マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
アスリートプレート:アスリートは何を、どれくらい食べれば良いの?
どれだけ運動やトレーニングを頑張っても、体の中に入れる食事がアンバランスだと自分が求めている結果が出ない場合が多々あります。 それじゃあ、何を、どれだけ食べれば良いの? そう思っているアスリートのために作られたのが、このアスリートプレート。これは米国オリンピック&パラリンピック協会(USOPC)とコロラド大学大学院(UCCS)のスポーツ栄養学科の修士生徒が作り上げたアスリートは何を、どれだけ食べれば良いのか簡単に分かる、”アスリートプレート”です。 アメリカは全部ワンプレート式。日本の一汁一菜一飯などの定食式よりも対照的です。 アスリートプレートには、運動強度、内容、容量により食べる量が変わる必要があり、3段階に分かれています。 高強度のトレーニング・レース当日 普通のトレーニング 軽いトレーニング・休養日・体重管理 どんなアスリートでも、練習内容は日によって変わります。そのため、食事の量も運動の強度や存続によって変わる必要があります。そしてシーズンによっても変わります。これはあくまでも自分で主観的に今日はどのくらいエネルギーを使ったか?と把握し、自分で決めます。詳しくはスポーツ栄養士に話してみよう! (赤)高強度のトレーニング・レース当日の食事 この食事は、主にシーズン中でピークパフォーマンスを行う必要がある時に摂る食事です。例えばトレーニングがいつもよりも長かったり、強度が高かったり、容量がキツかったり。 ハードトレーニングの考慮事項: 最低60分の高強度トレーニング 最低90分の低強度トレーニング トレーニング・練習が2回あり、その中の1回が高強度トレーニングの場合 何をどのくらい食べるの? Grains(穀物・炭水化物):アスリートにとっての筋肉と脳の大切なエネルギー源。ハードトレーニングはエネルギーが一番必要になるため、プレートの半分が炭水化物にします。この時、アスリートは、すぐにエネルギー源になる炭水化物が必要なため、消化に時間が掛かる全粒粉や玄米よりも、白米や白いパンの方が良い。 例:パン、パスタ、ご飯、ジャガイモ、サツマイモ、シリアル、など。 Lean Protein (脂身の少ないタンパク質):トレーニングがどれだけハードでも、タンパク質の量は変わりません。プレートの内、4分の1を脂身の少ないタンパク質をとりましょう。 例:鶏肉、牛肉、魚、卵、低脂肪乳製品、豆腐、豆類、ナッツ、など。 Vegetables(野菜):残りの4分の1がビタミンやミネラルがたくさんとれる野菜。炭水化物の量が多くなると、野菜を置くスペースが狭くなるため、できるだけ食べやすく、いっぱい食べれるように、生野菜よりも温野菜や調理されてある野菜を摂るのがおすすめです。 例:生野菜、温野菜、野菜スープ、など。 Fats(油):大さじ2杯。エネルギー源になるだけではなく、食事を美味しくしたり、満腹感を与えます。そして、植物源の油は回復を早める大切な役割をする、とても大事な栄養素。油をプレートに追加することを忘れないでください。 例:アボカド、オリーブオイル、ナッツ、種、チーズ、バター、など。 Fruits(果物):このプレートはエネルギー補給が主な目標。エネルギーが必要なため、プレートには入らないフルーツはプレートの外に。 例:新鮮な果物、煮込んだフルーツ、ドライフルーツ、など。 Flavors (風味):そして大事なのは、どれだけバランスが良くても美味しく食べないと続きません。なので、美味しく食べるため、いろんな風味を加えましょう。 例:塩、胡椒、スパイス、お酢、サルサ、マスタード、ケチャップ、醤油、など。 Drinks (飲み物):汗で失う水分補給もちゃんと大事。食事と一緒に飲み物をお忘れなく。 例:お水、乳製品ドリンク、コーヒー、お茶、炭酸水、など。 注意点として、このプレートは毎食時の時に従うのが便利ですが、ハードトレーニングを日々行っているアスリートたちは、3食以上の頻度でトレーニング前後や軽食の補食などの食事を摂る必要があります。 (灰)普通/適度なトレーニングの食事 この食事は、主なアスリートでしたら、日常的にお勧めする食事バランスプレートです。これを標準にして、運動強度や容量に応じて調整する必要があります。 普通・適度トレーニングの考慮事項: 60分以下の高強度トレーニング 90分以下の低強度トレーニング 練習が2回あり、どちらの練習も低から適度な強度トレーニングで期間として、1時間未満の場合 ハードプレートとは何が違うの?何をどのくらい食べるの? Grains(穀物・炭水化物):アスリートにとっての筋肉と脳の大切なエネルギー源。適度トレーニングはエネルギーがハードトレーニングに比べると少なくなるため、炭水化物も少し少なめの3分の1。 Lean Protein (脂身の少ないタンパク質):何も変わりません!! Vegetables(野菜):残りの3分の1がビタミンやミネラルがたくさんとれる野菜。 Fats(油):少し少なめの大さじ1杯。 Fruits(果物):このプレートもフルーツはプレートの外に。 Flavors (風味):どのプレートも、美味しく食べるため、いろんな風味を加える。 Drinks (飲み物):汗で失う水分補給もをお忘れなく。 注意点として、このプレートは毎食の食事に使うのが便利ですが、日々の適度なトレーニングを行っているアスリートたちは、3食以上の頻度でトレーニング前後や軽食の補食などの食事を摂る必要があります。 (青)軽いトレーニング/休養日/体重管理時の食事 この食事は、軽いトレーニングや休養日の食事、またはオフシーズンの時やオフシーズン中に減量をしている時にお勧めする食事バランスプレートです。 軽いトレーニングの考慮事項: 60分以下の低強度トレーニング(ヨガ・モビリティ・ストレッチ・軽い筋トレ・ウォーキングなど) 適度トレーニングプレート(灰色)とは何が違うの?何をどのくらい食べるの? Grains(穀物・炭水化物):軽いトレーニングの日はエネルギーの必要量が少なくなるため、炭水化物も少なめの4分の1。そして、食物繊維や満腹感を感じさせるため、全粒粉パンや玄米などの全粒穀物を選びましょう。 Lean Protein (脂身の少ないタンパク質):主に何も変わりません。しかし、減量を試みるアスリートのタンパク質は穀物系を少し少なく、そしてタンパク質が少し多くなります。タンパク質を通常よりも多くすることにより、筋肉維持と満腹感を感じさせることを助けることができます。 Vegetables(野菜):プレートの一番大きい2分の1がビタミンやミネラルがたくさんとれる野菜。 Fats(油):少し少なめの大さじ1杯。 Fruits(果物):フルーツはプレートの中に。野菜と同じところに入れます。 Flavors (風味):どのプレートも、美味しく食べるため、いろんな風味を加える。 Drinks (飲み物):汗で失う水分補給もをお忘れなく。 注意点として、このプレートは毎食の食事に使うのが便利ですが、軽いトレーニングを行っているアスリートたちでも、3食以上の補食などの食事を摂る必要があります。捕食には炭水化物とタンパク質がどっちも入っているものを選びましょう。例えば、チーズとクラッカー、グリークヨーグルトとフルーツ、卵とおにぎりなど。 終わりに アスリートは、スポーツ、練習内容、強度などによって栄養も異なります。栄養は練習と同じくらい大切で、毎日最低3回はしないといけないこと。詳しい情報は、栄養士と相談しましょう!
コロナに負けるな! エビデンスベース 免疫力UPに繋がる食べ物
現在、コロナで世界中が大騒ぎになっているからと言って、「スーパーフード」やビタミン剤サプリに頼り過ぎてませんか? 今はコロナが誰にでも感染してもおかしくない中、自分の免疫力を高めるには栄養面では何をすればいいのか?エビデンスベースの情報をお届けします。 そもそも免疫系ってどうやってできているの? 免疫系とは細胞、組織、臓器が一緒に働き、体をプロテクトしてくれます。自分の免疫が体の外にある異物を発見し、白血球にシグナルを出し、感染病などを守るため抗体を分泌します。免疫は、怪我や運動後などに起こる炎症反応にも関係しています。怪我が起こった時、サイトカインという小さなタンパク物質が解放されて、複数の炎症メカニズムが回復・治療プロセスを助けてくれます。 感染リスクが高い人 遠征や長期間で旅や出張を頻繁にする ストレスの多い人 激しいトレーニングが長く続き、適切なリカバリーが取れない 環境からのストレス(天候・高度など) 病原菌などが存在する環境に長時間いる 不十分な血球数 不十分な食事や水分 睡眠不足、回復不良 不安や気分の変化 免疫を高めるために必要な食事 まず一番忘れてはいけないのは、バランスの良い食事を取る どれだけ免疫力UPの食べ物を食べても、偏った食事を食べ続けると、体も偏ってしまいます。なので、まずは初心に戻り、バランスの良い食事を心がけましょう! 炭水化物:脳と筋肉が動くのは、炭水化物があるから。ご飯、パン、パスタ、芋類、そして蜂蜜、フルーツ、たまに食べるスイーツも大切な炭水化物の補給ができます。運動量に適合した分量の糖質は毎日欠かさず取りましょう!(詳しくは、先日投稿されたアスリートプレートの記事をご覧ください。) タンパク質:運動すると、筋肉は壊れます。でもその後にタンパク質を摂取することで筋肉がより強くなります。筋肉維持以外にも満腹感を与えたり、細胞にも欠かせないタンパク質は肉、魚、乳製品だけではなく、豆腐や豆類、ナッツ、穀物にも含まれています。 脂質:脂質は減量している人でも、ヘルシー思考に食べようとしている人でも必要不可欠!ただし、植物性の油や魚の脂の方が抗炎症効果、脳への効果が期待できます。 プロバイオティクス(乳酸菌):現在の研究では、プロバイオティクス(生きた微生物)の効果が胃腸だけではない事が分かってきました。日本では乳酸菌が主な微生物として有名で、ヨーグルトや乳酸菌ドリンクなどもありますが、味噌や納豆などの発酵食品にも含まれているので、定期的に摂取しましょう! 果物と野菜:そしてもちろん忘れてならないのはフルーツと野菜。いろんなフルーツや野菜は体を整えてくれるビタミンやミネラルが入っているので、バラエティー豊富にいろんな色の物を食べましょう!英語では、Eat the rainbow!と言います。 水:そして忘れてはいけない、水分補給!水はガブ飲みではなく、定期的にチビチビ飲むのが体への吸収率を高くするベストな方法!お水は体に損はありません! もう既にバランスの良い食事を摂っているけど、もう少し自分の免疫力を高めたい方、免疫力を上げる栄養素をご紹介します。 免疫力を上げる栄養素 抗酸化物質:病原菌と自分の体の間に壁を作って守ってくれます。 例)多くの果物や野菜:りんご、ほうれん草、イチゴ、ブルーベリー、パプリカ、バナナ、キウイ、なす、アボカドなど タンパク質: 適量なタンパク質摂取 (1.2-1.6g/kg)は、体の組織を修復してくれて、ウイルスや細菌感染と戦ってくれます 例)魚、鶏肉、豚肉、牛肉、豆腐、ナッツ類、乳製品、穀物など オメガ3: 炎症を減らし、体の免疫反応を高めてくれます 例)オリーブオイル、ナッツ類、エゴマ、脂身がある魚など ビタミンD: 不足だと感染しやすいということがエビデンスで証明されています。できるだけ太陽を浴びましょう。 例)日光を浴びる、卵の黄身、椎茸、サーモン、レバーなど 食物繊維:プロバイオティクスを養い、胃腸の中に善玉菌を多く生み出すため、腸内環境を良くします。 例)果物、芋類、穀物など プロバイオティクス(乳酸菌/発酵食品):免疫細胞が標準の健康な細胞と有害な侵入生物の区別をするの手助けをしてくれます。 例)ヨーグルト、乳酸菌ドリンク、味噌、麹、納豆、キムチ、ザワークラウトなど 今はコントロールできないコロナでいろいろと大変だと思いますが、健康は自分次第。自分の体は自分で良い方向にコントロールしましょう!
ケトジェニックダイエット:アスリートパフォーマンスは向上するのか?
ケトジェニックダイエットというと何を思い浮かべますか? 痩せる、ダイエット、副作用が心配。実際どうなのか。根拠があるのか、といろいろな疑問があると思います。今回はそのあなたの疑問を解いていきます。 注意事項:ダイエットの本当の意味 まず最初に注意して欲しいのは「ダイエット」の本当の意味。日本で「ダイエット」というと「減量方法」や「痩せる食事方法」と勘違いする人が多いと思います。 しかし、実際ダイエットという意味は「食事方法」という意味で、減量や痩せることと全く関係ないんです。 では、どうして「減量」や「痩せる食事方法」のことをダイエットと言うのでしょう? 食事方法があるのは、何か目的があるから。 それは痩せる目的、パフォーマンス向上、健康のため、など人それぞれ目的に合わせた食事法が本当の「ダイエット」です。 日本は痩せる方法に注目を浴びすぎていて、いつの間にか「ダイエット」=「痩せる方法」というような使い方でダイエットという言葉を無意識に使っている人がいると思います。今後ダイエットという言葉を使うときは、気をつけてください! そして、ケトジェニックダイエットも、複数の目的を達成するために作られた食事方法。それでは、ケトジェニックダイエットの食事方法を探ってみましょう! ケトジェニックダイエットとは ケトジェニックダイエットというのは、簡単にいうと超低糖質・高脂質ダイエット。普段、食べた炭水化物がブドウ糖に変わり、そのブドウ糖が人間の脳と筋肉のエネルギーに変わります。しかし、ケトジェニックダイエットで糖質が不十分のため、脂質がケトンという成分に変わり、ケトンが体のエネルギーとして使用されます。そのため、効率良く脂質をエネルギーに変えることかできるということで、注目を浴びています。 ケトジェニックのメカニズム ケトジェニックの食事法は体の中に入るとどうなるの? まず、人間の体はみんなブドウ糖とグリコーゲンの貯蔵からエネルギーに変えています。 そう、これはみんなが大好きな炭水化物。パン、うどん、ごはん、それからチョコレート、フルーツ、乳製品も炭水化物が含まれていて、食べた炭水化物が体の中でエネルギーに変わります。 しかし、ケトジェニック法は炭水化物を一気に無くし、ブドウ糖やグリコーゲン貯蔵を一気に無くします。 1日にどのくらいエネルギーを消費するかによりますが、ブドウ糖がなくなると体はサバイバルモードに入り、ブドウ糖の役割を探します。その第二のエネルギーになるのが、脂質です。脂質がエネルギーとして使われるのがケトン。そしてそのように体のエネルギーをケトンに使わせるために誘導させる食事法がケトジェニックダイエットです。 ケトン合成が急増するとき、インスリンの値は低く、グリコーゲンとインスリンと関連してるエピネフリンというホルモンの値は通常です。この3つの値のコンビネーションが脂肪細胞から脂肪が釈放される要因と考えられます。 この写真はUniversity of California San Francisco の糖尿教育センターの資料です。 脂肪は血を回り、肝臓に辿り着き、ケトンにプロセスされます。そして、このケトンはまた血の中に回り、筋肉や組織がピックアップして、体の代謝のエネルギーとして使われます。 ケトジェニックダイエットのリスク 自分の脂肪がエネルギーに変わると思うと、とっても効率的!と思った人もいると思います。しかし、ケトジェニックは良いことばかりではありません。 まず、どのくらい炭水化物を抜くのか? 人にも寄りますが、現在人の体がケトンを使用するためには炭水化物摂取を<5%エネルギーに制限する必要があります。 つまり、1日の総炭水化物摂取量を食事に変えると、バナナ1本で制限オーバーです。 そして、ケトンをエネルギーとして使う体になるには、平均的に2−3日かかり、これは運動や毎日のエネルギー消費量・摂取量により変わります。体はブドウ糖が一番好きなので、少しでも炭水化物があったら、それを優先的に使おうとします。そのため、ケトジェニックの効果が欲しいのであれば、継続的にケトジェニックの食事を摂取しないといけません。1日だけの「チートデイ」は、ブドウ糖を自分の体内に入れるため、ケトジェニック体にはなりません。 改めて、この食事法は無理やりブドウ糖からケトンに自分の主なエネルギーを変える方法です。体はそれに批判し、副作用もついてきます。炭水化物を摂取しないため、低血糖、電解質アンバランス(炭水化物は水分を保持するため)、“Keto Flu”という、ケトジェニック体に体が変わる時に経験するインフルエンザみたいな症状も出ます。 主な症状: 疲労 空腹感 不機嫌·憂慮·イライラ感 頭痛 吐き気·嘔吐 便秘 虚弱 エビデンスは? こんなに大変でリスクが高いケトジェニック法、これはただのまた誰か根拠なく作ったダイエット法なんじゃないの?と思った人もいるかもしれません。 しかし、実際ケトジェニックダイエットは1920年代からある過去にもたくさん研究をされているんです。 以下は今までケトジェニックについて研究されてきた文献の一部です。これ以外にもまだまだたくさんあります。 それでは、どういったエビデンスがあるのでしょうか? 神経障害: まず、ケトジェニックダイエットは、1921年にDr. Russel Wilderという人が神経障害の転換の発作を防止する目的として開発されました。そのため、神経障害の人のためのケトジェニック法の利点が、短期間から長期間での研究結果が複数の文献で証明されています。 ケトジェニックを継続したことで、子供たちが制御するのが難しい発作をコントロールする効果、発作の減少、薬摂取量の減少なども見られました。 その他にも、アルツハイマー病やパーキンソン病の症状を抑える効果も証明されました。このメカニズムはまだ明確には把握できていないのですが、もしかしたらケトジェニック体がストレスを防止して、神経変性や脳炎症を予防できるのからではないかという解説があります。 糖尿病予備軍・糖尿病: 炭水化物を摂取しないため、血糖値が下がり、インスリン感受性が向上するという研究結果が出ています。また、ケトジェニック法で減量にも効果があり、余分な脂肪を無くすことは糖尿病と密接に関連しているため、その効果も糖尿病の人に効果があると言われています。その他にも、薬摂取量の減少、A1Cや体重、またその他の数値が改善されることが複数の研究で証明されました。 しかし、いろいろな研究がほとんどが短期間のケトジェニック法で、長期間のケトジェニック法によるリスクなどまだ研究では明確ではないところもあります。 減量: そして、今話題となっているケトジェニック法での減量。現在、ケトジェニック法は低脂肪ダイエットよりも優れていて、効果的ということが研究でわかっています。メカニズムとしては、効率的に脂肪がエネルギーに変わる以外に、インスリン感受性の向上、血糖値の改善、ケトン値の増加なども理由として述べられます。 こちらも複数の文献がありますが、研究対象がすでに肥満で糖尿病などの併存疾患を持っている人た血で、短期間の物ばかり。こちらも長期間のケトジェニック法にリスクなど明白ではありません。 ケトジェニック法はただの一つのダイエットではありません。神経障害のために作られたダイエッ トは今では糖尿病や減量にも利点がある、とても面白い食事法です。 では、アスリートにはどうでしょう?アスリートがケトジェニック法で食事をすると、どのようにパフォーマンスに影響するのでしょうか? 仮説としては、RER(呼吸数)で考えると、 上記のような表になります。運動強度が高ければ高いほど、炭水化物の貢献、つまり自分の体を使っているエネルギーが炭水化物から来てる方がよっぽど大きい。一方で、運動強度が低ければ低いほど、脂肪の貢献、つまり自分の体を使っているエネルギーが脂肪からの方が大き い、ということになります。なら、運動強度が割と低い持久力スポーツ選手らはケトジェニックダ イエットでパフォーマンス向上になるのではないのか?というのが仮説です。 現在の最新の研究では 、エリートレベルの競歩選手のケトジェニックダイエットの食事とパフォーマンスへの影響について、複数の文献が出ています。 ケトジェニック法は筋肉に必要な炭水化物を摂取しないため、Keto Fluの症状の現れが観察されました。その上、ケトジェニック法は脂肪酸かを増加させますが、エリートレベルの持久力スポーツに必要な高強度なエネルギーを炭水化物よりも早く生み出すことができないことがわかりました。 それにより、ケトジェニック法は持久力アスリートのパフォーマンスを損ない、結果にも悪影響を与えた。 つまり、現在の研究結果では、低強度の運動のパフォーマンスはケトジェニック法はありかもしれないが、エリートレベルの持久力スポーツはケトジェニック法は適してないということが分かりました。 おわりに 今はまだアスリートにはケトジェニックが適してないということが分かっています。しかし、それ以外の神経障害や糖尿病、減量となる目的のための食事方法として、利点があるというのが、現在ケトジェニックダイエットについて分かっていることです。 もしもこの食事法に興味があって、実践したいと思っている人、まずこのダイエットを始める前に、このダイエットは現実的か、最低1ヶ月は継続できるか、伴うリスクなど、考慮してから実践してください。もしも持病をお持ちの方がいましたら、医師にご相談ください。
腸内環境とグルテン
今はこんな時期だからこそ、免疫力を高めよう! 最近、腸内環境を整えることが「腸活」と呼ばれ、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを整え免疫力を強めることで注目されています。今回は、腸活のエビデンスベースの利点、実際のメカニズム、そしてヨーグルト以外何を食べれば良いのか、など腸内環境のことについてエビデンスベースの情報をご紹介いたします。 まず、腸の事を話す時に、頻繁にGut Microbiome(腸内微生物叢) という言葉が出てくるので、このフレーズについてご説明させていただきます。Gut Microbiome (今後からは「腸内マイクロバイオーム」と表示)とは、胃腸の中で生きている微生物で、もう一つの臓器とも言われています。主に、腸の中に1000種類以上存在していて、消化を助け、脳機能のサポート、腸粘膜の保護、健康な免疫の維持など、複数の身体機能の役割を担っています。そのため、今の時期、健康な腸内マイクロバイオームを維持することが、いろんな病気の感染防止にもつながります。 そんな腸内マイクロバイオームは、食べるものに影響されていて、そして腸を整える役割もあり、それが日本では腸活と呼ばれています。 それでは、腸活をすることによって、どういう利点があるの?実際のメカニズムはどうなの?ヤクルト以外は何を食べればいいの?ということをお伝えいたしましょう。 腸内マイクロバイオームのメカニズム: まずは、もしも腸内マイクロバイオームが乱れたら、どうなるの? 上の写真に、図にして簡単に描いてみました。 人間の体内に存在する細菌には、善玉菌と悪玉菌がいるって言うことを聞いたことがあると思います。胃腸微生物がアンバランスであるということは、悪玉菌の方が善玉菌よりもがたくさんあり、腸の状態が乱れるということです。このアンバランスが引き金となり、体の免疫系が働いて、免疫反応を起こします。これにより、身体は慢性炎症を起こします。胃腸が炎症を起こし、腸の透過性(intestinal permeability)というものが高まります。 腸の透過性とは? この写真の中で、ピンクの部分は、腸の粘膜です。本来健康的な腸の粘膜は、図の左側のように隙間がないのが理想です。しかし、IP(腸の透過性)が高くなると、図の右側のように隙間ができてきます。隙間ができることを「胃腸の透過性が高くなる」と言います。隙間ができると、悪玉菌、毒素、消化してない食べ物の粒子などが胃腸の外に漏れ、血流に流れ、全身性炎症が起こります。この胃腸粘膜からの漏れで全身炎症が起こる現象をリーキーガットシンドロームと言います。リーキーガットというのは、お腹から漏れるという意味です。つまり、IPが高まれば、高まるほど外からの物質が入ってきて、リーキーガット症候群がもっとひどくなり、結果的に、食物反応、免疫系が損傷し、そして栄養吸収不良にもなります。 リーキーガットシンドロームの症状 症状としては、以下のことがあります。腸粘膜から血流に漏れて、栄養が吸収されないため、栄養不足になる可能性や、全身性炎症が原因で様々な症状がでてきます。 下痢・便秘・膨満腹 栄養不足 疲労 頭痛 混乱 集中力低下 肌あれ・ニキビ・発疹・湿疹 関節痛 広範な炎症 それ以外にも、腸は体のいろいろなところに影響を及ぼします。 原因 そもそも、人間は、ある程度腸粘膜が漏れている(IPが高まっている)ということが研究では示されています。それが重度化すると、リーキーガットシンドロームと診断されると言われています。不規則な食事、アルコール、ストレスなど日々の日常的な行動が、リーキーガットの要因になり得ると言われていますが、まだ研究では謎な部分がたくさんあります。 栄養不足・不規則な食事 長期間の抗炎症剤(NSAIDS)の使用 アルコール 感染 自己免疫障害 糖尿病 ストレス では食事の何が原因なの? 複数の研究でグルテンの影響が関わっているのかもしれないと言われてきました。つまり、グルテンがIPを高める原因なのではないか?という研究結果が出ていました。しかし最近分かったのは、グルテンが影響するのはグルテン関連の病気を持っている人のみで (Sander, GR, et al. 2005)、グルテン関連の病気を持っていない人はIPを高めるというエビデンスはなかったのです。その他にも、グルテンの不耐性を持っている人においては、混合した発見がありました (Biesiekierski, JR, et al. 2011)。 その他、日々の食事でリーキーガットシンドロームに関連する食品はこちら。様々な食品添加物は、私たちが日々スーパーなどに目にする製品にもたくさん入っています。特に、日本は乳化剤に対する規制の緩い国なので、原料名には「乳化剤」としか記載されておらず、具体的な乳化剤の種類などは書かれていません。 食品で表すと: 精製された炭水化物(チップスやお菓子など) サラダ油 砂糖 人工甘味料 加工食品 加工肉 などの、美味しくてついつい手が出ちゃう加工製品や、安くて美味しい食品などにたくさん入っています。こういった食品の中に含まれている添加物は、主に腸粘膜を損傷し、善玉菌に悪影響を及ぼし、体に炎症を起こすと言われています。しかし、現実的に考えると、こういった添加物はいろんな食べ物に入っていますよね。 ここで注意して欲しいことは、これを食べたからといって、リーキーガットシンドロームに必ずしもなるというわけではありません。しかしこの過去10年間においても、グルテン過敏症やセリアック病は急激に増加しています。最近、グルテン過敏症やセリアック病が増えてきたのは、現代において、小麦粉ベースの製品の摂取量が急増、添加物が入っている製品の摂取量が急増したからではないか、という研究討論がされています。 現在の推奨事項 それでは、現在の時点で、腸の働きを改善するための推奨事項にはどういうことがあるのか?以下の推奨事項があります。 発酵食品を食べよう:ヨーグルト、キムチ、ザワークラウトなどに含まれている善玉菌は胃腸疾患に有益であることが示されています。 人工甘味料摂取を制限しよう:過剰摂取は、腸バリア機能を損傷する恐れがあります。 プリバイオティクス(食物繊維)を食べよう:果物・野菜・穀物などに含まれているプリバイオティクスはプロバイオティクスの餌になるため、腸の活性にも繋がります。 プロバイオティクスサプリメントを摂取しよう:プロバイオティクスは消化器疾患に有益であることが示されています。 必要な時だけ抗生物質を取ろう:イブプロフェンのようなNSAIDの長期使用は、リーキーガットシンドロームの一因となります。 腸内の善玉菌を増やすと、腸の健康が改善し、リーキーガットシンドロームを防ぐのに役立ちます。 次回、グルテンに関する病気についてお話ししたいと思います。お楽しみに!
セリアック病の紹介:セリアック病ってなーに?
セリアック病は小腸に影響する自己免疫障害で、別名、 “セリアックスプルー”(Celiac sprue)、またはグルテン過敏性腸症(gluten sensitive enteropathy)とも呼ばれ、グルテンが含まれている食品を摂取してしまうと、小腸にダメージを起こしてしまいます。 セリアック病を持っている人は、腸の粘膜にある絨毛が平らになり、吸収不良を引き起こしてしまいます。この病気は世界人口の約1%に影響を与え、セリアック病のいくつかの病状には、腹部の膨満や痛み、下痢、疲労、体重減少、貧血が含まれ、他にも深刻な健康上の問題を引き起こす可能性もあります。一般成人には、貧血、骨塩密度の低下、疱疹状皮膚炎、口内潰瘍、頭痛、関節痛などの症状も見られます。それ以外でも、吸収不良が原因で、特定のビタミンやミネラル不足に関連してしまう可能性もあります。そのため、セリアック病と診断された場合は、グルテンフリーの食事を厳守する事が非常に重要です。現在セリアック病の治療法はありませんが、症状はグルテンフリーの食事で管理することができ、腸の治療も促進することができます。 セリアック病のリスク要因と診断方法 セリアック病のリスク要因には以下のようなことがあります: 自分の家族内でセリアック病を持っている人がいる 既存の自己免疫障害、ダウン症候群、アジソン病、がある セリアック病は普段、血液検査や内視鏡検査によって診断され、小腸の絨毛の扁平化が視察されます。偽陰性がないことを確認するために、血液検査の前に個人が最低2週間ほどグルテンを継続的に摂取することは非常に重要です。 グルテンが存在しないか、継続的に摂取されていない限り、身体は免疫応答を持たないため、テストで正確に結果が出ません。 グルテンを避けるためのアドバイス: グルテンを含む食材は:小麦、ライ麦、大麦。グルテンフリーの穀物はたくさんあり、セリアック病の人でも摂取することができます。お米はもちろん、キヌア、きび、とうもろこし、ソルガム、そば、アマランス、などもグルテンフリーの穀物に入ります。多くの製品、特に加工食品は、予想外にグルテンが含まれている可能性があるため、食品を購入する場合、注意深く見る必要が重要です。レストランのサーバーにセリアック病であることを通知して、キッチンでの相互汚染を防ぐことも非常に重要です。セリアック病の一部の個人は、他の人よりも交差汚染に対して遥かに敏感である可能性があります。 アスリートへの影響 高強度の運動は胃腸(GI)にストレスをかける可能性があるため、セリアック病のアスリートには非常に厳密なグルテンフリーダイエットを実施し、GIにストレスがかからないようにすることが重要です。 上記のように、小麦、大麦、ライ麦の代わりに摂取できるグルテンフリーの穀物がたくさんあります。 リストされているグルテンフリーの穀物はすべて、私たちの激しい運動をサポートするのに役立つ炭水化物の優れた供給源です。 繊維、ビタミン、ミネラルが多いので、全粒穀物を消費することが重要です。 アスリートの誰かがセリアック病を患っており、運動のために適切に燃料を補給するのに苦労している場合、 彼らを効果的に助けることができるように、彼らにスポーツ栄養士を紹介してください。 参照 “Celiac Disease.” Mayo Clinic, Mayo Foundation for Medical Education and Research, 16 Sept. 2019, www.mayoclinic.org/diseases-conditions/celiac-disease/symptoms-causes/syc-20352220.
全粒粉 vs. 精製穀物:相違点は?アスリートはどっちを食べればいいの?
全粒粉や全粒穀物を使った商品などを購入するのは健康にとって、とても重要。全粒粉とは、グルテンが含まれている、いないに関わらず、穀物全体をそのまま粉末にしたものです。全粒粉の種類として、スペルト粉、きび粉、玄米粉、蕎麦粉、ライ麦粉、全粒小麦粉などがあります。そして、この全粒穀物には3つの成分があります: 表皮 / ブラン (bran):タンパク質、Bビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富 胚乳 (endosperm):ほとんどがデンプンと少量のタンパク質 胚芽 (germ):脂質、Bビタミン、ビタミンE、必須アミノ酸、セレン、鉄分 一方で、精製された穀物(白米、薄力粉、小麦粉など)は、既に精製されているため、ブランと胚芽が含まれず、胚乳のみ。そのため、精製された穀物からは、ブランと胚芽に含まれている栄養素がゲットできません。どういった栄養素が失われるのでしょうか? ビタミン B:細胞機能とエネルギーの栄養素の分解を助ける ビタミンE:細胞の損傷を防ぎ、病気から保護するための抗酸化物質のように機能する 食物繊維:心血管系疾患の予防、腸機能の調整、満腹感の増加、血糖値の調整に役立つ ブランや胚芽が含まれなくなると、こういった健康上の利点を失うことになります。さらに、全粒粉はより堅牢でナッツのような風味を加え、調理するとその食品をさらに美味しくしてくれます。 商品を購入する時に、原材料名を見るのは大事。原材料は最も一般的な名称で、使用した重量の割合の高い順に表示されています。そのため、最初の原材料が“全粒粉”または、“全粒○○粉”のものを選びましょう。“全粒粉パン”という名前の商品でも、原材料名の最初の原材料が“薄力粉”の場合が多々あります。それはどうしてかというと、ほとんど薄力粉を使って作っているパンの中に、少しでも全粒粉が入っていることで“全粒粉パン”と書いて健康志向の人に買わせようという営業戦略もあるからです。その他にも、原材料名はシンプルで読みやすく、少数の原材料リストが書いてあるものを選びましょう。どれだけ栄養表示が良いからといって、添加物がたくさん入っていると、健康に良いとは言えませんよね。ですから、できるのであれば、コンビニのパンよりも添加物が少ない地元のベーカリーで焼きたてのパンを選びましょう。 精製穀物とアスリートへの影響: 全粒粉は健康のためには、とても大切です。先ほど説明をしたように、ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれています。しかし、高強度なトレーニングをするアスリートは、高食物繊維の食事を摂取すると胃腸に不快感を与えてしまう可能性があります。食物繊維は、健康面ではとても良い利点がありますが、多量摂取はガスや膨満や腹痛などの症状を起こす可能性があります。この症状には個人差があり、全アスリートに症状が起こるとは限りませんが、これはトレーナーやスポーツプロフェッショナルにおいて知っておく必要があります。胃腸の不快感を感じると訴えているアスリートは、スポーツ栄養士に相談しましょう。 精製穀物は単糖類と見なされます。これはどういう意味なのかというと、単糖類は消化しやすいため、単糖類が分解されてエネルギーとして燃料として使われるのが、全粒穀物と比べるととても早い。そのため、単糖類は試合の数日前から、または試合当日前後に摂取するとエネルギーになりやすくなるため最適になります。詳しい食事プランはスポーツ栄養士と相談しましょう。 単糖類が含まれている食品は小麦粉、白米、焼き菓子だけではなく、果物や乳製品も含まれます。しかし、果物は食物繊維が含まれており、そして乳製品もアスリートによっては、胃腸の不快感を与えてしまうかもしれません。果物や野菜は調理をすることにより、食物繊維が分解され、単糖類でありつつ栄養素が高い食品を食べることができます。試合の前後に単糖類を食べることで、すぐに自分のパフォーマンスにつながるエネルギー補給ができ、グリコーゲン貯蔵を回復することができます。そのため、アスリートが次の競技のために自分の体を準備するのに役立ちます。特にトーナメントなど複数の試合を1日に行う時には単糖類は必須になってきます。個別の栄養に関する推奨事項については、スポーツ栄養士に相談してください。
グルテンにまつわる症状・病気を知ろう!
前回の栄養の記事でセリアック病のことについてお話ししました。 しかし、それ以外にもグルテンにまつわる病気があること、知っていましたか? セリアック病ではなくても、グルテンが原因で胃腸の調子が悪くなってしまう人が最近増えているため、セリアック病以外のグルテンにまつわる病気をご紹介します! 非セリアック病グルテン過敏症(Non-Celiac Gluten Sensitivity): セリアック病ではないのに、グルテンを含む食べ物を食べてしまうと、お腹が張ってしまう、胃腸の調子がおかしいというような方は、自分自身または周りにいるのではないでしょうか? 「私の胃腸、グルテンは受け付けないのかな?」と思う人も、少なくないと思います。 これらの場合、セリアック病を持ってない限り、非セリアックグルテン過敏症と診断されます。セリアック病と似ていて、腹痛、膨満、ガス、吐き気、頭痛、疲労などの症状も引き起こすこともあります。この病気は最近よく出てきていて、グルテンを食べるとなぜかお腹が痛くなるため、避けている人のことを表します。まだこの病気の研究は少なく、原因やメカニズムが明確ではないため、NCGSを特定するためのテストやバイオマーカーはありません。しかし、過敏症の一つの研究では、過敏症を持っていると思っている患者さんの86%がグルテン摂取可能だったという研究結果が出ていて、(Capannolo, A. 2015) もしかしたら、これはSNSなどのグルテンフリートレンドや栄養知識の誤解をしている人たちの行動が影響なのではないか、という議論もあります。 グルテン過敏症を診断するには、まずセリアック病、小麦アレルギー、その他の症状の原因を除外する必要があり、 グルテンフリーの食事療法を行ったときに改善が見られた場合、グルテン過敏症と診断されます。 グルテンはセリアック病のように厳守制限する必要はないですが、できるだけ取らないことにより症状が改善される人がよく見られます。 小麦アレルギー 小麦アレルギーはセリアック病の免疫反応とは異なり、小麦に含まれる何百個のタンパク質に対するアレルギー反応になります。B細胞と呼ばれる白血球が免疫グロブリンE(IgE)抗体を送り、小麦を攻撃します。体の組織は、問題があることを体に警告するため、自然科学メッセンジャーを送り、結果、アレルギー反応を起こします。症状は、数分から数時間以内で吐き気、腹痛、痒み、唇や舌のはれ、呼吸困難、アナフィラキシー(生命を脅かす反応)まで様々な症状を伴うことがあるため、小麦アレルギーを持っている人は小麦摂取を厳守制限しなければなりません。 小麦は何に入っているの? 小麦やグルテンを厳守制限しなければならない人たちは、何を避けるべきなのか? ケーキ、クッキー、パン、パスタ、クラッカーなどの食べ物は小麦やグルテンが入っていることが明白ですよね。しかし、いくつかは隠れて含まれている場合があります。例えば醤油、コロッケや天ぷらの衣、ソース、ハムやソーセージの加工食品、サラダドレッシングにも使われている場合が多々あります。そのため、商品を買う場合は、ちゃんと原材料名をチェックしてグルテンが含まれていないかチェックする必要があります。 また、外食時には、レストラン側にグルテンアレルギーのことを報告しないでいると、交差汚染をする可能性もあります。例えば、揚げ物は、グルテンフリーのはずのポテトフライなど頼んでも、違う揚げ物(パン粉を使うコロッケ)を揚げた油で一緒にしてしまうと、交差汚染をしてしまい、グルテンフリーではなくなってしまいます。 また、シェフなどがグルテンフリーの重要さを知らないと、グルテンフリー製品を不適切に取り扱ったりしてしまう可能性もあるため、外食時には、しっかりとレストランのシェフに報告することをお勧めします。 Autoimmune Disease(セリアック病) Wheat Allergy(麦アレルギー) Non Celiac Gluten Sensitivity(非セリアックグルテン不耐性) 何か 遺伝的な自己免疫障害で、グルテンが小腸を損傷する引き金となる 小麦に含まれているタンパク質が免疫反応を起こす(グルテンも含まれる可能性あり) グルテンや他の小麦成分の不耐性があるが、小腸は損傷しない 症状 下痢、膨満、腹痛 吐き気、嘔吐、下痢、膨満、口や喉のイガイガ感 下痢、膨満、腹痛 腸外所見 減量、栄養失調、鉄不足、虫歯、骨量減少、肌問題、神経障害、肝障害、関節痛、脱毛、疲労など 蕁麻疹、発疹、鼻詰まり、目の炎症、呼吸困難 物忘れ、神経障害、関節痛、疲労 陽性抗体検査 ある なし 変動する 異常な腸生検 ある なし なし 治療 グルテンフリーのライフスタイルを厳守 小麦フリーのライフスタイルを厳守 小麦フリー・グルテンフリーの食事を実践(人によって厳守レベルは変わる) ジョコビッチとグルテンフリー 皆さんは、プロテニス選手のノバク・ジョコビッチさんがグルテンフリーダイエットを従っていることは知っていますか? 私はよく、ジョコビッチさんのグルテンフリーダイエットのことについて聞かれることがあるので、そのサイエンス的な真実についてお教えしたいと思います。 ジョコビッチさんは、今では有名なテニス選手ですが、2009年までは複数のオープン戦などで断念し、敗退などもしてきました。当時の彼は、疲労や怪我がとても多かったそうです。2010年に、たまたまテレビでジョコビッチさんが出場しているオーストラリアオープンの試合を見ていた医者がジョコビッチさんの異変に気づき、検査をしたところ、セリアック病と診断されました。具体的に言うと、グルテンと乳製品と少しトマトの不耐性という結果でした。実は、彼の実家はピザ屋を営んでいたので、家族はとてもびっくりしたそうです。 しかし、それからグルテンフリーの食事に変えたら、2週間でポジティブな変化が起きたそうです。その後、現在2020年までにタイトル10回優勝、グランドスラム3回優勝、43回連勝など数々の成績を残していきました。 ジョコビッチさんの体にはいったい何があったのか? 彼はセリアック病でグルテンを摂取していたため、栄養が胃腸から漏れ、吸収されず、エネルギーが不足し、常に体のガソリンが低い状態で試合に望んでいました。その結果、疲労などパフォーマンスに悪影響を及ぼしていったのです。 しかし、セリアック病だとわかり、グルテンフリーの食事にしたことにより、体の炎症を起こす引き金がなくなり、症状の改善が見られ、栄養が行き渡り、パフォーマンスにいい影響が出たといえます。 ジョコビッチさんは、セリアック病だったからグルテンフリーの食事法を厳守したことによって心身ともに変化をしました。もしもセリアック病がなく普通の健康な人であったら、グルテンフリーの食事法を守る必要はない。といわれています。 さらに、ジョコビッチさんはグルテンフリーの食事法だけではなく、マインドフルなこと(ヨガを毎日やり、食べる時は食事のみに集中する、など)や健康的でバランスの良い食事を心がけました。 その結果、ジョコビッチさんの本のタイトルでもある「ジョコビッチの生まれ変わる食事」のように、セリアック病を持っていたジョコビッチさんだったからこそ、グルテンフリーの食事法を取り入れたことで、生まれ変わることができたのだと思います。 最後に改めて言いますが、セリアック病・小麦アレルギーをもっていない人はグルテンフリー食事法に従っても、ジョコビッチさんのようなパフォーマンス向上に繋がるとは限らず、メリットはそれほどありません。 アスリートへの影響 小麦を含む食べ物は炭水化物が豊富なものばかりで、アスリートがこういった症状を持っていたら、大切な燃料が摂取しにくくなってしまいます。強度の高い運動などは炭水化物が主なエネルギーになり、アスリートのパフォーマンスには必要不可欠になります。幸いなことに、グルテン厳守制限をしなければならない人が食べられる、グルテンの含まれていない炭水化物が豊富な食材はたくさんあります。例えば、豆類、乳製品、果物、果物・野菜ジュース、根菜類(じゃがいも、サツマイモ、ゴボウなど)、糖類(はちみつ、砂糖、果糖、メープルシロップなど)もグルテン厳守制限の人でも安心して食べられます。 胃腸の不快感があり、グルテン不耐性かもしれないと思った場合には、スポーツ栄養士に相談して、食事からグルテン摂取を除去する必要があるかもしれません。小麦アレルギーは、アレルギーテストで診断できます。こういった症状などが出た場合は、栄養士に相談して、食事と運動のメニューの改善が必要になっていくかもしれません。
日本人は鉄分不足が多い!?鉄分の真相
皆さんは、鉄分をしっかりと摂取できているか考えたことはありますか? 鉄分は、体を適切に機能させるために欠かせないミネラルの一つであり、体全体に酸素を運ぶのを助ける仕事をしてくれます。 それはどう言う意味なのか? 私達の体は呼吸によって、酸素を取り込み、その酸素は心臓へ、そして体全体へと行き渡ります。鉄分は筋肉や細胞まで行き渡り、体を動かすために必要な栄養素であるため、たくさん動くアスリートは普通の人よりも更に鉄分が必要になります。 鉄分の役割は以下のように数多くあります。 赤血球の形成:ヘモグロビンとして、酸素を血流の中、体の中に送り込む。 免疫:感染症などから細胞を守るために戦う 神経機能:神経伝達物質や脳にも鉄分が関わっている 鉄分をしっかり摂取していないと、貧血になってしまい、息切れ、疲れやすい、寒気などを経験したり、最高のパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。 Graph 1. 日本のジュニア選手の貧血の割合。Retrieved from jfa.jp 日本人は、貧血の割合がもともと多く、とくに鉄分をより必要とするアスリートは貧血になりやすくなってしまいます。このグラフを見ると、陸上選手が一番多いのですが、男性のサッカー選手も割合は35%と、3人に一人は貧血という割合で貧血の方がいます。 特にアスリートは日本・海外と関係なく、とても高い割合で鉄分不足があることがわかっています。割合で言うと、男性は3~11%、女性は月経で鉄分ロスが起こることがあるため、15~35%となっています。 特に、以下の4つのグループは鉄分不足になるリスクが高いグループです: 女性:月経からの鉄分ロスが起きる 持久系アスリート:毎回足が地面を打つことにより、赤血球が破壊される(フットストライク溶血) ベジタリアン・ビーガン:肉などの動物性由来の鉄分を取れない人 低エネルギーアベイラビリティ(エネルギー不足の方):食事では十分な鉄分摂取が達成できない 鉄分は体内では合成できないため、外因的に摂取する必要があります。つまり、鉄分は全て食事またはサプリメントによって取らなければならないのです。 鉄分が多く含まれている食品は: 動物のレバー(特に豚レバー) 魚:あさりなどの貝類・サバ ほうれん草 ひじきなどの海藻類 など 食事からは、2つの鉄分の形態(ヘム鉄分と非ヘム鉄分)を摂取することができます。非ヘム鉄分はプラントベース(植物性)で1mgの非ヘム鉄分を食べても、2~20%の鉄分しか吸収されません。その一方で、ヘム鉄分は動物性の食べ物に含まれていて、1mgのヘム鉄分を食べることで、5~35%分の鉄分が吸収されます。ベジタリアンやお肉を食べない人はヘム鉄分のような吸収率が高い食材を食べないため、この理由から、鉄不足のリスクが高まってしまいます。そして、非ヘム鉄分のみで十分に摂取しようとする場合、量がとても多くなってしまい、推奨量を植物性のみで摂取するのは非常に難しいのです。そのため、少しでも吸収率をアップするために、一緒に組み合わせて食べると、吸収率を向上させるものと阻止してしまうものを覚えておきましょう。 鉄分はビタミンCと一緒に組み合わせて食べると吸収率が上がります。例えば、ほうれん草サラダにトマトや生ピーマンを加える。焼き鳥レバーにレモンを少し絞る。など、ほんの少し組み合わせを変えるだけで同じ食べ物の量で体に吸収される栄養価が変わっていきます。 その一方で、タンニンやポフィフェノールというお茶やコーヒーなどに含まれている成分、カルシウムを含む食材は吸収を阻害してしまうことがあるので、アスリート個人に推奨するときには、この点も考慮しなければなりません。 現在、日本の一般人(18〜64歳)の推奨量は 男性:7.5mg 女性:6.5mg (月経なし)、10.5mg (月経あり) おそらく、アスリートの鉄分推奨量はこれよりももっと多いでしょう。 そもそもこの一般人のための推奨量は世界と比べるとどうなのでしょうか? 現在の日本の一般人の推奨量を世界と比べてみましょう。 アメリカ 男性成人:8 mg 女性成人:18 mg オーストラリア 男性成人:8 mg 女性成人:18 mg 中国 男性成人:8 mg 女性成人:18 mg 韓国 男性成人:8 mg 女性成人:12〜15 mg 世界多数の国の女性の鉄分推奨量では、月経のあるなしに関係なく、日本の推奨2量の倍程度を推奨しています。 その結果を表す鉄分不足率(ヘモグロビン<12g/dL)がこちら: アメリカ(PLoS ONE. 2016. 11(1)) 男性成人:3.5% 女性成人:7.6% オーストラリア (Asia Pac J Clin Nutr. 2008:17(1)) 男性成人:0.3% 女性成人:10.6% 中国 (World J Transl Med 2015; 4(2)) 男性成人:0.7% 女性成人:6.3% 韓国 (J. Korean Med Sci. 2014: 29(2): 224-229) 男性成人:0.3% 女性成人:11.5% 日本 (Int J Hemat. 2006: 84, 217-219)女性成人:22.3% ご覧の通り、日本の鉄分不足率は、他国と比べると高いのがわかりますよね。 ここで注意して欲しいのは、日本のデータは、2006年のもの(およそ14年前)であり、それ以降は見つけられなかったということ。このデータは約15年前のもののため、今とは異なっている可能性が大きくあり、現状の鉄分不足率を表しているとは言えません。もしかしたら、減っているかもしれないし、逆にもっと増えている可能性だってあります。 どうして他の国々では鉄分が多く取れるのでしょう? 最大の理由として、法律により、様々な商品への鉄分添加が義務化されているということがあります。アメリカ・オーストラリアでは、小麦粉や穀物類に鉄分を添加しています。そのため、毎日主食に食べるパン、シリアル、小麦を使った焼き菓子などには鉄分が含まれているので、割と簡単に鉄分を摂取することが可能です。 また、中国では、アジア人には欠かせない調味料、醤油に添加しています。ほとんどの人が日常的に使っている調味料に添加していると、鉄分摂取量も上がります。 それでは、鉄分添加が義務化されていない日本ではどうやってもっと鉄分を取れるのでしょうか? ① ビタミンCを含む食べ物(果物、生野菜など)と一緒に食べる:ビタミンCは鉄分の吸収率を上げてくれる役割をしてくれます。 a. ステーキとトマトやピーマン含むサラダ b. ミートトマトスパゲッティ c. 鶏レバーにレモン汁 などなど・・・ ② 食事を食べる際はコーヒー、緑茶は避ける(食後はOK!):コーヒーや緑茶に含まれているタンニンという成分は鉄分の吸収率を下げてしまいます。そのため、コーヒーや緑茶は食後にしましょう! ③ 植物性よりも動物性:動物性に含まれている鉄分は植物性よりも吸収率が高いため、牛肉、豚レバー、わかさぎ、あさり、ハマグリ、マグロの赤身などを積極的に取り入れましょう。 ④ もちろん、植物性も立派な鉄分!:動物性のタンパク質はそんなに食べない、ベジタリアンの方も、植物性でもしっかり取れます。これにビタミンCを含む食材と一緒に食べ合わせると、吸収率ももっと上がります。ひじき、高野豆腐、ほうれん草、納豆など、鉄分を含む植物性のものにビタミンCを一緒に入れてあげましょう! 最後に 日本の鉄分不足問題は、得に女性にとっての大きな問題であり、アスリートになると更にリスクが高くなります。それを少しでも軽減するため、鉄分を含む食事をとるのは大切です。鉄分不足の症状(疲労、めまい、パフォーマンスが上がらない、など)が疑われるアスリートには、すぐに栄養士に相談して、介入しましょう!