踵骨外反:エンジンを入れるスイッチ

重力、地面、そしてスイッチ 身体を駆動する、身体内部のパワー源は、股関節と体幹=身体のコアです。このパワー源を活性化する方法はいくつもありますが、重力下の環境において立位で機能する私達にとって、最も重要なのは、踵骨の外反ではないでしょうか。 踵骨の外反は前額面で起こります。これは、距骨下関節で起こる回内の3面の動きを構成する1つの要素です。距骨下関節では、踵骨の外反と同時に、横断面において、かなりの量の外転も起こります。距骨下関節での前額面、横断面での動きは、主に矢状面で起こる足関節の動きを補足し、後足部が3つの面全てにおいて動くことを可能にします。 歩行時に踵の外側面が地面にぶつかり、その結果として踵骨の外反が起こります。床反力によって、踵骨は外反するのです。これらの動きは、重力と床反力という、何もしなくても得られる力の作用で起きているために、筋肉の働きは、動きを減速することになります。このプロセスにおいて、筋肉は長さを増し、固有受容器は活性化されます。減速の段階で筋肉にかかるストレスは、コンセントリックな力に変換され、動きを生み出します。 チェーンリアクションのつながり 距骨下関節の回内を起こす踵骨の外反は、身体に対して、2つの重要な反応を作り出します。1つは遠位で、もうひとつは近位で。距骨下関節が回内している時、足根中足関節はより可動性を持ちます。体重がかかっている状態で足部が不均等な表面に適合することを可能にし、また更に重要なこととして、足弓が下がることによって、長腓骨筋等の筋肉が引き伸ばされて負荷(ロード)がかかり、パワーを蓄えるようになります。踵骨が内反を始めると、これらのプロセスは逆に進み、足はより安定し、筋肉は爆発的に力を発揮(エクスプロード)します。 近位への踵骨外反の影響はより重要なものです。距骨下関節の軸の角度のために、踵骨の前額面の動きは下腿部に横断面の動きを起こします。距骨下関節は、足部の前額面の動きを脚の横断面の動きに、そして脚の横断面の動きを足部の前額面の動きに変換するために ”トルク変換機” と呼ばれます。この下腿部の横断面での動きは、しばしば大腿骨、骨盤、腰椎へと移行していきます。距骨下関節は3面構造であり、全ての関節は3つの面で動くため、体重がかかった状態での踵骨の外反は、膝、股関節、脊椎関節に3面での反応を引き起こします。 歩行中、膝は屈曲し、外転(外反)し、内旋します。股関節は踵骨の外反、足首の動きに呼応して、屈曲、内転、内旋します。骨盤もまた重力、及び床反力に駆動されるために、腰椎には動きが起こります。忘れないで欲しいのは、これら全ての動きは “何もしなくても与えられている” のですから、筋肉は、反対方向に向かう動きを作りだす前に、まず最初に、ここで起こる動きを減速しなければなりません。これらの動きが、股関節周辺やコアの筋肉(前部も後部も)をオンにします。これら全てが、踵骨の外反という”スイッチ”で、オンになるのです。 機能的な含意 距骨下関節の回内が過度に起きていないかどうかを確認するために、臨床医やトレーナー達は、よく踵骨の外反を評価したります。より良いアプローチとしてお薦めできるのは ”ゴールディロックス(3匹の熊)のアセスメント” 。多過ぎるのか、少な過ぎるのか、それともちょうど良いのか。 距骨下関節における過度の回内が、組織へのストレスを症状を引き起こすレベルまで上昇させてしまう、という可能性を認識していることは重要ですが、それと同程度に、踵骨の外反の不足が、いかに全身の筋肉の活性や正常な動きを抑制するのかを認識することも重要です。 踵骨の過度の外反が、良いことが多過ぎる、というのであれば、外反の制限は良いことが少な過ぎる、といえるのです。不十分な踵骨の外反は近位の骨の動きを抑制します。これによって股関節周辺やコアの筋肉への負荷(ロード)のかかり方が低下します。多くの場合、膝は“内反スラスト”を表し、衝撃吸収を効率的に行うことができなくなります。足首は、内反捻挫を起こし易くなります。 全ての機能的な評価は、クライアントに適切な踵骨外反が起こっているかどうか、そしてその動きを機能の中で使えているかどうかを決定するテストを1~2つ取り入れているべきです。 不十分な踵骨の外反の原因は、構造的、または機能的のどちらでもあり得ます。構造的な制限は体重がかかっていない状態での外反の量によって確認できます。多くの場合、これらの構造的な制限は後天的なものです。部位に不動の期間があったり、保護された状態での体重荷重等によって踵骨の外反に制限が生じます。踵骨の外反は健康で効率的な身体のためにリストアされるべきものです。 機能的な制限とは、関節の動きはあるものの、その他の身体構造によってその動きの使用を抑制している場合です。前足部の構造的な外反のポジション、あるいは固い距骨下関節は踵骨の外反にブロックをかけます。股関節内旋の制限は距骨下関節において踵骨の外反が起こらないように指図する要因ともなります。これらの機能的な制限が長期間にわたって継続すると構造的な制限を生み出すこともあります。 回内しているけれど外反できない というパラドックス クライアントが、体重のかかったポジションで立っている時(歩いたり、走ったりではなく)には、かなりの量の踵骨の外反を見せるものの、筋肉に負荷(ロード)をかけられるような外反を、それ以上かけることができない、というケースもあります。例えば、素早くジャンプをしたいクライアントは、踵骨が外反した状態で立っているかもしれません。この過度の外反は、後足部、あるいは前足部の構造的な内反が要因となっているのかもしれません。もし、距骨下関節が既に関節可動域の最終域に達しているとすれば、身体のパワー源にスイッチを入れるためにそれ以上の踵骨外反を起こす余裕は無くなっています。過度に外反している踵骨は、負荷をかけて爆発させる=”ロードをかけてエクスプロードする”に充分な外反の動きを得ることができないのです。

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腰痛を引き起こす1つの筋肉を治す パート2/2

腰痛に関する研究は広範で幅広い因子を捉える必要があります。単一の筋肉が痛みの原因ではなく、社会経済学的要素や日常生活の習慣など、全ての生活要因が関わる、複雑な疼痛への理解を深めていくことの重要性を再確認できるビデオをチェックしてください。

ベン・コーマック 3:03

腰痛を引き起こす1つの筋肉を治す パート1/2

腰痛の原因となるのは、腹横筋の機能不全か、腰筋の機能不全か、腰方形筋か?などなど、単一の筋肉に腰痛の原因を絞ろうとする考え方はかなり浸透しているのではないかと思います。生体力学的変化が痛みを引き起こすのか、痛みがそれらの変化を引き起こすのか?考え直してみませんか。

ベン・コーマック 5:24

機能のために重要なエビデンス:タスク特化&状況依存 パート2/2

タスクの学習について、そして意識的なタスクを意識下で実行することができる能力について、さらになぜ私達のトレーニングがそれら特定のタスクに特化したものであり、状況によって変化させるべきものであるかをDr.デーブ・ティベリオが解説します。

グレイインスティテュート 4:29

機能のために重要なエビデンス:タスク特化&状況依存 パート1/2

2007年のWindhorstのリサーチである「Muscle Proprioceptive Feedback & Spinal Network」からの発見のある側面を取り上げて、Dr.デーブ・ティベリオがゴルジ腱器官の働きに関しての解説と、なぜ私達の評価やトレーニングが機能の本質に近いものである必要があるかについて語ります。

グレイインスティテュート 4:56

ジャンパー膝、膝蓋腱障害を改善する10の方法 パート2/2

バスケやバレーなど、競技中に頻繁にジャンプをすることが要求されるスポーツ選手達が抱えがちなジャンパー膝、膝蓋腱障害の改善のために積極的に取り入れるべきエクササイズを、ストレングスコーチのマイク・ロバートソンが紹介します。後半では、さらにスピードの要素を取り入れていくことにも注目をします。

マイク・ロバートソン 4:04

ジャンパー膝、膝蓋腱障害を改善する10の方法 パート1/2

バスケやバレーなど、競技中に頻繁にジャンプをすることが要求されるスポーツ選手達が抱えがちなジャンパー膝、膝蓋腱障害の改善のために積極的に取り入れるべきエクササイズを、ストレングスコーチのマイク・ロバートソンが紹介します。前半では、重心の後方へのシフト、ふくらはぎの強化、大腿四頭筋の強化に注目します。

マイク・ロバートソン 5:20

機能のために重要なエビデンス:しばしば見落とされがちな前額面での膝の動き パート2/2

荷重時の膝の前額面におけるモーメント、トルクを確認するために、あるいは膝の痛みの原因が前額面にあるのか水平面にあるのかを確認するために3DMAPSの運動分析をどのように活用することができるのでしょうか?

グレイインスティテュート 5:50

機能のために重要なエビデンス:しばしば見落とされがちな前額面での膝の動き パート1/2

荷重時に、足が床についている状態において、膝関節には矢状面、水平面の動きのみでなく、前額面での動きも起きているということをご存知ですか?ゴルフスイング中の前額面における膝モーメントを計測したリサーチに基づいた記事とビデオのシリーズから。膝の外反、内反と外転、内転の動きとはどのようなものでしょうか?

グレイインスティテュート 6:00

機能のために重要なエビデンス:膝関節置換術後の機能 パート2/2

手術後の膝の機能性をより回復させるために必要なリハビリにおける「トゥイークイン」「トゥイークアウト」とは、どのようなことを意味するのか?膝をサポートするために股関節の関与を大きくするところから始めて徐々にサポートを減らしていく方法とは?

グレイインスティテュート 6:17

機能のために重要なエビデンス:膝関節置換術後の機能 パート1/2

膝関節置換手術後の一般的なリハビリが終了した時点で、手術を受けた人の膝の機能はどの程度回復しているのか?手術を経験した人の手術側と手術をしていない側、そして手術を経験した人としていない人たちの対照群を、それぞれ三種類の機能的テストで比較した結果とはどのようなものだったのでしょうか?

グレイインスティテュート 6:20

アスリートと一般人のための私のお気に入り片脚エクササイズトップ10 パート2/2

左右非対称性を有する私達の身体を強化しようとする時、両側性の強化エクササイズのみでなく、片側性、片脚に注目したエクササイズを選択するのは賢明なことだと思います。ストレングスコーチのマイク・ロバートソンが、お気に入りの片脚にフォーカスしたエクササイズトップ10を紹介するビデオをチェックしてください。

マイク・ロバートソン 3:48