呼吸と機能・パフォーマンスへの影響
呼吸は我々の機能とパフォーマンスに大いに影響していることが解明されてきました。呼吸を通してどのようにパフォーマンスへアクセスしていくのかをさらに深く考えてみてはどうでしょうか?
より良いパフォーマンスと回復のための呼吸ストラテジー パート1/2
数年前、私は取り除くことができないと感じる慢性的な肩の痛みを抱えていました。 私は、その肩の痛みを治すために、よくある方法をいろいろと試しました:アクティブリリース、様々な種類のマッサージ、電気刺激、その他考えられることの全てを。そのどれもが、短期間の痛みの緩和をもたらす以外は、ほとんど役に立ちませんでした。 数日後には、元の状態に戻ってしまいました。 数ヶ月後、私はビル・ハートマンとマイク・ロバートソンのセミナーを受講していました。彼らに、私が肩に抱えている問題、知り得る全ての治療法を試したこと、それでもまだ痛みがあることを説明しました。 ビルの答え?より良い呼吸をすること。 彼は、私をテープルの上に載せ、素早い評価をし、一連の呼吸エクササイズと数種のモビリティードリルを紹介しました。「よし、じゃあ立ち上がって、肩を動かして、どう感じるか教えて」 私は立ち上がって、肩を動かしました、すると…痛みがなかったのです。 もちろん、私は一連のエクササイズが効いたことに感動しましたが、それまでに試した全ての方法と同じような結果になるだろうと思っていました:一時的な緩和をもたらしても、数日後には痛みが戻ると。しかし、数日が経っても、数週間が過ぎても、痛みが戻ってくることはありませんでした。 ビルは、何ヶ月も私に取り憑いていた、時には物凄く痛み、眠ることさえできなかった障害を、たった数分で改善することができたのです。 それは、私が初めて呼吸の大切さに触れた機会であり、ビルとマイクは、他にほんの数名しか意識さえしていない健康とフィットネスの側面をカバーしていることがわかりました。 過去数年にわたり、私は、パフォーマンス、回復、一般的な健康においてさえも、呼吸がどれほど重要な役割を担っているかについて学んできました。適切に呼吸をする方法を学ぶことから、文字どおり全ての人が恩恵を受けることができます。もしあなたがコーチまたはトレーナーなら、これはあなたのクライアントにとっても人生を変え得るものでもあるのです。 これこそが今日、より良いパフォーマンスとリカバリーのために適切に呼吸をする方法について、深く話すために、私がビルとマイクを招待した理由です。 ビルとマイクは、インディアナポリスフィットネス&スポーツトレーニング (IFAST)という、メンズヘルスマガジンによるアメリカのジム、トップ10に、過去6年間で3回ランクインしている施設を所有しています。 ビルから始め、その後にマイクから聞きますが、まずここに、呼吸ストラテジーがどのようにリカバリーを改善できるかを説明する短い動画があります。 現在のパフォーマンスとリカバリーのモデルは破綻している(人間はなぜ機械ではないのかの理由) 皆さんこんにちは、ビルです。IFASTフィジカルセラピーのオーナーとして、またインディアナポリスフィットネス&スポーツトレーニングの共同経営者として、私は、他の形式の治療では改善できなかった痛みを持つ人々の解決方法を見つけています。 プロアスリートから一般の人々まで、彼らが皆、調子の良い、痛みのない身体を取り戻し、パフォーマンス及び健康を最適化できるように取り組んでいます。 今日の私の目標は、呼吸がどのように動きやリカバリーに影響するのかに対して簡潔な概要を与え、局所から全体の回復へとつながるパフォーマンスモデルを提供することです。 パフォーマンス(または動き)と回復となると、コーチやトレーナーの多くは、決定的要素として筋系に注目する傾向があります。大抵はこんな感じです: パフォーマンス、または体組成(あるいは両方)を向上するために、より大きく、より強く、より調整され、よりパワフルにしたい筋肉に適切な刺激を与えます。 ワークアウトや競技の間に十分な休息を取り、関わった筋肉の修復に必要な栄養素を身体に与え、必要な時にまた仕事ができるように準備します。 少なくともこの大半を正しく行う事で、物事は、あなた、またはあなたのクライアントやアスリートにとって良い方向に向かいます。単純でしょう? この通りなら素晴らしいです。問題は、人間は機械ではないという事です。個々のパーツの集合として身体を見ることができるほど、単純ではないのです。 パフォーマンスと回復を、筋系に対して純粋に局所的なものとして捉える事は、単純に不十分なのです。 実際には、身体は多くのサブシステムにより繋がっていて、それぞれが、パフォーマンス、回復、そして全体的な健康に対して重要な役割を担っています。筋系の動きと回復を最適化しようとすることは、パズルの一つのピースにすぎないのです。 動きと回復のためのより良い、より完全なアプローチは、一つのスーパーシステム – または「ヒューマンシステム」に集約するそれぞれのサブシステムを考慮し、統合されたモデルを通して物事を見ることです。 これらのサブシステムそれぞれが、他のサブシステムのパフォーマンスの成果とそこからの回復の両方を管理し、促進する能力に影響を与えます。 動きと回復の最適化における最初のステップは、すべてが筋系に始まり、筋系で終わる時代遅れのモデルから脱却し、身体の様々なサブシステム全てを考慮した、統合されたモデルを採用することから始まります。 すなわち、私たちは、個々の部分の寄せ集めとして身体を見ることをやめ、相互に連結し、共に働く、密着したシステムの集合体として身体を見ることを始めなければなりません。 この転換ができたら、次のステップは身体の様々なサブシステム全てが大切であると理解することですが、私は、そのうちの一つが他のすべての土台であると考えています。 (効果的に)呼吸をしていない時に悪いことが起こる 健康とパフォーマンスの「パズル」の最も大切な二つのピースである、動きと回復を最適化することにおいて、適切な呼吸の仕組み以上に大切なものは他にありません。 呼吸は、他の全てのサブシステムが健康に働くための土台であるにも関わらず、動きとリカバリーという側面において、最も十分に使われておらず、最も軽視されている部分です。 カレル・ルウィット博士はかつて言いました:「呼吸が正常化されていなければ - 他のどの動きのパターンも正常化できない」 呼吸が不十分だと、少なくともある程度は、他の全てのことが良い状態ではなくなります。適切な呼吸はそれほど大切なのです。 呼吸を正しく行うことができれば、身体の他の全ての「システム」が、最適な動きと回復を促進するために共に働く原材料があることになります。 動きやパフォーマンスという観点からすると、これは当然であるべきです。 もし、効果的に、効率的に呼吸をしていないとすれば、最も基本的な要求が酸素の効果的な活用である運動において、どうして良いパフォーマンスが期待できるのでしょうか? 呼吸の流れの力学的効果、及び、呼吸がどのように動きを損ない、あるいは促進するのかについては、いくら強調してもしすぎることはありません。不十分な呼吸パターンにより、姿勢や動きの質が損なわれ、やがてエクササイズや競技における非効率的な動きにつながり、パフォーマンスは、本来行うことのできるレベルから明らかに減少します。 呼吸は、筋骨格系のポジションを変えることにより、動きのパターン、姿勢、痛み、またパフォーマンスに影響し、肺の膨張不足、または過膨張につながる気流の制限を招き、動きを制限する力学的障壁を作り出します。 すなわち、まさに本当の意味で、パフォーマンス及びエクササイズ時に最適に動くことができることは、効果的に呼吸ができる能力に起因しているのです。 回復も同様に、悪い意味で影響を受けます。最適な回復について本当に理解するためには、筋肉を通り越えて、神経系を観察しなければなりません。 神経系の回復は、動動系への出力をもたらす能力の再獲得に関わる強力なインフルエンサーです。しかし、健康を維持する能力と同様に、こういった局所における適応が起こることを可能とする、幾つものサブシステムの反応に与える影響にも基づいて考慮をしなければなりません。 神経系が慢性的な疲労を抱えていると、あなたが計画したトレーニングプログラムやコンディショニングプログラムがどんなに「効果的」であるかに関わらず、「トリクルダウン(流れ落ちる)」効果により、成果は最適状態には及ばなくなります。 例えば、強力に活性された、硬直した、適応しにくい神経系は、他のシステムの能力にも同様の低下をもたらす可能性のある広範囲の影響を持ちます。 自律神経系が無理を強いられ、交感神経系優位な状態に居続けると、ストレスホルモン過多となった血液循環が、エネルギーの修復メカニズムが効果的に働くのを遅らせるかもしれません。これにより、消化が阻害され、必要なエネルギーや栄養素の吸収が制限されることにもなりえます。 忘れないでください:全ては相互に繋がっているのです。 「交感神経支配」にあることは、免疫システムが炎症を管理する能力を弱め、軟部組織が肥大化する能力や、順応して再建する能力を低下させます。 やがてこれは、腱などの組織の退化を招き、最終的に怪我につながります。 簡潔にまとめると、過度な負担、過度なストレス、疲労にさらされた状態のために、神経系が、より「交感神経支配」状態にあればあるほど: 身体が動きを促進することに対して非効率的になります(例 ワークアウトや競技時のパフォーマンスが、「理想的な」生理学的環境下で可能なパフォーマンスに及ばない)。 身体が、ワークアウトセッションや競技の後に回復プロセスを促進する能力が低くなります(つまり、身体は低いレベルの疲労状態に居続け、次回のワークアウトや競技でのパフォーマンスが代償されます。またそれが長期にわたって続くと、全体的な健康にもマイナスの影響を与えます)。 身体により多くの「ストレス」がかかると、神経系への要求はより大きくなります。神経系に過度に負担をかける要因となるものには下記が含まれます: 貧しい睡眠習慣 長引く健康問題(たとえ「少し」でも) 悪い食事の選択による必要栄養素の欠如 やる気に満ち溢れた、忙しい、「絶対諦めない」タイプの人であること フィジカルトレーニング/コンディショニング(そうです、核心的な部分ではエクササイズは身体にとって「ストレス」です) 望ましくない呼吸パターン もちろん、これらストレスの環境的、行動的側面のそれぞれに取り組むことは大切ですが、もし私が、これらに「優先順位」を作らなければならないとすれば、良い呼吸のパターンを発達させることが常に最上層にくるでしょう。 回復に関して言うと、適切な呼吸は、神経系をストレスにさらされた交感神経支配状態から、より修復的な、回復基盤の副交感神経支配状態へと移行することを可能にします。結論はこうです:エクササイズや競技時に最適に動き、かつ回復を促進するためには、あなたの神経系状態を確認しなければなりません。 良いお知らせ? 呼吸は、筋肉や、他の健康及びフィットネスの構成要素のように「鍛える」ことができます。より良い呼吸のメカニクスを発達させることにより、時間とともに、無理を強いられてきた神経系の結果を望ましい状態に変えることができます。 練習をすれば、効果的な動きと回復プログラムの一部として、クライアントやアスリートは、パフォーマンスを維持するために、練習のセットの繰り返しの間に回復を促進することができるとともに、健康と長期間という観点から、より良い回復をする能力を向上することができます。
より良いパフォーマンスと回復のための呼吸ストラテジー パート2/2
動きと回復を改善する3つのシンプルな呼吸エクササイズ マイク・ロバートソンです。 私は、今しがたパフォーマンスとリカバリーにおいて呼吸がどれほど大切かについて話し終えたビルと共に、IFASTの共同経営者です。 私はおよそ18年前に健康及びフィットネス業界での仕事を始めました。これまでに、すべてのメジャースポーツのプロアスリートと働く機会に恵まれ、彼らのパフォーマンス、及び健康を、次のレベルへと進める手助けをしてきました。 でも、堅苦しいことはこのくらいにして、みなさんがここにいる真の理由に戻りましょう:動きを改善し、回復を促進するための呼吸の使い方です。 ビルは、なぜ適切な呼吸のメカニクスが、最適な動きと回復にそれほど重要なのかをとても上手に説明してくれました。 次のステップは、適切な呼吸のメカニクスを教えるために、あなたのプログラムに特定のエクササイズを取り入れることです。不思議に聞こえるかもしれませんが、多くの人々 -あなたが見ているクライアントやアスリートを含め- は、効果的ではない呼吸をしています(少なくとも理想的ではない)。 ビルが上述したように、良いニュースは、呼吸は、健康、フィットネス、パフォーマンスプログラムなどの構成要素と同様に、鍛えることができるということです。 ここで、今すぐに始められるエクササイズを紹介します。 ベア呼吸 床に四つん這いになる 手は肩の真下、膝は股関節の真下に位置する 床から身体を離すように、肩甲骨の間にストレッチを感じるまで、腕を通じて床を押す 脛が床と平行になるように、床から膝を持ち上げる このポジションを保ち、鼻から吸って、口から吐く、充分な呼吸を3-5回する 数秒間、リラックスして自然な呼吸をする 上記を3-5回繰り返す 壁呼吸 壁を背にして立ち、足は腰幅に開いて、壁から10-12インチ(25-30cmくらいのところに位置する) 骨盤を後傾し、壁に対して下背部を平らにする 上背部を前方へ丸めながら、両手を前方へ最大限伸ばす このポジションを保ちながら、3-5回呼吸をし、リラックスする 3-5回繰り返す 前腕プランク呼吸 床にうつ伏せになる 手のひらを床に向けて、人差し指と親指でダイアモンドの形を作るようにして、手を顔の下に位置する。 前腕を通じて押し、肩を前に押して、胸とお腹を床から持ち上げ、体重が前腕と恥骨のみに乗っているようにする この上向き姿勢を保ちながら、鼻から吸って、口から吐く、完全な呼吸を3-5回します スタートポジションに戻る これを3-5回繰り返す。 これらの回復呼吸エクササイズにおける素晴らしい点は、ほぼいつでも行うことができることです。 これらのエクササイズは、動的なウォームアップやクールダウンに取り入れるのも非常に簡単で、ジムの以外の場所、自宅でも行うことができます。ビルが述べたように、こういった種類の呼吸を数分行うと、副交感神経系を活性することができるため、より緩んで、リラックスした状態になることに気がつくでしょう。 日常のルーティンの中にこれらのエクササイズをいくつか組入れてみてください。すぐに違いを感じることができるでしょう。