプスジャンプを2回行った。 *** 研究者たちは何を発見したのか? 研究者たちは、下記のグラフに示されているように、1RM前のデプスジャンプは従来のウォームアップに比べ、著しく高いリフトパフォーマンスにつながったということを発見した。 デプスジャンプの効果は、絶対値で見た場合決して大きいものではなかったが(4.9Kg)、これらの1RMスクワットにおける向上の比率は3.5%であった。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、最大筋力でのスクワット実施30秒前に行われた、17インチの箱からの2回のデプスジャンプは、ストレングストレーニングを行っている野球選手の1RMのパラレルスクワットパフォーマンスを著しく向上させたという結論に至った。 *** 研究2: プライオメトリックエクササイズ後の、最大スクワットパフォーマンスに対する、多様なレスト間隔の影響、ラヒミ、インターナショナルフィットネスジャーナル、 2008年 研究者たちは何を行ったのか? 研究者たちは、1RMのパラレルスクワットパフォーマンス前にデプスジャンプを行うことから得られるPAP効果に対する、異なる休息時間の影響を調査したいと考えた。そのため研究者たちは、3年以上のレジスタンストレーニングとプライオメトリックトレーニング両方の経験を持つ10名の男性バスケットボール選手を集めた。 1試験では、被験者は1RMテストの前に従来のウォームアッププロトコールを行い、更なる3試験では、被験者は1RMリフトの30秒前と60秒前に45cm(17.7インチ)の箱からのデプスジャンプを2回行った。 *** 研究者たちは何を発見したのか? 研究者たちは、下記のグラフに示されているように、最大スクワットを行う15-30秒前にデプスジャンプを行うことは、従来のウォームアップに比べ、著しい1RMリフトの向上につながるということを発見した。 グラフから見て取れるように、60秒後にはデプスジャンプによるPAP効果は消滅していた。興味深いことに、デプスジャンプの効果は絶対値としては(4.2Kg)前述の研究での結果にきわめて近かったが、絶対的な負荷がより大きかったため、1RMのスクワットに対する向上率は2.7%であった。これは、その効果がより強靱なリフターにおいては小さいのか、もしくは他の要素(例えば、被験者のタイプ、使用されたのが少々高さの高い箱であったこと、等)による影響であったのかを示しているのかどうかは明確ではない。 *** 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、最大スクワットの15-30秒前に17インチの箱から行われた2回のデプスジャンプは、ストレングストレーニングを通常行っている男性バスケットボール選手において、パラレルスクワットの1RMパフォーマンスを著しく向上させたという結論に至った。 *** 制限要素は何か? この2つの研究には下記のような点において制限があった。 スクワットは、通常からレジスタンストレーニングを行い、プライオメトリックトレーニングの経験のある、男性のバスケットボール選手、もしくは野球選手によって行われた。パワーリフターのようなプライオメトリックトレーニングの経験が無い人たちでは異なった結果が得られたかもしれない。 被験者のスクワットの最大筋力は、バスケットボール選手や野球選手において予想していた通り(体重の約1.5倍)であった。パワーリフターのようにスクワットの強度がより高い人たちでは、異なった結果が得られたかもしれない。 両方の研究では最大スクワット、すなわち1RMに対するデプスジャンプの効果のみが調査された。1RMの80-90%のように、より軽い相対負荷に対しては異なった結果が得られたかもしれない。 この研究は即時的な効果の観察であったため、最大スクワット前にデプスジャンプを行うことがより良いトレーニング効果を生み出すのかどうかは明確ではない。 *** 実践的な意義は何か? ストレングスコーチとパワーリフターに対して アスリートが既にプライオメトリックトレーニングに馴染みがある場合は、最大、準最大スクワットリフトの15-30秒前に適度な高さ(例:17インチ程度)の箱からのデプスジャンプを2回行うことは、リフトの負荷を3-4%上昇させることにつながる。 この研究はプライオメトリックを通常行っているアスリートに対して行われたため、この技術を利用したいと考えるパワーリフターは、おそらく、最大リフトの前にデプスジャンプを使用する以前に、時間をかけて漸進的なプライオメトリックスの導入をするべきであろう。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3541字

コアの安定エクササイズのカテゴリー化とコーチング(ビデオ)

コアの安定のエクササイズといえば、コアの前面、側面、横断面、それぞれ別々に分けて考えがちですが、ひとつの面に注目したエクササイズにおいても、他の二面でのコントロールは不可欠です。メジャーリーグの選手達に大人気のストレングスコーチ、エリック・クレッシィのビデオを御覧ください。

エリック・クレッシー 2:19

ストレングス & スピード

私はストレングスコーチがこう言っているのを良く耳にします。“スピードドリルを教えるのに時間は割かないよ、俺はアスリートを強くする、そうしたら彼らは速くなるのさ。” 私はスピード向上の為にアスリートをより強くすることには大いに賛同しますが、ストレングストレーニングだけでは、多方向性のスピードにおける非ファンクショナルな動きのパターンを修正することはできません。 ここにトレーニングで優先すべきするものが何かを、素早く決断する助けとなる、私が使用している10個のシンプルな項目を記載します 基本的なものと思われるかも知れませんが、私達は基礎をより多く、極端なものはより少なくしていく必要があると思います! 1. 減速する能力に欠けるけれども、最低限でも体重の2倍(もしくは片脚の強さと同等)のスクワットができる選手 = 減速パターンの運動プログラミングに働きかける。 2. 減速する能力にかけ、体重に比べスクワットの数値が低い選手 = ストレングスに働きかける。 3. 上手に方向変換ができないけれども、スクワット/デッドリフトの数値が高い選手 = パワーのアウトプット(スピード)、弾力エネルギーの放出(プライオ)、そして俊敏性のメカニクスに働きかける。 4. カットが上手くなく、ストレングスのレベルに見合っていない選手 = カッティングのメカニクスに働きかけることと、足の角度を再調整する。 5. リトリートをしない選手(股関節を開いて後ろ向きに動く)= 股関節を開けるようにし、上半身と下半身を分離し、多方向へのスタートのスピート/加速の技術(素早く蹴り出すこと)に働きかける。 6. スタートのスピードは良くないけれども、“比較的” 強健な選手 = スタートにおけるスタンスの加力角度をチェックする。 7. スタートのスピードが良くなく、技術的には優れているが弱い選手 = 選手をより強く/パワフルにする。 8. クロスオーバーが上手くない選手(滞っている感じ)= 股関節のROM(可動域)に働きかけ、技術を修正し、それぞれの脚が独立して働くようにする(脚がその任務を遂行するのであれば、他方の脚からストレングスを奪うことはない。両脚が同じアクションを起こすのではなく、アクション リアクションがおこるのである)。 9. 加速が上手くはないけれど、相対的に強さのある選手 = メカニクス!全身を進めるのに充分な脚の振りができるだけの、充分な腕の振りはありますか? 10. 加速が上手くなく、弱々しい選手 = 彼がより強く/パワフルになるように鍛えましょう。 賢くトレーニングを!

リー・タフト 1176字

ベアフットランニングの生体力学

裸足で走る=ベアフットランニングや、ビブラム等のミニマリストシューズでのランニングが話題になってしばらくたちます。裸足で走る時の生体力学は、シューズを履いては知るときとどのように異なるのか?ベアフットランニングを始めるとすれば、どのようにスタートすれば良いのでしょうか?

ミショール・ダルコート 4:01

仰臥位でのパッシブなハムストリングスアセスメント

2013年11月9日&10日の2日間、SYNERGY で開催したITTピラティスの創始者ジーン・サリヴァンのアセスメントWSから、仰臥位でのパッシブなハムストリングの長さのアセスメントの模様をお送ります。ハムストリングスのストレッチではなく、仰臥位でパッシブに股関節を屈曲のポジションにする際に、骨盤がどう動くのか?シンプルな動きから得られる情報は沢山ありますね。

ジーン・サリヴァン 10:23