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痛みと予測 パート4/4

生体力学の関わり 私達が自問自答しなければならない疑問は、構造的生体力学モデルの関わりについてです。構造的‘異常’は、運動制御の‘順’モデルを考慮に入れる際、私達が見込む予測可能な方法で動作を修正することはできないかもしれません。私達が、痛みを動作と体組織への実際の影響として考えるのではなく、痛みを予測や運動指令と関連していると考えるならば、それは、もしかしたら私達に、生体力学的/デカルト的フィードバックの視点を考え直すことを余儀なくさせるに違いありません。疑問は、“動作は痛みを引き起こしているのか、それとも痛みが動作を修正しているのか”ということです。体組織の潜在的知覚の変化は、施術者によって異常、もしくは損害を与えると見なされる特定の動作よりもむしろ重要なのかもしれません。 表現がより良ければ、予測もよりより良いのでしょうか? 私達の神経構造と神経構造の組織は、私達が記憶-予測モデルを考察に含める際に、いかに未来の事象を予測するかに関して重要だと思われます。 バトラー、モーズリー、フロアー、ラマチャンドランやその他の研究者によって、私達の体部位再現は、慢性痛の状態に関連しているとされています。 モーズリーとフロアーは、“慢性痛の治療における皮質表現へのターゲティング:総括”(2012年)の中で、下記のように説明しています: 科学的根拠の大部分は、慢性痛は、身体に関連する皮質表現領域の障害に関連していることを明らかにしている。そして、この障害が慢性痛の一因となっている、もしくは保持しているという科学的根拠がある。 私達は、未来レベルの体組織への脅威や危険を予測するために、これらの表現を利用しているかもしれません。そして、重要な変化が、慢性痛を患っている人たちの疼痛部位において、確認されています。痛みが表現を修正しているのでしょうか、それとも修正された表現が痛みの一因となっているのでしょうか?これは、答えにくい疑問ですが、両方のシナリオについて考察していかなければなりません。 皮質表現へのターゲティングは、モーズリーとフロアーによって提案され、NOIグループの段階的運動イメージプログラムによって実施されています。www.gradedmotorimagery.com フォーラとその他は、“筋骨格系疼痛障害のためのリハビリテーションの取り組みにおける運動学習と神経可塑性の役割”(2010年)の中で、下記のように述べています: 新しい運動技能の獲得において、皮質性神経可塑的変化は、しばしば運動能力の向上のような、有利と考えられる性質を伴う 彼らは、下記のように書き加えています: 皮質性神経可塑的変化の及ぶ範囲を最大化しようとする、リハビリテーションの取り組みは、リハビリテーションの成功のための最大の可能性を提供する立場にある。 モーズリーとフロアーは、下記のことも書き加えています: 感覚・運動戦略を利用している感覚・認知表現をターゲットにする治療は、明らかな機能的かつ対症的効果を示している。 悪循環を断ち切る 私達の見解では、持続性の疼痛反応を変える手助けをするのは、予測を断ち切ることかもしれません。そのための特定の‘方法’は、このブログの焦点ではありませんが。これには、痛みに関連した、潜在的に染み込んでいる出力を断ち切るために、行動、感情、運動戦略に気づくことを含んでいるかもしれません。 時として、いくつかのケースに於いては、ただ単に、動く前に意識的にリラックスさせることのように単純なことかもしれません。事例的成功は、この方法の利用を介して得られています。運動作用への単純な連続的な変化を通して、痛みを修正することが可能だということは、患者にある程度の内部制御部位を還元できるかもしれませんし、脅威の予測の修正と同様に、患者の情動状態に影響を及ぼすかもしれません。 疼痛教育と生物-心理-社会モデルは、予測の変化、もしくは痛みと脅威の知覚にも関連があるのかもしれません。患者が何を経験しているかと患者の身体への実際の損傷との間の関係を再評価を助けます。 状況に応じたわずかな変化は、結び付いている痛みの構成要素を持つ特定の運動指令に影響を与えるかもしれません。これは、身体の姿勢、位置もしくは情動状態かもしれません。 痛い動作にできるだけ近い痛くない動作が、私達に、痛みの関連性を増強することなく、動作の確かさを築き、維持することを可能にしているのかもしれません。四肢位置のわずかな変化は、疼痛反応を修正し、動作と痛みに関連した防御機構を縮小するかもしれません。痛みの出力の程度に応じて、罹患部位の痛くない/脅威でない動作へ後戻りさせる必要があるかもしれません。 結論 痛みを体組織の状態、病理、痛覚、生体力学から分離し始めることが重要です。痛みは、身体からのいかなるインプット無しに発生する、脳の出力です。しかし、これは、これらの構成要素のどれもが痛みを引き起こすことができないということを意味しているのではありませんが、現在、多くの人達が信じているように、痛みは、確実に、それらの構成要素だけにとどまりません。 脳の機能構築を変化させるかもしれない学習体験に基づく痛みの予測は、運動時痛のフィードフォワード・モデルを作り出すかもしれません。これもまた、私達の個々の‘神経基質’に作用し、痛みの体験を増幅するストレスや疾病のような、多くの要因によって調整されています。 私達の皮質表現へのターゲティングは、動作制限、もしくは痛みの出力の増大を介して、体組織への保護する知覚された脅威を含まない予測において、(できれば、より良く)異なる変化と長く持続する変化を作ることを可能にしているのかもしれません。これは、視覚系とイメージ、運動技能、与えられた痛みの状況のわずかな修正を通して、行われるかもしれません。

ベン・コーマック 2554字

痛みと予測 パート3/4

記憶-予測モデル 脳がどのように機能するかについての一つの理論は、記憶-予測モデルを介しています。 脳が多くの変数に直面し、それらすべてを処理しきれない時、脳は、以前の事象や学習体験に基づいた予測を使用します。ベイズ確率理論は、どのようにこのモデルが機能しえるかに対しての洞察を与えるかもしれません。 仮説の可能性を評価するために、ベイズ蓋然論者達は、新たな関連データを踏まえて更新された、いくつかの事前確率を明確化します。Bayesian probablility. Wikipedia. この一例は、あなたがラジオで知っている歌を聴き、それに合わせて歌っているということかもしれません。あなたは、次に来る歌詞を予測するために、その歌に関する以前の記憶を利用します。私達はクイズ番組の中で、ある単語に欠けている文字を入れる際や、良く知られている熟語を完成させるために単語を入れる際にも、同じことを目にします。このように、記憶-予測モデルを説明するために利用可能な例は、数限りないのです。 また、私達はボタンを押すことに関連した報酬、もしくは制裁に反応するネズミにおいて、基準面におけるこの神経処理を目にします。 この方法で、過去の事象と体組織、もしくは体組織の状態への脅威や危険の現在の予測との間に繋がりが見え始めてきます。特に、痛みのような記憶しやすい事象に関して。 予測は、過去に何が起きているかによって影響されます。特定の行動や出力の蓄積と呼び出しにおいての直接水準とインプットの処理とそれに続く出力全体の両方が、遺伝子要因と習得した要因によって形成される、私達のひとつひとつの‘神経基質’を通して、指令を出します。 私達が実際の状態を問わず、体組織の状態を、損傷した、もしくは運動作用によってさらなる損傷になりそうである未来の体組織の状態の予測として知覚するとすれば、、痛みの出力は、運動作用や伴う痛みを防ぐために利用されたり、運動計画の段階で動作を制限、または修正する効率的な方法として利用されたりするのかもしれません。 ここでの問題は、(存在している、もしくは関連性のある)痛みのある動作や病理ではないのかもしれません。それは、脳による知覚と、それに続くさらなる損傷への予測です。学習した反応を変更することは、より困難なことです。実際、ラマチャンドランは、これを‘学習された痛み’と呼んでいます。痛みは習慣であり、私達皆が知っているように、習慣を変えることは困難でありえるのです。 痛みの‘記憶’ メルザックは、彼の論文 “幻肢の痛みの‘記憶’:総括と臨床観察”の中で、‘身体の記憶’について考察しています。四肢は、もはや存在しなくとも、切断前の痛みは、‘幻肢’において持続します。 メルザックは、下記のように述べています。 その結果によると、十分な強度と持続期間の体性感覚入力は、中枢神経構造内に持続的変化を生じさせる 損傷は、下記のようにの変化に富んでいて、包括的です: 皮膚病変、深部組織損傷、骨関節痛、痛みを伴う切断前の姿勢 痛みは、末梢部には存在しません、存在しえないのです。その代わりに、四肢に関連している特定の表象において、神経可塑的に脳を変化させます。ここでの疑問は、完全な求心路遮断ほど極端ではない例の場合でも、これは発生するのかということです。 ディヴィッド・バトラーは、“敏感な神経系”(NOIグループ出版、2000年)の中で次のように述べています: 過度の使用、不使用、軽傷、関連した認知もまた、表現を修正させる。切断は、ただ単に劇的な一例である。 ここで私達は、未来の疼痛経験に影響を与えている過去の痛みの体験についてみていきます。完全な求心路遮断ほど極端ではない例において、私達は神経可塑的に脳を再編成している痛みの‘記憶’を規則的に目撃するのでしょうか?その結果、未来の知覚や、それに続く体組織への脅威の予測の修正を目撃するのでしょうか?脳の出力は、動作の小さな修正から、衰弱性の慢性痛にまで至るかもしれません。 “順”モデル 予測モデルもまた、運動制御理論において、運動制御の順モデルという仮説として取り上げられています。 フライシャーは、彼の論文、“小脳、大脳基底核、海馬における予測の神経相関”の中で、‘順モデル’を考察しています。 順モデルは、神経系に身体の状態が、近い未来にどのようになっているかの予測を提供する。 彼は、下記のように書き加えています: 最適な運動制御理論は、どのような運動指令の効果が、現在の状態や運動指令に与えられているのかという順計算の存在を必要としている。 そして、 その代わりに、順モデルは、フィードバック制御のみの使用よりも速い動作の生成を可能にさせる。 私達の体部位再現の表現が蓄積され、恒常的な情報の流れが起こる小脳と大脳皮質のつながりを理解することが重要です。私達は、要求された課題を達成するために、運動野からの意図的動作と、運動指令を修正するために情報を使用している末梢からの報告された動作を比較しました。 ここで再び、フィードバックではなく、フィードフォワード・モデルの関わりをみます。何が起こるかを予測できる必要性は、過去の体験のみに基づくことが可能です。痛みと運動調節において、生体力学の力に基づくモデル、もしくは痛みのデカルト的見解のように、フィードバック・モデルが支配しています。

ベン・コーマック 2402字

痛みと予測 パート2/4

出力としての痛み 痛みと体組織の状態の間の隙間を広げ、そして、脳の出力としての痛みの見解をより深く評価するために、私達は、身体からのいかなるインプットをも伴わない痛みを考察しなければなりません。絶好の例は、‘幻肢’痛です。 ‘幻肢’とは、切断手術を受けた患者が、すでに切断されている四肢にまだ痛みを感じるものです。これは珍しい体験ではありません。ニコラセンとジェンソン(2001年)は、最近の複数の研究が幻肢痛の出現は60-80%に上ると報告したと、“幻肢痛”の中で発表しています。 メルザックとカツは、彼らの論文“痛み”(2013年)において、幻肢について下記のように述べています: 痛みを含む、私達が通常身体から感じる経験としてのあらゆる性質は、身体からのインプットが無い場合にも、また感じられる;このことから、私達は、経験のパターンの起源は、脳内の神経回路網にあると結論を出すかもしれない;刺激は、パターンを引き起こすかもしれないが、刺激を作り出すことはない。 マカビーとその他(2006年)は、“健康な被験者における感覚運動不調和のシミュレーション”において、下記を考察しています: 認識できる末梢の因果的病理の存在なく生じる、もしくは外傷のサイズに不相応と思われる状態 例えば、 反復運動損傷、Ⅰ型複合性局所疼痛症候群(CRPS)線維筋痛症、限局性手部筋失調症、幻肢痛 彼らは、運動感覚中枢神経処理を介して、健康な被験者の痛みを誘発しようとし、下記のことを発見しました: 27人の被験者(66%)は、末梢性の侵害のインプットが無いにもかかわらず、プロトコル中のいくつかの段階で、少なくとも1回の異常な感覚症状を報告しました。. 上記の2例は、 痛みは、損傷組織、病状、もしくは構造的異常にのみ起因するという、現在の覇権に疑問を投げかけます。事実、これらの例において、私達はいかなる侵害刺激無しに、時としていかなる脳への刺激、もしくはインプット無しに痛みを経験することを見ているのです。 メルザックとカツは、彼らの論文‘痛み’の中で、下記のように書き加えています: 要するに、もし私達が、身体は感覚メッセージを、受動的に受信する脳に送信する、と仮定するのであれば、幻肢はミステリーとなりえます。私達が、脳が身体にとっての体験を作り出すことを認識した時点で、幻肢は包括的なものになります。感覚入力は、ただ単に経験を調整しているだけにすぎません。感覚入力が、直接的に経験を引き起こすことは無いのです。 予測としての痛み ついに私達は、この記事の真のテーマにたどり着きました。末梢からのインプットを必要としない脳の‘予測’としての痛みの紹介です。これは、なぜ組織治癒後、もしくは病理が存在しない場合ても痛みが長期にわたって持続するのか、そして、なぜある人達は、MRIの結果に、痛みに関連するものが発見されているにもかかわらず、少しの痛みしか、もしくはまったく痛みを経験しないのかという理由であるのかもしれません。 ノーマン・ドイジの著書“脳は奇跡を起こす”において、彼は、神経可塑性と幻肢痛の理解に尽力したインド人神経科学者ラマチャンドランと対談をしています。 ラマチャンドランは、慢性痛患者と彼の信条“運動指令は、痛みの感覚系と繋がっている”、あるいは、痛みの関連性は、ある特定の動作のための運動プログラム(神経信号/タグ)とつながっているかもしれないということを論じています。これは、受傷後に起こる可能性があり、損傷組織を保護するために、運動指令は変化します。痛み、もしくは損傷に対しての運動変化は、ホッジスの論文‘疼痛化での異なる動作’(2010年)において論じられています。 私達が、防御するために、筋肉を動かさないようにして損傷の悪化を防ごうとする際に、意識的に動かないことを自分自身に思い出させるのであれば、私達は、疲弊し、足を取られ、自分自身を傷つけ、痛みを引き起こしてしまうでしょう。(ラマチャンドラン) ~脳は奇跡を起こす”ノーマン・ドイジ ペンギン、2007年、p193. これは、脳機能構築内で、神経可塑的変化を引き起こし、“防御の病的形成”を作り出します。 彼はさらに続けて下記のように述べます: ラマチャンドランは以下のように考えました:運動中枢が、動くための命令の発令と動作の遂行をする間に、脳は、動作が起こる前に痛みを引き起こすことによって、先行して間違った動作を回避する(ラマチャンドラン) ~脳は奇跡を起こす”ノーマン・ドイジ ペンギン、2007年、p193. 出力としての痛みを理解することが、この観点には不可欠です。動作の‘防御’は、著者の見解として、運動出力にも痛みの出力にもなり得ます。身体は、可動域もしくは、動作の方向と疼痛反応を通して、動作を制限する選択をすることができます。 組織が回復区をすると、これが問題になります。 ラマチャンドランは、これらの慢性痛の患者において、痛みの指令は、痛みの感覚系と繋がっているため、四肢は治癒しているにもかかわらず、脳が腕を動かすために運動指令を送信する際に、痛みを引き起こすと信じるようになった。 脳は、いまだに身体の部位を問題としてとらえています。さらにもう一歩踏み込めば、影響される身体部位動かすことを考えること、もしくはそう論じることでも、私達は痛みを感じ始めたり、不快感を抱き始めるかもしれません。それは、脳の複数の領域における、痛みのある部位に関連を持つ多くの神経パターンへの痛みの配線によって決まるでしょう。 “現代的な痛みの科学における痛みの再概念化”でのロリマー・モーズリーのキーポイントの一つは、下記のとおりです: IV. その痛みは、体組織が危機に瀕しているという潜在的知覚の意識的関連要因として概念化される。 ここでは、私達は、体組織の状態の知覚、もしくは危機にさらされてる体組織の知覚と比較して、重要ではない体組織の状態に関する合意があります。 この知覚は、その体組織に起きた損傷や痛みのような既往、もしくは体組織を危険にさらしていると脳が感じるかもしれない動作に基づいている可能性があります。これは、以前の動作/痛みの体験、もしくは脳からの痛みの出力に影響を及ぼす、未来の体験の予測の可能性の世界を開拓します。病理の原因、もしくは関連としての痛みを体験した部位の組織損傷は、痛みの体験からさらにかけ離れていきます。時間が経つにつれ、いなかる相互関係もより減少していきます(モーズリー2007年)。しかし、体験した痛みは、体験している人にとっては、いまだにとても現実的なものであることを、私達は覚えておかなければなりません。

ベン・コーマック 2898字

痛みと予測 パート1/4

この記事は独立したものであり、すでにこのブログにおいて紹介されている“脳・動作・痛み”シリーズの第3部でもあります。 このブログは、下記のおおざっぱな“脳のモデル”に従っています: パターン 知覚 予測 このモデルにおいて、脳は結果を予測するために、フィードバックによって引き起こされ、比較された蓄積された神経パターンを使用します。私達が予測をするために必要なのは、蓄積された記憶であり、いかなる特定のフィードバックも必要としていないかもしれませんが。 この記事は、結果および/または動作を作り出すための、脳の予測に焦点を合わせています。私達の見解では、動作と痛みは、このカテゴリーに分類されます。 この記事では、動作よりも痛みに焦点を当てています。痛みは、確実にコーキネティックの専門分野ではありませんが、間違いなく興味のある分野です。 脳の予測が有益なものではない際に、問題は起きるかもしれません。これは、危険、もしくは脅威の予測が、実際の体組織への脅威に比例していないときで、特に以前の外傷の既往や痛み後にありえます。体組織が改善した状態でさえ、損傷の可能性を制限するために、痛みは予測の結果としておこる可能性があります。 これは、決して疼痛経験への包括的な見解ではなく、考察にすぎません。痛みは、責めるべき単一の要因だけでなく、多くの要因によって引き起こされ、調整されています。 痛み 痛みは、非常に扱いにくい題材です。私達は、痛みに関して何をすべきか、そして、一般的に普及している事実が重要な問題を提供しているということよりも、痛み自身に関して、より多くのことを知っています。 しばしば、問題を再概念化することは、一部の正しい知識を持った人達が痛みの理解への道を照らす際、私達のアプローチを変える手助けをしています。彼らは、以前の(現在でも議論されているかもしれない)主要な痛みのプロセスの理解であるデカルト的な見方に新しい視点を与えました。その先駆的な人物のひとりは、ロナルド・メルザックであり、彼の独創性に富んだ“神経基質”モデルです。全文(英語)をみるには*ここ*をクリックしてください。 メルザック&カツ(2013年)による“痛み”からの最新モデル 痛みの現代的な理解のカギは、身体からのインプットではなく、脳からの出力のようです。そして、これが体組織へのダメージと経験した痛みの総量の関係性、もしくは侵害受容器活動と経験した痛みの関係性を分離し始めています。潜在的に痛い、もしくは痛くない刺激の脳内での中央処理が、個人が経験する痛みのレベルのカギになります。後で詳しく説明するように、実際、痛みを作り出すために、私達は身体からのいかなる刺激も全く必要ないかもしれません。 ロリマー・モーズリーは、2007年にフィジカルセラピーレヴューに発表した“近代的な痛みの科学に従った痛みの再概念化”で雄弁に詳しく、下記のように説明しています: 実証研究が、痛みと侵害受容器活動間、もしくは痛みと体組織の状態間でも同一構造の関係性を示さないことは明らかである。むしろ、実証研究は、多くの要因によって調整される変わりやすい関係性を示している。 痛みと病理学 受傷後に、痛みが数か月、数年にわたって持続するという事実も、痛みのレベルは体組織の状態に相関するという現在の見解を混乱させます。これはまた、患者の現在の痛みの状態に関連付ける病理学の継続的な模索にも疑問を投げかけるのです。 ボーデンとその他(1990年)が発表した、“無症状被験者における腰椎の磁気共鳴映像(MRI)検査にみられる異常”では、痛みの訴えの無い人達を検査しています。彼らは、3分の1の被験者が、‘かなりの異常’を示すことを発見しました。これは、60歳以上では57%にものぼります。さらに驚くことに、20~39歳の被験者の35%に、腰椎椎間板の突出、もしくは変性がみられました。 バーンスタイン(2001年)は、“無症状被験者における腰痛を予測するための腰椎の磁気共鳴映像の有用性:7年間の追跡調査” において、無症状被験者の腰痛の予兆となるものとしてMRIを注視しました。 そして、彼らは下記の研究結果を発表しています: 磁気共鳴映像による研究結果は、腰痛の発症や持続期間を予測ではなかった。腰痛の最長期間をもつ被験者達が、1989年の最初の画像において、重大な解剖学的異常を有していたわけではない。 グレーブスとその他(2012年)による最近の研究、‘急性腰痛における早期の画像診断:ワシントン州の労働者における1年間の健康と障害状態’において下記を報告しています: 腰痛を有する労働者において、早期のMRIは良好な健康状態とは関連しておらず、障害の可能性と持続期間に関連がある。 そして、1年後の労働障害給付金を受給する可能性が2倍になっています。 腰椎ヘルニアへの外科的処置は、症例の60%においてのみ、痛みと坐骨神経症状を完全に除去することができます。腰部にサポートをもたらす脊椎固定術では、滅多に症状の改善はみられません(メルザック、全文-Pain 2013)。 モーズリーによって説明されたように、これは痛みと体組織の状態の様々な関係性を強調しています。体組織の状態との早期の相互関係は、良好な結果につながりませんでした。実際、病理学との関連性が、痛みの持続期間を増大させたのでしょうか?さらにこれは、体組織の状態と痛みの予測可能な関連性を拡大し、患者の状況の認識評価もまた、状況の要因となるのです。 私達は、様々な慢性痛の原因として、あるいは予測を試みるために、人間の状態の中に多くの生体力学的、もしくは解剖学的な‘不具合’や‘異常’を見つけ出そうとしてきましたが、これらは質の高い研究によって確実に裏付けられてはおらず、事実として提起された見解がいまだ飛び交っているという、捕らえどころのない状況であることが証明されています。

ベン・コーマック 2612字

プロフェッショナルの成長:プロセス vs. アウトカム

何度か、ニューバランスのエリアコードゲームズで、カリフォルニア州ロングビーチに足を運んだことがあります。全国の高校野球のトップ選手230人が一堂に会するイベントです。2016年、私はオープニングセレモニーの一部として講演を行いました。 簡潔に伝えたい、そんな思いから、プロセスとアウトカムを区別することの重要性を強調することにしました。これは、クレッシースポーツパフォーマンスで指導するアスリート全員に叩き込むように試みていることですが、すべてのプレーヤーにとって重要な差別化であると感じています。 アウトカムとは、(他にもっと良い表現がないのですが)結果です。それは、4打数4安打であったり、オールスターチームに選ばれたり、期末試験で「A」を取ったりすることです。また、ネガティブな場合もあり得ます:4打席0安打であったり、チームから外れたり、期末テストで落第したり。結果のみの中に成長があるわけでは決してなく、成長とはすべての仕事を終えた後に起こるものです。残念ながら、私の経験では、非常に多くの人々、特に若くして大きな成功を収めた若いアスリートたちは、結果志向になりすぎています。彼らは、そこに至るまでのプロセスを認識するのではなく、成功の喜びを味わうことに時間とエネルギーを費やし過ぎています。 これに対して、プロセスとは、アウトカムにつながるすべての習慣や行動を構成するものです。これら4打席の前に、ケージでスイングの微調整をした時間なのです。そのオールスター選考の判断よりも前の、あなたの努力や態度なのです。そして、最終的な試験の準備度(または準備不足度)に結実するのは、あなたの学習習慣です。 驚くなかれ、結果重視の育児は、プロセス重視の育児よりも劣ったアプローチであることを示唆する証拠があります。結果を褒めるよりも努力を褒める方が一層良いのは、そのような努力の積み重ねが、子供に将来のあらゆる場面で頑張ることを思い出させてくれるからです。Tボールの頃からの倫理と振る舞いは、税金納付のシーズンがきた時、会計士としてのあなたの仕事を何十年間も助け続けてくれるものですが、20年前のトロフィーが、大人になってから困難な状況に陥ったときに、あなたを助けてくれるとは思わないでください。 しかし、興味深いことに、このメッセージは、私が長年フィットネス業界に関して行ってきたいくつかの会話と重要な類似性を持っています。実際、その年の夏、シカゴで105名のトレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、リハビリの専門家を集めて肩のセミナーを開催した際に、詳しく取り上げたのを覚えています。 イベントのまとめの段階で、何人かの若いトレーナー達から、「どうして今の私があるのか」と聞かれました。実際、ある人は「私が10年後にあなたのようになるためにはどうすればいいのか」と質問した人もいました。私はこれらの質問に答えることが難しいと感じていました。というのも、私は成功について考えることがほとんどなく、正直なところ、自分が成功したと決めるには早すぎると思ったからです。さらにより有意かもしれないことに、私は、5年後(10年後は言うまでもなく)の自分の姿を鮮明に描くことができないのです。自分がどこに向かっているのかがはっきりしないのに、新進気鋭のフィットネスプロフェッショナルに、10年後の自分がどうありたいかを語ることができるでしょうか? そう考えると、私の答えは必然的に曖昧になるのが常です: プロセスを受け入れ、結果は成るに任せること。 問題は、フィットネス業界の特徴として、これらのプロセスのどれもが明確に定義されていないことです。別の言い方をするなら、この分野の多くの仕事が完全に基礎となっている厳密な基盤がないのです。このような業界はあまり多くありません。 例えば、私の妻は検眼医ですが、医師になるまでに学部教育4年、その後検眼学校4年(臨床ローテーションを含む)、そして医師会試験を経ています。カリキュラムが決まっていて、そのカリキュラムで重視される分野の能力を判断するための指標があったのです。そして、その熟練した技術を確立した後も、アンナはさらに1年間、角膜とコンタクトレンズを専門とするレジデントを経験しました。ある日突然、自分は検眼士であると宣言してキャリアをスタートさせることはできませんが、パーソナルトレーニングでは、参入障壁が全くないため、そういうことをする人が多くいます。 では、この教訓を、本当に偉大になりたいと願うフィットネス関係者にどう生かせばいいのでしょうか。まずは、キャリアを築くための土台となる最低限の教育を重視することが必要だと思います:基礎の上にキャリアを構築することができるのです。 NFLのストレングス&コンディショニングコーチとして成功するために必要なスキルセットは、臨床運動生理学の場で心臓や肺のリハビリテーションを行うために必要なものとは明らかに異なりますが、これらの領域(そしてその間のすべて)には多くの共通点があることは確かです。ここでは、フィットネスに携わるすべての人が、確かな土台を作るために知っておくべきと思うことをいくつか紹介します: 1. 解剖学、キネシオロジー、バイオメカニクス:構造が機能を決定します。良い動き(機能)を作る、維持する、あるいは再確立するためのプログラムを構成する前に、良い動き(機能)が何であるかを知る必要があるのです。 2. 生理学:クレブスサイクルを暗唱できる必要があるとは言いませんが、エネルギーシステムの発達、運動に対する内分泌反応、さまざまな疾病状態が運動に与える影響、クライアントが服用しているさまざまな薬物の役割、その他多くの生理学的考察について明確に理解している必要があります。 3. コーチング・アプローチ:率直にいきましょう:私は、まず他の複数の資格のあるコーチのもとでインターンシップを経験した人でなければ、誰かをトレーニングすることは許されないと思います。マッサージセラピストは、独立する前に何百時間(時には何千時間)もの時間をこなす必要があります。私は、悪いフィットネスの専門家は、悪いマッサージセラピストよりもずっと早く人を傷つけることができると主張します。優れたコーチは、効果的なコーチングの指示を提供するだけでなく、最も効率的な方法でそれを行う方法を理解しています。そのためには、あらゆる分野の個人を指導し、期待通りにいかなかったときに微調整していくしかないのです。 4. 対人関係:私はいつも、フィットネスのプロを目指す人たちが、一般的な運動科学のカリキュラムの中で、心理学の正式なトレーニングをほとんど受けていないことに驚いてきました。そして、正直なところ、「典型的な」大学の博士が教室で教える心理学の授業は決して軽蔑的な意味ではなく)、何十年も顧客を抱えている成功したパーソナルトレーナーや、何世代も大学のウェイトルームで繁栄してきたストレングス&コンディショニングコーチから学ぶものとは、かなり異なる可能性が高いと思います。モチベーションというのは、非常に複雑なテーマです。私のキャリアの中で何度も、クライアントが入ってきて、(下記のような言葉)でセッションを始めたことがあります:「そう、離婚するんですよ。」リバースランジとブルガリアンスプリットスクワットのどちらを選ぶかは、ちょっと二の次になルカもしれませんよね? これらが私にとって意味したこと この4つの基礎的な教育プロセスを見ると、私はこの業界に入ったとき、#1、#2ともに本当によく準備できていたと感じます。学部の学生時代の経験として肉眼的解剖学のクラスがあったことは考え方を大きく変えてくれましたし、また、キネシオロジー、バイオメカニクス、運動生理学の教授達にも恵まれ、単純な暗記を超えるような授業を受けることができました。 しかし、最初の頃、私はコーチングのアプローチに苦労しました。私は早口で、指示を数多く出しすぎてしまい、多くの選手を混乱させてしまったようです。コネティカット大学の偉大なコーチたちの仕事ぶりを見て初めて、私はもっと明瞭で簡潔であること、そしてアスリートにとって複雑なものをシンプルに見せることを学んだのです。 成長期の夏休みに8年間テニスクラブで働き、複数の年齢層の会員と常に交流していたためか、対人関係は自然に身に付いていたようです。しかし、実はこの3~4年、これが私の最大の勉強分野であり(特に今は雇用者を抱えているので)、リーダーシップ、コミュニケーション、モチベーション、および関連分野に関しては、常にオーディオブックを聞いています。 あなたにとってこれらの意味するのは フィットネスの分野では、誰もが特有な準備をしています。技術指導は上手でも、コミュニケーションは苦手な人もいます。トレーナーの中には、そのきれいな動きを支配する正確な解剖学的構造を知らなくても、動きをきれいに見せるコツを知っている人もいます。専門家の中には、根本的な生理的変化を説明できなくても、優れた結果を出している人もいます。こうした成功(結果)があるからといって、常に改善(プロセス)を求めるべきでないというのではなく、ぜひ「自己監査」をして、最大の成長分野を見極めることをお勧めします。 このような知識不足の多くは、本やDVD、オンラインのメンターシップ・プログラムなどで補うことができます。しかし、私は、4つの構成要素の情報を拾い、それらがどのように組み合わされているかを確認できる、最も速い学習方法は常に対面指導であると信じています。インターンシップやメンターシップは、リアルタイムで応用やフィードバックがあるため、この点において素晴らしいものです。セミナーも素晴らしいものです。特に、講義と実践(実習)の両方がある場合は、なおさらです。

エリック・クレッシー 4151字

股関節後面の3Dモビリゼーション

股関節後面の筋筋膜の組織は、固くなって制限を起こし易いエリアでもあります。股関節外旋筋群を含む、股関節後面の複合体の3Dモビリゼーションを、レニー・パラチーのがご紹介します。

レニー・パラシーノ 5:52

肩甲胸郭関節の動きの強化

肋骨の上で肩甲骨が動く。この動きを強化するためには、ただ組織をパッシブにストレッチするのではなく、テンションをかけることが必要です。安定した外部環境を活用して、より効果的に、段階的に強化を行う方法をレニー・パラチーノがご紹介します。

レニー・パラシーノ 6:50

エクササイズをリンクする

リリースされたばかりの「プログラミング・エッセンシャル」ビデオからの抜粋第二弾。トラビス・ジョンソンが、エクササイズ同士が競合し合わないように適正にリンクするための考え方のプロセスを解説します。トレーニングセッションにおいて、スーパーセット、トライセット、あるいはサーキットなどを計画する際、このコンセプトをしっかりと理解することは不可欠となるでしょう。ぜひご覧下さい。

トラビス・ジョンソン 4:36

構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート3/3

『過剰な呼吸回数による筋緊張』 前回の投稿では『環境的要因による呼吸パターン不全』として、環境要因に対する考察が必要とのお話をさせて頂きました。 今回は“呼吸回数”についてご紹介します。 近年注目されている呼吸ですが、“呼吸パターン”についての議論は数多くされている一方で、“呼吸回数”についての議論は少ないように感じます。 “喘息患者のゼーゼーいう呼吸は、常に喘息の疾患の転帰(病気が進行して行き着い結果)で起こるものだと考えられてきました。“深く呼吸すること”自体が気管支喘息の原因であり、深く呼吸すると喘息の症状を引き起こす可能性があるということを、かつては誰も考えもしなかった” “喘息や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者や他の呼吸器の問題を抱える人は、体が要求するよりも2〜3倍以上の呼吸をしている” ~Konstantin Pavlovich Buteyko (1923~2003) これらは喘息治療の権威でもあるButeyko博士の残した言葉です。 一般的に正常な呼吸回数は1分間に8~12回とされていますが、例えば喘息患者などは20回近く呼吸を行っています。体調不良や精神的ストレスを抱えているときも呼吸回数は増加します。 呼吸回数が多くなると、過剰な酸素供給によりpHバランスも正常値から外れ、また呼吸に関わる筋群も過剰に働くことになります。 「人間は簡単に2、3回の深呼吸でphバランスを変化させることができる。 30秒以下の胸式呼吸でpHは7.4から7.5に上昇する」 ~American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. Vol 168; 10-48 2003. 上記のリサーチで検証されている様に、身体のpHバランスは呼吸により簡単に変化します。 これは呼吸パターンだけではなく、単純に呼吸回数の増加によっても変化する為、過剰に呼吸を行っているクライアントには呼吸回数を減らすアプローチが必要となります。 呼吸回数に介入する際に知っておくべきこと 1. 呼吸のしすぎは単なる習慣でしかない:呼吸を調整する脳の一部(中枢化学受容器)が呼吸をしすぎることに慣れてしまっているだけである。長時間の過剰な呼吸(以下では過呼吸と表記する、“長時間”とは“24時間以上”と定義する)は、脳を敏感にし、さらに過呼吸を長引かせる。過呼吸が、習慣的で、長期的にわたると、主要原因が取り除かれた後でさえもその癖は続いてしまう 引用: 「過換気症候群(HVS)と喘息」 スティーブン・デミター医師 過呼吸になった原因は様々ですが、“一時的に過呼吸になる必要“が生じた(例えば過剰な緊張状態等によって通常より多くの酸素が必要となった)人が、過呼吸の必要がなくなった後も“習慣として”過呼吸を続けるケースが多いです。 セッションの前に、『過呼吸であり続ける必要はもう無いので、呼吸回数を減らすことに何の問題もありません』とクライアントにしっかりと理解してもらう必要があります。(多くの方が呼吸回数を減らしたり、呼吸パターンを変えることに不安を覚えます、まれにセッション中に酸欠になったと勘違いして軽いパニックを起こす方もいらっしゃいます) 実際のセッションでは様々な手法で呼吸回数を減らすワークを行います。(共通しているのはどのエクササイズも4~9分間の継続が必要ということです、これは中枢科学受容器が過呼吸状態をリセットするのに必要とされている時間です) 今回は一番簡単な手法の一つをご紹介します。 2. 片方の鼻の穴で呼吸をする方法 どちらか片方の鼻の穴は反対側に比べて少し詰まっている状態である事が多いものですが、空気不足を作り出すために、通っている鼻の穴を指でふさぎ、少し詰まっている方の鼻の穴で呼吸してみます。通っている方の鼻の穴を閉じることで吸う空気量が減り、息苦しく感じるかもしれません。この状態を4分間維持してみてください。 このワークの後に最初に詰まっていた方の鼻の穴はどのように感じるでしょう ※クライアントは4~9分間の間、常に少し息苦しい、息を吸いたい!と思い続けますが、気持ちを落ち着かせてゆっくりと少ない量の呼吸を維持する必要があります。 何回かの試みの後、呼吸回数または呼吸量が減少していれば成功です。すぐに呼吸回数の減少が見られなくても、数週間の間繰り返しワークを行うことで徐々に効果が表れてきます。 注意: 呼吸エクササイズは、ほとんどの人にとって適切でとても有益ですが、下記の症状がある方には適していません。自分に適しているかわからない場合は、行わないでください。 ・現在がん治療を受けている ・1型糖尿病 ・てんかん ・統合失調症 ・血圧レベルが正常でない ・胸痛や心臓付近に痛みがある ・鎌状赤血球貧血症 ・動脈瘤 ・過去6ヵ月間に心臓の問題があった場合 ・コントロール不良の甲状腺機能亢進症 ・既知の脳腫瘍や腎臓 以下に当てはまる方は、強度の軽い呼吸法であれば問題ありませんが、細心の注意を払いながらワークを行ってください。呼吸法によるストレスが強すぎる場合、症状を誘発、悪化させる可能性があります。 ・重度の喘息患者と肺気腫及びCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者 ・2型糖尿病 ・妊婦(妊娠初期は全く行わないこと) ・不安神経症/鬱病 ・片頭痛の患者 呼吸回数と呼吸パターンは相互に影響しあうため、呼吸パターンへの介入によっても呼吸回数を減らせるかもしれません。 私は呼吸への介入を行った後の効果測定の手段として呼吸回数を活用しています。 ※ちなみに、私は現場で1分間の呼吸回数を数えるような測定はしておりません。その代わりにコントロール・ポーズという時間を図って呼吸回数を予測するのですが、これはまた次回以降にご紹介します。

近藤 拓人 2547字

構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート2/3

『環境的要因による呼吸パターン不全』 肩こりに関して、前回は肩甲骨のポジション不全による胸鎖乳突筋の緊張をご紹介しましたが、今回は環境的要因による呼吸パターン不全、そしてそれに伴う僧帽筋&胸鎖乳突筋の緊張を考察します。 先ず、呼吸パターンはなぜ適切ではなくなってしまうのでしょうか? 主な原因は恒常性(ホメオスタシス)です。ホメオスタシスとは、生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質です。 ホメオスタシスは呼吸パターンを随時変化させます。代表的な理由として、呼吸パターンを変化させることにより血中のpHバランスを一定に保つ必要があるからです。(血中pHは7.4を理想とするが、酸性値、すなわち血中の二酸化炭素量が多くなると7.4より下に下がる、アルカリ性が強くなると7.4より上に上がる) ※酸素は基本的に水に溶けない為、酸性でもアルカリ性でもありません。ただし過呼吸により血中の酸素量が多くなり二酸化炭素量が少なくなると水溶では酸性を示す二酸化炭素量が減ることで血液のpHは7.4より上がります。 下記の要因により、血中のpHバランスが崩れ呼吸回数の増加が起こります(その反対、呼吸回数の増加によりpHバランスが崩れるパターンも多いです)。ここでは過度な呼吸を過呼吸と呼びます(俗に言われる発作的な過呼吸とは違いますが、血中の二酸化炭素濃度の不足という点では同じです) 1. 食生活-過食による余分な食べ物の消化のために呼吸量が増加する。特に加工食品は通常、酸性であり、体は血液のpHを正常に維持しようと呼吸を増やして酸である二酸化炭素を取り除こうとする。→これが過剰な呼吸回数の原因となる。 2. 一定時間以上大きな声で話すとき、行間で大きく息を吸う。営業、電話の応対、教師などの職業に就く人は、話してばかりの日が何日も続くと疲れを感じやすい。単純に呼吸量が多くなることで過呼吸状態につながる。 ※これにあたる症状の人は、会話の際、言葉を発する前に大きく息を吸う、あくびをよくする等がみられる。 3. 精神的ストレス は、闘争・逃走反応を引き起こす。 ※人間は精神的ストレスに対し、ある意味原始的な反応を起こす。例えばその昔、野生動物に直面したときは闘争するか・それとも逃走するか素早く判断する必要があり、その為自律神経が身体を最大に緊張・活性化させる→呼吸量もそれに伴い増加する。 この自律神経の働きは現代社会においての精神的ストレスによっても引き起こされる。必ずしも生命に関わることだけに反応するものではない。 ストレスレベルの高い人は、そうではない人より多くの呼吸をする傾向にある。 4. 筋肉を動かすと大量の二酸化炭素が生成される。これにより血中pHのバランスを保つため&エネルギー生産の為に酸素が大量に必要となり呼吸回数は増加する。 ※必ずしも運動が悪いと述べているわけではありません。むしろ呼吸パターン不全を根本から解決するために運動は必須だと思われます。ただし喘息患者の多くは運動により喘息の症状が誘発されます。これは運動による過呼吸が喘息を誘発すると考えられています。呼吸パターン不全をもった患者は自らの体力レベルに沿った無理のない運動から始める必要があります。 5. 「酸素は身体に良い」という間違った認識。酸素を大量に摂取すれば疲労回復につながる、けがの回復を早める、等の間違った認識により大きな呼吸を推奨する運動、治療、レッスンがある。正しい呼吸パターンによるコントロールされた呼吸であれば問題はないが、副神経筋の過緊張がみられる患者においてそれは難しいことである。 ※ちなみに酸素を過剰に摂取したとしても、血中の二酸化炭素濃度が低ければヘモグロビンと酸素が分離しないため細胞に酸素は供給されない。発作的な過呼吸と同じで、これは二酸化炭素を多く取り入れることで解決する。 6. 喘息の症状。気道が狭くなると息苦しさを感じ、この息苦しさから逃れるために呼吸は増加する。ところが呼吸量が増加すると、前述の血中pHバランスの崩れにより症状はさらに悪化する。 ※喘息患者へのアプローチにおいては、吸気ではなく呼気、また呼気後に息を止める練習が効果的だと思われます。喘息患者は呼気後に息を止めてすぐ苦しいと感じてしまうので、無理のないように注意してください。 7. 高い気温、または室内温度、:体温調節のために大きく呼吸をする必要が発生するため室温の調節は重要である。 ※適切な気温によって呼吸回数をコントロールすしやすくなる為、肩こりの症状がある患者は睡眠時の室温コントロールが効果的だと思われます。また夏は睡眠時の着衣や布団も熱の発散に優れた素材をお勧めします。 ここでは以上7つ環境的要因の例を挙げました。 過呼吸状態になった身体はより多くの空気を吸うために僧帽筋、胸鎖乳突筋を使って呼吸を助けます。 正常な呼吸回数が1分間に8回〜12回だとすると、過呼吸状態の人は1分間に約13回〜20回の呼吸をしていると予測されます。 ということは、最低でも13(1分間の呼吸回数)x60(分)x24(時間)=18720回それらの筋が働いているわけです。 肩こりを持つクライアントに対してアプローチをする際に、呼吸パターンを適切にする必要があると判断した場合、はじめに何をすべきでしょうか?? おそらくストレッチやマッサージではなく、上記に述べた7つの環境的要因(またはその他の環境的要因)に対する介入ではないでしょうか。

近藤 拓人 2361字

構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート1/3

頑固な首・肩こりに対して、ストレッチやマッサージ(または何かしらのリリース・テクニック)をする。 一時は楽になってもまたしばらくして症状がぶり返す。そしてまたストレッチやマッサージを繰り返す。 そのようなケースで、終わりのない戦いをしていると感じることはないでしょうか? 2015年9月、セントルイスでの講義で講師のPavel Kolarは、 “Tightness is not in the muscle. It’s in the brain”~“筋緊張は筋肉ではなく頭にある”と述べました。 また以前から、Dr. Vladimir Janda(ヤンダ博士)、Karel Lewit(レヴェット博士)Václav Vojta(ボイタ博士)ら沢山の臨床家や研究者から神経学的(機能的)アプローチの必要性は訴えられています。 “構造(ハードウェア)+機能(ソフトウェア)によってより効果的なアプローチができる”ことは明白ですが、私はこれにもう一つの要素を加えることにしています。 これから数回に分けてご紹介する内容は、筋緊張に対しての『構造』、『機能』、そしてもう一つの要素である『環境』の3つを統合したアプローチ法です。 首・肩こりを例にすると、 頸部の筋群(ハードウェア)が健康的であり、その筋群を扱う動作パターン&呼吸パターン(ソフトウェア)が正しく働き、“その動作&呼吸パターンが発生する為の姿勢、アラインメント、関節のポジション、心理的状態(ここではこれらを総合して『環境』と表す)を有している“ ということです。 以下に肩こりの“構造的問題”“機能的問題”“環境的問題”の例をあげます。 構造的問題の例 1. 組織の損傷 2. 癒着、滑走不全 3. 血液循環不全 機能的問題の例 1. 筋発火パターン不全(弱化も含む) 2. 呼吸パターン不全 3. 動作パターン不全 環境的問題の例 1. 頸部・胸郭・肩甲骨のポジション 2. 姿勢不全 ※姿勢はポジションの集合体と考えるため、環境的問題とする 3. 不適切な靴、装具、接地面など 4. 心理的ストレス 今回は首・肩こりを“環境的な問題“から考察してみます。 構造的、機能的アプローチが充分な効果を発揮しない場合には、筋が“緊張しなくても良い環境”をつくることで、筋緊張との戦いを終わらせることが出来るかもしれません。 『肩甲骨のポジション不全による胸鎖乳突筋の緊張』 ※関連する筋:肩甲挙筋 胸鎖乳突筋 近位付着部:胸骨頭(胸骨柄の上縁)・鎖骨頭(鎖骨内方の1/3) 遠位付着部:側頭骨乳様突起・後頭骨上項線 胸鎖乳突筋の働き: 胸骨・鎖骨が固定されている場合:頭部の対側への回旋。同側への側屈 頭部が固定されている場合:胸骨と鎖骨の挙上 肩甲挙筋 近位付着部:C1~C4の椎体の横突起 遠位付着部:肩甲骨の上角、内側縁の上部1/3 肩甲挙筋の働き: 1. 頸部が固定されている場合:肩甲骨の挙上、肩甲骨下角の内側への回旋 2. 肩甲骨が固定されている場合:頸椎の伸展、同側への側屈 写真を見てもわかるように、肩甲挙筋は“ねじれ”ています。 この“ねじれ”によって肩甲骨~頸椎&頭蓋骨の位置を適切にコントロールしています。 では、例えば右側の肩甲骨が外転し、さらに内側縁が後退して翼状肩甲に近い状態になると“ねじれ”はどうなるでしょうか? 少しイメージがつきにくいかもしれませんが(肩甲挙筋の写真を見てください)ねじれは解かれて肩甲挙筋の肩甲骨付着部は頸椎方向に動きます。 簡単に言ってしまうと、右側の肩甲挙筋が頸椎方向に“緩んだ”状態です。 この“緩み”により、本来適度に右回旋方向に引っ張られていた頸椎は左回旋方向に向くことが容易になり、頚椎&頭部はやや左回旋位に位置します。 これが頭部の左方向への回旋筋である右側胸鎖乳突筋にレバーを与え”過剰に働きやすい環境”を作り出してしまいます(これに加え呼吸パターン不全によって胸鎖乳突筋が“鎖骨の挙上筋”としても過活動になれば更に緊張は増します)。 この左向きの頸椎によって右側胸鎖乳突筋に回旋筋としての緊張状態が続き“首こり”“肩こり”の症状が現れたとします。 このケースにおいて、 1. 緊張している右側胸鎖乳突筋のストレッチは効果的でしょうか? 2. 深部頸部屈筋の促通は効果的でしょうか? 3. 単純な呼吸パターンへの介入は最高の効果を発揮するでしょうか? (※効果的かもしれません(/・ω・)/テヘ) このケースでは、胸鎖乳突筋のストレッチ(またはリリース)ではなく、“胸鎖乳突筋が過度に働かなくても良い環境“をつくる、すなわちこのケースであれば右側の肩甲骨のポジションを正し、右側肩甲挙筋の”ねじれ“を取り戻すことが最も効果的だと考えます。

近藤 拓人 2103字

ランドマインプレス

全身を連動させて効果的にプレスの動きを行うランドマインプレスは、エリックが指導するアスリート達のほとんどに指導するエクササイズのひとつです。ランドマインプレスの、見落しがちだけれど重要なキューイングを再確認しましょう。

エリック・クレッシー 2:43