肩前部のウォームアップ

肩の前側に痛みがある、あるいはこれから肩に重さのかかるトレーニングを行うという際に行うべきウォームアップは、どのようなものが考えられるでしょうか?ジョギングでは充分でないとしたら、どのような動きが必要なのでしょう?

グレイインスティテュート 2:05

筋膜解剖コース開催実現に向けて

私が最初に解剖クラスに参加したのは、今から14年ほど前のことでした。コロラド州ボルダーに当時作られたばかりであった、トッド・ガルシアのラボで開催された5日間の解剖コースは、ロルファーであるリズ・ガジーニと解剖学者のトッドがリードする、ロルファーや徒手療法に関わる人たちを対象としたクラスでした。トッドのラボは、エントランスエリアの日当たりも良く、サンキャッチャーが壁に虹色を反射する明るい場所で、生まれて初めての解剖にドキドキしていた私をホッとさせてくれるものでした。 素晴らしく清潔で換気の良い整った環境での解剖でしたが、ホルマリンで保存された献体での解剖は、やはりホルマリン独特の強い匂いが、クラス終了後にどれ程長くシャワーを浴びても拭いきれない気がしました。匂いに圧倒されはしたものの、トッドの正確な解剖にリードされて進むクラスでの学びは、奥深いもので、解剖学的な部位を実際に立体的に確認するのみではなく、生命や死に対しての想いを改めて認識することができる意義深いものでした。 友人であるトム・マイヤースが、アリゾナ州テンピにあるトッド・ガルシアのラボで、筋膜の繋がりを重視したホルマリン保存されていない献体での解剖コースを数年前にスタートしたことは彼自身から聞いてはいたものの、“解剖クラスには一度参加しているし、わざわざそのためだけにアメリカに行くのはどうかなぁ?5日間の解剖コースにまた参加する気合があるかなぁ?”などと考えて、参加するタイミングを逃し続けていました。 一昨年の1月、トムは、2つの5日間解剖コースとともに、2日間のみの解剖と運動を組み合わせたミショール・ダルコートとの共同クラスを提供し始め、トラビスと私は“2日間なら調整できそうだ”とクラスに参加することに。短い日程のコースではありましたが、全てホルマリン保存されていない冷凍された献体での解剖を生まれて初めて経験したことで、筋膜をはじめとする結合組織が変性していない状態での身体の可動域の大きさ、組織の質感、身体という空間の在り方、すべてが全く異なる新しい経験を得ることができました。 私とトラビスの配属されたチームが担当させていただいた献体は、特に肥満でもない中肉中背の年配の女性でしたが、解剖の最初の段階からペースメーカーの存在が明らかになり、何らかの心臓血管系の疾患を患っていらした方であろうということが伺えました。解剖を進めていくうちに、大腰筋を確認したいという参加者の要望に応えて、トッドが内臓を摘出。ここで私たちがあっと驚いたのは、この献体の腹部の大動脈に拳骨ひとつ分ほどもある大きさの動脈瘤が存在していたことでした。 ちょうど私の父が、腹部の動脈瘤の手術をした直後ということもあって、私はこの動脈瘤に釘付けになってしまいました。この動脈瘤の上部、下部、鼠径部の辺りまで、動脈硬化はかなり激しく、筋肉を含み弾力性に富んだ動脈血管とは全く異なった、まるで石灰の詰まったプラスチックのストローのような質感。 この方は特に肥満であったわけでもなく、この動脈硬化の状態、この血管の石灰化の度合いは外側から見るだけでは、きっと知る由もなかったであろう、と考えた途端、身が引き締まる思いがしました。 ボディワーカーとして鼠蹊部付近の組織にアプローチをする際、大腰筋にアクセスをしようとしてASIS の内側辺りから指先を組織に沈めていくというような状況を考えたのです。弾力性のある血管であれば、外部からかかる圧に対してするりと身をかわすことができるでしょう。しかし、このような石灰化した血管の周辺組織に圧が加わるとしたら。。。 人の身体に手を触れることを仕事の一部とする立場の人間として、いかに注意深く接さなければならないかを、改めて考えさせられました。身体の中でどのような変化が起きているのか、私たちはそれを全て知った上で人の身体に手を触れているのでしょうか?知らないで対応しているとすれば、どれほどの侵害を起こす危険性を抱えているのでしょうか? ホルマリン保存された献体では比較的簡単に行える、それぞれの筋肉を分離させて解剖することが、薬品処理をされていない、つまり組織が固定されていない献体では、一つ一つの筋肉を周辺組織から分離させるためには、かなり繊細で精確なテクニックが要求されることも、このクラスでは学びました。 “腹直筋や、腹斜筋を動員せず、腹横筋のみを働かせる”とか、“内側広筋のみを働かせて”とか、“中臀筋の後部線維のみを起動して”といったような、還元主義的表現に現実味は全くないな。と、それまでも強く感じていた身体構造の全体性と、その連動の重要さを改めて再確認できたことは、その後の指導における確信にもつながりました。 短い期間のクラスではありましたが、このクラスに参加したことで人の身体に手を触れるときの私自身の心構えは大きく変化しました。そして、この経験を日本の皆さんにも是非シェアしたいと強く考えるようになったのです。 日本国内において、このような環境を設定することは不可能です。アリゾナで開催されているトムがリードする解剖コースに日本から参加する皆さんを募って一部通訳に入ったとしても、他のコース参加者の学習を妨害することにもなりかねません。だとすれば、日本から参加される皆さんのみを対象としたクラスを企画するしかない。 アメリカで開催される5日間のコースに参加するには少なくとも1週間の時間の余裕が必要です。コースの参加費のみではなく滞在費や渡航費といった経費がかかります。どれほどの人数の皆さんが参加してくださるのか? この解剖のクラスは、解剖学者のトッドの指導料、施設使用料、大学のプログラムからの献体の購入代金、トムの指導料をはじめとして、かなりの固定経費が存在します。この固定経費をカバーできるだけの参加者の皆さんが集まるのであろうか?などと考え続けた1年後のことです。 昨年のトムの解剖コースに参加された理学療法士の山本篤さんが、トムに“是非日本人を対象にしたクラスを通訳付きで開催してほしい”というリクエストを強く訴えかけてくださいました。 それまでも“そうだねぇ、日本人だけのクラスもできたらいいねぇ”程度の意欲しか見せていなかったトムが、山本さんの熱意についに動かされたらしく、“多少赤字になってもいいから実現してみよう!”と言ってくれたのです。こうなったら実現するしかありません。このチャンスを掴まなくてどうする? 赤字になろうがどうなろうがわからないけれど、とにかく実現してみよう! こうして、今回の筋膜解剖コースの企画が生まれたのです。 この素晴らしい学びの経験を,できるだけ多くの仲間と共有したいというトムの情熱が、山本さんの情熱が、そして私の情熱が周りを巻き込んで、結果として50名近くの参加者の皆さんが集まる一大企画となりました。 幅広く奥深い知識と経験を惜しみなくシェアしてコースのリードをするトム。ありえないほどに繊細で精確な解剖の匠の技を惜しみなくシェアしてくれる解剖学者のトッド。アシスタントとして解剖のサポートをしてくれたローリーとホリーという2名の大学教授達。講師陣と参加者の意思の疎通のために通訳としてサポートしてくれた理学療法士の諸谷万衣子さん、KMIプラクティショナーのモール加奈さん、そして私の夫であり、今回のコース開催のためのテクニカル面をしっかりと支えてくれたトラビス。参加者の皆さんとの連絡や事務作業を一気に担ってくれた大室泰三さん。そして、仲間を誘って再度コースに参加してくださった山本篤さん。 素晴らしいメンバーで構成されたチームが、はるばる日本からこのコースに参加するために準備を重ねて参加してくださったコース参加者の皆さんを迎えることがついに現実のこととなったのです。 そして、この解剖コースでの時間と経験は、期待と予想を大幅に上回る貴重で素晴らしいものとなったのでした。

谷 佳織 3346字

筋膜解剖コース2016

今回の解剖コースの参加者の皆さんの中には、今回の旅行が初海外旅行となる方も何名もいらっしゃいました。会社の社員全員11名が揃って参加されたグループもあれば、誰も知り合いはなく、一人で参加された方も。トレーナーやストレングスコーチ、ピラティスインストラクター、アレクサンダーテクニック指導者、ロルファー、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、歯科医、ボイストレーナー、インソール専門家、鉄道技師等、様々に幅広い分野の皆さんが、身体の構造を奥深く学ぶために、それぞれの目的を胸に抱えて日本全国から参加してくださいました。 コースをリードするトムは、私たちのコースがスタートする前に、すでに2つの5日間筋膜解剖コースを、そして2日間の解剖と運動のコースを指導していました。すでに2週間以上をラボの中で過ごしていたのは、トムだけではなく、ラボのオーナーであり、解剖学者であるトッドも、そしてトムのアシスタントとしてサポートをしてくれた、ローリーとホリーという2名の大学教授たちも同様に、なんと3週間連続の解剖コースに突入してくれたのです。 毎朝8:30~10:00の90分の時間は、ホテルのミーティングルームで、トムのスライドによるプレゼンテーションや質疑応答、そしてジョシュ・ヘンキンを迎えての体験ワークショップに費やされます。 まず初日の朝、参加者の皆さんと出会ったトムが私たちに伝えてくれたメッセージは下記のようなものでした。 “これからの5日間の実習から皆さんは多くのことを学び、気づくことになると思います。 単に古典的な解剖として、筋肉や骨をバラバラにして構造的に身体を学ぶことはもちろんできるでしょう。 ただ単に言葉で表現し伝えることができる知識や経験を学ぶだけではなく、うまく言葉にできない、言葉にするとうまくその本質を伝えられない何かに気づくことになると思います。 このうまく言葉にできない魂からの学びは、すぐに何かの形として現れるものではないかもしれません。これからの皆さんの人生の中で、生きていく上で何かの選択に迫られた時に、皆さんの背中を後ろから応援するように押してくれる。そんな形で現れてくるかもしれません。 私自身、もうすでに20回以上トッドとともに解剖を経験していますが、その度に私の魂は何かを学んでいます。私の母は、つい最近98歳の誕生日を迎えたばかりですが、彼女の驚くほどに軽く繊細になった手を握りながら、今回の旅から戻った時に、また彼女に会うことができるのか?と考え、人の死とは何か?人が生きるということは何か?ということを深く感じさせられています。 現代の社会に生きる私たちは、生命の誕生や死に立ち会うことが、ほとんどない。 ただ人は、誰しもいつかは死を迎える。 こうした経験をすることで、死を理解し、死に対しての準備をすることができてくるように感じます。 私も67歳になりました。残された時間の中で、果たして自分に何ができるのか? 私の師であるアイダ・ロルフと、ある日教室で二人きりになった時、彼女が私に言った言葉と同じようなことを、私も今感じています。やっと何かを始めたばかりなのに、あとどれだけ伝えていくことができるのだろうか?後を引き継ぐ人たちに自分は何を残していくことができるのか? 貴重な献体を提供してくださった皆さんの身体を通して、深い学びを得ることができる素晴らしい5日間になるでしょう。“ 毎朝のミーティングルームのレクチャーでは、ラボでは見ることのできない、細胞レベルやDNAレベルでの身体の構造や生理学の素晴らしさを学び、発生学の見地からの身体の構造と機能を学び、筋膜やその他の結合組織の塑性、粘性、弾性といった性質を理解することができる充実したサポートが提供されました。 内臓や脊柱を扱う日の朝には、昨年後半に腰椎椎間板の固定手術を受けた経験を持つジョシュ・ヘンキンが妻であり理学療法士であるジェシカと共に、手術からのリハビリの過程をシェアしてくれました。 実際に内臓のスペースを確認し、それぞれの構造の密接な関係性を理解した上で、この手術のプロセスを経験者から聞くことは、かなり強いインパクトがあったように感じます。 5日間の解剖は、表在の組織から始まって、各参加者のチームごとのプロジェクトに沿いながら進められていきます。 トムは、それぞれのチームのテーブルごとに、その時、その時のプロセスに応じて彼の奥深い知識と経験を惜しむことなくシェアしてくれます。 トッドは、もう“匠の技”としか表現できない、ありえないほどに繊細で精確でありつつ、素早い解剖の技術で、全て一つにつながっているように見える組織を、綺麗に分離させ、それぞれの構造をはっきりと見せてくれます。 大学教授であるローリーは、解剖のプロセスの途中で、心臓と腎臓を取り出し、それぞれの臓器を洗剤等を混合したバケツに浸けて、臓器の筋肉や細胞を洗い流し、枠組みとなっている筋膜の組織のみを残す。という、現代の医療科学の分野で進んでいる自己免疫の反応を刺激せずにより安全に行うことができる臓器移植への夢を実現するような、素晴らしい実験のプロセスをシェアしてくれました。 他者の臓器を移植して、免疫系がその組織の身体への同化を拒絶する可能性を最小限に抑えるために、内臓器の細胞を全て溶かし去って、結合組織の枠組みのみを残し、その枠組みに患者本人の幹細胞を移植して成長させ、その自分自身の細胞でできた臓器を移植する。という、まるでSFのようなことが現実のものになる日も、あまり遠くないのかもしれません。 トッドの技術を持ってして、はじめて分離させることができるほどに、密接につながっている身体組織。皮膚を取り去ることによって劇的に変化する関節可動域。手術の後の瘢痕組織の癒着の強力さ。各献体間に見られる個体差。頭蓋の厚さ、硬さ、強さ、ホルマリンで固定されていない脳のまるでクリームのように形を持たず柔らかい質感。脳下垂体の驚くほどの小ささ。 今回の解剖コースでは、通訳として各テーブルを移動していた私自身も、数々の発見と驚き、そして感情の奥深くを揺るがされるような経験を得ることができました。 解剖の本を読むだけでは、決して得ることのできない気づき、思い込みとか受け売りではない、本物の理解。生きるということに対しての自分自身の在り方、そして死をどう受け止めていくことができるかの準備。このコースでは、ただ知識を得るよりも、何十倍も奥深い学びを得ることができたように感じます。 トムが作った造語に“Spatial Medicine =空間の医療”という言葉があります。 私たちの健康に関わる医療には、身体の化学的なバランスを整えるための現代医学による化学的医療があり、整形外科的なアプローチや外科手術をすることでの機械的医療があります。これらの医療は、どんどん進化をし、人々は、そのクオリティーは別としても、昔よりはるかに長く生きられるようになりました。 でも、私たちの身体という空間を取り扱う、空間の医療とでも呼ぶべき分野は、まだまだこれから発達すべきもの。身体という空間を、より健康に維持をするためには、そこに動きが存在することが不可欠です。動かないもの、停滞するものは腐敗していきます。命を動かし続けるために、私たち運動指導やリハビリに関わる職業にある人たちは、これからの世紀にとって、とてつもなく重要な役割を担っているのです。 こうした、空間医療に関わる人たち全てが、一人一人バラバラに、あるいは、それぞれの専門職同士が孤立した状態では、この重要な役割を果たすことは望めません。 空間医療に関わる全ての専門職の人たちが、共に共通の言語を使って、お互いに理解しあい、お互いに助け合いながら成長していけることの重要性をトムは語ってくれました。 そして、今回の解剖コースを終了した後で訪問させていただいた、メジャーリーグのダイアモンドバックスでアスレチックトレーナーとして活躍する阿部正道さんも、EXOSで教育担当をするトリスタンも、フィッシャースポーツで活躍する理学療法士の管野恵介さんも、それぞれに違う言葉で同じメッセージを私たちに伝えてくれました。 私たちが、それぞれの専門性を尊重し合いつつも、お互いに理解を共有して繋がっていくことができること。ケアのコンティニュアム=連続体を実現することの重要性。 これは、キネティコスを立ち上げるにあたって、私が何よりも実現したかったこと、そのものなのです。 コース終了後の打ち上げパーティーで、ピザとビールを前にして、仲良く会話に興じるコースの参加者の皆さんの様子を眺めながら、“これこそが実現したかったことなのだ。”という想いを強く感じて、思わず涙が溢れました。 様々なジャンルの専門職の皆さんが、ひとつの想いでつながること。そしてこの繋がりが日本全国の運動/健康に関わる専門家の皆さんにどんどん広がっていくこと。そして、より多くの人々の健康と命をサポートすること。これは決して、誰かが一人で実現できることではありません。どれほど優れた治療家でも、どれほど優れたコーチでも、ひとりがアクセスできる人の数には限りがあるのです。 ピザとビールで楽しそうに歓談している皆さんを眺めながら、私は自分自身のミッションを再確認して、一人深い想いに浸っておりました。 今回のコース開催は、“まずは1回実行してみよう。次回はいつになるかわからない。”と、特に先の計画なしでスタートしたものではありましたが、今回のコースにご参加いただいた皆さんから、来年も是非!という言葉を沢山いただき、私たちは来年も開催することに決定いたしました!! コース参加者募集のご案内は、かなり早い時期にスタートをする予定です。皆さん、是非、この貴重な学びのチャンスを掴んでみてください。 来年も、今回のスタッフが再集合して、ベストチーム体制で準備をします。お楽しみに!

谷 佳織 4245字

バイセプスカールマトリックス

上腕二頭筋のためのトレーニングとしてよくみtられるバイセプスカール。筋肉を孤立させるような方法で行うことで、筋肉のもつ本来の機能を向上させられるのでしょうか?グレイインスティチュートの提案するバイセプスマトリックスをダグ・グレイが紹介します。

グレイインスティテュート 2:48

肩甲胸郭可動域のアセスメント

肩甲骨と胸郭の間のアクティブなエクスカージョン(可動域)の評価。様々な角度で、挙上、下制、後退、前突と動かしながら、どの角度で、どの可動域でより上手く動かすことができているのかを評価する、多面的で機能的なアセスメントの方法をレニー・パラチーノがシェアします。

レニー・パラシーノ 12:08

仙骨と第五腰椎間の動きのアセスメント

ジーン・サリヴァンのワークショップから、脊柱の屈曲、伸展の際に起こる仙骨と第五腰椎間の重要な動きのアセスメントをご紹介します。脊柱の伸展時に欠如しがちな仙骨、第五腰椎間の動きの促進方法もシェアしてくれています。

ジーン・サリヴァン 13:33

スクワットの向上のためのスクワット以外のドリル

スクワットの動作を指導するのは難しくありませんか?股関節周囲ではなく、足と足首のアライメントに注目したキューイングとエクササイズのプログレッションを、DVRTのジョシュとトラビスがお届けします。

ジョシュ・ヘンキン & トラビス・ジョンソン 6:25

どこで治療が終了しコンディショニングが始まるのか?

グレイ、あなたはストレングスコーチでもあり理学療法士でもありますね。あなたの考えでは、スポーツに戻るためのリハビリという点からみて、理学療法をどこで終わらせ、ストレングス&コンディショニングをいつ始めますか? とても興味深い質問ですね。 グレッグ・ローズがタイトリストパフォーマンス研究所の枠組みを整えるために多くのひな形を構築していた時、グレッグと私もこの疑問に直面しました。私たちは、ゴルファーを医療やリハビリテーション、筋骨格系または整形学的対象として扱うのか? それとも、ゴルファーをひとりの人間として扱うのか? ゴルフで観察される特有のニーズやケガに対して私たちは非常に敏感ではありますが、グレッグと私は、それが本末転倒であることに気がつきました。 スポーツの基盤を支えている人間の基本的な動作要素が私たちに備わっていなければ、苗を植えようとしている土壌に、苗が根付くために必要なすべての要素が備わっていないことと同じで、ゴルフの技術を支えることはできないでしょう。それでもゴルフの技術をなんとか教えることができるのでしょうか? イエス。それだけで継続可能ですか? それは、たぶんノーです。負傷したゴルファーにどう対応しようかと取り組み始めた頃、部位の相互依存を示す窮屈な整形外科的処置にとらわれていました。しかし、ゴルファーもあらゆる整形外科の患者においても、症状がある部位と機能障害を起こしている部位が同じであるとは決して考えません。 SFMAは、動きの医学的または臨床的スクリーニング方法および評価方法であり、動きを4つのカテゴリーに分けます。 1) ファンクショナル・ノンペインフル(機能的で痛みなし)は、みなさんがこうであって欲しいと願うカテゴリーです。基本的な環境の変化に適応し、適切に反応するのに十分な症状のないパターンです。 2) ファンクショナル・ペインフル(機能的ではあるが痛みを伴う)では、動きのパターンをやってのけることはできます。動作中にどう感じているかを彼ら自身が表現しなかったり、不快感のサインを見逃したら、痛みを伴っているかどうか気づかないかもしれません。 彼らが紙袋を頭からかぶっていたら、ランジに問題があるでしょうか? あるいは、完璧なランジであったにも関わらず、彼らが膝の痛みを訴えて初めて問題に気が付くのでしょうか? 私たちは皆、膝の外反に気づくことはできますが、これらの兆候に気づかず見逃したしまうことも多くあります。 もし、彼らが痛みを感じていることを教えてくれるならば、ファンクショナル・ペインフルであることが分かります。これらをマーカーとして利用します。この時点では強化したりストレッチしたりする部位は特にないので、治療を行う必要はありませんが、動作パターンが症状を誘発するということは知っておくべきでしょう。マーカーとして頭に置いておいておきましょう。 さらに、痛みと動作が相互作用するカテゴリーが他にも2つあります:ディスファンクショナル・ノンペインフル(痛みを伴わない機能不全)とディスファンクショナル・ペインフル(痛みを伴う機能不全)です。 3) ディスファンクショナル・ペインフル(痛みを伴う機能不全)は、痛いので遂行することができないということを示しています。パターンが痛みを誘発しているのか、痛みが機能不全パターンを誘発しているのかは分かりません。ここでは2つのことが考えられます。この領域は、私たちが痛みを伴う人たちへの対応に関して、経験豊富な専門家でない限り、直接携わることはありません。片脚立ちや前屈、後屈から始まりすべての動作パターンを実施したら、これら4つのカテゴリーに分布されるのが分かるでしょう。最後に、ディスファンクション・ノンペインフルというカテゴリーがあります。 4) ディスファンクショナル・ノンペインフル(痛みを伴わない機能不全)は、ストレングス&コンディショニングと理学療法が交差するところです。私がこれらの2つを繋げるとは思わなかったでしょう? ここでは、スクワットやランジ、片脚立ち、体幹の回旋、コアの安定化における基準を、私たちがお互いに最低限理解している必要があります。ディスファンクショナル・ノンペインフルは、無症状の状態ですが、動作の状況として見逃せない重要な兆候です。 ストレングスコーチ、パーソナルトレーナー、体育の教員など、私たちは皆、ムーブメントスクリーニングで4つのカテゴリーに当てはめることができます。しかし、臨床でいくつかの動作は痛みを伴い、いくつかの動作では痛みがなく、しかも顕著な機能不全がみられる場合、素早く自分の役割を考えましょう。 これらのポジションを利用したり、手技療法やリセットやテーピングなどを施したりしてみることができます。無症状の機能不全パターンに対してさまざまな対処ができます。微調整してみて、そして、もう一度ファンクショナル・ペインフルのパターンを行い改善しているかどうかチェックします。機能不全が問題を引き起こしていると提言しているのではありません。そうでないと証明できないということを言っているのです。 症状を悪化させるパターンよりも症状を悪化させないパターンに遭遇することの方が多いので、ここでは症状を悪化させないパターンをみてみましょう。症状を直接刺激することなく隠して分からなくし、間接的にこれらの症状に影響を及ぼすことができるかみてみます。このような現象はよくあることです。 では、他の方法を試してみましょう。ディスファンクション・ノンペインフルのパターンで合意し、窮地から脱するためのコレクティブエクササイズで意見が一致することは、理学療法士やストレングスコーチ、パーソナルトレーナー、体育の教員の互いの仕事の領域を尊重することになります。私たちは皆、動作を改善することができますが、痛みによって症状が複雑化し悪化するようであれば、全く異なる尺度で状況を読み取る必要があります。まったく異なるレベルの責任が発生し、上手くいかないことも多くなるかもしれません。 痛みを伴う状況では、たいていの運動反応は予測不能で一貫性がないことを覚えておいてください。これが学習環境だとは考え難いですね? 線引きはここにあります。痛みを伴う場合、適切に対処できる誰かに任せなければなりません。そして、戦略を理解してくれる誰かに任せ、さらに、症状がなくなったならば次の戦略を立てるまた別の誰かが必要となります。ここでみんなが協力し合うのです。

ファンクショナルムーブメントシステムズ 2743字

足首のリハビリのプログレッション

スポーツに復帰する直前の機能とパフォーマンス向上のために、ホップを利用したリハビリの最終段階までいかに漸進するのか?足首の障害のリハビリのプログレッションの過程をベン・コーマックが指導するセミナーからのビデオです。

ベン・コーマック 5:41

運動の変動性と素晴らしい資質

最近、運動の変動性を取り上げた多くの興味深い研究と議論を目にします。心拍数や脳波、エネルギー使用、動きなどの繰り返される基本的なパターンに微調整を加えられる能力が、健康や身体機能を示す適切な指標とされているようです。同じ作業(たとえば、釘うち作業)を繰り返す熟練者は、初心者に比べて、より高い変動性を発揮します。 これは、ニコライ・ベルンシュテインがかつて運動制御の複雑性を説明したダイナミックシステム理論と関連性があります。これとフェルデンクライスメソッドの理論的根拠には深い関係があり、近いうちに詳しくこのことについて書いてみたいと思っています。 これらのトピックに触れている私の著書から短く抜粋します(ダイナミックシステム理論の複雑な部分は省くとします)。 変動性と素晴らしい資質 優れた動きとは、身体のさまざまな部位の調和のとれた相互作用や協調性だけのことではありません。最も基本になることは、人体のそれぞれの系統が、環境とどのように関わるか、特に予測不可能な環境下でどのようにふるまうかということです。つまり、優れた動きとは、環境の変化に対する適応性と反応性の質を示しています。 完全に左右対称で華麗に歩行する人間ロボットを作ることは想像できるでしょう。しかし、そのロボットが地面の状態の変化に合わせて歩行パターンを適応できなければ、石につまずく度に転んでしまい、この運動スキルは基本的に役に立たないものといえます。つまり、本来の運動の知性は、動き自体にはさほど存在せず、環境との関わりに存在するのです。 鹿の華麗な歩行も、丸太を跳び越えたり、オオカミから逃げたりするために変化しなければ、役に立ちません。サッカー選手も、独りで練習するときは技術的に素晴らしいボール裁きができても、試合形式で相手がボールを奪おうとするような状況でこれらの動きを実施できなければ、本当の意味で優れているとは言えません。 ある特定の考えを一方的に伝えることしかできないのであれば、その特定のコミュニケーションがどれだけ完璧であっても、その言語を流暢に話せるとは言えません。同様に、たくさんの異なる方法でひとつの目標を達成することができなければ、これも動きの達人とはいえません。 立位から座位に円滑に動くことができても、いつも同じ軌道を通っているのであれば、これは、床に腰を下ろす方法をたくさん持ち合わせている人よりも資質が乏しいことになります。完璧なフォームでスクワットできるパワーリフターは、必ずしも、ガーデニングのために備えているのではありません。ガーデニングでは、重心が多少ずれたり、左右の足がさまざまところに位置したりするなどスクワット動作が継続的に環境に順応する必要があります(公平のために言うと、逆にガーデニングをする人は、800ポンドのウェイトを持ってスクワットする準備はできていないでしょう)。ですから、優れた動きは、理想的なフォームの順守という物差しでは必ずしも計れないのです。それよりも、変化する多くの状況に順応する能力で計ることができます。 適応能力と素晴らしい資質は、競技スポーツだけに当てはまるのではありません。私たちの日常生活でも、常に予期せぬ動きや無理な姿勢をとることがあります。 飛行機の窮屈な座席で長時間座る ソファーや寝心地の悪いベッドで寝る 足に合わない靴で歩く 買い物袋を片手に持ちながら赤ちゃんを車に乗せる これらあらゆる状況において、解決策となる動きには、いわゆる“優れた”姿勢とか適切なフォーム、最も調和のとれた動きと言われるものから外れる必要があります。このような予期せぬ問題に対して解決策となる動きを見つける能力は、私たちが運動の知性として認識すべきものの一部です。 では、実践的にこれは何を意味しているのでしょうか。ひとつには、運動の知性は多様性に富んだ困難な動きに直面することによって発達するということです。予測不可能かつランダムで、ばらつきのある要素を含まないスポーツでさえも、同様のことが言えます。 ルイ・シモンズは、世界で最も成功したパワーリフティングコーチのひとりでしょう 。このスポーツで要求されるのは、:スクワット、デットリフト、ベンチプレスというたった3つの単純な動作です。競技中は、非常に動きの種類が少ないにも関わらず、シモンズは、常にこれらの動きに変動性をもたらすように選手をトレーニングしています。たとえば、バーやウェイトを変えたり、スピードや足の置き方に変化をつけたりしました。この論理的根拠の一部は、“身体があらゆることに適応していると認識した時点で、それとは異なる課題を課す必要がある。”というものです。 現代生活の中で、私たちの多くは自分の身体に対して興味深い問いかけをすることはまったくと言っていいほどありません。神経系が、解決策となるクリエイティブな動きを要求される状況下にさらされる局面がほとんどありません。事実、問題を解決する動きのすべての知性は、今や我々の椅子やソファー、ベッドなどをデザインするエンジニアや人間工学の専門家に移行してしまいました! 自然環境の中では、数分間休むのに快適な場所を見つけることでさえも、非常に困難なチャレンジです。地面は座るにはひどく濡れていたり、石があってゴツゴツしていれば、腰を下ろさずにしゃがむしかありません。もし、地面に直接座われば、股関節の可動性や体幹の安定性は多平面においてチャレンジを受けます。硬く不均等な地面では、姿勢や体位を継続的に変える必要があります。このような困難に直面したとき、多くの人は10分も経たないうちに不快感を覚えます。 近代の生活においては、座ったり、休んだりするかつての困難はなくなってしまいました。30分間快適に座り続けるための、動きの変動性や素晴らしい資質を必要としなくなってしまいました。実際、運動の知性を一切使わなくても8時間でも9時間でもとても快適に休み続けていられるようになったのです! 教訓:運動の変動性と資質をあえて要求する方法を見つけましょう。使わなければ失ってしまいます!

トッド・ハーグローブ 2581字

インシーズンのS&C その2

前回に引き続きインシーズンのトレーニングについての第2弾です。少し長くなってしまいましたがお付き合いいただければ幸いです。 一昨年、国立スポーツ科学センターで開催されたJISSスポーツ科学会議でS&C界では著名な研究者であるRobert Newton博士(Edith Cowan University)が講演をされました。その講演の中で長期のインシーズン中のトレーニングに関して重要な研究が引用されていましたのでご紹介していきます。 『試合期の女子バレーボール選手における体力の変化』(1) Hakkinen, K. Changes in physical fitness profile in female volleyball players during the competitive season. J Sports Med and Phys Fitness 1993; 33:223-32 フィンランドのリーグに所属するあるチームを実験群、また別のチームをコントロール群として試合期の体力数値の変化を調査した研究です。体力要素の中から筋力とジャンプパフォーマンスに関するところを要約して下記にまとめます。 シーズンは以下のように分かれている。 7週間の準備期 10週間の試合期Ⅰ 3週間の準備期 11週間の試合期Ⅱ 実験群は週に2-3回、コントロール群は週に1-2回のフィジカルコンディショニング(大部分は筋力トレーニング及び爆発的筋力トレーニング)を行った。実験群は試合期Ⅱの後半の5週間はmaximal strength trainingを中断した。 ◯最大筋力の変化について 脚伸展筋の最大筋力は準備期と試合期Ⅰの間に僅かに増加したが統計的に有意ではなかった。 試合期Ⅱ後半の5週間で中止されたトレーニングによって最大筋力は有意に低下した(Fig. 2)。 爆発的筋力トレーニングだけではシーズン前に獲得した最大筋力を維持する十分な刺激にならず、最大筋力の低下を防ぐにはコンスタントな高強度のトレーニング刺激が必要であることが示唆された。 最初の筋力レベルが高かった者ほど筋力の低下が大きかった(r=−0.92, p<0.01)。このことから個別的な筋力トレーニングの必要性が示唆される。 ◯ジャンプパフォーマンスの変化について 準備期と試合期ⅠにおいてSJとCMJは有意に向上した(Fig. 3)。同じくSPIKE JUMP(スパイクジャンプ)、BLOCK JUMP(ブロックジャンプ)も有意に向上した(Fig. 4 )。しかし、試合期Ⅱの後半に最大筋力トレーニングが中止され、最大筋力だけでなく、SJとCMJも有意な低下を示した。 女性は一般的にやや低い最大筋力レベルであるが故に最大筋力は爆発的筋力の発達と特にジャンプのパワーには重要であると思われる。試合期Ⅱにおける最大筋力の変化はCMJの変化と強い相関(r=−0.90, p<0.01)があることはこのことを支持している。 試合期全体を見た場合、実験群だけではなくコントロール群でもSJとCMJのパフォーマンスの変化は個人差が大きく、個別プログラミングの必要性を支持している。 この研究から得られる現場への応用は以下のようなものが考えられます。 ・シーズン中もコンスタントに高強度のトレーニングを継続して最大筋力を維持する。 ・女性アスリートは男性と比べて最大筋力が爆発的筋力やジャンプパフォーマンスに及ぼす影響が大きいと思われるので、最大筋力の維持が不可欠だと考えられる。 ・最大筋力やジャンプパフォーマンスの変化は個人差があるので、個別的なプログラミングをしていく必要がある。 ・個人差がある体力の変化を把握するために、シーズン中も体力的数値をモニタリングしプログラムを微調整していく。 Hakkinenによる20年以上前の研究ですが、(特に女性において)最大筋力へのアプローチを止めてしまえば、パフォーマンス低下を招くことを示した重要な文献だと思います。ディトレーニング(トレーニングの中断)による最大筋力の低下は短期間で生じます。シーズンのクライマックスに向け最もコンディションを上げなければならない時期にパフォーマンスの低下は避けたいものです。Bakerの研究(2)では、競技レベルの高いラグビー選手において29週間(なんと半年以上)のインシーズンでも筋力とパワーを維持することができています。競技練習、エネルギーシステム、ストレングス・パワートレーニングなど様々な要素をトレーニングしていかなければならない中でそれぞれの干渉作用を最小限に抑えるように計画することとチーム状況をふまえた微調整ができれば体力的パフォーマンスを長期に維持することも可能だと考えられます。 とは言うもののなかなか計画通りにいかないことは日常茶飯事です(私自身も反省と自己嫌悪におちいる連続です…)。研究を鵜呑みにしてしまうことは時に危険な場合があります。自分の置かれた環境に置き換えた時にどうなるか考えられる能力をつけたいものです。ただHakkinenの文献のように過去の貴重な研究のおかげでより良い方向へ進むこともできます。何が起こるかわからないスポーツ現場では(人を対象にするならどの現場でも)指導者の引き出しが多いにこしたことはないと思います。 緒方博紀(S&Cコーチ、JT Marvelous) 参考文献 1. Hakkinen, K. Changes in physical fitness profile in female volleyball players during the competitive season. J. Sports Med. and Phys. Fitness. 33: 223-32. 1993. 2. Baker, D. The effect of an In-season of concurrent training on the maintenance of maximal strength and power in professional and college-aged rugby league football players. J. Strength Cond. Res. 15(2): 172-177. 2001 ※図の番号は文献中のものをそのまま引用しています。 ※JISSスポーツ科学会議の講演は国立スポーツ科学センターのホームページから視聴することができます。

緒方 博紀 2794字

血流制限トレーニングの持久力への長期的影響

目的 この記事は、血流制限トレーニングの持久力への長期的(慢性の)影響に関する研究の概要を提示している。 背景 序論 血流制限を伴わない同等の方法と比較し、血流制限を伴って行われるレジスタンストレーニングもしくはノンレジスタンストレーニング方法のどちらかの方が、持久力を向上するためにより有益であるかもしれないと思われるのには、様々な理由がある。これらは、血流制限を伴う、もしくは伴わないレジスタンストレーニングの異なる効果を研究している急性試験を参照すること、および、血流制限を伴うもしくは伴わないレジスタンストレーニングの、血管機能の変化を含む生理学的適応への影響を研究している長期研究を参照することにより調査することが可能である。 血流制限の急性効果 例として、急性試験においてレジスタンストレーニングの際の血流制限は、血流制限を伴わないレジスタンストレーニングと比較し、限界に至るまでに行われるレップ数を30%減少させるという結果を示している(ラバーベラおよびその他、 2013年)。筋限界へのより大きな刺激は、持久力に対するより大きな反応を生み出すと期待できるかもしれない。 血流制限の長期的効果 数例の長期的研究は、持久力に恩恵をもたらたす可能性のある、血流制限トレーニング後に起こるいくつかの有益な生理的適応を確認している。例えば、血流制限を伴うウォーキングエクササイズは、血流制限を伴わないウォーキングと比較し、静脈コンプライアンスを向上すると示されており(リダおよびその他、 2011年)、また血流制限を伴うレジスタンストレーニングは血流制限を伴わないレジスタンストレーニングと比較し、毛細血管濾過能力を大幅に向上するようである(エバンズおよびその他、2010年)。これは、血流制限を伴うトレーニング後における毛細血管化の増加によるものである可能性がある。さらにファーズおよびその他(2014b年b)は、血流制限を伴う片側性膝伸筋レジスタンストレーニングは、動脈壁硬化の増加をもたらすが、血流制限を伴わない同様の状況においては、そのような変化は観察されていないということを発見している。また、ハントおよびその他(2013年)は、6週間の1RMの30%における片側性底屈レジスタンストレーニンは、様々な血管の適応をもたらすということを発見している。最後にハントおよびその他(2012年)は、血流制限を伴うレジスタンストレーニングプログラムに反応した上腕動脈の直径の増加は、血流制限を伴わない同様のプロトコル後にみられたものと比較し、より大きかったということを報告している。 負荷を適合させたレジスタンストレーニングとの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を使用した長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 比較 – 血流制限を伴わない長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 結果 – 極度疲労までの時間、限界までのレップ数、および最大酸素消費量を含む、介入の前後に測定された持久力もしくはエアロビックフィットネスの測定値 結果 以下の研究が確認された:マニマナコウ(2013年)、ファーズ(2014年)、リバーディ(2015年)。3つ全ての研究は、持久力測定値の向上を報告している。ゆえに血流制限を伴うレジスタンストレーニングプログラムは、持久力の向上に効果的であるようである。しかしながら3つの研究の内2つ(ファーズおよびその他、2014年、リバーディおよびその他、2015年)は、血流制限グループおよび血流制限無しグループにおいて同様の結果を観察している。ゆえに血流制限を伴うレジスタンストレーニングは、従来のレジスタンストレーニングと比較し、持久力の測定値を向上させるためにより効果的ではないかもしれない。 血流制限を伴うレジスタンストレーニング:持久力への影響 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を伴う長期のレジスタンストレーニングであれば何でも 比較 – なし、もしくはノートレーニングコントロールグループ 結果 – 極度疲労までの時間、限界までのレップ数、および最大酸素消費量を含む、介入の前後に測定された持久力もしくはエアロビックフィットネスの測定値 結果 1つの研究が、血流制限を伴うレジスタンストレーニングの持久力への影響を評価していると発見された:クック(2010年)。この研究は1週間に3日の血流制限を伴うレジスタンストレーニングの効果を調査しており、30日間の筋アンローディングを行っている被験者のグループにおいて、膝伸筋の持久力を30%向上させたということを発見している。 負荷を適合させたノーレジスタンストレーニングとの比較 選択基準 集団 – 誰でも 介入 – 血流制限を使用した長期のノーレジスタンストレーニングプログラムであれば何でも 比較 – 血流制限を伴わない長期のノーレジスタンストレーニングであれば何でも 結果 – 極度疲労までの時間、限界までのレップ数、および最大酸素消費量を含む、介入の前後に測定された持久力もしくはエアロビックフィットネスの測定値 結果 以下の研究が確認された:サンドバーグ(1993年)、サンドバーグ(1994年)、アベ(2010年)。3つ全ての研究は、持久力のマーカーを向上させた。ゆえに血流制限を伴うノーレジスタンストレーニング方法は、持久力の向上に効果的であるようである。さらに3つ全ての研究は、血流制限を伴わないノーレジスタンストレーニンググループと比較し、血流制限を伴うノーレジスタンストレーニンググループにおいてより大きな向上を示していた。ゆえに、血流制限を伴わないノーレジスタンストレーニング方法と比較し、血流制限を伴うノーレジスタンストレーニング方法は、持久力を向上させることにおいてより効果的であるようである。しかし研究論文は非常に限られており、この結論は極めて不明確である。 結論 血流制限を伴う長期のレジスタンストレーニングは、少なくとも血流制限を伴わない同様のプログラムと同等に持久力の測定値を向上させるようである。 血流制限を伴わない同様のプログラムと比較し、血流制限を伴う長期のノーレジスタンストレーニングプログラムは、持久力の測定値を大幅に向上させるようである。しかし、研究論文は非常に限られており、この結論は極めて不明確である。

ストレングス・コンディショニング・リサーチ 2717字