マイクロラーニング
隙間時間に少しずつビデオや記事で学べるマイクロラーニング。クイズに答えてポイントとコインを獲得すれば理解も深まります。
極限のパフォーマンスか理想的な健康か? どちらかひとつを選ぶ!
特定のスポーツや活動は健康的な動きをもたらすかどうか、多くのクライアントから私の意見を求められることがあります。たとえば、ヨガ、ランニング、水泳、ウェイトトレーニング、バレエ、サッカー、体操、クロスフィットなど(特に子どもたちにとってこれらの活動が健康的であるかどうか興味をお持ちのようです)。興味深い質問だと思います。なぜなら、みなさんが思いつくたいていの身体活動には長所と短所が必ずありますから。当然ですが、すべての人に個体差があり、スポーツや個人により異なるというようなことを答えています。また、私の考える「特殊化の大統一理論」についても言及します。「大」と「統一」というぐらいですから、これはほとんどのすべての活動に共通することで、次の様に説明できます: 一般的に、どのようなスポーツや活動でも、初心から中級へと漸進すると、筋力や有酸素能力などの今まで十分に発達していなかったフィットネスの質を改善することによって、総体的にみれば動きの健康に効果があるでしょう。また、身体コントロールやバランス、視覚と手の協調の発達によって身につく基本的な運動スキルが改善されることでしょう。このようなフィットネスの質やスキルは、他の分野へ移行できる可能性があります。そして、実施していることは、おそらく十分に低いレベルの強度や頻度で、ケガや過剰負荷を最小限に抑えられるものでしょう。これはよいことです。 しかし、中級からエキスパートへの漸進では、動きの健康にマイナスに働く可能性がずっと高くなります。みなさんが発達させる動きの技能とフィットネスの質は、もっともっと特異性を増し、他の分野での活用がより低くなってきます。そして、さらに重要なことに、これらの適応は、極限レベルの物理的なストレス下に身体を置くことよってしか得られないということがあります。そうなると、オーバートレーニングやケガのリスクが高くなります。 一般的なルールを簡潔に言えば、もちろんたくさんの例外はあるものの、たいていのスポーツや活動は中級レベルまでは、身体に良く、それ以上のレベルでは身体に悪くいものになります。それぞれ異なるスポーツや活動の状況で、このルールがどのように展開するか説明しましょう。 美的な動きの鍛錬 体操やダンス(特にバレエ)は、中級まではとても健康的な活動であると思うのですが、一流レベルのパフォーマンスになると、とても悲惨な状況になるという良い例でしょう。これらの良い点は、身体の制御に関する素晴らしい一般教育を提供してくれるということです。高い成功を収めたソビエトスポーツ開発プログラムは、体操こそが、どんなスポーツ選手にとっても一般的身体準備(GPP)の重要な要素であると考えました。ダンサーや体操選手との私個人の経験から、彼らは、動きの動作を比較的簡単に修正できる大変素晴らしい身体感覚を持っていると思います。 ただ、悪い点は、目標を達成していくある段階で、これらのスポーツは身体に多大な負荷を与えてしまうことです。特にバレエにおいては明らかです。つま先で歩いたり、つま先を外側に向けたりすることで、足や股関節にはひどいストレスがかかります。動いている身体の外見ばかりに過剰な焦点を当てるということは、身体がどう感じるか、または身体がどう動くかとは対照的に、自己イメージを形成するのに不健康な方法である可能性があります。 チームスポーツ サッカー、野球、バスケットボール、ホッケーなどは、ストレングスやスピード、耐久性やパワーといったフィットネスの質を幅広く発達させます。同時に、視覚と手の協調性や空間認知、アジリティー、片脚バランス、または蹴る、投げる、泳ぐ、ランジなどの基礎的な動きのパターンなど多くの基本的運動技術も提供してくれます。(ところで、音声認識ソフトのドラゴンディクテイト(Dragon Dictate)に最後の文章を収録した時、“スウィンギングとランジング”というのを“スィンギングインロンドン”と書き起こしてしまいました!) チームスポーツの欠点のひとつに、体操や移動性の高いスポーツのように身体内部に注意を払うことの重要性を忘れ、身体外部(たとえば、ボール、相手、ゴールラインなど)に注意を払い過ぎてしまうことがあります。人気のあるスポーツを観戦するだけでも、最高レベルの試合では身体に甚大なダメージを負うことがすぐに分かります。30歳を過ぎて一流選手の座を維持できるのはほんのわずかな人たちです。趣味レベルの選手でさえも45歳を過ぎれば試合は難しいと感じます。 フィットネススポーツ ランニング、水泳、サイクリング、ウォーキング、クロスカントリースキー、ボートはすべて原始的な全身運動を伴う周期的でリズミカルな反復性の動きです。この種のエクササイズは、有酸素能力の発達や代謝の健康の維持、集中した瞑想的鍛錬のメンタル状態を生み出すことに効果があるようです。 レジスタンストレーニングは、代謝や心身の健康に多いに効果があると示されました。そして、年をとればとるほどレジスタンストレーニングの重要性が増すと考えられています。 しかし、あなたが向上させようとしているフィットネスの質がどのような種類のものであろうと、その分野の一流の業績は、必ず他のフィットネスや健康の犠牲の上に成り立っています。ウェイトリフティングをすればするほど、走り難くなり、またその逆もあります。1マイル歩くのがやっとというパワーリフトのトップ選手もいます。マラソンのトップ選手でも、腕立て伏せがほとんどできないこともあります。両者とも、素晴らしい成果が評価されるべきではあっても、彼らの健康が羨ましがられることはありません。ある意味で、実際あなたの身体は1マイルを4分以下で走ったり、何千ポンドもあるウェイトのデッドリフトなんてしてほしくないのかもしれません。こうした能力は、限られた健康リソースを、ある特定の方向に、不健康なほど過度に振り向けてしまう恐れがあることをほのめかしています。 内的鍛錬 太極拳やヨガ、フェルデンクライスなど、ある種の武道やゆっくりとした瞑想的動作の鍛錬には、計り知れない潜在的な効果があり、そのことについて私はブログを通じてよく書いています。これらは、動きに対する脅威値を下げることができ、慢性疼痛の助けとなり、新しい動きのパターンを構築し、単なる動きという枠を超えて自己認識をさらに成長させます。 私はこのような動きの練習が 大好きではありますが、こうした訓練における内的集中の度合いが、ときに行き過ぎてしまうことに思いを馳せなくてはいけません。必ず、自分とは対極にある人や客観的計測値が提供してくれる現実世界の厳しさに自らを照らし合わせ、バランスをとらなければならないのです。こうしたことが、独善的な内的探求がもたらす気味の悪い逸脱へと踏み外すのではなく、現実という地に足をつけさせてくれるのです。 結論 みなさんが、取り組んでいることのなかで最高のレベルを目指すことに何ら問題はありません。それは、とてもやりがいのあることです。実際、私はさまざまなスポーツにおいて、潜在能力を発揮するために多大な時間と努力を費やしてきましたし、今もそうしています。しかし、このことが私自身をより健康にしているとは考えにくいのです。健康は常にバランスを必要とします。極限のパフォーマンスか、理想的な健康か。どちらかひとつを選んでください!
トップエンドスピードドリル
車庫の中などのセミナー限られたスペースでも、スプリントのためのトレーニングができる?SAQのエキスパートであるリー・タフトが限られた空間でのドリルのアイデアをシェアしてくれます。
Kaori’s Update #15 - 基礎的な有酸素能力の重要性
グレイ・クックのパフォーマンスピラミッドでは、ムーブメントの基礎の上にパフォーマンス、そしてスキルが築き上げられています。人体生理にとって重要な心臓血管系の能力を高めるためにも、まず、しっかりとした基礎を築くことが大切なのではないでしょうか?
筋膜の構造
筋膜の二重格子状の構造が伸長された状態で固まってしまったり、短縮した状態で固まってしまったりすると、組織にはどのような変化が起きるのでしょうか?アリゾナでの筋膜解剖コースのイントロであるレクチャーからの抜粋をごらんください。
発達性運動:パート1
幼児の運動は、複雑な運動を構成する基本要素である一連の基礎的運動パターンを、漸進的に学習することで発達します。たとえば、幼児がさまざまな姿勢で床に横になったり座ったりしている間、周囲が見渡せるように頭部の位置を安定させようと学習します。頭部の安定化のスキルは、立位や歩行に必要な姿勢制御を構成する基本要素です。興味がある物をつかもうと手を伸ばす時、腕と体幹の協調パターンを学びます。それは、ハイハイや歩行、最終的には投げる動作や登る動作にも反映します。 幼児が、仰向けからうつ伏せに寝返りをうつ時、片方の脚を安定させながら、もう一方の脚を持ち上げ動かします。これは、移動運動の基本を構成するスキルです。這う動作では、歩行に移行される四肢が斜めに交差するパターンを使用します。そして、しゃがむ動作では、3つの伸展と屈曲のパターンを習得します。これは、ほぼすべての立位で行うパワー系の運動の基礎になります。(ところで、これらのパターンのいくつかは、他と比べてより基礎的なものもあります。ハイハイをすることなしに歩行を習得する子どももいますが、頭の安定化ができずにそれを習得する幼児はいません。) 幼児期に身についた基礎的運動パターンは、いろいろな名称で表現されています:運動の原型、相乗作用、原始的パターン、発達パターンなど。これらは、数多くの運動レパートリーを生み出すために、さまざまな方法で結びつく神経制御プログラムと考えることができます。 そういう意味で、運動は言語のようなものです。基礎的運動パターンは文字や簡単な語彙のようなもので、それらが組み合わさることでより複雑な文を作ることができます。口語では、比較的少ない語彙でも千差万別の考えを伝えることができます。同様に、スポーツやダンスで見られる複雑で変化に富んだすべての運動も、歩行、スクワット、リーチ、回旋などの、はるかに少ない基本的な運動パターンに分解することができます。ダンスのアラベスクは、サッカーにおけるフリーキックのバックスウィングにとてもよく似ています。これらは、同じ基本的な運動の原型から成り立っているからです。 この組み合わせシステムは、神経制御という点において複雑な構造の形成をより簡単にします。私たちが思い浮かべる思考を表現する語彙をその都度覚えなくてはならないとすれば、きっと脳は正しい思考を伝えなくてはと正しい語彙を保存したり検索したりする困難さに圧倒されてしまうでしょう。限られた量の語彙を記憶して、それを組み合わせる方が断然簡単です。 運動にも同じことが言えます。少ない数の一般的な運動パターンを組み立てて、より複雑な運動を形成する方が、神経系にとってより簡単です。これらの運動パターンに関与する筋協働は、動きやすくするように自由度や動きの選択肢を抑制します。 このシステムから読み取れることのひとつとして、もし基礎的要素のひとつが欠如していたり損なわれたりしていれば、その上に構築される構造全体が危うくなります。もし、言語においてとても基本的な語彙や文字が失われていたら、文を作ることに苦労することが多くなります。同様に、運動の語彙においても、スクワットなどの重要な運動の原型のひとつ、あるいはそれ以上が欠如していれば、日々の運動は広範囲で損なわれるでしょう。それとは逆に、もしスクワットのような動きを改善すれば、日常の動作の中にも多大な改善がみられるかもしれません。 今後の2つの投稿で、発達性運動パターンの向上と回復の2つの方法を紹介したいと思います:(1)四つん這いや斜め座りのような発達上の姿勢で行う運動と(2)デッドリフトやスクワット、プッシュやプルのような重い抵抗を用いた運動。それぞれの方法が大きく異なっているように見えるかもしれませんが、重要な共通要素があります:どちらも、理想的な発達パターンを促すために、運動の選択を制限します。また、特定の動作に対する特異性は高いが、他の場面では恐らく無用である運動パターンを阻止します。
股関節屈曲の理解とトレーニング
私のウェブサイトのフォーラムにおける最近の投稿で、複雑な質問に対して短い回答をすることは、大抵の場合、有効ではないということを実感しました。私のウェブサイトの読者の数名は、弱い、または、不活性の腰筋に関する最近の話は全て、人々が流行に乗っているだけだと思っているようです。私はそれに強く反対する一人です。 股関節屈曲の生体力学に関する知識の向上は、ここ5年間で私が学んだことの中で最も価値のあることの一つだと思っています。一般的に、股関節屈曲、特に腰筋を理解することにおける問題は、5つの筋肉に対して、そのうち4つは、残りの1つに対し、てこの位置が明らかに異なっているのに、「股関節屈筋」という一般的な言葉を使って総称されてしまっていることでしょう。私も、過去には、この業界の専門家の多くと同じように、股関節屈筋群の筋肉に対して何も区分けをしていなかったことを認めなければなりません。股関節屈筋群の筋肉は全て一緒に作用して股関節を屈曲しているようだというだけで、その時の私には十分でした。しかし、理学療法士のシャーリー・サーマンの著書を読み進めるうちに、私の股関節屈筋群に対する考え方は、他の多くの筋群に対する考え方と同様に変わったのです。 サーマンが著書「Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes (運動機能障害症候群のマネジメント)」で述べている見識は、ストレングス&コンディショニングの分野の障害における謎の多く、特に「股関節屈筋」や「大腿四頭筋」の肉離れの謎を説明しています。股関節屈曲の動作を理解する鍵は、股関節屈曲に関与している複数の筋肉の解剖学的作用を考えることです。股関節屈曲に関与することのできる筋肉は5つあります: 大腿筋膜張筋(TFL)、大腿直筋(大腿四頭筋の一部であり股関節屈筋でもあるところが異なっている)、腸骨筋、縫工筋、そして腰筋です。前述の通り、このうち3つの筋肉には共通するものがあり、2つは明らかに異なっています。 常套句ではありますが、ポイントは類似ではなく、相違にあります。大腿筋膜張筋、大腿直筋、縫工筋は全て腸骨稜に停止部があります。これは、これらの筋肉が股関節の高さまで股関節屈曲ができることを意味します。これは単純に機械的テコの原則による機能です。腰筋と腸骨筋は異なります。腰筋は腰椎すべてに起始があり、腸骨筋は腸骨の内側に起始があります。これにより2つのはっきりした違いが生まれます。 1. 腰筋は脊柱に直接的に働く。脊柱の安定筋および屈筋として働くことも可能である。 2. 腰筋と腸骨筋だけが股関節屈筋の中で、股関節屈曲を90度以上にすることのできる筋肉である。 腰筋および腸骨筋が弱い、または不活性の場合、大腿骨が股関節より上の高さまで動くこともありますが、これは腰筋および腸骨筋の作用ではなく、他の3つの股関節屈筋群によって生み出されたモメンタムによるものです。私はこの知識をもとに、腰痛や、「股関節屈筋の損傷」、「四頭筋の肉離れ」に対する私たちの知識は劇的に拡張されていると考えています。特定の障害の話をする前に、腰筋および腸骨筋の機能の評価方法を見ていきましょう。サーマンのテストはシンプルです。片脚で立った状態で、膝を胸の方向へひきつけ、放します。膝を股関節屈曲が90度より高い位置で10-15秒維持できないことは、腰筋、または腸骨筋が弱いことを示唆します。 他のサイン: - 腸骨陵の大腿筋膜張筋のエリアの攣り - 即時に起こる後傾による代償動作 - 左右への大きな骨盤移動 - トップポジションからの即時の下降と90度の位置における「キャッチ」 これらのサインは全て、クライアントまたはアスリートが弱い、あるいは不活性の筋肉を代償しようとしていることを示唆しています。大腿筋膜張筋の攣りは、典型的な相乗的優位の表れです。不利な位置で収縮を試みると、筋肉は痙攣します。股関節屈曲が90度を超えた状態では、大腿筋膜張筋はすでに収縮していて、不利なてこのポジションでは、保持するのに必要な力を発揮することができません。そのため、臀筋が不活性の状態でブリッジを行うとハムストリングが痙攣するのと同様に、結果として痙攣につながるのです。ハンギングニーレイズをしようとすると(代償動作につながるためほとんどの場合行われないエクササイズ)、痙攣や肉離れが起こるのは大腿直筋ですが、ここでも同じ影響が見られます。 試験者が、被験者が代償動作に長けていることを心配しているのなら、腰筋/腸骨筋のエクササイズとして私たちが開発し、気に入っている、より良いテストがあります。実際は、このテストは、ストレングス&コンディショニングコーチのカレン・ウッドによって開発されました。クライアント、またはアスリートの片足をプライオボックス(大抵の場合、61cmが良い)の上にのせ、膝を股関節より高い位置にします。両手は頭上もしくは頭の後ろにおき、足をボックスから浮かせた状態で5秒維持します。足を挙げられない、または保持できなければ、腰筋および腸骨筋が弱いことがわかります。負荷を加え、エクササイズをテストとして使うためには、側方からの抵抗やバンドを使って等尺運動の難易度を高めることができます。 股関節よりも低い位置からの腰筋のテストは、腸骨起始の股関節屈筋群が優位なてこのポジションにあるため、もともと無効だということは特筆すべきです。腰筋と腸骨筋のユニークな機能的関与を理解すると、弱い筋肉や不活性の筋肉が、いかにして腰痛および大腿四頭筋の損傷、両方の原因になり得るかがわかります。腰痛があり、股関節を90度以上屈曲できないと、クライアントやアスリートは腰椎を屈曲して股関節屈曲をしているような錯覚を作り出そうとします。膝を胸に近づけるように指示されたときに、何人のクライアントおよびアスリートが即座に腰椎を屈曲するかを観察してみてください。膝を胸に近づけるのと胸を膝に近づけるのには、はっきりとした違いがあります。膝を胸に持ってくること、および股関節より上に持ってくることは、腰筋と腸骨筋を使う、または使おうと試みることを強います。もしこれができなければ、下記のうちのひとつ、あるいは3つ全てが起こります。 1. アスリートやクライアントは、脊柱を屈曲して胸を膝に近づけるでしょう。最初の観察ではこれは同じように見えますが、腰痛という点からみると、これほどの違いはありません。腰椎の屈曲は骨盤変形の主要な原因です。股関節の動きを腰の動きで置き換えるアスリートやクライアントは腰痛になります。 2. アスリートやクライアントは、大腿筋膜張筋や腸骨に起始を持つ他の股関節屈筋を使って股関節を屈曲するでしょう。この場合、彼らは低レベルの大腿筋膜張筋の痛みを訴え始めるでしょう。これは、協働筋の酷使によるもので、大腿筋膜張筋の相乗的優位につながり、さらには腰筋および腸骨筋の機能不全につながります。これは屈曲姿勢を強いられるホッケー選手によく見られるものです。 3. アスリートやクライアントは、股関節屈曲をするために大腿直筋を使うでしょう。これがスプリンターやフットボールの40ヤードダッシュ時に起こる、謎の「四頭筋の肉離れ」です。この場合、障害の仕組みは上で述べたものと同様ですが、犯人は大腿筋膜張筋ではなく、大腿直筋になります。ほとんどの「四頭筋の肉離れ」や「四頭筋の損傷」は、多関節の大腿直筋に限られるということは特筆に値します。一般的に、痛みは大腿直筋が大腿四頭筋に入っていく腿の真ん中あたりに起こります。腰筋および腸骨筋は股関節の前側、臀筋は股関節の後ろ側にあります。弱い大臀筋はハムストリングの相乗的優位につながり、股関節伸展を代償するために腰椎伸展が起こります。これが、腰痛、股関節の前方の痛み(これもハムストリングを股関節伸展の主動筋として使うと、大腿骨のてこが変わり、関節包前部の痛みが起こる、というサーマンのポイント)、ハムストリングの緊張につながります。この逆は文字通り、弱い、または不活性の腰筋による、伸展ではなく屈曲による腰痛、大腿筋膜張筋および大腿直筋の損傷です。 障害予防や障害のリハビリテーションにおける鍵は、機能解剖学の正しい理解です。過去の過ちを繰り返すことをやめ、解剖学、生体力学の観点から学ぶことがまだまだたくさんあることを認識しなければなりません。少し深く学んだことで、私が解剖についてどれほど少ししか理解していなかったかに驚愕しました。私が過去3年間で読んだ中で、最も素晴らしかったものの一つがシャーリー・サーマンの次の言葉です。「筋肉が挫傷した場合、最初に行うことは、弱い、または不活性の協働筋を探すことです。」 怪我について考えるとき、それはただ起こるのではなく、物理の法則に沿って、機能解剖学に則った理由を持って起こるものなのです。
DNAと筋膜のコネクション
アリゾナで開催中の筋膜解剖コースのレクチャーより。身体を構成するすべてのものは筋膜=結合組織で包まれています。組織から細胞へ、細胞から遺伝子へ、染色体へ、そしてDNAまで、すべてが一つに繋がった人間の身体にとって、ムーブメントがいかに重要なのかをトーマス・マイヤースが語ります。
呼吸の構造と機能
アリゾナで開催されたトーマス・マイヤースのアナトミートレイン筋膜解剖コースのレクチャーから、人間の呼吸の働きと、呼吸に関わる構造に関しての興味深い話題をご紹介します。
発達性運動:パート2
前回の投稿で、幼児期に学習される発達性運動パターンは、成人の日常生活で使われるもっと複雑な動きの基礎的要素であるということを指摘しました。語彙や文字が組み合わさり文章を作るのと同樣に、これらの単純なパターンが組み合わさって洗練された動きを形成します。この組み合わせシステムが意味することの一つとして、もし基礎的要素のひとつに支障をきたせば、その上に構築される構造全体は危うくなります。たとえば、スクワットや回旋などの基本的な運動が制限されていれば、日々の運動は広範囲において損なわれるでしょう。このことを念頭に置きながら、これらの発達パターンが生まれる状況や、この状況が見過ごされたり衰退したりしているかもしれない成人の原始的パターンの向上や回復に役に立つかどうかを見てみるのは興味深いことです。 発達環境の重要な側面のひとつは、ポジションです。原始的な運動パターンは、仰向け、うつ伏せ、四つん這い、三脚ポジション、斜め座り、両膝立ち、片膝立ち、スクワットなどの発達上のポジションで習得されます。これらのポジションは、有益な発達パターンを習得しようとする幼児にとって潜在的な利点となります。そして、もっと重要なことに、このようなパターンを磨いたり取り戻そうとしたりする成人にとっても役立つ可能性があります。実際、マッサージや理学療法、コレクティブエクササイズ、ヨガ、ピラテスなどあらゆるリハビリのための運動や感覚入力のために、発達上のポジションは広く使用されています。その理由は下記の通りです。 安定性やバランスの要求の低減 まず、立位に比べて発達上の姿勢は安定性の要求が大幅に低減します。床の上では、単に動く部位が少ないことから、同時にコントロールする変数はより少なくなります。立位では、姿勢のバランスを保つために、足首や膝、股関節、脊椎などの協調活動が必須となります。膝立ちの姿勢では、足首と足は関わりがなくなり、それによって直立姿勢を保つための運動制御はより単純化します。さらに、重心が低く支持基底面に近いので安定性を増します。 仰向けの姿勢では、安定性の需要はほぼゼロに減少します。ですから、転倒への恐れを感じる必要が大幅に減少し、また、体が硬くなったり、力が入らなかったり、不快感を持ったり、運動プログラムを変更したりするような転倒の知覚に関連した不必要な防御機構も減ります。多くの場合、歩いたりしゃがんだりする際、転ぶ心配を意識的にしているわけではありませんが、転倒することがないように、無意識な神経系の顕著な活動が必ずあります。防御のための過剰な筋活動と制御されていない可動性の制限などが含まれるかもしれません。ある程度、発達上の姿勢がこの防御活動を軽減でき、これは立位ではかなり分かりにくい、運動パターンの回復も促進できます。たとえば、股関節の筋群がバランスや安定性を保とうとする要求に占領されていないため、スクワットで必要とされる股関節の完全屈曲が簡単にできるかもしれません。 固有受容感覚の増加 その他、発達上の姿勢のメリットは、床に身体が接していることで固有受容感覚のフィードバックが増えるということです。たとえば、立位の時よりも床に横になっている時の方が、脊椎や肋骨の形状や動きを知覚するのが容易になります。仰臥位では腰椎を床に押しつけることにより屈曲を知覚できます。立位では、このようなフィードバックは得られません。 制限の増加 興味深いことがあります。発達上のポジションが動きを改善する理由のひとつに、運動の選択肢を制限することがあります。床の上にいることで、ある意味、自由度は制限され、特定の動作を行う時に使われる運動パターンの数は減少します。よって、多くの潜在的な“悪い”運動パターンは使えなくなり、“良い”運動パターンはすべて残るわけです。(もし、発達上のポジションが基礎的運動パターンの使用を妨げるのならば、そもそも最初から発達なんか決してしなかったでしょう!)発達パターンが、運動の障害に対する数少ない解決法になっている場合は、そのパターンを見つけるのはより簡単です。 たとえばハイハイでは、片方の腕は必ず体重を支えなくてはならないので、歩行時よりも腕をどう使うかという選択肢は少なくなります。手が床に固定されるので、身体に対して腕が動くのではなく、腕の筋群は腕に対して身体を動かします。支持している腕は、反対側の支持脚と同調し、四肢の運動に斜めに交差するパターンが現れます。 歩行においても、同じ斜めに交差するパターンが維持されるべきですが、腕に余分な自由度があるために、必須ではなくなります。腕は体重を支える必要がなくなるので、反対側の脚との同調から自由に外れることができるのです。ハイハイの時のように、支持している腕の筋群が身体を前方へ“引き寄せる”必要がなくなり、代わりに、手を後へ引く操作ができるようになります。ハイハイの時の腕の“クローズドチェーンの感覚”をそのまま歩行でも感じるためには、スキーストックを持って歩くことを想像してみてください。ハイハイのように前方に伸ばされた手が、空中である程度の“固定支点”となり、そこから腕と体幹につながっている筋群が身体を前方へ引くことができます。このような方法で歩いてみれば、歩行中の腕と体幹の一体化をもっと感じることができるかもしれません。 つまり歩行は、ハイハイではより必須である原始的移動パターンを見過ごす機会を提供します。もし、この見過ごしが最終的にこのパターンに関する感覚運動健忘症という結果になるのであれば、再活性化するのにハイハイが役立つことでしょう。なぜならば、ハイハイは、単純な基礎パターンのみを維持しつつ、特異性の高い複雑な運動パターンを数多く使用する可能性を排除するからです。 もうひとつの例をみてみましょう。もし、私が仰向けになっている赤ちゃんで、胸骨から数フィート離れている、紐にぶら下がっている目の前のモノに手を伸ばしたいとします。そうするための関節運動の組み合わせと関連する筋活動パターンはかなり限られています。どの解決策にもほぼ含まれていることは、90度までの肩の屈曲;肩甲骨の前突、伸ばしている腕とは反対側への胸郭の回旋です。肩の屈曲と肩甲骨の前突、胸部の回旋の協働作用は、とても基本的なリーチングのパターンであり、投げる、打つ、押す、走る、歩くなど、数多くの場面で用いられる基礎的要素として用いられます。 さて、さらに自由度がある座位におけるリーチングのオプションを考えてみましょう。私の胸骨の前、数フィートのところにあるテーブルにあるパソコンのマウスに腕を伸ばそうとしているとします。仰向けだった時とまったく同じ筋の協働作用で行うこともできますが、他にも多くの選択肢があります。これらの多くは非常に特異的で、特有で、他の状況では使い道のないことがあります。たとえば、肘を屈曲し股関節から前屈すれば、肩の屈曲、肩甲骨の前突、胸部の回旋すらしなくてもマウスに手を伸ばすことができます。また、立ち上がって、向きを変えて、腕を後方へ伸ばしマウスに伸ばすこともできます。より多くの選択肢があれば、より多くの“間違った”方法もあります。原始的パターンは必須ではなく、その他では使い道がないような、完全に特定の動作ためだけの特異的な解決策もあります。 それとは逆に仰臥位では、他の運動においてもすばらしい基礎要素を形成する、理想的なリーチ動作の協働作用は、実際に達成するための唯一の方法です。ターキッシュゲットアップが人気のあるコレクティブエクササイズである理由のひとつは、この姿勢が適切なリーチパターンを引き出す傾向があるからです。 他のいくつかの例も考えることができるでしょう。床に座りながら、後ろを振り向くには首から始まり、肩甲骨、胸部、腰部、股関節の協調、統合された回旋が必要になります。立位では、膝や足首、足の代償的な動きを使うことで胸椎や股関節の動きを避けることができます。もし、伏臥位で周囲を見渡したければ、胸椎はかなりの伸展と回旋の動きが必要になり、肩甲骨と首もその活動に協調しなくてはなりません。また、立位では、足首や膝の代償性運動によってそれほど胸椎を使わなくても容易に上の方向を見ることができます。 それぞれのケースにおいて、立位での自由度の追加は、発達上の姿勢では必ず必須とされる原始的パターンを無視させてしまうかもしれません。その結果として、同じ動作をするのであっても特有で特異的なパターンを使うかもしれませんが、これでは効率が悪くなり、ランダムに偏った運動負荷をかけてしまい、健康的な動きをするためのとても重要な基礎的要素を維持するチャンスを逃してしまいます。 よって、発達上の姿勢に戻ってみることは、日々の生活で無視されているかもしれない原始的パターンを促してくれます。もちろん、これは即効性のあるマジックではありませんし、これが運動を向上できる唯一の方法ということでもありません。しかし、役に立つツールではあります。そして、これが、動きも気分も良くしたいと思ったときに、多くの人は床の上で動く理由なのです。 次の投稿では、運動に抵抗を加えることが、いかに発達性運動パターンの使用促進を制限することもありえるかについて記述します。
足首のモビリティー向上
固まってしまいがちな足首の背屈の可動性を向上させるための、シンプルなアプローチをオーストラリアのファンクショナルトレーニングインスティチュートがご紹介するビデオをご覧ください。
握力を理解する
従来トレーニングについて考える時、次のことについて考えます: 使用するツール 可動域(ROM) スピード 負荷 その他様々な要因 十分に考慮されていない1つのことは握力です。 この分野に関して数多くのリサーチを行ってきているのですが、ダンカン・ブラウン(オーストラリアのトップロッククライミングコーチの1人)を始めとする人々にインタビューを行い、ロッククライミングで使用するスキル・トレーニングが、フィットネス業界におけるストレングストレーニングへのアプローチに大きな一助になることが分かりました。 これらの主な考慮範囲は、指や手を通しての筋力強化が含まれており、肩のメカニクス、傷害予防、コアの安定性に関して多くのことを我々に教えてくれます。 トレーニング時に私たちが使用するグリップポジションのタイプは多様です。最も一般的なグリップは、筒状グリップ(パワーグリップシリーズの1つ)です。筒状握りとはバーベルやダンベルを手で握り、親指の末節骨部が人差し指と薬指の上にくるように置くものです。問題となるのは、この特定のグリップポジションから多くの筋力をつけることもあるのですが、手を使用する他の異なった環境での適用には移行できないということです。 例えば、バトルロープを使用するとき、右手と左手の間で産みだされる波に大きな差があることに気づくと思います。多くの人にとって左手は利き手ではなく、産生できるパワーに関して、右手よりも大きく劣っているかもしれません。このことについての1つの理由は、肩甲帯、上肢、体幹が協調して働くための十分な握力を持っていないということが挙げられます。 トレーニングで使用するグリップに多様性を持たせることは、日々の生活やスポーツの中で我々に絶大な利点をもたらすことができます。しばし考えてみましょう;誰かの手を握るとき、グリップの力は親指から人差し指、中指が優位であることに気づくと思います。薬指と小指はほとんど働いていないことに気づくでしょう。 このケースでは、親指、人差し指、中指にすべての筋力をかけてしまうと橈側変位しやすくなり、親指が肘の内側へ向かうことに気づくでしょう。このことが、内側上顆炎のような機能不全を引き起こします。 尺側変位の力を生み出すことで、中指、薬指、小指を優位に使用するようになります(小指を肘に向って下方に引く)。 バトルロープについて考えると、これが典型的なグリップをやめ、特定のグリップで動かすとき、多くの人々はとても苦労するところです。 これらの問題を解決していくために、トレーニングにグリップのポジションを取り入れていくための多くの方法があります。 典型的なブリップ 特定のグリップ バトルロープで握力の多様性を向上させる バトルロープは、主に3面すべてでエクササイズを行うストロングマンのプルエクササイズを通して、握力を強化するための素晴らしいトレーニングツールです。さらに、様々な持ち方は握力の強化の方法に影響します。例、中立位でのグリップ、典型的なオーバーハンド、回内位グリップ。 上腕と手の動きに関与する筋肉は35個以上あり、ストロングマンプルのような握る活動には、これらの多くが関わっています。 握ることを含む動きは、ジャムの蓋を開ける、ショッピングバックを運ぶといった日々のタスクにまで幅広く及んでいます。 他のプラスの効果は、,バーベルデッドリフトやプルアップといった、握力不足が有望なチャレンジャーを失敗させることが多いリフトの強化を、ストロングマンプルがどのように促進させるかに関連しています。ロッククライミングのようなレクリエーション活動にプラスの効果があることは言うまでもなく、伸展筋群の十分な安定の維持とともに、強靭な屈曲筋が必要なレスリング、テニス、ゴルフなど、より特化したスポーツにも効果的です。 下の図は、握力強化のためのバトルロープの使用方法です: 矢状面立位プル 矢状面両膝立ちプル(違う握り方に注目) 矢状面座位プル(違う握り方に注目) 矢状面プランクプル 前額面立位プル 前額面両膝立ちプル パワーバッグとフックグリップ 私たちがパワーバッグを使用するとき、フックグリップと呼んでいるグリップをするために使用するストラップを使っています。下図を参照: 手が真っ直ぐなポジションであり、手首と第2中手指節関節が同じラインであり、パワーバッグについているストラップを指の遠位2関節で持っているのを見られるでしょうか。 この状態は上腕の指屈筋群に大きなインパクトを与えています。母指の筋肉・腱(あるいは、親指に関与する筋肉群)を除外すると、上腕と肩関節の操作方法に大きな多様性が生まれます。 トレーニングする時、どれだけ多くのエクササイズを使用していますか?私たちが使用しているグリップのほぼすべてが、筒状のグリップポジションであることに多くの人が気づくかもしれません。 ファンクショナルトレーニングは、多くの異なったツールを使用し、競技スポーツ、レクリエーショナル活動、日常生活に還元しうる幅広くダイナミックな強さを構築することを強調しています。 私たちが使用することができる他のグリップは;球体グリップ;筒状グリップとかなり似ているのですが、掴んでいる物体がより厚みを持つため、親指が人差し指と中指まで届かなくなってしまいます。このグリップを使用すると、指から肩に至る全体のキネティックチェーンが変化し、多くの人は弱くなったと感じるでしょう。 ケトルベルを使用し、手を広げて頭上でベルを持つとき、側方把握グリップを使用し、親指の母指内転筋で人差し指の方向へ引くことで、ケトルベルをそのポジションに保持するためのテンションを作り出します。このことが、ケトルベルを腕の内側から離れないように確保してくれます。 このグリップポジションは、ケトルベルスナッチのオーバーヘッドポジションで見ることができ、また、ターキッシュゲットアップを行う時のスタートのポジションでも見られます。 トレーニングを通して様々なグリップポジションを使用することは、筋力、そして、多くのスポーツ環境への波及効果に関して多くの利点を持っています。そのタスクが、ロッククライミングでの挑戦的なポジションで掴むこと、スポーツで相手にタックルして掴むこと、ブラジリアン柔術で相手の選手を掴むといった、どのようなものであったとしても。 私たちの弱連鎖が持つ強さが、私たちの本来の強さです。多くの人にとって、この弱さは握ること、そして、効果的に手を使用することができないことに由来しています。
ファンクショナルマッスルファンクション:シナジスティック
機能的な筋肉の働きは、主動筋と拮抗筋のモデルで理解されるものではなく、効果的な筋肉の協働=シナジーによって実現されるものです。単純な動作の例から、より複雑な例まで、わかりやすい例をあげてGIFT学長のデーブ・ティベリオ博士が解説します。