血流制限トレーニングの筋力に対する長期的影響

目的 この記事は、血流制限トレーニングの筋力向上への長期的(慢性的)影響に関する研究の概要を提示している。 高負荷レジスタンストレーニングとの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を使用した長期の低相対負荷(1RMの10-30%)レジスタンストレーニングプログラムであれば何でも 比較 – 血流制限を伴わない高相対負荷(1RMの70-90%)レジスタンストレーニングプログラム 結果 – 最大随意等尺性力および1RMを含む、介入前後に測定された筋力測定値 結果 以下の研究が確認された:カラブルト(2010年)、クラーク(2011年)、カラブルト(2011年)、ラウレンティーノ(2012年)、マーティン-ヘルナンデス(2013年)、スィーボード(2013年)、ヴェッチン(2014年)、リバーディ(2015年)。全ての研究は、血流制限を伴うレジスタンストレーニングは、少なくとも1つの結果測定において筋力を向上したということを発見している。ゆえに、血流制限を伴うレジスタンストレーニングは、筋力の増加に効果的であるようである。また、従来のレジスタンストレーニングにおいて有意により大きな筋力の向上を発見している、マーティン-ヘルナンデス(2013年)およびヴェッチン(2014年)による2つの例外を除き、研究の多くは、低相対負荷を使用した血流制限グループ、およびほとんどの結果測定法に対し高相対負荷を使用した従来のレジスタンストレーニンググループにおいて、同様の筋力の向上を発見している。またカラブルト(2010年)およびカラブルト(2011年)は、彼らの測定結果のひとつは、従来のレジスタンストレーニンググループにおいてより大きな増加を示したということを報告している。これは、従来のグループが高相対負荷を使用した際、低相対負荷での血流制限トレーニングは、従来のレジスタンストレーニングと比較し、同様もしくは多少劣る結果をもたらす可能性があるということを示唆している。 同等の負荷におけるレジスタンストレーニングの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を伴う長期のレジスタンストレーニングプログラム(単独もしくは従来のレジスタンストレーニングとの併用)であれば何でも 比較 – 相対負荷を適合させた血流制限を伴わないレジスタンストレーニング 結果 – 最大随意等尺性力および1RMを含む、介入前後に測定された筋力測定値 結果 以下の研究が確認された:オオタ(2003年)、マダラメ(2008年)、パターソン(2010年)、ヤスダ(2010年)、マダラメ(2011年)、パターソン(2011年)、ニールセン(2012年)、ゴーダワ(2012年)、ラウレンティーノ(2012年)、ヤマナカ(2012年)、ウェザーホルト(2013年)、マニマナコーム(2013年)、クック(2014年)、ファーズ(2014年)、フィッチェン(2014年)、リュバーズ(2014年)、シーガル(2015年)。すべての研究は、血流制限を伴うレジスタンストレーニングは、少なくともひとつの結果測定において筋力を向上したということを発見している。ゆえに血流制限を伴うレジスタンストレーニングは、筋力の増加に効果的であるようである。さらに研究の多くは、従来のレジスタンストレーニンググループと比較し、血流制限グループにおける筋力の向上はより大きかったということを発見している。これは、従来のグループが同等の相対負荷を使用した場合、従来のレジスタンストレーニングと比較し、血流制限を伴うレジスタンストレーニングはより優れた結果をもたらす可能性があるということを示唆している。 血流制限を伴うレジスタンストレーニング:筋力への影響 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限と併せて長期にわたり行われたレジスタンストレーニングプロトコルであれば何でも 比較 – トレーニングをしないコントロールグループもしくはコントロールなしグループ 結果 – 最大随意等尺性力および1RMを含む、介入前後に測定された筋力測定値 結果 以下の研究が確認された:クック(2010年)、マッター(2014年)、ヒルデン(2015年)。選択された研究は、血流制限を伴うレジスタンストレーニングの結果として、筋力の向上を報告している。これらの研究は、血流制限を伴うレジスタンストレーニングとその他のトレーニンググループを比較している研究ほど断固としたものではないが、血流制限を伴うレジスタンストレーニングの筋力の向上に対する有効性のさらなる支持に役立っている。 低酸素および正常酸素圧トレーニングの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 低酸素環境において行われた長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 比較 – 正常酸素圧における、量および相対負荷を適合させたレジスタンストレーニング 結果 – 最大随意等尺性力および1RMを含む、介入前後に測定された筋力測定値 結果 以下の研究が確認された:クロベ(2015年)、マニマナコーム(2013年)。両方の研究は、低酸素環境におけるレジスタンストレーニング後の筋力の向上を報告している。ゆえに、低酸素環境におけるレジスタンストレーニングは筋力の向上に効果的であるようである。正常酸素圧におけるトレーニングと比較し、低酸素状態におけるレジスタンストレーニング後のより大きな向上が、マニマナコームおよびその他(2013年)により観察されている。しかしながら、クロベおよびその他(2015年)は、グループ間の差違はなかったと報告している。これらの相反する結果は、低酸素状態におけるレジスタンストレーニングは、正常酸素圧環境におけるトレーニングと比較し、より有益であるわけではない可能性があることを示唆している。 血流制限を伴うレジスタンスなしのトレーニングエクササイズ:筋力への影響 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 長期にわたり行われた血流制限を伴うレジスタンスなしのトレーニングエクササイズ方法であれば何でも 比較 – 長期にわたり行われた血流制限を伴わないレジスタンスなしのトレーニングエクササイズ方法であればどれでも 結果 – 最大随意等尺性力および1RMを含む、介入前後に測定された筋力測定値 結果 以下の研究が確認された:サンドバーグ(1994年)、アベ(2006b年b)、アベ(2010年)。これらの研究は相反する発見を示している。研究において使用されたプロトコルの差違を考慮に入れると、筋力の向上が起こらないかもしれないものよりも低い相対負荷に対する閾値のように、それらの間でその差違をもたらした異なる要素が存在する可能性がある。 エクササイズなしでの血流制限:筋力への影響 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – エクササイズを伴わない長期にわたり行われた血流制限であれば何でも 比較 – エクササイズ方法を含む何でも 結果 – 最大随意等尺性力および1RMを含む、介入前後に測定された筋力の測定値 結果 1つの研究が確認された:クボタおよびその他(2008年)。この研究は、ギブスで足首を固定した個人における、筋力の維持に対するエクサイサイズを伴わない血流制限の有効性を調査している。等尺性収縮を行うことと比較し、エクササイズを伴わない血流制限は、2週間以上の固定において筋力の低下を防いでいたということが発見されている。 結論 血流制限を伴う長期の低負荷レジスタンストレーニングは、筋力を増加するようである。さらにそのようなプログラムは、適合された(低)相対負荷を使用した場合、血流制限を伴わないレジスタンストレーニングと比較し、筋力をより増加するようである。 血流制限を伴う長期の低負荷レジスタンストレーニングは、(適合されていない)高負荷における従来のレジスタンストレーニングと同等の有効性がある、もしくは多少効果が薄いようである。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 3402字

血流制限トレーニングの持久力への長期的影響

目的 この記事は、血流制限トレーニングの持久力への長期的(慢性の)影響に関する研究の概要を提示している。 背景 序論 血流制限を伴わない同等の方法と比較し、血流制限を伴って行われるレジスタンストレーニングもしくはノンレジスタンストレーニング方法のどちらかの方が、持久力を向上するためにより有益であるかもしれないと思われるのには、様々な理由がある。これらは、血流制限を伴う、もしくは伴わないレジスタンストレーニングの異なる効果を研究している急性試験を参照すること、および、血流制限を伴うもしくは伴わないレジスタンストレーニングの、血管機能の変化を含む生理学的適応への影響を研究している長期研究を参照することにより調査することが可能である。 血流制限の急性効果 例として、急性試験においてレジスタンストレーニングの際の血流制限は、血流制限を伴わないレジスタンストレーニングと比較し、限界に至るまでに行われるレップ数を30%減少させるという結果を示している(ラバーベラおよびその他、 2013年)。筋限界へのより大きな刺激は、持久力に対するより大きな反応を生み出すと期待できるかもしれない。 血流制限の長期的効果 数例の長期的研究は、持久力に恩恵をもたらたす可能性のある、血流制限トレーニング後に起こるいくつかの有益な生理的適応を確認している。例えば、血流制限を伴うウォーキングエクササイズは、血流制限を伴わないウォーキングと比較し、静脈コンプライアンスを向上すると示されており(リダおよびその他、 2011年)、また血流制限を伴うレジスタンストレーニングは血流制限を伴わないレジスタンストレーニングと比較し、毛細血管濾過能力を大幅に向上するようである(エバンズおよびその他、2010年)。これは、血流制限を伴うトレーニング後における毛細血管化の増加によるものである可能性がある。さらにファーズおよびその他(2014b年b)は、血流制限を伴う片側性膝伸筋レジスタンストレーニングは、動脈壁硬化の増加をもたらすが、血流制限を伴わない同様の状況においては、そのような変化は観察されていないということを発見している。また、ハントおよびその他(2013年)は、6週間の1RMの30%における片側性底屈レジスタンストレーニンは、様々な血管の適応をもたらすということを発見している。最後にハントおよびその他(2012年)は、血流制限を伴うレジスタンストレーニングプログラムに反応した上腕動脈の直径の増加は、血流制限を伴わない同様のプロトコル後にみられたものと比較し、より大きかったということを報告している。 負荷を適合させたレジスタンストレーニングとの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を使用した長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 比較 – 血流制限を伴わない長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 結果 – 極度疲労までの時間、限界までのレップ数、および最大酸素消費量を含む、介入の前後に測定された持久力もしくはエアロビックフィットネスの測定値 結果 以下の研究が確認された:マニマナコウ(2013年)、ファーズ(2014年)、リバーディ(2015年)。3つ全ての研究は、持久力測定値の向上を報告している。ゆえに血流制限を伴うレジスタンストレーニングプログラムは、持久力の向上に効果的であるようである。しかしながら3つの研究の内2つ(ファーズおよびその他、2014年、リバーディおよびその他、2015年)は、血流制限グループおよび血流制限無しグループにおいて同様の結果を観察している。ゆえに血流制限を伴うレジスタンストレーニングは、従来のレジスタンストレーニングと比較し、持久力の測定値を向上させるためにより効果的ではないかもしれない。 血流制限を伴うレジスタンストレーニング:持久力への影響 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を伴う長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 比較 – なし、もしくはノートレーニングコントロールグループ 結果 – 極度疲労までの時間、限界までのレップ数、および最大酸素消費量を含む、介入の前後に測定された持久力もしくはエアロビックフィットネスの測定値 結果 1つの研究が、血流制限を伴うレジスタンストレーニングの持久力への影響を評価していると発見された:クック(2010年)。この研究は1週間に3日の血流制限を伴うレジスタンストレーニングの効果を調査しており、30日間の筋アンローディングを行っている被験者のグループにおいて、膝伸筋の持久力を30%向上させたということを発見している。 負荷を適合させたノーレジスタンストレーニングとの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を使用した長期のノーレジスタンストレーニングプログラムであれば何でも 比較 – 血流制限を伴わない長期のノーレジスタンストレーニングであれば何でも 結果 – 極度疲労までの時間、限界までのレップ数、および最大酸素消費量を含む、介入の前後に測定された持久力もしくはエアロビックフィットネスの測定値 結果 以下の研究が確認された:サンドバーグ(1993年)、サンドバーグ(1994年)、アベ(2010年)。3つ全ての研究は、持久力のマーカーを向上させた。ゆえに血流制限を伴うノーレジスタンストレーニング方法は、持久力の向上に効果的であるようである。さらに3つ全ての研究は、血流制限を伴わないノーレジスタンストレーニンググループと比較し、血流制限を伴うノーレジスタンストレーニンググループにおいてより大きな向上を示していた。ゆえに、血流制限を伴わないノーレジスタンストレーニング方法と比較し、血流制限を伴うノーレジスタンストレーニング方法は、持久力を向上させることにおいてより効果的であるようである。しかし研究論文は非常に限られており、この結論は極めて不明確である。 結論 血流制限を伴う長期のレジスタンストレーニングは、少なくとも血流制限を伴わない同様のプログラムと同等に持久力の測定値を向上させるようである。 血流制限を伴わない同様のプログラムと比較し、血流制限を伴う長期のノーレジスタンストレーニングプログラムは、持久力の測定値を大幅に向上させるようである。しかし、研究論文は非常に限られており、この結論は極めて不明確である。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2717字

なぜヘックスバーはアスリートにとってデッドリフトのより良い選択肢なのか? パート 1/2

多くのアスリートにとって、デッドリフトはストレングス&コンディショニングプログラムにおける主要なエクササイズである。ほとんどのコーチたちは、ストレートバーおよびヘックスバーデッドリフト両方のプログラムを作成するが、一方が他方よりもより優れているかどうかは明確ではない。 ストレートバーデッドリフトには長く顕著な歴史があるにもかかわらず、一部のコーチたちは、ヘックスバーには、パワーリフターでないアスリートに対しより良い選択となり得る他の恩恵がある可能性があると示唆している。 最近まで、少なくとも生体力学が考慮されているものとしては、1つの研究がこれら2つのデッドリフトバリエーションを比較しているのみである。その研究でスウィントンおよびその他(2011年)は、1RMの10-80%の様々な負荷において、パワーリフターのグループにおけるヘックスバーおよび従来のストレートバーデッドリフトの比較を行っている。彼らは多くの調査を行っており、それらは時間をかけて概説するに値するものである。 最初にスウィントンおよびその他(2011年)は、各デッドリフトの1RMを測定した。彼らは、ヘックスバーデッドリフトはストレートバーデッドリフトと比較し、1RMに対しより重い負荷を使用することを可能にしているということを発見している(265 ± 41 kg vs. 245 ± 39kg)。彼らは、これは一般的にストレートバーと比較し、ヘックスバーにおけるより短い外側モーメントアームの長さのために起こるのであろうという仮説を立てた。 第2に彼らは、関節角度動作を記録するために動作分析を使用し、リフトオフにおける胴体、股関節、および足関節角度は、ヘックスバーおよびストレートバーデッドリフトの間において有意な差違はなかった(78.8 vs. 72.5度)ということを発見しているが、彼らは、膝関節角度は、ストレートバーを使用した際と比較し、ヘックスバーを使用した際に大幅により大きかった(より屈曲していた)ということも確かに記述している。このより大きな膝関節屈曲は、従来のストレートバーデッドリフトよりも、ヘックスバーデッドリフトを多少相撲デッドリフトのように、あるいはスクワットのようにも見せている。 これらは、2つのデッドリフトのバリエーションを比較している写真であり、ヘックスバーデッドリフトにおいて、膝関節角度がより屈曲していることを容易に見ることができる。 写真からもわかるように、床からのバーベルの高さが同等にもかかわらず、ヘックスバーデッドリフト(写真左)は、ストレートバーデッドリフト(写真右)と比較し、胴体位はより直立している。これは、より大きな膝関節屈曲(膝がより曲がっている)のためであり、股関節がより床に近づいていることが、エクササイズをよりスクワットのようにしている。 次にスウィントンおよびその他(2011年)は、各関節(腰仙関節、股関節、膝関節、足関節)における外側モーメントアームの長さを測定した。彼らは、腰仙関節、股関節、および足関節モーメントアームの長さは、ヘックスバーおよびストレートバーデッドリフトの間で有意な差違はなかったが、膝関節モーメントアームの長さには大幅な差違があり、ストレートバーデッドリフトにおける+8.4cmから、ヘックスバーデッドリフトにおける-1.9cmへと変化していたということを発見している。 正の値から負の値へのこの変化は、それが、ストレートバーデッドリフトにおける総関節モーメントは膝関節屈曲に対するものであり、ハムストリングにより生み出されている一方、ヘックスバーデッドリフトにおいては膝関節伸展に対してであり、大腿四頭筋により生み出されているということを示唆しているため、非常に重要である。共収縮のために両方の筋グループは激しく収縮することとなるが、これは、各デッドリフトバリエーションにおいてどの筋グループが大部分の力を発揮しているかに関し、差違があることを示している。これにより、ここでもまたヘックスバーデッドリフトを従来のストレートバーデッドリフトよりも相撲デッドリフト、もしくはスクワットにより近付けている。 この分析に続きスウィントンおよびその他(2011年)は、総関節モーメントを計算するために逆動力学を使用し、ヘックスバーデッドリフトにおいて、腰椎、股関節、足関節におけるより低いピークモーメントを発見したが、膝関節におけるピークモーメントは増加していた。これはモーメントアームの長さに対する発見を多少さらに詳しく説明しており、ヘックスバーデッドリフトが大腿四頭筋をより働かせているということだけではなく、さらに腰部、股関節伸筋、および足底屈筋への負荷を軽減させているということを示している。別の言い方をするならば、ストレートバーデッドリフトは、ヘックスバーデッドリフトと比較し、より股関節主導のリフトである。 今までのところは非常に興味深いが、これは、デッドリフトのバリエーション間の差違は、程度の差はあるが、単に股関節主導のエクササイズが好まれるかどうかについてであるということを意味しているのだろうか? そうであるとは言い切れない。 実際、ヘックスバーデッドリフトは従来のストレートバーデッドリフトと比較し、より大きな最大力、最高速度、および最大出力を産出している。なぜこれが起こるのかということは正確には難解であるが、総合の負荷が全ての関節にわたり均等に分配されているためかもしれない。これは、(ストレートバーデッドリフトにおける股関節のように)1つの関節が限定要因であるのではなく、各関節が非常に高い力を産出するために最大限に働いている(そして力—速度の関係に従い非常に低速で収縮している)ということを意味しているのだろう。 どのような過程であるにせよ、ヘックスバーデッドリフトは従来のストレートバーデッドリフトと比較し、下半身の力およびパワー生成を発達させるためにおそらくより効果的であるということを確かに示唆している。 4年以上前のスウィントンおよびその他(2011年)の研究発表以来、発表された近年の他の研究で、下半身の筋肉の筋電図検査(EMG)、1RM負荷、および床反力の分析によるヘックスバーおよびストレートバーデッドリフトの比較を見ることができたのは喜ばしい。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2673字

なぜヘックスバーはアスリートにとってデッドリフトのより良い選択肢なのか? パート 2/2

研究論文: ストレートおよび六角形のバーベル(ヘックスバー)におけるデッドリフトエクササイズの際の筋活性化およびパワー特性の調査、カマラ、コバーン、ダニック、ガルピン、およびコスタ、ストレングス&コンディショニングリサーチ (2016) 研究者たちは何を行ったのか? 測定 2つのデッドリフトバリエーションの生体力学を分析するため、研究者たちは次の測定を行った。 持ち上げた絶対負荷(1RM) 大腿四頭筋(外側広筋)、ハムストリングス(大腿二頭筋)、および腰部(脊柱起立筋)における筋電図検査振幅 最大力および最大パワー(フォースプレートを使用) バー最高速度(線形速度変換器を使用) 被験者 この研究に対し研究者たちは、多少のレジスタンストレーニングの経験があり、少なくとも体重の1.5倍の負荷においてデッドリフトを行うことのできる23.3 ± 2.1歳の男性20名を集めた。彼らはパワーリフターやストレングスアスリートではないが、少なくとも被験者は意図されているものと同様の方法においてエクササイズを行っていたという、ある程度の安心を提供している。 介入 研究者たちが測定を行っている際、被験者は(従来のスタイルにおける)ストレートバーデッドリフトとヘックスバーデッドリフトを、1RMの65%および85%において、別々の機会に各3レップずつ行った。筋電図検査データは比較可能であるということを確信することができるよう、各エクササイズバリエーションに対し同等の相対負荷が使用され、最大下レップ数のみが行われた(例:筋限界までではない)ということを留意することは重要なことである。 何が起こったのか? 研究者たちは、ストレートバーおよびヘックスバーデッドリフトの間に1RM における有意な差違を発見していない(181.4 ± 27.3 vs. 181.1 ± 27.6kg)。スウィントンによる以前の研究が、ヘックスバーはより大きな負荷を使用することを可能にしているということを発見している中、この研究において、ヘックスバーおよびストレートバーデッドリフトが同様の1RMの値を生み出しているというのは興味深いことである。おそらくこの研究における、趣味としてトレーニングを行う被験者は、以前に調査されたパワーリフターと比較し、熟練されていなかったということであろう。 スウィントンおよびその他(2011年)と同様、カマラおよびその他(2016年)は、ヘックスバーデッドリフトはストレートバーデッドリフトと比較し、有意により大きな最大力、最大パワー、および最高速度を示したと発見している。しかし、絶対負荷に関し、2つのデッドリフトバリエーションの間における1RMの値が同様であったにもかかわらず、このことがこの研究において発見されたのは興味深いことである。 上のグラフからは、最大力における差違は有意であったが、実際はそれほど大きくはなかったということを見ることができる。対照的に、最大パワーおよび最高速度は実質的に大幅な差違があった。これは、ヘックスバーは下半身の筋肉をより協調した形で働かせ、また負荷を共有することを可能にしており、ゆえに力—速度スペクトルの速度側に近いところで働いているという考えに合致している。 スウィントンおよびその他(2011年)により行われた関節モーメント分析を基に予想されたように、研究者たちは、ストレートバーデッドリフトと比較し、ヘックスバーデッドリフトにおいて、外側広筋におけるより大きな筋電図検査振幅を報告しており、一方ヘックスバーデッドリフトと比較し、ストレートバーデッドリフトは大腿二頭筋および脊柱起立筋において有意により大きな筋電図検査振幅を示していた。これは、従来のストレートバーデッドリフトはヘックスバーデッドリフトと比較し、より股関節主導のエクササイズであるという考えを支持している。 上のグラフからは、2つのリフトの差違は、主に大腿四頭筋の筋電図検査振幅であり、ストレートバーバリエーションと比較し、ヘックスバーデッドリフトにおいて大幅に大きかったということを見ることができる。 研究者たちはどのような結論に達したのか? 研究者たちは、ヘックスバーデッドリフトはストレートバーデッドリフトと比較し、より股関節主導でないパターンを含むが(より高い大腿四頭筋の筋電図検査振幅、またより低いハムストリングおよび脊柱起立筋の筋電図検査振幅)、ヘックスバーデッドリフトは、同様の1RMの絶対負荷を含んでいるにもかかわらず、最大力、パワー、速度を発達させることにおいてより効果的であるかもしれないという結論に至った。これは、高レベルの力およびパワーの産出を必要とするアスリートにとって、ヘックスバーデッドリフトはより良い選択と言えるかもしれない。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2050字

コンプレッション衣料 — 背景

目的 この記事は、運動誘発性適応の背景、またコンプレッション衣料の概要および回復におけるその役割を提供することを目的としている。 序論 コンプレッション衣料 コンプレッション衣料は、一連のエクササイズの際およびその後に、回復手段としてのその潜在的効用のために着用する衣類のタイプである。コンプレッション衣料は最初、皮膚および筋組織に対して圧による心臓への血流(静脈還流)を増加するために、医療業界で使用された。それ以来、主にパフォーマンスを向上し回復を促進するというその主張に起因し、コンプレッション衣料はスポーツ業界において次第に人気となっていった。コンプレッション衣料は、与える圧により、より多い血流、血流速度、末梢循環および静脈還流、より多い動脈還流、また、運動誘発性筋損傷後の筋肉周辺の腫れを起こす空間の低減(ヒルおよびその他、2014年、マルケスージミネスおよびその他、2016年)を含む多くのメカニズムを通じ、回復プロセスを加速すると考えられている。しかしながら、コンプレッション衣料による回復の促進は、エクササイズのタイプ、コンプレッション衣料のタイプ、回復期間の長さ、筋損傷の度合い、および対象者により影響を受けるようである。 コンプレッション衣料の特性 コンプレッション衣料は、皮膚の上で伸張する際に圧を与える弾性素材により構成されており、多数の異なるタイプの衣料を提供する多くの会社から市販されている。入手可能な衣料間の主な差違は、形および適応部位である。最も人気のあるコンプレッション衣料は、ショート丈およびロング丈のタイツ、トップス、膝丈ストッキング、さらには全身用ボディスーツである(ベリアードおよびその他、2015年)。 運動誘発性適応 アスリートがパフォーマンスを常に向上させてゆくためには、次の2つの基本要素が必要である。(1)現在の能力に過負荷を与えるエクササイズ、および(2)短期のパフォーマンス低減を克服し、更に向上するのに十分な回復。エクササイズからの回復は、内的および外的要因に依存する動力学的な過程であり、短期もしくは長期のタイムスケールにおいて達成することができる(ビショップおよびその他、2008年)。また回復は、ストレスのタイプや大きさにも依存している。ゴメスおよびその他(2002年)は、10キロの徒競走後の筋パワーの回復は、エクササイズの48時間後において達成されていなかったということを発見している。さらに、マックレスターおよびその他(2003年)は、レジスタンストレーニングからの筋力の回復は、エクササイズの72時間後にのみ実現されたということを発見している。しかし、エクササイズ後の回復には非常に個人差があるようであり、変更可能な要因の差違が原因の一つである可能性がある。(ビショップおよびその他、2008年、ゴメスおよびその他、2002年、マックレスターおよびその他、2003年)。そのように、トレーニング後の回復を向上する介入は、より優れた運動能力の可能性を秘めていると考えられている。 疲労およびトレーニング後の回復 エクササイズからの回復は、疲労および・もしくは筋損傷の増加による短期のパフォーマンス低下を取り戻すことを目的としており、運動誘発性適応が起こるために必要であると考えられている。ビショップおよびその他(2008年)は、トレーニング回復は、それらが何であるにせよ、エクササイズにより生じた疲労の全ての影響を克服する試みであると述べている。疲労には主に、(1)中枢疲労仮説、および(2)末梢疲労仮説という2つの仮説が存在する。中枢疲労仮説は、回復期間、脳は筋肉への過剰な損傷を防ぐために防御機構として働くと述べている。対照的に末梢疲労仮説は、エクササイズの際に筋肉は多少の(生化学的もしくは構造上どちらかの)外乱を受け、内在の収縮機構を低減させると述べている。中枢および抹消要因の両方は、トレーニング回復に、そして最終的には疲労をもたらすエクササイズ後のパフォーマンスに影響を及ぼすために相互に作用するようである(エノカおよびその他、1995年、ノックスおよびその他、2001年)。ゆえに回復介入は、中枢あるいは抹消疲労要因、もしくはその両方を標的にするであろうということは合理的であるようである。ゆえに、コンプレッション衣料を着用することが中枢あるいは末梢疲労の測定値に影響を及ぼすかどうかのテスト、もしくは異なるタイプのエクササイズ後の直接的なパフォーマンステストのどちらかが、その使用がトレーニング回復の際に効果的であるかどうかということに対する結論をもたらすこととなるだろう。 記事の結論 コンプレッション衣料は、回復促進を意図した体の部位に着用される。コンプレッション衣料の着用により、皮膚へ、衣料の素材およびサイズと形に依存した圧が働く。 コンプレッション衣料は最初、医療介入として心臓へ戻る血流を増加させるために使用された。スポーツにおけるそれらの最近の主な使用は、回復を向上させるためである。それらは、血流、還流、および筋肉の腫れの変化を通じて機能すると考えられている。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2157字

コンプレッション衣料の筋力測定値への影響

目的 この記事は、エクササイズ後の回復期間における、コンプレッション衣料の筋力測定値への影響に関する研究を要約している。 筋力への影響 序論 少数の研究が、異なるタイプのエクササイズセッション後における、筋力回復に対するコンプレッション衣料の影響を評価している。これらの研究は、ストレングストレーニングを行っている、または行っていない男女において、筋損傷、レジスタンストレーニング、プライオメトリックトレーニング、定常および間欠的有酸素運動後のコンプレッション衣料の影響を調査している。筋力は様々な方法での測定が可能である。入手可能な研究において筋力は、特定のエクササイズの際に持ち上げられた最大負荷(1RM)、最大随意等尺性収縮(MVIC)の際に適用された最大力量もしくはトルク、また定められた動作速度(等速性)において適用された最大力もしくは最大トルクにより測定されている。回復の際にコンプレッション衣料を使用した個人において、筋力がより優れていたかどうかを調査するため、筋力の測定値は、エクササイズ後最短で1時間、そして最長で5日間にわたり評価されている。 エキセントリックトレーニング後の筋力 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 一時的な筋損傷を引き起こすための、高負荷から最大負荷までのエキセントリック負荷に注目したエクササイズセッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、コンプレッション無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – 1RMやMVICのような、筋力もしくはトルク生成の測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:カーリングおよびその他(1995年)、クレーマーおよびその他(2001年)、クレーマーおよびその他(2001年b)、ペリーおよびその他(2008年)。 発見 コンプレッション衣料を着用することは、エキセントリックエクササイズ後48-96時間の間の筋力低下を軽減し、筋力の基準値への回復速度を助長する可能性があるようである。 4つの研究が、コンプレッション衣料の、エキセントリック損傷後の筋力への影響を評価している。これらの研究における被験者たちは、ストレングストレーニングを行っていない男性(クレーマーおよびその他、2001年、ペリーおよびその他、2008年)、ストレングストレーニングを行っていない女性(クレーマーおよびその他、2001年b)、そして男女大学生(カーリングおよびその他1995年)であった。3つの研究は上肢を評価しており、1つの研究(ペリーおよびその他、2008年)は下肢を評価した。コンプレッション衣料は、 エクササイズ後48時間以内、そしてほとんどの場合72時間に至るまでは(クレーマーおよびその他、2001年、ペリーおよびその他、2008年)筋力維持の助けにはならなかったようである。有益な軽減を報告した3つの研究において筋力は、MVIC、電気刺激(力を適用するための筋肉の内在的能力の測定値)、および等速性最大アーム屈曲トルク(1秒間に60度)により評価されており、実験群において筋力の低下が軽減されたようである。 要約 コンプレッション衣料は、エキセントリック筋損傷後の筋力の低下を軽減する助けとなり、また筋力の基準値への回復を促進する可能性がある。 レジスタンストレーニング後の筋力 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – レジスタンスエクササイズセッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – 1RMやMVICのような、筋力もしくはトルク生成の測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:後藤およびその他(2014年)、フレンチおよびその他、(2008年) 発見 コンプレッション衣料の、レジスタンストレーニング後における筋力回復への影響を評価している研究はわずかしかない。コンプレッション衣料は、エクササイズ後3 - 24時間の間のベンチプレスにおいて、最大等速性筋力を向上させたようであり、そのうち3 - 8時間の間に最大の向上がみられていた。一方、膝伸筋の最大の向上は、24時間後であったようである。しかし、48 - 72時間の間にバックスクワットにより測定した場合、コンプレッション衣料が全身の筋力の低下を軽減するかどうかは明確ではない。 2つの研究が、コンプレッション衣料とコントロールグループを比較し、回復時における、レジスタンストレーニング後の筋力測定値を評価している。両方の研究は、ストレングストレーニングを行っている男性において行われた。コンプレッション衣料は、ロングタイツ(フレンチおよびその他、2008年)もしくは全身用ボディスーツ(後藤およびその他、2014年)のどちらかであった。フレンチおよびその他(2008年)は、バックスクワット強度(5RM)における差違を発見していないが、後藤およびその他(2014年)は、レジスタンストレーニング後における、下半身上半身両方の筋力低下(等速性 1RM)の有意な軽減を発見している。しかし後藤およびその他(2014年)は、5RMのバックスクワットエクササイズに比較して、筋肉の力生成能力をより良く反映する可能性のある、等尺性膝伸展および等速性チェストプレスエクササイズの際の筋力を評価している。さらに、コンプレッション着用者におけるレジスタンストレーニング後のより優れた筋力測定値は、チェストプレスでは3 - 8時間の間に、またレッグエクステンションではエクササイズ後24時間の時点において示されていた。それ以降の時点における測定はされていなかった。ゆえに両方の研究は異なる時点における筋力を評価していた。 要約 筋力は、行われたエクササイズのタイプに応じ、主に回復初期段階(3 - 24時間)において、コンプレッション衣料を着用することにより、エクササイズ後より良く維持される可能性がある。 プライオメトリックス後の筋力 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 主にジャンプ、ホップ、もしくはドロップランディングから成るセッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – 1RMやMVICのような、筋力もしくはトルク生成の測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:ダフィールドおよびその他(2010年)ジェイクマンおよびその他(2010年)、ジェイクマンおよびその他(2010年b)。 発見 コンプレッション衣料は、男女両方において、ドロップジャンプのような激しいプライオメトリックエクササイズ後、12から72時間の間に動的膝伸筋力により測定された筋力の回復に有益な効果を持つ可能性がある。 3つの研究が、プライオメトリックス後の筋力回復に対するコンプレッション衣料の影響を評価している。全ての研究は、市販のロング丈コンプレッションタイツを使用し、24時間の時点(ダフィールドおよびその他2010年)および1 - 96時間の間(ジェイクマンおよびその他2010年、2010年b)の筋力を評価している。筋力は、等速性膝伸筋(ジェイクマンおよびその他2010年、2010年b)、そして等尺性膝伸展および屈曲(ダフィールドおよびその他、2010年)により評価された。2つの研究は、コンプレッション衣料(ロング丈タイツ)の着用は、コントロール被験者と比較し、プライオメトリックス後の筋力低下の有意な軽減を示しており、それが12 - 72時間の間継続していたということを発見している。ダフィールドおよびその他(2010年)は、エクササイズ後24時間の時点において、コンプレッションを着用した等尺性伸展もしくは屈曲強度に差違はなかったと報告している。しかしダフィールドおよびその他(2010年)はまた、基準値と比較した際の筋損傷マーカーの上昇を報告しておらず、エクササイズの量や強度が、筋損傷を引き起こすレベルに十分ではなかったと示唆している可能性がある。対照的に、クレアチンキナーゼはその他2つの研究において有意に増加していた。 要約 コンプレッション衣料は、ドロップジャンプのような激しいプライオメトリックエクササイズ後の筋力回復へ有益な影響があるかもしれない。 有酸素運動後の筋力 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 有酸素運動セッションが述べられている研究であれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – 1RMやMVICのような、筋力もしくはトルク生成の測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:ヒルおよびその他(2014年)、ビェウゼンおよびその他(2014年)。 発見 エクササイズ後72時間以内に測定した場合、コンプレッション衣料がマラソン後の筋力低下を軽減するかどうかは明確ではないが、中程度量のセッション後24時間の時点で測定された場合、持久系エクササイズ後の筋力の回復はより優れているようである。 2つの研究が、急性の筋力低下を軽減することにおける、持久系トレーニング後のコンプレッションの使用を評価している。研究は、マラソン(ヒルおよびその他2014年)、および総合で15.6kmである登り下りのトレイルランニング(ビェウゼンおよびその他、2014年)を評価している。被験者は女性(ヒルおよびその他、2014年)および高度にトレーニングされている男性ランナー(ビェウゼンおよびその他、2015年)であった。1つの研究のみがロング丈コンプレッションタイツを評価しており(ヒルおよびその他、2014年)、ビェウゼンおよびその他(2014年)は、膝丈コンプレッションストッキングを評価していた。トレイルランニング後24時間の時点で測定された際、筋力はコンプレッション衣料により維持されていたが、マラソン後24,48、72時間の時点、もしくはトレイルランニング後48時間の時点においては、コンプレッション着用被験者とコントロール被験者の間に差違はなかった。 要約 コンプレッション衣料は、中程度量の持久性エクササイズ後の筋力低下をわずかに軽減する。 記事の結論 コンプレッション衣料は、エキセントリック損傷、レジスタンストレーニング、およびプライオメトリックスエクササイズ後の筋力低下を軽減するようであるが、持久系トレーニング後に有益であるかどうかは明確ではない。 コンプレッション衣料を使用した際、エクササイズ後48 - 72時間の間におけるエキセントリック筋損傷後の筋力低下は軽減され、また、それらは筋力が基準値まで回復する速度を早める。 コンプレッション衣料は、エクササイズ後3 - 24時間の間におけるベンチプレスの最大等速性筋力を向上する。最も著しい向上は3 - 8時間の間に起こり、膝伸展筋力のより優れた維持は24時間後に見られる。 激しいプライオメトリックエクササイズ後の膝伸筋の筋力低下は、コンプレッション衣料を使用した際、男女両方において、エクササイズ後12 - 72時間の間に軽減される。 エクササイズ後24時間の時点で測定した際、(全てではないが)ある種の持久系エクササイズ後における筋力は、コンプレッション衣料を使用した際により優れている。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4822字

コンプレッション衣料のパワー測定値への影響

目的 この記事は、エクササイズ後の回復期間における、コンプレッション衣料の筋パワーへの影響に関する研究を要約している。 筋パワーへの影響 序論 多数の研究が、レジスタンストレーニング、間欠的および持久系エクササイズを含む様々なタイプのエクササイズ後の男女において、コンプレッション衣料を着用することの筋パワーに対する実践的な恩恵を調査している。ほとんどの場合、筋パワーは、下半身のパワーの有効なテストであるようである(マルコヴィッチおよびその他、2004年)ジャンプの高さ(カウンタームーブメントジャンプもしくはスクワットジャンプ)により測定されている。また筋パワーは、体重の20%と同等の負荷を使用したベンチプレススローにより、そして速度と力の両方を測定する動力計カートを押す際の定速(等速性)腕屈曲パワーにより測定されている(スチュアートおよびその他、2005年)。 エキセントリックトレーニング後の筋パワー 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 一時的な筋損傷を引き起こすための、高負荷から最大負荷までのエキセントリック負荷に注目したエクササイズセッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、コンプレッション無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – ジャンプの高さやベンチプレススローのような、筋パワーの測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:クレーマーおよびその他(2001年)、クレーマーおよびその他(2001年b)。 発見 上半身のコンプレッション衣料は、最大エキセントリック筋活動セッション後における腕屈筋最大パワーの低下を軽減することに対し、有益な効果があるようである。 2つの研究が、コンプレッションの筋パワーへの影響を評価している。今日まで筋パワーは、最大等速性パワーを通じ腕屈筋においてのみ評価されていた。筋パワーは、エクササイズ後の男女において、上肢にコンプレッションスリーブを着用した際に評価されている。両研究ともに、コンプレッション衣料を使用した際、エクササイズセッション後72時間の時点において、エキセントリック筋損傷を伴う筋パワーの低下を有意に軽減したと報告している。さらにクレーマーおよびその他(2001年)は、筋パワーは24-72時間の間、より良く維持されていたと報告しており、またクレーマーおよびその他(2001年b)は、筋パワーはその後3-5日間、より良く維持されていたということを発見している。筋パワーは、コントロール被験者と比較し、回復初期段階(24対72時間)において、女性と比較して、男性の方がより望ましい状態で維持されていたようである。しかし、クレーマーおよびその他(2001年)による研究において、実験グループとコントロールグループの間における筋パワーの基準測定値は類似しておらず、それが結果に影響を与えていた可能性がある。 要約 コンプレッションスリーブを着用することは、男性においてはエクササイズ後24-72時間の間、女性においてはエクササイズ後3-5日間のエキセントリック筋損傷後の筋パワー低下を軽減する。 レジスタンストレーニグ後の筋パワー 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – レジスタンストレーニングセッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – ジャンプの高さやベンチプレススローのような、筋パワーの測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:フレンチおよびその他(2008年)クレーマーおよびその他(2010年)。 発見 コンプレッション衣料が、レジスタンストレーニング後の筋パワーの回復を向上することにおいて有益であるかどうかは明確ではない。しかしベンチスローにより測定された上半身のパワー、およびカウンタームーブメントの高さは、回復時にコンプレッション衣料を着用することにより、いくらか維持されていた可能性があるようである。 レジスタンストレーニング後の筋パワーを評価した研究は2つ存在する。それらの研究は、レジスタンストレーニングを行っている男性において行われており、それぞれ全身(クレーマーおよびその他、2010年)もしくは下半身(フレンチおよびその他2008年)のレジスタンストレーニング後、24時間または48時間における筋パワーを測定している。筋パワーは体重の20%におけるベンチプレススロー(クレーマー及びその他、2010年)、およびカウンタームーブメントジャンプ(フレンチおよびその他、2008年)により測定されていた。両研究ともに、レジスタンストレーニング後、コンプレッション衣料の着用に伴う筋パワー低下の軽減を報告している。しかし、エクササイズ後24時間の時点においては、ベンチプレススローのみがコントロール被験者からの有意な差違を示していた。 要約 カウンタームーブメントジャンプにより測定された際、回復期間におけるコンプレッションタイツの使用により、下半身の筋パワーが影響を受けているのかどうかは明確ではない。しかし上半身の筋パワーの低下は、コンプレッションスーツの着用に伴い軽減されるようである。 プライオメトリックス後の筋パワー 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – ジャンプ、ホップ、もしくはドロップランディングから成るセッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – ジャンプの高さもしくはベンチプレススローのような、筋パワーの測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:ディヴィスおよびその他(2009年)、ダフィールドおよびその他(2010年)、ジェイクマンおよびその他(2010年)、ジェイクマンおよびその他(2010年b)。 発見 ドロップジャンプ後の回復期間に着用されたコンプレッション衣料は、コントロールグループと比較し、後のカウンタームーブメントおよびスクワットジャンプの高さの低下を軽減することが可能であると思われる。しかし、コンプレッション衣料が、10mもしくは20mのスプリントタイム、あるいはパフォーマンスをまとめる複数の反応を維持しているのかどうかは明確ではない。 4つの研究が、プライオメトリックス後の筋パワーを評価している。全ての研究は、市販のロング丈コンプレッションタイツを使用し、女性(ジェイクマンおよびその他、2010年、2010b年)、およびトレーニングされた男女(ディヴィスおよびその他、2009年、ダフィールドおよびその他、2010年)における筋パワーを評価している。筋パワーは、カウンタームーブメントジャンプの高さ(ディヴィスおよびその他、2009年、ジェイクマンおよびその他2010年、ジェイクマンおよびその他、2010年b)、スクワットジャンプの高さ(ジェイクマンおよびその他2010年、ジェイクマンおよびその他、2010年b)そして10m(ディヴィスおよびその他、2009年)および20m(ダフィールドおよびその他、2010年、ディヴィスおよびその他、2009年)のスプリントタイムにより評価されていた。概して全ての研究において、カウンタームーブメントおよびスクワットジャンプの高さの低下は、12-72時間の間にコンプレッションタイツを着用することにより軽減されていた。対照的に、スプリントタイムの増加は、10mまたは20mのどちらにおいても、コンプレッションタイツの着用による影響を受けていなかった。 要約 コンプレッション衣料の着用は、プライオメトリックスセッション後に生じるカウンタームーブメント、およびスクワットジャンプの高さの低下を軽減するようである。 有酸素運動後の筋パワー 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 有酸素運動セッションが述べられている研究であれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – ジャンプの高さもしくはベンチプレススローのような、筋パワーの測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:ビーゼンおよびその他(2014年) 発見 1つの研究のみが、持久系エクササイズ後の回復期間に着用されたコンプレッション衣料の影響を評価している。実験グループの被験者は、合計15.6kmの距離の、登り下りを含むトレイルランニングセッション後、コンプレッション衣料を着用した。筋パワーは、カウンタームーブメントの高さにより測定された際、回復介入を使用していない被験者と比較し、コンプレッションストッキングを着用した被験者において有意に高かった。 要約 持久系トレーニング後にコンプレッションストッキングを着用することは、回復期間における筋パワーの低下を軽減するようである。 間欠的エクササイズ後の筋パワー 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 間欠的有酸素運動セッションであれば何でも 比較 – コンプレッション衣料の使用と、衣料無し、もしくは冷水浴などの他の回復介入 結果 – ジャンプの高さもしくはベンチプレススローのような筋パワーの測定値であれば何でも 結果 以下の研究が確認された:ダフィールドおよびその他(2008年)、モンゴメリーおよびその他(2008年)プルチーノおよびその他(2013年)。 発見 3つの研究が、結果測定値としてジャンプの高さを使用し、間欠的エクササイズもしくは試合シミュレーション後のコンプレッション衣料の恩恵を評価している。全ての研究は、市販の下半身ロング丈コンプレッションタイツを使用しており、エクササイズセッション後24-48時間における筋機能の測定値を評価している。2つの研究は、間欠的エクササイズの単一セッションからの回復を調査しており(ダフィールド及びその他2008年、プルチーノおよびその他、2013年)、一方1つの研究は、3日間にわたるバスケットボールトーナメント後の筋パワーを評価していた(モンゴメリーおよびその他、2008年)。トレーニングセッション後、ジャンプの高さを測定する際、間欠的エクササイズを比較した両方の研究は、24時間の時点(ダフィールドおよびその他2008年)、もしくは24-48時間の間(プルチーノおよびその他、2013年)におけるコンプレッションの影響を発見していない。対照的に、モンゴメリーおよびその他(2008年)は、トーナメント日の間にコンプレッションタイツを着用した場合、3日間にわたるバスケットボールトーナメント後のジャンプの高さの低下は、有意に軽減されていたということを報告している。ジャンプの高さは3日間のトーナメント直後に測定されたものである。2つの研究は、間欠的エクササイズ後における20mのスプリントタイムを評価している(ダフィールドおよびその他、2008年、プルチーノおよびその他、2013年)。両方の研究は、間欠的エクササイズ後のコンプレッションタイツの着用は、エクササイズ後24-48時間の間における20mのスプリントタイムへ影響を及ぼさなかったということを報告している(ダフィールドおよびその他、2008年、モンゴメリーおよびその他、2008年)。 要約 コンプレッションタイツの着用は、数日間にわたるトーナメント期間中および直後のジャンプの高さの低下を軽減する可能性があるが、間欠的エクササイズ後、ジャンプの高さに対するコンプレッション衣料の影響があるかどうかは明確ではない。 記事の結論 上半身の筋パワーは、エキセントリック筋損傷、もしくはレジスタンストレーニングのセッション後、等速性腕屈曲およびベンチプレススローにより測定される際、コンプレッションスリーブあるいはシャツを着用することにより、より良く維持されるようである。 激しいプライオメトリックトレーニングセッション後に着用されたコンプレッションタイツは、エクササイズ後12-72時間において測定される際、下半身の筋パワーの低下を軽減するようである。 持久系ランニング後の筋パワーは、コンプレッションタイツによりほとんどが維持される。一方、コンプレッション衣料はおそらく、間欠的エクササイズ後の短距離スプリント速度、あるいはジャンプの高さは維持しないであろう。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 5236字

パーシャルスクワットがスポーツにうまく移行されないのはなぜか?

パーシャルスクワットは、パーシャルスクワットにおいて個人をより強くはするが、フルスクワットへの移行はない。一方、フルスクワットはフルスクワットにおいて個人をより強くし、かつ(パーシャルスクワットと同様にはいかないが)パーシャルスクワットにおいても個人をより強くする。 これはおそらく、関節角度特有の筋力増加を生み出すメカニズムが、短い筋長におけるトレーニングと比較し、長い筋長におけるトレーニング後では異なるためであろう。長い筋長におけるトレーニングは、より多くの局所肥大を含んでおり、全可動域にわたる筋力へより良く移行されるようである。 それでも多くのコーチは、パーシャルスクワットにおける関節角度は、走行周期の立脚相、もしくはジャンプの際の関節角度と類似しているということに留意している。彼らはこの関節角度間の類似性から、パーシャルスクワットは特定の必要な部位において最大の筋力増加を生み出すはずであり、フルスクワットと比較しより良くスポーツへ移行するはずであると示唆している。 そしてこれには非常に納得がいく。 一方、ほとんどの研究は、パーシャルスクワットと比較し、フルスクワットは多くの点において、特にジャンプにおけるアスレチックパフォーマンスを向上するためにより優れているということを示している。 それではどのメカニズムがこの差違を引き起こしているのだろうか? 背景は何か? 我々は通常、ある1つの関節角度においてより強いということに留意しておけば、あまり多くの問題なくこの記事を理解することができるはずである。我々はその角度を瞬時最大トルク角度と呼んでいる。 この瞬時最大トルク角度は、異なるタイプのトレーニングにより、様々な方法において変化させることが可能である。 全可動域を使用、長筋長を使用、もしくはエキセントリックであるトレーニングプログラムは全て、瞬時最大トルク角度をより長い筋腱長に対応する関節角度へと変化させる傾向にある。対照的に、部分的可動域もしくは短筋長を使用するトレーニングプログラムは、瞬時最大トルク角度を、より短い筋腱長に対応する関節角度へと変化させる傾向にある。 そして最も重要なこととして、瞬時最大トルク角度の変化は、関節角度特有の筋力増強を引き起こすメカニズムの1つであるようである。 しかしながら瞬時最大トルク角度は通常、等尺性テストを使用して測定されており、それらは特に高速における動的収縮の際には異なる可能性がある。 では、これは起こるのだろうか? 瞬時最大トルク角度は角速度により異なるか? 瞬時最大トルク角度が、異なる速度において測定された際に異なるのであれば、全可動域のエクササイズは、部分的可動域のエクササイズと比較し、スポーツへより良く移行できる可能性がある。 これは、エクササイズが従来の高負荷スクワットである場合、ジャンプやスプリントと比較し、さらにより遅い動作速度を含むため、とりわけ関連があることとなる。 そしてこれは起こるのである! 瞬時最大トルク角度は、角速度が上昇する際、短筋腱長に対応した関節角度においてみられるが(モフロイドおよびその他、1969年、クナピクおよびその他、1983年、カヌス&ヤルヴィネン、1991年、ヨーンおよびその他、1991年、カーラフおよびその他、1997年、カーラフおよびその他、2001年、カーラフ&パーニアンポア、2001年、アンダーソンおよびその他、2007年、リッパモンティおよびその他、2008年)、この効果は全ての研究において常に観察されるものではなく、1秒間に180度以上の速度においてはそれほど著しくはない(フライ-ロウおよびその他、2012年)。 ヨーンおよびその他(1991年)により報告されたデータから生成された下のグラフは、瞬時最大トルク角度が角速度の増加と共にどのように変化したかを示している。各線は同じ関節角度可動域内で動く異なる角速度を表している。 これは膝関節屈曲である(左から右へと収縮している): 関節角速度に伴う瞬時最大トルク角度の変化 – ここで見られるように、動作速度の上昇に伴い2つのことが起こっている。 まず、角速度の上昇に伴う力の低下(力—速度の関係のため)により、線が下方へと移動している。 2つめに、瞬時最大トルク角度は、角速度の上昇に伴い、さらに右へと移動している。これは、瞬時最大トルク角度が徐々に短い筋—腱長において発生しているということを意味している。 これは膝関節伸展である(左から右へと収縮している): 関節角速度に伴う瞬時最大トルク角度の変化 なぜ瞬時最大トルク角度は速度の変化により異なるのだろうか? グラフからわかるように、瞬時最大トルク角度は、速度の上昇に伴いより短い筋—腱長に対応する関節角度へと移行している。 これはおそらく、筋—腱長が各関節角度において同じであったとしても、筋肉や腱は異なる収縮速度において同様に長さが変化するわけではないために起こっている。(筋肉が収縮する際、収縮が純粋に筋腱単位の短縮を含むコンセントリック収縮である場合であったとしても、多かれ少なかれ腱は常に伸長するということには留意すべきである) 高速の収縮にはわずかな筋の力が関わっており、収縮の始めに多少腱の伸長をもたらす。 高速の収縮におけるよりわずかな腱伸長は、収縮のコンセントリック段階において、筋肉がより長い時間伸長した状態を維持しているということを意味している。これは筋肉が、長さー張力曲線のプラトーにより長くいることを可能にする。ゆえに瞬時最大トルク角度は、全体の関節角度可動域における更に後方へと移行する(マレーおよびその他、1980年)。 低速の収縮には高い筋の力が関わっており、収縮の始めにより一層の筋伸長をもたらす。 この、より大きな腱伸長は、コンセントリック収縮の際、筋肉はあまり長い間伸長し続けているわけではないということを意味している。そのため長さー張力曲線のプラトーからすぐに下降する。ゆえに、瞬時最大トルク角度は、全体の関節角度可動域のより早い段階において見られる(マレーおよびその他、1980年)。また等尺性収縮は全ての中で最も低速で強い収縮である。 なぜこのことが重要なのだろうか? 瞬時最大トルク角度に関し、なぜ収縮速度が重要であるのか? そこには2つの重要な意味合いが存在する。 第1にそれは、等尺性の瞬時最大トルク角度と比較し、動的動作における瞬時最大トルク角度は、常により短い筋—腱長に対応する関節角度であるということを意味している。 第2にそれは、非常に速い角速度におけるスポーツ動作は、極めて短い筋—腱長に対応する関節角度における瞬時最大トルク角度を持つということを意味している。しかし同一人物において測定された際であっても、これらはより低速のバーベルエクササイズ、もしくは等尺性テストと同様の瞬時最大トルク角度ではない。これらの瞬時最大トルク角度は、さらにより長い筋—腱長において起こる。 これは、全可動域における高負荷レジスタンストレーニングが、同様の負荷における可動域の一部を使ったエクササイズと比較し、多くの高速運動動作に、より良く移行する理由であるのかもしれない。 ジャンプに関してこれは何を意味するのか? 大腿四頭筋はジャンプにおける鍵であり、ジャンパーもチームスポーツ選手も、テイクオフ前にフルスクワットの際に見られる深さまで膝を屈曲させているため、ほとんどのジャンプは中程度の大腿四頭筋長における瞬時最大トルク角度を必要としている。 このことは、それらが同様の関節角度付近での最大収縮を含むようであるため、一部のコーチたちが、パーシャルスクワットは有益であろうと仮定することにつながっている。 しかし、これは理論的に思われるが、動作速度に伴い瞬時最大トルク角度がどのように変化するのかということを無視している。 低速の高負荷スクワットの際、瞬時最大トルク角度は長筋長において観察される。一方、ジャンプは非常に高速の動作であることは明確であり、ゆえに対応する瞬時最大トルク角度は、さらにより短い筋長において観察されるということになる。 もし我々が大腿四頭筋の長い筋長で、ディープスクワットのようなトレーニングを行ったとすると、瞬時最大トルク角度をより長い筋長へ移行することとなる。しかし、動作速度を上昇することは瞬時最大トルク角度をより短い筋長へと移行するため、高速において測定した場合、これは中程度の筋長における瞬時最大トルク角度に相当することとなる。 これがまさにジャンプに必要なところなのである。 もしパーシャルスクワットのように、大腿四頭筋の短—中筋長においてトレーニングするとしたら、瞬時最大トルク角度はより短い筋長へと移行する。しかし動作速度の上昇は、瞬時最大トルク角度をより短い筋長へと移行するため、高速において測定した際、これは極めて短い筋長における瞬時最大トルク角度に相当する。 これはジャンプに関して望むことではない。 そしてこれが、パーシャルスクワットと比較し、ディープスクワットがより良くジャンプへ移行する理由である(ワイスおよびその他、2000年、ハートマンおよびその他、2012年、ブルームクイストおよびその他、2013年)。 スプリントに関して入手できる研究はより少ないが、同様の理論が適応できる。 結論 一部の人は、同様の関節角度が含まれるため、パーシャルスクワットはフルスクワットと比較し、より良くスポーツへ移行されるはずであると提議している。しかしフルスクワットは間違いなくより優れており、ジャンプとの関連性においてこれは非常に明確である。 この差違の理由は、瞬時最大トルク角度が動作速度に伴い変化するためである。最大トルク発揮速度は、低速において測定された際と比較し、高速で測定された際により短い筋—腱長において発見されている。 これはおそらく、筋—腱長は各関節角度において同様であるにもかかわらず、筋肉や腱は異なる速度において同等には伸長せず、腱伸長量は高速の収縮においてより少ないことが、筋肉が長さー張力曲線のプラトーにより長く居続けることを可能にするためである。 フルスクワットのような高負荷で低速のエクササイズは、長筋長において最大収縮を生み出す。腱長の変化量における差違により、これらの瞬時最大トルク角度は、ジャンプの際にみられるような、より短い筋—腱長に対応する関節角度におけるアスレチック動作の中の最大収縮に非常に良く対応している。 参照文献 Anderson, D. E., Madigan, M. L., & Nussbaum, M. A. (2007). Maximum voluntary joint torque as a function of joint angle and angular velocity: model development and application to the lower limb. Journal of Biomechanics, 40(14), 3105-3113. Bloomquist, K., Langberg, H., Karlsen, S., Madsgaard, S., Boesen, M., & Raastad, T. (2013). Effect of range of motion in heavy load squatting on muscle and tendon adaptations. European Journal of Applied Physiology, 113(8), 2133-2142. Frey-Law, L. A., Laake, A., Avin, K. G., Heitsman, J., Marler, T., & Abdel-Malek, K. (2012). Knee and elbow 3d strength surfaces: peak torque-angle-velocity relationships. Journal of Applied Biomechanics, 28(6), 726-737. Hartmann, H., Wirth, K., Klusemann, M., Dalic, J., Matuschek, C., & Schmidtbleicher, D. (2012). Influence of squatting depth on jumping performance. Journal of Strength & Conditioning Research, 26(12), 3243. Kannus, P., & Jarvinen, M. (1991). Knee Angles of Isokinetic Peak Torques in Normal and Unstable Knee Joints. Isokinetics and Exercise Science, 1(2), 92-98. Khalaf, K. A., Parnianpour, M., Sparto, P. J., & Simon, S. R. (1997). Modeling of functional trunk muscle performance: Interfacing ergonomics and spine rehabilitation in response to the ADA. Journal of Rehabilitation Research and Development, 34(4), 459. Khalaf, K. A., Parnianpour, M., & Karakostas, T. (2001). Three dimensional surface representation of knee and hip joint torque capability. Biomedical Engineering: Applications, Basis and Communications, 13(02), 53-65. Khalaf, K. A., & Parnianpour, M. (2001). A normative database of isokinetic upper-extremity joint strengths: towards the evaluation of dynamic human performance. Biomedical Engineering: Applications, Basis and Communications, 13(02), 79-92. Knapik, J. J., Wright, J. E., Mawdsley, R. H., & Braun, J. (1983). Isometric, isotonic, and isokinetic torque variations in four muscle groups through a range of joint motion. Physical Therapy, 63(6), 938-947. Moffroid, M., Whipple, R., Hofkosh, J., Lowman, E., & Thistle, H. (1969). A study of isokinetic exercise. Physical Therapy, 49(7), 735. Murray, M. P., Gardner, G. M., Mollinger, L. A., & Sepic, S. B. (1980). Strength of Isometric and isokinetic contractions knee muscles of men aged 20 to 86. Physical Therapy, 60(4), 412-419. Ripamonti, M., Colin, D., & Rahmani, A. (2008). Torque–velocity and power–velocity relationships during isokinetic trunk flexion and extension. Clinical Biomechanics, 5(23), 520-526. Weiss, L. W., Fry, A. C., Wodd, L. E., Relya, G. E., & Melton, C. (2000). Comparative Effects of Deep Versus Shallow Squat and Leg-Press Training on Vertical Jumping Ability and Related Factors. The Journal of Strength & Conditioning Research, 14(3), 241-247. Yoon, T. S., Park, D. S., Kang, S. W., Chun, S. I., & Shin, J. S. (1991). Isometric and isokinetic torque curves at the knee joint. Yonsei Medical Journal, 32(1), 33-43.

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4522字

なぜ筋力増加は特化しているのか?(そしてそれがなぜ重要なのか?)

強くなることはとてもとても大切なことである。 事実、筋力は多くのアスリートにとって最も重要なことかもしれない。 しかし、筋力はたった一つの検査で測定することは非常に困難である。同じ筋群を測定しているにもかかわらず、一つの筋力検査では非常に高いスコアが出せる人でも、別の類似した検査ではそれほど高いスコアが出せない場合もある。 同様に、一つの特定の筋力検査(1RMのバックスクワットのような)のために訓練すれば、その検査のエクササイズにおいては強くなれるだろうが、他のエクササイズあるいはスポーツの運動中において、必ずしも筋力生産が増加するとは限らない。 なぜなら筋力は特化しているからである。 筋力はどのように特化しているのか? トレーニング中に行われた時と同じ状況で検査する場合、筋力増加はより大きい。この記事で取り上げることになるが、筋力の特化には、最低8通りある 筋力トレーニングのプログラムの有効性を最大限にすることは、アスリートが達成したい特異的な目標にふさわしくデザインすることを意味する。 #1. 遠心性筋力 筋力増加は筋の活動(収縮方法)に特化している。 つまり、遠心性トレーニングは求心性筋力よりも遠心性筋力をより大きく増加させる。確かに、Vikne およびその他 (2006) は、遠心性トレーニング後の遠心的な1RMの筋力増加は、求心性トレーニング後の増加の2倍であることを示した。 遠心性トレーニングの筋肥大の可能性について押し問答する人も多く存在するが、特化性の影響は筋肥大の量の違いが原因ではない。 事実、特化する要因の1つは、細胞外基質とタイチンの量が増えたため受動的な筋力生産が増加することであり、また他の要因は伸張する筋活動に特異的な神経的適応があるためである。 #2. 高速度の筋力 筋力強化は使用する速度に特化している。 つまり、高速度(軽負荷)のトレーニングは、遅い速度よりも早い速度でより筋力を大きく生産する。実に数多くの研究が、この情報を何十年も発表してきている(例えば、Coyle およびその他 1981)。 速度特化はある人達にとってはわかりにくいかもしれない。なぜなら、“意図”が速度特化の筋力強化を促す主要な要因で、実際のウェイトバーの速度とは関連していないと、いくつかの非常に重要な研究が示唆しているからである。しかし、これはたぶん真実ではなく、“意図”と実際のスピードの両方が速度特化に影響している可能性が高い。 速度特化には、一つの筋線維の収縮速度(筋線維型変換も含め)がより増加している、早期の神経活動がより増加している、共同活性化がより抑制されている、そして低速度(重い負荷)のトレーニングに比べて協同がより改善されていることなどを含む、いくつかの要因がある可能性がある。 #3. 最大筋力 筋力増加は使う負荷に特化している。 重い負荷は最大筋力増加をより大きく促し、より軽い負荷(できなくなるまで行う)は反復する筋力(筋持久力)をより大きく改善する。 重い負荷も軽い負荷も、共に筋力を増加できるが、最大筋力の増加はほとんどの場合、重い負荷の方がより大きい。同じく、反復する筋力(筋持久力)の増加は大抵軽い方の負荷を利用する方がより大きい (Schoenfeld およびその他 2015)。 重い負荷を使った最大筋力増加は、複数の関節でのエクササイズ中に筋間の協同が増加し、外側への力の伝達がさらに増加し、神経活動がより多く増加し、そして腱の硬さがより増加するために起こるのであろう。 軽い負荷を使った反復する筋力強化は、毛細血管の発達がより良くなるため、緩衝能力の変化のため、そしてイオン輸送(ナトリウム、カリウム、カルシウム)のレートのために起こるのであろう。 #4. 可動域 筋力増加は利用する可動域に特化している。 部分的な可動域のエクササイズは、全可動域ではなく部分的な可動域において、より大きく筋力を強化する。 部分的なものが全可動域の筋力を向上する時でも、全可動域を通してトレーニングした時に比べて必ず劣るものである。反対に、部分的な可動域での筋力はより大きく増加していることが多い (Rhea およびその他 2016) 。 部分的な可動域のエクササイズは、神経活動は関節角度に特異的に増加するため、おそらく短縮位で筋力が強化されるであろう。対照的に、全可動域を通して行うエクササイズは、部位的な筋肥大の特異的改善のため、おそらく延長位で筋力が強化されるであろう。 #5. 安定性 筋力の増加は利用される安定性の量に特化している。 フリーウェイトの筋力トレーニングは、マシーンでエクササイズするときの筋力増加よりもフリーウェイトのエクササイズでの筋力をより大きく増加させる。 安定性は、一方でマシーン、もう一方でスタビリティボールの上でバランスをとりながらフリーウェイトでウェイトトレーニングを行うというような連続体に存在する。地面に立った状態、またはベンチに横たわった状態でフリーウェイトをリフティングすることは、その連続体の真ん中のあたりに存在する。 安定性の影響を調べる簡単な方法は、固定されたバーの軌道を使ったマシーンでのトレーニング後、運動の自由さを可能にするケーブルを使ったマシーンでトレーニング後の筋力増加を比べることである(Cacchio およびその他 2008)。この2種類のマシーンでの筋力増加は全く異なるものである。 筋力増加は、不安定な環境でバランスをとることが複数の関節でのエクササイズ中の協同パターンに影響し、協力筋と拮抗筋どちらの活性化も増加させるため、トレーニングで使われた安定性の種類に特化する。   不安定な環境でのトレーニングは、さらに複雑な運動要素が学習されるにつれ拮抗筋の活性化の減少および協働筋の活性化の増加を促す。これらの変化は、まさに安定性の条件となる効率的な筋収縮パターンへとつながる。 #6. 外部負荷の種類 筋力増加は、使用する外部負荷の種類に特化している。 最もよくみられる外部負荷の種類は (1) 一定負荷、(2) 適応する抵抗、および (3) 一定力である。 従来のウェイトトレーニングでは、エクササイズの可動域を通して負荷は一定のままである(力は、慣性と重さ両方が関わっているため、一定ではない)。適応すr抵抗は、エクササイズの可動域全体にわたり、負荷が多様に変化し、バンドやバーベルにチェーンを加えることがよくる。一定力は、非常に軽くてほとんど慣性を伴わない道具を必要とするが、エクササイズの全可動域を通して平等な抵抗を与える必要がある。 それぞれのトレーニングの種類は、異なった筋力増加の影響を及ぼす。つまり、筋力増加は外部負荷の種類に特化しているのである。 空気抵抗を使ったトレーニング(一定力を伴う)は、フリーウェイトの筋力よりもさらに大きい空気抵抗の筋力増加へとつながり、また、フリーウェイトのトレーニングは、空気抵抗の筋力よりもさらに大きいフリーウェイトの筋力増加へとつながる。 外部負荷の種類(一定負荷あるいは適応する抵抗)は、特異的な筋力増加を促す。これは (1)関節角度に特化した(可動域に特化した)筋力と (2) 速度に特化した筋力に違いがあるからである。 #7. 力のベクトル 筋力増加は力のベクトルに特化している。 力のベクトルは、身体に対してかかる力の方向を意味する。私達が動いているとき、これらの力のベクトルはしばしば“垂直”や“水平”と呼ばれる。垂直ジャンプは主に垂直の要素から成っている力のベクトルと関連する。水平ジャンプとスプリントは水平と垂直の要素両方持ち合わせた力のベクトルと関連する。 エクササイズを組み立てるとき、垂直の力のベクトルを軸力のベクトルと呼び、水平な力のベクトルは前後の力のベクトルと呼ぶ傾向がある。 水平(前後)な力のベクトルでトレーニングをすると、水平方向にかける力をより強く発揮できることにつながり、また垂直(軸)な力のベクトルでトレーニングをすると垂直方向に力をより強く発揮できることにつながる。 力のベクトル(垂直あるいは水平)は、(1) 関節角度に特化した(可動域に特化した)筋力と (2) そのエクササイズによって発達される筋群が異なるため、特化した筋力増加を促す #8. 筋群 筋力増加は筋群に特化している。 一つの筋をトレーニングすることは、ほぼ他の筋群の筋力を増加することはないであろう。エクササイズにより引き起こされたホルモンレベルの変化は体全体に影響を与えると以前は考えられていましたが。 筋群に特化した筋力増加は、あるエクササイズが筋群を非特化的方法で訓練することによって生じ、それから同じ筋群を伴う全く異なる関節の活動へと転移する。良い例として、膝関節を屈曲するエクササイズでハムストリングをトレーニングすると(ノルディックハムストリングカールや腹臥位のレッグカールなど)股関節伸展筋力へと転移する。 これが実践において意味することは? スポーツのために強くなることは、スポーツの動きに必要なことを分析することを意味しており、筋活動(遠心性あるいは求心性)、速度(高速度あるいは低速度)、可動域(収縮の頂点)、負荷(最大筋力あるいは反復する筋力)、そして安定性(安定あるいは不安定)の点でどのように力が生み出されるのかを考えなければならない。 スポーツの動きの特徴と自分の筋力強化プログラムの目標を一致させると、基本的な筋力強化プログラムよりも、スポーツに特異的なより良い筋力増加につながるであろう。 多くのコーチたちはすでにこれを解明している。 急にはずみ車(フライホイール)を使った遠心性のトレーニングが流行っている理由は、遠心性の筋力がスプリントや方向転換に重要だからである。速度に基づいたトレーニングの成功は、高速度での筋力増加がスポーツの動きによりすぐれて伝達されていることを示している。そしてパーシャルスクワットは、スプリントやジャンプの能力を発達させるために再び流行している。 業界の他の人たちが追いつくのも時間の問題であろう。 参照 Bloomquist, K., Langberg, H., Karlsen, S., Madsgaard, S., Boesen, M., & Raastad, T. (2013). Effect of range of motion in heavy load squatting on muscle and tendon adaptations. European Journal of Applied Physiology, 113(8), 2133-2142. Cacchio, A., Don, R., Ranavolo, A., Guerra, E., McCaw, S. T., Procaccianti, R., & Santilli, V. (2008). Effects of 8-week strength training with two models of chest press machines on muscular activity pattern and strength. Journal of Electromyography and Kinesiology, 18(4), 618. Contreras, B., Vigotsky, A. D., Schoenfeld, B. J., Beardsley, C., McMaster, D. T., Reyneke, J. H., & Cronin, J. B. (2017). Effects of a Six-Week Hip Thrust vs. Front Squat Resistance Training Program on Performance in Adolescent Males: A Randomized Controlled Trial. The Journal of Strength & Conditioning Research, 31(4), 999-1008. Coyle, E. F., Feiring, D. C., Rotkis, T. C., Cote, R. W., Roby, F. B., Lee, W., & Wilmore, J. H. (1981). Specificity of power improvements through slow and fast isokinetic training. Journal of Applied Physiology, 51(6), 1437-1442. Frost, D. M., Bronson, S., Cronin, J. B., & Newton, R. U. (2016). Changes in Maximal Strength, Velocity, and Power After 8 Weeks of Training With Pneumatic or Free Weight Resistance. The Journal of Strength & Conditioning Research, 30(4), 934-944. Hartmann, H., Wirth, K., Klusemann, M., Dalic, J., Matuschek, C., & Schmidtbleicher, D. (2012). Influence of squatting depth on jumping performance. Journal of Strength & Conditioning Research, 26(12), 3243. Rhea, M. R., Kenn, J. G., Peterson, M. D., Massey, D., Simão, R., Marin, P. J. & Krein, D. (2016). Joint-Angle Specific Strength Adaptations Influence Improvements in Power in Highly Trained Athletes. Human Movement, 17(1), 43-49. Schoenfeld, B. J., Peterson, M. D., Ogborn, D., Contreras, B., & Sonmez, G. T. (2015). Effects of low-vs. high-load resistance training on muscle strength and hypertrophy in well-trained men. The Journal of Strength & Conditioning Research, 29(10), 2954-2963. Trezise, J., Collier, N., & Blazevich, A. J. (2016). Anatomical and neuromuscular variables strongly predict maximum knee extension torque in healthy men. European Journal of Applied Physiology, 116(6), 1159-1177. Vikne, H., Refsnes, P. E., Ekmark, M., Medbø, J. I., Gundersen, V., & Gundersen, K. (2006). Muscular performance after concentric and eccentric exercise in trained men. Medicine & Science in Sports & Exercise, 38(10), 1770-1781.

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4339字

脚の最大の発達のために“ただスクワット”すればいいのか?

一日おきに、誰かが、フォーラムに下半身のトレーニングを作成する一番の方法についての質問を掲示します。 少なくとも一人の善意あるリフターが、「ただスクワットをしなさい」という薦めを回答します。 しかし、スクワットのみで本当に最適な脚の筋発達のために十分なのでしょうか? ただスクワットをするとはどういう意味ですか? 誰かが“ただスクワットをする”という時、彼らがどういう意味で言ったのかははっきりしているわけではありません。 もしあなたがそのアドバイスを文字通り読むならば、それはあなたのレッグトレーニングのすべてとして“ただスクワットをする”という意味になるでしょう(なのであなたはその他のレッグエクササイズを何もしません)。しかし、人々は時々、ハムストリングスを除くすべてのエクササイズとして“ただスクワットをする”ことを意味しています(なのであなたはいくらかのハムストリングカールもします)。そして時には、人々が“ただスクワットをする”と言っているのに、あなたは後で彼らがデッドリフトやヒップスラストもしていて、基本的に彼らの“ただスクワットをする”という助言が、本当は大腿四頭筋だけに当てはまるのだと知るのです。 上のような混乱に関係なく、私はこの記事で二つの問題に注目したいと思います: スクワットはハムストリングスの発達のために良いエクササイズかどうか、 そしてスクワットは大腿四頭筋すべてに効果的なのかどうか。 明らかに、これは臀筋(Bret氏、ごめんなさい!)と内転筋の議論を除きますが、それらの筋肉はまったく独自の別な記事にする価値があると私は思います。 #1. ハムストリング:ただスクワットをする、でもデッドリフトもする? 知識のあるフィットネスプロフェッショナルとして、あなたはスクワットが大腿四頭筋、大内転筋、そして大臀筋に非常に効果的であるが、ハムストリングスにはそれほど効果がないことをほぼ確実にすでに理解していることでしょう(Wright et al. 1999)。 基本的に、それがポステリアチェーンのための良い筋力トレーニングプログラムの中にデッドリフトバリエーション(そして他のエクササイズ)がいつも含まれている理由です。ハムストリングスのアクティベーションは、一般的にスクワットでは低いのです。 しかしながら、ハムストリングスがスクワット中に働いているという考えを却下する次のような他の理由もあります: スクワットのバーベル負荷の増加は、ハムストリングスのアクティベーションを増加させないが、大腿四頭筋及び大臀筋両方のアクティベーションが顕著に上昇する要因となる(Li et al. 2013) スクワットの力とハムストリングスのアクティベーションの間の相関関係は、ハムストリングスでは低~中程度だが、大腿四頭筋では強い線形相関がある(Luera et al. 2014) スクワットの深さを同じバーベル負荷で増加させることは、ハムストリングスのアクティベーションを増加させないが、大腿四頭筋及び大臀筋のアクティベーションの大きな増加の要因となる(Gorsuch et al. 2013; Contreras et al. 2015b) 筋骨格系モデルは、ハムストリングスが大臀筋と同じくらいの度合で貢献する股関節伸展のストラテジーを用いることは、そのストラテジーが膝関節でのコ・アクティベーション(同時活性化)を増加させて大腿四頭筋をより使わせることから、非効率的であると示唆している(Bryanton et al. 2015) なぜハムストリングスはスクワットで活性しないのか? 身体力学的に、スクワットにおけるこの乏しいハムストリングスのアクティベーションは、恐らく4つのハムストリングスの筋肉のうち3つが二関節筋であるからです。 それゆえに、これらは股関節伸展筋及び膝関節屈曲筋として働きます。 そのため、身体が下に下がる(股関節屈曲及び膝関節屈曲をしながら)につれて、筋肉は膝関節で短縮し、股関節で伸張しようとして、結局ほとんど同じ長さのままになります。そして上に上がる(股関節伸展及び膝関節伸展をしながら)につれて、筋肉は膝関節で伸張し、股関節で短縮しようとし、また結局ほぼ同じ長さのままになるのです。 これはハムストリングスをスクワットでの股関節伸展筋として極めて非効率的にします。 もしあなたがまだ信じていないのであれば、今この瞬間も、研究がハムストリングスのアクティベーション不足について何といおうが気にしない、だってスクワットをしているとき脚の裏側が働いているのを感じることができるから、と考えているかもしれません。 私が偉そうに反論できるでしょうか? あなたはスクワット中に、太ももの後面が働いているのを感じるはずなのです。それはあなたの大内転筋がある場所です。 奇妙なことに“内転筋”と呼ばれていますが、大内転筋は実際、スクワットにおいて非常に重要で大きな股関節伸展筋で、ハムストリングスのかなり近くにあります。 しかしその脚の後ろの感覚は、多くの場合恐らくハムストリングスによってもたらされたものではありません。 #2. 大腿四頭筋:4つすべての筋肉 それでは、質問のより難しい部分に取り組みましょう。大腿四頭筋です。 最近、研究者のグループが、中間広張筋(tensor of the vastus intermedius)と呼んでいる新たな大腿四頭筋の筋肉を発見しましたが(Crob et al.2016)、大腿四頭筋は太ももの前面にある4つの筋肉で作られています。これは解剖学的命名にとって非常に厄介な意味あいを持っています。 それはさておき、4つの主な大腿四頭筋は: 外側広筋 内側広筋 中間広筋 大腿直筋 その4つの筋肉のリストのうち、はじめの3つは膝関節の伸展筋としてのみ機能する単関節筋です。大腿直筋は、ハムストリングのように二関節筋で、股関節屈曲筋及び膝関節伸展筋として働きます。 全体的に、外側広筋は最も大きい筋量を持ち(674㎤)、次に中間広筋(580㎤)、内側広筋(461㎤)、最後に大腿直筋(339㎤)が続きます。 筋肉の力の生産能力を駆動する生理学的筋断面積の観点から見ると、下のチャートでも示されている通り、これらは実際驚くほど類似しています(Erskine et al. 2009)。 ここで私たちが取りあげるべきなのは、もし私たちが脚のサイズをその最大範囲まで発達させたければ(そしてただスクワットが上手になるだけでないなら)、用いているエクササイズが4つの大腿四頭筋すべてに働いていることを確かめなくてはならないということ。 そうしなければ、私たちは筋肉の発達をいくらかのやり残してしまうでしょう。 スクワットは大腿直筋を発達させるか? 従来、スクワットは大腿四頭筋全体を最も発達させるものだと考えられてきました。 この考えは、大腿四頭筋の単関節筋を解析した研究によって、間違いなく支持されてきました。例えば、Signorile et al. (1994)は、外側広筋と内側広筋のスクワットにおけるアクティベーションを筋電図(EMG)で調査し、それをニーエクステンションと比較しました。彼らはスクワットの方が優れていることを発見しました。同じように、Ebben et al. (2009)は、外側広筋にはニーエクステンション、ステップアップ、そしてデッドリフトよりもスクワットの方がよかったことを発見しました。 一方で、“ただスクワットをする”というのは、大腿直筋にはあまりよく効果がないように見えます。 これは、ニーエクステンションエクササイズにおける大腿直筋のアクティベーションレベルが、スクワットと比較してより高いことを示す筋電図の研究(Ebben et al. 2009)からのみでなく、長期的試行からも見ることができます。 ある重要な研究、Fonseca et al. (2015)は、スクワットのみを行う2つのグループと、様々なエクササイズ(スクワット、レッグプレス、デッドリフト、ランジ)を行う2つのグループの、4つの異なるグループを、長期的トレーニングプログラムに渡り比較しました。様々なエクササイズを行った2つのグループは、大腿四頭筋のサイズが4つすべての筋肉(大腿直筋を含む)において増加しましたが、ただスクワットだけを用いた2つのグループでは、3つの単関節筋のみ大腿四頭筋のサイズが増加しました。 スクワットトレーニング後の大腿直筋の成長不足は、恐らくこの筋肉が股関節屈曲筋と膝関節伸展筋の両方であるからです。 身体が下に下がる(股関節屈曲及び膝関節屈曲をしながら)につれて、大腿直筋は膝関節で伸張し、股関節で短縮しようとして、結局ほとんど同じ長さのままになります。そして上に上がる(股関節伸展及び膝関節伸展をしながら)につれて、筋肉は膝関節で短縮し、股関節で伸張しようとし、また結局ほぼ同じ長さのままになるのです。 これは大腿直筋をスクワット中極めて非効率的にし、そのためこの筋肉は恐らく(ハムストリングスのように)通常それほど使われないのです。 大腿直筋を発達させるエクササイズは何か? 上で述べた通り、ニーエクステンションエクササイズでは、スクワットに比べより高いレベルの大腿直筋のアクティベーションがあります(Ebben et al. 2009)。これは、長期的なトレーニング研究による証拠で支持されています。 事実、下のチャートで示されているように、大腿直筋は単関節の、マシンによるニーエクステンショントレーニングによって、他の3つの大腿四頭筋よりも比較的成長するように見えます(Ema et al. 2013): ここでマシン・ニーエクステンションに表れされているように、同時に(そして同じような大きさで)股関節屈曲及び膝関節屈曲動作をさせないエクササイズにおいて、大腿直筋を非常に効率的に鍛えることができるように見えます。 まとめ もしあなたがスクワットを上手になりたいのであれば、もちろん“ただスクワットしましょう”。 一方で、もしあなたが完全な脚の発達を臨むのであれば、あなたは“主にスクワットをする”と言いつつも、さらにいくつか追加でハムストリングスのエクササイズ、そして大腿直筋のエクササイズを一つ加える方がよいでしょう。 これに関して、いくらかのトレーナーには無視されがちですが、ニーエクステンションは少なくともボディビルダーにとっては恐らく理想的なエクササイズなのです。 参照 Bryanton, M. A., Carey, J. P., Kennedy, M. D., & Chiu, L. Z. (2015). Quadriceps effort during squat exercise depends on hip extensor muscle strategy. Sports Biomechanics, 14(1), 122-138. Contreras, B., Vigotsky, A. D., Schoenfeld, B. J., Beardsley, C., & Cronin, J. (2015). A Comparison of Gluteus Maximus, Biceps Femoris, and Vastus Lateralis EMG Amplitude in the Parallel, Full, and Front Squat Variations in Resistance Trained Females. Journal of Applied Biomechanics. Ebben, W. P., Feldmann, C. R., Dayne, A., Mitsche, D., Alexander, P., & Knetzger, K. J. (2009). Muscle activation during lower body resistance training. International Journal of Sports Medicine, 30(1), 1-8. Ema, R., Wakahara, T., Miyamoto, N., Kanehisa, H., & Kawakami, Y. (2013). Inhomogeneous architectural changes of the quadriceps femoris induced by resistance training. European Journal of Applied Physiology, 113(11), 2691-2703.] Erskine, R. M., Jones, D. A., Maganaris, C. N., & Degens, H. (2009). In vivo specific tension of the human quadriceps femoris muscle. European Journal of Applied Physiology, 106(6), 827-838. Fonseca, R. M., Roschel, H., Tricoli, V., de Souza, E. O., Wilson, J. M., Laurentino, G. C., & Ugrinowitsch, C. (2014). Changes in exercises are more effective than in loading schemes to improve muscle strength. The Journal of Strength & Conditioning Research, 28(11), 3085-3092. Gorsuch, J., Long, J., Miller, K., Primeau, K., Rutledge, S., Sossong, A., & Durocher, J. J. (2013). The effect of squat depth on multiarticular muscle activation in collegiate cross-country runners. The Journal of Strength & Conditioning Research, 27(9), 2619. Grob, K., Ackland, T., Kuster, M. S., Manestar, M., & Filgueira, L. (2016). A newly discovered muscle: The tensor of the vastus intermedius. Clinical Anatomy, 29(2), 256-263. Li, Y., Cao, C., & Chen, X. (2013). Similar electromyographic activities of lower limbs between squatting on a reebok core board and ground. The Journal of Strength & Conditioning Research, 27(5), 1349. Luera, M. J., Stock, M. S., & Chappell, A. D. (2014). Electromyographic amplitude vs. concentric and eccentric squat force relationships for monoarticular and biarticular thigh muscles. The Journal of Strength & Conditioning Research, 28(2), 328-338. Signorile, J. F., Weber, B., Roll, B., Caruso, J. F., Lowensteyn, I., & Perry, A. C. (1994). An Electromyographical Comparison of the Squat and Knee Extension Exercises. The Journal of Strength & Conditioning Research, 8(3), 178-183. Wright, G. A., Delong, T. H., & Gehlsen, G. (1999). Electromyographic Activity of the Hamstrings During Performance of the Leg Curl, Stiff-Leg Deadlift, and Back Squat Movements. The Journal of Strength & Conditioning Research, 13(2), 168-174.

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 4510字