呼吸と機能・パフォーマンスへの影響
呼吸は我々の機能とパフォーマンスに大いに影響していることが解明されてきました。呼吸を通してどのようにパフォーマンスへアクセスしていくのかをさらに深く考えてみてはどうでしょうか?
呼吸においてのニュートラルとは何か?
前回は『ニュートラル』または『ニュートラリティー』の定義についての考えを述べさせて頂きました。 前回の内容をまとめると “関節におけるニュートラルとは、関節の位置(ハードウェア)ではなく、その関節が求められる動きを適切に表現できる能力(ソフトウェア)である” という事でした。 前回の内容を踏まえ、今回は『呼吸のニュートラル』について私の考えを述べさせて頂きます。 『腹式呼吸』『胸式呼吸』『横隔膜呼吸』『奇異呼吸』『パラドックス呼吸』『努力性呼吸』『安静時呼吸』 などなど、呼吸パターンを表す用語は沢山あります。 様々な理論がある中で、近年はInter abdominal pressure (IAP)→腹圧 を高める呼吸が正しいとされる事が多いです。 この様な呼吸はよく 『Diaphragm breathing (横隔膜呼吸)』と表現されます。 ※そもそも横隔膜を使わない呼吸は無いので『横隔膜呼吸』という言葉が相応しいのかは疑問ですが、ここでは吸気の際に横隔膜が腹圧を高めるべく動く(腱中心が下方に下がる)呼吸を横隔膜呼吸とします。 そして、ここでは吸気の際に横隔膜が腹圧を高める事が出来ない呼吸(例えば胸部が頭方に向かって上がり肩で息をするような呼吸)を胸式呼吸とします。 では、横隔膜呼吸を獲得すれば『呼吸のニュートラル』を獲得したと言えるのでしょうか? 結論から述べますと、 『呼吸のニュートラル』とは “どのような状況においても、その状況に適した呼吸ができる” という能力(ソフトウェア)であるため、単純に横隔膜呼吸=呼吸のニュートラルではありません。 誤解されているかも知れませんが、俗に言う“胸式呼吸”も単純に悪い呼吸ではなく、状況によっては最適な呼吸となる場合があるのです。 例えば800メートル走の際に、 正しい横隔膜呼吸によって腹圧を保ち、走行に適切な姿勢を維持してエネルギー効率やバイオメカニクス的利点を使える選手は有利です。 ただし最大努力時において、または最大努力後にすぐ回復する(酸素~二酸化炭素バランスを調整する)必要がある場合、姿勢を崩してでも酸素を最大に取り入れることができる=すなわち努力性呼吸(ある種の”胸式呼吸”)が上手な選手が有利かも知れません。 ※ここでの努力性呼吸とは肩・胸の上下動が目視できる程の大きな呼吸を意味します。 ただ、この選手がレースの後に家で寝る時も努力性呼吸を続けているのであれば、これは努力性呼吸でスタックしている状態であり、一般的に睡眠の質や回復に問題を抱えるためこれは呼吸においてのニュートラルではありません。 “状況に応じて呼吸パターンを変化させる能力=呼吸のニュートラル”を持っている選手が呼吸においては最も優秀だと考えられます。 これは姿勢のニュートラルで述べた骨盤における“前傾にも後傾にもどちらにもいけるよ”という状態とほぼ同じです。 言い方を変えると 『横隔膜呼吸』も『努力性呼吸』も、『腹式呼吸』も『胸式呼吸』も『鼻呼吸』も『口呼吸』も必要に応じて使うことのできる能力がニュートラルです。 ある状況において不適切な呼吸を選択してしまった場合、その呼吸は”パラドックス呼吸”と言えますが、違う状況においてその呼吸は”最適な呼吸”かもしれません。 ”呼吸においてのニュートラル”の定義についてはココまでです。 ここまでで充分ややこしいですが、ここからは呼吸への介入を更に複雑にしている”回旋運動””歩行”について述べさせて頂きます。 人間は直立位であるため殆どの動作において回旋運動が必須です。 回旋運動には肋骨の動きが深く関わるため、回旋運動による呼吸への影響はかなり大きいのです。 また回旋運動は左右非対称な動きであるため、呼吸も回旋運動に伴い左右非対称に行うことが必要となります。 簡単に表現すると 右側は横隔膜呼吸、左側はある種の胸式呼吸が必要な動作もあります。 その代表的な動作は歩行です。 “Walking is Breathing”~歩行とは呼吸である by Ron Hruska と言われる所以はココです。 歩行は回旋運動→即ち左右非対称な動作であり、効率的な歩行を行うためには左右非対称な呼吸を獲得する必要があります。 『横隔膜呼吸』“だけ”上手な人は左右非対称な呼吸を獲得していないため、効率的な歩行はできません。 『胸式呼吸』“だけ”上手な場合も同様です。 更に更にややこしくなるのですが、 歩行は左右非対称な動作ですが、両側交互に行う必要があるため、“左右非対称な動作を交互的に行う能力”が求められます。(めんどくせ!) それに伴い呼吸も横隔膜呼吸&胸式呼吸を左右非対称に、さらに交互的に行う能力が必要となります。 “左足立ちでも、右足立ちでも、求められる呼吸パターンを体現しながら前に進む“ これが意外に難しいのです。 長くなりましたので、呼吸と回旋運動の関わりについてはまた違う回で述べますが、今回は『呼吸のニュートラル』について皆様の考察を少しでも深めるお手伝いができたら幸いです。 また皆様のご意見やご質問も随時お待ちしております。 ありがとうございました!
バランスの見つけ方 パート1/3
生まれながらの非対称はアスリートのパフォーマンスに影響を与えます。この新しいトリートメントプログラムは、身体の内部のバランスを姿勢と呼吸エクササイズで回復させることに重点を置いています。 アスリートの目標達成への手助けをすることは、複雑で多角的なアプローチが要求されます。栄養、傷害予防、そしてリカバリーは考慮されるべき要素のほんの一部なのです。しかし,もう1つの重要なパズルのピースはようやく注目され始めてきたばかりです – 構造的で機能的な身体の非対称性は私達の呼吸や動作に影響を与えます。 人体の内部構造は非対称的であり、身体の様々なシステムも同様です – 神経系、呼吸系、循環系,視覚系 – は右と左で異なり、通常どちらかの側が優位となります。筋骨格系のパターンは、これらのシステムがどのように統合されるかで決定されることから、左右の非対称性はヒトの身体のアライメントと姿勢、呼吸機能や動作の形成に直接影響するのです。 こういった構造的な非対称性はごく正常なことであり、 自身の身体をコントロールできなくなる程顕著にならない限り、基本的に問題の原因にはなりません。これは高強度のスポーツやエクササイズにおいて、長時間特定の動作が繰り返されることで習慣化したり、またはイスの座り方などのちょっとした日常生活動作においても起こります。 非対称性が顕著になった場合、身体はそのエリアのスタビリティを保てなくなり代償を始めます。時間の経過とともに、これが骨や関節– そしてそれに付着する筋群–を顕著にシフトさせ、バランスやニュートラルな位置を失い、影響を受けたエリアの筋の働きが抑制されて筋骨格系の痛みや傷害のリスクが高まるのです。 このような非対称性を抑える為に効果的な方法はPostural Restoration Institute (PRI)の設立者であるロン・ハラスカによって発展したトリートメントアプローチです。このシステムは特異的なエクササイズや徒手テクニック、身体の先天的なバランスメカニズムと関連しているポジションの修正によって、スポーツパフォーマンスの向上やスポーツ関連傷害のケアをおこないます。 新たなバランス 相反性活動は、顕著なアンバランスを予防できる身体の基本的方法です。筋の活動が活発な時、身体はその活動に対して他の筋群をリラックスさせるなどして様々な方法でバランスをとります。PRIでは、セラピストは身体の片側の筋の活動を逆側の筋のカウンターバランスとして捉えています。 歩行のように基本的なこともこのコンセプトの良い例でしょう。 歩行における左スタンスでは、骨盤は左脚が身体の下に来た時に身体の左側で後方回旋し、その時中部から上部にかけての胸椎が動きのバランスをとるように拮抗して右に回旋します。右腕もまた後方にスイングして左脚の動きに合わせることでバランスを保っているのです。このプロセスは相反性交互活動と呼ばれ、身体の両側で等しく均一に起こるべきなのです。 もしも身体の片側で筋が過活動になり、過剰に働いてしまった場合、相反性活動はこの筋の過活動を抑制する為に身体のどこか他の場所でおこなわれます。しかし、これがまたアンバランスを相殺して身体が効率よく動くように、他の筋群を活性化したり促通させたりもするのです。これはアスリートのパフォーマンスにおいてマイナスにも働きます。なぜならその活動に1番適している筋群は活性化されず、別の適していない筋群が代わりに使われてしまうからです。PRIテクニックはこういった非対称性にアプローチし、患者にその動作を保持することを目的としています。 呼吸がキーポイント パフォーマンスに影響する、最も一般的な構造的非対称性は呼吸システムです。右側の横隔膜は強固で、ポジションに優れ、より優れたレバーアームを持っています – 横隔膜の腱(脚)は、右側では3つの腰椎に付着し、左は2つのみ付着、右の肺は3つの肺葉に対し左は2つであり、肝臓は右側に付着して、より強固なサポートを右の横隔膜に提供しています。 コアの筋群がバランスを保てなくなった時、横隔膜はより静的な姿勢保持の役割を担うようになります。これが横隔膜の方向性や長さを変える要因となり、適切な呼吸換気の効率を下げてしまうのです。結果として、他の筋群が横隔膜の通常の機能をおこなうようになります。これが頭部前方位や肩甲骨の位置異常、そして過剰な後弯や前弯姿勢などの構造的異常や、過呼吸、奇異呼吸、息切れ、疲労、そして運動性ぜんそくなどの呼吸機能不全など、様々な形で代償作用や機能不全へと繋がるのです。もし対処されなければ、不適切なポジションで固定された横隔膜が最終的にアスレティックパフォーマンスの低下や先程述べたような急性または慢性傷害を招く結果となるでしょう。 複数の骨や関節をまたいでいる多くの筋群は、多関節筋連鎖と呼ばれています。こういった筋群は同じ走行性を持ち、構造的、そして神経的に繋がっています – 筋の1つが活性している時、他の筋群も同様に影響を受けます。呼吸機能に大きく作用する、3つの主要な多関節筋連鎖があります – それぞれ左右に1つずつあります。遠位の頚椎エリアから、これらのチェーンは: ブレキアルチェーン: 脊柱の前方にあるブレキアルチェーンマッスルは、頭部と胸郭の動きを繋げて連動させるのに役立ちます。このチェーンは横隔膜、前方と側方の肋間筋、三角筋と大胸筋、胸骨筋、胸鎖乳突筋、そして斜角筋です。 アンテリアインテリアチェーン:アンテリアインテリアチェーンマッスルは脊柱の前方にあり、胸郭と骨盤の動きを繋げて連動させるのに役立ちます。このチェーンは横隔膜、腸骨筋、大腰筋、大腿筋膜張筋、外側広筋、そして大腿二頭筋を含みます。 ポステリアエクステリアチェーン:脊柱の後方にあるポステリアエクステリアチェーンマッスルは、相反機能を抑えて交互性をだす手助けをします。このチェーンは広背筋、腰方形筋、前鋸筋、そして肋骨の外旋筋を含みます。
バランスの見つけ方 パート2/3
アスリートがよりアクティブになって呼吸筋に負荷をかけるにつれ、横隔膜は骨盤底筋群や腹部の深層筋と共により強く素早く引かなければならなくなります。キーとなるアンテリアインテリアチェーンマッスルの右側での強固な引っ張りにより、骨盤と腰椎は右側に回旋するようになります。胸郭はその引っ張りのバランスをとる為にカウンターとして逆方向に回旋し、肩と頚椎もこれと同様に影響します。骨盤より下では、大腿骨と下腿の方向も大抵影響を受けます。これが身体において大きなトルクを発生させるのです。 このアンバランスが続くと、複数の筋群のポジションと機能を変化させていきます。これらの筋群は過活動または低活動になり、新しいポジションに適応する為に筋の機能を変えてしまうこともあるのです。例えば横隔膜は、増加した呼吸速度と身体の動きをコントロールする固定筋群を補助する為に短くて硬くなっていきます。このケースは、とりわけ過剰な胸椎や腰椎の伸展(アーチバック)、息切れ、足部を平にしてのディープスクワットやジャンプができなかったり、下肢のコントロールに乏しいアスリートに見られます。 最終的に筋のアンバランスは多関節筋連鎖に影響し、連動性を失う原因となります。そして結果的にレフト・アンテリア・インテリアチェーンと呼ばれるパターンになります。右側の優位性は 右の横隔膜、内転筋群、大腿二頭筋、そして左の大腰筋、大腿筋膜張筋、外側広筋の過活動の結果として現れます。これはアスリートが体重をより右にかけて立ち、寄りかかり、蹴り出し、側屈するのを好むということです。 レフト・アンテリア・インテリアチェーンパターンにおける代償動作の典型的な例は、胸郭の左側への過剰回旋であり、それがライト・ブレキアルチェーンパターンと呼ばれる上肢のアンバランスの原因となります。これが次に背部の伸展筋群の過伸展や過活動の原因となり、ポステリア・エクステリアチェーンパターンと呼ばれる、矢状面でのアンバランスへと導きます。 この身体の連鎖反応のキーポイントは横隔膜のアンバランスです。徒手以外でのテクニックや、場合によっては徒手と徒手以外のテクニックのコンビネーションを使う事で、PRIは胸郭のエリアで横隔膜から形成されているゾーン・オブ・アポジションを確立し、適切でバランスのとれた呼吸を回復することを目的としています。ゾーン・オブ・アポジションは横隔膜を適切なポジションへ戻して、正常に機能させることを可能にする為のニュートラルスペースです。 姿勢トレーニング ゾーン・オブ・アポジションを獲得して呼吸器系のバランスを保つ為に、身体は呼気を通して肺の空気を空にしなければいけません。加えて多関節筋連鎖のバランスも回復させて、コレクティブエクササイズで適切な筋群への再教育を行い、アスリート達が自分の動き方を変える必要もあるのです。 まず始めに、いくつものテストが呼吸、骨盤、そして胸郭のアンバランス評価の為に使われます。アスリートはそこから徒手以外のテクニックでゾーン・オブ・アポジションの獲得方法を学び、その後に彼、または彼女の目指すエリアにニュートラリティが獲得されたかどうかを簡潔に再評価します。もし獲得されていなければ、セラピストは徒手テクニックを使ってそれを補助します。そこでその人の新しいポジションを保つ為に必要な、正しい筋の発火パターンを強化する為のコレクティブ、リポジショニングエクササイズが処方されるのです。 最初のステップ PRIテクニックを使ったアスリートのトレーニングは、アスリートの身体にとって制限となり得る全てのアンバランスを見極めることから始めます。評価は以下のような種類のテストを通して行われます: アダクション・ドロップ・テスト:オーベルテストに似たもので、骨盤のポジションを評価します。片側、又は両側の大腿骨が内転できずテーブルにつかない場合は、骨盤のポジション異常を示唆します。 ホライゾンタル・アダクション・テスト:胸郭上における肩甲骨のポジションのチェック、 腕がテーブルの横から出ている時に、左右等しくなるべきです。アンバランスは胸郭の回旋を示唆します。 ヒュメラル・グレノイド・インターナルローテーションテスト:胸郭における肩甲骨のポジションを検査します。テーブルで背臥位になり、腕が90/90ポジションの時に前腕は自由に回旋できるべきです。アンバランスは胸椎の回旋を示唆します。 ショルダー・フレクション:テーブルの上に胸郭と骨盤を平らになるようにつけ、腕は自由に屈曲し、両側共にテーブルにつくべきです。アンバランスは胸郭の過伸展を示唆します。
バランスの見つけ方 パート3/3
PRIは、呼吸筋のエクササイズの為に様々な形で循環系トレーニングを使います。ここにゾーン・オブ・アポジションの非徒手テクニックの例をいくつか紹介します: ステア・ショート・シーテッド・バルーン:最適な呼吸を回復するその有効性から、これは運動の前に行うにはベストなエクササイズです。風船は呼気筋群を鍛える為に使われます。なぜならば風船が呼気に抵抗をかけ、正しい再吸気に役立つフィードバックを呼吸システムに送るからです。(ゴムにアレルギーがある場合、または風船が手元にない場合は、曲がるストローを代わりに使用することができます。) まず始めに、ステップ台に座って足部と膝を合わせます。左手の指先を左脚の親指の下に置きます。背中を丸く保ち、頚部の筋群や頬を使ってこの運動をするのを避けることが重要です。 右手を使って、風船を軽くすぼめた唇の間に入れます。背中を丸め、両側で坐骨結節、または坐骨が感じられるように骨盤を丸め込むようにします。鼻から吸った後 – 丸まった姿勢を崩さないように – 右手で風船を固定して、息をゆっくりと吐ききります。3秒間静止し、空気が漏れるのを防ぐ為に舌を口蓋上部に向かって押しつけます。 このポジションをキープし、鼻から次の息を吸います。ゆっくりと空気を風船に入れ、この動作を4回目の吸気まで繰り返します。終わったら、風船を口からはずして空気を抜きます。これを3~5回繰り返します。 モディファイドオール4ベリーリフト:これも運動前に行うのに優れたエクササイズです。背中を天井に向かって丸めて四つ這いになります。骨盤を丸め込み、鼻が指先を通り越すまで体重を前方にシフトします。腹筋群の活性を最大化するように背中を丸めながら、十分に息を吐き出す前に、深く強制的にならないように吸いこみます。 呼気の段階で3秒間静止し、このシークエンスを4回呼吸するまで繰り返します。呼吸に制限がなくなってきたら、両手と両爪先をついて臀部を持ち上げたポジションでエクササイズをおこなって下さい。 ゾーン・オブ・アポジションを獲得して横隔膜がリポジションされれば、身体はレフトアンテリア・インテリアチェーンパターンのストレスを軽減させる為に、より楽に再学習ができるようになります。そうすることで左の骨盤は後方に回旋し、立位、蹴り出し、回旋、そしてターンをサポートできる正しくコントロールされたポジションに戻るのです。 このポジションでは、過剰もしくは抑制された筋群はポジションの変更のために違う役割を担ってしまいます。ある筋肉は片側では抑制される必要がある一方で、他の筋群は反対側で促通される必要があります。左の近位側の大腿二頭筋と内転筋群、左の中殿筋と腹斜筋群、そして右の腸腰筋は骨盤と体幹の修正パターンを使いながら促通されなければなりません。 PRIではこれらのポジションを修正することを 左の大腿骨を後方に引き、続いて左の骨盤を後方に回旋させることによって、左の骨盤に”シフトする”能力として説明しています。この筋のリポジション作業はアスリート達の身体のバランスを保ち 関節の圧縮や組織のストレスにとって最小限のリスクで自由な屈曲、スクワット、そして回旋を可能にします。以下のリポジショニングエクササイズはレスト・アンテリア・インテリアパターンの修正の為に使われますが、これらはゾーン・オブ・アポジション作業の後におこなわれるべきです。アンバランスの悪化を防ぐ為に、下記に記すリスト通りに行われる必要があり、逆側の身体には行わないで下さい。 ライト・サイドライング・リスピレトリー・レフトアダクター・プルバック:身体の右側を下にして横向きになり、身体を丸めて股関節と膝を90度に曲げます。脚の間に丸めたタオルのようなボルスター(補助枕)をはさみながら両足で壁を押します。左脚の膝は左脚の踵よりも低くなるようにしてください。 左脚を後方に引きながら、ゆっくりと鼻から息を吸います。この動きは前方に回旋した左の骨盤を修正します。次に、左膝をギュッとしめて右腿に向かって下げた状態で息を吐ききります。再び吸って、左腿をさらに後方に引き、そこから息を吐いて左膝を再び下に押します。この流れを4回から5回の完全呼吸で繰り返し、呼吸毎に左腿をより後方に引くようにします。これを3~4セット繰り返します。 90/90 ヒップリフト・ヘミブリッジ:壁に足裏をつけて仰向けに寝ます–できれば靴をはいた状態が望ましいでしょう – 両膝と股関節を90度に曲げます。鼻から息を吸い、口から息を吐きながら尾骨を床から少し浮かせて骨盤を後傾させます。壁に向かってただ足を押すのではなく、かかとから足を引いてくるイメージで尾骨を上げていきます。 次に、左脚を壁につけたままヒップリフトを保ち、右脚を壁から持ちあげて真っすぐに伸ばします。強すぎない完全呼気を意識しながら正しい呼吸パターンを維持し、伸ばした右脚をゆっくりと壁から上げ下げします。各10回3セットをおこなって下さい。 レフト・サイドライング・ニー・トワード・ニー:左側を下にして横向きに寝て、股関節と膝を90度に曲げて背中を丸め、下にボルスターをおいた足で壁を押します。右腿を前方にシフトして、持ち上げるか外に回します。このポジションをキープして左腿が右腿のすぐ後ろにくるまで持ち上げるか、内側に回します。このポジションを4~5呼吸キープしてこれを3~4回繰り返します。 PRIのコンセプトをトレーニングやコンディショニングプログラムに導入することには沢山のメリットがあります。パフォーマンスレベルがプラトーに落ち入っているアスリート達は、身体の根本的なアンバランスが必要不可欠な出力を低下させてしまっている状態です。トリートメントの前に評価をおこなうことは それがブレキアルチェーンなのか、アンテリア・インテリアチェーンなのか、またはポステリア・エクステリア・チェーンマッスルが原因なのかを明確にし、ゾーン・オブ・アポジションの獲得とリポジショニングエクササイズを通して、アスリートは自由で制限のない動作を取り戻すことが可能になるのです。 PRI要素を準備運動、筋ウォームアップ、そしてより強度の高いトレーニングや傷害予防プログラムに取り入れることは、アスリートのパフォーマンスやリカバリーを向上させます。より最適な昨日のために彼らにシステムのポジションを整えることは、彼らをその先のレベルにも引き上げてくれることでしょう。
構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート1/3
頑固な首・肩こりに対して、ストレッチやマッサージ(または何かしらのリリース・テクニック)をする。 一時は楽になってもまたしばらくして症状がぶり返す。そしてまたストレッチやマッサージを繰り返す。 そのようなケースで、終わりのない戦いをしていると感じることはないでしょうか? 2015年9月、セントルイスでの講義で講師のPavel Kolarは、 “Tightness is not in the muscle. It’s in the brain”~“筋緊張は筋肉ではなく頭にある”と述べました。 また以前から、Dr. Vladimir Janda(ヤンダ博士)、Karel Lewit(レヴェット博士)Václav Vojta(ボイタ博士)ら沢山の臨床家や研究者から神経学的(機能的)アプローチの必要性は訴えられています。 “構造(ハードウェア)+機能(ソフトウェア)によってより効果的なアプローチができる”ことは明白ですが、私はこれにもう一つの要素を加えることにしています。 これから数回に分けてご紹介する内容は、筋緊張に対しての『構造』、『機能』、そしてもう一つの要素である『環境』の3つを統合したアプローチ法です。 首・肩こりを例にすると、 頸部の筋群(ハードウェア)が健康的であり、その筋群を扱う動作パターン&呼吸パターン(ソフトウェア)が正しく働き、“その動作&呼吸パターンが発生する為の姿勢、アラインメント、関節のポジション、心理的状態(ここではこれらを総合して『環境』と表す)を有している“ ということです。 以下に肩こりの“構造的問題”“機能的問題”“環境的問題”の例をあげます。 構造的問題の例 1. 組織の損傷 2. 癒着、滑走不全 3. 血液循環不全 機能的問題の例 1. 筋発火パターン不全(弱化も含む) 2. 呼吸パターン不全 3. 動作パターン不全 環境的問題の例 1. 頸部・胸郭・肩甲骨のポジション 2. 姿勢不全 ※姿勢はポジションの集合体と考えるため、環境的問題とする 3. 不適切な靴、装具、接地面など 4. 心理的ストレス 今回は首・肩こりを“環境的な問題“から考察してみます。 構造的、機能的アプローチが充分な効果を発揮しない場合には、筋が“緊張しなくても良い環境”をつくることで、筋緊張との戦いを終わらせることが出来るかもしれません。 『肩甲骨のポジション不全による胸鎖乳突筋の緊張』 ※関連する筋:肩甲挙筋 胸鎖乳突筋 近位付着部:胸骨頭(胸骨柄の上縁)・鎖骨頭(鎖骨内方の1/3) 遠位付着部:側頭骨乳様突起・後頭骨上項線 胸鎖乳突筋の働き: 胸骨・鎖骨が固定されている場合:頭部の対側への回旋。同側への側屈 頭部が固定されている場合:胸骨と鎖骨の挙上 肩甲挙筋 近位付着部:C1~C4の椎体の横突起 遠位付着部:肩甲骨の上角、内側縁の上部1/3 肩甲挙筋の働き: 1. 頸部が固定されている場合:肩甲骨の挙上、肩甲骨下角の内側への回旋 2. 肩甲骨が固定されている場合:頸椎の伸展、同側への側屈 写真を見てもわかるように、肩甲挙筋は“ねじれ”ています。 この“ねじれ”によって肩甲骨~頸椎&頭蓋骨の位置を適切にコントロールしています。 では、例えば右側の肩甲骨が外転し、さらに内側縁が後退して翼状肩甲に近い状態になると“ねじれ”はどうなるでしょうか? 少しイメージがつきにくいかもしれませんが(肩甲挙筋の写真を見てください)ねじれは解かれて肩甲挙筋の肩甲骨付着部は頸椎方向に動きます。 簡単に言ってしまうと、右側の肩甲挙筋が頸椎方向に“緩んだ”状態です。 この“緩み”により、本来適度に右回旋方向に引っ張られていた頸椎は左回旋方向に向くことが容易になり、頚椎&頭部はやや左回旋位に位置します。 これが頭部の左方向への回旋筋である右側胸鎖乳突筋にレバーを与え”過剰に働きやすい環境”を作り出してしまいます(これに加え呼吸パターン不全によって胸鎖乳突筋が“鎖骨の挙上筋”としても過活動になれば更に緊張は増します)。 この左向きの頸椎によって右側胸鎖乳突筋に回旋筋としての緊張状態が続き“首こり”“肩こり”の症状が現れたとします。 このケースにおいて、 1. 緊張している右側胸鎖乳突筋のストレッチは効果的でしょうか? 2. 深部頸部屈筋の促通は効果的でしょうか? 3. 単純な呼吸パターンへの介入は最高の効果を発揮するでしょうか? (※効果的かもしれません(/・ω・)/テヘ) このケースでは、胸鎖乳突筋のストレッチ(またはリリース)ではなく、“胸鎖乳突筋が過度に働かなくても良い環境“をつくる、すなわちこのケースであれば右側の肩甲骨のポジションを正し、右側肩甲挙筋の”ねじれ“を取り戻すことが最も効果的だと考えます。
構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート2/3
『環境的要因による呼吸パターン不全』 肩こりに関して、前回は肩甲骨のポジション不全による胸鎖乳突筋の緊張をご紹介しましたが、今回は環境的要因による呼吸パターン不全、そしてそれに伴う僧帽筋&胸鎖乳突筋の緊張を考察します。 先ず、呼吸パターンはなぜ適切ではなくなってしまうのでしょうか? 主な原因は恒常性(ホメオスタシス)です。ホメオスタシスとは、生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質です。 ホメオスタシスは呼吸パターンを随時変化させます。代表的な理由として、呼吸パターンを変化させることにより血中のpHバランスを一定に保つ必要があるからです。(血中pHは7.4を理想とするが、酸性値、すなわち血中の二酸化炭素量が多くなると7.4より下に下がる、アルカリ性が強くなると7.4より上に上がる) ※酸素は基本的に水に溶けない為、酸性でもアルカリ性でもありません。ただし過呼吸により血中の酸素量が多くなり二酸化炭素量が少なくなると水溶では酸性を示す二酸化炭素量が減ることで血液のpHは7.4より上がります。 下記の要因により、血中のpHバランスが崩れ呼吸回数の増加が起こります(その反対、呼吸回数の増加によりpHバランスが崩れるパターンも多いです)。ここでは過度な呼吸を過呼吸と呼びます(俗に言われる発作的な過呼吸とは違いますが、血中の二酸化炭素濃度の不足という点では同じです) 1. 食生活-過食による余分な食べ物の消化のために呼吸量が増加する。特に加工食品は通常、酸性であり、体は血液のpHを正常に維持しようと呼吸を増やして酸である二酸化炭素を取り除こうとする。→これが過剰な呼吸回数の原因となる。 2. 一定時間以上大きな声で話すとき、行間で大きく息を吸う。営業、電話の応対、教師などの職業に就く人は、話してばかりの日が何日も続くと疲れを感じやすい。単純に呼吸量が多くなることで過呼吸状態につながる。 ※これにあたる症状の人は、会話の際、言葉を発する前に大きく息を吸う、あくびをよくする等がみられる。 3. 精神的ストレス は、闘争・逃走反応を引き起こす。 ※人間は精神的ストレスに対し、ある意味原始的な反応を起こす。例えばその昔、野生動物に直面したときは闘争するか・それとも逃走するか素早く判断する必要があり、その為自律神経が身体を最大に緊張・活性化させる→呼吸量もそれに伴い増加する。 この自律神経の働きは現代社会においての精神的ストレスによっても引き起こされる。必ずしも生命に関わることだけに反応するものではない。 ストレスレベルの高い人は、そうではない人より多くの呼吸をする傾向にある。 4. 筋肉を動かすと大量の二酸化炭素が生成される。これにより血中pHのバランスを保つため&エネルギー生産の為に酸素が大量に必要となり呼吸回数は増加する。 ※必ずしも運動が悪いと述べているわけではありません。むしろ呼吸パターン不全を根本から解決するために運動は必須だと思われます。ただし喘息患者の多くは運動により喘息の症状が誘発されます。これは運動による過呼吸が喘息を誘発すると考えられています。呼吸パターン不全をもった患者は自らの体力レベルに沿った無理のない運動から始める必要があります。 5. 「酸素は身体に良い」という間違った認識。酸素を大量に摂取すれば疲労回復につながる、けがの回復を早める、等の間違った認識により大きな呼吸を推奨する運動、治療、レッスンがある。正しい呼吸パターンによるコントロールされた呼吸であれば問題はないが、副神経筋の過緊張がみられる患者においてそれは難しいことである。 ※ちなみに酸素を過剰に摂取したとしても、血中の二酸化炭素濃度が低ければヘモグロビンと酸素が分離しないため細胞に酸素は供給されない。発作的な過呼吸と同じで、これは二酸化炭素を多く取り入れることで解決する。 6. 喘息の症状。気道が狭くなると息苦しさを感じ、この息苦しさから逃れるために呼吸は増加する。ところが呼吸量が増加すると、前述の血中pHバランスの崩れにより症状はさらに悪化する。 ※喘息患者へのアプローチにおいては、吸気ではなく呼気、また呼気後に息を止める練習が効果的だと思われます。喘息患者は呼気後に息を止めてすぐ苦しいと感じてしまうので、無理のないように注意してください。 7. 高い気温、または室内温度、:体温調節のために大きく呼吸をする必要が発生するため室温の調節は重要である。 ※適切な気温によって呼吸回数をコントロールすしやすくなる為、肩こりの症状がある患者は睡眠時の室温コントロールが効果的だと思われます。また夏は睡眠時の着衣や布団も熱の発散に優れた素材をお勧めします。 ここでは以上7つ環境的要因の例を挙げました。 過呼吸状態になった身体はより多くの空気を吸うために僧帽筋、胸鎖乳突筋を使って呼吸を助けます。 正常な呼吸回数が1分間に8回〜12回だとすると、過呼吸状態の人は1分間に約13回〜20回の呼吸をしていると予測されます。 ということは、最低でも13(1分間の呼吸回数)x60(分)x24(時間)=18720回それらの筋が働いているわけです。 肩こりを持つクライアントに対してアプローチをする際に、呼吸パターンを適切にする必要があると判断した場合、はじめに何をすべきでしょうか?? おそらくストレッチやマッサージではなく、上記に述べた7つの環境的要因(またはその他の環境的要因)に対する介入ではないでしょうか。
構造・機能・環境~筋緊張との戦いをやめる:首・肩こり編 パート3/3
『過剰な呼吸回数による筋緊張』 前回の投稿では『環境的要因による呼吸パターン不全』として、環境要因に対する考察が必要とのお話をさせて頂きました。 今回は“呼吸回数”についてご紹介します。 近年注目されている呼吸ですが、“呼吸パターン”についての議論は数多くされている一方で、“呼吸回数”についての議論は少ないように感じます。 “喘息患者のゼーゼーいう呼吸は、常に喘息の疾患の転帰(病気が進行して行き着い結果)で起こるものだと考えられてきました。“深く呼吸すること”自体が気管支喘息の原因であり、深く呼吸すると喘息の症状を引き起こす可能性があるということを、かつては誰も考えもしなかった” “喘息や、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者や他の呼吸器の問題を抱える人は、体が要求するよりも2〜3倍以上の呼吸をしている” ~Konstantin Pavlovich Buteyko (1923~2003) これらは喘息治療の権威でもあるButeyko博士の残した言葉です。 一般的に正常な呼吸回数は1分間に8~12回とされていますが、例えば喘息患者などは20回近く呼吸を行っています。体調不良や精神的ストレスを抱えているときも呼吸回数は増加します。 呼吸回数が多くなると、過剰な酸素供給によりpHバランスも正常値から外れ、また呼吸に関わる筋群も過剰に働くことになります。 「人間は簡単に2、3回の深呼吸でphバランスを変化させることができる。 30秒以下の胸式呼吸でpHは7.4から7.5に上昇する」 ~American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine. Vol 168; 10-48 2003. 上記のリサーチで検証されている様に、身体のpHバランスは呼吸により簡単に変化します。 これは呼吸パターンだけではなく、単純に呼吸回数の増加によっても変化する為、過剰に呼吸を行っているクライアントには呼吸回数を減らすアプローチが必要となります。 呼吸回数に介入する際に知っておくべきこと 1. 呼吸のしすぎは単なる習慣でしかない:呼吸を調整する脳の一部(中枢化学受容器)が呼吸をしすぎることに慣れてしまっているだけである。長時間の過剰な呼吸(以下では過呼吸と表記する、“長時間”とは“24時間以上”と定義する)は、脳を敏感にし、さらに過呼吸を長引かせる。過呼吸が、習慣的で、長期的にわたると、主要原因が取り除かれた後でさえもその癖は続いてしまう 引用: 「過換気症候群(HVS)と喘息」 スティーブン・デミター医師 過呼吸になった原因は様々ですが、“一時的に過呼吸になる必要“が生じた(例えば過剰な緊張状態等によって通常より多くの酸素が必要となった)人が、過呼吸の必要がなくなった後も“習慣として”過呼吸を続けるケースが多いです。 セッションの前に、『過呼吸であり続ける必要はもう無いので、呼吸回数を減らすことに何の問題もありません』とクライアントにしっかりと理解してもらう必要があります。(多くの方が呼吸回数を減らしたり、呼吸パターンを変えることに不安を覚えます、まれにセッション中に酸欠になったと勘違いして軽いパニックを起こす方もいらっしゃいます) 実際のセッションでは様々な手法で呼吸回数を減らすワークを行います。(共通しているのはどのエクササイズも4~9分間の継続が必要ということです、これは中枢科学受容器が過呼吸状態をリセットするのに必要とされている時間です) 今回は一番簡単な手法の一つをご紹介します。 2. 片方の鼻の穴で呼吸をする方法 どちらか片方の鼻の穴は反対側に比べて少し詰まっている状態である事が多いものですが、空気不足を作り出すために、通っている鼻の穴を指でふさぎ、少し詰まっている方の鼻の穴で呼吸してみます。通っている方の鼻の穴を閉じることで吸う空気量が減り、息苦しく感じるかもしれません。この状態を4分間維持してみてください。 このワークの後に最初に詰まっていた方の鼻の穴はどのように感じるでしょう ※クライアントは4~9分間の間、常に少し息苦しい、息を吸いたい!と思い続けますが、気持ちを落ち着かせてゆっくりと少ない量の呼吸を維持する必要があります。 何回かの試みの後、呼吸回数または呼吸量が減少していれば成功です。すぐに呼吸回数の減少が見られなくても、数週間の間繰り返しワークを行うことで徐々に効果が表れてきます。 注意: 呼吸エクササイズは、ほとんどの人にとって適切でとても有益ですが、下記の症状がある方には適していません。自分に適しているかわからない場合は、行わないでください。 ・現在がん治療を受けている ・1型糖尿病 ・てんかん ・統合失調症 ・血圧レベルが正常でない ・胸痛や心臓付近に痛みがある ・鎌状赤血球貧血症 ・動脈瘤 ・過去6ヵ月間に心臓の問題があった場合 ・コントロール不良の甲状腺機能亢進症 ・既知の脳腫瘍や腎臓 以下に当てはまる方は、強度の軽い呼吸法であれば問題ありませんが、細心の注意を払いながらワークを行ってください。呼吸法によるストレスが強すぎる場合、症状を誘発、悪化させる可能性があります。 ・重度の喘息患者と肺気腫及びCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者 ・2型糖尿病 ・妊婦(妊娠初期は全く行わないこと) ・不安神経症/鬱病 ・片頭痛の患者 呼吸回数と呼吸パターンは相互に影響しあうため、呼吸パターンへの介入によっても呼吸回数を減らせるかもしれません。 私は呼吸への介入を行った後の効果測定の手段として呼吸回数を活用しています。 ※ちなみに、私は現場で1分間の呼吸回数を数えるような測定はしておりません。その代わりにコントロール・ポーズという時間を図って呼吸回数を予測するのですが、これはまた次回以降にご紹介します。
テンションのダイアル
東京で初開催となった、イマキュレートダイセクション コアのクラスから、呼吸のドリルをご紹介します。獲得した腹腔内圧をできるだけ失わないように呼吸を吐く方法を、タスクに必要とされるレベルに合わせて調節できるように、ダイアルのメモリをイメージしながら実践します。
より良い呼吸 より良い動き パート1/2(ビデオ)
より良い呼吸ができれば、姿勢も向上します。より良い姿勢は、より楽な呼吸を助けます。トレーニングを行う前のウォームアップに取り入れることができる呼吸と姿勢の向上のためのエクササイズを、エリック・クレッシィがご紹介します。パート1
より良い呼吸 より良い動き パート2/2(ビデオ)
より良い呼吸ができれば、姿勢も向上します。より良い姿勢は、より楽な呼吸を助けます。トレーニングを行う前のウォームアップに取り入れることができる呼吸と姿勢の向上のためのエクササイズを、エリック・クレッシィがご紹介します。パート2
ジム内・外におけるパフォーマンス効率の為の呼吸 パート1/2
呼吸は生存のためにだけでなく、効果的なコア機能やスタビリティのためにも必要不可欠です。ポール・チェックをご存知の方は、呼吸は生存のトーテムポールの1番頂上に来る事をご存知でしょう。 フィットネス業界において、エクササイズ中におけるベストな呼吸法は、たいてい曖昧になってしまっています。ヨガにおいては数百年もの間、呼吸と身体に課された要求に対応する神経システム能力の重要性が理解されています。30年のヨガ指導歴を持つジュリアン・カルボは呼吸についてこのように話しています: ‘息を吸いながら、ポーズの中にスペースを作り、息を吐きながら、そのスペースの中に入っていく’ ポーズをとりながら息を止めることで身体は硬くなり、筋が適切な長さを得たり、関節が最適な可動域に必要なモビリティを獲得することを妨げてしまいます。 呼吸の認知というものはヨガにおいては必須の訓練であり、身体の内外から心にアプーチし、ヨギが美しくバランスのとれたポーズをおこなうことを可能にするのです。 呼吸のレートは興奮させることもあれば、落ち着かせることもできます。あなたはクライアントに効果的な呼吸パターンをどの程度強調して教えていますか? フィットネス業界における呼吸の典型パターンとしては、力を入れる時に息を吐き、運動における回復期の一環として息を吸っています。ここで少し難しいのは効果的な呼吸と共に、脊柱を守る為にどのように腹腔内圧を保持するかということです。 ストロングマンや吊り輪を使う体操選手などを見たとき、長時間最大限のテンションを維持していることに気がつくでしょう。彼らは上手に呼吸をするということをマスターしているのです。彼らのようなアスリートは、腹腔内圧を保ちながら、かなり小刻みな横隔膜呼吸をしています。 呼吸についてわかっているのは、様々なエクササイズ強度や異なる環境において、適応しなければならないということです。 オリンピックのウェイトリフティングのように、エクササイズで高いサポート能力を必要とされる程より高い腹腔内圧が必要となります。それゆえより少ない呼吸となるのです。もし最大下有酸素能力、例として自覚的運動強度が6/10でバイクを漕いだ場合、呼吸は比較的スムーズでしょう。おそらく3秒で息を吸い、少し止めてから3秒で吐くかもしれません。強度を上げ始めると、呼吸のレートは変わり始めます;自然とより強い力で息を履くようになります。 ストレスは呼吸の仕方に関して、とても大きな役割を担っています。ストレスを受けたとき、呼吸が短く小刻みになったり、もしくは過呼吸になっていることに気づいた事はありませんか?常にある程度のストレスを受けている人もいるのです!ですから場合によっては、理学療法士のような方達に診てもらい、横隔膜式呼吸を学ばなくてはならない時もあります。はよく、患者が仰向けになって片手は胸、もう片方の手はお腹に乗せるといった、横隔膜呼吸をご覧になったことがあるかもしれません。そして腰部(腰椎)を床につけたまま、呼吸のサイクルに合わせて腹部を膨らませたりへこませたりします。この方法で肩が上がる呼吸の癖や胸郭が過剰に広がることを防ぎます。 他にも沢山の要素が私達の呼吸に影響しています。寝ている赤ん坊を見るとお腹を動かしているのがわかると思いますが、これは生まれながらに横隔膜を使っての呼吸がプログラムされているからです。成長して、身体を気にし始めると、人々は見た目の美しさの為に首や肩、肋骨での呼吸を始めます。問題なのは、このパターンを繰り返し続けてしまうと身体にこの呼吸パターンが自然と染み付き - 酸素摂取や筋骨格系システムにおいて非常に非効率的になっていくということです。息の吸い方も、酸素摂取に影響を与える可能性のあるものです。 90年代に行われたシドニー大学の研究によると、ヴェントリンに依存する喘息持ちの人々は頻繁に口から呼吸する傾向があることを示しています。そのリサーチではその患者の人達の口にテープを貼り、鼻呼吸を促進させました。食事の時にのみテープを外し、そのテストは24時間に渡り続けられました。結果は驚くべきものでした。被験者のヴェントリン依存が3/2にまで減少したのです!つまり実験で鼻呼吸をした被験者のヴェントリンの使用量が口から呼吸する時と比べて1/3の量になったのです。 これを持久性という観点から考えてみましょう。もし鼻からの呼吸を習った場合、私達はより多くの酸素と少ない二酸化炭素を摂取することになり、私達の呼吸システムは口腔よりも鼻腔から吸い込むほうが呼吸機能にとっては最適であると結論づけられます。 過去20年以上もの間、呼吸はケトルベルのようなファンクショナルツールにおいてベストとなる方法解明の為に多くの科学的研究がなされてきました。パベル・タソリンのようなマスターはケトルベルスイングにおける生体力学的呼吸を紹介しています。ケトルベルが両脚を通ってヒップヒンジに向かう時に、短く小刻みに息を吸い股関節の伸展と同時に短く小刻みに息を吐きます。フィニッシュポジションが脊柱の過伸展を防ぐ為に体幹部の固定を再構築させてくれます。 サンドバッグなどのツールでオーバーヘッドスナッチを行うことを考慮した場合、大抵多くの人々がパワーバックを腕の高さまで引き上げる際に体幹を固定するのを見かけるでしょう。問題はこの人達がオーバーヘッドのフィニッシュポジションに到達したとき、彼らの体幹がスイッチオフになることがあり、腰椎過伸展の原因となってしまうことです。
ジム内・外におけるパフォーマンス効率の為の呼吸 パート2/2
ケリー・スターレットは “Becoming a supple Leopard(しなやかなヒョウになる)”の著者であり、ウェブサイト“Mobility WOD(モビリティWOD)”を運営しています。ケリーが効果的な呼吸や腹部の運動について尋ねられた時、彼は “Belly Wack”テストというテストを戦略として使っています。このテストは一日を通じて友達に腹部を軽く叩いてもらい、常に身体の軸を感じながら腹部の圧を保つというものです。 どれくらいの腹部の収縮が必要なのかは一日を通して変わります: 立位の場合や歩行の場合、だいたい15~30パーセントの収縮が必要になります。 プッシュアップや近隣でのジョギングでは、腹部複合体全体に40~60パーセントの収縮が必要になるでしょう。 50メートルの全力失踪やマックスのデッドリフトでは、100パーセントの腹部の固定力が必要です。 ですから、私達の呼吸レートや深さに必要とされる異なる腹部圧の範囲は、これらの要求に応じて変化するのです。 呼吸レートは効率性の向上の為、私達が直面する環境に応じて頻繁に変化します。スイマーを例にとってみた場合;ジムで活用しているような一般的な呼吸パターンは、彼らには適応しません。これを少し考えてみましょう;スイマーは、顔が水上に出ている時よりも、より多くの時間を顔が水中にある状態で過ごしています。これは彼らの呼吸に多大な影響を与えます。能力の高いスイマーはたいてい、パワフルな2秒間の吸気と、頭が水中にある間に6~8秒間の呼気をおこなっています。もしプールで活動するスイマーに効果的なトレーニングをジム以外でおこないたいのなら、これは考慮すべき問題でしょうか?-もちろんです! 呼吸の鍛錬、あるいは呼吸のラダーはロブ・ローレンスによって開発されました。少し考えてみましょう;高強度のケトルベルスイングをおこなった後に次のセットにいくまでの間に、決められた呼吸数しかできません。このアプローチはあなたの呼吸数と生理機能をスローダウンするように鍛錬するのです。これで基本的にパニックを免れることができますし、休む時間内でより確実に回復することができます。 下にある動作別/強度別の呼吸パターンガイダンスを見てみましょう: 注意:異なった場面や幾つかの特異的な動作には、最大力を作り出す為に呼吸を止めるバルサルバ法が必要とされます。もしもクライアントが心臓や循環器機能不全、または高血圧の履歴があるならば、上に記したような高強度の運動への関わりを慎重に進めていくことを推奨します。 生体力学的な例:ケトルベルスイングの際、下げる時に鼻から短く強く息を吸って上がる時に何かを打つような感覚で息を吐く。生体力学的呼吸には様々な形があります。 呼吸パターンを向上させる効果的な練習やガイダンス: 今までに挙げてきたような呼吸法は、もしあなたがスイマーなら、ヨガをするなら、ウェイトをスイングしたり持ち上げるなら、といったように、その状況に合った安全で効率的、そして効果的なエクササイズを行うことを可能にしてくれます。これら全てのトレーニンングには適切な割合のコアの収縮を伴う呼吸レートが要求されます。 呼吸の生理学的な利点に加えて、ストレスの軽減という心理学的要素もあります。興味深いことに、ストレスは私達の健康に身体的、心理的両方の側面で影響を与えます。もしそうであれば、呼吸は確かに私達の神経システムや精神状態へ沈静効果をもたらすはずです。 あなたの精神状態にプラスに働き、安定したリズミカルな呼吸パターンがいくつか(これがすべてではない)あります: 歩行瞑想 これは歩行量に合わせてシンプルに呼吸をする、禅仏教の教えです。例えば6歩歩いたら、最低でもその倍息を吐く、この場合12歩分息を吐きます。これは集中力と心を静めるのに素晴らしい方法で、スイマー等身体の機能的観点で見た場合にも、最高の身体準備となるのです。 これを実行すると、腕を自由に動かし、“悪しきストレス”に繋がる短くて小刻みな胸式の浅い呼吸ではなく、横隔膜を使った深い呼吸を与えてくれます。 静的呼吸 両膝を曲げて仰向けに寝ます。片手をお腹に乗せてもう片方の手は胸の上に乗せます。息を吸うと同時に、胸を膨らませてお腹も空気で蒸留されたら、お腹からゆっくりと息を吐きながら胸に残った息も吐き出していきます。一定のペースでこれを10回繰り返して下さい。 これによってコアの固定筋群が刺激され、激しいエクササイズをする前にスイッチをオンにする一方で、日常やエクササイズから生まれるストレスに対してリラクゼーション効果を与えてくれるのです。これは、ヨガにおいて、セッションの最後に行われる“シャバアサナ”として知られています。