ドライニードリング(乾性穿刺)の6つの事実

私の臨床の現場において、ドライニードルは、使用頻度が最も高い治療法のひとつになってきました。様々なテクニックや生理学、損傷へのアプローチ、パフォーマンスとリカバリーなど学べば学ぶほど、さらに使用頻度が増し、その効果も上がり続けています。 ドライニードリングに関して、いくつもの誤解や一般的な誤報があるようですが、この投稿が少しでもこれらのエリアの理解に役立てれば幸いです。 1) ドライニードリングと鍼とは異なります。 Zhouらの記事である「ドライニードリング vs 鍼治療:継続的な議論」[1]に目を通すと、伝統的な鍼治療には多くの分野があり、西洋医学鍼治療(WMA)もそのひとつであることが分かります。また、WMAの中にも、さまざまな種類のドライニードルを含むサブセットがさらにあります。 Karel Lewit 医師は、1979年に「筋筋膜痛におけるニードルの効果」[2]というタイトルの論文を書きました。これは、鍼灸師ではない専門家によって書かれた、ドライニードリングに関する言及では最初に認知されたものです。あるツールを使用することが、特定の分野の専門家になるということではありません。 ハンマーを使って絵画を壁に掛けても、それによって大工にはなれません。電卓を使用しても、それによって公認会計士にはなりません。マニピュレーションを施しても、それによってカイロプラクターにはなりません。心肺蘇生法(CPR)ができても、それによって救急救命士にはなりません。そして、糸状の細い針を使っても、鍼灸師になるわけではないのです。 医療において、さまざまなツールは常にオーバーラップしています。細い糸状の針も同じです。 2) ドライニードルを安全に行うために必要なことをすべて学ぶには、25時間の授業では収まりません。 ドライニードリングを使用している医療従事者は、だいたい4~10年間の学士および修士課程を修めており、さらに数百時間から数千時間に及ぶ他の卒後教育を受講しています。 私は解剖学、生理学、筋骨格機能障害、神経系、運動、触診、医学的評価、整形外科的評価、および怪我のマネージメントの研究に10,000時間以上費やしてきました。 この教育と経歴(そして、私の免許を発行している州の医療行為の法令)によって、私(および私の仲間である理学療法士、アスレチックトレーナー、カイロプラクティックドクター、医師、看護師など)は、ドライニードリングを施すことができるのです。 3) ドライニードルはまったく何も治療しない!にも関わらず全てに驚異的効果があるのです! 針が組織に穿刺される時に起こる生理学的変化は、きわめて複雑ですが、ここで抑えておきたい3つのポイントがあります:私たちが針を体内に穿刺すると、局所的、部位的、中心的な治癒反応が得られます。 局所的には、針が穿刺されるとカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、ヒスタミン、ブラジキニン、サブスタンスPが局所的に放出されます[3]。これらは、血管拡張や血管新生を促進し、局部組織の損傷からの回復を促進します。 部位的には、針が身体の細い有髄神経(Aベータ、Aデルタ)と無髄線維(C線維)を刺激し、後角を介して上行性疼痛経路の刺激を作動させ、視床、視床下部、および中脳水道周囲灰白質(PAG)に到達します[3]。下行性の痛みの経路が誘発され、脊髄の後根神経節でエンケファリンが放出され、GABAとグリシンとともに各神経が始まる脊髄レベルで疼痛伝達を制御します。 そして最後に、全身的には、脳の中脳水道周囲灰白質(PAG)からβエンドルフィン、エンドモルフィン、ダイノルフィンなど(オピエート神経ペプチド)が分泌され、体内に総合的な鎮痛効果が得られます。これは、脊椎マニピュレーションを受けたときに分泌されるオピオイドと同様、モルヒネと同族に属します。 これでお分かりですね:この治療法がこれほどまでにパワフルなのは、局所的、部位的、そして全身的な効果があるからなのです。 4) 私の意見ですが、証拠、研究、科学とは相互置き換えが不可能な用語だと思います。 私の臨床の中で、疑問が湧いてくるとき、それを調べるために研究に目を向けます。私たちの周りには今や圧倒されるほど多くの研究があります。ある療法に効果がないという研究を見つければ、必ず効果があるという研究を見つけます。研究は豊富すぎるのですが、エビデンスはそうではありません。 いくつかの研究が同じ方向を示しているならば、私たちは臨床を推進するエビデンスがあるということになります。そのエビデンスが分かるまでは、ある介入法にメリットがあるかどうかを判断するために科学に目を向ける必要があるのです。 ドライニードリングを裏付ける多くの科学があります。エビデンスは常に臨床と科学に遅れをとります。あなたは、エビデンスがない場合、自分の考えを裏付けできる研究がいくつかありますか、または。少なくとも自分の臨床を推進する科学がありますか?もしあるのであれば、合法的かつ倫理的である限りそれは価値のある介入法であると私は思います。 客観的に物事を見ましょう。あなたの介入法の反応の出現は、即効型ですか、それとも遅延型ですか?それらの反応は測定可能ですか? ドライニードリングでは、私の患者の反応は客観的で測定可能です。そして、それらは一般的に顕著に示されます。 5) ドライニードリングにも“絶対に正しいひとつのテクニック”はありません。 他の徒手療法やエクササイズの処方と同様です。人体にドライニードルを使用するには芸術性(アート)が必要です。理論や見解が異なるいくつかのテクニックがあります。単に異なるというだけで、優劣はつきません。 先ほども述べましたが、何事も正しい方法がひとつだけならば、私たちはみなそのようにするでしょう。ドライニードリングも例外ではありません。有効なテクニックはたくさんありますから、私はいつも学生に、複数のアプローチ方法を学ぶように伝えています。そうすれば、自分の臨床や哲学にぴったりの方法が見つけられるからです。 6) 訓練を受けていない人がドライニードリングを使用すると、危険を伴います(危険を伴う車の運転も同様ですね)。 この危険性というものは、正しい知識と臨床経験で緩衝することができます。人体解剖学に忠実に、危険ゾーンを熟知し、そしてドライニードリングの適応と禁忌を知っておくことが重要です。 訓練を受けた専門家が使用する場合、大惨事は最小限に抑えられます。有害作用が記録されていている文献があります[4, 5, 6]。すべてのツールが、すべての患者のためにあるわけではなく、また、すべてのツールがすべての臨床医のためにあるわけでもありません。患者と臨床家の安全のために、適切な普遍的予防策が適用されなくてはなりません。 ますます多くの査読された文献が公開されており、未だ解明されていない事柄を明らかにする試みの研究が行われています。現在はドライニードリングの分野でエキサイティングな時代であり、私はこの素晴らしい療法についてこれからも教えることに興奮しています。 参照 Zhou K, Ma Y, Brogan MS. Dry needling versus acupuncture: the ongoing debate. Acupunct Med. 2015:acupmed–2015. White P, Lewith G, Hopwood V, Prescott P. The placebo needle, is it a valid and convincing placebo for use in acupuncture trials? A randomised, single-blind, cross-over pilot trial. Pain. 2003;106(3):401-409. Cagnie B, Dewitte V, Barbe T, Timmermans F, Delrue N, Meeus M. Physiologic Effects of Dry Needling. Curr Pain Headache Rep. 2013;17(8). doi:10.1007/s11916-013-0348-5. Kim M-R, Shin J-S, Lee J, et al. Safety of Acupuncture and Pharmacopuncture in 80,523 Musculoskeletal Disorder Patients: A Retrospective Review of Internal Safety Inspection and Electronic Medical Records. Medicine (Baltimore). 2016;95(18):e3635. doi:10.1097/MD.0000000000003635. Brady S, McEvoy J, Dommerholt J, Doody C. Adverse events following trigger point dry needling: a prospective survey of chartered physiotherapists. J Man Manip Ther. 2014;22(3):134-140. doi:10.1179/2042618613Y.0000000044. Zhang J, Shang H, Gao X, Ernst E. WHO | Acupuncture-related adverse events: a systematic review of the Chinese literature. WHO. http://www.who.int/bulletin/volumes/88/12/10-076737/en/. Accessed July 27, 2016.

スー・ファルソニ 3045字

エビデンスベースの実践

エビデンスベースの実践という言葉を聞くことも多くなってきていますが、これは実際のところ何を意味するのでしょうか?リサーチの結果に基づいていればエビデンスベースである、とは言い切れないのではないか?と提案するスー・ファルソニのビデオをご覧ください。

スー・ファルソニ 2:19

組織的なシステムの一部分 パート2A

Bridging the Gap from Rehab to Performanceからの抜粋のパート1は、トリートメントテーブルからフィールドへ患者やクライアントをケアするための組織的なシステムの最初の一部分:痛みの生成源、モーションセグメント、精神運動性のコントロール、体性感覚コントロール、の探究から始まりました。パート2では、臨床から機能とパフォーマンスに関連した部分に移っていきます。 基礎的パフォーマンス パフォーマンスについて注目し始めるにつれ、私達は基礎的な筋力について取り組み始めます: それぞれの筋は求められる課題を実行するための基本的な基礎筋力を有しているでしょうか? それぞれの筋は重力に拮抗して、そして負荷があっても、活性化できるでしょうか? 標準化された徒手による筋の測定において、それぞれの筋は基礎的な「5段階中5」の筋力−徒手筋力測定の原則における正常な筋力、を発揮できるでしょうか?[i],[ii] もしそうでないならば、基本的な筋力トレーニングを行う必要があります。ベースラインの筋力を最初に発達させなければ、筋力の力強い発揮でるパワーを向上させる事はできません。この段階では、基礎筋力、そして最終的にはパワーを再確立する必要があります。この段階では、筋力に対して基礎的なコレクティブエクササイズを展開することが上手くいくでしょう。FMSやSFMA、PRI、MAT、ストレングス&コンディショニングトレーニングから導き出されたコレクティブエクササイズは、よりパワフルな動作に対しての準備となる筋力を発揮するために用いられます。 パワーを導入する際は、それがケトルベル、オリンピックリフティング、またはそれ以外の方法によるものかどうかは問題ではありません。既往歴やスポーツの背景、トレーニング歴、そしてパフォーマンスのニーズを考慮して、あなたがクライアントに対して最も良く機能すると思うものを利用しましょう。 基礎の発展 基礎の発展段階では、パワーとしての基礎筋力−基礎的なパフォーマンス−を発揮する方法を学び、そしてこのパワーを一般的なスポーツ動作に応用します。これは、パワー発揮を導入し、直線的な動作、多方向への動作、ジャンプそして着地に焦点をあてた段階です。 例として、私たちがスプリントをプログラムに取り入れる前に、アスリートは加速に必要な基礎的ポジションを取れるようにならなければなりません。アスリートは加速中に発生する力をコントロールできる必要があり、そして、怪我をしないように安全に減速できなければなりません。 トリートメントテーブルからフィールドへのギャップを埋めるためのこのプログレッションでは、回復段階のアスリートは、正しいバック走、シャッフル、ジャンプ、着地、そして基本的なフットワークのテクニックを練習や試合にフルで復帰する前に学び直さなければなりません。[iii]これらの基礎的なスポーツのスキルは、異なる組み合わせ、そして様々な負荷やスピードで全てのアスリートに必要です。 この時期が、スポーツ動作の基礎を再び築き上げる時です。 この時点での主な目標は、一般的なスポーツ動作と、パワーの発揮とそのコントロールを再トレーニングすることです。ここが、ストレングス&コンディショニングのモデルからのスキルを用いる時です。EXOSやマイケル・ボイル、ダン・ジョン、CSCSの標準処方、またはその他の方法で使用される原則に従うかどうかはあなた次第です。 既往歴やスポーツ、そしてあなたの経験を基にしたあなたのクライアントの個々のニーズに注意を払うことはあなたのクライアントの役に立つでしょう。 高度なパフォーマンス パフォーマンスの領域へ入ったならば、それぞれのスポーツや異なるポジションの独特な必要条件が関係してきます。例えば、アメリカンフットボール選手がワイドレシーバーであれオフェンスラインの選手であれ、二人とも走らなければなりませんが、オフェンスラインの選手は絶対スピードの技術よりも加速の技術がより必要になるでしょう。 野球選手とサッカー選手について考えてみてください:前者はベースを周り、空中にボールが飛んでいる際にそれがどこにあるかに注意を払いながら、様々なフィールドの位置に走っていく必要がある一方で、後者はボールが足元にある状態で、相手選手を避けながらピッチ上を駆け回らなければなりません。これらのアスリート達は、基礎的なスポーツ動作を共有してはいますが、それぞれのスポーツやスポーツの中のそれぞれのポジションには動作の観点から異なるニーズがあり、私達は少しずつ違った方法で、それらのニーズに対して取り組むのです。 ここで、介入方法を組織化する際の基礎的なコンセプトの出番です: アスリートに対して診断に特化した、診断を包括した、またはクライアントに特異的な何かを提供していますか? 私たちの、痛みの生成源やモーションセグメントに対する治療は、一般的に診断に基づいています−これらは診断に特化しています。リハビリの初期段階では、私たちが対処しているのが関節包炎か、または腱の炎症かを知ることが重要であり、そしてその痛みの生成源が体肢やモーションセグメントにどのよう影響しているかは重要なことです。 リハビリが進むにつれ、介入は診断を包括するものとなります。これは、私たちが施設にいるすべての人に、何らかのコアの安定性のトレーニングを処方することを意味します−私たちがコアの安定性の定義をどの様にするとしても。14歳の高校アメリカンフットボール選手や24歳のプロアスリートと同様に、60歳のゴルファーがコアの安定性のエクササイズを一通りやることになります[iv]。この人たちは異なるパフォーマンスの目的とおそらく異なる診断を持つ、異なる年齢層に属しているでしょうが、彼らは皆、状態を改善するためになんらかの「コアの安定性」が必要です。 最後に、ギャップを埋めるといモデルにおいてよりパフォーマンス主体へと取り組むにつれ、私達はよりクライアント特異的にならなければなりません。消防士やプロアスリートは、両者とも非常に高いレベルで職務を果たす必要がありますが、彼らの職業は異なるスキルを必要とします。私達はすべての機能を再建し、彼らのスポーツへ復帰させるためには、アスリートの個々のニーズを考慮する必要があります。 このパフォーマンスの段階は、クライアントをその人のスポーツやポジションに必要とされるポジション特異的な機能を伴って、そのスポーツへ戻すことを目指します。リハビリの介入方法と同様に、どのパフォーマンスモデルを選ぶかは問題ではありません。これらは、医療従事者またはコーチとしての、あなたの個人的な好みと特権なのです クライアントにとって、スポーツやポジションに特有の技術的なニーズを満たせることが必要不可欠なため、この部分ではスキルコーチを必ず交えるようにしましょう。フィールドに戻るために必要な主な運動パターンのそれぞれにおいてすべての能力をクライアントが再獲得したことを確認するために、運動分析も用いることができます。 医療とパフォーマンスモデル間の移行 これは紹介するのが最も難しいコンセプトの一つです。アスリートが、リハビリをしているところからパフォーマンストレーニングへと移行する一つの明確な時点はありません。アスリート達は、上肢の怪我のリハビリをしながら、同時に、筋萎縮を最小限にし、パワーを発揮する能力を維持し、怪我の予防もしながら下半身のパフォーマンストレーニングを行なっているかもしれません。 ギャップを埋めるというモデルは、連続体のように思えるものの、実際にはチェックリストに近いものです。あなたのアスリートは、次のステージに進む前に一つのステージの基準を満たす必要はありません。これらの要素は、強いてあげるとすれば、痛みの生成源に対して取り組む場合という例外を除いて、特定の順番で起こらなければならないものではありません。痛みは生物・心理・社会モデルのすべての側面に影響を与えるので、即座に対処する必要があります。その例外以外で、他のすべてのことは、競技に復帰するプロセスのどの時点においても取り組むことができるかもしれませんが、これらすべては怪我をしたアスリートをフィールドへ戻す前のどこかの時点で取り組む必要があるものです。 しかし、痛みを持ちながら競技するアスリートはたくさんいます。ギャップを埋めるというモデルでは、痛みは即座に対処されるべきと認識している一方で、この理想的な提言は、スポーツで日常的に起きていることを現実的に表しているものではないかもしれません。人々は痛みを持ちながら競技に参加します―彼らはいつもそうします。したがって、このモデルは真の連続体ではなく、あるアスリートのある時点に対して柔軟になる必要性を認識する、理想的で理論的なプログレッションのようなものです。 参照 [i] K. E. Wilk et al, “Rehabilitation of the Overhead Athlete’s Elbow,” Sports Health, September 2012. [ii] Kendall F, McCreary, E. Muscles, 5th edition, Baltimore, MD, Lippincott Williams & Wilkins, 2005. [iii] Robert C. Manske, Postsurgical Orthopedic Sports Rehabilitation: Knee and Shoulder, 171-173. [iv] Thomas Haugen et al, “Effects of Core-Stability Training on Performance and Injuries in Competitive Athletes,” Sport Science, 2016.

スー・ファルソニ 4238字

組織的なシステムの一部分 パート2B

医療とパフォーマンスモデル間の移行 (続き) 痛みの生成源、モーションセグメント、精神運動性のコントロールそして体性感覚コントロールという最初の4つのカテゴリーは、医療モデルに属します。私たちは一般的に、これらの分野を医療提供者の管理のもと、痛みを改善し、システムを正常化し、そしてパフォーマンスモデルのより高いレベルの身体活動に対して準備することに焦点を当てながら取り組みます。これらの4つのエリアは、パフォーマンスの基礎的な構成要素に取り組むものです。 体性感覚コントロール、基礎的パフォーマンス、基礎の発展、そして高度パフォーマンスはパフォーマンスモデルの一部です。これらは一般的に、基礎を築いた後に、競技用の身体を作り上げそして微調整するものです。 これら2つのモデルが重なるところは、神経系によるものです。体性感覚コントロール−求心性の神経系−がすべてに対する根本的な鍵です。痛みがあり、正常なモビリティや安定性に欠け、そして身体のコントロールが乏しい人が、全身の筋力やパワー、スポーツ動作やスポーツスキルを高めるのは困難でしょう。 アスリートは常にパフォーマンスモデル側にありたいのです。アスリートは、「最初の一歩のクイックネスを向上させたい」といった目的を持ってあなたのもとに来るでしょうが、股関節のモビリティが恐ろしく悪く、そのため最初の一歩のクイックネスを向上させるために必要な、基本的なアスレティックポジションを取ることができません。モーションセグメントを取り戻すことが、介入の最初の段階で必要かもしれません。モーションセグメントが改善したならば、システムの一番の弱点に取り組んだために最初の一歩のクイックネスは向上します。 連続体の、より医療モデル側にある哲学やテクニックは、パフォーマンスに関連することを何もせずともパフォーマンスモデルを向上させます。 医療モデルを新しい家の基礎として考え、パフォーマンスモデルをその基礎の上に建つ実際の家と考えてみてください。悪い基礎の上に家を建てることができますか?もちろん、できるでしょう。しかし、その家の階層の数や、大きさ、風雨にどれだけ長く耐えられるかといったことには制限があるでしょう。悪い基礎の上に家を建てることはできますが、賢明ではありません。 同様に、怪我をして、壊れたシステムの上にパフォーマンスを築くことは可能ですが、賢明ではありません。 競技復帰までのタイムラインを作成する 私たちの分野にいる人達は、計画を立てずに仕事をすることがよくあります。飛行機に乗り、パイロットが飛行前のチェックリストに従わずに飛行計画を実行することを想像できますか?あるいは、計画なしに家を建てることを想像してみてください。計画は私たちの行き先を示してくれます。後で修正することがほとんど不可能かもしれない基礎的なステップをとばすことがないよう、計画は、私たちに系統的なプロセスを踏ませます。長期的な目標と、その過程で達成させる短期的な目標を設定することで、あなたはクライアントに順応する十分な時間を与え、そして関わる全ての人達に、彼らが歩むロードマップを見せることができます。もし何かが道から逸れてしまえば、最終的な結果は変わってしまいます。 3ヶ月で試合のフィールドへ戻したい、膝の怪我の後にフィールドへ復帰しようとしているサッカー選手を例に用いましょう。スケジュールを見て、勝ち負けが重要でないシミュレーションゲームや親善試合を計画する時間があるかを判断する必要があります。アスリートの本当の復帰の1週間前に、シミュレーションゲームでの動作をどの程度行えるかを見るために、低強度でフルの試合のような何らかの運動を目標にします。 その日を決めたら、私達はまず、それぞれのチームに11人ずつのフルチームでプレーしますが、走ることが少なくなるようにフィールドを狭くした、短時間のゲームを計画します。これは、フルサイズのピッチでのシミュレーションゲームの1~2週間前に実施するのがよいでしょう。その前に、プレーするプレーヤーを少なくした、オフェンスまたはディフェンスにより焦点を当てた、ピッチ上で狭い距離でのゲームをスケジュールすることもできます。これは、それぞれのサイドがフルチーム(11名)でプレーする1週間前に実施するのがよいでしょう。 これ以前に、軽いコンタクトを伴うオフェンスまたはディフェンスのドリルを計画し、その前にはコンタクトの可能性のないドリルを計画します。それ以前は、批判的志向を必要としないドリル−動作の実施のみ−を用い、その前には、サッカーに特有の多方向の動作スキルを、ボールを用いながら行います。 その前には、ボールを用いない、サッカーに特異的な多方向への動作スキルが必要です。その前に、直線的な動作をボールを使って、そしてボールを使わないで計画します。直線的な動作を実施する前には、十分な筋力とパワーを発揮する能力を確認する必要があります。 これを行うためには、アスリートは、しっかりとした精神運動性のコントロールと体性感覚コントロールを伴った、モーションセグメントを通しての十分なモビリティとスタビリティが必要です。 これらすべての前に、アスリートは痛みが無い必要があります。 アスリートが新しいストレスに対して順応するための十分な時間を与え、あなたが全体のシナリオを逆向きで完成させる頃には、3か月はその選手を競技に復帰させるには十分な時間ではないとわかるかもしれません。もし、あなたが試みようとしているのであれば、プログレッションは極めて積極的でなければならず、プロセスにおいて問題が起こる余地はありません。もし、ある時点においてでも痛みや腫れが増したのであれば、一歩後退する必要があり、フィールドに復帰するという長期的な目標は遅れてしまうでしょう。 短期的な目標に到達することで、長期的な目標を達成することになります。その過程で短期的な目標を満たすことなく長期的な目標は達成できません。 医療の観点から、私たちの発見や機能不全の説明を意味のあるものにしなければなりません。患者を評価しているときに中臀筋が弱いと判断したとして…実際、それがなんだというのでしょう?中臀筋が弱いことをなぜ気にするべきなのでしょうか?そうですね、弱い中臀筋は、股関節のメカニクスの悪さにつながり、あるいは、大腿筋膜張筋が協働筋的優位となり、股関節のパワー発揮が低下し、腰椎や膝への過度な負荷につながるかもしれません。客観的な機能不全を機能的な制限に関連付けたならば、私達は目標を設定できます:中臀筋の筋力を向上させる。目標ができたら、計画を立てることができます。その計画は、中臀筋の強化エクササイズを含むべきです。 すべての客観的な機能不全は、機能的な制限に加えて、目標を達成するための計画と共に、短期的または長期的な目標を持つべきです。 もちろん、私はいつも客観的な機能不全を意味のある情報と結びつけます。これは、すべての客観的な発見に改善のための計画が確かにあるということに加え、すべての機能不全が意味のある機能的な欠陥と結びついていることを確認することについて私が誠実でいるようにしてくれます。 機能不全を明らかにするがために機能不全を明らかにしないようにしましょう。機能不全とは何を意味するのでしょうか?患者の生活にどのような影響を与え、あなたはそれをどのようにして解決するのですか? クリニカルパール 客観的な機能不全を明らかにし、 それを機能的な制限と結びつけ、 短期または長期的な改善目標を決め、 それを解決するための計画を作りましょう。 アスリートが、提供される新しいストレスに順応するための現実的なタイムラインを作成し、身体を休めるために何日かのリカバリーの日を組み入れましょう。あなたやアスリート、そしてコーチに競技復帰のための現実的なタイムラインを与えるために長期的な目標から逆算しましょう。 要約 リハビリからパフォーマンスへのギャップを埋めることは、直線的な連続体に従うことではありません。もし、すべてのフットボール選手が完璧な基礎的なパフォーマンスと体性感覚コントロールを有するまで待つとしたら、私達は日曜日に何も映っていないテレビを眺めることになるでしょう。または、アスレティックリハビリテーションにおけるスポーツ医学とスポーツパフォーマンスの要素は、完璧なプログレッションとはなりません。私達は、これらのいくつかの段階を同時に取り組むことになるかもしれず、質の高い動作パターンを確実にするためにあるエクササイズを減退させなくてはならないかもしれません[vi]。ギャップを埋めるモデルを組織化することは、あなたとあなたのチームが、それぞれの介入方法がどこにフィットするのかを理解し、これが直線的なプログレッションである必要はないということを理解するための助けとなるべきです。 アスリートをフィールドに戻すために、可能な限り最も効果的で効率的な方法となるように、あなたの教育を組み合わせる最良の方法を見つけるのは、あなた自身の仕事です。Bridging the Gap from Rehab to Performanceで紹介されている資料が、そのことを実現する助けとなることを望みます。それがこのシステムの素晴らしさなのです。 あなたは、誰は特定の人に従ったり、特定のシステムに従う必要はありません。もし、たった一つのシステムのみが機能することが証明されているのであれば、私達は皆それを実行しているでしょう。すべてが適合します。すべてのものにその居場所があるのです。それぞれの状況におけるあなたの選択は、あなたがケアする個々のアスリート次第なのです。 参照 [v] Gregory D, Myer et al, “Rehabilitation After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction: Criteria-Based Progression Through the Return-to-Sport Phase,” Journal of Orthopedic and Sports Physical Therapy, 2006. [vi] Sheri Walters, “When to Progress, When to Regress,” Perform Better

スー・ファルソニ 4109字

6種類のドライニードル法と適切な方法の選び方

私自身のドライニードルの経験から何かを学んだとしたら、それはこのようなことです:すべての鍼のテクニックは全ての患者に対して等しく作られてはいません。これらの小さな器具は身体の筋、骨格、内分泌系、そして神経系に大きな影響を及ぼし、そして正しく使用されれば、短時間のうちに驚くべき効果をもたらすことができます。しかしながら、鍼を効果的に使うには、解剖学と生理学の仔細な知識に加えて、実践的な経験が必要です。あなたが鍼を患者の有効な結果に対する手段として利用する助けとなるように、いくつかのドライニードルのテクニックを紹介し、特有な患者それぞれに対してどの種類が最適かを判断するためのガイドラインを提供したいと思います。 最良のドライニードル法の選び方 どのエビデンスベースの治療方法にも、適した時と場所があり、あなたの目の前にいる患者に応じてツールを選ぶことが重要です。私がどの種類のドライニードル法を利用するかを選ぶ前に、私はまず自身のドライニードルのペンタモダル法を考慮して、ドライニードルが適切な治療手段であるかを分析します。ドライニードルがあなたの患者にとって適切であるかどうかを決定する全ての要因を網羅するための三つのP(下記の要点の英語表記の頭文字)を用いましょう: 医療従事者:あなた、医療従事者、はドライニードルのトレーニングや経験がありますか?ポジティブな変化を引き起こすためにこのツールを使う自身の能力に対して自信がありますか? 患者:ドライニードルという考えにあなたの患者は前向きでしょうか?彼らは、安全にドライニードルを施術されるのに不適切とされるであろう症状や状態を持っていませんか?彼らにドライニードルを行うことを妨げたり、治療方法としてドライニードルを用いることを躊躇させるような禁忌や注意しなければならないことはありますか? 病理:あなたの患者は、ドライニードルによって影響を及ぼすことができるはっきりと定義されたコンディションを示していますか? これらのどれに対する答えが「いいえ」であれば、他の治療法を選択する、あるいは、ドライニードルを安全にそして効果的に行う方法を学ぶCEU(継続教育)コースを受講することを考慮しましょう。これらに対する答えが「はい」であれば、どのタイプがあなたの(そしてあなたの患者の)望む結果を実現する最大の可能性があるかを見つけるために、以下のドライニードルのテクニックのリストを参照してください。 あなたが知らなくてはならない6種類のドライニードル法 トリガーポイント法 トリガーポイントドライニードルとはその名が示すとおりのものです;あなたの患者の痛みが現存のトリガーポイントから起こっているのであれば、そこが緩むまで、その一つの箇所を直接処置するためにドライニードルを用いることができます(Gattie et al. 2017)。あなたの患者の痛みの発生源が現存のトリガーポイントであれば、トリガーポイントへのドライニードルはドライニードルの非常に効果的な方法でしょう。 リスク:中程度−トリガーポイントが痛みの発生源でないのであれば、このタイプのドライニードル法は効果的ではなく、他の方法を選択する必要があります。 鍼の長さ:治療する筋の深さ、患者の体格、そして治療を行う部位のあらゆる解剖学的なリスク要因によります。25ミリから125ミリの範囲になるでしょう。 実施ケース例:患者の首の筋筋膜の痛みが僧帽筋上部のトリガーポイントから発生しているのであれば、トリガーポイントドライニードル法はこれらの痛みの症状を軽減することができます。 表層法 表層へのドライニードル(Baldry 2002; Griswold 2019)は、多くの実践的な医療専門家によって一般的に使われています。鍼は皮膚へ数ミリほどしか挿入されず、表皮層へと届きますが、筋や骨には接触しません。このドライニードルの方法は感覚運動システムをターゲットにします:鍼は感覚入力を変化させ、したがって運動出力を変化させます。痛みも著しく変化させることができます。 リスク:低い−鍼が身体の多くの層を貫通することがないため、重要な臓器や神経血管構造体を損傷させる機会は著しく低くなります。 鍼の長さ:一般的に、短い鍼、長さにして数ミリしか必要ありません。範囲は一般的に0.3ミリから10ミリです。 実施ケース例:例として、胸椎のような危険の大きい部位において、臨床医は、もし鍼を深く刺しすぎたときには、肺に穴を開けてしまう高いリスクを冒します。表層へのドライニードル法は傷害の可能性を回避しながら患者の痛みの感覚を変化させる素晴らしい方法です。 深層法 深層へのドライニードル(Ceccherelli et al 2002; Boluk 2016; Fernández-Carnero et al 2017)は筋を直接ターゲットにする、より高度な技術の鍼の方法です。身体の部位によっては、ターゲットとする筋の場所やそのターゲットとする筋の周囲の組織次第で、徒手的に特定の筋を施術するのが難しくなります。深層へのドライニードルによって、臨床医が、痛みの感覚の変化や、瘢痕組織への影響、または硬直の弛緩/減少を引き起こすためにターゲットとする筋に介入することができるのです。 リスク: :高い−エクササイズセラピーやレーザー、超音波そしてその他の治療法と同じように、あなたが人間の解剖についての非常に多くの知識を持っていない限り、深層へのドライニードルは危険なものになり得ます。あなたが多くの経験を持ち、そして周囲身体構造の解剖についての大きな関心と理解があるときにのみ、この種類の鍼を試しましょう。 鍼の長さ:15ミリ~125ミリ(ターゲットの構造による) 実施ケース例:患者の梨状筋が非常に硬直していて、坐骨神経痛を引き起こしているのであれば、深層へのドライニードルは臀部の筋群と組織を通過して梨状筋の硬直を低減させるために使用でき、その結果、坐骨神経痛を減少させます。 骨膜ペッキング法 骨膜ペッキングは、回復を手助けしようとするためにドライニードルを用いて実際に骨を突っつく(ペッキング)ことを伴います(Dunning et al.、2018)。これによって神経内分泌系の反応を引き起こし、それが関節包内で行われると、痛みの強い骨関節炎の症状に悩む人たちを助けることができます。ヒアルロン酸の生成、抗炎症プロセス、そして内因性オピオイドの濃度の増加が、特に膝の骨関節炎において、私たちが骨膜ペッキングが効果的であると考えるその他の理由です。 リスク:高い−鍼を関節包に挿入することはリスクを伴います。外科的移殖片の有無と感染のリスク要因を、それぞれの患者に対して考慮する必要があります。 鍼の長さ:骨の近くあるいは、骨まで到達するために十分であること。長さは患者のサイズや鍼を刺す部位によって異なる。 実施ケース例:膝の骨関節炎を持つ患者が痛みを感じているのであれば、その部位の痛みの感覚を変化させ、回復プロセスの始動を助ける化学反応を刺激するために骨膜ペッキングを、電気刺激を伴ってまたは伴わずに、膝関節の中と周囲に用います。 電気刺激法 鍼に電気刺激を加えることは、ドライニードルの特殊用途的な方法です。電気刺激の追加は、鍼のみの場合とは異なる神経内分泌反応を引き起こします(Butts and Dunning 2016, Perreault et al 2018)。このタイプのドライニードル法は、中枢神経系の異なる痛みの調整中枢や経路へと信号を送るため、この方法は慢性的な痛みを持つ患者と骨関節炎を持つ患者に対する可能性を持つ選択肢となります。 リスク:中程度−ペースメーカを持つ患者のような、特定のコンディションでは電気刺激の使用が禁忌とされています。その他の全身の問題に関連したリスクを個々において考慮しなければなりません。 鍼の長さ:長い−表層用の鍼では電気刺激を取り付ける十分な表層部の引っ掛かりがなく、そのため、鍼は最低でも筋の中になければならず、さらには、電気刺激を用いて骨膜ペッキングを行うのであれば骨まで届かなければなりません。 実践ケース例:上記の骨膜ペッキングを参照。 末梢神経調節法 末梢神経調節法は、ほとんどの整形外科的な医療専門家の治療範囲外であり、資格を持った鍼灸師または内科学の教育を受けた西洋医学従事者のみによって施術されるべきです(Longhurst&Tjen-A-Looi, 2013)。 この複雑でダイナミックなタイプの鍼は、臓器に影響を与えるために用いられますが、このコンセプトの背景にあるメカニズムは、鍼を挿入したどの時点でも活性化させることができます。私達は、鍼が患者に挿入されたときに何が影響を受けるかを選ぶことができません;身体は刺激されたことを行います、これは、鍼を行うときは、全身の反応は常に可能性の一つで、それが望まぬ結果である時もそうであるということです。 臓器の痛みが肉体の痛みを引き起こし得ることは周知のことです−胸の痛みは心臓発作に標準的に伴い、腰痛は腎結石と共に起こることは一般的です。しかし、これは一方通行ではありません。この繋がりは逆方向にも当てはまり、それは、臓器の問題や全身の問題に対処するために、身体に鍼を用いることが可能であるということです。 鍼を誰かに挿入する時、例えば腕にしたとしましょう、私はただ上腕筋(例として)に鍼を行っているわけではありません。私はC5/C6の皮節にも鍼を行ない、そしてこれらの脊椎の分節も影響を与えており、これはC5/C6によって神経支配を受けているあらゆるもの、臓器や筋を含む、もまた影響を受けるということです。 リスク:高い−鍼を用いて特定の変化を及ぼすことができる一方で、最終的には神経系が影響を及ぼすものを選択するのです。これは、血圧や心拍の変化といった、自律神経系の反応のリスクを増加させます。 鍼の長さ:多様、ターゲットにする構造による。 実施ケース例:鍼灸師が喘息や高血圧、不安などの症状を治療する際に、末梢神経調節のコンセプトが用いられます。 参照: Baldry P. Superficial versus deep dry needling. Acupuncture in Medicine. 2002;20(2-3):78-81. Boluk, Huma. “Comparision of Two Different Dry-Needling Techniques in the Treatment of Myofascial Pain Syndrome.” Ağrı – The Journal of The Turkish Society of Algology, 2016. Butts R, Dunning J. Peripheral and Spinal Mechanisms of Pain and Dry Needling Mediated Analgesia: A Clinical Resource Guide for Health Care Professionals. International Journal of Physical Medicine & Rehabilitation. 2016;04(02). Ceccherelli F, Rigoni MT, Gagliardi G, Ruzzante L. Comparison of Superficial and Deep Acupuncture in the Treatment of Lumbar Myofascial Pain: A Double-Blind Randomized Controlled Study. The Clinical Journal of Pain. 2002;18(3):149-153. Dunning J, Butts R, Young I, et al. Periosteal Electrical Dry Needling as an Adjunct to Exercise and Manual Therapy for Knee Osteoarthritis. The Clinical Journal of Pain. 2018:1. Fernández-Carnero, Josué, Laura Gilarranz-de-Frutos, Jose Vicente León-Hernández, Daniel Pecos-Martin, Isabel Alguacil-Diego, Tomás Gallego-Izquierdo, and Aitor Martín-Pintado-Zugasti. “Effectiveness of Different Deep Dry Needling Dosages in the Treatment of Patients with Cervical Myofascial Pain: A Pilot RCT.” American Journal of Physical Medicine & Rehabilitation 96, no. 10 (October 2017): 726–33. Gattie E, Cleland JA, Snodgrass S. The Effectiveness of Trigger Point Dry Needling for Musculoskeletal Conditions by Physical Therapists: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2017;47(3):133-149. Griswold, D., M. Wilhelm, M. Donaldson, K. Learman, and J. Cleland. “The Effectiveness of Superficial versus Deep Dry Needling or Acupuncture for Reducing Pain and Disability in Individuals with Spine-Related Painful Conditions: A Systematic Review with Meta-Analysis.” Journal of Manual & Manipulative Therapy 27, no. 3 (May 27, 2019): 128–40. Longhurst JC, Tjen-A-Looi S. Acupuncture Regulation of Blood Pressure. International Review of Neurobiology Neurobiology of Acupuncture. 2013:257-271. Perreault, T, S O Flannagan, M T Grubb, and R Grubb. “Mechanisms and Dose Parameters of Electric Needle Stimulation: Clinical Considerations – Part I.” Acupuncture in Physiotherapy, 2018, 10.

スー・ファルソニ 4337字

ドライニードルによる足底の踵部痛の治療

この投稿では、足底の踵の痛みの病態生理学と、足底の踵部痛のドライニードルによる治療に関する最新の研究について解説します。 足底の踵部痛は、成人によく見られる問題です。米国では、足底の踵の痛みのために、臨床医を訪れる人が毎年100万回以上になっています。1 足底の踵部痛は、踵下部の痛みの患者の80%を占め、10人に1人が罹患していると推定されています。2 アスリートも運動不足の人も同様に罹患し、そして、男女等しく影響します。痛みの主な原因を特定することは、多因子が関係し合っているため複雑で、その罹患率の高さにも関わらず、踵部痛の中核は十分に理解されていません。3 足底の踵部痛の原因で最も多いのは、人口の約10%が患っている足底筋膜炎です。1 しかし、足底の踵部痛は、他にも踵骨疲労骨折や下肢の神経根症からも起こる可能性があります。2,4これらの症状は、激しい痛みにつながる可能性があり、これらの症状に苦しむ人たちの生活を著しく制限し、日常生活に影響を及ぼします。これらの症状は、通常、ライフスタイルの改善策や非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、リハビリテーション、局所注射、さらには手術といった手段で治療されます。1,4,5 足底の踵部痛の病理生理学 足底筋膜炎 踵骨の後部結節には、内側と外側突起があります。内側突起には、短趾屈筋、母趾内転筋、足底方形筋の内側頭、および足底筋膜の中央部が付着します。多くの患者が踵の痛みを感じているのはまさにここです。足底筋膜には、内側、中央、および外側部があります。最も重要となるのは中央部で、それは線維軟骨となり踵骨の近位部に直接付着します。筋膜の三角形の形状は、踵骨結節の内側突起から発達し、中足骨中央辺りで遠位へ5本に分岐します。これらは、前足部で足底の皮膚や基節骨の基部に付着し、さらに、側副靭帯と深横中足靭帯を介して中足趾節関節に付着します。1,2,6 これは、縦アーチを補強し、力学的負荷が上がるとともに伸長します。 肥満や長時間の立位、扁平足、ヒラメ筋-腓腹筋の複合機能障害、および足首の不安定性などは、筋膜に過度のストレスをもたらすことがあります。加齢に伴い足底筋膜の弾性は低下します。上記すべての要因は、炎症や肥厚ではなく、足底筋膜の退行変性につながります。1,2,6 踵骨疲労骨折 踵骨疲労骨折は、足にかかる反復的な活動による、踵骨として知られるかかとの骨の小さな骨折です。通常の体重負荷によるストレスは、踵骨疲労骨折を引き起こすのに必要な閾値よりも小さいものの、反復的な活動によって骨に小さい損傷が起こることがあります。ワークアウトとワークアウトの間に十分な治癒時間がないと、微細な損傷となり、疲労骨折に進行する可能性があります。1,2,6 これは通常、使いすぎや、ランニングや跳ねることなどを含むこれまで行っていなかった運動の開始時に発生します。新しいエクササイズのルーチンを開始すること以外の関連要因には、これまでの運動強度または期間の増加、肥満、不適切なシューズ、および凹足があります。1,6 踵骨は、二番目に多い足の疲労骨折の場所です。 絞扼性神経障害 足根管症候群は、足首の内側において脛骨神経が屈筋支帯の下に絞扼されることが原因です。特発性または糖尿病やガングリオン嚢胞に続発して起こることがあります。1 また、内側踵骨神経は、通常なら足関節の屈筋支帯の上で脛骨神経から枝分かれします。踵の皮膚は内側踵骨神経によって神経支配されており、何らかの病変によって近位部で神経が圧迫されると踵の痛みを伴うことがあります。他には、Baxter神経(下踵骨枝)における絞扼の可能性があります。Baxter神経は、外側足底神経の最初の枝分かれで、踵骨骨膜と長足底靭帯からの感覚情報を伝達します。母趾内転筋と足底方形筋の間の筋膜面が狭くなることによって、Baxter神経はその遠位で絞扼されることがあります。その他にも短趾屈筋と足底方形筋の間の内側踵骨結節の前面が絞扼部位になることがあります。1,6,7 足底の踵部痛のためのドライニードリング 2020年に発表された、足底の踵部痛のためのドライニードリングに直接関連する最近の記事が2つありました。Al-Boloushiらは、足底の踵部痛みに対する2つのドライニードリングの介入を比較したランダム化比較試験を実施しました。彼らは、筋膜のトリガーポイントによって引き起こされる足底の踵部痛に苦しむ患者の痛みのレベル、機能、および生活の質を改善するために、ドライニードリルのみと電気刺激を加えたドライニードルの有効性の比較を試みました。被験者は無作為に2つのグループに分けられました。一つのグループはドライニードルとストレッチのプロトコルを受け、もう一方のグループは電気刺激を加えたドライニードルとストレッチのプロトコルを受けました。測定には、足の健康状態に関する質問票、0〜10の数値評価ができる視覚的アナログスケール(VAS)が使われ、生活の質(QoL)はEuroQoL-5項目法を使用して測定されました。すべての測定は、開始前、4、8、12、26、および52週目に行われました。結果は印象的なものでした。なぜなら、ドライニードルのグループと電気刺激ニードルのグループの足の健康状態に関する質問票は、すべての時点において改善され、グループ間で有意差がなかったからです。痛みのVASスコアは、ドライニードルグループと電気刺激ニードルグループの両方で、すべての時点で減少しました。さらに、QoLは、ドライニードルと電気刺激ニードルの両グループで4週間、電気刺激ニードルグループのみで8週間と52週間で改善がみられました。52週でのQoLのグループ間には有意差がありました。これらの効果により、彼らは、ドライニードルと電気刺激によるドライニードルの両方が短期的に足底の踵の痛みをマネージメントするのに十分であると結論付けました。しかし、52週で電気刺激を加えたドライニードルの方が有益となり、生活の質にさらに変化があるとしました。3 これに続いて、同様のアプローチと同様の結果を示したWangと同僚らによる論文記事がありました。彼らは、足底の踵の痛みについて、電気鍼療法と手技鍼療法の比較を試みました。彼らは参加者を無作為に割り当て、割り当てられた参加者たちは、電気鍼療法または手技鍼療法の12回の治療セッションを4週間にわたって受け、16週目と24週目にフォローアップを行いました。視覚的アナログスケール(VAS、0〜100;スコアが高いほど痛みがひどいことを示します))を使用して測定し、主な結果は、治療に対する反応の割合で示されました。つまり、開始時の朝の最初の一歩で経験する最も痛い疼痛強度から4週間の治療後まで、少なくとも50%減少した患者として定義されました。そして、ITT(治療意図)分析が行われました。手技鍼治療グループの50.0%と比較して、電気鍼治療グループでは54.8%が4週間の治療後の朝の最初の一歩の痛みの50%減少を達成しました。 16週間と24週間のフォローアップでは、グループ間の有意差はありませんでした。彼らは、前の論文記事と同様に、電気鍼療法と手技鍼療法の両方が、踵の痛みの軽減と足底機能の改善を伴う一時的な効果があると結論付けました。8 結論 現在、足底の踵部痛の治療におけるドライニードルの有用性を示す証拠が蓄積されています。9–14 これら2つの論文記事は、ドライニードルと電気ドライニードルの介入が効果的であることを示す最新のものです。この情報は、足底の踵部痛の治療にドライニードルをどのように使用するかを示してくれます。 参照 Allam AE, Chang K-V. Plantar Heel Pain. In: StatPearls. StatPearls Publishing; 2020. Accessed January 6, 2021. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK499868/ Rosenbaum AJ, DiPreta JA, Misener D. Plantar heel pain. Med Clin North Am. 2014;98(2):339-352. doi:10.1016/j.mcna.2013.10.009 Al-Boloushi Z, Gómez-Trullén EM, Arian M, Fernández D, Herrero P, Bellosta-López P. Comparing two dry needling interventions for plantar heel pain: a randomised controlled trial. BMJ Open. 2020;10(8):e038033. doi:10.1136/bmjopen-2020-038033 Orhurhu V, Urits I, Orman S, Viswanath O, Abd-Elsayed A. A Systematic Review of Radiofrequency Treatment of the Ankle for the Management of Chronic Foot and Ankle Pain. Curr Pain Headache Rep. 2019;23(1):4. doi:10.1007/s11916-019-0745-5 Malahias M-A, Cantiller EB, Kadu VV, Müller S. The clinical outcome of endoscopic plantar fascia release: A current concept review. Foot Ankle Surg. 2020;26(1):19-24. doi:10.1016/j.fas.2018.12.006 Hossain M, Makwana N. “Not Plantar Fasciitis”: the differential diagnosis and management of heel pain syndrome. Orthopaedics and Trauma. 2011;25(3):198-206. doi:10.1016/j.mporth.2011.02.003 Chundru U, Liebeskind A, Seidelmann F, Fogel J, Franklin P, Beltran J. Plantar fasciitis and calcaneal spur formation are associated with abductor digiti minimi atrophy on MRI of the foot. Skeletal Radiol. 2008;37(6):505-510. doi:10.1007/s00256-008-0455-2 Wang W, Liu Y, Jiao R, Liu S, Zhao J, Liu Z. Comparison of electro-acupuncture and manual acupuncture for patients with plantar heel pain syndrome: a randomized controlled trial. Acupunct Med. Published online August 18, 2020:096452842094773. doi:10.1177/0964528420947739 Wang W, Liu Y, Jiao R, Liu S, Zhao J, Liu Z. Comparison of electro-acupuncture and manual acupuncture for patients with plantar heel pain syndrome: a randomized controlled trial. Acupunct Med. Published online August 18, 2020:096452842094773. doi:10.1177/0964528420947739 Al-Boloushi Z, Gómez-Trullén EM, Arian M, Fernández D, Herrero P, Bellosta-López P. Comparing two dry needling interventions for plantar heel pain: a randomised controlled trial. BMJ Open. 2020;10(8):e038033. doi:10.1136/bmjopen-2020-038033 Dunning J, Butts R, Henry N, et al. Electrical dry needling as an adjunct to exercise, manual therapy and ultrasound for plantar fasciitis: A multi-center randomized clinical trial. Baur H, ed. PLoS ONE. 2018;13(10):e0205405. doi:10.1371/journal.pone.0205405 Ebrahim DAH, Ahmed DGM, Elsayed DE, Sarhan DR. Effect of Electro Acupuncture TENS, Stretching Exercises and Prefabricated Insole in Patients With Plantar Fasciitis. :12. He C, Ma H. Effectiveness of trigger point dry needling for plantar heel pain: a meta-analysis of seven randomized controlled trials. JPR. 2017;Volume 10:1933-1942. doi:10.2147/JPR.S141607 Kumnerddee W, Pattapong N. Efficacy of electro-acupuncture in chronic plantar fasciitis: a randomized controlled trial. Am J Chin Med. 2012;40(6):1167-1176. doi:10.1142/S0192415X12500863

スー・ファルソニ 3215字

鍼治療 vs ドライニードル

最終的な議論の解決 長年にわたり、実践的なヘルスケアの専門家と鍼灸師は、痛みを和らげるために鍼を使用することにおける彼らの権利を主張しようとしており、その結果、鍼治療とドライニードルの違いをめぐる大論争が起こっています。まずは、鍼治療とドライニードル間の議論について説明させてください。 鍼灸師の見解 論争の一端において、鍼灸師はドライニードルが鍼治療であると考えています。そのため、理学療法士、アスレチックトレーナー、カイロプラクターなどがドライニードルを実践するために受けるトレーニングは、鍼を使用するには全く十分ではありません。 他のヘルスケア専門家の見解 一方で、臨床家は、ドライニードルのトレーニングコースでは東洋医学についての議論がされないため、この2つの介入法は同じではないと主張します。そのため、これらの西洋医学の実践者が受ける教育は、人体解剖学の高度な知識と対になって、彼らにドライニードルを実践する資格を与えます。しかし、どちらの主張が正しいのでしょうか? 対決 この数十年にわたる崩壊の真相を探るために、私は鍼治療とドライニードルを比較して、この二つの類似点と相違点を明らかにし、科学的根拠に基づいた答えを出そうとしています。 鍼治療とドライニードルの類似点は何か? 表面上、鍼治療とドライニードルは、驚くほど似ていることはよく知られています。下記は、これらの2つの実践法が互いに誤解され得るいくつかの理由です。 1. 同じ道具を頼りにしている 鍼治療もドライニードルも、小さい、糸状の、身体に挿入する鍼を使い、表皮層から骨までの間に挿入します。 2. 同様の知識と理論に基づいて構成されている ドライニードルや鍼治療を実践するためには、人体解剖学、病理学、及び生理学を深く、徹底的に理解している必要があります。これは、効果的な治療の可能性を高めるだけでなく、患者にとって、より安全な経験を保証します。同様に、どちらの鍼技術も、少なくとも西洋医学の観点からは、同様の理論に基づいています。様々な神経生理学的メカニズムに働きかけることを意図して、筋筋膜の痛み、痛点、またトリガーポイントが鍼のターゲットになります。[1] 3. 同じ症状を治療する 鍼治療とドライニードルは、どちらも痛みを和らげ、多くの筋骨格系の障害を治療するために利用することができます。[1] これで全部か? 鍼治療およびドライニードルは、同じ一つのものであると納得しましたか?まだ早いです。これらの2つの方法がいくらかの基礎的な一致を共有する一方で、これら2つを大幅に区別する複数の要因があります。 鍼治療とドライニードルの違いは何か? これら2つの介入法の性質について深く掘り下げると、鍼治療とドライニードルは、実際には信じられないほど異なっていることがわかります。 1. 鍼治療は、ドライニードルが含まれるほど非常に包括的な用語である このように考えてください。この世界には、何百万人ものアスリートとして分類することのできる人達がいます。しかし、野球をするアスリートだからといって、その野球のスキルを転換して、テニスのプロになれるわけではありません。確かに、力学は同じです;ボールに向かってスイングしますし、成功するためには卓越した手と目のコーディネーションが必要です。しかし、ゲームの性質が異なるため、そのように分けられているのです。 鍼治療にも同様のことが当てはまります。[2]生理的な概念に基づく西洋医学の鍼治療は、陰と陽のバランス、気の改善、そして「経絡を刺激する」という歴史的な概念に基づく伝統的な鍼治療のサブセットです。[1]同様に、ドライニードル、ウェットニードル(針で物質を注入する方法)、その他も、西洋医学鍼治療の傘下にあり、同様の能力に基づいていますが、全く異なる実践法です。 「鍼治療は、鍼の道具や技術、筋骨格系の障害に広く使われる点で、ドライニードルと重なります。さらに、西洋医学鍼治療とドライニードルはどちらも、人体に関する現代の生物医学的な理解に基づいています。経穴(ah shiポイントを含む)とトリガーポイントは、痛みの治療において有意に重なっています;ドライニードルにおける局所的な筋肉の痙攣と鍼灸の得気はそれぞれ、鍼治療の効果を予測する予後基準として使用されます。Whiteらが西洋医学的な鍼治療の定義で述べているように、バリエーションには、圧痛のある筋肉のトリガーポイントでの皮下ニードリングが含まれます。したがって、ドライニードルは、西洋医学鍼治療のサブカテゴリーとして認識されるべきです。」[1]ドライニードルは、西洋医学鍼治療の一つの形態かもしれませんが、西洋医学鍼治療と伝統的な鍼治療は、ドライニードル単独よりもはるかに幅広く、複雑なものなのです。 2. 鍼治療の実践は、より厳しく規制されている 認定鍼灸師になるには、ドライニードルを実践しようとする医療従事者が受けるよりもはるかに正式なトレーニングと認定プロセスを受ける必要があります。Kehua Zhou博士らが2015年に発表した研究論文によると、鍼治療は: 数百時間、または多くの場合、数千時間にわたる鍼の専門教育を必要とする。 州の免許が必要である(国家レベルの試験に合格し、優れた専門的な経歴を維持することに基づく)。 ほとんどの州で州教育局の鍼治療または医学委員会によって管理されている。[1] ... 一方、ドライニードルの実践には: 厳密には規制されていない、基準を遵守するためのいくつかの(もしあれば)基準がある継続教育プログラムからのトレーニングを必要とする。 州や国の評価システムとは関連がなく、ヘルスケアを管理する行政や政策立案者の基準もまだ確立されていない 。[1] 解剖学、生理学、病態生理学、神経生理学、検査、触診、手技療法、普遍的予防策、救急医療などに関する幅広い知識と教育を受けた、免許または認定を受けた医療従事者のみが実施することができる。 これは、上記の科目を中心としたヘルスケアに関する4~7年以上の正式な教育である 州が医療従事者の免許や、その免許や資格で合法的にできることを規制している。 教育と規制におけるこれらの顕著な違いは、なぜドライニードルが鍼治療ではないかの明確な例である。 最終的な評決 ドライニードルは鍼治療のサブセットですか?はい。では、ドライニードルは鍼治療ですか?正確には違います。みんなで上手くやっていくべきですか?専門家はそう言います! 「患者が安全で質の高い鍼治療を受けることができるように、医師ではないドライニードルの施術者と鍼師の間で連携と統合を強化する必要があります。」[2]これでお分かりいただけましたね・・・議論はおしまいです! 参照: Zhou K, Ma Y, Brogan MS. Dry needling versus acupuncture: the ongoing debate. Acupunct Med. 2015 Dec;33(6):485-90. doi: 10.1136/acupmed-2015-010911. Epub 2015 Nov 6. Zhu H, Most H. Dry Needling Is One Type of Acupuncture. Medical Acupuncture. Aug 2016. Ahead of print. http://doi.org/10.1089/acu.2016.1187

スー・ファルソニ 3220字