股関節屈曲の理解とトレーニング

私のウェブサイトのフォーラムにおける最近の投稿で、複雑な質問に対して短い回答をすることは、大抵の場合、有効ではないということを実感しました。私のウェブサイトの読者の数名は、弱い、または、不活性の腰筋に関する最近の話は全て、人々が流行に乗っているだけだと思っているようです。私はそれに強く反対する一人です。 股関節屈曲の生体力学に関する知識の向上は、ここ5年間で私が学んだことの中で最も価値のあることの一つだと思っています。一般的に、股関節屈曲、特に腰筋を理解することにおける問題は、5つの筋肉に対して、そのうち4つは、残りの1つに対し、てこの位置が明らかに異なっているのに、「股関節屈筋」という一般的な言葉を使って総称されてしまっていることでしょう。私も、過去には、この業界の専門家の多くと同じように、股関節屈筋群の筋肉に対して何も区分けをしていなかったことを認めなければなりません。股関節屈筋群の筋肉は全て一緒に作用して股関節を屈曲しているようだというだけで、その時の私には十分でした。しかし、理学療法士のシャーリー・サーマンの著書を読み進めるうちに、私の股関節屈筋群に対する考え方は、他の多くの筋群に対する考え方と同様に変わったのです。 サーマンが著書「Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes (運動機能障害症候群のマネジメント)」で述べている見識は、ストレングス&コンディショニングの分野の障害における謎の多く、特に「股関節屈筋」や「大腿四頭筋」の肉離れの謎を説明しています。股関節屈曲の動作を理解する鍵は、股関節屈曲に関与している複数の筋肉の解剖学的作用を考えることです。股関節屈曲に関与することのできる筋肉は5つあります: 大腿筋膜張筋(TFL)、大腿直筋(大腿四頭筋の一部であり股関節屈筋でもあるところが異なっている)、腸骨筋、縫工筋、そして腰筋です。前述の通り、このうち3つの筋肉には共通するものがあり、2つは明らかに異なっています。 常套句ではありますが、ポイントは類似ではなく、相違にあります。大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋は全て腸骨稜に停止部があります。これは、これらの筋肉が股関節の高さまで股関節屈曲ができることを意味します。これは単純に機械的テコの原則による機能です。腰筋と腸骨筋は異なります。腰筋は腰椎すべてに起始があり、腸骨筋は腸骨の内側に起始があります。これにより2つのはっきりした違いが生まれます。 1. 腰筋は脊柱に直接的に働く。脊柱の安定筋および屈筋として働くことも可能である。 2. 腰筋と腸骨筋だけが股関節屈筋の中で、股関節屈曲を90度以上にすることのできる筋肉である。 腰筋および腸骨筋が弱い、または不活性の場合、大腿骨が股関節より上の高さまで動くこともありますが、これは腰筋および腸骨筋の作用ではなく、他の3つの股関節屈筋群によって生み出されたモメンタムによるものです。私はこの知識をもとに、腰痛や、「股関節屈筋の損傷」、「四頭筋の肉離れ」に対する私たちの知識は劇的に拡張されていると考えています。特定の障害の話をする前に、腰筋および腸骨筋の機能の評価方法を見ていきましょう。サーマンのテストはシンプルです。片脚で立った状態で、膝を胸の方向へひきつけ、放します。膝を股関節屈曲が90度より高い位置で10-15秒維持できないことは、腰筋、または腸骨筋が弱いことを示唆します。 他のサイン: - 腸骨陵の大腿筋膜張筋のエリアの攣り - 即時に起こる後傾による代償動作 - 左右への大きな骨盤移動 - トップポジションからの即時の下降と90度の位置における「キャッチ」 これらのサインは全て、クライアントまたはアスリートが弱い、あるいは不活性の筋肉を代償しようとしていることを示唆しています。大腿筋膜張筋の攣りは、典型的な相乗的優位の表れです。不利な位置で収縮を試みると、筋肉は痙攣します。股関節屈曲が90度を超えた状態では、大腿筋膜張筋はすでに収縮していて、不利なてこのポジションでは、保持するのに必要な力を発揮することができません。そのため、臀筋が不活性の状態でブリッジを行うとハムストリングが痙攣するのと同様に、結果として痙攣につながるのです。ハンギングニーレイズをしようとすると(代償動作につながるためほとんどの場合行われないエクササイズ)、痙攣や肉離れが起こるのは大腿直筋ですが、ここでも同じ影響が見られます。 試験者が、被験者が代償動作に長けていることを心配しているのなら、腰筋/腸骨筋のエクササイズとして私たちが開発し、気に入っている、より良いテストがあります。実際は、このテストは、ストレングス&コンディショニングコーチのカレン・ウッドによって開発されました。クライアント、またはアスリートの片足をプライオボックス(大抵の場合、61cmが良い)の上にのせ、膝を股関節より高い位置にします。両手は頭上もしくは頭の後ろにおき、足をボックスから浮かせた状態で5秒維持します。足を挙げられない、または保持できなければ、腰筋および腸骨筋が弱いことがわかります。負荷を加え、エクササイズをテストとして使うためには、側方からの抵抗やバンドを使って等尺運動の難易度を高めることができます。 股関節よりも低い位置からの腰筋のテストは、腸骨起始の股関節屈筋群が優位なてこのポジションにあるため、もともと無効だということは特筆すべきです。腰筋と腸骨筋のユニークな機能的関与を理解すると、弱い筋肉や不活性の筋肉が、いかにして腰痛および大腿四頭筋の損傷、両方の原因になり得るかがわかります。腰痛があり、股関節を90度以上屈曲できないと、クライアントやアスリートは腰椎を屈曲して股関節屈曲をしているような錯覚を作り出そうとします。膝を胸に近づけるように指示されたときに、何人のクライアントおよびアスリートが即座に腰椎を屈曲するかを観察してみてください。膝を胸に近づけるのと胸を膝に近づけるのには、はっきりとした違いがあります。膝を胸に持ってくること、および股関節より上に持ってくることは、腰筋と腸骨筋を使う、または使おうと試みることを強います。もしこれができなければ、下記のうちのひとつ、あるいは3つ全てが起こります。 1. アスリートやクライアントは、脊柱を屈曲して胸を膝に近づけるでしょう。最初の観察ではこれは同じように見えますが、腰痛という点からみると、これほどの違いはありません。腰椎の屈曲は骨盤変形の主要な原因です。股関節の動きを腰の動きで置き換えるアスリートやクライアントは腰痛になります。 2. アスリートやクライアントは、大腿筋膜張筋や腸骨に起始を持つ他の股関節屈筋を使って股関節を屈曲するでしょう。この場合、彼らは低レベルの大腿筋膜張筋の痛みを訴え始めるでしょう。これは、協働筋の酷使によるもので、大腿筋膜張筋の相乗的優位につながり、さらには腰筋および腸骨筋の機能不全につながります。これは屈曲姿勢を強いられるホッケー選手によく見られるものです。 3. アスリートやクライアントは、股関節屈曲をするために大腿直筋を使うでしょう。これがスプリンターやフットボールの40ヤードダッシュ時に起こる、謎の「四頭筋の肉離れ」です。この場合、障害の仕組みは上で述べたものと同様ですが、犯人は大腿筋膜張筋ではなく、大腿直筋になります。ほとんどの「四頭筋の肉離れ」や「四頭筋の損傷」は、多関節の大腿直筋に限られるということは特筆に値します。一般的に、痛みは大腿直筋が大腿四頭筋に入っていく腿の真ん中あたりに起こります。腰筋および腸骨筋は股関節の前側、臀筋は股関節の後ろ側にあります。弱い大臀筋はハムストリングの相乗的優位につながり、股関節伸展を代償するために腰椎伸展が起こります。これが、腰痛、股関節の前方の痛み(これもハムストリングを股関節伸展の主動筋として使うと、大腿骨のてこが変わり、関節包前部の痛みが起こる、というサーマンのポイント)、ハムストリングの緊張につながります。この逆は文字通り、弱い、または不活性の腰筋による、伸展ではなく屈曲による腰痛、大腿筋膜張筋および大腿直筋の損傷です。 障害予防や障害のリハビリテーションにおける鍵は、機能解剖学の正しい理解です。過去の過ちを繰り返すことをやめ、解剖学、生体力学の観点から学ぶことがまだまだたくさんあることを認識しなければなりません。少し深く学んだことで、私が解剖についてどれほど少ししか理解していなかったかに驚愕しました。私が過去3年間で読んだ中で、最も素晴らしかったものの一つがシャーリー・サーマンの次の言葉です。「筋肉が挫傷した場合、最初に行うことは、弱い、または不活性の協働筋を探すことです。」 怪我について考えるとき、それはただ起こるのではなく、物理の法則に沿って、機能解剖学に則った理由を持って起こるものなのです。

マイク・ボイル ストレングス&コンディショニング 3744字

DNAと筋膜のコネクション

アリゾナで開催中の筋膜解剖コースのレクチャーより。身体を構成するすべてのものは筋膜=結合組織で包まれています。組織から細胞へ、細胞から遺伝子へ、染色体へ、そしてDNAまで、すべてが一つに繋がった人間の身体にとって、ムーブメントがいかに重要なのかをトーマス・マイヤースが語ります。

トム・マイヤーズ 9:36

呼吸の構造と機能

アリゾナで開催されたトーマス・マイヤースのアナトミートレイン筋膜解剖コースのレクチャーから、人間の呼吸の働きと、呼吸に関わる構造に関しての興味深い話題をご紹介します。

トム・マイヤーズ 10:19

発達性運動:パート2

前回の投稿で、幼児期に学習される発達性運動パターンは、成人の日常生活で使われるもっと複雑な動きの基礎的要素であるということを指摘しました。語彙や文字が組み合わさり文章を作るのと同樣に、これらの単純なパターンが組み合わさって洗練された動きを形成します。この組み合わせシステムが意味することの一つとして、もし基礎的要素のひとつに支障をきたせば、その上に構築される構造全体は危うくなります。たとえば、スクワットや回旋などの基本的な運動が制限されていれば、日々の運動は広範囲において損なわれるでしょう。このことを念頭に置きながら、これらの発達パターンが生まれる状況や、この状況が見過ごされたり衰退したりしているかもしれない成人の原始的パターンの向上や回復に役に立つかどうかを見てみるのは興味深いことです。 発達環境の重要な側面のひとつは、ポジションです。原始的な運動パターンは、仰向け、うつ伏せ、四つん這い、三脚ポジション、斜め座り、両膝立ち、片膝立ち、スクワットなどの発達上のポジションで習得されます。これらのポジションは、有益な発達パターンを習得しようとする幼児にとって潜在的な利点となります。そして、もっと重要なことに、このようなパターンを磨いたり取り戻そうとしたりする成人にとっても役立つ可能性があります。実際、マッサージや理学療法、コレクティブエクササイズ、ヨガ、ピラテスなどあらゆるリハビリのための運動や感覚入力のために、発達上のポジションは広く使用されています。その理由は下記の通りです。 安定性やバランスの要求の低減 まず、立位に比べて発達上の姿勢は安定性の要求が大幅に低減します。床の上では、単に動く部位が少ないことから、同時にコントロールする変数はより少なくなります。立位では、姿勢のバランスを保つために、足首や膝、股関節、脊椎などの協調活動が必須となります。膝立ちの姿勢では、足首と足は関わりがなくなり、それによって直立姿勢を保つための運動制御はより単純化します。さらに、重心が低く支持基底面に近いので安定性を増します。 仰向けの姿勢では、安定性の需要はほぼゼロに減少します。ですから、転倒への恐れを感じる必要が大幅に減少し、また、体が硬くなったり、力が入らなかったり、不快感を持ったり、運動プログラムを変更したりするような転倒の知覚に関連した不必要な防御機構も減ります。多くの場合、歩いたりしゃがんだりする際、転ぶ心配を意識的にしているわけではありませんが、転倒することがないように、無意識な神経系の顕著な活動が必ずあります。防御のための過剰な筋活動と制御されていない可動性の制限などが含まれるかもしれません。ある程度、発達上の姿勢がこの防御活動を軽減でき、これは立位ではかなり分かりにくい、運動パターンの回復も促進できます。たとえば、股関節の筋群がバランスや安定性を保とうとする要求に占領されていないため、スクワットで必要とされる股関節の完全屈曲が簡単にできるかもしれません。 固有受容感覚の増加 その他、発達上の姿勢のメリットは、床に身体が接していることで固有受容感覚のフィードバックが増えるということです。たとえば、立位の時よりも床に横になっている時の方が、脊椎や肋骨の形状や動きを知覚するのが容易になります。仰臥位では腰椎を床に押しつけることにより屈曲を知覚できます。立位では、このようなフィードバックは得られません。 制限の増加 興味深いことがあります。発達上のポジションが動きを改善する理由のひとつに、運動の選択肢を制限することがあります。床の上にいることで、ある意味、自由度は制限され、特定の動作を行う時に使われる運動パターンの数は減少します。よって、多くの潜在的な“悪い”運動パターンは使えなくなり、“良い”運動パターンはすべて残るわけです。(もし、発達上のポジションが基礎的運動パターンの使用を妨げるのならば、そもそも最初から発達なんか決してしなかったでしょう!)発達パターンが、運動の障害に対する数少ない解決法になっている場合は、そのパターンを見つけるのはより簡単です。 たとえばハイハイでは、片方の腕は必ず体重を支えなくてはならないので、歩行時よりも腕をどう使うかという選択肢は少なくなります。手が床に固定されるので、身体に対して腕が動くのではなく、腕の筋群は腕に対して身体を動かします。支持している腕は、反対側の支持脚と同調し、四肢の運動に斜めに交差するパターンが現れます。 歩行においても、同じ斜めに交差するパターンが維持されるべきですが、腕に余分な自由度があるために、必須ではなくなります。腕は体重を支える必要がなくなるので、反対側の脚との同調から自由に外れることができるのです。ハイハイの時のように、支持している腕の筋群が身体を前方へ“引き寄せる”必要がなくなり、代わりに、手を後へ引く操作ができるようになります。ハイハイの時の腕の“クローズドチェーンの感覚”をそのまま歩行でも感じるためには、スキーストックを持って歩くことを想像してみてください。ハイハイのように前方に伸ばされた手が、空中である程度の“固定支点”となり、そこから腕と体幹につながっている筋群が身体を前方へ引くことができます。このような方法で歩いてみれば、歩行中の腕と体幹の一体化をもっと感じることができるかもしれません。 つまり歩行は、ハイハイではより必須である原始的移動パターンを見過ごす機会を提供します。もし、この見過ごしが最終的にこのパターンに関する感覚運動健忘症という結果になるのであれば、再活性化するのにハイハイが役立つことでしょう。なぜならば、ハイハイは、単純な基礎パターンのみを維持しつつ、特異性の高い複雑な運動パターンを数多く使用する可能性を排除するからです。 もうひとつの例をみてみましょう。もし、私が仰向けになっている赤ちゃんで、胸骨から数フィート離れている、紐にぶら下がっている目の前のモノに手を伸ばしたいとします。そうするための関節運動の組み合わせと関連する筋活動パターンはかなり限られています。どの解決策にもほぼ含まれていることは、90度までの肩の屈曲;肩甲骨の前突、伸ばしている腕とは反対側への胸郭の回旋です。肩の屈曲と肩甲骨の前突、胸部の回旋の協働作用は、とても基本的なリーチングのパターンであり、投げる、打つ、押す、走る、歩くなど、数多くの場面で用いられる基礎的要素として用いられます。 さて、さらに自由度がある座位におけるリーチングのオプションを考えてみましょう。私の胸骨の前、数フィートのところにあるテーブルにあるパソコンのマウスに腕を伸ばそうとしているとします。仰向けだった時とまったく同じ筋の協働作用で行うこともできますが、他にも多くの選択肢があります。これらの多くは非常に特異的で、特有で、他の状況では使い道のないことがあります。たとえば、肘を屈曲し股関節から前屈すれば、肩の屈曲、肩甲骨の前突、胸部の回旋すらしなくてもマウスに手を伸ばすことができます。また、立ち上がって、向きを変えて、腕を後方へ伸ばしマウスに伸ばすこともできます。より多くの選択肢があれば、より多くの“間違った”方法もあります。原始的パターンは必須ではなく、その他では使い道がないような、完全に特定の動作ためだけの特異的な解決策もあります。 それとは逆に仰臥位では、他の運動においてもすばらしい基礎要素を形成する、理想的なリーチ動作の協働作用は、実際に達成するための唯一の方法です。ターキッシュゲットアップが人気のあるコレクティブエクササイズである理由のひとつは、この姿勢が適切なリーチパターンを引き出す傾向があるからです。 他のいくつかの例も考えることができるでしょう。床に座りながら、後ろを振り向くには首から始まり、肩甲骨、胸部、腰部、股関節の協調、統合された回旋が必要になります。立位では、膝や足首、足の代償的な動きを使うことで胸椎や股関節の動きを避けることができます。もし、伏臥位で周囲を見渡したければ、胸椎はかなりの伸展と回旋の動きが必要になり、肩甲骨と首もその活動に協調しなくてはなりません。また、立位では、足首や膝の代償性運動によってそれほど胸椎を使わなくても容易に上の方向を見ることができます。 それぞれのケースにおいて、立位での自由度の追加は、発達上の姿勢では必ず必須とされる原始的パターンを無視させてしまうかもしれません。その結果として、同じ動作をするのであっても特有で特異的なパターンを使うかもしれませんが、これでは効率が悪くなり、ランダムに偏った運動負荷をかけてしまい、健康的な動きをするためのとても重要な基礎的要素を維持するチャンスを逃してしまいます。 よって、発達上の姿勢に戻ってみることは、日々の生活で無視されているかもしれない原始的パターンを促してくれます。もちろん、これは即効性のあるマジックではありませんし、これが運動を向上できる唯一の方法ということでもありません。しかし、役に立つツールではあります。そして、これが、動きも気分も良くしたいと思ったときに、多くの人は床の上で動く理由なのです。 次の投稿では、運動に抵抗を加えることが、いかに発達性運動パターンの使用促進を制限することもありえるかについて記述します。

トッド・ハーグローブ 3894字

足首のモビリティー向上

固まってしまいがちな足首の背屈の可動性を向上させるための、シンプルなアプローチをオーストラリアのファンクショナルトレーニングインスティチュートがご紹介するビデオをご覧ください。

ファンクショナル・トレーニング・インスティチュート 2:49

握力を理解する

従来トレーニングについて考える時、次のことについて考えます: 使用するツール 可動域(ROM) スピード 負荷 その他様々な要因 十分に考慮されていない1つのことは握力です。 この分野に関して数多くのリサーチを行ってきているのですが、ダンカン・ブラウン(オーストラリアのトップロッククライミングコーチの1人)を始めとする人々にインタビューを行い、ロッククライミングで使用するスキル・トレーニングが、フィットネス業界におけるストレングストレーニングへのアプローチに大きな一助になることが分かりました。 これらの主な考慮範囲は、指や手を通しての筋力強化が含まれており、肩のメカニクス、傷害予防、コアの安定性に関して多くのことを我々に教えてくれます。 トレーニング時に私たちが使用するグリップポジションのタイプは多様です。最も一般的なグリップは、筒状グリップ(パワーグリップシリーズの1つ)です。筒状握りとはバーベルやダンベルを手で握り、親指の末節骨部が人差し指と薬指の上にくるように置くものです。問題となるのは、この特定のグリップポジションから多くの筋力をつけることもあるのですが、手を使用する他の異なった環境での適用には移行できないということです。 例えば、バトルロープを使用するとき、右手と左手の間で産みだされる波に大きな差があることに気づくと思います。多くの人にとって左手は利き手ではなく、産生できるパワーに関して、右手よりも大きく劣っているかもしれません。このことについての1つの理由は、肩甲帯、上肢、体幹が協調して働くための十分な握力を持っていないということが挙げられます。 トレーニングで使用するグリップに多様性を持たせることは、日々の生活やスポーツの中で我々に絶大な利点をもたらすことができます。しばし考えてみましょう;誰かの手を握るとき、グリップの力は親指から人差し指、中指が優位であることに気づくと思います。薬指と小指はほとんど働いていないことに気づくでしょう。 このケースでは、親指、人差し指、中指にすべての筋力をかけてしまうと橈側変位しやすくなり、親指が肘の内側へ向かうことに気づくでしょう。このことが、内側上顆炎のような機能不全を引き起こします。 尺側変位の力を生み出すことで、中指、薬指、小指を優位に使用するようになります(小指を肘に向って下方に引く)。 バトルロープについて考えると、これが典型的なグリップをやめ、特定のグリップで動かすとき、多くの人々はとても苦労するところです。 これらの問題を解決していくために、トレーニングにグリップのポジションを取り入れていくための多くの方法があります。 典型的なブリップ 特定のグリップ バトルロープで握力の多様性を向上させる バトルロープは、主に3面すべてでエクササイズを行うストロングマンのプルエクササイズを通して、握力を強化するための素晴らしいトレーニングツールです。さらに、様々な持ち方は握力の強化の方法に影響します。例、中立位でのグリップ、典型的なオーバーハンド、回内位グリップ。 上腕と手の動きに関与する筋肉は35個以上あり、ストロングマンプルのような握る活動には、これらの多くが関わっています。 握ることを含む動きは、ジャムの蓋を開ける、ショッピングバックを運ぶといった日々のタスクにまで幅広く及んでいます。 他のプラスの効果は、,バーベルデッドリフトやプルアップといった、握力不足が有望なチャレンジャーを失敗させることが多いリフトの強化を、ストロングマンプルがどのように促進させるかに関連しています。ロッククライミングのようなレクリエーション活動にプラスの効果があることは言うまでもなく、伸展筋群の十分な安定の維持とともに、強靭な屈曲筋が必要なレスリング、テニス、ゴルフなど、より特化したスポーツにも効果的です。 下の図は、握力強化のためのバトルロープの使用方法です: 矢状面立位プル 矢状面両膝立ちプル(違う握り方に注目) 矢状面座位プル(違う握り方に注目) 矢状面プランクプル 前額面立位プル 前額面両膝立ちプル パワーバッグとフックグリップ 私たちがパワーバッグを使用するとき、フックグリップと呼んでいるグリップをするために使用するストラップを使っています。下図を参照: 手が真っ直ぐなポジションであり、手首と第2中手指節関節が同じラインであり、パワーバッグについているストラップを指の遠位2関節で持っているのを見られるでしょうか。 この状態は上腕の指屈筋群に大きなインパクトを与えています。母指の筋肉・腱(あるいは、親指に関与する筋肉群)を除外すると、上腕と肩関節の操作方法に大きな多様性が生まれます。 トレーニングする時、どれだけ多くのエクササイズを使用していますか?私たちが使用しているグリップのほぼすべてが、筒状のグリップポジションであることに多くの人が気づくかもしれません。 ファンクショナルトレーニングは、多くの異なったツールを使用し、競技スポーツ、レクリエーショナル活動、日常生活に還元しうる幅広くダイナミックな強さを構築することを強調しています。 私たちが使用することができる他のグリップは;球体グリップ;筒状グリップとかなり似ているのですが、掴んでいる物体がより厚みを持つため、親指が人差し指と中指まで届かなくなってしまいます。このグリップを使用すると、指から肩に至る全体のキネティックチェーンが変化し、多くの人は弱くなったと感じるでしょう。 ケトルベルを使用し、手を広げて頭上でベルを持つとき、側方把握グリップを使用し、親指の母指内転筋で人差し指の方向へ引くことで、ケトルベルをそのポジションに保持するためのテンションを作り出します。このことが、ケトルベルを腕の内側から離れないように確保してくれます。 このグリップポジションは、ケトルベルスナッチのオーバーヘッドポジションで見ることができ、また、ターキッシュゲットアップを行う時のスタートのポジションでも見られます。 トレーニングを通して様々なグリップポジションを使用することは、筋力、そして、多くのスポーツ環境への波及効果に関して多くの利点を持っています。そのタスクが、ロッククライミングでの挑戦的なポジションで掴むこと、スポーツで相手にタックルして掴むこと、ブラジリアン柔術で相手の選手を掴むといった、どのようなものであったとしても。 私たちの弱連鎖が持つ強さが、私たちの本来の強さです。多くの人にとって、この弱さは握ること、そして、効果的に手を使用することができないことに由来しています。

ファンクショナル・トレーニング・インスティチュート 2874字

ファンクショナルマッスルファンクション:シナジスティック

機能的な筋肉の働きは、主動筋と拮抗筋のモデルで理解されるものではなく、効果的な筋肉の協働=シナジーによって実現されるものです。単純な動作の例から、より複雑な例まで、わかりやすい例をあげてGIFT学長のデーブ・ティベリオ博士が解説します。

グレイインスティテュート 10:54

プログラムとコーチングを向上させる4つの方法

コーチやトレーナーとして、我々はより良くある為に日々トレーニングツールを探し求めています。 それはもしかすると新しいタイプのプログラミングかもしれませんし、 噂に聞く新しいエクササイズかもしれません。 または大人気のエクササイズに対する、ひと味違った形でのコーチングやキューイングかもしれません。 要するに、私達コーチは、より良い結果が残せるものであれば出来る事は全てやってみるということです。 私はこれを16年間やってきましたし、少なくとも通常レベルの成功を収めてきました。 加えて、私は指導方法及びトレーニングの連続体の全貌をみてきました – 業界に入りたての若いトレーナーやコーチから、私達の業界の真のレジェンド達との会話や仕事まで。 もし、何がエリートレベルの指導者と駆け出しの新米を分けるか、を絞り込まなければならないとすれば、ポイントは以下の4項目でしょう。 あまりピンとこないかもしれませんが、有能な一流指導者であれば誰でも、プログラミングや指導法向上のために、これら4項目を導入しているということを保証します。 楽しんで読んで下さい! #1 – 一流の指導者はシンプルであることを目指す 私達が最初にプログラムを作り始める頃、それは控えめに言ってもかなり圧倒されるものでしょう。 以前に自分がプログラムに沿った経験があるので、何がプランに含まれるかはある程度分かっています。 加えて最近指導法やピリオダイゼーションに関する文献を10冊くらい読んだばかりなので、そこで得た知識も盛り込みたくなりますよね。 更に更に、 最近見た新しいエクササイズ15種類を、あなたが使ってみたくて仕方なかったら...これは盛り込むしか無いですよね! こうなった場合、一体これら全部をどうやって調和させたらよいのでしょうか? 答えは簡単です—全部を削って出来る限りシンプルにするのです。 私が初めて自分のパワーリフティングのトレーニングプログラムを作ったとき、そのプログラムは本来必要な内容の10倍の長さになってしまいました。 そして当時、ベストが380、250、そして480だった彼(当時の私)にとって、アドバンスプログラムは1番必要なかったものだったのです! 私達がスピードやアジリティー、プライオメトリックスやリフティング等についてトレーニングを考える時、ゴールはプログラムをいかに複雑に作成できるかということではありません。 ゴールはプログラムの中にどれだけ沢山の“ツール”を詰め込むことでもありません。 目の前に置かれた作品に対して、同僚達が“おぉ”とか“あぁ”とか言ったとしても、余分に称賛を得られるわけでもありません。 結局のところ、私達が評価されるのは作ったプログラムが結果をだすことのみです。 私は、簡単かつシンプルであればある程、より優れたプログラムを作れると強く信じています。 生理学の観点から見ても、簡単でシンプルなプログラムは、どのような適合を目指しているのかを、身体が真に理解し反応することを可能にしてくれます。 プログラミングの初期にはしっくりこない段階があってもOKです。 事実、誰もが経験します。これはある意味儀式のようなものです。 しかし常に自分のプログラミングを見直し、無駄を削ぎ落とし、更に効果的にする方法はないかと問いて下さい。 そうした結果、きっとあなたは自分の作成した中身の詰まった無駄のないプログラミングに驚く事になるでしょう。 #2 – 一流は基本を熟知している 私がこの業界で働き始めたころから、このようなタイトルの記事をよく見かけます; “キレてるハムストリングを作る8つの方法!“ “コアを締める5つの新しい運動!” “ふくらはぎを肥大させる4つのエクササイズ!” 私も結構執筆をしますから、これらの売り文句の意味は理解してます。人々の注意力は長く続かず、キラキラ派手やかなものに惹かれる昨今、雑誌やオンライン記事等も人々の目を引くものでなくてはなりません。 しかし長年に渡り私は世界中何千もの方々とお仕事させて頂く機会に恵まれてきました。 本物の人々と仕事をする、クオリティーを重視している本物のコーチやトレーナーの皆さんと。 新米で駆け出しの方、ちょっと自分の道が見えてきた方、そして経験豊富な上級者の方もいらっしゃいます。 もし私が彼ら皆に1つアドバイスをするとしたらこんな感じでしょうか: トレーニングに関しては、基本を熟知することを目標にしよう。 これをただ読んだだけで先に進まないでください。しっかりと心に留めてください。 ジムにおいて、基本の動作パターンを真にマスターする事を目標にしてください。 スクワット、デッドリフト、プッシュアップ、プルアップ、ランジ、プレスなどは、プログラムとしてあまり魅力的には映らないかもしれません。 Youtubeやインスタグラムに投稿しても、視聴数は2万もいかないかもしれません。 でもこれは保証します: 基本のリフティングをプログラムに取り入れ、それを高いレベルで指導するならば、あなたの指導しているアスリートは必ず結果を出すでしょう。 例とポイント:もし5年前に、ビッグ3(スクワット、ベンチプレス、デッドリフト)を教える事に自信はありますかと聞かれていたら、私は“あたりまえだろ”と自信ありげに答えていたでしょう。 しかし5年経った今の私は,ビッグ3への見解や、いかに行われるべきかに関して全く違う見解を持っています。 あなたがどれだけ優れていてどれだけ経験があっても、常に基礎を教えることは上達できるものです。 #3 – 一流は“効率性がカギ”であるのを知っている 実質的のものよりも他のことに価値を見出しがちな今の時代において、忘れられていることの1つが“効率性”というコンセプトです。 これは上記の私の論点と直接的に合致します。1つの動作パターンがとてもうまく出来たり、プライオメトリックスの漸進ではなく、常に注目されているのはプログレッションです。 次のことへ進む。 そして更に次へ —なぜならそうできるから! そうする時、私たちは、効率性とモーターコントロールを犠牲にしなければなりません。 これでは、我々は本当の意味でマインドとボディのコネクションを発達させることはできません。 結局のところ、私達はクライアントやアスリートとのトレーニングをごまかしているのです。 これがトレーニングプログラムの始めに、よくアスリートに私が熟知しているエクササイズからスタートさせる理由です。 もちろん信頼関係を築き、彼らにジムで自信を与えたいのですが、それ以上に、早い時期に、彼らをとてつもなく効率的にしたいのです。 グレッグ・ロビンスは、このことを私達のポッドキャストでも示唆してくれています。グレッグの要約をすると: なぜ上手く指導できないエクササイズやトレーニングツールをわざわざあなたのプログラムに取り込まなければならないのでしょう これはまた私の初期プログラムの多くが、とてもシンプルに見える理由かもしれません。 結局のところ、もし私が高重量のバックスクワットをせず、高強度のスピードやパワーを捨て、もし低強度の有酸素ばかりやっていたら、一体どうやって何かを獲得することができるのかと思いますね? 実際のところ、私はクライアントを内側から再構築しているのです。 彼らの身体のパーキングブレーキをオフにし、それによって彼らの持つ真の可動性、運動能力やコンディショニングが滲み出てくるのです。 トレーニングを頑張りすぎて、プログラムから得ることがあまりに少ないアスリート達を頻繁に見かけます。 最初の時期に削り落とし、より効率的にすることに注目をすれば、長期的な結果は価値のあるものになることを保証します。 #4 – 一流は“要となるキュー“を活用する この夏の私の目標は、一週間に一冊の本を読む事です。先週からチャールズ・デュイッグの「ハビット」を読んでいます。 この本で、彼は要となる習慣というものについて触れています。要となる習慣とは、他の似たような習慣に対して連鎖反応を作り出す習慣です。 例としては: オフシーズンの始め、アスリートはトレーニングを何もしません。 家では食べたいものを食べ放題です。 一晩中夜更かししてはNetflixでドラマを見たり、FIFA2016プレイステーションゲームの技を磨く事に一生懸命です。 オフシーズンのトレーニングが開始された途端に状況は一変します。 身体により良いものを食べ始めます。 リカバリーを高める為に早く寝るようにもなります。 トレーニングは、この場合においての要となる習慣です。トレーニングが始まれば、他の要素もうまくかみ合い始めるのです。 コーチングにおいても同じ現象が起きます。これを私は “要のキュー”と呼んでいます。(何をしたかわかりますか?) コーチとしての私のゴールは、セッション中はキューイングの数をできるだけ少なくすること。 アスリートには、わずかなミスをしてもらいたいのです。そうすれば彼らの身体が自身にあったムーブメントパターンを見つけ出すことが出来ます。 ですから、私は彼らに起こる些細なことを全て修正することはありません。 しかし、もし私が10個の問題を連鎖反応で一気に修正できるような1つの “要のキュー”を見つけられたらどうでしょう? それが私の求めるキューイングなのです。 まとめ 人生においてあなたが出来る最良のことは大衆が進む道を見極め…そして逆の道を行きなさい、と言われます。 新しいエクササイズや複雑なプログラムに誘惑されたり、過剰なキューイングをするよりも、全てのことの無駄をなくすことをゴールにしましょう。 あなたのプログラムをシンプルかつ効果的にして下さい。 ごく少数のエクササイズ(スピード、プライオメトリック、リフティングに関わらず)を、完璧なテクニックを用いて活用して下さい。 最後に大切なことは、思慮深いキューイングで、数々の問題を一挙に解決することをめざすということ。 もしこれが出来れば、全てのクライアントやアスリートに最良の結果を提供することが目の前にあることを保証します。

マイク・ロバートソン 4458字

運転中の体幹の回旋

運転中、肩越しに後ろ側を見ようとするとき、皆さんはその動きを頚椎からのみ行おうとしてはいませんか?日常生活の何でもない動作の一つ一つも、本来動くべき場所が動くか否かによって、痛みや怪我に繋がることもあるのです。

キャシー・ドゥリー 2:18

痛みの科学の実際の適用に関する10のヒント

痛みの科学に関する知識は、パーソナルトレーナーから医師、外科医に及ぶ全ての人に向けた論文やブログと共に急速に成長し、話題は出回っています。身体に携わる全ての人なら誰もが痛みの仕組みについての基礎的な理解を持つべきである、ということが議論されるかもしれません。 私達は未だにこの分野において十分な理解に至っていないという批判もありつつ、極論から極論へと大きく振り子が振れるようになっている人たちもいます! この大量の情報を消化することが重要はありますが、私達はまた学問の、端末利用者(例えば、この全ての情報を理解する手助けをしたいとあなたが思う人ですが、この話題はなかなか難しいものとなります)にとっての現実世界での適用について考える必要もあります。 1. 痛みの科学は、言うべきでないことを私達に理解させる手助けをしてくれますが、言うべきことを理解させてはくれない。 かなり少なく見積もっても、痛みの科学をより理解することが、私達の言うことが、彼等が彼等自身と彼等の現在の状態の認識に著しい影響を及ぼすということに関する、より良い理解を与えてくれるはずです。残念ながら、以前にそれらの単語が何度も何度も使われてきたために、手助けになるというよりも妨げになる単語がしばしば、口にされてしまいます! 特定の単語を避けることは、有害なノセボ効果を作り出さない手助けになるかもしれません。 裂ける 破れる 不安定 損傷 変性 慢性の 位置のずれた これらの単語は、人々の能力、信念、回復への期待に関する認識を変える可能性を持っています。‘思考に影響を与えるウイルス’は、後ろ向きの信念や、どのようにそのウイルスが生じ、人々の間で伝えられているのかという点で、惑わされやすい言葉です。 では、私達は何を言うべきなのでしょうか?それはとてつもなく難しい質問であり、各個人間で異なるものです。決まったレシピは明らかに存在しません。 ですから、言うべきでないことを学ぶことはしばしば、良いスタートなのです! 2. テーマについてもっと学びなさい! 現在の私達の教育課程に関する批判は、大学レベル、あるいは傷害を扱う多くのコースにおいて、疼痛経験の背後にあるメカニズムに関して十分に教えていないということです。 いくつかの映像を見たり、ブログを読んだりし始める一方で、痛みの仕組みに関する実際的な知識によって裏打ちされた現代的な痛みの科学の概念が使用されるべきです。いくつかの話題の言葉、あるいは比喩表現は恐らく、対象者、特に扱いにくい問題に関して質問する癖のある対象者に理解させるには、十分ではありません。 ここに答え、あるいは説明の仕方を知っておく価値があるかもしれない、いくつかの質問があります: 痛みとは何か? 痛覚はどのように作用するのか? 中枢性感作とは何か? 末梢性感作とは何か? 疼痛経験に関与している脊柱上部のメカニズムは何か? 下行性抑制・促進とは何か? なぜストレス、状況、感情が疼痛経験に影響を及ぼすのか? 3. 痛みのような複雑なテーマの説明は、練習を必要とする。 人々は、専門家のように‘痛みの説明’をすることにプレッシャーを感じる可能性があります。まず第一に、あなたは基礎科学を必要とし、それを明確に話す方法を学ぶ必要がありますが、一晩でできるようになるものではありません。 アインシュタインの言葉のように、“もし物事をシンプルに説明することができないのであれば、あなたはそれを十分に理解していないということだ” 説明における複雑さと混乱は、理解する側の混乱と不確実性を引き起こす可能性があり、実際には、その人の疼痛経験を軽減するのではなく増大させるかもしれません。 それは、あなた自身の自信とコミュニケーション能力を構築するために、     ‘ライブの’環境から離れて実践されるべきものかもしれません。何度か大失敗をして、そこから学び、必要な時に使えるようにしておいてください! 結局のところ、優れた講演者は練習をしているのです。 4. いくつかの比喩が必要かもしれない。 比喩は、痛みのような複雑なテーマを理解するための、素晴らしい方法として奨励されています。毎日の生活の中で私達は多くの比喩を使用していることから、これはとても理にかなってはいますが、比喩の使用は、その比喩の受け取る側の以前の経験、文化的要素、教育レベル次第であるということを留意しておくと良いでしょう。 一つの比喩がうまく作用しなければ、別の比喩に切り替えてください。 5. 人々ではなく、概念に挑戦する。 達成しようとしている事の成功に不可欠かもしれない信頼関係を損なう優れた方法は、彼等に‘あなたは間違っている’と言うこと、あるいはバカにされたと彼等に感じさせることです。信念は強力瞬間接着剤のようなものであり、それに対する対立を加えることは、物事を急速に悪化させる可能性があります。何かがいっていないのであれば、止めてください。後でその話題に戻ってくることができますし、繰り返し提供することもできます。 6. あなたが言っていることを人がどのように認識しているかを常に解明すること。 これは非常に重要です。あなたが提供している情報が、あなたが全く意図していないこととして認識されているかもしれません!Kieran O’Sullivan教授は、“あなたは私が話したことを、あなたの家族や友人にどのように話しますか?”と質問するといった最善策を奨励しています。 これは、“彼等が、痛みの全ては、私の頭の中にあると言っていた”というような、‘思考に影響を与えるウイルス’に変化するまえに、あらゆる伝達不良が(うまくいけば)改善される可能性があることを意味しています。 7. レシピやプロトコルは無い−個体差がある。 ある個人に有効なことは、他には有効ではないかもしれません。恐らく、痛みの科学にとってのプラスは、よりプロトコルに基づいたアプローチのような、全ての人に対する特定のプロトコルを持つというよりも、対象者中心に向けられているということです。 心理学の分野から奨励されている戦略は、疑似体験療法や期待違反理論のようなテクニックを含みます。私達は、患者/クライアントが、特定の恐怖や信念が取り扱われたことを識別し、できれば抑制されたことに注意する必要があり、これは一般概念として見なされません。 8. 信念を変えることは瞬間的なプロセス、精密科学ではなく、ましてや常に可能なものでさえない。 第5項で述べたように、信念は厄介で、友人、家族、職場の同僚の間で(ドクター・グーグルではなおさら)人から人へと感染しやすい可能性があります。セラピスト、あるいはトレーナーとの会話が終わって外に出た際に、急に彼等自身の見解や考え方、または信念を変えることは滅多にありません。 それは、ゆっくりで多くの時間と労力を要するプロセス(恐らく!)であり、あるいは実際には決して起こらないことかもしれません。 9. 人々はしばしば、あなたがそばにいなくても直感的に真実を理解する 再概念化は、不思議な方法で、不思議なきっかけによって発生する可能性があり、頭にリンゴが落ちてくるのに少し似ています!あなたは、目の前で彼等が直感的に理解するのを待つとうよりも、提供している情報に関して、彼等が自身の気づきに辿り着くのを待つ必要があるかもしれません。 10. 言葉で言っただけでは組織に耐性はつかない BPSモデル(biopsychosocialモデル:生物心理社会モデル)における主要部の一つは、生物(biological)の“B”です。あなたが人々に彼等が虚弱ではないと理解させる手助けをすることができるというだけで、彼等が急に運動能力の強化を発現するわけではありません。あなたの運動量が少なければ少ないほど、運動における頑健さが損なわれる傾向にあり、それが実際のSAIDの原則なのです。 誰かがかつて述べた“言葉で言っただけでは組織に耐性はつかない”は、真をついた発言です。しかし、あなたは最初に、人にその作業をさせ、耐性をつけるように話をする必要があるかもしれません! 11. BPSモデルは、未だにソーシャルメディアから隔たっている少数派である 鋭い観察眼の持ち主の方、そう、すでに10のヒントについてを述べてしまいました!これは11個目です! ソーシャルメディアは、誰かが喜ぶような(そうでない人もいるが)、あらゆる角度からの痛みの科学で溢れているように感じるかもしれません。インターネットのより広い世界に入って、現実の世界に衝撃を受け、ゾッとしてください。痛みに関する医学界とトレーニング界で配信されている情報は、未だに構造的・生体力学的要因を用いた、かなり昔ながらのものばかりが推奨されているのです。

ベン・コーマック 3775字

Kaori’s Update #16 - プラシーボ効果とは何か?

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谷 佳織 5:06

背臥位での呼吸修正

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