コンディショニングでミトコンドリアの魔法を解き明かし、代謝を最適化する方法 パート2/2

ゾーンベースの心拍トレーニングの価値 量、強度、回復のバランスを取る最も簡単な方法は、すべてのメタボリックトレーニング中に心拍計を使用することです。 心拍数ゾーンは、1980年代前半から定常状態の代謝トレーニングの指針として用いられてきました。特に持久力の世界では、その傾向が顕著です。 ここ2、3年、「ゾーン2トレーニング」についての議論が活発になっています:これは過去15年近くに渡り私が広範囲に著述している重要なトピックです。 これは良いニュースです、メタボリックトレーニングは、単に高強度のインターバルを何度も繰り返すだけではありませんから。 しかし、遺伝や代謝、体力のレベルに応じて「ゾーン2」が異なることは一般的に理解されていますが、それが高強度トレーニングのやり方に反映されていないのが現状なのです。 定常状態トレーニングに限らず、あらゆるタイプのトレーニングは、自分自身の遺伝、代謝、フィットネスレベル、回復力に合わせて構築する必要があるために、これは問題になります。 それが、私がゾーンベースド・インターバル・トレーニング(ZBIT)という枠組みを作った最大の理由なのです。このモデルは、様々な強度のメタボリック・トレーニングを適切に行うために、より効果的で、より個別化されたアプローチを提供するために設計しました。 スタートポイントとして、低強度から最大心拍数まで、12種類のZBITメソッドを作成しました。 ゾーンベースド・インターバル・トレーニング(ZBIT)メソッド 3つの心拍数ゾーンは、私のモーフィアス・トレーニング・システム(詳しくはこちらをご覧ください)に基づくものです。 なぜ、高強度のみでなく、それ以上のものが必要なのでしょうか? 先ほど引用した研究とは別に、すべての心拍数ゾーンで幅広い強度と量を取り入れることが重要である理由はたくさんあります。効率的な代謝エンジンを構築し、パフォーマンスと長寿の両方を推進するためには、すべての細胞や組織の中にあるミトコンドリアを開発する必要がある、というのが最大のポイントの一つです。 低強度では、主に遅筋繊維と支持組織のミトコンドリアをターゲットにしています。強度を上げ、より多くの筋繊維を動員するようになると、より多くのミトコンドリアが適合し改善するために必要な代謝ストレスを受けることになります。 また、トレーニング中に直接働く筋肉以外にも、脳や心臓、肺などにあるミトコンドリアも、メタボリックトレーニング中はしっかり働いています。また、これらは容量も異なり、細胞の種類に特化して作られているため、様々な量や強度に反応します。 メタボリックトレーニングがパワフルなのは、筋肉だけでなく、全身の様々な細胞にポジティブな影響を与える可能性があるからだと考えることには価値があるでしょう。 メタボリックトレーニングや一般的な運動が、認知機能、健康な免疫システム、病気の予防、健康寿命の延長などと密接に関係しているのは、このような理由からなのです。 メタボリックトレーニングの量と強度がどれくらい必要かは、膨大な数の変数に依存しますが、それでも一般的なガイドラインを示すことができます。 数千人のモーフィアスユーザーの50万回以上のワークアウトとデータポイントを分析した結果、フィットネスレベルが異なる複数のセグメントの人々に共通する点があることがわかりました。 12週間にわたり心拍変動が増加し、安静時心拍数が減少した人は、代謝エンジンが改善したことを示すポジティブな兆候であり、一貫して以下の範囲のどこかに収まっていました: ブルーゾーン:200~300分/週 グリーンゾーン:40~50分/週 レッドゾーン:11~14分/週 もう1つ、私たちのデータが示した非常に重要な教訓は、12週間の間に測定値が悪化した人は、改善した人よりも高い強度で過ごす時間が長かったということです。 例えば、改善が見られたフィットネスレベルが中程度の人は、レッドゾーンで過ごす時間が週15分弱でした。一方、数字が下がった人は、同じゾーンに20分近くも滞在していました。 さらに、もともと最も高レベルの体力の人は、最も少ない時間(1週間あたり11分強)を最も高い強度で使っていたのです。 先ほどの論文や、20年以上にわたる私のコーチとしての知見を総合すると、高強度に関しては、多くを達成するために必要なのはほんの少しであり、多ければ良いというわけではない、というシンプルな真実が浮かび上がってきます。 ピースを組み合わせる:ミトコンドリアがあなたを助ける方法 ここまでのところで、もしあなたがまだ何らかの形でメタボリック・コンディショニングを一貫して行っていないのであれば、行うべきだということを納得していただけたと思います。 パフォーマンス、健康、長寿を大切に考えるなら、メタボリックコンディショニングは、単に筋力トレーニングの最後に加えるだけのものではありません。 たとえあなたのゴールが、単に筋力やパワーをつけることが目的であったとしても、そのためにはミトコンドリアが駆動する効率的でハイパワーな代謝エンジンが必要なのは明らかでしょう。 生命の根幹にあるのは、環境に適合する能力であり、それはミトコンドリアの魔法とその働きから始まります。 適合力が低下し始めると、すべてが衰え始め、老化現象が貨物列車のように加速していきます。多くの点で、老化とは、順応性が徐々に失われ、私たちの細胞の完全性が失われ、真に生きる能力が失われることにほかならないのです。 加齢とともに筋肉量や筋力が低下するのは、単にウエイトルームにいる時間が短かったからではなく、代謝能力が低下すると、筋肉量を支える能力も失われるからだという研究結果もあります。 筋肉は維持するために代謝的費用の高い組織であるため、代謝機能が低下すると、私たちの身体はそれを補うために筋肉量と筋力を落とし始めるというのは理にかなっています。 これはストレングストレーニングが重要でないということを意味するのではなく、間違いなく重要なものではあるのですが、生物学の全体像と水面下で起こっていることを理解することは、正しいトレーニングやライフスタイルを決定する上で非常に重要な鍵なのです。 世の中の研究やアドバイスの多くは、パズルのごく小さな1つのピースしか見ていないのですが、私達はすべてのピースがどのように組み合わされているのかを知る必要があります。 それが私がスタートし始めた理由なのです。 今後もご期待ください...

ジョール・ジェイミソン 2835字

コンディショニングでミトコンドリアの魔法を解き明かし、代謝を最適化する方法 パート1/2

正直なところ、大学時代は生物学、生理学、有機化学の授業をこなすだけで精一杯でした。 テストに合格できるように、情報を暗記したのです。そして仕事に戻って、筋力トレーニングや身体組成の改善に関するあらゆることを学びました。 クレブスサイクルのようなものと、トレーニングの方法との間に、何の関連性も見いだせませんでした。 もしタイムマシンで当時の自分に話しかけられるとしたら、バカだなぁと自分に言い聞かせていることでしょう。 健康やフィットネスに関する本当の答えは、筋肉雑誌の記事や、トレーニングに関するほとんどの本にさえも載っていないということを理解するのに、何年もかかりました。 それらではなく、答えは私が当時ほとんど無視していた細胞生物学や生化学の教科書のページの奥深くに見つけられるものなのです。 なぜなら、DNAが環境(トレーニングも含む)とどのように相互作用して、私達の健康やパフォーマンスへと駆させるのか、あるいは遠ざけているのかを本当に理解することで、身体の真の可能性を引き出すことができるからです。 私は、大学の教科書でほとんど読み飛ばした科学と、世界のトップアスリートたちが人生で最高のシェイプになるのを手助けした方法、ひいてはそれがあなたの健康とフィットネスにとってどういう意味を持つのか、それらの点を結びつけることに全力を尽くすつもりです。 私達の知る生命の起源が、トレーニングのあり方にいかにつながっているのか 15億~20億年前のどこかで、酸素を使ってエネルギーを生み出すことができる古代のバクテリアの一種が、そうでない原始的な単細胞に飲み込まれました。細胞によって消化されるのではなく、細菌が常駐するようになり、私達が知っているような生命が可能になったのです。 そして、この細菌は時を経て、現在ミトコンドリアとして知られるものへと進化していきました。現在、あなたの身体には約1,000万億個のミトコンドリアが充満しています。合わせると体重の10%程度を占めています。 ほとんどの細胞には数百から数千個のミトコンドリアがあり、最も多いのは心臓の細胞で、1細胞あたりおよそ5,000個のミトコンドリアを持っています。 さらに興味深いのは、ミトコンドリアはもともと独立した細菌であったため、細胞核とは別に独自のDNAを持っていることです。 ミトコンドリアは生命維持に欠かせない存在であり、多くの人が知っているよりもさらに多くの理由があります。ミトコンドリアは、健康からパフォーマンスまで、あらゆる面で最も重要なカギを握っています。 それは、多くの人がミトコンドリアを単に「細胞の発電所」と考えているにもかかわらず、真実はもっと興味深いものだからです。 確かに、あなたが生み出すエネルギーの大部分はミトコンドリアで生成されますが、ミトコンドリアはそれ以上の働きをしています。 ミトコンドリアは、ATP(身体のエネルギー通貨)を生産する主要な場所であるだけでなく、以下を含む、全身の様々な重要な機能を担っています: テストステロンやエストロゲンなどのステロイドホルモンの合成 コルチゾールのようなグルココルチコイドの合成 細胞核と直接通信して遺伝子発現を制御 炎症プロセスおよび免疫機能の制御 カルシウムシグナリングと筋収縮の制御 フリーラジカルの生成 長寿に関連するサーチュイン酵素の活性化 細胞の成長・増殖 細胞死(アプトポス) 熱生産 なぜ、細胞の一つの構成要素が、代謝や生命維持に不可欠な多くの機能を駆動しているのでしょうか? 一言で言えば、「効率」です。 エネルギーの生産と、エネルギーの使われ方(エネルギー消費)の調節を、細胞の同じ構成要素の中で結びつけることは、非常に効率的です。 それが、ミトコンドリアを代謝のパフォーマンス、健康、長寿の重要な一部とします。 ミトコンドリアは、単なる無心なエネルギー生産工場ではありません。 そうではなく、常に細胞核に指示を出し、調整し、協力して、入ってくるすべての情報を統合し、身体全体でエネルギーを消費する方法を調節しているのです。 これが、ミトコンドリアをストレス反応管理の中心的な存在とし、遺伝子が環境と相互作用し、自分という人間を形成する方法を管理するものとします。 このプロセス全体と、その役割を果たす様々な遺伝的経路は、ある特定のタスクを達成するための終わりなき努力の一部です:環境におけるストレスに常に適合することで生命を維持するというタスクを。 この適合は、様々な形で行われます。 身体にかかるストレスの種類と時間によって、これらの適合は、筋力、免疫力、認知力などの重要な機能を駆動する、より効率的で高エネルギーな代謝につながる非常にポジティブな変化まで様々なものがあります。 あるいは、身体が耐えられる限界を超えた慢性的なストレスに直面すると、逆の方向に進んでしまうこともありえます。 ストレスが大きすぎると、時間の経過とともに、代謝やミトコンドリアの機能不全、筋力や筋肉の低下、炎症の増加、様々な一般的疾患のリスク増加などの問題が発生します。 だからこそ、超強力なミトコンドリア・マシンを作ることが、心身のあらゆるパフォーマンスを向上させるだけでなく、人生のストレスから身を守る唯一最善の方法となるのです。 といったところで、そのマシンを確実に作る方法についてお話しましょう。 ミトコンドリアの量と質を高めるために、メタボリックトレーニングが重要な理由 過去20年以上にわたり、研究とフィットネスにおける私自身の個人的な経験の両方において、メタボリックコンディショニングが、より長く健康的な生活とより良いパフォーマンスを推進するためのミトコンドリアマシンを構築するための、唯一で最も強力かつ重要なツールであることを一貫して示しています。 なぜなら、このようなトレーニングは、細胞が運動するために必要なエネルギー量を劇的に増加させるため、細胞に高い代謝ストレスを与えるからです。 次に、このストレスは、代謝効率とエネルギー生産能力を向上させる遺伝子発現の変化をもたらすシグナル伝達経路を誘発します。 驚くなかれ、ミトコンドリアはこのような変化の中核を様々な方法で担っているのです。 メタボリックトレーニングは、細胞内のミトコンドリアの数を増やすことは多くの人が知っていますが、その質も高めるということはあまり知られていません。 これは、ミトコンドリア品質管理(MQC)と総称される、以下のような複雑なプロセスによって起こります: ミトコンドリアの融合が進み、筋繊維にまたがる細長いミトコンドリアの広大なネットワークが形成される(下図参照) ATPの大部分が作られる電子伝達系(ETC)の効率を向上させる遺伝子を制御するサーチュイン酵素の活性化 機能低下したミトコンドリアのマイトファジー(分解・リサイクル)の増加 画像の出典はこちら:Rafael A. Casuso, Jesús R. Huertas, The emerging role of skeletal muscle mitochondrial dynamics in exercise and ageing, Ageing Research Reviews, Volume 58, 2020, 101025, ISSN 1568-1637 これらの変化は、ミトコンドリアのマシンをより良く、より高性能にするものです。同じエネルギーを作るのに、より少ない酸素で済むようにします。 これはまた、必要なときにエネルギー生産をさらに高いレベルに引き上げる能力を持っていることを意味します。この能力は代謝予備と考えることができ、フィットネスの目標が何であれ、非常に価値のあるものです。 またさらに、より良いインスリン感受性、脂肪酸化の促進、炎症レベルの低下、DNA損傷(核とミトコンドリアの両方)の減少など、長寿やパフォーマンス向上のためのさまざまな利点が得られます。 しかし、ここで重要なのは、これらの非常に重要な変化は、代謝性ストレスの量を適切に設定することによってのみ起こるということです。 スーパーミトコンドリアを作るのに威力を発揮する代謝ストレスも、やり方を間違えると逆にミトコンドリア機能不全を引き起こすことがあります。 最近の論文では、高強度のメタボリックトレーニングを、身体が回復できる量以上に行った場合に、どのようなことが起こるかを調べています。 研究の最初の3週間、研究者達は高強度トレーニングの量を増やし、同時にミトコンドリアと代謝機能全般に関するさまざまなマーカーを測定しました。 4週目には、回復のためにボリュームを大幅に減らしました。 この図からも明らかなように、高強度のメタボリックトレーニングが多ければ多いほど良いというわけでは決してありません。身体が必要とする量には上限があり、それを超えるとミトコンドリアや代謝全体に影響が出ます。 そのため、ミトコンドリアと代謝性能を高めるためには、全体的に適切な量の代謝トレーニング、すなわちボリュームと強度の配分を得ることが絶対に重要なのです。

ジョール・ジェイミソン 3977字

背骨は柱ではない

ViPR創始者であり、インスティテュートオブモーションの代表であるミショール・ダルコートが、背骨のテンセグリティー構造を解説します。英語でも日本語でも柱(Column/脊柱)と表現される背骨ですが、柱ではなく、柔軟性も弾力性もあるテンセグリティーなのです。

ミショール・ダルコート 1:51

機能解剖学の概念化

レニー・パラチーノが、翼状肩甲/運動不全という背景における機能解剖学のコンセプトを語り、真の機能とは個々の筋肉ではなく、統合された軟部組織複合体全体から生み出されるものであるということを解説します。

レニー・パラシーノ 6:36

機能的フィットネスで肩の痛みを解消する

率直に言いましょう。どんなフィットネスプログラムであれ、新年最初のプログラムであっても、怪我はプログラムを脱線させる一番の原因になります。クリニックで仕事をしていたときも常に目にしたものでした。新年の新しいプログラムも、比較的すぐに私のところ来ることになったでしょう。大きな問題となるものはいつも肩の痛みでした。 新しいフィットネスの目標を達成したいと思っている人々は、良かれと思って、いかに身体を構築するのかを考えるのではなく、いかに休暇中“悪かった”自分自身に罰を与えるのかを考えて、腕立て伏せ、ランニングへ直行してしまうのです!短い数週間の間に、動きに焦点をあてるのではなく、筋肉を肥大させることを試みたために怪我をしてしまった新しいクライアントでクリニックはいっぱいになるでしょう。 今日のフィットネスと治療分野で運動について話す時、私たちがいまだに筋肉について話をしていると人々は誤解しています。事実は、肩の痛みを取るためには三角筋や回旋腱板の筋肉を使うと考える人たちよりも、もっと沢山のことを私たちは考えているのです。肩の痛みと機能的フィットネスがこのよくある問題にどのように取り組むのかは、多くの人にとってかなり関連性があるものであると考えました。本当の肩の痛みに取り組むにあたり、トレーニングプログラムの多くが間違ってしまうのはどこでしょうか? 肩は被害者である 理学療法士であるダイアン・リーは、“被害者は犯罪者よりも常に大きく叫ぶ”という素晴らしい表現をしています。どういう意味でしょうか?彼女が指摘していることは、私たちはどこかが痛むと、痛みのある場所が問題を引き起こしている場所であると考えることが多いということです。しかし、ファンクショナルフィットネスや肩の痛みのような問題をみればみるほど、すぐにもっと違ったものが見えるようになるでしょう。 すべてが下から上に繋がっていることを理解しているのであれば、私たちの身体のすべてはどれだけ強い基盤を持っているのかに基づいているのがわかるようになります。肩の痛みのような問題を見るときのように、身体の上部になればなるほど、私たちが考慮するべき関節や部位は増えます。トム・マイヤーズの有名な“アナトミートレイン”のようなコンセプトを見るポイントは、動きの中で身体が実際にどう相互作用しているのかを理解することです。 足がどのように頭まで繋がっているのか、コアや上半身でさえ、足から上に向かって起こることにどれだけ影響を受けるのか分かるようになります。 肩の位置が身体のどれほど上部にあるのかを見てみると、足、股関節、コアの基盤によって肩は影響を受けていることになります。このことは、ストレングスコーチであるマイク・ボイルと、理学療法士であるグレイ・クックの“ジョイントバイジョイントアプローチ”のような考え方について討論した際に多くのことをカバーしています。身体は繋がっているという考え方は、ファンクショナルトレーニングの基礎であり、私達の身体トレーニング方法に対する理解を変えました。 肩を単独で見る、身体を孤立化させて動かすのではなく、エクササイズを通してトレーニングが身体をつなげるのを見たい。つまり、足と手の力強い基礎を構築することです。トレーニングにおける手と足の重要性について、ジョシュはとても多くのことを話しています。なぜなら、手と足はとても重要だから!有名な理学療法士であるギャリー・グレイは、“チェーンリアクション/運動連鎖”というコンセプトを作り出しました。身体に加わった力がどのように身体の中の大きな連鎖を通り、頭からつま先まですべてに影響を与えているかの詳細です。トム・マイヤーズが話す筋膜ラインは、足や手にあるものが、関係なさそうに見える身体の部位にどのように影響を与えるのかを説明している点でかなり似ているコンセプトでしょう。それが、肩の痛みはまさに肩にあるわけではない理由なのです。肩に機能不全が見られる時でさえ、単独ではなく、統合して見るべきなのです。 よい基礎を構築する 我々の教育プログラムの最も独特な側面は、彼らが習う“新しい”エクササイズであると考える人もいます。トレーニングには大きな影響を与えるパワーは、ちょとしたディテールにあるのが現実でしょう。。例えば、肩の痛みを引き起こさない方法を教え、身体をより賢く使うことを理解してもらうために、私達はハーフニーリングやトールニーリングのポジションを好んで使います。 私たちはそれらのポジションに入ることができますが、積極的に地面を利用しようとしない限り、その効果はとても小さいものになってしまいます。足を使って地面を押し出すことで、足部、下肢、臀部とコアを使い基盤を作り始めることが可能になります。足部をリラックスさせてしまうと、肩を働かせるための基盤がなくなり、不必要に肩を独立させ、実際に肩の痛みを増加させることもあります。 DVRTマスターのAnnmarie Licateseが、地面から上に向かっての肩の問題の解消方法を示しています。このドリルは、肩の痛みがある多くの状況の強力な解決方法になります。 このような基盤が身体が必要とすることの半分を助けてくれます。手を使うことが残りの半分になります。私たちが使用する器具に対しての、特化したテンションテクニックを作りだすことが、肩だけでなく、身体全体を通してストレスを受けることを可能にし、すぐに肩の痛みを減少させます。この負荷を伴うテンションとは、腱板を発達させ、上半身の可動性を向上させ、即座に筋力を向上させる方法なのです! プッシュダウンであって、アウトでもアップでもない 10代の水泳選手だったころから肩の痛みと戦ってきた経験から、傷害がフラストレーションや、強化トレーニング意欲の減少を引き起こすのはわかります。私がジョシュに出会った頃、私ができていたことは有酸素運動とほんの少しのストレングストレーニングのみでした。それは、自身が怪我をすることにかなり臆病になっていましたし、ストレングストレーニングは怪我をするためのものなのだろうと思っていたからです。 ジョシュは、ウエイトを上や外に押すことに力を入れすぎないという要点だけでなく、身体を下に向かって駆動するということを私に教え、大きな変革を与えてくれました。ほぼすぐに肩の痛みが減少しただけでなく、プッシュアップまで始めることができるようになったのです!私は、ハイレベルのアスリートであったにもかかわらず、肩の痛みなしに競技することを本当に苦慮していたのです。 プッシュアップする、あるいはプッシュアウトするのではなく、どのようにプッシュダウンするのかを教えるのは難しいものです。プレスアウトが私たちのトレーニングプログラムの基盤になっているのは、ここに理由があります。外から見るとよくわからないエクササイズのように見えます。胸のエクササイズなのか、何をしているのか?プレスアウトの本当の目的は、足を下方に押し、広背筋を刺激するために手に緊張を作りだし、肩ではなく、足、コア、広背筋の繋がりを使ってプレスすることを教えることです。 一旦このテクニックを習得し始めると、ウエイトをより垂直方向に動かすことで難易度を上げていくことができます。多くの人が、そうすることで肩の痛みが増してしまうだろうと思うのですが、事実は、足、コア、広背筋の使い方を習うと、肩の可動性はその動きができるところまで向上し、プレスすることで得られる身体全体への価値を高めることできるようになります。 これらの基本原則が、私たちが用いている動きに、そして使用している道具にどう影響しているのかわかっていただければ嬉しいと思います。

ジェシカ・ベント 3250字

呼吸の構造と機能

アリゾナで開催されたトーマス・マイヤースのアナトミートレイン筋膜解剖コースのレクチャーから、人間の呼吸の働きと、呼吸に関わる構造に関しての興味深い話題をご紹介します。

トム・マイヤーズ 10:19

私たちの患者には、治療が必要なのでしょうか?それとも、もっと大きい容量のカップが必要なのでしょうか?

私自身を含め多くの人たちが痛みと損傷を理解するために、いくつかの事柄を簡潔にまとめようと思います。痛みをとらえるために最も分かりやすい方法の一つは、カップの比喩です。間違いなく欠点はありますが、治療の“全体像”を見るのに役立ちます。カップの比喩では、私たちの生活の中にあるストレス要因や負荷などすべてが、カップの許容量を超えると痛みが起きると考えます。つまり、溢れ出すと痛みを感じるというわけです。 あなたのカップには何が入っているのか? ストレス 組織の損傷 睡眠不足 心配 恐れ 不安 習慣 痛みは、あなたにとって有害であるものすべて(あなたのカップの中味)と快適なものすべて(カップの容量を増やすこと)とのバランスです。 これは、2つの方法で助けられるという、すぐに実施可能な比喩と言えます。 1) カップの中にあるストレス要因や負担になるものを減らす。 2) もっと大きなカップを作る。
 このカップの比喩は、基本的に、生活の中のストレス要因に対して、前向きに適応できない時に私たちは痛みを感じるということを示しています。また、ストレス要因は、身体にかかる物理学的負荷だけではないことが分かります。つまりX線画像で見つけられるような退行変性に限ったことではないのです。(これについて詳しくはこちら)どのぐらい持ち上げたり曲げたりする動作をしなくてはならないかということだけでもありません。また、心配や恐怖、落ち込み、痛みに対する破局的思考、睡眠不足、病歴、家族、仕事など他のストレス要因もカップに入っているかもしれないことに気がつきます。 これらのストレス要因は、本質的に悪いことではなく、実際、生活におけるこのようなストレスが触媒となって私たちに反応を起こしてくれます。このようなストレス要因が、私たちを強くし、耐久性を持たせ、上手に対応できるように、レジリアンシー(回復力)を構築してくれるのも事実です。古くからのことわざで「何かしてもらいたければ忙しい人に頼むとよい」というのがあります。 じっくり考えるべき問いかけ・・・痛みに結びつく要因で、治療されるべき要因はこれまでにありましたか?私は、いつもこの質問を投げかけてから私の講義を始めます。驚くことに、治療を必要とする痛みの原因や症状は、ほとんどないように思います。 たとえば、痛みに関連していると通常考えられている次のような生体力学的要素を私たちは治療しますか、また治療しなくてはなりませんか? MFD脂肪浸潤 腹横筋の発火のタイミング 内側広筋の発火のタイミング カッティング動作中の膝の外転モーメント 膝関節炎における内反モーメント 膝関節炎 関節唇断裂 回旋腱板断裂 腱症 骨棘 椎間板ヘルニア 肩甲骨の運動学 あなたがこれらを治療する必要はないと、私は考えます。確かにこれらは存在し、痛みに関与していることがありますが、治療後に痛みがなくなり機能が回復しても、これらが消えることはありません。そこで、カップの容量を大きくしてみたり、カップの中のものに対して耐えられるように訓練してみたりすればどうかという考えになるのです。これに関連するトピックを扱っているブログがあります:こことここ。 心理社会的影響も同様です 痛みに対する破局的思考も、コアの弱化についての信念、熟考、不安、落ち込みなども同様です。これらのすべてが痛みとリンクしていて、問題に関与していることがあります。しかし、これらすべてを治す必要はないのです。 私たちは耐えることができます。 私たちは適応することができます。 すべてのことに共通していますが、私たちは偏った考え方に挑戦する必要があります 私たちはストレスに適応可能であるということから、生活の中で発生するストレス要因を変える必要がないかもしれませんが、それらに取り組む努力をする価値はあると私は思います。実際、何が関連して、何を変えなければならないのかが定かではないということが、痛みや他の全てのことの難しいところでもあるからです。 ですから、臨床で自分に問うべき質問は: 具体的に何かしなければならないことがあるか? または 対処しなければならない具体的なことがあるか? これらの質問は似ていますが、異なります。ひとつは問題に対処する方法が1つまたは2つしかないと言い、もう一方は、できる限り良い状態にするために対処すべき痛みの原因が確実にあると言っています。ふたつの例を挙げてみます。 1) あなたの患者がアキレス腱障害を患っているとします。あなたは、トレーニング負荷をある程度減らし、アキレス腱に適応力をつけるために、活動への耐久性を構築し、トレーニング負荷をゆっくりと増やしていくことによりアキレスに特定の負荷を追加しなくてはならないと考えるでしょう。この場合、あなたが腱症を実際に“治療”するかどうかはわかりませんが、その人がその腱症に耐えられるようになるために、かなり特定されたこと(アキレス腱への負荷)が必要となったのです。
 2) あなたが治療に関わっている腰痛を患っている患者の問診をし、状況を把握した後、サイクリングやガーデニング、ランニングを再開することに効果があると判断します。2年間もこれらを一時的に中断していました。しかし、あなたがた二人とも、再負傷するのではないかと彼らが異常なほど恐怖感を持っていることに気がつきます。脊柱にストレスを与えてはならない、再び始めたいと思っていても、これまでしてきたような運動は椎間板にダメージを与えてしまう、と完全に思い込んでおり心配になります。サイクリングやガーデニング、ランニングだけでも効果があるかもしれませんが、怪我に関するこれらの信念にまず対応し、脊柱の捉え方を再概念化することの方が先決かもしれません。または、それらの有意義な活動の再開中でも構いません。他の意味での治療を施す前に、彼らの信念を最初に“治療”した方が、役に立つという一例です。 
最後に、治療を改善するためのもう一つの重要な質問は:
 大きなカップを作るにはどうすればよいか? これについては、少しズルをします。一緒に取り組む相手にたくさんのヒントがあると考えます。患者のストーリーを聞いて、しっかりそれを理解したならば、痛みの原因となるものが何か、痛みがどのように作用するかについてあなたの意見を説明します(患者の特定のストーリーに関連させながら)。次に彼らがより大きなカップを作るために何ができると思うかをたずねてもいいでしょう。もちろん、その前にコップのたとえ話を伝えておき、それから大きなコップを作るために何ができる気がするかをたずねます。これは、キーラン・オサリバンが“あなたにとって良いことは何ですか?”とたずねるのと大変よく似ています。または、デビッド・バトラーとロリマー・モーズリーが“あなたのSIMs (Safety in Me:私の中の安全)は何ですか”とたずねるのに似ています。 また、次のような大きな質問を投げかけてみたらどうでしょうか: あなたはどうすればより健康になれるのか? あなたがより健康になるために私がどのように手伝えるのか? 私が、この“(痛みを)落ち着かせ、(カップを)作り直せ”というアプローチで気に入っていることは、これを行う方法がたくさんあることです。だから一見互いに非常に異なったアプローチをしているかのように見えるセラピストでも、臨床で同じような成果を出しているのはこれが理由だと思います。この見方により、みなさんがより大きなカップを作れるように、私のサポート力の向上のため、異なる業種の専門家からさまざまなコースを受講し続ける必要があると思っています。まとめとして、カップを大きくできる領域と痛みの緩和に役立つ領域を列挙します。 認知要因:肯定的な信念、高い自己効力感、認知の柔軟性、受け入れ、マインドフルネス 感情的要因:ストレス回復力、不安の少なさ、ポジティブな気分 対処反応:適応的で柔軟な対処 社会的要因:ポジティブな文化的要因、協力的な家族および職場環境、経済的安心感、教育 身体的要因:身体への段階的な負荷、コンディショニング、適応できる機能的行動 ライフスタイルの要因:身体的に活動的であること、健康的な睡眠、健康的な体重、非喫煙者

グレッグ・リーマン 3526字

風船の膨らませ方 パート3/3

3)息を吐いて風船を膨らませる、というプロセスのまま1ヵ月経ってしまいましたが、皆さん息を吐き切ることは出来ましたか?笑 一ヶ月もあったのだから、息を吐き切れて当然だろう!と思われるかもしれません・・・すいません!!ですが、意外と息を吐き切るという事が難しいのはお分かりいただけましたでしょうか?残気量(最大まで息を吐きだし終えた時肺に残っている空気量)をゼロにすることはできませんが、風船を使って息を吐きだすと普段の呼吸よりより多くの空気を吐き出せる感覚があると思います。それでは次のプロセスに行ってみましょう!次は息を吐き切ったところで、息を止めます(!!) 4)息を吐ききったら3~5秒静止する 風船は膨らませるために膨らませるのではない、という事を以前のアーティクルで書きました。膨らませるという事は息を吐くという事なのですが、息を吐くことはもちろん重要です。しかし、息を沢山吐いてから吸う、という事の為に風船を膨らませているのです。どういうことなのか、わけがわからないかもしれませんが、まずは息を吐いた後のプロセスから見ていきましょう。 風船を膨らます際、気を付けていただきたいのは息を吐き切ることです。理論上どんなに頑張っても息を完全に吐き切ることは不可能ですが、限りなくそれに近いくらい息を吐けるのが風船のいい所です。普段息を吐く際に動員される呼気筋だけでなく、胸横筋などの筋肉の動員も活発化されて、肋骨の内旋や胸郭の縮小化を促します。横隔膜は弛緩して、縮小していく胸郭のスペースと横隔膜の上昇により、肺の空気は押し出されていきます。 本当に吐き切れていますか?もう一度確認してみましょう。横に寝た状態で風船を膨らませている方は、自身の肋骨の位置を確認してみて下さい。肋骨はまだ出っ張った状態ではありませんか?みぞおちに水をたらしたらお腹の方向に水が流れていった、という状態(実際にやらなくてもイメージでいいです笑)であれば胸郭が腹腔よりも高い位置にあると考えられ、まだまだたくさん胸郭内に空気が残っていることを示唆しています。反対に、胸郭とお腹が一つの平らな面となっていればおそらく、十分に空気が吐けたと考えていいでしょう。 そして、ここで息を止めてしまいます。えっ?息を止めるって、息を吸ってからしないとだめなのでは?と思うかもしれません。いいえ、息を吐き切った後に息を止めてしまうのです。できれば5秒。なるべく3秒止めます。最初に息を吐いた際に膨らませた風船から空気が戻ってこようとします。しかし、息を止めます。しかも指で風船の首をつまんで閉じたり、歯で風船を噛んだり、唇で風船の口を閉じたりしないでください。 どうやって??舌を上あごの上につけます。喉の奥を舌で覆うようにすれば口からの気道を閉じることが出来ます。口は風船から戻ってくる空気で膨れている状態かもしれませんが、そのままで大丈夫です。 何故息を止めるのか気になる人がいるかもしれません。このプロセスはとても大事で、息を吐き切った後すぐに吸わない事は息を吐き切った状態を維持するという事を意味します。 一つは息を吐き切ることのあまりない呼気筋群をしっかりと活動させ、どの状態が息を吐き切るという事なのか認識させるという事です。特に内腹斜筋や腹横筋といった肋骨を内旋させる筋肉に加えて、強制呼気時に活躍する胸横筋などの活動を促します。 もう一つは息を吐き切る際にリラックスしているはずの横隔膜に息を止めてしまう事でさらにリラックスする時間を与えるという意味合いもあります。普段肋骨が外旋して横隔膜が常に緊張状態にある(おそらく精神的にも常に緊張状態にある)場合、ほとんど横隔膜がリラックスする時間も感覚もありません。ですから、風船で息を吐き切った時ぐらい、リラックスさせてあげましょう。 > 5)息を吸う 昔ドラゴンボールのアニメで孫悟空が元気玉を繰り出すか、繰り出さないかの瀬戸際で1話(30分)が終わってしまった時がありました。ここまで読んでいただいている皆さんは、いったいいつになったら息が吸えるのか?と不安に思っているかもしれません。安心してください、やっと息が吸えますから。 息を吐き切って3~5秒静止した後、息を吸います。この際必ず鼻から息を吸うようにして下さい。当たり前ですが口から吸えば風船の中に貯めた、先ほど自分が吐いた息を吸う事になります。息を吐いてから3~5秒静止している際に舌を上あごの上に当てて風船の空気が戻ってくるのを防いでいました。これを利用してそのまま風船からの空気が気道に戻ってこないようにしつつ、鼻から吸うのです。 沢山息を吐いて、吐き切って、さらに静止した後、やっと吸える空気です。思い切り息を吸いたいところですが、あまり力まないように、優しく吸いましょう。思いっきり力いっぱい息を吸ってしまうと様々な副呼吸筋が代償を起こします。例えば肩や首の筋肉も稼働して肩甲骨が挙上してしまうかもしれません。正しい呼吸パターンを身につけるために風船を膨らませるので、代償を含む吸気運動は避けたいですよね。肩や首の筋肉群に過剰な代償が内容に注意して息を吸いましょう。 そしてよくあるパターンとして挙げられるのが体を伸び上がらせながら吸うケースです。2)の風船を膨らませる体勢を整える、の欄にもありましたが椅子に座っている状態の場合、少し浅く腰を掛けて背中をかがませたのを覚えていますか?かがむことで肋骨の内旋を促しやすくなるというのが目的ですが、ここまで息を吐いて、静止して、息を吸う際にかがんだままにしておいてください。伸び上がって息を吸いたいと思いますが、それでは普段の呼吸パターンと変わりません。伸び上がる=伸展するという事ですが、頚椎や腰椎の伸展で息を吸っていませんか?1日に15000~20000回行われる呼吸の度に頚椎や腰椎が伸展していたとしたら、このパターンは改善されるべきです。 沢山息を吐きました。肋骨は内旋され、胸郭は縮小されました。ここで伸び上がってしまえばせっかく縮小された胸郭や内旋した肋骨は自由に普段のポジションに戻ってしまいます。それでは風船をやっている意味がなくなってしまいます。どうか少しかがんだポジションのまま、肋骨は内旋したまま、胸郭は縮小したまま息を吸ってみてください。胸郭が縮小しているんだからどこにも空気が入っていかないじゃないか、という意見もあると思います。そうです、普段空気が入っているところには空気が入っていきません。胸郭の後ろ、後縦隔と呼ばれる部分に空気が入り、拡充されるのです。もし誰かが風船を膨らませているのであれば、息を吸った際に肩甲骨と肩甲骨の間に手を置いてみてください。正しく後縦隔に空気が流入しているのであれば置いた手に肋骨の広がりを感じるはずです。 6) 再び息を吐いて風船を膨らませる やっと最後のプロセスまでたどり着きましたね。時間がかかってしまってすいません。もう息も吐いて風船が膨らんだし、3-5秒静止することもできたし、ついでに鼻から息を吸う事も出来ました。後はそれを繰り返すだけでしょ?と思っている皆さん、その通りです笑。しかし、このプロセスが一番難しいかもしれません。最後の難関です。身体を伸び上がらせずに内腹斜筋や腹横筋で肋骨を内旋させて、拮抗させた状態で息を吸えたら、次は風船の中にある空気に負けないように息を吐いていかねばならないのです。最初に息を吐いて風船を膨らませた時とは大違いであることに気づきましたか?確かに風船は一番最初に息を吐くときが一番『きつい』です。しかし、2番目に吐くときがおそらく一番『難しい』のかもしれません。2番目に息を吐くときは最初に吐いた空気が風船の中に残ったままの状態ですよね?風船のゴムの力によってそれらは口や気道の方へ戻ってこようとしています。そして舌を上あごにつけて蓋をすることで鼻から息を吸えるように気道を確保しました。その舌を下して、肺から空気を吐いていくのです。風船からの圧力に負けないようにしなければ、ちょっと笑ってしまうような音を立ててあなたのクライアントさんが空気にもてあそばれる瞬間を目撃することでしょう。それはそれでなんとも和やかな雰囲気になるので、1度はいいでしょう。でも呼気筋群を活用して力強く息を吐いてみてください。この際唇を真一文字に結ばないように気をつけながら。きっと風船はさらに大きくなってくれるはずです。 そしてまた同じ手順で息を吸い、さらに圧力を増した空気に負けないように息を吐いて、どんどん風船を膨らませましょう。おそらく一般的な風船であれば4-5回息を吐いたらパンパンになると思います。それで十分です。一度口から外して空気を抜いてしまいましょう。可能であれば、これを3セットほど行ってください。これだけゆっくりと呼吸をすれば1分当たりの呼吸数が減り、吸気状態から抜け出せることでしょう。 いかがでしたでしょうか?PRIの視点から長い事風船の膨らませ方について解説してきました。ここまで出来るようになれば、あなたも甲子園球場のスタンドでスターになれますよ!PRIのエクササイズは必ず風船を膨らませるわけではありませんし、むしろ大方のエクササイズは風船を使いません。しかし必ず呼吸がエクササイズに含まれています。もしこれらの呼吸が最適化されていなければ、どんなにパワフルなPRIのエクササイズも効果が半減してしまいます。ですから、まず呼吸を整えてZOA(Zone of Apposition)を確立するべきなのです。また個人的にはPRIのエクササイズに縛られなくても、風船を膨らませることはたくさんのメリットがありますし、何より童心に帰ってなんだか楽しいものです。風船を膨らませた後の空気が抜ける音だって、たまりませんよね笑。息を吐くことで副交感神経の働きを促進することが出来ますが、笑うことだって息を吐くことですから。みなさんも風船を是非膨らませてみてくださいね! *写真は弊社のワークショップより。

大貫 崇 4196字

風船の膨らませ方 パート2/3

先月のアーティクルでは上手に風船を膨らませる前に行うべき、風船のくわえ方について解説していきました。すいません、皆さんには風船をくわえてもらったまましばらくお待たせしてしまいました笑。今回はそこからもう少し突っ込んで風船を膨らませる体勢、それから実際に息を吐いていくプロセスについて解説していきますね! 2)風船を膨らませる体勢を整える このプロセスは非常に重要です。やみくもに風船を膨らませばいいというわけではない、という理由はここにあります。風船を膨らませる体勢はいくつかありますが、基本的には仰向けに寝た状態(90-90ポジション)、座位、そして立位になります。時には四つん這いで風船を膨らませることもあります。重要なのは吸気時に腰をそらないポジションであることと、すこしかがんで正面をみるという事です。吸気時に腰をそってしまう人が多いので、その点では仰向けのポジションは一番サポートが多く、背中を反りにくい1番簡単なポジションです。次に座位、立位と難易度が上がっていきます。立位の際は壁などに背中をもたれることでサポートを追加してもいいでしょう。 仰向けで寝ている場合、壁に足をつけ膝を90度曲げ、股関節も90度屈曲させた状態になります。このポジションを90-90ポジションと言っていますが、言い方は多々あるかと思います。布団に寝るような形で仰向けになってもいいですし、膝を曲げて仰向けに寝てもいいでしょう。しかし、おそらく90-90のポジションが一番腰椎をニュートラルな状態にしやすいと考えられます。さらに可能であればかかとを履いている靴のヒールとソールの角に当てつけるように、かかとで壁を下に押すことでハムストリングを起動させて骨盤の安定を図ります。足の位置は壁からずれませんが、少しでもいいのでハムストリングを起動させたいのです。足の裏が壁(=つまり地面)に設置しているという感覚を持ってもらうことが重要なので、壁から足が離れることは避けたいですが、どうしてもかかとが感じられない人には椅子などを使って下に押し付けてもらうか、私の場合は壁沿いに自分の足を入れ込んで、クライアントさんや患者さんに自分の太ももをかかとで下に蹴ってもらうことでかかとを感じてもらっています。 ここまでは一般的に理解ができると思いますが、ここでさらにPRI的な要素を加えるとすると、左手で風船を支え、右手は万歳して床に置かれているか、天井に向かってリーチしていく状態になります。最初は左手で風船を支え、右手を万歳して床に置いておくポジションがいいでしょう。こうすると右の胸郭先尖に空気が入っていくのを誘導しやすくなります。 座った状態の場合は、椅子に浅く腰を掛けます。膝と膝の間に小さなゴムボールや巻いたタオルを挟むといいでしょう。少し骨盤を後傾させ、背中をかがめます。目線は正面において風船を膨らませていきます。 あれっ、と思った方もいるかもしれませんが、そうです。背中をかがめて胸椎が少し丸まったような状態をつくっていいのです。胸を張る必要はありません。むしろいつも胸を張っていて過吸気(Hyperinflation)の状態になってしまっているので、風船をするのです。少し背中を丸めることでたくさん息を吐く準備をしましょう。 立位の場合は少し難しいですが、壁をサポートにして立ちます。壁からかかとを20センチほど話して立ちます。そのまま膝を曲げながらお尻を壁につけます。続けて背中の下半分を壁につけてしまいます。腰椎の伸展がかなりきつい方は難しいと思いますが、腰椎も壁につけてしまいます。つまり「骨盤の後傾」と言われている形です。クライアントさんや患者さんに「骨盤を後傾させてください」と言ってもいつも伝わらないので(笑)尾てい骨を前に向けてください、といったような言い方をしたりしています。そして背中の上半分は少し丸めたまま正面を向きます。左手で風船をもち、くわえて風船を膨らませる準備は完了です。 次に3)息を吐いて風船を膨らませるプロセスを見ていきましょう。 風船を膨らませる体勢が整ったらいよいよ風船に空気を入れていきます。口を大きく膨らませて、思い切って空気を入れていくといいですが、あまり力みすぎないよう気を付けてください。新しい風船は一番最初に膨らませる時が一番大変です。口を真一文字に結ばずにストローの先をくわえるように、空気を吐き出していってください。またくわえる前にびよーん、びよーんと前後左右に風船を手で伸ばしておいてあげると多少膨らみやすくなります。 おそらく背中をそりながら息を吐く人はなかなかいないと思いますが、どちらかというと背中を少しずつ丸めていくように息を吐いていってください。そうすれば、左右肋骨の下あたり、腹斜筋や腹横筋などが活性化するのが感じられるかもしれません。腹直筋の過緊張は避けたいところです。息をたくさん吐いていくにつれ、胸骨が下に、そして背中側に沈んでいく感覚もわかるはずです。 最初は思ったように息が吐けないかもしれません。苦しくなってすぐに息継ぎをしてしまうかも知れません。しかし、そこは我慢してできるだけ沢山の空気を送り出しましょう。思ったよりも肺の中に空気が入っているのがわかると思います。背中を丸めつつ息を吐きます。繰り返しますが、力みすぎないように気を付けましょう。もともと息を吐くのは力を抜くためにやっているのですから、副交感神経に作用するようにリラックスしていってください。 そして次のアーティクルでは風船を膨らませるにあたって一番重要な、吸うというところに焦点を当てて解説していきたいと思います。

大貫 崇 2414字

風船の膨らませ方 パート1/3

最近少しずつですが、呼吸に関してこの業界で注目が集まっているように思います。そしてPostural Restoration Institute(PRI)の教育コーディネーターをさせて頂いて関係もあって、風船を膨らませるエクササイズを取り入れている方を見る機会が増えています。しかし、やみくもに風船を膨らませばそれでいい、効果が出る、というわけではありません。風船を使った呼吸エクササイズは非常にパワフルで、筋骨格系に与える影響だけでなく、神経系や精神的、生化学的な部分まで影響を及ぼします。そこで今回はPRIの視点から見た風船の正しい膨らませ方について記事を書いてみたいと思います。 風船を膨らませるにはいくつかの手順があります。 1) 風船をくわえる 2) 風船を膨らませる体勢を整える 3) 息を吐いて風船を膨らませる 4) 息を吐き切ったら3~5秒静止する 5) 鼻から息を吸う 6) 再び息を吐いて風船を膨らませる そして3)から6)のプロセスを4-5回繰り返せば風船はちょうど一杯になるかもしれません。膨らませている途中に風船が大きくなってきて割れるのが怖いですが、思ったより風船は大きくなりますよ。 ところで、風船は膨らませるために膨らませるのではありません。わけのわからないことを書いている(!)と思われるかもしれませんが、実際にそうなのです。確かに風船の中に息を吐いていくことは非常に重要なプロセスですが、息を吐いた後が肝心なのです。風船を膨らませることによって、どのように息を吸うのか学ぶことができるのです。 まずは1)の風船をくわえる、というところから解説していきます。 風船をクライアントさん、または患者さんに渡すと一番最初にすることはくわえることです。ほぼ100%くわえます。ですから、風船をくわえる前に、しっかりと今から何をするのか説明しましょう!やみくもに風船を膨らませることはストレスを与えるだけになってしまうかもしれません。 そして風船を膨らませるプロセス(1)から6)の手順や理由などです)について説明が終われば、いよいよ風船をくわえてもらいます。 風船を膨らませる際によく目にするのが、風船がどんなに頑張っても膨らまない現象です。筋力がないのか、肺活量がないのか、とクライアントの方や患者さんはおっしゃいますが、なぜか風船が膨らんでいきません。こちらとしては満を持して風船エクササイズを紹介したのに、相手の方は顔を真っ赤にして頑張っているのに風船がまったく膨らんでいかない…この状況はなかなかなんとも言い難いものがあります(笑)。頑張っているのでもう少し頑張ったら膨らみそうな気がしますし、かといって顔が真っ赤で目玉が飛び出るくらい頑張っているので、「一回休憩しましょうか」と言いたくもなりますし・・・特に子供のころに風船を膨らませた経験のある方は、今となって膨らますことができない自分に愕然とするでしょうし、ちょっとがっかりした気分になってしまうでしょう。 何でこんなことが起きるのでしょうか?もちろん息を吐く力が実際に低下しているのかもしれません。しかし、私が所属しているメディカルフィットネスジムでは高齢者の方にも風船を膨らませてもらっています。人生の経験が豊富な方々でも風船が膨らまない時があります。僕もこの微妙な時間をどれだけ過ごしてきたか…しかし、そこで気づいたことがあります。みなさん、風船を自ら閉じているのに、空気を送り込んでいる! そうなのです!風船を膨らまそうと空気を送り込んでいるものの、風船をくわえようとして唇で抑えたり、歯で噛んだりします。そうなったら風船の首は閉じてしまい、空気は入っていきません。でも呼気筋がかなり頑張り、自らの唇や歯と戦おうとします。これでは風船はいくらやっても膨らんでいきませんよね。 先日PRIの本部があるネブラスカ州リンカーンに行ったとき、PRIの創設者であるRon Hruska氏に聞いたのですが、風船にもくわえ方があるという事です。風船は円形の口から空気を入れるようにできていますが、工業製品ですから出荷される際は平らにたたんである、というよりは押しつぶされた状態になります。この平たくなってしまった風船の首と唇のラインを平行にくわえてしまったら、どうしても唇や歯で、または舌で押しつぶすような格好になってしまい、空気が入るのを邪魔してしまいます。 そこで平たくなってしまった風船を縦にして、唇で風船の口を広げるようにしてくわえるのです。 こうすることで唇は風船の口をつぶして広げるように作用します。ちょうどストローをくわえるように円形の穴を唇で作るのです。そうすると空気をすんなりと入れることができるのです。あまりにも当たり前に風船を平たくくわえさせてしまっていたので、風船にもくわえ方があると聞いて目から鱗でした。 あまりにも当たり前すぎるような話ですが、意外と口元の筋肉やかみ合わせで緊張している方が多いのではないでしょうか?また高齢者の方だと入れ歯などの関係で唇の筋肉やかみ合わせのコントロールがうまくいっていない方もいるでしょう。そんな時は風船を縦にくわえる事で空気の通り道が肺から風船の先端まで繋がり、息を吐けば風船は膨らんでいくはずです。 それでは次のアーティクルでは2)の風船を膨らませる体勢を整える、というところから解説していきましょう。

大貫 崇 2330字

テッド・ラッソのリーダーシップレッスン

Apple TVの素晴らしいシリーズである「テッド・ラッソ」は、間違いなく今までで一番気に入っているテレビ番組です。沢山のテレビ番組を見てきた私の今までの人生において、これほどまでに虜になりインスピレーションを受け取ったシリーズは他に思い浮かべることができません。信じてください、かなりテレビは見てきました。この番組にはマジカルでワクワクする何かがあるのです。より良い人間になりたいと感じることなく、この番組を見ることはできないでしょう。こう言うと妙に聞こえるかもしれませんが、テッド・ロッソは私にとって、新しいお気に入りのスーパーヒーローの一人なのです。なぜこう言うのかというと、自分が大人になったらテッドのような人になりたいから。テッドの人生、世界をより明るく輝くものにするテッドのように生きたいからです。 私達がこの世に存在する理由は、キラキラと輝き世界をより明るくするためであると信じています。ともかくも、この素晴らしく途方もない架空の人物であるテッド・ラッソは、彼のリーダーシップのスタイルを示してくれます。実際、昨夜私は妻と共にリーダーシップについての会話をしました。何がリーダーシップであり、何がそうでないのかについて。今朝目が覚めた時も、テッドのリーダーシップレッスンは私の頭から離れませんでした。それらを書き留めずにはいられませんでした。私がテッド・ラッソから学んだリーダーシップレッスンは下記の通りです: リーダーとは奉仕者です。他者を優先します。テッドは人々を、彼らの目を、彼らの心をしっかりと見ます。彼らの話を聞き、彼らを高めます。テッドの唯一のアジェンダ・意図は、人々を高めること、彼らが彼ら自身の「ベストバージョン」になることができるように。テッドは会社(チーム)のステータスにフォーカスをあててはいません。彼は、スタッフ達に、選手達に、上司にフォーカスをあてているのです。テッドは彼らの心を繋げ、その結果として会社(チーム)全体が繁栄するのです。 あなたは人々をコントロールすることはできません。ただ自分自身の台本を書き、他の皆の台本に影響を与えるだけです。誰かの行動や、信念や考え方を変えることはできません。ただ、彼らが彼ら自身のステージのスターなのだと言うことを認識し尊重することができます。 人間を信じること。人間が存在することを信じるのではなく、あなたがともに働く、関わる人々を信じること。信じるということは、本当は「愛であること」「愛すること」を意味します。あなたのまわりにいる人達の最良の側面を見て、全てを愛すること。 許すことを実践する。これこそが他者を真に愛し、投資する唯一の方法です。自分自身のポテンシャルに投資する唯一の方法でもあります。許すことは愛を与えること。愛を与えることは愛を受け取ることでもあります。あなたが誰かを恨む気持ちから自由にしてくれます。それが何であれあなたが抱いている気持ちから自由にしてくれるのです。 傷ついて心が痛んでもいいのです。傷つくこと、傷を負うこと、失敗することは恥ではありません。OKなのです。痛みを許し、自分自身を許し、癒しましょう。 治癒して良いのです。前へに向かって進むことに罪悪感は伴いません。手放しましょう。治癒は健康であり、前進することは成長なのです。 勝利を祝い、敗北から構築しましょう。アイコンタクト、スマイル、誕生日、結婚式、記念日、昇進、ゴール達成、これら全てを祝いましょう。涙、離婚、死、引退、落胆、これらを認識して、これらを通して心をさらに強く構築しましょう。 「最も大切にされていない」人にも尊敬の念を持つこと。誰もが皆重要です。必要とされていない役割などありません。価値のない心などありません。全てが重要なのです。この番組内では「Nate the Great/素晴らしいネイト 」が最良の例です。 ボールを他者にパスすること。私たちは共に勝利するのです。あなたの成功は私達の成功であり、私達の成功はあなたの成功なのです。 他者のためにクッキーを焼きましょう。愛を込めて実行される思いやりの行動は、最も頑固な心も溶かし、あなた自身も癒してくれるでしょう。 あなたを批判する人を愛しましょう。彼らの言うことを聞き、尊重し、愛しましょう。そうすることで彼らはあなたのファンになることでしょう。 何事も個人的に受け取らないように。彼らは自分たちが何をしているのはわかっていません。あなたも自分が何をしているのかわかっていません。手放してしまいましょう。 理に叶わない時でさえ、幸福を選択しましょう。どのような状況のどのような試練であっても微笑んでいられるように。心の底からそれを意図するならば、全てが変わります。 脆弱であること。本物であること。防御をしないこと。幻想を抱かないこと。これらはあなたを向かうところ敵知らずにします。 質問をしましょう。質問をすることで推測を消去し解決策をあらわにすることができます。人々は、あなたが話しかけている対象者に対しても関心をあらわにするでしょう。 好奇心を持つこと。なぜ人々は、そのような行動をしたり、そのようなことを言ったりするのか?あなたはなぜそうするのか?好奇心は発見を導きます。確実性は、失われたチャンスや行き詰まりへと導きます。 誰かに見られていたとしても、誰にも見られていないようなつもりでダンスをしましょう。自分を人前に晒すこと。喜びと自由さの最高の表現の一つはダンスすることです。ダンスすることは全ての束縛を取り除きます。あなたがダンスをすれば、あなたが輝けば、あなたのまわりにいる人達を明るく輝かせて彼らはあなたのリードについてくるでしょう。 テッドのレッスンのいくつかを確実に見落としてしまっているとは思いますが、良いスタートだと思います。皆さんもご自身の心のためにぜひこの番組を見てください。番組を見ないという場合でも、ここに記録したテッドのレッスンのいくつかをしっかりと掴み取ることができれば、あなたは世界をとんでもなく素晴らしいものにすることでしょう。 なんといっても私達はそのためにここに存在しているのですから。

オリジナルストレングス 2604字

骨盤前傾はじわじわとあなたを葬っているのか?

ほら、かなり引き込まれるセンセーショナルな見出しでしょう!引っかかりましたね! 私は、骨盤前傾(APT)と骨盤前傾が引き起こす可能性がある問題について、最近の議論に基づき、手短かにブログを書こうと思いました。これは決して独創的な投稿ではありませんが、すたることの無いテーマです。実際に、ただの理論ではなく、このテーマに関する研究に少し焦点を当てた投稿は、山のようにある、ストーリーとしか呼べないようなものと比較すると、大海の中の一滴にしか過ぎません。これらのストーリーは、“XがYを引っ張るとZ(一般的に痛み)を引き起こす”という生体力学的な理論が多い傾向にありますが、それを裏付ける真の科学的根拠の数があまりにも少ないのです。 その理論は、このような感じかもしれません:長時間の座位のせいで、股関節屈曲筋が緊張するため、腰椎前彎を増大させる骨盤前傾を引き起こし、腰痛を引き起こします。 控えめな骨盤前傾は、腰痛、鼠径部痛、股関節痛等、実に骨盤に近いどこかに少しでも関連のある、あらゆる痛みの原因として非難されます。身体の中間点であることが、非常に多くの事の原因になっているのかもしれません。 ‘ドクター・グーグル’(ネットで検索)やフェイスブック(もしくは同様のソーシャルメディア)をチェックしてみてください。非常に多くのくだらないものが次々に出てきます。これは、グーグルで“骨盤前傾”と入力した検索結果の1ページ目です。 最初に、骨盤傾斜に関して、何が正常で、何が正常でないか、少しでも多くの知識を持つことがここでは重要です。数多くの罪を着せられる可哀想な骨盤前傾は、これら全ての問題に関する利用可能な研究において、確かに、前彎増大というような関連因子や、関連性があり、無症状の集団よりも痛みがある集団の方でより高頻度に見られます。 この研究、”Assessment of the degree of pelvic tilt within a normal asymptomatic population ( 正常で無症状な集団における骨盤の傾斜角度の評価 )”では、これを正確に調査したかったのです。彼らは、無症状で痛みの無い人たちの骨盤傾斜に着目しました。 彼らは、私達のほとんどが骨盤前傾を有していて、実に85%もの男性が骨盤前傾を有していることを発見しました。つまり、ジムで男性を無作為に10人選んだら、8.5人は骨盤前傾であるということを意味しています。女性では、この数字は75%まで下がりますが、それでも大多数です。もし骨盤傾斜がこれら全ての痛みに対して非難されるのであれば、私達のほぼ全員が骨盤内や周辺の痛みで、苦しみ悶えながら歩いているのは間違いないのではないでしょうか?たった9%の男性が、伝説的な骨盤“ニュートラル”位を有しているのです!よって、再びジムで無作為に10人を選んだら、1人の男性の90%(一人未満)だけしか骨盤のニュートラル位を有していないことになります。女性では、この数字は少し大きくなり、18%まで上がります。 これは主に治療家やトレーナーによって、上記の研究よりも初歩的な方法で評価され、しばしば骨指標、すなわち上前腸骨棘( ASIS ) や上後腸骨棘(PSIS )、そしてお互いの関係性を確認することによって評価されています。 この研究、“Variation in Pelvic Morphology May Prevent the Identification of Anterior Pelvic Tilt ( 骨盤の形態学における多様性は、骨盤前傾の識別を妨げる可能性がある )”は、骨の前後・左右対称性において、かなり大きな多様性を発見しました。骨盤は全て具合悪いように思えるかもしれませんが、実際には、それはただ各人の自然な骨の形状なのかもしれません。おそらく、第一に多様性が問題ではないこの場合では、触診は骨盤前傾を計測するのに、あまり確実な方法ではないのかもしれません。 無痛であるためには、完全に対称な骨格と姿勢が必要であるというのは、私達の思い込みであり、私達の間に見られる姿勢ではなく、完全に対象な骨格と姿勢が生まれながらの正常なデフォルトであるというのは、間違っているのかもしれません。 姿勢に関して言えば、ニュートラル、あるいは整ったアライメントという考えは、身体をニュートラルに回復させる、あるいはバランスを保つことを目的とした、100以上の継続的能力開発(CPD)コースの数々を生み出しています。全てのエビデンスは、私達のほとんどがニュートラルではないという事実を示し、痛みに関しては、恐らく関係ないでしょう! 先程、お話したように、骨盤前傾は、腰椎前彎の増大によって腰痛を引き起こすとされています。この研究、 “Lumbar lordosis: study of patients with and without low back pain ( 腰椎前彎:腰痛を持つ患者と腰痛を持たない患者における研究 )”では、腰痛がある腰椎前彎の女性と腰痛の無い腰椎前彎の女性との間に、違いは発見されていません! この研究 “Low back pain and lumbar angles in Turkish coal miners (トルコ人炭鉱作業員における腰痛と腰椎の角度 ) ”も同じことを示していて、腰椎の角度と腰痛には相関関係は無いことを発見しています。 よって、私達のほとんどが骨盤前傾を有していますが、経験する腰痛とは相関関係が無いようです。 座位は、骨盤前傾の原因として非難される主なものの一つです。この研究、“Use of intermittent stretch in the prevention of serial sarcomere loss in immobilised muscle (不動の筋に置ける連続的な筋節喪失の予防における断続的なストレッチの活用 )” では、1日30分の、単に動くだけで得られるようなストレッチでさえ、関節可動域を維持するのに十分であることが発見されています。怠け者のろくでなしでさえ、ベッドから起き上がり、仕事へ行き、コーヒーを作り、夕食を調理したりします。おそらく、これだけでも合計すると、必要とされている30分になるでしょう。 この研究、“Effect of Changes in Pelvic Tilt on Range of Motion to Impingement and Radiographic Parameters of Acetabular Morphologic Characteristics (骨盤傾斜の変化がインピンジメントのある関節可動域に与える影響と寛骨臼の形態学的特徴のX線写真パラメーター )”では、動的な骨盤傾斜と大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の関係性に着目しました。彼らは、骨盤前傾の増大は、大腿骨寛骨臼インピンジメントの早期発生をもたらすかもしれないと提唱しました。 最初に、これは症状のある集団を用いた後ろ向き研究でした。前向き研究によって、理論に基づいた結論の信憑性が高まるかもしれません。 では、骨盤前傾と関連しているかもしれない大腿骨寛骨臼インピンジメントが、どのように股関節痛と関連しているのでしょうか?この研究、“Radiographic Prevalence of Femoroacetabular Impingement in Collegiate Football Players (大学フットボール選手における大腿骨寛骨臼インピンジメントのX線写真にみる有病率 ) ”では、なんと95%の無症状の大学フットボール選手が大腿骨寛骨臼インピンジメントを有していました。もしあなたがスポーツをし、骨盤の動的な運動を沢山経験すれば、何らかの形の大腿骨寛骨臼インピンジメントを有しているかもしれず、そして、それは痛みを伴わない可能性が高いのです。 私達はまた、位置と運動はそれぞれ別物であることに気付かなければなりません。私は、男性のわずか9%しか有していない、伝説的骨盤ニュートラルを有しているかもしれませんが、私の骨盤は動的に大きく傾き、それによって、私の股関節の骨の本質に影響を与えています。同様に、その姿勢の位置からあまり動くことのない、ほぼ静的な骨盤前傾を有しているかもしれません。よって、静的な測定は、動的な測定とはあまり関連性がなく、何らかの形式での動的測定のメソッド無しで得られる結果は、単に推測でしかないのです。私達は皆、推測や思い込みは全ての大失敗の元であることを知っています。 通常の臨床環境、あるいはジムの環境において、大腿骨寛骨臼インピンジメントの早期発生を予測する研究で使用された、時間のかかるスキャン検査とモデリングの全てが無い状態で、どのようにこの動的な骨盤傾斜を測定しますか? 私見ですが、私達の姿勢は、それが動かない時、より問題のある、関連性のあるものになるのではないでしょうか。私達は、姿勢自体が問題であると示す前に、静的な姿勢からの推測ではなく、その特定の姿勢が、実際に動き変化することができるかどうかを評価する必要があります。 最後に、多くの科学的証拠は存在しませんが(ちなみに、複数のエピソードは証拠ではありません、骨盤前傾は実際に“矯正”されることができるという話もあります。 あなた自身の、あるいはあなたのクライアント/患者の骨盤前傾にストレスを感じるのをやめて、より生産的に時間を使いましょう。

ベン・コーマック 4083字